説明

バックゲート切替回路、充電制御装置、電子機器

【課題】本発明は、電界効果トランジスタのソース・ドレインいずれが高電位となるか不定であるシステムにも好適に用いることが可能なバックゲート切替回路、並びに、これを用いた充電制御装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るバックゲート切替回路20は、端子T2から電力供給を受けて電圧Va、Vbの比較信号を生成する比較部(CMP、R1〜R5、N1)と;端子T3から電力供給を受けて反転比較信号を生成するインバータINVと;トランジスタ14のバックゲートと端子T2との間に接続され、反転比較信号に応じてオン/オフ制御されるトランジスタP1と;トランジスタ14のバックゲートと端子T3との間に接続され、比較信号に応じてオン/オフ制御されるトランジスタP2と;インバータINVの入力端及びトランジスタP2のゲートをプルダウンする抵抗(R6、R7)と;を有して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタのバックゲート切替回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電源回路の分野においては、入力電圧が印加される入力端子と出力電圧が引き出される出力端子との間に、電界効果トランジスタから成るスイッチ回路を接続し、これを用いて、メイン電池とバックアップ電池との切替制御や、入力電圧の昇降圧制御を行う構成が一般に採用されている。
【0003】
ところで、スイッチ回路を構成する電界効果トランジスタを半導体装置に集積化した場合、通常、そのバックゲートとソース及びドレインとの間には、PN接合の寄生ダイオードが形成される。そのため、入力電圧の遮断時には、この寄生ダイオードが出力端子(バックアップ電池や出力コンデンサ)から入力端子に電流をリークする経路となり得る。
【0004】
そこで、従来の電源回路は、スイッチ回路を構成する電界効果トランジスタのバックゲートを系内の最高電位点に吊るように、その接続先を切り替えるバックゲート切替回路を用いて、入力電圧の遮断時にも上記寄生ダイオードを逆バイアスする構成とされていた。
【0005】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、本願出願人による特許文献1、2を挙げることができる。
【特許文献1】特開2003−347913号公報
【特許文献2】特開2002−10525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、上記従来の電源回路であれば、入力電圧の遮断時にも上記寄生ダイオードを逆バイアスすることができるので、出力端子から入力端子へと流れるリーク電流を防止することが可能となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の従来技術は、通常動作時には入力電圧が出力電圧よりも高電位であることを前提とした上で、入力電圧の遮断時におけるリーク電流の防止を想定したものであり、電界効果トランジスタのソース・ドレインいずれが高電位となるか不定であるシステム(例えば充電制御装置)への適用については、何ら考慮されていなかった。
【0008】
また、特許文献2の従来技術は、バックゲートの切替手段として、NMOSとPMOSを用いていたため、どちらかに常に電源が供給されている端子が必要であった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑み、電界効果トランジスタのソース・ドレインいずれが高電位となるか不定であるシステムにも好適に用いることが可能なバックゲート切替回路、並びに、これを用いた充電制御装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係るバックゲート切替回路は、第1端子と第2端子との間に挿入された電界効果トランジスタのバックゲートを第1端子と第2端子のいずれか一方に接続するバックゲート切替回路であって、第1端子から電力供給を受けて駆動し、第1端子の印加電圧と第2端子の印加電圧とを比較して、前者が後者よりも高ければハイレベルの比較信号を生成し、前者が後者よりも低ければローレベルの比較信号を生成する比較部と;第2端子から電力供給を受けて駆動し、前記比較部から直接ないしバッファを介して入力される前記比較信号を論理反転することで、反転比較信号を生成するインバータと;前記電界効果トランジスタのバックゲートと第1端子との間に接続され、前記反転比較信号に応じてオン/オフ制御される第1Pチャネル型電界効果トランジスタと;前記電界効果トランジスタのバックゲートと第2端子との間に接続され、前記比較部から直接ないしバッファを介して入力される前記比較信号に応じてオン/オフ制御される第2Pチャネル型電界効果トランジスタと;前記インバータの入力端及び第2Pチャネル型電界効果トランジスタのゲートをプルダウンする抵抗と;を有して成る構成(第1の構成)とされている。
