説明

インサート成形方法、インサート成形装置及び近接センサ

【課題】 成形不良を抑制しつつ部分的に薄肉に樹脂成形することが可能なインサート成形方法、インサート成形装置及び近接センサを提供する。
【解決手段】 成形金型31a,31bのキャビティ32に対しインサート部品の薄肉にすべき検出コイル11の前面側から溶融樹脂Jの注入を開始する(第1工程)。次いで、圧縮部材40を、キャビティ32内においてインサート品の検出コイル11の前面に向けて進出させ、当該検出コイル11の前面手前まで移動させて樹脂成形を施す(第2工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート品(例えば近接センサの検出コイルなど)を成形型のキャビティ内に配置した状態で当該キャビティ内に溶融樹脂を注入して樹脂成形するインサート成形方法、インサート成形装置及びそれらにより製造された近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示すように、回路基板の一端部側にリード線を介して検出コイルを電気的に接続し、これらをインサート品として樹脂成形により一体成形したものがある。このものは、例えば防水性を図るために検出コイル全体を成形樹脂で覆うように成形し、しかも、検出距離を広くするために検出領域に向けられる検出コイルの一側面(検出面)は他の部位よりも薄肉に樹脂成形する必要がある。このような構成であれば検出コイルを収容するホルダを別途設けることなく検出コイルと回路基板とを一体形成することができ製造工数及びコストを低減させることができる。
【0003】
ここで、インサート品の成形方法として、例えば下記特許文献2に記載した方法などがある。図15には従来の成形方法で使用される成形金型1が示されている。これは、検出コイル2と回路基板3とを仮保持した状態で検出コイル2を金属製の保持ピン4,4によって保持しつつ成形金型1のキャビティ1a内に配置して、溶融樹脂5をキャビティ1aに形成したゲート6,6から注入し、溶融樹脂が硬化する直前に上記保持ピン4,4を引き抜く方法である。
【特許文献1】実開昭61−167343号公報
【特許文献2】特開2003−127185公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この種の方法では、従来、上記ゲート6は回路基板3側のキャビティ1a側壁に設けられていた。そうすると、注入された溶融樹脂5は回路基板3側から検出コイル2側に向かう途中で保持ピン4,4によって冷却され硬化してしまい、比較的に狭い検出面2aとキャビティ1a側壁との間に溶融樹脂5が行き渡らず、成形不良が生じる原因になっていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、成形不良を抑制しつつ部分的に薄肉に樹脂成形することが可能なインサート成形方法、インサート成形装置及び近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係るインサート成形方法は、インサート品を、成形型のキャビティ内に配置した状態で当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記インサート品に対して所定の部位を他の部位よりも薄肉に樹脂成形するインサート成形方法であって、前記キャビティに対し前記インサート部品の前記所定の部位側から前記溶融樹脂を注入する第1工程と、前記キャビティ内において前記インサート品の前記所定の部位に向けて進出可能に設けられた圧縮部材を、前記第1工程の途中又は終了後に、当該所定の部位手前の所定位置まで進出させる第2工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
なお、この上記発明には、次の構成Aが含まれる。
「インサート品を、成形型のキャビティ内に配置した状態で当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記インサート品に対して所定の部位を他の部位よりも薄肉の所望の肉厚に樹脂成形するインサート成形方法であって、
前記キャビティに対し前記インサート品の前記所定の部位との対向方向に沿って進退可能に設けられた圧縮部材を退避させた状態で、その圧縮部材及び前記所定の部位の間に前記溶融樹脂を注入する第1工程と、
前記第1工程での注入開始後に、前記圧縮部材を前記所望の肉厚に応じた前記所定の部位手前の位置まで進出させる第2工程と、を含むことを特徴とするインサート成形方法。」
【0008】
請求項2の発明に係るインサート成形方法は、近接センサの構成部品のうち少なくとも検出コイルを含む検出部を、成形型のキャビティ内に配置した状態で、当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記検出部に対してその検出面を他の部位よりも薄肉に樹脂成形するインサート成形方法であって、前記キャビティ内に対し前記検出部の前記検出面側から前記溶融樹脂を注入する第1工程と、前記キャビティ内において前記検出部の前記検出面に向けて進出可能に設けられた圧縮部材を、前記第1工程の途中又は終了後に、当該検出面手前の所定位置まで進出させる第2工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
なお、この上記発明には、次の構成Bが含まれる。
「近接センサの構成部品のうち少なくとも検出コイルを含む検出部を、成形型のキャビティ内に配置した状態で、当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記検出部に対してその検出面を他の部位よりも薄肉の所望の肉厚に樹脂成形するインサート成形方法であって、
前記キャビティに対し前記検出部の前記検出面との対向方向に沿って進退可能に設けられた圧縮部材を退避させた状態で、その圧縮部材及び前記検出面の間に前記溶融樹脂を注入する第1工程と、
前記第1工程での注入開始後に、前記圧縮部材を前記所望の肉厚に応じた前記検出面手前の位置まで進出させる第2工程と、を含むことを特徴とするインサート成形方法。」
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のインサート成形方法において、前記第1工程に先立って、前記キャビティ内に対して進退可能に設けられた保持部材により前記他の部位を保持する第3工程と、前記第2工程での前記圧縮部材の進出途中で前記保持部材を前記キャビティ内から退避させる第4工程と、を更に含むことを特徴とする。
【0011】
なお、この上記発明には、次の構成Cが含まれる。
「前記第1工程に先立って、前記キャビティ内に対し進退可能に設けられた保持部材により前記他の部位を保持する第3工程と、
前記第2工程での前記圧縮部材の進出途中で前記保持部材を前記キャビティ内から退避させる第4工程と、を更に含むことを特徴とする構成A又は構成Bに記載のインサート成形方法。」
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインサート成形方法において、少なくとも前記第2工程において、前記圧縮部材を前記所定位置に進出させるまでの間に、前記第1工程において前記キャビティ内に注入された溶融樹脂を加熱することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインサート成形方法であって、前記第2工程において、前記圧縮部材を回転させながら進出させることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインサート成形方法において、前記キャビティ内に注入された溶融樹脂は、前記第2工程が終了した後に加熱を終了させて冷却させることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明に係るインサート成形装置は、インサート品を、成形型のキャビティ内に配置した状態で当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記インサート品に対して所定の部位を他の部位よりも薄肉に樹脂成形するためのインサート成形装置であって、前記インサート品が配置されるキャビティ、前記キャビティ内において前記インサート品の前記所定の部位に向けて進出可能に設けられた圧縮部材、及び、前記圧縮部材の経路途中であって前記キャビティの側壁に形成され当該キャビティ内に前記溶融樹脂を注入する注入口を有する成形型と、前記注入口からの前記溶融樹脂の注入開始後に、前記圧縮部材を前記所定の部位手前の所定位置まで進出させる駆動手段と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
なお、この上記発明には、次の構成Dが含まれる。
「インサート品を、成形型のキャビティ内に配置した状態で当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記インサート品に対して所定の部位を他の部位よりも薄肉の所望の肉厚に樹脂成形するためのインサート成形装置であって、
