説明

パターン検査装置および検査方法

【課題】画像処理を用いた回路パターンの欠陥検査では、検査対象となる回路パターンの画像を撮影する。このとき、撮影する毎にカメラを移動・停止していると、画像データの取得に時間がかかってしまうという課題があった。
【解決手段】複数の被検査物(回路パターン)が配列された基板に対して、撮影用のカメラを一定速度で移動させながら、予め決めておいた視野位置で連続的に撮影を行う。このため被検査物の配列情報とシステム側のハード的、ソフト的な拘束条件から、移動速度、撮影タイミングなどを予め求めておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板回路パターン、LSI回路パターンの欠陥を画像処理により自動的に検査する回路パターンの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁部材の上に導線のパターンを形成した回路パターンは、携帯電話といった電子機器の一般への普及と共に、急速に需要が高まっている。回路パターンは、それを用いる電子機器の性能や耐久性に影響を及ぼすため、電気的に設計通り結線されていることはもちろん、所定の寸法精度が要求される。
【0003】
そこで、回路パターンは作製後に全数検査し、所定のスペックを満足していることが確認される。ところで、回路パターンは、その種類も数も膨大になってきているため、できるだけ短時間に検査を終わらせる必要がある。
【0004】
従来この検査には、いくつかの方法が提案されている。線幅サブピクセル計測法と呼ばれる方法は、線幅を一定長毎に測定してゆき、前後数計測点からその間の線幅を決定し、基準幅に対しての良否を判断する方法である。この方法は、パターンピッチの1/10程度の分解能で検査が可能である。
【0005】
また、画像比較法は、2値化後の撮像データと良品データとの差分画像を求め、ある面積以上の差異部分を欠陥として求める方法である。この方法は、データを2値化しているため、計算速度は早くできる。
【0006】
この画像比較法では、検査対象物の画像データを取得する必要がある。そのために検査装置には、CCDイメージセンサあるいはITVエリアカメラ等の2次元撮像装置を有している(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭63−19541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
検査対象物は基板上に回路パターンとなる導線部が形成されている。そして、大量に生産する場合は、基板に複数の回路パターンが形成される。1つの広い基板上に形成すれば、1つのプロセスで多くの製品が作製できるからである。
【0008】
一方、回路パターンを画像処理によって欠陥検査する場合は、1つの回路パターンに対して、複数回の画像を取得しなければならない場合が多い。欠陥として判別する大きさは、ファインピッチになるに従い小さくなるが、回路パターンを1枚の画像で撮影し、なおかつ十分な分解能で欠陥を識別する光学系と撮像素子はあまりに高価になりすぎるからである。
【0009】
従って、上記のように基板に複数の回路パターンが形成されている場合は、個々の回路パターン毎に必要な画像データを取得し、欠陥検査を行う必要があった。しかし、個々の回路パターンに対して複数枚の画像データを取得するには、エリアカメラを移動させながら、視野を順次移動させて回路パターンを撮影する必要があり、長大な検査時間を要するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパターン検査方法は、上記の課題を解決すべく想到されたものである。すなわち、1枚の回路パターン全体の画像を複数枚に分けて撮影する場合にタクトタイムが長くなるのは、撮影の度ごとにエリアカメラの移動と停止を繰り返すためである点に注目した。そこで、本発明は、基板上に形成された複数の回路パターンを、一定方向にスイープさせる撮像エリアカメラで連続的に撮影し、欠陥検査を行う検査装置および検査方法を提供するものである。
【0011】
より具体的には、
基板上に複数の回路パターンが形成された回路パターンの検査装置であって、
前記基板を保持するステージと、
前記ステージを移動させるY軸スライダと、
前記基板を前記ステージ上で回転させるθ軸調整機構と、
前記ステージの上方に配置されるエリアエリアカメラと、
前記ステージ上に光を照射するストロボ光源と、
前記エリアエリアカメラを前記Y軸スライダと直角方向に移動させるX軸スライダと、