【0011】
なお、上記第1の構成から成るバックゲート切替回路は、さらに、前記電界効果トランジスタのゲートと第1端子との間に接続され、前記反転比較信号に応じてオン/オフ制御される第3Pチャネル型電界効果トランジスタと;前記電界効果トランジスタのゲートと第2端子との間に接続され、前記比較部から直接ないしバッファを介して入力される前記比較信号に応じてオン/オフ制御される第4Pチャネル型電界効果トランジスタと;を有して成る構成(第2の構成)にするとよい。
【0012】
また、本発明に係る充電制御装置は、第1端子と第2端子との間に挿入され、二次電池の充電制御手段として用いられる電界効果トランジスタと;前記電界効果トランジスタのバックゲートを第1端子と第2端子のいずれか一方に接続する上記第1または第2の構成から成るバックゲート切替回路と;を有して成る構成(第3の構成)とされている。
【0013】
また、本発明に係る電子機器は、上記第3の構成から成る充電制御装置と、前記充電制御装置によって充電制御される二次電池を有して成る構成(第4の構成)とされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るバックゲート切替回路であれば、電界効果トランジスタのソース・ドレインいずれが高電位となるか不定であるシステムにも好適に用いることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明に係る充電制御装置を搭載した電子機器(例えば、ポータブルナビゲーションシステム(PND[Portable Navigation Device])や携帯電話端末)の一実施形態を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の電子機器は、パワーマネジメントIC1と、マイコンと、リチウムイオン電池3と、センス抵抗4及び5と、ポート6と、電源ライン7と、信号ライン8と、を有して成る。
【0017】
パワーマネジメントIC1は、リチウムイオン電池3の充電制御を行う充電制御装置である。なお、パワーマネジメントIC1の内部構成及び動作については後ほど詳述する。
【0018】
マイコン2は、パワーマネジメントIC1から電力供給を受けて駆動する情報処理手段であり、電子機器に外部接続される電力供給源として、ポート6にUSB[Universal Serial Bus]ホストが接続されているのか、電源アダプタが接続されているのか(信号ライン8を介してUSBホストとの接続が確立されているか否か)をモニタし、その結果をパワーマネジメントIC1の充電制御部11に伝達する。また、ポート6にUSBホストが接続されている場合、マイコン2は、USBホストとの間で信号ライン8を介した信号授受を行う。
【0019】
上記に関して、より具体的なシーケンスを説明する。まず、電源ライン7に対して電圧V1が印加されたことを受けて、パワーマネジメントIC1が起動する。このとき、パワーマネジメントIC1は、電子機器に外部接続される電力供給源の種類が不明であることに鑑み、ローパワー規格(供給電流I1の上限値100[mA])のUSBホストが接続されているものとして、最も安全サイドでリチウムイオン電池3の充電制御を開始する。
【0020】
その後、パワーマネジメントIC1からマイコン2への電力供給が開始され、マイコン2が起動すると、マイコン2によるUSBホストの確認処理(USBホストの接続確認、並びに、ハイパワー/ローパワーの規格確認)が行われる。
【0021】
ここで、ハイパワー規格(供給電流I1の上限値500[mA])のUSBホストが接続されていることを確認した場合、マイコン2は、その旨をパワーマネジメントIC1に伝達する。これを受けたパワーマネジメントIC1は、マイコン2でのモニタ結果に応じて、リチウムイオン電池3の充電制御モードを切り替える。
【0022】
