説明

電子デバイス及び電子デバイスの製造方法

【課題】ガラスリッドを採用し、パッケージベースとリッドとの接合に用いる接合材に脆性材料を用いたパッケージを搭載する場合であっても、樹脂部の挟持により接合材に割れや剥離を生じさせることの無い電子デバイスを提供する。
【解決手段】パッケージ12の周囲を被覆する樹脂部52を有し、パッケージ12を構成するリッド16とパッケージベース14との接合に脆性材料を採用した圧電発振器10であって、樹脂部52には、リッド16の外周にリッド16上面の外縁部から樹脂部52の側面へ向けて樹脂部52の高さを低くしたダレ部54を設け、ダレ部54の下端部を、リッド16下面の水平位置よりも下側に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子デバイス及び電子デバイスの製造方法に係り、特に電子デバイスを構成するパッケージの周囲を樹脂モールドする形態のデバイスであって、パッケージのリッドとしてガラスリッドを採用する場合に好適な電子デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実装面積の小型化と優れた気密性の確保を両立させる電子デバイスの一例として、図19に示すような圧電デバイスが知られている。具体的には、配線基板2上にIC3等の回路素子を搭載し、配線基板2の上部に配置する圧電振動子4と配線基板2との間に導電性を有する接続部材5を介在させた、いわゆる2階建て構造の圧電デバイス1である。そして、圧電デバイス1は配線基板2の上面から圧電振動子4のリッド4aを除く上面までを樹脂部材6で覆っている。このように回路素子や電気的接続部を樹脂部材6で覆うことにより、湿度の影響による共振周波数のズレ等を抑制し、圧電デバイス(圧電発振器)1としての信頼性を向上させることができる。このような構成の圧電デバイス1は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2008−078778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような構成の圧電デバイス1は確かに、実装面積の小型化と高い気密性の確保に寄与することができる。しかし近年、圧電振動子4の高精度化の要求を受け、使用する圧電振動子4のリッド4aとしてガラスリッドを採用し、パッケージ封止後の周波数調整を可能とさせることが要求されることが多い。
【0004】
ところが、ガラスリッドを採用した場合、セラミックのパッケージベースへの固定は、低融点ガラス等の脆性材料を接合材として使用されることとなる。ガラスは金属と異なり延性が無く、脆性が高い。そして、圧電デバイスを実装基板へ実装するために圧電デバイスをチャッキング治具7によって挟持する際、その挟持角度によっては圧電振動子を覆う樹脂部の角に治具が接触することがある。挟持用の治具が樹脂部の角に接触し、角部に応力が加えられた場合、その応力が脆性の高い低融点ガラスによる接合部に集中することとなり、割れや剥離といった不具合を生じさせる可能性がある。
【0005】
そこで本発明では、ガラスリッドを採用したパッケージを搭載する場合であっても、樹脂部の挟持によりリッドとパッケージべースとの接合部である接合材に割れや剥離を生じさせることの無い電子デバイスを提供することを目的とする。また本発明では、このような効果を奏することのできる電子デバイスの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]リッドをパッケージベースの接合面に接合材により接合して構成されるパッケージと、前記パッケージの周囲を被覆する樹脂部とを有する電子デバイスであって、前記樹脂部は、少なくとも前記パッケージベース及び前記接合材を覆っており、前記パッケージの前記周囲を覆う前記樹脂部のうち、少なくとも一部の断面外形線は、前記電子デバイスの実装面と平行な方向について前記断面外形線が最も外側に位置する最外部を有し、前記最外部は、前記電子デバイスの前記実装面と垂直な方向について前記リッドの下面より下方に位置していることを特徴とする電子デバイス。
【0008】
このような構成の電子デバイスであれば、パッケージベースとリッドとを接合する接合材として脆性材料を使用する場合であっても、樹脂部に対する応力がリッドや接合材に集中して作用することが無くなる。このため、樹脂部の挟持によりリッドに割れや剥離が生ずることを抑制できる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の電子デバイスであって、前記最外部は、前記電子デバイスの前記実装面と垂直な方向について前記パッケージベースの前記接合面より下方に位置していることを特徴とする電子デバイス。
