説明

デッドタイム制御回路

【課題】デッドタイムを広範囲に複数ステップで設定する際、デッドタイムに応じてステップ間隔を変更することを、遅延素子を外付けすることなく、回路規模の小さいICチップで実施することは困難であった。
【解決手段】2つのパルス信号の活性化パルスエッジを遅延させて互いの不活性化パルスエッジと活性化パルスエッジとの間にデッドタイムを付加して並列出力するデッドタイム制御回路10であって、制御信号(DA)に基づいて前記デッドタイムに応じたステップ間隔の複数ステップの遅延時間のいずれかを選択して前記入力したパルス信号の両パルスエッジを遅延させる遅延回路部101a、101bと、前記入力したパルス信号と前記遅延回路部が遅延させたパルス信号とを論理処理して前記活性化パルスエッジを遅延させた信号を生成する信号生成部(論理回路部102a、102b)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッドタイム制御回路に関し、特にプッシュプル構成の2つのスイッチング素子が同時に非導通となる時間(以下、これをデッドタイムという。)を制御するデッドタイム制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュプル構成の2つのスイッチング素子がスイッチング動作するとき、2つのスイッチング素子に貫通電流が流れるのを防止するために、スイッチング素子の駆動回路には、2つのスイッチング素子が同時にオンしないようにデッドタイムを設けている。プッシュプル構成の2つのスイッチング素子として、例えば、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いた回路が様々な用途に使用されている。特に、高速動作するデジタルアンプなどに使用される場合、デッドタイムは数nsと非常に短くなり、デッドタイムを高精度に設定し、制御することが要求される。また、デッドタイムを広範囲に複数ステップで設定する際、比較的長いデッドタイムの場合はステップ間隔(複数のステップのステップ間の時間間隔)をある程度粗くして設定できるが、デッドタイムが数nsと非常に短くなると、ステップ間隔を細かくして設定する必要がある。
【0003】
デッドタイムを設定する技術が特許文献1に示されている。図8は、特許文献1に記載の駆動回路を示す回路図である。図8に示すように、駆動回路1は、負荷部8としての例えばスピーカやモータなどの駆動部に接続して駆動するものであり、2つのスイッチング素子としてのパワーMOSFETM1,M2を駆動するプリドライバIC(Integrated Circuit)である。この駆動回路1は、時定数を設定するための外付けCR回路2,3と、駆動信号生成回路4とを有し、駆動回路1とMOSFETM1,M2とにより例えばD級アンプなどが構成され、駆動回路1により生成された駆動信号によりMOSFETM1,M2のゲートを駆動する。
【0004】
外付けCR回路2は、入力信号HIが入力される入力端子7aに接続され、抵抗R1とコンデンサC1とが直列に接続された積分回路である。外付けCR回路3は、入力信号HIと論理レベルが反転した入力信号LIが入力される入力端子7bに接続され、抵抗R2とコンデンサC2とが直列に接続された積分回路である。
駆動信号生成回路4は、ANDゲート5a,5bと、高圧駆動回路6a,6bとからなり、2つのパワーMOSFETのゲートを駆動するための駆動信号を生成する。
【0005】
ANDゲート5aの一方の入力端子は、抵抗R1とコンデンサC1との接続点と接続され、外付けCR回路2からの出力信号が入力される。また、ANDゲート5aの他方の入力端子には入力端子7aを介して入力信号HIが入力される。また、ANDゲート5bの一方の入力端子には、入力端子7bを介して入力信号LIが入力される。また、ANDゲート5bの他方の入力端子は、抵抗R2とコンデンサC2との接続点と接続され、外付けCR回路3の出力信号が入力される。
高圧駆動回路6a,6bは、それぞれANDゲート5a,5bの出力信号を増幅して駆動信号Hout,Loutを出力する。この駆動信号生成回路4は、ANDゲート5a,5bと高圧駆動回路6a,6bとが例えばSOI(Silicon On Insulator)プロセスにて素子分離酸化膜を介して同一ICチップに形成される。
【0006】
