パターン形成方法
【解決手段】被加工基板上に、酸不安定基含有繰り返し単位を有する樹脂、光酸発生剤又は光酸発生剤と熱酸発生剤、及び有機溶剤を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布、溶剤除去するレジスト膜形成工程、クロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用い高エネルギー線で露光後加熱し、酸不安定基に脱離反応させた後、現像しポジ型パターンを得る工程、露光又は加熱し、酸不安定基を脱離させアルカリ溶解性を向上させ、架橋形成により有機溶剤耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物による反転用膜形成工程、ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含むポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【効果】本発明のパターン形成方法によれば、解像性やプロセスマージンが拡大し、スループットが高く、ドライ現像のためのエッチング装置が不要で、ダブルダイポールリソグラフィーと同等の解像力が得られる。
【効果】本発明のパターン形成方法によれば、解像性やプロセスマージンが拡大し、スループットが高く、ドライ現像のためのエッチング装置が不要で、ダブルダイポールリソグラフィーと同等の解像力が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にクロムレスの位相シフトマスクマスクを用いて露光し、現像によってドットのポジ型パターンを形成し、酸と熱によって該パターンをアルカリ可溶にし、その上にアルカリに僅かに溶解する反転用膜を塗布し、アルカリ現像によって膜の表層部と上記ポジ型パターンを溶解させてネガ型パターンを形成させるポジネガ反転を用いたパターン形成において、超密ホールパターンを形成するパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFエキシマリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、F2リソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱された(非特許文献1:Proc.SPIE Vol.4690,xxix)。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいて、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させることが提案されている。193nmにおける水の屈折率は1.44であり、NA(開口数)1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能で、理論上はNAを1.44近くにまで上げることができる。当初、水温変化に伴う屈折率変化による解像性の劣化やフォーカスのシフトが指摘された。水温を1/100℃以内にコントロールすることと、露光によるレジスト膜からの発熱による影響もほぼ心配ないことが確認され、屈折率変化の問題が解決された。水中のマイクロバブルがパターン転写されることも危惧されたが、水の脱気を十分に行うことと、露光によるレジスト膜からのバブル発生の心配がないことが確認された。1980年代の液浸リソグラフィーの初期段階では、ステージを全て水に浸ける方式が提案されていたが、高速スキャナーの動作に対応するために投影レンズとウエハーの間のみに水を挿入し、水の給排水ノズルを備えたパーシャルフィル方式が採用された。水を用いた液浸によって原理的にはNAが1以上のレンズ設計が可能になったが、従来の屈折率系による光学系では巨大なレンズになってしまい、レンズが自身の自重によって変形してしまう問題が生じた。よりコンパクトなレンズ設計のために反射屈折(Catadioptric)光学系が提案され、NA1.0以上のレンズ設計が加速された。NA1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示され(非特許文献2:Proc.SPIE Vol.5040,p.724)、更にはNA1.35のレンズの開発も行われている。
【0004】
32nmノードのリソグラフィー技術としては、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーが候補に挙げられている。EUVリソグラフィーの問題点としてはレーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低ラインエッジラフネス(LWR)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられ、克服すべき問題が山積している。
【0005】
NA1.35レンズを使った水液浸リソグラフィーの最高NAで到達できるラインパターンの解像度はハーフピッチが40〜38nmであり、32nmには到達できない。そこで更にNAを高めるための高屈折率材料の開発が行われている。レンズのNAの限界を決めるのは投影レンズ、液体、レジスト膜の中で最小の屈折率である。水液浸の場合、投影レンズ(合成石英で屈折率1.5)、レジスト膜(従来のメタクリレート系で屈折率1.7)に比べて水の屈折率が最も低く、水の屈折率によって投影レンズのNAが決まっていた。最近、屈折率1.65の高透明な液体が開発されてきている。この場合、合成石英による投影レンズの屈折率が最も低く、屈折率の高い投影レンズ材料を開発する必要がある。LUAG(Lu3Al5O12)は屈折率が2以上であり、最も期待される材料ではあるが、副屈折率と吸収が大きい問題を持っている。また、屈折率1.8以上の投影レンズ材料が開発されたとしても屈折率1.65の液体ではNAは1.55止まりであり、35nmを解像できるが32nmは解像できない。32nmを解像するには屈折率1.8以上の液体と屈折率1.8以上のレジスト膜及び保護膜が必要である。屈折率1.8以上の材料で最も問題なのは高屈折率液体であり、今のところ吸収と屈折率がトレードオフの関係にあり、このような材料は未だ見つかっていない。アルカン系化合物の場合、屈折率を上げるためには直鎖状よりは有橋環式化合物のほうが好ましいが、環式化合物は粘度が高いために露光装置ステージの高速スキャンに追随できない問題も孕んでいる。酸化ハフニウムのパーティクルは193nmにおける透明性が高く、屈折率が2を超えるために、これを水やアルカン系溶液に分散させた高屈折率液体が検討されている。ところが、酸化ハフニウムを水に分散させて屈折率を1.8にまで上げるためには30質量%以上混ぜなければならないが、混合物の粘度が非常に高くなるために、高速スキャンは不可能である。また、屈折率1.8の液体が開発された場合、屈折率の最小がレジスト膜になるために、レジスト膜も1.8以上に高屈折率化する必要がある。
【0006】
ここで最近注目を浴びているのは1回目の露光と現像でパターンを形成し、2回目の露光で1回目のパターンの丁度間にパターンを形成するダブルパターニングプロセスである(非特許文献3:Proc.SPIE Vol.5754,p.1508(2005))。ダブルパターニングの方法としては多くのプロセスが提案されている。例えば、1回目の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて1回目の露光のスペース部分にフォトレジスト膜の露光と現像でラインパターンを形成してハードマスクをドライエッチングで加工して初めのパターンのピッチの半分のラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、1回目の露光と現像でスペースとラインが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクをドライエッチングで加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に2回目のスペースパターンを露光しハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工する。
【0007】
前述の方法では、ハードマスクを2回敷く必要があり、後者の方法ではハードマスクが1層で済むが、ラインパターンに比べて解像が困難なトレンチパターンを形成する必要がある。後者の方法では、トレンチパターンの形成にネガ型レジスト材料を使う方法がある。これだとポジパターンでラインを形成するのと同じ高コントラストの光を用いることができるが、ポジ型レジスト材料に比べてネガ型レジスト材料のほうが溶解コントラストが低いために、ポジ型レジスト材料でラインを形成する場合に比較してネガ型レジスト材料で同じ寸法のトレンチパターンを形成した場合を比較するとネガ型レジスト材料を使ったほうが解像性が低い。後者の方法で、ポジ型レジスト材料を用いて広いトレンチパターンを形成してから、基板を加熱してトレンチパターンをシュリンクさせるサーマルフロー法や、現像後のトレンチパターンの上に水溶性膜をコートしてから加熱してレジスト膜表面を架橋させることによってトレンチをシュリンクさせるRELACS法を適用させることも考えられるが、プロキシミティーバイアスが劣化するという欠点やプロセスが更に煩雑化し、スループットが低下する欠点が生じる。
【0008】
前者、後者の方法においても、基板加工のエッチングは2回必要なため、スループットの低下と2回のエッチングによるパターンの変形や位置ずれが生じる問題がある。
【0009】
エッチングを1回で済ませるために、1回目の露光でネガ型レジスト材料を用い、2回目の露光でポジ型レジスト材料を用いる方法がある。1回目の露光でポジ型レジスト材料を用い、2回目の露光でポジ型レジスト材料が溶解しない炭素数4以上の高級アルコールに溶解させたネガ型レジスト材料を用いる方法もある。これらの場合、解像性が低いネガ型レジスト材料を使うと解像性の劣化が生じる。
【0010】
1回目の露光と2回目の露光の間にPEB(post−exposure bake)、現像を行わない方法は、最もシンプルでスループットが高い方法である。この場合、1回目の露光を行い、位置をずらしたパターンが描画されたマスクに交換して2回目の露光を行い、PEB、現像、ドライエッチングを行う。しかしながら、1回目の露光の光エネルギーと2回目の光エネルギーが相殺されるために、コントラストが0になってパターンが形成されなくなる。この場合、2光子吸収の酸発生剤やコントラスト増強膜(CEL)を使って酸発生を非線形にしてやるとハーフピッチだけずらした露光でもエネルギーの相殺が比較的小さく、低いコントラストながらもずらした分だけピッチが半分になったパターンが形成できることが報告されている(非特許文献4:Jpn.J.App.Phys.Vol.33(1994),p.6874−6877,Part 1,No.12B,December,1994)。
【0011】
ダブルパターニングにおいて最もクリティカルな問題となるのは、1回目のパターンと2回目のパターンの合わせ精度である。位置ずれの大きさがラインの寸法のバラツキとなるために、例えば32nmのラインを10%の精度で形成しようとすると、単純には3.2nm以内の合わせ精度が必要となる。現状最新のArF液浸スキャナーの合わせ精度は、同一露光機でウエハー毎の値が8〜6nm程度である。ウエハー毎というのは、露光現像したレジストアライメントパターンに対して露光機でアライメントを行った場合であり、これでは大幅な改善が必要である。ウエハーを一度もチャックから外さずに1回目の露光と2回目の露光を行った場合は、チャック再装着による位置ズレをキャンセルできるためにアライメント精度が向上し、5〜4nm程度になる。ダブルパターニングの場合、ウエハーをチャックから外さずに複数回の露光を行うことは、アライメント精度が向上する分だけ実現可能な露光方法となり得る。上記2光子吸収レジストなど非線形エネルギー分布を形成してピッチを半分にする露光は、ウエハーをチャックから外さずに露光位置をピッチの1/4だけずらして連続露光を行う。波長193nmの露光に感光する非線形レジストやCELの報告は未だないが、これができ上がれば最小限のアライメントエラーで行うことができるダブル露光が現実味を帯びてくる。
【0012】
ダブルパターニングに限らず、細いスペースパターンやホールパターンを形成する技術としては、前述のネガ型レジスト材料を用いる方法や、サーマルフロー法、RELACS法が挙げられるが、ネガ型レジスト材料はレジスト材料自身の解像性が低い問題点と架橋システムを用いているために微小ホールパターンではブリッジが発生してしまう問題があり、サーマルフロー法とRELACS法は熱による寸法シュリンク時にバラツキが生じやすい問題があった。
【0013】
ここで、図1は、ポジ型フォトレジスト材料を用いて露光によってホールパターンを形成する方法を示すもので、(A)は基板100上の被加工基板101にフォトレジスト膜102を塗布、形成した状態、(B)はフォトレジスト膜102を所用パターンが形成されたフォトマスクを介して露光後、現像してフォトレジストパターン102aを形成した状態、(C)はこのフォトレジストパターン102aをマスクとして被加工基板101をエッチングした状態を示す。
【0014】
一方、ポジ型パターンを反転させてネガ型パターンを形成する方法は古くからよく知られており、例えば特開平2−154266号公報(特許文献1)、特開平6−27654号公報(特許文献2)にはパターン反転可能なナフトキノンレジスト材料を用いる方法、FIB露光で硬化させた部分をその後の全面照射によって残す方法(特許文献3:特開昭64−7525号公報)、ナフトキノンジアジドの感光剤が露光によって生じたインデンカルボン酸を、塩基存在下における加熱処理でインデンにすることによってアルカリ不溶にし、全面露光によってポジネガ反転を生じさせる方法(特許文献4:特開平1−191423号公報、特許文献5:特開平1−92741号公報)が提案されている。図2は、このポジネガ反転方法を示すもので、(A)は基板100上の被加工基板101にフォトレジスト膜102を塗布、形成した状態、(B)は所用パターンが形成されたフォトマスクを介してフォトレジスト膜102を露光、加熱した状態、(C)はフォトレジスト膜102をフラッド露光した状態、(D)は現像によるパターン反転を行ってパターン反転用膜103を形成した状態、(E)はパターン反転用膜103をマスクにして被加工基板101をエッチングした状態を示す。
【0015】
また、現像液を変えることによるポジネガ反転方法では、t−BOC(tert−ブトキシカルボニル基)で部分保護したヒドロキシスチレンの有機溶剤現像や、超臨界二酸化炭素による現像によってネガ型パターンを得る方法が提案されている。
【0016】
珪素含有材料を用いたポジネガ反転技術としては、ポジ型レジストパターンのスペース部分をシリコン含有膜で覆い、酸素ガスエッチングでエッチングすることによって、ポジパターン部分をエッチング除去してシリコン含有膜パターンを得るポジネガ反転を行い、微細ホールパターンを形成する方法が提案されている(特許文献6:特開2001−92154号公報、特許文献7:特開2005−43420号公報)。図3は、これを示すもので、(A)は基板100上の被加工基板101に下層膜104を介してフォトレジスト膜102を形成した状態、(B)は所定のパターンが形成されたフォトマスクを介して露光、現像し、フォトレジストパターン102aを形成した状態、(C)はフォトレジストパターン102aを架橋した状態、(D)は架橋フォトレジストパターン102aを覆って、下層膜104上にSOG膜105を形成した状態、(E)はCMP又はCF系ガスによるライトエッチングを行って架橋フォトレジストパターン102aを露頭させた状態、(F)は酸素ガス、水素ガスエッチングによりパターン反転させた状態、(G)はパターン化されたSOG膜105をマスクにして被加工基板101をエッチングした状態を示す。
【0017】
ラインパターンに比べてホールパターンは微細化が困難である。従来法で細かなホールを形成するために、ポジ型レジスト膜にホールパターンマスクを組み合わせてアンダー露光で形成しようとすると、露光マージンが極めて狭くなってしまう。そこで、大きなサイズのホールを形成し、サーマルフローやRELACS法等で現像後のホールをシュリンクする方法が提案されている。しかしながら、現像後のパターンサイズとシュリンク後のサイズが大きく、シュリンク量が大きいほど制御精度が低下する問題がある。ポジ型レジスト膜を用いてダイポール照明を用いてX方向のラインパターンを形成し、レジストパターンを硬化させ、その上にもう一度レジスト材料を塗布し、ダイポール照明でY方向のラインパターンを露光し、格子状ラインパターンのすきまよりホールパターンを形成する方法(非特許文献5:Proc.SPIE Vol.5377,p.255(2004))が提案されている。高コントラストなダイポール照明によるX、Yラインを組み合わせることによって広いマージンでホールパターンを形成できるが、上下に組み合わされたラインパターンを寸法精度高くエッチングすることはむずかしい。X方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクとY方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクを組み合わせてネガ型レジスト膜を露光してホールパターンを形成する方法が提案されている(非特許文献6:IEEE IEDM Tech.Digest 61(1996))。但し、架橋型ネガ型レジストは超微細ホールの限界解像度がブリッジマージンで決まるために、限界寸法がポジ型レジストに比べて大きいという欠点がある。
【0018】
白点に比べて、黒点のほうがより微細なパターンを形成できる。位相シフトマスクを用いてホールサイズを小さくしていくと、白い点が黒い点に反転し、非常に小さくコントラストの高い黒点が形成されるサイズが存在する。これにネガ型レジスト膜を組み合わせて微細な密集ホールを形成した例が報告されている(非特許文献7:Proc.SPIE Vol.4000,p.266(2000))。透過率が20%の高等化率のハーフトーン位相シフトマスクを用いると更にコントラストは向上し、同じようにネガ型レジスト膜と組み合わせた場合、マスクエラーファクター(MEEF)0が得られている(非特許文献8:Proc.SPIE Vol.5040,p.1258(2003))。
また、クロムレス位相シフトマスク(CPL)はハーフトーン位相シフトマスクよりもコントラストを上げる効果が高いことが報告されている(非特許文献9:Proc.SPIE Vol.1496,p.27(1990))。CPLをコンタクトホール、ラインアンドスペース、長軸ドット、2次元のゲートパターンに適用した結果が報告されている(非特許文献10:Proc.SPIE Vol.4691,p.446(2002))。
【0019】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、粗密バイアスが拡大する。特にホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはフォトレジスト材料の特性、即ち溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、フォトレジスト材料の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化する、フォトレジスト材料の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジ型レジストパターンを溶解させないアルコール溶媒のネガ型レジスト膜を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作成する方法(Pack and unpack;PAU)が提案されている(非特許文献11:Proc.SPIE Vol.5753,p.171(2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ズレが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平2−154266号公報
【特許文献2】特開平6−27654号公報
【特許文献3】特開昭64−7525号公報
【特許文献4】特開平1−191423号公報
【特許文献5】特開平1−92741号公報
【特許文献6】特開2001−92154号公報
【特許文献7】特開2005−43420号公報
【特許文献8】特開2007−171895号公報
【特許文献9】特開2006−293298号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Proc.SPIE Vol.4690,xxix
【非特許文献2】Proc.SPIE Vol.5040,p.724
【非特許文献3】Proc.SPIE Vol.5754,p.1508(2005)
【非特許文献4】Jpn.J.App.Phys.Vol.33(1994),p.6874−6877,Part 1,No.12B,December,1994
【非特許文献5】Proc.SPIE Vol.5377,p.255(2004)
【非特許文献6】IEEE IEDM Tech.Digest 61(1996)
【非特許文献7】Proc.SPIE Vol.4000,p.266(2000)
【非特許文献8】Proc.SPIE Vol.5040,p.1258(2003)
【非特許文献9】Proc.SPIE Vol.1496,p.27(1990)
【非特許文献10】Proc.SPIE Vol.4691,p.446(2002)
【非特許文献11】Proc.SPIE Vol.5753,p.171(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
非常に微細なホールパターンを形成する場合、ネガ型レジスト膜を用いてX方向とY方向のラインパターンのマスクを用いたダブルダイポールリソグラフィーにおいて、ポジ型レジスト膜に比べて解像性が低いことによる微細パターンが形成できない問題や、2回の露光が必要であるためにスループットが低下する問題がある。一方、解像性の高いポジ型パターンを得た後、ネガ型に反転することができればネガ型レジスト膜を使うことによる解像性の問題は解決され、1回の露光でダブルダイポールリソグラフィーと同程度の高解像性を得ることができる露光方法を適用することができれば、スループット低下の問題は解決される。
【0023】
上述した通り、高い解像性が得られるポジ型レジスト膜より得たポジ像をネガ型パターンに反転する方法は種々報告されている。特に上述の特開2005−43420号公報(特許文献7)では、ポジネガ反転をするためのシリコン系埋め込み材料が有機溶剤系組成物である場合についても言及している。それ以前の反転用膜形成材料に水溶性珪素樹脂を用いる方法では、ポジ型パターンが形成された基板に、もし有機溶剤系の反転用膜形成材料組成物を塗布すると、ポジ型パターンが塗布に使用される有機溶剤で崩壊するおそれがあったが、有機溶剤に耐性を与えるためのEB等によるキュアでレジストパターンを形成する樹脂間を架橋させて溶剤に対する不溶化を行うと、有機溶剤系の反転用膜形成材料組成物が利用でき、材料の選択幅が大幅に広げられることが開示されている。しかし、この処理を行った場合、反転するための最終段階でのレジストパターンの除去は、ポジ型パターンが不溶化されているために溶解による除去方法を使うことができず、現状の技術では反応性ドライエッチングによる方法を取らざるを得なくなる。そこで、反転用膜形成材料としてはシリコンやチタン等を含有する選択的にドライエッチング可能な材料を選択せざるを得ない。
レジストパターン上に塗布された珪素樹脂をフルオロカーボンガス等によるエッチングによってエッチバックしてレジストパターンを表面に露出させて酸素ガス及び水素ガスによるドライエッチングでイメージを反転させる。イメージの反転を行うためにエッチバックとエッチングの2つのエッチングとガス交換を行う必要があるために、この方法ではスループットが低下する。
【0024】
一方、特開2001−92154号公報(特許文献6)ではポジ型パターンをウェットエッチングによって除去することが有利であることが開示されており、その方法として、ポジ型パターンを得た後、特別な処理を行わずに有機シリコンの有機溶剤溶液を塗布して有機シリコンによる反転用膜を形成する方法が開示されている。また、この特開2001−92154号公報(特許文献6)ではインターミキシングによるポジ型パターンのダメージについては触れられておらず、有機シリコン組成物の調製に使用する溶剤は高極性のもの(例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エステルのようなヒドロキシ基を持つものや、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなエステル類、アセトンのようなケトン類等)も低極性のもの(例えばトルエン、クメン等)と同様に使用できることが記述されているが、実施例ではトルエン、クメンの例が挙げられているのみである。ところがこれの追試として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートや乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような高極性溶剤を含有する溶剤を反転用膜の溶剤に用いて、特別な処理を行わないポジ型パターン上に塗布してみたところ、パターンが塗布溶剤によって溶解を起こし、要求精度を満たすポジネガ反転を行うことはできなかった。そこで、この方法では事実上低極性溶剤に高い溶解性を示す反転用膜用材料しか採用することができず、ノボラックやポリヒドロキシスチレン系ポリマー、ヒドロキシ基やラクトンを多量に含有する脂環式ポリマーのような、基板密着性が高い極性基を高濃度に有する反転用膜用材料を採用することができないことが判明した。
【0025】
X方向の密集ラインとこれと交差するY方向の密集ラインによるダブルダイポールリソグラフィーでネガ型レジスト材料を用いると、ラインの限界解像度と同程度の極めて密集のホールパターンを得ることができる。ダブルダイポールリソグラフィーは、フルフィールドの露光を行う場合、2枚のマスクを交換して2回の露光が必要である。更に、密集パターンと孤立パターンが混在するロジックデバイスパターンを形成しようとする場合は、まず2回のダブルダイポールによる密集パターンを露光し、次いで不必要なパターンを露光する。合計3回の露光が必要となり、スループットの大幅な低下は免れない。
現状の露光装置のマスクステージは1個であり、1枚ごとのウエハーの露光で3枚のマスクを交換しながら露光を行うようにはなっていない。マスクの交換ごとにアライメントが必要であり、3回の露光の露光時間だけでなくマスクの交換とそのアライメントの時間が加わるために大幅なスループットの低下につながる。
【0026】
本発明は、上記事情を改善したもので、ポジ型レジスト膜を用い、1回の露光で密集したドットパターンを露光し、これを用いてポジネガ反転によってホールパターンを形成するパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために、本発明者らは種々の検討を行った結果、遮光部のない透明なクロムレス位相シフトマスクを用いて1回の露光でポジ型レジストパターンの超密集のドットパターンを形成し、ポジ型レジストパターン中の化学増幅ポジ型レジスト材料用樹脂の部分架橋化処理を行うことによって、必要な有機溶剤耐性を得られる程度で架橋を進行させ、かつアルカリ性ウェットエッチング液に溶解させることが可能であること、上記操作をポジネガ反転によるネガ型パターン形成方法に組み入れれば、反転用膜材料に、従来のシリコン系の材料のみならず、芳香族系樹脂や多環式化合物樹脂のような有機非シリコーン系樹脂の反転用膜形成材料が適用可能となることを知見した。
【0028】
ここで、本発明によれば、不必要なドットパターンがある場合は、必要なドットパターンだけを遮光したマスクを用いた連続露光を行い、現像することによって密集パターンと孤立パターンの混在したドットパターンを得る。連続した露光はウエハーチャックから一度も外すことなく行われるために、最小限のアライメントエラーで粗密のドットパターンが形成できる。ポジ型ドットパターンを形成した基盤を高温でベークすることによって、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を必要限度で与え、かつアルカリ性エッチング液への溶解性を確保することによって、最終的にネガ像を得る工程をアルカリ性エッチング液によるウェットエッチングで行うポジネガ反転によってホールパターンを形成するパターン形成方法を提供することができ、これによりシリコン系の材料のみならず、芳香族系樹脂や多環式化合物樹脂のような有機非シリコーン系樹脂の反転用膜形成用組成物の適用を可能とする技術を提供することができる。また、上記反転用膜形成用組成物の調製に使用する溶剤にヒドロキシ基を有するものや、エステル類、ケトン類のような高極性溶剤を使用することも可能とする技術を提供することができ、更に、これによって密集ホールと孤立ホールの両方のホールパターンを、広いマージンを持って形成することができるポジネガ反転を用いたパターン形成方法を提供することができる。
【0029】
従って、本発明は、下記のパターン形成方法を提供する。
請求項1:
被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有し、上記酸不安定基の脱離によってアルカリ現像液に可溶になる樹脂、高エネルギー線の露光により酸を発生する光酸発生剤又は該光酸発生剤と加熱により酸を発生する熱酸発生剤、及び有機溶剤を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜にクロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いて高エネルギー線を露光し、露光後加熱し、露光によって上記酸発生剤から発生した酸を樹脂の酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該工程で得られたポジ型パターンを露光もしくは加熱し、これにより生じた酸あるいは熱により該ポジ型パターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させてアルカリ溶解性を向上させ、かつ該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、上記ポジ型パターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記架橋が形成されたポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含むポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項2:
ドット形状のクロムレスのシフターを用い、該シフターのドット部分に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項3:
格子状に配列されたクロムレスのシフターを用い、該シフターの格子の隙間に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項4:
クロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いた密集パターンの露光と、不必要な密集パターンを除去させるための露光を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項5:
クロムレスの位相シフトマスクを用いた密集パターンの露光と、不必要な密集パターンを除去させるための露光が同じ露光ステージ上でステージからウエハーが離されることなく連続して行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項6:
上記レジストパターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程で得られる上記架橋形成ポジ型パターンのアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際、エッチング速度が2nm/秒を超えるものであり、かつ上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタノンから選ばれる1種以上を含む単独又は混合溶剤であり、上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性は、上記架橋形成ポジ型パターンを該反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に30秒間触れさせた時の膜減りが10nm以下である耐溶剤性を有するものである請求項1乃至5のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項7:
上記反転用膜形成用組成物は、芳香族骨格あるいは脂環式骨格を有するモノマーユニットを含む樹脂を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項8:
上記反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程と上記架橋形成ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程との間に、上記架橋形成ポジ型パターン上に積層された反転用膜を該ポジ型パターンが露出するまで除去する工程を含む請求項1乃至7のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項9:
上記ポジ型パターン上に積層された反転用膜を除去する工程は、ウェットエッチングである請求項8記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項10:
上記反転用膜は、アルカリ性ウェットエッチング液で処理した際、上記有機溶剤に対する耐性を与える工程後の架橋形成ポジ型パターンよりも溶解速度が遅く、かつ溶解性を示す材料であり、更に上記ウェットエッチングにアルカリ性ウェットエッチング液を用い、架橋形成ポジ型パターン上に積層された反転用膜を除去する工程と上記ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程は同時に行うものである請求項9記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項11:
上記反転用膜の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際の溶解速度は、0.02nm/秒以上2nm/秒以下である請求項10記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項12:
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記レジストパターンに有機溶剤に対する耐性を与える工程における加熱で酸を発生する成分を含有するものである請求項1乃至11のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項13:
上記加熱で酸を発生する成分は、光酸発生剤とは別に添加される熱酸発生剤である請求項12記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項14:
上記熱酸発生剤が下記一般式(P1a−2)で示されることを特徴とする請求項13記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化1】
(式中、K-はα位の少なくとも1つがフッ素化されたスルホン酸、又はパーフルオロアルキルイミド酸もしくはパーフルオロアルキルメチド酸である。R101d、R101e、R101f、R101gはそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていてもよい。R101dとR101e又はR101dとR101eとR101fとはこれらが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e又はR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基であるか、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
請求項15:
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記樹脂としてラクトン環を有する繰り返し単位と、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト材料である請求項1乃至14のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項16:
上記化学増幅ポジ型レジスト材料によるレジストパターンの架橋形成が該レジスト材料の樹脂中のエステル基、環状エーテル等の求電子性部分構造によることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項17:
ポジ型レジスト材料が、7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位と、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト材料であり、ポジ型パターン中に酸を発生させると共に熱を加えて、ポジ型パターン中の樹脂の酸不安定基を脱離させる際、該ポジ型パターン中の樹脂の架橋と酸不安定基の脱離とを同時に行うようにした請求項16記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項18:
7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位が、下記一般式(1)に示される繰り返し単位(a)で示される請求項17記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化2】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよいが、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の場合、式中のエステル基に連結した炭素原子は一級又は二級である。R3、R4、R5は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
請求項19:
酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位(b)である請求項15乃至18のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化3】
(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7は酸不安定基を示す。bは0<b≦0.8である。)
請求項20:
R7の酸不安定基が酸によって脱離する脂環構造の酸不安定基である請求項19記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項21:
上記ポジ型パターンはドットパターンを含むものであり、上記反転で得られるパターンはホールパターンを含むものである請求項1乃至20のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項22:
