説明

HEMT装置及びその製造方法

HEMT装置及びHEMT装置の製造方法であって、HEMT装置は、基板(12)上のバッファ層(14)と、バッファ層(14)上の半導体層と、半導体層上の絶縁層(16,17)と、半導体層に接触するソース電極(22)及びドレイン電極(23)と、ソース電極(22)とドレイン電極(23)との間のゲート電極(24,104,114)と、を備え、ゲート電極(24,104,114)の下の半導体層に配置されたチャネルをピンチオフ状態にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイドバンドギャップ半導体窒化ガリウムHEMT(高電子移動度トランジスタ)装置に関し、更に詳しくは、エンハンスメントモード電界効果トランジスタを形成するために複数の窒化ガリウム材料層の分極特性が用いられる装置構造設計に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代半導体の窒化ガリウム(GaN)の絶縁破壊電圧は、3MV/cmであり、第1世代半導体のシリコン(Si)又は第2世代半導体のヒ化ガリウム(GaAs)の絶縁破壊電圧より高く、したがって、GaNの電子装置は、非常に高い電圧に耐えることができる。GaNヘテロ接合構造のチャネルは、非常に高い電子濃度を有し、非常に高い電子移動度を有する。これは、窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが高周波数で大電流を流すことができるとともに非常に小さいオン抵抗を有することを意味する。さらに、GaNは、ワイドバンドギャップ半導体であり、高温で動作することができる。上述したこれらの特性により、GaN HEMTは、高周波及び高出力無線周波装置又は高電圧スイッチング装置として特に適するようになる。
【0003】
窒化ガリウムHEMTは、一般的には、デプレッションモード電界効果トランジスタであり又はノーマリーオン装置と称される。その理由は、圧電分極及び自発分極によって形成されるAlGaN/GaNヘテロ接合チャネルが非常に高い2次元電子ガス(2DEG)の濃度を有するからである。ノーマリーオン装置に対して、エンハンスメントモード装置とも称されるノーマリーオフ装置も存在する。デプレションモード装置のアプリケーションは制限を有する。無線周波数電力増幅領域において、デプレッションモード装置は、ゲート電極に対して負バイアス電圧を用いる必要があり、これは、完全に独立した電源を設けるためのシステムを必要とする。電力変換の分野において、デプレッションモードスイッチング装置のアプリケーションは、上述したような独立した負バイアス回路を必要とするだけでなく、電力変換装置に電源を入れる前に独立した負バイアス回路に電源を入れる必要があり、これを実現するのは通常困難である。エンハンスメントモード装置は、電力変換装置に電源を入れる間に流れる電流が急に上昇することにより装置が故障するのを回避するために電力変換装置で必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、エンハンスメントモード窒化ガリウムHEMTを実現するための通常の方法は、埋込みーゲート構造、ゲートメタルコンタクト領域に対するフッ化プラズマ照射処理等を含む。図1は、埋め込みゲート構造を有するGaN HEMTを示す。GaN材料が正常に成長するための基板12は、サファイア、SiC又はシリコンである。核形成層13は、基板12の上に成長する。GaNエピタキシャル層101は、核形成層13の上に成長する。AlGaN層102は、GaNエピタキシャル層101の上に成長する。この場合、2次元電子ガス(2DEG)がAlGaN層とGaN層との間の界面に発生し、これによってチャネルが形成される。二つの抵抗接点は、電界効果トランジスタのソース22及びドレイン23をそれぞれ形成する。ソース22とドレイン23との間の領域において、トレンチを形成するためにAlGaNがエッチングされ、その後、金属ゲート104がトレンチに形成される。トレンチ及びトレンチに形成される金属ゲートは、埋込みゲート構造と称される。AlGaN層が十分薄い場合、2DEGが激減し、したがって、ゲートの下のチャネルに電子が存在しない。そのような構造は、エンハンスメントモード電界効果トランジスタと称される。その理由は、そのチャネルが零のゲートバイアス電圧の下でピンチオフ状態にされるからである。しかしながら、非常に強い分極電界がAlGaN層に存在するために、AlGaN層の厚さが非常に小さい場合でもチャネルに電子が生じうる。その結果、埋込みゲート構造を有するエンハンスメントモード装置に対して、金属ゲートの下のAlGaN層の厚さを、ドライエッチングにより3〜5nmの範囲又はそれより下まで薄くする必要がある。そのような高精度でエッチング工程を制御するのは非常に困難である。したがって、装置のピンチオフ電圧は、大きな変動を示す。さらに、そのような構造のピンチオフの有効性は、ピンチオフ電圧が低いために制限され、したがって、零バイアスの場合でも少量のチャネルリーク電流が存在したままである。装置が高電圧で動作するとき、チャネルリーク電流により装置のバーンアウトが簡単に生じうる。したがって、そのような装置構造は実用的でない。