前記基板上の複数のパターンの位置情報が入力され、前記位置情報に基づき撮影プランを作成し、前記撮影プランに基づいて、前記Y軸スライダを移動させながら連続的に前記エリアエリアカメラで撮影する制御装置を有するパターン検査装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、
基板上に形成された複数の回路パターンのパターン検査方法であって、
基板上の回路パターンの位置情報およびエリアカメラの視野情報から前記回路パターン同士の撮影視野の位相が等しくなる撮影プランを作成する工程と、
良品から前記撮影プランに基づいた検査基準画像データを取得する工程と、
前記撮影プランに基づいて前記回路パターンの画像データを連続的に取得する工程と、
前記画像データと前記検査基準画像データを比較し前記画像データの欠陥を検出することを特徴とするパターン検査方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、撮影エリアカメラを一定方向にスイープさせながら、基板上に形成された回路パターンを連続的に撮影し、欠陥検査を行うこととしたので、撮影毎に移動、停止を繰り返すといったエリアカメラの動きの無駄がなくなり、検査速度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨の範囲内で修正、変更することができる。
【0015】
図1に本発明のパターン検査装置1の概略図を示す。本発明のパターン検査装置1は、被検査物が配置されるステージ2と、ステージ上の被検査物を撮影するエリアカメラ8と、エリアカメラを被検査物に対して横断する方向に移動させるガイドになるアーム4と、エリアカメラに対してステージを移動させるY軸スライダ6(図2参照)と、被検査物をステージ上で回転させるθ軸調整機構10を含む。被検査物は基板12上に回路パターン14が多数形成されたものである。なお、本明細書において、アーム4に対して直角方向をY軸方向といい、アームに沿った方向をX軸方向と呼ぶ。Y軸方向はエリアカメラが連続撮影する際の移動方向である。
【0016】
さらに図2に本発明のパターン検査装置1の構成図を示す。本発明のパターン検査装置1は、図1で示した構成のほか、Y軸スライダ6を駆動させる駆動部16と、エリアカメラ8からの映像データを処理する画像処理部25と、画像処理部25のデータを蓄積する
記憶部26と、駆動部16と画像処理部25を制御する制御部21と、制御部21に指示を出す指示部30を含む。なお、制御部21、画像処理部25、駆動部16、記憶部26はまとめて制御装置20と呼ぶ。
【0017】
次に図1および図2を参照しながら、本発明のパターン検査装置1を詳細に説明する。本発明のパターン検査装置で検査対象となるのは、基板12に回路パターンが多数形成されたものである。個々の回路パターンは、同じであることが望ましいが、個々に異なっていてもよい。基板12は、ガラスや鏡面に仕上げた金属、プラスチックなどが好ましい。回路パターンの形成には基板の平面性が求められるからである。
【0018】
回路パターンは、ポリアミドやポリイミドといった耐熱性フィルム上に銅メッキによって回路パターンが形成されたものである。これらは、基板12上に張り付けられた耐熱性フィルム上に形成される。
【0019】
図4(a)を参照して、基板12上の回路パターンは基板上の基準点若しくは基準線から所定の位置に正確に配置される。図4(a)では基準点をアライメントマーク13として示したが、基板12の縁などでもよい。本発明のパターン検査装置は、連続的に回路パターンの画像を取得するので、回路パターンは正確に配置されていることが必要だからである。従って、それぞれの回路パターン14の大きさや、それぞれの配置間隔は正確に決められている。
【0020】
図1、2を再度参照して、回路パターン14が形成された基板12は、ステージ2上に保持される。保持の方法は、特に限定されない。しかし、ステージ2上に細かい孔を形成し、そこから負圧で基板12を吸着保持させる方法は、基板12がガラスのような脆性の高い材料の場合は、好適である。
【0021】
基板12はステージ2に対して回転方向の位置調整を行うためのθ軸調整機構10を有する。後述するステージ上方のエリアカメラが正しく回路パターン14の画像を取得するために、基板12はステージ上の所定位置に正確に配置される必要があるからである。図1、2では、θ軸調整機構10は1つだけ記載したが、複数個配置されていてもよい。
【0022】
ステージ2の底にはY軸スライダ6が配置される。Y軸スライダ6は、溝5に沿ってステージ2を移動させる。具体的には、車輪が取り付けられたモータや、リニアモータなどが好適に利用できる。特に本発明のパターン検査装置は、基板12を保持したステージ2をY軸方向に所定の速さで移動させながら回路パターン12の画像を撮影するので、加減速の能力に優れた駆動機構が好適に利用される。