上記ポジ型パターンは密集ドットパターンと孤立ドットパターンの両方を含むものであり、上記反転で得られるパターンは密集ホールパターンと孤立ホールパターンを含むものである請求項1乃至21のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項23:
上記ポジ型パターンは密集ドットパターンを露光し、不必要なドットパターン部分を露光することによって密集ドットパターンと孤立ドットパターンを形成し、上記ポジネガ反転によって密集ホールパターンと孤立ホールパターンを形成するものである請求項22記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項24:
被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有する樹脂を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、加熱により不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、レジスト膜上に保護膜形成用組成物を塗布し、加熱により不要な溶剤を除去して保護膜を形成する工程、レジスト膜と投影レンズとの間に水又は屈折率が1以上の透明液体を介在させて該レジスト膜に高エネルギー線の繰り返し密集パターンを液浸露光し、更に不必要な密集パターンの未露光部を液浸露光し、露光後加熱により露光によって発生した酸を酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該ポジ型パターンを得る工程で得られたレジストパターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させると共に、該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、レジストパターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含む請求項1乃至23のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項25:
保護膜形成用組成物が、アミノ基を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物をベースにしたものであることを特徴とする請求項24記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項26:
保護膜形成用組成物が、アミン化合物を含有することを特徴とする請求項24又は25記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項27:
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上に珪素を含有する中間膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては炭化水素系の材料からなることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項28:
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては珪素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項29:
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上に有機反射防止膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては珪素を含有する材料からなることを特徴とする請求項28記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【0030】
ここで、本発明において、図5は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ80nm、ラインサイズ40nmのY方向ラインの光学像を示す。図6は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ80nm、ラインサイズ40nmのX方向ラインの光学像を示す。色が濃いほうが遮光部分、白いほうが光の強い領域である。図7は、Y方向ラインにX方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージである。XとYのラインの組み合わせで格子状のイメージができ上がるように思われるがそうではなく、光の弱い部分のパターンは円形である。円形のサイズが大きい場合は菱形形状で隣のパターンとつながりやすいが、円のサイズが小さいほど円形度合いが向上することが示されている。
【0031】
図7の光学像イメージを元に、レジスト膜のパターン形状シミュレーションを行ったのが図8である。ここで、Z方向はレジスト膜の溶解速度の対数を逆数にしているが、これがレジスト膜のパターンの形状を反映している。上記X、Yラインの2回の露光によるダブルダイポールリソグラフィーを用いれば、80nmピッチのポジ型レジスト膜のドットパターンが形成できることが示されている。このように2回のダブルダイポール露光を用いることによってラインパターンの限界解像度に近い80nmピッチのポジ型レジスト膜のドットパターンが形成可能になる。
【0032】
1度の露光でドットパターンを形成しようとした場合、従来の方法では図17に示されるようなレイアウトのドットパターンが配されたマスクが用いられてきた。ピッチ80nm、ドットサイズに+10nmのバイアスを付けた50nmのドットパターンのマスクを用いたときの光学イメージを図9に示す。ピッチが狭くなってくると漏れ光の影響でドットの遮光部のコントラストが低下し、図10に示されるシミュレーションのレジストパターンは図8に比べても明らかにレジストトップが三角形で膜減りが生じている。
【0033】
一方、図18に示されるレイアウトのパターンが配されたクロムレス位相シフトマスクを用いると、図11に示されるようにマスクパターンの四角の中心に微細な黒点が発生するため、図12に示されるように膜減りの小さなドットパターンが形成可能となる。
【0034】
図11は、ピッチ80nm、線幅30nmの格子部分にシフターを配したクロムレス位相シフトマスクの光学コントラストであり、図12は、これに対応するレジスト形状シミュレーション結果である。図8の場合のダブルダイポールに比べて露光量が多く必要であるが、むしろ図8よりも図12のほうがドットパターンの残膜率が向上している。図13は、ピッチ80nm、50nmドットのシフターを配したクロムレス位相シフトマスクの光学コントラストであり、図14は、これに対応するレジスト形状シミュレーション結果である。クロムレス位相シフトマスクのシフターの位置としては、格子部分と格子の隙間のドット部分とで光学コントラストに違いはなく、どちらを適用することも可能である。
【0035】
図15は、ピッチ78nm、線幅29nmの格子部分にシフターを配したクロムレス位相シフトマスクの光学コントラストであり、図16は、これに対応するレジスト形状シミュレーション結果であり、十分にパターンが形成可能であることが示されている。
【0036】
従来はホールを開ける場所に、透明なホールパターンを配したマスクを用いていたが、本発明のポジネガ反転技術では、クロムレス位相シフトマスクの格子状のラインの隙間にドットを形成し、これを反転させてホールパターンを形成する。従来法でホールパターンを形成するマスクも、本発明のドットを形成してこれを反転させてホールにする方法も、用いられるマスクのパターンは同じ格子状であるが、最終的に形成されるホールの位置は同じになる。
密集パターンと孤立パターンとが共存しているホールパターンを形成しようとする場合、密集ホールと孤立ホールの寸法差(プロキシミティーバイアス)が生じる。プロキシミティーバイアスが大きくなると、同一の露光量では孤立パターンと密集パターンのどちらか一方のパターンが形成されなくなる。輪帯照明、クロスポール照明、ダイポール照明等の斜入射照明を用いると密集パターンの解像性が向上するが、孤立パターンの解像度は向上しないかむしろ劣化するためプロキシミティーバイアスが増大する問題が生じる。図19は、図18のマスクを用いて形成される密集ドットパターンである。図20は、不必要なドットパターンを消去するためのマスクパターンを示す。図21では、密集ドットとドット消去マスクパターンとを重ねている。図22は、部分的に消去されたドットパターン、図23は、前記ドットパターンをポジネガ反転して形成したホールパターンを示す。図18のマスクと、図20のマスクの露光は1台のスキャナー内で連続して行ってもよいし、2台のスキャナーを並べて連続して露光してもよいし、図18のマスクの露光を行い、PEBと現像によって図19のドットを形成した後に図20のマスクを用いて部分的なドットの消去のための露光と現像を行ってもよい。1台のスキャナーの1つのステージ上で2つのマスクを用いて露光することは、ステージをウエハーが離れることなく2回の露光が行われるために最もアライメント精度が高いが1枚のウエハーを露光するために2枚のマスクが必要である。2枚のマスクを交換しながら連続して露光するためには、予めウエハーステージとアライメントされている2つのレチクルステージとアライメント機構を有する露光機が必要である。
【0037】
密集ドットを露光した後に不必要なドットを消去するための露光を行う方法では、繰り返しドットパターンの露光による同一寸法のドットを形成するために、その後のドット消去露光によってランダムピッチのドットパターンが形成されてもプロキシミティーバイアスが発生しない。
【0038】
前述のPAU(Pack and unpack)法は、ポジ型レジスト膜を用いて1回目の露光によって密集ホールを形成し、その上にポジ型レジストパターンを溶解させないアルコールや水に溶解させたネガ型レジスト膜をコートし、露光によって不必要なホールパターンを消去する。これも寸法が均一な密集パターンを始めに形成するために、プロキシミティーバイアスが発生しない。PAU法は、1回目の露光はホールパターンを露光するために、通常の露光方法に比べて解像力が向上することはなく、ただプロキシミティーバイアスが無くなるだけである。
しかしながら、本発明のパターン形成方法では、高コントラストな格子状ラインパターンのマスクを用いてドットパターン形成を行うために、ホールを形成する従来の方法に比べて解像性も大幅に向上する。
【発明の効果】
【0039】
ダブルダイポールリソグラフィーとネガ型レジスト膜を組み合わせて微細なホールを形成していた方法に比べて、本発明のパターン形成方法ではポジ型レジスト膜を用いて1回の露光でダブルダイポールと同じ解像性を有するドットパターンを形成し、これをポジネガ反転することによってホールパターンを形成することが可能になる。ネガ型レジスト膜に比べて、高解像なポジ型レジスト膜を用いることによって解像性やフォーカスマージン、露光マージン等のプロセスマージンが拡大する。ポジネガ反転は、現像液によるウェットエッチングによって行うために、従来のドライ現像に比べてスループットが高く、ドライ現像のためのエッチング装置を必要としない。ダブルダイポールリソグラフィーには2枚のマスクが必要であったが、本発明のパターン形成方法では、格子状パターンの位相シフトマスク1枚だけでダブルダイポールリソグラフィーと同等の解像力を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来の方法として、ポジ型フォトレジスト材料を用いて露光によってホールパターンを形成する方法を説明する断面図であり、(A)はフォトレジスト膜の形成、(B)はフォトレジスト膜の露光、現像、(C)は被加工基板エッチングを行った状態を示す。
【図2】従来の方法として、キノンジアジド−ノボラック樹脂のポジ型i線、g線レジスト材料を用いてイメージリバーサル法を説明する断面図で、(A)はフォトレジスト膜の形成、(B)はフォトレジスト膜の露光、加熱、(C)はフラッド露光、(D)は現像によるパターン反転、(E)は被加工基板エッチングを行った状態を示す。
【図3】従来の方法として、現像後のレジスト膜のハードニングとSOG膜の埋めこみによるイメージリバーサル法を説明する断面図で、(A)はフォトレジスト膜の形成、(B)はフォトレジスト膜の露光、現像、(C)はフォトレジスト膜の架橋、(D)はSOG膜塗布、(E)はCMP又はCFガスによるライトエッチング、(F)は酸素ガス、水素ガスエッチングによるパターン反転、(G)は被加工基板エッチングを行った状態である。
【図4】本発明のパターン形成方法を説明する断面図であり、(A)は、基板上に被加工基板、レジスト膜を形成した状態、(B)は、レジスト膜を露光、現像した状態、(C)は、レジストパターンを酸と熱によって脱保護し、架橋した状態、(D)は、パターン反転用膜を塗布した状態、(E)は、パターン反転用膜を現像し、ポジネガ反転した状態、(F)は、ポジネガ反転したパターンを用いて被加工基板をエッチングした状態を示す。
【図5】NA1.3レンズでのY方向ライン、ダイポール照明、s偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクを用いた場合の光強度を示す。色が黒いほど光強度が弱い。
【図6】NA1.3レンズでのX方向ライン、ダイポール照明、s偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクを用いた場合の光強度を示す。色が黒いほど光強度が弱い。
【図7】NA1.3レンズでの図5のY方向ラインと図6のXラインを重ねた、ダブルダイポール露光の光強度を示す。色が黒いほど光強度が弱い。
【図8】NA1.3レンズでのダブルダイポール照明露光を行った場合のレジスト形状シミュレーションを示す。Z軸はレジストの溶解速度の対数を逆数にしたもので、ドットパターンのレジスト形状が現されている。この時の露光量が20mJ/cm2である。
【図9】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ80nm、50nmドットパターンの光学像である。
【図10】図9の光学像におけるレジスト形状シミュレーションである。
【図11】NA1.3レンズ、クロスポール照明、ピッチ80nm、30nmラインのシフターがクロムレス位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ80nm、50nmドットパターンの光学像である。
【図12】図11の光学像におけるレジスト形状シミュレーションである。
【図13】NA1.3レンズ、クロスポール照明、ピッチ80nm、50nmドットのシフターがクロムレス位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ80nm、50nmドットパターンの光学像である。
【図14】図13の光学像におけるレジスト形状シミュレーションである。
【図15】NA1.3レンズ、クロスポール照明、Azimuthally偏光照明でのピッチ78nm、幅29nmのラインのシフターがクロムレス位相シフトマスクの光学像である。
【図16】図15の光学像におけるレジスト形状シミュレーションである。
【図17】ドットパターンが配されたレイアウトのマスクパターンである。
【図18】クロムレス位相シフトマスクパターンである。
【図19】露光と現像によって形成された密集ドットパターン(黒色が残しパターン)である。
【図20】不必要なドットパターンを消去するためのマスクパターンである。遮光部分を黒色で示す。
【図21】密集ドットと、ドット消去マスクを重ねた図である。
【図22】ドット消去露光によって現像されてでき上がった粗密混在のドットパターンである。
【図23】ポジネガ反転によって形成された粗密混在のホールパターンである。
【図24】実施例に用いたドット形成用とドット消去用のマスクを示し、(A)は密集1:1ドット形成用マスク、(B)は不必要なドット消去用マスク、(C)は(A)と(B)を重ねた図である。(D)は現像後に形成された1:1ドットパターン、(E)は1:3ドットパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明のパターン形成方法は、上述したように、被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有し、上記酸不安定基の脱離によってアルカリ現像液に可溶になる樹脂、高エネルギー線の露光により酸を発生する光酸発生剤又は該光酸発生剤と加熱により酸を発生する熱酸発生剤、及び有機溶剤を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜にクロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いて高エネルギー線を露光し、露光後加熱し、露光によって上記酸発生剤から発生した酸を樹脂の酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該工程で得られたポジ型パターンを露光もしくは加熱し、これにより生じた酸あるいは熱により該ポジ型パターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させてアルカリ溶解性を向上させ、かつ該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、上記ポジ型パターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記架橋が形成されたポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含むポジネガ反転を用いたパターン形成方法である。
【0042】
この場合、ドット形状のクロムレスのシフターを用い、該シフターのドット部分に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成すること、あるいは、格子状に配列されたクロムレスのシフターを用い、該シフターの格子の隙間に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することが好ましい。
【0043】
このように、本発明はクロムレス位相シフトマスクを介して露光するものであるが、この場合、クロムレス位相シフトマスクは吸収を持たない位相シフトマスクであり、露光波長に対して位相を180度反転させる膜厚だけ石英基板を彫り込んだり、又は石英基板に位相を180度反転させる膜厚だけの透明膜のシフターを積層させる。
クロムレス位相シフトパターンを適用させるのは、マスク全面でも構わないが、マスク全面が透明基板の場合、マスク自体のアライメントやウエハーとのアライメントマークが転写できない問題があるため、目的とする微細なパターン以外のところはCrやハーフトーン位相シフトマスク等の遮光帯としておくことが好ましい。
【0044】
図17は、従来法でドットを形成するためのマスクパターンである。ドットを形成する部分に遮光帯が配されており、遮光帯がCrのバイナリーマスク及びハーフトーン位相シフトマスクが用いられている。Crマスクよりも、透過率6%程度のハーフトーン位相シフトマスクのほうがコントラストが向上するので好ましく用いられている。
【0045】
本発明のクロムレス位相シフトマスクのパターン配列は図18に示される。四角の中がシフターであっても、格子部分がシフターであってもよく、図12と14の比較で示されるように効果としては同じである。四角の中がシフターであっても、格子部分がシフターであっても四角の中心部分に非常に強い遮光部(黒点)を形成することができる。
クロムレスシフターが配された格子のライン幅は格子のピッチの半分よりも狭いほうが即ち四角のサイズがピッチの半分よりも広いほうが、より遮光性の高い黒点が格子の隙間部分に形成できる。ピッチ80nmの格子の場合は、ライン幅として40〜20nmが好ましく、30nm程度が最適である。この時に格子の隙間のサイズは一辺が50nm程度の四角形となる。なお、格子のライン幅、格子のピッチは、例えば図18に示した通りである。
【0046】
露光機の照明としては、X、Y格子のマスクの場合は、クロスポール照明と、X、Y偏光照明を組み合わせるのが最も好ましい。X、Y偏光照明の代わりにAzimuthally偏光照明でもよい。Azimuthally偏光照明はリング状の輪帯偏光照明であるが、X、Y方向の十字の最外郭だけを切り出したクロスポール照明との組み合わせは、X、Y偏光照明の効果は同じである。
【0047】
斜め45度の格子マスクを用いた場合は、斜め45度のクロスポールと、Azimuthally偏光照明を組み合わせる。クロスポールの代わりに輪帯照明とAzimuthally偏光照明を組み合わせてもよいし、ヘキサポールとAzimuthally偏光照明を組み合わせてもよいし、オクタポールとAzimuthally偏光照明を組み合わせてもよい。中心部分に小さな円形又は輪帯を有する輪帯照明、クロスポール、ヘキサポール又はオクタポールを用いてもよい。このような照明は、密集パターンと孤立パターンを1回の露光で同時に形成することができる。偏光照明は用いなくてもよいが、偏光照明を用いたほうがより微細なピッチのパターンを形成できる。最も微細なピッチを形成できるのがX、Y格子マスクと、クロスポール(それも最外郭部分を35度以下、好ましくは25度以下の角度で切り出した)と、X、Y偏光照明の組み合わせである。クロスポール照明の代わりにX、Yダイポールの2回露光を行うこともできる。実質的な効果はクロスポールとほぼ同じであるが、2回のダイポール露光はスループットの面で不利である。
【0048】
ラインパターンの原理的な解像限界は、波長をレンズのNAと4で割った値である。波長193nmArF露光でNAが1.30の場合、限界解像度は37.1nmである。実際には、偏光照明の変更率は100%ではないし、ダイポール照明の切り出し角度を20%よりも小さくすることは難しいので、理想的な光学像を形成することは不可能であるし、非常に微細なパターンではレジスト膜の解像性能の影響も大きいため、実際の限界解像度はピンポイントで38nm、ある程度マージンを持った解像限界は39nmである。
【0049】
しかしながら、本発明のパターン形成方法を用いれば、図16に示すように2次元パターンにもかかわらず、驚くべきことにラインと同じハーフピッチ39nmのドットが解像可能であることが示されている。しかも露光量を上げるに従ってドットの真円性が向上し、ポジネガ反転技術と組み合わせることによって通常のホール形成では最も苦手とするハーフピッチよりも狭いホールの形成が可能になるのである。
【0050】
解像性の高いポジ型レジスト材料を利用して、ポジ型レジスト材料をそのまま使ったのでは光学的に不利なパターンを、ポジネガ反転を用いて形成する試みは上述のようにすでにいくつか開発されてきた。この開発過程で克服された課題は、一旦形成されたポジ型のパターン上に反転用膜を成膜する際に、得られたパターンを崩壊させることなく新たな膜を成膜するためにはどうすればよいかということが、その一つである。この課題は、初めは反転用膜形成用組成物としてポジ型パターンが溶解しない水性の組成物を用いることが行われたが、反転用膜材料が水溶性という極めて限られたものとなってしまうことから、特開2005−43420号公報(特許文献7)ではEBキュアによってポジ型パターンを架橋し、溶剤や現像液に対して不溶化した後に反転用膜を形成することが提案された。また、もう一つの課題は、反転用膜に対してポジ型パターンをどのように選択的に除去するかであるが、これは特開2005−43420号公報(特許文献7)にあるように、反転用膜に酸素によるドライエッチングに耐性のあるSOGや、有機シリコーン材料を用いることで、選択的な除去を行ってきた。
【0051】
一方、特開2005−43420号公報(特許文献7)に示されたようなレジスト膜が高エネルギー光照射によって架橋、不溶化することは、化学増幅型レジスト材料開発初期に、高すぎる照射エネルギーを化学増幅型レジスト膜に照射した場合の現象として知られていた。即ち、化学増幅型レジストポリマーを構成するコンポ―ネントであるポリヒドロキシスチレン単位が強い光の照射を受けると、フェニル基が結合したメチンの水素ラジカルが脱離し、生じたラジカルによって樹脂間に架橋が形成されて、樹脂が不溶化する現象である。この架橋形成を引き起こすラジカル生成はスチレン骨格に限らず、ポリアクリル酸骨格でも同様に起こるものであると考えられ、更に、ヘテロ原子に結合したメチレンでも同様の架橋形成が起こるものと考えられる。しかし、本発明者らは、この架橋形成によるレジスト膜の不溶化は、光照射を段階的に行った場合、一気に不溶化するのではなく、溶解速度がやや下がる点を経て不溶化することを観察し、その利用を考えた。つまり、初めに観測される溶解速度の低下は、限定された範囲で分子内あるいは分子間の架橋が形成される効果と考え、また、限定された範囲で架橋された場合、アルカリ現像液に対する溶解速度を完全に失わずに、塗布溶剤のような有機溶剤に耐性が得られる可能性がある。そこで、そのようなアルカリ現像液に対する溶解速度を完全に失わずに、膜形成用組成物の溶剤として一般的に使用されるような有機溶剤に耐性を持つパターンの作成を検討したところ、そのようなパターンが実現可能であることを見出した。
【0052】
上記のようにポジ型パターンにアルカリ現像液に対する溶解性を完全に失わせずに、有機溶剤に耐性を与える方法を、ポジネガ反転を用いるパターン形成方法に組み入れてやると、次のようなポジ型パターンをネガ型パターンに反転させるパターン形成方法が可能になる。即ち、通常のポジ型パターンを得る方法に従い、まず化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布後、プリベークを行ってレジスト膜を得る。次に、パターン露光を行った後、露光後加熱を行って露光部の樹脂の酸不安定基を脱離させることにより露光部をアルカリ現像可溶性とする。更にアルカリ現像液による現像を行い、ポジ型パターンを得る。次に、ここで得たポジ型パターンに対して上述のアルカリ現像液に対する溶解速度を完全に失わずに、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程を行う。次いで反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を得たポジ型パターンが形成された基板に、該有機溶剤溶液である反転用膜形成用組成物を塗布して反転用膜を形成する。この際、反転用膜はポジ型パターンの間隙を完全に埋め込むように塗付されるが、ポジ型パターン上にもある程度積層される形で膜が成膜される場合もある。このような場合には、特開2001−92154号公報(特許文献6)や特開2005−43420号公報(特許文献7)に説明されているように、反転用膜を形成する工程の後、パターン上に積層された反転用膜を除去する工程を経て、ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で除去する工程を行うと、ポジ型パターンがなかった部分の反転用膜のみが残り、ポジネガ反転された反転用膜パターンが得られる。なお、アルカリ性ウェットエッチング液はポジ型パターンを溶解するためのものであり、必要に応じて濃度調整を行ってもよいが、上記ポジ型パターンを得るための現像液が使用できる。
【0053】
本発明の工程によるポジネガ反転を用いるパターン形成方法では、ポジ型パターンの除去に、従来の酸素によるドライエッチングを用いる必要がなく、大きく作業の簡便化が達成できる。更にこの方法によれば、反転用膜は芳香族系有機高分子材料による反射防止膜や、多層レジスト法に使用する有機下層膜をはじめとする通常の有機膜、特に当業者によく知られている芳香族骨格を持つ単位を多量に含有する樹脂、例えばノボラック系の樹脂(例えば、特開2007−171895号公報(特許文献8))や、ポリスチレン系の樹脂、アントラセン環やナフタレン環を含有するビニルエーテル系あるいはアクリル系の樹脂、またArFレジスト材料に使用されるような多分岐を持つ(いわゆる脂肪族多環式骨格)樹脂を含有する有機膜(例えば、特開2006−293298号公報(特許文献9))を反転用膜として使用することができる。もちろん、これら反転用膜は、ポジ型パターンとの間でアルカリウェットエッチング液に対するエッチング選択性をとれる程度の溶解速度差を有していれば、反射防止膜のように成膜時に架橋を形成して有機溶剤に不溶化するものであっても、そのような不溶化はしないものでもよい。もし、これら有機系材料膜を使用した場合には、反転によって得られた反転用膜パターンが従来の有機レジストパターンと同様に、金属珪素や珪素酸化物基板を加工するためのエッチングマスクとして直接利用できる。更によく知られるように、上記のような有機系の反転用膜を用いれば、金属珪素や珪素酸化物以外にも、珪素窒化物、珪素窒化酸化物、チタニウム酸化物、チタニウム窒化物、ゲルマニウム酸化物、ハフニウム酸化物による膜や基板の加工も可能である。
【0054】
また、更にもし反転用膜に後述のようなアルカリ微溶解性を持つものを使用した場合には、上述のポジ型レジストパターン上に積層した反転用膜の除去工程に、従来のようなドライエッチングによる方法や有機溶剤による剥離方法を用いずにアルカリ性ウェットエッチング液で除去することができる。そこで、この方法を採った場合には、レジストパターン上に積層した反転用膜とレジストパターンを1回の操作により同時に除去することが可能となることから、全体として大幅な工程の短縮が達成される。
【0055】
上述のようにアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を完全に失わせることなく、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性をポジ型パターンに与えることは、反転用膜の塗付成膜中にポジ型パターンが溶解によって変形あるいは崩壊してしまうことを防止する点であるが、これを適度なエネルギー量の高エネルギー線の照射で行うことができることは上述の通りである。しかし、本発明者らは、光や照射による架橋形成は、照射量の許容範囲や照射の均一性の問題から制御しにくい面もあるため、他の架橋形成方法の探索を行ったところ、熱により上記有機溶剤耐性を与える程度の限定的な架橋が可能であること、特に酸存在下での加熱によって、ラクトン骨格をはじめとする強い反応条件下で架橋形成能を持つユニットを持つレジスト材料により得たポジ型パターンを用いた場合には、目的通りの制御が比較的容易にできることを見出した。
【0056】
上述の熱によるアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わせることなく、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に耐性を与える工程は、用いるレジスト材料によって発生させるべき酸の量や、加熱すべき温度の最適値は異なるものの、その条件は次のような目安で設定することで本発明のパターン形成方法が容易に実施できる。即ち、使用するレジスト膜に対して適切な範囲で光やEB(電子線)等の高エネルギー線を照射後に熱を与えて、又は加熱のみによって、レジスト膜中に酸を発生させ、それを用いて樹脂の酸不安定基を脱離させてアルカリ性溶液に対する溶解性を与える。この際に同時に光又は熱によって部分的な架橋が形成され、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性が与えられる。上記で与えるべき溶解性の目安は、通常、レジスト膜のアルカリ現像に使用される2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際、エッチング速度が2nm/秒を超えるものとすることが好ましい。また、上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性は、上記耐性(架橋)処理後のレジストパターンを該反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に30秒間、より好ましくは60秒間触れさせた時の膜減りが10nm以下である程度の耐溶剤性を与えてやると、上述のような反転用膜を塗布した際にポジ型レジスト膜より得られたパターンが致命的なダメージを受けてしまい、望ましい形状のネガ型に反転されたパターンが得られなくなるという問題の発生を防止できる。なお、この処理条件を求める際には、上述の一連工程のうち、ポジ型パターン形成を行うためのパターン露光のみを省いてレジスト塗布、プリベーク、露光後加熱を行ったバルク膜に、上記アルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わせることなく、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に耐性を与える工程候補となる条件を適用したものを用いれば、上述の2つの溶解速度を簡便に得られる。
【0057】
また、本発明が特に有効に用いることができる反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤は、後述の反転用膜形成用樹脂をよく溶解し、塗布性に優れる、上述のヒドロキシ基を持つ溶剤や、エステル類、ケトン類等であるが、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタノンから選ばれる1種以上を含有する単独又は混合溶剤である。更に、これらの溶剤に炭素数3〜10のアルコールや、トルエン、キシレン、アニソール等を加えてもよい。そこで、上記の反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性をポジ型パターンに与える基準として、それらの中から選んだ1種以上の溶剤による単独及び混合溶剤に対して30秒間、より好ましくは60秒間触れさせた時の膜減りが10nm以下である程度の耐溶剤性を持つような処理がされたものであれば、ユニバーサルに使用することができ、特に好ましい。
【0058】
ポジ型パターンに対する上記の加熱処理は、部分的な架橋を高エネルギー線の照射で行う場合には、加熱によって行う反応は酸不安定基の分解だけであるため、ポジ型パターンを得る際に使用した露光後加熱の温度、あるいはそれよりもやや低い温度による加熱でも十分である。しかし、高エネルギー線を用いない場合、あるいは高エネルギー線は酸を発生させることを主たる目的で使用、即ち、前工程でのパターン露光と同程度のエネルギー量を使用し、架橋は主に熱による反応で形成させる場合には、レジスト膜の成膜時に用いるプリベーク温度や露光後加熱温度よりも高い温度が設定されることが好ましい。この温度が前行程での加熱よりも低い設定とするような材料の場合、ポジ型レジスト膜の解像性自体が落ちる危険性がある。
【0059】
このポジネガ反転方法は、次のような場合で有利に利用できる。即ち、ポジ型パターンは、オーバー露光量によって、より細いパターンが形成可能である。そこで、例えば露光限界以下の孤立スペース(トレンチパターン)の形成は技術的に極めて難しいが、オーバー露光を利用して通常の露光限界よりも細いパターンを形成し、これを本発明のパターン形成方法で反転してやることで極めて細いトレンチパターンを形成することができる。
更に、微細なホールパターンはトレンチパターンよりも更に技術的な困難さがあるが、オーバー露光によって細かなドットパターンを形成し、これを本発明のパターン形成方法で反転してやることで非常に小さいサイズのホールを形成することが可能となる。
【0060】
以下に本発明の代表的な例として、反転用膜にアルカリ性ウェットエッチング液(レジストパターンの現像に使用するアルカリ現像液と実質同義であり、以下アルカリ現像液とも記す)に対する微溶解性を持つ材料を用いる場合を用いて、本発明を更に詳細に説明する。
【0061】
本発明の最も好ましい態様のパターン形成方法は、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有し、上記酸不安定基を脱離させ、更に架橋させて得られた架橋物のアルカリ現像液に対する溶解速度が2nm/秒を超える高分子化合物(ベース樹脂)を含むポジ型レジスト材料を基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で上記レジスト膜の所用部分を露光し、加熱処理後に上記アルカリ現像液を用いて上記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターン中に酸を発生させると共に熱を加えて、該レジストパターン中の上記高分子化合物の酸不安定基を脱離させると共に該高分子化合物を架橋する。次いで、その上を覆って上記基板上に上記アルカリ現像液に0.02nm/秒以上2nm/秒以下の範囲の溶解速度を持つ反転用膜を形成し、上記アルカリ現像液によってこの膜の表面を溶解させると共に、上記レジストパターンを溶解消失させて、上記反転用膜にレジストパターンを反転させたパターンを形成する。
この場合、レジストパターンとしてドットパターンを形成し、これを反転させてホールパターンを形成することができる。
【0062】
反転用膜にはエッチング耐性が必要であるが、ポジ型レジスト膜は最終的にはホールパターンが形成されるときには除去されるために、エッチング耐性は必要でなく、この点からは脂環構造は必ずしも必要ではない。しかし、ポジ型レジストパターンを有機溶剤に不溶で、かつアルカリ現像液可溶に極性変更するときに150℃以上の高温でベークする必要があるため、150℃以上のベークでもパターンが熱フローを起こさないようにするための耐熱性が必要である。耐熱性を向上させるためには脂環構造の導入が効果的であり、ポリマーのガラス転移点を150℃以上にするために脂環構造を導入することが好ましい。
【0063】
上記架橋形成は該樹脂中のエステル基、環状エーテル等の求電子性部分構造によることが好ましい。酸と加熱により、エステル交換、ラクトン環の開環とエステル化及びエーテル化、環状エーテルの開環とエーテル化及びエステル化等の反応により架橋反応が進行する。
【0064】
本発明に係るパターン形成方法に用いられるポジ型レジスト材料のベース樹脂に使用される高分子化合物としては、ラクトン環を有する繰り返し単位、特には7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位、好ましくは下記一般式(1)に示される繰り返し単位(a)を有するものが有利に使用できる。このものはエステル基と環状エーテルの両方を単一繰り返し単位内に有するために、架橋反応の反応性が高い。更に、この単位は密着性単位として使用されるものであり、ベース樹脂に更に追加の構成を加えなくても本発明のパターン形成方法が好ましく適用可能である。
【0065】
【化4】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよいが、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の場合、式中のエステル基に連結した炭素原子は一級又は二級である。R3、R4、R5は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【0066】
ここで、炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、シクロペンチレン基、n−ヘキシレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0067】
また、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0068】
一般式(1)で示される繰り返し単位(a)を得るためのモノマーとしては、下記一般式Maで示され、具体的には下記に例示される。ここで、R1〜R5は前述と同じである。