図9は、駆動回路におけるタイミングチャートである。図9(A),図9(B)に示すように、入力信号HI,LIは、互いに反転した論理レベルのパルス信号である。そして、ANDゲート5aに入力信号HIと、この入力信号HIの外付けCR回路2からの出力とが入力され、図9(C)に示すように、入力信号HIの立ち上がり時間がCR回路2の時定数で決定される時間dtだけ遅延された信号HI2が出力される。また、ANDゲート5bに入力信号LIと、この入力信号LIの外付けCR回路3からの出力とが入力され、図9(D)に示すように、入力信号LIの立ち上がり時間がCR回路3の時定数で決定される時間dtだけ遅延された信号LI2が出力される。
【0007】
信号HI2,LI2は高圧駆動回路6a,6bによりそれぞれ増幅され、駆動信号Hout,LoutとしてMOSFETM1,M2のゲートに供給される。従って、この駆動信号Hout,Loutは、図9(E),図9(F)に示すように、一方の信号の立ち下がりから他方の信号の立ち上がりまでに遅延時間としてデッドタイムdtが付加された信号となっている。MOSFETM1,M2は、駆動信号Hout,Loutの立ち下がりで不活性化(オフ)し、立ち上がりで活性化(オン)する。従って、この場合、入力信号HI,LIは、立ち下がりが不活性化パルスエッジであり、立ち上がりが活性化パルスエッジである。以上のようにして、MOSFETのゲートを制御することで、2つのMOSFET間を貫通して電流が流れることを防止することができる。
【0008】
上述の特許文献1によるデッドタイムを設定する技術を用いた場合、デッドタイムに応じて、外付けCR回路2,3を構成する抵抗R1,R2とコンデンサC1,C2として、高精度の部品を選択、入手して使用する。これにより、デッドタイムを広範囲に複数ステップで設定する際、比較的長いデッドタイムに設定する場合はステップ間隔をある程度粗くして設定し、デッドタイムが数nsと非常に短くなると、ステップ間隔を細かくして設定することができる。このデッドタイムを設定する技術を用いたICを用いて、1ステップだけの設定を行う場合は、そのステップでのデッドタイムに応じた抵抗値の抵抗R1,R2と容量値のコンデンサC1,Cとを選択、入手すればよいが、広範囲の複数ステップで設定を行う場合は、それらの各ステップでのデッドタイムに応じた抵抗値の抵抗R1,R2と容量値のコンデンサC1,Cとを選択、入手しなければならず、部品点数が増加するとともに、選択、入手および保管等の管理工数も増加する。
【0009】
また、特許文献2には、遅延時間を広い範囲で細かく複数ステップで設定することができる遅延回路が示されている。図10は、特許文献2に記載の遅延回路の構成を示すブロック図である。図10に示すように、例えば、2つの遅延回路46a,46bが直列に接続された場合には、第1の遅延回路46aは遅延時間を細かく設定できるように、第2の遅延回路46bは遅延時間を大まかに設定できるように構成される。第1及び第2の遅延回路46a,46bの遅延時間は、それぞれレジスタ19の下位ビット、上位ビットにより設定される。例えば、レジスタ19の下位ビット、上位ビットがそれぞれ、2ビット、1ビットとし、第1の遅延回路46aのインバータ11の2段当たりの遅延時間を△d=2ns、第2の遅延回路46bのインバータ11の2段当たりの遅延時間を△D=△d×4=8nsとする。このとき、第1の遅延回路46aに入力された信号が第2の遅延回路46bから出力されるときの遅延時間は、0、2、4、6、8、10、12、14nsの8ステップで設定可能である。
【0010】
上述の特許文献2の技術をデッドタイムを設定する技術に応用した場合、デッドタイムに応じて、レジスタ19の下位ビット、上位ビットにより設定することにより、上述のようなデッドタイム間隔でデッドタイムを広範囲に複数ステップで設定することができる。複数ステップでのデッドタイムを、例えば、0、2、4、6、10、14nsとし、ステップ間隔を0〜6nsは2nsステップの細かいステップ間隔で、6〜14nsは4nsの粗いステップ間隔で制御できるICの要求があるとき、上述の8ステップで設定可能なデッドタイム制御を適用したICを用いた場合について考察する。この場合、8nsと10nsが使用されず無駄となる。言い換えれば、遅延素子を構成する無駄なインバータ11が存在することになる。これはICチップの面積が必要以上に大きくなることを意味する。
【0011】
