説明

電動バルブ、マスフローコントローラおよび基板処理装置

【課題】弁体の動作速度をさらに高速にでき、かつ大流量を制御できる電動バルブを提供すること。
【解決手段】流路13を流れる流体の流量を制御する目的で、流路13に開度を可変可能な弁構造35を設け、この弁構造35の弁体37と弁体37のアクチュエータであるピエゾ素子42との間に、ピエゾ素子42の伸縮を拡大して弁体37に伝達する変位拡大機構(ストローク拡大機構)50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は電動式のバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流路に設けられた弁構造の弁体に、アクチュエータとしてピエゾ素子を連結して、ピエゾ素子に電圧を印加することにより伸縮させ、これにより弁構造の開度を制御するバルブが知られている。弁体を開閉するアクチュエータとしてピエゾ素子を用いることで、動作速度の速い流量可変バルブとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−162733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、ピエゾ変位量が小さく大流量の制御が難しいため、大流量を制御できる電動式のバルブが求められていた。
【0005】
本発明の一つの実施形態は、弁体の変位量を拡大し、従来より大流量を制御できる電動バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によれば、流路に開度を可変可能な弁構造を設け、ピエゾ素子の伸縮を拡大して弁体に伝達するストローク拡大機構を設けた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態の電動バルブの全閉状態を示す縦断面図。
【図2】図2は、第1の実施形態の電動バルブの全開状態を示す縦断面図。
【図3】図3は、第1の実施形態の電動バルブを用いたマスフローコントローラの構成を模式的に示す図。
【図4】図4は、第1の実施形態の電動バルブの弁構造を示す斜視図。
【図5】図5は、第2の実施形態の電動バルブの全開状態を示す縦断面図。
【図6】図6は、第2の実施形態の電動バルブの全閉状態を示す縦断面図。
【図7】図7は、第2の実施形態の電動バルブの変形例の全閉状態を示す縦断面図。
【図8】図8は、第2の実施形態の電動バルブの変形例の全開状態を示す縦断面図。
【図9】図9は、第3の実施形態の電動バルブの全開状態を示す縦断面図。
【図10】図10は、第3の実施形態の電動バルブの全閉状態を示す縦断面図。
【図11】図11は、第4の実施形態の電動バルブの全閉状態を示す縦断面図。
【図12】図12は、第4の実施形態の電動バルブの全開状態を示す縦断面図。
【図13】図13は、比較例としての電動バルブの全閉状態を示す縦断面図。
【図14】図14は、比較例としての電動バルブの全開状態を示す縦断面図。
【図15】図15は、図3のマスフローコントローラが適用される基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる電動バルブを詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電動バルブの全閉状態を示す縦断面図である。図2は、第1の実施形態の電動バルブの全開状態を示す縦断面図である。図1において、電動バルブ91は、ケーシング本体10aと弁ボディ10bとから成るケーシング10を有している。弁ボディ10bには、第1入出力ポート11と第2入出力ポート12を有する流路13が形成されている。流路13には、弁構造35が設けられている。弁構造35は、流路13が部分的に狭くされて形成された弁座36と、この弁座36を密閉可能に対向する弁体(ポペット)37とから構成されている。電動バルブ91は、弁構造35を開閉することにより流路13に流体を流したり遮断したりする。
【0010】
ケーシング本体10aには、流路13に対してほぼ直交する第1の方向(図1の上下方向)に延び、上下に摺動するシャフト21が設けられている。シャフト21は、ケーシング本体10aの中央部に形成された貫通穴の両端部に設けられた軸受けに支持されて、図1の上下方向に摺動可能に設けられている。シャフト21の図1の下側端は流路13の内部まで延び、その先端に弁体37が取り付けられている。
