説明

MEMSおよびMEMS製造方法

【課題】ピエゾ抵抗部の上に圧電層を備えるMEMSの電気的特性を向上させる。
【解決手段】半導体層に不純物を注入することにより前記半導体層にピエゾ抵抗部を形成し、前記半導体層の表面に結合している絶縁層の表面の平坦な領域に下層電極となる導電層を形成し、前記下層電極となる導電層の表面の平坦な領域に圧電層を形成し、前記圧電層の表面に上層電極となる導電層を形成し、前記下層電極となる導電層と前記圧電層と前記上層電極となる導電層とをエッチングすることにより圧電素子を形成する、ことを含むMEMS製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)およびMEMS製造方法に関し、特にピエゾ抵抗部の上に圧電層を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層されたピエゾ抵抗と圧電素子とを用いたMEMSとして加速度センサ、振動ジャイロスコープ、圧力センサ、振動センサ、マイクロホン、力覚センサが知られている。特許文献1に記載された自励振型マイクロフォンは、圧電素子によって可撓部を構成するダイヤフラムを励振し、ピエゾ抵抗によってダイヤフラムの変位を検出するMEMSである。圧電素子は圧電層と圧電層を挟む2層の電極層とを備える。圧電層の結晶特性はMEMSの電気的特性を大きく左右する。
【特許文献1】特開2001−25095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし特許文献1に記載された自励振型マイクロフォンでは、圧電素子の圧電層および下層電極とが段差のある面に形成されているため、圧電素子の結晶構造が乱れるという問題がある。
【0004】
本発明はこのような問題を解決するために創作されたものであってピエゾ抵抗部の上に圧電層を備えるMEMSの電気的特性を向上させることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するためのMEMS製造方法は、半導体層に不純物を注入することにより半導体層にピエゾ抵抗部を形成し、半導体層の表面に結合している絶縁層の表面の平坦な領域に下層電極となる導電層を形成し、下層電極となる導電層の表面の平坦な領域に圧電層を形成し、圧電層の表面に上層電極となる導電層を形成し、下層電極となる導電層と圧電層と上層電極となる導電層とをエッチングすることにより圧電素子を形成する、ことを含む。
ピエゾ抵抗部と圧電素子とを隔てる絶縁層の表面の平坦な領域に圧電素子の下層電極となる導電層を形成し、その導電層の表面の平坦な領域に圧電層を形成することにより、圧電層の結晶構造を整えることができる。したがって本発明によるとピエゾ抵抗部の上に圧電層を備えるMEMSの電気的特性を向上させることができる。尚、本明細書において「平坦」は相対的に巨視的な表面形状に用い、換言すれば段差のないことを意味し、「平滑」は相対的に微視的な表面形状に用い、換言すれば微小な凹凸が小さいことを意味するものとする。
【0006】
(2)上記目的を達成するためのMEMS製造方法において、半導体層の表面の平坦な領域に絶縁層を形成し、絶縁層を貫通させて半導体層に不純物を注入することにより半導体層にピエゾ抵抗を形成する、ことを含むことが好ましい。
半導体層に不純物を注入する前に半導体層の表面の平坦な領域に絶縁層を形成することにより、絶縁層の表面の平滑な領域に圧電素子を形成することができ、その結果、ピエゾ抵抗部の上に圧電層を備えるMEMSの電気的特性をさらに向上させることができる。
【0007】
(3)上記目的を達成するためのMEMS製造方法において、絶縁層を熱酸化により形成する、ことを含むことが好ましい。
熱酸化により絶縁層を形成することにより、表面が平滑な絶縁層を形成することができ、その結果、ピエゾ抵抗部の上に圧電層を備えるMEMSの電気的特性をさらに向上させることができる。
【0008】
(4)上記目的を達成するためのMEMS製造方法において、半導体層はSOIウエハの薄い方の半導体層であることが好ましい。
SOIウエハの平坦で平滑な薄い方の半導体層の表面に絶縁層を形成することにより、圧電素子を形成する下地となる絶縁層の表面を平滑に形成することができ、その結果、ピエゾ抵抗部の上に圧電層を備えるMEMSの電気的特性をさらに向上させることができる。
【0009】
(5)上記目的を達成するためのMEMS製造方法において、半導体層に不純物を注入することによりピエゾ抵抗部の配線を形成することが好ましい。
半導体層への不純物の注入により配線を形成すると、配線となる導電膜を堆積によって形成する場合に比べ、配線の形成によって生ずる応力を低減できる。またピエゾ抵抗部の配線を半導体層に形成することにより、圧電素子の配線とピエゾ抵抗部の配線とを絶縁層で隔てられた別の層に形成できるため、レイアウト効率が高まる。