【0010】
このような構成とすることで、樹脂部に付加される応力が接合材に作用することをより効果的に抑制することができる。よって、リッドの割れや剥離を防止することができる。
【0011】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の電子デバイスであって、前記断面外形線は、前記最外部の上端と前記リッドの表面との間を接続するダレ部を有し、前記ダレ部は、フィレット状に形成されていることを特徴とする電子デバイス。
【0012】
このような構成とすることで、樹脂部に付加される応力がリッドに作用することをより確実に抑制することができる。また、ダレ部に応力が付加された場合であってもこれを拡散させる効果を奏することができる。
【0013】
[適用例4]適用例1または適用例2に記載の電子デバイスであって、前記断面外形成は、前記最外部の上端と前記リッドの表面との間を接続するダレ部を有し、前記ダレ部は、面取り状に形成されていることを特徴とする電子デバイス。
【0014】
このような構成のダレ部は、機械加工で形成することができる。このため、ダレ部の形状や深さに個体差が無く、リッドの割れや剥離、接合材の割れを抑制することができる。
【0015】
[適用例5]適用例1乃至適用励4のいずれかに記載の電子デバイスであって、前記パッケージは、圧電振動片を収容した圧電振動子であり、前記パッケージの前記下面に設けられた実装電極には、導電性を有する接続部材を介して、回路素子を備えた回路基板が接続され、前記樹脂部は前記回路素子及び前記接続部材を被覆していることを特徴とする電子デバイス。
【0016】
このような構成とすることで、接合部材や回路素子等の保護ができるとともに、回路基板とパッケージとの機械的接合強度の確保、及びリッドの割れや剥離の防止といった種々の役割を持たせることができる。
【0017】
[適用例6]パッケージの周囲に樹脂部を形成する電子デバイスの製造方法であって、枠内に複数のパッケージを配置して樹脂を流し込み、前記複数のパッケージを前記樹脂で覆う工程と、前記複数のパッケージの前記リッドの上面に付着した前記樹脂と、隣り合う前記パッケージの前記リッド間に流し込まれた前記樹脂の一部とを、スキージにより掻き出す工程と、前記樹脂が硬化した後、前記パッケージ毎に電子デバイスを個片化する工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
このような工程で電子デバイスを製造することで、従来の製造工程に比べて工程数を増やすことなく上述した電子デバイスを製造することが可能となる。
【0018】
[適用例7]適用例6に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記樹脂を掻き出す工程は、前記パッケージの長辺方向または短辺方向のいずれか一方のみに対して行うことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
このような方法とすることで、樹脂の掻き出しを長辺方向と短辺方向のいずれか一方のみ行えば、上述の電子デバイスを製造することが可能となる。
【0019】
[適用例8]パッケージの周囲に樹脂部を形成する電子デバイスの製造方法であって、枠内に複数のパッケージを配置して樹脂を流し込み、前記複数のパッケージを前記樹脂で覆う工程と、前記複数のパッケージの前記リッドの上面に付着した前記樹脂をスキージにより掻きとる工程と、前記樹脂が硬化した後、第1のブレードにより前記電子デバイスを個片化するための切断線に沿って前記樹脂のハーフカットを行う、ハーフカット工程と、前記ハーフカット工程の後、前記第1のブレードよりも幅の狭い第2のブレードにより、前記切断線に沿って前記樹脂を切断し、前記電子デバイスを個片化する工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【0020】
このような工程で電子デバイスを製造することによれば、ダレ部の形成を機械加工で行うことが可能となる。よって、ダレ部の形状をバラツキなく製造することができ、リッドの割れや剥離に対する耐性の個体差を無くすことができる。
【0021】