また、上述の0、2、4、6、10、14nsより更に広範囲、例えば、0、2、4、6、8、12、16、20nsでは、ステップ間隔を0〜8nsは2nsの細かいステップ間隔で、8〜20nsは4nsの粗いステップ間隔で制御できるICの要求があるとき、特許文献2の技術を応用したデッドタイム制御を適用したICを用いた場合について考察する。この場合、ステップ間隔が等間隔の少なくとも0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20nsの11ステップで設定可能である必要がある。このためには、下位ビット、上位ビットがそれぞれ、2ビット、1ビットではなく、3ビット、1ビット必要となる。この場合、下位ビット+上位ビットが3ビットから4ビットとなり、レジスタ19にデータをパラレルに入力する場合や、レジスタ19を用いずにビット信号を外部から直接入力する場合は、入力端子数が増加するという問題がある。また、この場合、10、14、18nsが使用されず無駄となる。この場合も、遅延素子を構成する無駄なインバータ11が存在することになり、ICチップの面積が必要以上に大きくなることを意味する。
【特許文献1】特開2005−260773号公報
【特許文献2】特開2000−357951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記で説明したように、従来の技術ではデッドタイムを広範囲に複数ステップで設定する際、デッドタイムに応じてステップ間隔を変更することを、遅延素子を外付けすることなく、回路規模の小さいICチップで実施することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のデッドタイム制御回路の一態様は、活性化パルスエッジと不活性化パルスエッジとが互いに略一致する2つのパルス信号を並列入力し、入力したパルス信号の活性化パルスエッジを遅延させて互いの不活性化パルスエッジと活性化パルスエッジとの間にデッドタイムを付加して並列出力するデッドタイム制御回路10であって、制御信号(例えば、図1の制御信号DA)に基づいて前記デッドタイムに応じたステップ間隔の複数ステップの遅延時間のいずれかを選択して前記入力したパルス信号の両パルスエッジを遅延させる遅延回路部と、前記入力したパルス信号と前記遅延回路部が遅延させたパルス信号とを論理処理して前記活性化パルスエッジを遅延させた信号を生成する信号生成部(例えば、図1の論理回路部102a、102b)と、を備える。複数のステップ間隔に基づいて、複数の遅延時間が設定できる遅延回路部を備え、制御信号に基づいて複数の遅延時間のうちのいずれかを選択するように制御することにより、デッドタイムを広範囲に複数ステップで設定する際のステップ間隔を、デッドタイムが比較的短い制御では比較的細かく、デッドタイムが比較的長い制御では比較的粗くして制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、デッドタイムを広範囲に複数ステップで設定する際、デッドタイムに応じてステップ間隔を変更することを、遅延素子を外付けすることなく、回路規模の小さいICチップで実施することができる。これにより、デッドタイムを広範囲に精度よく設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
また、本明細書では、同じ構成要素が複数存在し、それぞれを区別する場合に、符号に接尾辞を付加して、複数の構成要素それぞれを区別するものとする。例えば、図1では、複数の遅延回路部101a、101bを示している。図1を用いて説明する場合、遅延回路部101は、複数の遅延回路部101a、101bのいずれか一つまたは複数を示すものとし、遅延回路部101a(あるいは、遅延回路部101bのように接尾辞を付加した符号を用いる場合)は、複数の遅延回路部それぞれを示すものとする。
【0016】
図1は、本発明のデッドタイム制御回路の構成の一例を示すブロック図である。以下、図1に示すデッドタイム制御回路10は、プッシュプル構成の2つのスイッチング素子として、図8に示す回路と同様に、どちらもNチャネル型MOSFETで構成される場合に適用されるものとして説明する。図1に示すデッドタイム制御回路10は、第1のパルス信号生成回路100a、第2のパルス信号生成回路100b、遅延回路部(遅延部)101a、101b、論理回路部(信号生成部)102a、102bを備える。デッドタイム制御回路10は、活性化パルスエッジと不活性化パルスエッジとが互いに略一致する2つのパルス信号を並列入力(図1では、HIとLI)し、入力したパルス信号のうち活性化パルスエッジを遅延させて並列出力する。本実施形態では、活性化パルスエッジと不活性化パルスエッジとが互いに略一致する2つのパルス信号とは、互いに論理レベルが異なる二つのパルス信号のことである。