前記インサート品が配置されるキャビティ、前記キャビティに対し前記インサート品の前記所定の部位との対向方向に沿って進退可能に設けられた圧縮部材、及び、前記キャビティのうち退避位置にある前記圧縮部材と前記インサート品の前記所定の部位との間の側壁に形成され当該キャビティ内に前記溶融樹脂を注入する注入口を有する成形型と、
前記注入口からの前記溶融樹脂の注入開始後に、前記圧縮部材を前記所望の肉厚に応じた前記所定の部位手前の位置まで進出させる駆動手段と、を備えていることを特徴とするインサート成形装置。」
【0017】
請求項8の発明は、請求項7に記載のインサート成形装置において、前記圧縮部材は、その進出過程において側面が前記注入口の周縁部に摺接しつつ移動することで当該注入口を閉塞することを特徴とする。
【0018】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載のインサート成形装置において、前記駆動手段は、前記圧縮部材を油圧によって進出させることを特徴とする。
【0019】
請求項10の発明は、請求項7ないし請求項9のいずれかに記載のインサート成形装置において、前記成形型を加熱する第1加熱手段と、前記圧縮部材を加熱する第2加熱手段と、前記第1加熱手段が所定の温度で加熱動作をするように制御するとともに前記第2加熱手段が前記所定の温度以上の温度で加熱動作をするように制御する加熱制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項11の発明は、請求項10に記載のインサート成形装置において、前記駆動手段は、前記圧縮部材を回転させながら進出させることを特徴とする。
【0021】
請求項12の発明は、請求項10又は請求項11に記載のインサート成形装置において、前記加熱制御手段は、前記第1加熱手段と前記第2加熱手段との内の少なくとも一方を前記成形型のキャビティ内に注入する溶融樹脂が硬化を開始する硬化開始温度以上の温度で加熱するように制御することを特徴とする。
【0022】
請求項13の発明は、請求項12に記載のインサート成形装置において、前記加熱制御手段は、前記第1加熱手段が前記成形型を前記溶融樹脂の硬化開始温度以上の温度で加熱するように制御するとともに前記第2加熱手段が前記圧縮部材を前記硬化開始温度よりも高い温度で加熱するように制御することを特徴とする。
【0023】
請求項14の発明は、請求項10ないし請求項13のいずれかに記載のインサート成形装置において、前記成形型を冷却する冷却手段と、前記冷却手段を駆動若しくは停止するように制御する冷却制御手段と、を備え、前記加熱制御手段が前記第1及び第2の加熱手段を加熱することを停止するように制御することを条件として、前記冷却制御手段が前記冷却手段を駆動するように制御することを特徴とする。
【0024】
請求項15の発明は、請求項10ないし請求項14のいずれかに記載のインサート成形装置において、前記第1加熱手段は前記成形型に設けられた加熱流体の流路によって構成されるとともに、前記第2加熱手段は前記圧縮部材に収容された発熱体によって構成され、前記冷却手段は前記成形型に設けられた冷却流体の流路によって構成されることを特徴とする。
【0025】
請求項16の発明は、請求項15に記載のインサート成形装置において、前記加熱流体の流路が前記キャビティの端部の近傍であって前記圧縮部材の進出方向の前方側に設けられていることを特徴とする。
【0026】
請求項17の発明は、請求項15又は請求項16に記載のインサート成形装置において、前記冷却流体の流路が前記成形型の注入口の近傍に設けられていることを特徴とする。
【0027】
請求項18の発明は、請求項15ないし請求項17のいずれかに記載のインサート成形装置において、前記加熱流体の流路が前記注入口よりも前記圧縮部材の進行方向の先方側に設けられていることを特徴とする。
【0028】
請求項19の発明に係る近接センサは、少なくとも検出コイルが、成形型のキャビティ内においてその検出コイルの一側面である検出面を他の部位よりも薄肉に樹脂成形により成形されてなる近接センサであって、前記検出コイルが、その検出コイルを前記成形型のキャビティ内に配置し、そのキャビティ内に前記検出コイルの前記検出面側から溶融樹脂の注入を開始し、圧縮部材を前記検出面に向けて当該検出面の手前の所定位置まで進出させることにより前記検出面が他の部位より薄肉に成形されていることを特徴とする。
【0029】
なお、この上記発明には、次の構成Eが含まれる。
「少なくとも検出コイルが、成形型のキャビティ内においてその検出コイルの一側面である検出面を他の部位よりも薄肉に樹脂成形により成形されてなる近接センサであって、
前記検出コイルが、その検出コイルを前記成形型のキャビティ内に配置し、そのキャビティ内に対し前記検出面との対向方向に沿って進退可能に設けられた圧縮部材を退避させた状態で、その圧縮部材及び前記検出面の間に溶融樹脂の注入を開始し、前記圧縮部材を所望の肉厚に応じた前記検出面の手前の位置まで進出させることにより前記検出面が他の部位より薄肉に成形されていることを特徴とする近接センサ。」
【0030】
請求項20の発明は、請求項19に記載の近接センサにおいて、前記検出コイルと電気的に接続され、前記成形により前記検出コイルと一体成形される回路基板を備え、前記回路基板の表面と裏面には、略同量の電子部品が実装されていることを特徴とする。
【0031】
請求項21の発明は、請求項19又は請求項20に記載の近接センサにおいて、前記成形は一次成形であって、当該一次成形された一次成形部以外の部分が樹脂成形により二次成形され、前記一次成形部のうち前記二次成形された二次成形部との接合部が凹凸形状に形成されていることを特徴とする。
【0032】
請求項22の発明は、請求項19ないし請求項21のいずれかに記載の近接センサにおいて、前記成形は一次成形であって、当該一次成形された一次成形部を筒状の金属ケース内に収容した状態で当該一次成形部以外の部分が樹脂成形により二次成形された近接センサであって、前記金属ケースの側壁には、前記二次成形による成形樹脂が充填される位置に貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0033】
請求項23の発明は、請求項21又は請求項22に記載の近接センサにおいて、前記検出コイルと電気的に接続され、前記一次成形により前記検出コイルと一体成形される回路基板を備え、前記回路基板には前記二次成形の成形樹脂にて覆われる箇所に所定の検出動作に基づき発光する表示灯が実装され、前記二次成形の成形樹脂は前記表示灯(発光素子)からの光を透過可能な透光性材料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
<請求項1,2,7の発明>
本構成によれば、成形金型のキャビティに対しインサート部品(近接センサの検出部)の前記所定の部位(上記検出部の検出面)側から溶融樹脂を注入する(第1工程)。次いで、キャビティ内においてインサート品の所定の部位に向けて進出可能に設けられた圧縮部材を、上記溶融樹脂の注入の途中又は終了後に、当該所定の部位手前の所定位置まで進出させて所定の部位を他の部位よりも薄肉に樹脂成形する(第2工程)。
このような構成であれば、薄肉に樹脂形成すべき所定の部位側から溶融樹脂を注入するから、従来のもののように所定の部位側に溶融樹脂が行き渡らないという問題を防止できる。また、注入された樹脂成形は圧縮部材によってその進行方向の奥側へと押し込まれキャビティ全体に充填させることができ成形不良を抑制できる。
【0035】
<請求項3の発明>
本構成によれば、上記第1工程に先立って、キャビティ内に対して進退可能に設けられた保持部材により所定の部位(検出部)の他の部位を保持し(第3工程)、第2工程での圧縮部材の進出途中で保持部材をキャビティ内から退避させる(第4工程)。
このような構成であっても、注入された溶融樹脂は保持部材付近に留まらず圧縮部材によって奥側に流動し、インサート品全体まで溶融樹脂を充填することができ、成形不良を抑制することができる。
【0036】
<請求項4の発明>
本構成によれば、少なくとも第2工程において、圧縮部材を所定位置に進出させるまでの間に、第1工程においてキャビティ内に注入された溶融樹脂を加熱することから、当該溶融樹脂を加熱して硬化することを防ぎながら圧縮部材によってキャビティ内に押し込むことができ、前記溶融樹脂をキャビティ全体に充填させて成形不良が生じることを抑制することができる。
【0037】
<請求項5,11の発明>
本構成によれば、圧縮部材を回転させながら進出させることから、溶融樹脂が回転する圧縮部材によって攪拌されてキャビティ内に滞留して硬化することを抑制することができ、成形不良を生じさせる原因を抑制することができる。
【0038】
<請求項6の発明>