【0005】
図2は、ゲートメタルコンタクト領域に対してフッ化プラズマ照射処理を施したGaN HEMTを示す。ソース22及びドレイン23を形成する前の工程は、埋込みゲートGaN HEMTの工程と同一である。ソース及びドレインを形成した後、ゲートの下の領域には、金属ゲート114を堆積する前にフッ化プラズマ照射処理が施される。フッ化プラズマ照射が施されるAlGaN層115の結晶構造には衝撃が加えられ、これによって、AlGaN層115の下のチャネル118の2DEGが激減し、エンハンスメントモード電界トランジスタを形成する。そのような装置の信頼性は、結晶構造に衝撃が加えられるために確証されていなかった。さらに、フッ素原子は小さい。装置が高温かつ高電圧の条件で長時間動作する場合、フッ素原子がALGaNから放出されるおそれがある。エンハンスメントモードトランジスタがデプレッションモードに戻ることがあり、これによって、そのような装置を用いるシステムが故障し及び損傷される。
【0006】
本発明は、従来の上記の問題に鑑みて提案され、その目的は、HEMT装置及びHEMT装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基板上のバッファ層と、バッファ層上の半導体層と、半導体層上の絶縁層と、半導体層に接触するソース及びドレインと、ソースとドレインとの間のゲートと、を備え、ゲートの下の半導体層のチャネルをピンチオフ状態にしたことを特徴とするHEMT装置を提供する。
【0008】
好適には、上記HEMT装置において、絶縁層は2層構造を有し、ゲートは絶縁層の上側層に形成される。
【0009】
好適には、上記HEMT装置において、バッファ層はAlGaNを含み、絶縁層の下側層はAlGaNを含み、絶縁層の上側層はAlGaNを含む。
【0010】
好適には、上記HEMT装置において、絶縁層の下側層のAl組成は、バッファ層のAl組成に近く、絶縁層の上側層のAl組成は、絶縁層の下側層のAl組成より大きい。
【0011】
好適には、上記HEMT装置において、絶縁層の上側層のAl組成は、絶縁層の下側層から離れる方向に漸次的に増大する。
【0012】
好適には、上記HEMT装置において、バッファ層のAl組成は5%と15%との間である。
【0013】
好適には、上記HEMT装置において、絶縁層の上側層のAl組成は25%と45%との間である。
【0014】
好適には、上記HEMT装置において、半導体層はGaNを含む。
【0015】
好適には、上記HEMT装置において、半導体層は、半導体層の格子緩和が生じない厚さを有する。
【0016】
好適には、上記HEMT装置において、半導体層の厚さは10nmと30nmとの間である。
【0017】
好適には、上記HEMT装置において、チャネルは、半導体層に形成された2次元電子ガスを含み、2次元電子ガスは、チャネルがピンチオフ状態である領域には形成されない。
【0018】
好適には、上記HEMT装置において、ゲート電極は、ゲート位置にトレンチを形成するために絶縁層の上側層をエッチングするステップ及びフィールドプレート構造を有するゲート金属をトレンチの上部に形成するステップに従って、ソース電極とドレイン電極との間に形成される。
【0019】
好適には、上記HEMT装置において、トレンチは傾斜を有する。
【0020】
好適には、上記HEMT装置において、ゲートの下の誘電体層を更に備える。
【0021】
好適には、上記HEMT装置において、誘電体層はSiNを含む。
【0022】
好適には、上記HEMT装置において、絶縁層の上側層と下側層との間にエッチング停止層を更に備える。
【0023】
好適には、上記HEMT装置において、エッチング停止層はAlNを含む。
【0024】
好適には、上記HEMT装置において、絶縁層の上側層上の誘電体層を更に備え、トレンチエッチング処理ステップは、誘電体層を通じて絶縁層の上側層までエッチングし、その後、ゲート金属がトレンチの上部に形成される。したがって、ゲート電極は二重フィールドプレート構造を有する。
【0025】
好適には、上記HEMT装置において、トレンチは傾斜を有し、誘電体層のトレンチは、絶縁層の上側層のトレンチより幅が広い。
【0026】
