説明

エピタキシャル膜形成装置用のサセプタ、エピタキシャル膜形成装置、エピタキシャルウェーハ及びエピタキシャルウェーハの製造方法

【課題】エピタキシャルウェーハ全体における厚みのバラツキを小さくすることが可能なサセプタを提供する。
【解決手段】半導体ウェーハ22を収容する平面視略円形の凹部21aが設けられ、凹部21aには半導体ウェーハ22を支持する平面視略円形の凸部21dが設けられ、凸部21dの直径dが凹部21aの直径dよりも小とされ、かつ凸部21dの直径dが、凹部21aに半導体ウェーハ22が載置された際に凸部21dと半導体ウェーハ22との境界全体に気相成長反応に供される反応ガスが流通可能となる大きさに設定されていることを特徴とするエピタキシャル膜形成装置用のサセプタ21を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル膜形成装置用のサセプタ、エピタキシャル膜形成装置、エピタキシャルウェーハ及びエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハにエピタキシャル膜を気相成長させるエピタキシャル膜形成装置として、加熱方法やサセプタの形状の違いにより各種構造の装置が提案されている。具体的には、円形平板上のサセプタを下側から加熱する縦型エピタキシャル膜形成装置や、半導体ウェーハを一枚ずつ成膜室に導入してサセプタの上に水平に設置し、半導体ウェーハの上下から加熱する枚葉型のエピタキシャル膜形成装置や、特許文献1に記載されているような、樽型のサセプタを側面の高周波コイルにより加熱するバレル型エピタキシャル膜形成装置が知られている。
これらのエピタキシャル膜形成装置の成膜室内には、黒鉛の表面にSiC膜をコーティングしたサセプタが配置され、このサセプタにはエピタキシャル膜を成長させる半導体ウェーハを収容可能な円形凹部が形成されている。
【0003】
これらのエピタキシャル膜形成装置では、サセプタの凹部にエピタキシャル膜を成長させる半導体ウェーハを収容した状態で成膜室を減圧し、ランプヒータ等の加熱手段によりその成膜室内において半導体ウェーハを直接あるいは間接的に加熱し、同時に反応ガスを成膜室に供給して、半導体ウェーハの表面に単結晶、多結晶または非品質の固体、例えばシリコンなどの半導体、酸化物、窒化物、金属、合金、その他の化合物の析出を行い、エピタキシャル膜を成長させている。
【特許文献1】特開2001−160538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエピタキシャル膜形成装置においては、サセプタの凹部に半導体ウェーハを単に載せているだけであり、必ずしも半導体ウェーハの裏面全面がサセプタの凹部の底面に密着している訳ではない。従って、半導体ウェーハの裏面側にも少量の反応ガスが回り込んで流通し得る構造になっている。ただし、半導体ウェーハの裏面全面が凹部の底面に接していることから、裏面の中央部分よりも周縁部の方に反応ガスが触れやすくなっている。
【0005】
ところで、バレル型のエピタキシャル膜形成装置においては、半導体ウェーハを表面側のみから加熱する構成になっているため、半導体ウェーハの裏面側には十分な熱エネルギーが供給されず、これにより半導体ウェーハの裏面側が、回り込んできた少量の反応ガスによってエッチングされやすい状況になっている。
また、枚葉型のエピタキシャル膜形成装置においては、半導体ウェーハの上下からランプヒータで加熱しているものの、半導体ウェーハがサセプタ上に載置されており、半導体ウェーハが下側のランプヒータに直接対向している構成ではないため、バレル型の場合と同様に、半導体ウェーハの裏面側に十分な熱エネルギーが供給されずに半導体ウェーハの裏面側がエッチングされやすい状況になっている。
【0006】