本構成によれば、キャビティ内に注入された溶融樹脂を、第2工程が終了した後に加熱を終了させて冷却させることから、当該溶融樹脂が冷却されて硬化することを促進させることができ、インサート品を樹脂と一体にしたインサート成形品の成形時間を短縮することができる。
【0039】
<請求項8の発明>
本構成によれば、圧縮部材が、その進出過程において側面が注入口の周縁部に摺接しつつ移動することで当該注入口が閉塞される。これにより、溶融樹脂の注入を圧縮部材の移動動作によって停止できるから、溶融樹脂の注入のための構成を別途設ける必要がなくなる。
【0040】
<請求項9の発明>
本構成によれば、圧縮部材を油圧によって進出させる構成とした。このような構成であれば、エア式のものを用いる場合に比べて応答性及び圧縮部材の移動速度制御を精度よく行うことができる。つまり、インサート品に対して急激な圧力を加えないように圧縮部材の移動制御を行ってインサート品の位置ずれなどを防止できる。
【0041】
<請求項10の発明>
本構成によれば、加熱制御手段は、第1加熱手段が所定の温度で加熱動作をするように制御するとともに第2加熱手段が前記所定の温度以上の温度で加熱動作をするように制御することから、第1加熱手段と第2加熱手段とを加熱制御手段によってそれぞれ加熱動作をするように制御し、溶融樹脂が硬化することを防いで成形不良が生じることを抑制することができる。
【0042】
<請求項12の発明>
本構成によれば、加熱制御手段は、第1加熱手段と第2加熱手段との内の少なくとも一方を成形型のキャビティ内に注入する溶融樹脂が硬化を開始する硬化開始温度以上の温度で加熱するように制御することから、加熱制御手段が、第1及び第2の加熱手段の種類に応じて少なくとも一方の加熱手段を溶融樹脂の硬化開始温度以上の温度で加熱するように制御し、各加熱手段の加熱制御を最適なものとしつつ溶融樹脂が硬化することを防いで成形不良が生じることを抑制することができる。
【0043】
<請求項13の発明>
本構成によれば、加熱制御手段は、第1加熱手段が成形型を溶融樹脂の硬化開始温度以上の温度で加熱するように制御するとともに第2加熱手段が圧縮部材を前記硬化開始温度よりも高い温度で加熱するように制御することから、溶融樹脂が、当該樹脂の硬化開始温度よりも高い温度で加熱された圧縮部材と接することになり、圧縮部材の近傍で硬化することを防止することができる。
【0044】
<請求項14の発明>
本構成によれば、加熱制御手段が第1及び第2の加熱手段を加熱することを停止するように制御することを条件として、冷却制御手段が冷却手段を駆動するように制御することから、溶融樹脂は、第1及び第2の加熱手段によって加熱されることが停止されると冷却手段によって成形型の温度を降下させて硬化することが促進され、インサート成形品の成形時間を短縮することができる。
【0045】
<請求項15の発明>
本構成によれば、第1加熱手段は成形型に設けられた加熱流体の流路によって構成されるとともに、第2加熱手段は圧縮部材に収容された発熱体によって構成され、冷却手段は成形型に設けられた冷却流体の流路によって構成されることから、各加熱手段と冷却手段を簡易な構造によって形成することができ、成形型に注入される溶融樹脂を適宜に加熱若しくは冷却することができる。
【0046】
<請求項16の発明>
本構成によれば、加熱流体の流路がキャビティの端部の近傍であって圧縮部材の進出方向の前方側に設けられていることから、流路を流通する加熱流体によって、溶融樹脂を硬化することを防ぎながらキャビティ内に充填させることができる。
【0047】
<請求項17の発明>
本構成によれば、冷却流体の流路が成形型の注入口の近傍に設けられていることから、流路を流通する冷却流体によって、成形型の注入口からキャビティ内に注入された溶融樹脂が冷却されて硬化することを促進させることができるとともに成形型を冷却して作業者が当該成形型に触れても火傷を負わないようにすることができる。
【0048】
<請求項18の発明>
本構成によれば、加熱流体の流路が注入口よりも圧縮部材の進行方向の先方側に設けられていることから、流路を流通する加熱流体によって、溶融樹脂を注入口よりも圧縮部材の進行方向の先方側において加熱して硬化を防ぎながらキャビティ内に充填させることができる。
【0049】
<請求項19の発明>
上記成形方法によって検出部を一体成形することで、成形不良を抑制しつつ検出部用ホルダなどの部品が不要となり近接センサの生産コストを削減できる。
【0050】
<請求項20の発明>
本構成によれば、回路基板の表面と裏面には、略同量の電子部品が実装されている。従って、上記樹脂成形での圧縮部材の進出時に際し、表面及び裏面のどちらも溶融樹脂の流れ抵抗が略均一となり、回路基板の変形を防止できる。
【0051】
<請求項21の発明>
本構成によれば、一次成形部のうち前記二次成形された二次成形部との接合部が凹凸形状に形成されている。従って、この間の沿面距離が長くなり耐水性がよくなる。
【0052】
<請求項22の発明>
本構成によれば、金属ケースの側壁には、二次成形による成形樹脂が充填される位置に貫通孔が形成されている。従って、二次成形の際に金属ケース内まで樹脂が充填されたかどうかを確認できる。また、成形後は、貫通孔を満たす二次成形樹脂が突条の役割を果たし、二次成形部材に対する金属ケースの回り止めとして機能する。
【0053】
<請求項23の発明>
本構成によれば、二次成形の成形樹脂は表示灯からの光を透過可能な透光性材料であるから、回路基板に配した表示灯の発光動作によって所定の検出動作を視認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
<実施形態1>
本発明の実施形態1は、近接センサとその製造に使用されるインサート成形方法・装置に関するものであり、以下、図1ないし図13を参照しつつ説明する。
1.近接センサの構成
本実施形態の近接センサ10は、後述する検出コイル11を構成要素とするLC並列回路13を発振回路14によって発振させ、その発振振幅変化に基づき検出対象物の接近やその有無を判別するものである。この近接センサ10は、例えば図1に示すように、製造ラインに順次搬送される複数の金属製のワークWについて、検出領域H内を通過したワークWを計数するために用いられる。
【0055】
(1)近接センサの回路構成
図2には、近接センサ10の回路構成が示されている。検出コイル11及びコンデンサ12からなるLC並列回路13は、発振回路14によって発振状態に維持されることで、検出コイル11から交流磁界H(検出領域H)を発生する。この発振状態でワークWが接近すると、検出コイル11の磁気エネルギーが吸収され、これに応じてLC並列回路13の振幅電圧が変化(例えば減少)する。発振状態検出回路15は、例えばLC並列回路13の振幅電圧を所定の閾値と大小比較し、この比較結果に基づき検出動作を行う。本実施形態では、検出動作として、LC並列回路13の振幅電圧が所定の閾値を上回ったときに、動作表示灯としての発光素子16(発光ダイオード)を発光させるとともに、出力回路17を介して検出信号を外部に出力する。
【0056】
(2)近接センサの構造
図3には近接センサ10の構造を示す断面図が示されている。近接センサ10は、全体として円柱形をなし、検出コイル11が配置された先端側の端面が検出領域Hに向けられる検出面10aとされ、この検出面10aとは反対側の端面からケーブル20が導出されている。同図中の符号11は、上述した検出コイル11であり、これは、全体として円盤状のフェライトコア21と、このフェライトコア21の一端面に形成されたボビン部分に複数回巻回されたコイル線22とを備えて構成されている。そして、検出コイル11は、コイル線22が巻回された上記一端面を上記検出面10a側に向けた状態で配置される。
【0057】
検出コイル11のうち上記一端面とは反対側の面には、全体として長方形状となす回路基板23の長手方向における一端面が例えば半田付けや接着剤等によって仮固定されている。この回路基板23は、例えばガラスエポキシ基板であり、その両面に所定の回路パターン23aが形成されるとともに、上記したコンデンサ12、発振回路14、発振状態検出回路15、出力回路17、動作表示灯としての発光素子16を構成する電子部品23b(チップ部品)が実装されている。本実施形態では、回路基板23のうち後述する一次成形部分について表面と裏面でその実装量(電子部品とその半田付け量も含む)が同量になるように工夫されている。
【0058】
回路基板23は、その先端側の回路パターン23aが例えば図示しないリード線を介して検出コイル11のコイル線22に電気的に接続されている。また、その後端側の回路パターン23aには、例えば外部の図示しない制御機器に連なるケーブル20の信号線20aが半田付けされており、このケーブル20を介して上記検出信号等などの各信号が制御機器との間でやり取りされる。なお、このケーブル20は、複数の信号線を、例えば樹脂製の外皮20bで束ねた構成になっている。
【0059】
検出コイル11全体と、回路基板23のうち検出コイル11側の部分は、後述するインサート成形装置30によって外形が筒状に一次成形された樹脂部材(以下、「一次成形部材24」)で覆われている。一次成形部材24は、全体として円筒形状をなし、このうち検出コイル11を覆う先端側が他の部分より一回り径大になっている。