【0010】
(6)上記目的を達成するためのMEMSは、半導体層と半導体層に形成されているピエゾ抵抗部と半導体層の表面に結合している表面が平坦な絶縁層とを備える可撓部と、絶縁層の表面に結合し表面が平坦な下層電極と下層電極の表面に結合した圧電層と圧電層の表面に結合した上層電極とを備える圧電素子と、を備える。
本発明によると、下層電極の下地となっている絶縁層の表面も、圧電層の下地となっている絶縁層の表面も平坦であるため、ピエゾ抵抗部の上に圧電層を備えるMEMSの電気的特性を向上させることができる。
【0011】
(7)上記目的を達成するためのMEMSにおいて、半導体層にピエゾ抵抗部の配線が形成されていることが好ましい。
半導体層にピエゾ抵抗部の配線を形成することにより、圧電素子の配線とピエゾ抵抗部の配線とを絶縁層で隔てられた別の層に形成できるため、レイアウト効率が高まる。
【0012】
尚、請求項において「〜上に」というときは、技術的な阻害要因がない限りにおいて「上に中間物を介在させずに」と「〜上に中間物を介在させて」の両方を意味する。また、請求項に記載された動作の順序は、技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず、同時に実行されても良いし、記載順の逆順に実行されても良いし、連続した順序で実行されなくても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
1.第一実施形態
(構成)
本発明のMEMSの第一実施形態として6次元のモーションセンサを図1A、図1B、図1Cに示す。モーションセンサ1は互いに直交する3軸の加速度成分と、互いに直交する3軸の角速度成分とを検出するためのMEMSである。
【0014】
モーションセンサ1は平面視が十文字の形態を有する可撓部Fと、可撓部Fの4つの端部と結合している支持部Sと、可撓部Fの中央に結合している錘部Mと、可撓部Fを励振するための圧電素子30と、可撓部Fの変形または変位を検出するためのピエゾ抵抗部131とを備える。
【0015】
可撓部FはSOIウエハの薄い方の半導体層13、絶縁層20、絶縁層40とで主に構成されている。可撓部Fにはピエゾ抵抗部131と圧電素子30とが含まれている。
【0016】
半導体層13にはピエゾ抵抗部131と低抵抗部132とが形成されている。半導体層13の残部は単結晶シリコン(Si)からなる。ピエゾ抵抗部131にはホウ素(B)がシリコンの不純物として注入されている。低抵抗部132にはピエゾ抵抗部131よりも高濃度でホウ素がシリコンの不純物として注入されている。
【0017】
絶縁層20は半導体層13の表面に結合している。ピエゾ抵抗部131と圧電素子30とを絶縁している絶縁層20は二酸化シリコン(SiO)からなる。絶縁層20の表面(圧電素子30との界面)は平坦かつ平滑に形成されている。絶縁層20にはコンタクトホールH1が形成されている。
【0018】
ピエゾ抵抗部131と表面配線51とは、コンタクトホールH1を介して低抵抗部132に接続されている内部配線31bとピエゾ抵抗部131に接続されている低抵抗部132とによって電気的に接続されている。
【0019】
圧電素子30はピエゾ抵抗部131の上に位置し、絶縁層20の平坦かつ平滑な表面に結合している。圧電素子30とピエゾ抵抗部131とを垂直方向に重ねることによってレイアウト効率が高まる。圧電素子30は、絶縁層20に結合している下層電極31aと、圧電層32と、上層電極33aとから構成されている。下層電極31aは白金(Pt)からなる。下層電極31aの表面(圧電層32との界面)は平坦かつ平滑に形成されている。圧電層32は下層電極31aの表面に結合している。圧電層32はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。上層電極33aは白金からなる。上層電極33aは圧電層32の表面に結合している。下層電極31aと表面配線51とは配線31cによって接続されている(図1C参照)。上層電極33aは表面配線51に直接接続されている。
【0020】
絶縁層40は圧電素子30、圧電素子30の下層電極31aの配線31c、ピエゾ抵抗部131の内部配線31bおよび絶縁層20の全体を覆っている。表面配線51は絶縁層40に形成されているコンタクトホールを介してピエゾ抵抗部131の内部配線31b、圧電素子30の下層電極31aの配線31cおよび圧電素子30の上層電極33aに接続している。
【0021】