【0011】
ケーシング本体10aの弁ボディ10bと反対側に、ピエゾ素子42が設けられている。ピエゾ素子42は、詳細には複数のピエゾ素子が第1の方向に積層されてなるピエゾスタックである。ピエゾ素子42は、端子h、gに電圧を印加されて通電する時は第1の方向(図1の上下方向)に長さを伸ばし、断電時には第1の方向に長さを縮めるという性質を持っている。
【0012】
本実施形態においては、ピエゾ素子42と上記弁体37を支持するシャフト21との間に変位拡大機構(ストローク拡大機構)50が設けられている。変位拡大機構50は、ケーシング本体10aに形成された空間としての段付きシリンダ53と、大径ピストン52、および小径ピストン51によって構成されている。段付きシリンダ53は、ピエゾ素子42側に設けられた大径のシリンダとシャフト21側に設けられた小径のシリンダとから成り、大径のシリンダに設けられた大径ピストン52と小径のシリンダに設けられた小径ピストン51とで密閉された空間内部には水などの低粘度の作動液54が充填されている。ピエゾ素子42が大径ピストン52を変位させると、大径のシリンダ内の作動液54が小径のシリンダ内に移動したり、また逆に小径のシリンダ内の作動液が大径のシリンダ内に移動したりして、小径ピストン51は大径ピストン52の移動量より拡大された移動量でシャフト21を移動させる。すなわち、変位拡大機構50は、ピエゾ素子42の伸縮を拡大して弁体37に伝達するストローク拡大機構を構成している。なお、ケーシング本体10aに形成された空間にシリンダ容器を入れることによって、段付きシリンダ53を構成してもよい。
【0013】
このような構成の電動バルブ91は、端子h、gに印加される電圧により弁構造35の開度を変化させることができ、流量制御弁として用いられる。図3は、第1の実施形態の電動バルブ91を用いたマスフローコントローラの構成を模式的に示す図である。マスフローコントローラ100は、ガス流路構成部材110と、流量検出部120と、流量調整部130と、流量制御処理部140と、を備える。
【0014】
ガス流路構成部材110は、図示しないガス供給装置側からの配管と接続されるガス流入口111と、図示しないプラズマ処理室側の配管と接続されるガス流出口112と、ガス流入口111とガス流出口112との間のガス流路113と、を有する。ガス流路113は、ガス流入口111とガス流出口112との間でガスを流す主流部113aと、ガス流量を検知するためのバイパス路113bと、を有する。ガス流路113の一部は、L字状に曲げられており、その部分に本実施形態の電動バルブ91で構成された流量調整部130が設けられている。
【0015】
流量調整部(電動バルブ91)130は、第2入出力ポート12(この場合は、入力ポート12)と第1入出力ポート11(この場合は、出力ポート11)の間のL字状に曲げられた部分に形成された弁座36と、この弁座36に対して離間可能に支持されて流路を開閉する弁体(ポペット)37と、弁体37を弁座36に対して進退動させるアクチュエータとして働くピエゾ素子42とを有し、弁体37とピエゾ素子42とは図示しない変位拡大機構及びシャフト21を介して接続されている。
【0016】
流量検出部120は、たとえば熱式質量流量計からなり、バイパス路113bに設けられる2つのサーモレジスタ121,122と、2つのサーモレジスタ121,122間での抵抗変化を検出するブリッジ回路123と、を有する。サーモレジスタ121,122は、抵抗温度係数の大きな抵抗体からなり、バイパス路113bの上流側と下流側にそれぞれ巻きつけられている。
【0017】
具体的には、センシングを行う場合に、サーモレジスタ121,122に電流を流して2つのサーモレジスタ121,122が加熱された状態とする。この状態で、バイパス路113b内にガスが流れない場合には、サーモレジスタ121,122は同じ温度でバランスする。一方、バイパス路113b内にガスが流れる場合には、上流側(サーモレジスタ121側)はガスによって熱を奪われ、逆に下流側(サーモレジスタ122側)は上流側から奪われた熱によって温度が上昇する。これによって、サーモレジスタ121,122間に温度差が生じ、この際に生じる抵抗値の変化がブリッジ回路123で検出され、流量測定値として出力される。
