説明

エピタキシャル成長用サセプタおよびエピタキシャルウェーハの製造方法

【課題】エピタキシャル膜が厚肉でもエピタキシャル膜にスティッキングが発生しにくく、エピタキシャル膜のウェーハ面内均一性を保持可能なエピタキシャル成長用サセプタおよびエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】エピタキシャル成長用サセプタ10の上面に沿ってシリコンウェーハ11へ流れるソースガスは、途中の環状段差面15によって淀みと逆流とが発生する。そのため、サセプタ10の凹部12の側壁近傍でのソースガスの流れが変わり、ウェーハ11と凹部12の側壁14との隙間dへ回り込みにくくなる。よって、エピタキシャル膜21が厚肉でもスティッキングが発生せず、この膜12の外周部の厚さの低下もほとんどなく、膜厚の分布がウェーハ面内で均一なエピタキシャルウェーハ22を作製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エピタキシャル成長用サセプタおよびエピタキシャルウェーハの製造方法、詳しくはエピタキシャル成長装置の反応炉内で半導体ウェーハを支持するエピタキシャル成長用サセプタと、これを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ(半導体ウェーハ)の上面にエピタキシャル膜を成長させる気相エピタキシャル成長装置として、バッチ式、枚葉式のものが知られている。この装置では、通路状の反応炉(チャンバ)内に設置されたサセプタ(エピタキシャル成長用サセプタ)にシリコンウェーハを載置し、反応炉の外に設けられたヒータによりシリコンウェーハを加熱しながら、反応炉を通過する各種のソースガス(原料ガス、反応ガス)と反応させ、ウェーハ上面にエピタキシャル膜を成長させる。
【0003】
サセプタのうち、シリコンウェーハが載置される箇所は、サセプタの上面の中央部に形成された、サセプタポケットまたはザグリと呼ばれる円形の凹部である。この凹部は、円形の底壁とこれを取り囲む側壁とから構成されている。底壁は、平坦または若干湾曲した形状を有している。また、側壁はサセプタの上面を所定の深さまで直角に切り込んで形成されている。
凹部の深さ(側壁の高さ)は、シリコンウェーハの厚さを考慮し、サセプタの上面とウェーハの上面との高さが略揃うように形成されていることが多い。しかしながら、厚肉なエピタキシャル膜を成長させる場合には、エピタキシャル成長に伴って派生したシリコンのブリッジにより、シリコンウェーハとサセプタの凹部の側壁とが架け渡されるスティッキングという現象が発生していた。この場合には、サセプタからエピタキシャルウェーハを取り出す際にブリッジを折る必要が生じ、これに起因したウェーハのワレが起きやすい。
【0004】
これを解消する従来技術として特許文献1が知られている。これは、サセプタの上面とシリコンウェーハの上面との高さの差(段差)が小さくなるように、シリコンウェーハの厚さに応じて、サセプタの凹部の深さを変更するという構成を有している。
サセプタの凹部の深さ(側壁の高さ)をシリコンウェーハの厚さより深く(高く)した場合には、ウェーハ外周部のエピタキシャル膜は薄くなる。しかも、シリコンウェーハと側壁との隙間にソースガスが回り込みにくくなる。反対に、サセプタの凹部の深さをシリコンウェーハの厚さより浅く(低く)した場合には、ウェーハ外周部のエピタキシャル膜は厚くなる。しかしながら、シリコンウェーハとサセプタの側壁との隙間へのソースガスの流入が増加する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−12397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、厚肉のエピタキシャル膜をエピタキシャル成長させる場合には、前述したスティッキングが生じる。スティッキングの原因の一つとして、シリコンウェーハと前記凹部の側壁との間隙へのソースガスの回り込みが知られている。その対策として、例えば特許文献1の技術を利用し、サセプタの凹部の側壁をシリコンウェーハの上面より高くすることが考えられる。しかしながら、凹部の側壁をソースガスが流れるときに乱流となるが、側壁部分にガスの淀み部分が発生し、少量のソースガスがシリコンウェーハとサセプタの側壁との隙間に滞留するという問題があった。その結果、スティッキングのおそれが解消されず、さらにシリコンウェーハの表面の外周部までソースガスが十分に行きわたらず、エピタキシャル膜の厚さ分布がウェーハ面内で偏り厚さムラが生じたり、ウェーハ外周部の表面のフラットネス(サイトフラットネス)が低下してしまう。これにより、デバイス形成時のフォトリソ工程において、焦点ずれ(デフォーカス)が発生しやくなる。