[適用例9]適用例8に記載の電子デバイスの製造方法であって、前記ハーフカット工程は、前記パッケージの長辺方向または短辺方向のいずれか一方のみに対して行うことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
いずれか一方の辺のみにハーフカットを施すようにすることで、ハーフカットの工程時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の電子デバイス、およびその製造方法に係る好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態については、電子デバイスの一例として圧電振動子を備えた圧電デバイス、具体的には圧電発振器を例に挙げて説明することとする。
【0023】
まず、図1を参照して本発明の電子デバイスに係る第1の実施形態について説明する。なお、図1において図1(A)は圧電発振器の側断面を示す概略図であり、図1(B)は平面図、および図1(C)は同図(A)におけるA−A矢視断面を示す図である。
【0024】
本実施形態の圧電発振器10は、圧電振動子11と回路素子としての集積回路(IC)42、および前記IC42を実装する配線基板30とを有することを基本とし、圧電振動子11とIC42、および配線基板30がそれぞれ厚さ方向に重ねて配置されている。
【0025】
前記圧電振動子11は、振動素子である圧電振動片18と、この圧電振動片18を収容するパッケージ12とを基本として構成されている。圧電振動片18の構成部材としては、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等、種々の圧電材料を挙げることができるが、温度特性等の観点からは、水晶により構成されたものが優れているとされている。また、水晶材料を用いた圧電振動片18の具体的事例としては、ATカット圧電振動片、BTカット圧電振動片、音叉型圧電振動片、SAW素子片等を挙げることができる。また、前記パッケージ12は、上記圧電振動片18を実装するためのパッケージベース14と、このパッケージベース14の上部開口部を封止するための蓋体であるリッド16とを基本として構成される。
【0026】
パッケージベース14は、絶縁材料、例えば酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成型して形成される複数の基板を積層し、これを焼結して構成される。このようにして構成されるパッケージベース14の場合、図1(A)に示す形態のパッケージベースを製造するには少なくとも、底板を構成する基板と、側壁を構成する基板といった2つの基板が必要とされる。本実施形態のパッケージベース14の場合、底板を構成する基板の一方の面に、前記圧電振動片18を実装するための端子(実装パッド)20が備えられ、他方の面すなわちパッケージベース14の底面には実装用外部端子22(22a,22b)が備えられている。そして、実装用外部端子22のうちの実装用外部端子22aは、ビアホール24を介して前記実装パッド20と電気的に接続される。
【0027】
リッド16は、上述したパッケージベース14と熱膨張率が近い透光性部材、例えばソーダガラス等を母材として構成され、図示しない低融点ガラス等の接合材17(図2参照)を介してパッケージベース14の接合面14aに接合される。
【0028】
上記のような構成のパッケージベース14に対し、圧電振動片18は導電性接着剤26を介して実装される。実装工程の概略としては、次のようなものである。すなわち、パッケージベース14における実装パッド20上に導電性接着剤26を塗布し、塗布した導電性接着剤26の上部に圧電振動片18の入出力電極(不図示)が位置するように圧電振動片18を搭載する。圧電振動片18の搭載終了後、パッケージベース14の上部開口部をリッド16で封止する。なお、パッケージ12のキャビティ15内部は、真空引きされていることが望ましい。
【0029】
前記配線基板30の一方の面には、圧電振動子11とIC42、IC42と実装用外部端子36とを電気的に接続するための金属パターンが施されている。また、当該配線基板30の他方の面(底面)である実装面31には、圧電発振器10を電子機器の基板(不図示)等に実装するための実装用外部端子36が備えられている。なお、配線基板30の他方の面には、必要に応じて、ICの特性検査やIC内部の情報の書き替え(特性調整)を行うための調整端子(不図示)を設けるようにしても良い。
【0030】