【0018】
流量制御処理部140は、増幅回路141と、流量設定回路142と、比較制御回路143と、変位量記憶部144と、設定回路145と、を有する。増幅回路141は、ブリッジ回路123によって電気的に出力された流量測定値を増幅する。流量設定回路142は、予め設定されたガス流量を比較制御回路143に対して設定する。
【0019】
比較制御回路143は、増幅回路141からの流量測定値を流量設定回路142で設定された流量設定値と比較し、両者に差分がある場合には、その差分を打ち消す方向に(または差分が所定の範囲内に収まるように)流量調整部(電動バルブ91)130の開度(弁体37の位置)を変化させる設定信号、すなわちピエゾ素子42によって変化させる弁体37の変位量を算出し、設定回路145に出力する。また、比較制御回路143は、流量測定値信号と流量設定値との差分に対して、流量調整部130(電動バルブ91)の開度をどの程度変化させればよいかについての開度制御情報を保持しており、この開度制御保持情報に基づいて変位量を出力する。
【0020】
変位量記憶部144は、半導体基板等に対するガスを用いた加工条件としてガス流量を変化させた場合に、所望のガス流量を得るための流量調整部(電動バルブ91)130の開度、具体的には弁体37の変位量、を処理工程ごとに記憶した変位量記憶情報を格納する。この変位量記憶情報に記憶される変位量としては、前の工程での弁体37の位置からの変位量とすることもできるし、弁体37の基準位置からの変位量とすることもできる。
【0021】
以上のように、本実施形態の電動バルブ91によれば、ピエゾ素子42と弁体37を支持するシャフト21との間に変位拡大機構(ストローク拡大機構)50が設けられているので、ピエゾ素子42の伸縮動作を拡大して弁体37に伝達することができ、弁体37の可動範囲を拡大することで大流量を制御することができる。また、ピエゾ素子42の伸縮動作速度を向上できるため、弁体37の可動速度を向上することも可能である。
【0022】
図4は、本実施形態の電動バルブの弁構造を示す斜視図である。本実施形態の弁構造35においては、弁座36は、例えばその周縁部に径方向に対して凹凸が形成された平断面構造を有する短尺筒状を成している。一方、弁体37は、これに対応する形状の平板状を成している。このような構成にすることにより、弁座36と弁体37との間に形成される開口部が、単純な円筒面ではなく円筒面に対して周縁凹凸状の開口部となる。開口部を通過しようとする流体は開口部の縁に直交する方向に吐出する。そのため、開口縁部が円周に対して凹凸している本実施形態の弁座36においては、開口部が円形のものより吐出量を多くすることができ、更に大流量を制御することができる。
【0023】
なお、上記のような理由から弁座36の開口部は、凹凸を連続させた平断面構造に限らず、周縁に沿って平面方向に出入りするような波形形状であってもよく、すなわち、開口縁が周縁に沿って平面方向に蛇行しているような形状であれば概ね同様の効果を得ることができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の電動バルブの全開状態を示す縦断面図である。図6は、第2の実施形態の電動バルブの全閉状態を示す縦断面図である。本実施形態の電動バルブ92においては、変位拡大機構50の内部に作動液54を加熱膨脹させるヒータ(加熱手段)60が設けられている。なお、作動液54としては、水以外に、低粘度で膨張率の高いエーテルや、シリコンオイルが用いられている。この第2の実施形態においては、ピエゾ素子42が伸張したときに全開し、ピエゾ素子42が縮んだときに全閉する弁構造35が採用されている。
【0025】