【0007】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、サセプタの凹部の形状およびその周辺の形状を変更すれば、半導体ウェーハとサセプタの凹部との隙間に対するソースガスの回り込みの流れに違いが生じることを発見した。そこで、この違いを利用すれば、前記隙間へのソースガスの流入を抑制することができ、例えばエピタキシャル膜を厚肉に成長させた場合であっても、サセプタからのエピタキシャルウェーハの取り出し時に、ブリッジに起因したウェーハのワレも低減可能であることを知見した。さらに、エピタキシャル膜のウェーハ面内均一性を確保できることも判明し、この発明を完成させた。
【0008】
この発明は、エピタキシャル膜が厚肉でもエピタキシャル膜にスティッキングが発生しにくく、しかもエピタキシャル膜のウェーハ面内均一性を保持することができるエピタキシャル成長用サセプタおよびこれを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、その上面に半導体ウェーハが載置される凹部が形成され、この凹部は円形の底壁とこれを取り囲む側壁とを有したエピタキシャル成長用サセプタにおいて、このエピタキシャル成長用サセプタの上面にあって、前記側壁の上端に連続して、前記底壁の上面から前記エピタキシャル成長用サセプタの上面までの高さの0.5〜0.9倍の前記底壁からの高さを有する水平な環状段差面が形成されたエピタキシャル成長用サセプタである。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、エピタキシャル成長用サセプタの上面に沿って半導体ウェーハの方向へ流れるソースガスは、その途中の環状段差面(1段目)を通過する際に、サセプタ上面から流れが剥離(分岐)する。これにより、従来のサセプタには存在しなかった前記環状段差面上では、乱流および逆流が起こっていると考えられる。このとき、環状段差面は、底壁の上面からエピタキシャル成長用サセプタの上面までの高さの0.5〜0.9倍の前記底壁からの高さに配置されている。そのため、ソースガスがサセプタの上面から半導体ウェーハの上面へ直接流れる場合に比べて、1段目ですでに淀み部分が生じており、再度層流になる前に2段目に至ることで、2段目を通過するときにシリコンが隙間に滞留しない。しかも、ソースガスが、この隙間から1段目方向へ移動するときに逆流れが発生すると考えられる。これにより、半導体ウェーハと凹部の側壁との隙間へソースガスが流れ込む量を低減することができる。
【0011】
その後、ソースガスは、半導体ウェーハの面取り面またはその近傍に衝突する。しかしながら、大半のソースガスは半導体ウェーハの上面(表面)に沿って流れるので、半導体ウェーハの外周部でシリコンが成長しやすい状態となる。このように、半導体ウェーハとサセプタの凹部との隙間に対するソースガスの回り込みが抑制される。その結果、エピタキシャル膜が厚肉でもスティッキングが発生せず、かつエピタキシャル膜の外周部の厚さの低下はほとんどなく、その膜厚の分布がウェーハ面内で均一となったエピタキシャルウェーハを作製することができる。
【0012】
半導体ウェーハとしては、例えば単結晶シリコンウェーハ、多結晶シリコンウェーハなどを採用することができる。
エピタキシャル成長用サセプタの素材としては、例えばカーボン製の基材にSiCがコーティングされたものなどを採用することができる。エピタキシャル成長用サセプタは、例えば表裏面が平坦かつ互いに平行な平板である。
エピタキシャル成長用サセプタは、炉内で半導体ウェーハが水平配置される横置式のエピタキシャル成長炉に使用される。
エピタキシャル成長炉が高周波式の場合には、サセプタの温度がシリコンウェーハより高いため、サセプタへシリコンが付着し易い。そのため、本発明によるスティッキングを防止する効果が大きい。
また、枚葉型よりもガスの流速が遅いバッチ型の横型炉においては、環状段差面の幅(凹部の半径方向における環状段差面の長さ)を長くし(例えば1〜3mm)、前記底壁からの環状段差面高さを高くする(例えば、前記底壁の上面から前記エピタキシャル成長用サセプタの上面までの高さの0.58〜0.9倍)ことで、ウェーハの外周部の厚さの均一性を維持したままでウェーハのワレは更に低減できる。
【0013】
エピタキシャル成長用サセプタの上面に形成される凹部の個数は、1個(枚葉式)でも2個以上(バッチ式)でもよい。
凹部の底壁には、その一部に、底壁の表裏面を貫く貫通孔が1つまたは2つ以上形成されてもよい。
環状段差面の幅は、例えば直径200mmの半導体ウェーハの場合で2〜3mmである。この範囲であれば、ウェーハ外周部のエピタキシャル膜の厚さを低下させることなく、環状段差によって発生するサセプタ上面からのソースガスの流れの剥離と、淀み部分の生成、および凹部の側壁での乱流と逆流とによって、半導体ウェーハと凹部の側壁との隙間へソースガスが流れ込む量を効率的に低減させることができる。
【0014】
ここでいう「底壁の上面からエピタキシャル成長用サセプタの上面までの高さ」とは、エピタキシャル成長用サセプタの厚さ方向において、底壁と側壁との連結位置(底壁の外周縁)から、エピタキシャル成長用サセプタの平坦な上面までの長さ(距離)をいう。
