金属薄膜の成膜方法、半導体装置及びその製造方法
【課題】単膜でCu拡散のバリア膜及びめっきシード層として機能するとともに、Cuとの密着性にも優れた金属薄膜の成膜方法を提供する。
【解決手段】金属薄膜の成膜方法は、Ti膜を成膜する工程(STEP1)、Ti膜上にCo膜を形成する工程(STEP2)、Ti膜及びCo膜を熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜を形成する工程(STEP3)を備えている。Co3Ti合金を含む金属薄膜は、優れた導電性とCu拡散バリア性を有し、Cuとの格子不整合が0.15%と非常に小さいため、Cu配線と優れた密着性が得られる。
【解決手段】金属薄膜の成膜方法は、Ti膜を成膜する工程(STEP1)、Ti膜上にCo膜を形成する工程(STEP2)、Ti膜及びCo膜を熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜を形成する工程(STEP3)を備えている。Co3Ti合金を含む金属薄膜は、優れた導電性とCu拡散バリア性を有し、Cuとの格子不整合が0.15%と非常に小さいため、Cu配線と優れた密着性が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄膜の成膜方法、この金属薄膜を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIやMEMSにおいて、Cu配線を形成するためのCuめっきのシード層として、従来はCuが用いられていたが、埋め込み性の向上を図るため、コバルト膜の利用が検討されている。また、めっきシード層としてコバルト膜を利用することにより、Ta,TaN等の材質のバリア膜との密着性を高め、Cu配線の信頼性を向上させ得ることも期待されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−328526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子の高集積化、チップサイズの小型化に伴い、配線パターンの微細化が進展している。コバルト膜は、単膜ではCuの拡散に対するバリア性が低いため、上記のとおり、めっきシード層とは別にバリア膜を形成しておく必要がある。しかし、めっきシード層とバリア膜とを別々に成膜することにより、工程数が増加するとともに、合計の膜厚が嵩み、配線パターンの微細化への障害にもなっている。
【0005】
また、めっきシード層としてコバルト膜を形成した場合、コバルト膜はCuとの濡れ性が悪いため、熱応力によるストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションが生じ、Cu配線/Coシード層の境界で剥離ボイドが発生し、断線などの不具合を生じる懸念がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、単膜でCu拡散のバリア膜及びめっきシード層として機能するとともに、Cuとの密着性にも優れた金属薄膜の成膜方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、上記成膜方法によって成膜された金属薄膜を備えた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点の金属薄膜の成膜方法は、絶縁膜が形成された基板の前記絶縁膜上に、Ti膜を堆積させる工程と、前記Ti膜上に重ねてCo膜を堆積させる工程と、前記絶縁膜上のTi膜とCo膜との積層膜を、不活性ガス雰囲気もしくは還元雰囲気で加熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜に改質する工程と、を備えている。
【0008】
本発明の金属薄膜の成膜方法は、前記Ti膜を堆積させる工程と、前記Co膜を堆積させる工程と、を交互に繰返してもよい。また、前記Ti膜と前記Co膜との膜厚比が、1:3であってもよい。さらに、前記Ti膜を堆積させる工程及び前記Co膜を堆積させる工程をCVD法又はPVD法により行うことができる。
【0009】
本発明の第2の観点の金属薄膜の成膜方法は、絶縁膜が形成された基板の前記絶縁膜に、Ti含有原料とCo含有原料を同時に供給してTiとCoとを含有する混合膜を堆積させる工程と、前記絶縁膜上の混合膜を、不活性ガス雰囲気もしくは還元雰囲気で加熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜に改質する工程と、を備えている。この場合、前記混合膜中に含まれるTiとCoとの比が、1:3であってもよい。また、前記混合膜を堆積させる工程をCVD法又はPVD法により行うことができる。
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記いずれかに記載の金属薄膜の成膜方法によって、前記絶縁膜上に、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜を形成する工程と、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜上にCu膜を堆積させる工程と、を備えている。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたCo3Ti合金を含む金属薄膜と、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜上に形成されたCu配線と、を備えている。この場合、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜は、前記Cu配線を形成するためのシード層であり、かつ前記Cu配線からのCuの拡散を抑制するCuバリア機能を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属薄膜の成膜方法によれば、基板上にCo3Ti合金を含む金属薄膜を成膜できる。このCo3Ti合金を含む金属薄膜は、めっきシード層として利用が可能であるとともに、Cu拡散のバリア性にも優れており、バリア膜として、銅配線からCuが絶縁膜中へ拡散することを効果的に抑制できる。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜はCo膜に比べてCuとの密着性に優れている。
【0013】
従って、本発明方法によって得られるCo3Ti合金を含む金属薄膜をめっきシード層として用いることにより、Cu拡散バリア膜と兼用が可能であり、めっきシード層/バリア膜の単膜化が実現し、配線パターンの微細化への対応が可能になる。また、本発明方法によって、熱応力によるストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、信頼性の高い配線構造を有する半導体装置を得ることができる。さらに、本発明方法により成膜されたCo3Ti合金を含む金属薄膜をめっきシード層及び/又はバリア膜として利用することにより、微細化への対応を可能にしつつ、半導体装置の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の金属薄膜の成膜方法に利用可能な処理システムの概略構成を示す図面である。
【図2】図1の処理システムの一部をなすプロセスモジュールの概略構成例を示す図面である。
【図3】図1の処理システムの別のプロセスモジュールの概略構成例を示す図面である。
【図4】図1の処理システムのさらに別のプロセスモジュールの概略構成例を示す図面である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る金属薄膜の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態に係る金属薄膜の成膜方法の主要な工程を説明する図面である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る金属薄膜の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態の金属薄膜の成膜方法に使用可能な成膜装置の概略構成を示す図面である。
【図9】第2の実施の形態に係る金属薄膜の成膜方法の主要な工程を説明する図面である。
【図10】本発明の成膜方法をダマシンプロセスへ適用した工程説明に供するウエハ表面の断面図である。
【図11】図10に続く工程図であり、炭素含有コバルト膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図12】図11に続く工程図であり、Cu膜を埋め込んだ状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
<成膜装置の概要>
まず、本発明の成膜方法の実施に適した成膜装置の構成について説明する。まず、図1を参照して本実施の形態に利用可能な処理システムについて説明を行う。図1は、例えば基板としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す)Wに対し、Co3Ti合金を含む薄膜の成膜処理を行なうように構成された処理システム200を示す概略構成図である。
【0017】
図1に示す処理システム200は、複数(図3では4つ)のプロセスモジュール201A〜201Dを備えたマルチチャンバ構造のクラスタツールとして構成されている。処理システム200は、主要な構成として、4つのプロセスモジュール201A,201B,201C,201Dと、これらのプロセスモジュール201A〜201Dに対してゲートバルブG1を介して接続された真空側搬送室203と、この真空側搬送室203にゲートバルブG2を介して接続された2つのロードロック室205a,205bと、これら2つのロードロック室205a,205bに対してゲートバルブG3を介して接続されたローダーユニット207とを備えている。
【0018】
(プロセスモジュール)
本実施の形態では、プロセスモジュール201AはウエハWに対してCo膜の成膜を行い、プロセスモジュール201Bは、ウエハWに対してTi膜の成膜を行い、プロセスモジュール201C及び201Dは、ウエハWに対して熱処理を行うように構成されている。なお、各プロセスモジュール201A〜201Dで行う処理の割り振りは、上記に限定されるものではない。
【0019】
(真空側搬送室)
真空引き可能に構成された真空側搬送室203には、プロセスモジュール100A〜100Dやロードロック室205a,205bに対してウエハWの受け渡しを行う第1の基板搬送装置としての搬送装置209が設けられている。この搬送装置209は、互いに対向するように配置された一対の搬送アーム部211,211を有している。各搬送アーム部211,211は同一の回転軸を中心として、屈伸及び旋回可能に構成されている。また、各搬送アーム部211,211の先端には、それぞれウエハWを載置して保持するためのフォーク213,213が設けられている。搬送装置209は、これらのフォーク213,213上にウエハWを載置した状態で、各プロセスモジュール100A〜100Dの間、あるいはプロセスモジュール100A〜100Dとロードロック室205a,205bとの間でウエハWの搬送を行う。
【0020】
(ロードロック室)
ロードロック室205a,205b内には、それぞれウエハWを載置する待機ステージ206a,206bが設けられている。ロードロック室205a,205bは、真空状態と大気開放状態を切り替えられるように構成されている。このロードロック室205a,205bの待機ステージ206a,206bを介して、真空側搬送室203と大気側搬送室219(後述)との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0021】
(ローダーユニット)
ローダーユニット207は、ウエハWの搬送を行う第2の基板搬送装置としての搬送装置217が設けられた大気側搬送室219と、この大気側搬送室219に隣接配備された3つのロードポートLPと、大気側搬送室219の他の側面に隣接配備され、ウエハWの位置測定を行なう位置測定装置としてのオリエンタ221とを有している。
【0022】
(大気側搬送室)
大気側搬送室219は、例えば窒素ガスや清浄空気などの循環設備(図示省略)を備えた平面視矩形形状をなしており、その長手方向に沿ってガイドレール223が設けられている。このガイドレール223に搬送装置217がスライド移動可能に支持されている。つまり、搬送装置217は図示しない駆動機構により、ガイドレール223に沿ってX方向へ移動可能に構成されている。この搬送装置217は、上下2段に配置された一対の搬送アーム部225,225を有している。各搬送アーム部225,225は屈伸及び旋回可能に構成されている。各搬送アーム部225,225の先端には、それぞれウエハWを載置して保持する保持部材としてのフォーク227,227が設けられている。搬送装置217は、これらのフォーク227,227上にウエハWを載置した状態で、ロードポートLPのウエハカセットCRと、ロードロック室205a,205bと、オリエンタ221との間でウエハWの搬送を行う。
【0023】
(ロードポート)
ロードポートLPは、ウエハカセットCRを載置できるようになっている。ウエハカセットCRは、複数枚のウエハWを同じ間隔で多段に載置して収容できるように構成されている。オリエンタ221は、図示しない駆動モータによって回転される回転板233と、この回転板233の外周位置に設けられ、ウエハWの周縁部を検出するための光学センサ237とを備えている。
【0024】
(統括制御部)
処理システム200の各構成部は、統括制御部250に接続されて制御される構成となっている。統括制御部250は、例えばロードロック室205a,205b、搬送装置209、搬送装置217等を制御するほか、各プロセスモジュール201A〜201Dを個別に制御する制御部を統括して制御する。
【0025】
以上のような構成の処理システム200では、搬送装置217により、ウエハカセットCRからウエハWを1枚取り出し、オリエンタ221で位置合わせを行った後、ロードロック室205a,205bのいずれかに搬入し、待機ステージ206a(又は206b)に移載する。そして、搬送装置209を用い、ロードロック室205a(又は205a)内のウエハWを、プロセスモジュール201A〜201Dのいずれかへ搬送する。成膜処理後は、前記と逆の手順で、ウエハWをウエハカセットCRへ戻すことにより、1枚のウエハWに対する処理が終了する。
【0026】
<プロセスモジュール201A>
次に、プロセスモジュール201Aについて説明する。図2はウエハWに対してCo膜の成膜を行うプロセスモジュール201Aの概略構成例を示している。このプロセスモジュール201Aは、CVD装置として構成されている。プロセスモジュール201Aは、主要な構成として、真空引き可能な処理容器1と、処理容器1内に設けられた、ウエハWを載置するステージ5と、このステージ5に載置されたウエハWを所定の温度に加熱するヒーター7と、処理容器1内にガスを導入するシャワーヘッド11と、コバルト前駆体を保持する原料容器21と、原料容器21内のコバルト前駆体を温度調節する温度調節装置23と、コバルト前駆体を処理容器1内に導入するためのキャリアガスを供給するガス供給部31と、処理容器1内を減圧排気する排気装置35と、を備えている。このプロセスモジュール201Aは、ウエハW上にコバルト膜を堆積させる成膜処理を行うことができる。
【0027】
(処理容器)
プロセスモジュール201Aは、気密に構成された略円筒状の処理容器1を有している。処理容器1は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムなどの材質で形成されている。処理容器1は、天板1a、側壁1b及び底壁1cを有している。
【0028】
処理容器1の側壁1bには、この処理容器1内に対してウエハWを搬入、搬出するための開口1dが設けられており、さらに、開口1dを開閉するためのゲートバルブG1が設けられている。なお、処理容器1を構成する各部材の接合部分には、該接合部分の気密性を確保するために、シール部材としてのOリング(図示省略)が配備されている。
【0029】
(ステージ)
処理容器1の中にはウエハWを水平に支持する載置台であるステージ5が配備されている。ステージ5は、円筒状の支持部材5aにより支持されている。図示は省略するが、ステージ5には、ウエハWを支持して昇降させるための複数のリフトピンがステージ5の基板載置面に対して突没可能に設けられている。これらのリフトピンは任意の昇降機構により上下に変位し、上昇位置で搬送装置(図示省略)との間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。
【0030】
