レーザ測定装置
【課題】検出エリア内におけるレーザ光の実際の照射高さを容易に計測し得るレーザ測定装置を提供する。
【解決手段】レーザ測定装置100は、レーザレーダ装置1と検出用基準物体90とを備えている。検出用基準物体90の反射部は、所定の高さ方向における各位置が高さに応じた構造をなし、且つレーザ光L1が入射したときに、当該レーザ光L1が入射する高さに応じた内容の特定反射光を発するように構成されている。一方、レーザレーダ装置1は、回動反射機構40から照射されるレーザ光L1の走査エリア上に検出用基準物体90が配置されたときにこの検出用基準物体90からの特定反射光を検出している。そして、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを参照して特定反射光の状態に対応する高さ情報を求め、検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さを計測している。
【解決手段】レーザ測定装置100は、レーザレーダ装置1と検出用基準物体90とを備えている。検出用基準物体90の反射部は、所定の高さ方向における各位置が高さに応じた構造をなし、且つレーザ光L1が入射したときに、当該レーザ光L1が入射する高さに応じた内容の特定反射光を発するように構成されている。一方、レーザレーダ装置1は、回動反射機構40から照射されるレーザ光L1の走査エリア上に検出用基準物体90が配置されたときにこの検出用基準物体90からの特定反射光を検出している。そして、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを参照して特定反射光の状態に対応する高さ情報を求め、検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さを計測している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、検出対象空間にレーザ光を照射し、物体までの距離や方位を検出するレーザ測定装置が提供されている。この種のレーザ測定装置では、空間にレーザ光を投射すると共に、当該レーザ光が物体に照射されたときの反射光を検出しており、レーザ光の投射から反射光の受光までに要した時間に基づいて、その物体までの距離を算出している。なお、このようなレーザ測定装置に関する技術としては、例えば特許文献1のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2789741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記レーザ測定装置では、必ずしも検出対象領域が水平とは限らず、検出すべき物体(例えば人など)に対し検出対象領域で常に同じ高さにレーザを照射できるとは限らないので、検出すべき物体から反射して戻ってくるレーザが検出すべき物体のどの高さで反射して戻ってきているかを知る必要が発生する場合がある。また、それなりに遠くまでレーザにて監視する場合は、レーザ測定装置近傍ではなかなか気づき難いが、実はレーザ測定装置がやや上向きや下向きに設置されてしまっており、実は目標とする距離で目標とする地面高さでのレーザ検出が出来ていないといった事態が発生することも大いに考えられる。つまり、照射されるレーザが、検出エリア内において実際にどの程度の高さで走査されているかを把握すべき事を求められる場合がある。
【0005】
しかしながら、従来のレーザ測定装置は、検出エリア内の各位置において実際にどの程度の高さで走査されているかを把握することが難しいという問題を伴うものであった。例えば、検出エリア内の所望の位置に配置された対象物にレーザ光が照射されているか、或いは当該対象物のどの高さにレーザ光が照射されているかを肉眼で確認しようとしても、レーザ光は肉眼で把握しにくいという特徴があり、仮に確認できたとしても肉眼に頼った実測作業は多大な負荷を伴うため、このような方法は難しい。一方、検出エリア内の対象物を赤外線カメラ等で撮影し、レーザ光が対象物のどの位置に照射されているかを、その撮像画像の解析等によって確認することも考えられるが、この方法では、赤外線カメラの準備や撮像画像の解析作業などが必要となるため、作業コストの高騰や作業負荷の増大が避けられない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、検出エリア内におけるレーザ光の実際の照射高さを容易に計測し得るレーザ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生したときに、当該レーザ光が検出物体にて反射して生じる反射光を検出する光検出手段と、回動可能な偏向部を備え、回動する前記偏向部により前記レーザ光発生手段で発生した前記レーザ光を空間に向けて偏向させつつ走査する回動偏向手段と、前記空間側から戻る前記反射光を前記光検出手段に誘導する誘導手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生する毎に、前記偏向部の回動位置を検出する回動位置検出手段と、前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生する毎に、当該レーザ光の発生から当該レーザ光の前記反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの時間を計測する時間計測手段と、前記時間計測手段によって計測された時間に基づいて、前記レーザ光の到達位置までの距離を算出する距離算出手段と、前記距離算出手段によって算出された距離と、前記回動位置検出手段によって検出された前記偏向部の回動位置とに基づいて検出物体の位置を特定する位置特定手段と、を備えたレーザレーザ装置を有している。
また、前記レーザ光による走査を受けたときに特定反射光を反射する反射部を備えた検出用基準物体を有している。
そして、前記検出用基準物体の前記反射部は、所定の高さ方向における各位置が高さに応じた構造をなし、且つ前記レーザ光が入射したときに、当該レーザ光が入射する高さに応じた内容の前記特定反射光を発するように構成されている。
更に、前記レーザレーダ装置は、前記回動偏向手段から照射される前記レーザ光の走査エリア上に前記検出用基準物体が配置されたときに、前記光検出手段によって検出される前記反射光の波形から前記特定反射光を検出する特定反射光検出手段と、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを備え、前記特定反射光検出手段によって前記特定反射光が検出された場合に、前記対応データを参照して前記特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで前記検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さを計測する高さ計測手段と、を備えている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーザ測定装置において、更に、前記高さ計測手段によって計測される前記照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行う報知手段が設けられている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレーザ測定装置において、前記検出用基準物体は、前記反射部における前記高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ測定装置において、前記位置特定手段は、前記特定反射光検出手段によって前記特定反射光が検出されたときにその特定反射光の反射元となる前記検出用基準物体の位置を特定するように構成されている。更に、前記位置特定手段によって特定された前記検出用基準物体の位置を連結することによって境界線を形成し監視エリアに設定する監視エリア設定手段を備えている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ測定装置において、前記レーザレーダ装置による前記レーザ光の走査エリア内の複数の位置に前記検出用基準物体が配置されたときに、前記特定反射光検出手段が、各位置に配置された前記検出用基準物体からの前記特定反射光をそれぞれ検出するように構成されている。
また、前記時間検出手段は、前記特定反射光検出手段によって各位置の前記検出用基準物体からの前記特定反射光が検出されたとき、各検出用基準物体に入射する前記レーザ光が前記レーザ光発生手段にて発生してから、当該レーザ光に応じた前記各検出用基準物体からの前記特定反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの各時間をそれぞれ検出している。
また、前記距離算出手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されたとき、前記時間検出手段によって検出される前記各時間に基づいて前記各検出用基準物体までの各距離を算出しており、前記回動位置検出手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されるときの前記偏向部の各回動位置を検出している。
また、前記位置特定手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されるときの前記距離算出手段によって算出された前記各距離と、前記回動位置検出手段によって検出された前記偏向部の前記各回動位置とに基づいて前記各検出用基準物体の位置を特定している。
更に、前記高さ計測手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出される場合、それら検出された前記特定反射光の状態に基づいて前記各検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さをそれぞれ計測している。
更には、前記位置特定手段によって特定された前記各検出用基準物体の各位置と、前記高さ計測手段によって計測された前記各検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さとに基づいて、前記レーザ光の走査エリア内の各位置での前記レーザ光の照射高さを特定する三次元マップを生成する三次元マップ生成手段が設けられている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載のレーザ測定装置において、更に、レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと前記監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報を記憶する対応情報記憶手段と、前記三次元マップ生成手段によって生成された前記三次元マップと、前記対応情報記憶手段に記憶される前記対応情報と、を参照すると共に、前記三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、前記対応情報により各照射高さと対応付けられている前記監視物体の検出条件を導くことにより、前記レーザ光の走査エリア内における各位置での前記監視物体の検出条件を設定する検出条件設定手段と、前記レーザ光の走査エリア内において前記位置特定手段によって前記検出物体の位置が特定されたときに、その特定された物体位置と、前記検出条件設定手段によって設定される当該物体位置での前記検出条件とに基づいて、その検出物体が前記監視物体であるか否かを判定する監視物体判定手段と、が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、検出用基準物体の反射部は、所定の高さ方向における各位置が高さに応じた構造をなし、且つレーザ光が入射したときに、当該レーザ光が入射する高さに応じた内容の特定反射光を発するように構成されている。従って、レーザ光の高さを検出すべき所望の位置に検出用基準物体を配置すれば、その位置においてレーザ光の照射高さを適切に反映した内容の特定反射光を発生させることができる。
一方、レーザレーダ装置には、光検出手段によって検出される反射光の波形から特定反射光を検出する特定反射光検出手段が設けられ、更に、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを備えると共に、特定反射光が検出された場合に、対応データを参照して特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで検出用基準物体におけるレーザ光の照射高さを計測する高さ計測手段が設けられている。従って、レーザレーダ装置では、所望の位置に配置された検出用基準物体で発生した特定反射光をより確実に検出することができ、且つ、対応データ(反射光の状態と高さ情報とを対応付けたデータ)に基づいて特定反射光が検出用基準物体のどの高さで生じたものであるかを正確に判断できる。
特に、検出エリア内の所望の位置のレーザ光照射高さを検出する上で、高価な外部装置(赤外線カメラ等)を用いる必要がなく、複雑な画像解析等も必要がないため、検出エリア内におけるレーザ光の実際の照射高さをより簡単に検出することができ、作業性の面で極めて有利となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、高さ計測手段によって計測される照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行うことができる。従って、所望の位置に配置される検出用基準物体に照射されるレーザ光が予め定められた基準範囲にあるか否かを作業者等が容易に且つ迅速に把握し易くなり、特定位置におけるレーザ光の照射高さに基づいて装置本体の初期設定やメンテナンス等を行う場合(例えば、特定位置におけるレーザ光の照射高さに基づいて装置本体に傾きが生じていないかを判断し調整する場合や、レーザ光が監視エリア内の特定位置において望ましい高さを通っているか否かを判断し調整する場合等)などにおいて極めて有利となる。
【0015】
請求項3の発明では、検出用基準物体の反射部における高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されている。この構成によれば、検出用基準物体の形状や表面状態を複雑化することなくレーザ光の照射高さに応じて状態が変化するように特定反射光を発生させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、所望の位置に配置された検出用基準物体に実際にレーザ光を照射し、その位置をレーザレーダ装置側で実際に認識しながら監視エリアを設定することができるため、実際のレーザ走査状態に合わせて監視エリアを設定しやすくなる。特に、監視エリア設定手段は、位置特定手段によって特定された検出用基準物体の位置を連結することによって境界線を形成し監視エリアに設定しているため、ユーザは、このように境界線が形成されることを予め想定した上で、実環境において境界としたい複数位置に検出用基準物体を配置すればよく、これにより、実環境におけるユーザの希望境界位置と、レーザレーダ装置内で設定される境界線とのずれをより小さくすることができる。
【0017】
請求項5の発明では、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体からの各特定反射光が検出されるときの距離算出手段によって算出された各距離と、回動位置検出手段によって検出された偏向部の各回動位置とに基づき、位置特定手段が各検出用基準物体の位置を特定している。そして、高さ計測手段は、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体からの各特定反射光が検出される場合、それら検出された特定反射光の状態に基づいて各検出用基準物体におけるレーザ光の照射高さをそれぞれ計測している。
この構成では、実環境における所望の複数位置に検出用基準物体を配置するといった簡易な作業によって、それら検出用基準物体の位置、即ち実環境におけるユーザの任意の指定位置をレーザレーダ装置に確実に認識させることができ、且つ、レーザレーダ装置側では、それら各指定位置において設置面からどの程度の高さでレーザ光が照射されているかを実データに基づいて正確に把握できるようになる。