【0069】
【化5】
【0070】
【化6】
【0071】
本発明の工程では、露光と現像によって第1のパターン形成後、酸と加熱によって酸不安定基を脱保護すると共に架橋し、その上に適度なアルカリ溶解性を有する膜(反転用膜)を塗布し、アルカリ現像する。
第1のパターンは、酸不安定基を有する繰り返し単位の該酸不安定基の脱保護によってアルカリに溶解し、7−オキサノルボルナン環の架橋によって溶剤(反転用膜を形成するための材料の溶剤)に不溶化する膜になる。よって、第1のパターン上に、反転用膜材料を有機溶剤に溶解したパターン反転用膜溶液を塗布しても、第1のパターンはパターン反転用膜材料とミキシングしない。
次に、アルカリ現像液による処理によって、反転用膜が第1のパターン部分まで膜の表面が溶解したところで、第1のパターンの溶解が始まり、画像反転が起こる。
【0072】
オキシランやオキセタンを有する繰り返し単位を有する高分子化合物をレジスト用ベースポリマーとして用いた場合、オキシラン環やオキセタン環は、酸による開裂反応の速度が非常に速いために、90〜130℃程度のポストエクスポージュアベーク(PEB)等のレジストプロセスの温度で架橋が進行するためにアルカリに不溶となり、本発明におけるポジ型レジスト材料として機能しない。一方、7−オキサノルボルナン環の1,4−エポキシ結合は、オキシラン環やオキセタン環に比べて酸による開裂反応の反応性が低いために、PEBによる加熱温度領域では架橋が進行しない。7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位は、現像までのプロセスでは酸に対して安定で、親水性基として密着性やアルカリ溶解性向上のための機能を発揮する。しかしながら、現像後のパターンのフラッド露光あるいは加熱により発生した酸と170℃以上の加熱によって7−オキサノルボルナン環の1,4−エポキシ結合が開環して架橋反応が進行し、上記溶剤に不溶になると同時に酸と熱により上記酸不安定基を有する繰り返し単位の該酸不安定基の脱保護が起こり、アルカリ溶解性が増す。酸を発生させるために熱酸発生剤をレジスト材料中に添加してもよいし、現像後のパターン全面に波長400nm以下の紫外線を照射してもよい。
【0073】
本発明のパターン形成方法に用いるポジ型レジスト材料に用いるベース樹脂としては、上記一般式(1)で示される架橋性の繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位(b)を含む高分子化合物を使用することが好ましい。
【0074】
【化7】
(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7は酸不安定基を示す。bは0<b≦0.8の範囲である。)
【0075】
ここで、一般式(2)に示す繰り返し単位(b)を得るためのモノマーMbは、下記式で示される。
【化8】
(式中、R6、R7は上記の通りである。)
【0076】
一般式(2)中、R7で示される酸不安定基は種々選定されるが、特に下記式(AL−10),(AL−11)で示される基、下記式(AL−12)で示される三級アルキル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等が挙げられる。
【0077】
【化9】
【0078】
式(AL−10),(AL−11)において、R51、R54は炭素数1〜40、特に1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。R52、R53は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよく、a5は0〜10、特に1〜5の整数である。R52とR53、R52とR54、又はR53とR54はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子と酸素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
R55、R56、R57はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。あるいはR55とR56、R55とR57、又はR56とR57はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
【0079】
式(AL−10)に示される化合物を具体的に例示すると、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等、また下記一般式(AL−10)−1〜(AL−10)−10で示される置換基が挙げられる。
【0080】
【化10】
【0081】
式(AL−10)−1〜(AL−10)−10中、R58は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R59は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R60は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。a5は上記の通りである。
【0082】
前記式(AL−11)で示されるアセタール化合物を(AL−11)−1〜(AL−11)−34に例示する。
【0083】
【化11】
【0084】
【化12】
【0085】
また、酸不安定基として、一般式(AL−11a)あるいは(AL−11b)で表される基が挙げられ、該酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【0086】
【化13】
【0087】
上記式中、R61、R62は水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R61とR62は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR61、R62は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R63は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b5、d5は0又は1〜10の整数、好ましくは0又は1〜5の整数、c5は1〜7の整数である。Aは、(c5+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0088】
この場合、好ましくはAは二〜四価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c5は好ましくは1〜3の整数である。
【0089】
一般式(AL−11a),(AL−11b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(AL−11)−35〜(AL−11)−42のものが挙げられる。
【0090】
【化14】
【0091】
次に、前記式(AL−12)に示される三級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、tert−アミル基等、あるいは下記一般式(AL−12)−1〜(AL−12)−16で示される基を挙げることができる。
【0092】
【化15】
【0093】
上記式中、R64は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R65、R67は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R66は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。
【0094】
更に、酸不安定基として、下記式(AL−12)−17、(AL−12)−18に示す基が挙げられ、2価以上のアルキレン基、又はアリーレン基であるR68を含む該酸不安定基によってベース樹脂が分子内あるいは分子間架橋されていてもよい。式(AL−12)−17、(AL−12)−18のR64は前述と同様、R68は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又はアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。b6は1〜3の整数である。
【0095】
【化16】
【0096】
なお、上述したR64、R65、R66、R67は酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有していてもよく、具体的には下記式(AL−13)−1〜(AL−13)−7に示すことができる。
【0097】
【化17】
【0098】
特に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−19に示されるエキソ体構造を有するものが好ましい。
【0099】
【化18】
(式中、R69は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R70〜R75及びR78、R79はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキル基等の一価の炭化水素基を示し、R76、R77は水素原子を示す。あるいは、R70とR71、R72とR74、R72とR75、R73とR75、R73とR79、R74とR78、R76とR77、又はR77とR78は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環(特に脂環)を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与するものは炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基等の2価の炭化水素基を示す。またR70とR79、R76とR79、又はR72とR74は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0100】
ここで、一般式(AL−12)−19に示すエキソ体構造を有する下記繰り返し単位
【化19】
を得るためのエステル体のモノマーとしては、特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に示すものを挙げることができるが、これらに限定されることはない。なお、R111、R112は互いに独立に水素原子、メチル基、−COOCH3、−CH2COOCH3等を示す。
【0101】
【化20】
【0102】
更に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−20に示されるフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基を挙げることができる。
【0103】
【化21】
(式中、R80、R81はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。又は、R80、R81は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の脂肪族炭化水素環を形成してもよい。R82はフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルから選ばれる2価の基を示す。R83は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。)
【0104】
フランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基で置換された繰り返し単位
【化22】
を得るためのモノマーとしては、下記に例示される。なお、R112は上記の通りである。また、下記式中Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。
【0105】
【化23】
【0106】
【化24】
【0107】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベースとなる高分子化合物は、一般式(1)の繰り返し単位(a)と一般式(2)に示す繰り返し単位(b)を有することが好ましいが、更にはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、ラクトン環、カルボキシル基、カルボン酸無水物基等の密着性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位cを共重合させてもよい。
繰り返し単位(c)を得るためのモノマーとしては、具体的に下記に挙げることができる。
【0108】
【化25】
【0109】
【化26】
【0110】
【化27】
【0111】
【化28】
【0112】
【化29】
【0113】
繰り返し単位(c)中、α−トリフルオロメチルアルコール基やカルボキシル基を有するものは、現像後のパターンの加熱後のアルカリ溶解速度を向上させるので、これらを共重合させることは好ましい。カルボキシル基を有する繰り返し単位としては下記に挙げることができる。
【0114】
【化30】
【0115】
上記繰り返し単位(a),(b),(c)において、繰り返し単位の比率は、0<a<1.0、0<b≦0.8、0.1≦a+b≦1.0、0≦c<1.0、好ましくは、0.1≦a≦0.9、0.1≦b≦0.7、0.2≦a+b≦1.0、0≦c≦0.9の範囲である。なお、a+b+c=1である。
【0116】
ここで、例えばa+b=1とは、繰り返し単位a,bを含む高分子化合物において、繰り返し単位a,bの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し、a+b<1とは、繰り返し単位a,bの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満でa,b以外に他の繰り返し単位cを有していることを示す。
【0117】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料現像後の熱架橋における架橋効率が低下するものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じやすくなる可能性がある。
【0118】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなりやすいことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0119】
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0120】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては繰り返し単位(a),(b),(c)を得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤を加え加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後、保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0121】
上記ポジ型レジスト材料は、上述したように、基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線をこのレジスト膜の所用部分に照射、露光し、加熱処理後にアルカリ現像液を用いて上記レジスト膜の露光部分を溶解、現像してドットパターン等のレジストパターンを形成し、その後、このレジストパターン(上記高エネルギー線による未露光部分)に酸を発生させてこのレジストパターン中の高分子化合物の酸不安定基を脱離する(脱保護する)と共に、これを架橋するものであるが、上記高分子化合物は、このように酸不安定基が脱離し、架橋した状態において、アルカリ現像液に対する溶解速度が2nm/秒を超える速度、好ましくは3〜5,000nm/秒、更に好ましくは4〜4,000nm/秒である。またこの場合、後述する反転用膜の上記アルカリ現像液に対する溶解速度の2〜250,000倍、特に5〜10,000倍であることが、本発明の目的を達成する上で好ましい。
なお、高分子化合物をこのような溶解速度とするためには、一般式(b)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位が全繰り返し単位中、10モル%以上90モル%以下、特に12モル%以上80モル%以下であることが好ましい。
【0122】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料は、有機溶剤、高エネルギー線に感応して酸を発生する化合物(酸発生剤)、必要に応じて溶解制御剤、塩基性化合物、界面活性剤、その他の成分を含有することができる。
【0123】
本発明のパターン形成に用いるレジスト材料は、特に化学増幅ポジ型レジスト材料として機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。この場合、光酸発生剤の配合量は上記ベース樹脂100質量部に対し0.5〜30質量部、特に1〜20質量部とすることが好ましい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0124】
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
本発明のレジスト材料は、更に、有機溶剤、塩基性化合物、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]、塩基性化合物としては段落[0146]〜[0164]、界面活性剤は段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公開段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は段落[0179]〜[0182]に記載されている。
【0125】
なお、有機溶剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し100〜10,000質量部、特に300〜8,000質量部とすることが好ましい。また、塩基性化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.0001〜30質量部、特に0.001〜20質量部とすることが好ましい。
【0126】
更に、フォトレジスト材料としてアンモニウム塩の熱酸発生剤をフォトレジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部添加しておいて、加熱によって酸を発生させることもできる。この場合、酸の発生と架橋反応と酸不安定基の脱保護反応が同時に進行する。加熱の条件は100〜300℃、特に130〜250℃の温度範囲で10〜300秒の範囲が好ましい。これにより、アルカリに溶解し、溶剤に不要なポジネガ反転に必要な特性を有し、加熱によってパターンが変形しないための機械的強度が向上したレジスト膜が形成される。
【0127】
なお、上記アンモニウム塩の熱酸発生剤としては、下記のものが挙げられる。
【化31】
(式中、K-はα位の少なくとも1つがフッ素化されたスルホン酸、又はパーフルオロアルキルイミド酸もしくはパーフルオロアルキルメチド酸である。R101d、R101e、R101f、R101gはそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていてもよい。R101dとR101e、R101dとR101eとR101fとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e及びR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を示す。)
【0128】
K-として具体的には、トリフレート、ノナフレート等のパーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のメチド酸、更には下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【0129】
【化32】
【0130】
一般式(K−1)中、R102は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基又はアリーロキシ基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ラクトン環を有していてもよく、又はこれらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい。一般式(K−2)中、R103は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
【0131】
更に、アミノ基とフルオロアルキル基を繰り返し単位として有する高分子化合物を添加することもできる。この場合、この高分子化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.01〜20質量部、特に0.1〜15質量部とすることができる。この高分子化合物は、塗布後のレジスト表面に配向することによって、現像後のレジストパターンの膜減りを防止し、矩形性を高めることができる。現像後のドットパターンに膜減りが生じると、イメージリバーサルがうまくできないことがある。パターンの膜減り防止に対して、下記高分子化合物の添加は有効である。
【0132】
【化33】
(上式中、R01、R04、R07はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。X1、Y1、Y2はそれぞれ独立に単結合、−O−R09−、−C(=O)−O−R09−又は−C(=O)−NH−R09−、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、又はフェニレン基である。R09は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エステル基(−COO−)又はエーテル基(−O−)を有していてもよい。kは1又は2であり、k=1の場合、Y1は単結合、−O−R09−、−C(=O)−O−R09−又は−C(=O)−NH−R09−、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、又はフェニレン基であり、R09は上記の通りである。k=2の場合、Y1は−O−R101=、−C(=O)−O−R101=又は−C(=O)−NH−R101=、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基から更に水素原子が1個脱離した基、又はフェニレン基から更に水素原子が1個脱離した基であり、R101は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基より更に水素原子が1個脱離した基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。R02、R03は同一又は異種の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基であり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、2重結合、又はハロゲン原子を有していてもよく、又は炭素数6〜10のアリール基であり、R02とR03が結合してこれらが結合する窒素原子と共に炭素数3〜20の環を形成してもよい。R05は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、R06は水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はジフルオロメチル基、又はR05と結合してR05、R06及びこれらが結合する炭素原子とで炭素数2〜12の脂環を形成してもよく、環の中にエーテル基、フッ素で置換されたアルキレン基又はトリフルオロメチル基を有していてもよい。R08は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、少なくとも1個のフッ素原子で置換されていて、エーテル基、エステル基、又はスルホンアミド基を有していてもよい。0<d<1.0、0≦(e−1)<1.0、0≦(e−2)<1.0、0<(e−1)+(e−2)<1.0、0.5≦d+(e−1)+(e−2)≦1.0である。)
【0133】
一方、反転用膜としては、本発明に係る反転工程に用いるアルカリ現像液に対する溶解速度が0.02nm/秒以上2nm/秒以下、好ましくは0.05nm/秒以上1nm/秒以下のものを使用する。溶解速度が0.02nm/秒より遅いと、1回目のレジストパターン上部まで反転用膜が溶解しないために、パターンの反転が行われなかったり、反転したパターンの表層が頭張りになったりする。2nm/秒より早いと、反転用膜の残膜が少なくなったり反転パターンのホール寸法が大きくなったりするという不利が生じる。
【0134】
この場合、特に、現像時に膜表面を適当に溶解させてトレンチパターンを形成するためには、アルカリ溶解速度を0.05nm/秒以上1nm/秒以下の範囲の溶解速度に調整する。これよりも早い溶解速度であれば現像時の膜減りが大きくなってしまい、溶解速度が遅い場合、膜表面が溶解せずにトレンチパターンが空かなくなってしまう。適度な溶解速度の調整のためにアルカリ溶解速度が1nm/秒以上のユニットと0.05nm/秒以下のユニットとを共重合し、共重合比率を最適化することによって最適な溶解速度の材料にすることができる。
【0135】
本発明のパターン形成方法に用いられるアルカリ現像液に0.02nm/秒以上2nm/秒以下の範囲の溶解速度を持つ膜(反転用膜)は、炭化水素からなる材料でもよいし、珪素を有する材料でもよい。フェノール性のヒドロキシ基、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基、カルボキシル基を有するポリマーをベースポリマーとする材料が好ましく用いられる。また、珪素含有材料としては前記アルカリ溶解性基に加えてシラノールを有する材料が好ましく用いられる。フェノール性のヒドロキシ基を有するポリマーとしては、例えばクレゾールノボラック樹脂、フェノール低核体、ビスフェノール低核体、ビスフェノールノボラック樹脂、ビスナフトール低核体、ビスナフトールノボラック樹脂、カリックスアレン類、カリックスレゾルシノール、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシビニルナフタレン、ポリヒドロキシインデン及びこの共重合体、カルボキシスチレン重合体、カルボキシビニルナフタレン及びこの共重合体、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基含有スチレン重合体及びこの共重合体、メタクリル酸及びカルボキシル基含有(メタ)アクリレート重合体及びこの共重合体、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート重合体及びこの共重合体等が挙げられる。
【0136】
この場合、上記フェノール性のヒドロキシ基、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基、カルボキシル基を有する繰り返し単位のみからなるポリマーのアルカリ溶解速度は、殆どが1nm/秒以上の溶解速度であるために、アルカリ溶解速度が0.05nm/秒以下のユニットと共重合する。アルカリ溶解速度が0.05nm以下のユニットとしては、例えばフェノール性のヒドロキシ基、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基、カルボキシル基の水酸基の水素原子を、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、あるいは酸不安定基で置換した置換体が挙げられる。又は、スチレン類、インデン、インドール、クロモン、クマロン、アセナフチレン、ノルボルナジエン類、ノルボルネン類、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、ビニルエーテル類、ラクトン含有(メタ)アクリレート類、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0137】
更に詳述すると、具体的に反転用膜のポリマーを得るときの材料としては、フェノール性のヒドロキシ基、カルボキシル基、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基等のアルカリ溶解性基を有していることが必要であり、アルカリ溶解速度を調整するために前記アルカリ溶解性基の部分保護化、アルカリ難溶性基との組み合わせ等が必要な場合がある。
【0138】
フェノール性のヒドロキシ基を有する材料としては、具体的にはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール等をアルデヒド類の存在下でノボラック化した樹脂が挙げられる。フェノール性のヒドロキシ基を有する重合性オレフィンを有する化合物の重合体では、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレン、ヒドロキシビニルアントラセン、ヒドロキシインデン、ヒドロキシアセナフチレン又は以下に示されるモノマーの重合体を挙げることができる。
【0139】
【化34】
【0140】
カルボキシル基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーの重合体も反転用膜を形成する材料として使用し得るが、該モノマーとしては、具体的には下記に例示することができる。
【0141】
【化35】
【0142】
アルカリ溶解速度を調整するためのフェノール性水酸基あるいはカルボキシル基の部分保護化には、ヒドロキシ基、カルボキシル基の水酸基の水素原子を、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、アセチル基、ピバロイル基、酸不安定基で置換することが好ましい。
なお、酸不安定基については上述したものが挙げられる。
【0143】
アルカリ溶解速度を調整するために、アルカリ難溶性の繰り返し単位を共重合することもできる。アルカリ難溶性の繰り返し単位としては、アルキル基やアリール基エステルの(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基やラクトンを有する(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ビニルカルバゾール、インデン、アセナフチレン、ノルボルネン類、ノルボルナジエン類、トリシクロデセン類、テトラシクロドデセン類に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0144】
上記反転用膜を形成するためのベースポリマーとしては、炭化水素からなる材料としては特に芳香族基を有する炭化水素を含むものが好ましい。
反転用膜形成用組成物として珪素を有する材料としては、エッチング耐性の観点からシルセスキオキサンをベースとする珪素重合体が好ましく用いられる。
【0145】
なお、上記ベースポリマーのGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は1,000〜200,000、特に1,500〜100,000であることが好ましい。
また、分散度(Mw/Mn)は1.0〜7.0、特に1.02〜5.0であることが好ましい。
【0146】
反転用膜形成用組成物としては、上記ベースポリマーに加え、パターン反転のためのアルカリ微溶解性材料、表面アルカリ溶解速度向上のためのアルカリ可溶界面活性剤、アルカリ可溶性のエッチング耐性向上剤、塩基性クエンチャー、有機溶剤等を用いることができる。
【0147】
更にパターン反転のためのアルカリ微溶解性の材料として、フェノール基やマロン酸置換のフラーレン、フェノール化合物の低核体が挙げられる。これらの材料は炭素含有量が高く、エッチング耐性を向上する機能も有する。パターン反転の材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0148】
かかる材料として具体的には、特開2006−259249号公報、特開2006−259482号公報、特開2006−285095号公報、特開2006−293298号公報に示されるフェノール化合物、特開2007−199653号公報記載のビスナフトール化合物、下記フェノール基を有するフルオレン化合物、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、テトラヒドロスピロビインデン化合物、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5’−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、トリチルフェノール等が挙げられる。これらの材料は、アルカリ可溶性のエッチング耐性向上剤として使用することができる。
【0149】
なお、上記材料の添加量は、上記ベースポリマー100質量部に対して0〜200質量部、特に0〜100質量部とすることが好ましい。配合する場合は、1質量部以上、特に5質量部以上とすることができる。
【0150】
本発明のパターン反転用膜の表面だけのアルカリ溶解性を向上させることは、アルカリ可溶に変質したポジ型レジストパターントップまでを覆ったパターン反転用膜の溶解をスムーズにし、ポジ型パターンを変換したトレンチパターンやホールパターンの寸法制御性向上のために有効である。表面のアルカリ溶解性を向上させるためにアルカリ可溶の界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤としては少なくとも下記一般式(3)中、繰り返し単位s−1,s−2のいずれか一方又は両方を有するものが好ましい。
【0151】
【化36】
【0152】
上式中、R8、R11はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。nは1又は2であり、n=1の場合、X1はフェニレン基、−O−、−C(=O)−O−R14−又は−C(=O)−NH−R14−であり、R14は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。n=2の場合、X1はフェニレン基から水素原子が1個脱離した−C6H3−で表される基、−C(=O)−O−R81=又は−C(=O)−NH−R81=であり、R81は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基から水素原子が1個脱離した基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。R9は単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、R10は水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はジフルオロメチル基、又はR9と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜10の環(但し芳香環を除く)を形成してもよく、環の中にエーテル基、フッ素で置換されたアルキレン基又はトリフルオロメチル基を有していてもよい。X2はフェニレン基、−O−、−C(=O)−O−R13−又は−C(=O)−NH−R13−であり、R13は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。R12はフッ素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、少なくとも1個のフッ素原子で置換されていて、エーテル基、エステル基又はスルホンアミド基を有していてもよい。X2がフェニレン基の場合、mは1〜5の整数であり、X2がそれ以外の場合、mは1である。
【0153】
s−1を得るためのモノマーは具体的には下記に例示することができる。
【化37】
【0154】
【化38】
【0155】
【化39】
【0156】
【化40】
【0157】
【化41】
(式中、R8は前述と同様である。)
【0158】
更に、上記一般式(3)中のs−2で示される、フッ素で置換されたアルキル基を有する繰り返し単位s−2を得るためのモノマーとしては、下記の具体例を挙げることができる。
【0159】
【化42】
【0160】
【化43】
(式中、R11は前述と同様である。)
【0161】
s−1、s−2の繰り返し単位は、前述のフェノール基やカルボキシル基を有するアルカリ溶解性の繰り返し単位や、アルカリ難溶解性の繰り返し単位s−3と共重合することができる。
【0162】
この場合、s−1、s−2の繰り返し単位の比率は、0≦(s−1)≦1、0≦(s−2)≦1、0<(s−1)+(s−2)≦1であるが、好ましくは0.1<(s−1)+(s−2)≦1、更に好ましくは0.2<(s−1)+(s−2)≦1である。なお、(s−1)+(s−2)<1の場合、残りの繰り返し単位は上記s−3の繰り返し単位である。
なお、このアルカリ可溶界面活性剤の重量平均分子量は1,000〜100,000、特に2,000〜50,000であることが好ましい。
【0163】
上記アルカリ可溶界面活性剤の添加量は、ベースポリマー100質量部に対して0〜50質量部、特に0〜20質量部が好ましい。多すぎると、膜減り量が多くなりすぎたり、エッチング耐性が低下したりする場合が生じる。なお、配合する場合は、1質量部以上とすることが好ましい。
【0164】
塩基性クエンチャーとしては、上記ポジ型レジスト材料において説明した塩基性化合物と同様の塩基性化合物を用いることができる。即ち、本発明のパターン形成方法に用いるパターン反転用膜には、現像後のレジストパターンからの酸拡散を防止するために塩基性化合物を添加することができ、特にパターン反転用膜の材料として酸不安定基で置換されたフェノール性化合物及びカルボキシル基含有化合物が用いられている場合、レジストパターンからの酸の拡散と脱保護反応によってアルカリ溶解速度が増加し、反転したパターンの寸法が大きくなったり、膜減り大きくなる問題が生じる。これを防止するために塩基性化合物を添加することが有効である。なお、レジスト材料及びパターン反転用膜に添加される塩基性化合物は同一のものでもよく異種であってもよい。
【0165】
上記塩基性化合物(塩基性クエンチャー)の配合量は、上記ベースポリマー100質量部に対し、0〜10質量部、特に0〜5質量部が好ましい。なお、配合する場合は、0.1質量部以上であることが好ましい。
【0166】
反転用膜形成用組成物にオニウム塩系の酸発生剤を添加することもできる。反転用膜形成用組成物のベースポリマーとしてフェノール系材料を用いる場合、オニウム塩を添加するとオニウム塩の溶解阻止効果によってアルカリ溶解速度が低下する。アルカリ溶解速度調整用としてオニウム塩の添加は有効である。
【0167】
本発明のパターン形成方法に用いられるパターン反転用膜形成用組成物に用いられる有機溶剤としては、前記ポジ型レジスト材料に用いられる有機溶剤に加えて、ポジ型レジスト膜(レジストパターン)とのミキシングを防止するために炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物を用いることもできる。具体的に、炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールが挙げられる。
【0168】