ステージ5には、ウエハWを加熱する加熱手段としてのヒーター7が埋設されている。ヒーター7は、電力供給部8Aから給電されることによりウエハWを所定の温度に加熱する抵抗加熱ヒーターである。また、ステージ5には、温度計測手段としての熱電対9aが配備されており、ステージ5の温度をリアルタイムで計測できるようになっている。なお、ウエハWの加熱温度や処理温度は、特に断りのない限り、ステージ5の計測温度を意味する。ウエハWを加熱するための加熱手段としては、抵抗加熱ヒーターに限らず、例えばランプ加熱ヒーターでもよい。
【0031】
(シャワーヘッド)
処理容器1の天板1aには、成膜原料ガス、キャリアガス等のガスを処理容器内に導入するシャワーヘッド11が設けられている。このシャワーヘッド11は、内部にガス拡散空間11aが設けられている。シャワーヘッド11の下面には、多数のガス吐出孔13が形成されている。ガス拡散空間11aはガス吐出孔13に連通している。シャワーヘッド11の中央部には、ガス拡散空間11aに連通するガス供給配管15aが接続されている。
【0032】
(原料容器)
原料容器21は、コバルト前駆体として、固体原料であるジコバルトオクタカルボニル[Co2(CO)8]を保持している。原料容器21は、例えばジャケット式熱交換器などの温度調節装置23を有している。温度調節装置23は、電力供給部8Aに接続されており、原料容器21の内部に収容されたCo2(CO)8を例えば常温(20℃)〜45℃の範囲内の温度に保持することにより気化させる。また、原料容器21内には、内部の温度をリアルタイムで計測するための熱電対9bが配備されている。なお、コバルト前駆体としては、Co2(CO)8以外に、例えばCVD法においてコバルト前駆体として使用可能なコバルト化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
【0033】
原料容器21には、ガス供給配管15aと、ガス供給配管15bとが接続されている。ガス供給配管15aは、上記のとおりシャワーヘッド11のガス拡散空間11aに接続されている。ガス供給配管15aは、例えばジャケット式熱交換器などの温度調節装置25を有している。また、ガス供給配管15aには、熱電対9cが配備されており、管内の温度をリアルタイムで計測できるようになっている。温度調節装置25は、電力供給部8Aと電気的に接続されており、熱電対9cによる計測温度情報に基づき、ガス供給配管15a内を通過するCo2(CO)8を気化温度以上かつ分解開始温度(約45℃)未満の所定の温度に調節しながらシャワーヘッド11へ供給する。また、ガス供給配管15aには、バルブ17a及び開度調節バルブ17bが設けられている。
【0034】
(ガス供給源)
ガス供給部31は、一酸化炭素(CO)ガスを供給するCOガス供給源31aと、例えばAr、窒素などの不活性ガスを供給する不活性ガス供給源31bとを備えている。これらの一酸化炭素ガス及び不活性ガスは、原料容器21内で気化させた固体原料のCo2(CO)8を処理容器1内に運び込むためのキャリアガスとして用いられる。COガスは、気化したCo2(CO)8の分解を抑制する作用を有しているため、キャリアガスの一部としてCOを用いることが好ましい。Co2(CO)8は分解されることによりCOを生成するが、原料容器21内にCOを供給してCO濃度を高めておくことによって、原料容器21内でのCo2(CO)8の分解を抑制することができる。キャリアガスの全部をCOガスにすることも可能であり、その場合は、不活性ガスは使用しなくてもよい。なお、図示は省略するが、ガス供給部31は、COガス供給源31a及び不活性ガス供給源31bのほかに、処理容器1内をクリーニングするためのクリーニングガスの供給源や、処理容器1内をパージするためのパージガスの供給源等を有していてもよい。
【0035】
COガス供給源31aには、ガス供給配管15cが接続されている。ガス供給配管15cには、流量調整のためのMFC(マスフローコントローラ)19aと、その前後に配備されたバルブ17c,17dが設けられている。また、不活性ガス供給源31bには、ガス供給配管15dが接続されている。ガス供給配管15dには、流量調整のためのMFC(マスフローコントローラ)19bと、その前後に配備されたバルブ17e,17fが設けられている。そして、ガス供給配管15c,15dは、途中で合流してガス供給配管15bとなり、原料容器21に接続されている。ガス供給配管15bには、バルブ17gが設けられている。なお、ガス供給配管15bからは、途中でガス供給配管15eが分岐している。このガス供給配管15eは、原料容器21を介さず、ガス供給配管15bから直接ガス供給配管15aに接続するバイパスラインである。ガス供給配管15eは、不活性ガス供給源31bの不活性ガスをパージガスとして処理容器1内に導入する場合などに用いる。ガス供給配管15eには、バルブ17hが設けられている。
【0036】
プロセスモジュール201Aでは、COガス供給源31aからのCOガス及び/又は不活性ガス供給源31bからの不活性ガスを、ガス供給配管15c,15d,15bを介して原料容器21内に供給する。そして、COガス及び/又は不活性ガスをキャリアガスとして、温度調節装置23によって温度調節されて原料容器21内で気化したCo2(CO)8を、開度調節バルブ17bにより流量制御しながら、ガス供給配管15aを介してシャワーヘッド11のガス拡散空間11aへ供給する。ガス供給配管15a内を通過するCo2(CO)8は、温度調節装置25によって気化温度以上かつ分解開始温度未満の所定の温度に調節され、シャワーヘッド11へ供給される。そして、ガス吐出孔13から処理容器1内のステージ5上に配置されたウエハWへ向けて、原料であるCo2(CO)8を放出することができる。このように、プロセスモジュール201Aでは、分解しやすいCo2(CO)8を厳密に温度制御しながら処理容器1内に導入する構成としている。
【0037】
処理容器1の底壁1cには、排気口1eが形成されている。この排気口1eには排気管33が接続されており、この排気管33には、排気装置35が接続されている。排気装置35は、例えば図示しない圧力調整弁や真空ポンプなどを備えており、排気量を調節しながら処理容器1内の排気を行って処理容器1内を真空引きできるように構成されている。
【0038】
(制御系統)
次に、プロセスモジュール201Aにおいて、各種のプロセスを行う場合の制御系統について説明する。プロセスモジュール201Aは、上記電力供給部8Aの出力制御を行う温度制御部8Bを備えている。電力供給部8A、熱電対9a,9b,9c、及び温度調節装置23,25は、それぞれ温度制御部8Bと信号の授受が可能に接続されている。温度制御部8Bは、熱電対9a,9b,9cの計測温度情報を元に、フィードバック制御によって電力供給部8Aへ制御信号を送り、ヒーター7、温度調節装置23,25への出力を調節する。
【0039】
また、プロセスモジュール201Aを構成する各エンドデバイス(例えばMFC19a,19b、排気装置35など)や温度制御部8Bは、制御部37に接続されて制御される構成となっている。制御部37は、図示は省略するが、例えばCPUを備えたコンピュータであるコントローラと、このコントローラに接続されたユーザーインターフェースおよび記憶部を備えている。ユーザーインターフェースは、工程管理者がプロセスモジュール201Aを管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、プロセスモジュール201Aの稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。記憶部には、プロセスモジュール201Aで実行される各種処理をコントローラの制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェースからの指示等にて任意の制御プログラムやレシピを記憶部から呼び出してコントローラに実行させることで、コントローラの制御下で、プロセスモジュール201Aの処理容器1内で所望の処理が行われる。なお、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された状態のものを記憶部にインストールすることによって利用できる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はないが、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVDなどを使用できる。また、前記レシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0040】
以上のような構成のプロセスモジュール201Aでは、制御部37の制御に基づき、CVD法によりコバルト膜の成膜処理が行われる。
【0041】
<プロセスモジュール201B>
次に、プロセスモジュール201Bについて説明する。図3はTi膜の成膜を行うプロセスモジュール201Bの概略断面図である。
【0042】
(処理容器)
このプロセスモジュール201Bは、気密に構成された略円筒状の処理容器41を有しており、その中には被処理体であるウエハWを水平に支持するためのステージ42が円筒状の支持部材43により支持された状態で配置されている。処理容器41の側部には、真空側搬送室203との間でウエハWの受け渡しを行なうためのゲートバルブG1が設けられ、このゲートバルブG1を開にした状態でウエハWが隣接する真空側搬送室203との間で搬送されるようになっている。
【0043】
(ステージ)
ステージ42は、例えばAlN等のセラミックスで構成されている。ステージ42の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング44が設けられている。このガイドリング44はプラズマのフォーカシング効果も奏する。また、ステージ42にはモリブデンやタングステン線等からなる抵抗加熱型のヒーター45が埋め込まれており、このヒーター45はヒーター電源46から給電されることにより被処理体であるウエハWを所定の温度に加熱する。なお、ステージ42に対するウエハWの受け渡しは、その中に突没自在に設けられた3本のリフトピン(図示せず)でウエハWを持ち上げた状態で行われる。
【0044】
(シャワーヘッド)
処理容器41の天壁41aには、絶縁部材49を介してシャワーヘッド50が設けられている。このシャワーヘッド50は、上段ブロック体50a、中段ブロック体50b、下段ブロック体50cで構成されている。そして、下段ブロック体50cにはガスを吐出する吐出孔57と58とが交互に形成されている。上段ブロック体50aの上面には、第1のガス導入口51と、第2のガス導入口52とが形成されている。
【0045】
上段ブロック体50aの中では、第1のガス導入口51から多数のガス通路53が分岐している。中段ブロック体50bにはガス通路55が形成されており、上記ガス通路53がこれらガス通路55に連通している。さらにこのガス通路55が下段ブロック体50cの吐出孔57に連通している。また、上段ブロック体50aの中では、第2のガス導入口52から多数のガス通路54が分岐している。中段ブロック体50bにはガス通路56が形成されており、上記ガス通路54がこれらガス通路56に連通している。さらにこのガス通路56が下段ブロック体50cの吐出孔58に連通している。そして、上記第1および第2のガス導入口51,52は、ガス供給部60のガスラインに接続されている。
【0046】
(ガス供給部)
ガス供給部60は、Ti含有ガスであるTiCl4ガスを供給するTiCl4ガス供給源61、プラズマガスであるArガスを供給するArガス供給源62、還元性ガスであるH2ガスを供給するH2ガス供給源63、NH3ガスを供給するNH3ガス供給源64を有している。TiCl4ガス供給源61にはガスライン65が、Arガス供給源62にはガスライン66が、H2ガス供給源63にはガスライン67が、NH3ガス供給源64にはガスライン68がそれぞれ接続されている。また、各ガスラインにはバルブ69、バルブ77およびマスフローコントローラ70が設けられている。また、TiCl4ガス供給源61から延びるガスライン65には、排気装置76と接続するガスライン80がバルブ78を介して接続されている。
【0047】
第1のガス導入口51にはTiCl4ガス供給源61から延びるガスライン65が接続されており、このガスライン65にはArガス供給源62から延びるガスライン66が接続されている。また、第2のガス導入口52にはH2ガス供給源63から延びるガスライン67およびNH3ガス供給源64から延びるガスライン68が接続されている。したがって、プロセス時には、TiCl4ガス供給源61からのTiCl4ガスがArガスをキャリアガスとしてガスライン65を介してシャワーヘッド50の第1のガス導入口51からシャワーヘッド50内に至り、ガス通路53,55を経て吐出孔57から処理容器41内へ吐出される。一方、H2ガス供給源63からのH2ガスがガスライン67を介してシャワーヘッド50の第2のガス導入口52からシャワーヘッド50内に至り、ガス通路54,56を経て吐出孔58から処理容器41内へ吐出される。すなわち、シャワーヘッド50は、TiCl4ガスとH2ガスとが全く独立して処理容器41内に供給されるポストミックスタイプとなっており、これらは吐出後に混合され反応が生じる。なお、各ガスラインのバルブやマスフローコントローラは図示しないコントローラにより制御される。
【0048】
(高周波電源)
シャワーヘッド50には、整合器72を介して高周波電源73が接続されており、この高周波電源73からシャワーヘッド50に高周波電力が供給されることにより、シャワーヘッド50を介して処理容器41内に供給されたガスがプラズマ化され、これにより成膜反応が進行される。高周波電力が供給される電極として機能するシャワーヘッド50の対向電極として、ステージ42の上部に、例えばモリブデン線等をメッシュ状に編み込んでなる電極74が埋設されている。
【0049】
(排気装置)
処理容器41の底壁41bには、排気管75が接続されており、この排気管75には真空ポンプを含む排気装置76が接続されている。そしてこの排気装置76を作動させることにより処理容器41内を所定の真空度まで減圧することが可能となっている。
【0050】
(制御部)
プロセスモジュール201Bを構成する各エンドデバイス(例えばヒーター電源46、MFC70、排気装置76など)は、制御部79に接続されて制御される構成となっている。制御部79は、図示は省略するが、例えばCPUを備えたコンピュータであるコントローラと、このコントローラに接続されたユーザーインターフェースおよび記憶部を備えている。制御部79の構成及び機能は、基本的にプロセスモジュール201Aの制御部37と同様である。そして、プロセスモジュール201Bでは、制御部79の制御に基づき、プラズマCVD法によりTi膜の成膜処理が行われる。
【0051】
<プロセスモジュール201C又は201D>
図4は、熱処理装置であるプロセスモジュール201C,201Dの概略構成を示す断面図である。このプロセスモジュール201C,201Dは、例えばウエハWに形成した薄膜等を、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気下で800〜1000℃程度の高温領域で、短時間で熱処理可能がRTP(Rapid Thermal Process)装置として用いることができる。
【0052】
(処理容器)
図4において、符号81は、円筒状の処理容器であり、この処理容器81の下方には下部発熱ユニット82が着脱可能に設けられ、また、処理容器81の上方には、下部発熱ユニット82と対向するように上部発熱ユニット84が着脱可能に設けられている。処理容器81の側壁には、ウエハWを搬入出するための開口81aが設けられ、該開口81aには、ゲートバルブG1が設けられている。
【0053】
(発熱ユニット)
下部発熱ユニット82は、水冷ジャケット83と、その上面に複数配列された加熱手段としてのタングステンランプ86を有している。同様に、上部発熱ユニット84は、水冷ジャケット85と、その下面に複数配列された加熱手段としてのタングステンランプ86とを有している。なお、ランプとしては、タングステンランプ86に限らず、例えば、ハロゲンランプ、Xeランプ、水銀ランプ等でもよい。このように、処理容器81内において互いに対向して配備された各タングステンランプ86は、図示しない電源に接続されており、そこからの電力供給量を制御部97により調節することで、発熱量を制御できるようになっている。
【0054】
(支持部)
下部発熱ユニット82と上部発熱ユニット84との間には、ウエハWを支持するための支持部87が設けられている。この支持部87は、ウエハWを処理容器81内の処理空間に保持した状態で支持するためのウエハ支持ピン87aと、処理中にウエハWの温度を計測するためのホットライナー88を支持するライナー設置部87bを有している。また、支持部87は、図示しない回転機構と連結されており、支持部87を全体として鉛直軸廻りに回転させる。これにより、処理中にウエハWが所定速度で回転し、熱処理の均一化が図られる。
【0055】
(パイロメーター)