錘部Mの平面視は中央の矩形の4つの角のそれぞれに矩形が接続された形態を有する。錘部Mの中央部は可撓部Fの中央部に結合している。錘部Mの中央部以外は、可撓部Fにも支持部Sにも重なっていない。錘部Mはバルク層11と接続層12と半導体層13と絶縁層20とからなる。バルク層11は単結晶シリコンのベースウエハからなる。バルク層11と半導体層13とを結合している接続層12は二酸化シリコンからなる。
【0022】
支持部Sは矩形枠の形態を有する。支持部Sはバルク層11、接続層12、半導体層13、絶縁層20および絶縁層40からなる。
【0023】
モーションセンサ1は表面配線51に接続される外部配線によって図示しない駆動検出回路に接続される。圧電素子30には可撓部Fを励振するための駆動電圧が駆動検出回路によって印加される。ピエゾ抵抗部131の抵抗値は可撓部Fの変形量または変位量を示す電圧信号に駆動検出回路によって変換される。可撓部Fの励振と角速度とによって生ずるコリオリ力による可撓部の変位成分の振動周波数は可撓部Fの励振周波数と一致する。一方、加速度による可撓部Fの変位成分は可撓部Fの励振周波数と無関係である。したがって可撓部Fの励振周波数を、検出対象とする加速度の周波数よりも十分高く設定することにより、可撓部Fの変位から加速度成分と角速度成分とを抽出可能になる。可撓部Fは3次元の振動が可能である形態であるため、モーションセンサ1を用いて3次元の加速度と3次元の角速度がそれぞれ検出できる。
【0024】
(製造方法)
はじめに図2に示すようにSOIウエハ10の半導体層13の平坦かつ平滑な表面に絶縁層20を形成する。その結果、半導体層13の表面に結合された絶縁層20が形成される。絶縁層20の表面を平坦かつ平滑に形成するため、絶縁層20の下地となる半導体層13にはSOIウエハ10の薄い方の半導体層を用い、その薄い方の半導体層の熱酸化によって絶縁層20を形成することが望ましい。SOIウエハ10は、例えば単結晶シリコンからなる厚さ625μmのバルク層11と、二酸化シリコンからなる厚さ1μmの絶縁層である接続層12と、単結晶シリコンからなる厚さ10μmのボンドウエハからなる半導体層13とで構成される。続いてフォトレジストからなる保護膜R1を絶縁層20の表面に形成する。さらに保護膜R1を用いて半導体層13の一部に不純物を注入することにより、半導体層13にピエゾ抵抗部131を形成する。ピエゾ抵抗部131の不純物は例えば濃度2×1018/cmのホウ素イオンとする。不純物イオンが分布する深さは、イオン注入のための加速電圧によって制御される。すなわち、不純物が絶縁層20を貫通し、半導体層13にとどまる加速電圧を用いて不純物を注入する。
【0025】
次に図3Aに示すようにフォトレジストからなる保護膜R2を用いて絶縁層20にコンタクトホールH1を形成する。続いて保護膜R2および絶縁層20を用いて半導体層13の一部に不純物を注入する。その結果、絶縁層20の下層において図3Bに示すように低抵抗部132がピエゾ抵抗部131と連続している領域に形成される。低抵抗部132の領域とピエゾ抵抗部131の領域とはコンタクトホールH1の位置又は注入後の不純物の拡散によって連続させる。低抵抗部132の不純物は例えば濃度2×1020/cmのホウ素イオンとする。不純物イオンが分布する深さは、イオン注入のための加速電圧によって制御される。その後、アニールによって半導体層13および絶縁層20の結晶構造を整形し、ピエゾ抵抗部131および低抵抗部132を活性化する。
【0026】
次に図4に示すようにピエゾ抵抗部131の配線および圧電素子の下層電極の配線となる導電層31を、コンタクトホールH1から露出した半導体層13の表面と絶縁層20の表面全体に形成する。導電層31の表面を平坦かつ平滑に形成するため、下地となる絶縁層20は平坦かつ平滑な表面になるように形成し、その表面に導電層31の膜を堆積させることが望ましい。具体的には導電層31として、例えば厚さ0.1μmの白金からなる膜をスパッタリングによって形成する。白金を堆積させる前に密着層として厚さ30nmのチタン(Ti)の膜を形成してもよい。またイリジウム(Ir)、二酸化イリジウム(IrO)、SrRuOなどから導電層31を形成してもよい。
【0027】
次に図5に示すように導電層31の表面全体に圧電層32を形成する。圧電層32の結晶構造と下地である導電層31の結晶構造とが連続するように(エピタキシャル成長的に)圧電層32の膜を堆積させることが望ましい。具体的には圧電層32として、例えば厚さ3μmのPZTからなる膜をスパッタリングによって形成する。スパッタリングの代わりにゾルゲル法を用いてもよい。PZTの代わりにBLT(Bi4−xLaTi12)、BaTiO、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)等を用いてもよい。
