説明

車体前部構造

【課題】ポールに対して車幅方向中央部分が激突したときにパワープラントの後退を抑制する。
【解決手段】第1マウント部材52は、エンジン端面32aに連結されて車幅方向外方に延びるブラケット60と、ブラケット60から下方に延びるボルト80などで逆L字状に屈曲した第1の支持軸を構成し、この逆L字状の第1の支持軸の下方に延びる部分がブッシュ78を介してフロントサイドフレーム22に支持される。ブラケット60から車幅方向外方に延びるブラケット延長部62の先端部はサスペンションタワー58の前壁58aに設けられたブラケット受け部材82の溝84に受け入れられている。ブラケット延長部62はその先端部がサスペンションタワー58の前壁58aに接近する方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、より詳しくは、ポール状の障害物に対して車幅方向中央部分が前面衝突したときの安全性を向上することのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部は、一般的に、車体前端において車幅方向に延びるバンパーレインフォースメントの左右の端部を夫々左右一対のフロントサイドフレームの前端に連結する、より詳しくはクラッシュカンを介して連結する構造が採用されている。すなわち、車体前部構造として、左右のフロントサイドフレームは前面衝突の際の主なる衝撃吸収部材として機能する構造が採用されている。
【0003】
前面衝突に関する衝撃安全性能試験は二つの態様で行われている。第一の態様がフルラップ前面衝突であり、第二の態様がオフセット前面衝突である。フルラップ前面衝突試験では、車両を所定速度でコンクリート製の障壁に衝突させることにより行われる。オフセット前面衝突試験では、車両の一方の側部(オーバーラップ率40%)をハニカム状の障壁に前面衝突させることにより行われる。
【0004】
特許文献1は、フルラップ前面衝突及びオフセット前面衝突において、衝突初期で、フロントサイドフレームの前端部の座屈により衝突エネルギを吸収すると共に衝突後期における乗員の減速度を緩和する発明を提案している。具体的には、特許文献2は、矩形断面の左右のフロントサイドフレームの後端部間に亘って車幅方向に延びるパイプを設け、このパイプの左右の各端をフロントサイドフレームの内側側面に連結する構造を提案している。この発明によれば、衝突によりパワープラントが後退すると、この後退するパワープラントにより、車幅方向に延びる連結パイプが後方に屈曲し、この連結パイプの屈曲によって左右のフロントサイドフレームの後端部を車幅方向内方側に屈曲させることで、衝突後期の乗員の減速度を緩和することができる。
【0005】
特許文献2は、エンジン出力軸を車幅方向に向けてエンジンルームに搭載した、いわゆる横置きエンジンとこれに連結したトランスアクスルに関して、トランスアクスル側をこれに隣接するフロントサイドフレームに搭載する吊り下げ式マウント部材について、その問題点を指摘して、その改善案を提案している。ここに、吊り下げ式マウント部材は、トランスアクスルの端面とフロントサイドフレームとの間の空間にブッシュを配設する構成が採用されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−120752号公報
【特許文献2】特開2000−168624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したように前面衝突の態様として典型的にはフルラップ衝突及びオフセット衝突を挙げることができるものの、実際の前面衝突事故では種々様々な態様があるのは勿論である。その一つに、道路脇に植設された電柱や道路標識の支柱などに激突した場合である。このポール状の障害物に対して、車両の車幅方向中央部分がポール状の障害物に激突した場合、バンパーレインフォースメントは、一般的に設計上これを受け止める強度を備えていないため、その車幅方向中央部分で折れ曲がってしまい、この結果、エンジンを含むパワープラントにポールが衝突してマウント部材を破壊してしまう虞がある。
【0008】
本発明の目的は、ポールのように車幅方向に広がりを備えていない障害物に対して車幅方向中央部分が激突したときにパワープラントの後退を抑制することのできる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
車体前部に位置するエンジンルームと、