一方、ローパワー規格のUSBホストが接続されていることを確認した場合、マイコン2は、その旨をパワーマネジメントIC1に伝達する。これを受けたパワーマネジメントIC1は、リチウムイオン電池3の充電制御モードを現状に維持する。
【0023】
また、USBホストの接続が確認できなかった場合、マイコン2は、電源アダプタが接続されていると認識し、その旨をパワーマネジメントIC1に伝達する。これを受けたパワーマネジメントIC1は、マイコン2でのモニタ結果に応じて、リチウムイオン電池3の充電制御モードを切り替える。
【0024】
リチウムイオン電池3は、パワーマネジメントIC1によって充電制御される二次電池であり、ポート6にUSBホストや電源アダプタが接続されていない場合に、電子機器の駆動電源となる。
【0025】
センス抵抗4は、パワーマネジメントIC1の端子T1と端子T2との間に外部接続され、USBホスト或いは電源アダプタからの供給電流I1を電圧信号に変換するための手段である。
【0026】
センス抵抗5は、パワーマネジメントIC1の端子T3と端子T4との間に外部接続され、リチウムイオン電池3の充電電流I3(USBホスト或いは電源アダプタからの供給電流I1から、リチウムイオン電池3の充電以外に用いられるシステムの消費電流I2を差し引いた余剰電流)を電圧信号に変換するための手段である。
【0027】
ポート6は、電子機器にUSBホストや電源アダプタを外部接続するためのインターフェイス手段である。
【0028】
電源ライン7は、ポート6に接続されたUSBホストや電源アダプタから電力供給を受けるためのラインである。
【0029】
信号ライン8は、ポート6に接続されたUSBホストとマイコン2との間で、信号授受を行うためのラインである。
【0030】
次に、パワーマネジメントIC1の内部構成について、詳細な説明を行う。
【0031】
図1に示すように、パワーマネジメントIC1は、充電制御部11と、アンプ12及び13と、Pチャネル型電界効果トランジスタ14及び15と、温度センサ16と、内部設定部17と、外部設定部18と、DC/DCコンバータ19と、を有して成る。
【0032】
充電制御部11は、トランジスタ14及び15の導通度(オン抵抗)を制御することにより、図2に示したように、供給電流制御機能部、及び、充電電流制御機能部として動作するものである。なお、充電制御部11の動作については、後ほど詳述する。
【0033】
アンプ12は、センス抵抗4の両端電圧を増幅し、USBホスト或いは電源アダプタからの供給電流I1に応じた供給電流検出信号を充電制御部11に送出する手段である。
【0034】
アンプ13は、センス抵抗5の両端電圧を増幅し、リチウムイオン電池3の充電電流I3に応じた充電電流検出信号を充電制御部11に送出する手段である。
【0035】
トランジスタ14は、端子T2と端子T3との間に内部接続され、その導通度制御に応じて、供給電流I1の電流値を増減する手段である。
【0036】
トランジスタ15は、端子T4と端子T5との間に内部接続され、その導通度制御に応じて、充電電流I3の電流値を増減する手段である。
【0037】
温度センサ16は、周囲温度Tに応じた温度検知信号Soutを生成し、これを充電制御部11に送出する手段である。
【0038】
内部設定部17は、USBホストの規格(ハイパワー/ローパワー)に応じた充電電流I3の目標値を予め設定し、その設定値を充電制御部11に送出する手段である。
【0039】
外部設定部18は、外付け抵抗などを用いて充電電流I3の目標値をユーザの任意に設定し、その設定値を充電制御部11に送出する手段である。
【0040】
DC/DCコンバータ19は、端子T3で得られる電圧V2を受けて動作し、電子機器を構成する各回路部(図1の例ではマイコン2)に所定の駆動電圧を供給する手段であって、シリーズレギュレータやスイッチングレギュレータなどを用いることができる。
【0041】
また、図1には明示されていないが、本実施形態のパワーマネジメントIC1は、トランジスタ14、15のバックゲートを系内の最高電位点に吊るように、その接続先を切り替えるバックゲート切替回路20を有して成る。このバックゲート切替回路20の構成及び動作については、後ほど詳述する。
【0042】
次に、パワーマネジメントIC1(特に充電制御部11)によるリチウムイオン電池3の充電制御について、詳細な説明を行う。
【0043】
図3(a)〜(d)は、それぞれ、周囲温度Tに応じた充電制御、システム電流I2に応じた充電制御、内部設定値に応じた充電制御、及び、外部設定値に応じた充電制御を個別に説明するための図である。
