説明

マスタシリンダ装置

【課題】 実用性の高いマスタシリンダ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本マスタシリンダ装置110は、前方に作動液を加圧するための加圧室R1が区画される加圧ピストン302と、加圧ピストンとの間に作動液で満たされるピストン間室R3が区画され、後端部に連結されるブレーキ操作部材150に加えられた操作力によって前進する入力ピストン306と、入力ピストンの前進に対して弾性反力を付与するストロークシミュレータ450とを備え、専ら操作力に依存して作動液を加圧する場合に、ストロークシミュレータを機能させないようにし、かつ、ピストン間室を密閉することで、入力ピストンから加圧ピストンへの操作力の伝達を許容して、操作力に依存した加圧室内の作動液の加圧を実現する。したがって、入力ピストンが加圧ピストンに当接しなくてもブレーキ装置116は制動力を発生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に設けられたブレーキ装置に作動液を加圧して供給するためのマスタシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の液圧ブレーキシステムには、例えば、下記特許文献に記載されているように、通常、高圧源から導入される高圧とされた作動液の圧力に専ら依存して作動液を加圧するように作動するマスタシリンダ装置が採用されている。このようなマスタシリンダ装置は、通常、運転者が操作部材に加える操作力によって作動液を加圧できないようになっている。具体的に言うと、このようなマスタシリンダ装置は、作動液を加圧する加圧ピストンと、操作部材の連結される入力ピストンとを有し、それらのピストンが互いに離間している。そのため、操作力が加圧ピストンに伝達されず、操作力によって作動液を加圧することができない。しかしながら、電気的失陥等によって高圧源が正常に作動することができない場合、マスタシリンダ装置は、高圧とされた作動液に専ら依存して作動液を加圧するように作動することができなくなってしまう。そのため、マスタシリンダ装置は、運転者の操作力に専ら依存して作動液を加圧するように作動するための機能も備えている。具体的に言えば、入力ピストンの加圧ピストンへの当接を許容することで、操作力を加圧ピストンに伝達し、操作力によって作動液を加圧することができるようにされているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−279450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなマスタシリンダ装置が専ら操作力に依存して作動液を加圧するように作動する場合、操作部材が操作されても、入力ピストンが加圧ピストンに当接するまでは、作動液を加圧することができない。つまり、ブレーキ操作を開始しても、ブレーキ装置はすぐに制動力を発生することができない。いわば、空踏みのような状態がブレーキ操作に発生してしまうため、ブレーキ操作における操作感を低下させてしまう。このような操作感の低下は、入力ピストンと加圧ピストンとが離間しているマスタシリンダ装置の有する問題の一例であって、このようなマスタシリンダ装置は他にも種々の問題を有しており、種々の改善を施すことによって、それの実用性を向上させることが可能である。本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いマスタシリンダ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のマスタシリンダ装置は、(A)前方に作動液を加圧するための加圧室が区画される加圧ピストンと、(B)加圧ピストンとの間に作動液で満たされるピストン間室が区画されるようにして、その加圧ピストンの後方に配設され、後端部に連結されるブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進する入力ピストンと、(C)入力ピストンの前進に対して弾性反力を付与する反力付与機構とを備え、さらに、専ら操作力に依存して作動液を加圧する場合に、反力付与機構を機能させないようにし、かつ、ピストン間室を密閉することで入力ピストンから加圧ピストンへの操作力の伝達を許容して、操作力に依存した加圧室内の作動液の加圧を実現させる操作力依存加圧実現機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマスタシリンダ装置によれば、専ら操作力に依存して作動液を加圧する場合に、操作力依存加圧実現機構によって、密閉されたピストン間室内の作動液を入力ピストンの前進によって加圧することができる。さらに、その加圧された作動液によって加圧ピストンを前進させ、加圧室内の作動液を加圧することができる。したがって、入力ピストンが加圧ピストンに当接しなくてもブレーキ装置は制動力を発生することができ、空踏みの状態の殆どないブレーキ操作を実現させることができる。また、その際、運転者は、反力付与機構による弾性反力を、自身の操作力に対する操作反力として実感することはないが、主に、加圧室内の作動液の圧力を操作反力として実感することができる。このように、本発明のマスタシリンダ装置によれば、専ら操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧する場合に、運転者は違和感を感じることなくブレーキ操作をすることができる。そのことによって、マスタシリンダ装置の実用性を向上させることができるのである。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(11)項が請求項2に、(12)項が請求項3に、(13)項が請求項4に、(15)項が請求項5に、(21)項が請求項6に、(22)項が請求項7に、(23)項が請求項8に、(25)項が請求項9に、(31)項が請求項10に、(32)項が請求項11に、(33)項が請求項12に、(35)項が請求項13に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)車輪に設けられて作動液の圧力によって作動するブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方が閉塞されたハウジングと、
前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための加圧室が自身の前方に区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
その加圧ピストンとの間に作動液で満たされるピストン間室が区画されるようにして、その加圧ピストンの後方において前記ハウジング内に配設され、後端部がブレーキ操作部材に連結されて、そのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進する入力ピストンと、
その入力ピストンの前進に対して弾性反力を付与する反力付与機構と
を備え、
通常、前記操作力が前記入力ピストンから前記加圧ピストンへ伝達されない状態において、高圧源から当該マスタシリンダ装置に導入された作動液の圧力に依存して前記加圧ピストンが前記加圧室内の作動液を加圧するように構成されており、
前記高圧源から導入される作動液の圧力が不充分となる状況下において、前記反力付与機構を機能させないようにし、かつ、前記ピストン間室を密閉することで前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの前記操作力の伝達を許容して、その操作力に依存した前記加圧ピストンによる前記加圧室内の作動液の加圧を実現させる操作力依存加圧実現機構を、さらに備えたマスタシリンダ装置。
【0010】
上記構成とされたマスタシリンダ装置では、高圧源から導入される作動液の圧力が不充分となる状況下において、密閉されたピストン間室内にある作動液を操作力による入力ピストンの前進によって加圧することができる。その加圧された作動液によって、加圧ピストンが前進させられ、加圧室内の作動液が加圧される。したがって、入力ピストンが加圧ピストンに当接していなくても、操作力が加圧ピストンに伝達されるため、本マスタシリンダ装置は、専ら操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧するように作動できる。つまり、ブレーキ装置は制動力を発生することができる。したがって、例えば、ブレーキ操作開始直後にピストン間室を密閉するようにすれば、空踏みの状態の殆どないブレーキ操作を実現させることができる。そのため、運転者は、専ら操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧する場合に、空踏み状態等による違和感を感じることなくブレーキ操作をすることができる。
【0011】
また、上記構成によれば、運転者は、通常、反力付与機構による弾性反力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として実感することができる。つまり、本マスタシリンダ装置では、反力発生機構を含んで所謂ストロークシミュレータが構成されていると考えることができる。一方、高圧源から導入される作動液の圧力が不充分となる状況下では、反力付与機構が機能しないため、運転者は、反力付与機構による弾性反力を操作反力として実感することはない。しかし、運転者は、主に、加圧室内の作動液の圧力による反力を操作反力として実感することができる。したがって、運転者は、専ら操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧する場合でも、違和感を感じることなくブレーキ操作をすることができる。
【0012】
(2)当該マスタシリンダ装置が、
前記操作部材が操作されていない状態において、前記ピストン間室の低圧源への連通を確保するピストン間室連通確保機構を備えた(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0013】
ブレーキ操作がされていない場合、ブレーキ装置は制動力を発生しない状態となる。しかしながら、例えば、ブレーキ操作によって、ピストン間室内に作動液の不要な流入等があった場合には、ブレーキ操作を終了しても、ピストン間室内の作動液が加圧された状態で維持されてしまう可能性がある。つまり、ピストン間室内に残圧が生じてしまい、ブレーキ操作がされていないのにブレーキ装置が制動力を発生する現象、所謂、引き摺り現象が発生してしまう可能性がある。上記構成のマスタシリンダ装置では、ブレーキ操作が終了すると、ピストン間室内の作動液の圧力が低圧源の圧力とされる。そのため、本マスタシリンダ装置は、ブレーキ操作されていない状態での残圧の発生を防止することができ、ブレーキ装置で引き摺り現象が発生しないのである。なお、ピストン間室の低圧源への連通が確保されるのは、通常、および、高圧源から導入される作動液の圧力が不充分となる状況のいずれの場合であってもよいし、どちらか一方の場合だけであってもよい。
【0014】
(11)前記入力ピストンが鍔部を有し、その鍔部の前方に、作動液で満たされた環状の反力室が、その鍔部の後方に、作動液で満たされた環状の後背室が、それぞれ区画されており、
当該マスタシリンダ装置が、前記入力ピストンの進退に伴う前記ピストン間室の容積変化と前記後背室の容積変化とを相互に吸収可能とすべく、それらピストン間室と後背室とを相互に連通させる室間連通路を備え、
通常、その室間連通路によって、前記ピストン間室と前記後背室とが相互に連通させられていることで、前記操作力が前記入力ピストンから前記加圧ピストンへ伝達されない状態が実現されるとともに、それらピストン間室と後背室とに前記高圧源からの作動液が導入され、
前記反力付与機構が、前記反力室と連通して作動液で満たされるとともに容積変化が許容された液室と、その液室内の作動液を弾性的に加圧する加圧機構とを含んで構成されており、
前記操作力依存加圧実現機構が、
前記反力付与機構を機能させないようにすべく、前記反力室を低圧源と連通させる反力室連通器と、
前記ピストン間室を密閉すべく、前記室間連通路を遮断する室間連通路遮断器と
を含んで構成された(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0015】
上記構成とされたマスタシリンダ装置では、入力ピストンが前進すると、室間連通路を介してピストン間室内の作動液は後背室内へと流入し、後退すると、室間連通路を介して後背室内の作動液はピストン間室内へと流入する。そのため、例えば、後背室内の作動液の圧力が作用する入力ピストンの鍔部の受圧面積と、ピストン間室内の作動液の圧力が作用する入力ピストンの受圧面積とが略等しいような場合には、ピストン間室の容積変化に伴う入力ピストンの加圧ピストンに対する移動距離と、後背室の容積変化に伴う入力ピストンのハウジングに対する移動距離とは、互いに略等しくなる。つまり、ブレーキ操作によって入力ピストンが前進しても、加圧ピストンはハウジングに対して殆ど移動しないこととなり、加圧室内の作動液を加圧することも殆どない。したがって、このようなマスタシリンダ装置は、通常、操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧することはできなくされている。換言すれば、操作部材に加えられた操作力が加圧ピストンへと伝達されないようにされているのである。
【0016】
また、室間連通路によって連通されたピストン間室内および後背室内の作動液の圧力は同じ大きさとなる。したがって、例えば、前述のように、後背室内の作動液の圧力が作用する鍔部の受圧面積と、ピストン間室内の作動液の圧力が作用する入力ピストンの受圧面積とが略等しいような場合には、後背室内の作動液の圧力によって入力ピストンを前進させるように作用する力と、ピストン間室内の作動液の圧力によって入力ピストンを後退させるように作用する力とは殆ど等しくなる。したがって、高圧源からピストン間室および後背室に作動液が導入されても、そのことだけによっては入力ピストンは殆ど移動せず、加圧ピストンだけがピストン間室に導入された作動液の圧力に依存して前進し、加圧室内の作動液を加圧することができる。
【0017】
このように、本マスタシリンダ装置では、通常、マスタシリンダ装置が高圧源から導入される作動液の圧力である高圧源圧に依存して加圧室内の作動液を加圧するように作動する状態である高圧源圧依存加圧状態が実現される。また、ブレーキ操作中、反力室内の作動液には、反力付与機構において弾性的に加圧される液室内の作動液の圧力が伝達される。その反力室内の作動液の圧力は入力ピストンの鍔部に作用し、入力ピストンの前進に対する反力として作用する。運転者は、その反力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として実感することができる。
【0018】
また、本マスタシリンダ装置は、高圧源圧が不充分な状況となった場合、ピストン間室を室間連通路遮断器により密閉することで、操作力を加圧ピストンに伝達することができる。つまり、本マスタシリンダ装置では、マスタシリンダ装置が専ら操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧するように作動することができる状態である操作力依存加圧状態が実現される。さらに、本マスタシリンダ装置は、反力室連通器を備えており、反力室を低圧源に連通させることができる。その状態で、操作部材に操作力が加えられると、入力ピストンは、反力室内の作動液を低圧源に流出させながら前進し、反力付与機構は機能することができなくなる。つまり、反力発生機構によっては、操作反力が発生しなくなる。
【0019】