従って従来のエピタキシャル膜形成装置においては、半導体ウェーハの表面側にエピタキシャル膜が形成される一方で、半導体ウェーハの裏面の特に周縁部がエッチングされるので、完成品であるエピタキシャルウェーハの厚みは、中央部分より周縁部で小さくなり、エピタキシャルウェーハ全体における厚みのバラツキが大きくなっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、エピタキシャルウェーハ全体における厚みのバラツキを小さくすることが可能なサセプタ及びこのサセプタを備えたエピタキシャル膜形成装置及び厚みのバラツキを小さなエピタキシャルウェーハ並びにエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のエピタキシャル膜形成装置のサセプタは、エピタキシャル膜形成装置の成膜室内に設置されるサセプタであって、半導体ウェーハを収容する平面視略円形の凹部が設けられ、前記凹部には前記半導体ウェーハを支持する平面視略円形の凸部が設けられ、前記凸部の直径が前記凹部の直径よりも小とされ、かつ前記凸部の直径が、前記凹部に前記半導体ウェーハが載置された際に前記凸部と前記半導体ウェーハとの境界全体に気相成長反応に供される反応ガスが流通可能となる大きさに設定されていることを特徴とする。
また、本発明のエピタキシャル膜形成装置のサセプタにおいては、前記凹部の直径が150mm以下の直径の半導体ウェーハを収納可能な大きさとされ、前記凸部の直径が50mm乃至90mmの範囲とされ、前記凸部の高さが0.1mm以上0.4mm未満とされていることが好ましい。
また、サセプタは、表面にSiC膜が形成された黒鉛からなることが好ましい。
【0009】
次に、本発明のエピタキシャル膜形成装置は、先のいずれかに記載のエピタキシャル膜形成装置用のサセプタと、前記サセプタが収容される成膜室と、少なくとも前記半導体ウェーハのサセプタ側と反対側に設置された加熱手段とを具備してなることを特徴とする。
【0010】
次に、本発明のエピタキシャルウェーハは、半導体ウェーハにエピタキシャル膜が形成されてなるエピタキシャルウェーハであって、エピタキシャルウェーハ全体における厚みのバラツキが、成膜したエピタキシャル膜厚の1/3以下とされていることを特徴とする。
また本発明のエピタキシャルウェーハにおいては、前記半導体ウェーハと前記エピタキシャル膜との間に不純物拡散層が埋め込まれていることが好ましい。
【0011】
次に、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、先のいずれかに記載のエピタキシャル膜形成装置用のサセプタと、前記サセプタが収容される成膜室と、少なくとも前記半導体ウェーハのサセプタ側と反対側に設置された加熱手段とを具備してなるエピタキシャル膜形成装置を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法であり、前記サセプタの前記凹部に半導体ウェーハを収容し、前記加熱手段によって前記半導体ウェーハを加熱しつつ前記成膜室に反応ガスを供給するとともに、前記サセプタの前記凸部と前記半導体ウェーハとの間にも前記反応ガスを流通させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエピタキシャル膜形成装置用のサセプタによれば、半導体ウェーハを収容する凹部に凸部が設けられ、かつ凸部の直径が、凹部に半導体ウェーハが載置された際に凸部と半導体ウェーハとの境界全体に気相成長反応に供される反応ガスが流通可能となる大きさに設定されているので、このサセプタを使用してのエピタキシャル膜形成の際に、半導体ウェーハの凸部側の面全面に反応ガスを曝すことが可能となり、これにより半導体ウェーハの凸部側の面全面が均等にエッチングされる。これにより、厚みのバラツキが小さなエピタキシャルウェーハを製造することができる。
また、本発明のエピタキシャル膜形成装置用のサセプタによれば、凹部の直径が150mm以下の直径の半導体ウェーハを収納できる大きさとされ、凸部の直径が50mm乃至90mmの範囲とされ、凸部の高さが0.1mm以上0.4mm未満とされているので、厚みのバラツキが小さな直径150mm以下のエピタキシャルウェーハを製造することができる。
凸部の直径が50mm以上であれば、凹部内において半導体ウェーハを安定して保持できるので好ましく、また凸部の直径が90mm以下であれば、凸部と半導体ウェーハとの境界全体に気相成長反応に供される反応ガスを流通させることができ、半導体ウェーハの凸部側の面全面が均等にエッチングされるので好ましい。
また、凸部の高さが0.1mm以上であれば、凸部と半導体ウェーハとの境界全体に気相成長反応に供される反応ガスが流通可能となり、半導体ウェーハの凸部側の面全面が均等にエッチングされるので好ましく、凸部の高さが0.4mm未満であれば、凸部と半導体ウェーハとの境界全体に流通される反応ガスの量が過剰になることがなく、半導体ウェーハが部分的にエッチングされることがなく、厚みのバラツキが小さなエピタキシャルウェーハを製造できる。