【0044】
図3(a)の実線L1で示すように、充電制御部11は、温度センサ16で得られた温度検知信号Soutに基づいて、周囲温度Tが高いほど、充電電流I3の目標値を小さい値とするように、リチウムイオン電池3の充電制御を行う。
【0045】
また、図3(b)の実線L2で示すように、充電制御部11は、端子T1で得られる端子電圧V1と端子T3で得られる端子電圧V2との電位差から、システムの消費電流I2を検出し、この電流値が大きいほど、充電電流I3の目標値を小さい値とするように、リチウムイオン電池3の充電制御を行う。
【0046】
また、図3(c)の実線L3a、L3bで示すように、充電制御部11は、内部設定部17で予め設定された充電電流I3の目標値(固定値)に基づいて、USBホストの規格(ハイパワー/ローパワー)に応じたリチウムイオン電池3の充電制御を行う。
【0047】
また、図3(d)の実線L4で示すように、充電制御部11は、外部設定部18で任意に設定された充電電流I4の目標値(可変値)に基づいて、リチウムイオン電池3の充電制御を行う。
【0048】
ここで、本発明の特徴は、図3(a)〜(d)で示した充電制御を個別に行うのではなく、図4で示すように、充電電流I3の目標値として、装置内部で予め設定された目標値(図3の実線L1、L2、L3を参照)と、装置外部から任意に設定された目標値(図3の実線L4を参照)のうち、最も小さい値を選択し、充電電流I3を許容消費電力内に制御することで、リチウムイオン電池3に過負荷をかけないところにある。
【0049】
このような構成とすることにより、外部設定値(L4)を高めに設定していた場合であっても、例えば、周囲温度Tの上昇やシステム電流I2の増大により、充電電流I3の電流値を絞らねばならない状況となった場合には、そちらの設定値(L1、L2)が優先的に適用されるため、安全に充電を続けることができる。一方、そのような状況に至らない場合には、外部設定値(L4)による大きな充電電流I3が設定されるので、充電時間を短縮することが可能となる。
【0050】
また、USB使用時において、従来は、充電電流I3の上限値(L3a、L3b)が固定的に設定されており、ユーザがその上限値で充電を行うのは危険だと判断した場合であっても、これを変更することができなかった。一方、本発明であれば、内部設定値(L3a、L3b)よりも外部設定値(L4)を低く設定しておけば、USB使用時における上限電流値を任意に下げることも可能となる。
【0051】
次に、バックゲート切替回路20の構成及び動作について、図5を参照しながら詳細に説明する。
【0052】
図5は、バックゲート切替回路20の一構成例を示す回路図である。なお、本図では、端子T2と端子T3との間に挿入されたトランジスタ14のバックゲートを切替対象とする構成を例に挙げて説明を行うが、端子T4と端子T5との間に接続されたトランジスタ15を切替対象とする場合にも、同様の構成を採用することができる。
【0053】
図5に示す通り、本構成例のバックゲート切替回路20は、Pチャネル型電界効果トランジスタP1〜P4と、Nチャネル型電界効果トランジスタN1と、抵抗R1〜R8と、コンパレータCMPと、インバータINVと、バッファB1〜B3と、を有して成る。
【0054】
トランジスタP1のドレインは、端子T2に接続されている。トランジスタP1のソースは、トランジスタ14のバックゲートに接続されている。トランジスタP1のバックゲートは、自身のソースに接続されている。トランジスタP2のドレインは、端子T3に接続されている。トランジスタP2のソースは、トランジスタ14のバックゲートに接続されている。トランジスタP2のバックゲートは、自身のソースに接続されている。
【0055】
トランジスタP3のドレインは、端子T2に接続されている。トランジスタP3のソースは、抵抗R8を介してトランジスタ14のゲートに接続されている。トランジスタP3のバックゲートは、自身のソースに接続されている。トランジスタP4のドレインは、端子T3に接続されている。トランジスタP4のソースは、抵抗R8を介してトランジスタ14のゲートに接続されている。トランジスタP4のバックゲートは、自身のソースに接続されている。
【0056】