好適には、上記HEMT装置において、誘電体層はSiNを含む。
【0027】
本発明の一態様によれば、基板上にバッファ層を堆積するステップと、バッファ層上に半導体層を堆積するステップと、半導体層上に絶縁層を堆積するステップと、半導体層に接触するソース及びドレインを形成するステップと、ソースとドレインとの間にゲートを形成するステップと、を備え、ゲートの下の前記半導体層のチャネルをピンチオフ状態にすることを特徴とするHEMT装置の製造方法を提供する。
【0028】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、半導体層上に絶縁層を堆積するステップは、半導体層上に第1の絶縁層を堆積するステップと、第1の絶縁層上に第2の絶縁層を堆積するステップと、を備える。
【0029】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、バッファ層はAlGaNを含み、第1の絶縁層はAlGaNを含み、第2の絶縁層はAlGaNを含む。
【0030】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、第1の絶縁層のAl組成は、バッファ層のAl組成に近く、第2の絶縁層のAl組成は、第1の絶縁層のAl組成より大きい。
【0031】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、第2の絶縁層のAl組成は、第1の絶縁層から離れる方向に漸次的に増大する。
【0032】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、バッファ層のAl組成は5%と15%との間である。
【0033】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、第2の絶縁層のAl組成は25%と45%との間である。
【0034】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、半導体層はGaNを含む。
【0035】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、半導体層は、半導体層の格子緩和が生じない厚さを有する。
【0036】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、半導体層の厚さは10nmと30nmとの間である。
【0037】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、チャネルは、半導体層に形成された2次元電子ガスを含み、2次元電子ガスは、チャネルがピンチオフ状態である領域には形成されない。
【0038】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、ソースとドレインとの間にゲートを形成するステップは、ゲートが形成される位置にトレンチを形成するために第2の絶縁層をエッチングするステップと、フィールドプレート構造を有するゲートをトレンチの上部に形成するステップと、を備える。
【0039】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、トレンチは傾斜を有する。
【0040】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、フィールドプレート構造を有するゲートをトレンチに形成するステップの前にトレンチを有する第2の絶縁層上に誘電体層を共形に形成するステップを更に備える。
【0041】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、誘電体層はSiNを含む。
【0042】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、第1の絶縁層上に第2の絶縁層を堆積するステップの前に第1の絶縁層上にエッチング停止層を堆積するステップを更に備える。
【0043】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、エッチング停止層はAlNを含む。
【0044】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、第2の絶縁層上に誘電体層を堆積するステップと、ゲートが形成される位置に第1のトレンチを形成するために誘電体層をエッチングするステップと、第2のトレンチを形成するために第1のトレンチを通じて第2の絶縁層をエッチングするステップと、二重フィールドプレート構造を有するゲートを第1のトレンチ及び第2のトレンチの上部に形成するステップと、を備える。