【0013】
また、本発明のエピタキシャル膜形成装置によれば、上記のサセプタが備えられているので、厚みのバラツキが小さなエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0014】
更に、本発明のエピタキシャルウェーハによれば、厚みのバラツキが成膜したエピタキシャル膜厚の1/3以下、より好ましくは、成膜したエピタキシャル膜厚の1/4以下とされているので、従来のエピタキシャルウェーハに比べて平坦度を高くすることができる。これによりエピタキシャルウェーハ上に高集積度のデバイスを形成することができる。
また、本発明のエピタキシャルウェーハは、半導体ウェーハとエピタキシャル膜との間に不純物拡散層が埋め込まれた所謂埋め込み型のエピタキシャルウェーハであり、このエピタキシャルウェーハのエピタキシャル膜は比較的高い成長温度で形成されるため、半導体ウェーハの凸部側の面のエッチング量が通常のエピタキシャルウェーハと比べて大きくなるところ、厚みのバラツキが成膜したエピタキシャル膜厚の1/3以下と小さいため、高集積度のデバイスの形成が可能になる。
【0015】
更にまた、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、上記のサセプタを備えたエピタキシャル膜形成装置を用いて、エピタキシャル膜形成の際に、サセプタの凹部及び凸部と半導体ウェーハとの間にも前記反応ガスを流通させるので、半導体ウェーハの凸部側の面全面を均等にエッチングさせることができ、これにより、厚みのバラツキが小さなエピタキシャルウェーハを製造することができる。
本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、後工程のデバイス工程において、各デバイスとなるそれぞれのウェーハの各部分において、平坦度のバラツキを小さくすることが可能となる。特に、ウェーハ周縁部のそれぞれの部分において、平坦度のバラツキを小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、以下の説明において参照する図は、本実施形態のエピタキシャル膜形成装置等の構成を説明するための図であり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の装置等の寸法関係とは異なる場合がある。
【0017】
以下、本実施形態のエピタキシャル膜形成装置の一例について図1〜図4を参照して説明する。図1は、本実施形態のエピタキシャル膜形成装置の一例を示す側面模式図であり、図2は、エピタキシャル膜形成装置に備えられたサセプタを示す斜視図である。また、図3は、図2のA−A’線に対応する部分断面模式図であり、図4は、図2のサセプタの要部を示す拡大断面模式図である。
図1に示すように、本実施形態のエピタキシャル膜形成装置10は、いわゆるバレル型のエピタキシャル膜形成装置であり、このエピタキシャル膜形成装置10には、反応ガスが供給される成膜室として石英で形成されるベルジャ11と、ベルジャ11の内部に設置されたサセプタ21と、ベルジャ11の周囲に配置されたヒータ18(加熱手段)とから概略構成されている。
【0018】
ベルジャ11の上部には、反応ガスの漏れを防止するステンレス鋼製のガスリング12が配設され、一方、ベルジャ11の下部には、ステンレス鋼で形成されて反応ガスを排出するイグゾーストフランジ13が配設されている。また、ガスリング12には、ベルジャ11内の気密を保持するためのトッププレート15が取り付けられている。また、ベルジャ11の上部には、ガスリング12を介してベルジャ11内に連通し、反応ガスを供給する供給管16が取り付けられている。この供給管16の中間には、反応ガスの供給流量を調整する流量調整バルブ17aとメインバルブ17とが配設されている。
以上の構成によって、反応ガスを供給管16を介してベルジャ11の内部に導入するとともに、イグゾーストフランジ13を介して気相成長反応により生成した排出ガス及び残留反応ガスをベルジャ11から排出できるようになっている。
【0019】