配線基板30の一方の面には、レジスト等の絶縁性コーティング材により構成された被膜40が形成されており、配線基板30の表面にはIC42と金属ワイヤを介して電気的に接続されるボンディングパッド34、詳細を後述する接続部材50を配置するための接続パッド32のみが晒される構成としている。なお、前記ボンディングパッド34と実装用外部端子36とは、その一部を図示するように、ビアホール38を介して電気的に接続されている。また、前記IC42としては、発振回路としての機能の他、周波数−温度特性を補償する機能等を持たせるようにしても良い。なお、本発明でいう回路素子は、ICに限らず、抵抗やコンデンサ等の電子部品により構成されるものであっても良い。
【0031】
本実施形態のIC42は、上述した配線基板30の一方の面における中央付近に、能動面を上側にして搭載される。IC42の搭載には、非導電性の接着剤や、接着シート等の接着部材44を用いることが望ましい。また、IC42と配線基板30との実装は、金属ワイヤ48、具体的には金線等を介する、いわゆるワイヤボンディングによって成される。本実施形態の圧電発振器10を製造する上でのワイヤボンディングは、配線基板30側に配置されたボンディングパッド34に対してボンディングを行う第1ボンディング工程の後、IC42の能動面に配置されたパッド46に対するボンディングを行う第2ボンディング工程を有する、いわゆる逆ボンディングによる工法が望ましい。このような順番でボンディングを行うことにより、配線基板30側のボンディングパッド34とIC42側のパッド46との間の直線距離が短い場合であっても、ボンディングが可能となるからである。また、このようなボンディング方法であれば、IC42側のパッド46の上方に形成される金属ワイヤ48のループ高さを抑えることが可能となる。なお、本実施形態の圧電発振器10では、配線基板30に配置されたボンディングパッド34をそれぞれ接続パッド32の間に配置することで、IC42側のパッド46とボンディングパッド34との距離を稼ぐと共に、配線基板30表面のスペースを有効に活用するようにしている。
【0032】
前記圧電振動子11は、接続パッド32に配置された接続部材50を介して前記IC42の上方にて前記配線基板30に実装される。接続部材50は、配線基板30に配置された接続パッド32と圧電振動子11のパッケージ12の外部に配置された実装用外部端子22とを電気的および機械的に接続する。なお、圧電振動片18に接続された端子以外の端子である実装用外部端子22bと接続パッド32との接続は、圧電振動子11の機械的安定性、および接続強度等を確保するための接続である。
【0033】
ここで、接続部材50としては、一般に知られているハンダボール等であっても良いが、本実施形態における接続部材50は、次のような構成のものが望ましい。すなわち、融点の高い部材を核として、融点の低い導電性部材をコーティングするといった、融点の異なる2種以上の部材から成るものである。具体的には、銅や高融点の樹脂等を球形の核とし、この周囲にハンダをコーティングしたものである。このような構成の接続部材を用いることによれば、核の周囲にコーティングされたハンダにて電気的接続を行いつつ、核により支持対象物(本実施形態では圧電振動子11)の支持高さを定めることができる。また、核を銅のような導電性部材で構成した場合には、当該部分でも電気的接続が成されることとなる。
【0034】
そして、本実施形態の圧電発振器10には、上記各構成要素の他、保護部材として絶縁性樹脂からなる樹脂部52が備えられる。樹脂部52は、配線基板30のIC42が搭載されている側の面から圧電振動子11におけるリッド16の上端面まで形成された樹脂部材(モールド材)からなる。そして、樹脂部52は、配線基板30の一方の面に搭載されたIC42、接続部材50、および圧電振動子11におけるパッケージベース14、接合材17を被覆する。樹脂部52による被覆形態をこのようにすることで、樹脂部52による被覆部分を増やしつつ、透光性を有するリッド16の上面を外部に晒すことが可能となる。
【0035】
リッド16の上面を外部に晒すことにより、圧電発振器10を構成した後、すなわち圧電振動子11とIC42(配線基板30)とを組み合わせた後に、レーザを外部からリッド16を透過させて圧電振動片18に照射して発振周波数調整を行うことが可能となり、所望の発振周波数との誤差を小さくすることが可能となる。また、リッド16の表面に印刷等によりマーキングが施された場合には、これを目視により確認することも可能となる。