本実施形態の電動バルブ92においては、端子h、gを介してピエゾ素子42に電圧が印加されて通電されるときに、ヒータ(加熱手段)60にも通電される。ピエゾ素子42は、端子h、gに電圧を印加される通電時には第1の方向(図5の上下方向)に長さを伸ばし、断電時には第1の方向に長さを縮めるという性質を持っている。ヒータ60は、通電時、作動液54を加熱して膨脹させるので、第2の実施形態の変位拡大機構50は、ヒータ60が設けられていない第1の実施形態の変位拡大機構50比べ、ピエゾ素子42の伸縮動作をさらに拡大して弁体37に伝達する。そのため、弁体37の可動範囲をさらに拡大することで大流量を制御することができる。また、ピエゾ素子42が伸張して弁構造35が開となるときに、ヒータ60に通電しているので、弁構造35の開方向への動作速度をさらに向上できる。
【0026】
図7、図8は、第2の実施形態の電動バルブの変形例を示すもので、図7は電動バルブの全閉状態を示す縦断面図であり、図8は電動バルブの全開状態を示す縦断面図である。この変形例においては、ピエゾ素子42が伸張したときに全閉し、ピエゾ素子42が縮んだときに全開する弁構造35が採用されている。また、ピエゾ素子への給電端子h、gと、ヒータ60への給電端子j、kを独立させている。この変形例の場合、ヒータ60を有する変位拡大機構50によって弁体37の可動範囲を拡大することで大流量を制御可能な点は図5、図6と同様であるが、この変形例の場合は、弁構造35が閉となるときに、ヒータ60に通電しており、弁構造35の閉方向への動作速度を向上できる。
【0027】
なお、これらの第2の実施形態の電動バルブの場合は、流量制御弁よりオンオフ弁への適用が容易である。この第2の実施形態の電動バルブに対しても図4に示した弁構造を適用するようにしてもよい。
【0028】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態の電動バルブの全開状態を示す縦断面図である。図10は、第3の実施形態の電動バルブの全閉状態を示す縦断面図である。電動バルブ93は、ケーシング本体10aと弁ボディ10bとから成るケーシング10を有している。弁ボディ10bには、第1入出力ポート11と第2入出力ポート12を有する流路13が形成されている。流路13には、弁構造35が設けられている。弁構造35は、流路13が部分的に狭くされて形成された弁座36と、この弁座36を密閉するように対向する弁体(ポペット)37とから構成されている。電動バルブ93は、弁構造35を開閉することにより流路13に流体を流したり遮断したりする。
【0029】
ケーシング本体10aには、流路13に対してほぼ直交する第1の方向(図9の上下方向)に上下動可能に設けられたシャフト21が設けられている。シャフト21は、ケーシング本体10aのほぼ中央部を貫通して図9の上下方向に摺動可能に設けられている。シャフト21の下側端は流路13の内部まで延び、その先端に弁体37が取り付けられている。
【0030】
ケーシング本体10aの弁ボディ10bと反対側に、機械増幅式ピエゾ素子(以下、単にピエゾ素子)40が設けられている。ピエゾ素子40は、端子e,fに電圧を印加されると、通電時には長手方向に長さを伸ばし、断電時には長手方向に長さを縮めるという性質を持っている。本実施形態においては、ピエゾ素子40の一端をケーシング本体10aに固定し他端をロッド38によりシャフト21と連結している。支点部材38aは、ロッド38のピエゾ素子40との接続端と、ロッド38のシャフト21との接続端との中央位置よりピエゾ素子40に近い位置を支点としてロッド38を支持しており、てこの作用が働いてピエゾ素子40の伸縮が拡大してシャフト21に伝達される。このように、ロッド38と支点部材38aとは、ピエゾ素子40とシャフト21とを連結しピエゾ素子40の伸縮を拡大して上記シャフト21に伝達するストローク拡大機構を構成している。本実施形態によれば、ピエゾ素子40に近い位置を支点とするてこの作用が働くので、弁構造35の可動範囲を拡大することができる。この第3の実施形態の電動バルブは、流量制御弁、オンオフ弁への適用が可能である。この第3の実施形態の電動バルブに対しても図4に示した弁構造を適用するようにしてもよい。