ヒータ18(加熱手段)は、上述のようにベルジャ11の周囲に配置されている。即ちこのヒータ18は、後述する半導体ウェーハのサセプタ側とは反対側に配設されている。このヒータは、エピタキシャル膜を形成する際の半導体ウェーハを所定の成長温度に昇温させるようになっている。ヒータ18の具体例としては例えばランプヒータを例示することができる。
【0020】
本発明に係るサセプタ21は、表面にSiC膜が形成された黒鉛からなるものであり、図1に示すように、ベルジャ11の上側開口部からハンガー19を介してベルジャ11内に吊り下げられている。図1及び図2に示すように、サセプタ21は、五角錐台形状とされており、このサセプタ21の周囲5面には半導体ウェーハを収容可能な平面視略円形状の凹部21aがそれぞれ形成されている。
【0021】
また図3及び図4に示すように、サセプタ21の凹部21aには半導体ウェーハ22が収容可能とされている。半導体ウェーハ22としては、例えば単結晶シリコンからなるシリコンウェーハを例示できる。また、この凹部21aの底面21bの周縁部には平面視円環状の溝部21cが形成されている。この溝部21cの形成によって、凹部の底面21bが溝部21cの底面よりも半導体ウェーハ22側に相対的に突出した状態になっている。この底面21bを含む突出した部分を本明細書では凸部21dとする。即ち、サセプタの凹部21aには、半導体ウェーハ22に接する平面視略円形の凸部21dが設けられている。
【0022】
凹部21aと凸部21dとの関係について図4を参照しつつ説明すると、凸部21dの平面視直径dが、凹部21aの平面視直径dよりも小とされている。また、凹部21の中心位置及び凸部21dの中心位置が、図4に示す中心線Oにそれぞれ重なっている。更に、凸部21dの平面視直径dが、凹部21aに半導体ウェーハ22が載置された際に凸部21d(凹部の底面21b)と半導体ウェーハ22との境界全体に気相成長反応に供される反応ガスが流通可能となる大きさに設定されている。
【0023】
本発明に係るサセプタ21においては、半導体ウェーハの裏面の特に周縁部がエッチングされ易いために、完成品であるエピタキシャルウェーハの中央部分の厚みよりも周縁部の厚みが小さくなってエピタキシャルウェーハ全体における厚みのバラツキが大きくなるところ、凹部21aに凸部21dを設けることによって、凸部21d(凹部の底面21b)と半導体ウェーハ22との境界全体に気相成長反応に供される反応ガスが流通可能となる。これにより、エピタキシャルウェーハの中央部分が周縁部と同程度にエッチングされて厚みが周縁部と同程度に減少され、ウェーハ全体の厚みのバラツキが小さくなる。
【0024】
凸部21d(凹部の底面21b)と半導体ウェーハ22との境界全体に気相成長反応に供される反応ガスが流通可能とするためには、凹部21a及ぶ凸部21dの寸法関係を次の通りに設定することが望ましい。即ち、凸部21dの平面視直径dは50mm乃至90mmの範囲とすることが好ましい。また、凹部21aの平面視直径dは150mm以下の直径の半導体ウェーハを収納可能な大きさとすることが好ましく、より具体的には、凹部の直径を、半導体ウェーハの凹部からの取り出しが容易になる程度のクリアランス分を150mmに加えた大きさ以下とすることが好ましい。更に、溝部21cの幅wは、30mm以上50mm以下の範囲とすることが好ましい。更にまた、凸部21dの高さhは、換言すると溝部21cの底面と凹部21aの底面21bとの段差は、0.1mm以上0.4mm未満の範囲とすることが好ましい。
凸部21dの平面視直径dが50mm以上であれば、凹部21a内において半導体ウェーハ22を安定して保持できるので好ましく、また凸部21dの平面視直径dが90mm以下であれば、凸部21dと半導体ウェーハ22との境界全体に反応ガスを流通させることができ、これにより半導体ウェーハ22の凸部21d側の面22a全面が均等にエッチングされるので好ましい。
また、凸部21dの高さhが0.1mm以上であれば、凸部21dと半導体ウェーハ22との境界全体に反応ガスを流通させることができ、半導体ウェーハ22の凸部21d側の面22a全面が均等にエッチングされるので好ましく、凸部21dの高さが0.4mm未満であれば、凸部21dと半導体ウェーハ22との境界全体に流通される反応ガスの量が過剰になることがなく、半導体ウェーハ22が部分的にエッチングされることがなく、厚みのバラツキが小さなエピタキシャルウェーハを製造できる。
【0025】