抵抗R1と抵抗R2は、端子T2と接地端との間に直列接続されている。抵抗R3と抵抗R4は、端子T3と接地端との間に直列接続されている。コンパレータCMPの反転入力端(−)は、抵抗R1と抵抗R2との接続ノード(分圧電圧Vaの引出端)に接続されている。コンパレータCMPの非反転入力端(+)は、抵抗R3と抵抗R4との接続ノード(分圧電圧Vbの引出端)に接続されている。コンパレータCMPの電源端は、端子T2に接続されている。トランジスタN1のドレインは、抵抗R5を介して端子T2に接続されている。トランジスタN1のソースは、接地端に接続されている。トランジスタN1のゲートは、コンパレータCMPの出力端に接続されている。トランジスタN1のバックゲートは、自身のソースに接続されている。
【0057】
すなわち、本構成例のバックゲート切替回路20においては、コンパレータCMP、抵抗R1〜R5、及び、トランジスタN1により、端子T2から電力供給を受けて駆動し、分圧電圧Vaと分圧電圧Vb(延いては、端子T2の印加電圧と端子T3の印加電圧)とを比較して、前者が後者よりも高ければハイレベルの比較信号を生成し、前者が後者よりも低ければローレベルの比較信号を生成する比較部が形成されている。
【0058】
トランジスタN1のドレイン(比較信号の出力端)は、バッファB1、B2を介して、トランジスタP2、P4の各ゲートに接続される一方、バッファB3及びインバータINVを介して、トランジスタP1、P3の各ゲートにも接続されている。なお、バッファB1〜B3の電源端は、いずれも端子T2に接続されている。一方、インバータINVの電源端は、端子T3に接続されている。
【0059】
上記のように、インバータINVは、端子T3から電力供給を受けて駆動する構成とされている。その理由は、端子T3が端子T2よりも高電位である場合において、トランジスタP1、P3を確実にオフとするためには、トランジスタP1、P3のゲートを端子T3と同電位まで高めなければならないからであり、さらには、端子T2がオープンであっても、トランジスタP1、P3のゲートを確実にハイレベルとするためである。
【0060】
また、バッファB2は、端子T2から電力供給を受けて駆動する構成とされている。その理由は、上記と逆に、端子T2が端子T3よりも高電位である場合において、トランジスタP2、P4を確実にオフとするためには、トランジスタP2、P4のゲートを端子T2と同電位まで高めなければならないからであり、さらには、端子T3がオープンであっても、トランジスタP2、P4のゲートを確実にハイレベルとするためである。
【0061】
インバータINVの入力端と接地端との間には、抵抗R6が接続されている。また、トランジスタP2、P4の各ゲートと接地端との間には、抵抗R7が接続されている。
【0062】
次に、上記構成から成るバックゲート切替回路20の動作について詳細に説明する。
【0063】
まず、端子T2の印加電圧が端子T3の印加電圧よりも高い場合(分圧電圧Vaが分圧電圧Vbよりも高い場合)について説明する。この場合、コンパレータCMPの出力論理はローレベルとなり、トランジスタN1はオフとなる。従って、トランジスタN1のドレインから出力される比較信号は、抵抗R5を介してハイレベルとなる。
【0064】
このとき、インバータINVで生成される反転比較信号はローレベルとなるので、トランジスタP1、P3はオンとなる。一方、トランジスタP2、P4には、バッファB1、B2を介してハイレベル(端子T2の印加電圧と同一の電圧レベル)の比較信号が入力されるため、トランジスタP2、P4はオフとなる。その結果、トランジスタ14のバックゲート及びゲートは、いずれも、系内の最高電位点である端子T2に吊られる形となるので、トランジスタ14のバックゲートとソースとの間に付随する寄生ダイオードを逆バイアスとして、端子T2から端子T3への電流リーク経路を遮断するとともに、トランジスタ14を確実にオフすることが可能となる。
【0065】
なお、端子T3がオープンとなっている場合、インバータINVで生成される反転比較信号のハイレベル論理は不定となるが、上記の場合には、反転比較信号としてローレベルが出力される形となるため、特段支障が生じることはない。
【0066】
次に、端子T2の印加電圧が端子T3の印加電圧よりも低い場合(分圧電圧Vaが分圧電圧Vbよりも低い場合)について説明する。この場合、コンパレータCMPの出力論理はハイレベルとなり、トランジスタN1はオンとなる。従って、トランジスタN1のドレインから出力される比較信号は、ローレベルとなる。
【0067】