【0017】
遅延回路部101a、101bは、デッドタイムを規定する遅延時間を設定し、設定した遅延時間に基づいて前記パルス信号を遅延させる。論理回路部102a、102bは、ANDゲート(AND回路)であり、入力したパルス信号と、遅延回路部101a、101bが遅延させたパルス信号との論理積を出力する。HI、LIは、入力信号(パルス信号)を示し、HO、LOは、出力信号(活性化パルスエッジを遅延させたパルス信号)を示す。DAは、遅延時間を制御する複数ビットの制御信号であり、図2を用いて詳細は後述する。
【0018】
図2は、本発明の遅延回路部の構成の一例を示すブロック図である。遅延回路部101は、第一遅延回路110Aと第二遅延回路110Bとを備える。また、第一遅延回路110Aは、第1遅延ブロック(第一遅延部)120を備え、第二遅延回路110Bは、第2遅延ブロック(第二遅延部)130と、第3遅延ブロック(第三遅延部)140とを備える。第一遅延回路110A及び第二遅延回路110B、すなわち、第1、第2及び第3の各遅延ブロックは直列に接続されている。また、図1で示した制御信号DAの具体例として、m=3ビットのD1(上位1ビット)からD3(下位1ビット)を示している。遅延回路部101はD1からD3の外部端子からの論理入力によって制御される。m=3ビットの制御信号DAのうち、上位側m1=1ビットの制御信号D1を第一制御信号として入力し、下位側m2=m−m1=2ビットの制御信号D2、D3を第二制御信号として入力する。デッドタイムは、m=3ビットの制御信号DAに基づいて、2=8ステップで設定される。8ステップで設定されるデッドタイムのステップ間隔は、制御信号D1により、n=2つの異なるステップ間隔に制御される。
【0019】
第一遅延回路110Aは、上位1ビットの制御信号D1を入力し、制御信号D1に基づいて、n=2つの遅延時間から第1遅延時間を一つ選択して入力したパルス信号を遅延させる。n=2つの遅延時間のうち1つは0であり、他の1つは所定の最小遅延時間(0を除く)、図2の例では2nsを4倍して算出される8nsである。
第二遅延回路110Bは、第一遅延回路110Aから出力されるパルス信号を入力する。さらに、制御信号D2、D3を入力する。制御信号D1に基づいて、n=2つのステップ間隔のうち選択された第1遅延時間に応じたステップ間隔を選択する。n=2つのステップ間隔のうち1つは所定の最小遅延時間、図2の例では2nsであり、他の1つは最小遅延時間2nsを2倍して算出される4nsである。制御信号D2、D3に基づいて、2m2=4つの遅延時間から第2遅延時間を一つ選択して入力したパルス信号を遅延させる。ステップ間隔が2nsのとき、4つの遅延時間のうち1つは0であり、他は2nsステップで0に加算されて算出される2、4、6nsである。ステップ間隔が4nsのとき、4つの遅延時間のうち1つは0であり、他は4nsステップで0に加算されて算出される4、8、12nsである。
【0020】
第1遅延ブロック120は、制御信号D1を入力し、制御信号D1に基づいて、遅延時間0nsまたは8nsのいずれかを第1遅延時間として選択する。第2遅延ブロック130は、制御信号D1、D2を入力し、制御信号D1に基づいて、遅延時間8nsまたは4nsのいずれかを選択するとともに、制御信号D2に基づいて、遅延時間0nsまたは制御信号D1により選択された8nsまたは4nsの1つのいずれかを第2遅延時間として選択する。第3遅延ブロック140は、制御信号D1、D3を入力し、制御信号D1に基づいて、遅延時間4nsまたは2nsのいずれかを選択するとともに、制御信号D3に基づいて、遅延時間0nsまたは制御信号D1により選択された4nsまたは2nsの1つのいずれかを第2遅延時間として選択する。入力信号(HIまたはLI)は、第1遅延ブロック120、第2遅延ブロック130、並びに第3遅延ブロック140それぞれが選択した遅延時間の和だけ活性化パルスエッジと非活性化パルスエッジの両方とも遅延させられ、遅延した出力信号(HOまたはLO)が遅延回路部101から出力される。制御信号DAは、第1、第2および第3の各遅延ブロックにおいて、複数の遅延時間から一つの遅延時間を選択することを制御する。すなわち、遅延回路部101は、各遅延ブロックが選択した遅延時間の和をデッドタイムを規定する遅延時間として設定し、入力したパルス信号を設定した遅延時間遅延させて出力する。