【0023】
アーム4には、エリアカメラ8がアーム4に沿ってX軸方向に移動可能に取り付けられている。より具体的には、エリアカメラ8は、アーム4に沿って移動する移動架台9に固定されている。移動架台9は、アーム4に対して、エリアカメラ8を保持したまま移動することができれば、その機構は特に限定されるものではない。しかし、エリアカメラ8のアーム4上での移動量は撮影視野の範囲に影響するため、移動架台9は移動距離が正確に制御できることが要求される。
【0024】
エリアカメラ8は、エリアセンサを有するものが好適に利用される。本発明のパターン検査装置は、移動するエリアカメラから所定のタイミングで基板上の回路パターンを撮影しながら、検査対象の画像データを作成するからである。エリアカメラの視野(以後単に「視野」若しくは「撮影視野」ともいう)は、検出したい欠陥の大きさと、エリアセンサの画素数によって決められる。エリアセンサのデータ転送速度は、撮影周期を高くするための拘束条件となるため、できるだけ転送速度が速い方が好ましい。また、回路パターン
を上方から撮影するために、レンズはテレセントリックスタイプのものが好ましいが、これに限定されるものではない。シャッターは所定信号を受け取ることで所定時間の露光ができるのが望ましい。エリアカメラ8の撮影した画像データVdは、画像処理部25に随時転送される。
【0025】
また、エリアカメラ8のレンズ脇には、ストロボ7が配置される。エリアカメラ8は基板12上を所定速度で移動しながら撮影を行う。移動しながら撮影した画像データで1μm程度若しくは1μm以下の大きさを判断するためには、移動速度による画像の流れを防止する必要があり、短い時間の光でエリアセンサを感光させる必要があるからである。従って、ストロボ7は、エリアカメラのシャッター開口のための信号に同期し、シャッターが開いている間に、短時間の発光を行う。ストロボ7は、短時間の発光であるため、照度の高い光源が望ましい。さらに、回路パターンの画像データに濃淡があると欠陥検査の精度が低下する。従って、少なくとも4方向、望ましくは周囲から発光するストロボがよい。
【0026】
また、ストロボ発光の時間だけ露光させることで、画像の流れを防止するので、装置全体をカバーで覆い、遮光するのが好ましい。
【0027】
図3には望ましいストロボの一例を示す。図3はエリアカメラ側からレンズ81を見た図である。ストロボ発光源71はエリアカメラのレンズ81の周囲に円形状に配置される。それぞれのストロボ発光源71は電源72に接続されており、電源72からのパルス電圧によって発光する。なお電源72は制御装置20からの発光信号によって所定時間の発光ができる。
【0028】
本発明のパターン検査装置1には、図1に図示しない電子制御系の要素も含まれる。図2は、このような要素を中心に示す。制御部21は、装置全体を制御する。具体的にはステージ2を移動させるY軸スライダ6を駆動させる駆動部16や、アーム4上でエリアカメラを保持して移動する移動架台9、エリアカメラからの画像データを処理する画像処理部25と接続され、これらを制御する。また、指示部30とも接続され、指示部30からの指示で装置全体を制御する。
【0029】
駆動部16は、ステージ2を移動させるY軸スライダ6を駆動する。具体的には、駆動信号SydをY軸スライダ6に送信することで、Y軸スライダ6は、所定の加速度で、加減速を行い、また所定速度で移動する。また、駆動部16は、所定のタイミングで、エリアカメラ8のシャッタータイミングを知らせる信号および移動架台9の移動指示Slxdを送信する。これらのタイミングは制御部21によって指示されるものである。なお、上記のストロボ7の発光タイミングもこの指示Slxdに含めてもよい。
【0030】
本発明は、エリアカメラと被検査対象である基板が相対移動すればよいので、ステージではなく、エリアカメラ側を駆動するようにしてもよい。しかし、短い距離で移動速度を高くするには、大きな加速度をかける必要がある。すると、エリアカメラおよび移動架台に過渡の加速度がかかり、故障発生のおそれが高くなる。従って、ステージ側を駆動させるのが好ましい。なお、本明細書では、「エリアカメラの移動速度」といったように、エリアカメラの方があたかも動くように説明を行う場合がある。
【0031】
ステージ2には、θ軸調整機構10が配設されており、基板12がステージ2上の所定位置に配置されるように制御される。制御量は制御部21から指示Sitaとして受け取る。
【0032】
画像処理部25は、エリアカメラ8からの画像データVdを受信し処理する。処理の内