【0031】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態の電動バルブの全開状態を示す縦断面図である。図12は、第4の実施形態の電動バルブの全閉状態を示す縦断面図である。図11および図12において、電動バルブ94は、オンオフバルブである。電動バルブ94は、ケーシング本体10aと弁ボディ10bとから成るケーシング10を有している。弁ボディ10bには、第1入出力ポート11と第2入出力ポート12を有する流路13が形成されている。流路13には、弁構造15が設けられている。弁構造15は、流路13が部分的に狭くされて形成された弁座16と、この弁座16を密閉するように対向する弁体(ポペット)17とから構成されている。電動バルブ94は、弁構造15を開閉することにより流路13に流体を流したり遮断したりする。
【0032】
一方、ケーシング本体10aには、弁ボディ10bに対してほぼ直交する第1の方向(図11の上下方向)に上下動可能に設けられたシャフト体20が設けられている。シャフト体20は、ケーシング本体10aのほぼ中央部を貫通して図11の上下方向に摺動可能に設けられた棒状のシャフト21と、中心穴にシャフト21を貫通させてシャフト21に固着された鉄製円板状の可動コア23とから構成されている。可動コア23は、シャフト21に直交する面で、ケーシング本体10aの端面に平行となる面に沿って広がる。可動コア23を貫通したシャフト21の下側端は流路13の内部まで延びている。そして、その先端に弁体17が取り付けられている。
【0033】
シャフト体20は、ケーシング本体10a内で図11の上下方向に摺動して弁体17を上下させる。弁体17は、弁座16より離間した全開位置と、弁座16に着座した全閉位置との間で移動する。
【0034】
ケーシング本体10aのシャフト21の周囲には、弾性部材であるコイルばね22が縮設されている。コイルばね22は、ケーシング本体10aと可動コア23との間に縮めて配設されているので、シャフト21を弁座16方向(図11の下方向)に付勢する。そして、弁体17を弁座16より密着させ全閉位置に保持する。
【0035】
ケーシング本体10aのさらにコイルばね22の周囲には、ソレノイド25が配設されている。ソレノイド25は、ヨーク、コイルボビンおよびコイル(各々図示せず)からなり、端子a,bを介して電流を流されると電磁力を発生する。ソレノイド25の電磁力の作用面は、ケーシング本体10aの可動コア23に対向する面に露呈している。そして、ソレノイド25に励磁電流が流れると、ソレノイド25は、コイルばね22の付勢力に抗して可動コア23をケーシング本体10a側に引き寄せる。ソレノイド25が可動コア23を引き寄せることにより、弁体17は弁座16より離れた全開位置に移動する。
【0036】
ケーシング本体10aの上部には、シリンダ32とピストン31からなるシリンダ構造が設けられている。そして、シャフト21の上側端はシリンダ32の内部まで延び、その先端部にピストン31が連結されている。ピストン31は、シリンダ32内を第1の部屋(ケーシング本体10a側)と第2の部屋(ケーシング本体10aと反対側)の2つの部屋に仕切る。そして、第1の部屋には、揮発性の高い液体として充填液体33として例えばエタノールが充填されている。さらに、この第1の部屋の周囲にヒータ34が配設されている。ヒータ34は、端子c,dを介して電流を流されると急激に温度を上昇して充填液体33を加熱し気化させる。第2の部屋には空気穴32aが設けられている。
【0037】
このような構成の電動バルブ94によれば、ソレノイド25に励磁電流が流されて弁体17が全開位置に移動するとき、ほぼ同じタイミングでヒータ34に充填液体を沸点以上にするための電圧が印加される。これにより、充填液体33が急激に気化膨張してピストン31を第1の方向と反対側に付勢する。これにより、弁体17は全閉位置より全開位置に瞬時に移動する。なお、上記ヒータ34に電圧が印加するタイミングをソレノイド25に励磁電流を流すのとほぼ同じと記載したのは、全く同時の場合を含めて最も効率がよいように適切なタイミングに調整されるという意味であり、充填液体33の気化膨張の過程及びソレノイド25の吸引動作を考慮して合体された力により、最も速く弁体17が移動するようにタイミングが調整されるためである。したがって、いずれか一方のタイミングを速くする(あるいは、遅くする)場合もある。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、摺動可能なシャフト21の先端に弁体17を取り付けて弁体17を移動可能に支持している。