また、凸部21dの上面である凹部の底面21bの表面粗さがRa0.1μm〜15μmの範囲、好ましくは1μm〜5μmの範囲であることが、凸部21dと半導体ウェーハ22との境界全体に気相成長反応に供される反応ガスを流通可能にする点で好ましい。表面粗さを上記の下限以上にすれば、底面21bと半導体ウェーハ22の凸部21d側の面22aとの間に微小の空隙が生じ、この空隙を伝って半導体ウェーハ22の凸部21d側の面22aとの間に反応ガスを流通させることが可能になる。また、表面粗さを上記の上限以下にすることで、半導体ウェーハのスリップ転位等の発生を防止することができる。 なお、凸部21dの上面である凹部の底面21bの表面粗さがRa0.4μm〜1μmの範囲、あるいはRa1μm〜3μmの範囲、Ra8μm〜12μmであることができる。
【0026】
次に、上述のように構成されたエピタキシャル膜形成装置を用いた、エピタキシャルウェーハの製造方法について説明する。図5は、本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法を説明する工程図である。
まず図5(a)に示すように、半導体ウェーハ22を用意する。この半導体ウェーハ22は、上述したように単結晶シリコンからなるシリコンウェーハである。このシリコンウェーハにはP型ドーパントが添加されていてP型シリコンウェーハとされている。
【0027】
次に図5(b)に示すように、半導体ウェーハ22の一面22b上に不純物拡散層24を形成する。不純物拡散層は、例えば、Sb、As、B、P等の不純物をイオン注入法により半導体ウェーハ22の一面22bに注入、拡散させて形成されたものであり、例えばPを高濃度で注入することで、N型の不純物拡散層が形成される。
具体的には例えば、半導体ウェーハ22の一面22bを洗浄してから一面22b全面に酸化膜を形成し、次にフォトリソグラフィ技術により、酸化膜の一部をエッチングして酸化膜を部分的に除去することで単結晶シリコンを露出させる。次に、露出された単結晶シリコンに対して例えばP(リン)をイオン注入し、次にアニールしてPを熱拡散させる。その後、酸化膜を除去することにより、図5(b)に示すような不純物拡散層23が、半導体ウェーハ22の一面上に形成される。
【0028】
次に、不純物拡散層23の形成後の半導体ウェーハ22を、上述のエピタキシャル膜形成装置10に導入する。半導体ウェーハ22をサセプタ21の凹部21aに収容する際には、半導体ウェーハ22の一面22bを凸部21dと反対側に向けて収容する。これにより、半導体ウェーハの一面と反対側の面22aが、凸部21d側に向けられ、かつ凸部21dに接する。
【0029】
次に、半導体ウェーハ22の一面22b上にエピタキシャル膜を形成する。
エピタキシャル膜の形成を開始するにあたり、まず、図1に示す供給管16を介してベルジャ11の内部に水素ガスをパージし、図示略の駆動手段を介してサセプタ21を回転させながら、ヒータ18によってベルジャ11の内部を例えば1000℃乃至1250℃の範囲、より好ましくは1150℃〜1250どの範囲に昇温し、半導体ウェーハ22を所望の成長温度で均一に加熱する。続いて、供給管16を介して、例えば塩化水素と水素との混合ガスをベルジャ11内に供給して半導体ウェーハ22の一面22bをエッチングし、再び水素ガスによってベルジャ11の内部をパージする。尚、上記範囲の成長温度は、埋め込み型のエピタキシャルウェーハを形成する際の標準的な成長温度である。通常のエピタキシャルウェーハを製造する際の成長温度は、埋め込み型よりも低くして良く、例えば1050℃乃至1170℃の範囲とすればよい。
【0030】
この一面22bに対するエッチングプロセスの終了後、四塩化シリコン、TCS(トリクロロシラン)、ジクロロシランなどのシリコンソースガスがキャリアガスである水素ガスに添加されてなる混合ガス(反応ガス)を、供給管16を介してベルジャ11の内部に供給する。
【0031】
ベルジャ11内部に供給された反応ガスは、図1の矢印に示すように、ベルジャ11の内壁に沿ってベルジャ11の内部を流動する。この流動する反応ガスがサセプタ21とともに回転する半導体ウェーハ22の一面22bの上を繰り返し通過することにより、図5(c)に示すように半導体ウェーハ22の一面22b上でエピタキシャル膜24が成長する。
【0032】