【0060】
また、一次成形部材24は、上記検出面10a部分の防水性を図りつつ、より長い検出距離を稼ぐために当該検出面10aとなる前壁24aが他の部分より薄肉に成形されている。また、一次成形部材24は、回路基板23を導出する後端部分がそれに隣接する中央部分よりも一回り径小になっており、この径小部24bの外周面には複数の突条24cが全周に亘って形成されている。なお、この一次成形部材24の成形方法については後で詳説する。
【0061】
次いで、一次成形部材24の径小部24b、回路基板23のうち一次成形されない部分、及び、ケーブル20の先端部は、やはり外形が円筒形状に二次成形された樹脂部材(以下、「二次成形部材25」)によって覆われるように一体成形されている。更に、金属製で両端が開口した円筒状の金属ケース26が、一次成形部材24の先端から二次成形部材25の中央部までの外周部分を覆うように設けられている。また、この金属ケース26には、図3(B)に示すように、一次成形部材24の径小部24bの外周面に対向する壁面に貫通孔26aが形成されている。なお、この金属ケース26は、後述する製造過程において、一次成形された検出コイル11及び回路基板23に対して装着され、その後に二次成形される。
【0062】
2.近接センサの製造方法
本実施形態に係る近接センサ10の製造方法について、図4〜図13を参照しつつ説明する。
(1)インサート成形装置の構成
図4は、インサート成形装置30の全体を示す概要図である。これは、インサート品が配される1対の成形金型31,31(同図では下側成形金型31aのみ図示)と、この1対の成形金型31,31が形成するキャビティ32内に溶融樹脂Jを供給する溶融樹脂供給装置33と、後述する1対の保持ピン34,34を移動させる保持ピン駆動機構35と、油圧装置36と、制御装置37を備えて構成されている。
【0063】
まず、成形金型31,31について説明する。図4に示すように、下側成形金型31aは、その一端側から他端側途中まで延びる断面円弧状のキャビティ溝32aが形成されており、これは上述した一次成形部材24を長手方向に沿って半分に割った形状となっている。このキャビティ溝32aの閉塞端側には、仮固定した検出コイル11及び回路基板23(各電子部品実装済み)のうち回路基板23の基端部分を保持するための保持溝38が形成されている。
【0064】
また、仮固定した検出コイル11及び回路基板23を配したときにその検出コイル11部分を側方から挟む1対の金属製の保持ピン34,34がキャビティ溝32aの長手方向に対して直交する方向に沿ってスライド可能に設けられている。これらは、保持ピン駆動機構35によって互いに接近する方向と離間する方向にスライド駆動されるようになっている。また、キャビティ溝32aのうち各保持ピン34よりも開口端側には、溶融樹脂供給装置33から供給される溶融樹脂Jが射出されるゲート(注入口)39が形成されている。
【0065】
更に、キャビティ溝32aの開口端には、1対の成形金型31,31によって形成されるキャビティ32の内径と略同一の外形を有する円筒状の圧縮部材40がそのキャビティ32の長手方向に沿ってスライド可能に設けられている。この圧縮部材40は、キャビティ32に対してその開口端側から閉塞端側に向けて油圧装置36による油圧によって進出するようになっている。なお、油圧装置36は、本発明の駆動手段に相当する。
【0066】
一方、上側成形金型31bは、図5に示すように、その一端側から他端側途中まで延びる断面円弧状のキャビティ溝32bが形成されており、これは上述した一次成形部材24を長手方向に沿って半分に割った形状となっている。このキャビティ溝32bの閉塞端側には、仮固定した検出コイル11及び回路基板23(各電子部品実装済み)のうち回路基板23の基端部分を、上側成形金型31bの保持溝38とともに上下で挟み込んで保持する保持溝42が形成されている。また、キャビティ溝32bの長手方向中央位置には、上側成形金型31aに設けれた保持ピン34,34をそれぞれガイドするガイド溝41,41が形成されている。
【0067】
制御装置37は、後述するように溶融樹脂供給装置33、保持ピン駆動機構35及び油圧装置36に制御信号をそれぞれ与えて駆動制御を行う。
【0068】
(2)近接センサの製造過程
まず、図6(A)に示すように、検出コイル11のコイル線22を回路基板23の回路パターン23aに電気的に接続し、検出コイル11の後端面と回路基板23の先端とを半田付けや接着剤等で仮固定し、これをインサート品として上述したインサート成形装置30によって一次成形を施す。
【0069】
より具体的には、図9〜図13に示す工程を実行する。図9に示すように、仮固定した検出コイル11及び回路基板23をインサート品として下側成形金型31aのキャビティ溝32a内に挿入する。このとき、上記インサート品は、検出コイル11の前面を圧縮部材40の進出方向における前端面と対向するように配置される。そして、下側成形金型31aに進退可能に設けられた保持ピン34,34を保持ピン駆動機構35によってキャビティ32内に進出させて、この保持ピン34,34によって検出コイル11の側面を挟んで保持する(本発明の「第3工程」に相当)。そして、上側成形金型31bを被せて固定すると、回路基板23の後端側部分23cが両成形金型の保持溝38,42によって挟み込まれる。つまり、この後端側部分23cは一次成形されない。
【0070】
次いで、インサート成形装置30を起動させると、図10に示すように、制御装置37によって溶融樹脂供給装置33が駆動され溶融樹脂Jが下側成形金型31aに形成されたゲート39を介してキャビティ32内に注入される(本発明の「第1工程」に相当)。ここで、この一次成形用の溶融樹脂Jは、例えばPBT(ポリブチレン・テレフタレート)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)などが望ましい。
【0071】
そして、この溶融樹脂Jの注入開始後、所定の時間経過したときに制御装置37によって油圧装置36が駆動され、図11に示すように圧縮部材40が検出コイル11の前面に向けて進出する。これに伴って、圧縮部材40及び検出コイル11間に滞留する溶融樹脂Jが回路基板23側に押し込まれる。このとき、上述したように、回路基板23のうち一次成形される前端側部分の表面及び裏面には、略同量の電子部品23b等が実装されており、これにより、検出コイル11側から回路基板23へ向かう溶融樹脂Jの流れ抵抗を表面と裏面で略均一になるようにしている。
【0072】
そして、図12に示すように、更に圧縮部材40が進出し、ゲート39の開口端の周縁部に摺接しつつそのゲート39の前方を横切ることでゲート39が閉塞されキャビティ32への溶融樹脂Jの注入が遮断される。また、制御装置37によって保持ピン駆動機構35が駆動され、検出コイル11の側面を保持していた保持ピン34,34は、その先端面がキャビティ32壁面と面一になる位置まで退避する(本発明の「第4工程」に相当)。なお、上記した「溶融樹脂の注入開始から所定の時間」とは、この間に一次成形部材24を成形するのに要する溶融樹脂Jがキャビティ32内に注入されるまでの時間に設定されており、これは、主として、注入すべき溶融樹脂量、ゲート39からの溶融樹脂Jの単位時間当たりの供給量、圧縮部材40の進出速度によって定まる。従って、例えばゲート39からの樹脂部材の注入量を検知し、この検知量が注入すべき溶融樹脂量になったときに圧縮部材40によってゲート39が閉塞されるように油圧装置36による圧縮部材40の進出動作を制御するようにしてもよい。
【0073】
続いて、図13に示すように、圧縮部材40を、検出コイル11の前面との間に所望の肉厚に応じた隙間を形成する手前位置まで進出させた状態で停止させる(本発明の「第2工程」に相当)。これにより、注入された溶融樹脂Jは、検出面10a及び回路基板23の前端側部分の周囲全体に行き渡る。そして、金属金型を冷却し溶融樹脂Jが固化した後に型抜きして、これにより図6(B)に示すように、一次成形部材24によって一体化された検出コイル11及び回路基板23が製造される。
【0074】
そして、図7(A)(B)に示すように、一次成形部材24の外周面に上記金属ケース26を嵌合させ、回路基板23の後端側の回路パターン23aにケーブル20を半田付けする。なお、本実施形態では、上述したように一次成形部材24の前端側が他の部分よりやや径大になっており、これに対応して金属ケース26の前端側の内径が他の部分より径大になっている。これにより一次成形部材24の外周面と金属ケース26の内周面との両段差部が係止され、金属ケース26に対して一次成形部材24が前方に位置ずれすることを防止できるようになっている。また、金属ケース26は、この装着状態で貫通孔26aから一次成形部材24の径小部24bが臨めるようになる。
【0075】