【0045】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、第1のトレンチ及び第2のトレンチは傾斜を有し、第1のトレンチは第2のトレンチより幅が広い。
【0046】
好適には、上記HEMT装置の製造方法において、誘電体層はSiNを含む。
【0047】
本発明の実施の形態の詳細な説明を図面に関連しながら行うことによって、上述した特徴、利点及び目的が更によく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】埋込みゲート構造のエンハンスメントモード窒化ガリウムHEMTの従来の設計を示す。
【図2】ゲート金属コンタクト領域に対するフッ化プラズマ照射処理によって形成されたエンハンスメントモード窒化ガリウムHEMTの従来の設計を示す。
【図3】本発明による窒化ガリウムエンハンスメントモード電界効果トランジスタ構造を示す。
【図4】本発明の窒化ガリウムエンハンスメントモード電界効果トランジスタを製造するための材料構成を示す。
【図5】チャネルデプレッション領域及びチャネルアクセス領域の2DEGの線形図を示す。
【図6】図5のA−A’断面のゲートトレンチ領域の半導体エネルギー帯構造を示す。
【図7】図5のB−B’断面のチャネルアクセス領域の半導体エネルギー帯構造を示す。
【図8】エッチングの深さを正確に制御するためにエッチング停止層が用いられる発明の変形例を示す。
【図9】MISFET構造である発明の変形例を示す。
【図10】二重フィールドプレート構造を有する発明の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
次に、本発明の好適な実施の形態の詳細な説明を図面に関連して行う。
【0050】
図3は、本発明による窒化ガリウムエンハンスメントモード電界効果トランジスタ構造を示す。ガリウム材料が正常に成長するための基板12は、通常、サファイア、SiC又はシリコンを含む。核形成層13は、基板12の上に成長する。従来の窒化ガリウム装置構造と異なり、GaNではなくAlGaNが装置のバッファ層として用いられる。バッファ層の上に、GaNチャネル層15がある。チャネル層の上に、第2のAlGaN層16及び第3のAlGaN層17を有する2層のAlGaN絶縁層がある。第3のAlGaN層17のAl組成は、第2のAlGaN層16のAl組成より大きい。二つの抵抗接点は、電界効果トランジスタのソース22及びドレイン23をそれぞれ形成する。ソース22とドレイン23との間の領域において、トレンチを形成するために第3のAlGaN層がエッチングされ、その後、金属ゲート24が、エッチングによって形成されたトレンチの上部に形成される。最後に、SiN等の誘電体の層が、パッシベーション(保護)のために装置に堆積される。
【0051】
図3のゲート24は、フィールドプレート構造の一種である。ゲート金属を、トレンチをエッチングした後に堆積することができ、又は、トレンチをエッチングするときに自己整合法によって堆積することができる。フィールドプレートが用いられない場合、図1に示す構造と同様な埋込みゲート構造を用いることができ、ゲート金属が自己整合法によって堆積される。
【0052】
ゲートのトレンチをエッチングするとき、ドライエッチングの条件は、AlGaN層のトレンチが傾斜を有するように最適化され、チャネルの電子分布は、装置の破壊電圧が増大するように最適化される。
【0053】
図4は、本発明の窒化ガリウムエンハンスメントモード電界効果トランジスタを製造するための材料構成を示す。核形成層13は、通常、AlGaN又はAlNであり、AlGaNバッファ層14のAl組成に遷移する。AlGaNバッファ層14のAl組成は約5%から15%であり、バッファ層14の厚さは約1μmから3μmである。GaNチャネル層15の厚さは約30nmである。AlGaNバッファ層上に成長するGaNは、圧縮応力を有する。その理由は、GaNがAlGaNより大きい格子定数を有するからである。GaNチャネル層15の厚さを非常に大きくすべきでなく、そのようなGaNの層を緩和すべきではなく、したがって、厚さは通常約10nmから30nmである。第2のAlGaN層16のAl組成は、AlGaNバッファ層14のAl組成に近く、第2のAlGaN層16の厚さは約20nmである。第3のAlGaN層17のAl組成は、第2のAlGaN層16のAl組成より大きく、約25%から45%であり、第3のAlGaN層17の厚さは約30nmである。
【0054】
図5は、ゲートトレンチ領域33のチャネルの2次元電子ガス(2DEG)が完全に消失し、トレンチがエッチングされていないチャネルアクセス領域32に2DEGが存在していることを示す。図6及び7は、二つのケースの構造をそれぞれ示す。