処理容器81の下部には、パイロメーター91が配置されており、熱処理中にホットライナー88からの熱線を、ポート91aおよび光ファイバー91bを介してパイロメーター91で計測することにより、間接的にウエハWの温度を把握できるようになっている。なお、直接ウエハWの温度を計測するようにしてもよい。
【0056】
また、ホットライナー88の下方には、下部発熱ユニット82のタングステンランプ86との間に石英部材89が介在配備されており、図示のように前記ポート91aは、この石英部材89に設けられている。さらに、ウエハWの上方にも、上部発熱ユニット84のタングステンランプ86との間に石英部材90aが介在配備されている。また、ウエハWを囲繞するように、処理容器81の内周面にも石英部材90bが配設されている。なお、ウエハWを支持して昇降させるためのリフターピン(図示せず)が、ホットライナー88を貫通して設けられており、ウエハWの搬入出に使用される。
【0057】
下部発熱ユニット82と処理容器81との間、および上部発熱ユニット84と処理容器81との間には、それぞれシール部材(図示せず)が介在されており、処理容器81内は気密状態となる。
【0058】
(ガス供給部)
処理容器81の側部には、ガス導入管92に接続されたガス供給部93が配備されており、図示しない流量制御装置によって、処理容器81の処理空間内に、例えばN2ガス等の不活性ガスや、H2等の還元性ガスを導入できるようになっている。
【0059】
(排気装置)
処理容器81の下部には、排気管94が設けられており、図示しない真空ポンプ等を備えた排気装置95により、処理容器81内を減圧できるように構成されている。
【0060】
(制御部)
プロセスモジュール201C,201Dを構成する各エンドデバイス(例えば下部発熱ユニット82、上部発熱ユニット84、ガス供給部93、排気装置95など)は、制御部97に接続されて制御される構成となっている。制御部97は、図示は省略するが、例えばCPUを備えたコンピュータであるコントローラと、このコントローラに接続されたユーザーインターフェースおよび記憶部を備えている。制御部97の構成及び機能は、基本的にプロセスモジュール201Aの制御部37と同様である。そして、プロセスモジュール201C,201Dでは、制御部97の制御に基づき、Ti膜及びCo膜に対する熱処理が行われる。
【0061】
<成膜方法>
次に、処理システム200を用いて行われる、Co3Ti合金を含む薄膜の成膜方法の具体的な内容について説明する。ここでは、チタン前駆体としてTiCl4、コバルト前駆体としてコバルトカルボニルCo2(CO)8を用いる場合を例に挙げる。なお、他の成膜原料を用いる場合も、以下に説明する手順・条件に準じて実施できる。
【0062】
図5は、本発明の第1の実施の形態の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。図6は、本実施の形態の成膜方法の主要な工程を説明するためのウエハ表面の部分断面図である。この成膜方法は、例えば、プロセスモジュール201B内にウエハWを搬入し、Ti膜を成膜する工程(STEP1)と、プロセスモジュール201A内にTi膜が形成されたウエハWを搬入し、Ti膜上にCo膜を形成する工程(STEP2)、プロセスモジュール201C又は201DのいずれかにウエハWを搬入し、Ti膜及びCo膜を熱処理してCo3Ti合金を含む薄膜を形成する工程(STEP3)と、を含むことができる。
【0063】
(STEP1)
STEP1では、プラズマCVD法によって、Ti膜の成膜を行う。まず、プロセスモジュール201Bの処理容器41内を所定温度及び圧力に調節して、処理容器41内にTi膜のプリコート処理を行う。その後、NH3ガスを処理容器41内に導入して、プラズマを生成してプリコートTi膜を窒化して安定化させる。次いで、ゲートバルブG1を開いて、真空側搬送室203の搬送装置209により、プロセスモジュール201Bの処理容器41内にウエハWを搬入してステージ42上に載置する。ここで、図6に示したように、ウエハW上には、下地膜301と、その上に積層された絶縁膜303と、が形成されている。図示は省略するが、絶縁膜303には、所定の凹凸パターンや開口部(トレンチなどの凹部や貫通孔などを意味する)を有していてもよい。また、ウエハW上には、他に絶縁膜、半導体膜、導体膜等が形成されていてもよい。絶縁膜303は、例えば多層配線構造の層間絶縁膜であり、開口部は、配線溝やビアホールとなる部分である。絶縁膜303としては、例えばSiO2、SiNのほか、SiCOH、SiOF、CFq(qは正の数を意味する)、BSG、HSQ、多孔質シリカ、SiOC、MSQ、ポーラスMSQ、ポーラスSiCOH等の低誘電率膜を挙げることができる。
【0064】
次に、排気装置76により処理容器41内を排気しつつ、ヒーター45によりウエハWを加熱し、H2ガスを例えば100〜5000mL/min(sccm)、Arガスを例えば100〜2000mL/min(sccm)の流量で処理容器41内に導入する。次に、ArガスとH2ガスを維持したまま、処理容器41内の圧力を例えば10〜1000Paに調節し、さらに、TiCl4ガスを例えば1〜30mL/min(sccm)の流量で処理容器41内に導入してプリフローを行う。そして、ヒーター45によるウエハWの加熱温度(ステージ温度)を例えば500〜750℃程度に維持して、高周波電源73からシャワーヘッド50に例えば300kHz〜1MHzの周波数で300〜1000Wの高周波電力を供給し、処理容器41内にプラズマを生成し、プラズマ化したガス中でTi膜311を成膜する。
【0065】
(STEP2)
STEP2では、熱CVD法によって、Ti膜311上にCo膜313の成膜を行う。真空側搬送室203の搬送装置209により、Ti膜311が形成されたウエハWをプロセスモジュール201Bから、プロセスモジュール201Aのステージ5上に移載する。具体的には、ゲートバルブG1を開放した状態で、開口1dからウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ5の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ5に載置する。そして、処理容器1内の圧力及びウエハWの温度を調節する。具体的には、ウエハWの温度を、好ましくは100℃以上300℃以下の範囲内とする。ゲートバルブG1を閉じ、排気装置35を作動させて処理容器1内を所定圧力の真空にする。このときの圧力は、例えば1.3Pa〜1333Paの範囲内が好ましい。
【0066】
そして、絶縁膜303及びその上のTi膜311の上に積層して、CVD法によりCo膜313を形成する。この工程では、原料容器21を温度調節装置23によって例えば室温〜45℃に温度制御し、成膜原料のCo2(CO)8を気化させる。また、バルブ17hを閉じ、バルブ17a,17gを開放した状態で、さらにバルブ17c,17d及び/又はバルブ17e,17fを開放する。そして、マスフローコントローラ19a,19bによって流量を制御しながら、キャリアガスとして、COガス供給源31aからのCOガス及び/又は不活性ガス供給源31bからの不活性ガスをガス供給配管15c,15d及び15bを介して、原料容器21へ導入する。この場合、COガス及び/又は不活性ガスの総流量として、例えば300〜700mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。原料容器21からは、気化したCo2(CO)8をキャリアガスによってガス供給配管15aを介して処理容器1へ向けて供給する。この場合、Co2(CO)8とキャリアガスの混合ガスの流量は、例えば100〜1000mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。この際、原料容器21、配管15aの温度を、温度調節装置23,25によってCo2(CO)8の気化温度以上かつ分解開始温度未満の温度に制御する。そして、Co2(CO)8とキャリアガスの混合ガスは、シャワーヘッド11のガス吐出孔13から処理容器1内の反応空間に供給される。このようにして、処理容器1内の反応空間でCo2(CO)8が熱分解され、CVD法によって、図6に示したように、ウエハW表面のTi膜311の上にCo膜313を成膜することができる。
【0067】
所定の膜厚になるまで、ウエハW表面のTi膜311の上に、Co膜313を堆積させた後、原料供給を停止し、処理容器1内を真空引きする。すなわち、バルブ17a,17g,17c,17d,17e,17fを閉じ、COガス供給源31aからのCOガス、不活性ガス供給源31bからの不活性ガスの供給を停止し、排気装置35により処理容器1内を真空引きする。これにより、処理容器1内に残留した未反応の成膜原料のCo2(CO)8やCOを処理容器1の外へ排出する。
【0068】
(STEP3)
STEP3では、Ti膜311とCo膜313との積層膜を熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜315に改質する。まず、真空側搬送室203の搬送装置209により、プロセスモジュール201C又は201DのいずれかにTi膜311及びCo膜313が積層形成されたウエハWを搬入し、処理容器81内のウエハ支持部87にウエハWを載置する。次いで、図示しない電源から所定の電力を下部発熱ユニット82および上部発熱ユニット84の各タングステンランプ86の発熱体(図示省略)に供給する。各発熱体が発熱し、発生した熱線が石英部材89および石英部材90aを通過してウエハWに至り、予め定められたレシピに基づく条件(昇温レート、加熱温度、ガス流量など)でウエハWが上下から急速に加熱される。ウエハWの加熱温度は、Co3Ti合金を効率良く生成させるため、パイロメーター91の計測温度として、例えば300℃以上1000℃以下の範囲内とすることが好ましく、600℃以上900℃以下の範囲内に設定することがより好ましい。ウエハWを加熱しながら、ガス供給部93から所定の流量でN2ガス等の不活性ガスやH2ガス等の還元性ガスを導入するとともに、排気装置95を作動させて排気管94から排気を行う。還元性ガスの導入により、Ti膜311、Co膜313及びCo3Ti合金の酸化を抑制できるので好ましい。このとき、処理容器81内の圧力は、例えば133.3Pa〜大気圧付近で行うことができる。また、熱処理の時間は、例えば5〜60分とすることが好ましい。
【0069】
熱処理の間は、図示しない回転機構により支持部87を全体として鉛直軸廻り、つまり水平方向に例えば50〜100rpmの回転速度で回転させ、ウエハWを回転させる。これにより、ウエハWへの供給熱量の均一性が確保される。また、熱処理中にはホットライナー88の温度をパイロメーター91により計測し、間接的にウエハWの温度を計測する。パイロメーター91により計測された温度データは、プロセスコントローラにフィードバックされ、レシピにおける設定温度との間に差がある場合には、タングステンランプ86への電力供給が調節される。
【0070】
このようにして、ウエハW上のTi膜311及びCo膜313が加熱され、Co3Ti合金が生成し、図6に示したようにCo3Ti合金を含む金属薄膜315が形成される。熱処理が終了した後は、下部発熱ユニット82および上部発熱ユニット84のタングステンランプ86をオフ(切)にするとともに、処理容器81内に、図示しないパージポートより窒素等のパージガスを流し込みつつ排気管94から排気してウエハWを冷却した後、処理容器81から搬出する。
【0071】
上記STEP1〜STEP3の手順でCo3Ti合金を効率よく生成させるために、STEP2において成膜されるCo膜313の膜厚を、STEP1において成膜されるTi膜311の膜厚に対して3倍になるように形成することが好ましい。すなわち、Ti膜311の膜厚:Co膜313の膜厚が1:3となるようにすることが好ましい。例えば、STEP2では、Ti膜311を1〜3nm(好ましくは2nm)、STEP3では、Co膜313を3〜9nm(好ましくは6nm)の膜厚でそれぞれ形成できる。また、図5に示したように、上記STEP1とSTEP2の工程は、複数回繰り返し実施することができる。
【0072】
<Co3Ti合金を含む金属薄膜>
以上のように、STEP1〜STEP3の工程を経て形成されるCo3Ti合金を含む金属薄膜315は、Co3Ti合金を含有しているため、導電性に優れ、例えば絶縁膜303の開口部(図示せず)にCu配線やCuプラグを形成するために電解めっきを行う際のめっきシード層として機能する。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、絶縁膜303の開口部(図示せず)にCuが充填された後には、絶縁膜303中へのCuの拡散を抑制するバリア膜として機能する。すなわち、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、単膜でめっきシード層としての機能とCu拡散バリア膜としての機能を有する。従って、めっきシード層及びCu拡散バリア膜を別々に設ける場合に比べ、工程数の削減と、単膜化による微細化への対応が可能になる。なお、Co3Ti合金を含む金属薄膜315をめっきシード層として用いる場合、別途異なる材質でバリア膜を形成してもよいし、Co3Ti合金を含む金属薄膜315をバリア膜として用いる場合、別途異なる材質でめっきシード層を形成してもよい。
【0073】
さらに、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、Co3Ti合金とCuとの格子不整合が0.15%と小さいため、Co3Ti合金を含む金属薄膜315の上にCu配線を形成した場合に、Cu配線に対して非常に優れた密着性が得られる。従って、Co3Ti合金を含む金属薄膜315上にCu配線を形成することで、熱応力によるストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、信頼性の高い配線構造を有する半導体装置を得ることができる。このように、Co3Ti合金を含む金属薄膜315をめっきシード層及び/又はバリア膜として利用することにより、微細化への対応を可能にしつつ、半導体装置の信頼性を確保できる。
【0074】
Co3Ti合金を含む金属薄膜315の膜厚は、めっきシード層としての機能を維持しながらCu拡散バリア機能を発揮させる観点から、例えば2〜10nmの範囲内とすることが好ましく、さらに配線パターンの微細化を図る観点から、5nm以下(例えば2〜5nm)とすることがより好ましい。
【0075】
また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、優れた導電性を有しているため、例えば開口部(図示せず)の底にCu膜等の下層配線の金属膜(図示せず)が露出している場合には、Co3Ti合金を含む金属薄膜315が介在しても該金属膜と開口部内に埋め込まれる配線との導通を確保できる。
【0076】
なお、本実施の形態の成膜方法は、上記STEP1〜STEP3の工程以外に、任意工程として、例えば絶縁膜303の表面を改質する工程等を設けてもよい。また、本実施の形態の成膜方法は、図1に示したような処理システムを使用せずに、個別のTi膜成膜装置、Co膜成膜装置及び熱処理装置を使用して実施することもできるし、一つの成膜装置の処理容器内で、STEP1〜STEP3の処理を順次実施することもできる。
【0077】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態の成膜方法について説明する。
図7は、本実施の形態の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。図8は、本実施の形態の成膜方法に使用可能な成膜装置201Eを示す概略断面図である。図9は、本実施の形態の成膜方法の主要な工程を説明する参照図である。
【0078】
<成膜装置の概要>
図8に示す成膜装置201Eは、以下の点を除き、図2に示した成膜装置(プロセスモジュール201A)と同様の構成であるため、ここでは相違点を中心に説明し、図2の成膜装置(プロセスモジュール201A)と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。成膜装置201Eは、シャワーヘッド12を有し、このシャワーヘッド12にガス供給配管15aとガス供給配管15fがそれぞれ接続されている。成膜原料ガス、キャリアガス等のガスを処理容器1内に導入するシャワーヘッド12は、処理容器1の天板1aに設けられている。このシャワーヘッド12には、内部にガス拡散空間12a,12bが設けられている。シャワーヘッド12の下面には、多数のガス吐出孔13a,13bが形成されている。ガス拡散空間12aはガス吐出孔13aに、ガス拡散空間12bはガス吐出孔13bに、それぞれ連通している。また、シャワーヘッド12の中央部には、ガス拡散空間12aに連通するガス供給配管15a、ガス拡散空間12bに連通するガス供給配管15fがそれぞれ接続されている。ガス供給配管15fは、ガス供給部31AのTiCl4ガス供給源31cに接続されている。ガス供給配管15fには、バルブ17i及び17j及びマスフローコントローラ(MFC)19cが設けられている。なお、ガス供給部31Aは、図8に示したCOガス供給源31a、不活性ガス供給源31b、TiCl4ガス供給源31cに加え、例えばH2等の還元性ガスの供給源やクリーニングガスの供給源を備えていてもよい。