そして、このように実環境で指定された指定位置と当該指定位置におけるレーザ光の照射高さとをレーザレーダ装置側で正確且つ容易に把握することができるため、ユーザの希望位置の三次元マップを作業性良く且つ実データを反映して精度高く生成することができる。特に、三次元マップに組み込むべき位置の指定を、検出用基準物体を配置するといった簡単な作業で行うことができるため、三次元マップに新たな位置のデータを追加しやすく、より多くの位置の高さデータを含めるように充実した三次元マップを生成し易くなる。
【0018】
請求項6の発明では、レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報が記憶されており、走査エリア内における各位置でどのような検出条件とするかは、三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、各照射高さと対応付けられている検出条件を対応情報によって導くことにより決定される。
そして、実際の検出時(監視時)には、レーザ光の走査エリア内において検出物体の位置が特定されたときに、三次元マップによりその特定された物体位置での照射高さを特定することができ、その特定された照射高さと対応付けられた検出条件を上記対応情報に基づいて導いて判定に適用することができる。この構成では、異なる複数の判定基準をレーザ光の照射高さに応じて使い分けることができ、高さ毎に望ましい基準を用いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ測定装置を概略的に説明する説明図である。
【図2】図2は、図1のレーザ測定装置で用いるレーザレーダ装置の全体構成を概略的に例示する断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態のレーザ測定装置に用いる検出用基準物体を概略的に例示する斜視図である。
【図4】図4は、第1実施形態のレーザ測定装置に用いる検出用基準物体を概略的に例示する平面図である。
【図5】図5は、第1実施形態のレーザ測定装置に用いる検出用基準物体を概略的に例示する側面図である。
【図6】図6(A)は、検出用基準物体の高位置を走査した時の受光波形を例示するグラフであり、図6(B)は、検出用基準物体の低位置を走査した時の受光波形を例示するグラフである。
【図7】図7(A)は、水平方向に沿ってレーザ光が走査されるようにレーザレーダ装置が設置されているときの走査状態を説明する説明図であり、図7(B)は、レーザ光の走査方向が水平方向に対して傾くように設置されたときの走査状態を説明する説明図である。
【図8】図8は、直径Dの算出の考え方を説明する説明図である。
【図9】図9は、監視エリア設定処理の流れを例示するフローチャートである。
【図10】図10は、監視エリアの設定方法を概念的に説明する説明図である。
【図11】図11は、第2実施形態に係るレーザ測定装置で行われる基準物体検出処理の流れを例示するフローチャートである。
【図12】図12は、第2実施形態に係るレーザ測定装置における監視エリアの設定方法を概念的に説明する説明図である。
【図13】図13は、図12に続く説明図である。
【図14】図14は、設定され検出エリアを説明する説明図である。
【図15】図15(A)は、検出用基準物体の別例1を概略的に例示する説明図であり、図15(B)は、検出用基準物体の別例2を概略的に例示する説明図である。
【図16】図16は、第3実施形態に係るレーザ測定装置で行われる設定処理の流れを例示するフローチャートである。
【図17】図17は、第3実施形態のレーザ測定装置で行われる監視エリアの設定方法について説明する説明図である。
【図18】図18は、ある物体検出位置での照射高さを、既知の実測データに基づいて算出する方法の一例を説明する説明図である。
【図19】図19は、図17の検出エリアについての三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図である。
【図20】図20(A)は、図17とは異なる検出エリアが設定されるときの三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図であり、図20(B)は、図20(A)とは異なる三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図である。
【図21】図21(A)は、三次元マップのデータ構成例を概念的に説明する説明図であり、図21(B)は、図21(A)とは異なるデータ構成例を概念的に説明する説明図である。
【図22】図22は、第3実施形態のレーザ測定装置で行われる物体検出処理の流れを例示するフローチャートである。
【図23】照射高さと監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報を概念的に説明する説明図である。
【図24】図24(A)は、人が検出エリア内に入ったときの高さ毎の検出結果を概念的に説明する説明図であり、図24(B)は、小動物(猫等)が検出エリア内に入ったときの高さ毎の検出結果を概念的に説明する説明図である。
【図25】図25は、人と小動物を区別する方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明のレーザ測定装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(レーザ測定装置の概要)
まず、図1を参照して第1実施形態に係るレーザ測定装置100の概要について説明する。
第1実施形態に係るレーザ測定装置100は、レーザレーダ装置1と1又は複数の検出用基準物体90とによって構成されている。レーザレーダ装置1は、図1のように監視すべきエリア付近(図1では、住宅Hの入口付近)に設置されるものであり、図1のように監視対象となる検出エリア内においてレーザ光L1を走査するように構成されている。一方、検出用基準物体90は、図1のようにレーザレーダ装置1の検出エリアの所望の位置に配置してレーザレーダ装置1に検出させるためのものである。
【0021】
(レーザレーザ装置の構成)
次に、図2等を参照してレーザレーダ装置1について説明する。
図2は、第1実施形態に係るレーザ測定装置100で用いるレーザレーダ装置1の全体構成を概略的に例示する断面図である。この図2では、レーザレーダ装置1を凹面鏡41の回転中心軸42aに沿った所定切断面(中心軸42a及びフォトダイオード20の受光位置を通る切断面)で切断した構成を概略的に示している。なお、以下の説明では、透過板の断面については白抜きで示すこととする。
【0022】
図2に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光L2を受光するフォトダイオード20とを備え、装置外の走査エリアに存在する検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。
【0023】
レーザダイオード10は、「レーザ光発生手段」の一例に相当するものであり、制御回路70の制御により、図示しない駆動回路からパルス電流を受け、このパルス電流に応じたパルスレーザ光(レーザ光L1)を間欠的に出射している。なお、本実施形態では、レーザダイオード10から検出物体(図示略)に至るまでのレーザ光を符号L1にて概念的に示し、検出物体からフォトダイオード20に至るまでの反射光を符号L2にて概念的に示している。
【0024】
フォトダイオード20は、「光検出手段」の一例に相当するものであり、例えばアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)などによって構成されている。このフォトダイオード20は、レーザダイオード10からレーザ光L1が発生し、そのレーザ光L1が装置外に存在する検出物体(図示略)にて反射したとき、その反射光L2を受光して電気信号に変換している。なお、検出物体からの反射光については上下方向所定領域内のものが凹面鏡41に受けられる構成となっており、図2では、符号L2a,L2bで示す2つのライン付近を境界としてこのラインL2a,L2b間の領域の反射光L2が凹面鏡41によって反射されるようになっている。
【0025】
レーザダイオード10から出射されるレーザ光L1の光軸上にはレンズ60が設けられている。このレンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード10で発生して拡散しようとするレーザ光L1を集光し略平行光に変換している。
【0026】
レンズ60を通過したレーザ光L1の光路付近には、ミラー30が設けられている。このミラー30は、レーザ光L1の光軸に対し所定角度(例えば45°)で傾斜してなる反射面31と、反射面31と交差する方向の貫通路32とを備えており、レーザダイオード10からのレーザ光L1を貫通路32を介して通過させる一方、装置外の検出物体からの反射光L2(より詳しくは凹面鏡41にて反射された反射光)をフォトダイオード20に向けて反射させている。
【0027】
なお、本実施形態では、ミラー30及び回動反射機構40が「誘導手段」の一例に相当し、空間側から戻る反射光L2をフォトダイオード20(光検出手段)に誘導するように機能する。
【0028】
また、ミラー30を通過するレーザ光L1の光軸上には、回動反射機構40が設けられている。回動反射機構40は、「回動偏向手段」の一例に相当するものであり、回動可能に構成された凹面鏡41と、この凹面鏡41に連結された軸部42と、この軸部42を回動可能に支持する図示しない軸受とを備えている。そして、凹面鏡41によりレーザダイオード10からのレーザ光L1を空間に向けて反射させ、且つ、この凹面鏡41により装置外の検出物体からの反射光L2をフォトダイオード20に向けて偏向するように機能している。
【0029】
凹面鏡41は、「偏向部」の一例に相当するものであり、ミラー30を通過したレーザ光L1の光軸上に配置される凹状の反射面41aを備えている。凹面鏡41の反射面41aは、例えば放物面として構成されており、水平方向に沿って平行に入射する所定領域(L2aとL2bの間の領域)の反射光L2を上方に向けて反射させつつ集光し、集光される反射光L2の焦点位置が中心軸42a上になるように形状が調整されている。
【0030】
また、凹面鏡41は、上下方向に延びる中心軸42aを中心として回転可能に配設されている。凹面鏡41の回転中心となる中心軸42aの方向は、ミラー30を通過して当該凹面鏡41に入射するレーザ光L1の方向と略一致しており、レーザ光L1が凹面鏡41に入射する入射位置P1が中心軸42a上の位置とされている。
【0031】
また、本実施形態では、凹面鏡41の反射面41aにおいて位置P1付近の部分が、垂直方向(反射面41aに入射するレーザ光L1の方向)に対して略45°の角度で傾斜しており、凹面鏡41の反射面41aで反射したレーザ光L1が水平方向に照射されるようになっている。また、凹面鏡41は入射するレーザ光L1の方向と一致した方向の中心軸42aを中心として回転するため、凹面鏡41の回転位置に関係なくレーザ光L1の入射角度が常に約45°で維持され、位置P1からのレーザ光L1の向きは絶えず水平方向(中心軸42aと直交する方向)となるように構成されている。なお、本実施形態では、中心軸42aの方向を垂直方向(上下方向、縦方向)としており、中心軸42aと直交する平面方向を水平方向としている。
【0032】
さらに、レーザレーダ装置1には、回動反射機構40を駆動するモータ50が設けられている。このモータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、軸部42を回転させることで、軸部42と連結された凹面鏡41を回転駆動している。なお、モータ50の具体的構成としては、例えば直流モータ、交流モータ、ステップモータなど様々なモータを使用できる。
【0033】
また、本実施形態では、図2に示すように、モータ50の軸部42の回転角度位置(即ち凹面鏡41の回転角度位置)を検出する回転角度センサ52が設けられている。回転角度センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸部42の回転角度位置を検出しうるものであれば公知の様々なセンサを使用できる。なお、本実施形態では、回転角度センサ52が「回動位置検出手段」の一例に相当し、少なくともレーザダイオード10にてパルスレーザ光L1が発生する毎に、凹面鏡41の回動位置を検出するように機能する。
【0034】
また、本実施形態に係るレーザレーダ装置1では、レーザダイオード10、フォトダイオード20、ミラー30、レンズ60、回動反射機構40、モータ50等がケース3の内部に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。このケース3は、主ケース部4と透過板5とを備えており、全体として箱状に構成されている。主ケース部4は、上壁部4a及び下壁部4bが上下に対向して配置され、周壁部4cが上方側の外周壁として構成されており、周壁部4cと下壁部4bの間が窓部4eとして導光可能に開放されている。窓部4eは、主ケース部4において光の出入りを可能とするように開放した部分であり、ケース3の下方側且つ凹面鏡41の周囲において周方向所定領域に亘って形成され、且つ上下方向所定領域を開放する構成で設けられている。そして、この開放形態の窓部4eを閉塞するように透明の樹脂板、ガラス板などからなる透過板5が配置されている。
【0035】
このように構成されるレーザレーダ装置1では、凹面鏡41の回転角度θ(所定の基準回転位置(例えば、ロータリエンコーダが原点を示す位置)からの回転角度)が定まれば装置からのレーザ光L1の投射方向が特定される。従って、レーザレーダ装置1が所望の傾斜状態(例えば、レーザ光L1の走査方向が常に鉛直方向と直交する方向となるような状態等)で設置されていれば、フォトダイオード20が検出物体からの反射光L2を受光したときの凹面鏡41の回転角度を回転角度センサ52によって検出することで、検出物体の方位を正確に検出できる。
【0036】
また、レーザダイオード10にてレーザ光L1(パルスレーザ光)が発生してからフォトダイオード20によって当該レーザ光L1に対応する反射光L2が検出されるまでの時間Tを検出すれば、この時間Tと光速とに基づいて、レーザ光L1の発生から反射光L2受光までの光経路の長さを算出することができ、レーザレーダ装置1の所定基準位置(例えば位置P1)から検出物体までの距離Lも正確に求めることができる。つまり、レーザレーダ装置1から検出物体までの距離及び方位をいずれも正確に検出することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、制御回路70が「時間計測手段」の一例に相当しており、レーザダイオード10にてパルスレーザ光L1が発生する毎に、当該レーザ光Lの発生から当該レーザ光の反射光L2がフォトダイオード20によって検出されるまでの時間を計測している。また、制御回路70は、「距離算出手段」の一例に相当し、時間計測手段によって計測された時間に基づいて、レーザ光Lの到達位置までの距離を算出するように機能する。更に、制御回路70は、「位置特定手段」の一例に相当し、距離算出手段によって算出された距離と、回動位置検出手段によって検出された凹面鏡41の回動位置とに基づいて検出物体の位置(具体的には、基準物体の方位と基準物体までの距離)を特定するように機能する。
【0038】
(検出用基準物体の構成)
次に、検出用基準物体について説明する。
図3は、第1実施形態のレーザ測定装置に用いる検出用基準物体を概略的に例示する斜視図である。図4は、その検出用基準物体の平面図であり、図5は、その検出用基準物体の側面図である。図6(A)は、検出用基準物体の高位置を走査した時の受光波形を例示するグラフであり、図6(B)は、検出用基準物体の低位置を走査した時の受光波形を例示するグラフである。 図7(A)は、水平方向に沿ってレーザ光が走査されるようにレーザレーダ装置が設置されているときの走査状態を説明する説明図であり、図7(B)は、レーザ光の走査方向が水平方向に対して傾くように設置されたときの走査状態を説明する説明図である。
【0039】