該エンジンルームを車体前後方向に延び且つ矩形の閉断面構造の左右のフロントサイドフレームと、
前記エンジンルーム内に収容され、出力軸を車幅方向に向けた横置きエンジンと該エンジンの出力軸に連結されたトランスアクスルとが車幅方向に並んで一体化されたパワープラントと、
該パワープラントを前記左右のフロントサイドフレームに、夫々、搭載する第1、第2のマウント部材とを有する車体前部構造において、
前記エンジンの端面を、これに隣接するフロントサイドフレームに搭載する前記第1マウント部材が前輪サスペンションタワーの前方に配設され、
前記第1マウント部材が、
前記エンジンの端面に締結され且つ車幅方向外方に延びた後に下方に延びる逆L字状の第1の支持軸と、
該逆L字状の第1の支持軸の下方に延びる部分を包囲する第1の弾性体と、
該第1弾性体を包囲する第1の外筒と、
該第1の外筒から下方に延びて下端が前記フロントサイドフレームの上面に連結される前後の脚と、
前記逆L字状の第1の支持軸から前記前輪サスペンションタワーの前壁を前方から臨む位置まで延びる延長部とを有することを特徴とする車体前部構造を提供することにより達成される。
【0010】
本発明の車体前部構造によれば、第1マウント部材に含まれる第1弾性体が上下に開放した第1外筒の中に収容され、この第1外筒が前後脚を介してフロントサイドフレームに固定されていることから、ポール衝突のような前面衝突の際の衝撃によってパワープラントに衝突荷重が加わったとしても、これにより第1弾性体が破壊してしまうことを防止することができる。また、パワープラントに衝突荷重が加わってその衝撃で前後の脚が変形して第1外筒が後退したとしても、第1の支持軸から延びる延長部が前輪サスペンションタワーによって受止されるため、パワープラントの後退を抑制することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態によれば、
前記前輪サスペンションタワーの前壁に、上下の壁を備えて前記車幅方向に延び且つ前記延長部の先端部分を受け入れる溝を形成するための受け部材が取り付けられている。この実施の形態によれば、前輪サスペンションタワーの前壁に設けられた受け部材によって後退する延長部を安定的に受け止めることができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態によれば、
前記逆L字状の第1の支持軸の前記エンジンの端面から車幅方向に延びる部分が板状のブラケットで構成され、前記延長部が前記板状のブラケットと一体に成形されたブラケット延長部で構成され、該ブラケット延長部は、その先端部が前記前輪サスペンションタワーの前壁に接近する方向に延びている。この実施の形態によれば、ブラケット延長部の先端部が前輪サスペンションタワーの前壁に接近する方向に延びているため、パワープラントの後退初期からサスペンションタワーによって受け止めることができる。換言すれば、未だ加速度が小さい後退初期の段階からサスペンションタワーがブラケット延長部を受け止めるため、ブラケット延長部の破壊が発生してしまうのを防止することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態によれば、
前記パワープラントのトランスアクスルを、これに隣接するフロントサイドフレームに搭載する前記第2マウント部材が、前記矩形の閉断面構造の前記フロントサイドフレームの車幅方向内方側の側壁に形成された開口の形状と相補的な外形形状を有し且つ該開口を通じて前記フロントサイドフレームの中に挿入された第2の外筒と;該外筒に収容された第2の弾性体と;一端が前記第2の弾性体に包囲された第2の支持軸とを有し;該第2の支持軸の他端が、前記トランスアクスルのケースに締結されている。この実施の形態によれば、第2マウント部材に含まれる第2弾性体がフロントサイドフレームの内部に収容された状態にあるため、ポール衝突のような前面衝突の際の衝撃によってパワープラントに衝突荷重が加わったとしても、これにより弾性体が破壊してしまうことなくパワープラントに加わった衝突荷重を直にフロントサイドフレームに伝達して、フロントサイドフレームの衝突エネルギ吸収機能を使って、その衝撃を緩和することができる。また、従来の吊り下げ式マウント部材は、トランスアクスルの上方域に弾性体などの部材が位置していたが、この実施の形態によれば、この弾性体をフロントサイドフレームの内部に収容した形態であるため、トランスアクスルの上方域を補機類やバッテリなどの設置空間として利用することができる。
