説明

プラズマ処理装置及び方法

【課題】 マイクロ波プラズマ処理装置において、マイクロ波導入用誘電体窓表面に付着した反応生成物が成長後剥離し、パーティクルとして基板上に降りデバイス不良を生起する問題を解決する。また、放電条件により低下するプラズマ均一性を改善する。
【解決手段】 マイクロ波導入手段108と誘電体窓107の間に絶縁されたラジオ波電極114を設けるか、またはマイクロ波導入手段自体をラジオ波電極としても併用し、プラズマ発生用のマイクロ波にラジオ波を重畳する。これにより、従来は反応生成物が付着しやすかったマイクロ波プラズマの弱かった部分にも、より強いプラズマを発生させる。これはパーティクル抑制のみならず、プラズマの均一性改善にも効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プラズマ処理装置及び方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、特にデバイス不良の原因になるパーティクル発生を抑制し、均一性も改善したマイクロ波プラズマ処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子デバイス製造工程における低温化の要求に応えるため、プロセシングプラズマ技術が益々重要になってきている。とりわけ、ラジオ波よりも高い周波数をもつ電磁波であるマイクロ波を励起源として用いるマイクロ波プラズマは、1012cm−3以上の高密度、かつ、1eV以下の低電子温度プラズマをも得ることができる。それ故、マイクロ波プラズマは、低ダメージ、高品質で高速な処理が可能であり、今後、更なる発展が期待されるプラズマである。マイクロ波プラズマ処理装置は、CVD、エッチング、アッシング、窒化、酸化、クリーニングなどのプロセスに実用されている。
【0003】
マイクロ波を処理用ガスの励起源として使用するプラズマ処理装置においては、電子を高い周波数をもつ電界により加速でき、ガス分子を効率的に励起、電離、分解させることができる。それ故、マイクロ波プラズマは、ガスの励起効率、電離効率及び分解効率が高く、高密度のプラズマを比較的容易に形成し得るので、低温で高速に処理できるという利点を有する。また、カットオフ密度以上の高密度プラズマ発生によりバルクプラズマ中にマイクロ波電界が浸透できず、電子温度が緩和するので、低ダメージで高品質な処理が可能であるという利点もある。また、マイクロ波が誘電体を透過する性質を有することから、プラズマ処理装置を無電極放電タイプのものとして構成でき、これが故に金属汚染の少ない清浄なプラズマ処理を行うことができる。
【0004】
マイクロ波プラズマ処理装置の例として、近年、マイクロ波の均一で効率的な導入装置として複数のスロットがH面に形成された無終端環状導波管を用いた装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。このマイクロ波プラズマ処理装置の模式図を図5に、そのプラズマ発生機構を図6に示す。図中、101はプラズマ処理室、102は被処理基体、103は基体102の支持体、104は基板温度調整手段、105はプラズマ処理室101の周辺に設けられたプラズマ処理用ガス導入手段、106は排気である。107はプラズマ処理室101を大気側と分離する平板状誘電体窓、108はマイクロ波を誘電体窓107を透してプラズマ処理室101に導入するためのスロット付無終端環状導波管である。111はマイクロ波を環状導波管へ導入する導入E分岐、112は環状導波路、114は放射状スロットである。また、113は環状導波管内に生じる定在波、115は誘電体窓107表面を伝搬する表面波、116は隣接するスロットからの表面波同士が干渉して生じる表面定在波である。さらに、117は表面波定在波により生成した発生プラズマ、118は発生プラズマの拡散により生成したプラズマバルクである。
【0005】
プラズマ処理は以下のようにして行う。被処理基体102を支持体103上に設置する。排気系(不図示)を介してプラズマ処理室101内を真空排気する。続いて処理用ガスをプラズマ処理室101の周辺に設けられたガス導入手段105を介して所定の流量でプラズマ処理室101内に導入する。次に排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を所定の圧力に保持する。マイクロ波電源(不図示)より所望の電力を無終端環状導波管108を介してプラズマ処理室101内に供給する。この際、無終端環状導波管108内に導入されたマイクロ波は、導入部のE分岐111で左右に二分配され、無終端環状導波路112内で干渉し、管内波長の1/2毎に管内定在波113の“腹”を生じる。この定在波の腹と腹の間の表面電流が最大になる位置に設置されたスロット114を介し誘電体窓107を透過してプラズマ処理室101に導入されたマイクロ波によりプラズマが発生する。
【0006】
プラズマの電子密度がカットオフ密度、さらに、表面波モード発生しきい密度を超えると、誘電体窓107とプラズマの界面に入射したマイクロ波は、プラズマ中には伝搬できず、誘電体窓107の表面を表面波115として伝搬する。カットオフ密度は、例えば、周波数2.45GHzのマイクロ波の場合、7.5×1010cm−3である。表面波モード発生しきい密度は、例えば、石英窓使用の場合、3.4×1011cm−3である。隣接するスロットから導入された表面波115同士が相互干渉し、表面波115の波長の1/2毎に腹をもつ表面定在波116が生じる。誘電体窓107表面近傍に局在した表面定在波116によって誘電体窓107近傍に超高密度高電子温度の発生プラズマ117が生成する。発生プラズマ117は被処理基体102方向に純粋拡散して緩和し、被処理基体102近傍に高密度低電子温度のプラズマバルク118を生成する。処理用ガスは発生した高密度プラズマにより励起され、支持体103上に載置された被処理基体102の表面を処理する。