高圧源圧が不充分な状況には、例えば、電気的失陥等のため、高圧源が高圧とされた作動液を供給することができない状況が考えられる。そのことに鑑みれば、電気的失陥時に、反力室連通器は反力室を低圧源に連通させるように作動することが望ましく、かつ、室間連通路遮断器はピストン間室を密閉するように作動することが望ましい。反力室連通器および室間連通路遮断器がそのように作動すれば、本マスタシリンダ装置は、電気的失陥時に上述の操作力依存加圧状態で作動することができ、運転者は違和感なくブレーキ操作をすることができる。
【0020】
(12)当該マスタシリンダ装置が、
前記操作部材が操作されていない状態において、前記ピストン間室の低圧源への連通確保するピストン間室連通確保機構を備えた(11)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0021】
上記構成によれば、前述のように、ブレーキ操作がされていない状態で、ピストン間室内の残圧の発生を防止するマスタシリンダ装置を実現することができ、ブレーキ装置で前述した引き摺り現象は発生しない。
【0022】
(13)前記ピストン間室連通確保機構が、
前記入力ピストンの内部に形成され、一端がその入力ピストンの端面において前記ピストン間室に開口してそのピストン間室と前記後背室とを連通させる内部連通路と、
前記加圧ピストンに支持され、前記ピストン間室の容積減少によって前記内部連通路の開口を閉塞する開口閉塞体と
を含んで構成された(12)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0023】
本項に記載のマスタシリンダ装置では、ブレーキ操作が行われている場合、後背室には、高圧とされた作動液が導入されるが、ブレーキ操作が行われていない場合には、後背室は低圧源に連通されていてもよい。本マスタシリンダ装置がそのように構成されている場合、本項に記載のピストン間室連通確保機構は、ブレーキ操作が行われていない場合に、内部連通路を介して、ピストン間室を低圧源に連通することができる。つまり、ブレーキ操作がされていない状態等、ピストン間室の容積が減少していない場合には、開口閉塞体は内部連通路の開口を閉塞していないため、ピストン間室の低圧源への連通が実現される。一方、入力ピストンの前進等によって、ピストン間室の容積が設定量だけ減少すると、開口閉塞体は内部連通路の開口を閉塞し、ピストン間室の後背室への連通は遮断される。また、その際、室間連通路遮断器によって室間連通路が遮断されていれば、ピストン間室は密閉されることとなる。つまり、本マスタシリンダ装置は、ブレーキ操作に伴ってピストン間室を密閉することが可能となっている。
【0024】
また、前述の空踏みの状態の発生を鑑みれば、上記設定量はなるべく小さい方が望ましい。つまり、開口閉塞体と内部連通路の開口との距離はなるべく短い方が望ましい。その距離が短ければ、入力ピストンが加圧ピストンに対して少し前進するだけでピストン間室を密閉することができる。したがって、マスタシリンダ装置は、ブレーキ操作開始直後に操作力依存加圧状態で作動することが可能となる。換言すれば、ブレーキ操作の開始における操作部材の空走距離、いわゆる「遊び」を小さくすることができ、ブレーキ操作を開始してすぐにブレーキ装置が作動することができる。
【0025】
(14)前記室間連通路遮断器が、前記室間連通路に配設された電磁式開閉弁を含んで構成された(11)項ないし(13)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【0026】
本項の態様は、前記室間連通遮断器が電磁式開閉弁とされた態様である。したがって、本マスタシリンダ装置は、それの開閉によって室間連通路の遮断を行うことができる。なお、本電磁式開閉弁は、電気的失陥時にピストン間室の密閉を実現するように、常閉弁、つまり、非励磁状態で閉弁状態となり、励磁状態で開弁状態となる開閉弁であることが望ましい。
【0027】
(15)前記室間連通路遮断器が、
前記室間連通路に配設され、前記反力付与機構が有する前記加圧機構によって加圧された作動液の圧力がパイロット圧として導入されて、そのパイロット圧が設定圧以上である場合に開弁し、そのパイロット圧がその設定圧を下回った場合に閉弁する機械式開閉弁を含んで構成された(11)項ないし(13)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【0028】
上記反力室が密閉されている状態では、ブレーキ操作によって入力ピストンが前進すると、加圧機構によって反力室内の作動液の圧力が上昇する。本マスタシリンダ装置の機械式開閉弁は、自身の開閉にその作動液の圧力の上昇を利用しており、圧力が設定圧以上となった場合に開弁し、室間連通路の遮断を解除する。一方、反力室が低圧源に連通している状態では、機械式開閉弁は閉弁状態で維持されることとなる。換言すれば、本機械式開閉弁は、反力室が密閉された状態でのブレーキ操作に応答して、室間連通路の遮断を解除する機構とされているのである。このように、本マスタシリンダ装置では、室間連通路遮断器が比較的簡便な機構によって構成されている。なお、上記設定圧はなるべく低い圧力に設定されていることが望ましい。設定圧が低くされていれば、ブレーキ操作開始直後、つまり、反力室内の作動液の圧力が操作力によってわずかに上昇させられるだけで、室間連通路の遮断を解除することができる。
【0029】
(16)前記ピストン間室内の作動液の圧力が作用する前記入力ピストンの受圧面積と、前記後背室内の作動液の圧力が作用する前記入力ピストンの鍔部の受圧面積とが等しくされている(11)項ないし(15)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【0030】
上記構成のマスタシリンダ装置では、前述のように、ブレーキ操作によって入力ピストンが前進しても、加圧ピストンはハウジングに対して移動せず、通常、操作力が加圧ピストンへと伝達されない。また、高圧源からピストン間室および後背室に作動液が導入されても、入力ピストンは移動せず、加圧ピストンだけが前進して加圧室内の作動液を加圧することとなる。
【0031】
(21)前記加圧ピストンが、後方に開口する有底穴を有するとともに、自身の前方に前記加圧室が区画される本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、その鍔部の後方に、前記高圧源からの作動液が入力される環状の入力室が、その鍔部の前方に、作動液で満たされてその鍔部を挟んで前記入力室と対向する環状の対向室が、それぞれ区画されており、
前記入力ピストンが前記加圧ピストンの前記有底穴に嵌入されていることで、その有底穴内に前記ピストン間室が区画されており、
当該マスタシリンダ装置が、前記加圧ピストンの進退に伴う前記対向室の容積変化と前記ピストン間室の容積変化とを相互に吸収可能とすべく、それら対向室とピストン間室とを相互に連通させる室間連通路を備え、
通常、その室間連通路によって、それら対向室とピストン間室とが相互に連通させられていることで、前記操作力が前記入力ピストンから前記加圧ピストンへ伝達されない状態が実現され、
前記反力付与機構が、前記室間連通路によって連通させられた前記対向室および前記ピストン間室と連通して作動液で満たされるとともに容積変化が許容された液室と、その液室内の作動液を弾性的に加圧する加圧機構とを含んで構成されており、
前記操作力依存加圧実現機構が、
前記反力付与機構を機能させないようにすべく、前記対向室を低圧源と連通させる対向室連通器と、
前記ピストン間室を密閉すべく、前記室間連通路を遮断する室間連通路遮断器と
を含んで構成された(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0032】
上記構成とされたマスタシリンダ装置では、室間連通路によって連通されたピストン間室内および対向室内の作動液の圧力は同じ大きさとなる。したがって、例えば、対向室内の作動液の圧力が作用する加圧ピストンの鍔部の受圧面積と、ピストン間室内の作動液の圧力が作用する入力ピストンの受圧面積とが略等しいような場合には、対向室内の作動液の圧力によって加圧ピストンを後退させるように作用する力と、ピストン間室内の作動液の圧力によって加圧ピストンを前進させるように作用する力とは殆ど等しくなる。したがって、ブレーキ操作によって操作部材を介して入力ピストンに操作力が伝達され、その操作力によってピストン間室内の作動液が加圧されても、そのことだけによっては加圧ピストンは殆ど移動せず、加圧室内の作動液を加圧することも殆どない。したがって、このようなマスタシリンダ装置は、通常、操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧することはできなくされている。換言すれば、操作部材に加えられた操作力が加圧ピストンへと伝達されないようにされているのである。
【0033】
本マスタシリンダ装置では、通常、入力室に高圧源から作動液が導入されると、その作動液の圧力に依存して加圧ピストンが前進し、その前進によって加圧室内の作動液が加圧されることとなる。また、その加圧ピストンの前進によって、対向室内の作動液はピストン間室内へと流入する。そのため、前記のように、加圧ピストンの鍔部の受圧面積と入力ピストンの受圧面積とが略等しいような場合、対向室の容積変化における加圧ピストンのハウジングに対する移動距離と、ピストン間室の容積変化における加圧ピストンの入力ピストンに対する移動距離とは、互いに略等しくなる。したがって、通常、ブレーキ操作によって高圧源から導入された作動液の圧力に依存して加圧ピストンが前進しても、入力ピストンは殆ど移動しない。
【0034】
このような状態で、本マスタシリンダ装置では、通常、マスタシリンダ装置が高圧源から導入される作動液の圧力である高圧源圧に依存して加圧室内の作動液を加圧するように作動する状態である高圧源圧依存加圧状態が実現される。また、ブレーキ操作中、対向室内の作動液には、反力付与機構において弾性的に加圧される液室内の作動液の圧力が伝達される。その対向室内の作動液の圧力は入力ピストンの鍔部に作用し、入力ピストンの前進に対する反力として作用する。運転者は、その反力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として実感することができる。
【0035】
また、本マスタシリンダ装置は、高圧源圧が不充分な状況となった場合、ピストン間室を室間連通路遮断器により密閉することで、操作力を加圧ピストンに伝達することができる。つまり、本マスタシリンダ装置では、マスタシリンダ装置が専ら操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧するように作動することができる状態である操作力依存加圧状態が実現される。さらに、本マスタシリンダ装置は、対向室連通器を備えており、対向室を低圧源に連通させることができる。その状態で、操作部材に操作力が加えられると、入力ピストンは、対向室内の作動液を低圧源に流出させながら前進し、反力付与機構は機能することができなくなる。つまり、反力発生機構によっては、操作反力が発生しなくなる。
【0036】
高圧源圧が不充分な状況には、例えば、電気的失陥等のため、高圧源が高圧とされた作動液を供給することができない状況が考えられる。そのことに鑑みれば、本マスタシリンダ装置では、電気的失陥時に、対向室連通器は対向室を低圧源に連通させるように作動することが望ましく、かつ、室間連通路遮断器はピストン間室を密閉するように作動することが望ましい。
【0037】
(22)当該マスタシリンダ装置が、
前記操作部材が操作されていない状態において、前記ピストン間室の低圧源への連通確保するピストン間室連通確保機構を備えた(21)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0038】
上記構成によれば、前述のように、ブレーキ操作がされていない状態で、ピストン間室内の残圧の発生を防止するマスタシリンダ装置を実現することができ、ブレーキ装置で前述した引き摺り現象は発生しない。
【0039】
(23)前記ピストン間室連通確保機構が、
前記加圧ピストン内部を経由して形成され、一端が前記ピストン間室の周壁面に開口してそのピストン間室と低圧源を連通させる外部連通路と、
前記入力ピストンの外周部に外嵌され、その入力ピストンの前記加圧ピストンに対する相対的前進によって、前記開口と前記ピストン間室との連通を遮断するシールと
を含んで構成された(22)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0040】
上記構成によれば、入力ピストンが加圧ピストンに対して相対的に前進していない状態、例えば、ブレーキ操作がされていない状態で、ピストン間室は外部連通路を介して低圧源に連通している。一方、ブレーキ操作がされて、入力ピストンに設けられたシールが加圧ピストンに設けられた開口を通過すると、その連通は遮断される。また、その際、室間連通路遮断器によって室間連通路が遮断されていれば、ピストン間室を密閉することができる。つまり、本マスタシリンダ装置は、ブレーキ操作に伴ってピストン間室を密閉することが可能となっている。
【0041】
前述の空踏みの状態の発生を鑑みれば、シールと外部連通路の開口との距離はなるべく短い方が望ましい。つまり、その距離が短ければ、入力ピストンが加圧ピストンに対して少し前進するだけでピストン間室を密閉することが可能となり、マスタシリンダ装置は操作力依存加圧状態で作動することが可能となる。換言すれば、ブレーキ操作の開始における「遊び」を小さくすることができ、ブレーキ操作の開始直後にブレーキ装置が作動することができる。
【0042】
(24)前記室間連通路遮断器が、前記室間連通路に配設された電磁式開閉弁を含んで構成された(21)項ないし(23)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【0043】
上記構成によれば、前述のように、電磁式開閉弁の開閉によって室間連通路の遮断を行うことができる。また、本電磁式開閉弁は、電気的失陥時にピストン間室の密閉を実現するように常閉弁であることが望ましい。
【0044】
(25)前記室間連通路遮断器が、
前記室間連通路に配設され、前記反力付与機構が有する前記加圧機構によって加圧された作動液の圧力がパイロット圧として導入されて、そのパイロット圧が設定圧以上である場合には開弁し、そのパイロット圧がその設定圧を下回った場合に閉弁する機械式開閉弁を含んで構成された(21)項ないし(23)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【0045】
上記構成によれば、前述のように、本マスタシリンダ装置の機械式開閉弁は、自身の開閉に対向室内の作動液の圧力の上昇を利用し、その圧力が設定圧以上となった場合に開弁し、室間連通路の遮断を解除する。一方、対向室が低圧源に連通させられている状態では、加圧機構によって対向室内の作動液の圧力が設定圧以上となることはなく、機械式開閉弁は閉弁状態で維持される。つまり、本機械式開閉弁は、対向室が密閉された状態でのブレーキ操作に応答して、室間連通路の遮断を解除する機構とされている。なお、上記設定圧が低くされていれば、ブレーキ操作開始直後に室間連通路の遮断を解除することができる。
【0046】
(26)前記ピストン間室内の作動液の圧力が作用する前記入力ピストンの受圧面積と、前記対向室内の作動液の圧力が作用する前記加圧ピストンの鍔部の受圧面積とが等しくされている(21)項ないし(25)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【0047】
上記構成のマスタシリンダ装置では、前述のように、ブレーキ操作されても加圧ピストンは移動せず、通常、操作力が加圧ピストンへと伝達されない。また、高圧源から入力室に作動液が導入されても、入力ピストンは移動せず、加圧ピストンだけが前進して加圧室内の作動液を加圧することとなる。
【0048】