そして、コイルばね22により全閉位置に付勢配置されている弁体17を、ソレノイド25を駆動することによりコイルばね22の付勢力に抗して全開位置に移動させて保持する。そして、本実施形態の電動バルブ94によれば、シャフト21の後端にピストン31を連結し、このピストンが区画するシリンダ32の弁体17側の部屋に、例えばエタノールなどの液体33を充填する。さらに、この充填液体33が充填されたシリンダ32の周囲に充填液体33を急激に加熱して気化させるヒータ34を配置する。そして、ソレノイド25の駆動に合わせてヒータ34に通電することで、充填液体33を気化膨張させ、その力をピストン31を介して弁体17に伝達する。弁体17はソレノイド25の吸引力に加えて、充填液体33の気化膨張する力を受けて移動するので高速駆動が可能となる。
【0039】
図13は、第4の実施形態の電動バルブ94との比較例としての電動バルブ90の全閉状態を示す縦断面図である。図14は同電動バルブ90の全開状態を示す縦断面図である。図13及び図14に示す電動バルブ90は、エタノールや、このエタノールを充填するシリンダ構造を加熱するヒータを備えていない。そのため、弁体17を全閉位置より全開位置に移動させる力は、ソレノイド25のみのものである。そのため動作速度が遅かった。
【0040】
なお、本実施形態の電動バルブ94において、シリンダ32の上記第1の部屋(ケーシング本体10a側の部屋)に充填される充填液体33は、加熱されて気化膨張するものであればよく、上記エタノールに限らず水等であってもよいが、好ましくは揮発性が高く沸点が低い液体が望ましい。
【0041】
また、本実施形態においては、弁体17は、弁座16より完全に離間した全開位置と、弁座16に着座した全閉位置との間で移動するが、全開位置および全閉位置はそれぞれ完全に開放或いは完全閉塞する位置にかぎるものではなく、例えば概ね開放或いは概ね閉塞する位置であってもよい。すなわち、開度の異なる2つの位置間を移動する弁体を有する電動バルブであれば適用することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、シリンダ32の第1の部屋(ケーシング本体10a側)に充填した液体を気化膨張させて、弁体17が全閉位置より全開位置に移動する際の動作(開弁の動作)を速めるようにしたが、反対にシリンダ32の第2の部屋(ケーシング本体10aと反対側)に充填した液体を気化膨張させて、ヒータ34加熱のタイミングをソレノイド25の励磁電流切りのタイミングと合わせることのより、弁体17の全開位置より全閉位置に移動する際の動作(閉弁の動作)を速めるようにすることもできる。
【0043】
さらに、本実施形態のシャフト体20は、棒状のシャフト21と円板状の可動コア23とから成り、ソレノイド25の電磁吸引力は円板状の可動コア23に作用するが、シャフト構造はこのような構成に限らず、例えばプランジャと呼ばれるような軸径を一部太くした軸体を用い、ソレノイド25の電磁吸引力が太径のこの部分に作用するようにしてもよい。
【0044】
さらにまた、ケーシング本体10aとシャフト体20との間に縮めた状態で配設され、弁体17を全閉位置側に付勢する弾性部材は、本実施形態では上記のようにコイルばね22であるが、弾性部材は、コイルばね22に限らず、板ばねや耐食性が問題なければゴム等であってもよい。この第4の実施形態の電動バルブに対しても図4に示した弁構造を適用するようにしてもよい。
【0045】
図15は、図3に示したマスフローコントローラ100が適用される基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。基板処理装置としては、供給されるガスに基づいて保持した処理基板に半導体製造関連処理を実行するものであれば任意の装置に適用可能であるが、ここではRIE(Reactive Ion Etching)装置300を例示している。RIE装置300は、ウェハなどの処理対象を処理する基板処理室であるプラズマ処理室310と、プラズマ処理室310に所定量のガスを供給するマスフローコントローラ100と、RIE装置300全体をプログラムにしたがって制御するプログラマブルコントローラ200と、を備える。
【0046】