【0007】
このようなマイクロ波プラズマ処理装置を用いることにより、均一性の高い高密度低電子温度プラズマを発生させることができる。例えば、マイクロ波パワー1kW以上で、直径300mm程度の大口径空間に±5%程度の均一性をもって、電子密度1011cm−3以上、電子温度1.5eV以下、プラズマ電位7V以下の高密度低電子温度プラズマを発生させることができる。故に、ガスを充分に反応させ活性な状態で基板に供給でき、かつ入射イオンによる基板表面ダメージも低減するので、低温でも高品質で均一かつ高速な処理が可能になる。
【特許文献1】特許登録第2886752号公報
【特許文献2】特許登録第2925535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したようなマイクロ波プラズマ処理装置を用いて堆積性の生成物が生じるプロセスに使用した場合、マイクロ波導入誘電体窓上の表面波電界強度の弱い部分、即ちプラズマ密度の低い部分に堆積物が付着する。そして、これが、成長後、パーティクルとなって基板上に降り、デバイス不良の原因になる場合がある。
本発明の主たる目的は、上述した従来のマイクロ波プラズマ処理装置における問題点を解決し、パーティクルの原因になる誘電体窓上堆積を抑えたプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のプラズマ処理装置は、誘電体窓を有する真空容器と、該真空容器内へ前記誘電体窓を透してマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段とを有するプラズマ処理装置であって、前記真空容器内へ導入されるマイクロ波にラジオ波を重畳するラジオ波重畳手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラズマ発生用のマイクロ波に、ラジオ波を重畳して印加することにより、プラズマ発生部における電子密度分布のばらつきが減少し、誘電体窓表面への堆積物の付着を防止してパーティクル発生を抑制することができる。また、副次的に被処理基体近傍におけるプラズマの空間分布を制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は、従来のマイクロ波プラズマ処理装置における発明が解決しようとする課題において述した問題点を解決し、上記目的を達成すべく鋭意努力した。その結果、上記の構成により、誘電体窓上の表面波電界強度の弱かった部分、即ちプラズマ密度の低かった部分への堆積物の付着を防止し、パーティクル発生を抑制したプラズマ処理装置を提供することが可能であるという知見を得た。
検討を進めていく中で、ラジオ波を印加することによって生じる誘電体窓表面における電界強度分布は表面波電界強度分布とは異なる。したがって、供給するマイクロ波の電力とラジオ波の電力または周波数とを調整することにより、発生するプラズマの空間分布を制御できるという知見も得た。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態に係る第1のプラズマ処理装置は、マイクロ波を透過可能な誘電体窓で一部が形成された真空容器と、該真空容器内に設けられた被処理基体支持手段と、該真空容器内のガスを排気する手段とを有する。また、該真空容器内に処理用ガスを導入する手段と、該真空容器内に該誘電体窓を透してマイクロ波を導入する手段とを有する。そして、該マイクロ波導入手段と該誘電体窓の間に設けられ該マイクロ波導入手段とは電気的に絶縁されたラジオ波電極を有することを特徴とする。すなわち、第1のプラズマ処理装置は、ラジオ波重畳手段として、前記マイクロ波導入手段と前記誘電体窓との間に設けられ該マイクロ波導入手段とは電気的に絶縁されたラジオ波電極を用いている。
ここで、前記マイクロ波導入手段は、例えばスロットアンテナであり、前記ラジオ波電極の、該アンテナのスロットの直下に当る部分は開口されていることが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態に係る第2のプラズマ処理装置は、マイクロ波を透過可能な誘電体窓で一部が形成された真空容器と、該真空容器内に設けられた被処理基体支持手段と、該真空容器内のガスを排気する手段とを有する。また、該真空容器内に処理用ガスを導入する手段と、該真空容器内に該誘電体窓を透してマイクロ波を導入する手段とを有する。そして、該マイクロ波導入手段に該マイクロ波とは異なる周波数を有するラジオ波を重畳して印加し、ラジオ波電極の機能をも持たせたことを特徴とする。すなわち、第2のプラズマ処理装置は、ラジオ波重畳手段として、前記マイクロ波導入手段に印加されるマイクロ波とは異なる周波数を有するラジオ波を該マイクロ波に重畳して該マイクロ波導入手段に印加する手段を用いている。