【0079】
<成膜方法>
本実施の形態の成膜方法は、例えば、成膜装置201Eの処理容器1内に、ウエハWを搬入し、ステージ5上に配置する工程(STEP11)と、処理容器1内の圧力及びウエハWの温度を調節する工程(STEP12)と、処理容器1内にTi原料とCo原料を同時に供給して、CVD法によりウエハWの表面にTiとCoを含む混合膜を堆積させる工程(STEP13)と、処理容器1内を不活性ガスによりパージする工程(STEP14)と、TiとCoを含む混合膜を熱処理してCo3Ti合金を含む薄膜を形成する工程(STEP15)と、処理容器1内からウエハWを搬出する工程(STEP16)と、を含むことができる。このように、本実施の形態では、成膜装置201Eの処理容器1内で、TiとCoを含む混合膜の堆積と、該混合膜の熱処理を行うことができる。
【0080】
(STEP11)
STEP11では、成膜装置201Eの処理容器1内に、基板として、例えば絶縁膜が設けられたウエハWを配置する。具体的には、まず、ゲートバルブG1を開放した状態で、開口1dからウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ5の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ5に載置する。ここで、図9に示したように、ウエハW上には、下地膜301と、その上に積層された絶縁膜303と、が形成されている。絶縁膜303は、第1の実施の形態と同様である。
【0081】
(STEP12)
STEP12では、処理容器1内の圧力及びウエハWの温度を調節する。具体的には、ゲートバルブG1を閉じ、排気装置35を作動させて処理容器1内を所定圧力の真空にする。また、ヒーター7によりウエハWを所定温度まで加熱する。
【0082】
(STEP13)
STEP13は、成膜工程であり、処理容器1内にTiCl4及びCo2(CO)8を供給して、CVD法によりウエハWの表面に混合膜314を堆積させる。この工程では、バルブ17i,17jを開放し、マスフローコントローラ19cによって流量を制御しながら、TiCl4ガス供給源31cからTiCl4ガスを、ガス供給配管15fを介してシャワーヘッド12へ導入する。そして、TiCl4ガスは、シャワーヘッド12のガス拡散空間12b及びガス吐出孔13bを介して処理容器1内の反応空間に供給される。この場合、TiCl4ガスの流量は、最終的に形成される金属薄膜中にCo3Ti合金を効率よく生成させる観点から、例えば30〜100mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。
【0083】
また、TiCl4ガスの供給と同時に、処理容器1内にCo2(CO)8ガスを供給する。すなわち、主原料容器21を温度調節装置23によって温度制御し、成膜原料のCo2(CO)8を気化させる。また、バルブ17hを閉じ、バルブ17a,17gを開放した状態で、さらにバルブ17c,17d及び/又はバルブ17e,17fを開放する。そして、マスフローコントローラ19a,19bによって流量を制御しながら、キャリアガスとして、COガス供給源31aからのCOガス及び/又は不活性ガス供給源31bからの不活性ガスを、ガス供給配管15c,15d及び15bを介して、原料容器21へ導入する。この場合、COガス及び/又は不活性ガスの総流量として、例えば300〜700mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。原料容器21からは、気化したCo2(CO)8をキャリアガスによってガス供給配管15aを介して処理容器1へ向けて供給する。この場合、Co2(CO)8とキャリアガスの混合ガスの流量は、最終的に形成される金属薄膜中にCo3Ti合金を効率よく生成させる観点から、例えば400〜1000mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。この際、原料容器21、配管15aの温度を、温度調節装置23,25によってCo2(CO)8の気化温度以上かつ分解開始温度未満の温度に制御する。そして、Co2(CO)8とキャリアガスの混合ガスは、シャワーヘッド12のガス拡散空間12a及びガス吐出孔13aを介して処理容器1内の反応空間に供給される。
【0084】
このようにして、処理容器1内の反応空間で、Co2(CO)8及びTiCl4ガスが熱分解され、CVD法によってウエハW表面の絶縁膜303の上に、混合膜314を成膜することができる。
【0085】
(STEP14)
次に、STEP14では、処理容器1内にパージガスを導入してパージ処理をする。パージガスとしては、不活性ガス供給源31bのN2ガス、Arガスなどを用いることができる。パージガスガスは、不活性ガス供給源31bから、ガス供給配管15d、バイパスラインであるガス供給配管15e、ガス供給配管15a、及びシャワーヘッド12を介して、処理容器1内に導入することができる。パージ工程では、バルブ17gを閉じて主原料容器21へのキャリアガスの供給を停止するとともにバルブ17a,17h、17i,17jを閉じて処理容器1内を排気装置35により引き切り状態とした後、バルブ17e、17f,17hを開放して処理容器1内にパージガスを導入する。なお、STEP14のパージ処理は任意工程であり、省略することもできる。
【0086】
(STEP15)
次に、STEP15では、処理容器1内に不活性ガスを導入したままで、混合膜314に熱処理を行う。この際、最終的に形成される金属薄膜中にCo3Ti合金を効率よく生成させる観点から、温度制御部8Bによりヒーター7の温度を好ましくは300℃以上1000℃以下の範囲内、より好ましくは600℃以上900℃以下の範囲内に設定する。また、処理容器1内の圧力は、例えば133.3Pa〜大気圧付近に維持する。熱処理の時間は、例えば5〜60分とすることが好ましい。このようにして、ウエハW上の混合膜314が加熱され、Co3Ti合金が生成し、Co3Ti合金を含む金属薄膜315が形成される。なお、STEP15では、不活性ガスに代えて、H2等の還元性ガスを導入しながら熱処理を行うことも可能であり、還元性ガスにより、混合膜314の酸化を抑制できるので好ましい。
【0087】
(STEP16)
STEP16では、STEP11と逆の手順でCo3Ti合金を含む金属薄膜315が形成されたウエハWを処理容器1から搬出する。
【0088】
以上のようにして形成されるCo3Ti合金を含む金属薄膜315の構成は、第1の実施の形態と同様である。本実施の形態では、上記STEP11〜STEP16の手順でCuとの格子不整合が小さいCo3Ti合金を効率よく生成させるために、STEP13において混合膜314を形成する際に、Ti原料及びCo原料を、Ti:Co換算での比率が1:3となるように流量制御しながら処理容器1内の反応空間に供給することが好ましい。このようにずれば、混合膜314中に含まれるTiとCoとの比をほぼ1:3とすることが可能になり、Co3Ti合金を効率よく生成させることができる。また、図7に示したように、上記STEP13からSTEP15までの工程は、複数回繰り返し実施することができる。
【0089】
なお、本実施の形態の成膜方法は、上記STEP11〜STEP16の工程以外に、任意工程として、例えば絶縁膜303の表面を改質する工程等を設けてもよい。また、本実施の形態の成膜方法では、上記STEP11〜STEP16の工程を、図1に示したような処理システム200を使用して複数の装置で連続的に実施することもできる。第2の実施の形態の成膜方法における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0090】
以上のように、第1及び第2の実施の形態の成膜方法によれば、絶縁膜303の表面に均一に、かつ所定の厚みでCo3Ti合金を含む金属薄膜315を成膜できる。このようにして得られるCo3Ti合金を含む金属薄膜315は、良好な電気的特性とCuの拡散に対する優れたバリア特性、さらにCu配線に対する優れた密着性を有するものである。すなわち、第1及び第2の実施の形態の成膜方法によって成膜されるCo3Ti合金を含む金属薄膜315は、優れた導電性を有し、Cuめっきのためのシード層として有用である。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、半導体装置において、配線間の電気的接続を確保しながら、銅配線からCuが絶縁膜303中へ拡散することを効果的に抑制するバリア膜として機能する。さらに、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、Cuとの格子不整合が小さいCo3Ti合金を含むため、Cu配線との密着性も保つことができる。従って、本発明の成膜方法により得られるCo3Ti合金を含む金属薄膜315をめっきシード層及び/又はバリア膜として利用することによって、半導体装置の信頼性を確保できる。
【0091】
[ダマシンプロセスへの適用例]
次に、図10〜図12を参照しながら、上記第1及び第2の実施の形態の成膜方法を、ダマシンプロセスに応用した適用例について説明する。図10は、Co3Ti合金を含む金属薄膜315を成膜する前の積層体を示すウエハWの要部断面図である。下地配線層となる層間絶縁膜401の上には、エッチングストッパ膜402、ビア層となる層間絶縁膜403、エッチングストッパ膜404、及び配線層となる層間絶縁膜405が、この順番に形成されている。さらに、層間絶縁膜401にはCuが埋め込まれた下層配線406が形成されている。なお、エッチングストッパ膜402,404は、いずれも銅の拡散を防止するバリア機能も有している。層間絶縁膜403及び層間絶縁膜405は、例えばCVD法により成膜された低誘電率膜である。エッチングストッパ膜402,404は、例えばCVD法により成膜された炭化珪素(SiC)膜、窒化珪素(SiN)膜、炭化窒化珪素(SiCN)膜等である。
【0092】
図10に示すように、層間絶縁膜403,405には、開口部403a,405aがそれぞれ所定のパターンで形成されている。このような開口部403a,405aは、常法に従い、フォトリソグラフィー技術を利用して層間絶縁膜403,405を所定のパターンにエッチングすることによって形成できる。開口部403aはビアホールであり、開口部405aは配線溝である。開口部403aは下層配線406の上面まで達しており、開口部405aは、エッチングストッパ膜404の上面まで達している。
【0093】
次に、図11は、図10の積層体に対して、上記第1又は第2の実施の形態のいずれかの方法によりCo3Ti合金を含む金属薄膜315を形成した後の状態を示している。このCo3Ti合金を含む金属薄膜315は、導電性を有しており、次の工程でCuめっきを行う際のめっきシード層として機能し、かつCuとの密着性にも優れている。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、Cu拡散のバリア膜としても機能する。従って、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、めっきシード層兼バリア膜として、例えば5nm以下(好ましくは2〜5nm)程度の単膜に形成できるため、微細な配線パターンにも適用できる。
【0094】
次に、図12に示すように、Co3Ti合金を含む金属薄膜315をめっきシード層として用い、電解めっき法によりCuを堆積させて開口部403a及び405aを埋めるCu膜407を形成する。開口部403a内に埋め込まれたCu膜407はCuプラグとなり、開口部405a内に埋め込まれたCu膜407はCu配線となる。以降は、常法に従い、CMP(化学機械研磨)法により平坦化を行って余分なCu膜407を除去することにより、Cuプラグ及びCu配線が形成された多層配線構造体を作製することができる。
【0095】
このようにして形成された多層配線構造体において、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、めっきシード層としての機能に加え、Cu拡散のバリア性にも優れている。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、Cu膜407との密着性に優れており、熱応力によるストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、Co3Ti合金を含む金属薄膜315とCu膜407との境界部分での剥離ボイドの発生も抑制できる。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、低抵抗な膜であるため、開口部403a,405a内に埋め込まれたCu膜407と下層配線406との電気的なコンタクトを確保できる。従って、信頼性に優れた多層配線構造体を備えた電子部品を製造できる。
【0096】
以上の説明では、成膜方法をデュアルダマシンプロセスへ適用した例を挙げたが、シングルダマシンプロセスにも同様に適用可能である。
【0097】
以上、本発明の実施の形態を述べたが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、被処理体である基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、例えば、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【0098】
また、上記実施の形態では、Ti膜及びCo膜の成膜を、共にCVD法により行う構成としたが、例えばALD(原子層堆積)法やPVD(物理気相成長)法により行うこともできる。この場合、Ti膜及びCo膜を共にALD法又はPVD法のいずれか一つの方法により成膜してもよい。さらに、Ti膜とCo膜を、CVD法、ALD法又はPVD法から選ばれる2種の異なる方法を組み合わせて成膜することもできる。PVD法としては、例えばスパッタリング、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着等を利用することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
200…処理システム、201A,201B,201C,201D…プロセスモジュール、W…半導体ウエハ(基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄膜の成膜方法、この金属薄膜を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIやMEMSにおいて、Cu配線を形成するためのCuめっきのシード層として、従来はCuが用いられていたが、埋め込み性の向上を図るため、コバルト膜の利用が検討されている。また、めっきシード層としてコバルト膜を利用することにより、Ta,TaN等の材質のバリア膜との密着性を高め、Cu配線の信頼性を向上させ得ることも期待されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−328526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子の高集積化、チップサイズの小型化に伴い、配線パターンの微細化が進展している。コバルト膜は、単膜ではCuの拡散に対するバリア性が低いため、上記のとおり、めっきシード層とは別にバリア膜を形成しておく必要がある。しかし、めっきシード層とバリア膜とを別々に成膜することにより、工程数が増加するとともに、合計の膜厚が嵩み、配線パターンの微細化への障害にもなっている。
【0005】
また、めっきシード層としてコバルト膜を形成した場合、コバルト膜はCuとの濡れ性が悪いため、熱応力によるストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションが生じ、Cu配線/Coシード層の境界で剥離ボイドが発生し、断線などの不具合を生じる懸念がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、単膜でCu拡散のバリア膜及びめっきシード層として機能するとともに、Cuとの密着性にも優れた金属薄膜の成膜方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、上記成膜方法によって成膜された金属薄膜を備えた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点の金属薄膜の成膜方法は、絶縁膜が形成された基板の前記絶縁膜上に、Ti膜を堆積させる工程と、前記Ti膜上に重ねてCo膜を堆積させる工程と、前記絶縁膜上のTi膜とCo膜との積層膜を、不活性ガス雰囲気もしくは還元雰囲気で加熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜に改質する工程と、を備えている。