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−イソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が挙げられる。
前述の溶剤に加えてトルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系の溶剤を混合することもできる。
【0169】
有機溶剤の使用量は、ベースポリマー100質量部に対して200〜3,000質量部、特に400〜2,000質量部が好適である。
【0170】
本発明に係るパターニング方法は、上記ポジ型レジスト材料を基板上に塗布してレジスト膜を形成する。この場合、図4(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層を介してポジ型レジスト材料によるレジスト膜30を形成するが、レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
【0171】
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層としては、SiO2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0172】
スピンオンカーボン膜としては、特開2004−205658号公報記載のノルトリシクレン共重合体、特開2004−205676号公報記載の水素添加ナフトールノボラック樹脂、特開2004−205685号公報記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2004−354554号公報、特開2005−10431号公報記載のフェノールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005−128509号公報に記載されるフルオレンビルフェノールノボラック、特開2005−250434号公報記載のアセナフチレン共重合、特開2006−53543号公報記載のインデン共重合体、特開2006−227391号公報記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006−259249号公報、特開2006−293298号公報、特開2007−316282号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006−259482号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006−285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2007−171895号公報記載のヒドロキシビニルナフタレン共重合体、特開2007−199653号公報記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008−26600号公報記載のROMP、特開2008−96684号公報記載のトリシクロペンタジエン共重合物に示される樹脂化合物が挙げられる。
【0173】
スピンオン珪素含有中間層としては、特開2004−310019号公報、特開2005−15779号公報、特開2005−18054号公報、特開2005−352104号公報、特開2007−65161号公報、特開2007−163846号公報、特開2007−226170号公報、特開2007−226204号公報に示されるシルセスキオキサンベースの珪素化合物を含み、反射防止機能を有していることが好ましい。
【0174】
反転用膜が炭化水素系の材料からなる場合は、被加工基板とポジネガ反転用のフォトレジスト膜の間に、被加工基板の上から順に炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜、次いで珪素を含有する中間膜を形成する3層レジストプロセス用の膜構成が好ましい。カーボン膜はスピンコートによって形成してもよいが、CVDで形成されるアモルファスカーボン膜であってもよい。珪素を含有する中間膜はスピンコートで形成されるSOG膜でもよいし、CVDやALDで形成されるSiO2、SiN、SiON、TiN膜から選ばれる膜でもよく、カーボン膜に対するハードマスクと反射防止膜としての両方の機能を有する。
また、基板上の裾引きやパターン倒れを防止し、基板反射を更に低減する目的で、珪素含有膜とフォトレジストの間に有機反射防止膜を形成してもよい。
【0175】
反転用膜が珪素を含有する材料からなる場合は、被加工基板とポジネガ反転用のフォトレジスト膜の間に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上にフォトレジスト膜を形成する。カーボン膜とフォトレジスト膜との間に有機反射防止膜を形成してもよい。この場合、珪素含有反転用膜がカーボン膜加工時のハードマスクとしての機能を有する。
【0176】
次いで、露光を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、その中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。この場合、保護膜形成用組成物は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位等のベースとなる繰り返し単位P−1からなるベース樹脂を用いることができるほか、上記ベースとなる繰り返し単位P−1にフルオロアルキル基を有する繰り返し単位P−2を共重合したものをベース樹脂として用いることができる。上記繰り返し単位P−1の具体例は、上記s−1で例示したモノマーから得られるものが挙げられ、繰り返し単位P−2の具体例は、上記s−2で例示したモノマーから得られるものが挙げられる。また、これら繰り返し単位P−1,P−2の比率は、0<(P−1)≦1.0、0≦(P−2)<1.0、0.3≦(P−1)+(P−2)≦1.0、上記ベース樹脂の重量平均分子量は、1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000である。
【0177】
なお、ベース樹脂として繰り返し単位P−2を含まないものを用いた場合は、保護膜形成用組成物にアミン化合物を配合することが好ましい。アミン化合物としては、上記塩基性化合物として詳述したものの中から選定することができる。アミン化合物の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.02〜8質量部が好ましい。フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによってレジスト膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0178】
露光における露光量は1〜200mJ/cm2程度、好ましくは10〜100mJ/cm2程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージュアベーク(PEB)する。
【0179】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより基板上に目的のレジストパターン30aが形成される(図4(B)参照)。
【0180】
クロムレス位相シフトマスクを使うことにより、パターンとしてはハーフピッチの大きさ38×38nm〜100×100nm、特に40×40nm〜80×80nmのドットパターンを形成することができる。ドットパターンの大きさは露光機のレンズのNAによるが、NA1.35の露光機を用いれば、最小寸法としてハーフピッチ38nmのドットを形成することができる。ドットパターンは縦横が同じ長さでも構わないし、どちらか一ほうが長い長軸のドットパターンでも構わない。ドットパターンの形成方法は特に制限されないが、高エネルギー線で上記レジスト膜にクロムレス位相シフトマスクを用いた露光を行い、これを現像することによってドットパターンを形成する方法を採用する方法が最も微細なハーフピッチのホールを形成することができる。
【0181】
従来は、このような微細なピッチのドットを形成する場合は、ダブルダイポールリソグラフィーによる2枚のマスクによる2回の露光が必要であった。即ち、1回目の露光でX方向のラインをダイポール照明で露光し、マスクを交換して2回目の露光でY方向のラインをダイポール照明で露光する方法である。この場合、マスクの交換とそれに伴うアライメントによるスループットの低下が発生する。また、2回の露光のアライメントズレは最終的に形成するホールの位置ズレにつながる。ホールの位置とこれに接続するラインの位置が異なると接続不良を引き起こすために、ダブルダイポールで露光する場合は非常に高いアライメント精度が必要である。
【0182】
ダブルダイポールの2回の露光で形成するパターンは、2回目の露光の位置ズレが生じるのに対して、本発明のパターン形成方法では1回の露光で済むために位置ズレが生じない。また、マスク交換の必要がなく、露光回数が1回で済むためにスループットが高いメリットがある。
【0183】
ランダムパターンの密集パターンと孤立パターンを形成する場合は、密集パターンを露光し、次いで不必要な密集パターンを消去するための露光を行う。消去パターンの露光は密集パターン露光の後に行ってもよいし、密集パターンの露光の前に行ってもよい。消去パターンの露光は1回の露光でもよいが、複数回の露光でもよい。また、消去パターン露光は高解像性を必要としないために、必ずしも液浸露光を必須としないし、消去パターンの露光は非常に高精度のアライメントは必要ない。
【0184】
密集パターンの露光と消去露光のアライメント精度とスループットを両立させるためには、ウエハーチャックから外されることなく連続して露光されることが好ましい。そのため、露光機側では複数のマスクを取り替えながら露光する機構が必要とされる。マスクステージを複数台有しており、複数台のマスクステージが予めステージに対してアライメントされており、マスクステージを交換しながらの連続露光が行われるのがスループット向上のために必要となる。密集露光が液浸、消去露光がドライで露光される場合は、露光機が異なるためにアライメントズレが大きくなるが、実用上問題がない程度のアライメントズレの範囲内に収まる場合はこのような露光方法を適用することもできる。
次いで、ベーク(PEB)を行い、現像によってドットパターンを形成する。ランダムピッチのドットパターンは一度の現像によって形成される(図4(B)参照)。
。
【0185】
次いで、上記パターン中の高分子化合物(ベース樹脂)の酸不安定基を脱離させると共に、該高分子化合物を架橋し、架橋パターン30bを形成する(図4(C)参照)。このレジストパターン中の高分子化合物の酸不安定基の脱離と架橋には、酸と加熱が必要である。この場合、酸を発生させた後、加熱によって酸不安定基の脱保護と架橋とを同時に行う。酸を発生させるには、現像後のウエハー(パターン)のフラッド露光によって光酸発生剤の分解を行う方法がある。フラッド露光の露光波長は波長180〜400nmで、露光量10mJ/cm2〜1J/cm2の範囲である。波長180nm未満、特には172nm、146nm、122nmのエキシマレーザーや、エキシマランプの照射は、光酸発生剤からの酸の発生だけでなく、光照射による架橋反応を促進させ、過剰な架橋によってアルカリ溶解速度が低下するために好ましくない。フラッド露光の波長は193nmより長波長のArFエキシマレーザー、222nmのKrClエキシマランプ、248nmのKrFエキシマレーザー、254nmの中心の低圧水銀ランプ、308nmのXeClエキシマランプ、365nmのi線が好ましく用いられる。ポジ型レジスト材料にアンモニウム塩の熱酸発生剤を添加しておいて、加熱によって酸を発生させることもできる。この場合、酸の発生と架橋反応は同時に進行する。加熱の条件は150〜400℃、特に160〜300℃の温度範囲で10〜300秒の範囲が好ましい。これにより、反転用膜形成用組成物の溶剤に不溶の架橋レジストパターンが形成される。露光によって酸を発生させるには、新たな露光装置が必要であるため、レジスト組成物として熱酸発生剤を添加しておき、加熱だけによって脱保護と架橋反応を進行させるほうが好ましい。
【0186】
次に、図4(D)に示したように、架橋レジストパターン30bを覆って反転用膜形成用組成物を塗布することにより反転用膜40を形成する。この場合、反転用膜40の厚さはレジストパターンの高さと同等あるいは±30nmの範囲であることが好ましい。
【0187】
次いで、上記アルカリ現像液を用いて上記反転用膜40の表面部分を溶解して上記架橋レジストパターン30bを露呈させ、これによりこの架橋レジストパターン30bの上記アルカリ現像液に対する溶解速度が反転用膜40の溶解速度より速いので、架橋レジストパターン30bが選択的に溶解され、これが溶解消失することで、図4(E)に示したように反転用膜40に上記架橋レジストパターン30bが反転した反転パターン40aが形成される。この場合、レジストパターンがドットパターンであると、反転パターンとしてホールパターンが形成される。
【0188】
更に、図4(F)に示したように、上記反転パターン40aをマスクとして、ハードマスク等の中間介在層がある場合はこの中間介在層をエッチングし、更に被加工基板20のエッチングを行う。この場合、ハードマスク等の中間介在層のエッチングは、フロン系、ハロゲン系のガスを用いてドライエッチングすることによって行うことができ、被加工基板のエッチングは、ハードマスクとのエッチング選択比をとるためのエッチングガス及び条件を適宜選択することができ、フロン系、ハロゲン系、酸素、水素等のガスを用いてドライエッチングすることによって行うことができる。次いで、架橋レジスト膜、第2のレジスト膜を除去するが、これらの除去は、ハードマスク等の中間介在層のエッチング後に行ってもよい。なお、架橋レジスト膜の除去は、酸素、ラジカル等のドライエッチングによって行うことができ、第2のレジスト膜の除去は上記と同様に、あるいはアミン系、又は硫酸/過酸化水素水等の有機溶剤等の剥離液によって行うことができる。
【実施例】
【0189】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0190】
[合成例]
反転用膜に用いる高分子化合物として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶媒下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマー1)を得た。モノマーのフェノール基はアセトキシ基で置換し、重合後のアルカリ加水分解によってフェノール基にした。得られた高分子化合物の組成は1H−NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフィにより確認した。
【0191】
ポリマー1
分子量(Mw)=9,300
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化44】
【0192】
上記ポリマー1、塩基性クエンチャー、溶媒を加えて表1に示す組成でパターン反転用膜形成用組成物を形成した。溶媒には100ppmのフッ素系界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)を添加した。HMDSプライム処理した8インチシリコン基板にパターン反転用膜形成用組成物を塗布し、110℃で60秒間ベークして膜厚60nmのパターン反転用膜を形成した。これを2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の現像液で30秒間現像し、現像による膜減り量を求め、1秒間当たり溶解速度を算出した。
【0193】
【化45】
【0194】
【表1】
PGMEA;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0195】
[実施例1〜3、比較例1,2]
ポジ型レジスト材料、アルカリ可溶性保護膜形成用組成物の調製
下記高分子化合物(レジストポリマー及び保護ポリマー)を用いて、下記表2,4に示す組成で溶解させた溶液を0.2μmサイズのフィルターで濾過してレジスト溶液及び保護膜形成用組成物溶液を調製した。
表2中の各組成は次の通りである。
【0196】
酸発生剤:PAG1(下記構造式参照)
【化46】
【0197】
レジストポリマー1
分子量(Mw)=8,310
分散度(Mw/Mn)=1.73
【化47】
【0198】
保護膜ポリマー
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化48】
【0199】
塩基性化合物:Quencher1(下記構造式参照)
【化49】
【0200】
熱酸発生剤:TAG1(下記構造式参照)
【化50】
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0201】
高温ベークの溶剤による膜厚変化量及びアルカリ溶解速度の測定
下記表2に示す組成で調製したレジスト材料を、シリコンウエハーにスピンコーティングし、ホットプレートを用いて190℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを150nmにした。レジスト膜に溶剤を30秒間静止ディスペンスし、その後2,000rpmで30秒間回転して溶剤を振り切り、100℃で60秒間ベークして溶剤を乾燥させ、190℃でベーク後との膜厚の変化量を膜厚計を用いて求めた。
次に、190℃ベーク後の膜のアルカリ溶解速度を、リソテックジャパン(株)製レジスト現像アナライザーRDA−790を用いて、2.38質量%TMAH水溶液中でのアルカリ溶解速度を求めた。結果を表3にまとめる。
【0202】
ArF露光パターニング評価 1
下記表2に示す組成で調製したレジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)の35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。その上に表4に示す保護膜形成用組成物TC−1をスピンコーティングし、90℃で60秒間ベークし、保護膜の厚みを50nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、クロムレス位相シフトマスクで、ウエハー上寸法がピッチ80nmライン幅30nmの図24(A)に示されるレイアウトの格子部分がシフターとなっているクロムレス位相シフトマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
露光量60mJ/cm2で格子の間に図24(D)に示されるレイアウトの寸法30nm、ピッチ80nmの密集ドットパターンが形成された。100点のドットを測定し、寸法ばらつきは2.1nmであった。
現像によって形成されたドットパターンは190℃で60秒間ベークして酸不安定基の脱保護と架橋を行った。ドットパターン上に表1に示されるパターン反転用膜材料を60nmの膜厚になるように塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行い、ドットパターンをホールパターンにイメージ反転させた。
【0203】
比較例1としては、カーボン膜、珪素含有ハードマスク、フォトレジスト膜、保護膜の構成と膜厚は同じでArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクで、図15に示されるレイアウトのウエハー上寸法がピッチ80nm、サイズが50nmのドットが配列されたマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。露光量15mJ/cm2でマスクのドット部分に寸法40nm、ピッチ80nmのドットパターンが形成されたが、100個のドットの寸法ばらつきの標準偏差が8nm程度有り、膜減が生じていた。
現像によって形成されたドットパターンは190℃で60秒間ベークして酸不安定基の脱保護と架橋を行った。ドットパターン上に表1に示されるパターン反転用膜材料を60nmの膜厚になるように塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行い、ドットパターンをホールパターンにイメージ反転させた。現像後のドットパターンと、加熱後のドットパターンと、イメージ反転されたホールパターンの寸法を日立ハイテクノロジーズ社製TDSEM(S−9380)で観察した。
【0204】
比較例2としては、カーボン膜、珪素含有ハードマスク、フォトレジスト膜、保護膜の構成と膜厚は同じでArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクでピッチ80nm、サイズが50nmのホールが配列されたマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。露光量を変化させてもホールパターンは形成されなかった。結果を表5に示す。
【0205】
ArF露光パターニング評価 2
下記表2に示す組成で調製したレジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)の35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。その上に表4に示す保護膜形成用組成物TC−1をスピンコーティングし、90℃で60秒間ベークし、保護膜の厚みを50nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、クロムレス位相シフトマスクで、ウエハー上寸法がピッチ80nmライン幅30nmの図24(A)に示されるレイアウトの四角部分がシフターとなっているクロムレス位相シフトマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
露光量60mJ/cm2でマスクの四角い部分に図24(D)に示されるレイアウトの寸法30nm、ピッチ80nmの密集ドットパターンが形成された。100点のドットを測定し、寸法ばらつきの標準偏差は2.3nmであった。
現像によって形成されたドットパターンは190℃で60秒間ベークして酸不安定基の脱保護と架橋を行った。ドットパターン上に表1に示されるパターン反転用膜材料を60nmの膜厚になるように塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行い、ドットパターンをホールパターンにイメージ反転させた。現像後のドットパターンと、加熱後のドットパターンと、イメージ反転されたホールパターンの寸法を日立ハイテクノロジーズ社製TDSEM(S−9380)で観察した。結果を表6に示す。
【0206】
ArF露光パターニング評価 3
下記表2に示す組成で調製したレジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940の35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。その上に表4に示す保護膜形成用組成物TC−1をスピンコーティングし、90℃で60秒間ベークし、保護膜の厚みを50nmにした。
これをArF露光パターニング評価2と同様にArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、クロムレス位相シフトマスクで、ウエハー上寸法がピッチ80nmライン幅30nmの図24(A)に示されるレイアウトの格子部分がシフターとなっている格子状マスクを用いて1回目の露光を行い、次いで1回目の露光領域の一部をArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ160nmドット寸法が80nmの図24(B)記載のレイアウトのマスク)で2回目の露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
現像仕上がり30nm、80nmピッチの1:1ドットパターン(図24(D))と30nmと160nmピッチの1:3ドットパターン(図24(E))の両方を得た。マスクレイアウト図24(A)と24Bを重ねた図として、図24(C)が示されている。ドットパターン上に表1に示されるパターン反転用膜材料を60nmの膜厚になるように塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行い、1:1と1:3のドットパターンをホールパターンにイメージ反転させた。イメージ反転されたホールパターンの寸法を日立ハイテクノロジーズ社製TDSEM(S−9380)で観察した。結果を表7に示す。
【0207】
【表2】
【0208】
【表3】
【0209】
【表4】
【0210】
【表5】
【表6】
【表7】
【0211】
表5の結果から、実施例1のクロムレス位相シフトマスクを用いたパターン形成方法では1回の露光でピッチ80nmで30nmのドットパターンが形成され、これを反転したホールパターンが開口していたのに対してドットの遮光部が配列された従来のマスク(比較例1)ではドットパターンの膜減りが生じたため反転プロセス後にホールパターンは開口しなかった。また、1回の露光でホールを開口することもできなかった。表6の結果から、実施例2のクロムレス位相シフトマスクを使った場合のパターン形成方法では実施例1と同様のピッチ80nmで30nmのホールパターンが開口した。表7の結果から、1回の露光によって密集ドットパターンの露光を行い、次いで不必要なドットパターンの消去露光を行うことによって、粗密の両方のドットパターンを形成し、これを反転することによって粗密のホールを2回の露光で形成した。
【0212】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0213】
10 基板
20 被加工基板
30 レジスト膜
30a レジストパターン
30b 架橋レジストパターン
40 反転用膜
40a 反転パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にクロムレスの位相シフトマスクマスクを用いて露光し、現像によってドットのポジ型パターンを形成し、酸と熱によって該パターンをアルカリ可溶にし、その上にアルカリに僅かに溶解する反転用膜を塗布し、アルカリ現像によって膜の表層部と上記ポジ型パターンを溶解させてネガ型パターンを形成させるポジネガ反転を用いたパターン形成において、超密ホールパターンを形成するパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFエキシマリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、F2リソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱された(非特許文献1:Proc.SPIE Vol.4690,xxix)。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいて、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させることが提案されている。193nmにおける水の屈折率は1.44であり、NA(開口数)1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能で、理論上はNAを1.44近くにまで上げることができる。当初、水温変化に伴う屈折率変化による解像性の劣化やフォーカスのシフトが指摘された。水温を1/100℃以内にコントロールすることと、露光によるレジスト膜からの発熱による影響もほぼ心配ないことが確認され、屈折率変化の問題が解決された。水中のマイクロバブルがパターン転写されることも危惧されたが、水の脱気を十分に行うことと、露光によるレジスト膜からのバブル発生の心配がないことが確認された。1980年代の液浸リソグラフィーの初期段階では、ステージを全て水に浸ける方式が提案されていたが、高速スキャナーの動作に対応するために投影レンズとウエハーの間のみに水を挿入し、水の給排水ノズルを備えたパーシャルフィル方式が採用された。水を用いた液浸によって原理的にはNAが1以上のレンズ設計が可能になったが、従来の屈折率系による光学系では巨大なレンズになってしまい、レンズが自身の自重によって変形してしまう問題が生じた。よりコンパクトなレンズ設計のために反射屈折(Catadioptric)光学系が提案され、NA1.0以上のレンズ設計が加速された。NA1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示され(非特許文献2:Proc.SPIE Vol.5040,p.724)、更にはNA1.35のレンズの開発も行われている。
【0004】
32nmノードのリソグラフィー技術としては、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーが候補に挙げられている。EUVリソグラフィーの問題点としてはレーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低ラインエッジラフネス(LWR)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられ、克服すべき問題が山積している。
【0005】
NA1.35レンズを使った水液浸リソグラフィーの最高NAで到達できるラインパターンの解像度はハーフピッチが40〜38nmであり、32nmには到達できない。そこで更にNAを高めるための高屈折率材料の開発が行われている。レンズのNAの限界を決めるのは投影レンズ、液体、レジスト膜の中で最小の屈折率である。水液浸の場合、投影レンズ(合成石英で屈折率1.5)、レジスト膜(従来のメタクリレート系で屈折率1.7)に比べて水の屈折率が最も低く、水の屈折率によって投影レンズのNAが決まっていた。最近、屈折率1.65の高透明な液体が開発されてきている。この場合、合成石英による投影レンズの屈折率が最も低く、屈折率の高い投影レンズ材料を開発する必要がある。LUAG(Lu3Al5O12)は屈折率が2以上であり、最も期待される材料ではあるが、副屈折率と吸収が大きい問題を持っている。また、屈折率1.8以上の投影レンズ材料が開発されたとしても屈折率1.65の液体ではNAは1.55止まりであり、35nmを解像できるが32nmは解像できない。32nmを解像するには屈折率1.8以上の液体と屈折率1.8以上のレジスト膜及び保護膜が必要である。屈折率1.8以上の材料で最も問題なのは高屈折率液体であり、今のところ吸収と屈折率がトレードオフの関係にあり、このような材料は未だ見つかっていない。アルカン系化合物の場合、屈折率を上げるためには直鎖状よりは有橋環式化合物のほうが好ましいが、環式化合物は粘度が高いために露光装置ステージの高速スキャンに追随できない問題も孕んでいる。酸化ハフニウムのパーティクルは193nmにおける透明性が高く、屈折率が2を超えるために、これを水やアルカン系溶液に分散させた高屈折率液体が検討されている。ところが、酸化ハフニウムを水に分散させて屈折率を1.8にまで上げるためには30質量%以上混ぜなければならないが、混合物の粘度が非常に高くなるために、高速スキャンは不可能である。また、屈折率1.8の液体が開発された場合、屈折率の最小がレジスト膜になるために、レジスト膜も1.8以上に高屈折率化する必要がある。
【0006】
ここで最近注目を浴びているのは1回目の露光と現像でパターンを形成し、2回目の露光で1回目のパターンの丁度間にパターンを形成するダブルパターニングプロセスである(非特許文献3:Proc.SPIE Vol.5754,p.1508(2005))。ダブルパターニングの方法としては多くのプロセスが提案されている。例えば、1回目の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて1回目の露光のスペース部分にフォトレジスト膜の露光と現像でラインパターンを形成してハードマスクをドライエッチングで加工して初めのパターンのピッチの半分のラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、1回目の露光と現像でスペースとラインが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクをドライエッチングで加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に2回目のスペースパターンを露光しハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工する。
【0007】
前述の方法では、ハードマスクを2回敷く必要があり、後者の方法ではハードマスクが1層で済むが、ラインパターンに比べて解像が困難なトレンチパターンを形成する必要がある。後者の方法では、トレンチパターンの形成にネガ型レジスト材料を使う方法がある。これだとポジパターンでラインを形成するのと同じ高コントラストの光を用いることができるが、ポジ型レジスト材料に比べてネガ型レジスト材料のほうが溶解コントラストが低いために、ポジ型レジスト材料でラインを形成する場合に比較してネガ型レジスト材料で同じ寸法のトレンチパターンを形成した場合を比較するとネガ型レジスト材料を使ったほうが解像性が低い。後者の方法で、ポジ型レジスト材料を用いて広いトレンチパターンを形成してから、基板を加熱してトレンチパターンをシュリンクさせるサーマルフロー法や、現像後のトレンチパターンの上に水溶性膜をコートしてから加熱してレジスト膜表面を架橋させることによってトレンチをシュリンクさせるRELACS法を適用させることも考えられるが、プロキシミティーバイアスが劣化するという欠点やプロセスが更に煩雑化し、スループットが低下する欠点が生じる。
【0008】
前者、後者の方法においても、基板加工のエッチングは2回必要なため、スループットの低下と2回のエッチングによるパターンの変形や位置ずれが生じる問題がある。
【0009】
エッチングを1回で済ませるために、1回目の露光でネガ型レジスト材料を用い、2回目の露光でポジ型レジスト材料を用いる方法がある。1回目の露光でポジ型レジスト材料を用い、2回目の露光でポジ型レジスト材料が溶解しない炭素数4以上の高級アルコールに溶解させたネガ型レジスト材料を用いる方法もある。これらの場合、解像性が低いネガ型レジスト材料を使うと解像性の劣化が生じる。
【0010】
1回目の露光と2回目の露光の間にPEB(post−exposure bake)、現像を行わない方法は、最もシンプルでスループットが高い方法である。この場合、1回目の露光を行い、位置をずらしたパターンが描画されたマスクに交換して2回目の露光を行い、PEB、現像、ドライエッチングを行う。しかしながら、1回目の露光の光エネルギーと2回目の光エネルギーが相殺されるために、コントラストが0になってパターンが形成されなくなる。この場合、2光子吸収の酸発生剤やコントラスト増強膜(CEL)を使って酸発生を非線形にしてやるとハーフピッチだけずらした露光でもエネルギーの相殺が比較的小さく、低いコントラストながらもずらした分だけピッチが半分になったパターンが形成できることが報告されている(非特許文献4:Jpn.J.App.Phys.Vol.33(1994),p.6874−6877,Part 1,No.12B,December,1994)。
【0011】
ダブルパターニングにおいて最もクリティカルな問題となるのは、1回目のパターンと2回目のパターンの合わせ精度である。位置ずれの大きさがラインの寸法のバラツキとなるために、例えば32nmのラインを10%の精度で形成しようとすると、単純には3.2nm以内の合わせ精度が必要となる。現状最新のArF液浸スキャナーの合わせ精度は、同一露光機でウエハー毎の値が8〜6nm程度である。ウエハー毎というのは、露光現像したレジストアライメントパターンに対して露光機でアライメントを行った場合であり、これでは大幅な改善が必要である。ウエハーを一度もチャックから外さずに1回目の露光と2回目の露光を行った場合は、チャック再装着による位置ズレをキャンセルできるためにアライメント精度が向上し、5〜4nm程度になる。ダブルパターニングの場合、ウエハーをチャックから外さずに複数回の露光を行うことは、アライメント精度が向上する分だけ実現可能な露光方法となり得る。上記2光子吸収レジストなど非線形エネルギー分布を形成してピッチを半分にする露光は、ウエハーをチャックから外さずに露光位置をピッチの1/4だけずらして連続露光を行う。波長193nmの露光に感光する非線形レジストやCELの報告は未だないが、これができ上がれば最小限のアライメントエラーで行うことができるダブル露光が現実味を帯びてくる。
【0012】
ダブルパターニングに限らず、細いスペースパターンやホールパターンを形成する技術としては、前述のネガ型レジスト材料を用いる方法や、サーマルフロー法、RELACS法が挙げられるが、ネガ型レジスト材料はレジスト材料自身の解像性が低い問題点と架橋システムを用いているために微小ホールパターンではブリッジが発生してしまう問題があり、サーマルフロー法とRELACS法は熱による寸法シュリンク時にバラツキが生じやすい問題があった。
【0013】
ここで、図1は、ポジ型フォトレジスト材料を用いて露光によってホールパターンを形成する方法を示すもので、(A)は基板100上の被加工基板101にフォトレジスト膜102を塗布、形成した状態、(B)はフォトレジスト膜102を所用パターンが形成されたフォトマスクを介して露光後、現像してフォトレジストパターン102aを形成した状態、(C)はこのフォトレジストパターン102aをマスクとして被加工基板101をエッチングした状態を示す。
【0014】
一方、ポジ型パターンを反転させてネガ型パターンを形成する方法は古くからよく知られており、例えば特開平2−154266号公報(特許文献1)、特開平6−27654号公報(特許文献2)にはパターン反転可能なナフトキノンレジスト材料を用いる方法、FIB露光で硬化させた部分をその後の全面照射によって残す方法(特許文献3:特開昭64−7525号公報)、ナフトキノンジアジドの感光剤が露光によって生じたインデンカルボン酸を、塩基存在下における加熱処理でインデンにすることによってアルカリ不溶にし、全面露光によってポジネガ反転を生じさせる方法(特許文献4:特開平1−191423号公報、特許文献5:特開平1−92741号公報)が提案されている。図2は、このポジネガ反転方法を示すもので、(A)は基板100上の被加工基板101にフォトレジスト膜102を塗布、形成した状態、(B)は所用パターンが形成されたフォトマスクを介してフォトレジスト膜102を露光、加熱した状態、(C)はフォトレジスト膜102をフラッド露光した状態、(D)は現像によるパターン反転を行ってパターン反転用膜103を形成した状態、(E)はパターン反転用膜103をマスクにして被加工基板101をエッチングした状態を示す。
【0015】
また、現像液を変えることによるポジネガ反転方法では、t−BOC(tert−ブトキシカルボニル基)で部分保護したヒドロキシスチレンの有機溶剤現像や、超臨界二酸化炭素による現像によってネガ型パターンを得る方法が提案されている。
【0016】
珪素含有材料を用いたポジネガ反転技術としては、ポジ型レジストパターンのスペース部分をシリコン含有膜で覆い、酸素ガスエッチングでエッチングすることによって、ポジパターン部分をエッチング除去してシリコン含有膜パターンを得るポジネガ反転を行い、微細ホールパターンを形成する方法が提案されている(特許文献6:特開2001−92154号公報、特許文献7:特開2005−43420号公報)。図3は、これを示すもので、(A)は基板100上の被加工基板101に下層膜104を介してフォトレジスト膜102を形成した状態、(B)は所定のパターンが形成されたフォトマスクを介して露光、現像し、フォトレジストパターン102aを形成した状態、(C)はフォトレジストパターン102aを架橋した状態、(D)は架橋フォトレジストパターン102aを覆って、下層膜104上にSOG膜105を形成した状態、(E)はCMP又はCF系ガスによるライトエッチングを行って架橋フォトレジストパターン102aを露頭させた状態、(F)は酸素ガス、水素ガスエッチングによりパターン反転させた状態、(G)はパターン化されたSOG膜105をマスクにして被加工基板101をエッチングした状態を示す。