前記第1及び第2のプラズマ処理装置において、ラジオ波電極に印加する電力の周波数は、好ましくは0.03〜300MHzである。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態に係る第1及び第2のプラズマ処理方法は、前記第1及び第2のプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法である。そして、第1のプラズマ処理方法は、供給するマイクロ波の電力とラジオ波の電力または周波数とを調整することにより、プラズマの空間分布を制御することを特徴とする。また、第2のプラズマ処理方法は、供給するマイクロ波の電力とラジオ波の電力または周波数とを時間的に変化させることにより、プラズマの空間分布を時間的に変化させることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい実施の一形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置を図1を用いて説明する。図1において、100は真空容器、101はプラズマ処理室、102は被処理基体、103は基体102の支持体、104は基板温度調整手段、105はプラズマ処理室101の周辺に設けられたプラズマ処理用ガス導入手段である。また、106は排気、107はプラズマ処理室101を大気側と分離する誘電体窓である。大気側において、108はマイクロ波を誘電体窓107を透してプラズマ処理室101に導入するためのマイクロ波導入手段、例えば無終端環状導波管である。また、109はラジオ波電極、110はマイクロ波導入手段108とラジオ波電極109とを絶縁する絶縁体、114はマイクロ波導入手段108の放射部分に形成されたスロットである。図2に示すように、ラジオ波電極109には、スロット114とを重ねたときにスロット114の直下に当る位置に開口部120が形成されている。さらに、111はマイクロ波を環状導波管108へ導入する導入E分岐、112は環状導波路である。
【0016】
すなわち、図1の装置は、図5の従来例に対し、ラジオ波電極109及び絶縁体110を付加したものである。
なお、本発明に係る別の構成として、ラジオ波電極109と絶縁体110を用いず、マイクロ波導入手段108に直接、ラジオ波を導入しても良い。
【0017】
プラズマ処理は以下のようにして行う。被処理基体102を支持体103上に設置した状態で、排気系(不図示)を介してプラズマ処理室101内を真空排気する。続いて処理用ガスをプラズマ処理室101の周辺に設けられたガス導入手段105を介して所定の流量でプラズマ処理室101内に導入する。次に排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を所定の圧力に保持する。
【0018】
マイクロ波電源(不図示)より所望の電力をマイクロ波導入手段108を介してプラズマ処理室101内に供給することにより、誘電体窓107近傍に初期高密度プラズマが発生する。
【0019】
初期高密度プラズマの電子密度がカットオフ密度、より明確には表面波モード発生しきい密度を超えると、誘電体窓107と初期高密度プラズマの界面に入射したマイクロ波は、初期高密度プラズマ中には伝搬できない。ここで、カットオフ密度は、例えば、周波数2.45GHzのマイクロ波の場合、7.5×1010cm−3である。表面波モード発生しきい密度は、例えば、石英窓使用の場合、3.4×1011cm−3である。初期高密度プラズマ中に伝搬できないマイクロ波は、誘電体窓107と初期高密度プラズマとの界面を表面波115(図6)として伝搬する。すると、表面波同士が干渉し、特定の表面波モードに規定される電界強度分布を示す。そして、誘電体窓107表面に局在した表面波電界により誘電体窓107近傍に非常に高密度の発生プラズマ117(図6)が生成する。発生したプラズマは拡散、緩和により高密度低電子温度のプラズマバルク118(図6)を生成する。処理用ガスは高密度低電子温度プラズマにより励起、分解して活性化し、支持体103上に載置された被処理基体102の表面を処理する。
【0020】
この際に、マイクロ波電力導入と同時に、ラジオ波電極109にラジオ波電力を印加することにより、表面波電界の弱い部分にもプラズマが発生する。そして、誘電体窓107表面にセルフバイアスが生じ、シース電界に因りイオンがプラズマから誘電体窓107表面方向に加速され、誘電体窓107表面への堆積物の付着を抑制する。これにより、主に誘電体窓107表面付着物に起因するパーティクル発生を低減できる。
【0021】
図3は、マイクロ波導入手段108のみを使用し、ガスHe、圧力0.5Torr、マイクロ波パワー3kWの条件で放電した場合の、プラズマ発生部(丸ドット)と被処理基体(四角ドット)近傍の電子密度分布を示す。また、図4は、さらに、ラジオ波電極109も使用し、ガスHe、圧力0.5Torr、マイクロ波パワー3kW、13.56MHzのラジオ波パワー1.2kWの条件で放電した場合の、プラズマ発生部と被処理基体近傍の電子密度分布を示す。図3の場合、スロット近傍に強いリング上のプラズマが発生し、基板近傍でも発生部の分布の影響が多少観られ、±4%程度のばらつきをもつ。これに対して図4の場合には、図3の場合に表面波電界強度が弱くプラズマ密度が低かった部分にもプラズマが発生し、被処理基体近傍で±2.4%程度に改善された均一性を示す。
【0022】
このように、プラズマ発生用のマイクロ波に、ラジオ波を重畳して印加することにより、プラズマ発生部における電子密度分布のばらつきが減少し、その結果として、誘電体窓表面への堆積物の付着を防止してパーティクル発生を抑制できる。また、副次的に被処理基体近傍におけるプラズマの空間分布を制御することが可能である。
なお、ここでは、マイクロ波導入手段と誘電体窓の間にマイクロ波導入手段とは電気的に絶縁されたラジオ波電極を設けた例について説明した。しかし、マイクロ波導入手段にマイクロ波とは異なる周波数を有するラジオ波を重畳して印加しても結果は同様である。