【0036】
つまり、湿気に対する耐性強化とIC42を組み合わせた後の発振周波数調整、及びマーキングの目視可能化といった種々の効果をそれぞれ成立させることが可能となるのである。また、圧電発振器10が電子機器の実装基板に実装される際のリフロー工程において、圧電発振器10が加熱され接続部材50が溶融しても、接続部材50が樹脂部52で覆われているため、溶融した接続部材50が圧電発振器10の外部に流出することが無い。また、本実施形態の圧電発振器10は、リッド16の上面と同じ高さまで樹脂部52が形成されている。すなわち、リッド16の上面と配線基板30の底面と配線基板30の側面とを除き、樹脂封止されているため、樹脂部52による保護効果を得つつ、圧電発振器10の低背化を実現できる。
【0037】
図2は、本実施形態の圧電発振器10の部分拡大図であって、圧電発振器10の実装面31と垂直な面についての断面図である。パッケージベース14の周囲を囲う樹脂部52の少なくとも一部は、図2に示すような断面外形線53を有している。その断面外形線53は、圧電発振器10の実装面31と平行な方向について断面外形線53が最も外側に位置する最外部55と、最外部55の上端54aとリッド16の表面との間を接続するダレ部54とを有し、最外部55は、圧電発振器10の実装面31と垂直な方向についてリッド16の下面より下方に位置している。具体的には、圧電発振器10は、樹脂部52の上端部にリッド16の外縁から樹脂部52の側面に向けてフィレット状に樹脂部52の高さを低くしたダレ部54を形成するようにしている。より詳細には、上側端部54bをリッド16の上面外縁としたフィレット(ダレ部54)の下側端部54a(図2参照)、すなわち側面側端部の水平位置を、リッド16の下面16aの水平位置よりも下側に位置させている。
【0038】
このような構成とすることで、パッケージベース14とリッド16との接合部に低融点ガラス等の脆性材料から成る接合材17を採用した場合であっても、圧電発振器10を実装基板へ実装する際に樹脂部52へチャッキング治具を接触させることにより接合材17に応力が集中することが無い。このため、樹脂部52に対してチャッキング治具が斜めに接触した場合であっても、パッケージベース14とリッド16との接合部やリッド16の割れやリッド16の剥離が生ずることを防止できる。
【0039】
なお、最外部55を、圧電発振器10の実装面31と垂直な方向についてパッケージベース14の接合面14aより下方に位置していることにより、接合材17への応力の集中をより確実に抑制できる。
【0040】
図1(C)に示す破線11aは、圧電振動子11の外形形状を示すものである。このように、圧電振動子11は、配線基板30の外形よりも内側に、所定の隙間を設けて配置されている。この隙間には、樹脂部材が配置され、圧電振動子11の4つの側面全体が樹脂部材で被覆されることとなるため、圧電振動子11がより強固に固定される。
【0041】
また、上記構成の圧電発振器10では、配線基板30に圧電振動子11を実装する前に、圧電振動子11の動作チェックや周波数調整を行うことにより、圧電振動子を実装する前に不良を発見することができる。これにより、圧電振動子11を実装した後に不良を発見し、IC42と共に圧電発振器10全体を破棄するという無駄を無くすことができ、製造コストを抑えることにつなげることができる。
【0042】
次に、上記のような構成の圧電発振器の製造方法について説明する。まず、樹脂成形用の枠(不図示)に、一方の面を上にした状態でシート状の配線基板(シート状基板)30aを配置する。ここでいうシート状基板30aとは、構成を上述した圧電発振器10における配線基板30を個片化する前の状態の基板のことをいう(図3参照)。次に、シート状基板30aに配置された接続パッド32のそれぞれに、接続部材50を配置する(図4参照)。その後、シート状基板30aの所定の位置にそれぞれIC42を搭載する(図5参照)。IC42を搭載した後、IC42の能動面に配置されたパッド46とシート状基板30aに配置されたボンディングパッド34(不図示)とを金属ワイヤ48で接続する(図6参照)。その後、予め製造された圧電振動子11を接続部材50を介してシート状基板30aに実装する(図7参照)。
【0043】