【0017】
ラインパターンに比べてホールパターンは微細化が困難である。従来法で細かなホールを形成するために、ポジ型レジスト膜にホールパターンマスクを組み合わせてアンダー露光で形成しようとすると、露光マージンが極めて狭くなってしまう。そこで、大きなサイズのホールを形成し、サーマルフローやRELACS法等で現像後のホールをシュリンクする方法が提案されている。しかしながら、現像後のパターンサイズとシュリンク後のサイズが大きく、シュリンク量が大きいほど制御精度が低下する問題がある。ポジ型レジスト膜を用いてダイポール照明を用いてX方向のラインパターンを形成し、レジストパターンを硬化させ、その上にもう一度レジスト材料を塗布し、ダイポール照明でY方向のラインパターンを露光し、格子状ラインパターンのすきまよりホールパターンを形成する方法(非特許文献5:Proc.SPIE Vol.5377,p.255(2004))が提案されている。高コントラストなダイポール照明によるX、Yラインを組み合わせることによって広いマージンでホールパターンを形成できるが、上下に組み合わされたラインパターンを寸法精度高くエッチングすることはむずかしい。X方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクとY方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクを組み合わせてネガ型レジスト膜を露光してホールパターンを形成する方法が提案されている(非特許文献6:IEEE IEDM Tech.Digest 61(1996))。但し、架橋型ネガ型レジストは超微細ホールの限界解像度がブリッジマージンで決まるために、限界寸法がポジ型レジストに比べて大きいという欠点がある。
【0018】
白点に比べて、黒点のほうがより微細なパターンを形成できる。位相シフトマスクを用いてホールサイズを小さくしていくと、白い点が黒い点に反転し、非常に小さくコントラストの高い黒点が形成されるサイズが存在する。これにネガ型レジスト膜を組み合わせて微細な密集ホールを形成した例が報告されている(非特許文献7:Proc.SPIE Vol.4000,p.266(2000))。透過率が20%の高等化率のハーフトーン位相シフトマスクを用いると更にコントラストは向上し、同じようにネガ型レジスト膜と組み合わせた場合、マスクエラーファクター(MEEF)0が得られている(非特許文献8:Proc.SPIE Vol.5040,p.1258(2003))。
また、クロムレス位相シフトマスク(CPL)はハーフトーン位相シフトマスクよりもコントラストを上げる効果が高いことが報告されている(非特許文献9:Proc.SPIE Vol.1496,p.27(1990))。CPLをコンタクトホール、ラインアンドスペース、長軸ドット、2次元のゲートパターンに適用した結果が報告されている(非特許文献10:Proc.SPIE Vol.4691,p.446(2002))。
【0019】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、粗密バイアスが拡大する。特にホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはフォトレジスト材料の特性、即ち溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、フォトレジスト材料の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化する、フォトレジスト材料の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジ型レジストパターンを溶解させないアルコール溶媒のネガ型レジスト膜を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作成する方法(Pack and unpack;PAU)が提案されている(非特許文献11:Proc.SPIE Vol.5753,p.171(2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ズレが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平2−154266号公報
【特許文献2】特開平6−27654号公報
【特許文献3】特開昭64−7525号公報
【特許文献4】特開平1−191423号公報
【特許文献5】特開平1−92741号公報
【特許文献6】特開2001−92154号公報
【特許文献7】特開2005−43420号公報
【特許文献8】特開2007−171895号公報
【特許文献9】特開2006−293298号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Proc.SPIE Vol.4690,xxix
【非特許文献2】Proc.SPIE Vol.5040,p.724
【非特許文献3】Proc.SPIE Vol.5754,p.1508(2005)
【非特許文献4】Jpn.J.App.Phys.Vol.33(1994),p.6874−6877,Part 1,No.12B,December,1994
【非特許文献5】Proc.SPIE Vol.5377,p.255(2004)
【非特許文献6】IEEE IEDM Tech.Digest 61(1996)
【非特許文献7】Proc.SPIE Vol.4000,p.266(2000)
【非特許文献8】Proc.SPIE Vol.5040,p.1258(2003)
【非特許文献9】Proc.SPIE Vol.1496,p.27(1990)
【非特許文献10】Proc.SPIE Vol.4691,p.446(2002)
【非特許文献11】Proc.SPIE Vol.5753,p.171(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
非常に微細なホールパターンを形成する場合、ネガ型レジスト膜を用いてX方向とY方向のラインパターンのマスクを用いたダブルダイポールリソグラフィーにおいて、ポジ型レジスト膜に比べて解像性が低いことによる微細パターンが形成できない問題や、2回の露光が必要であるためにスループットが低下する問題がある。一方、解像性の高いポジ型パターンを得た後、ネガ型に反転することができればネガ型レジスト膜を使うことによる解像性の問題は解決され、1回の露光でダブルダイポールリソグラフィーと同程度の高解像性を得ることができる露光方法を適用することができれば、スループット低下の問題は解決される。
【0023】
上述した通り、高い解像性が得られるポジ型レジスト膜より得たポジ像をネガ型パターンに反転する方法は種々報告されている。特に上述の特開2005−43420号公報(特許文献7)では、ポジネガ反転をするためのシリコン系埋め込み材料が有機溶剤系組成物である場合についても言及している。それ以前の反転用膜形成材料に水溶性珪素樹脂を用いる方法では、ポジ型パターンが形成された基板に、もし有機溶剤系の反転用膜形成材料組成物を塗布すると、ポジ型パターンが塗布に使用される有機溶剤で崩壊するおそれがあったが、有機溶剤に耐性を与えるためのEB等によるキュアでレジストパターンを形成する樹脂間を架橋させて溶剤に対する不溶化を行うと、有機溶剤系の反転用膜形成材料組成物が利用でき、材料の選択幅が大幅に広げられることが開示されている。しかし、この処理を行った場合、反転するための最終段階でのレジストパターンの除去は、ポジ型パターンが不溶化されているために溶解による除去方法を使うことができず、現状の技術では反応性ドライエッチングによる方法を取らざるを得なくなる。そこで、反転用膜形成材料としてはシリコンやチタン等を含有する選択的にドライエッチング可能な材料を選択せざるを得ない。
レジストパターン上に塗布された珪素樹脂をフルオロカーボンガス等によるエッチングによってエッチバックしてレジストパターンを表面に露出させて酸素ガス及び水素ガスによるドライエッチングでイメージを反転させる。イメージの反転を行うためにエッチバックとエッチングの2つのエッチングとガス交換を行う必要があるために、この方法ではスループットが低下する。
【0024】
一方、特開2001−92154号公報(特許文献6)ではポジ型パターンをウェットエッチングによって除去することが有利であることが開示されており、その方法として、ポジ型パターンを得た後、特別な処理を行わずに有機シリコンの有機溶剤溶液を塗布して有機シリコンによる反転用膜を形成する方法が開示されている。また、この特開2001−92154号公報(特許文献6)ではインターミキシングによるポジ型パターンのダメージについては触れられておらず、有機シリコン組成物の調製に使用する溶剤は高極性のもの(例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エステルのようなヒドロキシ基を持つものや、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなエステル類、アセトンのようなケトン類等)も低極性のもの(例えばトルエン、クメン等)と同様に使用できることが記述されているが、実施例ではトルエン、クメンの例が挙げられているのみである。ところがこれの追試として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートや乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような高極性溶剤を含有する溶剤を反転用膜の溶剤に用いて、特別な処理を行わないポジ型パターン上に塗布してみたところ、パターンが塗布溶剤によって溶解を起こし、要求精度を満たすポジネガ反転を行うことはできなかった。そこで、この方法では事実上低極性溶剤に高い溶解性を示す反転用膜用材料しか採用することができず、ノボラックやポリヒドロキシスチレン系ポリマー、ヒドロキシ基やラクトンを多量に含有する脂環式ポリマーのような、基板密着性が高い極性基を高濃度に有する反転用膜用材料を採用することができないことが判明した。
【0025】
X方向の密集ラインとこれと交差するY方向の密集ラインによるダブルダイポールリソグラフィーでネガ型レジスト材料を用いると、ラインの限界解像度と同程度の極めて密集のホールパターンを得ることができる。ダブルダイポールリソグラフィーは、フルフィールドの露光を行う場合、2枚のマスクを交換して2回の露光が必要である。更に、密集パターンと孤立パターンが混在するロジックデバイスパターンを形成しようとする場合は、まず2回のダブルダイポールによる密集パターンを露光し、次いで不必要なパターンを露光する。合計3回の露光が必要となり、スループットの大幅な低下は免れない。
現状の露光装置のマスクステージは1個であり、1枚ごとのウエハーの露光で3枚のマスクを交換しながら露光を行うようにはなっていない。マスクの交換ごとにアライメントが必要であり、3回の露光の露光時間だけでなくマスクの交換とそのアライメントの時間が加わるために大幅なスループットの低下につながる。
【0026】
本発明は、上記事情を改善したもので、ポジ型レジスト膜を用い、1回の露光で密集したドットパターンを露光し、これを用いてポジネガ反転によってホールパターンを形成するパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために、本発明者らは種々の検討を行った結果、遮光部のない透明なクロムレス位相シフトマスクを用いて1回の露光でポジ型レジストパターンの超密集のドットパターンを形成し、ポジ型レジストパターン中の化学増幅ポジ型レジスト材料用樹脂の部分架橋化処理を行うことによって、必要な有機溶剤耐性を得られる程度で架橋を進行させ、かつアルカリ性ウェットエッチング液に溶解させることが可能であること、上記操作をポジネガ反転によるネガ型パターン形成方法に組み入れれば、反転用膜材料に、従来のシリコン系の材料のみならず、芳香族系樹脂や多環式化合物樹脂のような有機非シリコーン系樹脂の反転用膜形成材料が適用可能となることを知見した。
【0028】
ここで、本発明によれば、不必要なドットパターンがある場合は、必要なドットパターンだけを遮光したマスクを用いた連続露光を行い、現像することによって密集パターンと孤立パターンの混在したドットパターンを得る。連続した露光はウエハーチャックから一度も外すことなく行われるために、最小限のアライメントエラーで粗密のドットパターンが形成できる。ポジ型ドットパターンを形成した基盤を高温でベークすることによって、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を必要限度で与え、かつアルカリ性エッチング液への溶解性を確保することによって、最終的にネガ像を得る工程をアルカリ性エッチング液によるウェットエッチングで行うポジネガ反転によってホールパターンを形成するパターン形成方法を提供することができ、これによりシリコン系の材料のみならず、芳香族系樹脂や多環式化合物樹脂のような有機非シリコーン系樹脂の反転用膜形成用組成物の適用を可能とする技術を提供することができる。また、上記反転用膜形成用組成物の調製に使用する溶剤にヒドロキシ基を有するものや、エステル類、ケトン類のような高極性溶剤を使用することも可能とする技術を提供することができ、更に、これによって密集ホールと孤立ホールの両方のホールパターンを、広いマージンを持って形成することができるポジネガ反転を用いたパターン形成方法を提供することができる。
【0029】
従って、本発明は、下記のパターン形成方法を提供する。
請求項1:
被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有し、上記酸不安定基の脱離によってアルカリ現像液に可溶になる樹脂、高エネルギー線の露光により酸を発生する光酸発生剤又は該光酸発生剤と加熱により酸を発生する熱酸発生剤、及び有機溶剤を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜にクロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いて高エネルギー線を露光し、露光後加熱し、露光によって上記酸発生剤から発生した酸を樹脂の酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該工程で得られたポジ型パターンを露光もしくは加熱し、これにより生じた酸あるいは熱により該ポジ型パターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させてアルカリ溶解性を向上させ、かつ該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、上記ポジ型パターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記架橋が形成されたポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含むポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項2:
ドット形状のクロムレスのシフターを用い、該シフターのドット部分に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項3:
格子状に配列されたクロムレスのシフターを用い、該シフターの格子の隙間に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項4:
クロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いた密集パターンの露光と、不必要な密集パターンを除去させるための露光を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項5:
クロムレスの位相シフトマスクを用いた密集パターンの露光と、不必要な密集パターンを除去させるための露光が同じ露光ステージ上でステージからウエハーが離されることなく連続して行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項6:
上記レジストパターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程で得られる上記架橋形成ポジ型パターンのアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際、エッチング速度が2nm/秒を超えるものであり、かつ上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタノンから選ばれる1種以上を含む単独又は混合溶剤であり、上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性は、上記架橋形成ポジ型パターンを該反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に30秒間触れさせた時の膜減りが10nm以下である耐溶剤性を有するものである請求項1乃至5のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項7:
上記反転用膜形成用組成物は、芳香族骨格あるいは脂環式骨格を有するモノマーユニットを含む樹脂を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項8:
上記反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程と上記架橋形成ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程との間に、上記架橋形成ポジ型パターン上に積層された反転用膜を該ポジ型パターンが露出するまで除去する工程を含む請求項1乃至7のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項9:
上記ポジ型パターン上に積層された反転用膜を除去する工程は、ウェットエッチングである請求項8記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項10:
上記反転用膜は、アルカリ性ウェットエッチング液で処理した際、上記有機溶剤に対する耐性を与える工程後の架橋形成ポジ型パターンよりも溶解速度が遅く、かつ溶解性を示す材料であり、更に上記ウェットエッチングにアルカリ性ウェットエッチング液を用い、架橋形成ポジ型パターン上に積層された反転用膜を除去する工程と上記ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程は同時に行うものである請求項9記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項11:
上記反転用膜の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際の溶解速度は、0.02nm/秒以上2nm/秒以下である請求項10記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項12:
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記レジストパターンに有機溶剤に対する耐性を与える工程における加熱で酸を発生する成分を含有するものである請求項1乃至11のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項13:
上記加熱で酸を発生する成分は、光酸発生剤とは別に添加される熱酸発生剤である請求項12記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項14:
上記熱酸発生剤が下記一般式(P1a−2)で示されることを特徴とする請求項13記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化1】
(式中、K-はα位の少なくとも1つがフッ素化されたスルホン酸、又はパーフルオロアルキルイミド酸もしくはパーフルオロアルキルメチド酸である。R101d、R101e、R101f、R101gはそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていてもよい。R101dとR101e又はR101dとR101eとR101fとはこれらが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e又はR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基であるか、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
請求項15:
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記樹脂としてラクトン環を有する繰り返し単位と、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト材料である請求項1乃至14のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項16:
上記化学増幅ポジ型レジスト材料によるレジストパターンの架橋形成が該レジスト材料の樹脂中のエステル基、環状エーテル等の求電子性部分構造によることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項17:
ポジ型レジスト材料が、7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位と、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト材料であり、ポジ型パターン中に酸を発生させると共に熱を加えて、ポジ型パターン中の樹脂の酸不安定基を脱離させる際、該ポジ型パターン中の樹脂の架橋と酸不安定基の脱離とを同時に行うようにした請求項16記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項18:
7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位が、下記一般式(1)に示される繰り返し単位(a)で示される請求項17記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化2】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよいが、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の場合、式中のエステル基に連結した炭素原子は一級又は二級である。R3、R4、R5は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
請求項19:
酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位(b)である請求項15乃至18のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化3】
(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7は酸不安定基を示す。bは0<b≦0.8である。)
請求項20:
R7の酸不安定基が酸によって脱離する脂環構造の酸不安定基である請求項19記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項21:
上記ポジ型パターンはドットパターンを含むものであり、上記反転で得られるパターンはホールパターンを含むものである請求項1乃至20のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項22:
上記ポジ型パターンは密集ドットパターンと孤立ドットパターンの両方を含むものであり、上記反転で得られるパターンは密集ホールパターンと孤立ホールパターンを含むものである請求項1乃至21のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項23:
上記ポジ型パターンは密集ドットパターンを露光し、不必要なドットパターン部分を露光することによって密集ドットパターンと孤立ドットパターンを形成し、上記ポジネガ反転によって密集ホールパターンと孤立ホールパターンを形成するものである請求項22記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項24:
被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有する樹脂を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、加熱により不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、レジスト膜上に保護膜形成用組成物を塗布し、加熱により不要な溶剤を除去して保護膜を形成する工程、レジスト膜と投影レンズとの間に水又は屈折率が1以上の透明液体を介在させて該レジスト膜に高エネルギー線の繰り返し密集パターンを液浸露光し、更に不必要な密集パターンの未露光部を液浸露光し、露光後加熱により露光によって発生した酸を酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該ポジ型パターンを得る工程で得られたレジストパターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させると共に、該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、レジストパターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含む請求項1乃至23のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項25:
保護膜形成用組成物が、アミノ基を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物をベースにしたものであることを特徴とする請求項24記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項26:
保護膜形成用組成物が、アミン化合物を含有することを特徴とする請求項24又は25記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項27:
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上に珪素を含有する中間膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては炭化水素系の材料からなることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項28:
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては珪素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
請求項29:
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上に有機反射防止膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては珪素を含有する材料からなることを特徴とする請求項28記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【0030】
ここで、本発明において、図5は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ80nm、ラインサイズ40nmのY方向ラインの光学像を示す。図6は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ80nm、ラインサイズ40nmのX方向ラインの光学像を示す。色が濃いほうが遮光部分、白いほうが光の強い領域である。図7は、Y方向ラインにX方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージである。XとYのラインの組み合わせで格子状のイメージができ上がるように思われるがそうではなく、光の弱い部分のパターンは円形である。円形のサイズが大きい場合は菱形形状で隣のパターンとつながりやすいが、円のサイズが小さいほど円形度合いが向上することが示されている。
【0031】
図7の光学像イメージを元に、レジスト膜のパターン形状シミュレーションを行ったのが図8である。ここで、Z方向はレジスト膜の溶解速度の対数を逆数にしているが、これがレジスト膜のパターンの形状を反映している。上記X、Yラインの2回の露光によるダブルダイポールリソグラフィーを用いれば、80nmピッチのポジ型レジスト膜のドットパターンが形成できることが示されている。このように2回のダブルダイポール露光を用いることによってラインパターンの限界解像度に近い80nmピッチのポジ型レジスト膜のドットパターンが形成可能になる。
【0032】
1度の露光でドットパターンを形成しようとした場合、従来の方法では図17に示されるようなレイアウトのドットパターンが配されたマスクが用いられてきた。ピッチ80nm、ドットサイズに+10nmのバイアスを付けた50nmのドットパターンのマスクを用いたときの光学イメージを図9に示す。ピッチが狭くなってくると漏れ光の影響でドットの遮光部のコントラストが低下し、図10に示されるシミュレーションのレジストパターンは図8に比べても明らかにレジストトップが三角形で膜減りが生じている。
【0033】
一方、図18に示されるレイアウトのパターンが配されたクロムレス位相シフトマスクを用いると、図11に示されるようにマスクパターンの四角の中心に微細な黒点が発生するため、図12に示されるように膜減りの小さなドットパターンが形成可能となる。
【0034】
図11は、ピッチ80nm、線幅30nmの格子部分にシフターを配したクロムレス位相シフトマスクの光学コントラストであり、図12は、これに対応するレジスト形状シミュレーション結果である。図8の場合のダブルダイポールに比べて露光量が多く必要であるが、むしろ図8よりも図12のほうがドットパターンの残膜率が向上している。図13は、ピッチ80nm、50nmドットのシフターを配したクロムレス位相シフトマスクの光学コントラストであり、図14は、これに対応するレジスト形状シミュレーション結果である。クロムレス位相シフトマスクのシフターの位置としては、格子部分と格子の隙間のドット部分とで光学コントラストに違いはなく、どちらを適用することも可能である。
【0035】
図15は、ピッチ78nm、線幅29nmの格子部分にシフターを配したクロムレス位相シフトマスクの光学コントラストであり、図16は、これに対応するレジスト形状シミュレーション結果であり、十分にパターンが形成可能であることが示されている。
【0036】
従来はホールを開ける場所に、透明なホールパターンを配したマスクを用いていたが、本発明のポジネガ反転技術では、クロムレス位相シフトマスクの格子状のラインの隙間にドットを形成し、これを反転させてホールパターンを形成する。従来法でホールパターンを形成するマスクも、本発明のドットを形成してこれを反転させてホールにする方法も、用いられるマスクのパターンは同じ格子状であるが、最終的に形成されるホールの位置は同じになる。
密集パターンと孤立パターンとが共存しているホールパターンを形成しようとする場合、密集ホールと孤立ホールの寸法差(プロキシミティーバイアス)が生じる。プロキシミティーバイアスが大きくなると、同一の露光量では孤立パターンと密集パターンのどちらか一方のパターンが形成されなくなる。輪帯照明、クロスポール照明、ダイポール照明等の斜入射照明を用いると密集パターンの解像性が向上するが、孤立パターンの解像度は向上しないかむしろ劣化するためプロキシミティーバイアスが増大する問題が生じる。図19は、図18のマスクを用いて形成される密集ドットパターンである。図20は、不必要なドットパターンを消去するためのマスクパターンを示す。図21では、密集ドットとドット消去マスクパターンとを重ねている。図22は、部分的に消去されたドットパターン、図23は、前記ドットパターンをポジネガ反転して形成したホールパターンを示す。図18のマスクと、図20のマスクの露光は1台のスキャナー内で連続して行ってもよいし、2台のスキャナーを並べて連続して露光してもよいし、図18のマスクの露光を行い、PEBと現像によって図19のドットを形成した後に図20のマスクを用いて部分的なドットの消去のための露光と現像を行ってもよい。1台のスキャナーの1つのステージ上で2つのマスクを用いて露光することは、ステージをウエハーが離れることなく2回の露光が行われるために最もアライメント精度が高いが1枚のウエハーを露光するために2枚のマスクが必要である。2枚のマスクを交換しながら連続して露光するためには、予めウエハーステージとアライメントされている2つのレチクルステージとアライメント機構を有する露光機が必要である。
【0037】
密集ドットを露光した後に不必要なドットを消去するための露光を行う方法では、繰り返しドットパターンの露光による同一寸法のドットを形成するために、その後のドット消去露光によってランダムピッチのドットパターンが形成されてもプロキシミティーバイアスが発生しない。
【0038】
前述のPAU(Pack and unpack)法は、ポジ型レジスト膜を用いて1回目の露光によって密集ホールを形成し、その上にポジ型レジストパターンを溶解させないアルコールや水に溶解させたネガ型レジスト膜をコートし、露光によって不必要なホールパターンを消去する。これも寸法が均一な密集パターンを始めに形成するために、プロキシミティーバイアスが発生しない。PAU法は、1回目の露光はホールパターンを露光するために、通常の露光方法に比べて解像力が向上することはなく、ただプロキシミティーバイアスが無くなるだけである。
しかしながら、本発明のパターン形成方法では、高コントラストな格子状ラインパターンのマスクを用いてドットパターン形成を行うために、ホールを形成する従来の方法に比べて解像性も大幅に向上する。
【発明の効果】
【0039】
ダブルダイポールリソグラフィーとネガ型レジスト膜を組み合わせて微細なホールを形成していた方法に比べて、本発明のパターン形成方法ではポジ型レジスト膜を用いて1回の露光でダブルダイポールと同じ解像性を有するドットパターンを形成し、これをポジネガ反転することによってホールパターンを形成することが可能になる。ネガ型レジスト膜に比べて、高解像なポジ型レジスト膜を用いることによって解像性やフォーカスマージン、露光マージン等のプロセスマージンが拡大する。ポジネガ反転は、現像液によるウェットエッチングによって行うために、従来のドライ現像に比べてスループットが高く、ドライ現像のためのエッチング装置を必要としない。ダブルダイポールリソグラフィーには2枚のマスクが必要であったが、本発明のパターン形成方法では、格子状パターンの位相シフトマスク1枚だけでダブルダイポールリソグラフィーと同等の解像力を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来の方法として、ポジ型フォトレジスト材料を用いて露光によってホールパターンを形成する方法を説明する断面図であり、(A)はフォトレジスト膜の形成、(B)はフォトレジスト膜の露光、現像、(C)は被加工基板エッチングを行った状態を示す。
【図2】従来の方法として、キノンジアジド−ノボラック樹脂のポジ型i線、g線レジスト材料を用いてイメージリバーサル法を説明する断面図で、(A)はフォトレジスト膜の形成、(B)はフォトレジスト膜の露光、加熱、(C)はフラッド露光、(D)は現像によるパターン反転、(E)は被加工基板エッチングを行った状態を示す。
【図3】従来の方法として、現像後のレジスト膜のハードニングとSOG膜の埋めこみによるイメージリバーサル法を説明する断面図で、(A)はフォトレジスト膜の形成、(B)はフォトレジスト膜の露光、現像、(C)はフォトレジスト膜の架橋、(D)はSOG膜塗布、(E)はCMP又はCFガスによるライトエッチング、(F)は酸素ガス、水素ガスエッチングによるパターン反転、(G)は被加工基板エッチングを行った状態である。
【図4】本発明のパターン形成方法を説明する断面図であり、(A)は、基板上に被加工基板、レジスト膜を形成した状態、(B)は、レジスト膜を露光、現像した状態、(C)は、レジストパターンを酸と熱によって脱保護し、架橋した状態、(D)は、パターン反転用膜を塗布した状態、(E)は、パターン反転用膜を現像し、ポジネガ反転した状態、(F)は、ポジネガ反転したパターンを用いて被加工基板をエッチングした状態を示す。
【図5】NA1.3レンズでのY方向ライン、ダイポール照明、s偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクを用いた場合の光強度を示す。色が黒いほど光強度が弱い。
【図6】NA1.3レンズでのX方向ライン、ダイポール照明、s偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクを用いた場合の光強度を示す。色が黒いほど光強度が弱い。
【図7】NA1.3レンズでの図5のY方向ラインと図6のXラインを重ねた、ダブルダイポール露光の光強度を示す。色が黒いほど光強度が弱い。
【図8】NA1.3レンズでのダブルダイポール照明露光を行った場合のレジスト形状シミュレーションを示す。Z軸はレジストの溶解速度の対数を逆数にしたもので、ドットパターンのレジスト形状が現されている。この時の露光量が20mJ/cm2である。
【図9】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ80nm、50nmドットパターンの光学像である。
【図10】図9の光学像におけるレジスト形状シミュレーションである。
【図11】NA1.3レンズ、クロスポール照明、ピッチ80nm、30nmラインのシフターがクロムレス位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ80nm、50nmドットパターンの光学像である。
【図12】図11の光学像におけるレジスト形状シミュレーションである。
【図13】NA1.3レンズ、クロスポール照明、ピッチ80nm、50nmドットのシフターがクロムレス位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ80nm、50nmドットパターンの光学像である。
【図14】図13の光学像におけるレジスト形状シミュレーションである。
【図15】NA1.3レンズ、クロスポール照明、Azimuthally偏光照明でのピッチ78nm、幅29nmのラインのシフターがクロムレス位相シフトマスクの光学像である。
【図16】図15の光学像におけるレジスト形状シミュレーションである。
【図17】ドットパターンが配されたレイアウトのマスクパターンである。
【図18】クロムレス位相シフトマスクパターンである。