【0023】
本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置に用いられるラジオ波電極は、マイクロ波導入を妨げないように、スロットなどのマイクロ波放射部位に当る箇所は開口されていることが望ましい。
本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置に用いられるラジオ波電極は、マイクロ波導入手段との電気的絶縁性を確保するため、間に絶縁体を挟むことが望ましい。
本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置に用いられるラジオ波の周波数は、0.03〜300MHzが適当である。
【0024】
本発明のマイクロ波プラズマ処理装置に用いられる誘電体窓107の材質は、機械的強度が充分でマイクロ波の透過率が充分高くなるように誘電欠損の小さなものであれば適用可能である。例えば石英やアルミナ(サファイア)、窒化アルミニウム、弗化炭素ポリマ(テフロン:登録商標)などが最適である。
【0025】
本発明に使用されるマイクロ波導入手段は、例えば、環状導波管マルチスロットアンテナ、空洞共振器型アンテナ、同軸結合アプリケータ、同軸導波管導入平板アンテナ、パッチアンテナなど、中空構造をもつマイクロ波導入手段である。
本発明は、マイクロ波導入手段としてスロットなどのマイクロ波放射部位が比較的局在したもの、特に、スロット付き環状導波管のようにスロットの数が少ないものを用いる場合に好適である。
【0026】
本発明のマイクロ波プラズマ処理装置に用いられるマイクロ波導入手段の1例であるスロット付き無終端環状導波管108の材質は、導電体であれば使用可能である。但し、マイクロ波の伝搬ロスをできるだけ抑えるため、導電率の高いAl、Cu、Ag/CuメッキしたSUSなどが最適である。スロット付無終端環状導波管108の導入口の向きは、スロット付無終端環状導波管108内のマイクロ波伝搬空間に効率よくマイクロ波を導入できれば、H面に平行でも垂直でも、伝搬空間の接線方向でも伝搬空間の左右方向に二分配するものでもよい。
【0027】
本発明においては、より低圧で処理するために、磁界発生手段を用いても良い。この場合、磁界としては、スロットの幅方向に発生する電界に垂直な磁界であれば適用可能である。磁界発生手段としては、コイル以外でも、永久磁石でも使用可能である。コイルを用いる場合には過熱防止のため水冷機構や空冷など他の冷却手段を用いてもよい。
また、紫外光を基体表面に照射してもよい。光源としては、被処理基体もしくは基体上に付着したガスに吸収される光を放射するものなら適用可能で、エキシマレーザ、エキシマランプ、希ガス共鳴線ランプ、低圧水銀ランプなどが適当である。
【0028】
本発明のマイクロ波プラズマ処理方法におけるプラズマ処理室内の圧力は0.1mTorr乃至10Torrの範囲、より好ましくは、10mTorrから3Torrの範囲が適当である。
【0029】
本発明のプラズマ処理装置及び方法によれば、使用するガスを適宜選択することにより、各種の堆積膜を効率よく形成することが可能である。形成される堆積膜は、Si、SiO、SiOF、Ta、TiO、TiN、Al、AlN、MgF、HfSiO、HfSiON、HfAlO、HfAlONなどの絶縁膜を例示することができる。また、a−Si、poly−Si、SiC、SiGe、GaAsなどの半導体膜、Al、W、Mo、Ti、Taなどの導電膜やカーボン膜を例示することができる。
【0030】
本発明のプラズマ処理装置により処理する被処理基体102は、半導体であっても、導電性のものであっても、あるいは電気絶縁性のものであってもよい。
導電性基体としては、Fe、Ni、Cr、Al、Mo、Au、Nb、Ta、V、Ti、Pt、Pbなどの金属またはこれらの合金、例えば真鍮、ステンレス鋼などが挙げられる。
絶縁性基体としては、SiO系の石英や各種ガラス、Si、NaCl、KCl、LiF、CaF、BaF、Al、AlN、MgOなどの無機物を挙げることができる。また、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドなどの有機物のフィルム、シートなどが挙げられる。
【0031】
本発明のプラズマ処理装置に用いられるガス導入手段105の向きは、ガスが誘電体窓107近傍に発生するプラズマ領域を経由した後中央付近に十分に供給されてから基板表面を中央から周辺に向かって流れるような向きが最適である。よって、誘電体窓107に向けてガスを吹き付けられる構造を有することが最適である。
【0032】
CVD法により基板上に薄膜を形成する場合に用いられるガスとしては、一般に公知のガスが使用できる。
a−Si、poly−Si、SiCなどのSi系半導体薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介してプラズマ処理室101へ導入するSi原子を含有するガスの原料は、常温常圧でガス状態であるか、または容易にガス化し得る化合物である。例えば、SiH、Siなどの無機シラン類、テトラエチルシラン(TES)、テトラメチルシラン(TMS)、ジメチルシラン(DMS)、ジメチルジフルオロシラン(DMDFS)、ジメチルジクロルシラン(DMDCS)などの有機シラン類である。または、SiF、Si、Si、SiHF、SiH、SiCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、SiClなどのハロゲン化シランである。また、この場合のSi原料ガスと混合して導入してもよい添加ガスまたはキャリアガスとしては、H、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnがある。