(31)前記加圧ピストンが後方に開口する有底穴を有し、前記入力ピストンがその有底穴に嵌入されていることで、その有底穴内に前記ピストン間室が区画され、前記加圧ピストンの後方に、その加圧ピストンと前記ハウジングとによって、前記高圧源からの作動液が導入される環状の入力室が区画されており、
通常、前記ピストン間室が低圧源と連通していることで、前記操作力が前記入力ピストンから前記加圧ピストンへ伝達されない状態が実現され、
前記入力ピストンの周囲に、その入力ピストンと前記ハウジングとによって、その入力ピストンの前進によって容積が減少する環状の反力室が区画され、前記反力付与機構が、その反力室と連通して作動液で満たされるとともに容積変化が許容された液室と、その液室内の作動液を弾性的に加圧する加圧機構とを含んで構成されており、
前記操作力依存加圧実現機構が、
前記反力付与機構を機能させないようにすべく、前記反力室を低圧源と連通させる反力室連通器と、
前記ピストン間室を密閉すべく、そのピストン間室と前記低圧源との連通を遮断するピストン間室遮断器と
を含んで構成された(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0049】
上記構成とされたマスタシリンダ装置では、通常、ピストン間室が低圧源に連通している。そのため、ブレーキ操作によって入力ピストンが前進しても、操作力が加圧ピストンに伝達されることはない。したがって、このようなマスタシリンダ装置は、通常、操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧することはできなくされている。また、高圧源から入力室に作動液が導入され、加圧ピストンがその作動液の圧力に依存して前進しても、入力ピストンは移動しない。したがって、加圧ピストンだけが入力室に導入された作動液の圧力に依存して前進し、加圧室内の作動液を加圧することができる。このように、本マスタシリンダ装置は、通常、入力ピストンと加圧ピストンとが、互いに関わり合うことなく移動することができる状態となっている。
【0050】
本マスタシリンダ装置は、通常、前記の状態において、マスタシリンダ装置が高圧源から導入される作動液の圧力である高圧源圧に依存して加圧室内の作動液を加圧するように作動する状態である高圧源圧依存加圧状態が実現される。また、ブレーキ操作中、反力室内の作動液には、反力付与機構において弾性的に加圧される液室内の作動液の圧力が伝達される。その反力室内の作動液の圧力は入力ピストンの前進に対する反力として作用する。運転者は、その反力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として実感することができる。
【0051】
また、本マスタシリンダ装置は、高圧源圧が不充分な状況となった場合、ピストン間室をピストン間室遮断器により密閉することで、操作力を加圧ピストンに伝達することができる。つまり、本マスタシリンダ装置では、マスタシリンダ装置が専ら操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧するように作動することができる状態である操作力依存加圧状態が実現される。さらに、本マスタシリンダ装置は、反力室連通器を備えており、反力室を低圧源に連通させることができる。その状態で、操作部材に操作力が加えられると、入力ピストンは、反力室内の作動液を低圧源に流出させながら前進し、反力付与機構は機能することができなくなる。つまり、反力発生機構によっては、操作反力が発生しなくなる。
【0052】
高圧源圧が不充分な状況には、例えば、電気的失陥等のため、高圧源が高圧とされた作動液を供給することができない状況が考えられる。そのことに鑑みれば、本マスタシリンダ装置では、電気的失陥時に、反力室連通器は反力室を低圧源に連通させるように作動することが望ましく、かつ、ピストン間室遮断器はピストン間室を密閉するように作動することが望ましい。
【0053】
(32)当該マスタシリンダ装置が、
前記操作部材が操作されていない状態において、前記ピストン間室の低圧源への連通を確保するピストン間室連通確保機構を備えた(31)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0054】
上記構成によれば、前述のように、ブレーキ操作がされていない状態で、ピストン間室内の残圧の発生を防止するマスタシリンダ装置を実現することができ、ブレーキ装置で前述した引き摺り現象は発生しない。
【0055】
(33)前記ピストン間室連通確保機構が、
前記加圧ピストン内部を経由して形成され、一端が前記ピストン間室の周壁面に開口してそのピストン間室と低圧源を連通させる外部連通路と、
前記入力ピストンの外周部に外嵌され、その入力ピストンの前記加圧ピストンに対する相対的前進によって、前記開口と前記ピストン間室との連通を遮断するシールと
を含んで構成された(32)項に記載のマスタシリンダ装置。
【0056】
上記構成によれば、前述のように、例えば、ブレーキ操作がされていない状態で、ピストン間室は外部連通路を介して低圧源に連通しており、ブレーキ操作がされると、その連通は遮断される。また、その際、ピストン間室遮断器によってピストン間室の低圧源への連通が遮断されていれば、ピストン間室を密閉することができる。また、前述のように、シールと外部連通路の開口との距離はなるべく短い方が望ましく、そのことによって、ブレーキ操作の開始における「遊び」を小さくし、ブレーキ操作の開始直後にブレーキ装置が作動することができる。
【0057】
(34)前記ピストン間室遮断器が、前記ピストン間室と低圧源とを繋ぐ連通路に配設された電磁式開閉弁を含んで構成された(21)項ないし(23)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【0058】
上記構成によれば、前述のように、電磁式開閉弁の開閉によってピストン間室の低圧源への連通とそれの遮断とを行うことができる。また、本電磁式開閉弁は、電気的失陥時にピストン間室の密閉を実現するように常閉弁であることが望ましい。
【0059】
(35)前記ピストン間室遮断器が、
前記ピストン間室と低圧源とを繋ぐ連通路に配設され、前記反力付与機構が有する前記加圧機構によって加圧された作動液の圧力がパイロット圧として導入されて、そのパイロット圧が設定圧以上である場合には開弁し、そのパイロット圧がその設定圧を下回った場合に閉弁する機械式開閉弁を含んで構成された(31)項ないし(33)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【0060】
上記構成によれば、前述のように、本マスタシリンダ装置の機械式開閉弁は、自身の開閉に反力室内の作動液の圧力の上昇を利用し、その圧力が設定圧以上となった場合に開弁し、ピストン間室を低圧源へ連通する。一方、反力室が低圧源に連通させられている状態では、加圧機構によって反力室内の作動液の圧力が設定圧以上となることはなく、機械式開閉弁は閉弁状態で維持される。つまり、本機械式開閉弁は、反力室が密閉された状態でのブレーキ操作に応答して、室間連通路の遮断を解除する機構とされている。また、上記設定圧が低くされていれば、ブレーキ操作開始直後にピストン間室は低圧源に連通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】請求可能発明の第1実施例のマスタシリンダ装置を搭載したハイブリッド車両の駆動システムおよび制動システムを表す模式図である。
【図2】請求可能発明の第1実施例のマスタシリンダ装置を含んで構成される液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図3】第1実施例のマスタシリンダ装置に採用される反力発生機構を示す図である。
【図4】第1実施例の変形例となるマスタシリンダ装置を含んで構成される液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図5】変形例のマスタシリンダ装置に採用される機械式開閉弁を示す図である。
【図6】請求可能発明の第2実施例のマスタシリンダ装置を含んで構成される液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図7】第2実施例の変形例となるマスタシリンダ装置を含んで構成される液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図8】請求可能発明の第3実施例のマスタシリンダ装置を含んで構成される液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図9】第3実施例の変形例となるマスタシリンダ装置を含んで構成される液圧ブレーキシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例1】
【0063】
≪車両の構成≫
図1に、第1実施例のマスタシリンダ装置を搭載したハイブリッド車両の駆動システムおよび制動システムを模式的に示す。車両には、動力源として、エンジン10と電気モータ12とが搭載されており、また、エンジン10の出力により発電を行う発電機14も搭載されている。これらエンジン10、電気モータ12、発電機14は、動力分割機構16によって互いに接続されている。この動力分割機構16を制御することで、エンジン10の出力を発電機14を作動させるための出力と、4つの車輪18のうちの駆動輪となるものを回転させるための出力とに振り分けたり、電気モータ12の出力を駆動輪に伝達させることができる。つまり、動力分割機構16は、減速機20および駆動軸22を介して駆動輪に伝達される駆動力に関する変速機として機能するのである。なお、「車輪18」等のいくつかの構成要素は、総称として使用するが、4つの車輪のいずれかに対応するものであることを示す場合には、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪にそれぞれ対応して、添え字「FL」,「FR」,「RL」,「RR」を付すこととする。この表記に従えば、本車両における駆動輪は、車輪18RL,および車輪18RRである。
【0064】
電気モータ12は、交流同期電動機であり、交流電力によって駆動される。車両にはインバータ24が備えられており、インバータ24は、電力を、直流から交流、あるいは、交流から直流に変換することができる。したがって、インバータ24を制御することで、発電機14によって出力される交流の電力を、バッテリ26に蓄えるための直流の電力に変換させたり、バッテリ26に蓄えられている直流の電力を、電気モータ12を駆動するための交流の電力に変換させることができる。発電機14は、電気モータ12と同様に、交流同期電動機としての構成を有している。つまり、本実施例の車両では、交流同期電動機が2つ搭載されていると考えることができ、一方が、電気モータ12として、主に駆動力を出力するために使用され、他方が、発電機14として、主にエンジン10の出力により発電するために使用されている。
【0065】
また、電気モータ12は、車両の走行に伴う車輪18RL,18RRの回転を利用して、発電(回生発電)を行うことも可能である。このとき、車輪18RL,18RRに連結される電気モータ12では、電力が発生させられるとともに、電気モータ12の回転を制止するための抵抗力が発生する。したがって、その抵抗力を、車両を制動する制動力として利用することができる。つまり、電気モータ12は、電力を発生させつつ車両を制動するための回生ブレーキの手段として利用される。したがって、本車両は、回生ブレーキをエンジンブレーキや後述する液圧ブレーキとともに制御することで、制動されるのである。一方、発電機14は主にエンジン10の出力により発電をするが、インバータ24を介してバッテリ26から電力が供給されることで、電気モータとしても機能する。
【0066】
本車両において、上記のブレーキの制御や、その他の車両に関する各種の制御は、複数の電子制御ユニット(ECU)によって行われる。複数のECUのうち、メインECU40は、それらの制御を統括する機能を有している。例えば、ハイブリッド車両は、エンジン10の駆動および電気モータ12の駆動によって走行することが可能とされているが、それらエンジン10の駆動と電気モータ12の駆動は、メインECU40によって総合的に制御される。具体的に言えば、メインECU40によって、エンジン10の出力と電気モータ12による出力の配分が決定され、その配分に基づき、エンジン10を制御するエンジンECU42、電気モータ12及び発電機14を制御するモータECU44に各制御についての指令が出力される。
【0067】
メインECU40には、バッテリ26を制御するバッテリECU46も接続されている。バッテリECU46は、バッテリ26の充電状態を監視しており、充電量が不足している場合には、メインECU40に対して充電要求指令を出力する。充電要求指令を受けたメインECU40は、バッテリ26を充電させるために、発電機14による発電の指令をモータECU44に出力する。
【0068】
また、メインECU40には、ブレーキを制御するブレーキECU48も接続されている。当該車両には、運転者によって操作されるブレーキ操作部材(以下、単に「操作部材」という場合がある)が設けられており、ブレーキECU48は、その操作部材の操作量であるブレーキ操作量(以下、単に「操作量」という場合がある)と、その操作部材に加えられる運転者の力であるブレーキ操作力(以下、単に「操作力」という場合がある)との少なくとも一方に基づいて目標制動力を決定し、メインECU40に対してこの目標制動力を出力する。メインECU40は、モータECU44にこの目標制動力を出力し、モータECU44は、その目標制動力に基づいて回生ブレーキを制御するとともに、それの実行値、つまり、発生させている回生制動力をメインECU40に出力する。メインECU40では、目標制動力から回生制動力が減算され、その減算された値によって、車両に搭載される液圧ブレーキシステム100において発生すべき目標液圧制動力が決定される。メインECU40は、目標液圧制動力をブレーキECU48に出力し、ブレーキECU48は、液圧ブレーキシステム100が発生させる液圧制動力が目標液圧制動力となるように制御するのである。
【0069】
≪液圧ブレーキシステムの構成≫
上述のように構成された本ハイブリッド車両に搭載される液圧ブレーキシステム100について、図2を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、「前方」は図2における左方、「後方」は図2における右方をそれぞれ表している。また、「前側」、「前端」、「前進」や、「後側」、「後端」、「後進」等も同様に表すものとされている。以下の説明において[ ]の文字は、センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。
【0070】
図2に、本車両が備える液圧ブレーキシステム100を、模式的に示す。液圧ブレーキシステム100は、作動液を加圧するためのマスタシリンダ装置110を有している。車両の運転者は、マスタシリンダ装置110に連結された操作装置112を操作することでマスタシリンダ装置110を作動させることができ、マスタシリンダ装置110は、自身の作動によって作動液を加圧する。その加圧された作動液は、マスタシリンダ装置110に接続されるアンチロック装置114を介して、各車輪に設けられたブレーキ装置116に供給される。ブレーキ装置116は、加圧された作動液の圧力(以下、「出力圧」と呼ぶ)、所謂マスタ圧に依拠して、車輪18の回転を制止するための力、すなわち、液圧制動力を発生させる。
【0071】
液圧ブレーキシステム100は、高圧源として作動液の圧力を高圧にするための高圧源装置118を有している。その高圧源装置118は、増減圧装置120を介して、マスタシリンダ装置110に接続されている。増減圧装置120は、高圧源装置118によって高圧とされた作動液の圧力を制御する装置であり、マスタシリンダ装置110へ入力される作動液の圧力(以下、「入力圧」と呼ぶ)を増加および減少する。マスタシリンダ装置110は、その入力圧の増減によって作動可能に構成されている。また、液圧ブレーキシステム100は、低圧源として作動液を大気圧下で貯留するリザーバ122を有している。リザーバ122は、マスタシリンダ装置110、増減圧装置120、高圧源装置118の各々に接続されている。