【図19】露光と現像によって形成された密集ドットパターン(黒色が残しパターン)である。
【図20】不必要なドットパターンを消去するためのマスクパターンである。遮光部分を黒色で示す。
【図21】密集ドットと、ドット消去マスクを重ねた図である。
【図22】ドット消去露光によって現像されてでき上がった粗密混在のドットパターンである。
【図23】ポジネガ反転によって形成された粗密混在のホールパターンである。
【図24】実施例に用いたドット形成用とドット消去用のマスクを示し、(A)は密集1:1ドット形成用マスク、(B)は不必要なドット消去用マスク、(C)は(A)と(B)を重ねた図である。(D)は現像後に形成された1:1ドットパターン、(E)は1:3ドットパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明のパターン形成方法は、上述したように、被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有し、上記酸不安定基の脱離によってアルカリ現像液に可溶になる樹脂、高エネルギー線の露光により酸を発生する光酸発生剤又は該光酸発生剤と加熱により酸を発生する熱酸発生剤、及び有機溶剤を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜にクロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いて高エネルギー線を露光し、露光後加熱し、露光によって上記酸発生剤から発生した酸を樹脂の酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該工程で得られたポジ型パターンを露光もしくは加熱し、これにより生じた酸あるいは熱により該ポジ型パターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させてアルカリ溶解性を向上させ、かつ該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、上記ポジ型パターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記架橋が形成されたポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含むポジネガ反転を用いたパターン形成方法である。
【0042】
この場合、ドット形状のクロムレスのシフターを用い、該シフターのドット部分に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成すること、あるいは、格子状に配列されたクロムレスのシフターを用い、該シフターの格子の隙間に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することが好ましい。
【0043】
このように、本発明はクロムレス位相シフトマスクを介して露光するものであるが、この場合、クロムレス位相シフトマスクは吸収を持たない位相シフトマスクであり、露光波長に対して位相を180度反転させる膜厚だけ石英基板を彫り込んだり、又は石英基板に位相を180度反転させる膜厚だけの透明膜のシフターを積層させる。
クロムレス位相シフトパターンを適用させるのは、マスク全面でも構わないが、マスク全面が透明基板の場合、マスク自体のアライメントやウエハーとのアライメントマークが転写できない問題があるため、目的とする微細なパターン以外のところはCrやハーフトーン位相シフトマスク等の遮光帯としておくことが好ましい。
【0044】
図17は、従来法でドットを形成するためのマスクパターンである。ドットを形成する部分に遮光帯が配されており、遮光帯がCrのバイナリーマスク及びハーフトーン位相シフトマスクが用いられている。Crマスクよりも、透過率6%程度のハーフトーン位相シフトマスクのほうがコントラストが向上するので好ましく用いられている。
【0045】
本発明のクロムレス位相シフトマスクのパターン配列は図18に示される。四角の中がシフターであっても、格子部分がシフターであってもよく、図12と14の比較で示されるように効果としては同じである。四角の中がシフターであっても、格子部分がシフターであっても四角の中心部分に非常に強い遮光部(黒点)を形成することができる。
クロムレスシフターが配された格子のライン幅は格子のピッチの半分よりも狭いほうが即ち四角のサイズがピッチの半分よりも広いほうが、より遮光性の高い黒点が格子の隙間部分に形成できる。ピッチ80nmの格子の場合は、ライン幅として40〜20nmが好ましく、30nm程度が最適である。この時に格子の隙間のサイズは一辺が50nm程度の四角形となる。なお、格子のライン幅、格子のピッチは、例えば図18に示した通りである。
【0046】
露光機の照明としては、X、Y格子のマスクの場合は、クロスポール照明と、X、Y偏光照明を組み合わせるのが最も好ましい。X、Y偏光照明の代わりにAzimuthally偏光照明でもよい。Azimuthally偏光照明はリング状の輪帯偏光照明であるが、X、Y方向の十字の最外郭だけを切り出したクロスポール照明との組み合わせは、X、Y偏光照明の効果は同じである。
【0047】
斜め45度の格子マスクを用いた場合は、斜め45度のクロスポールと、Azimuthally偏光照明を組み合わせる。クロスポールの代わりに輪帯照明とAzimuthally偏光照明を組み合わせてもよいし、ヘキサポールとAzimuthally偏光照明を組み合わせてもよいし、オクタポールとAzimuthally偏光照明を組み合わせてもよい。中心部分に小さな円形又は輪帯を有する輪帯照明、クロスポール、ヘキサポール又はオクタポールを用いてもよい。このような照明は、密集パターンと孤立パターンを1回の露光で同時に形成することができる。偏光照明は用いなくてもよいが、偏光照明を用いたほうがより微細なピッチのパターンを形成できる。最も微細なピッチを形成できるのがX、Y格子マスクと、クロスポール(それも最外郭部分を35度以下、好ましくは25度以下の角度で切り出した)と、X、Y偏光照明の組み合わせである。クロスポール照明の代わりにX、Yダイポールの2回露光を行うこともできる。実質的な効果はクロスポールとほぼ同じであるが、2回のダイポール露光はスループットの面で不利である。
【0048】
ラインパターンの原理的な解像限界は、波長をレンズのNAと4で割った値である。波長193nmArF露光でNAが1.30の場合、限界解像度は37.1nmである。実際には、偏光照明の変更率は100%ではないし、ダイポール照明の切り出し角度を20%よりも小さくすることは難しいので、理想的な光学像を形成することは不可能であるし、非常に微細なパターンではレジスト膜の解像性能の影響も大きいため、実際の限界解像度はピンポイントで38nm、ある程度マージンを持った解像限界は39nmである。
【0049】
しかしながら、本発明のパターン形成方法を用いれば、図16に示すように2次元パターンにもかかわらず、驚くべきことにラインと同じハーフピッチ39nmのドットが解像可能であることが示されている。しかも露光量を上げるに従ってドットの真円性が向上し、ポジネガ反転技術と組み合わせることによって通常のホール形成では最も苦手とするハーフピッチよりも狭いホールの形成が可能になるのである。
【0050】
解像性の高いポジ型レジスト材料を利用して、ポジ型レジスト材料をそのまま使ったのでは光学的に不利なパターンを、ポジネガ反転を用いて形成する試みは上述のようにすでにいくつか開発されてきた。この開発過程で克服された課題は、一旦形成されたポジ型のパターン上に反転用膜を成膜する際に、得られたパターンを崩壊させることなく新たな膜を成膜するためにはどうすればよいかということが、その一つである。この課題は、初めは反転用膜形成用組成物としてポジ型パターンが溶解しない水性の組成物を用いることが行われたが、反転用膜材料が水溶性という極めて限られたものとなってしまうことから、特開2005−43420号公報(特許文献7)ではEBキュアによってポジ型パターンを架橋し、溶剤や現像液に対して不溶化した後に反転用膜を形成することが提案された。また、もう一つの課題は、反転用膜に対してポジ型パターンをどのように選択的に除去するかであるが、これは特開2005−43420号公報(特許文献7)にあるように、反転用膜に酸素によるドライエッチングに耐性のあるSOGや、有機シリコーン材料を用いることで、選択的な除去を行ってきた。
【0051】
一方、特開2005−43420号公報(特許文献7)に示されたようなレジスト膜が高エネルギー光照射によって架橋、不溶化することは、化学増幅型レジスト材料開発初期に、高すぎる照射エネルギーを化学増幅型レジスト膜に照射した場合の現象として知られていた。即ち、化学増幅型レジストポリマーを構成するコンポ―ネントであるポリヒドロキシスチレン単位が強い光の照射を受けると、フェニル基が結合したメチンの水素ラジカルが脱離し、生じたラジカルによって樹脂間に架橋が形成されて、樹脂が不溶化する現象である。この架橋形成を引き起こすラジカル生成はスチレン骨格に限らず、ポリアクリル酸骨格でも同様に起こるものであると考えられ、更に、ヘテロ原子に結合したメチレンでも同様の架橋形成が起こるものと考えられる。しかし、本発明者らは、この架橋形成によるレジスト膜の不溶化は、光照射を段階的に行った場合、一気に不溶化するのではなく、溶解速度がやや下がる点を経て不溶化することを観察し、その利用を考えた。つまり、初めに観測される溶解速度の低下は、限定された範囲で分子内あるいは分子間の架橋が形成される効果と考え、また、限定された範囲で架橋された場合、アルカリ現像液に対する溶解速度を完全に失わずに、塗布溶剤のような有機溶剤に耐性が得られる可能性がある。そこで、そのようなアルカリ現像液に対する溶解速度を完全に失わずに、膜形成用組成物の溶剤として一般的に使用されるような有機溶剤に耐性を持つパターンの作成を検討したところ、そのようなパターンが実現可能であることを見出した。
【0052】
上記のようにポジ型パターンにアルカリ現像液に対する溶解性を完全に失わせずに、有機溶剤に耐性を与える方法を、ポジネガ反転を用いるパターン形成方法に組み入れてやると、次のようなポジ型パターンをネガ型パターンに反転させるパターン形成方法が可能になる。即ち、通常のポジ型パターンを得る方法に従い、まず化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布後、プリベークを行ってレジスト膜を得る。次に、パターン露光を行った後、露光後加熱を行って露光部の樹脂の酸不安定基を脱離させることにより露光部をアルカリ現像可溶性とする。更にアルカリ現像液による現像を行い、ポジ型パターンを得る。次に、ここで得たポジ型パターンに対して上述のアルカリ現像液に対する溶解速度を完全に失わずに、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程を行う。次いで反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を得たポジ型パターンが形成された基板に、該有機溶剤溶液である反転用膜形成用組成物を塗布して反転用膜を形成する。この際、反転用膜はポジ型パターンの間隙を完全に埋め込むように塗付されるが、ポジ型パターン上にもある程度積層される形で膜が成膜される場合もある。このような場合には、特開2001−92154号公報(特許文献6)や特開2005−43420号公報(特許文献7)に説明されているように、反転用膜を形成する工程の後、パターン上に積層された反転用膜を除去する工程を経て、ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で除去する工程を行うと、ポジ型パターンがなかった部分の反転用膜のみが残り、ポジネガ反転された反転用膜パターンが得られる。なお、アルカリ性ウェットエッチング液はポジ型パターンを溶解するためのものであり、必要に応じて濃度調整を行ってもよいが、上記ポジ型パターンを得るための現像液が使用できる。
【0053】
本発明の工程によるポジネガ反転を用いるパターン形成方法では、ポジ型パターンの除去に、従来の酸素によるドライエッチングを用いる必要がなく、大きく作業の簡便化が達成できる。更にこの方法によれば、反転用膜は芳香族系有機高分子材料による反射防止膜や、多層レジスト法に使用する有機下層膜をはじめとする通常の有機膜、特に当業者によく知られている芳香族骨格を持つ単位を多量に含有する樹脂、例えばノボラック系の樹脂(例えば、特開2007−171895号公報(特許文献8))や、ポリスチレン系の樹脂、アントラセン環やナフタレン環を含有するビニルエーテル系あるいはアクリル系の樹脂、またArFレジスト材料に使用されるような多分岐を持つ(いわゆる脂肪族多環式骨格)樹脂を含有する有機膜(例えば、特開2006−293298号公報(特許文献9))を反転用膜として使用することができる。もちろん、これら反転用膜は、ポジ型パターンとの間でアルカリウェットエッチング液に対するエッチング選択性をとれる程度の溶解速度差を有していれば、反射防止膜のように成膜時に架橋を形成して有機溶剤に不溶化するものであっても、そのような不溶化はしないものでもよい。もし、これら有機系材料膜を使用した場合には、反転によって得られた反転用膜パターンが従来の有機レジストパターンと同様に、金属珪素や珪素酸化物基板を加工するためのエッチングマスクとして直接利用できる。更によく知られるように、上記のような有機系の反転用膜を用いれば、金属珪素や珪素酸化物以外にも、珪素窒化物、珪素窒化酸化物、チタニウム酸化物、チタニウム窒化物、ゲルマニウム酸化物、ハフニウム酸化物による膜や基板の加工も可能である。
【0054】
また、更にもし反転用膜に後述のようなアルカリ微溶解性を持つものを使用した場合には、上述のポジ型レジストパターン上に積層した反転用膜の除去工程に、従来のようなドライエッチングによる方法や有機溶剤による剥離方法を用いずにアルカリ性ウェットエッチング液で除去することができる。そこで、この方法を採った場合には、レジストパターン上に積層した反転用膜とレジストパターンを1回の操作により同時に除去することが可能となることから、全体として大幅な工程の短縮が達成される。
【0055】
上述のようにアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を完全に失わせることなく、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性をポジ型パターンに与えることは、反転用膜の塗付成膜中にポジ型パターンが溶解によって変形あるいは崩壊してしまうことを防止する点であるが、これを適度なエネルギー量の高エネルギー線の照射で行うことができることは上述の通りである。しかし、本発明者らは、光や照射による架橋形成は、照射量の許容範囲や照射の均一性の問題から制御しにくい面もあるため、他の架橋形成方法の探索を行ったところ、熱により上記有機溶剤耐性を与える程度の限定的な架橋が可能であること、特に酸存在下での加熱によって、ラクトン骨格をはじめとする強い反応条件下で架橋形成能を持つユニットを持つレジスト材料により得たポジ型パターンを用いた場合には、目的通りの制御が比較的容易にできることを見出した。
【0056】
上述の熱によるアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わせることなく、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に耐性を与える工程は、用いるレジスト材料によって発生させるべき酸の量や、加熱すべき温度の最適値は異なるものの、その条件は次のような目安で設定することで本発明のパターン形成方法が容易に実施できる。即ち、使用するレジスト膜に対して適切な範囲で光やEB(電子線)等の高エネルギー線を照射後に熱を与えて、又は加熱のみによって、レジスト膜中に酸を発生させ、それを用いて樹脂の酸不安定基を脱離させてアルカリ性溶液に対する溶解性を与える。この際に同時に光又は熱によって部分的な架橋が形成され、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性が与えられる。上記で与えるべき溶解性の目安は、通常、レジスト膜のアルカリ現像に使用される2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際、エッチング速度が2nm/秒を超えるものとすることが好ましい。また、上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性は、上記耐性(架橋)処理後のレジストパターンを該反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に30秒間、より好ましくは60秒間触れさせた時の膜減りが10nm以下である程度の耐溶剤性を与えてやると、上述のような反転用膜を塗布した際にポジ型レジスト膜より得られたパターンが致命的なダメージを受けてしまい、望ましい形状のネガ型に反転されたパターンが得られなくなるという問題の発生を防止できる。なお、この処理条件を求める際には、上述の一連工程のうち、ポジ型パターン形成を行うためのパターン露光のみを省いてレジスト塗布、プリベーク、露光後加熱を行ったバルク膜に、上記アルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わせることなく、反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に耐性を与える工程候補となる条件を適用したものを用いれば、上述の2つの溶解速度を簡便に得られる。
【0057】
また、本発明が特に有効に用いることができる反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤は、後述の反転用膜形成用樹脂をよく溶解し、塗布性に優れる、上述のヒドロキシ基を持つ溶剤や、エステル類、ケトン類等であるが、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタノンから選ばれる1種以上を含有する単独又は混合溶剤である。更に、これらの溶剤に炭素数3〜10のアルコールや、トルエン、キシレン、アニソール等を加えてもよい。そこで、上記の反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性をポジ型パターンに与える基準として、それらの中から選んだ1種以上の溶剤による単独及び混合溶剤に対して30秒間、より好ましくは60秒間触れさせた時の膜減りが10nm以下である程度の耐溶剤性を持つような処理がされたものであれば、ユニバーサルに使用することができ、特に好ましい。
【0058】
ポジ型パターンに対する上記の加熱処理は、部分的な架橋を高エネルギー線の照射で行う場合には、加熱によって行う反応は酸不安定基の分解だけであるため、ポジ型パターンを得る際に使用した露光後加熱の温度、あるいはそれよりもやや低い温度による加熱でも十分である。しかし、高エネルギー線を用いない場合、あるいは高エネルギー線は酸を発生させることを主たる目的で使用、即ち、前工程でのパターン露光と同程度のエネルギー量を使用し、架橋は主に熱による反応で形成させる場合には、レジスト膜の成膜時に用いるプリベーク温度や露光後加熱温度よりも高い温度が設定されることが好ましい。この温度が前行程での加熱よりも低い設定とするような材料の場合、ポジ型レジスト膜の解像性自体が落ちる危険性がある。
【0059】
このポジネガ反転方法は、次のような場合で有利に利用できる。即ち、ポジ型パターンは、オーバー露光量によって、より細いパターンが形成可能である。そこで、例えば露光限界以下の孤立スペース(トレンチパターン)の形成は技術的に極めて難しいが、オーバー露光を利用して通常の露光限界よりも細いパターンを形成し、これを本発明のパターン形成方法で反転してやることで極めて細いトレンチパターンを形成することができる。
更に、微細なホールパターンはトレンチパターンよりも更に技術的な困難さがあるが、オーバー露光によって細かなドットパターンを形成し、これを本発明のパターン形成方法で反転してやることで非常に小さいサイズのホールを形成することが可能となる。
【0060】
以下に本発明の代表的な例として、反転用膜にアルカリ性ウェットエッチング液(レジストパターンの現像に使用するアルカリ現像液と実質同義であり、以下アルカリ現像液とも記す)に対する微溶解性を持つ材料を用いる場合を用いて、本発明を更に詳細に説明する。
【0061】
本発明の最も好ましい態様のパターン形成方法は、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有し、上記酸不安定基を脱離させ、更に架橋させて得られた架橋物のアルカリ現像液に対する溶解速度が2nm/秒を超える高分子化合物(ベース樹脂)を含むポジ型レジスト材料を基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で上記レジスト膜の所用部分を露光し、加熱処理後に上記アルカリ現像液を用いて上記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターン中に酸を発生させると共に熱を加えて、該レジストパターン中の上記高分子化合物の酸不安定基を脱離させると共に該高分子化合物を架橋する。次いで、その上を覆って上記基板上に上記アルカリ現像液に0.02nm/秒以上2nm/秒以下の範囲の溶解速度を持つ反転用膜を形成し、上記アルカリ現像液によってこの膜の表面を溶解させると共に、上記レジストパターンを溶解消失させて、上記反転用膜にレジストパターンを反転させたパターンを形成する。
この場合、レジストパターンとしてドットパターンを形成し、これを反転させてホールパターンを形成することができる。
【0062】
反転用膜にはエッチング耐性が必要であるが、ポジ型レジスト膜は最終的にはホールパターンが形成されるときには除去されるために、エッチング耐性は必要でなく、この点からは脂環構造は必ずしも必要ではない。しかし、ポジ型レジストパターンを有機溶剤に不溶で、かつアルカリ現像液可溶に極性変更するときに150℃以上の高温でベークする必要があるため、150℃以上のベークでもパターンが熱フローを起こさないようにするための耐熱性が必要である。耐熱性を向上させるためには脂環構造の導入が効果的であり、ポリマーのガラス転移点を150℃以上にするために脂環構造を導入することが好ましい。
【0063】
上記架橋形成は該樹脂中のエステル基、環状エーテル等の求電子性部分構造によることが好ましい。酸と加熱により、エステル交換、ラクトン環の開環とエステル化及びエーテル化、環状エーテルの開環とエーテル化及びエステル化等の反応により架橋反応が進行する。
【0064】
本発明に係るパターン形成方法に用いられるポジ型レジスト材料のベース樹脂に使用される高分子化合物としては、ラクトン環を有する繰り返し単位、特には7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位、好ましくは下記一般式(1)に示される繰り返し単位(a)を有するものが有利に使用できる。このものはエステル基と環状エーテルの両方を単一繰り返し単位内に有するために、架橋反応の反応性が高い。更に、この単位は密着性単位として使用されるものであり、ベース樹脂に更に追加の構成を加えなくても本発明のパターン形成方法が好ましく適用可能である。
【0065】
【化4】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよいが、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の場合、式中のエステル基に連結した炭素原子は一級又は二級である。R3、R4、R5は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【0066】
ここで、炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、シクロペンチレン基、n−ヘキシレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0067】
また、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0068】
一般式(1)で示される繰り返し単位(a)を得るためのモノマーとしては、下記一般式Maで示され、具体的には下記に例示される。ここで、R1〜R5は前述と同じである。
【0069】
【化5】
【0070】
【化6】
【0071】
本発明の工程では、露光と現像によって第1のパターン形成後、酸と加熱によって酸不安定基を脱保護すると共に架橋し、その上に適度なアルカリ溶解性を有する膜(反転用膜)を塗布し、アルカリ現像する。
第1のパターンは、酸不安定基を有する繰り返し単位の該酸不安定基の脱保護によってアルカリに溶解し、7−オキサノルボルナン環の架橋によって溶剤(反転用膜を形成するための材料の溶剤)に不溶化する膜になる。よって、第1のパターン上に、反転用膜材料を有機溶剤に溶解したパターン反転用膜溶液を塗布しても、第1のパターンはパターン反転用膜材料とミキシングしない。
次に、アルカリ現像液による処理によって、反転用膜が第1のパターン部分まで膜の表面が溶解したところで、第1のパターンの溶解が始まり、画像反転が起こる。
【0072】
オキシランやオキセタンを有する繰り返し単位を有する高分子化合物をレジスト用ベースポリマーとして用いた場合、オキシラン環やオキセタン環は、酸による開裂反応の速度が非常に速いために、90〜130℃程度のポストエクスポージュアベーク(PEB)等のレジストプロセスの温度で架橋が進行するためにアルカリに不溶となり、本発明におけるポジ型レジスト材料として機能しない。一方、7−オキサノルボルナン環の1,4−エポキシ結合は、オキシラン環やオキセタン環に比べて酸による開裂反応の反応性が低いために、PEBによる加熱温度領域では架橋が進行しない。7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位は、現像までのプロセスでは酸に対して安定で、親水性基として密着性やアルカリ溶解性向上のための機能を発揮する。しかしながら、現像後のパターンのフラッド露光あるいは加熱により発生した酸と170℃以上の加熱によって7−オキサノルボルナン環の1,4−エポキシ結合が開環して架橋反応が進行し、上記溶剤に不溶になると同時に酸と熱により上記酸不安定基を有する繰り返し単位の該酸不安定基の脱保護が起こり、アルカリ溶解性が増す。酸を発生させるために熱酸発生剤をレジスト材料中に添加してもよいし、現像後のパターン全面に波長400nm以下の紫外線を照射してもよい。
【0073】
本発明のパターン形成方法に用いるポジ型レジスト材料に用いるベース樹脂としては、上記一般式(1)で示される架橋性の繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位(b)を含む高分子化合物を使用することが好ましい。
【0074】
【化7】
(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7は酸不安定基を示す。bは0<b≦0.8の範囲である。)
【0075】
ここで、一般式(2)に示す繰り返し単位(b)を得るためのモノマーMbは、下記式で示される。
【化8】
(式中、R6、R7は上記の通りである。)
【0076】
一般式(2)中、R7で示される酸不安定基は種々選定されるが、特に下記式(AL−10),(AL−11)で示される基、下記式(AL−12)で示される三級アルキル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等が挙げられる。
【0077】
【化9】
【0078】
式(AL−10),(AL−11)において、R51、R54は炭素数1〜40、特に1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。R52、R53は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよく、a5は0〜10、特に1〜5の整数である。R52とR53、R52とR54、又はR53とR54はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子と酸素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
R55、R56、R57はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。あるいはR55とR56、R55とR57、又はR56とR57はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
【0079】
式(AL−10)に示される化合物を具体的に例示すると、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等、また下記一般式(AL−10)−1〜(AL−10)−10で示される置換基が挙げられる。
【0080】
【化10】
【0081】
式(AL−10)−1〜(AL−10)−10中、R58は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R59は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R60は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。a5は上記の通りである。
【0082】
前記式(AL−11)で示されるアセタール化合物を(AL−11)−1〜(AL−11)−34に例示する。
【0083】
【化11】
【0084】
【化12】
【0085】
また、酸不安定基として、一般式(AL−11a)あるいは(AL−11b)で表される基が挙げられ、該酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【0086】
【化13】
【0087】
上記式中、R61、R62は水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R61とR62は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR61、R62は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R63は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b5、d5は0又は1〜10の整数、好ましくは0又は1〜5の整数、c5は1〜7の整数である。Aは、(c5+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0088】
この場合、好ましくはAは二〜四価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c5は好ましくは1〜3の整数である。
【0089】
一般式(AL−11a),(AL−11b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(AL−11)−35〜(AL−11)−42のものが挙げられる。
【0090】
【化14】
【0091】
次に、前記式(AL−12)に示される三級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、tert−アミル基等、あるいは下記一般式(AL−12)−1〜(AL−12)−16で示される基を挙げることができる。
【0092】
【化15】
【0093】
上記式中、R64は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R65、R67は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R66は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。
【0094】
更に、酸不安定基として、下記式(AL−12)−17、(AL−12)−18に示す基が挙げられ、2価以上のアルキレン基、又はアリーレン基であるR68を含む該酸不安定基によってベース樹脂が分子内あるいは分子間架橋されていてもよい。式(AL−12)−17、(AL−12)−18のR64は前述と同様、R68は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又はアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。b6は1〜3の整数である。
【0095】
【化16】
【0096】
なお、上述したR64、R65、R66、R67は酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有していてもよく、具体的には下記式(AL−13)−1〜(AL−13)−7に示すことができる。
【0097】
【化17】
【0098】
特に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−19に示されるエキソ体構造を有するものが好ましい。
【0099】
【化18】
(式中、R69は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R70〜R75及びR78、R79はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキル基等の一価の炭化水素基を示し、R76、R77は水素原子を示す。あるいは、R70とR71、R72とR74、R72とR75、R73とR75、R73とR79、R74とR78、R76とR77、又はR77とR78は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環(特に脂環)を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与するものは炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基等の2価の炭化水素基を示す。またR70とR79、R76とR79、又はR72とR74は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0100】
ここで、一般式(AL−12)−19に示すエキソ体構造を有する下記繰り返し単位
【化19】
を得るためのエステル体のモノマーとしては、特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に示すものを挙げることができるが、これらに限定されることはない。なお、R111、R112は互いに独立に水素原子、メチル基、−COOCH3、−CH2COOCH3等を示す。
【0101】
【化20】
【0102】
更に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−20に示されるフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基を挙げることができる。
【0103】
【化21】
(式中、R80、R81はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。又は、R80、R81は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の脂肪族炭化水素環を形成してもよい。R82はフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルから選ばれる2価の基を示す。R83は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。)
【0104】
フランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基で置換された繰り返し単位
【化22】
を得るためのモノマーとしては、下記に例示される。なお、R112は上記の通りである。また、下記式中Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。
【0105】
【化23】
【0106】
【化24】
【0107】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベースとなる高分子化合物は、一般式(1)の繰り返し単位(a)と一般式(2)に示す繰り返し単位(b)を有することが好ましいが、更にはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、ラクトン環、カルボキシル基、カルボン酸無水物基等の密着性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位cを共重合させてもよい。
繰り返し単位(c)を得るためのモノマーとしては、具体的に下記に挙げることができる。
【0108】
【化25】
【0109】
【化26】
【0110】
【化27】
【0111】
【化28】
【0112】
【化29】
【0113】
繰り返し単位(c)中、α−トリフルオロメチルアルコール基やカルボキシル基を有するものは、現像後のパターンの加熱後のアルカリ溶解速度を向上させるので、これらを共重合させることは好ましい。カルボキシル基を有する繰り返し単位としては下記に挙げることができる。
【0114】
【化30】
【0115】
上記繰り返し単位(a),(b),(c)において、繰り返し単位の比率は、0<a<1.0、0<b≦0.8、0.1≦a+b≦1.0、0≦c<1.0、好ましくは、0.1≦a≦0.9、0.1≦b≦0.7、0.2≦a+b≦1.0、0≦c≦0.9の範囲である。なお、a+b+c=1である。
【0116】
ここで、例えばa+b=1とは、繰り返し単位a,bを含む高分子化合物において、繰り返し単位a,bの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し、a+b<1とは、繰り返し単位a,bの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満でa,b以外に他の繰り返し単位cを有していることを示す。
【0117】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料現像後の熱架橋における架橋効率が低下するものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じやすくなる可能性がある。
【0118】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなりやすいことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0119】
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0120】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては繰り返し単位(a),(b),(c)を得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤を加え加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後、保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0121】