【0033】
Si、SiOなどのSi化合物系薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入するSi原子を含有する原料としては、常温常圧でガス状態であるか、または容易にガス化し得る化合物を用いることができる。このような化合物としては、SiH、Siなどの無機シラン類を挙げることができる。また、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、オクタメチルシクロテトラシラン(OMCTS)、ジメチルジフルオロシラン(DMDFS)、ジメチルジクロルシラン(DMDCS)などの有機シラン類を挙げることができる。また、SiF、Si、Si、SiHF、SiH、SiCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、SiClなどのハロゲン化シラン類を挙げることができる。また、この場合の同時に導入する窒素原料ガスまたは酸素原料ガスとしては、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、O、O、HO、NO、NO、NOなどが挙げられる。
【0034】
Al、W、Mo、Ti、Taなどの金属薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入する金属原子を含有する原料としては、以下の有機金属またはハロゲン化金属を例示することができる。有機金属としては、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAlH)、タングステンカルボニル(W(CO))がある。また、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、テトライソプロポキシチタン(TIPOTi)、ペンタエトキシタンタル(PEOTa)がある。ハロゲン化金属としては、AlCl、WF、TiCl、TaCl5がある。また、この場合のSi原料ガスと混合して導入してもよい添加ガスまたはキャリアガスとしては、H、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnが挙げられる。
【0035】
Al、AlN、Ta、TiO、TiN、WOなどの金属化合物薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入する金属原子を含有する原料としては、以下の有機金属またはハロゲン化金属を例示することができる。有機金属としては、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAlH)、タングステンカルボニル(W(CO))がある。また、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、テトライソプロポキシチタン(TIPOTi)、ペンタエトキシタンタル(PEOTa)がある。ハロゲン化金属としては、AlCl、WF、TiCl、TaClなどのハロゲン化金属がある。また、この場合の同時に導入する酸素原料ガスまたは窒素原料ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NO、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などが挙げられる。
【0036】
グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、ダイアモンドなどのカーボン系薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入する原料としては、炭素原子を含めば可能である。例えば、CH、C、Cなどの飽和炭化水素、C、C、C、Cなどの不飽和炭化水素、Cなどの芳香族炭化水素、COH、COHなどのアルコール類が適当である。また、(CHCOなどのケトン類、CHCHOなどのアルデヒド類、HCOOH、CHCOOHなどのカルボン酸類なども適当である。
【0037】
基体表面をエッチングする場合の処理用ガス導入手段105から導入するエッチング用ガスとしては、F、CF、CH、C、C、C、CFCl、SF、NF、Cl、CCl、CHCl、CClなどが挙げられる。
フォトレジストなど基体表面上の有機成分をアッシング除去する場合の処理用ガス導入手段105から導入するアッシング用ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NO、N、Hなどが挙げられる。
【0038】
また本発明のマイクロ波プラズマ処理装置及び処理方法を表面改質にも適用する場合、使用するガスを適宜選択することにより、各種の処理が可能である。例えば基体もしくは表面層としてSi、Al、Ti、Zn、Taなどを使用してこれら基体もしくは表面層の酸化処理あるいは窒化処理さらにはB、As、Pなどのドーピング処理等が可能である。さらに本発明において採用する成膜技術はクリーニング方法にも適用できる。その場合、酸化物あるいは有機物や重金属などのクリーニングに使用することもできる。また、フォトレジストなど基体表面上の有機成分をアッシング除去する場合にも使用することもできる。
【0039】