このとき、インバータINVで生成される反転比較信号はハイレベル(端子T3の印加電圧と同一の電圧レベル)となるので、トランジスタP1、P3はオフとなる。一方、トランジスタP2、P4には、バッファB1、B2を介してローレベルの比較信号が入力されるため、トランジスタP2、P4はオンとなる。その結果、トランジスタ14のバックゲート及びゲートは、いずれも、系内の最高電位点である端子T3に吊られる形となるので、トランジスタ14のバックゲートとドレインとの間に付随する寄生ダイオードを逆バイアスとして、端子T3から端子T2への電流リーク経路を遮断するとともに、トランジスタ14を確実にオフすることが可能となる。
【0068】
なお、端子T2がオープンとなっている場合、コンパレータCMPやバッファB1〜B3の出力論理が不定となるが、本構成例のバックゲート切替回路20であれば、インバータINVの入力端が抵抗R6を介して接地端にプルダウンされ、トランジスタP2、P4のゲートが抵抗R7を介して接地端にプルダウンされる。このような抵抗R6、R7を設けることにより、端子T2がオープンとなっている場合であっても、トランジスタP1、P3を確実にオフとし、トランジスタP2、P4を確実にオンとすることが可能となる。
【0069】
上記したように、本構成例のバックゲート切替回路20は、端子T2から電力供給を受けて駆動し、端子T2の印加電圧と端子T3の印加電圧とを比較して、前者が後者よりも高ければハイレベルの比較信号を生成し、前者が後者よりも低ければローレベルの比較信号を生成する比較部(CMP、R1〜R5、N1)と;端子T3から電力供給を受けて駆動し、比較部からバッファB3を介して入力される比較信号を論理反転することで、反転比較信号を生成するインバータINVと;トランジスタ14のバックゲートと端子T2との間に接続され、反転比較信号に応じてオン/オフ制御されるトランジスタP1と;トランジスタ14のバックゲートと端子T2との間に接続され、比較部からバッファB1、B2を介して入力される比較信号に応じてオン/オフ制御されるトランジスタP2と;トランジスタ14のゲートと端子T2との間に接続され、反転比較信号に応じてオン/オフ制御されるトランジスタP3と;トランジスタ14のゲートと端子T3との間に接続され、比較部からバッファB1、B2を介して入力される比較信号に応じてオン/オフ制御されるトランジスタP4と;インバータINVの入力端及びトランジスタP2、P4のゲートを各々プルダウンする抵抗R6、R7と;を有して成る構成とされている。
【0070】
このような構成とすることにより、トランジスタ14のソース・ドレインいずれが高電位となるか不定であっても、そのバックゲート及びゲートを系内の最高電位点に接続することで、トランジスタ14における不要な電流リーク経路を遮断し、かつ、トランジスタ14を確実にオフさせることが可能となる。
【0071】
また、上記構成から成るバックゲート切替回路20であれば、端子T2、T3いずれかがオープンとなった場合でも、特段の支障を生じることなく、トランジスタ14のバックゲート及びゲートの接続先を適切に切り替えることが可能となる。
【0072】
なお、上記の実施形態では、二次電池としてリチウムイオン電池を用いた構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、他方式の二次電池を用いる構成としても構わない。
【0073】
また、上記の実施形態では、充電制御装置を構成する電界効果トランジスタのバックゲート切替手段として、本発明に係るバックゲート切替回路を用いた構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、本発明に係るバックゲート切替回路は、電界効果トランジスタのソース・ドレインいずれが高電位となるか不定であるシステム全般に広く適用することが可能である。
【0074】
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0075】
例えば、図5のバックゲート切替回路20を構成する回路要素のうち、バッファB1〜B3については、必ずしも必須の回路要素ではなく、適宜これを省略しても構わない。また、バッファB1〜B3を一切設けない場合、プルダウン用の抵抗R6と抵抗R7と一つにまとめることが可能となる。
【0076】