上記ポジ型レジスト材料は、上述したように、基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線をこのレジスト膜の所用部分に照射、露光し、加熱処理後にアルカリ現像液を用いて上記レジスト膜の露光部分を溶解、現像してドットパターン等のレジストパターンを形成し、その後、このレジストパターン(上記高エネルギー線による未露光部分)に酸を発生させてこのレジストパターン中の高分子化合物の酸不安定基を脱離する(脱保護する)と共に、これを架橋するものであるが、上記高分子化合物は、このように酸不安定基が脱離し、架橋した状態において、アルカリ現像液に対する溶解速度が2nm/秒を超える速度、好ましくは3〜5,000nm/秒、更に好ましくは4〜4,000nm/秒である。またこの場合、後述する反転用膜の上記アルカリ現像液に対する溶解速度の2〜250,000倍、特に5〜10,000倍であることが、本発明の目的を達成する上で好ましい。
なお、高分子化合物をこのような溶解速度とするためには、一般式(b)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位が全繰り返し単位中、10モル%以上90モル%以下、特に12モル%以上80モル%以下であることが好ましい。
【0122】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料は、有機溶剤、高エネルギー線に感応して酸を発生する化合物(酸発生剤)、必要に応じて溶解制御剤、塩基性化合物、界面活性剤、その他の成分を含有することができる。
【0123】
本発明のパターン形成に用いるレジスト材料は、特に化学増幅ポジ型レジスト材料として機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。この場合、光酸発生剤の配合量は上記ベース樹脂100質量部に対し0.5〜30質量部、特に1〜20質量部とすることが好ましい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0124】
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
本発明のレジスト材料は、更に、有機溶剤、塩基性化合物、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]、塩基性化合物としては段落[0146]〜[0164]、界面活性剤は段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公開段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は段落[0179]〜[0182]に記載されている。
【0125】
なお、有機溶剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し100〜10,000質量部、特に300〜8,000質量部とすることが好ましい。また、塩基性化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.0001〜30質量部、特に0.001〜20質量部とすることが好ましい。
【0126】
更に、フォトレジスト材料としてアンモニウム塩の熱酸発生剤をフォトレジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部添加しておいて、加熱によって酸を発生させることもできる。この場合、酸の発生と架橋反応と酸不安定基の脱保護反応が同時に進行する。加熱の条件は100〜300℃、特に130〜250℃の温度範囲で10〜300秒の範囲が好ましい。これにより、アルカリに溶解し、溶剤に不要なポジネガ反転に必要な特性を有し、加熱によってパターンが変形しないための機械的強度が向上したレジスト膜が形成される。
【0127】
なお、上記アンモニウム塩の熱酸発生剤としては、下記のものが挙げられる。
【化31】
(式中、K-はα位の少なくとも1つがフッ素化されたスルホン酸、又はパーフルオロアルキルイミド酸もしくはパーフルオロアルキルメチド酸である。R101d、R101e、R101f、R101gはそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていてもよい。R101dとR101e、R101dとR101eとR101fとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e及びR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を示す。)
【0128】
K-として具体的には、トリフレート、ノナフレート等のパーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のメチド酸、更には下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【0129】
【化32】
【0130】
一般式(K−1)中、R102は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基又はアリーロキシ基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ラクトン環を有していてもよく、又はこれらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい。一般式(K−2)中、R103は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
【0131】
更に、アミノ基とフルオロアルキル基を繰り返し単位として有する高分子化合物を添加することもできる。この場合、この高分子化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.01〜20質量部、特に0.1〜15質量部とすることができる。この高分子化合物は、塗布後のレジスト表面に配向することによって、現像後のレジストパターンの膜減りを防止し、矩形性を高めることができる。現像後のドットパターンに膜減りが生じると、イメージリバーサルがうまくできないことがある。パターンの膜減り防止に対して、下記高分子化合物の添加は有効である。
【0132】
【化33】
(上式中、R01、R04、R07はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。X1、Y1、Y2はそれぞれ独立に単結合、−O−R09−、−C(=O)−O−R09−又は−C(=O)−NH−R09−、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、又はフェニレン基である。R09は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エステル基(−COO−)又はエーテル基(−O−)を有していてもよい。kは1又は2であり、k=1の場合、Y1は単結合、−O−R09−、−C(=O)−O−R09−又は−C(=O)−NH−R09−、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、又はフェニレン基であり、R09は上記の通りである。k=2の場合、Y1は−O−R101=、−C(=O)−O−R101=又は−C(=O)−NH−R101=、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基から更に水素原子が1個脱離した基、又はフェニレン基から更に水素原子が1個脱離した基であり、R101は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基より更に水素原子が1個脱離した基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。R02、R03は同一又は異種の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基であり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、2重結合、又はハロゲン原子を有していてもよく、又は炭素数6〜10のアリール基であり、R02とR03が結合してこれらが結合する窒素原子と共に炭素数3〜20の環を形成してもよい。R05は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、R06は水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はジフルオロメチル基、又はR05と結合してR05、R06及びこれらが結合する炭素原子とで炭素数2〜12の脂環を形成してもよく、環の中にエーテル基、フッ素で置換されたアルキレン基又はトリフルオロメチル基を有していてもよい。R08は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、少なくとも1個のフッ素原子で置換されていて、エーテル基、エステル基、又はスルホンアミド基を有していてもよい。0<d<1.0、0≦(e−1)<1.0、0≦(e−2)<1.0、0<(e−1)+(e−2)<1.0、0.5≦d+(e−1)+(e−2)≦1.0である。)
【0133】
一方、反転用膜としては、本発明に係る反転工程に用いるアルカリ現像液に対する溶解速度が0.02nm/秒以上2nm/秒以下、好ましくは0.05nm/秒以上1nm/秒以下のものを使用する。溶解速度が0.02nm/秒より遅いと、1回目のレジストパターン上部まで反転用膜が溶解しないために、パターンの反転が行われなかったり、反転したパターンの表層が頭張りになったりする。2nm/秒より早いと、反転用膜の残膜が少なくなったり反転パターンのホール寸法が大きくなったりするという不利が生じる。
【0134】
この場合、特に、現像時に膜表面を適当に溶解させてトレンチパターンを形成するためには、アルカリ溶解速度を0.05nm/秒以上1nm/秒以下の範囲の溶解速度に調整する。これよりも早い溶解速度であれば現像時の膜減りが大きくなってしまい、溶解速度が遅い場合、膜表面が溶解せずにトレンチパターンが空かなくなってしまう。適度な溶解速度の調整のためにアルカリ溶解速度が1nm/秒以上のユニットと0.05nm/秒以下のユニットとを共重合し、共重合比率を最適化することによって最適な溶解速度の材料にすることができる。
【0135】
本発明のパターン形成方法に用いられるアルカリ現像液に0.02nm/秒以上2nm/秒以下の範囲の溶解速度を持つ膜(反転用膜)は、炭化水素からなる材料でもよいし、珪素を有する材料でもよい。フェノール性のヒドロキシ基、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基、カルボキシル基を有するポリマーをベースポリマーとする材料が好ましく用いられる。また、珪素含有材料としては前記アルカリ溶解性基に加えてシラノールを有する材料が好ましく用いられる。フェノール性のヒドロキシ基を有するポリマーとしては、例えばクレゾールノボラック樹脂、フェノール低核体、ビスフェノール低核体、ビスフェノールノボラック樹脂、ビスナフトール低核体、ビスナフトールノボラック樹脂、カリックスアレン類、カリックスレゾルシノール、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシビニルナフタレン、ポリヒドロキシインデン及びこの共重合体、カルボキシスチレン重合体、カルボキシビニルナフタレン及びこの共重合体、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基含有スチレン重合体及びこの共重合体、メタクリル酸及びカルボキシル基含有(メタ)アクリレート重合体及びこの共重合体、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート重合体及びこの共重合体等が挙げられる。
【0136】
この場合、上記フェノール性のヒドロキシ基、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基、カルボキシル基を有する繰り返し単位のみからなるポリマーのアルカリ溶解速度は、殆どが1nm/秒以上の溶解速度であるために、アルカリ溶解速度が0.05nm/秒以下のユニットと共重合する。アルカリ溶解速度が0.05nm以下のユニットとしては、例えばフェノール性のヒドロキシ基、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基、カルボキシル基の水酸基の水素原子を、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、あるいは酸不安定基で置換した置換体が挙げられる。又は、スチレン類、インデン、インドール、クロモン、クマロン、アセナフチレン、ノルボルナジエン類、ノルボルネン類、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、ビニルエーテル類、ラクトン含有(メタ)アクリレート類、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0137】
更に詳述すると、具体的に反転用膜のポリマーを得るときの材料としては、フェノール性のヒドロキシ基、カルボキシル基、α−トリフルオロメチルヒドロキシ基等のアルカリ溶解性基を有していることが必要であり、アルカリ溶解速度を調整するために前記アルカリ溶解性基の部分保護化、アルカリ難溶性基との組み合わせ等が必要な場合がある。
【0138】
フェノール性のヒドロキシ基を有する材料としては、具体的にはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール等をアルデヒド類の存在下でノボラック化した樹脂が挙げられる。フェノール性のヒドロキシ基を有する重合性オレフィンを有する化合物の重合体では、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレン、ヒドロキシビニルアントラセン、ヒドロキシインデン、ヒドロキシアセナフチレン又は以下に示されるモノマーの重合体を挙げることができる。
【0139】
【化34】
【0140】
カルボキシル基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーの重合体も反転用膜を形成する材料として使用し得るが、該モノマーとしては、具体的には下記に例示することができる。
【0141】
【化35】
【0142】
アルカリ溶解速度を調整するためのフェノール性水酸基あるいはカルボキシル基の部分保護化には、ヒドロキシ基、カルボキシル基の水酸基の水素原子を、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、アセチル基、ピバロイル基、酸不安定基で置換することが好ましい。
なお、酸不安定基については上述したものが挙げられる。
【0143】
アルカリ溶解速度を調整するために、アルカリ難溶性の繰り返し単位を共重合することもできる。アルカリ難溶性の繰り返し単位としては、アルキル基やアリール基エステルの(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基やラクトンを有する(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ビニルカルバゾール、インデン、アセナフチレン、ノルボルネン類、ノルボルナジエン類、トリシクロデセン類、テトラシクロドデセン類に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0144】
上記反転用膜を形成するためのベースポリマーとしては、炭化水素からなる材料としては特に芳香族基を有する炭化水素を含むものが好ましい。
反転用膜形成用組成物として珪素を有する材料としては、エッチング耐性の観点からシルセスキオキサンをベースとする珪素重合体が好ましく用いられる。
【0145】
なお、上記ベースポリマーのGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は1,000〜200,000、特に1,500〜100,000であることが好ましい。
また、分散度(Mw/Mn)は1.0〜7.0、特に1.02〜5.0であることが好ましい。
【0146】
反転用膜形成用組成物としては、上記ベースポリマーに加え、パターン反転のためのアルカリ微溶解性材料、表面アルカリ溶解速度向上のためのアルカリ可溶界面活性剤、アルカリ可溶性のエッチング耐性向上剤、塩基性クエンチャー、有機溶剤等を用いることができる。
【0147】
更にパターン反転のためのアルカリ微溶解性の材料として、フェノール基やマロン酸置換のフラーレン、フェノール化合物の低核体が挙げられる。これらの材料は炭素含有量が高く、エッチング耐性を向上する機能も有する。パターン反転の材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0148】
かかる材料として具体的には、特開2006−259249号公報、特開2006−259482号公報、特開2006−285095号公報、特開2006−293298号公報に示されるフェノール化合物、特開2007−199653号公報記載のビスナフトール化合物、下記フェノール基を有するフルオレン化合物、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、テトラヒドロスピロビインデン化合物、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5’−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、トリチルフェノール等が挙げられる。これらの材料は、アルカリ可溶性のエッチング耐性向上剤として使用することができる。
【0149】
なお、上記材料の添加量は、上記ベースポリマー100質量部に対して0〜200質量部、特に0〜100質量部とすることが好ましい。配合する場合は、1質量部以上、特に5質量部以上とすることができる。
【0150】
本発明のパターン反転用膜の表面だけのアルカリ溶解性を向上させることは、アルカリ可溶に変質したポジ型レジストパターントップまでを覆ったパターン反転用膜の溶解をスムーズにし、ポジ型パターンを変換したトレンチパターンやホールパターンの寸法制御性向上のために有効である。表面のアルカリ溶解性を向上させるためにアルカリ可溶の界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤としては少なくとも下記一般式(3)中、繰り返し単位s−1,s−2のいずれか一方又は両方を有するものが好ましい。
【0151】
【化36】
【0152】
上式中、R8、R11はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。nは1又は2であり、n=1の場合、X1はフェニレン基、−O−、−C(=O)−O−R14−又は−C(=O)−NH−R14−であり、R14は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。n=2の場合、X1はフェニレン基から水素原子が1個脱離した−C6H3−で表される基、−C(=O)−O−R81=又は−C(=O)−NH−R81=であり、R81は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基から水素原子が1個脱離した基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。R9は単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、R10は水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はジフルオロメチル基、又はR9と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜10の環(但し芳香環を除く)を形成してもよく、環の中にエーテル基、フッ素で置換されたアルキレン基又はトリフルオロメチル基を有していてもよい。X2はフェニレン基、−O−、−C(=O)−O−R13−又は−C(=O)−NH−R13−であり、R13は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。R12はフッ素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、少なくとも1個のフッ素原子で置換されていて、エーテル基、エステル基又はスルホンアミド基を有していてもよい。X2がフェニレン基の場合、mは1〜5の整数であり、X2がそれ以外の場合、mは1である。
【0153】
s−1を得るためのモノマーは具体的には下記に例示することができる。
【化37】
【0154】
【化38】
【0155】
【化39】
【0156】
【化40】
【0157】
【化41】
(式中、R8は前述と同様である。)
【0158】
更に、上記一般式(3)中のs−2で示される、フッ素で置換されたアルキル基を有する繰り返し単位s−2を得るためのモノマーとしては、下記の具体例を挙げることができる。
【0159】
【化42】
【0160】
【化43】
(式中、R11は前述と同様である。)
【0161】
s−1、s−2の繰り返し単位は、前述のフェノール基やカルボキシル基を有するアルカリ溶解性の繰り返し単位や、アルカリ難溶解性の繰り返し単位s−3と共重合することができる。
【0162】
この場合、s−1、s−2の繰り返し単位の比率は、0≦(s−1)≦1、0≦(s−2)≦1、0<(s−1)+(s−2)≦1であるが、好ましくは0.1<(s−1)+(s−2)≦1、更に好ましくは0.2<(s−1)+(s−2)≦1である。なお、(s−1)+(s−2)<1の場合、残りの繰り返し単位は上記s−3の繰り返し単位である。
なお、このアルカリ可溶界面活性剤の重量平均分子量は1,000〜100,000、特に2,000〜50,000であることが好ましい。
【0163】
上記アルカリ可溶界面活性剤の添加量は、ベースポリマー100質量部に対して0〜50質量部、特に0〜20質量部が好ましい。多すぎると、膜減り量が多くなりすぎたり、エッチング耐性が低下したりする場合が生じる。なお、配合する場合は、1質量部以上とすることが好ましい。
【0164】
塩基性クエンチャーとしては、上記ポジ型レジスト材料において説明した塩基性化合物と同様の塩基性化合物を用いることができる。即ち、本発明のパターン形成方法に用いるパターン反転用膜には、現像後のレジストパターンからの酸拡散を防止するために塩基性化合物を添加することができ、特にパターン反転用膜の材料として酸不安定基で置換されたフェノール性化合物及びカルボキシル基含有化合物が用いられている場合、レジストパターンからの酸の拡散と脱保護反応によってアルカリ溶解速度が増加し、反転したパターンの寸法が大きくなったり、膜減り大きくなる問題が生じる。これを防止するために塩基性化合物を添加することが有効である。なお、レジスト材料及びパターン反転用膜に添加される塩基性化合物は同一のものでもよく異種であってもよい。
【0165】
上記塩基性化合物(塩基性クエンチャー)の配合量は、上記ベースポリマー100質量部に対し、0〜10質量部、特に0〜5質量部が好ましい。なお、配合する場合は、0.1質量部以上であることが好ましい。
【0166】
反転用膜形成用組成物にオニウム塩系の酸発生剤を添加することもできる。反転用膜形成用組成物のベースポリマーとしてフェノール系材料を用いる場合、オニウム塩を添加するとオニウム塩の溶解阻止効果によってアルカリ溶解速度が低下する。アルカリ溶解速度調整用としてオニウム塩の添加は有効である。
【0167】
本発明のパターン形成方法に用いられるパターン反転用膜形成用組成物に用いられる有機溶剤としては、前記ポジ型レジスト材料に用いられる有機溶剤に加えて、ポジ型レジスト膜(レジストパターン)とのミキシングを防止するために炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物を用いることもできる。具体的に、炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールが挙げられる。
【0168】
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−イソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が挙げられる。
前述の溶剤に加えてトルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系の溶剤を混合することもできる。
【0169】
有機溶剤の使用量は、ベースポリマー100質量部に対して200〜3,000質量部、特に400〜2,000質量部が好適である。
【0170】
本発明に係るパターニング方法は、上記ポジ型レジスト材料を基板上に塗布してレジスト膜を形成する。この場合、図4(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層を介してポジ型レジスト材料によるレジスト膜30を形成するが、レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
【0171】
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層としては、SiO2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0172】
スピンオンカーボン膜としては、特開2004−205658号公報記載のノルトリシクレン共重合体、特開2004−205676号公報記載の水素添加ナフトールノボラック樹脂、特開2004−205685号公報記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2004−354554号公報、特開2005−10431号公報記載のフェノールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005−128509号公報に記載されるフルオレンビルフェノールノボラック、特開2005−250434号公報記載のアセナフチレン共重合、特開2006−53543号公報記載のインデン共重合体、特開2006−227391号公報記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006−259249号公報、特開2006−293298号公報、特開2007−316282号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006−259482号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006−285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2007−171895号公報記載のヒドロキシビニルナフタレン共重合体、特開2007−199653号公報記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008−26600号公報記載のROMP、特開2008−96684号公報記載のトリシクロペンタジエン共重合物に示される樹脂化合物が挙げられる。
【0173】
スピンオン珪素含有中間層としては、特開2004−310019号公報、特開2005−15779号公報、特開2005−18054号公報、特開2005−352104号公報、特開2007−65161号公報、特開2007−163846号公報、特開2007−226170号公報、特開2007−226204号公報に示されるシルセスキオキサンベースの珪素化合物を含み、反射防止機能を有していることが好ましい。
【0174】
反転用膜が炭化水素系の材料からなる場合は、被加工基板とポジネガ反転用のフォトレジスト膜の間に、被加工基板の上から順に炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜、次いで珪素を含有する中間膜を形成する3層レジストプロセス用の膜構成が好ましい。カーボン膜はスピンコートによって形成してもよいが、CVDで形成されるアモルファスカーボン膜であってもよい。珪素を含有する中間膜はスピンコートで形成されるSOG膜でもよいし、CVDやALDで形成されるSiO2、SiN、SiON、TiN膜から選ばれる膜でもよく、カーボン膜に対するハードマスクと反射防止膜としての両方の機能を有する。
また、基板上の裾引きやパターン倒れを防止し、基板反射を更に低減する目的で、珪素含有膜とフォトレジストの間に有機反射防止膜を形成してもよい。
【0175】
反転用膜が珪素を含有する材料からなる場合は、被加工基板とポジネガ反転用のフォトレジスト膜の間に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上にフォトレジスト膜を形成する。カーボン膜とフォトレジスト膜との間に有機反射防止膜を形成してもよい。この場合、珪素含有反転用膜がカーボン膜加工時のハードマスクとしての機能を有する。
【0176】
次いで、露光を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、その中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。この場合、保護膜形成用組成物は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位等のベースとなる繰り返し単位P−1からなるベース樹脂を用いることができるほか、上記ベースとなる繰り返し単位P−1にフルオロアルキル基を有する繰り返し単位P−2を共重合したものをベース樹脂として用いることができる。上記繰り返し単位P−1の具体例は、上記s−1で例示したモノマーから得られるものが挙げられ、繰り返し単位P−2の具体例は、上記s−2で例示したモノマーから得られるものが挙げられる。また、これら繰り返し単位P−1,P−2の比率は、0<(P−1)≦1.0、0≦(P−2)<1.0、0.3≦(P−1)+(P−2)≦1.0、上記ベース樹脂の重量平均分子量は、1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000である。
【0177】
なお、ベース樹脂として繰り返し単位P−2を含まないものを用いた場合は、保護膜形成用組成物にアミン化合物を配合することが好ましい。アミン化合物としては、上記塩基性化合物として詳述したものの中から選定することができる。アミン化合物の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.02〜8質量部が好ましい。フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによってレジスト膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0178】
露光における露光量は1〜200mJ/cm2程度、好ましくは10〜100mJ/cm2程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージュアベーク(PEB)する。
【0179】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより基板上に目的のレジストパターン30aが形成される(図4(B)参照)。
【0180】
クロムレス位相シフトマスクを使うことにより、パターンとしてはハーフピッチの大きさ38×38nm〜100×100nm、特に40×40nm〜80×80nmのドットパターンを形成することができる。ドットパターンの大きさは露光機のレンズのNAによるが、NA1.35の露光機を用いれば、最小寸法としてハーフピッチ38nmのドットを形成することができる。ドットパターンは縦横が同じ長さでも構わないし、どちらか一ほうが長い長軸のドットパターンでも構わない。ドットパターンの形成方法は特に制限されないが、高エネルギー線で上記レジスト膜にクロムレス位相シフトマスクを用いた露光を行い、これを現像することによってドットパターンを形成する方法を採用する方法が最も微細なハーフピッチのホールを形成することができる。
【0181】
従来は、このような微細なピッチのドットを形成する場合は、ダブルダイポールリソグラフィーによる2枚のマスクによる2回の露光が必要であった。即ち、1回目の露光でX方向のラインをダイポール照明で露光し、マスクを交換して2回目の露光でY方向のラインをダイポール照明で露光する方法である。この場合、マスクの交換とそれに伴うアライメントによるスループットの低下が発生する。また、2回の露光のアライメントズレは最終的に形成するホールの位置ズレにつながる。ホールの位置とこれに接続するラインの位置が異なると接続不良を引き起こすために、ダブルダイポールで露光する場合は非常に高いアライメント精度が必要である。
【0182】
ダブルダイポールの2回の露光で形成するパターンは、2回目の露光の位置ズレが生じるのに対して、本発明のパターン形成方法では1回の露光で済むために位置ズレが生じない。また、マスク交換の必要がなく、露光回数が1回で済むためにスループットが高いメリットがある。
【0183】
ランダムパターンの密集パターンと孤立パターンを形成する場合は、密集パターンを露光し、次いで不必要な密集パターンを消去するための露光を行う。消去パターンの露光は密集パターン露光の後に行ってもよいし、密集パターンの露光の前に行ってもよい。消去パターンの露光は1回の露光でもよいが、複数回の露光でもよい。また、消去パターン露光は高解像性を必要としないために、必ずしも液浸露光を必須としないし、消去パターンの露光は非常に高精度のアライメントは必要ない。
【0184】
密集パターンの露光と消去露光のアライメント精度とスループットを両立させるためには、ウエハーチャックから外されることなく連続して露光されることが好ましい。そのため、露光機側では複数のマスクを取り替えながら露光する機構が必要とされる。マスクステージを複数台有しており、複数台のマスクステージが予めステージに対してアライメントされており、マスクステージを交換しながらの連続露光が行われるのがスループット向上のために必要となる。密集露光が液浸、消去露光がドライで露光される場合は、露光機が異なるためにアライメントズレが大きくなるが、実用上問題がない程度のアライメントズレの範囲内に収まる場合はこのような露光方法を適用することもできる。
次いで、ベーク(PEB)を行い、現像によってドットパターンを形成する。ランダムピッチのドットパターンは一度の現像によって形成される(図4(B)参照)。
。
【0185】
次いで、上記パターン中の高分子化合物(ベース樹脂)の酸不安定基を脱離させると共に、該高分子化合物を架橋し、架橋パターン30bを形成する(図4(C)参照)。このレジストパターン中の高分子化合物の酸不安定基の脱離と架橋には、酸と加熱が必要である。この場合、酸を発生させた後、加熱によって酸不安定基の脱保護と架橋とを同時に行う。酸を発生させるには、現像後のウエハー(パターン)のフラッド露光によって光酸発生剤の分解を行う方法がある。フラッド露光の露光波長は波長180〜400nmで、露光量10mJ/cm2〜1J/cm2の範囲である。波長180nm未満、特には172nm、146nm、122nmのエキシマレーザーや、エキシマランプの照射は、光酸発生剤からの酸の発生だけでなく、光照射による架橋反応を促進させ、過剰な架橋によってアルカリ溶解速度が低下するために好ましくない。フラッド露光の波長は193nmより長波長のArFエキシマレーザー、222nmのKrClエキシマランプ、248nmのKrFエキシマレーザー、254nmの中心の低圧水銀ランプ、308nmのXeClエキシマランプ、365nmのi線が好ましく用いられる。ポジ型レジスト材料にアンモニウム塩の熱酸発生剤を添加しておいて、加熱によって酸を発生させることもできる。この場合、酸の発生と架橋反応は同時に進行する。加熱の条件は150〜400℃、特に160〜300℃の温度範囲で10〜300秒の範囲が好ましい。これにより、反転用膜形成用組成物の溶剤に不溶の架橋レジストパターンが形成される。露光によって酸を発生させるには、新たな露光装置が必要であるため、レジスト組成物として熱酸発生剤を添加しておき、加熱だけによって脱保護と架橋反応を進行させるほうが好ましい。
【0186】
次に、図4(D)に示したように、架橋レジストパターン30bを覆って反転用膜形成用組成物を塗布することにより反転用膜40を形成する。この場合、反転用膜40の厚さはレジストパターンの高さと同等あるいは±30nmの範囲であることが好ましい。
【0187】
次いで、上記アルカリ現像液を用いて上記反転用膜40の表面部分を溶解して上記架橋レジストパターン30bを露呈させ、これによりこの架橋レジストパターン30bの上記アルカリ現像液に対する溶解速度が反転用膜40の溶解速度より速いので、架橋レジストパターン30bが選択的に溶解され、これが溶解消失することで、図4(E)に示したように反転用膜40に上記架橋レジストパターン30bが反転した反転パターン40aが形成される。この場合、レジストパターンがドットパターンであると、反転パターンとしてホールパターンが形成される。
【0188】
更に、図4(F)に示したように、上記反転パターン40aをマスクとして、ハードマスク等の中間介在層がある場合はこの中間介在層をエッチングし、更に被加工基板20のエッチングを行う。この場合、ハードマスク等の中間介在層のエッチングは、フロン系、ハロゲン系のガスを用いてドライエッチングすることによって行うことができ、被加工基板のエッチングは、ハードマスクとのエッチング選択比をとるためのエッチングガス及び条件を適宜選択することができ、フロン系、ハロゲン系、酸素、水素等のガスを用いてドライエッチングすることによって行うことができる。次いで、架橋レジスト膜、第2のレジスト膜を除去するが、これらの除去は、ハードマスク等の中間介在層のエッチング後に行ってもよい。なお、架橋レジスト膜の除去は、酸素、ラジカル等のドライエッチングによって行うことができ、第2のレジスト膜の除去は上記と同様に、あるいはアミン系、又は硫酸/過酸化水素水等の有機溶剤等の剥離液によって行うことができる。
【実施例】
【0189】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0190】
[合成例]
反転用膜に用いる高分子化合物として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶媒下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマー1)を得た。モノマーのフェノール基はアセトキシ基で置換し、重合後のアルカリ加水分解によってフェノール基にした。得られた高分子化合物の組成は1H−NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフィにより確認した。
【0191】
ポリマー1
分子量(Mw)=9,300
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化44】
【0192】
上記ポリマー1、塩基性クエンチャー、溶媒を加えて表1に示す組成でパターン反転用膜形成用組成物を形成した。溶媒には100ppmのフッ素系界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)を添加した。HMDSプライム処理した8インチシリコン基板にパターン反転用膜形成用組成物を塗布し、110℃で60秒間ベークして膜厚60nmのパターン反転用膜を形成した。これを2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の現像液で30秒間現像し、現像による膜減り量を求め、1秒間当たり溶解速度を算出した。