容としては、送られた画像データにどの基板のどの回路パターンのどの画像であるかという識別番号を付与し、記憶部26に蓄積する。また、記憶部26にそれぞれの画像に対して、欠陥のない検査基準画像データを蓄積しておき、画像データVdを受信する毎に欠陥検査を随時おこなってもよい。また、画像処理部25は複数のMPU(Micro Processer Unit)で構成されてもよく、画像データVdの受信と、検査基準画像データに基づく欠陥検査を並行して行ってもよい。
【0033】
画像処理部25は、制御部21からの指示Cipを受けて動作し、制御部21にはSipによって情報を送る。画像処理部25からの情報Sipは、基板12上の回路パターン毎の欠陥検査の結果を含むことができる。
【0034】
制御部21、画像処理部25、駆動部16、記憶部26は制御装置20に含まれる。制御装置20内は、ハード的にも、ソフトウェア的にも構成することが可能である。ここでは、制御部、画像処理部、駆動部と3つに分けて説明したが、これらはソフトウェア的に構成されてもよいし、ハードウェア的に構成されてもよい。また、それぞれに対して1つのMPUとソフトウェアを割り当てることもできる。また、制御装置20は、これらの他にデータを送受信するための外部回線との接続端子や、外部記憶との接続ポートを有していてもよい。
【0035】
指示部30は、マン・マシンインターフェースであり、具体的には、表示装置とキーボードから構成することができる。指示部30からは指示Ccomで制御部21に指示を行い、制御部21からは情報Scomで指示部30へ情報を送信する。
【0036】
次に本発明のパターン検査装置1の画像データの取得について説明する。図4(b)を参照する。図4(b)には、図4(a)で基板12上の回路パターンの一部50を拡大し示した。エリアカメラ8は視野51がある。この視野51は、通常回路パターンよりも小さいので、1つの回路パターンの画像データを得るためには、複数枚の画像データに分けて撮影しなければならない。
【0037】
このように1つの対象物を複数枚の画像データにした場合、それぞれの画像データで発見した欠陥を過不足や重複なく数え上げるためには、それぞれの画像データに重複箇所を設けておけばよい。また、重複箇所を設けておけば、もし撮影場所がずれた場合でも前後の画像データとの位置関係を求めやすく、欠陥検査の際の位置補正にも役立つ。この重複部分はX軸方向、Y軸方向のそれぞれに設けることができる。
【0038】
ここで重複する部分を視野重複部分と呼ぶ。視野重複部分のX軸方向およびY軸方向の長さをfx、fyとする。この視野重複部分は、画像処理において、隣接する画像と連結を図るうえで、決まった長さが必要である。すなわち、予め最少長さが決まる。
【0039】
図4(a)を参照して、エリアカメラ8の動きを説明する。エリアカメラ8は最初にスタート点32に配置され、基板12のY軸方向に移動(33)しながら上記の説明のように視野重複部分を確保しつつ回路パターンを撮影する。終点に達したら、次に基板12のX軸方向に移動し(34)、再び基板Y軸方向へ一定速度で移動(35)しながら画像を撮影する。これを繰り返しながら、基板上の全ての回路パターンを撮影し、画像データを得る。
【0040】
このように一定方向に移動しながら被検査物である回路パターンの画像データを得ると、エリアカメラ8の移動、停止の回数が少なくなり、短時間で多くの画像データを得ることができる。
【0041】
一方、本発明のパターン検査装置の画像取得方法は、1つ1つの回路パターン毎に画像データを取得するのではなく、連続的に画像データを取得するので、予めエリアカメラ8をどの程度の速度で移動させ、またどのタイミングでデータを取得するかを予め決めておかなくてはならない。
【0042】
図5を参照して、移動しながらの撮影のために決めるべき項目について説明する。図5は図4(b)をさらに拡大した図である。回路パターン14aは、基板12の左上の回路パターンであるとする。Y軸方向の長さをAとし、回路パターン同士の間隔をCとする。また、回路パターンのX軸方向の長さをBとし、X軸方向に隣接する回路パターンとの間隔をDとする。また、撮影視野のY軸方向の長さを「a」、X軸方向の長さを「b」とする。そして、エリアカメラ8は基板12の左上から撮影を開始するものとして説明する。
【0043】
エリアカメラ8は最初は静止状態にあるため、一定速度になるには、加速期間が必要である。つまり、最初の視野53に至る前に助走期間Lが必要である。そこで、最初にエリアカメラ8は視野52が見える位置に配置される。なお、この位置は図4(a)のスタート点32である。この助走期間Lは、Y軸スライダ6の駆動能力と、到達速度で決まるので、カメラ移動速度Vcamが決まれば決定することができる。
【0044】