【0014】
本発明の他の目的及び作用効果は、以下の好ましい実施例の詳細な説明から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0016】
図1は実施例の車体前部構造の平面図であり、図2は側面視した実施例の車体前部構造である。先ず図2を参照して、参照符号10はダッシュパネルを示し、ダッシュパネル10によって車室12とエンジンルーム14とが区画されている。車室12には、インスツルメントパネル16、ブレーキペダル18やアクセルペダル等が設けられている。参照符号20はフロントウインドウである。
【0017】
図1、図2を参照して、エンジンルーム14の下方域には、車体前後方向にエンジンルーム14の全域に亘って延在する左右のフロントサイドフレーム22が配設されており、フロントサイドフレーム22は矩形の閉断面構造を有している。既知のように、左右のフロントサイドフレーム22の前端には、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント24がクラッシュカン26を介して連結されている。エンジンルーム14の下方域には、更に、フロントサイドフレーム22よりも下方に位置するサブフレーム28が配設されている。参照符号30は前輪である。
【0018】
パワープラントとしてエンジンルーム14には内燃多気筒エンジン32が搭載されている。エンジン32は、水冷式の直列四気筒エンジンであり、図1から最も良く分かるようにエンジン出力軸を車幅方向に向けてエンジンルーム14内に搭載されている。すなわち、エンジンルーム14に搭載されたエンジン32は横置きのレシプロエンジンであり、エンジン32は、その後端に連結されたトランスアクスル34と一体化されている。換言すると、パワープラントを構成するエンジン32とトランスアクスル34とは車幅方向に並んで配設されて一体化されている。
【0019】
トランスアクスル34は、エンジン出力軸に連結されたトランスミッションを収容するミッションケース36と、その後方に配設されてデファレンシャルギアを内蔵したデフケース38とを有し、このデフケース38から車幅方向に延出する左右の駆動軸で左右の前輪30が駆動される。この自動車は前輪駆動形式の車両であるが、4輪駆動形式の車両に対しても本発明を適用することができる。
【0020】
エンジン32は水冷式エンジンであり、このエンジン32の冷却水は、左右のフロントサイドフレーム22の前端部の間のシュラウドパネル(図示せず)に固設されたラジエータ40によって冷却される。横置きのエンジン32は前方吸気、後方排気の形式が採用されており、エンジン32のシリンダヘッドには、その前面に吸気管42が連結され、後面に排気管44が連結されている(図2)。
【0021】
サブフレーム28は、クラッシュカン26の後方且つ近傍で車幅方向に延びるメンバ28aを備えた平面視略矩形の枠形状のペリメータフレームで構成され、その左右の前端の各々がロングボルト46によって、対応するフロントサイドフレーム22の前端部に固定されている。前輪サスペンション機構48は、これを構成するロアアームのピボット点が、サブフレーム28の後部の左右の両端部に設けられている。図中、参照符号50は前輪ステアリングリンク機構を示す。
【0022】
エンジンルーム14に配設されているエンジン32などのパワープラントは、左右のフロントサイドフレーム22に第1、第2のマウント部材52、54を介して搭載され、また、エンジン32の後端は、第3のマウント部材56を介して、サブフレーム28の後端部において車幅方向に延びる本体部分28aに連結されている(図1)。
【0023】
第1のマウント部材52は、エンジン32と、これに隣接するフロントサイドフレーム22(図示の例では右側フロントサイドフレーム)との間に配設される。他方、第2のマウント部材54は、トランスアクスル34の端部と、これに隣接するフロントサイドフレーム22(図示の例では左側フロントサイドフレーム)との間に配設され、これら第1、第2のマウント部材52、54は、共に左右のサスペンションタワー58に隣接して且つその近傍に配設されている。
【0024】