プラズマ処理室310は、気密に構成されたたとえばアルミニウム製のチャンバ311によって構成される。このチャンバ311は接地されている。チャンバ311内には、処理対象としてのウェハ330を静電吸着して保持する静電チャック309と下部電極312が設けられる。静電チャック309と下部電極312の側面および底面の周縁部を覆うように絶縁リング313が設けられ、チャンバ311と静電チャック309および下部電極312との間を電気的に絶縁している。
【0047】
下部電極312、高周波電力を供給する給電線321が接続されており、この給電線321にブロッキングコンデンサ322、整合器323および高周波電源324が接続されている。高周波電源324からは所定の周波数の高周波電力が下部電極12に供給される。
【0048】
チャンバ311内には、下部電極312と対向するように、下部電極312の上部に上部電極として機能するシャワーヘッド314が設けられる。シャワーヘッド314は支持テーブル312と平行に、支持テーブル312から所定の距離を隔てたチャンバ311の上部付近の側壁に固定される。このような構造によって、シャワーヘッド314と支持テーブル312とは、一対の平行平板電極を構成している。また、シャワーヘッド314には、板の厚さ方向を貫通する複数の貫通孔315が設けられており、この貫通孔315からシャワーヘッド314の上部に供給されたガスがチャンバ311内へと供給される。
【0049】
チャンバ311の下部にはガス排気口316が設けられており、ガス排気口316には配管を通じて図示しない真空ポンプが接続されている。また、チャンバ311の上部付近には、プラズマ処理時に使用される処理ガスが供給されるガス供給口317が設けられており、ガス供給口317にはガス配管335を通じて図示しないガス供給装置が接続されている。ガス供給口317とガス供給装置との間には、ガス配管335を流れるガスの流量を調整するマスフローコントローラ100が設けられる。
【0050】
マスフローコントローラ100は、プログラマブルコントローラ200からの指示に従って、所定の流量のガスをチャンバ311内へと供給する。プログラマブルコントローラ200は、使用者によって作成され、処理手順が記録されたプログラムに基づいて、マスフローコントローラ100によるガス流量の調整やプラズマ生成のオン/オフを行う高周波電源324や整合器323の制御などを行う。
【0051】
このように構成されたRIE装置1での処理の概要について説明する。まず、静電チャック309上に処理対象であるウェハ330が載置され、固定される。ついで、ガス排気口316に接続される図示しない真空ポンプでチャンバ311内が真空引きされる。その後、チャンバ311内が所定の圧力に達すると、図示しないガス供給装置からのガスが、マスフローコントローラ100によって所定の流量に調整され、シャワーヘッド314の貫通孔315を通じてからチャンバ311内へと供給される。供給されたガスは、チャンバ311内の圧力が所定の圧力に達すると、シャワーヘッド314(上部電極)を接地した状態で、下部電極312に高周波電圧を印加し、整合器323でインピーダンス整合を取ることでプラズマ処理室310内にプラズマを生成させる。ここで、下部電極312には高周波電圧が印加されているので、プラズマとウェハとの間に電位勾配が生じ、プラズマガス中のイオンがウェハ330へと加速されることになり、異方性エッチング処理が行われる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
10 ケーシング、10a ケーシング本体、10b 弁ボディ、11 入出力ポート、12 入出力ポート、13 流路、15,35 弁構造、16,36 弁座、17,37 弁体(ポペット)、20 シャフト体、21 シャフト、23 可動コア、25 ソレノイド、31 ピストン、32 シリンダ、33 充填液体(エタノール)、34 ヒータ(加熱手段)、38 ロッド(ストローク拡大機構)、38a 支点部材(ストローク拡大機構)、40 機械増幅式ピエゾ素子、42 ピエゾ素子、50 変位拡大機構(ストローク拡大機構)、51 小径ピストン、52 大径ピストン、53 段付きシリンダ、54 作動液(水)、60 ヒータ(加熱手段)、90,91,92,93,94 電動バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に設けられた弁座と前記弁座に対して開度を変化させて前記流路を流れる流体の流量を制御する弁体とを有する弁構造と、