図6には、サセプタ21及び半導体ウェーハ22付近における反応ガスの流れの拡大断面模式図を示す。図6に示すように、反応ガスの大部分は、図6中の矢印31に示すように、半導体ウェーハ22の一面22bの上を繰り返し通過する。また、反応ガスの一部は、矢印32に示すように、凹部21aと半導体ウェーハ22の外周部との隙間から半導体ウェーハ22の一面と反対側の面22a側に回り込んで溝部21c内に流入する。更に、溝部21cに流入した反応ガスの一部が、矢印33に示すように、半導体ウェーハ22の面22aと底面22bとの間を流通する。凸部21dの平面視直径dが、凸部21dと半導体ウェーハ22との境界全体に反応ガスが流通可能となる大きさに設定されているので、反応ガスは半導体ウェーハ22の一面と反対側の面22aのほぼ全面に接することになる。
【0033】
ところで本実施形態のエピタキシャル膜製造装置においては、ヒータ18がベルジャ11の周囲に配置されているため、半導体ウェーハ22の一面22bよりもその反対側の面22aのほうが比較的低温になっている。このため半導体ウェーハ22の一面22bと反対側の面22aではエッチング雰囲気となり、半導体ウェーハ22と凸部21dとの境界に流入した反応ガスによって、半導体ウェーハ22の面22aのほぼ全面が均一にエッチングされる。
【0034】
以上のようにして、半導体ウェーハ22の一面22bにエピタキシャル膜24が形成されてなるエピタキシャルウェーハ25が製造される(図5(c))。このエピタキシャルウェーハ25は、ウェーハ全体における厚みのバラツキが成膜したエピタキシャル膜厚の1/3以下、より好ましくは1/4以下、さらに、5%以下となる。たとえば、バラツキが1%は、成膜したエピタキシャル膜厚5μmのとき0.05μmであり、成膜したエピタキシャル膜厚1μmのとき0.05μmとなる。
【0035】
以上説明したように、上記のサセプタ21を備えたエピタキシャル膜形成装置10によれば、半導体ウェーハ22を収容する凹部21aに凸部21dが設けられ、かつ凸部21dの直径dが、凹部21aに半導体ウェーハ22が載置された際に凸部21aと半導体ウェーハ22との境界全体に反応ガスが流通可能となる大きさに設定されているので、このサセプタ21を使用してのエピタキシャル膜形成の際に、半導体ウェーハ22の凸部21d側の面22a全面に反応ガスを曝すことが可能となり、これにより半導体ウェーハ22の凸部側の面22a全面が均等にエッチングされる。これにより、厚みのバラツキが小さなエピタキシャルウェーハ25を製造することができる。
また、上記のサセプタ21によれば、凹部21aの直径dが150mm以下とされ、凸部21dの直径dが50mm乃至90mmの範囲とされ、凸部21dの高さhが0.1mm以上0.4mm未満とされているので、厚みのバラツキが小さな直径150mm以下のエピタキシャルウェーハを製造できる。
【0036】
更に、上記のエピタキシャルウェーハ25によれば、厚みのバラツキが成膜したエピタキシャル膜厚の1/3以下とされているので、従来のエピタキシャルウェーハに比べて平坦度が高く、これによりエピタキシャルウェーハ上に高集積度のデバイスを形成することができる。
また、上記のエピタキシャルウェーハは、半導体ウェーハ22とエピタキシャル膜24との間に不純物拡散層23が埋め込まれた所謂埋め込み型のエピタキシャルウェーハであり、このエピタキシャルウェーハのエピタキシャル膜は比較的高い成長温度で形成されるため、半導体ウェーハ22の凸部側の面22aのエッチング量が通常のエピタキシャルウェーハと比べて大きくなるところ、厚みのバラツキが成膜したエピタキシャル膜厚の1/3以下と小さいため、高集積度のデバイスの形成が可能になる。
【0037】
更にまた、上記のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、エピタキシャル膜形成の際に、サセプタ21の凹部21a及び凸部21dと半導体ウェーハ22との間にも反応ガスを流通させるので、半導体ウェーハ22の凸部側の面22a全面を均等にエッチングさせることができ、これにより、厚みのバラツキが小さなエピタキシャルウェーハ25を製造することができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
本実施形態では、埋め込み型のエピタキシャルウェーハについて説明したが、本発明はこれに限らず、不純物埋め込み層を有しない通常のエピタキシャルウェーハにも適当可能である。