【0008】
本発明の金属薄膜の成膜方法は、前記Ti膜を堆積させる工程と、前記Co膜を堆積させる工程と、を交互に繰返してもよい。また、前記Ti膜と前記Co膜との膜厚比が、1:3であってもよい。さらに、前記Ti膜を堆積させる工程及び前記Co膜を堆積させる工程をCVD法又はPVD法により行うことができる。
【0009】
本発明の第2の観点の金属薄膜の成膜方法は、絶縁膜が形成された基板の前記絶縁膜に、Ti含有原料とCo含有原料を同時に供給してTiとCoとを含有する混合膜を堆積させる工程と、前記絶縁膜上の混合膜を、不活性ガス雰囲気もしくは還元雰囲気で加熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜に改質する工程と、を備えている。この場合、前記混合膜中に含まれるTiとCoとの比が、1:3であってもよい。また、前記混合膜を堆積させる工程をCVD法又はPVD法により行うことができる。
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記いずれかに記載の金属薄膜の成膜方法によって、前記絶縁膜上に、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜を形成する工程と、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜上にCu膜を堆積させる工程と、を備えている。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたCo3Ti合金を含む金属薄膜と、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜上に形成されたCu配線と、を備えている。この場合、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜は、前記Cu配線を形成するためのシード層であり、かつ前記Cu配線からのCuの拡散を抑制するCuバリア機能を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属薄膜の成膜方法によれば、基板上にCo3Ti合金を含む金属薄膜を成膜できる。このCo3Ti合金を含む金属薄膜は、めっきシード層として利用が可能であるとともに、Cu拡散のバリア性にも優れており、バリア膜として、銅配線からCuが絶縁膜中へ拡散することを効果的に抑制できる。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜はCo膜に比べてCuとの密着性に優れている。
【0013】
従って、本発明方法によって得られるCo3Ti合金を含む金属薄膜をめっきシード層として用いることにより、Cu拡散バリア膜と兼用が可能であり、めっきシード層/バリア膜の単膜化が実現し、配線パターンの微細化への対応が可能になる。また、本発明方法によって、熱応力によるストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、信頼性の高い配線構造を有する半導体装置を得ることができる。さらに、本発明方法により成膜されたCo3Ti合金を含む金属薄膜をめっきシード層及び/又はバリア膜として利用することにより、微細化への対応を可能にしつつ、半導体装置の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の金属薄膜の成膜方法に利用可能な処理システムの概略構成を示す図面である。
【図2】図1の処理システムの一部をなすプロセスモジュールの概略構成例を示す図面である。
【図3】図1の処理システムの別のプロセスモジュールの概略構成例を示す図面である。
【図4】図1の処理システムのさらに別のプロセスモジュールの概略構成例を示す図面である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る金属薄膜の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態に係る金属薄膜の成膜方法の主要な工程を説明する図面である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る金属薄膜の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態の金属薄膜の成膜方法に使用可能な成膜装置の概略構成を示す図面である。
【図9】第2の実施の形態に係る金属薄膜の成膜方法の主要な工程を説明する図面である。
【図10】本発明の成膜方法をダマシンプロセスへ適用した工程説明に供するウエハ表面の断面図である。
【図11】図10に続く工程図であり、炭素含有コバルト膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図12】図11に続く工程図であり、Cu膜を埋め込んだ状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
<成膜装置の概要>
まず、本発明の成膜方法の実施に適した成膜装置の構成について説明する。まず、図1を参照して本実施の形態に利用可能な処理システムについて説明を行う。図1は、例えば基板としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す)Wに対し、Co3Ti合金を含む薄膜の成膜処理を行なうように構成された処理システム200を示す概略構成図である。
【0017】
図1に示す処理システム200は、複数(図3では4つ)のプロセスモジュール201A〜201Dを備えたマルチチャンバ構造のクラスタツールとして構成されている。処理システム200は、主要な構成として、4つのプロセスモジュール201A,201B,201C,201Dと、これらのプロセスモジュール201A〜201Dに対してゲートバルブG1を介して接続された真空側搬送室203と、この真空側搬送室203にゲートバルブG2を介して接続された2つのロードロック室205a,205bと、これら2つのロードロック室205a,205bに対してゲートバルブG3を介して接続されたローダーユニット207とを備えている。
【0018】
(プロセスモジュール)
本実施の形態では、プロセスモジュール201AはウエハWに対してCo膜の成膜を行い、プロセスモジュール201Bは、ウエハWに対してTi膜の成膜を行い、プロセスモジュール201C及び201Dは、ウエハWに対して熱処理を行うように構成されている。なお、各プロセスモジュール201A〜201Dで行う処理の割り振りは、上記に限定されるものではない。
【0019】
(真空側搬送室)
真空引き可能に構成された真空側搬送室203には、プロセスモジュール100A〜100Dやロードロック室205a,205bに対してウエハWの受け渡しを行う第1の基板搬送装置としての搬送装置209が設けられている。この搬送装置209は、互いに対向するように配置された一対の搬送アーム部211,211を有している。各搬送アーム部211,211は同一の回転軸を中心として、屈伸及び旋回可能に構成されている。また、各搬送アーム部211,211の先端には、それぞれウエハWを載置して保持するためのフォーク213,213が設けられている。搬送装置209は、これらのフォーク213,213上にウエハWを載置した状態で、各プロセスモジュール100A〜100Dの間、あるいはプロセスモジュール100A〜100Dとロードロック室205a,205bとの間でウエハWの搬送を行う。
【0020】
(ロードロック室)
ロードロック室205a,205b内には、それぞれウエハWを載置する待機ステージ206a,206bが設けられている。ロードロック室205a,205bは、真空状態と大気開放状態を切り替えられるように構成されている。このロードロック室205a,205bの待機ステージ206a,206bを介して、真空側搬送室203と大気側搬送室219(後述)との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0021】
(ローダーユニット)
ローダーユニット207は、ウエハWの搬送を行う第2の基板搬送装置としての搬送装置217が設けられた大気側搬送室219と、この大気側搬送室219に隣接配備された3つのロードポートLPと、大気側搬送室219の他の側面に隣接配備され、ウエハWの位置測定を行なう位置測定装置としてのオリエンタ221とを有している。
【0022】
(大気側搬送室)
大気側搬送室219は、例えば窒素ガスや清浄空気などの循環設備(図示省略)を備えた平面視矩形形状をなしており、その長手方向に沿ってガイドレール223が設けられている。このガイドレール223に搬送装置217がスライド移動可能に支持されている。つまり、搬送装置217は図示しない駆動機構により、ガイドレール223に沿ってX方向へ移動可能に構成されている。この搬送装置217は、上下2段に配置された一対の搬送アーム部225,225を有している。各搬送アーム部225,225は屈伸及び旋回可能に構成されている。各搬送アーム部225,225の先端には、それぞれウエハWを載置して保持する保持部材としてのフォーク227,227が設けられている。搬送装置217は、これらのフォーク227,227上にウエハWを載置した状態で、ロードポートLPのウエハカセットCRと、ロードロック室205a,205bと、オリエンタ221との間でウエハWの搬送を行う。
【0023】
(ロードポート)
ロードポートLPは、ウエハカセットCRを載置できるようになっている。ウエハカセットCRは、複数枚のウエハWを同じ間隔で多段に載置して収容できるように構成されている。オリエンタ221は、図示しない駆動モータによって回転される回転板233と、この回転板233の外周位置に設けられ、ウエハWの周縁部を検出するための光学センサ237とを備えている。
【0024】
(統括制御部)
処理システム200の各構成部は、統括制御部250に接続されて制御される構成となっている。統括制御部250は、例えばロードロック室205a,205b、搬送装置209、搬送装置217等を制御するほか、各プロセスモジュール201A〜201Dを個別に制御する制御部を統括して制御する。
【0025】
以上のような構成の処理システム200では、搬送装置217により、ウエハカセットCRからウエハWを1枚取り出し、オリエンタ221で位置合わせを行った後、ロードロック室205a,205bのいずれかに搬入し、待機ステージ206a(又は206b)に移載する。そして、搬送装置209を用い、ロードロック室205a(又は205a)内のウエハWを、プロセスモジュール201A〜201Dのいずれかへ搬送する。成膜処理後は、前記と逆の手順で、ウエハWをウエハカセットCRへ戻すことにより、1枚のウエハWに対する処理が終了する。
【0026】
<プロセスモジュール201A>
次に、プロセスモジュール201Aについて説明する。図2はウエハWに対してCo膜の成膜を行うプロセスモジュール201Aの概略構成例を示している。このプロセスモジュール201Aは、CVD装置として構成されている。プロセスモジュール201Aは、主要な構成として、真空引き可能な処理容器1と、処理容器1内に設けられた、ウエハWを載置するステージ5と、このステージ5に載置されたウエハWを所定の温度に加熱するヒーター7と、処理容器1内にガスを導入するシャワーヘッド11と、コバルト前駆体を保持する原料容器21と、原料容器21内のコバルト前駆体を温度調節する温度調節装置23と、コバルト前駆体を処理容器1内に導入するためのキャリアガスを供給するガス供給部31と、処理容器1内を減圧排気する排気装置35と、を備えている。このプロセスモジュール201Aは、ウエハW上にコバルト膜を堆積させる成膜処理を行うことができる。
【0027】
(処理容器)
プロセスモジュール201Aは、気密に構成された略円筒状の処理容器1を有している。処理容器1は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムなどの材質で形成されている。処理容器1は、天板1a、側壁1b及び底壁1cを有している。
【0028】
処理容器1の側壁1bには、この処理容器1内に対してウエハWを搬入、搬出するための開口1dが設けられており、さらに、開口1dを開閉するためのゲートバルブG1が設けられている。なお、処理容器1を構成する各部材の接合部分には、該接合部分の気密性を確保するために、シール部材としてのOリング(図示省略)が配備されている。
【0029】
(ステージ)
処理容器1の中にはウエハWを水平に支持する載置台であるステージ5が配備されている。ステージ5は、円筒状の支持部材5aにより支持されている。図示は省略するが、ステージ5には、ウエハWを支持して昇降させるための複数のリフトピンがステージ5の基板載置面に対して突没可能に設けられている。これらのリフトピンは任意の昇降機構により上下に変位し、上昇位置で搬送装置(図示省略)との間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。
【0030】
ステージ5には、ウエハWを加熱する加熱手段としてのヒーター7が埋設されている。ヒーター7は、電力供給部8Aから給電されることによりウエハWを所定の温度に加熱する抵抗加熱ヒーターである。また、ステージ5には、温度計測手段としての熱電対9aが配備されており、ステージ5の温度をリアルタイムで計測できるようになっている。なお、ウエハWの加熱温度や処理温度は、特に断りのない限り、ステージ5の計測温度を意味する。ウエハWを加熱するための加熱手段としては、抵抗加熱ヒーターに限らず、例えばランプ加熱ヒーターでもよい。
【0031】
(シャワーヘッド)
処理容器1の天板1aには、成膜原料ガス、キャリアガス等のガスを処理容器内に導入するシャワーヘッド11が設けられている。このシャワーヘッド11は、内部にガス拡散空間11aが設けられている。シャワーヘッド11の下面には、多数のガス吐出孔13が形成されている。ガス拡散空間11aはガス吐出孔13に連通している。シャワーヘッド11の中央部には、ガス拡散空間11aに連通するガス供給配管15aが接続されている。
【0032】
(原料容器)
原料容器21は、コバルト前駆体として、固体原料であるジコバルトオクタカルボニル[Co2(CO)8]を保持している。原料容器21は、例えばジャケット式熱交換器などの温度調節装置23を有している。温度調節装置23は、電力供給部8Aに接続されており、原料容器21の内部に収容されたCo2(CO)8を例えば常温(20℃)〜45℃の範囲内の温度に保持することにより気化させる。また、原料容器21内には、内部の温度をリアルタイムで計測するための熱電対9bが配備されている。なお、コバルト前駆体としては、Co2(CO)8以外に、例えばCVD法においてコバルト前駆体として使用可能なコバルト化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
【0033】
原料容器21には、ガス供給配管15aと、ガス供給配管15bとが接続されている。ガス供給配管15aは、上記のとおりシャワーヘッド11のガス拡散空間11aに接続されている。ガス供給配管15aは、例えばジャケット式熱交換器などの温度調節装置25を有している。また、ガス供給配管15aには、熱電対9cが配備されており、管内の温度をリアルタイムで計測できるようになっている。温度調節装置25は、電力供給部8Aと電気的に接続されており、熱電対9cによる計測温度情報に基づき、ガス供給配管15a内を通過するCo2(CO)8を気化温度以上かつ分解開始温度(約45℃)未満の所定の温度に調節しながらシャワーヘッド11へ供給する。また、ガス供給配管15aには、バルブ17a及び開度調節バルブ17bが設けられている。
【0034】
(ガス供給源)
ガス供給部31は、一酸化炭素(CO)ガスを供給するCOガス供給源31aと、例えばAr、窒素などの不活性ガスを供給する不活性ガス供給源31bとを備えている。これらの一酸化炭素ガス及び不活性ガスは、原料容器21内で気化させた固体原料のCo2(CO)8を処理容器1内に運び込むためのキャリアガスとして用いられる。COガスは、気化したCo2(CO)8の分解を抑制する作用を有しているため、キャリアガスの一部としてCOを用いることが好ましい。Co2(CO)8は分解されることによりCOを生成するが、原料容器21内にCOを供給してCO濃度を高めておくことによって、原料容器21内でのCo2(CO)8の分解を抑制することができる。キャリアガスの全部をCOガスにすることも可能であり、その場合は、不活性ガスは使用しなくてもよい。なお、図示は省略するが、ガス供給部31は、COガス供給源31a及び不活性ガス供給源31bのほかに、処理容器1内をクリーニングするためのクリーニングガスの供給源や、処理容器1内をパージするためのパージガスの供給源等を有していてもよい。