電圧を印加されて伸縮するピエゾ素子と、
前記電圧印加に基づく前記ピエゾ素子の伸縮を拡大して前記弁体に伝えるストローク拡大機構と、
を備えたことを特徴とする電動バルブ。
【請求項2】
前記ストローク拡大機構は、前記弁体と前記ピエゾ素子との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電動バルブ。
【請求項3】
前記ストローク拡大機構は、前記ピエゾ素子側でシリンダ断面積が大きく前記弁体側でシリンダ断面積が小さく作動液が充填された段付きシリンダと、
前記断面積が大きい側のシリンダ内に摺動可能に配設され前記ピエゾ素子と連結される大径ピストンと、
前記断面積が小さい側のシリンダ内に摺動可能に配設され前記弁体と連結される小径ピストンとを備えた変位拡大機構である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電動バルブ。
【請求項4】
前記弁構造が開するときに、前記変位拡大機構の前記作動液を加熱して膨張させる加熱手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項3に記載の電動バルブ。
【請求項5】
前記弁構造が閉するときに、前記変位拡大機構の前記作動液を加熱して膨張させる加熱手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項3に記載の電動バルブ。
【請求項6】
前記作動液は、水またはエーテルまたはシリコンオイルであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の電動バルブ。
【請求項7】
前記ストローク拡大機構は、前記ピエゾ素子に一端が接続され、他端が前記弁構造の弁体に連結されたシャフトに接続され、支点を中心にてこ動作するロッドを有し、前記ピエゾ素子との接続端と前記シャフトとの接続端との中央位置より前記ピエゾ素子に近い側に支点が位置することを特徴とする請求項1に記載の電動バルブ。
【請求項8】
前記流路に設けられた弁座と前記弁座に対して接離可能に設けられ流路を開閉させる弁構造と、
一端部に前記弁体を支持し前記弁体を開位置と閉位置との間で移動させるシャフト体と、
前記ケーシングと前記シャフト体との間に配設され前記弁体を閉位置側に付勢する弾性部材と、
電磁力にて前記弾性部材の付勢力に抗して、前記弁体を開位置に移動させるソレノイドと、
前記シャフト体の他端部に連結されたピストンと、
前記ピストンを収納するとともに前記ピストンより仕切られた前記弁体側空間に液体が充填されるシリンダと、
前記ソレノイドにより弁体を開位置に移動させる際に、前記シリンダに充填された液体を加熱して気化させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする電動バルブ。
【請求項9】
前記弁座は、開口縁が円周に沿って径方向に凹凸形状を成している
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の電動バルブ。
【請求項10】
ガス流路を構成するガス流路構成部材と、
前記ガス流路中に配置され、ガスの流量を調整する請求項1から9のいずれか一つに記載の電動バルブと、
を備えることを特徴とするマスフローコントローラ。
【請求項11】
処理基板を保持し、供給されるガスに基づいて保持した処理基板に半導体製造関連処理を実行する基板処理室と、
前記基板処理室ガスを供給するガス供給路と、
前記ガス供給路に配置される請求項10に記載のマスフローコントローラと、
を備えることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−13170(P2012−13170A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151291(P2010−151291)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】