説明

GaN−MISトランジスタ、GaN−IGBT、およびこれらの製造方法

【課題】オン抵抗を低減することができるGaN−MISトランジスタ、GaN−IGBT、およびこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】ゲート電極(M)16とSiNゲート絶縁膜(I)13と半導体層(GaN)12とのMIS構造を有するGaN−MISトランジスタ150であって、半導体層は、オーミックコンタクト用nGaN領域14が離間した2箇所に形成され、SiNゲート絶縁膜は、2箇所のオーミックコンタクト用nGaN領域の基板反対側表面に熱CVD法により成膜されたSiN膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN−MISトランジスタ、GaN−IGBT、およびこれらの製造方法に関し、特に、ノーマリオフ動作MISトランジスタのデバイス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNを用いた基本的なMOSFET(Field Effect Transistor)については、例えば、非特許文献1に開示されている。図8を参照して、この開示技術のGaN−MOSFETの構造および製造方法について説明する。
エピタキシャル基板700は、SiC基板、Si基板、サファイア基板などの基板71の表面に有機金属化学気相成長(Meta1 Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法や分子線結晶成長(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法を用いて、Mg等のp型不純物がドープされたp−GaN層72を結晶成長して形成されている(図8(a))。
さらに、このエピタキシャル基板700は、Mgドープp−GaN層72の表面に、まずSiOゲート絶縁膜73がプラズマ励起化学気相成長(P1asma-Enhanced Chemical Vapor Deposition:PE−CVD)法等によって成膜され、オーミック接触を得るためのn−GaN領域74がSiイオン注入法により形成されている。そして、エピタキシャル基板700は、イオン注入したSiイオンを活性化させるために、高温アニールが行われる(図8(b))。
つぎに、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(lnductive Coupled Plasma Reactive lon Etching:IPC−RIE)法等のドライエッチング法によって、エピタキシャル基板700は、オーミック電極形成箇所のSiOゲート絶縁膜73がエッチングされ、オーミック電極75が形成され、SiOゲート絶縁膜73の表面にゲート電極76を形成することで、GaN−MOSFET750が作製される(図8(c))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H.Kambayashi et al. IEEE Electron Device Lett., vo1.28,no.12, pp.1077-1079, Dec.2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術の構造におけるMOSFETでは、ゲート絶縁膜であるSiOとGaNとの間の界面準位が大きく、オン抵抗が低減できない問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、オン抵抗を低減することができるGaN−MISトランジスタ、GaN−IGBT、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するためになされたものであり、オーミックコンタクト用のnGaN領域またはnGaN選択成長層の基板反対側表面に、熱CVD法によるSiNゲート絶縁膜が成膜されることを特徴とする。
【0007】
熱CVD法によれば、非常に清浄なSiNゲート絶縁膜/nGaNが得られるので、界面準位が小さくなり、オン抵抗を低減することができる。特に、nGaN選択成長層を用いることにより、Siイオン注入後の高温アニ−ルプロセスが必要なくなる。また、IGBTに適用することにより、従来のSiを用いたIGBTと比較して、低オン抵抗かつ高耐圧の特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゲート絶縁膜であるSiNとGaNとの間の界面準位が小さくなり、オン抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態であるGaN−MISFETの作製工程を示す図である。