最初の視野53は、回路パターンの縁を視野に入れるのが望ましいので、回路パターン14aの縁よりlだけY軸方向の上側に設定する。このlもシステム側であらかじめ決めておいてよい。次の撮影視野54は視野53と距離fyだけ視野重複部分を確保しながら設定される。この視野重複部分fyは、画像処理の観点から最低距離が決まる。最低距離が確保できれば、後は回路パターンの長さAと、回路パターン間の隙間Cによって可変してもよい。
【0045】
取得した画像データは、必ず何れかの回路パターンの画像データか、どの回路パターンの画像データでもないことが望ましい。1つの画像データ中に複数の回路パターンが含まれると、処理が複雑になるからである。例えば、視野55や56に、回路パターン14a、14bの一部が共に映っていると、この画像データから抽出された欠陥は、両方の回路パターンの欠陥として認識されるおそれもあり、正確な欠陥検査ができない。
【0046】
このような状況を回避するためには、回路パターン14aの最初の撮影視野53と回路パターン14bの最初の撮影視野57は同じ位相で配置されるのがよい。ここで、同じ位相というのは、回路パターンと撮影視野のずれ「l」が同じであることをいう。従って、回路パターンの最初の撮影視野53と回路パターン14bの最初の撮影視野57の直前の撮影視野56までの間に視野重複部分fyで、しかも等間隔に撮影視野が並べば、視野53と視野57は同位相に配置できる。
【0047】
このような撮像プランを決定することで、それぞれの回路パターンとエリアカメラで撮像する視野範囲との位置関係が全ての回路パターンで一致させることができる。このため、基板上に複数存在する回路パターンのうちパターンが共通するものについては、共通の検査基準画像データを用いて検査することができる。特に全ての回路パターンが同じパターンである場合には、比較対象の検査基準画像データは1つ分のみで、すべての回路パターンについて検査が可能となり、検査基準画像データの管理が容易になるとともに、検査開始時の検査基準画像の準備時間が短縮できる。
【0048】
より具体的には、回路パターンの長さAと配置間隔Cとして、下記(1)式で求められるnが整数になるように、fyを調整する。すなわち、視野重複部分の長さfyは、fyの最低距離以上であって、nが整数になるように設定する。
【0049】
n=(A+C)/(a−fy) ・・・・(1)式
また、同様にX軸方向にも視野重複部分fxを確保しながら撮影視野を決める。この場合もX軸方向に隣接する回路パターンとの間隔およびX軸方向の回路パターンの長さによって視野重複部分fxを設定する。
【0050】
撮影視野の位置が決まると、シャッタータイミングTsとストロボタイミングTbを求めることができる。また、システムからの拘束条件で、カメラ移動速度Vcam、および初期位置をも決めることができる。
【0051】
図6に各種タイミングチャートを示す。(a)はシャッタータイミング、(b)はストロボタイミング、(c)はエリアカメラの移動速度である。それぞれのチャートは横軸が時間である。なお、カッコで示した表示は、説明する距離である。エリアカメラ8は、時刻t=0の点で、初速ゼロから加速し、時刻t1の時点で、Vcamになる。ストロボタイミングtb1は、撮影視野53の点であり、ストロボタイミングtb2は、撮影視野54の点である。すなわち、この間に(a−fy)の距離を移動する。なお、「a」は撮影視野のY軸方向の長さであった。
【0052】
一方エリアカメラ8はストロボが発光する前にシャッターを開いておく必要がある。シャッター開口時間をtsとする。また、ストロボで撮影した後、次のシャッターを開くまでに、画像データVdを画像処理部25に転送しなければならない。この転送時間をtdとする。このシャッター速度tsおよびデータ転送速度tdもエリアカメラ8のハード的な性能で決まるものであるので拘束条件となる。従って、撮影視野が移動する(a−fy)の距離の間に、シャッター開口時間tsとデータ転送時間tdを終える必要がある。従って(2)式が成立する。なお、1/(ts+td)が撮像のフレームレート(1秒間に撮像できる画面数)である。
【0053】
Vcam=(a−fy)/(ts+td) ・・・(2)
カメラ移動速度Vcamの最大値は、Y軸スライダ6の能力とステージ2および基板12の総重量で決まる。もし、カメラ移動速度が(2)式で得られる速度より小さい場合は、カメラのフレームレートを落として対応する。また、Y軸スライダ6の能力とステージなどの総重量でエリアカメラの最大移動加速度αが決まる。速度Vcamに加速するまでにはVcam/αの時間が必要である。またこの間にL1=Vcam2/(2α)の距離だけ移動する。従ってこのL1より長い距離を最初の撮影視野53とスタート点32との間の助走距離Lとして設定する。
【0054】