図3〜図5に示すように、検出用基準物体90は、円錐状に構成されており外周部90aが「特定反射光」を反射する反射部として構成されている。この検出用基準物体90は、レーザ光L1の照射対象部分となる外周部90aにおいて、細長の明色領域Pwと細長の暗色領域Pbとが周方向に交互に配された特定図形が付されている。各明色領域Pw及び各暗色領域Pbは、いずれも同形状となっており、いずれも下方側の幅が大きく上方側につれて次第に幅が小さくなる三角形状に構成されている。明色領域Pwは、例えば白色等の領域として構成され、暗色領域Pbは、例えば黒色等の領域として構成されており、暗色領域Pbの反射率よりも明色領域Pwの反射率の方が大きくなるように構成されている。
【0040】
また、検出用基準物体90は、外周部90a(反射部)おける高さ方向(頂点91から底面92に下ろした垂線と平行な方向:図5も参照)の各位置が、高さに応じた幅(高さ方向と直交する断面の直径D)で構成されている。具体的には、外周部90aの各高さの直径D、即ち各高さにおける高さ方向と直交する切断面の径は、高さが高くなるにつれて小さくなるように構成されている。
【0041】
このように構成される外周部90aは、レーザ光L1による走査を受けたときに特定反射光を反射する構成をなしている。具体的には、検出用基準物体90の外周部90a(反射部)における高さ方向の各位置が高さに応じた構造をなしているため、この外周部90aにレーザ光L1が入射したときには、当該レーザ光L1が入射する高さに応じた内容の特定反射光を発するようになっている。
【0042】
この検出用基準物体90は、例えばレーザ光L1の走査方向と検出用基準物体90の高さ方向とが交差する関係(具体的にはほぼ直交する関係)となるように配置されるものである。例えば、図1等のように水平方向に沿ってレーザ光L1が移動するように走査されることが想定されたレーザレーダ装置1によって検出する場合、レーザレーダ装置1からのレーザ光L1の走査経路上(即ち、凹面鏡41の回転に応じて横方向に移動するレーザ光L1の移動経路上)の所望の位置において、高さ方向が鉛直方向に近くなるように(例えば、底面92が水平面上に接するように)検出用基準物体90を立てて配置する。
【0043】
そして、このような配置でレーザレーダ装置1によって検出を行う場合、検出用基準物体90の外周部90aにレーザ光L1が照射されるときには、検出用基準物体90の高さ方向に対してほぼ直交する方向にレーザ光L1が横切るため、暗色領域Pbからの反射光と明色領域Pwからの反射光が交互に発生する。例えば、図4の例では、凹面鏡41から照射されるレーザ光L1をタイミング毎にレーザ光L11、L12、L13、L14、L15と示しており、検出用基準物体90に最初に到達したレーザ光L11は暗色領域Pbに入射するため、このレーザ光L11の受光タイミングでは暗色領域Pbからの反射光(相対的に光量が小さい反射光)がフォトダイオード20に受光されることとなる。その後、レーザ光L11の後に発生するレーザ光L12は、明色領域Pwに入射するため、このレーザ光L12の受光タイミングでは明色領域Pwからの反射光(相対的に光量が大きい反射光)がフォトダイオード20に受光されることとなる。更にその後、レーザ光L12の後に発生するレーザ光L13は暗色領域Pbに入射するため、このレーザ光L13の受光タイミングでは暗色領域Pbからの反射光(相対的に光量が小さい反射光)がフォトダイオード20に受光されることとなる。同様に、レーザ光L14のタイミングで、明色領域Pwからの反射光(相対的に光量が大きい反射光)が受光され、レーザ光L15のタイミングで、暗色領域Pbからの反射光(相対的に光量が小さい反射光)が受光され、レーザ光L16のタイミングで、明色領域Pwからの反射光(相対的に光量が大きい反射光)が受光される。このような特定反射光の発生により、図6のように、暗、明、暗、明、暗、明が交互に現れる受光波形が得られるようになっている。
【0044】
図6では、図3〜図5の検出用基準物体90をレーザ光L1の走査経路上に配置(より詳しくは、水平方向に沿って移動するレーザ光L1に対し、検出用基準物体90の高さ方向が鉛直方向となるように配置)して検出を行ったときの受光信号の出力(受光量)と、凹面鏡41の角度との関係を示している。この図6では、フォトダイオード20を所定感度に定めたときの例を示しており、凹面鏡41がある角度範囲(図4の符号L12のようにレーザ光L1が明色領域Pwに入射し得る角度範囲)となったときに、受光信号の出力が第1閾値V1以上となっている。また、符号L13のように、レーザ光L1が暗色領域Pbに入射し得る角度範囲となったときには、受光信号の出力が、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上となり、更にその後、凹面鏡41が変位して符号L14のようにレーザ光L1が明色領域Pwに入射し得る角度範囲となったときには、受光信号の出力が再び第1閾値V1以上となっている。このように、検出用基準物体90をレーザ光L1の走査経路上に配置してレーザレーダ装置1にて物体検出を行ったときに、フォトダイオード20において、第1閾値V1以上の出力(明色領域Pwからの反射光量に相当する出力)と、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の出力(暗色領域Pbからの反射光量に相当する出力)とが交互に繰り返されるようになっており、検出用基準物体90を用いる場合にはこのような交互の出力を発生させる反射光を「特定反射光」として扱う。
【0045】
なお、本実施形態では制御回路70が「特定反射光検出手段」の一例に相当し、回動反射機構40から照射されるレーザ光L1の走査エリア上に検出用基準物体90が配置されたときに、フォトダイオード20(光検出手段)によって検出される反射光L2の波形から特定反射光を検出するように機能しており、例えば、第1閾値V1以上の受光出力と第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の受光出力が所定角度範囲内で所定回数繰り返された場合に「特定反射光」の受光があったと判断している。
【0046】
(高さ計測)
次に、検出用基準物体90を用いた高さ計測について説明する。
レーザレーダ装置1では、図6のような特定反射光を検出した場合、この特定反射光が生じている角度幅θa(角度範囲)を検出する。本実施形態では、上記のように、第1閾値V1以上の出力(明色領域Pwからの反射光量に相当する出力)と、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の出力(暗色領域Pbからの反射光量に相当する出力)とが交互に繰り返された角度範囲において、第2閾値V2以上の角度幅を「特定反射光」が生じている角度幅(角度範囲)θaとしている。この角度幅θaは、検出用基準物体90の走査位置(レーザ光L1が照射される位置)において一端部(レーザ光L1の最初の入射位置)から他端部(レーザ光L1の最後の入射位置)に至るまでの凹面鏡41の角度を示すものである。例えば、図7(B)のようにレーザ光L1が検出用基準物体90の上方位置を横切る場合には、図6(A)のように、角度幅θaが相対的に小さくなり、逆に、図7(A)のようにレーザ光L1が検出用基準物体90の高さ方向中央位置を横切る場合には、図6(B)のように、角度幅θaは図6(A)の場合に比べて相対的に大きくなる。
【0047】
そして、このように得られた角度幅θaと検出用基準物体90までの距離Lに基づいて、レーザ光L1の照射位置での検出用基準物体90の直径Dを算出する。例えば、レーザレーダ装置1から図5のような走査ラインF1で走査がなされ、上記のように角度幅θaが得られた場合、この走査ラインF1が通る一端部P11から他端部P12までの径(直径D)を以下の第1式で求めることができる。なお、この第1式は、図8のような考えで導き出されるものである。また、この第1式で用いられる距離Lは上述の検出物体までの距離計測方向によって算出することができ、具体的には、角度幅θaの中央の角度(又は中央の角度に最も近い角度)での検出物体までの距離を用いる。
D=2L・sin(θa/2)/(1−sin(θa/2))
【0048】
また、本実施形態では、例えば以下の第2式で高さを求めることができる。
H=Ha(1−D/Da)
なお、Haは、円錐状の検出用基準物体90の底面92から頂点91までの高さである。また、Daは、底面92(最下部)の直径である。
【0049】
なお、上記第1式及び第2式(具体的には、第1式及び第2式に基づいて高さHを算出するプログラム)は、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データに相当する。また、本実施形態では、制御回路70が「高さ計測手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって特定反射光が検出された場合に、上記対応データを参照して特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さを計測するように機能する。
【0050】
(傾き検出)
次に、上記のような高さ計測を、レーザレーダ装置1の傾きの検出に用いる場合について説明する。
レーザレーダ装置1での傾きの検出は、例えば初期設定等の所定モードのときに行われる。レーザレーダ装置1の傾き検出を行う場合、まず、検出用基準物体90を走査エリア内の規定の位置に配置し、その上で、レーザレーダ装置1を動作させ、検出用基準物体90におけるレーザ光L1の照射高さの計測を行う。照射高さの計測方法は上述した通りであり、これにより、上述の高さHが算出される。
【0051】
なお、レーザ光L1が水平走査されるとき(即ち、レーザレーダ装置1が傾斜していないとき)に規定位置の検出用基準物体90に照射される高さ(基準高さ)Hbは予め定めておくことができ、上記算出によって得られた高さHと基準高さHbの差が小さい場合(例えば図7(A)のような場合)には傾きが小さいことになり、高さHと基準高さHbの差が大きい場合(例えば図7(B)のような場合)には傾きが大きいことになる。
【0052】
また、このような高さ計測を行う場合、計測された高さが予め設定された範囲(基準範囲)を超えた場合に、ブザーやランプ或いは表示器などによってその旨を報知するようにしてもよい。例えば、高さHと基準高さHbの差が規定された閾値を超える場合に上記のように報知することでユーザはレーザレーダ装置1が傾いて設置されていることを容易に且つ迅速に把握することができる。
なお、この場合、制御回路70及び報知のための装置(ブザー、ランプ、表示器等)が「報知手段」の一例に相当し、高さ計測手段によって計測される照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行うように機能する。
【0053】
(監視エリアの設定)
次に、本実施形態に係るレーザ測定装置100で行われる監視エリアの設定処理について説明する。
図9は、レーザレーダ装置1で行われる設定処理の流れを例示するフローチャートである。なお、本実施形態では、図9の処理を行う制御回路70が「監視エリア設定手段」の一例に相当し、位置特定手段によって特定された検出用基準物体90の位置に基づいて監視エリアを設定するように機能する。
【0054】
図9の設定処理は、例えば図示しない操作部に対して所定操作がなされたときに制御回路70によって開始される処理である。なお、この操作部は、例えばケース3の外部においてキーやスイッチなどで構成されていてもよく、ケース3の内部に設けられていてもよい。或いは、レーザレーダ装置1とは別装置として設けられていてもよい。
【0055】
図9の設定処理が開始されると、まず検出用基準物体90を検出する検出処理が行われる(S1)。この基準物体の検出処理では、通常の物体検出処理と同様にレーザ光L1を空間に投射し、このレーザ光L1の走査経路上に存在する検出用基準物体90を検出している。具体的には、例えば、レーザ光L1の走査を所定回動範囲(例えば360°)に亘って行い、各パルスレーザ光の投射に応じて返される各反射光を受光すると共に、上述の「特定反射光」が受光されたか否かを確認する。
【0056】
検出用基準物体90として、例えば図3〜図5のような検出用基準物体90を用いる場合、第1閾値V1以上の出力と、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の出力とが交互に繰り返されるような一連の反射光が受光されたか否かを確認する。
【0057】
また、S1の検出処理では、凹面鏡41を所定の角度範囲(例えば360°)回動させて検出用基準物体90の検出を行っており、図10のように走査経路上に複数の検出用基準物体90が存在する場合には、これら複数の検出用基準物体90が検出されることとなる。
【0058】
図9に示すように、S1の検出処理の後には、S2の距離算出処理が行われる。この距離算出処理では、S1で検出された各検出用基準物体90についての、レーザレーダ装置1からの各距離X1〜X4が算出される(図10参照)。具体的には、S1で各検出用基準物体90を検出する際に、各検出用基準物体90に投射される各レーザ光L1の発生から、当該各レーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの各時間を検出しており、この検出された各時間と、既知の光速とに基づいてレーザレーダ装置1から各検出用基準物体90までの各距離X1〜X4を算出している。なお、各検出用基準物体90までの各距離X1〜X4は、例えば図8の距離L(角度幅θaの中間位置での距離)のように求めることができる。
【0059】
図9に示すように、S2の距離算出処理の後には、S3の位置特定処理が行われる。この処理は、S2で算出された各距離X1〜X4(図10)に基づいて、各検出用基準物体90の位置を特定する処理である。
【0060】
具体的には、S1で各検出用基準物体90を検出する際に、上記各検出時間(各検出用基準物体90に投射される各レーザ光L1の発生から、当該各レーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの各時間)と共に、各検出用基準物体90に入射する各レーザ光L1がレーザダイオード10から出射されるときの凹面鏡41の各回動位置を検出しており、S3では、これら各回動位置と、S2で算出された各距離X1〜X4とに基づいて、各検出用基準物体90の各位置を検出している。
【0061】
例えば、図10の位置A1にある検出用基準物体90(レーザレーダ装置1からX1離れた距離にある基準物体)からの特定反射光が検出されるときに、上記検出時間(A1にある検出用基準物体90に入射するあるパルスレーザ光L1の発生から、当該パルスレーザ光L1が受光されるまでの時間)と共に、当該検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1が出射されるときの凹面鏡41の「回動位置」をも検出しており、S3の処理では、この「回動位置」によって、位置A1にある検出用基準物体90の方向を特定している。そして、この特定される方向と、S2で求められた距離X1とによって、位置A1にある検出用基準物体90についての、レーザレーダ装置1を基準とする具体的座標を特定している。
【0062】
なお、図10では、一例として、所定の基準方向Fにレーザ光L1が投射されるときを凹面鏡41の基準回動位置(角度0°)とし、「特定反射光が検出されるときの凹面鏡41の回動位置」として、この基準回動位置からどの程度回転したかを示す回転角度θを求めている。従って、例えば、位置A1にある検出用基準物体90にレーザ光L1が投射されるときの回動位置は、基準回動位置から当該回動位置までの回転角度θ1によって表すことができ、位置A1の検出用基準物体90の座標は、このθ1と距離X1とによって特定できる。
【0063】
上記説明では、位置A1にある検出用基準物体90の具体的座標を特定する方法を説明したが、他の位置A2〜A4にある検出用基準物体90についても同様の方法で具体的座標を特定できる。
【0064】