【0021】
各遅延ブロックにより、デッドタイムを規定する遅延時間を広範囲に複数ステップで設定可能になっている。また、遅延時間に応じてステップ間隔を変更可能となっている。図2では、制御信号D1、D2、D3に基づいて、デッドタイムが8ステップで設定される。8ステップで設定されるデッドタイムのステップ間隔は、制御信号D1により制御される。制御信号D1が一方の論理(例えば、0)のとき、ステップ間隔は上述の最小遅延時間2nsに設定され、他方の論理(一方の論理が0のとき、1)のとき、最小遅延時間2nsの2倍の4nsに設定される。このようにして、デッドタイムを規定する遅延時間に応じてステップ間隔が異なる複数ステップの遅延時間を設定することができる。
【0022】
制御信号DAは、外部端子などの制御信号出力部(図示していない)から出力される。制御信号DAは、外部端子を介してH(1)、L(0)の値が制御される。
【0023】
図3は、第1遅延ブロック120の構成の一例を示す回路図である。図3(a)では、第1遅延ブロック120−1は、遅延素子121とセレクタ122で構成され、図3(b)では、第1遅延ブロック120−2は、遅延素子121とスイッチ123で構成される例を示している。遅延素子121は、信号を8ns遅延させる。制御信号D1は、セレクタ122あるいはスイッチ123を制御して、遅延素子121を通過した信号を選択するか否かを制御することによって、遅延時間を設定している。
【0024】
図4は、第2遅延ブロック130の構成の一例を示す回路図である。図4(a)では、第2遅延ブロック130−1は、遅延素子131、132とセレクタ133、134で構成され、図4(b)では、第2遅延ブロック130−2は、遅延素子131、132、セレクタ134及びスイッチ135で構成される例を示し、図4(c)では、第2遅延ブロック130−3は、遅延素子131、132と、スイッチ135、136で構成される例を示している。遅延素子131、132は、信号を4ns遅延させる。制御信号D1は、セレクタ133あるいはスイッチ135を制御して、遅延素子131を通過した信号を選択するか否かを制御することによって、遅延時間を設定している。制御信号D2は、セレクタ134あるいはスイッチ136を制御して、遅延素子132を通過した信号を選択するか否かを制御することによって、遅延時間を設定している。
【0025】
図5は、第3遅延ブロック140の構成の一例を示す回路図である。図5(a)では、第3遅延ブロック140−1は、遅延素子141、142とセレクタ143、144で構成され、図5(b)では、第3遅延ブロック140−2は、遅延素子141、142、セレクタ144及びスイッチ145で構成される例を示し、図5(c)では、第3遅延ブロック140−3は、遅延素子141、142と、スイッチ145、146で構成される例を示している。遅延素子141、142は、信号を2ns遅延させる。制御信号D1は、セレクタ143あるいはスイッチ145を制御して、遅延素子141を通過した信号を選択するか否かを制御することによって、遅延時間を設定している。制御信号D3は、セレクタ144あるいはスイッチ146を制御して、遅延素子142を通過した信号を選択するか否かを制御することによって、遅延時間を設定している。
【0026】
第1、第2及び第3の各遅延ブロックの遅延素子は、偶数個、例えば、2個が直列接続されたインバータで構成され、第1、第2、第3の順番で短い時間となっている。
また、図6に、図3から図5に示したセレクタの構成の一例を示している。セレクタ200は、NOT回路201とNAND202〜204で構成する回路とそれを制御する制御信号DAが接続されている。なお、図3から図5には、第1、第2及び第3の各遅延ブロックの構成の一例を示したが、これらに限られるわけではなく、同様の機能を実現する構成であれば、これらに限られない。また、ステップ間隔や遅延時間は一例であり、これらの値に限られるわけではない。
【0027】
続いて、図1から図5を用いてデッドタイム制御回路10の動作を説明する。図1から図5に示すデッドタイム制御回路10では、デッドタイムは0〜20nsの範囲で設定可能である。より詳しくは以下の通りである。制御信号(外部端子)は、L(0)とH(1)の値をとるものとする。
【0028】