【0035】
COガス供給源31aには、ガス供給配管15cが接続されている。ガス供給配管15cには、流量調整のためのMFC(マスフローコントローラ)19aと、その前後に配備されたバルブ17c,17dが設けられている。また、不活性ガス供給源31bには、ガス供給配管15dが接続されている。ガス供給配管15dには、流量調整のためのMFC(マスフローコントローラ)19bと、その前後に配備されたバルブ17e,17fが設けられている。そして、ガス供給配管15c,15dは、途中で合流してガス供給配管15bとなり、原料容器21に接続されている。ガス供給配管15bには、バルブ17gが設けられている。なお、ガス供給配管15bからは、途中でガス供給配管15eが分岐している。このガス供給配管15eは、原料容器21を介さず、ガス供給配管15bから直接ガス供給配管15aに接続するバイパスラインである。ガス供給配管15eは、不活性ガス供給源31bの不活性ガスをパージガスとして処理容器1内に導入する場合などに用いる。ガス供給配管15eには、バルブ17hが設けられている。
【0036】
プロセスモジュール201Aでは、COガス供給源31aからのCOガス及び/又は不活性ガス供給源31bからの不活性ガスを、ガス供給配管15c,15d,15bを介して原料容器21内に供給する。そして、COガス及び/又は不活性ガスをキャリアガスとして、温度調節装置23によって温度調節されて原料容器21内で気化したCo2(CO)8を、開度調節バルブ17bにより流量制御しながら、ガス供給配管15aを介してシャワーヘッド11のガス拡散空間11aへ供給する。ガス供給配管15a内を通過するCo2(CO)8は、温度調節装置25によって気化温度以上かつ分解開始温度未満の所定の温度に調節され、シャワーヘッド11へ供給される。そして、ガス吐出孔13から処理容器1内のステージ5上に配置されたウエハWへ向けて、原料であるCo2(CO)8を放出することができる。このように、プロセスモジュール201Aでは、分解しやすいCo2(CO)8を厳密に温度制御しながら処理容器1内に導入する構成としている。
【0037】
処理容器1の底壁1cには、排気口1eが形成されている。この排気口1eには排気管33が接続されており、この排気管33には、排気装置35が接続されている。排気装置35は、例えば図示しない圧力調整弁や真空ポンプなどを備えており、排気量を調節しながら処理容器1内の排気を行って処理容器1内を真空引きできるように構成されている。
【0038】
(制御系統)
次に、プロセスモジュール201Aにおいて、各種のプロセスを行う場合の制御系統について説明する。プロセスモジュール201Aは、上記電力供給部8Aの出力制御を行う温度制御部8Bを備えている。電力供給部8A、熱電対9a,9b,9c、及び温度調節装置23,25は、それぞれ温度制御部8Bと信号の授受が可能に接続されている。温度制御部8Bは、熱電対9a,9b,9cの計測温度情報を元に、フィードバック制御によって電力供給部8Aへ制御信号を送り、ヒーター7、温度調節装置23,25への出力を調節する。
【0039】
また、プロセスモジュール201Aを構成する各エンドデバイス(例えばMFC19a,19b、排気装置35など)や温度制御部8Bは、制御部37に接続されて制御される構成となっている。制御部37は、図示は省略するが、例えばCPUを備えたコンピュータであるコントローラと、このコントローラに接続されたユーザーインターフェースおよび記憶部を備えている。ユーザーインターフェースは、工程管理者がプロセスモジュール201Aを管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、プロセスモジュール201Aの稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。記憶部には、プロセスモジュール201Aで実行される各種処理をコントローラの制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェースからの指示等にて任意の制御プログラムやレシピを記憶部から呼び出してコントローラに実行させることで、コントローラの制御下で、プロセスモジュール201Aの処理容器1内で所望の処理が行われる。なお、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された状態のものを記憶部にインストールすることによって利用できる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はないが、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVDなどを使用できる。また、前記レシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0040】
以上のような構成のプロセスモジュール201Aでは、制御部37の制御に基づき、CVD法によりコバルト膜の成膜処理が行われる。
【0041】
<プロセスモジュール201B>
次に、プロセスモジュール201Bについて説明する。図3はTi膜の成膜を行うプロセスモジュール201Bの概略断面図である。
【0042】
(処理容器)
このプロセスモジュール201Bは、気密に構成された略円筒状の処理容器41を有しており、その中には被処理体であるウエハWを水平に支持するためのステージ42が円筒状の支持部材43により支持された状態で配置されている。処理容器41の側部には、真空側搬送室203との間でウエハWの受け渡しを行なうためのゲートバルブG1が設けられ、このゲートバルブG1を開にした状態でウエハWが隣接する真空側搬送室203との間で搬送されるようになっている。
【0043】
(ステージ)
ステージ42は、例えばAlN等のセラミックスで構成されている。ステージ42の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング44が設けられている。このガイドリング44はプラズマのフォーカシング効果も奏する。また、ステージ42にはモリブデンやタングステン線等からなる抵抗加熱型のヒーター45が埋め込まれており、このヒーター45はヒーター電源46から給電されることにより被処理体であるウエハWを所定の温度に加熱する。なお、ステージ42に対するウエハWの受け渡しは、その中に突没自在に設けられた3本のリフトピン(図示せず)でウエハWを持ち上げた状態で行われる。
【0044】
(シャワーヘッド)
処理容器41の天壁41aには、絶縁部材49を介してシャワーヘッド50が設けられている。このシャワーヘッド50は、上段ブロック体50a、中段ブロック体50b、下段ブロック体50cで構成されている。そして、下段ブロック体50cにはガスを吐出する吐出孔57と58とが交互に形成されている。上段ブロック体50aの上面には、第1のガス導入口51と、第2のガス導入口52とが形成されている。
【0045】
上段ブロック体50aの中では、第1のガス導入口51から多数のガス通路53が分岐している。中段ブロック体50bにはガス通路55が形成されており、上記ガス通路53がこれらガス通路55に連通している。さらにこのガス通路55が下段ブロック体50cの吐出孔57に連通している。また、上段ブロック体50aの中では、第2のガス導入口52から多数のガス通路54が分岐している。中段ブロック体50bにはガス通路56が形成されており、上記ガス通路54がこれらガス通路56に連通している。さらにこのガス通路56が下段ブロック体50cの吐出孔58に連通している。そして、上記第1および第2のガス導入口51,52は、ガス供給部60のガスラインに接続されている。
【0046】
(ガス供給部)
ガス供給部60は、Ti含有ガスであるTiCl4ガスを供給するTiCl4ガス供給源61、プラズマガスであるArガスを供給するArガス供給源62、還元性ガスであるH2ガスを供給するH2ガス供給源63、NH3ガスを供給するNH3ガス供給源64を有している。TiCl4ガス供給源61にはガスライン65が、Arガス供給源62にはガスライン66が、H2ガス供給源63にはガスライン67が、NH3ガス供給源64にはガスライン68がそれぞれ接続されている。また、各ガスラインにはバルブ69、バルブ77およびマスフローコントローラ70が設けられている。また、TiCl4ガス供給源61から延びるガスライン65には、排気装置76と接続するガスライン80がバルブ78を介して接続されている。
【0047】
第1のガス導入口51にはTiCl4ガス供給源61から延びるガスライン65が接続されており、このガスライン65にはArガス供給源62から延びるガスライン66が接続されている。また、第2のガス導入口52にはH2ガス供給源63から延びるガスライン67およびNH3ガス供給源64から延びるガスライン68が接続されている。したがって、プロセス時には、TiCl4ガス供給源61からのTiCl4ガスがArガスをキャリアガスとしてガスライン65を介してシャワーヘッド50の第1のガス導入口51からシャワーヘッド50内に至り、ガス通路53,55を経て吐出孔57から処理容器41内へ吐出される。一方、H2ガス供給源63からのH2ガスがガスライン67を介してシャワーヘッド50の第2のガス導入口52からシャワーヘッド50内に至り、ガス通路54,56を経て吐出孔58から処理容器41内へ吐出される。すなわち、シャワーヘッド50は、TiCl4ガスとH2ガスとが全く独立して処理容器41内に供給されるポストミックスタイプとなっており、これらは吐出後に混合され反応が生じる。なお、各ガスラインのバルブやマスフローコントローラは図示しないコントローラにより制御される。
【0048】
(高周波電源)
シャワーヘッド50には、整合器72を介して高周波電源73が接続されており、この高周波電源73からシャワーヘッド50に高周波電力が供給されることにより、シャワーヘッド50を介して処理容器41内に供給されたガスがプラズマ化され、これにより成膜反応が進行される。高周波電力が供給される電極として機能するシャワーヘッド50の対向電極として、ステージ42の上部に、例えばモリブデン線等をメッシュ状に編み込んでなる電極74が埋設されている。
【0049】
(排気装置)
処理容器41の底壁41bには、排気管75が接続されており、この排気管75には真空ポンプを含む排気装置76が接続されている。そしてこの排気装置76を作動させることにより処理容器41内を所定の真空度まで減圧することが可能となっている。
【0050】
(制御部)
プロセスモジュール201Bを構成する各エンドデバイス(例えばヒーター電源46、MFC70、排気装置76など)は、制御部79に接続されて制御される構成となっている。制御部79は、図示は省略するが、例えばCPUを備えたコンピュータであるコントローラと、このコントローラに接続されたユーザーインターフェースおよび記憶部を備えている。制御部79の構成及び機能は、基本的にプロセスモジュール201Aの制御部37と同様である。そして、プロセスモジュール201Bでは、制御部79の制御に基づき、プラズマCVD法によりTi膜の成膜処理が行われる。
【0051】
<プロセスモジュール201C又は201D>
図4は、熱処理装置であるプロセスモジュール201C,201Dの概略構成を示す断面図である。このプロセスモジュール201C,201Dは、例えばウエハWに形成した薄膜等を、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気下で800〜1000℃程度の高温領域で、短時間で熱処理可能がRTP(Rapid Thermal Process)装置として用いることができる。
【0052】
(処理容器)
図4において、符号81は、円筒状の処理容器であり、この処理容器81の下方には下部発熱ユニット82が着脱可能に設けられ、また、処理容器81の上方には、下部発熱ユニット82と対向するように上部発熱ユニット84が着脱可能に設けられている。処理容器81の側壁には、ウエハWを搬入出するための開口81aが設けられ、該開口81aには、ゲートバルブG1が設けられている。
【0053】
(発熱ユニット)
下部発熱ユニット82は、水冷ジャケット83と、その上面に複数配列された加熱手段としてのタングステンランプ86を有している。同様に、上部発熱ユニット84は、水冷ジャケット85と、その下面に複数配列された加熱手段としてのタングステンランプ86とを有している。なお、ランプとしては、タングステンランプ86に限らず、例えば、ハロゲンランプ、Xeランプ、水銀ランプ等でもよい。このように、処理容器81内において互いに対向して配備された各タングステンランプ86は、図示しない電源に接続されており、そこからの電力供給量を制御部97により調節することで、発熱量を制御できるようになっている。
【0054】
(支持部)
下部発熱ユニット82と上部発熱ユニット84との間には、ウエハWを支持するための支持部87が設けられている。この支持部87は、ウエハWを処理容器81内の処理空間に保持した状態で支持するためのウエハ支持ピン87aと、処理中にウエハWの温度を計測するためのホットライナー88を支持するライナー設置部87bを有している。また、支持部87は、図示しない回転機構と連結されており、支持部87を全体として鉛直軸廻りに回転させる。これにより、処理中にウエハWが所定速度で回転し、熱処理の均一化が図られる。
【0055】
(パイロメーター)
処理容器81の下部には、パイロメーター91が配置されており、熱処理中にホットライナー88からの熱線を、ポート91aおよび光ファイバー91bを介してパイロメーター91で計測することにより、間接的にウエハWの温度を把握できるようになっている。なお、直接ウエハWの温度を計測するようにしてもよい。
【0056】
また、ホットライナー88の下方には、下部発熱ユニット82のタングステンランプ86との間に石英部材89が介在配備されており、図示のように前記ポート91aは、この石英部材89に設けられている。さらに、ウエハWの上方にも、上部発熱ユニット84のタングステンランプ86との間に石英部材90aが介在配備されている。また、ウエハWを囲繞するように、処理容器81の内周面にも石英部材90bが配設されている。なお、ウエハWを支持して昇降させるためのリフターピン(図示せず)が、ホットライナー88を貫通して設けられており、ウエハWの搬入出に使用される。
【0057】
下部発熱ユニット82と処理容器81との間、および上部発熱ユニット84と処理容器81との間には、それぞれシール部材(図示せず)が介在されており、処理容器81内は気密状態となる。
【0058】
(ガス供給部)
処理容器81の側部には、ガス導入管92に接続されたガス供給部93が配備されており、図示しない流量制御装置によって、処理容器81の処理空間内に、例えばN2ガス等の不活性ガスや、H2等の還元性ガスを導入できるようになっている。
【0059】
(排気装置)
処理容器81の下部には、排気管94が設けられており、図示しない真空ポンプ等を備えた排気装置95により、処理容器81内を減圧できるように構成されている。
【0060】
(制御部)
プロセスモジュール201C,201Dを構成する各エンドデバイス(例えば下部発熱ユニット82、上部発熱ユニット84、ガス供給部93、排気装置95など)は、制御部97に接続されて制御される構成となっている。制御部97は、図示は省略するが、例えばCPUを備えたコンピュータであるコントローラと、このコントローラに接続されたユーザーインターフェースおよび記憶部を備えている。制御部97の構成及び機能は、基本的にプロセスモジュール201Aの制御部37と同様である。そして、プロセスモジュール201C,201Dでは、制御部97の制御に基づき、Ti膜及びCo膜に対する熱処理が行われる。
【0061】
<成膜方法>
次に、処理システム200を用いて行われる、Co3Ti合金を含む薄膜の成膜方法の具体的な内容について説明する。ここでは、チタン前駆体としてTiCl4、コバルト前駆体としてコバルトカルボニルCo2(CO)8を用いる場合を例に挙げる。なお、他の成膜原料を用いる場合も、以下に説明する手順・条件に準じて実施できる。
【0062】
図5は、本発明の第1の実施の形態の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。図6は、本実施の形態の成膜方法の主要な工程を説明するためのウエハ表面の部分断面図である。この成膜方法は、例えば、プロセスモジュール201B内にウエハWを搬入し、Ti膜を成膜する工程(STEP1)と、プロセスモジュール201A内にTi膜が形成されたウエハWを搬入し、Ti膜上にCo膜を形成する工程(STEP2)、プロセスモジュール201C又は201DのいずれかにウエハWを搬入し、Ti膜及びCo膜を熱処理してCo3Ti合金を含む薄膜を形成する工程(STEP3)と、を含むことができる。
【0063】
(STEP1)