環状段差面が、底壁の上面からエピタキシャル成長用サセプタの上面までの高さの0.5倍未満では、環状段差によりソースガスの流れに大きな乱流または渦流が生じ、ウェーハの外周部へのシリコンソースガス供給が少なくなり、エピタキシャル厚さの均一性が悪くなる。また、0.9倍を超えれば、環状段差部分においてソースガスの流れで剥離や淀み部分が生成しなくなり、凹部の側壁で、大きな乱流または渦流が発生し、同じようにスティッキングによるウェーハワレが増加する。環状段差面の好ましい高さは、底壁の上面からエピタキシャル成長用サセプタの上面までの高さの0.58〜0.70倍である。この範囲であれば、ウェーハワレが無く、ウェーハの外周部のエピタキシャル厚さが均一な製品が得られる。
【0015】
凹部の好ましい深さ(側壁の高さ)は、凹部に収納された半導体ウェーハの上面よりサセプタの上面が高くなる深さである。しかしながら、深すぎれば半導体ウェーハの上面の外周部にソースガスが回り込まず、ウェーハ外周部のエピタキシャル膜の厚さが不足する。そのため、水平に流れるソースガスを半導体ウェーハの外周端近傍(面取り面およびその近傍)に当接させる程度の深さが好ましい。
また、環状段差面は、凹部の全周にわたって形成した方が好ましい。しかしながら、凹部の周方向の一部に環状段差面が形成されていない部分が存在してもよい。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載されたエピタキシャル成長用サセプタの前記凹部に半導体ウェーハを載置し、該半導体ウェーハの上面にエピタキシャル膜をエピタキシャル成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、所定のエピタキシャル成長炉に請求項1のエピタキシャル成長用サセプタを挿入し、所定のエピタキシャル成長条件で、半導体ウェーハの上面にエピタキシャル膜を成長させる。
その際、エピタキシャル成長用サセプタの上面に沿って半導体ウェーハの方向へ流れるソースガスは、その途中の環状段差面により流れが変更される。具体的には、半導体ウェーハとサセプタの凹部の側壁との隙間を通過する際のソースガスの流れが、サセプタの上面から半導体ウェーハの上面へ直接流れる場合に比べて、サセプタの上面において、隙間から1段目の環状段差面方向への流れに変えられる。これにより、半導体ウェーハと凹部の側壁との隙間へソースガスが流れ込む量を低減することができる。
その後、ソースガスの大半は、半導体ウェーハの表面に沿って流れる。これは、半導体ウェーハが環状段差面より上方に配置されているためである。このように、半導体ウェーハと凹部の側壁との隙間に対するソースガスの回り込みが抑制されるので、エピタキシャル膜が厚肉でもスティッキングが発生しない。しかも、エピタキシャル膜の外周部の厚さの低下はほとんどなく、その膜厚の分布がウェーハ面内で均一となったエピタキシャルウェーハを作製することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記エピタキシャル膜の厚さは50〜150μmである請求項2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法である。
エピタキシャル膜の厚さが50μm未満では、スティッキングはほとんど起こらず、本発明の効果が得られない。また、150μmを超えれば、エッジのクラウンが大きくなり、外周部のエピタキシャル膜を厚くする必要性がない。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記半導体ウェーハには、前記凹部に載置した際、前記半導体ウェーハの上面が前記環状段差面より高くなる厚さのものを使用する請求項2または請求項3に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法である。
【0020】
半導体ウェーハを凹部に載置した際、半導体ウェーハの上面が環状段差面より低くなれば、凹部の側壁よりウェーハの上面への下方向の流れが発生し、半導体ウェーハと凹部の側壁との隙間にソースガスが滞留しやすくなる。そのため、本発明による1段目の環状段差面方向への流れを形成させても、半導体ウェーハと凹部の側壁との隙間に流れ込むソースガス量が増加してしまう。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載のエピタキシャル成長用サセプタおよび請求項2〜請求項4に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、ピタキシャル成長用サセプタの上面に沿って半導体ウェーハの方向へ流れるソースガスは、その途中の環状段差面より、その流れがサセプタの上面において、隙間から1段目の環状段差面方向への流れに変更される。これにより、サセプタの凹部の側壁近傍において、ソースガスの流れの淀みが解消される。その後、大半のソースガスは半導体ウェーハの表面に沿って流れる。