【0072】
操作装置112は、操作部材としてのブレーキペダル150と、ブレーキペダル150に連結されるオペレーションロッド152とを含んで構成されている。ブレーキペダル150は、車体に回動可能に保持されている。オペレーションロッド152は、後端部においてブレーキペダル150に連結され、前端部においてマスタシリンダ装置110に連結されている。また、操作装置112は、ブレーキペダル150の操作量を検出するための操作量センサ[SP]156と、操作力を検出するための操作力センサ[FP]158とを有している。操作量センサ156および操作力センサ158は、ブレーキECU48に接続されており、ブレーキECU48は、それらのセンサの検出値を基にして、目標制動力を決定する。
【0073】
ブレーキ装置116は、液通路200,202を介してマスタシリンダ装置110に接続されている。それら液通路200,202は、マスタシリンダ装置110によって出力圧に加圧された作動液をブレーキ装置116に供給するための液通路である。液通路202には出力圧センサ[Po]204(所謂マスタ圧センサ)が設けられている。詳しい説明は省略するが、各ブレーキ装置116は、ブレーキキャリパと、そのブレーキキャリパに取り付けられたホイールシリンダ(ブレーキシリンダ)およびブレーキパッドと、各車輪とともに回転するブレーキディスクとを含んで構成されている。液通路200,202は、アンチロック装置114を介して、各ブレーキ装置116のブレーキシリンダに接続されている。ちなみに、液通路200が、前輪側のブレーキ装置116FL,116FRに繋がるようにされており、また、液通路202が、後輪側のブレーキ装置116RL,116RRに繋がるようにされている。ブレーキシリンダは、マスタシリンダ装置110によって加圧された作動液の出力圧に依拠して、ブレーキパッドをブレーキディスクに押し付ける。その押し付けによって発生する摩擦によって、各ブレーキ装置116では、車輪の回転を制止する液圧制動力が発生し、車両は制動されるのである。
【0074】
アンチロック装置114は、一般的な装置であり、簡単に説明すれば、各車輪に対応する4対の開閉弁を有している。各対の開閉弁のうちの1つは増圧用開閉弁であり、車輪がロックしていない状態では、開弁状態とされており、また、もう1つは減圧用開閉弁であり、車輪がロックしていない状態では、閉弁状態とされている。車輪がロックした場合に、増圧用開閉弁が、マスタシリンダ装置110からブレーキ装置116への作動液の流れを遮断するとともに、減圧用開閉弁が、ブレーキ装置116からリザーバへの作動液の流れを許容して、車輪のロックを解除するように構成されている。
【0075】
高圧源装置118は、リザーバ122から作動液を吸込んでその作動液の液圧を増加させる液圧ポンプ220と、増圧された作動液が溜められるアキュムレータ222とを含んで構成されている。ちなみに、液圧ポンプ220は電動のモータ224によって駆動される。また、高圧源装置118は、高圧とされた作動液の圧力を検出するための高圧源圧センサ[Ph]226を有している。ブレーキECU48は、高圧源圧センサ226の検出値を監視しており、その検出値に基づいて、液圧ポンプ220は制御駆動される。この制御駆動によって、高圧源装置118は、常時、設定された圧力以上の作動液を増減圧装置120に供給する。
【0076】
増減圧装置120は、入力圧を増加させる電磁式の増圧リニア弁240と、入力圧を低減させる電磁式の減圧リニア弁242とを含んで構成されている。増圧リニア弁240は、高圧源装置118からマスタシリンダ装置110に至る液通路の途中に設けられている。一方、減圧リニア弁242は、リザーバ122からマスタシリンダ装置110に至る液通路の途中に設けられている。なお、増圧リニア弁240および減圧リニア弁242の各々からマスタシリンダ装置110に至る液通路は、1つの液通路とされて、マスタシリンダ装置110に接続されている。また、その液通路には、入力圧を検出するための入力圧センサ[Pc]246が設けられている。ブレーキECU48は、入力圧センサ246の検出値に基づいて、増減圧装置120を制御する。
【0077】
上記増圧リニア弁240は、電流が供給されていない状態では、つまり、非励磁状態では、閉弁状態とされており、それに電流を供給することによって、つまり、励磁状態とすることで、その供給された電流に応じた開弁圧において開弁する。ちなみに、供給される電流が大きい程、開弁圧が高くなるように構成されている。一方、減圧リニア弁242は、電流が供給されていない状態では、開弁状態となり、通常時、つまり、当該システムへの電力の供給が可能である時には、設定された範囲における最大電流が供給されて閉弁状態とされ、供給される電流が減少させられることで、その電流に応じた開弁圧において開弁する。ちなみに、電流が小さくなるほど開弁圧が低くなるように構成されている。
【0078】
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置110は、マスタシリンダ装置110の筐体であるハウジング300と、ブレーキ装置116に供給する作動液を加圧する第1加圧ピストン302および第2加圧ピストン304と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン306とを含んで構成されている。なお、図2は、マスタシリンダ装置110が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。ちなみに、一般的なマスタシリンダ装置がそうであるように、本マスタシリンダ装置110も、内部に作動液が収容されるいくつかの液室、それらの液室間,それらの液室と外部とを連通させるいくつかの連通路が形成されており、それらの液密を担保するため、構成部材間には、いくつかのシールが配設されている。それらのシールは一般的なものであり、明細書の記載の簡略化に配慮し、特に説明すべきものでない限り、それの説明は省略するものとする。
【0079】
ハウジング300は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材308と第2ハウジング部材310とから構成されている。第1ハウジング部材308は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、後端部の外周にはフランジ312が形成され、そのフランジ312において車体に固定されている。第1ハウジング部材308は、内径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部314、後方側に位置して内径の大きい後方大径部316に区分けされている。
【0080】
第2ハウジング部材310は、前方側に位置して内径の大きい前方大径部318、前方大径部318の後方に位置して内径の小さい前方小径部320、前方小径部320の後方に位置して前方大径部318の内径より僅かに小さな内径となされた後方大径部322、最も後方に位置して後方大径部322の内径より小さな内径とされた後方小径部326を有する円筒形状とされている。第2ハウジング部材310は、それの前端部が第1ハウジング部材308の前方小径部314と後方大径部316との段差面に接する状態で、後方大径部316に嵌め込まれている。それら第1ハウジング部材308,第2ハウジング部材310は、第1ハウジング部材308の後端部の内周面に嵌め込まれたロック環326によって、互いに締結されている。
【0081】
第2加圧ピストン304は、後端部が塞がれた有底円筒形状とされており、第1ハウジング部材308の前方小径部314に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン302は、第2加圧ピストン304の後方に配設され、後端部が塞がれた有底円筒形状とされている。第1加圧ピストン302の前方で第2加圧ピストン304との間には、2つの後輪に設けられたブレーキ装置116RL,RRに供給される作動液を加圧するための第1加圧室R1が区画形成されており、また、第2加圧ピストン304の前方には、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRに供給される作動液を加圧するための第2加圧室R2が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン302と第2加圧ピストン304とは、第1加圧ピストン302の底部328に螺着立設された有頭ピン330と、第2加圧ピストン304の後端面に固設されたピン保持筒332とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R1内,第2加圧室R2内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)334、336が配設されており、それらスプリングによって、第1加圧ピストン302,第2加圧ピストン304はそれらが互いに離間する方向に付勢されつつ、後方に向かうように付勢されている。ちなみに、第1加圧ピストン302は、後端面が第2ハウジング部材310の前方大径部318と前方小径部320との段差面に当接することで、それの後退が制限されている。
【0082】
入力ピストン306は、前方に位置して外径の小さい前方小外径部338と、後方に位置して外径の大きい後方大外径部340とを有する円柱形状とされている。それら前方小外径部338と後方大外径部340との間には、後方大外径部340よりも外径の大きくされた鍔部342が設けられている。また、前方小外径部338の前端には、前方に開口する有底穴344も設けられている。入力ピストン306は、前方小外径部338が前方小径部320の内周面に、鍔部342が後方大径部322の内周面に、後方大外径部340が後方小径部326の内周面にそれぞれ摺接する状態で、第2ハウジング部材310に嵌め込まれている。このように入力ピストン306が第2ハウジング部材310に嵌め込まれた状態で、第1加圧ピストン302の後端面と入力ピストン306の有底穴344との間には液室(以下「ピストン間室」という場合がある)R3が、入力ピストン306の鍔部342の前方には環状の液室(以下「反力室」という場合がある)R4が、鍔部342の後方には環状の液室(以下「後背室」という場合がある)R5がそれぞれ区画形成されている。ちなみに、後背室R5は、図2では、ほとんど潰れた状態で示されている。なお、入力ピストン306は、ピストン間室R3内の作動液の圧力が作用する部分の面積と、後背室R5内の作動液の圧力が作用する鍔部342の面積とが等しくされている。また、入力ピストン306の内部には、一端が有底穴344の底部に開口し、他端が鍔部342の後方に開口する内部連通路345が形成されている。したがって、内部連通路345によって、ピストン間室R3と後背室R5とは互いに連通している。
【0083】
ピストン間室R3内には、有蓋円筒形状とされた円筒部材346が、第1加圧ピストン302の後端面に螺着立設された有頭ピン348によって保持されている。また、円筒部材346および有頭ピン348は、一端が第1加圧ピストン302の後端面に保持される圧縮コイルスプリング350を挿通する状態で配設されている。円筒部材346は、そのスプリング350によって、第1加圧ピストン302から離間する方向に付勢されている。なお、その離間距離は、円筒部材346の前端に設けられた被係止部が有頭ピン348の頭部に係止されることによって、設定範囲内に制限されている。また、円筒部材346の後端面には、円盤状のゴムである閉塞部材352が内部連通路345の開口に向かい合う状態で嵌め込まれている。
【0084】
入力ピストン306の後端部には、ブレーキペダル150の操作力を入力ピストン306に伝達すべく、また、ブレーキペダル150の操作量に応じて入力ピストン306を進退させるべく、オペレーションロッド152の前端部が連結されている。ちなみに、入力ピストン306は、第2ハウジング部材310の後方大径部322と後方小径部324とによって形成される段差面に鍔部342が係止されることで、後退が制限されている。また、オペレーションロッド152には、円板状のスプリングシート354が付設されており、このスプリングシート354と第2ハウジング部材310との間には圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)356が配設されており、このリターンスプリング356によって、オペレーションロッド152は後方に向かって付勢されている。なお、スプリングシート354とハウジング300との間にはブーツ358が渡されており、マスタシリンダ装置110の後部の防塵が図られている。
【0085】
第1加圧室R1は、開口が出力ポートとなる連通孔400を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン302に設けられた連通孔402および開口がドレインポートとなる連通孔404を介して、リザーバ122に連通可能とされている。一方、第2加圧室R2は、開口が出力ポートとなる連通孔406を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン304に設けられた連通孔408および開口がドレインポートとなる連通孔410を介して、リザーバ122に連通可能とされている。
【0086】
第1加圧ピストン302は、第2ハウジング部材310の前方大径部318の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路412が形成されている。液通路412は、開口が連結ポートとなる連通孔414を介して外部に連通している。また、第1加圧ピストン302の後端面には凹部が設けられており、第1加圧ピストン302が第2ハウジング部材310の前方大径部318と前方小径部320との段差面に当接した状態で、第1加圧ピストン302の後端面と段差面との間にも、ある程度の流路面積を有する液通路415が形成されている。この液通路415は、一端が液通路412に開口し、他端がピストン間室R3に開口している。したがって、ピストン間室R3は液通路415、液通路412、連通孔414を介して、外部に連通している。
【0087】
第2ハウジング部材310の前方側に位置する部分は、第1ハウジング部材308の内径よりある程度小さい外径とされており、それらハウジング部材308,310間にはある程度の流路面積を有する液通路416が形成されている。その液通路416は開口が連結ポートとなる連通孔418を介して外部に連通している。また、第2ハウジング部材310には、一端が液通路416に開口し、他端が反力室R4に開口する連通孔420が設けられている。したがって、反力室R4は、連通孔420、液通路416、連通孔418を介して外部に連通している。
【0088】
また、第2ハウジング部材310の後方側に位置する部分も、第1ハウジング部材308の内径よりある程度小さい外径とされており、それらハウジング部材308,310間にはある程度の流路面積を有する液通路422が形成されている。その液通路422は開口が連結ポートとなる連通孔424を介して外部に連通している。また、第2ハウジング部材310には、一端が液通路422に開口し、他端が後背室R5に開口する連通孔426が設けられている。したがって、後背室R5は、連通孔426、液通路422、連通孔424を介して外部に連通している。
【0089】