STEP1では、プラズマCVD法によって、Ti膜の成膜を行う。まず、プロセスモジュール201Bの処理容器41内を所定温度及び圧力に調節して、処理容器41内にTi膜のプリコート処理を行う。その後、NH3ガスを処理容器41内に導入して、プラズマを生成してプリコートTi膜を窒化して安定化させる。次いで、ゲートバルブG1を開いて、真空側搬送室203の搬送装置209により、プロセスモジュール201Bの処理容器41内にウエハWを搬入してステージ42上に載置する。ここで、図6に示したように、ウエハW上には、下地膜301と、その上に積層された絶縁膜303と、が形成されている。図示は省略するが、絶縁膜303には、所定の凹凸パターンや開口部(トレンチなどの凹部や貫通孔などを意味する)を有していてもよい。また、ウエハW上には、他に絶縁膜、半導体膜、導体膜等が形成されていてもよい。絶縁膜303は、例えば多層配線構造の層間絶縁膜であり、開口部は、配線溝やビアホールとなる部分である。絶縁膜303としては、例えばSiO2、SiNのほか、SiCOH、SiOF、CFq(qは正の数を意味する)、BSG、HSQ、多孔質シリカ、SiOC、MSQ、ポーラスMSQ、ポーラスSiCOH等の低誘電率膜を挙げることができる。
【0064】
次に、排気装置76により処理容器41内を排気しつつ、ヒーター45によりウエハWを加熱し、H2ガスを例えば100〜5000mL/min(sccm)、Arガスを例えば100〜2000mL/min(sccm)の流量で処理容器41内に導入する。次に、ArガスとH2ガスを維持したまま、処理容器41内の圧力を例えば10〜1000Paに調節し、さらに、TiCl4ガスを例えば1〜30mL/min(sccm)の流量で処理容器41内に導入してプリフローを行う。そして、ヒーター45によるウエハWの加熱温度(ステージ温度)を例えば500〜750℃程度に維持して、高周波電源73からシャワーヘッド50に例えば300kHz〜1MHzの周波数で300〜1000Wの高周波電力を供給し、処理容器41内にプラズマを生成し、プラズマ化したガス中でTi膜311を成膜する。
【0065】
(STEP2)
STEP2では、熱CVD法によって、Ti膜311上にCo膜313の成膜を行う。真空側搬送室203の搬送装置209により、Ti膜311が形成されたウエハWをプロセスモジュール201Bから、プロセスモジュール201Aのステージ5上に移載する。具体的には、ゲートバルブG1を開放した状態で、開口1dからウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ5の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ5に載置する。そして、処理容器1内の圧力及びウエハWの温度を調節する。具体的には、ウエハWの温度を、好ましくは100℃以上300℃以下の範囲内とする。ゲートバルブG1を閉じ、排気装置35を作動させて処理容器1内を所定圧力の真空にする。このときの圧力は、例えば1.3Pa〜1333Paの範囲内が好ましい。
【0066】
そして、絶縁膜303及びその上のTi膜311の上に積層して、CVD法によりCo膜313を形成する。この工程では、原料容器21を温度調節装置23によって例えば室温〜45℃に温度制御し、成膜原料のCo2(CO)8を気化させる。また、バルブ17hを閉じ、バルブ17a,17gを開放した状態で、さらにバルブ17c,17d及び/又はバルブ17e,17fを開放する。そして、マスフローコントローラ19a,19bによって流量を制御しながら、キャリアガスとして、COガス供給源31aからのCOガス及び/又は不活性ガス供給源31bからの不活性ガスをガス供給配管15c,15d及び15bを介して、原料容器21へ導入する。この場合、COガス及び/又は不活性ガスの総流量として、例えば300〜700mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。原料容器21からは、気化したCo2(CO)8をキャリアガスによってガス供給配管15aを介して処理容器1へ向けて供給する。この場合、Co2(CO)8とキャリアガスの混合ガスの流量は、例えば100〜1000mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。この際、原料容器21、配管15aの温度を、温度調節装置23,25によってCo2(CO)8の気化温度以上かつ分解開始温度未満の温度に制御する。そして、Co2(CO)8とキャリアガスの混合ガスは、シャワーヘッド11のガス吐出孔13から処理容器1内の反応空間に供給される。このようにして、処理容器1内の反応空間でCo2(CO)8が熱分解され、CVD法によって、図6に示したように、ウエハW表面のTi膜311の上にCo膜313を成膜することができる。
【0067】
所定の膜厚になるまで、ウエハW表面のTi膜311の上に、Co膜313を堆積させた後、原料供給を停止し、処理容器1内を真空引きする。すなわち、バルブ17a,17g,17c,17d,17e,17fを閉じ、COガス供給源31aからのCOガス、不活性ガス供給源31bからの不活性ガスの供給を停止し、排気装置35により処理容器1内を真空引きする。これにより、処理容器1内に残留した未反応の成膜原料のCo2(CO)8やCOを処理容器1の外へ排出する。
【0068】
(STEP3)
STEP3では、Ti膜311とCo膜313との積層膜を熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜315に改質する。まず、真空側搬送室203の搬送装置209により、プロセスモジュール201C又は201DのいずれかにTi膜311及びCo膜313が積層形成されたウエハWを搬入し、処理容器81内のウエハ支持部87にウエハWを載置する。次いで、図示しない電源から所定の電力を下部発熱ユニット82および上部発熱ユニット84の各タングステンランプ86の発熱体(図示省略)に供給する。各発熱体が発熱し、発生した熱線が石英部材89および石英部材90aを通過してウエハWに至り、予め定められたレシピに基づく条件(昇温レート、加熱温度、ガス流量など)でウエハWが上下から急速に加熱される。ウエハWの加熱温度は、Co3Ti合金を効率良く生成させるため、パイロメーター91の計測温度として、例えば300℃以上1000℃以下の範囲内とすることが好ましく、600℃以上900℃以下の範囲内に設定することがより好ましい。ウエハWを加熱しながら、ガス供給部93から所定の流量でN2ガス等の不活性ガスやH2ガス等の還元性ガスを導入するとともに、排気装置95を作動させて排気管94から排気を行う。還元性ガスの導入により、Ti膜311、Co膜313及びCo3Ti合金の酸化を抑制できるので好ましい。このとき、処理容器81内の圧力は、例えば133.3Pa〜大気圧付近で行うことができる。また、熱処理の時間は、例えば5〜60分とすることが好ましい。
【0069】
熱処理の間は、図示しない回転機構により支持部87を全体として鉛直軸廻り、つまり水平方向に例えば50〜100rpmの回転速度で回転させ、ウエハWを回転させる。これにより、ウエハWへの供給熱量の均一性が確保される。また、熱処理中にはホットライナー88の温度をパイロメーター91により計測し、間接的にウエハWの温度を計測する。パイロメーター91により計測された温度データは、プロセスコントローラにフィードバックされ、レシピにおける設定温度との間に差がある場合には、タングステンランプ86への電力供給が調節される。
【0070】
このようにして、ウエハW上のTi膜311及びCo膜313が加熱され、Co3Ti合金が生成し、図6に示したようにCo3Ti合金を含む金属薄膜315が形成される。熱処理が終了した後は、下部発熱ユニット82および上部発熱ユニット84のタングステンランプ86をオフ(切)にするとともに、処理容器81内に、図示しないパージポートより窒素等のパージガスを流し込みつつ排気管94から排気してウエハWを冷却した後、処理容器81から搬出する。
【0071】
上記STEP1〜STEP3の手順でCo3Ti合金を効率よく生成させるために、STEP2において成膜されるCo膜313の膜厚を、STEP1において成膜されるTi膜311の膜厚に対して3倍になるように形成することが好ましい。すなわち、Ti膜311の膜厚:Co膜313の膜厚が1:3となるようにすることが好ましい。例えば、STEP2では、Ti膜311を1〜3nm(好ましくは2nm)、STEP3では、Co膜313を3〜9nm(好ましくは6nm)の膜厚でそれぞれ形成できる。また、図5に示したように、上記STEP1とSTEP2の工程は、複数回繰り返し実施することができる。
【0072】
<Co3Ti合金を含む金属薄膜>
以上のように、STEP1〜STEP3の工程を経て形成されるCo3Ti合金を含む金属薄膜315は、Co3Ti合金を含有しているため、導電性に優れ、例えば絶縁膜303の開口部(図示せず)にCu配線やCuプラグを形成するために電解めっきを行う際のめっきシード層として機能する。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、絶縁膜303の開口部(図示せず)にCuが充填された後には、絶縁膜303中へのCuの拡散を抑制するバリア膜として機能する。すなわち、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、単膜でめっきシード層としての機能とCu拡散バリア膜としての機能を有する。従って、めっきシード層及びCu拡散バリア膜を別々に設ける場合に比べ、工程数の削減と、単膜化による微細化への対応が可能になる。なお、Co3Ti合金を含む金属薄膜315をめっきシード層として用いる場合、別途異なる材質でバリア膜を形成してもよいし、Co3Ti合金を含む金属薄膜315をバリア膜として用いる場合、別途異なる材質でめっきシード層を形成してもよい。
【0073】
さらに、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、Co3Ti合金とCuとの格子不整合が0.15%と小さいため、Co3Ti合金を含む金属薄膜315の上にCu配線を形成した場合に、Cu配線に対して非常に優れた密着性が得られる。従って、Co3Ti合金を含む金属薄膜315上にCu配線を形成することで、熱応力によるストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、信頼性の高い配線構造を有する半導体装置を得ることができる。このように、Co3Ti合金を含む金属薄膜315をめっきシード層及び/又はバリア膜として利用することにより、微細化への対応を可能にしつつ、半導体装置の信頼性を確保できる。
【0074】
Co3Ti合金を含む金属薄膜315の膜厚は、めっきシード層としての機能を維持しながらCu拡散バリア機能を発揮させる観点から、例えば2〜10nmの範囲内とすることが好ましく、さらに配線パターンの微細化を図る観点から、5nm以下(例えば2〜5nm)とすることがより好ましい。
【0075】
また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、優れた導電性を有しているため、例えば開口部(図示せず)の底にCu膜等の下層配線の金属膜(図示せず)が露出している場合には、Co3Ti合金を含む金属薄膜315が介在しても該金属膜と開口部内に埋め込まれる配線との導通を確保できる。
【0076】
なお、本実施の形態の成膜方法は、上記STEP1〜STEP3の工程以外に、任意工程として、例えば絶縁膜303の表面を改質する工程等を設けてもよい。また、本実施の形態の成膜方法は、図1に示したような処理システムを使用せずに、個別のTi膜成膜装置、Co膜成膜装置及び熱処理装置を使用して実施することもできるし、一つの成膜装置の処理容器内で、STEP1〜STEP3の処理を順次実施することもできる。
【0077】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態の成膜方法について説明する。
図7は、本実施の形態の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。図8は、本実施の形態の成膜方法に使用可能な成膜装置201Eを示す概略断面図である。図9は、本実施の形態の成膜方法の主要な工程を説明する参照図である。
【0078】
<成膜装置の概要>
図8に示す成膜装置201Eは、以下の点を除き、図2に示した成膜装置(プロセスモジュール201A)と同様の構成であるため、ここでは相違点を中心に説明し、図2の成膜装置(プロセスモジュール201A)と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。成膜装置201Eは、シャワーヘッド12を有し、このシャワーヘッド12にガス供給配管15aとガス供給配管15fがそれぞれ接続されている。成膜原料ガス、キャリアガス等のガスを処理容器1内に導入するシャワーヘッド12は、処理容器1の天板1aに設けられている。このシャワーヘッド12には、内部にガス拡散空間12a,12bが設けられている。シャワーヘッド12の下面には、多数のガス吐出孔13a,13bが形成されている。ガス拡散空間12aはガス吐出孔13aに、ガス拡散空間12bはガス吐出孔13bに、それぞれ連通している。また、シャワーヘッド12の中央部には、ガス拡散空間12aに連通するガス供給配管15a、ガス拡散空間12bに連通するガス供給配管15fがそれぞれ接続されている。ガス供給配管15fは、ガス供給部31AのTiCl4ガス供給源31cに接続されている。ガス供給配管15fには、バルブ17i及び17j及びマスフローコントローラ(MFC)19cが設けられている。なお、ガス供給部31Aは、図8に示したCOガス供給源31a、不活性ガス供給源31b、TiCl4ガス供給源31cに加え、例えばH2等の還元性ガスの供給源やクリーニングガスの供給源を備えていてもよい。
【0079】
<成膜方法>
本実施の形態の成膜方法は、例えば、成膜装置201Eの処理容器1内に、ウエハWを搬入し、ステージ5上に配置する工程(STEP11)と、処理容器1内の圧力及びウエハWの温度を調節する工程(STEP12)と、処理容器1内にTi原料とCo原料を同時に供給して、CVD法によりウエハWの表面にTiとCoを含む混合膜を堆積させる工程(STEP13)と、処理容器1内を不活性ガスによりパージする工程(STEP14)と、TiとCoを含む混合膜を熱処理してCo3Ti合金を含む薄膜を形成する工程(STEP15)と、処理容器1内からウエハWを搬出する工程(STEP16)と、を含むことができる。このように、本実施の形態では、成膜装置201Eの処理容器1内で、TiとCoを含む混合膜の堆積と、該混合膜の熱処理を行うことができる。
【0080】
(STEP11)
STEP11では、成膜装置201Eの処理容器1内に、基板として、例えば絶縁膜が設けられたウエハWを配置する。具体的には、まず、ゲートバルブG1を開放した状態で、開口1dからウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ5の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ5に載置する。ここで、図9に示したように、ウエハW上には、下地膜301と、その上に積層された絶縁膜303と、が形成されている。絶縁膜303は、第1の実施の形態と同様である。
【0081】
(STEP12)
STEP12では、処理容器1内の圧力及びウエハWの温度を調節する。具体的には、ゲートバルブG1を閉じ、排気装置35を作動させて処理容器1内を所定圧力の真空にする。また、ヒーター7によりウエハWを所定温度まで加熱する。
【0082】
(STEP13)
STEP13は、成膜工程であり、処理容器1内にTiCl4及びCo2(CO)8を供給して、CVD法によりウエハWの表面に混合膜314を堆積させる。この工程では、バルブ17i,17jを開放し、マスフローコントローラ19cによって流量を制御しながら、TiCl4ガス供給源31cからTiCl4ガスを、ガス供給配管15fを介してシャワーヘッド12へ導入する。そして、TiCl4ガスは、シャワーヘッド12のガス拡散空間12b及びガス吐出孔13bを介して処理容器1内の反応空間に供給される。この場合、TiCl4ガスの流量は、最終的に形成される金属薄膜中にCo3Ti合金を効率よく生成させる観点から、例えば30〜100mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。
【0083】