以上のように、重なり距離fy、スタート点32、エリアカメラ移動速度Vcam、シャッタータイミングts1、ストロボタイミングtb1、およびそれぞれのタイミングの最終タイミングを求めることができる。
【0055】
図4(a)を参照して、X軸方向に関しては、ステージが一度停止し、停止した状態でエリアカメラ8が移動(34)するので、1つの撮影視野の中に、2つの回路パターンの画像データが含まれない点と、視野重複部分fxを確保するという条件だけで、エリアカメラ移動距離33を求めることができる。X軸方向には移動しながら撮影することはしないからである。図5では、このエリアカメラ移動距離は符号59である。
【0056】
次に制御部21が作成する撮影プランについて説明する。制御部21は、指示部30から入力される基板12上の回路パターンの位置関係の情報に基づき、撮影プランを作成する。撮影プランとは、上記のパラメータを決定することである。
【0057】
より具体的には、基板12上の回路パターンの大きさと配置間隔と、システムがハード
的および画像処理的に有する拘束条件に基づいて、重なり距離fy、fx、スタート点32の位置、エリアカメラ移動速度Vcam、シャッタータイミングts1、ストロボタイミングtb1、ストロボ間隔(tb2−tb1)およびそれぞれのタイミングの最終タイミングを求めることができる。
【0058】
これらの値が求まることで、以下の手順で連続的に撮影を行うことができる。まず、撮影を開始する前にエリアカメラを初期位置に配置する。次にエリアカメラをスタートさせる。Y軸スライダの加速力によってステージはエリアカメラに対して相対速度Vcamで移動する。最初のシャッタータイミングでシャッターを開く。そして最初のストロボタイミングtb1でストロボを発光させて露光する。そして、ステージ上の基板の端で止まるまで、(ts+td)毎にシャッターを開き、(a−fy)/Vcam毎にストロボを発光させる。
【0059】
エリアカメラが停止したら、(b−fx)だけエリアカメラをX軸方向に移動させ、またY軸方向に同じように移動させながら撮影を行う。
【0060】
次に、本発明のパターン検査装置1を用いた検査について説明する。本発明の検査装置には、取り込んだ画像データを検査基準画像データと比較する。そのため、まず、検査基準画像データの取り込みが必要である。
【0061】
検査基準画像データは、設計データなどを利用することもできるが、検査対象物の基板の中で良品の物の画像データを取り込んで検査基準画像データとするのが簡単で好ましい。この場合、検査基準画像データと検査によって取り込むデータの画像処理を容易にするには、検査によって連続的に取り込む画像データと位相のそろった検査基準画像データを用意するのがよい。
【0062】
図7に検査基準画像データの取得例を示す。基板12上の回路パターン15は、良品であると確認されたものであるとする。この回路パターン15から検査基準画像データを取得する際には、エリアカメラの視野をそれぞれ1乃至9の9視野で取得する。この画像データの取得は、1視野毎にエリアカメラを止めて画像データを取得してよい。1つの回路パターンの画像データを得るだけだからである。
【0063】
ただし、検査対象物から得る画像データと位相を合わせるために、縁からのずれ分「l」、視野重複部分fy、fxは撮影プランに合わせるのが好ましい。
【0064】
視野撮影の順番も、図7では、1、2、3、6、5、4、7、8、9となるように矢印で示したが、どの順番であってもよい。ただし、取得した検査基準画像データがどの番号の視野であるかを視野毎に記録する必要がある。検査基準画像データの視野毎の画像データは、何度も利用されるからである。このように検査基準画像データを取得することを、検査基準画像データ取得工程とよぶ。
【0065】
なお、図7では、基板12上で作製された状態の回路パターンを検査基準画像データとしたが、基板から分離して検査した結果、良品であると確認できた回路パターンを1枚だけセットしてもよい。
【0066】
このように本発明のパターン検査装置は、良品の画像データを取得する必要がある。従って、1つの基板に同じ形状の回路パターンが多く形成されていればいるほど、効率的な検査が可能になる。良品の画像データを検査基準画像データとして取り込む工程も、タクトタイムに含まれるからである。
【0067】
図8に本発明のパターン検査装置1の検査のフローを示す。本発明の検査装置がスタートすると(S100)、基板情報を入力する(S102)。基板情報とは、基板上の回路パターンの長さや幅、また配置間隔などである。
【0068】
次に上記に説明したように各種のパラメータを求め、撮影プランを作成する(S104)。検査基準画像データを取得する(S105)。検査基準画像データの取得は、このタイミングでなくてもよい。しかし、撮影プランによる縁からのずれ分と視野重複分の長さが判明してから行えば、検査で取得した画像データと同じ位相の検査基準画像データを得ることができる。得られた検査基準画像データは記憶部に記録される。