【0193】
【化45】
【0194】
【表1】
PGMEA;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0195】
[実施例1〜3、比較例1,2]
ポジ型レジスト材料、アルカリ可溶性保護膜形成用組成物の調製
下記高分子化合物(レジストポリマー及び保護ポリマー)を用いて、下記表2,4に示す組成で溶解させた溶液を0.2μmサイズのフィルターで濾過してレジスト溶液及び保護膜形成用組成物溶液を調製した。
表2中の各組成は次の通りである。
【0196】
酸発生剤:PAG1(下記構造式参照)
【化46】
【0197】
レジストポリマー1
分子量(Mw)=8,310
分散度(Mw/Mn)=1.73
【化47】
【0198】
保護膜ポリマー
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化48】
【0199】
塩基性化合物:Quencher1(下記構造式参照)
【化49】
【0200】
熱酸発生剤:TAG1(下記構造式参照)
【化50】
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0201】
高温ベークの溶剤による膜厚変化量及びアルカリ溶解速度の測定
下記表2に示す組成で調製したレジスト材料を、シリコンウエハーにスピンコーティングし、ホットプレートを用いて190℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを150nmにした。レジスト膜に溶剤を30秒間静止ディスペンスし、その後2,000rpmで30秒間回転して溶剤を振り切り、100℃で60秒間ベークして溶剤を乾燥させ、190℃でベーク後との膜厚の変化量を膜厚計を用いて求めた。
次に、190℃ベーク後の膜のアルカリ溶解速度を、リソテックジャパン(株)製レジスト現像アナライザーRDA−790を用いて、2.38質量%TMAH水溶液中でのアルカリ溶解速度を求めた。結果を表3にまとめる。
【0202】
ArF露光パターニング評価 1
下記表2に示す組成で調製したレジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)の35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。その上に表4に示す保護膜形成用組成物TC−1をスピンコーティングし、90℃で60秒間ベークし、保護膜の厚みを50nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、クロムレス位相シフトマスクで、ウエハー上寸法がピッチ80nmライン幅30nmの図24(A)に示されるレイアウトの格子部分がシフターとなっているクロムレス位相シフトマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
露光量60mJ/cm2で格子の間に図24(D)に示されるレイアウトの寸法30nm、ピッチ80nmの密集ドットパターンが形成された。100点のドットを測定し、寸法ばらつきは2.1nmであった。
現像によって形成されたドットパターンは190℃で60秒間ベークして酸不安定基の脱保護と架橋を行った。ドットパターン上に表1に示されるパターン反転用膜材料を60nmの膜厚になるように塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行い、ドットパターンをホールパターンにイメージ反転させた。
【0203】
比較例1としては、カーボン膜、珪素含有ハードマスク、フォトレジスト膜、保護膜の構成と膜厚は同じでArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクで、図15に示されるレイアウトのウエハー上寸法がピッチ80nm、サイズが50nmのドットが配列されたマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。露光量15mJ/cm2でマスクのドット部分に寸法40nm、ピッチ80nmのドットパターンが形成されたが、100個のドットの寸法ばらつきの標準偏差が8nm程度有り、膜減が生じていた。
現像によって形成されたドットパターンは190℃で60秒間ベークして酸不安定基の脱保護と架橋を行った。ドットパターン上に表1に示されるパターン反転用膜材料を60nmの膜厚になるように塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行い、ドットパターンをホールパターンにイメージ反転させた。現像後のドットパターンと、加熱後のドットパターンと、イメージ反転されたホールパターンの寸法を日立ハイテクノロジーズ社製TDSEM(S−9380)で観察した。
【0204】
比較例2としては、カーボン膜、珪素含有ハードマスク、フォトレジスト膜、保護膜の構成と膜厚は同じでArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクでピッチ80nm、サイズが50nmのホールが配列されたマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。露光量を変化させてもホールパターンは形成されなかった。結果を表5に示す。
【0205】
ArF露光パターニング評価 2
下記表2に示す組成で調製したレジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)の35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。その上に表4に示す保護膜形成用組成物TC−1をスピンコーティングし、90℃で60秒間ベークし、保護膜の厚みを50nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、クロムレス位相シフトマスクで、ウエハー上寸法がピッチ80nmライン幅30nmの図24(A)に示されるレイアウトの四角部分がシフターとなっているクロムレス位相シフトマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
露光量60mJ/cm2でマスクの四角い部分に図24(D)に示されるレイアウトの寸法30nm、ピッチ80nmの密集ドットパターンが形成された。100点のドットを測定し、寸法ばらつきの標準偏差は2.3nmであった。
現像によって形成されたドットパターンは190℃で60秒間ベークして酸不安定基の脱保護と架橋を行った。ドットパターン上に表1に示されるパターン反転用膜材料を60nmの膜厚になるように塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行い、ドットパターンをホールパターンにイメージ反転させた。現像後のドットパターンと、加熱後のドットパターンと、イメージ反転されたホールパターンの寸法を日立ハイテクノロジーズ社製TDSEM(S−9380)で観察した。結果を表6に示す。
【0206】
ArF露光パターニング評価 3
下記表2に示す組成で調製したレジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940の35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。その上に表4に示す保護膜形成用組成物TC−1をスピンコーティングし、90℃で60秒間ベークし、保護膜の厚みを50nmにした。
これをArF露光パターニング評価2と同様にArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、クロムレス位相シフトマスクで、ウエハー上寸法がピッチ80nmライン幅30nmの図24(A)に示されるレイアウトの格子部分がシフターとなっている格子状マスクを用いて1回目の露光を行い、次いで1回目の露光領域の一部をArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ160nmドット寸法が80nmの図24(B)記載のレイアウトのマスク)で2回目の露光を行い、露光後100℃で60秒間ベークし(PEB)、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
現像仕上がり30nm、80nmピッチの1:1ドットパターン(図24(D))と30nmと160nmピッチの1:3ドットパターン(図24(E))の両方を得た。マスクレイアウト図24(A)と24Bを重ねた図として、図24(C)が示されている。ドットパターン上に表1に示されるパターン反転用膜材料を60nmの膜厚になるように塗布し、100℃で60秒間ベークを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行い、1:1と1:3のドットパターンをホールパターンにイメージ反転させた。イメージ反転されたホールパターンの寸法を日立ハイテクノロジーズ社製TDSEM(S−9380)で観察した。結果を表7に示す。
【0207】
【表2】
【0208】
【表3】
【0209】
【表4】
【0210】
【表5】
【表6】
【表7】
【0211】
表5の結果から、実施例1のクロムレス位相シフトマスクを用いたパターン形成方法では1回の露光でピッチ80nmで30nmのドットパターンが形成され、これを反転したホールパターンが開口していたのに対してドットの遮光部が配列された従来のマスク(比較例1)ではドットパターンの膜減りが生じたため反転プロセス後にホールパターンは開口しなかった。また、1回の露光でホールを開口することもできなかった。表6の結果から、実施例2のクロムレス位相シフトマスクを使った場合のパターン形成方法では実施例1と同様のピッチ80nmで30nmのホールパターンが開口した。表7の結果から、1回の露光によって密集ドットパターンの露光を行い、次いで不必要なドットパターンの消去露光を行うことによって、粗密の両方のドットパターンを形成し、これを反転することによって粗密のホールを2回の露光で形成した。
【0212】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0213】
10 基板
20 被加工基板
30 レジスト膜
30a レジストパターン
30b 架橋レジストパターン
40 反転用膜
40a 反転パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有し、上記酸不安定基の脱離によってアルカリ現像液に可溶になる樹脂、高エネルギー線の露光により酸を発生する光酸発生剤又は該光酸発生剤と加熱により酸を発生する熱酸発生剤、及び有機溶剤を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜にクロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いて高エネルギー線を露光し、露光後加熱し、露光によって上記酸発生剤から発生した酸を樹脂の酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該工程で得られたポジ型パターンを露光もしくは加熱し、これにより生じた酸あるいは熱により該ポジ型パターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させてアルカリ溶解性を向上させ、かつ該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、上記ポジ型パターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記架橋が形成されたポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含むポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項2】
ドット形状のクロムレスのシフターを用い、該シフターのドット部分に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項3】
格子状に配列されたクロムレスのシフターを用い、該シフターの格子の隙間に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項4】
クロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いた密集パターンの露光と、不必要な密集パターンを除去させるための露光を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項5】
クロムレスの位相シフトマスクを用いた密集パターンの露光と、不必要な密集パターンを除去させるための露光が同じ露光ステージ上でステージからウエハーが離されることなく連続して行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項6】
上記レジストパターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程で得られる上記架橋形成ポジ型パターンのアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際、エッチング速度が2nm/秒を超えるものであり、かつ上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタノンから選ばれる1種以上を含む単独又は混合溶剤であり、上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性は、上記架橋形成ポジ型パターンを該反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に30秒間触れさせた時の膜減りが10nm以下である耐溶剤性を有するものである請求項1乃至5のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項7】
上記反転用膜形成用組成物は、芳香族骨格あるいは脂環式骨格を有するモノマーユニットを含む樹脂を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項8】
上記反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程と上記架橋形成ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程との間に、上記架橋形成ポジ型パターン上に積層された反転用膜を該ポジ型パターンが露出するまで除去する工程を含む請求項1乃至7のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項9】
上記ポジ型パターン上に積層された反転用膜を除去する工程は、ウェットエッチングである請求項8記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項10】
上記反転用膜は、アルカリ性ウェットエッチング液で処理した際、上記有機溶剤に対する耐性を与える工程後の架橋形成ポジ型パターンよりも溶解速度が遅く、かつ溶解性を示す材料であり、更に上記ウェットエッチングにアルカリ性ウェットエッチング液を用い、架橋形成ポジ型パターン上に積層された反転用膜を除去する工程と上記ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程は同時に行うものである請求項9記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項11】
上記反転用膜の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際の溶解速度は、0.02nm/秒以上2nm/秒以下である請求項10記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項12】
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記レジストパターンに有機溶剤に対する耐性を与える工程における加熱で酸を発生する成分を含有するものである請求項1乃至11のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項13】
上記加熱で酸を発生する成分は、光酸発生剤とは別に添加される熱酸発生剤である請求項12記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項14】
上記熱酸発生剤が下記一般式(P1a−2)で示されることを特徴とする請求項13記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化1】
(式中、K-はα位の少なくとも1つがフッ素化されたスルホン酸、又はパーフルオロアルキルイミド酸もしくはパーフルオロアルキルメチド酸である。R101d、R101e、R101f、R101gはそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていてもよい。R101dとR101e又はR101dとR101eとR101fとはこれらが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e又はR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基であるか、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
【請求項15】
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記樹脂としてラクトン環を有する繰り返し単位と、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト材料である請求項1乃至14のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項16】
上記化学増幅ポジ型レジスト材料によるレジストパターンの架橋形成が該レジスト材料の樹脂中のエステル基、環状エーテル等の求電子性部分構造によることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項17】
ポジ型レジスト材料が、7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位と、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト材料であり、ポジ型パターン中に酸を発生させると共に熱を加えて、ポジ型パターン中の樹脂の酸不安定基を脱離させる際、該ポジ型パターン中の樹脂の架橋と酸不安定基の脱離とを同時に行うようにした請求項16記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項18】
7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位が、下記一般式(1)に示される繰り返し単位(a)で示される請求項17記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化2】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよいが、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の場合、式中のエステル基に連結した炭素原子は一級又は二級である。R3、R4、R5は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【請求項19】
酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位(b)である請求項15乃至18のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化3】
(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7は酸不安定基を示す。bは0<b≦0.8である。)
【請求項20】
R7の酸不安定基が酸によって脱離する脂環構造の酸不安定基である請求項19記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項21】
上記ポジ型パターンはドットパターンを含むものであり、上記反転で得られるパターンはホールパターンを含むものである請求項1乃至20のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項22】
上記ポジ型パターンは密集ドットパターンと孤立ドットパターンの両方を含むものであり、上記反転で得られるパターンは密集ホールパターンと孤立ホールパターンを含むものである請求項1乃至21のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項23】
上記ポジ型パターンは密集ドットパターンを露光し、不必要なドットパターン部分を露光することによって密集ドットパターンと孤立ドットパターンを形成し、上記ポジネガ反転によって密集ホールパターンと孤立ホールパターンを形成するものである請求項22記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項24】
被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有する樹脂を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、加熱により不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、レジスト膜上に保護膜形成用組成物を塗布し、加熱により不要な溶剤を除去して保護膜を形成する工程、レジスト膜と投影レンズとの間に水又は屈折率が1以上の透明液体を介在させて該レジスト膜に高エネルギー線の繰り返し密集パターンを液浸露光し、更に不必要な密集パターンの未露光部を液浸露光し、露光後加熱により露光によって発生した酸を酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該ポジ型パターンを得る工程で得られたレジストパターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させると共に、該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、レジストパターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含む請求項1乃至23のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項25】
保護膜形成用組成物が、アミノ基を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物をベースにしたものであることを特徴とする請求項24記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項26】
保護膜形成用組成物が、アミン化合物を含有することを特徴とする請求項24又は25記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項27】
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上に珪素を含有する中間膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては炭化水素系の材料からなることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項28】
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては珪素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項29】
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上に有機反射防止膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては珪素を含有する材料からなることを特徴とする請求項28記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項1】
被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有し、上記酸不安定基の脱離によってアルカリ現像液に可溶になる樹脂、高エネルギー線の露光により酸を発生する光酸発生剤又は該光酸発生剤と加熱により酸を発生する熱酸発生剤、及び有機溶剤を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜にクロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いて高エネルギー線を露光し、露光後加熱し、露光によって上記酸発生剤から発生した酸を樹脂の酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該工程で得られたポジ型パターンを露光もしくは加熱し、これにより生じた酸あるいは熱により該ポジ型パターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させてアルカリ溶解性を向上させ、かつ該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、上記ポジ型パターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記架橋が形成されたポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含むポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項2】
ドット形状のクロムレスのシフターを用い、該シフターのドット部分に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項3】
格子状に配列されたクロムレスのシフターを用い、該シフターの格子の隙間に現像後のレジスト膜のドットパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項4】
クロムレスのシフターが配列された位相シフトマスクを用いた密集パターンの露光と、不必要な密集パターンを除去させるための露光を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項5】
クロムレスの位相シフトマスクを用いた密集パターンの露光と、不必要な密集パターンを除去させるための露光が同じ露光ステージ上でステージからウエハーが離されることなく連続して行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項6】
上記レジストパターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程で得られる上記架橋形成ポジ型パターンのアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際、エッチング速度が2nm/秒を超えるものであり、かつ上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタノンから選ばれる1種以上を含む単独又は混合溶剤であり、上記反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性は、上記架橋形成ポジ型パターンを該反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に30秒間触れさせた時の膜減りが10nm以下である耐溶剤性を有するものである請求項1乃至5のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項7】
上記反転用膜形成用組成物は、芳香族骨格あるいは脂環式骨格を有するモノマーユニットを含む樹脂を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項8】
上記反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程と上記架橋形成ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程との間に、上記架橋形成ポジ型パターン上に積層された反転用膜を該ポジ型パターンが露出するまで除去する工程を含む請求項1乃至7のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項9】
上記ポジ型パターン上に積層された反転用膜を除去する工程は、ウェットエッチングである請求項8記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項10】
上記反転用膜は、アルカリ性ウェットエッチング液で処理した際、上記有機溶剤に対する耐性を与える工程後の架橋形成ポジ型パターンよりも溶解速度が遅く、かつ溶解性を示す材料であり、更に上記ウェットエッチングにアルカリ性ウェットエッチング液を用い、架橋形成ポジ型パターン上に積層された反転用膜を除去する工程と上記ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程は同時に行うものである請求項9記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項11】
上記反転用膜の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でエッチングした際の溶解速度は、0.02nm/秒以上2nm/秒以下である請求項10記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項12】
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記レジストパターンに有機溶剤に対する耐性を与える工程における加熱で酸を発生する成分を含有するものである請求項1乃至11のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項13】
上記加熱で酸を発生する成分は、光酸発生剤とは別に添加される熱酸発生剤である請求項12記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項14】
上記熱酸発生剤が下記一般式(P1a−2)で示されることを特徴とする請求項13記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化1】
(式中、K-はα位の少なくとも1つがフッ素化されたスルホン酸、又はパーフルオロアルキルイミド酸もしくはパーフルオロアルキルメチド酸である。R101d、R101e、R101f、R101gはそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていてもよい。R101dとR101e又はR101dとR101eとR101fとはこれらが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e又はR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基であるか、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
【請求項15】
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記樹脂としてラクトン環を有する繰り返し単位と、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト材料である請求項1乃至14のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項16】
上記化学増幅ポジ型レジスト材料によるレジストパターンの架橋形成が該レジスト材料の樹脂中のエステル基、環状エーテル等の求電子性部分構造によることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項17】
ポジ型レジスト材料が、7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位と、酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト材料であり、ポジ型パターン中に酸を発生させると共に熱を加えて、ポジ型パターン中の樹脂の酸不安定基を脱離させる際、該ポジ型パターン中の樹脂の架橋と酸不安定基の脱離とを同時に行うようにした請求項16記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項18】
7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位が、下記一般式(1)に示される繰り返し単位(a)で示される請求項17記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化2】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよいが、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の場合、式中のエステル基に連結した炭素原子は一級又は二級である。R3、R4、R5は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【請求項19】
酸によって脱離する酸不安定基を持つ繰り返し単位が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位(b)である請求項15乃至18のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【化3】
(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7は酸不安定基を示す。bは0<b≦0.8である。)
【請求項20】
R7の酸不安定基が酸によって脱離する脂環構造の酸不安定基である請求項19記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項21】
上記ポジ型パターンはドットパターンを含むものであり、上記反転で得られるパターンはホールパターンを含むものである請求項1乃至20のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項22】
上記ポジ型パターンは密集ドットパターンと孤立ドットパターンの両方を含むものであり、上記反転で得られるパターンは密集ホールパターンと孤立ホールパターンを含むものである請求項1乃至21のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項23】
上記ポジ型パターンは密集ドットパターンを露光し、不必要なドットパターン部分を露光することによって密集ドットパターンと孤立ドットパターンを形成し、上記ポジネガ反転によって密集ホールパターンと孤立ホールパターンを形成するものである請求項22記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項24】
被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有する樹脂を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料を塗布し、加熱により不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成する工程、レジスト膜上に保護膜形成用組成物を塗布し、加熱により不要な溶剤を除去して保護膜を形成する工程、レジスト膜と投影レンズとの間に水又は屈折率が1以上の透明液体を介在させて該レジスト膜に高エネルギー線の繰り返し密集パターンを液浸露光し、更に不必要な密集パターンの未露光部を液浸露光し、露光後加熱により露光によって発生した酸を酸不安定基に作用させ、露光部の樹脂の酸不安定基に脱離反応を行わせた後、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを得る工程、該ポジ型パターンを得る工程で得られたレジストパターン中の上記樹脂の酸不安定基を脱離させると共に、該樹脂にアルカリ性ウェットエッチング液に対する溶解性を失わない範囲で架橋を形成させて、レジストパターンに反転用膜形成用組成物に使用される有機溶剤に対する耐性を与える工程、反転用膜形成用組成物を用いて反転用膜を形成する工程、上記ポジ型パターンをアルカリ性ウェットエッチング液で溶解除去する工程を含む請求項1乃至23のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項25】
保護膜形成用組成物が、アミノ基を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物をベースにしたものであることを特徴とする請求項24記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項26】
保護膜形成用組成物が、アミン化合物を含有することを特徴とする請求項24又は25記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項27】
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上に珪素を含有する中間膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては炭化水素系の材料からなることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項28】
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては珪素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【請求項29】
被加工基板上に、炭素の含有量が75質量%以上のカーボン膜を形成し、その上に有機反射防止膜を形成し、その上にポジネガ反転用のレジスト材料をコートし、反転用膜としては珪素を含有する材料からなることを特徴とする請求項28記載のポジネガ反転を用いたパターン形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−164756(P2010−164756A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6595(P2009−6595)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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