圧電振動子11を実装した後、シート状基板30aを配置した枠(不図示)内に流動性を有する樹脂部材52aを流し込み、圧電振動子11を含む圧電発振器全体をモールド材52aで覆う(図8参照)。流し込んだ樹脂部材52aが樹脂部52として硬化する前に、ヘラ(スキージ)80等を用いて圧電振動子11のリッド16表面を擦り、リッド16表面を覆っている樹脂部材52aを掻きとる。この際、スキージ80の先端が圧電振動子11を構成するパッケージベース14の側壁(枠部)の接合面14a(図2参照)よりも下側に位置するような状態で押付けながら掻きとりを行う(図9参照)。これにより、圧電振動子11間に位置する樹脂部材を余分に掻きとることができる。このため、隣り合う圧電振動子11間に流れ込んだ樹脂部材は、表面張力の影響により、濡れ性を有するリッド16の側面を最高部(上側端部54b)として、隣り合う圧電振動子11間における中央部分が凹むような形状をとることとなる。このように、流し込んだ樹脂部材52aが硬化する前に露出部分に付着した樹脂部材52aを掻きとるという工程を実施することで、リッド16にダメージを与えることなく、かつ容易にリッド16の表面に付着したモールド材52aを取り除くことが可能となるのである。また、圧電振動子11間に設けられる隙間は、縦と横が繋がっているため、縦方向(長辺方向)、あるいは横方向(短辺方向)のいずれか一方(例えば縦方向)のみから樹脂部材を余分に掻きとるだけで、残りの方向(例えば横方向)の隙間から樹脂部材が流れ込むこととなり、縦横の溝双方に、リッド上面からのフィレットを形成することが可能となる(図10参照)。
モールド材52aが硬化した後、図10中に破線で示す箇所をダイシングし、圧電発振器として個片化し、圧電発振器10が完成する(図10参照)。
【0044】
このような工程で圧電発振器10を製造することによれば、樹脂封止部を増やし、湿気等に対する耐性を向上させつつ、樹脂部材に圧電振動子11の周波数調整を行うことが可能となる。また、圧電振動子11のリッド16にマーキングが施されていた場合には、これを目視することができる圧電発振器を製造することができる。さらに、樹脂部52の上端部へのダレ部54の構成は、スキージ80の押付け深さのみを変えれば良いため、従来の圧電発振器の製造方法と同じ工程数で本実施形態に係る圧電発振器10を製造することができる。
【0045】
また、製造された圧電発振器10は、パッケージベース14とリッド16との接合部に低融点ガラス等の脆性材料から成る接合材17を採用した場合であっても、樹脂部52へのチャッキングにより接合材17に応力が集中することが無く、当該部分に割れや剥離を生じさせることが無い。
【0046】
次に、図12を参照して本発明の電子デバイスに係る第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る電子デバイスの殆どの構成は、図1、図2に示した第1の実施形態に係る圧電発振器10と同様である。よって、その構成を同一とする箇所には、図面に100を足した符号を付してその詳細な説明は省略することとする。
【0047】
本実施形態に係る圧電発振器110と第1の実施形態に係る圧電発振器10との相違点は、樹脂部におけるダレ部の形態にある。すなわち、第1の実施形態に係る圧電発振器10では、リッド16上面の外縁から樹脂部52の側面に向けたフィレットを形成している。これに対して本実施形態に係る圧電発振器10では、リッド上面の外縁から樹脂部52の側面に向けて、面取り状の傾斜面を形成し、これをダレ部154としている。
【0048】
このような構成であっても、上述した第1の実施形態に係る圧電発振器10と同様に、接合材17への応力集中を避け、パッケージベース14とリッド16との接合部の割れや剥離を抑制することが可能となる。また、ダレ部154をこのような形態とすることにより、ダレ部154の形成を機械加工によって行うことが可能となる。このため、樹脂部材の流れ込み易さ等の違いによる差が出ることが無い。なお、その他の構成、作用、効果については、第1の実施形態に係る圧電発振器10と同様である。
【0049】
このような構成の圧電発振器の製造方法は、以下のようになる。
まず、シート状基板130aに圧電振動子111を実装し、樹脂部材152aを図示しない枠内に流し込んで圧電発振器全体を樹脂部材152aで覆うまでの工程は、上述した第1の実施形態に係る圧電発振器の製造方法と同様である(図13参照)。
【0050】
次に、スキージ180を用いて圧電振動子111のリッド116に付着した樹脂部材152aを取り除く。この時、第1の実施形態に係る圧電発振器10では、スキージ80の先端がパッケージベース14の枠部よりも下に入り込むようにスキージ80を押し当てて、圧電振動子11間に充填された樹脂部材52aの一部を掻きとる旨示したが、本実施形態においては、リッド16の上面に付着した樹脂部材のみを掻きとることができれば良いため、スキージ180はその先端が、リッド116表面に接触可能な高さに維持されるようにすれば良い(図14参照)。