【図2】第1の実施形態で使用する熱CVDSiN膜のFT−IR測定結果を示す図である。
【図3】第1の実施形態で使用する熱CVD成長SiN膜のX線反射率測定(XRR)の測定結果を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態であるGaN−MISFETの作製工程を示す一の図である。
【図5】本発明の第2の実施形態であるGaN−MISFETの作製工程を示す他の図である。
【図6】本発明の第3の実施形態であるGaN−IGBTの作製工程を示す一の図である。
【図7】本発明の第3の実施形態であるGaN−IGBTの作製工程を示す他の図である。
【図8】非特許文献に開示されている技術のGaN−MOSFETの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図1乃至図7を参照して説明する。なお、各図において同じ構成要素には同一の符号を付してある。以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
(作製工程および構成)
本実施形態においては、MIS構成とするゲート絶縁膜(I)として熱CVD成長SiN膜を用いることによって、ゲート絶縁膜とGaN(S)との間の界面状態を向上させている。
図1(a)乃至図1(c)を用いて、本実施形態のGaN−MISFET150の作製工程を説明する。
まず、図1(a)に示すように、エピタキシャル基板100は、基板11の表面に有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法や分子線結晶成長(Molecu1ar Beam Epitaxy:MBE)法により、Mgなどのp型不純物をドープしたMgドープp−GaN層12が成長させられている。
【0012】
次に、図1(b)に示すように、熱CVD法によって、エピタキシャル基板100は、Mgドープp−GaN層12の表面に、熱CVDSiNゲート絶縁膜13が成膜される。そして、Mgドープp−GaN層12は、オーミック接触を得るためのSiイオン注入、および、注入されたSiイオンを活性化させるための高温でのアニール処理を行うことにより、n−GaN領域14が形成される。
【0013】
ついで、図1(c)に示すように、エピタキシャル基板100は、熱CVDSiNゲート絶縁膜13が、ICP−RIE法等のドライエッチング法によって、2つエッチング開口される。この開口部は、n−GaN領域14の基板反対側表面を少なくとも含み、MISFETのソース電極用およびドレイン電極用のオーミック電極が形成される箇所である。
さらに、エピタキシャル基板100は、周知のフォトリソグラフィ、電極材料の真空蒸着およびリフトオフ法により、前記開口部に2カ所のオーミック電極15が形成される。そして、エピタキシャル基板100は、これら2つのオーミック電極15間のSiNゲート絶縁膜13の表面に、オーミック電極15を形成した同様の方法で、ゲート電極16が形成される。これらの工程により、GaN−MISFET150が作製される。
【0014】
すなわち、GaN−MISFET150は、基板11の表面にMgドープp−GaN層12が結晶成長されたエピタキシャル基板100と、エピタキシャル基板100のMgドープp−GaN層12の基板反対側表面からMgドープp−GaN層12の内部に設けられた少なくとも2つの離間したn−GaN領域14と、2つのn−GaN領域14の基板反対側表面の一部の各々およびMgドープp−GaN層12の基板反対側表面に形成された熱CVDSiNゲート絶縁膜13と、熱CVDSiNゲート絶縁膜13の基板反対側表面に形成されたゲート電極16と、2つのn−GaN領域14の基板反対側表面の他部の各々に形成された2つのオーミック電極15とを備えている。
【0015】
(動作)
本実施形態の特徴構成である熱CVDSiNゲート絶縁膜13は、熱CVD法により成膜され、従来のPE−CVD法により成膜されたPE−CVDSiN膜と比べて、特性が異なる。
ここで、本実施形態の熱CVDSiN膜の成膜条件とPE−CVDSiN膜の成膜条件とを比較し、成膜されるSiN膜の特性を考察する。
【0016】
まず、本実施形態の熱CVDSiN膜13は、水素(H)および窒素(N)の雰囲気の常圧下、かつ、基板温度700℃乃至800℃で、チャンバ(反応装置)内を加熱パージした後、反応ガスとして、窒素(N)ベース0.7wt%のシラン(SiH)ガスを100sccm、および、100%のアンモニア(NH)ガスを6slmの流量として反応させることにより、基板表面に成膜される。