【0055】
図6は、図5の装置構造のA−A’断面のゲートトレンチ領域の半導体エネルギー帯の図を示す。上述したように、GaNチャネル層15の厚さは、非常に厚くなく、したがって、GaN結晶の層は、緩和されず、下にあるAlGaNバッファ層14の格子定数を維持する。第2のAlGaN層16も格子定数を維持する。圧電分極場がほとんど存在しないが、自発分極場が第2のAlGaN層16に存在する。その理由は、第2のAlGaN層16のAl組成がAlGaNバッファ層14のAl組成に近いからである。その結果、第2のAlGaN層16の全体に亘る分極場は、通常の窒化ガリウムHEMT構造のAlGaN絶縁層の全体に亘る分極場より著しく低くなる。第2のAlGaN層16が意図的にドーピングされない場合、チャネルに2DEGを導入するために大きな厚さを必要とする。図1に示す従来の設計に比べて、ゲート金属の下の第2のAlGaN層16は、約20nmを維持することができ、したがって、エッチングを容易に制御することができる。第2のAlGaN層16の厚さを適切に選択することによって高いピンチオフ電圧を達成することができ、ピンチオフ電圧の変動がある程度小さくなる。高いピンチオフ電圧は、低いチャネルリーク電流を意味する。
【0056】
図7は、図5の装置構造のB−B’断面のチャネルアクセス領域の半導体エネルギー帯の図を示す。第3のAlGaN層17には自発分極場だけでなく圧電分極場も存在する。その理由は、第3のAlGaN層17のAl組成が第2のAlGaN層16のAl組成より大きいからである。分極場が強くなることによって、第3のAlGaN層17の伝導帯は、第3のAlGaN層17の厚さが増大するに従って急激に増大する。材料表面の中間エネルギー帯がフェルミレベルより高く上昇すると、2DEGはチャネルに導入され始める。
【0057】
発明の変形例は、Al組成が下から上に漸次的に増大する漸次構造として第3のAlGaN層17のAl組成を設計することである。そのように行うことの利点は、第3のAlGaN層17の厚さを更に大きくできることであり、このことは、図3に示すようなフィールドプレートゲート構造を形成するのに適している。
【0058】
本発明の他の変形例は、図8に示すように、エッチング停止層18を第2のAlGaN層16と第3のAlGaN層17との間に追加することである。エッチング停止層は、通常、高いアルミニウム組成を有するAlN又はAlGaNを含み、約1〜3nmの厚さを有する。トレンチを形成するためにRIE(ドライエッチング)を用いるとき、エッチング深さを、そのようなAlNの層の深さに正確に合わせることができる。その理由は、AlNのエッチング速度が第3のAlGaNのエッチング速度より低いからである。正確なエッチング制御により、装置のピンチオフ電圧の変動を減少させることができ、したがって、製品収量を向上させることができる。
【0059】
発明の他の変形例は、図9に示すように、MISFET(金属絶縁半導体型電界効果トランジスタ)構造を用いることである。ゲート用のトレンチがエッチングされた後及びゲート金属が堆積される前に、約5〜15nmの厚さを有するSiN等の誘電体の層が第3のAlGaN層17の上に堆積される。誘電体の層は、装置パッシベーション層とゲート絶縁層の両方の機能を有し、ゲートのリーク電流を効率的に減少させることができる。
【0060】
発明の他の変形例は、図10に示すような二重フィールドプレート構造である。そのような構造において、絶縁体20は、約50〜200nmの厚さを有し、その材料は、SiN等の誘電体である。絶縁体20のトレンチは、第3のAlGaN層17のトレンチの上にあり、絶縁体20のトレンチの幅は、第3のAlGaN層17のトレンチの幅よりやや広い。二つのトレンチは、ゲート金属によって被覆され、二重フィールドプレート構造が二つのトレンチのエッジに形成される。装置の破壊電圧を、二重フィールドプレート構造によって更に増大することができる。
【0061】
HEMT装置及びHEMT装置の製造方法を、一部の典型的な実施の形態を用いて詳細に説明したが、上述したこれらの実施の形態は、包括的ではない。当業者は、本発明の精神及び範囲内で種々の変更及び変形を行うことができる。したがって、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲によってのみ規定される。例えば、バッファ層及び絶縁層としてAlGaNを実例として用いることによって説明を行ったが、当業者に周知の他の窒化ガリウム系化合物を用いることもできることを理解すべきであり、したがって、本発明は、これに対する限定を有しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のバッファ層と、