次に、回路基板23の後端側部分23cと金属ケース26との間に溶融樹脂を注入しつつ二次成形を行う。ここで、この二次成形用の溶融樹脂は、固化した状態で光透過性を有する材料であり、例えば透明PA(ポリアミド・ナイロン)、ポリエステルエラストマなどが望ましい。これにより、図8に示すように、一次成形部材24の径小部24b、回路基板23の後端側部分23c及びケーブル20の先端部分を覆い、外周が金属ケース26の外周と面一となる二次成形部材25が形成される。また、光透過性の二次成形部材25を介して発光素子16からの光が視認できる。
【0076】
3.実施形態1の効果
(1)本実施形態によれば、成形金型31a,31bのキャビティ32に対しインサート部品の薄肉にすべき検出コイル11の前面側から溶融樹脂Jの注入を開始する(第1工程)。次いで、圧縮部材40を、キャビティ32内においてインサート品の検出コイル11の前面に向けて進出させ、当該検出コイル11の前面手前まで移動させて樹脂成形を施す(第2工程)。これにより、従来のもののように検出コイル11側に溶融樹脂Jが行き渡らないという問題を防止できる。また、注入された溶融樹脂Jは圧縮部材40によってその進行方向の奥側へと押し込まれキャビティ32全体に充填させることができ成形不良を抑制できる。
【0077】
(2)上記第1工程に先立って、キャビティ32内に対して進退可能に設けられた保持ピン34,34により検出コイル11の側面を保持し(第3工程)、第2工程での圧縮部材40の進出途中で保持ピン34,34をキャビティ32内から退避させる(第4工程)。これにより、注入された溶融樹脂Jは保持ピン34,34付近に留まらず圧縮部材40によって奥側に流動し、インサート品全体まで溶融樹脂Jを充填することができ、成形不良を抑制することができる。
(3)また、圧縮部材40が、その進出過程において側面がゲート39の開口周縁部に摺接しつつ移動することで当該ゲート39が閉塞される。これにより、溶融樹脂Jの注入を圧縮部材40の移動動作によって停止できるから、溶融樹脂Jの注入のための構成を別途設ける必要がなくなる。
【0078】
(4)更に、圧縮部材40を油圧装置36の油圧によって進出させる構成とした。このような構成であれば、エア式のものを用いる場合に比べて応答性及び圧縮部材の移動速度制御を精度よく行うことができる。つまり、インサート品に対して急激な圧力を加えないように圧縮部材40の移動制御を行ってインサート品の位置ずれなどを防止できる。
(5)また、上記成形方法によって近接センサ10を製造すれば、成形不良を抑制しつつ検出部用ホルダなどの部品が不要となり近接センサ10の生産コストを削減できる。
【0079】
(6)回路基板23の表面と裏面には、略同量の電子部品23b等が実装されている。従って、上記樹脂成形での圧縮部材40の進出時に際し、表面及び裏面のどちらも溶融樹脂Jの流れ抵抗が略均一となり、回路基板23の変形を防止できる。
(7)一次成形部材24のうち二次成形部材25との接合部が突条24c(凹凸形状)に形成されている。従って、この間の沿面距離が長くなり耐水性がよくなる。
【0080】
(8)更に、金属ケース26の側壁には、二次成形による成形樹脂が充填される位置に貫通孔26aが形成されている。従って、二次成形の際に金属ケース26内まで二次成形樹脂が充填されたかどうかを確認できる。また、成形後は、貫通孔26aを満たす二次成形樹脂が係止突部の役割を果たし、二次成形部材25に対する金属ケース26の回り止めとして機能する。
(9)また、二次成形の成形樹脂は表示灯(発光素子16)からの光を透過可能な透光性材料であるから、回路基板23に配した動作表示灯の発光動作によって所定の検出動作を視認できる。
【0081】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を、図16ないし図22を参照しつつ説明する。実施形態2は、成形金型31及び溶融樹脂Jを加熱若しくは冷却すること(請求項4,6,10,12ないし18の発明に対応)、圧縮部材40を回転させながら進出させること(請求項5,11の発明に対応)が実施形態1とは異なり、その他の事項は実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一の構成や製造方法等は同一の符号を付してその説明を省略し、実施形態1と異なる事項のみを説明する。
【0082】
1.近接センサの製造方法
(1)インサート成形装置の構成
図16は、本実施形態のインサート成形装置30Aの全体を示す概要図である。このインサート成形装置30Aは、実施形態1とは異なり、電源供給装置50と、温水供給装置60と、冷却水供給装置70と付加して構成されている。
【0083】
下側成形金型31aには、図示するように、温水の流路65が、キャビティ32の長手方向に複数設けられている。本実施形態では、温水が、6つの流路65を流通し、キャビティ32内に注入された溶融樹脂Jを加熱する。温水は、温水供給装置60によって、流路65に送り出される。
【0084】
この下側成形金型31aには、冷却水の流路75が設けられている。冷却水の流路75は、図示するように、当該金型31aを冷却してキャビティ32内に注入された溶融樹脂Jを冷却して検出コイル11及び回路基板23と一体にするため、ゲート39の近傍に設けられている。本実施形態では、冷却水が、冷却水供給装置70によって送り出され、2つの流路75を流通する。
【0085】
圧縮部材40は、図16,図18ないし図22から理解できるように、油圧装置36の油圧シリンダ(図示しない。)を油圧によって作動させ、キャビティ32に対してその開口端側から閉塞端側に向けて進出するようになっている。また、この圧縮部材40を、油圧装置36の油圧モータ(図示しない。)によって回転させることもできる。圧縮部材40は、その中心軸を回転中心にして回転する。
【0086】
この圧縮部材40は、図示するように、棒状ヒータ45を収容している。棒状ヒータ45は、電源供給装置50によって電力が供給されて通電する。この棒状ヒータ45は、通電することによって温度が上昇し、圧縮部材40を加熱する。なお、この棒状ヒータ45は、本発明の第2加熱手段に相当する。
【0087】
上側成形金型31bには、図17に示すように、温水の流路66が設けられている。この流路66は、下側成形金型31aと上側成形金型31bとを型合わせしたときに、当該金型31aに設けられた温水の流路65と連通し、温水供給装置60から送り出される温水を流通させる。この温水の流路65,66は、図示するように、キャビティ32の端部の近傍であって圧縮部材40の進出方向の前方側に設けられる。この流路65,66は、ゲート39よりも圧縮部材40の進行方向の前方側に設けられている。なお、温水の流路65,66は、本発明の第1加熱手段に相当する。
【0088】
この上側成形金型31bには、冷却水の流路76が設けられている。この流路76は、下側成形金型31aと上側成形金型31bとを型合わせしたときに、当該金型31aに設けられた冷却水の流路75と連通し、冷却水供給装置70から送り出される冷却水を流通させる。この流路75,76は、図16及び図22から理解できるように、圧縮部材40を検出コイル11の前面との間に所望の肉厚に応じた隙間を形成する手前位置まで進出させた位置であってキャビティ30と近接した位置に設けられている。なお、冷却水の流路75,76は、本発明の冷却手段に相当する。
【0089】
制御装置37は、溶融樹脂供給装置33、保持ピン駆動機構35、油圧装置36、電源供給装置50、温水供給装置60、冷却水供給装置70に制御信号をそれぞれ与えて駆動制御を行う。なお、制御装置37、電源供給装置50及び温水供給装置60は本発明の加熱制御手段に、制御装置37及び冷却水供給装置70は冷却制御手段に、それぞれ相当する。
【0090】
(2)近接センサの製造過程
次に、近接センサ10の製造過程を、各成形方法(成形方法1ないし3)毎に説明する。各成形方法は、棒状ヒータ45を発熱させる温度、温水供給装置60が水を加熱する温度、圧縮部材40を回転させるか否かが異なる。
(成形方法1)
制御装置37は、溶融樹脂供給装置33を駆動させると同時に、図16に示すように、駆動操作信号S1,S2をそれぞれ電源供給装置50,温水供給装置60に送信し、当該電源供給装置50及び温水供給装置60を駆動させる。電源供給装置50は、駆動操作信号S1を受信し、電力を供給して棒状ヒータ45を200℃の温度で発熱させる。キャビティ32内に注入された溶融樹脂Jは、温度が200℃のときは、硬化しない。一方、温水供給装置60は、駆動操作信号S2を受信し、水を90℃の温度で加熱し、温水を流路65,66に送り出す。
【0091】
溶融樹脂Jは、図19に示すように、溶融樹脂供給装置33によってキャビティ32内に注入され、圧縮部材40が、当該溶融樹脂Jが注入されてから所定の時間経過したときに、油圧装置36の油圧シリンダによって、図20に示すように、検出コイル11の前面に向けて進出する。この圧縮部材40は、棒状ヒータ45によって温度が上昇し、当接する溶融樹脂Jを加熱する。ここでは、この圧縮部材40は回転しない。
【0092】