また、本実施形態のサセプタは、バレル型のエピタキシャル膜形成装置に限らず、枚様型のエピタキシャル膜形成装置にも適用できる。
図7には、枚様型のエピタキシャル膜形成装置の模式図を示す。図7に示すエピタキシャル膜形成装置40は、内部に成膜室が形成される石英チャンバ41と、この石英チャンバ41に供給管42を接続するインジェクトフランジ43と、この石英チャンバ41に排気管44を接続するイグゾーストフランジ46と、供給管42の中間に介装されるメインバルブ47と、石英チャンバ41の両側開口部に各々装着されるウェーハ搬送用取出口41a及び熱電対固定用フランジ41bとが備えられている。また、石英チャンバ41の上下には、ランプヒータ50(加熱手段)が備えられている。
【0039】
石英チャンバ41の下部には、上端縁が石英チャンバ41内に位置するように支持台48が貫通して設けられ、サセプタ49はこの支持台48の上端縁に略水平に設けられる。
図7に示す枚葉型のエピタキシャル膜形成装置40に用いられるサセプタ49であっても、凹部を設けるとともにこの凹部の中に凸部を設けることで、上記のサセプタ21及びエピタキシャル膜形成装置10と同様な効果が得られる。
【実施例】
【0040】
P型ドーパントが添加されてなる直径150mmのP型シリコンウェーハを用意し、このP型シリコンウェーハに対して以下の手順でエピタキシャル膜を形成した。
図1に示すエピタキシャル膜形成装置を用意し、この装置のサセプタの凹部に、P型シリコンウェーハを収容した。そして、ベルジャの内部に水素ガスをパージし、サセプタを回転させながら、ヒータによってベルジャの内部を1220℃まで昇温してP型シリコンウェーハ均一に加熱した。
次に、TCS(トリクロロシラン)からなるシリコンソースガスが濃度5%の割合で水素ガスに添加されてなる反応ガスを、150ml/分の流量でベルジャの内部に供給することにより、厚み9μmのエピタキシャル膜を成長させた。
【0041】
尚、上記の工程において、サセプタの凹部の直径を概略150mmとし、溝部の幅を2〜40mm(凸部の直径を70〜146mmとし)、凸部の高さを0.2〜0.4mmとした。
また、凹部の中に、深さ0.2mm、直径110mmの別の凹部を更に設けたサセプタも使用した。このサセプタの場合には、半導体ウェーハの周縁部において凹部の底面に支持される状態になる。
【0042】
製造されたエピタキシャルウェーハについて、エピタキシャル膜成膜前後においてTTVの差分を測定し、このTTVの差分をエピタキシャル膜成膜前後での厚みのバラツキ
として確認した。
この厚みのバラツキを表1に示すと共に、TTVの測定結果を図8に示す。尚、表1におけるNo.1は図8(a)に対応し、表1におけるNo.2は図8(b)に対応し、表1におけるNo.3は図8(c)に対応し、表1におけるNo.4は図8(d)に対応し、表1におけるNo.4は図8(e)に対応する。表1における厚みのバラツキは、ウェーハ全面におけるTTVの差分データの平均である。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示すように、凸部の直径が70mmで高さが0.2mmのもの(No.3)については、厚みのバラツキが比較的小さくなっていることがわかる。
また、凸部の直径が146mmのもの(No.5)や、凸部の直径が110mmのもの(No.2、No.4)については、No.3よりも厚みのバラツキが大きくなっていることがわかる。
更に、凹部に別の凹部を設けたサセプタを用いて製造したウェーハ(No.1)についても、No.3に比べて厚みのバラツキが大きくなっていることがわかる。
【0045】
次に、図8(c)を見ると、TTVの分布のバラツキが比較的低くなっていることがわかる。一方、図8(a)、(b)、(d)及び(e)を見ると、TTVの分布のバラツキが比較的高いことがわかる。特に、図8(e)に示すウェーハは、中心部分のエッチング量が極端に少なくなっていることがわかる。これは、凸部の直径が大きすぎたために、反応ガスがウェーハの中央部分に十分に流通せず、周縁部のみがエッチングされてしまい、これによりバラツキが大きくなったものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の実施形態であるエピタキシャル膜形成装置の一例を示す側面模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態であるエピタキシャル膜形成装置用のサセプタを示す斜視図である。