ハウジング300の外部には、一端が連通孔414の連結ポートに接続され、他端が連通孔424の連結ポートに接続される外部連通路428が設けられている。その外部連通路428には、一端が増減圧装置120に繋げられて、入力圧とされた作動液の供給される入力圧供給路430の他端が接続されている。したがって、後背室R5およびピストン間室R3には、増減圧装置120によって入力圧とされた作動液がそれぞれ供給可能とされている。また、外部連通路428の途中には、電磁式の開閉弁432が設けられている。開閉弁432は、非励磁状態で閉弁状態となる常閉弁とされている。
【0090】
連通孔418の連結ポートには、リザーバ122に連通する連通路434の一端が接続されている。なお、連通路434の一部は第1ハウジング部材308内に形成されている。連通路434の途中には、電磁式の開閉弁436が設けられている。なお、開閉弁436は、非励磁状態で開弁状態となる常開弁とされている。また、連通路434における連通孔420と開閉弁436との間には、反力室R4内の作動液が流出入するストロークシミュレータ450が設けられている。
【0091】
図3は、ストロークシミュレータ450の断面図である。ストロークシミュレータ450は、筐体であるハウジング452と、そのハウジング452内部に配置された加圧ピストン454および圧縮コイルスプリング456を含んで構成されている。ハウジング452は、両端が閉塞された円筒形状とされている。加圧ピストン454は、円盤状とされており、ハウジング452の内周面に摺動可能に配設されている。スプリング456は、それの一端がハウジング452の内底面に支持されており、他端が加圧ピストン454の一端面に支持されている。したがって、加圧ピストン454は、スプリング456によってハウジング452に弾性的に支持されている。また、ハウジング452の内部には、加圧ピストン454の他端面とハウジング452とによって液室R11が区画されている。また、ハウジング452には、一端が液室R11に開口し、他端が連結ポートとされた連通孔458が設けられている。その連通孔458の連結ポートには、連通路434から分岐する液通路が接続されている。したがって、液室R11は反力室R4に連通しており、それら液室R11および反力室R4内の作動液は、加圧ピストン454を介して圧縮コイルスプリング456によって弾性的に加圧可能とされている。つまり、ストロークシミュレータ450は、スプリング456が加圧機構として機能する反力付与機構とされている。
【0092】
なお、本マスタシリンダ装置110に採用されるストロークシミュレータは、所謂ダイアフラム式のストロークシミュレータであってもよい。つまり、液室R11が加圧ピストン454の代わりにダイアフラムによって区画されており、作動液がそのダイアフラムを介して加圧機構によって加圧されるようなストロークシミュレータを採用することも可能である。
【0093】
≪マスタシリンダ装置の作動≫
以下にマスタシリンダ装置110の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム100が正常に作動することができる場合、開閉弁432および開閉弁436は励磁されて、それぞれ開弁および閉弁させられている。運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始され、操作力によって入力ピストン306が前進すると、開閉弁432が開弁しているため、室間連通路としての外部連通路428を介して、ピストン間室R3内の作動液は後背室R5内へと流入し、後退すると、外部連通路428を介して後背室R5内の作動液はピストン間室R3内へと流入する。つまり、ピストン間室R3の容積変化と後背室R5の容積変化とが相互に吸収される。したがって、前述のように、入力ピストン306の受圧面積と鍔部342の受圧面積とは等しいため、ピストン間室R3の容積変化に伴う入力ピストン306の第1加圧ピストン302に対する移動距離と、後背室R5の容積変化に伴う入力ピストン306のハウジング300に対する移動距離とは、互いに等しくなる。つまり、ブレーキ操作によって入力ピストン306が前進しても、第1加圧ピストン302はハウジング300に対して移動せず、第1加圧室R1内の作動液を加圧することもないのである。したがって、マスタシリンダ装置300は、通常時、操作力に依存して加圧室R1,R2内の作動液を加圧することはできなくされている。換言すれば、操作力が第1加圧ピストン302へと伝達されないようにされているのである。
【0094】
また、操作力によって入力ピストン306が前進すると、開閉弁436は閉弁しているため、対向室R4内の作動液がストロークシミュレータ450の液室R11へと流入する。したがって、その前進に応じて液室R11の容積が増加するため、スプリング456の弾性力が増加する。つまり、液室R11内および対向室R4内の作動液の圧力が上昇する。この作動液の圧力は、入力ピストン306の鍔部342に作用し、入力ピストン306の前進に対する反力となる。運転者は、その反力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として実感することとなる。なお、操作反力は、液室R11の容積の増加量、つまり、スプリング456の圧縮量に比例して増加することとなる。
【0095】
そのブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるべく、第1加圧ピストン302,第2加圧ピストン304によって第1加圧室R1,第2加圧室R2内の作動液を加圧する場合には、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、ピストン間室R3に入力すればよい。具体的には、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された圧力をピストン間室R3に入力すればよい。ピストン間室R3に作動液が導入されると、その作動液の圧力に依存して第1加圧ピストン302が前進し、その前進によって第1加圧室R1内の作動液が加圧される。その第1加圧室R1内の作動液の圧力に依拠して、第2加圧ピストン304が前進し、その前進によって第2加圧室R2内の作動液も加圧される。このように、本マスタシリンダ装置では、通常時、マスタシリンダ装置110が高圧源装置118から導入される作動液の圧力である高圧源圧に依存して加圧室R1,R2内の作動液を加圧するように作動する状態、つまり、高圧源圧依存加圧状態が実現される。
【0096】
ところで、このように増減圧装置120からピストン間室R3に供給される作動液は、後背室R5にも供給される。前記のように、入力ピストン306のピストン間室R3内の作動液の圧力が作用する部分の面積と、後背室R5内の作動液の圧力が作用する鍔部342の面積とは等しくされている。そのため、ピストン間室R3および後背室R5に入力圧とされた作動液が供給されても、その作動液の圧力によって、入力ピストン306にそれを前進させるように作用する力と後退させるように作用する力とは等しくなる。したがって、入力ピストン306は、入力圧とされた作動液によって移動させられることはない。
【0097】
先に説明したように、本車両では、液圧ブレーキシステム100は、目標制動力のうちの回生制動力を超える分だけ液圧制動力を発生させればよい。極端に言えば、目標制動力を回生制動力で賄える限り、液圧ブレーキシステム100による液圧制動力を必要としない。本マスタシリンダ装置110は、ブレーキ操作がされても、操作力に依存して加圧室R1,R2内の作動液を加圧することはないが、ブレーキ操作に対する操作反力を発生することができる。つまり、本マスタシリンダ装置110は、加圧室R1,R2内の作動液の加圧が行われない状態でのブレーキペダル150の操作を許容する機能を有しており、ハイブリッド車両に好適とされているのである。
【0098】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与をやめると、第1加圧ピストン302,第2加圧ピストン304は、リターンスプリング334、336によって、それぞれ、初期位置(図2に示す位置であり、第1加圧ピストン302の後端が第2ハウジング部材310の段差面に当接する状態となる位置)に戻される。また、入力ピストン306は、オペレーションロッド152とともに、リターンスプリング356によって、初期位置(図2に示す位置であり、後方部材670の後端が、第2ハウジング部材310の後端部によって係止される位置)に戻される。
【0099】
次に、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム100に電力が供給されていない状況下における作動について説明する。ちなみに、電気的失陥時、高圧源装置118は作動液を高圧とすることはできない。このような状況下で、開閉弁432は、励磁されていないため、閉弁している。したがって、室間連通路遮断器としての開閉弁432は、ピストン間室R3を密閉すべく、ピストン間室R3と後背室R5との連通を遮断する。ただし、ブレーキ操作がされていない状態では、入力ピストン306の内部連通路345を介して、ピストン間室R3は後背室R5に連通している。ブレーキ操作が開始されると、入力ピストン306が前進し、内部連通路345のピストン間室R3への開口が、閉塞部材352に当接することで閉塞され、ピストン間室R3が密閉される。したがって、密閉されたピストン間室R3内にある作動液を入力ピストン306の前進によって加圧することができる。また、その加圧された作動液によって加圧ピストン302,304が前進され、加圧室R1,R2内の作動液も加圧されることとなる。したがって、本マスタシリンダ装置110では、高圧源装置118が高圧とされた作動液を供給することができない場合に、シリンダ装置110が加圧室R1,R2内の作動液を専ら操作力に依存して加圧するように作動できる状態、すなわち、操作力依存加圧状態が実現される。
【0100】
一方、開閉弁436は、励磁されていないため、開弁している。つまり、反力室連通器としての開閉弁436は、反力室R4をリザーバ122に連通する。したがって、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、反力室R4内の作動液をリザーバ122へと流出させながら、入力ピストン306は前進する。また、ストロークシミュレータ450は、液室R11内の作動液を加圧することができず、反力付与機構として機能することができない。そのため、ストロークシミュレータ450は操作反力を発生することはないが、運転者は、主に、加圧室R1,R2内の作動液の圧力による反力を操作反力として実感することができる。したがって、運転者は、専ら操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧する場合であっても、違和感を感じることなくブレーキ操作をすることができる。このように、本マスタシリンダ装置110では、開閉弁436と開閉弁432とによって、操作力に依存した加圧室R1,R2内の作動液の加圧を実現させる操作力依存加圧実現機構が構成されている。
【0101】
ちなみに、前記のように、ブレーキペダル150が操作されていない状態で、内部連通路345の開口と閉塞部材352とは離間しているが、マスタシリンダ装置110では、その離間距離が比較的小さくされている。したがって、ブレーキペダル150を少し操作するだけでピストン間室R3が密閉され、ブレーキ装置116は液圧制動力を発生することができる。いわば、空踏みのような状態がブレーキ操作に殆どなく、操作力依存加圧状態であっても、運転者は違和感を感じることなくブレーキ操作をすることができる。
【0102】
ところで、ブレーキ操作によって、例えば、反力室R4内の作動液がシールを超えてピストン間室R3に流入してしまった場合等、ピストン間室R3内に作動液の不要な流入等があった場合には、ブレーキ操作を終了しても、ピストン間室R3内の作動液に残圧が生じてしまう可能性がある。したがって、残圧によって加圧ピストン302,304が前進させられ、加圧室R1,R2内の作動液が加圧されてしまう可能性、つまり、ブレーキ装置116で引き摺り現象が発生する可能性がある。本マスタシリンダ装置110では、ブレーキ操作が解除されると、減圧リニア弁242が開弁されるため、後背室R5内の作動液の圧力は大気圧となる。また、ブレーキ操作が解除されると、内部連通路345の開口が閉塞部材352から離間するため、内部室R3内の作動液の圧力も大気圧となる。つまり、内部連通路345と閉塞部材352とは、ブレーキ操作がされていない状態において、ピストン間室R3のリザーバ122への連通を確保するピストン間室連通確保機構として機能する。したがって、本マスタシリンダ装置110は、ブレーキ操作されていない状態での残圧の発生を防止することができ、ブレーキ装置116で引き摺り現象が発生しないようにされているのである。
【変形例1】
【0103】
図4に、第1実施例のマスタシリンダ装置110に代えて、変形例のマスタシリンダ装置500を採用した液圧ブレーキシステム100を示す。マスタシリンダ装置500は、大まかには、第1実施例のマスタシリンダ装置110の外部連通路428に設けられた電磁式の開閉弁436に代えて機械式の開閉弁502を採用していることを除いて、第1実施例のマスタシリンダ装置110と同じ構造とされている。以下の説明においては、この開閉弁502を中心に、第1実施例のマスタシリンダ装置110と異なる構成および作動についてのみ説明する。
【0104】
開閉弁502は、外部連通路428の途中に設けられている。図5は、開閉弁502の断面図である。開閉弁502は、筐体であるハウジング510と、そのハウジング510内部に配置された弁子部材512およびプランジャ514を含んで構成されている。ハウジング510は、両端が閉塞された円筒形状とされている。ハウジング510の内部には、内径の大きい大内径部520と内径の小さい小内径部522とが形成されており、それら内径部の境界には段差面524が形成されている。ハウジング510内には、概して円柱形状とされた仕切部材525が、段差面524に当接する状態で大内径部520に固定的に嵌入されている。なお、仕切部材525の中心部には、連通孔526が設けられている。また、仕切部材525の外周において段差面524に近い部分では、外径が小さくされており、ハウジング510の大内径部520と仕切部材525との間には、隙間528が形成されている。
【0105】
ハウジング510の大内径部520には、仕切部材525とによって液室R11が区画されている。その液室R11には、球形とされた弁子部材512と圧縮コイルスプリング530とが配置されており、弁子部材512はスプリング530の弾性反力によって連通孔526にそれを塞ぐようにして押し付けられている。なお、弁子部材512の直径は、連通孔526の直径より大きくされている。つまり、仕切部材525は弁座として機能し、弁子部材512が着座することで、連通孔526を塞ぐことができる。この状態で、開閉弁502は閉弁状態となる。ハウジング510の小内径部522には、概して円柱形状とされたプランジャ514が配置されている。プランジャ514は、一端が連通孔526の直径より小さな外径とされた先端部532とされており、他端が小内径部522の内径より若干小さな外径とされた基底部534とされている。したがって、プランジャ514は、基底部534が小内径部522に摺動可能な状態で、ハウジング510内部に嵌め込まれている。また、プランジャ514の前方には、小内径部522,仕切部材525,プランジャ514によって液室R12が区画されており、後方には、小内径部522,プランジャ514によって、後述するパイロット圧とされる作動液が導入されるパイロット圧室R13が区画されている。なお、パイロット圧室R13は図5では殆ど潰れた状態で示されている。また、前述の連通孔526によって、液室R12は液室R11に連通することが可能とされている。
【0106】
ハウジング510の大内径部520には、一端が液室R11に開口し、他端が連結ポートとされた連通孔536が設けられている。また、大内径部520の段差面524の近くには、一端が隙間528に開口し、他端が連結ポートとされた連通孔538が設けられている。また、仕切部材525には、隙間528と液室R12とを連通する連通孔540が設けられている。さらに、ハウジング510の小内径部522には、一端がパイロット圧室R13に開口し、他端が連結ポートとされた連通孔542が設けられている。