第1遅延ブロック120は制御信号D1の制御により、0nsまたは8nsで可変可能である。第2遅延ブロック130は制御信号D2の制御により、D1=Lのときは0nsまたは4nsで、D1=Hのときは0nsまたは8nsで可変可能である。第3遅延ブロック140は制御信号D3の制御により、D1=Lのときは0nsまたは2nsで、D1=Hのときは0nsまたは4nsで可変可能である。
【0029】
各論理入力(制御信号D1〜D3)によって、図7のようなデッドタイムのデジタル制御を実現している。図7は、図1に示すデッドタイム制御回路の動作を説明する図である。図7に示すように、デッドタイム制御回路10は、0、2、4、6、8、12、16、20nsのデッドタイムを設定することができる。また、0〜8nsは、ステップ間隔で、8〜20nsは、ステップ間隔4nsで設定することができる。このように、制御信号D1〜D3を用いることによって、デッドタイムに応じてステップ間隔が異なる複数ステップのデッドタイムを設定することが可能になっている。例えば、図2では、3ビットの信号線によって、広範囲のデッドタイムを制御している。
【0030】
以上のように、本発明の好適な実施形態では、遅延回路に工夫をこらして、少ない外部端子からデジタル方式でより細かい遅延時間を設定できるようにしている。これにより、遅延素子を外付けすることなく、少ない外部端子と内部素子の構成による回路規模の小さいICチップによって、デッドタイムに応じてステップ間隔を変更可能にして、デッドタイムを広範囲に複数ステップで精度よく設定することができる。
【0031】
尚、上記実施形態では、本発明のデッドタイム制御回路が適用されるプッシュプル構成の2つのスイッチング素子として、どちらもNチャネル型MOSFETで構成される場合を例として説明したが、CMOS構成のMOSFETで構成される場合でも適用可能である。この場合、並列入力される活性化パルスエッジと不活性化パルスエッジとが互いに略一致する2つのパルス信号とは、互いに論理レベルが同一の二つのパルス信号のことである。また、論理回路部102a、102bのうち論理回路部102aは、ORゲート(OR回路)で構成される。
【0032】
また、上記実施形態では、制御信号DAとしてm=3ビットの制御信号DA、第一制御信号として制御信号DAのうち、上位側m1=1ビットの制御信号D1、第二制御信号として下位側m2=m−m1=2ビットの制御信号D2、D3を一例として説明したが、これに限られるわけではない。すなわち、遅延回路部にmビット(mは2以上の整数)の制御信号DAのうち、上位側m1ビット(m1は1以上の整数)を第一制御信号として入力し、下位側m2ビット(m2は1以上の整数)を第二制御信号として入力することができる。デッドタイムは、mビットの制御信号DAに基づいて、最大2ステップで設定することができる。2ステップで設定されるデッドタイムのステップ間隔は、第一制御信号により、n(≦2m1)通り(nは2以上の整数)の異なるステップ間隔に制御することができる。
【0033】
第一遅延回路は、第一制御信号に基づいて、n通りの遅延時間から第1遅延時間を一つ選択して入力したパルス信号を遅延させることができる。n通りの遅延時間のうち1つは0であり、他のn−1通りは所定の最小遅延時間(0を除く)を2×2m2、・・・、Σ2(m1+1−x)×2m2(x=2〜n)倍して算出することができる。
第二遅延回路は、第一制御信号に基づいて、n通りのステップ間隔のうち選択された第1遅延時間に応じたステップ間隔を選択することができる。n通りのステップ間隔のうち1つは所定の最小遅延時間であり、他のn−1通りは最小遅延時間を2、・・・、2(X−1)(x=2〜n)倍して算出することができる。第二制御信号に基づいて、最大2m2通りの遅延時間から第2遅延時間を一つ選択して入力したパルス信号を遅延させることができる。2m2通りの遅延時間のうち1つは0であり、他は選択されたステップ間隔のステップで0に加算して算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のデッドタイム制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1のデッドタイム制御回路に用いられる遅延回路のブロック図である。
【図3】図2の遅延回路の第1遅延ブロックの一例を示す回路図である。
【図4】図2の遅延回路の第2遅延ブロックの一例を示す回路図である。
【図5】図2の遅延回路の第3遅延ブロックの一例を示す回路図である。
【図6】図3〜図5に示すセレクタの一例を示す回路図である。