図9に示すように、S3の処理の後には、各検出用基準物体90での照射高さが基準高さを満たしているか否かを判断する(S4)。具体的には、上述の高さ計測方法によって各検出用基準物体90での照射高さHを計測し、この照射高さHが予め定められた許容範囲に収まっているかを判断する。そして、収まっていない場合にはS4にてNoに進み、エラーの旨をブザー、ランプ、表示部などによって報知する(S7)。なお、このとき、照射高さHが許容範囲に収まっていない検出用基準物体90を特定する情報を表示するとなお良い。
【0065】
一方、いずれの検出用基準物体90の照射高さHも予め定められた許容範囲に収まっている場合には、S4にてYesに進み、S5の検出エリア設定処理を行う。この検出エリア設定処理は、S3の処理で特定された各検出用基準物体90の各位置Pa、Pb、Pc、Pd(図10)のいずれか又は全てを境界位置とするように検出エリアを設定する。例えば、S3の処理で特定された各検出用基準物体90の各位置Pa〜Pdを環状に結ぶことで、多角形状の検出エリアを設定することができる。
【0066】
次に、検出モードでの物体検出について説明する。
本実施形態では、操作部に対して所定操作がなされたときに、図9のような設定処理が開始され、設定モード(設定処理を行うモード)に移行するようになっている。一方、この設定処理が終わると、自動的に、或いは操作部に対する操作に応じて実際の検出処理を行い得るモード(検出モード)に移行するようになっている。
【0067】
検出モードでは、図1のように、レーザレーダ装置1を設定処理のときと同じ位置に配置し、その状態で、レーザダイオード10からパルスレーザ光L1を順次出射し、且つ凹面鏡41を順次回動してレーザ光L1の走査を行う。パルスレーザ光L1の出射タイミングや凹面鏡41の回動タイミングは様々に設定できるが、例えば、パルスレーザ光毎に凹面鏡41を少しずつ回動させることで、凹面鏡41からの各パルスレーザ光L1の投射方向を水平方向に順次変化させることができる。
【0068】
このようなレーザ光走査において、走査エリア上に検出物体が存在するときには、凹面鏡41から投射されたパルスレーザ光L1が当該検出物体にて反射し、この反射光の一部が再び凹面鏡41に入射する。そして、凹面鏡41にて反射した後、集光レンズ62によって集光され、フォトダイオード20に入射することとなる。従って、検出モードでは、フォトダイオード20がこのような反射光を受光したか否か(より詳しくは、フォトダイオード20からの出力が閾値を超えたか否か)を、凹面鏡41の各回動位置毎に確認し、各回動位置に対応する方向に検出物体が存在するか否かを確認している。
【0069】
また、各回動位置において、物体からの反射光L2が受光された場合、この反射光L2の元となるパルスレーザ光L1が発生してから、当該パルスレーザ光L1の反射光L2がフォトダイオード20によって受光されるまでの時間Tを検出する。そして、既知の光速Cを考慮し、レーザダイオード10から当該物体までの光路及び当該物体からフォトダイオード20までの光路を加算した光路長L、或いは、当該物体までの距離X(例えば光路長Lの1/2)を求める。更に、そのときの凹面鏡41の回動位置(即ち、反射光L2の元となるパルスレーザ光L1が投射されるときの回動位置)と、当該物体までの上記距離Xとに基づいて、当該物体の座標を特定する。そして、この座標が上述の設定処理(図9)で設定された検出エリアの範囲内にあるか否かを判断し、検出エリア内にあれば、検出エリア内において物体検出がなされたものとして所定の出力処理を行う。なお、所定の出力処理としては、物体検出がなされた旨の報知や、検出された物体の位置データの出力などが挙げられる。一方、得られた座標が検出エリア外の座標であれば、当該物体については、検出されたものとして扱わずに無視する。
【0070】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態に係るレーザ測定装置100では、検出用基準物体90の外周部90a(反射部)において所定の高さ方向の各位置が高さに応じた構造をなし、且つレーザ光L1が入射したときに、当該レーザ光L1が入射する高さに応じた内容の特定反射光を発するように構成されている。従って、レーザ光L1の高さを検出すべき所望の位置に検出用基準物体90を配置すれば、その位置においてレーザ光L1の照射高さを適切に反映した内容の特定反射光を発生させることができる。
【0071】
一方、レーザレーダ装置1には、フォトダイオード20(光検出手段)によって検出される反射光の波形から特定反射光を検出する特定反射光検出手段が設けられている。また、レーザレーダ装置1は、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを備えており、更に、特定反射光が検出された場合に、対応データを参照して特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで検出用基準物体90におけるレーザ光L1の照射高さを計測する高さ計測手段が設けられている。従って、レーザレーダ装置1では、所望の位置に配置された検出用基準物体90で発生した特定反射光をより確実に検出することができ、且つ、対応データ(反射光の状態と高さ情報とを対応付けたデータ)に基づいて特定反射光が検出用基準物体90のどの高さで生じたものであるかを正確に判断できる。
特に、検出エリア内の所望の位置のレーザ光照射高さを検出する上で、高価な外部装置(赤外線カメラ等)を用いる必要がなく、複雑な画像解析等も必要がないため、検出エリア内におけるレーザ光の実際の照射高さをより簡単に検出することができ、作業性の面で極めて有利となる。
【0072】
また、本実施形態のレーザ測定装置100では、高さ計測手段によって計測される照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行うことができる。従って、所望の位置に配置される検出用基準物体90に照射されるレーザ光が予め定められた基準範囲にあるか否かを作業者等が容易に且つ迅速に把握し易くなり、特定位置におけるレーザ光の照射高さに基づいて装置本体の初期設定やメンテナンス等を行う場合(例えば、特定位置におけるレーザ光の照射高さに基づいて装置本体に傾きが生じていないかを判断し調整する場合や、レーザ光が監視エリア内の特定位置において望ましい高さを通っているか否かを判断し調整する場合等)などにおいて極めて有利となる。
【0073】
また、一般的に通常監視エリアを設定しようとした場合、監視エリア(検出エリア)を設定するためのデータの準備や設定装置の準備、或いはデータ入力作業等、相当の労力を要することが懸念される。特に、検出エリアを複雑に設定する場合には、より細かな条件設定が必要となり、膨大なデータを用意しなければならないため、データの準備やデータ入力の負荷が極めて大きくなってしまう。また、入力すべきデータを算出するための演算処理や入力処理については、検出装置(レーザ測定装置)以外の情報処理装置(パーソナルコンピュータ等)が必要となり、設定環境が大掛かりなものとなってしまうという問題もある。
これに対し本実施形態のレーザ測定装置100によれば、位置特定手段によって特定された検出用基準物体90の位置に基づいて監視エリアを設定できるようになる。即ち、所望の位置に配置された検出用基準物体90に実際にレーザ光を照射し、その位置をレーザレーダ装置側で実際に把握しながら監視エリアを設定することができるため、実際の使用状態を考慮した適切なエリア設定を行いやすくなる。
【0074】
また、本実施形態のレーザ測定装置100では、検出用基準物体90の外周部90a(反射部)における高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されている。この構成によれば、検出用基準物体90の形状や表面状態を複雑化することなくレーザ光の照射高さに応じて状態が変化するように特定反射光を発生させることができる。
【0075】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態のレーザ測定装置200にて行われる設定処理について説明する。なお、第2実施形態のレーザ測定装置200でも、図9に示す流れで設定処理が行われ、まず、S1の基準物体検出処理が行われる。この基準物体検出処理の具体的内容は第1実施形態と若干異なっており、本実施形態のレーザ測定装置200では、ユーザが検出用基準物体90を、レーザ光L1の走査エリア上における複数位置に移動させることを前提とし、レーザレーダ装置1側では、ユーザによって検出用基準物体90が順次移動されたときに、それら各移動位置からの各特定反射光を受光している。
【0076】
この基準物体検出処理は、具体的には例えば図11のような流れで行われ、まず、基準物体の検出を実際に開始するか否かを判断する処理を行なう(S21)。この判断処理は、例えば、ユーザが操作部(図示略)に対して所定の開始指示(基準物体の検出に移行する旨の指示)をしたか否かを確認してもよく、或いは、所定時間が経過したか否か(例えば、図11の基準物体検出処理の開始から所定時間が経過したか否か、或いは前回の基準物体の検出から所定時間が経過したか否か)を確認してもよい。或いはS21の判断処理自体を省略してもよい。
【0077】
S21にてYesに進む場合には、凹面鏡41をある回動位置に定めた状態でパルスレーザ光L1を出射し(S22)、その回動位置において反射光の受光を確認する処理を行なう(S23)。そして、特定反射光が検出されたか否かを判断する処理を行う(S24)。S24での判断は、現在(S24の判断を行う時)の回動位置で確認される反射光のみに基づいて「特定反射光」が検出されたか否かを判断してもよく、現在の回動位置以前の複数の回動位置での各反射光に基づいて「特定反射光」が検出されたか否かを判断してもよい。
【0078】
例えば、図3〜図5の検出用基準物体90が用いられる場合には、現在の回動位置以前の複数の回動位置の反射光に基づいて、図6のような受光信号が得られたか否かを判断し、得られた場合にはS24にてYesに進む。また、特定反射光が検出されない場合には、S24にてNoに進み、凹面鏡41を1ステップ変化させて次の角度に設定し、S22以降の処理を繰り返す。
【0079】
S24にてYesに進む場合には、特定反射光が得られた角度幅θa(図6参照)の所定角度(例えば角度幅θaの中央角度)において検出用基準物体90に投射されるパルスレーザ光L1がレーザダイオード10にて発生してから、当該パルスレーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの時間Taを検出する(S26)。この時間Taの検出の方法は、第1実施形態の各検出用基準物体90での検出と同様である。
【0080】
また、S26では、上記時間Taの検出と共に、検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1がレーザダイオード10から出射されるときの凹面鏡41の回動位置(例えば特定反射光が得られる角度幅θaの中央角度)を検出する。例えば、図12の移動位置B1にある検出用基準物体90から特定反射光が検出されるときには、この特定反射光が得られる角度幅θaの中央角度において、上記時間Ta(B1にある検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1の発生から、当該パルスレーザ光L1が受光されるまでの時間)と共に、当該検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1が出射されるときの凹面鏡41の「回動位置」(基準回動位置からの回動角度θa’)を検出する。
【0081】
この場合、移動位置B1にある検出用基準物体90に向けて出射されるいずれかのパルスレーザ光L1について、当該パルスレーザ光L1の出射から、当該パルスレーザ光L1に応じた反射光の受光までの時間Taを検出する。そして、当該パルスレーザ光L1が出射されるときの凹面鏡41の回動位置(回動角度θa’)をも検出する。
【0082】
このように時間Taと回動位置(回動角度θa’)が検出された後には、これら値を、移動位置B1を特定する値としてメモリ(図示略)に記憶する(S27)。
【0083】
その後、基準物体の検出処理を終了するか否かを判断する(S28)。この判断は、例えば、ユーザが操作部に対して所定の終了操作を行ったか否かを判断したり、或いは、最後の基準物体の検出から一定時間経過したか否かを判断するといった方法が挙げられる。
【0084】
ユーザが所定の終了操作を行ったときに図11の基準物体検出処理を終了する構成とした場合、S28では、操作部に対して所定終了操作がなされたか否かを判断し、所定終了操作がなされていない場合にはS28にてNoに進み、次の移動位置について、S21以降の処理を繰り返す。一方、所定終了操作がなされた場合にはS28にてYesに進み、当該基準物体検出処理を終了する。
【0085】
上記基準物体検出処理では、ユーザが図13のように検出用基準物体90を移動したときには、各移動位置B1、B2、B3についてS22〜S27の処理が行われるため、各移動位置B1、B2、B3について上記時間Ta及び回動角度θa’が算出される。そして、各移動位置毎に時間Taと回動角度θa’とが対応付けられてメモリに記憶されることとなる。
【0086】
図11の基準物体検出処理が終了した場合には、図9のS2以降の処理を行う。S2の処理は第1実施形態と同様であり、第1実施形態では、各基準物体についての各距離を算出していたが、本実施形態では、これと同じ方法で各移動位置についての各距離(各移動位置に配置される基準物体までの各距離)を算出する。即ち、各移動位置毎に検出された上記時間Taに基づいて、各移動位置までの各距離を算出する。例えば、図13のように各移動位置B1、B2、B3が検出されている場合には、メモリに記憶される各移動位置毎の時間Taを読み出し、これら時間Taに基づいてレーザレーダ装置1から各移動位置B1、B2、B3までの距離Xs、Xt、Xuを算出する。
【0087】
また、S3の位置特定処理(図9)も、第1実施形態と同様であり、第1実施形態では、各基準物体の各座標を検出していたが、本実施形態でも、これと同じ方法で、各移動位置の各座標を検出する。具体的には、各移動位置に入射する各レーザ光L1の出射時における凹面鏡41の各回動位置と、S2で算出された各距離とに基づいて、検出用基準物体90の各移動位置の座標を検出する。例えば、図13のように各移動位置B1、B2、B3が検出されている場合、移動位置B1については、移動位置B1のときの回動角度θa’(図13では、B1のときの回動角度をθa1と例示)と、当該移動位置B1までの距離Xsとに基づいて座標Psを算出する。移動位置B2も同様であり、移動位置B2のときの回動角度θa’(図13では、移動位置B2のときの回動角度をθa2と例示)と、当該移動位置B2までの距離Xtとに基づいて座標Ptを算出する。なお、移動位置B3についても同様の方法で、座標Puを算出する。
【0088】
その後、S4の検出エリア設定処理を行う。なお、S4の処理は第1実施形態と同様であり、S3で特定された複数の座標に基づいて、検出エリアを設定する。なお、図14は、図13のように基準物体が順次移動されたときの検出エリアの設定例を示している。図14では、一部の移動位置をPs、Pt、Pu、Pv、Pw、Px、Py、Pzで示しており、それ以外の移動位置については符号を省略している。
【0089】
S4で設定された検出エリアに関するデータは、第1実施形態と同様の方法でメモリ(図示略)に記憶される(S6)。なお、検出モードの際には、メモリに記憶されるデータが読み出され、第1実施形態と同様の方法で検出エリア内の物体検出が行われる。
【0090】
本実施形態のレーザ測定装置200によれば、ユーザが検出用基準物体90を所望の複数位置に順次移動させたときに、レーザレーダ装置1において各移動位置を容易に特定でき、ユーザが検出エリアとしてどのあたりを希望しているかをレーザレーダ装置1側で詳細に把握することができる。また、上記のように検出された各移動位置に基づいて検出エリアを設定しており、このようにすることで、ユーザが望んだ各移動位置(即ちユーザが実際に基準物体を移動させた各位置)を反映した検出エリアを容易に且つ正確に設定できるようになる。特に、いずれの移動位置もレーザレーダ装置1からの距離や方向を独立して設定できるため、図14のような複雑な検出エリアをより簡易に設定することができる。