その結果、半導体ウェーハと凹部の側壁との隙間に対するソースガスの回り込みが抑制される。よって、エピタキシャル膜が厚肉でもスティッキングが発生しない。しかも、エピタキシャル膜の外周部の厚さの低下もほとんどなく、その膜厚の分布がウェーハ面内で均一となったエピタキシャルウェーハを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1において、10はこの発明の実施例1に係るエピタキシャル成長用サセプタ(以下、サセプタ)で、このサセプタ10の素材には、カーボンを基材としたSiCにてコーティングを施された円形のものが採用されている。
サセプタ10の上面10aには、シリコンウェーハ(半導体ウェーハ)11が載置される平面視して円形の凹部12が複数個所定ピッチで形成されている。シリコンウェーハ11は、直径6インチ、厚さ630μm、p型の比抵抗値が0.02Ωcm、主表面の軸方位が〈100〉の単結晶シリコンウェーハである。各凹部12は、円形の底壁13と、これを取り囲む側壁14とを有している。凹部12(底壁13)の直径は153mm、凹部12の深さ(側壁14の高さ)は基板厚さより低くなるようにセットしてある。
【0024】
サセプタ10の上面10aのうち、各凹部12の外周部分には、側壁14の上端に連続して水平な環状段差面15が形成されている。環状段差面15の高さaは、底壁13の上面からサセプタ10の上面10aまでの高さbの0.6倍である。また、凹部12の半径方向における環状段差面15の幅cは、2mmである。シリコンウェーハ11の厚さが630μmであるため、凹部12へ収納した状態でのシリコンウェーハ11の上面は、サセプタ10の上面10aと同等となる。すなわち、シリコンウェーハ11は、凹部12への収納時、環状段差面15より高くなる厚さとなっている。
【0025】
エピタキシャル成長炉(チャンバ)16としては、ワークコイル17が下方に配置され、複数枚のシリコンウェーハ11を同時に高周波加熱してエピタキシャル膜21をエピタキシャル成長する横置きバッチ式のものが採用されている(図2)。
エピタキシャル成長炉16の一側部には、キャリアガス(水素ガス)とソースガス(SiHClガス)と所定のドーパントガス(PHまたはBガス)とを、ウェーハ表面に対して平行に流すガス供給口19が配設されている。またエピタキシャル成長炉16の他側部には、各ガスの排気口20が形成されている。また、ソースガスは、SiHまたはSiHClまたはSiClを使用してもよい。
【0026】
エピタキシャル成長時には、まず、各シリコンウェーハ11をサセプタ10の凹部12に横置きし、そのままこれをエピタキシャル成長炉16内の中央部に挿入する。この状態で、各シリコンウェーハ11の表面にエピタキシャル膜21を成長させる。
すなわち、キャリアガスとソースガスとドーパントガスとを、対応するガス供給口19を通してエピタキシャル成長炉16へそれぞれ150リットル/分で導入する。炉内圧力を100±20KPaとし、ワークコイル17により1000℃〜1150℃に熱せられた各シリコンウェーハ11上に、ソースガスの熱分解または還元によって生成されたシリコン(ドーパントを含む)を、反応速度1〜4.5μm/分でそれぞれ析出させる。これにより、各シリコンウェーハ11の表面上に厚さ100μmの単結晶シリコンからなるエピタキシャル膜21がそれぞれ成長される。
【0027】
このとき、サセプタ10の上面10aの各凹部12の周辺領域には、側壁14の上端に連続して前記環状段差面15がそれぞれ形成されている。エピタキシャル成長時に供給されるソースガス(キャリアガスを含む)は、まず環状段差面15、次にシリコンウェーハ11と側壁14との隙間dの上方を通過し、サセプタ10の上面10aからシリコンウェーハ11の上面(表面)へ流れる。途中の環状段差面15によって淀み部分と逆流とが発生する。そのため、サセプタ10の凹部12の側壁近傍でのソースガスの流れが変わり、シリコンウェーハ11と凹部12の側壁14との隙間dに対するソースガスの回り込みが抑制される。よって、エピタキシャル膜21が厚肉でもスティッキングが発生しない。
【0028】
その後、ソースガスはシリコンウェーハ11の面取り面またはその近傍に衝突するが、大半のソースガスがシリコンウェーハ11の上面に沿って流れる。これにより、エピタキシャル膜21の外周部の厚さの低下もほとんどなく、その膜厚の分布がウェーハ面内で均一なエピタキシャルウェーハ22を作製することができる。
【0029】
ここで、実施例1のサセプタ10と従来のサセプタとを使用し、各シリコンウェーハ11の上面に対して、実際にエピタキシャル膜21をエピタキシャル成長させ、スティッキングによるエピタキシャルウェーハ22のクラック(ワレ)およびエピタキシャル膜21の外周部の膜厚の均一性について試験した結果を報告する(試験例1、比較例1,2)。