【0051】
樹脂部材152aが硬化した後、厚み(幅)が、隣接する圧電振動子111のリッド間の間隔と同程度のブレード(第1のブレード)190を用いて圧電発振器のハーフカットを行う。第1のブレード190は、エッジ部分に傾斜面を持ち、ハーフカット面にV字状の溝を形成する(図15参照)。
【0052】
ハーフカット終了後、第1のブレード190よりも厚みの薄い第2のブレード(不図示)により、V字状に形成された溝の中央部分をフルカットして圧電発振器110を個片化する(図16参照)。
【0053】
このように、厚み、及び形状の異なるブレードを使用して二段カットを行うことで、個片化された圧電発振器110として、樹脂部152の上端部に傾斜面を有する圧電発振器110を製造することができる。
【0054】
また、本発明の電子デバイスは、樹脂部の上端部を図17に示すような形態としても良い。なお、図17に示す圧電発振器は、その殆どの構成を第1、第2の実施形態として示した圧電発振器と同様なため、その機能を同一とする箇所には、図1に示した符号に200を足した符号を図17に示し、その詳細な説明は省略することとする。相違点としては、角部に凸状のRを形成し、これをダレ部254とするのである。ダレ部254をこのような構成とした場合であっても、Rを形成する極率の中心点がリッド16の下面、望ましくはパッケージベース14の側壁上端の水平位置よりも下側に位置させることが望ましい。
このような構成とした場合であっても、上述した第1、第2の実施形態に係る電子デバイスと同様な効果を奏することができる。
【0055】
また、本発明の電子デバイスの樹脂部に形成するダレ部は、必ずしもリッドを囲むように設ける必要は無く、少なくとも応力が加えられる箇所に設ければ良いため、例えばチャッキング治具が当接される箇所に設ければ良い。すなわち、図18(A)及び(B)に示すように、リッド316外形の対向する2辺の外側の樹脂部にダレ部354を設けても良い。このような構成とした圧電発振器310であっても、上述した第1、第2の実施形態に係る電子デバイスと同様な効果を奏することができる。なお、図18に示す圧電発振器310のダレ部354はフィレット状に示しているが、ダレ部354の形成は、ハーフカットによって行っても良い。この場合、ダレ部354の形状は面取り状となるが、その作用に相違は無く、ダレ部354の形成方向を長辺方向(または短辺方向)のいずれか一方の対を成す辺のみとすることで、ハーフカット工程に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態に係る電子デバイスの構成を示す図である。
【図2】電子デバイスの部分拡大図である。
【図3】第1の実施形態に係る電子デバイスの製造工程を示す第1の図である。
【図4】配置されたシート状基板に接続部材を配置する工程を示す図である。
【図5】シート状基板にICを搭載する工程を示す図である。
【図6】搭載されたICにワイヤボンディングを行う工程を示す図である。
【図7】接続部材を介して圧電振動子を実装する工程を示す図である。
【図8】樹脂部材で圧電発振器全体を覆う工程を示す図である。
【図9】スキージでの樹脂部掻きとりの様子を示す図である。
【図10】圧電振動子間に凹状の溝を形成した様子を示す図である。
【図11】電子デバイスを個片化する工程を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る電子デバイスの構成を示す図である。
【図13】第1の実施形態に係る電子デバイスの製造方法との共通点を示す図である。
【図14】スキージでの樹脂部掻きとりの様子を示す図である。
【図15】ハーフカット工程の様子を示す図である。
【図16】電子デバイスを個片化する工程を示す図である。
【図17】ダレ部の応用形態を示す図である。
【図18】本発明に係る電子デバイスの応用形態を示す図である。