【0028】
次に図6に示すように圧電層32の表面全体に圧電素子の上層電極となる導電層33を形成する。導電層33として例えば厚さ0.1μmの白金からなる膜をスパッタリングによって形成する。白金を堆積させる前に密着層として厚さ30nmのチタンの膜を形成してもよい。イリジウム、二酸化イリジウム、金(Au)等から導電層33を形成してもよい。
【0029】
次に図7に示すようにフォトレジストからなる保護膜R3を用いて導電層33をエッチングすることにより上層電極33aを形成する。例えば白金からなる導電層33はアルゴン(Ar)イオンを用いたミリングによってエッチングする。ベーキングや多階調マスクを用いて保護膜R3の端面を斜面に形成し、ミリングによって保護膜R3の断面形状を上層電極33aに転写してもよい。
【0030】
次に図8に示すように保護膜R3または上層電極33aを用いて圧電層32をエッチングする。例えばPZTからなる圧電層32は塩素(Cl)ガスを用いた反応性イオンエッチングによってエッチングする。圧電層32をエッチングする前に保護膜R3を除去してもよいし、圧電層32のエッチング中に保護膜R3が消失してもよい。
【0031】
次に図9、図10に示すようにフォトレジストからなる保護膜R4を用いて導電層31をエッチングすることにより、ピエゾ抵抗部131の内部配線31bと圧電素子30の下層電極31aの配線31cとを形成する。その結果、下層電極31aが絶縁層20の表面に結合され圧電層32が下層電極31aの表面に結合された圧電素子30が内部配線31b、31cとともに形成される。たとえば白金からなる導電層31はアルゴンイオンを用いたミリングによってエッチングする。導電層31を反応性イオンエッチングによってエッチングしてもよい。
【0032】
次に図11A、図11Bに示すように圧電素子30と内部配線31b、31cと絶縁層20の表面に絶縁層40を形成する。続いて絶縁層40にコンタクトホールを形成する。このとき、例えば図11Bに示すように可撓部と支持部となる領域以外の領域において絶縁層40が切り欠かれ絶縁層20の錘部となる部分が露出するパターンとなるように、コンタクトホール以外の領域も除去する。例えば、感光性ポリイミドを10μmの厚さ塗布し、露光し、現像することにより有機物からなる絶縁層40を形成する。二酸化シリコン、窒化シリコン、アルミナなどの無機絶縁膜を形成し、これらの無機絶縁膜をエッチングすることにより絶縁膜40を形成してもよい。続いてコンタクトホールから露出した圧電素子30の上層電極33aと内部配線31b、31cとに接続される表面配線51を絶縁層40の表面に形成する。表面配線51は、例えばスパッタリングによって厚さ0.5μmのアルミニウムからなる導電膜を形成し、この導電膜を塩素ガスを用いた反応性イオンエッチングによってエッチングすることによって形成する。アルミニウムシリサイド(AlSi)、AlSiCuなどから表面配線51を形成してもよい。アルミニウムからなる表面配線51を形成する前に密着層として厚さ30nmのチタンの膜を形成してもよい。アルゴンイオンを用いたミリングや燐酸、硝酸、酢酸等の混合液を用いたウエットエッチングによって表面配線51をエッチングしてもよい。
【0033】
次に図12A、図12Bに示すように図示しないフォトレジストからなる保護膜を用いて絶縁層20および半導体層13をエッチングすることによってスリットS1を形成する。スリットS1を形成することによって可撓部Fが形成される。絶縁層20および半導体層13は例えばCFガスを用いた反応性イオンエッチングによってエッチングされる。フッ酸(HF)や緩衝フッ酸(BHF)を用いたウエットエッチングによって絶縁層20および半導体層13をエッチングしてもよい。
【0034】
次に図13に示すようにワークの表面(表面配線が形成されている面)を補強基板100に接着する。接着剤Bとして例えばワックスを用いる。フォトレジスト、両面粘着テープなどでワークを補強基板100に接着してもよい。続いてフォトレジストからなる保護膜R5を用いてバルク層11をエッチングすることにより環状のスリットS2を形成する。その結果、支持部Sと錘部Mのバルク層11からなる部分が形成される。バルク層11は、例えばCプラズマによるパッシベーションとSFプラズマによるエッチングとを短く交互に繰り返すDeeP−RIE(いわゆるボッシュプロセス)によってエッチングされる。
【0035】
次に図14に示すように保護膜R5またはバルク層11を用いて接続層12をエッチングし、半導体層13を露出させる。その結果、接続層12のスリットS1とスリットS2との間にあった領域が除去される。例えば二酸化シリコンからなる接続層12は緩衝フッ酸を用いてエッチングする。