【0030】
試験例1では、実施例1のサセプタ10とエピタキシャル成長炉16を用いて、実施例1に記載されたエピタキシャル条件に則り、エピタキシャルウェーハ22を合計24枚作製した。
結果、各エピタキシャルウェーハ22には、スティッキングによるクラックは発生しなかった。また、各エピタキシャルウェーハ22の外周部において、エピタキシャル膜21の厚さの低減(厚さのバラつき)もほとんどないフラットネスの高い製品が得られた(外周部のSFQR(20mm□)のsite値で0.4μm)。
【0031】
比較例1では、図3に示すように、エピタキシャル成長用サセプタ10Eの上面10aと側壁14とを直接連続させた凹部12を設けた外は、実施例1と同じ装置および同じ条件で各シリコンウェーハ11の上面にエピタキシャル膜21を成長させた。
結果、スティッキングによるクラックが24枚中2枚のエピタキシャルウェーハ22に発生した。また、各エピタキシャルウェーハ22において、エピタキシャル膜21の外周部における厚さも減少し、フラットネスが低下した(外周部のSFQR(20mm□)のsite値で1.8μm)。
【0032】
比較例2では、図示しないものの、実施例1のサセプタ10の環状段差面15の高さaを、底壁13の上面からサセプタ10の上面10aまでの高さbの0.5倍としたエピタキシャル成長用サセプタ10を使用した外は、実施例1と同じ装置および同じ条件で各シリコンウェーハ11の上面にエピタキシャル膜21を成長させた。
その結果、スティッキングによるクラックが、24枚中6枚のエピタキシャルウェーハ22に発生した。ただし、各エピタキシャルウェーハ22において、各エピタキシャル膜21の外周部における厚さの減少はなく、フラットネスについては問題がなかった(外周部のSFQR(20mm□)のsite値で1.2μm)。
【0033】
ここで、試験例1,2、比較例1,2により得られた各エピタキシャルウェーハについて、ワレ比率(クラック発生率)を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から明らかなように、試験例1のワレ比率は比較例1,2のものに比べて8〜25%も低く、エピタキシャルウェーハの歩留まりが比較例1,2のものより高まることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施例1に係るエピタキシャル成長用サセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法のエピタキシャル成長工程を示す要部縦断面図である。
【図2】この発明の実施例1に係るエピタキシャル成長用サセプタが挿入されるエピタキシャル成長炉の使用状態の縦断面図である。
【図3】従来手段に係るエピタキシャル成長用サセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法のエピタキシャル成長工程を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 エピタキシャル成長用サセプタ、
10a 上面、
11 シリコンウェーハ(半導体ウェーハ)、
12 凹部、
13 底壁、
14 側壁、
15 環状段差面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上面に半導体ウェーハが載置される凹部が形成され、この凹部は円形の底壁とこれを取り囲む側壁とを有したエピタキシャル成長用サセプタにおいて、
このエピタキシャル成長用サセプタの上面にあって、前記側壁の上端に連続して、前記底壁の上面から前記エピタキシャル成長用サセプタの上面までの高さの0.5〜0.9倍の前記底壁からの高さを有する水平な環状段差面が形成されたエピタキシャル成長用サセプタ。
【請求項2】
前記請求項1に記載されたエピタキシャル成長用サセプタの前記凹部に半導体ウェーハを載置し、該半導体ウェーハの上面にエピタキシャル膜をエピタキシャル成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記エピタキシャル膜の厚さは50〜150μmである請求項2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記半導体ウェーハには、前記凹部に載置した際、前記半導体ウェーハの上面が前記環状段差面より高くなる厚さのものを使用する請求項2または請求項3に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−40607(P2010−40607A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199040(P2008−199040)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】