また、TiCl4ガスの供給と同時に、処理容器1内にCo2(CO)8ガスを供給する。すなわち、主原料容器21を温度調節装置23によって温度制御し、成膜原料のCo2(CO)8を気化させる。また、バルブ17hを閉じ、バルブ17a,17gを開放した状態で、さらにバルブ17c,17d及び/又はバルブ17e,17fを開放する。そして、マスフローコントローラ19a,19bによって流量を制御しながら、キャリアガスとして、COガス供給源31aからのCOガス及び/又は不活性ガス供給源31bからの不活性ガスを、ガス供給配管15c,15d及び15bを介して、原料容器21へ導入する。この場合、COガス及び/又は不活性ガスの総流量として、例えば300〜700mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。原料容器21からは、気化したCo2(CO)8をキャリアガスによってガス供給配管15aを介して処理容器1へ向けて供給する。この場合、Co2(CO)8とキャリアガスの混合ガスの流量は、最終的に形成される金属薄膜中にCo3Ti合金を効率よく生成させる観点から、例えば400〜1000mL/min(sccm)の範囲内が好ましい。この際、原料容器21、配管15aの温度を、温度調節装置23,25によってCo2(CO)8の気化温度以上かつ分解開始温度未満の温度に制御する。そして、Co2(CO)8とキャリアガスの混合ガスは、シャワーヘッド12のガス拡散空間12a及びガス吐出孔13aを介して処理容器1内の反応空間に供給される。
【0084】
このようにして、処理容器1内の反応空間で、Co2(CO)8及びTiCl4ガスが熱分解され、CVD法によってウエハW表面の絶縁膜303の上に、混合膜314を成膜することができる。
【0085】
(STEP14)
次に、STEP14では、処理容器1内にパージガスを導入してパージ処理をする。パージガスとしては、不活性ガス供給源31bのN2ガス、Arガスなどを用いることができる。パージガスガスは、不活性ガス供給源31bから、ガス供給配管15d、バイパスラインであるガス供給配管15e、ガス供給配管15a、及びシャワーヘッド12を介して、処理容器1内に導入することができる。パージ工程では、バルブ17gを閉じて主原料容器21へのキャリアガスの供給を停止するとともにバルブ17a,17h、17i,17jを閉じて処理容器1内を排気装置35により引き切り状態とした後、バルブ17e、17f,17hを開放して処理容器1内にパージガスを導入する。なお、STEP14のパージ処理は任意工程であり、省略することもできる。
【0086】
(STEP15)
次に、STEP15では、処理容器1内に不活性ガスを導入したままで、混合膜314に熱処理を行う。この際、最終的に形成される金属薄膜中にCo3Ti合金を効率よく生成させる観点から、温度制御部8Bによりヒーター7の温度を好ましくは300℃以上1000℃以下の範囲内、より好ましくは600℃以上900℃以下の範囲内に設定する。また、処理容器1内の圧力は、例えば133.3Pa〜大気圧付近に維持する。熱処理の時間は、例えば5〜60分とすることが好ましい。このようにして、ウエハW上の混合膜314が加熱され、Co3Ti合金が生成し、Co3Ti合金を含む金属薄膜315が形成される。なお、STEP15では、不活性ガスに代えて、H2等の還元性ガスを導入しながら熱処理を行うことも可能であり、還元性ガスにより、混合膜314の酸化を抑制できるので好ましい。
【0087】
(STEP16)
STEP16では、STEP11と逆の手順でCo3Ti合金を含む金属薄膜315が形成されたウエハWを処理容器1から搬出する。
【0088】
以上のようにして形成されるCo3Ti合金を含む金属薄膜315の構成は、第1の実施の形態と同様である。本実施の形態では、上記STEP11〜STEP16の手順でCuとの格子不整合が小さいCo3Ti合金を効率よく生成させるために、STEP13において混合膜314を形成する際に、Ti原料及びCo原料を、Ti:Co換算での比率が1:3となるように流量制御しながら処理容器1内の反応空間に供給することが好ましい。このようにずれば、混合膜314中に含まれるTiとCoとの比をほぼ1:3とすることが可能になり、Co3Ti合金を効率よく生成させることができる。また、図7に示したように、上記STEP13からSTEP15までの工程は、複数回繰り返し実施することができる。
【0089】
なお、本実施の形態の成膜方法は、上記STEP11〜STEP16の工程以外に、任意工程として、例えば絶縁膜303の表面を改質する工程等を設けてもよい。また、本実施の形態の成膜方法では、上記STEP11〜STEP16の工程を、図1に示したような処理システム200を使用して複数の装置で連続的に実施することもできる。第2の実施の形態の成膜方法における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0090】
以上のように、第1及び第2の実施の形態の成膜方法によれば、絶縁膜303の表面に均一に、かつ所定の厚みでCo3Ti合金を含む金属薄膜315を成膜できる。このようにして得られるCo3Ti合金を含む金属薄膜315は、良好な電気的特性とCuの拡散に対する優れたバリア特性、さらにCu配線に対する優れた密着性を有するものである。すなわち、第1及び第2の実施の形態の成膜方法によって成膜されるCo3Ti合金を含む金属薄膜315は、優れた導電性を有し、Cuめっきのためのシード層として有用である。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、半導体装置において、配線間の電気的接続を確保しながら、銅配線からCuが絶縁膜303中へ拡散することを効果的に抑制するバリア膜として機能する。さらに、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、Cuとの格子不整合が小さいCo3Ti合金を含むため、Cu配線との密着性も保つことができる。従って、本発明の成膜方法により得られるCo3Ti合金を含む金属薄膜315をめっきシード層及び/又はバリア膜として利用することによって、半導体装置の信頼性を確保できる。
【0091】
[ダマシンプロセスへの適用例]
次に、図10〜図12を参照しながら、上記第1及び第2の実施の形態の成膜方法を、ダマシンプロセスに応用した適用例について説明する。図10は、Co3Ti合金を含む金属薄膜315を成膜する前の積層体を示すウエハWの要部断面図である。下地配線層となる層間絶縁膜401の上には、エッチングストッパ膜402、ビア層となる層間絶縁膜403、エッチングストッパ膜404、及び配線層となる層間絶縁膜405が、この順番に形成されている。さらに、層間絶縁膜401にはCuが埋め込まれた下層配線406が形成されている。なお、エッチングストッパ膜402,404は、いずれも銅の拡散を防止するバリア機能も有している。層間絶縁膜403及び層間絶縁膜405は、例えばCVD法により成膜された低誘電率膜である。エッチングストッパ膜402,404は、例えばCVD法により成膜された炭化珪素(SiC)膜、窒化珪素(SiN)膜、炭化窒化珪素(SiCN)膜等である。
【0092】
図10に示すように、層間絶縁膜403,405には、開口部403a,405aがそれぞれ所定のパターンで形成されている。このような開口部403a,405aは、常法に従い、フォトリソグラフィー技術を利用して層間絶縁膜403,405を所定のパターンにエッチングすることによって形成できる。開口部403aはビアホールであり、開口部405aは配線溝である。開口部403aは下層配線406の上面まで達しており、開口部405aは、エッチングストッパ膜404の上面まで達している。
【0093】
次に、図11は、図10の積層体に対して、上記第1又は第2の実施の形態のいずれかの方法によりCo3Ti合金を含む金属薄膜315を形成した後の状態を示している。このCo3Ti合金を含む金属薄膜315は、導電性を有しており、次の工程でCuめっきを行う際のめっきシード層として機能し、かつCuとの密着性にも優れている。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、Cu拡散のバリア膜としても機能する。従って、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、めっきシード層兼バリア膜として、例えば5nm以下(好ましくは2〜5nm)程度の単膜に形成できるため、微細な配線パターンにも適用できる。
【0094】
次に、図12に示すように、Co3Ti合金を含む金属薄膜315をめっきシード層として用い、電解めっき法によりCuを堆積させて開口部403a及び405aを埋めるCu膜407を形成する。開口部403a内に埋め込まれたCu膜407はCuプラグとなり、開口部405a内に埋め込まれたCu膜407はCu配線となる。以降は、常法に従い、CMP(化学機械研磨)法により平坦化を行って余分なCu膜407を除去することにより、Cuプラグ及びCu配線が形成された多層配線構造体を作製することができる。
【0095】
このようにして形成された多層配線構造体において、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、めっきシード層としての機能に加え、Cu拡散のバリア性にも優れている。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、Cu膜407との密着性に優れており、熱応力によるストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、Co3Ti合金を含む金属薄膜315とCu膜407との境界部分での剥離ボイドの発生も抑制できる。また、Co3Ti合金を含む金属薄膜315は、低抵抗な膜であるため、開口部403a,405a内に埋め込まれたCu膜407と下層配線406との電気的なコンタクトを確保できる。従って、信頼性に優れた多層配線構造体を備えた電子部品を製造できる。
【0096】
以上の説明では、成膜方法をデュアルダマシンプロセスへ適用した例を挙げたが、シングルダマシンプロセスにも同様に適用可能である。
【0097】
以上、本発明の実施の形態を述べたが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、被処理体である基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、例えば、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【0098】
また、上記実施の形態では、Ti膜及びCo膜の成膜を、共にCVD法により行う構成としたが、例えばALD(原子層堆積)法やPVD(物理気相成長)法により行うこともできる。この場合、Ti膜及びCo膜を共にALD法又はPVD法のいずれか一つの方法により成膜してもよい。さらに、Ti膜とCo膜を、CVD法、ALD法又はPVD法から選ばれる2種の異なる方法を組み合わせて成膜することもできる。PVD法としては、例えばスパッタリング、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着等を利用することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
200…処理システム、201A,201B,201C,201D…プロセスモジュール、W…半導体ウエハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜が形成された基板の前記絶縁膜上に、Ti膜を堆積させる工程と、
前記Ti膜上に重ねてCo膜を堆積させる工程と、
前記絶縁膜上のTi膜とCo膜との積層膜を、不活性ガス雰囲気もしくは還元雰囲気で加熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜に改質する工程と、
を備えた金属薄膜の成膜方法。
【請求項2】
前記Ti膜を堆積させる工程と、前記Co膜を堆積させる工程と、を交互に繰返す請求項1に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項3】
前記Ti膜と前記Co膜との膜厚比が、1:3である請求項1又は2に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項4】
前記Ti膜を堆積させる工程及び前記Co膜を堆積させる工程をCVD法又はPVD法により行う請求項1から3のいずれか1項に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項5】
絶縁膜が形成された基板の前記絶縁膜に、Ti含有原料とCo含有原料を同時に供給してTiとCoとを含有する混合膜を堆積させる工程と、
前記絶縁膜上の混合膜を、不活性ガス雰囲気もしくは還元雰囲気で加熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜に改質する工程と、
を備えた金属薄膜の成膜方法。
【請求項6】
前記混合膜中に含まれるTiとCoとの比が、1:3である請求項5に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項7】
前記混合膜を堆積させる工程をCVD法又はPVD法により行う請求項5又は6に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の金属薄膜の成膜方法によって、前記絶縁膜上に、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜を形成する工程と、
前記Co3Ti合金を含む金属薄膜上にCu膜を堆積させる工程と、
を備えた半導体装置の製造方法。
【請求項9】
絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されたCo3Ti合金を含む金属薄膜と、
前記Co3Ti合金を含む金属薄膜上に形成されたCu配線と、
を備えた半導体装置。
【請求項10】
前記Co3Ti合金を含む金属薄膜は、前記Cu配線を形成するためのシード層であり、かつ前記Cu配線からのCuの拡散を抑制するCuバリア機能を有するものである請求項9に記載の半導体装置。
【請求項1】
絶縁膜が形成された基板の前記絶縁膜上に、Ti膜を堆積させる工程と、
前記Ti膜上に重ねてCo膜を堆積させる工程と、
前記絶縁膜上のTi膜とCo膜との積層膜を、不活性ガス雰囲気もしくは還元雰囲気で加熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜に改質する工程と、
を備えた金属薄膜の成膜方法。
【請求項2】
前記Ti膜を堆積させる工程と、前記Co膜を堆積させる工程と、を交互に繰返す請求項1に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項3】
前記Ti膜と前記Co膜との膜厚比が、1:3である請求項1又は2に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項4】
前記Ti膜を堆積させる工程及び前記Co膜を堆積させる工程をCVD法又はPVD法により行う請求項1から3のいずれか1項に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項5】
絶縁膜が形成された基板の前記絶縁膜に、Ti含有原料とCo含有原料を同時に供給してTiとCoとを含有する混合膜を堆積させる工程と、
前記絶縁膜上の混合膜を、不活性ガス雰囲気もしくは還元雰囲気で加熱処理してCo3Ti合金を含む金属薄膜に改質する工程と、
を備えた金属薄膜の成膜方法。
【請求項6】
前記混合膜中に含まれるTiとCoとの比が、1:3である請求項5に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項7】
前記混合膜を堆積させる工程をCVD法又はPVD法により行う請求項5又は6に記載の金属薄膜の成膜方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の金属薄膜の成膜方法によって、前記絶縁膜上に、前記Co3Ti合金を含む金属薄膜を形成する工程と、
前記Co3Ti合金を含む金属薄膜上にCu膜を堆積させる工程と、
を備えた半導体装置の製造方法。
【請求項9】
絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されたCo3Ti合金を含む金属薄膜と、
前記Co3Ti合金を含む金属薄膜上に形成されたCu配線と、
を備えた半導体装置。
【請求項10】
前記Co3Ti合金を含む金属薄膜は、前記Cu配線を形成するためのシード層であり、かつ前記Cu配線からのCuの拡散を抑制するCuバリア機能を有するものである請求項9に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−174843(P2012−174843A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34502(P2011−34502)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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