【0017】
一方、PE−CVDSiN膜は、例えば、圧力120Pa(900mTorr)の減圧下で、基板温度300℃、RF(13.56MHz)出力45W、反応ガスとして、窒素(N)ベース0.7重量%のシラン(SiH)ガスを31sccmの流量で流し、100%のアンモニア(NH)ガスを5.5sccmの流量で流し、そして、キャリアガスとして窒素(N)ガスを1500sccmの流量で流すことにより、基板表面に成膜される。
【0018】
2つのCVD法を比較すると、まず、基板温度は一般に高温である方が、基板表面の水分、吸着分子等が除去されることになり、基板表面とCVD膜との清浄な界面を得ることができる。したがって、基板温度からすれば、基板温度が高温である熱CVD法の方が、清浄なGaN/SiNゲート絶縁膜界面を得ることができる。水分(HO)の吸着は、成膜されるSiN膜中の水素(H)および酸素(O)の含有量に関係する。
【0019】
SiN膜の成膜過程を考察すると、熱CVDSiN膜は、常圧反応であることから、プラズマ等の励起反応をあえて加速させる要因が含まれないために、化学量論的(ストイキオメトリック)なSi膜に近いCVDSiN膜が形成されると考えられる。
一方、PE−CVD法は、プラズマ励起(P1asma-Enhanced)させることでSiN膜の成膜反応温度(基板温度)を低温化させてSiN膜を形成する方法である。基板温度を低温化することで低温化プロセスが可能となるために、一般的に、SiN絶縁膜として汎用される。なお、熱CVD法において、基板温度のみをPE−CVD法の基板温度である300℃とした場合には、SiN膜を成膜することはできない。
【0020】
また、PE−CVD法は、低温状態でプラズマ反応を励起するために、例えば、基板表面に吸着されている水分(HO)も、プラズマ状態にすることになる。このため、PE−CVD法は、水素(H)イオン、酸素(O)イオンを含有したプラズマ環境に基板表面が曝されながら、SiN膜が成膜されることになり、水素(H)や酸素(O)が取り込まれたCVDSiN膜が成膜されることになる。
【0021】
すなわち、PE−CVD法により成膜されたSiN膜は、化学量論的(ストイキオメトリック)なSi膜とは異なる、例えば、窒素(N)組成比が小さく、水素含有量が大きいSiN膜が形成される。ひいては、酸素(O)を含んだ組成のCVDSiON膜となってしまうことも考えられる。したがって、PE−CVD法では、基板表面とCVD膜との間で清浄な界面を得ることはできない。
【0022】
図2(a)および図2(b)は、本実施形態で形成される熱CVDSiN膜のFT−IR測定結果を示す。なお、比較のために、PE−CVDSiN膜についての測定結果も同図に記載した。横軸は波数(Wave number[cm−1])であり、横軸は吸光度(Absorbance Unit[a.u.])である。
測定の結果、水素Hに起因したSi−H結合(2160cm−1)およびN−H結合(3350cm−1)のピークを比較すると、熱CVDSiN膜において、Si−H結合のピークがほぼ無くなるまで減少しており、熱CVDSiN膜中の水素含有量が大きく減少していることがわかる。
【0023】
また、熱CVDSiN膜は、バッファフッ酸BHF(フッ化水素酸50wt%:フッ化アンモニウム水溶液40wt%=1:9の混合比の水溶液)によるエッチング速度が2nm/minであり、屈折率が2.0であり、膜密度が2.9gcm−3である。
一方、PE−CVDのエッチング速度は、PE−CVDSiN:50nm/min、PE−CVDSiO:240nm/minであり、屈折率はPE−CVDSiN:1.9、PE−CVDSiO:1.5である。
【0024】
図3は、熱CVD成長SiN膜のX線反射率測定(XRR)の測定結果である。
測定の結果、熱CVD成長SiN膜の密度は、2.9gcm−3と高密度であることがわかった。
また、図示しないが、バッファフッ酸(BHF)によるエッチングレートは、2nm/minと非常に遅いことからも、非常に高密度・低水素含有量であることが確認された。
【0025】
(効果)
第1の実施形態の構造にすることによって、非常に清浄なゲート絶縁膜/GaN界面が形成され、界面準位が小さくなるので電気特性が大きく向上する。
【0026】
(第2の実施形態)
(概要)
第1の実施形態では、Mgドープp−GaN層12に対してSiイオン注入、および、高温でのアニール処理を行うことにより、n−GaN領域14を形成したが、第2の実施形態は、n−GaNの領域を選択(再)成長によって形成した。
【0027】
図4および図5は、本実施形態のGaN−MISFET350の作製工程を示す図である。