【0091】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
第3実施形態に係るレーザ測定装置300は、機械的構造やハードウェア構成は第1形態と同様であり、設定処理や物体検出処理などが第1実施形態と異なっている。具体的には、本実施形態は、第1実施形態の特徴を全て含み、図1〜図8を参照して説明した第1実施形態と同様の構成を有しており、更に、新たな処理を追加した構成となっている。よって、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付すと共に詳細な説明は省略し、適宜図1〜図8を参照することとする。
【0092】
(監視エリアの設定)
以下、本実施形態に係るレーザ測定装置300で行われる監視エリアの設定処理について説明する。
図16は、第3実施形態に係るレーザ測定装置で行われる設定処理の流れを例示するフローチャートである。図17は、第3実施形態のレーザ測定装置で行われる監視エリアの設定方法について説明する説明図である。図18は、ある物体検出位置での照射高さを、既知の実測データに基づいて算出する方法の一例を説明する説明図である。図19は、図17の検出エリアについての三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図である。図20(A)は、図17とは異なる検出エリアが設定されるときの三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図であり、図20(B)は、図20(A)とは異なる三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図である。図21(A)は、三次元マップのデータ構成例を概念的に説明する説明図であり、図21(B)は、図21(A)とは異なるデータ構成例を概念的に説明する説明図である。
【0093】
図16の設定処理は、例えば図示しない操作部に対して所定操作がなされたときに制御回路70によって開始される処理である。なお、この操作部は、例えばケース3の外部においてキーやスイッチなどで構成されていてもよく、ケース3の内部に設けられていてもよい。或いは、レーザ測定装置300とは別装置として設けられていてもよい。
【0094】
図16の設定処理では、まず検出用基準物体90を検出する検出処理を行う(S31)。このS31の処理は、図9のS1と同様であり、通常の物体検出処理と同様にレーザ光L1を空間に投射し、このレーザ光L1の走査経路上に存在する検出用基準物体90を検出する。具体的には、例えば、レーザ光L1の走査を所定回動範囲(例えば360°)に亘って行い、各パルスレーザ光の投射に応じて返される各反射光を受光すると共に、上述の「特定反射光」が受光されたか否かを確認する。
【0095】
「特定反射光」が受光されたか否かの確認は、第1実施形態と同様であり、例えば図3〜図5のような検出用基準物体90を用いる場合、第1閾値V1以上の出力と、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の出力とが交互に繰り返されるような一連の反射光が受光されたか否かを確認する。
【0096】
また、S31の検出処理では、凹面鏡41を所定の角度範囲(例えば360°)回動させて検出用基準物体90の検出を行っており、図17のように走査経路上に複数の検出用基準物体90が存在する場合には、これら複数の検出用基準物体90が検出されることとなる。
【0097】
図16に示すように、S31の検出処理の後には、距離算出処理を行う(S32)。S32の距離算出処理は、図9のS2の処理と同様であり、レーザレーダ装置1からS31で検出された各検出用基準物体90までの各距離(図17の例ではX1〜X4)を算出する。具体的には、S31で各検出用基準物体90を検出する際に、各検出用基準物体90に投射される各レーザ光L1の発生から、当該各レーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの各時間を検出しており、この検出された各時間と、既知の光速とに基づいてレーザレーダ装置1から各検出用基準物体90までの各距離X1〜X4を算出している。なお、各検出用基準物体90までの各距離X1〜X4は、例えば図8の距離L(角度幅θaの中間位置での距離)のように求めることができる。
【0098】
図16に示すように、S32の距離算出処理の後には、S33の位置特定処理を行う。この処理は、図9のS3と同様の処理であり、S32で算出された各距離X1〜X4(図17)に基づいて、各検出用基準物体90の位置(より詳しくは、各検出用基準物体90の中心軸42a(図1)と直交する水平方向(XY平面)における位置)を特定する。
【0099】
具体的には、S31で各検出用基準物体90を検出する際に、上記各検出時間(各検出用基準物体90に投射される各レーザ光L1の発生から、当該各レーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの各時間)と共に、各検出用基準物体90に入射する各レーザ光L1がレーザダイオード10から出射されるときの凹面鏡41の各回動位置を検出しており、S33では、これら各回動位置と、S32で算出された各距離X1〜X4とに基づいて、各検出用基準物体90の各位置を検出している。
【0100】
例えば、図17の位置A1にある検出用基準物体90(レーザレーダ装置1からX1離れた距離にある基準物体)からの特定反射光が検出されるときに、上記検出時間(A1にある検出用基準物体90に入射するあるパルスレーザ光L1の発生から、当該パルスレーザ光L1が受光されるまでの時間)と共に、当該検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1が出射されるときの凹面鏡41の「回動位置」をも検出しており、S33の処理では、この「回動位置」によって、位置A1にある検出用基準物体90の方向を特定している。そして、この特定される方向と、S32で求められた距離X1とによって、位置A1にある検出用基準物体90についての、レーザレーダ装置1を基準とする具体的座標(XY平面の座標)を特定している。
【0101】
図17では、一例として、所定の基準方向Fにレーザ光L1が投射されるときを凹面鏡41の基準回動位置(角度0°)とし、「特定反射光が検出されるときの凹面鏡41の回動位置」として、この基準回動位置からどの程度回転したかを示す回転角度θを求めている。従って、例えば、位置A1にある検出用基準物体90にレーザ光L1が投射されるときの回動位置は、基準回動位置から当該回動位置までの回転角度θ1によって表すことができ、位置A1の検出用基準物体90の座標は、このθ1と距離X1とによって特定できる。
【0102】
上記説明では、位置A1にある検出用基準物体90の具体的座標を特定する方法を説明したが、他の位置A2〜A4にある検出用基準物体90についても同様の方法で具体的座標を特定できる。なお、本実施形態では、レーザレーダ装置1の配置空間を、上記基準方向FをX軸方向とし、中心軸42a(図2)の方向をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向と直交する方向をZ軸方向とし、これらXYZ座標で位置を特定する三次元空間として示している。
【0103】
本実施形態でも、制御回路70が「特定反射光検出手段」の一例に相当し、回動反射機構40から照射されるレーザ光L1の走査エリア上に検出用基準物体90が配置されたときに、フォトダイオード20(光検出手段)によって検出される反射光L2の波形から特定反射光を検出するように機能しており、走査エリア内の複数の位置に検出用基準物体90が配置されたときには、各位置に配置された検出用基準物体からの特定反射光をそれぞれ検出するように機能している。
【0104】
また、制御回路70は「時間検出手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各位置の検出用基準物体90からの特定反射光が検出されたとき、各検出用基準物体90に入射するレーザ光L1がレーザダイオード10(レーザ光発生手段:図2)にて発生してから、当該レーザ光L1に応じた各検出用基準物体90からの特定反射光がフォトダイオード20(光検出手段:図2)によって検出されるまでの各時間をそれぞれ検出するように機能する。
【0105】
また、制御回路70は「距離算出手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出されたとき、時間検出手段によって検出される各時間に基づいて各検出用基準物体90までの各距離を算出するように機能する。また、制御回路70は、「回動位置検出手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出されるときの凹面鏡41(偏向部)の各回動位置を検出するように機能する。
【0106】
更に、制御回路70は、「位置特定手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出されるときの距離算出手段によって算出された各距離と、回動位置検出手段によって検出された凹面鏡41(偏向部)の各回動位置とに基づいて各検出用基準物体90の位置を特定するように機能する。
【0107】
図16に示すように、S33の処理の後には、各検出用基準物体90での照射高さが基準高さを満たしているか否かを判断する(S34)。この処理は、図9のS4と同様の処理であり、具体的には、第1実施形態で説明した上述の高さ計測方法によって各検出用基準物体90での照射高さHを計測し、この照射高さHが予め定められた許容範囲に収まっているかを判断する。そして、収まっていない場合にはS34にてNoに進み、エラーの旨をブザー、ランプ、表示部などによって報知する(S38)。なお、このとき、照射高さHが許容範囲に収まっていない検出用基準物体90を特定する情報を表示するとなお良い。また、本実施形態では、S34、S38の処理を省略することもできる。
【0108】
本実施形態では、制御回路70が「高さ計測手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出される場合、それら検出された特定反射光の状態に基づいて各検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さをそれぞれ計測するように機能する。
【0109】
一方、いずれの検出用基準物体90の照射高さHも予め定められた許容範囲に収まっている場合には、S34にてYesに進み、S35の検出エリア設定処理を行う。この検出エリア設定処理は、S33の処理で特定された各検出用基準物体90の各位置Pa、Pb、Pc、Pd(図17)のいずれか又は全てを境界位置とするように検出エリアを設定する。例えば、位置P1と、S3の処理で特定された各検出用基準物体90の各位置Pa〜Pdとを環状に結ぶことで、多角形状の検出エリアを設定することができる(図19参照)
【0110】
本実施形態では、制御回路70(図2)が「監視エリア設定手段」の一例に相当し、位置特定手段によって特定された検出用基準物体90の位置Pa、Pb、Pc、Pdを連結することによって境界線(位置Pa−Pb、Pb−Pc、Pc−Pdを結ぶ仮想線)を定め、この境界線の内部領域を監視エリアとして設定している。具体的には、位置特定手段によって特定された各検出用基準物体90のそれぞれの位置を、他の検出用基準物体90の位置とを結ぶような複数の連結線の組み合わせ(全検出位置において検出位置同士を結ぶ組み合わせとして考えられる全部の全組み合わせ)の内、それら連結線の配置領域の外周をなす最も外側の連結線を検出エリア(監視エリア)の境界としている。例えば、図19の例では、全連結線として、連結線Lab、Lbc、Lcd、Lac、Lbdが想定されるが、これら連結線Lab、Lbc、Lcd、Lac、Lbdの配置の外周をなす最も外側の連結線Lab、Lbc、Lcdが検出エリア(監視エリア)ARの境界となっている。
【0111】
図16に示すように、S35の検出エリア設定処理の後には、S36の三次元マップ生成処理を行う。このS36の処理では、S33で特定された各検出用基準物体の各位置(XY座標)、及びそれら各位置でのレーザ光の照射高さ(Z座標)に基づき、各検出用基準物体90におけるレーザ光照射位置の三次元座標をそれぞれ生成し、記録する。これにより、レーザレーダ装置1内の図示しないメモリ内には、図21(A)のように、S31で行われたレーザ走査のときの各検出用基準物体90でのレーザ光照射位置が三次元座標データとして記録されることになる。
【0112】
「三次元マップ」は、上記のように設定された検出エリア(監視エリア)内の各位置(任意の位置)におけるレーザ光の照射高さを特定し得る情報であればよく、例えば、上記のように生成・記録された三次元座標(各検出用基準物体90でのレーザ光照射位置(水平方向の位置及び高さ)の三次元座標)の集合そのものであってもよい。或いは、このような三次元座標の集合と、検出エリア(監視エリア)内の各位置の水平座標(XY座標)とに基づいて、各位置の照射高さ(Z座標)を算出するような演算式の情報であってもよい。
【0113】
例えば、上記三次元座標(各検出用基準物体90でのレーザ光照射位置(水平方向の位置及び高さ)の三次元座標)の集合を三次元マップとする場合、当該三次元座標の集合を図21(A)のようにレーザレーダ装置1内のメモリ(図示略)に記憶しておく。この場合、検出エリア(監視エリア)内の各位置におけるレーザ光の照射高さを特定するには、例えば、記録された複数の三次元座標の中から、水平座標系(XY座標)で対象位置(照射高さを求める対象位置)に最も近い位置となる三次元座標を抽出し、この抽出された三次元座標のZ座標をその対象位置の照射高さとするといった方法を用いることができる。この場合、例えば、図17、図18のように領域AR1で検出された物体位置Pnの照射高さを決定する場合には、XY座標系で位置Pnに最も近い位置となる位置PaのZ座標(Za)が位置PnのZ座標として推定されることになる。
【0114】
或いは、記録された複数の三次元座標の中から、水平座標系(XY座標)で対象位置(照射高さを求める対象位置)までの距離の短さが上位所定数(例えば上位2つ)に含まれる三次元座標を抽出し、この所定数の三次元座標におけるZ座標の平均値をその対象位置の照射高さとするといった方法などを用いてもよい。この場合、図17、図18のように領域AR1で検出された物体位置Pnの照射高さを決定する場合、例えば、XY座標系で位置Pnに近い上位2位置となる位置P1、PaのZ座標の平均値((Za+Z0)/2)を位置PnのZ座標〈推定値〉として用いることができる。
【0115】
なお、記録された複数の三次元座標に基づき、これら座標間にある対象位置(X,Y座標が判明している位置)のZ座標を求める方法は、公知の補間方法(一次補間、スプライン補間、その他の補間方法)であれば様々な方法を用いることができる。
【0116】
上記のように複数の三次元座標を記録して三次元マップとする場合、その記録座標数が多いほど、実測データの影響を高めることができ、任意の位置の照射高さを推定する上で、より精度を増すことができる。例えば、図17のように検出用基準物体90を4点で検出するよりも、図20(B)のように検出用基準物体90を12点で検出する方が、より精度が増すことになる。本実施形態では、検出用基準物体90の位置を変更したり、検出用基準物体90の数を追加することにより、記録座標数を容易に増やすことができる。
【0117】
また、上記のように得られた三次元座標の集合と、検出エリア(監視エリア)内の各位置の水平座標(XY座標)とに基づいて、各位置の照射高さを算出する演算式としては、例えば、図19のように検出エリア(監視エリア)AR内を複数の領域(例えば、位置(凹面鏡41におけるレーザ光の出射位置)P1又は各検出用基準物体90の位置Pa、Pb、Pcを頂点とする複数の三角形領域)に区切り、各領域の平面を特定するそれぞれの関数式を三次元マップデータとして記録しておいてもよい。
【0118】