【0107】
上述のように構成された開閉弁502は、連通孔536,538の各々の連結ポートにおいて外部連通路428に接続されている。つまり、連通孔536,液室R11,R12,連通孔540,隙間528,連通孔538は,外部連通路428の一部を構成していると言うこともでき、その外部連通路428によって、マスタシリンダ装置500のピストン間室R3は後背室R5に連通することが可能とされている。また、連通孔542の連結ポートには、連通路434から分岐する連通路が繋げられており、連通孔542には、反力室R4内の作動液と同じ圧力の作動液が供給される。したがって、プランジャ514は、反力室R4内の作動液の圧力に応じて、自身の先端部532が連通孔526を挿通して弁子部材512を押圧するように作動することができる。その弁子部材512を押圧する力が、圧縮スプリング530の弁子部材512を押す力以上になると、プランジャ514は弁子部材512を連通孔526から離間させることができる。この状態で開閉弁502は開弁状態となる。
【0108】
シリンダ装置500の作動について以下に説明する。通常時、開閉弁436は励磁されて閉弁状態とされているため、反力室R4が密閉されている。この状態でブレーキ操作が行われると、反力室R4内の作動液の圧力は上昇する。そのため、開閉弁502では、弁子部材512が連通孔526から離間して、開閉弁502は開弁状態となり、液室R11とR12とが互いに連通する状態、つまり、内部室R5がリザーバ122に連通する状態となる。したがって、マスタシリンダ装置500は、通常時、高圧源圧依存加圧状態で作動することができる。
【0109】
本マスタシリンダ装置500の開閉弁502では、パイロット圧室R13の作動液の圧力が作用するプランジャ514の基底部534の受圧面積が比較的大きくされている。そのため、反力室R4内の作動液の圧力がわずかに上昇すれば、開閉弁502は開弁することが可能とされている。したがって、マスタシリンダ装置500では、開閉弁502によって、ブレーキ操作開始直後、つまり、反力室内R7内の作動液の圧力が操作力によってわずかに上昇するだけで、内部室R5はリザーバ122に連通することができる。
【0110】
一方、電気的失陥時では、開閉弁436は開弁状態とさせられている。そのため、反力室R4および連通路434の作動液の圧力は大気圧となっており、パイロット圧室R13の作動液の圧力も大気圧となっている。したがって、電気的失陥時においては、弁子部材512が連通孔526から離間することはない。つまり、開閉弁502は閉弁状態で維持され、内部室R5のリザーバ122への連通が遮断されている。したがって、シリンダ装置500は、操作力依存加圧状態で作動することができる。
【0111】
なお、シリンダ装置110が操作力依存加圧状態とされている場合、液室R12内の作動液には、内部室R5内の作動液の圧力が作用するが、開閉弁502はその圧力によって開弁しないように構成されている。詳しく言うと、液室R12内の作動液が弁子部材512に作用する部分の面積は相当に小さくされており、その作動液の圧力によって弁子部材512を仕切部材525から押し上げる力が、スプリング530によって弁子部材512を仕切部材525に押し付ける力より大きくなることがないように、開閉弁502は構成されている。したがって、操作力依存加圧状態では、開閉弁502は閉弁状態に維持されるのである。
【0112】
したがって、開閉弁502は、反力室R4内の作動液の圧力をパイロット圧として導入し、そのパイロット圧が圧縮スプリング530の弾性反力に依拠して設定された設定圧以上である場合に開弁し、設定圧を下回ると閉弁するように作動する内部室連通遮断器として機能する。このように、マスタシリンダ装置500では、比較的簡便な機構によって内部室連通遮断器が構成されている。
【実施例2】
【0113】
図6に、第1実施例のマスタシリンダ装置110に代えて、第2実施例のマスタシリンダ装置600を採用した液圧ブレーキシステム100を示す。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、第1実施例のマスタシリンダ装置110と異なる構成および作動についてのみ説明し、第1実施例のマスタシリンダ装置110と同じ構成および作動については説明を省略する。
【0114】
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置600は、マスタシリンダ装置600の筐体であるハウジング602と、ブレーキ装置116に供給する作動液を加圧する第1加圧ピストン604および第2加圧ピストン606と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン608とを含んで構成されている。なお、図6は、マスタシリンダ装置600が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
【0115】
ハウジング602は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材610と第2ハウジング部材612とから構成されている。第1ハウジング部材610は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、後端部の外周にはフランジ614が形成され、そのフランジ614において車体に固定されている。第1ハウジング部材610は、内径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部616、後方側に位置して内径の大きい後方大径部618に区分けされている。
【0116】
第2ハウジング部材612は、前方側に位置して内径の大きい前方大径部620、後方側に位置して内径の小さい後方小径部622を有する円筒形状とされている。第2ハウジング部材612は、それの前端部が第1ハウジング部材610の前方小径部616と後方大径部618との段差面に接する状態で、後方大径部618に嵌め込まれている。
【0117】
第2加圧ピストン606は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、第1ハウジング部材610の前方小径部616に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン604は、円筒形状をなす本体部626と、その本体部626の後端部に設けられた鍔部628とを有する形状とされている。また、第1加圧ピストン304の本体部626の内部は、前後方向における中間位置に設けられた仕切壁部630によって、2つの部分に区画されている。つまり、第1加圧ピストン604は、前端,後端にそれぞれ開口する2つの有底穴を有する形状とされている。ちなみに、第1加圧ピストン604は、鍔部628が第2ハウジング部材612の前方大径部620と後方小径部622との段差面に当接することで、それの後退が制限されている。
【0118】
入力ピストン608は、大まかには円柱形状とされている。入力ピストン608は、それの前方側が第1加圧ピストン604の後端に開口する有底穴の内周面に摺接する状態で嵌め込まれ、それの後方側が第2ハウジング部材612の後方小径部622の内周面に摺接する状態で嵌め込まれている。このように入力ピストン608が嵌め込まれた状態で、第1加圧ピストン604の有底穴と入力ピストン608の前端面との間には液室(以下「ピストン間室」という場合がある)R23が、第1加圧ピストン604の鍔部628の前方には環状の液室(以下「対向室」という場合がある)R24が、鍔部628の後方には環状の液室(以下「入力室」という場合がある)R25がそれぞれ区画形成されている。ちなみに、入力室R25は、図6では、ほとんど潰れた状態で示されている。なお、ピストン間室R23内の作動液の圧力が作用する入力ピストン608の面積と、入力室R25内の作動液の圧力が作用する第1加圧ピストン604の鍔部628の面積とは等しくされている。
【0119】
第1加圧ピストン604の周壁面には、一端がピストン間室R23に開口し、他端が対向室R24に開口する連通孔632が形成されている。したがって、ピストン間室R23と対向室R24とは、連通孔632を介して互いに連通可能となっている。また、入力ピストン608の前端の外周部には、その連通を遮断することができるシール部材633が嵌め込まれている。詳しく言うと、入力ピストン608が第1加圧ピストン604に対して前進し、シール部材633が連通孔632を通過すると、連通孔632を介してのピストン間室R23と対向室R24との連通は遮断されるのである。ちなみに、入力ピストン608は、自身の後端部が第2ハウジング部材612の後端部に係止されることで、後退が制限されている。
【0120】
第1加圧ピストン604は、第2ハウジング部材612の前方大径部620の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路634が形成されている。液通路634は、開口が連結ポートとなる連通孔636を介して外部に連通している。また、第1加圧ピストン604には、液通路634とピストン間室R23とを互いに連通する内部連通路638が形成されている。したがって、ピストン間室R23は内部連通路638、液通路634、連通孔636を介して、外部に連通している。
【0121】
第2ハウジング部材612の前方大径部620の前方側に位置する部分は、第1ハウジング部材610の内径よりある程度小さい外径とされており、それらハウジング部材610,612間にはある程度の流路面積を有する液通路640が形成されている。その液通路640は開口が連結ポートとなる連通孔642を介して外部に連通している。また、第2ハウジング部材612には、一端が液通路640に開口し、他端が対向室R24に開口する連通孔644が設けられている。したがって、対向室R24は、連通孔644、液通路640、連通孔642を介して外部に連通している。
【0122】
また、第2ハウジング部材612の前方大径部620の後方側に位置する部分も、第1ハウジング部材610の内径よりある程度小さい外径とされており、それらハウジング部材610,612間にはある程度の流路面積を有する液通路646が形成されている。その液通路646は開口が連結ポートとなる連通孔648を介して外部に連通している。また、第2ハウジング部材612には、一端が液通路646に開口し、他端が入力室R25に開口する連通孔650が設けられている。したがって、入力室R25は、連通孔650、液通路646、連通孔648を介して外部に連通している。
【0123】
ハウジング602の外部には、一端が連通孔642の連結ポートに接続され、他端が連通孔636の連結ポートに接続される連通路652が設けられている。したがって、ピストン間室R23と対向室R24とは、連通路652を介して互いに連通可能とされている。また、連通路652の途中には、電磁式の開閉弁654が設けられている。開閉弁654は、非励磁状態で閉弁状態となる常閉弁とされている。
【0124】
連通孔642の連結ポートには、リザーバ122に連通する連通路656の一端が接続されている。なお、連通路656の一部は第1ハウジング部材610内に形成されている。連通路656の途中には、電磁式の開閉弁658が設けられている。なお、開閉弁658は、非励磁状態で開弁状態となる常開弁とされている。また、連通路656における連通孔642と開閉弁658との間には、対向室R24内の作動液が流出入するストロークシミュレータ450が設けられている。
【0125】
連通孔648の連結ポートには、その連通路652には、一端が増減圧装置120に繋げられて、入力圧とされた作動液の供給される入力圧供給路660の他端が接続されている。したがって、入力室R25には、増減圧装置120によって入力圧とされた作動液が供給可能とされている。
【0126】
≪マスタシリンダ装置の作動≫
以下にマスタシリンダ装置600の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム100が正常に作動することができる場合、開閉弁654および開閉弁658は励磁されて、それぞれ開弁および閉弁させられている。したがって、ピストン間室R23と対向室R24とは連通しており、対向室R24のリザーバ122への連通は遮断されている。運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン608を介して操作力がピストン間室R23内の作動液に伝達され、ピストン間室R23内および対向室R24内の作動液の圧力は上昇する。前記のように、入力ピストン608の受圧面積と鍔部628の受圧面積とは等しくされているため、ピストン間室R23内の作動液の圧力によって第1加圧ピストン604を前進させようとする力と、対向室R24内の作動液の圧力によって第1加圧ピストン604を後退させようとする力とは等しくなる。そのため、操作力によってピストン間室R23内および対向室R24内の作動液の圧力が上昇しても、そのことだけによって第1加圧ピストン604が移動させられることはない。つまり、マスタシリンダ装置600は、通常時、操作力に依存して第1加圧室R1内の作動液を加圧することができなくされている。換言すれば、ブレーキペダル150に加えられた操作力が第1加圧ピストン604へと伝達されないようにされているのである。
【0127】
また、操作力によって入力ピストン608が前進すると、開閉弁658は閉弁しているため、ピストン間室R23内の作動液がストロークシミュレータ450の液室R11へと流入する。したがって、その前進に応じて液室R11の容積が増加するため、スプリング456の弾性力が増加する。つまり、ピストン間室R23内の作動液の圧力が上昇する。この作動液の圧力は、入力ピストン608に作用し、入力ピストン608の前進に対する反力、つまり、ブレーキ操作に対する操作反力となる。
【0128】
そのブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるには、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、入力室R25に入力すればよい。入力室R25に作動液が導入されると、その作動液の圧力に依存して第1加圧ピストン604が前進して第1加圧室R1内の作動液を加圧し、その作動液の圧力に依拠して、第2加圧ピストン606も前進して第2加圧室R2内の作動液を加圧する。また、第1加圧ピストン604の前進によって、対向室R24内の作動液はピストン間室R23内へと流入する。前述のように、鍔部628の受圧面積と入力ピストン608の受圧面積とは等しくされているから、対向室R24の容積変化における第1加圧ピストン604のハウジング602に対する移動距離と、ピストン間室R23の容積変化における第1加圧ピストン604の入力ピストン608に対する移動距離とは、互いに等しくなる。したがって、通常時、第1加圧ピストン604の前進によって入力ピストン608が移動することはない。このように、本マスタシリンダ装置では、通常時、マスタシリンダ装置600が高圧源装置118から導入される作動液の圧力である高圧源圧に依存して加圧室R1,R2内の作動液を加圧するように作動する状態、つまり、高圧源圧依存加圧状態が実現される。
【0129】