図4(a)において、エピタキシャル基板300は、基板31の表面にMOCVD法等の成長法でMgなどのp型不純物をドープしたMgドープp−GaN層32が成長されて形成される。
さらに、図4(b)に示されるように、エピタキシャル基板300は、熱CVD法によって、Mgドープp−GaN層32の基板反対側表面に、熱CVDSiN第1ゲート絶縁膜33が成長される。そして、ICP−RIE法等のドライエッチング法を用いて、エピタキシャル基板300は、選択成長予定領域の熱CVDSiN第1ゲート絶縁膜33を開口形成した選択成長用開口部34が形成される。
【0028】
つぎに、図4(c)に示されるように、MOCVD法等により、エピタキシャル基板300は、n−GaN選択成長層35が選択成長され、このn−GaN選択成長層35は、開口形成された熱CVDSiN第1ゲート絶縁膜33のMgドープp−GaN層32の表面にオーミック接触を得る。
【0029】
次に、図5(a)に示されるように、エピタキシャル基板300は、熱CVD法を用いた熱CVDSiN第2ゲート絶縁膜36が成膜される。
そして、図5(b)に示されるように、熱CVDSiN第2ゲート絶縁膜36は、ソース電極用およびドレイン電極用の2箇所のオーミック電極形成箇所で、ICP−RIE法等のドライエッチング法によってエッチング開口され、開口された2箇所のn−GaN選択成長層35の表面にオーミック電極37が形成され、2つのオーミック電極37の中間部に成膜された熱CVDSiN第1ゲート絶縁膜33および熱CVDSiN第2ゲート絶縁膜36の2層構成のゲート絶縁膜の表面にゲート電極38が形成され、
これらの工程により、GaN−MISFET350が作製される。
【0030】
すなわち、GaN−MISFET350は、基板31の表面にMgドープp−GaN層32が結晶成長されたエピタキシャル基板300と、熱CVDSiN第1ゲート絶縁膜33の開口部であって、Mgドープp−GaN層32の表面に形成された2つのn−GaN選択成長層35と、2つのn−GaN選択成長層35の中間部であって、Mgドープp−GaN層32の基板反対側表面に形成された熱CVDSiN第1ゲート絶縁膜33と、前記熱CVD成長SiN第1ゲート絶縁膜の表面、前記2つのn−GaN選択成長層の内側側面、および前記2つのn−GaN選択成長層35の基板反対側表面の一部に形成された熱CVDSiN第2ゲート絶縁膜36と、2つのn−GaN選択成長層35の基板反対側表面の他の一部の各々に形成された2つのオーミック電極37と、熱CVDSiN第2ゲート絶縁膜36の基板反対側表面に形成されたゲート電極38とを備え、n−GaN選択成長層35は、熱CVDSiN第1ゲート絶縁膜33の厚さおよび熱CVDSiN第2ゲート絶縁膜36の厚さの和よりも厚く形成されている。
【0031】
第1の実施形態と同様に、熱CVDSiN第2ゲート絶縁膜36は、バッファフッ酸BHF(フッ化水素酸50wt%:フッ化アンモニウム水溶液40wt%=1:9の混合比の水溶液)によるエッチング速度は、1〜2nm/minであり、屈折率は、2.0であり、膜密度は、2.9gcm−3である。
【0032】
(効果)
GaN−MISFET350は、n−GaN選択成長領域を用いることによって、Siイオン注入後の高温アニ−ルプロセスが必要なくなるので、工程の簡略化が可能となる。
【0033】
(第3の実施形態)
(作製工程および構成)
第3の実施形態は、熱CVD法によるSiN絶縁膜を用いたMIS構造をInsulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)に適用した形態である。
図6乃至図7を参照して、本実施形態のGaN−IGBT550の作製工程を説明する。
まず、図6(a)において、エピタキシャル基板500は、導電性基板51の表面にMOCVD法等の結晶成長法により、Mgなどのp型不純物をドープしたMgドープ第1p−GaN層52、Siなどのn型不純物をドープしたSiドープn−GaN層53、および、Mgなどのp型不純物をドープしたMgドープ第2p−GaN層54が順次積層成長して構成されている。
【0034】
次に、図6(b)において、エピタキシャル基板500は、IPC−RIE法により、Mgドープ第2p−GaN層54の表面からSiドープn−GaN層53の基板反対側表面までドライエッチングされ、アパーチャ形成部分のアパーチャ形成用リセス55が開口される。
そして、図6(c)において、選択再成長法により、n−GaNアパーチャ56がアパーチャ形成用リセス55に選択埋め込み成長される。
【0035】
次に、図7(a)において、熱CVD法により、SiNゲート絶縁膜57を成膜した後、n−GaNアパーチャ56の両側にSiイオン注入、および、高温アニール処理を行い、オーミック接触を得るためのn−GaN領域58が形成される。