前記バッファ層上の半導体層と、
前記半導体層上の絶縁層と、
前記半導体層に接触するソース及びドレインと、
前記ソースと前記ドレインとの間のゲートと、を備え、
前記ゲートの下の前記半導体層のチャネルをピンチオフ状態にしたことを特徴とするHEMT装置。
【請求項2】
前記絶縁層は2層構造を有し、前記ゲートは前記絶縁層の上側層に形成された請求項1に記載のHEMT装置。
【請求項3】
前記バッファ層はAlGaNを含み、前記絶縁層の下側層はAlGaNを含み、前記絶縁層の上側層はAlGaNを含む請求項2に記載のHEMT装置。
【請求項4】
前記絶縁層の前記下側層のAl組成は、前記バッファ層のAl組成に近く、前記絶縁層の前記上側層のAl組成は、前記絶縁層の前記下側層のAl組成より大きい請求項3に記載のHEMT装置。
【請求項5】
前記絶縁層の前記上側層のAl組成は、前記絶縁層の前記下側層から離れる方向に漸次的に増大する請求項4に記載のHEMT装置。
【請求項6】
前記バッファ層のAl組成は5%と15%との間である請求項4に記載のHEMT装置。
【請求項7】
前記絶縁層の上側層のAl組成は25%と45%との間である請求項4に記載のHEMT装置。
【請求項8】
前記半導体層はGaNを含む請求項4に記載のHEMT装置。
【請求項9】
前記半導体層は、前記半導体層の格子緩和が生じない厚さを有する請求項8に記載のHEMT装置。
【請求項10】
前記半導体層の厚さは10nmと30nmとの間である請求項9に記載のHEMT装置。
【請求項11】
前記チャネルは、前記半導体層に形成された2次元電子ガスを含み、前記2次元電子ガスは、前記チャネルがピンチオフ状態である領域には形成されない請求項1から10のうちのいずれか1項に記載のHEMT装置。
【請求項12】
前記ゲートは、前記絶縁層の上側層のトレンチに形成されたフィールドプレート構造を有する請求項2から10のうちのいずれか1項に記載のHEMT装置。
【請求項13】
前記トレンチは傾斜を有する請求項12に記載のHEMT装置。
【請求項14】
前記ゲートの下の誘電体層を更に備えた請求項12に記載のHEMT装置。
【請求項15】
前記誘電体層はSiNを含む請求項14に記載のHEMT装置。
【請求項16】
前記絶縁層の前記上側層と前記下側層との間にエッチング停止層を更に備えた請求項2から10のうちのいずれか1項に記載のHEMT装置。
【請求項17】
前記エッチング停止層はAlNを含む請求項16に記載のHEMT装置。
【請求項18】
前記絶縁層の前記上側層上の誘電体層を更に備え、前記ゲートは、前記絶縁層の上側層のトレンチ及び前記誘電体層のトレンチに形成された二重フィールドプレート構造を有する請求項2から10のうちのいずれか1項に記載のHEMT装置。
【請求項19】
前記トレンチは傾斜を有し、前記誘電体層のトレンチは、前記絶縁層の上側層のトレンチより幅が広い請求項18に記載のHEMT装置。
【請求項20】
前記誘電体層はSiNを含む請求項18に記載のHEMT装置。
【請求項21】
基板上にバッファ層を堆積するステップと、
前記バッファ層上に半導体層を堆積するステップと、
前記半導体層上に絶縁層を堆積するステップと、
前記半導体層に接触するソース及びドレインを形成するステップと、
前記ソースと前記ドレインとの間にゲートを形成するステップと、を備え、
前記ゲートの下の前記半導体層のチャネルをピンチオフ状態にすることを特徴とするHEMT装置の製造方法。
【請求項22】
前記半導体層上に前記絶縁層を堆積するステップは、
前記半導体層上に第1の絶縁層を堆積するステップと、
前記第1の絶縁層上に第2の絶縁層を堆積するステップと、を備えた請求項21に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項23】
前記バッファ層はAlGaNを含み、前記第1の絶縁層はAlGaNを含み、前記第2の絶縁層はAlGaNを含む請求項22に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項24】
前記第1の絶縁層のAl組成は、前記バッファ層のAl組成に近く、前記第2の絶縁層のAl組成は、前記第1の絶縁層のAl組成より大きい請求項23に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項25】
前記第2の絶縁層のAl組成は、前記第1の絶縁層から離れる方向に漸次的に増大する請求項24に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項26】