油圧装置36の油圧シリンダは、図20ないし図22に示すように、圧縮部材40を、検出コイル11の前面との間に所望の肉厚に応じた隙間を形成する手前位置まで進出させた状態で停止させる(本発明の「第2工程」に相当)。溶融樹脂Jは、棒状ヒータ45によって温度が上昇した圧縮部材40によって加熱されるとともに、流路65,66を流通する温水によって加熱され、流動性が保たれる。これにより、溶融樹脂Jは、検出面10a及び回路基板23の前端側部分の周囲全体に行き渡る。
【0093】
その後、制御装置37は、駆動停止信号S4,S5(図4参照。)を電源供給装置50,温水供給装置60にそれぞれ送信する。電源供給装置50は、駆動停止信号S4を受信し、電力を棒状ヒータ45に供給することを停止し、温水供給装置60は、駆動停止信号S5を受信し、温水を流路65,66に送り出すことを停止する。溶融樹脂Jは、圧縮部材40の温度が低下し温水が流路65,66を流通しなくなることにより、加熱されることが停止される。
【0094】
制御装置37は、前記駆動停止信号S4,S5をそれぞれ電源供給装置50,温水供給装置60に送信すると同時に、駆動操作信号S3を冷却水供給装置70に送信する。冷却水供給装置70は、駆動操作信号S3を受信し、冷却水を流路75,76に送り出す。そして、成形金型31を、流路75,76を流通する冷却水によって冷却する。この制御装置37は、前記駆動操作信号S3を冷却水供給装置70に送信した後に、シリンダ操作信号S12(図4参照。)を油圧装置36に送信する。圧縮部材40は、油圧装置36がシリンダ操作信号S12を受信し、油圧シリンダが油圧装置36に収容されることによって後退する。流路75,76を流通する冷却水によって溶融樹脂Jを固化した後に型抜きして、図6(B)に示すように、一次成形部材24によって一体化された検出コイル11及び回路基板23が製造される。制御装置37は、上述したように、電源供給装置50,温水供給装置60を停止させるように制御する同時に冷却水供給装置70を駆動させるように制御し、その後圧縮部材40を後退させるため油圧装置36を駆動するように制御する。
【0095】
(成形方法2)
ここでは、成形方法1と同一の製造工程はその説明を省略する。制御装置37は、図16及び図19に示すように、溶融樹脂供給装置33を駆動させて溶融樹脂Jをキャビティ32内に注入させると同時に、駆動操作信号S1,S6をそれぞれ電源供給装置50,温水供給装置60に送信し、当該電源供給装置50及び温水供給装置60を駆動させる。電源供給装置50は、駆動操作信号S1を受信し、電力を供給して棒状ヒータ45を200℃の温度で発熱させる。温水供給装置60は、駆動操作信号S6を受信し、水を200℃の温度で加熱し、温水を流路65,66に送り出す。この成形方法2では、成形方法1と同様に、圧縮部材40を回転させない。
【0096】
(成形方法3)
ここでは、成形方法1,2とは異なり、圧縮部材40を、油圧装置36の油圧モータによって回転させる。制御装置37は、図16及び図19に示すように、溶融樹脂供給装置33を駆動させて溶融樹脂Jをキャビティ32内に注入させると同時に、駆動操作信号S8,S2をそれぞれ電源供給装置50,温水供給装置60に送信し、当該電源供給装置50及び温水供給装置60を駆動させる。電源供給装置50は、駆動操作信号S8を受信し、電力を供給して棒状ヒータ45を90℃で発熱させる。温水供給装置60は、駆動操作信号S2を受信し、水を90℃で加熱し、温水を流路65,66に送り出す。溶融樹脂Jは、温度が90℃(硬化開始温度)のときは、硬化を開始する。
【0097】
制御装置37は、溶融樹脂Jをキャビティ32内に注入を開始してから所定の時間が経過したときに、図16に示すように、油圧モータの回転操作信号S9,油圧シリンダの駆動操作信号S10をそれぞれ油圧装置36に送信する。油圧装置36は、この回転操作信号S9と駆動操作信号S10を受信し、図20ないし図22から理解できるように、圧縮部材40を、油圧モータ及び油圧シリンダによって、回転させながら検出コイル11の前面に向けて進出させる。溶融樹脂Jは、圧縮部材40の回転によって攪拌されるとともに、棒状ヒータ45によって温度が上昇した圧縮部材40及び流路65,66を流通する温水によって加熱され、流動性を保ちながら前記検出面10a及び回路基板23の前端側部分の周囲全体に行き渡る。
【0098】
その後、制御装置37は、駆動停止信号S4,S5(図4参照。)を電源供給装置50,温水供給装置60にそれぞれ送信する。電源供給装置50は、駆動停止信号S4を受信し、電力を棒状ヒータ45に供給することを停止し、温水供給装置60は、駆動停止信号S5を受信し、温水を流路65,66に送り出すことを停止する。溶融樹脂Jは、圧縮部材40の温度が低下し温水が流路65,66を流通しなくなることにより、加熱されることが停止される。
【0099】
制御装置37は、前記駆動停止信号S4,S5をそれぞれ電源供給装置50,温水供給装置60に送信すると同時に、駆動操作信号S3を冷却水供給装置70に送信する。冷却水供給装置70は、駆動操作信号S3を受信し、冷却水を流路75,76に送り出す。そして、成形金型31を、流路75,76を流通する冷却水によって冷却する。この制御装置37は、前記駆動操作信号S3を冷却水供給装置70に送信した後に、回転停止信号S11を油圧装置36に送信する。油圧装置36は、回転停止信号S11を受信し、圧縮部材40の回転を停止させる。続いて、制御装置37は、シリンダ操作信号S12を油圧装置36に送信する。圧縮部材40は、油圧装置36がシリンダ操作信号S12を受信し、油圧シリンダが油圧装置36に収容されることによって後退する。制御装置37は、上述したように、電源供給装置50,温水供給装置60を停止させるように制御する同時に冷却水供給装置70を駆動させるように制御し、その後圧縮部材40の回転を停止させるため油圧装置36の油圧モータを停止するように制御し、続いて圧縮部材40を後退させるため油圧装置36の油圧シリンダを駆動するように制御する。
【0100】
2.実施形態2の効果
(成形方法1ないし3の効果)
(1)キャビティ32内に注入された溶融樹脂Jは、第2工程において、圧縮部材40を検出コイル11の前面との間に所望の肉厚に応じた隙間を形成する手前位置まで進出させるまでの間は加熱される。これによって、溶融樹脂Jを、加熱して硬化することを防ぎながら圧縮部材40によってキャビティ32内に押し込むことができ、この溶融樹脂Jをキャビティ32の全体に充填させて成形不良が生じることを抑制することができる。
(2)制御装置37は、棒状ヒータ45を発熱させる温度値が、温水供給装置60が水を加熱する温度以上の値となるように制御する。棒状ヒータ45を発熱させる温度と温水供給装置60が水を加熱する温度は、成形方法1ではそれぞれ200℃と90℃、成形方法2ではそれぞれ200℃、成形方法3ではそれぞれ90℃である。これによって、棒状ヒータ45と流路65,66を流通する温水が、それぞれ圧縮部材40と成形金型31を加熱し、キャビティ32内に注入された溶融樹脂Jが、成形型31を加熱する温度以上の温度で加熱された圧縮部材40によって硬化することを防ぎ、インサート成形品の成形不良を生じさせる原因を抑制することができる。
(3)制御装置37は、棒状ヒータ45を発熱させる温度及び温水供給装置60が水を加熱する温度を、キャビティ32内に注入された溶融樹脂Jの硬化開始温度(90℃)以上の温度とした。これによって、キャビティ32内に注入された溶融樹脂Jが硬化することを防ぎ、インサート成形品の成形不良が生じることを抑制することができる。また、制御装置37は、棒状ヒータ45を発熱させる温度又は温水供給装置60が水を加熱する温度を、棒状ヒータ45の発熱量や成形金型31の大きさ等に応じて最適な値に設定し、棒状ヒータ45及び温水(加熱流体)の加熱制御を最適なものとすることができる。
(4)制御装置37は、第2工程が終了した後に、電力供給装置50が電力を棒状ヒータ45に供給することを停止し温水供給装置60が温水を流路65,66に送り出すことを停止するように制御すると同時に、冷却水供給装置70が冷却水を流路75,76に送り出すように制御する。圧縮部材40及び流路65,66を流通する温水によって加熱されることが停止されると、キャビティ32内に注入された溶融樹脂Jは、流路75,76を流通する冷却水によって成形金型31の温度を降下させ、硬化することが促進され、インサート成形品の成形時間を短縮することができる。
(5)成形金型31は、温水を流路65,66に流通させて加熱され、圧縮部材40は棒状ヒータ45によって加熱され、当該成形金型31は、冷却水を流路75,76に流通させて冷却される。成形金型31を、温水又は冷却水を各流路を流通させることのみによって、加熱又は冷却し、圧縮部材40を、棒状ヒータ45を収容させるのみで加熱することができ、成形金型31のキャビティ32内に注入された溶融樹脂Jを、簡易な構造によって、適宜に加熱又は冷却することができる。