図3はエンジン32側の第1マウント部材52の近傍の平面図であり、図4は、第1マウント部材52の縦断面図である。図3、図4を参照して、エンジン32側の第1マウント部材52は、エンジン32の端面32aつまりシリンダブロックの端面にボルト止めされた板状のブラケット60を有し、ブラケット60は車幅方向外方に向けて延びている。この板状のブラケット60はフロントサイドフレーム22を超えて車幅方向外方に延びるブラケット延長部62を有し、このブラケット延長部62上記板状のブラケット60と一体に成形されている。ブラケット延長部62はサスペンションタワー58の前壁58aを臨む位置まで延びており、ブラケット延長部62は、その先端部がサスペンションタワー58の前壁58aに接近する方向に延びている。図中、参照符号64はエプロンレインフォースメントを示し、また、図4の参照符号66はエプロンパネルを示す。
【0025】
フロントサイドフレーム22には、その上面に、車体前後方向に離間した前後の2つの脚68、70がボルト止めされ、この2本の脚68、70の上端には、上下に開放した第1の外筒72が溶接され、この第1の外筒72の中に内外二重の上下に開放したスリーブ74、76と、この内外のスリーブ74、76の間に介装された第1のブッシュ78が収容されている。そして、内側スリーブ74の下端部には雌ネジが設けられている。
【0026】
上記のブラケット60には、フロントサイドフレーム22の上方域にボルト挿通孔が形成され、このボルト挿通孔に上方から挿入されたボルト80は内側スリーブ74に挿入されて、この内側スリーブ74の雌ネジに螺着され、これにより、エンジン32に固定されたブラケット60は、弾性体であるブッシュ78を介してフロントサイドフレーム22の上面に連結されている。
【0027】
図5は、第1マウント部材52の設置部位を平面視した図である。図3〜図5を参照して、上記の第1マウント部材52に関連して、サスペンションタワー58の前壁58aには、ブラケット受け部材82が溶接により接合されている。ブラケット受け部材82は、上下の壁82a、82bと、車幅方向外端の端壁82cとで規定される前方及び車幅方向内方に開放した溝84を有し、この溝84の中に、ブラケット延長部62の先端部分が受け入れられている。なお、図4の仮想線86はサスペンションアッパアームを示し、また、仮想線88はナックルアームを示す。
【0028】
第1マウント部材52は、エンジン32の端面32aに連結されて車幅方向外方に延びるブラケット60と、該ブラケット60から下方に延びるボルト80と、これに螺着された内側スリーブ74とで逆L字状に屈曲した第1の支持軸を構成し、この逆L字状の第1の支持軸の下方に延びる、すなわち鉛直方向に延びる部分が第1の弾性体であるブッシュ78を介してエンジン32がフロントサイドフレーム22に弾性的に支持される。
【0029】
パワープラントに衝突荷重が加わってその衝撃で前後の脚68、70が変形して第1外筒72が後退したとしても、ブラケット延長部62がサスペンションタワー58によって受止されるためパワープラントの後退を抑制することができる。
【0030】
また、ブラケット延長部62の先端部がサスペンションタワー58の前壁58aに接近する方向に延びているため、パワープラントの後退初期からサスペンションタワー58によって受け止めることができる。
【0031】
また、上下の壁82a、82bを備えたブラケット受け部材82によって規定される車幅方向に延びる溝84にブラケット延長部62の先端部分が受け入れられているため、ブラケット受け部材82によって安定的にブラケット延長部62の先端部分を受け止めることができる。なお、ブラケット延長部62の先端部は、エンジン始動時や運転中のトルク変動に起因するエンジン32及びトランスアクスル34の揺動によって所定量上下左右に変位することになる。このことから、上記エンジン32及びトランスアクスル34の揺動に伴って上下動するブラケット延長部62の先端部と干渉しないように、ブラケット受け部材82の上下の壁82a、82bの離間距離が設定される。
【0032】
勿論、サスペンションタワー58は高い剛性を具備するように設計されているため、図9に模式的に示すように、エンジン32の後退によって第1マウント部材52が破壊してブラケット延長部62が後退したとしても、サスペンションタワー58によってブラケット延長部62を受け止めることができる。
【0033】
図6は、トランスアクスル34側の第2マウント部材54に関連した部位を平面視した図である。図7は、第2マウント部材54及びこれに関連したトランスアクスル34(ミッションケース36)、フロントサイドフレーム22の部分を斜め前方から見た分解斜視図であり、図8は、第2マウント部材54の縦断面図である。
【0034】