次に、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム100に電力が供給されていない状況下における作動について説明する。このような状況下で、開閉弁654は、励磁されていないため、閉弁している。したがって、開閉弁654は、室間連通路遮断器としてピストン間室R23を密閉すべく、ピストン間室R23と対向室R24との連通を遮断する。ただし、ブレーキ操作がされていない状態では、第1加圧ピストン604の連通孔632を介して、ピストン間室R23は対向室R24に連通している。ブレーキ操作が開始されると、入力ピストン608が前進し、シール部材633が連通孔632を通過すると、ピストン間室R23が密閉される。したがって、密閉されたピストン間室R23内にある作動液を入力ピストン608の前進によって加圧することができる。また、その加圧された作動液によって加圧ピストン604,606が前進され、加圧室R1,R2内の作動液も加圧されることとなる。したがって、本マスタシリンダ装置600では、高圧源装置118が高圧とされた作動液を供給することができない場合に、マスタシリンダ装置600が加圧室R1,R2内の作動液を専ら操作力に依存して加圧するように作動できる状態、すなわち、操作力依存加圧状態が実現される。
【0130】
一方、開閉弁658は、励磁されていないため、開弁している。つまり、対向室連通器としての開閉弁658は、対向室R24をリザーバ122に連通する。したがって、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、対向室R24内の作動液をリザーバ122へと流出させながら、第1加圧ピストン604は前進する。また、ストロークシミュレータ450は、液室R11内の作動液を加圧することができず、反力付与機構として機能することができない。このように、本マスタシリンダ装置600では、対向室連通器としての開閉弁658と、室間連通路遮断器としての開閉弁654とによって、操作力に依存した加圧室R1,R2内の作動液の加圧を実現させる操作力依存加圧実現機構が構成されている。なお、運転者は、主に、加圧室R1,R2内の作動液の圧力による反力を操作反力として実感することができ、違和感を感じることなくブレーキ操作をすることができる。
【0131】
ちなみに、ブレーキペダル150が操作されていない状態で、シール部材633は連通孔632から離れて後方に位置しているが、マスタシリンダ装置600では、その距離が比較的小さくされている。したがって、ブレーキペダル150を少し操作するだけでピストン間室R23が密閉され、ブレーキ装置116は液圧制動力を発生することができる。いわば、空踏みのような状態がブレーキ操作に殆どなく、操作力依存加圧状態であっても、運転者は違和感を感じることなくブレーキ操作をすることができる。
【0132】
また、電気的失陥時におけるブレーキ操作によって、例えば、加圧室R1内の作動液がシールを超えてピストン間室R23に流入してしまった場合等、ピストン間室R23内に作動液の不要な流入等があった場合には、ブレーキ操作終了後に、ピストン間室R23内の作動液に残圧が生じてしまう可能性がある。本マスタシリンダ装置600では、ブレーキ操作が解除されると、シール部材633が連通孔632の後方に戻るため、ピストン間室R23は対向室R24に連通する。つまり、ピストン間室R23内の作動液の圧力は大気圧となる。したがって、本マスタシリンダ装置600は、ブレーキ操作がされていない状態において、ピストン間室R23のリザーバ122への連通を確保するピストン間室連通確保機構を有していると考えることができる。そのことに鑑みれば、連通孔632は、対向室R24,連通孔644,連通路640,連通孔642,連通路656とともに、ピストン間室連通確保機構の外部連通路の一部を形成していると考えることができる。このように、本マスタシリンダ装置600は、ブレーキ操作されていない状態でのピストン間室R23内の残圧を防止することができ、ブレーキ装置116で引き摺り現象は発生しないのである。また、通常時であっても、イグニッションがOFFとされたときに、開閉弁658は非励磁とされて開弁し、ピストン間室R23はリザーバ122に連通する。したがって、本マスタシリンダ装置600は、ピストン間室R23を定期的にリザーバ122に連通することで、残圧を解消することが可能とされている。
【変形例2】
【0133】
図7は、電磁式の開閉弁432に代えて、前述の第1実施例の変形例のマスタシリンダ装置500で採用された機械式の開閉弁502を室間連通路遮断器として採用した第2実施例の変形例のマスタシリンダ装置680を示す。開閉弁502は、連通路652に配置され、また、その連通路652の作動液の圧力をパイロット圧として導入する。具体的にいうと、開閉弁502の連通孔536,538のそれぞれの連結ポートには連通路652が繋げられ、連通孔542の連結ポートには連通路656から分岐する連通路が繋げられている。このように配設された開閉弁502は、通常時、開弁状態となり、電気的失陥時に、閉弁状態となるように作動することができる。
【実施例3】
【0134】
図8に、第1実施例のマスタシリンダ装置110に代えて、第3実施例のマスタシリンダ装置700を採用した液圧ブレーキシステム100を示す。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、第1実施例のマスタシリンダ装置110と異なる構成および作動についてのみ説明し、第1実施例のマスタシリンダ装置110と同じ構成および作動については説明を省略する。
【0135】
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置700は、マスタシリンダ装置700の筐体であるハウジング702と、ブレーキ装置116に供給する作動液を加圧する第1加圧ピストン704および第2加圧ピストン706と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン708とを含んで構成されている。なお、図8は、マスタシリンダ装置700が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
【0136】
ハウジング702は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材710と第2ハウジング部材712とから構成されている。第1ハウジング部材710は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、後端部の外周にはフランジ714が形成され、そのフランジ714において車体に固定されている。第1ハウジング部材710は、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部716、後方側に位置して内径の大きい後方大径部718、それら前方小径部716と後方大径部718との中間に位置しそれらの内径の中間の内径を有する中間部720に区分けされている。
【0137】
第2ハウジング部材712は、前端部が閉塞されつつ、前端面に開口を有する円筒形状とされている。第2ハウジング部材712は、それの前端部が第1ハウジング部材710の中間部720と後方大径部718との段差面に接する状態で、後方大径部718に嵌め込まれている。
【0138】
第2加圧ピストン706は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、第1ハウジング部材710の前方小径部716に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン704は、概ね円筒形状とされているが、それの内部は、前後方向における中間位置に設けられた仕切壁部722によって、2つの部分に区画されている。つまり、第1加圧ピストン704は、前端,後端にそれぞれ開口する2つの有底穴を有する形状とされている。ちなみに、第1加圧ピストン704は、後端が第2ハウジング部材712の前端面に当接することで、それの後退が制限されている。また、第1加圧ピストン704の後端と第2ハウジング部材712の前端面との間には、高圧源装置118からの圧力が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R33が区画形成されている。ちなみに、入力室R33は、図8では、ほとんど潰れた状態で示されている。
【0139】
入力ピストン708は概ね円柱形状とされている。入力ピストン708は、前方側が外径の小さくされた前方小径部726、後方側が外径の大きくされた後方大径部728とされている。入力ピストン708は、前方小径部726の前方側が第1加圧ピストン704の後端に開口する有底穴の内周面に摺接する状態で嵌め込まれ、後方大径部728が第2ハウジング部材712の内周面に摺接する状態で嵌め込まれている。このように入力ピストン708が嵌め込まれた状態で、第1加圧ピストン704の有底穴と入力ピストン708の前端面との間には液室(以下「ピストン間室」という場合がある)R34が、入力ピストン708の前方小径部726の外周面と第2ハウジング部材712の内周面との間には環状の液室(以下「反力室」という場合がある)R35がそれぞれ区画形成されている。
【0140】
第1加圧ピストン704の前方側は、第1ハウジング部材710の中間部720の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路730が形成されている。液通路730は、一端が外部に開口する連結ポートとされた連通孔732を介して外部に連通している。また、第1ハウジング部材710の内部には、液通路730をリザーバ122に連通する連通路734の一部が形成されており、液通路730は、その連通路734に連通している。したがって、液通路730はリザーバ122に連通しており、通路内の作動液の圧力は大気圧とされている。
【0141】
第1加圧ピストン704の周壁面には、一端がピストン間室R34に開口し、他端が液通路730に開口する連通孔736が形成されている。したがって、ピストン間室R34はリザーバ122に連通可能となっている。また、入力ピストン708の前端の外周部には、その連通を遮断することができるシール部材738が嵌め込まれている。詳しく言うと、入力ピストン708が第1加圧ピストン704に対して前進し、シール部材738が連通孔736を通過すると、連通孔736を介してのピストン間室R34のリザーバ122への連通は遮断されるのである。ちなみに、入力ピストン708は、自身の後端部が第2ハウジング部材712の後端部に係止されることで、後退が制限されている。
【0142】
第1加圧ピストン704の後方側は、第1ハウジング部材710の中間部720の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路740が形成されている。液通路740は、一端が外部に開口する連結ポートとされた連通孔742を介して外部に連通している。また、第1加圧ピストン704の周壁面には、一端が液通路740に開口し、他端がピストン間室R34に開口する連通路744が形成されている。したがって、ピストン間室R34は、連通路744、液通路740、連通孔742を介して外部に連通している。なお、連通路744の他端の開口は、第1加圧ピストン704の有底穴の底部近傍に設けられており、入力ピストン708の前端面が有底穴の底部に接近、あるいは、当接しても、ピストン間室R34は外部に連通することが可能とされている。
【0143】
第2ハウジング部材712の前方側に位置する部分は、第1ハウジング部材710の内径よりある程度小さい外径とされており、それらハウジング部材710,712間にはある程度の流路面積を有する液通路746が形成されている。その液通路746は一端が外部に開口する連結ポートとされた連通孔748を介して外部に連通している。また、第2ハウジング部材712には、一端が液通路746に開口し、他端が反力室R35に開口する連通孔750が設けられている。したがって、反力室R35は、連通孔750、液通路746、連通孔748を介して外部に連通している。
【0144】
また、第1ハウジング部材710には、一端が外部に開口する連結ポートとされ、他端が入力室R33に開口する連通孔752が形成されている。その連通孔752には、一端が増減圧装置120に繋げられて、入力圧とされた作動液の供給される入力圧供給路754の他端が接続されている。したがって、入力室R33には、増減圧装置120によって入力圧とされた作動液が供給可能とされている。
【0145】
ハウジング702の外部には、一端が連通孔732の連結ポートに接続され、他端が連通孔742の連結ポートに接続される連通路756が設けられている。したがって、ピストン間室R34は、連通路756を介してリザーバ122に連通可能となっている。また、連通路756の途中には、機械式の開閉弁758が設けられている。なお、開閉弁758は、第1実施例の変形例のマスタシリンダ装置500に採用された開閉弁502と同じ構造とされている。
【0146】
また、ハウジング702の外部には、一端が連通孔732の連結ポートに接続され、他端が連通孔748の連結ポートに接続される連通路760も設けられている。したがって、反力室R35は、連通路760を介してリザーバ122に連通可能となっている。連通路760の途中には、電磁式の開閉弁762が設けられている。なお、開閉弁762は、非励磁状態で開弁状態となる常開弁とされている。また、連通路760における連通孔748と開閉弁762との間には、反力室R35内の作動液が流出入するストロークシミュレータ450が設けられている。また、開閉弁758は、連通路760に接続されており、反力室R35内の作動液の圧力をパイロット圧として導入している。
【0147】
≪マスタシリンダ装置の作動≫
以下にマスタシリンダ装置700の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム100が正常に作動することができる場合、開閉弁762は励磁されて、閉弁させられている。運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始され、操作力によって入力ピストン708が前進すると、開閉弁762が閉弁しているため、反力室R35内の作動液がストロークシミュレータ450の液室R11へと流入する。したがって、その前進に応じて液室R11の容積が増加するため、スプリング456の弾性力が増加する。つまり、反力室R35内の作動液の圧力が上昇する。この作動液の圧力は、入力ピストン708に作用し、入力ピストン708の前進、つまり、ブレーキ操作に対する操作反力となる。また、その圧力の上昇によって、開閉弁758は開弁するため、ピストン間室R34はリザーバ122に連通する。したがって、操作力によって入力ピストン708が前進しても、操作力がピストン間室R34内の作動液を介して第1加圧ピストンに伝達されることはなく、そのことによって第1加圧ピストン704が移動させられることはない。つまり、マスタシリンダ装置700は、通常時、操作力に依存して加圧室内の作動液を加圧することができなくされている。
【0148】
ブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるには、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、入力室R33に入力すればよい。入力室R33に作動液が導入されると、その作動液の圧力に依存して第1加圧ピストン704が前進して第1加圧室R1内の作動液を加圧し、その作動液の圧力に依拠して、第2加圧ピストン706も前進して第2加圧室R2内の作動液を加圧する。このように、本マスタシリンダ装置では、通常時、マスタシリンダ装置700が高圧源装置118から導入される作動液の圧力である高圧源圧に依存して加圧室R1,R2内の作動液を加圧するように作動する状態、つまり、高圧源圧依存加圧状態が実現される。
【0149】
次に、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム100に電力が供給されていない状況下における作動について説明する。このような状況下で、開閉弁762は、励磁されていないため、開弁している。つまり、開閉弁762は、反力室連通器として反力室R35をリザーバ122に連通する。したがって、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、反力室R35内の作動液をリザーバ122へと流出させながら、第1加圧ピストン704は前進する。また、ストロークシミュレータ450は、液室R11内の作動液を加圧することができず、反力付与機構として機能することができない。