また、Pチャネル型電界効果トランジスタ14、15に代えて、Nチャネル型電界効果トランジスタを用いた場合には、そのバックゲート及びゲートをハイレベルに吊ることによって、これを確実にフルオンさせることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、電界効果トランジスタのソース・ドレインいずれが高電位となるか不定であるシステムにおいて、電界効果トランジスタの電流リーク経路を確実に遮断する上で有用な技術であり、例えば、二次電池の充電制御を行う充電制御装置に好適な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】は、本発明に係る充電制御装置を搭載した電子機器の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】は、パワーマネジメントIC1による充電制御動作を模式的に説明するためのブロック図である。
【図3】は、周囲温度に応じた充電制御、システム電流に応じた充電制御、内部設定値に応じた充電制御、外部設定値に応じた充電制御を個別に説明するための図である。
【図4】は、パワーマネジメントIC1による充電制御動作の一例を示す図である。
【図5】は、バックゲート切替回路20の一構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0079】
1 パワーマネジメントIC(充電制御装置)
11 充電制御部
12、13 アンプ
14、15 Pチャネル型電界効果トランジスタ
16 温度センサ
17 内部設定部
18 外部設定部
19 DC/DCコンバータ
20 バックゲート切替回路
2 マイコン
3 リチウムイオン電池(二次電池)
4、5 センス抵抗
6 ポート
7 電源ライン
8 信号ライン
P1〜P4 Pチャネル型電界効果トランジスタ
N1 Nチャネル型電界効果トランジスタ
R1〜R8 抵抗
CMP コンパレータ
INV インバータ
B1〜B3 バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と第2端子との間に挿入された電界効果トランジスタのバックゲートを第1端子と第2端子のいずれか一方に接続するバックゲート切替回路であって、
第1端子から電力供給を受けて駆動し、第1端子の印加電圧と第2端子の印加電圧とを比較して、前者が後者よりも高ければハイレベルの比較信号を生成し、前者が後者よりも低ければローレベルの比較信号を生成する比較部と;
第2端子から電力供給を受けて駆動し、前記比較部から直接ないしバッファを介して入力される前記比較信号を論理反転することで、反転比較信号を生成するインバータと;
前記電界効果トランジスタのバックゲートと第1端子との間に接続され、前記反転比較信号に応じてオン/オフ制御される第1Pチャネル型電界効果トランジスタと;
前記電界効果トランジスタのバックゲートと第2端子との間に接続され、前記比較部から直接ないしバッファを介して入力される前記比較信号に応じてオン/オフ制御される第2Pチャネル型電界効果トランジスタと;
前記インバータの入力端及び第2Pチャネル型電界効果トランジスタのゲートをプルダウンする抵抗と;
を有して成ることを特徴とするバックゲート切替回路。
【請求項2】
前記電界効果トランジスタのゲートと第1端子との間に接続され、前記反転比較信号に応じてオン/オフ制御される第3Pチャネル型電界効果トランジスタと;
前記電界効果トランジスタのゲートと第2端子との間に接続され、前記比較部から直接ないしバッファを介して入力される前記比較信号に応じてオン/オフ制御される第4Pチャネル型電界効果トランジスタと;
を有して成ることを特徴とする請求項1に記載のバックゲート切替回路。
【請求項3】
第1端子と第2端子との間に挿入され、二次電池の充電制御手段として用いられる電界効果トランジスタと;
前記電界効果トランジスタのバックゲートを第1端子と第2端子のいずれか一方に接続する請求項1または請求項2に記載のバックゲート切替回路と;
を有して成ることを特徴とする充電制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の充電制御装置と、前記充電制御装置によって充電制御される二次電池と、を有して成ることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−94614(P2009−94614A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260816(P2007−260816)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】