主に図7、図8を参照して、第2マウント部材54は、支持軸を構成する第2の逆L字状部材90を有する。第2の逆L字状部材90は、上下に延びる垂直部分92と、この垂直部分92の上端から車幅方向外方に向けて延びる水平部分94とを有し、垂直部分92の下端部に複数のボルト挿通孔72aが形成されている。この第2の逆L字状部材90は、垂直部分92のボルト挿通孔92aに挿通したボルト96を使ってミッションケース36の端面36aに締結される。第2の逆L字状部材90の水平部分94は、エンジン32とトランスアクスル34からなるパワープラントの並び方向である車幅方向に一致して車幅方向外方に延びており、これによりパワープラントの質量を無理なくフロントサイドフレーム22によって支えることができる。
【0035】
第2の逆L字状部材90の水平部分94は、その回りが第2の弾性体であるブッシュ98で包囲されており、この第2のブッシュ98は矩形断面の第2の外筒100に収容されている。すなわち、第2の外筒100はその軸線を車幅方向に向けて配設され、この第2の外筒100の内部に第2の弾性体であるブッシュ98が収容されている。この車幅方向の内外に向けて開放された第2の外筒100は、その車幅方向内端に全周フランジ102を有し、この全周フランジ102には複数のボルト挿通孔102aが形成されている(図7)。
【0036】
フロントサイドフレーム22には、その両側壁に矩形の開口22aを有し(図7)、この内方側及び外方側の両側壁の開口22aに矩形の上記第2外筒100が挿通される。すなわち、矩形の第2の外筒100の外端部は車幅方向外方側の矩形の開口22aを貫通しており、これにより、パワープラントに衝突荷重が加わったときに、第2外筒100の回転を矩形の開口22で規制しつつ衝突荷重をフロントサイドフレーム22に対して、その軸線方向に伝達することができる。ここに、外筒100は、フロントサイドフレーム22の開口22aの形状と相補的な外形形状を有しており、開口22aの周縁部に上記全周フランジ102が当接される。フロントサイドフレーム22において、第2の外筒100を受け入れる部分を、フロントサイドフレーム22の内部に配設されたスティフナ104(図7)によって補強するのが好ましく、また、スティフナ104に予めナット106を溶接しておくのがよい。
【0037】
第2マウント部材54をフロントサイドフレーム22に設置する作業は、横方向に開放した開口22aを通じてフロントサイドフレーム22に第2の外筒100を挿入することで位置決めすることができ、また、第2の外筒100の全周フランジ102のボルト挿通孔102aに挿通したボルト108をナット106に螺着させることによって行うことができるため、パワープラント側からアクセスすることで第2マウント54をフロントサイドフレーム22に締結することができる。
【0038】
第2マウント部材54をフロントサイドフレーム22に締結することで、第2の支持軸を構成する逆L字状部材90は、その一端がフロントサイドフレーム22内のブッシュ98を介して固定され、他端がミッションケース36の端面36aに固定され、これによりパワープラントがフロントサイドフレーム22に弾性的に支持される。
【0039】
バンパーレインフォースメント24の車幅方向中央部分にポールなどが激突してバンパーレインフォースメント24が車幅方向中央部分で屈曲し、そしてエンジンルーム14内に侵入してエンジン32、トランスアクスル34を含むパワープラントに衝突荷重が加わったときには、この衝突荷重の一部が第2マウント部材54を介してフロントサイドフレーム22に伝達され、そして、フロントサイドフレーム22に伝達される衝突荷重はフロントサイドフレーム22の軸線方向であるため、フロントサイドフレーム22の衝突エネルギ吸収機能を使って衝突エネルギを緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例の車体前部構造を平面視した図である。
【図2】実施例の車体前部構造を側面視した図である。
【図3】横置きエンジンを含むパワープラントのエンジン側を、これに隣接するフロントサイドフレームに搭載する第1マウント部材と、これに隣接する要素を拡大して示す斜視図である。
【図4】第1マウント部材の縦断面図である。
【図5】第1マウント部材及びこれに関連した要素を平面視した部分平面図である。
【図6】トランスアクスル側の第2マウント部材及びこれに関連した要素を平面視した部分平面図である。