【図19】従来の電子デバイスの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10………圧電発振器、11………圧電振動子、12………パッケージ、14………パッケージベース、16………リッド、18………圧電振動片、20………実装パッド、22(22a,22b)………実装用外部端子、24………ビアホール、26………導電性接着剤、30………配線基板、32………接続パッド、34………ボンディングパッド、36………実装用外部端子、38………ビアホール、40………被膜、42………IC、50………接続部材、52………樹脂部、54………ダレ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッドをパッケージベースの接合面に接合材により接合して構成されるパッケージと、前記パッケージの周囲を被覆する樹脂部とを有する電子デバイスであって、
前記樹脂部は、少なくとも前記パッケージベース及び前記接合材を覆っており、
前記パッケージの前記周囲を覆う前記樹脂部のうち、少なくとも一部の断面外形線は、前記電子デバイスの実装面と平行な方向について前記断面外形線が最も外側に位置する最外部を有し、
前記最外部は、前記電子デバイスの前記実装面と垂直な方向について前記リッドの下面より下方に位置していることを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイスであって、
前記最外部は、前記電子デバイスの前記実装面と垂直な方向について前記パッケージベースの前記接合面より下方に位置していることを特徴とする電子デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子デバイスであって、
前記断面外形線は、前記最外部の上端と前記リッドの表面との間を接続するダレ部を有し、
前記ダレ部は、フィレット状に形成されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電子デバイスであって、
前記断面外形成は、前記最外部の上端と前記リッドの表面との間を接続するダレ部を有し、
前記ダレ部は、面取り状に形成されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子デバイスであって、
前記パッケージは、圧電振動片を収容した圧電振動子であり、
前記パッケージの前記下面に設けられた実装電極には、導電性を有する接続部材を介して、回路素子を備えた回路基板が接続され、
前記樹脂部は前記回路素子及び前記接続部材を被覆していることを特徴とする電子デバイス。
【請求項6】
パッケージの周囲に樹脂部を形成する電子デバイスの製造方法であって、
枠内に複数のパッケージを配置して樹脂を流し込み、前記複数のパッケージを前記樹脂で覆う工程と、
前記複数のパッケージの前記リッドの上面に付着した前記樹脂と、隣り合う前記パッケージの前記リッド間に流し込まれた前記樹脂の一部とを、スキージにより掻き出す工程と、
前記樹脂が硬化した後、前記パッケージ毎に電子デバイスを個片化する工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子デバイスの製造方法であって、
前記樹脂を掻き出す工程は、前記パッケージの長辺方向または短辺方向のいずれか一方のみに対して行うことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
パッケージの周囲に樹脂部を形成する電子デバイスの製造方法であって、
枠内に複数のパッケージを配置して樹脂を流し込み、前記複数のパッケージを前記樹脂で覆う工程と、
前記複数のパッケージの前記リッドの上面に付着した前記樹脂をスキージにより掻きとる工程と、
前記樹脂が硬化した後、第1のブレードにより前記電子デバイスを個片化するための切断線に沿って前記樹脂のハーフカットを行う、ハーフカット工程と、
前記ハーフカット工程の後、前記第1のブレードよりも幅の狭い第2のブレードにより、前記切断線に沿って前記樹脂を切断し、前記電子デバイスを個片化する工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電子デバイスの製造方法であって、
前記ハーフカット工程は、前記パッケージの長辺方向または短辺方向のいずれか一方のみに対して行うことを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−87201(P2010−87201A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254104(P2008−254104)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】