【0069】
次に初期化を行う(S106)。初期化はエリアカメラ8を所定の位置に配置したり、駆動部16にシャッタータイミングやストロボタイミング、エリアカメラの移動速度Vcamを指示する。そして、終了判定をした後(S108)、撮影を開始する(S110)。終了判定は、基板上のすべての回路パターンの画像データを取得できたか否かで判断することができる。
【0070】
本発明のパターン検査装置では、エリアカメラは一度走行を始めると、基板の端に到達するまで走行しながら撮影を続ける。従ってその期間はずっと画像データの取得(S112)である。画像データVdは、エリアカメラが露光され、シャッターを閉じると画像処理部25に転送される。
【0071】
画像処理部25では、送られてきた画像データに識別子を付与し、記憶部に記録する。識別子は、回路パターンの固有番号、回路パターン上での分割片番号である。例えば図4(b)を参照すると、回路パターン14cおよび14dがこの順で並んでいたとする。また、1つの回路パターンを9つの視野でカバーするとする。それぞれ1乃至9と番号をつける。
【0072】
ここで回路パターン14cの左上から撮影を開始したとすると、それぞれの画像データに付与される識別子は、一例として以下のようになる。まず、(14c、1)、(14c、2)、(14c、3)、(14d、1)、(14d、2)、(14d、3)、・・・・・・・、(14z、3)という識別子を取得された画像データに付与する。これが図4のY軸上方から下に向かうカメラの移動(37)中に撮影される画像データに付与される識別子である。なお、最後の回路パターンを符号「14z」とした。
【0073】
また、エリアカメラがY軸方向の下から上に向かって移動(38)しながら撮影すると、(14z、6)、・・・・、(14d、6)、(14d、5)、(14d、4)(14c、6)、(14c、5)、(14c、4)と付与される。
【0074】
再度図8を参照して、エリアカメラが基板の端まで到達し、停止すると、エリアカメラを次の列に移動させる(S114)。次の撮影に備えるためである。そして、再度終了判定に戻る(S108)。
【0075】
すべての回路パターンを撮影し終わったら(ステップS108のY分岐)、終了処理を行う(S116)。終了処理は、エリアカメラを待機位置に戻すなどの処理が含まれる。また、この終了処理で、各画像データに基づく欠陥検査を行ってもよい。終了処理が終わったら終了する。
【0076】
本発明は、欠陥検査のタスク時間を短縮させることを目的としているので、画像データが取得できれば、画像処理による欠陥検査を撮影と並行して行ってもよい。従って、最初の撮影開始(S110)があったら、画像処理は撮影とは独立して開始することができる

【0077】
図9には、画像処理のフローを示す。ここで、スタート(S130)は、図8の検査の開始(ステップS100)であってもよいし、撮影開始の処理(ステップS110)に同期してもよい。画像処理が開始されると、記憶部26に画像データがあるか否かを判断する(S132)。連続して撮影された画像データは記憶部に記録されるからである。そして、画像データが記録されるまで待機する。
【0078】
画像データがあったら(ステップS132のY分岐)、終了判定を行う(S134)。終了判定は、基板上のすべての回路パターンの画像処理が終わったか否かで判断してよい。
【0079】
処理が継続する場合は、画像処理を行う(S136)。ここで画像処理とは、欠陥検査のことである。画像処理は、回路パターンの撮影した部分に対する検査基準画像データと比較することにより、分離した配線同士がつながってしまうショートや配線の一部が欠落する欠け、配線の一部が予定寸法ほり大きくなる突起などを欠陥として検出する。
【0080】
画像処理が終了したら、検査結果を集計する(S138)。画像処理は、画像データ毎に行われるので、1つの回路パターンの視野が得られる毎に行われるため、回路パターン毎に集計をしておく必要があるからである。この際に指示部30へ結果を表示、送信してもよい。
【0081】
基板上のすべての回路パターンについて画像処理が終了したら(S134のY分岐)、終了処理(S140)を行う。終了処理はそれぞれの回路パターン毎の欠陥の個数や欠陥個所にまとめて、指示部30に表示する。もちろんこれらのデータは記録されてもよい。
【0082】