(6)温水の流路65,66は、図16ないし図22に示すように、キャビティ32の端部の近傍であって圧縮部材40の進出方向の前方側に設けられている。これによって、溶融樹脂Jを、キャビティ32の近傍を流通する温水によって加熱し、流動性を保って硬化することを防ぎながら当該キャビティ32の全体に充填することができる。
(7)また、温水の流路65,66をゲート39よりも圧縮部材40の進行方向の先方側に設けると、流路65,66を流通する温水によって、溶融樹脂Jをゲート39よりも圧縮部材40の進行方向の先方側において加熱して硬化を防ぎながらキャビティ32内に充填させることができる。
(8)冷却水の流路75,76は、図示するように、ゲート39の近傍に設けられている。これによって、キャビティ32に注入された溶融樹脂Jを冷却して硬化することを促進させることができるとともに、成形金型31をも冷却し、作業者が当該成形金型31に触れても火傷を負わないようにすることができる。
【0101】
(成形方法1の効果)
制御装置37は、流路65,66を流通する温水によって成形金型31を90℃で加熱するように制御するとともに、棒状ヒータ45によって圧縮部材40を200℃で加熱するように制御する。これによって、キャビティ32内に注入された溶融樹脂Jが、当該樹脂の硬化開始温度よりも高い温度(200℃)で加熱された圧縮部材40と接することになり、当該圧縮部材40の近傍で硬化することを抑制することができる。溶融樹脂Jは、圧縮部材40によって押されて流動することから、成形金型31を加熱する温度(90℃)が圧縮部材40を加熱する温度(200℃)よりも低い温度であっても、硬化することが抑制される。
【0102】
(成形方法2の効果)
制御装置37は、流路65,66を流通する温水によって成形金型31を200℃で加熱するように制御するとともに、棒状ヒータ45によって圧縮部材40を200℃で加熱するように制御する。溶融樹脂Jは、成形金型31を加熱する温度(200℃)が圧縮部材40を加熱する温度(200℃)と同一の温度であることから、熱が成形金型31からも伝わって、硬化することが抑制される。
【0103】
(成形方法3の効果)
油圧装置36は、第2工程において、制御装置37が送信した回転操作信号S9及び駆動操作信号S10を受信し、圧縮部材40を、油圧モータ及び油圧シリンダによって、回転させながら検出コイル11の前面に向けて進出させる。これによって、溶融樹脂Jが、回転する圧縮部材40によって攪拌され、キャビティ32内に滞留して硬化することを抑制することができ、検出コイル11,回路基板23及び樹脂を一体にしたインサート成形品の成形不良を生じさせる原因を抑制することができる。この成形方法3では、溶融樹脂Jが圧縮部材40によって攪拌されて硬化することが抑制されることから、成形金型31を加熱する温度を溶融樹脂Jの硬化開始温度(90℃)に抑えることができる。また、この成形方法3では、成形金型31及び圧縮部材40を90℃で加熱するように制御することから、成形金型31及び圧縮部材40を200℃で加熱するように制御することに比べて、高い能力値を有する電力供給装置50及び温水供給装置60を用いる必要がない。
【0104】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、検出コイル11の他、LC並列回路13等の回路が実装された回路基板23も一体的に一次成形する構成としたが、これに限らず、インサート品として例えばヘッド分離型の検出コイルのみを一次成形する構成であってもよい。
【0105】
(2)上記実施形態ではゲート39は1つとしたが、複数であってもよい。
【0106】
(3)上記実施形態では、制御装置37による制御によって保持ピン34,34、圧縮部材40を駆動させる構成であったが、これに限らず、作業者による操作であってもよい。
【0107】
(4)溶融樹脂Jは、実施形態2にて述べたように、第2工程において加熱されることに限られず、第1ないし第4工程において、圧縮部材40を検出コイル11の前面との間に所望の肉厚に応じた隙間を形成する手前位置まで進出させるまでの間は加熱されるようにしてもよい。
【0108】
(5)温水の流路65,66は、6つに限られず、適宜の数で構成してもよい。冷却水の流路75,76も、2つに限られず、適宜の数で構成してもよい。
(6)冷却水の流路75,76は、図16及び図17に示すように、点線の位置に追加して設けてもよい。加熱が停止された圧縮部材40は、この流路75,76を流通する冷却水によって、素早く冷却される。加えて、成形金型31も、圧縮部材40が前記冷却水によって冷却され、熱が当該圧縮部材40から伝わることを抑えることができ、素早く冷却することができる。
【0109】
(7)インサート成形装置30Aは、断熱材(例えばロスナボード)を、成形金型31と油圧装置36若しくは電源供給装置50と間に設け、冷却水を流路75,76に流通させるときに、油圧装置36若しくは電源供給装置50が発する熱が、成形金型31に伝わることを抑制するようにしたものであってもよい。
【0110】
(8)制御装置37は、電源供給装置50,温水供給装置60を駆動し、圧縮部材40を90℃又は200℃で加熱したり、90℃又は200℃の温水を流路65,66に送り出すように制御しているが、当該制御装置37が、圧縮部材40と成形金型31の温度を、常時測定してそれぞれ90℃又は200℃となるように制御してもよい。
【0111】
(9)インサート成形装置は、成形型を加熱する第1加熱手段と、圧縮部材を加熱する第2加熱手段と、前記第2加熱手段が所定の温度で加熱動作をするように制御するとともに前記第1加熱手段が前記所定の温度以上の温度で加熱動作をするように制御する加熱制御手段と、前記圧縮部材を回転させながら進出させる駆動手段と、を備えたことを特徴とするものであってもよい。このインサート成形装置30は、圧縮部材40を加熱する温度(例えば90℃)が成形金型31を加熱する温度(例えば200℃)よりも低い温度であっても、溶融樹脂Jが、駆動手段(例えば制御装置37)によって回転する圧縮部材40によって攪拌して硬化することを防ぐとともに、成形金型31を加熱することにより流動性を保ち、キャビティ32の全体に充填することができるものとなる。
【0112】
(10)図14には実施形態1に対する変形例が示されている。つまり、保持ピン(保持部材)先端と、インサート品の被保持部とを係止させて圧縮部材による圧力によってその進行方向におけるインサート品の位置ずれを防止する構成としてもよい。その具体的構成として、同図(A)には、保持ピン34,34の先端に検出コイル11の後面に係止する係止突部34a,34aを設ける構成が示されている。また、同図(B)には、検出コイル11側面に形成された凹所11a,11aに嵌入する凸部34b,34bを保持ピン34,34に設けた構成が示されている。なお、この逆に、検出コイル11側面に形成された凸所が嵌入する凹所を保持ピン34,34の先端に設ける構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施形態1に係る近接センサの使用状態を示す斜視図
【図2】近接センサの回路構成を示す概略図
【図3】近接センサの断面図
【図4】インサート成形装置の全体構成を示す簡略図
【図5】上側成形金型を示す簡略図
【図6】実施形態1に係る一次成形前後のインサート品を示す斜視図
【図7】二次成形前のインサート品を示す斜視図
【図8】二次成形後のインサート品を示す斜視図
【図9】インサート品を配置した実施形態1の成形金型を示す図
【図10】溶融樹脂注入時の成形金型を示す図
【図11】圧縮部材進出時の成形金型を示す図
【図12】ゲート遮断時の成形金型を示す図
【図13】圧縮部材停止時の成形金型を示す図
【図14】変形例を示す部分的拡大図
【図15】従来の成形方法で使用される成形金型を示す図
【図16】実施形態2に係るインサート成形装置の全体構成を示す簡略図
【図17】上側成形金型を示す簡略図
【図18】インサート品を配置した実施形態2の成形金型を示す図
【図19】溶融樹脂注入時の成形金型を示す図
【図20】圧縮部材進出時の成形金型を示す図
【図21】ゲート遮断時の成形金型を示す図
【図22】圧縮部材停止時の成形金型を示す図
【符号の説明】
【0114】
10…近接センサ
10a…検出面(所定の部位)
11…検出コイル(インサート品)
16…発光素子(表示灯)
23…回路基板
24…一次成形部材
24a…前壁
24b…径小部
24c…突条(凹凸形状)
25…二次成形部材
26…金属ケース
26a…貫通孔
30…インサート成形装置
31…成形金型
32…キャビティ
34…保持ピン(保持部材)
36…油圧装置(駆動手段)
37…制御装置(加熱制御手段,冷却制御手段)
39…ゲート(注入口)
40…圧縮部材
45…棒状ヒータ(第2加熱手段)
50…電源供給装置(加熱制御手段)
60…温水供給装置(加熱制御手段)
65,66…温水の流路(第1加熱手段)
70…冷却水供給装置(冷却制御手段)
75,76…冷却水の流路(冷却手段)