図19の例では、三角形領域AR1の平面(位置P1、Pa、Pbを通る平面)をこれら位置P1、Pa、Pbの座標によって特定される関数式(X、Y、Zを変数とする関数式であり、図21(B)では関数式1として図示)で表すことができ、この領域AR1については当該関数式1を三次元マップの要素とすることができる。このような関数式1を三次元マップの要素とすれば、領域AR1内の任意の位置の照射高さを求める場合に、この位置のXY座標が判明すれば、得られたXY座標を、領域AR1についての前記関数式1に代入することで、当該任意の位置のZ座標を算出できることとなる。従って、レーザレーダ装置1によって検出された物体が領域AR1内に存在すると判断された場合には、その検出された物体位置(X、Y座標値)と上記関数式によって当該物体位置での照射高さ(Z座標)を求めることができる。
【0119】
検出エリアARの他の領域も同様であり、三角形領域AR2の平面(位置P1、Pb、Pcを通る平面)をこれら位置P1、Pb、Pcの座標によって特定される関数式(X、Y、Zを変数とする関数式であり、図21(B)では関数式2として図示)で表すことができ、この領域AR2については当該関数式2を三次元マップの要素とすることができる。このような関数式2を三次元マップの要素とすれば、領域AR2内の任意の位置の照射高さを求める場合、この任意の位置のXY座標が判明すれば、得られたXY座標を、領域AR2についての前記関数式2に代入することで、当該任意の位置のZ座標を算出できることとなる。また、三角形領域AR3の平面(位置P1、Pc、Pdを通る平面)をこれら位置P1、Pc、Pdの座標によって特定される関数式(X、Y、Zを変数とする関数式であり、図21(B)では関数式3として図示)で表すことができ、この領域AR3については当該関数式3を三次元マップの要素とすることができる。領域AR3内の任意の位置のZ座標(照射高さ)を関数式3に基づいて求める方法は、領域AR1、AR2の場合と同様である。
【0120】
このように、関数式を三次元マップの要素として記録する場合も、領域を細分化し、関数式の記録数を多くするほど、実測データの影響を高めることができ、任意の位置の照射高さを推定する上で、より精度を増すことができる。例えば、図17のように領域数を3とするよりも、図20(A)のように領域数を細分化し、関数式の数を多くした方がより精度が増すことになる。本実施形態では、検出用基準物体90の位置を変更したり、検出用基準物体90の数を追加することにより、領域数を容易に増やすことができる。
【0121】
本実施形態では、制御回路70(図2)が「三次元マップ生成手段」の一例に相当し、位置特定手段によって特定された各検出用基準物体90の各位置と、高さ計測手段によって計測された各検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さとに基づいて、レーザ光の走査エリア内の各位置でのレーザ光の照射高さを特定可能な三次元マップを生成するように機能する。
【0122】
(物体検出)
次に、検出モードでの物体検出について説明する。
図22は、第3実施形態のレーザ測定装置で行われる物体検出処理の流れを例示するフローチャートである。図23は、照射高さと監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報を概念的に説明する説明図である。図24(A)は、人が検出エリア内に入ったときの高さ毎の検出結果を概念的に説明する説明図であり、図24(B)は、小動物(猫等)が検出エリア内に入ったときの高さ毎の検出結果を概念的に説明する説明図である。図25は、人と小動物を区別する方法を説明する説明図である。
【0123】
本実施形態では、操作部に対して所定操作がなされたときに、図16のような設定処理が開始され、設定モード(設定処理を行うモード)に移行するようになっている。一方、この設定処理が終わると、自動的に、或いは操作部に対する操作に応じて実際の検出処理を行い得るモード(検出モード)に移行するようになっている。なお、検出モードへの移行方法はこれに限られるものではなく、例えば、電源投入や所定の操作をトリガとして検出モードに移行するようにしてもよい。
【0124】
検出モードは、図1、図17のように、レーザレーダ装置1を設定処理のときと同じ位置に配置した状態で行われ、レーザレーダ装置1は、この状態でレーザダイオード10からパルスレーザ光L1を順次出射し、且つ凹面鏡41を順次回動してレーザ光L1の走査を行う。パルスレーザ光L1の出射タイミングや凹面鏡41の回動タイミングは様々に設定できるが、例えば、パルスレーザ光毎に凹面鏡41を少しずつ回動させることで、凹面鏡41からの各パルスレーザ光L1の投射方向を水平方向に順次変化させることができる。
【0125】
図22に示すように、検出処理が始まると、パルスレーザ光の照射に応じた受光信号を確認する(S101)。このS101の処理では、例えばパルスレーザ光の照射時に一定の閾値を超える受光信号が得られたか否かを確認している。
【0126】
例えば、レーザレーダ装置1の走査エリア上に検出物体が存在するときには、凹面鏡41から投射されたパルスレーザ光L1が当該検出物体にて反射し、この反射光の一部が再び凹面鏡41に入射する。そして、凹面鏡41にて反射した後、集光レンズ62によって集光され、フォトダイオード20に入射することとなる。この構成では、検出エリア内の物体からの反射光をフォトダイオード20が受光する場合には一定の閾値を超える受光信号が発生するようになっており、検出モードでは、フォトダイオード20がこのような反射光を受光したか否か(より詳しくは、フォトダイオード20からの出力が閾値を超えたか否か)を、凹面鏡41の各回動位置毎に確認し、各回動位置に対応する方向に検出物体が存在するか否かを確認している。
【0127】
物体からの反射光L2が受光され、S101の処理で閾値を超える受光信号が確認された場合、その物体の位置を検出する。具体的には、まず、この反射光L2の元となるパルスレーザ光L1が発生してから、当該パルスレーザ光L1の反射光L2がフォトダイオード20によって受光されるまでの時間Tを検出する。そして、既知の光速Cを考慮し、レーザダイオード10から当該物体までの光路及び当該物体からフォトダイオード20までの光路を加算した光路長L、或いは、当該物体までの距離X(例えば光路長Lの1/2)を求める。更に、そのときの凹面鏡41の回動位置(即ち、反射光L2の元となるパルスレーザ光L1が投射されるときの回動位置)と、当該物体までの上記距離Xとに基づいて、当該物体の座標(X、Y座標)を特定する。そして、この座標が上述の設定処理(図16)で設定された検出エリア(監視エリア)ARの範囲内にあるか否かを判断し(S103)、検出エリア内にあれば、S103においてYesに進む。一方、得られた座標が検出エリア外の座標であれば、S103にてNoに進み、当該物体については検出されたものとして扱わずに無視する。
【0128】
S103にてYesに進む場合、図16の設定処理で生成された三次元マップを確認し、S102で検出された物体の検出位置(X座標及びY座標)と三次元マップとに基づいてその検出位置での照射高さ(Z座標)を算出する。なお、三次元マップに基づいて検出エリア内の任意の位置の照射高さ(Z座標)を算出する方法は上述の通りである。
【0129】
S104の処理により検出位置のZ座標(照射高さ)を取得した後には、そのZ座標(照射高さ)に対応する検出条件を読み出す(S105)。本実施形態では、制御回路70(図2)によってアクセス可能なメモリ(図示略)に、対応情報が記憶されており、S105では、この対応情報を参照し、S104で得られたZ座標(照射高さ)に対応する検出条件を読み出す。なお、本実施形態では、上記メモリが「対応情報記憶手段」の一例に相当する。
【0130】
メモリに記憶される対応情報では、レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと監視物体の検出条件とが対応付けて定められている。この対応情報は、例えば図23のように、高さの条件として予め複数段階の高さ範囲に分けられており、各段階に対応する物体判定基準(監視物体の検出条件)が定められている。そして、S105では、S103で検出と判断された物体位置での照射高さ(S104で検出された高さ(Z座標))がどの段階に属するかを判別し、その属する段階に対応する物体判定基準を読み出している。例えば、物体検出位置での照射高さ(Z座標)がH1以上且つH2未満の範囲である場合には、これに対応する検出条件(基準2)を適用し、この基準2に基づいて当該物体が監視物体であるか否かを判別することになる。
【0131】
対応情報における高さ範囲別の各基準は様々な考え方で設定することができる。
例えば、図24(A)のように、人を監視対象とする場合、足の位置に相当する高さでは、2つの領域が検出される可能性が高く、手と胴体の位置に相当する高さでは、3つの領域が検出される可能性が高く、頭の位置に相当する高さでは1つの領域が検出される可能性が高い。従って、これらの検出特性を利用して検出条件を定めてもよい。
【0132】
例えば、高さH1未満のときの検出条件(基準1)として、「幅が所定範囲内の2つの領域が検出されるスキャンが発生した場合に監視物体(人)と判断する」という基準を用いることができる。例えば、H1として、成人一般の平均的な足の長さよりも低い値とし、上記所定範囲として、成人一般の平均的な足の幅を含むある程度の範囲(例えば、10cm〜50cm等)を設定しておけば、図24(B)のような猫等の小動物が入り込んだとしても、当該猫のスキャンでは、高さ方向のどの位置でも、上記範囲の領域が2つ同時に検出されることが無いため、猫等の誤検出を防ぐことができ、人(特に成人)については確実に検出することができる。なお、猫が検出エリア内に存在する場合、猫の足付近の高さを走査する場合には細い(小さい)4つの領域が検出されることになり、猫の胴体付近の高さを走査する場合には、ある程度大きい1つの領域が検出されることになり、猫の頭付近の高さを走査する場合には、ある程度の大きさの1つの領域が検出されることになる。
【0133】
また、高さH1以上且つH2未満のときの検出条件(基準2)として、「幅が第1所定範囲内の1つの領域」「幅が第2所定範囲内の1つの領域」「幅が第2所定範囲内の1つの領域と第3所定範囲内の1つの領域」「幅が第2所定範囲内の1つの領域と第3所定範囲内の2つの領域」「幅が第4所定範囲内の2つの領域」のいずれかが検出された場合に監視物体(人)と判断するという基準を用いることができる。H2は成人一般の平均身長程度の高さ(150cm〜180cm程度)、若しくはこれよりやや低い高さとすればよく、第1所定範囲は、成人一般の平均的な頭の幅を含むある程度の範囲(例えば、15cm〜30cm程度)、第2所定範囲は、成人一般の平均的な胴体の幅を含むある程度の範囲(例えば、20cm〜80cm程度)、第3所定範囲は、成人一般の平均的な腕の幅を含むある程度の範囲(例えば、20cm〜80cm程度)、第4所定範囲は、成人一般の平均的な足の幅を含むある程度の範囲(例えば、10cm〜50cm等)とすればよい。このように設定すると、上記高さ範囲(高さH1以上且つH2未満)でいずれかの領域が検出された場合に人である可能性が高く、このような領域ではない場合には、人以外(植物等)である可能性が高いため、上記基準2により人とそれ以外の物体を正確に判別できるようになる。
【0134】
また、高さH2以上且つH3未満のときの検出条件(基準3)として、「幅が第1所定範囲内の1つの領域」が検出された場合に監視物体(人)と判断する」という基準を用いることができる。H3は、成人一般の平均身長程度の高さ(150cm〜180cm程度)よりも相当高く設定すればよく、第1所定範囲は、上述のように、成人一般の平均的な頭の幅を含むある程度の範囲(例えば、15cm〜30cm程度)とすればよい。このように設定すると、上記高さ範囲(高さH2以上且つH3未満)で上記領域が検出された場合に人である可能性が高く、このような領域ではない場合には、人以外(植物等)である可能性が高いため、上記基準3により人とそれ以外の物体を正確に判別できるようになる。
【0135】
また、「高さH3以上」の高さ範囲に対応する検出条件(基準4)として、例えば、「物体を検出しても監視物体と判断しない」という基準を用いることができる。H3として、人間の身長よりも相当高い高さを設定すれば、人が存在し得ない位置で物体検出があってもノイズと判断することができる。
【0136】
なお、高さ範囲を予め複数段階に分け、各段階に対応する物体判定基準を定める方法は、上記のような方法に限られない。例えば、上述した場合と同様にH1、H3を設定した場合において、領域を、H1未満の場合と、H1〜H3の場合と、H3以上の場合とに分け、例えば、H1未満のときには、2つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合に人と判断するといった基準を用いることができる。同様に、H1以上H3未満のときには、3つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合、又は1つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合に人と判断すると言った基準を用いることができる。H3以上の場合は、上述した場合と同様に、例えば、「物体を検出しても監視物体と判断しない」という基準を用いることができる。このような方法であっても、人とそれ以外の物体とをより正確に判別できるようになる。
【0137】
また、上記の例では、監視物体を人としたが、ノイズ対象として猫等の小動物を監視物体とし、このような小動物を判別するために、高さ範囲毎に基準を設定してもよい。例えば、小動物の足程度の高さHaを目安として、高さ範囲が、Ha(例えば、15cm)未満のときの検出条件(物体判断基準)として、4つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合に小動物と判断するといった基準を用いることができる。この場合、物体検出位置での高さ(Z座標)がHa未満であり、当該位置付近で4つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周繰り返された場合に、小動物と判別することになる。また、小動物の胴体及び顔の高さ程度の高さHbを目安として、Ha(例えば、15cm)以上且つHb(例えば、40cm)未満のときの検出条件(物体判断基準)として、1つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合に小動物と判断するといった基準を用いることができる。この場合、物体検出位置での高さ(Z座標)がHa以上Hb未満であり、当該位置付近で1つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周繰り返された場合に、小動物と判別することになる。
【0138】
なお、本実施形態では、S105の処理を実行する制御回路70が「検出条件設定手段」の一例に相当し、三次元マップ生成手段によって生成された三次元マップと、対応情報記憶手段に記憶される対応情報と、を参照すると共に、三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、対応情報により各照射高さと対応付けられている監視物体の検出条件を導くことにより、レーザ光の走査エリア内における各位置での監視物体の検出条件を設定するように機能する。
【0139】
また、本実施形態では、S106の処理を実行する制御回路70が「監視物体判定手段」の一例に相当し、レーザ光の走査エリア内において位置特定手段によって検出物体の位置が特定されたときに、その特定された物体位置と、検出条件設定手段によって設定される当該物体位置での検出条件とに基づいて、その検出物体が監視物体であるか否かを判定するように機能する。
【0140】
(第3実施形態の主な効果)
本実施形態のレーザ測定装置300によれば、所望の位置に配置された検出用基準物体90に実際にレーザ光を照射し、その位置をレーザレーダ装置側で実際に把握しながら監視エリアARを設定することができるため、実際のレーザ走査状態を考慮した適切な監視エリア設定を行いやすくなる。特に、監視エリア設定手段は、位置特定手段によって特定された検出用基準物体90の位置を連結することによって境界線を形成し監視エリアに設定しているため、ユーザは、このように境界線が形成されることを予め想定した上で、実環境において境界としたい複数位置に検出用基準物体90を配置すればよく、これにより、実環境におけるユーザの希望境界位置と、レーザレーダ装置内で設定される境界線とのずれをより小さくすることができる。