【0150】
一方、開閉弁758は、反力室R35内の作動液の圧力が上昇することはないため、閉弁状態で維持される。したがって、ピストン間室遮断器としての開閉弁758は、ピストン間室R34を密閉すべく、ピストン間室R34のリザーバ122への連通を遮断する。ただし、ブレーキ操作がされていない状態では、第1加圧ピストン704の連通孔736を介して、ピストン間室R34はリザーバ122に連通している。ブレーキ操作が開始されると、入力ピストン708が前進し、シール部材738が連通孔736を通過すると、ピストン間室R34が密閉される。したがって、密閉されたピストン間室R34内にある作動液を入力ピストン708の前進によって加圧することができる。また、その加圧された作動液によって加圧ピストン704,706が前進され、加圧室R1,R2内の作動液も加圧されることとなる。したがって、本マスタシリンダ装置700では、高圧源装置118が高圧とされた作動液を供給することができない場合に、マスタシリンダ装置700が加圧室R1,R2内の作動液を専ら操作力に依存して加圧するように作動できる状態、すなわち、操作力依存加圧状態が実現される。このように、本マスタシリンダ装置700では、ピストン間室遮断器としての開閉弁758と、反力室連通器としての開閉弁762とによって、操作力に依存した加圧室R1,R2内の作動液の加圧を実現させる操作力依存加圧実現機構が構成されている。なお、前述のように、ストロークシミュレータ450は操作反力を発生することはできないが、運転者は、主に、加圧室R1,R2内の作動液の圧力による反力を操作反力として実感することができる。
【0151】
ちなみに、ブレーキペダル150が操作されていない状態で、シール部材738は連通孔736から離れて後方に位置しているが、マスタシリンダ装置700では、その距離が比較的小さくされている。したがって、ブレーキペダル150を少し操作するだけでピストン間室R34が密閉され、ブレーキ装置116は液圧制動力を発生することができる。いわば、空踏みのような状態がブレーキ操作に殆どなく、操作力依存加圧状態であっても、運転者は違和感を感じることなくブレーキ操作をすることができる。
【0152】
また、第2実施例のマスタシリンダ装置600と同様に、ブレーキ操作が解除されると、シール部材738が連通孔736の後方に戻るため、ピストン間室R34は再びリザーバ122に連通する。したがって、本マスタシリンダ装置700は、ブレーキ操作がされていない状態において、ピストン間室R34のリザーバ122への連通を確保するピストン間室連通確保機構を有していると考えることができる。そのことに鑑みれば、連通孔736は、反力室R35,液通路730,連通路734とともに、ピストン間室連通確保機構の外部連通路の一部を形成していると考えることができる。したがって、本マスタシリンダ装置700は、ブレーキ操作されていない状態での残圧を防止することができ、ブレーキ装置116で引き摺り現象が発生しないのである。
【0153】
さらに、本マスタシリンダ装置700では、機械式の開閉弁758に代えて、電磁式の開閉弁をピストン間室遮断器として採用することも可能である。
【変形例3】
【0154】
図9は、機械式の開閉弁758に代えて、電磁式の開閉弁780をピストン間室遮断器として採用した第3実施例の変形例のマスタシリンダ装置782を示す。開閉弁780は、連通路756に配置されており、また、通常時に開弁状態となり、電気的失陥時に閉弁状態となるように、非励磁で閉弁状態となる常閉弁とされている。
【符号の説明】
【0155】
110:マスタシリンダ装置 116:ブレーキ装置 118:高圧源装置(高圧源) 122:リザーバ(低圧源) 150:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材) 300:ハウジング 302:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 306:入力ピストン 345:内部連通路(ピストン間室連通確保機構) 352:閉塞部材(ピストン間室連通確保機構) 428:外部連通路(室間連通路) 432:電磁式開閉弁(室間連通路遮断器) 436:電磁式開閉弁(反力室連通器) 450:ストロークシミュレータ(反力付与機構) 456:圧縮コイルスプリング(加圧機構) R1:第1加圧室(加圧室) R3:ピストン間室 R4:反力室 R5:後背室 R11:液室 500:マスタシリンダ装置 502:機械式開閉弁(入力ピストン収縮禁止機構) 600:マスタシリンダ装置 602:ハウジング 604:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 608:入力ピストン 632:連通孔(ピストン間室連通確保機構) 633:シール部材(ピストン間室連通確保機構) 652:連通路(室間連通路) 654:電磁式開閉弁(室間連通路遮断器) 658:電磁式開閉弁(対向室連通器) R23:ピストン間室 R24:対向室 R25:入力室 680:マスタシリンダ装置 700:マスタシリンダ装置 702:ハウジング 704:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 708:入力ピストン 736:連通孔(ピストン間室連通確保機構) 738:シール部材(ピストン間室連通確保機構) 758:機械式開閉弁(ピストン間室遮断器) 762:電磁式開閉弁(反力室連通器) R33:入力室 R34:ピストン間室 R35:反力室 780:電磁式開閉弁(ピストン間室遮断器) 782:マスタシリンダ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に設けられて作動液の圧力によって作動するブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方が閉塞されたハウジングと、
前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための加圧室が自身の前方に区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
その加圧ピストンとの間に作動液で満たされるピストン間室が区画されるようにして、その加圧ピストンの後方において前記ハウジング内に配設され、後端部がブレーキ操作部材に連結されて、そのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進する入力ピストンと、
その入力ピストンの前進に対して弾性反力を付与する反力付与機構と
を備え、
通常、前記操作力が前記入力ピストンから前記加圧ピストンへ伝達されない状態において、高圧源から当該マスタシリンダ装置に導入された作動液の圧力に依存して前記加圧ピストンが前記加圧室内の作動液を加圧するように構成されており、
前記高圧源から導入される作動液の圧力が不充分となる状況下において、前記反力付与機構を機能させないようにし、かつ、前記ピストン間室を密閉することで前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの前記操作力の伝達を許容して、その操作力に依存した前記加圧ピストンによる前記加圧室内の作動液の加圧を実現させる操作力依存加圧実現機構を、さらに備えたマスタシリンダ装置。
【請求項2】
前記入力ピストンが鍔部を有し、その鍔部の前方に、作動液で満たされた環状の反力室が、その鍔部の後方に、作動液で満たされた環状の後背室が、それぞれ区画されており、 当該マスタシリンダ装置が、前記入力ピストンの進退に伴う前記ピストン間室の容積変化と前記後背室の容積変化とを相互に吸収可能とすべく、それらピストン間室と後背室とを相互に連通させる室間連通路を備え、
通常、その室間連通路によって、前記ピストン間室と前記後背室とが相互に連通させられていることで、前記操作力が前記入力ピストンから前記加圧ピストンへ伝達されない状態が実現されるとともに、それらピストン間室と後背室とに前記高圧源からの作動液が導入され、
前記反力付与機構が、前記反力室と連通して作動液で満たされるとともに容積変化が許容された液室と、その液室内の作動液を弾性的に加圧する加圧機構とを含んで構成されており、
前記操作力依存加圧実現機構が、
前記反力付与機構を機能させないようにすべく、前記反力室を低圧源と連通させる反力室連通器と、
前記ピストン間室を密閉すべく、前記室間連通路を遮断する室間連通路遮断器と
を含んで構成された請求項1に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項3】
当該マスタシリンダ装置が、
前記操作部材が操作されていない状態において、前記ピストン間室の低圧源への連通確保するピストン間室連通確保機構を備えた請求項2に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項4】
前記ピストン間室連通確保機構が、
前記入力ピストンの内部に形成され、一端がその入力ピストンの端面において前記ピストン間室に開口してそのピストン間室と前記後背室とを連通させる内部連通路と、
前記加圧ピストンに支持され、前記ピストン間室の容積減少によって前記内部連通路の開口を閉塞する開口閉塞体と
を含んで構成された請求項3に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項5】
前記室間連通路遮断器が、
前記室間連通路に配設され、前記反力付与機構が有する前記加圧機構によって加圧された作動液の圧力がパイロット圧として導入されて、そのパイロット圧が設定圧以上である場合に開弁し、そのパイロット圧がその設定圧を下回った場合に閉弁する機械式開閉弁を含んで構成された請求項2ないし請求項4のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【請求項6】
前記加圧ピストンが、後方に開口する有底穴を有するとともに、自身の前方に前記加圧室が区画される本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、その鍔部の後方に、前記高圧源からの作動液が入力される環状の入力室が、その鍔部の前方に、作動液で満たされてその鍔部を挟んで前記入力室と対向する環状の対向室が、それぞれ区画されており、
前記入力ピストンが前記加圧ピストンの前記有底穴に嵌入されていることで、その有底穴内に前記ピストン間室が区画されており、
当該マスタシリンダ装置が、前記加圧ピストンの進退に伴う前記対向室の容積変化と前記ピストン間室の容積変化とを相互に吸収可能とすべく、それら対向室とピストン間室とを相互に連通させる室間連通路を備え、
通常、その室間連通路によって、それら対向室とピストン間室とが相互に連通させられていることで、前記操作力が前記入力ピストンから前記加圧ピストンへ伝達されない状態が実現され、
前記反力付与機構が、前記室間連通路によって連通させられた前記対向室および前記ピストン間室と連通して作動液で満たされるとともに容積変化が許容された液室と、その液室内の作動液を弾性的に加圧する加圧機構とを含んで構成されており、
前記操作力依存加圧実現機構が、
前記反力付与機構を機能させないようにすべく、前記対向室を低圧源と連通させる対向室連通器と、
前記ピストン間室を密閉すべく、前記室間連通路を遮断する室間連通路遮断器と
を含んで構成された請求項1に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項7】
当該マスタシリンダ装置が、
前記操作部材が操作されていない状態において、前記ピストン間室の低圧源への連通確保するピストン間室連通確保機構を備えた請求項6に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項8】
前記ピストン間室連通確保機構が、
前記加圧ピストン内部を経由して形成され、一端が前記ピストン間室の周壁面に開口してそのピストン間室と低圧源を連通させる外部連通路と、
前記入力ピストンの外周部に外嵌され、その入力ピストンの前記加圧ピストンに対する相対的前進によって、前記開口と前記ピストン間室との連通を遮断するシールと
を含んで構成された請求項7に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項9】
前記室間連通路遮断器が、
前記室間連通路に配設され、前記反力付与機構が有する前記加圧機構によって加圧された作動液の圧力がパイロット圧として導入されて、そのパイロット圧が設定圧以上である場合に開弁し、そのパイロット圧がその設定圧を下回った場合に閉弁する機械式開閉弁を含んで構成された請求項6ないし請求項8のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
【請求項10】
前記加圧ピストンが後方に開口する有底穴を有し、前記入力ピストンがその有底穴に嵌入されていることで、その有底穴内に前記ピストン間室が区画され、前記加圧ピストンの後方に、その加圧ピストンと前記ハウジングとによって、前記高圧源からの作動液が導入される環状の入力室が区画されており、
通常、前記ピストン間室が低圧源と連通していることで、前記操作力が前記入力ピストンから前記加圧ピストンへ伝達されない状態が実現され、
前記入力ピストンの周囲に、その入力ピストンと前記ハウジングとによって、その入力ピストンの前進によって容積が減少する環状の反力室が区画され、前記反力付与機構が、その反力室と連通して作動液で満たされるとともに容積変化が許容された液室と、その液室内の作動液を弾性的に加圧する加圧機構とを含んで構成されており、
前記操作力依存加圧実現機構が、
前記反力付与機構を機能させないようにすべく、前記反力室を低圧源と連通させる反力室連通器と、
前記ピストン間室を密閉すべく、そのピストン間室と前記低圧源との連通を遮断するピストン間室遮断器と
を含んで構成された請求項1に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項11】
当該マスタシリンダ装置が、
前記操作部材が操作されていない状態において、前記ピストン間室の低圧源への連通を確保するピストン間室連通確保機構を備えた請求項10に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項12】
前記ピストン間室連通確保機構が、
前記加圧ピストン内部を経由して形成され、一端が前記ピストン間室の周壁面に開口してそのピストン間室と低圧源を連通させる外部連通路と、
前記入力ピストンの外周部に外嵌され、その入力ピストンの前記加圧ピストンに対する相対的前進によって、前記開口と前記ピストン間室との連通を遮断するシールと
を含んで構成された請求項11に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項13】
前記ピストン間室遮断器が、
前記ピストン間室と低圧源とを繋ぐ連通路に配設され、前記反力付与機構が有する前記加圧機構によって加圧された作動液の圧力がパイロット圧として導入されて、そのパイロット圧が設定圧以上である場合に開弁し、そのパイロット圧がその設定圧を下回った場合に閉弁する機械式開閉弁を含んで構成された請求項10ないし請求項12のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−16984(P2012−16984A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154500(P2010−154500)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】