基体を酸化表面処理する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入する酸化性ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NOなどが挙げられる。また、基体を窒化表面処理する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入する窒化性ガスとしては、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などが挙げられる。
【0040】
基体表面の有機物をクリーニング、またはアッシング除去する場合のガス導入手段105から導入するクリーニング/アッシング用ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NO、N、Hなどが挙げられる。また、基体表面の無機物をクリーニングする場合のプラズマ発生用ガス導入手段から導入するクリーニング用ガスとしては、F、CF、CH、C、C、CFCl、SF、NFなどが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下実施例を挙げて本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、フォトレジストのアッシングを行った。
基体102としては、層間SiO膜をエッチングし、ビアホールを形成した直後のシリコン(Si)基板(φ300mm)を使用した。
【0042】
まず、Si基板102を支持体103上に設置した後、ヒータ104を用いて250℃まで加熱し、排気系(不図示)を介してプラズマ処理室101内を真空排気し、10−4Torrまで減圧させた。プラズマ処理用ガス導入手段105を介して酸素ガスを2slmの流量でプラズマ処理室101内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を1.5Torrに保持した。プラズマ処理室101内に、2.45GHzのマイクロ波電源よりスロット付無終端環状導波管108を介して2.5kWの電力を、同時に13.56MHzのラジオ波電源よりラジオ波電極109を介して1.2kWの電力を、供給した。かくして、プラズマ処理室101内にプラズマを発生させた。この際、プラズマ処理用ガス導入手段105を介して導入された酸素ガスはプラズマ処理室101内で励起、分解、反応して酸素原子となり、シリコン基板102の方向に輸送され、基板102上のフォトレジストを酸化し、気化、除去された。
【0043】
アッシング後、アッシング速度の均一性と基板表面電荷密度、1000枚処理後のパーティクル発生について評価した。
得られたアッシング速度の均一性は、±2.4%(6.1μm/min)と極めて良好で、表面電荷密度も0.6×1011cm−2と充分低い値を示し、パーティクル発生も問題なかった。
【0044】
[実施例2]
図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、フォトレジストのアッシングを行った。基体102としては、層間SiO膜をエッチングし、ビアホールを形成した直後のシリコン(Si)基板(φ12インチ)を使用した。
【0045】
まず、Si基板102を支持体103上に設置した後、ヒータ104を用いて250℃まで加熱し、排気系(不図示)を介してプラズマ処理室101内を真空排気し、10−5Torrまで減圧させた。プラズマ処理用ガス導入手段105を介して酸素ガスを2slmの流量でプラズマ処理室101内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を2Torrに保持した。プラズマ処理室101内に、2.45GHzのマイクロ波電源よりスロット付無終端環状導波管108を介して2.5kWの電力を、同時に13.56MHzのラジオ波電源よりラジオ波電極109を介して1.2kWの電力を、供給した。かくして、プラズマ処理室101内にプラズマを発生させた。この際、プラズマ処理用ガス導入手段105を介して導入された酸素ガスはプラズマ処理室101内で励起、分解、反応して酸素原子となり、シリコン基板102の方向に輸送され、基板102上のフォトレジストを酸化し、気化、除去された。
【0046】
アッシング後、アッシング速度の均一性と基板表面電荷密度、1000枚処理後のパーティクル発生について評価した。
得られたアッシング速度の均一性は、±3.1%(7.9μm/min)と極めて良好で、表面電荷密度も1.0×1011cm−2と充分低い値を示し、パーティクルも問題なかった。
【0047】
[実施例3]
図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、極薄酸化膜の表面窒化を行った。基体102としては、16A厚表面酸化膜付きシリコン(Si)基板(φ8インチ)を使用した。
【0048】
まず、Si基板102を支持体103上に設置した後、ヒータ104を用いて150℃まで加熱し、排気系(不図示)を介してプラズマ処理室101内を真空排気し、10−3Torrまで減圧させた。プラズマ処理用ガス導入手段105を介して窒素ガスを50sccm、ヘリウムガスを450sccmの流量でプラズマ処理室101内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を0.2Torrに保持した。プラズマ処理室101内に、2.45GHzのマイクロ波電源よりスロット付無終端環状導波管108を介して1.5kWの電力を、同時に13.56MHzのラジオ波電源よりラジオ波電極109を介して1.2kWの電力を、供給した。かくして、プラズマ処理室101内にプラズマを発生させた。この際、プラズマ処理用ガス導入手段105を介して導入された窒素ガスはプラズマ処理室101内で励起、分解、反応して窒素イオンや原子となり、シリコン基板102の方向に輸送され、基板102上の酸化膜表面を窒化した。