前記バッファ層のAl組成は5%と15%との間である請求項24に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項27】
前記第2の絶縁層のAl組成は25%と45%との間である請求項24に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項28】
前記半導体層はGaNを含む請求項24に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項29】
前記半導体層は、前記半導体層の格子緩和が生じない厚さを有する請求項28に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項30】
前記半導体層の厚さは10nmと30nmとの間である請求項29に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項31】
前記チャネルは、前記半導体層に形成された2次元電子ガスを含み、前記2次元電子ガスは、前記チャネルがピンチオフ状態である領域には形成されない請求項21から30のうちのいずれか1項に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項32】
前記ソースと前記ドレインとの間に前記ゲートを形成するステップは、
前記ゲートが形成される位置にトレンチを形成するために前記第2の絶縁層をエッチングするステップと、
フィールドプレート構造を有する前記ゲートを前記トレンチに形成するステップと、を備えた請求項22から30のうちのいずれか1項に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項33】
前記トレンチは傾斜を有する請求項32に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項34】
前記フィールドプレート構造を有する前記ゲートを前記トレンチに形成するステップの前に前記トレンチを有する前記第2の絶縁層上に誘電体層を共形に形成するステップを更に備えた請求項32に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項35】
前記誘電体層はSiNを含む請求項34に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項36】
前記第1の絶縁層上に前記第2の絶縁層を堆積するステップの前に前記第1の絶縁層上にエッチング停止層を堆積するステップを更に備えた請求項22から30のうちのいずれか1項に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項37】
前記エッチング停止層はAlNを含む請求項36に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項38】
前記第1の絶縁層上に前記第2の絶縁層を堆積するステップの後に前記第2の絶縁層上に誘電体層を堆積するステップを更に備え、
前記ソースと前記ドレインとの間に前記ゲートを形成するステップは、
前記ゲートが形成される位置に第1のトレンチを形成するために前記誘電体層をエッチングするステップと、
第2のトレンチを形成するために前記第1のトレンチを通じて前記第2の絶縁層をエッチングするステップと、
二重フィールドプレート構造を有する前記ゲートを前記第1のトレンチ及び前記第2のトレンチに形成するステップと、を備えた請求項22から30のうちのいずれか1項に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項39】
前記第1のトレンチ及び前記第2のトレンチは傾斜を有し、前記第1のトレンチは前記第2のトレンチより幅が広い請求項38に記載のHEMT装置の製造方法。
【請求項40】
前記誘電体層はSiNを含む請求項38に記載のHEMT装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−523218(P2011−523218A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512815(P2011−512815)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/CN2009/070627
【国際公開番号】WO2009/149626
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510325798)ダイナックス セミコンダクター,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】