【図7】図1のデッドタイム制御回路の動作を説明する図である。
【図8】特許文献1に記載の駆動回路を示す回路図である。
【図9】図8の駆動回路のタイミングチャートである。
【図10】特許文献2に記載の駆動回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0035】
10 デッドタイム制御回路
100a 第1のパルス信号生成回路
100b 第2のパルス信号生成回路
101a、101b 遅延回路部
102a、102b 論理回路部(ANDゲート)
110A 第1遅延回路
110B 第2遅延回路
120、120−1、120−2 第1遅延ブロック
121 遅延素子
122 セレクタ
123 スイッチ
130、130−1、130−2、130−3 第2遅延ブロック
131、132 遅延素子
133、134 セレクタ
135、136 スイッチ
140、140−1、140−2、140−3 第3遅延ブロック
141、142 遅延素子
143、144 セレクタ
145、146 スイッチ
200 セレクタ
201 NOT回路
202〜204 NAND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化パルスエッジと不活性化パルスエッジとが互いに略一致する2つのパルス信号を並列入力し、入力したパルス信号の活性化パルスエッジを遅延させて互いの不活性化パルスエッジと活性化パルスエッジとの間にデッドタイムを付加して並列出力するデッドタイム制御回路であって、
制御信号に基づいて前記デッドタイムに応じたステップ間隔の複数ステップの遅延時間のいずれかを選択して前記入力したパルス信号の両パルスエッジを遅延させる遅延回路部と、
前記入力したパルス信号と前記遅延回路部が遅延させたパルス信号とを論理処理して前記活性化パルスエッジを遅延させた信号を生成する信号生成部と、を備えるデッドタイム制御回路。
【請求項2】
前記制御信号は、第一制御信号と、第二制御信号とからなり、
前記遅延回路部は、
前記前記第一制御信号に基づいて、複数の遅延時間から第一遅延時間を一つ選択して前記入力したパルス信号を遅延させる第一遅延回路と、
前記第一遅延回路から出力されるパルス信号を入力し、前記第一制御信号に基づいて前記選択された第一遅延時間に応じたステップ間隔の複数ステップの遅延時間を選択するとともに、前記第二制御信号に基づいて、前記選択されたステップ間隔の複数ステップの遅延時間から第二遅延時間を一つ選択して前記第一遅延回路から入力したパルス信号を遅延させる第二遅延回路と、を備えることを特徴とする請求項1記載のデッドタイム制御回路。
【請求項3】
前記制御信号は、mビット(mは2以上の整数)制御信号からなり、
前記第一制御信号は、前記mビットの上位側m1ビット(m1は1以上の整数)であり、
前記第二制御信号は、前記mビットの下位側m2ビット(m2は1以上の整数)であり、
前記ステップ間隔として、n(≦2m1、nは2以上の整数)通りの異なるステップ間隔を有し、前記n通りのステップ間隔のうち1つは所定の最小遅延時間であり、他は最小遅延時間を2、・・・、2(X−1)(X=2〜n)倍して算出され、
前記第一遅延回路は、前記複数の遅延時間としてn通りの遅延時間を有し、前記n通りの遅延時間のうち1つは0であり、他は所定の最小遅延時間を2×2m2、・・・、Σ2(m1+1−x)×2m2(x=2〜n)倍して算出される(n−1)通りの遅延時間であり、
前記第二遅延回路は、前記選択された第一遅延時間に応じたステップ間隔の複数の遅延時間として最大2m2通りの遅延時間を有し、前記2m2通りの遅延時間のうち1つは0であり、他は前記ステップ間隔で0に加算されて算出される遅延時間であることを特徴とする請求項2記載のデッドタイム制御回路。
【請求項4】
前記2つのパルス信号がプッシュプル構成の2つのスイッチング素子を駆動する駆動信号として用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のデッドタイム制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−172323(P2008−172323A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1372(P2007−1372)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】