【0036】
そして、図7(b)に示されるように、n−GaN領域58上のSiNゲート絶縁膜57が、エミッタ電極形成用に開口され、開口されたn−GaN領域58の表面にエミッタ電極59が形成される。なお、このエミッタ電極59は、正面図では両側2箇所に形成されているように見えるが、平面視で円環状に1つ形成されている。
【0037】
さらに、このエミッタ電極59の中心部に埋め込み成長されたn−GaNアパーチャ56に対向するSiNゲート絶縁膜57の表面にゲート電極60が形成され、そして、導電性基板51の表面にコレクタ電極61が形成される。これらの工程により、GaN−IGBT550が作製される。
【0038】
すなわち、GaN−IGBT550は、コレクタ電極61、導電性基板51、Mgドープ第1p−GaN層52、Siドープn−GaN層53、及びMgドープ第2p型GaN層54がこの順で積層されたエピタキシャル基板500と、Mgドープ第2p−GaN層54のアパーチャ形成用リセス55に形成されたn−GaNアパーチャ56と、Mgドープ第2p−GaN層54の基板反対側表面であって、n−GaNアパーチャ56の外周部に形成されたエミッタ電極59と、Mgドープ第2p―GaN層54およびn−GaNアパーチャ56の基板反対側表面であって、エミッタ電極59の内周面に形成された熱CVDSiNゲート絶縁膜57と、熱CVDSiNゲート絶縁膜57の基板反対側表面であって、n−GaNアパーチャ56の端面に対向するゲート電極60とを備え、Mgドープ第2p−GaN層54は、n−GaNアパーチャ56の外周であって、Mgドープ第2p―GaN層54の基板反対側部分に、n−GaN領域58が形成されている。
【0039】
(効果)
本実施形態によれば、GaN−IGBT550は、熱CVD成長SiNゲート絶縁膜57を用いているので、従来のSiを用いたIGBTと比較して、低オン抵抗かつ高耐圧の特性を得ることができる。
【0040】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような種々の変形が可能である。
(1)前記各実施形態は、p型半導体層にp型GaN層を用いたが、p型AlGaN層を用いることもできる。
(2)第1の実施形態、第2の実施形態、および、第3の実施形態では、p型GaN層のドーパントにMgを用いたが、Zn等の他のp型ドーパントでも可能である。
(3)第1の実施形態、第2の実施形態、および、第3の実施形態の構造は、GaAs等の他の半導体に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
11、31、71 基板
51 導電性基板
12、32、72 Mgドープp−GaN層
52 Mgドープ第1p−GaN層
53 Siドープn−GaN層
54 Mgドープ第2p−GaN層
13、57 熱CVDSiNゲート絶縁膜
33 熱CVDSiN第1ゲート絶縁膜
73 SiOゲート絶縁膜
55 アパーチャ形成用リセス
56 n−GaNアパーチャ
14、58、74 n−GaN領域
34 選択成長用開口部
35 n−GaN選択成長層
36 熱CVDSiN第2ゲート絶縁膜
15、37、75 オーミック電極
59 エミッタ電極
16、38、60、76 ゲート電極
61 コレクタ電極
100、300、500、700 エピタキシャル基板
150、350、 GaN−MISFET
550 GaN−IGBT
750 GaN−MOSFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極(M)とSiNゲート絶縁膜(I)と半導体層(GaN)とのMIS構造を有するGaN−MISトランジスタであって、
前記半導体層は、オーミックコンタクト用nGaN領域が離間した2箇所に形成され、
前記SiNゲート絶縁膜は、前記2箇所のオーミックコンタクト用nGaN領域の基板反対側表面に熱CVD法により成膜されたSiN膜であることを特徴とするGaN−MISトランジスタ。
【請求項2】
前記SiNゲート絶縁膜は、
バッファフッ酸BHF(フッ化水素酸50wt%:フッ化アンモニウム水溶液40wt%=1:9の混合比の水溶液)によるエッチング速度が1〜2nm/minであり、
屈折率が2.0であり、膜密度が2.9gcm−3である特性を有することを特徴とする請求項1に記載のGaN−MISトランジスタ。
【請求項3】
基板表面にp型GaN層が結晶成長されたエピタキシャル基板と、
前記エピタキシャル基板の前記p型GaN層の基板反対側表面から前記p型GaN層内部に離間して設けられた少なくとも2つのn−GaN領域と、