【0141】
また、レーザ測定装置300では、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出されるときの距離算出手段によって算出された各距離と、回動位置検出手段によって検出された凹面鏡41(偏向部)の各回動位置とに基づき、位置特定手段が各検出用基準物体90の位置を特定している。そして、高さ計測手段は、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出される場合、それら検出された特定反射光の状態に基づいて各検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さをそれぞれ計測している。
この構成では、実環境における所望の複数位置に検出用基準物体90を配置するといった簡易な作業によって、それら検出用基準物体90の位置、即ち実環境におけるユーザの任意の指定位置をレーザレーダ装置1に確実に認識させることができ、且つ、レーザレーダ装置1側では、それら各指定位置において設置面からどの程度の高さでレーザ光が照射されているかを実データに基づいて正確に把握できるようになる。
そして、このように実環境で指定された指定位置と当該指定位置におけるレーザ光の照射高さとをレーザレーダ装置1側で正確且つ容易に把握することができるため、ユーザの希望位置の三次元マップを作業性良く且つ実データを反映して精度高く生成することができる。特に、三次元マップに組み込むべき位置の指定を、検出用基準物体90を配置するといった簡単な作業で行うことができるため、三次元マップに新たな位置のデータを追加しやすく、より多くの位置の高さデータを含めるように充実した三次元マップを生成し易くなる。
【0142】
また、本実施形態のレーザ測定装置300では、レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報が記憶されている。そして、走査エリア内における各位置でどのような検出条件とするかは、三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、各照射高さと対応付けられている検出条件を対応情報によって導くことにより決定されるようになっている。
そして、実際の検出時(監視時)には、レーザ光の走査エリア内において検出物体の位置が特定されたときに、三次元マップによりその特定された物体位置での照射高さを特定することができ、その特定された照射高さと対応付けられた検出条件を上記対応情報に基づいて導いて判定に適用することができる。この構成では、異なる複数の判定基準をレーザ光の照射高さに応じて使い分けることができ、高さ毎に望ましい基準を用いやすくなる。
【0143】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0144】
上記実施形態では、外表面を反射部とし、この反射部における高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成された検出用基準物体の例として円錐状に構成された検出用基準物体90を例示したが、このような形状に限られない。例えば、三角錐や四角錐などの他の錐体であってもよい。また、錐体の形状は直錐体でも斜錐体でもよい。
【0145】
上記実施形態では、明色領域Pwと暗色領域Pbが形成された検出用基準物体90が例示されたがこのようなパターンが検出されていなくてもよい。例えば、図15(A)のように、単純な円錐形態の検出用基準物体290を用い、第1実施形態と同様に、この検出用基準物体290からの反射光によって得られた受光範囲(角度幅)に基づいて高さを算出してもよい。この場合、検出用基準物体の外周面をミラー等の反射率の大きい部材で構成すれば、当該検出用基準物体からの反射光のレベルが他の物体からの反射光に比べて格段に大きくなるため、受光波形の中から検出用基準物体290からの反射光によって得られた受光範囲を特定しやすくなる。なお、このように外周面をミラーなどによって構成した場合、フォトダイオード20での受光量が所定閾値を超える光を「特定反射光」として扱うことができる。
【0146】
上記実施形態では円錐状の検出用基準物体を例示したが、反射部(レーザ光を反射する部分、即ちレーザレーダ装置1側に面する部分)における高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されていればよい。例えば、上方となるにつれて幅の狭くなる三角形状の板を検出用基準物体として用いてもよく、上方となるにつれて幅の狭くなる三角錐形状の検出用基準物体を用いてもよい。また、上記実施形態では、上方となるにつれて連続的に幅が狭くなる構成を例示したが、上方となるにつれて段階的に幅が狭くなる構成であってもよい。
【0147】
また、図15(B)のように、表面の構成が高さに応じて段階的に変化するような構成であってもよい。図15(B)の例では、円錐形状の部材において上下方向に並んだ複数の領域を設け、各領域の反射率が高さに応じた反射率となるように構成している。この場合、レーザ光が入射する位置の反射率に応じた強さの反射光が生じるため、反射光の受光レベルを把握することで、レーザ光の入射位置を特定できるようになる。
【符号の説明】
【0148】
1…レーザレーダ装置
10…レーザダイオード(レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(光検出手段)
30…ミラー(誘導手段)
40…回動反射機構(回動偏向手段、誘導手段)
41…凹面鏡(偏向部)
42a…中心軸
50…モータ(駆動手段)
70…制御回路(回動位置検出手段、時間計測手段、距離算出手段、位置特定手段、特定反射光検出手段、高さ計測手段、監視エリア設定手段、三次元マップ生成手段、検出条件設定手段、監視物体判定手段)
90…検出用基準物体
90a…外周部(反射部)
100,200,300…レーザ測定装置
L1…レーザ光
L2…検出物体からの反射光
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、検出対象空間にレーザ光を照射し、物体までの距離や方位を検出するレーザ測定装置が提供されている。この種のレーザ測定装置では、空間にレーザ光を投射すると共に、当該レーザ光が物体に照射されたときの反射光を検出しており、レーザ光の投射から反射光の受光までに要した時間に基づいて、その物体までの距離を算出している。なお、このようなレーザ測定装置に関する技術としては、例えば特許文献1のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2789741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記レーザ測定装置では、必ずしも検出対象領域が水平とは限らず、検出すべき物体(例えば人など)に対し検出対象領域で常に同じ高さにレーザを照射できるとは限らないので、検出すべき物体から反射して戻ってくるレーザが検出すべき物体のどの高さで反射して戻ってきているかを知る必要が発生する場合がある。また、それなりに遠くまでレーザにて監視する場合は、レーザ測定装置近傍ではなかなか気づき難いが、実はレーザ測定装置がやや上向きや下向きに設置されてしまっており、実は目標とする距離で目標とする地面高さでのレーザ検出が出来ていないといった事態が発生することも大いに考えられる。つまり、照射されるレーザが、検出エリア内において実際にどの程度の高さで走査されているかを把握すべき事を求められる場合がある。
【0005】
しかしながら、従来のレーザ測定装置は、検出エリア内の各位置において実際にどの程度の高さで走査されているかを把握することが難しいという問題を伴うものであった。例えば、検出エリア内の所望の位置に配置された対象物にレーザ光が照射されているか、或いは当該対象物のどの高さにレーザ光が照射されているかを肉眼で確認しようとしても、レーザ光は肉眼で把握しにくいという特徴があり、仮に確認できたとしても肉眼に頼った実測作業は多大な負荷を伴うため、このような方法は難しい。一方、検出エリア内の対象物を赤外線カメラ等で撮影し、レーザ光が対象物のどの位置に照射されているかを、その撮像画像の解析等によって確認することも考えられるが、この方法では、赤外線カメラの準備や撮像画像の解析作業などが必要となるため、作業コストの高騰や作業負荷の増大が避けられない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、検出エリア内におけるレーザ光の実際の照射高さを容易に計測し得るレーザ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生したときに、当該レーザ光が検出物体にて反射して生じる反射光を検出する光検出手段と、回動可能な偏向部を備え、回動する前記偏向部により前記レーザ光発生手段で発生した前記レーザ光を空間に向けて偏向させつつ走査する回動偏向手段と、前記空間側から戻る前記反射光を前記光検出手段に誘導する誘導手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生する毎に、前記偏向部の回動位置を検出する回動位置検出手段と、前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生する毎に、当該レーザ光の発生から当該レーザ光の前記反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの時間を計測する時間計測手段と、前記時間計測手段によって計測された時間に基づいて、前記レーザ光の到達位置までの距離を算出する距離算出手段と、前記距離算出手段によって算出された距離と、前記回動位置検出手段によって検出された前記偏向部の回動位置とに基づいて検出物体の位置を特定する位置特定手段と、を備えたレーザレーザ装置を有している。
また、前記レーザ光による走査を受けたときに特定反射光を反射する反射部を備えた検出用基準物体を有している。
そして、前記検出用基準物体の前記反射部は、所定の高さ方向における各位置が高さに応じた構造をなし、且つ前記レーザ光が入射したときに、当該レーザ光が入射する高さに応じた内容の前記特定反射光を発するように構成されている。
更に、前記レーザレーダ装置は、前記回動偏向手段から照射される前記レーザ光の走査エリア上に前記検出用基準物体が配置されたときに、前記光検出手段によって検出される前記反射光の波形から前記特定反射光を検出する特定反射光検出手段と、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを備え、前記特定反射光検出手段によって前記特定反射光が検出された場合に、前記対応データを参照して前記特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで前記検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さを計測する高さ計測手段と、を備えている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーザ測定装置において、更に、前記高さ計測手段によって計測される前記照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行う報知手段が設けられている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレーザ測定装置において、前記検出用基準物体は、前記反射部における前記高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ測定装置において、前記位置特定手段は、前記特定反射光検出手段によって前記特定反射光が検出されたときにその特定反射光の反射元となる前記検出用基準物体の位置を特定するように構成されている。更に、前記位置特定手段によって特定された前記検出用基準物体の位置を連結することによって境界線を形成し監視エリアに設定する監視エリア設定手段を備えている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ測定装置において、前記レーザレーダ装置による前記レーザ光の走査エリア内の複数の位置に前記検出用基準物体が配置されたときに、前記特定反射光検出手段が、各位置に配置された前記検出用基準物体からの前記特定反射光をそれぞれ検出するように構成されている。
また、前記時間検出手段は、前記特定反射光検出手段によって各位置の前記検出用基準物体からの前記特定反射光が検出されたとき、各検出用基準物体に入射する前記レーザ光が前記レーザ光発生手段にて発生してから、当該レーザ光に応じた前記各検出用基準物体からの前記特定反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの各時間をそれぞれ検出している。
また、前記距離算出手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されたとき、前記時間検出手段によって検出される前記各時間に基づいて前記各検出用基準物体までの各距離を算出しており、前記回動位置検出手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されるときの前記偏向部の各回動位置を検出している。
また、前記位置特定手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されるときの前記距離算出手段によって算出された前記各距離と、前記回動位置検出手段によって検出された前記偏向部の前記各回動位置とに基づいて前記各検出用基準物体の位置を特定している。
更に、前記高さ計測手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出される場合、それら検出された前記特定反射光の状態に基づいて前記各検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さをそれぞれ計測している。
更には、前記位置特定手段によって特定された前記各検出用基準物体の各位置と、前記高さ計測手段によって計測された前記各検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さとに基づいて、前記レーザ光の走査エリア内の各位置での前記レーザ光の照射高さを特定する三次元マップを生成する三次元マップ生成手段が設けられている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載のレーザ測定装置において、更に、レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと前記監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報を記憶する対応情報記憶手段と、前記三次元マップ生成手段によって生成された前記三次元マップと、前記対応情報記憶手段に記憶される前記対応情報と、を参照すると共に、前記三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、前記対応情報により各照射高さと対応付けられている前記監視物体の検出条件を導くことにより、前記レーザ光の走査エリア内における各位置での前記監視物体の検出条件を設定する検出条件設定手段と、前記レーザ光の走査エリア内において前記位置特定手段によって前記検出物体の位置が特定されたときに、その特定された物体位置と、前記検出条件設定手段によって設定される当該物体位置での前記検出条件とに基づいて、その検出物体が前記監視物体であるか否かを判定する監視物体判定手段と、が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、検出用基準物体の反射部は、所定の高さ方向における各位置が高さに応じた構造をなし、且つレーザ光が入射したときに、当該レーザ光が入射する高さに応じた内容の特定反射光を発するように構成されている。従って、レーザ光の高さを検出すべき所望の位置に検出用基準物体を配置すれば、その位置においてレーザ光の照射高さを適切に反映した内容の特定反射光を発生させることができる。