【0049】
窒化後、窒化速度の均一性と基板表面電荷密度、1000枚処理後のパーティクル発生について評価した。
得られた窒化速度の均一性は、±1.5%と極めて良好で、表面電荷密度も0.9×1011cm−2と充分低い値を示し、パーティクルも問題なかった。
【0050】
[実施例4]
図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、シリコン基板の直接窒化を行った。基体102としては、ベアシリコン(Si)基板(φ8インチ)を使用した。
【0051】
まず、Si基板102を支持体103上に設置した後、ヒータ104を用いて150℃まで加熱し、排気系(不図示)を介してプラズマ処理室101内を真空排気し、10−3Torrまで減圧させた。プラズマ処理用ガス導入手段105を介して窒素ガスを500sccmの流量でプラズマ処理室101内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を0.1Torrに保持した。プラズマ処理室101内に、2.45GHzのマイクロ波電源よりスロット付無終端環状導波管108を介して1.5kWの電力を、同時に13.56MHzのラジオ波電源よりラジオ波電極109を介して1.2kWの電力を、供給した。かくして、プラズマ処理室101内にプラズマを発生させた。この際、プラズマ処理用ガス導入手段105を介して導入された窒素ガスはプラズマ処理室101内で励起、分解、反応して窒素イオンや原子となり、シリコン基板102の方向に輸送され、シリコン基板102の表面を直接窒化した。
【0052】
窒化後、窒化速度の均一性と基板表面電荷密度、1000枚処理後のパーティクル発生について評価した。
得られた窒化速度の均一性は、±1.1%と極めて良好で、表面電荷密度も1.7×1011cm−2と充分低い値を示し、パーティクルも問題なかった。
【0053】
[実施例5]
図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、半導体素子保護用窒化シリコン膜の形成を行った。基体102としては、Al配線パターン(ラインアンドスペース0.5μm)が形成された層間SiO膜付きφ300mmP型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉、抵抗率10Ωcm)を使用した。
【0054】
まず、シリコン基板102を支持体103上に設置した後、排気系(不図示)を介してプラズマ処理室101内を真空排気し、10−7Torrの値まで減圧させた。続いてヒータ104に通電し、シリコン基板102を300℃に加熱し、該基板をこの温度に保持した。プラズマ処理用ガス導入手段105を介して窒素ガスを600sccmの流量で、また、モノシランガスを200sccmの流量でプラズマ処理室101内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を20mTorrに保持した。ついで、2.45GHzのマイクロ波電源(不図示)より3.0kWの電力を、同時に13.56MHzのラジオ波電源より1.2kWの電力を、スロット付無終端環状導波管108を介して供給した。かくして、プラズマ処理室101内にプラズマを発生させた。この際、プラズマ処理用ガス導入手段105を介して導入された窒素ガスはプラズマ処理室101内で励起、分解されて窒素原子となり、シリコン基板102の方向に輸送され、モノシランガスと反応する。結果、窒化シリコン膜がシリコン基板102上に1.0μmの厚さで形成した。
【0055】
成膜後、成膜速度の均一性、応力などの膜質、1000枚処理後のパーティクル発生について評価した。応力は成膜前後の基板の反り量の変化をレーザ干渉計Zygo(商品名)で測定し求めた。
得られた窒化シリコン膜の成膜速度の均一性は、±2.6%(530nm/min)と極めて良好であった。また、膜質も応力0.9x10dyne・cm−2(圧縮)、リーク電流1.1×10−10A・cm−2、絶縁耐圧10.7MV/cmの極めて良質な膜であることが確認された。さらに、パーティクルも問題なかった。
【0056】
[実施例6]
図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、プラスチックレンズ反射防止用酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜の形成を行った。基体102としては、直径50mmプラスチック凸レンズを使用した。
【0057】
レンズ102を支持体103上に設置した後、排気系(不図示)を介してプラズマ処理室101内を真空排気し、10−7Torrの値まで減圧させた。プラズマ処理用ガス導入手段105を介して窒素ガスを150sccmの流量で、また、モノシランガスを70sccmの流量でプラズマ処理室101内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を5mTorrに保持した。ついで、2.45GHzのマイクロ波電源(不図示)より3.0kWの電力を、同時に13.56MHzのラジオ波電源より1.2kWの電力を、スロット付無終端環状導波管108を介してプラズマ処理室101内に供給した。かくして、プラズマ処理室101内にプラズマを発生させた。この際、プラズマ処理用ガス導入手段105を介して導入された窒素ガスは、プラズマ処理室101内で励起、分解されて窒素原子などの活性種となり、レンズ102の方向に輸送され、モノシランガスと反応する。結果、窒化シリコン膜がレンズ102上に20nmの厚さで形成された。