【0036】
その後、ワークから接着剤Bを剥離し、ダイシングなどの後工程を実施すると図1に示すモーションセンサ1が完成する。
【0037】
以上説明した方法によってモーションセンサ1を製造すると、ピエゾ抵抗部131の上に位置する絶縁層20の表面を数nmのオーダーで平坦かつ平滑に形成でき、このように平坦かつ平滑な絶縁層20の表面に下層電極31aと圧電層32とを形成できる。したがって本実施形態によると、圧電層32の結晶構造を整えることができ、その結果、圧電層32の圧電特性が高まり、モーションセンサ1の電気的特性が向上する。
【0038】
2.第二実施形態
(構成)
本発明のMEMSの第二実施形態として6次元のモーションセンサを図15A、図15Bに示す。モーションセンサ2の半導体層13の低抵抗部132はピエゾ抵抗部131と表面配線51とを接続する配線の大部分でもある。すなわちピエゾ抵抗部131の配線の大部分は半導体層13に形成されている。このためレイアウト効率が高まり、例えばモーションセンサ2の外形寸法を変えずに圧電素子30を大きくすることができる。
【0039】
モーションセンサ2のピエゾ抵抗部131の平面視は屈曲しU字の形態である。このためモーションセンサ2の外形寸法を変えずにピエゾ抵抗部131を長くすることができる。
【0040】
(製造方法)
はじめに図16に示すようにフォトレジストからなる保護膜R6を用いた不純物の注入により、第一実施形態と同様に半導体層13にピエゾ抵抗部131を形成する。
【0041】
次に図17A、図17Bに示すように、フォトレジストからなる保護膜R7を用いた不純物の注入によりピエゾ抵抗部131の配線の大部分として第一実施形態と同様に低抵抗部132を半導体層13に形成する。ピエゾ抵抗部131の配線の大部分を、半導体層13への不純物の注入によって形成するため、ピエゾ抵抗部131の配線を形成することによって生ずる応力を低減できる。
【0042】
次に図18に示すようにフォトレジストからなる保護膜R8を用いたエッチングにより絶縁層20にコンタクトホールH2を形成する。図19に示すようにコンタクトホールH2はピエゾ抵抗部131の配線の大部分としての低抵抗部132と、表面配線の端子部とを接続するための内部配線31b(図20A、図20B参照)とを接続するためのものである。尚、図18は図19のAA線の断面に対応している。
【0043】
次に図20に示すように第一実施形態と同様に下層電極31aと内部配線31bとを同時に形成し、圧電層32を形成し、上層電極33aを形成する。
【0044】
その後、第一実施形態と同様に絶縁層40、表面配線51を形成する工程などを実施するとモーションセンサ2が完成する。
【0045】
3.他の実施形態
圧電素子の下地となる絶縁層20の表面を平坦かつ平滑に形成するために、絶縁層20の表面を化学的に平滑化してもよい。単結晶シリコンの熱酸化によって二酸化シリコンの絶縁層を形成した後にその絶縁膜を除去し、再度熱酸化によって二酸化シリコンからなる絶縁層20を形成してもよい。また絶縁層20の表面を平坦かつ平滑に形成するためのこれらの処理を、図21に示すようにピエゾ抵抗部131を形成した後に実施してもよい。これらの処理により、ピエゾ抵抗部131を形成する前に絶縁層を形成しなくても、下層電極および圧電層の結晶構造を整えることができる。ただし、ピエゾ抵抗部131を形成した後にこれらの処理を実施すれば工程数が増加し、製造コストが増大する。
またピエゾ抵抗部と圧電素子とを絶縁する絶縁層は、窒化シリコン(SiN)、酸化窒化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(AlO)などの材料から形成してもよい。
また錘部Mの露出している表面部分に絶縁層40を残してもよい。
また本発明は加速度センサ、振動ジャイロスコープ、圧力センサ、振動センサ、マイクロホン、力覚センサなどのMEMSにも適用できる。
【0046】
さらに、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態で示した材質や寸法や成膜方法やパターン転写方法はあくまで例示であるし、当業者であれば自明である工程の追加や削除や工程順序の入れ替えについては説明が省略されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1Aおよび図1Bは本発明の第一実施形態にかかる断面図。図1Cは本発明の第一実施形態にかかる平面図。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図3】図3Aは本発明の第一実施形態にかかる断面図。図3Bは本発明の第一実施形態にかかる平面図。