【図3】図3は、図2のA−A’線に対応する部分断面模式図である。
【図4】図4は、図2のサセプタの要部を示す拡大断面模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態であるエピタキシャルウェーハの製造方法を説明する工程図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態であるエピタキシャル膜形成装置用のサセプタの要部を示す図であって、反応ガスの流れを示す拡大断面模式図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態であるエピタキシャル膜形成装置の別の例を示す側面模式図である。
【図8】図8は、エピタキシャルウェーハの厚みの分布を示す分布図である。
【符号の説明】
【0047】
10…エピタキシャル膜形成装置、11…ベルジャ(成膜室)、18…ヒータ(加熱手段)、21…サセプタ、21a…凹部、21d…凸部、22…半導体ウェーハ、23…不純物拡散層、24…エピタキシャル膜、25…エピタキシャルウェーハ、d…凸部の直径、d…凹部の直径、h…凸部の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル膜形成装置の成膜室内に設置されるサセプタであって、
半導体ウェーハを収容する平面視略円形の凹部が設けられ、前記凹部には前記半導体ウェーハを支持する平面視略円形の凸部が設けられ、前記凸部の直径が前記凹部の直径よりも小とされ、かつ前記凸部の直径が、前記凹部に前記半導体ウェーハが載置された際に前記凸部と前記半導体ウェーハとの境界全体に気相成長反応に供される反応ガスが流通可能となる大きさに設定されていることを特徴とするエピタキシャル膜形成装置用のサセプタ。
【請求項2】
前記凹部の直径が150mm以下の直径の半導体ウェーハを収納可能な大きさとされ、前記凸部の直径が50mm乃至90mmの範囲とされ、前記凸部の高さが0.1mm以上0.4mm未満とされていることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル膜形成装置のサセプタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエピタキシャル膜形成装置用のサセプタと、前記サセプタが収容される成膜室と、少なくとも前記半導体ウェーハのサセプタ側と反対側に設置された加熱手段とを具備してなることを特徴とするエピタキシャル膜形成装置。
【請求項4】
半導体ウェーハにエピタキシャル膜が形成されてなるエピタキシャルウェーハであって、エピタキシャル膜形成前後における厚み寸法の差分としてのウェーハ厚みのバラツキが、成膜したエピタキシャル膜厚の1/3以下とされていることを特徴とするエピタキシャルウェーハ。
【請求項5】
前記半導体ウェーハと前記エピタキシャル膜との間に不純物拡散層が埋め込まれていることを特徴とする請求項4に記載のエピタキシャルウェーハ。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のエピタキシャル膜形成装置用のサセプタと、前記サセプタが収容される成膜室と、少なくとも前記半導体ウェーハのサセプタ側と反対側に設置された加熱手段とを具備してなるエピタキシャル膜形成装置を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法であり、
前記サセプタの前記凹部に半導体ウェーハを収容し、前記加熱手段によって前記半導体ウェーハを加熱しつつ前記成膜室に反応ガスを供給するとともに、前記サセプタの前記凸部と前記半導体ウェーハとの間にも前記反応ガスを流通させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−111296(P2009−111296A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284512(P2007−284512)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】