【0058】
次に、プラズマ処理用ガス導入手段105を介して酸素ガスを200sccmの流量で、また、モノシランガスを100sccmの流量でプラズマ処理室101内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ処理室101内を2mTorrに保持した。ついで、2.45GHzのマイクロ波電源(不図示)より2.0kWの電力を、同時に13.56MHzのラジオ波電源より1.2kWの電力を、スロット付無終端環状導波管108を介してプラズマ処理室101内に供給した。かくして、プラズマ処理室101内にプラズマを発生させた。この際、プラズマ処理用ガス導入手段105を介して導入された酸素ガスは、プラズマ処理室101内で励起、分解されて酸素原子などの活性種となり、活性種はレンズ102の方向に輸送され、モノシランガスと反応する。結果、酸化シリコン膜がレンズ102上に85nmの厚さで形成された。
【0059】
成膜後、成膜速度の均一性、反射特性、1000枚処理後のパーティクル発生について評価した。
得られた窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の成膜速度の均一性はそれぞれ±2.7%(380nm/min)、±2.9%(410nm/min)と良好で、膜質も、500nm付近の反射率が0.14%と極めて良好な光学特性であることが確認された。また、パーティクルも問題なかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の一形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の模式図である。
【図2】図1の装置におけるラジオ波電極とスロットの位置関係を説明するための図である。
【図3】図1の装置においてマイクロ波導入手段のみを用いた場合の電子密度分布を示す図である。
【図4】図1の装置においてマイクロ波導入手段とラジオ波導入手段の双方を用いた場合の電子密度分布を示す図である。
【図5】従来例のマイクロ波プラズマ処理装置の模式図である。
【図6】図5の装置におけるプラズマ発生原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
101 プラズマ処理室
102 被処理基体
103 支持体
104 ヒータ(基板温度調整手段)
105 処理用ガス導入手段
106 排気
107 誘電体窓
108 スロット付無終端環状導波管(マイクロ波導入手段)
109 ラジオ波電極
110 絶縁体
111 マイクロ波導入E分岐
112 環状導波路
113 管内定在波
114 スロット
115 表面波
116 表面定在波
117 発生プラズマ
118 プラズマバルク
120 ラジオ波電極の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体窓を有する真空容器と、該真空容器内へ前記誘電体窓を透してマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段とを有するプラズマ処理装置であって、
前記真空容器内へ導入されるマイクロ波にラジオ波を重畳するラジオ波重畳手段を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ラジオ波重畳手段は、前記マイクロ波導入手段と前記誘電体窓との間に設けられ該マイクロ波導入手段とは電気的に絶縁されたラジオ波電極であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記マイクロ波導入手段はスロットアンテナであり、前記ラジオ波電極の、該アンテナのスロットの直下に当る部分は開口されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ラジオ波重畳手段は、前記マイクロ波導入手段に印加されるマイクロ波とは異なる周波数を有するラジオ波を該マイクロ波に重畳して該マイクロ波導入手段に印加する手段であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記ラジオ波の周波数は0.03〜300MHzであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用いるプラズマ処理方法であって、供給するマイクロ波の電力とラジオ波の電力または周波数とを調整することにより、プラズマの空間分布を制御することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用いるプラズマ処理方法であって、供給するマイクロ波の電力とラジオ波の電力または周波数とを時間的に変化させることにより、プラズマの空間分布を時間的に変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−181710(P2008−181710A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12902(P2007−12902)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】