【図4】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図6】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図7】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図8】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図9】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図10】本発明の第一実施形態にかかる平面図。
【図11】図11Aは本発明の第一実施形態にかかる断面図。図11Bは本発明の第一実施形態にかかる平面図。
【図12】図12Aは本発明の第一実施形態にかかる断面図。図12Bは本発明の第一実施形態にかかる平面図。
【図13】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図14】本発明の第一実施形態にかかる断面図。
【図15】図15Aは本発明の第二実施形態にかかる断面図。図15Bは本発明の第二実施形態にかかる平面図。
【図16】本発明の第二実施形態にかかる断面図。
【図17】図17Aは本発明の第二実施形態にかかる断面図。図17Bは本発明の第二実施形態にかかる平面図。
【図18】本発明の第二実施形態にかかる断面図。
【図19】本発明の第二実施形態にかかる平面図。
【図20】図20Aは本発明の第二実施形態にかかる断面図。図20Bは本発明の第二実施形態にかかる平面図。
【図21】本発明の他の実施形態にかかる断面図。
【符号の説明】
【0048】
1:モーションセンサ、2:モーションセンサ、10:ウエハ、11:バルク層、12:接続層、13:半導体層、20:絶縁層、30:圧電素子、30:圧電素子、31:導電層、31a:下層電極、31b:内部配線、31c:配線、32:圧電層、33:導電層、33a:上層電極、40:絶縁層、51:表面配線、100:補強基板、131:ピエゾ抵抗部、132:低抵抗部、B:接着剤、F:可撓部、H1:コンタクトホール、H2:コンタクトホール、M:錘部、R1:保護膜、R2:保護膜、R3:保護膜、R4:保護膜、R5:保護膜、R6:保護膜、R7:保護膜、S:支持部、S1:スリット、S2:スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層に不純物を注入することにより前記半導体層にピエゾ抵抗部を形成し、
前記半導体層の表面に結合している絶縁層の表面の平坦な領域に下層電極となる導電層を形成し、
前記下層電極となる導電層の表面の平坦な領域に圧電層を形成し、
前記圧電層の表面に上層電極となる導電層を形成し、
前記下層電極となる導電層と前記圧電層と前記上層電極となる導電層とをエッチングすることにより圧電素子を形成する、
ことを含むMEMS製造方法。
【請求項2】
半導体層の表面の平坦な領域に前記絶縁層を形成し、
前記絶縁層を貫通させて前記半導体層に不純物を注入することにより前記半導体層に前記ピエゾ抵抗部を形成する、
ことを含む請求項1に記載のMEMS製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層を熱酸化により形成する、
ことを含む請求項1または2に記載のMEMS製造方法。
【請求項4】
前記半導体層はSOIウエハの薄い方の半導体層である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のMEMS製造方法。
【請求項5】
前記半導体層に不純物を注入することにより前記ピエゾ抵抗部の配線を形成する、
ことを含む請求項1から4のいずれか一項に記載のMEMS製造方法。
【請求項6】
半導体層と前記半導体層に形成されているピエゾ抵抗部と前記半導体層の表面に結合している表面が平坦な絶縁層とを備える可撓部と、
前記絶縁層の表面に結合し表面が平坦な下層電極と前記下層電極の表面に結合した圧電層と前記圧電層の表面に結合した上層電極とを備える圧電素子と、
を備えるMEMS。
【請求項7】
前記半導体層に前記ピエゾ抵抗部の配線が形成されている、
請求項6に記載のMEMS。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−246028(P2009−246028A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88516(P2008−88516)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】