J…溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート品を、成形型のキャビティ内に配置した状態で当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記インサート品に対して所定の部位を他の部位よりも薄肉に樹脂成形するインサート成形方法であって、
前記キャビティに対し前記インサート部品の前記所定の部位側から前記溶融樹脂を注入する第1工程と、
前記キャビティ内において前記インサート品の前記所定の部位に向けて進出可能に設けられた圧縮部材を、前記第1工程の途中又は終了後に、当該所定の部位手前の所定位置まで進出させる第2工程と、を含むことを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
近接センサの構成部品のうち少なくとも検出コイルを含む検出部を、成形型のキャビティ内に配置した状態で、当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記検出部に対してその検出面を他の部位よりも薄肉に樹脂成形するインサート成形方法であって、
前記キャビティ内に対し前記検出部の前記検出面側から前記溶融樹脂を注入する第1工程と、
前記キャビティ内において前記検出部の前記検出面に向けて進出可能に設けられた圧縮部材を、前記第1工程の途中又は終了後に、当該検出面手前の所定位置まで進出させる第2工程と、を含むことを特徴とするインサート成形方法。
【請求項3】
前記第1工程に先立って、前記キャビティ内に対して進退可能に設けられた保持部材により前記他の部位を保持する第3工程と、
前記第2工程での前記圧縮部材の進出途中で前記保持部材を前記キャビティ内から退避させる第4工程と、を更に含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインサート成形方法。
【請求項4】
少なくとも前記第2工程において、前記圧縮部材を前記所定位置に進出させるまでの間に、前記第1工程において前記キャビティ内に注入された溶融樹脂を加熱することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインサート成形方法。
【請求項5】
前記第2工程において、前記圧縮部材を回転させながら進出させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインサート成形方法。
【請求項6】
前記キャビティ内に注入された溶融樹脂は、前記第2工程が終了した後に加熱を終了させて冷却させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインサート成形方法。
【請求項7】
インサート品を、成形型のキャビティ内に配置した状態で当該キャビティ内に溶融樹脂を注入し、前記インサート品に対して所定の部位を他の部位よりも薄肉に樹脂成形するためのインサート成形装置であって、
前記インサート品が配置されるキャビティ、前記キャビティ内において前記インサート品の前記所定の部位に向けて進出可能に設けられた圧縮部材、及び、前記圧縮部材の経路途中であって前記キャビティの側壁に形成され当該キャビティ内に前記溶融樹脂を注入する注入口を有する成形型と、
前記注入口からの前記溶融樹脂の注入開始後に、前記圧縮部材を前記所定の部位手前の所定位置まで進出させる駆動手段と、を備えていることを特徴とするインサート成形装置。
【請求項8】
前記圧縮部材は、その進出過程において側面が前記注入口の周縁部に摺接しつつ移動することで当該注入口を閉塞することを特徴とする請求項7に記載のインサート成形装置。
【請求項9】
前記駆動手段は、前記圧縮部材を油圧によって進出させることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のインサート成形装置。
【請求項10】
前記成形型を加熱する第1加熱手段と、
前記圧縮部材を加熱する第2加熱手段と、
前記第1加熱手段が所定の温度で加熱動作をするように制御するとともに前記第2加熱手段が前記所定の温度以上の温度で加熱動作をするように制御する加熱制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載のインサート成形装置。
【請求項11】
前記駆動手段は、前記圧縮部材を回転させることを特徴とする請求項10に記載のインサート成形装置。
【請求項12】
前記加熱制御手段は、前記第1加熱手段と前記第2加熱手段との内の少なくとも一方を前記成形型のキャビティ内に注入する溶融樹脂が硬化を開始する硬化開始温度以上の温度で加熱するように制御することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載のインサート成形装置。
【請求項13】
前記加熱制御手段は、前記第1加熱手段が前記成形型を前記溶融樹脂の硬化開始温度以上の温度で加熱するように制御するとともに前記第2加熱手段が前記圧縮部材を前記硬化開始温度よりも高い温度で加熱するように制御することを特徴とする請求項12に記載のインサート成形装置。
【請求項14】
前記成形型を冷却する冷却手段と、
前記冷却手段を駆動若しくは停止するように制御する冷却制御手段と、を備え、
前記加熱制御手段が前記第1及び第2の加熱手段を加熱することを停止するように制御することを条件として、前記冷却制御手段が前記冷却手段を駆動するように制御することを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれかに記載のインサート成形装置。
【請求項15】
前記第1加熱手段は前記成形型に設けられた加熱流体の流路によって構成されるとともに、前記第2加熱手段は前記圧縮部材に収容された発熱体によって構成され、
前記冷却手段は前記成形型に設けられた冷却流体の流路によって構成されることを特徴とする請求項10ないし請求項14のいずれかに記載のインサート成形装置。
【請求項16】
前記加熱流体の流路が前記キャビティの端部の近傍であって前記圧縮部材の進出方向の前方側に設けられていることを特徴とする請求項15に記載のインサート成形装置。
【請求項17】
前記冷却流体の流路が前記成形型の注入口の近傍に設けられていることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載のインサート成形装置。
【請求項18】
前記加熱流体の流路が前記注入口よりも前記圧縮部材の進行方向の先方側に設けられていることを特徴とする請求項15ないし請求項17のいずれかに記載のインサート成形装置。
【請求項19】
少なくとも検出コイルが、成形型のキャビティ内においてその検出コイルの一側面である検出面を他の部位よりも薄肉に樹脂成形により成形されてなる近接センサであって、
前記検出コイルが、その検出コイルを前記成形型のキャビティ内に配置し、そのキャビティ内に前記検出コイルの前記検出面側から溶融樹脂の注入を開始し、圧縮部材を前記検出面に向けて当該検出面の手前の所定位置まで進出させることにより前記検出面が他の部位より薄肉に成形されていることを特徴とする近接センサ。
【請求項20】
前記検出コイルと電気的に接続され、前記成形により前記検出コイルと一体成形される回路基板を備え、
前記回路基板の表面と裏面には、略同量の電子部品が実装されていることを特徴とする請求項19に記載の近接センサ。
【請求項21】
前記成形は一次成形であって、当該一次成形された一次成形部以外の部分が樹脂成形により二次成形され、
前記一次成形部のうち前記二次成形された二次成形部との接合部が凹凸形状に形成されていることを特徴とする請求項19又は請求項20に記載の近接センサ。
【請求項22】
前記成形は一次成形であって、当該一次成形された一次成形部を筒状の金属ケース内に収容した状態で当該一次成形部以外の部分が樹脂成形により二次成形された近接センサであって、
前記金属ケースの側壁には、前記二次成形による成形樹脂が充填される位置に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項19ないし請求項21のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項23】
前記検出コイルと電気的に接続され、前記一次成形により前記検出コイルと一体成形される回路基板を備え、
前記回路基板には前記二次成形の成形樹脂にて覆われる箇所に所定の検出動作に基づき発光する表示灯が実装され、
前記二次成形の成形樹脂は前記表示灯からの光を透過可能な透光性材料であることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の近接センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−7764(P2006−7764A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154206(P2005−154206)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】