前記2つのn−GaN領域の中間部の前記p型GaN層の表面に形成されたSiNゲート絶縁膜と、
前記SiNゲート絶縁膜の基板反対側表面に形成されたゲート電極と、
前記2つのn−GaN領域の表面の各々に形成された2つのオーミック電極と
を備え、
前記SiNゲート絶縁膜は、熱CVD法により成長したSiN膜であることを特徴とするGaN−MISトランジスタ。
【請求項4】
基板表面にp型GaN層が結晶成長されたエピタキシャル基板と、
前記p型GaN層の基板反対側表面に離間して形成された2つのn−GaN選択成長層と、
前記p型GaN層の基板反対側表面であって、前記2つのn−GaN選択成長層の中間部に形成されたSiN第1ゲート絶縁膜と、
前記SiN第1ゲート絶縁膜の表面、前記2つのn−GaN選択成長層の内側側面、および前記2つのn−GaN選択成長層の基板反対側表面の一部に形成されたSiN第2ゲート絶縁膜と、
前記2つのn−GaN選択成長層の基板反対側表面の他の一部の各々に形成された2つのオーミック電極と、
前記SiN第2ゲート絶縁膜の基板反対側表面に形成されたゲート電極と
を備え、
前記n−GaN選択成長層は、前記SiN第1ゲート絶縁膜の厚さおよび前記SiN第2ゲート絶縁膜の厚さの和よりも厚く形成され、
前記SiN第1ゲート絶縁膜および前記SiN第2ゲート絶縁膜は、熱CVD法により成長したSiN膜であることを特徴とするGaN−MISトランジスタ。
【請求項5】
基板上にp型GaNが形成される工程と、
前記p型GaNの基板反対側表面に熱CVD成長SiN第1ゲート絶縁膜が形成される工程と、
ドライエッチング法で、前記熱CVD成長SiN第1ゲート絶縁膜に離間した2つの開口部を形成する工程と、
前記2箇所の開口部に、選択成長によるn−GaN選択成長層を形成する工程と、
前記熱CVD成長SiN第1ゲート絶縁膜の表面、前記2つのn−GaN選択成長層の内側側面、および前記2つのn−GaN選択成長層の基板反対側表面の一部に、前記n−GaN選択成長層よりも薄い熱CVD成長SiN第2ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記2つのn−GaN選択成長層の基板反対側表面の他の一部の各々にオーミック電極を形成する工程と、
前記熱CVD成長SiN第2ゲート絶縁膜の基板反対側表面にゲート電極を形成する工程と、
を少なくとも備えたことを特徴とするGaN−MISトランジスタの製造方法。
【請求項6】
コレクタ電極、導電性基板、第1p型GaN層、n型GaN層、及び第2p型GaN層がこの順で積層されたエピタキシャル基板と、
前記第2p型GaN層のリセス部に形成されたn−GaNアパーチャと、
前記第2p型GaN層の基板反対側表面であって、前記n−GaNアパーチャの外周部に形成されたエミッタ電極と、
前記第2p型GaN層および前記n−GaNアパーチャの基板反対側表面であって、前記エミッタ電極の内周面に形成されたSiNゲート絶縁膜と、
前記SiNゲート絶縁膜の基板反対側表面であって、前記n−GaNアパーチャの端面に対向するゲート電極とを備え、
前記第2p型GaN層は、前記n−GaNアパーチャの外周であって、前記第2p型GaN層の基板反対側部分に、n−GaN領域が形成され、
前記SiNゲート絶縁膜は、熱CVD成長SiNゲート絶縁膜であることを特徴とするGaN−IGBT。
【請求項7】
導電性基板の表面に、第1p型GaN層、n型GaN層、及び第2p型GaN層を成長する工程と、
前記第2p型GaN層をドライエッチングして、アパーチャ形成部分のリセスを作製し、このリセス部にn−GaNアパーチャを成長する工程と、
前記第2p型GaN層、および前記n−GaNアパーチャの基板反対側表面に、熱CVD成長SiNゲート絶縁膜を成長する工程と、
Siイオン打ち込み、および高温アニールによって、前記n−GaNアパーチャの外周であって、前記第2p型GaN層の基板反対側部分に、n−GaN領域を形成する工程と、
前記n−GaN領域の基板反対側表面にエミッタ電極を形成し、前記熱CVD成長SiNゲート絶縁膜の基板反対側表面にゲート電極を形成し、前記導電性基板の裏面にコレクタ電極を形成する工程と
を有することを特徴とするGaN−IGBTの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−210780(P2011−210780A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74556(P2010−74556)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】