以上のように、本発明のパターン検査装置は、エリアカメラに対してステージ上の基板を一方向(Y軸方向)に移動させながら、連続的に撮影するので、撮影毎に移動・停止がなくなり、画像データの取得時間が短くできる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は回路パターンの自動欠陥検査に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のパターン検査装置の外観を示す図である。
【図2】本発明のパターン検査装置の構成を示す図である。
【図3】本発明のエリアカメラに配設されるストロボの一例を示す図である。
【図4】本発明のパターン検査装置で検査する基板と回路パターンを説明する図である。
【図5】回路パターンと撮影視野の関係を説明する図である。
【図6】シャッターとストロボと移動速度のタイミングチャートである。
【図7】検査基準画像データの取得例を説明する図である。
【図8】本発明のパターン検査装置の処理フローを示す図である。
【図9】パターン検査装置の欠陥検査のフローを示す図である。
【符号の説明】
【0085】
1 パターン検査装置
2 ステージ
4 アーム
5 溝
6 Y軸スライダ
7 ストロボ
8 エリアカメラ
10 θ軸調整機構
12 被検査物(基板)
13 アライメントマーク
14 回路パターン
16 駆動部
20 制御装置
21 制御部
25 画像処理部
26 記憶部
30 指示部
53、54、55、56 撮影視野
71 ストロボ発光源
72 電源
81 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の回路パターンが形成された回路パターンの検査装置であって、
前記基板を保持するステージと、
前記基板を撮像するエリアカメラと
前記基板に光を照射するストロボ光源と、
前記ステージと前記エリアカメラとを相対移動させるY軸スライダと、
前記基板を前記ステージ上で回転させるθ軸調整機構と、
前記エリアカメラを前記Y軸スライダと直角方向に移動させるX軸スライダと、
前記基板上の複数のパターンの位置情報が入力され、前記位置情報に基づき撮影プランを作成し、前記撮影プランに基づいて、前記Y軸スライダを移動させながら連続的に前記エリアカメラで撮影し、前記エリアカメラで撮影された画像データと、検査基準画像データを比較し、欠陥を検出する制御装置を有するパターン検査装置。
【請求項2】
前記撮影プランは、前記基板上の複数の回路パターンについて、それぞれの回路パターンと前記エリアカメラで撮像する視野範囲との位置関係が全ての前記複数の回路パターンで一致する撮影プランである請求項1に記載されたパターン検査装置。
【請求項3】
前記撮影プランは、前記エリアカメラの連続する視野の重複距離が等しくなる撮影プランである請求項1または2に記載されたパターン検査装置。
【請求項4】
前記撮影プランは、前記エリアカメラの撮像時の移動方向であるY軸方向の回路パターン長さAおよび前記回路パターンの配置間隔Cと、前記エリアカメラ視野の前記Y軸方向の長さaと、視野重複部分の前記Y軸方向の長さfyが(1)式を満たす撮影プランである請求項1乃至3のいずれかに記載されたパターン検査装置。
n =(A+C)/(a−fy) ただし、nは整数 (1)
【請求項5】
前記ストロボ光源は、前記エリアカメラの視野に少なくとも4方向から光を当てるストロボ光源である請求項1乃至4のいずれかに一の請求項に記載されたパターン検査装置。
【請求項6】
基板上に形成された複数の回路パターンのパターン検査方法であって、
基板上の回路パターンの位置情報およびエリアカメラの視野情報から前記回路パターン同士の撮影視野の位相が等しくなる撮影プランを作成する工程と、
良品から前記撮影プランに基づいた検査基準画像データを取得する工程と、
前記撮影プランに基づいて前記回路パターンの画像データを連続的に取得する工程と、
前記画像データと前記検査基準画像データを比較し前記画像データの欠陥を検出する工程を有するパターン検査方法。
【請求項7】
前記撮影プランは、前記エリアカメラの撮像時の移動方向であるY軸方向の回路パターン長さAおよび前記回路パターンの配置間隔Cと、前記エリアカメラ視野の前記Y軸方向の長さaと、視野重複部分の前記Y軸方向の長さfyが(1)式を満たす撮影プランである請求項6に記載されたパターン検査方法。
n =(A+C)/(a−fy) ただし、nは整数 (1)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−151666(P2010−151666A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331071(P2008−331071)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】