【図7】横置きエンジンを含むパワープラントのトランスアクスル側を、これに隣接するフロントサイドフレームに搭載する第2マウント部材と、これに隣接する要素を拡大して示す分解斜視図である。
【図8】フロントサイドフレームに締結した第2マウント部材の縦断面図である。
【図9】前面衝突によりパワープラントが後退して第1マウント部材が破壊したときの状態を模式的に示す、図3に対応した斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
14 エンジンルーム
22 フロントサイドフレーム
22a フロントサイドフレームの両側壁の開口
32 エンジン(パワープラント)
32a エンジンの端面
34 トランスアクスル(パワープラント)
36 ミッションケース
36a ミッションケースの端面
52 エンジン側の第1マウント部材
54 ミッションケース側の第2マウント部材
58 サスペンションタワー
58a サスペンションタワーの前壁
60 ブラケット(第1マウント部材)
62 ブラケット延長部
68 前方脚
70 後方脚
72 第1外筒
78 第1ブッシュ
82 ブラケット受け部材
82a ブラケット受け部材の上方壁
82b ブラケット受け部材の下方壁
84 ブラケット受け部材の溝
90 第2逆L字状部材(支持軸)(第2マウント部材)
92 第2逆L字状部材の垂直部分
94 第2逆L字状部材の水平部分
98 第2マウント部材のブッシュ(弾性体)
100 第2外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に位置するエンジンルームと、
該エンジンルームを車体前後方向に延び且つ矩形の閉断面構造の左右のフロントサイドフレームと、
前記エンジンルーム内に収容され、出力軸を車幅方向に向けた横置きエンジンと該エンジンの出力軸に連結されたトランスアクスルとが車幅方向に並んで一体化されたパワープラントと、
該パワープラントを前記左右のフロントサイドフレームに、夫々、搭載する第1、第2のマウント部材とを有する車体前部構造において、
前記エンジンの端面を、これに隣接するフロントサイドフレームに搭載する前記第1マウント部材が前輪サスペンションタワーの前方に配設され、
前記第1マウント部材が、
前記エンジンの端面に締結され且つ車幅方向外方に延びた後に下方に延びる逆L字状の第1の支持軸と、
該逆L字状の第1の支持軸の下方に延びる部分を包囲する第1の弾性体と、
該第1弾性体を包囲する第1の外筒と、
該第1の外筒から下方に延びて下端が前記フロントサイドフレームの上面に連結される前後の脚と、
前記逆L字状の第1の支持軸から前記前輪サスペンションタワーの前壁を前方から臨む位置まで延びる延長部とを有することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記前輪サスペンションタワーの前壁に、上下の壁を備えて前記車幅方向に延び且つ前記延長部の先端部分を受け入れる溝を形成するための受け部材が取り付けられている、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記逆L字状の第1の支持軸の前記エンジンの端面から車幅方向に延びる部分が板状のブラケットで構成され、
前記延長部が前記板状のブラケットと一体に成形されたブラケット延長部で構成され、
該ブラケット延長部は、その先端部が前記前輪サスペンションタワーの前壁に接近する方向に延びている、請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記パワープラントのトランスアクスルを、これに隣接するフロントサイドフレームに搭載する前記第2マウント部材が、
前記矩形の閉断面構造の前記フロントサイドフレームの車幅方向内方側の側壁に形成された開口の形状と相補的な外形形状を有し且つ該開口を通じて前記フロントサイドフレームの中に挿入された第2の外筒と、
該外筒に収容された第2の弾性体と、
一端が前記第2の弾性体に包囲された第2の支持軸とを有し、
該第2の支持軸の他端が、前記トランスアクスルのケースに締結されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−83261(P2010−83261A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252944(P2008−252944)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】