一方、レーザレーダ装置には、光検出手段によって検出される反射光の波形から特定反射光を検出する特定反射光検出手段が設けられ、更に、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを備えると共に、特定反射光が検出された場合に、対応データを参照して特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで検出用基準物体におけるレーザ光の照射高さを計測する高さ計測手段が設けられている。従って、レーザレーダ装置では、所望の位置に配置された検出用基準物体で発生した特定反射光をより確実に検出することができ、且つ、対応データ(反射光の状態と高さ情報とを対応付けたデータ)に基づいて特定反射光が検出用基準物体のどの高さで生じたものであるかを正確に判断できる。
特に、検出エリア内の所望の位置のレーザ光照射高さを検出する上で、高価な外部装置(赤外線カメラ等)を用いる必要がなく、複雑な画像解析等も必要がないため、検出エリア内におけるレーザ光の実際の照射高さをより簡単に検出することができ、作業性の面で極めて有利となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、高さ計測手段によって計測される照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行うことができる。従って、所望の位置に配置される検出用基準物体に照射されるレーザ光が予め定められた基準範囲にあるか否かを作業者等が容易に且つ迅速に把握し易くなり、特定位置におけるレーザ光の照射高さに基づいて装置本体の初期設定やメンテナンス等を行う場合(例えば、特定位置におけるレーザ光の照射高さに基づいて装置本体に傾きが生じていないかを判断し調整する場合や、レーザ光が監視エリア内の特定位置において望ましい高さを通っているか否かを判断し調整する場合等)などにおいて極めて有利となる。
【0015】
請求項3の発明では、検出用基準物体の反射部における高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されている。この構成によれば、検出用基準物体の形状や表面状態を複雑化することなくレーザ光の照射高さに応じて状態が変化するように特定反射光を発生させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、所望の位置に配置された検出用基準物体に実際にレーザ光を照射し、その位置をレーザレーダ装置側で実際に認識しながら監視エリアを設定することができるため、実際のレーザ走査状態に合わせて監視エリアを設定しやすくなる。特に、監視エリア設定手段は、位置特定手段によって特定された検出用基準物体の位置を連結することによって境界線を形成し監視エリアに設定しているため、ユーザは、このように境界線が形成されることを予め想定した上で、実環境において境界としたい複数位置に検出用基準物体を配置すればよく、これにより、実環境におけるユーザの希望境界位置と、レーザレーダ装置内で設定される境界線とのずれをより小さくすることができる。
【0017】
請求項5の発明では、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体からの各特定反射光が検出されるときの距離算出手段によって算出された各距離と、回動位置検出手段によって検出された偏向部の各回動位置とに基づき、位置特定手段が各検出用基準物体の位置を特定している。そして、高さ計測手段は、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体からの各特定反射光が検出される場合、それら検出された特定反射光の状態に基づいて各検出用基準物体におけるレーザ光の照射高さをそれぞれ計測している。
この構成では、実環境における所望の複数位置に検出用基準物体を配置するといった簡易な作業によって、それら検出用基準物体の位置、即ち実環境におけるユーザの任意の指定位置をレーザレーダ装置に確実に認識させることができ、且つ、レーザレーダ装置側では、それら各指定位置において設置面からどの程度の高さでレーザ光が照射されているかを実データに基づいて正確に把握できるようになる。
そして、このように実環境で指定された指定位置と当該指定位置におけるレーザ光の照射高さとをレーザレーダ装置側で正確且つ容易に把握することができるため、ユーザの希望位置の三次元マップを作業性良く且つ実データを反映して精度高く生成することができる。特に、三次元マップに組み込むべき位置の指定を、検出用基準物体を配置するといった簡単な作業で行うことができるため、三次元マップに新たな位置のデータを追加しやすく、より多くの位置の高さデータを含めるように充実した三次元マップを生成し易くなる。
【0018】
請求項6の発明では、レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報が記憶されており、走査エリア内における各位置でどのような検出条件とするかは、三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、各照射高さと対応付けられている検出条件を対応情報によって導くことにより決定される。
そして、実際の検出時(監視時)には、レーザ光の走査エリア内において検出物体の位置が特定されたときに、三次元マップによりその特定された物体位置での照射高さを特定することができ、その特定された照射高さと対応付けられた検出条件を上記対応情報に基づいて導いて判定に適用することができる。この構成では、異なる複数の判定基準をレーザ光の照射高さに応じて使い分けることができ、高さ毎に望ましい基準を用いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ測定装置を概略的に説明する説明図である。
【図2】図2は、図1のレーザ測定装置で用いるレーザレーダ装置の全体構成を概略的に例示する断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態のレーザ測定装置に用いる検出用基準物体を概略的に例示する斜視図である。
【図4】図4は、第1実施形態のレーザ測定装置に用いる検出用基準物体を概略的に例示する平面図である。
【図5】図5は、第1実施形態のレーザ測定装置に用いる検出用基準物体を概略的に例示する側面図である。
【図6】図6(A)は、検出用基準物体の高位置を走査した時の受光波形を例示するグラフであり、図6(B)は、検出用基準物体の低位置を走査した時の受光波形を例示するグラフである。
【図7】図7(A)は、水平方向に沿ってレーザ光が走査されるようにレーザレーダ装置が設置されているときの走査状態を説明する説明図であり、図7(B)は、レーザ光の走査方向が水平方向に対して傾くように設置されたときの走査状態を説明する説明図である。
【図8】図8は、直径Dの算出の考え方を説明する説明図である。
【図9】図9は、監視エリア設定処理の流れを例示するフローチャートである。
【図10】図10は、監視エリアの設定方法を概念的に説明する説明図である。
【図11】図11は、第2実施形態に係るレーザ測定装置で行われる基準物体検出処理の流れを例示するフローチャートである。
【図12】図12は、第2実施形態に係るレーザ測定装置における監視エリアの設定方法を概念的に説明する説明図である。
【図13】図13は、図12に続く説明図である。
【図14】図14は、設定され検出エリアを説明する説明図である。
【図15】図15(A)は、検出用基準物体の別例1を概略的に例示する説明図であり、図15(B)は、検出用基準物体の別例2を概略的に例示する説明図である。
【図16】図16は、第3実施形態に係るレーザ測定装置で行われる設定処理の流れを例示するフローチャートである。
【図17】図17は、第3実施形態のレーザ測定装置で行われる監視エリアの設定方法について説明する説明図である。
【図18】図18は、ある物体検出位置での照射高さを、既知の実測データに基づいて算出する方法の一例を説明する説明図である。
【図19】図19は、図17の検出エリアについての三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図である。
【図20】図20(A)は、図17とは異なる検出エリアが設定されるときの三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図であり、図20(B)は、図20(A)とは異なる三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図である。
【図21】図21(A)は、三次元マップのデータ構成例を概念的に説明する説明図であり、図21(B)は、図21(A)とは異なるデータ構成例を概念的に説明する説明図である。
【図22】図22は、第3実施形態のレーザ測定装置で行われる物体検出処理の流れを例示するフローチャートである。
【図23】照射高さと監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報を概念的に説明する説明図である。
【図24】図24(A)は、人が検出エリア内に入ったときの高さ毎の検出結果を概念的に説明する説明図であり、図24(B)は、小動物(猫等)が検出エリア内に入ったときの高さ毎の検出結果を概念的に説明する説明図である。
【図25】図25は、人と小動物を区別する方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明のレーザ測定装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(レーザ測定装置の概要)
まず、図1を参照して第1実施形態に係るレーザ測定装置100の概要について説明する。
第1実施形態に係るレーザ測定装置100は、レーザレーダ装置1と1又は複数の検出用基準物体90とによって構成されている。レーザレーダ装置1は、図1のように監視すべきエリア付近(図1では、住宅Hの入口付近)に設置されるものであり、図1のように監視対象となる検出エリア内においてレーザ光L1を走査するように構成されている。一方、検出用基準物体90は、図1のようにレーザレーダ装置1の検出エリアの所望の位置に配置してレーザレーダ装置1に検出させるためのものである。
【0021】
(レーザレーザ装置の構成)
次に、図2等を参照してレーザレーダ装置1について説明する。
図2は、第1実施形態に係るレーザ測定装置100で用いるレーザレーダ装置1の全体構成を概略的に例示する断面図である。この図2では、レーザレーダ装置1を凹面鏡41の回転中心軸42aに沿った所定切断面(中心軸42a及びフォトダイオード20の受光位置を通る切断面)で切断した構成を概略的に示している。なお、以下の説明では、透過板の断面については白抜きで示すこととする。
【0022】
図2に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光L2を受光するフォトダイオード20とを備え、装置外の走査エリアに存在する検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。
【0023】
レーザダイオード10は、「レーザ光発生手段」の一例に相当するものであり、制御回路70の制御により、図示しない駆動回路からパルス電流を受け、このパルス電流に応じたパルスレーザ光(レーザ光L1)を間欠的に出射している。なお、本実施形態では、レーザダイオード10から検出物体(図示略)に至るまでのレーザ光を符号L1にて概念的に示し、検出物体からフォトダイオード20に至るまでの反射光を符号L2にて概念的に示している。
【0024】
フォトダイオード20は、「光検出手段」の一例に相当するものであり、例えばアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)などによって構成されている。このフォトダイオード20は、レーザダイオード10からレーザ光L1が発生し、そのレーザ光L1が装置外に存在する検出物体(図示略)にて反射したとき、その反射光L2を受光して電気信号に変換している。なお、検出物体からの反射光については上下方向所定領域内のものが凹面鏡41に受けられる構成となっており、図2では、符号L2a,L2bで示す2つのライン付近を境界としてこのラインL2a,L2b間の領域の反射光L2が凹面鏡41によって反射されるようになっている。
【0025】
レーザダイオード10から出射されるレーザ光L1の光軸上にはレンズ60が設けられている。このレンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード10で発生して拡散しようとするレーザ光L1を集光し略平行光に変換している。
【0026】
レンズ60を通過したレーザ光L1の光路付近には、ミラー30が設けられている。このミラー30は、レーザ光L1の光軸に対し所定角度(例えば45°)で傾斜してなる反射面31と、反射面31と交差する方向の貫通路32とを備えており、レーザダイオード10からのレーザ光L1を貫通路32を介して通過させる一方、装置外の検出物体からの反射光L2(より詳しくは凹面鏡41にて反射された反射光)をフォトダイオード20に向けて反射させている。
【0027】
なお、本実施形態では、ミラー30及び回動反射機構40が「誘導手段」の一例に相当し、空間側から戻る反射光L2をフォトダイオード20(光検出手段)に誘導するように機能する。
【0028】
また、ミラー30を通過するレーザ光L1の光軸上には、回動反射機構40が設けられている。回動反射機構40は、「回動偏向手段」の一例に相当するものであり、回動可能に構成された凹面鏡41と、この凹面鏡41に連結された軸部42と、この軸部42を回動可能に支持する図示しない軸受とを備えている。そして、凹面鏡41によりレーザダイオード10からのレーザ光L1を空間に向けて反射させ、且つ、この凹面鏡41により装置外の検出物体からの反射光L2をフォトダイオード20に向けて偏向するように機能している。
【0029】
凹面鏡41は、「偏向部」の一例に相当するものであり、ミラー30を通過したレーザ光L1の光軸上に配置される凹状の反射面41aを備えている。凹面鏡41の反射面41aは、例えば放物面として構成されており、水平方向に沿って平行に入射する所定領域(L2aとL2bの間の領域)の反射光L2を上方に向けて反射させつつ集光し、集光される反射光L2の焦点位置が中心軸42a上になるように形状が調整されている。
【0030】
また、凹面鏡41は、上下方向に延びる中心軸42aを中心として回転可能に配設されている。凹面鏡41の回転中心となる中心軸42aの方向は、ミラー30を通過して当該凹面鏡41に入射するレーザ光L1の方向と略一致しており、レーザ光L1が凹面鏡41に入射する入射位置P1が中心軸42a上の位置とされている。
【0031】
また、本実施形態では、凹面鏡41の反射面41aにおいて位置P1付近の部分が、垂直方向(反射面41aに入射するレーザ光L1の方向)に対して略45°の角度で傾斜しており、凹面鏡41の反射面41aで反射したレーザ光L1が水平方向に照射されるようになっている。また、凹面鏡41は入射するレーザ光L1の方向と一致した方向の中心軸42aを中心として回転するため、凹面鏡41の回転位置に関係なくレーザ光L1の入射角度が常に約45°で維持され、位置P1からのレーザ光L1の向きは絶えず水平方向(中心軸42aと直交する方向)となるように構成されている。なお、本実施形態では、中心軸42aの方向を垂直方向(上下方向、縦方向)としており、中心軸42aと直交する平面方向を水平方向としている。
【0032】
さらに、レーザレーダ装置1には、回動反射機構40を駆動するモータ50が設けられている。このモータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、軸部42を回転させることで、軸部42と連結された凹面鏡41を回転駆動している。なお、モータ50の具体的構成としては、例えば直流モータ、交流モータ、ステップモータなど様々なモータを使用できる。
【0033】
また、本実施形態では、図2に示すように、モータ50の軸部42の回転角度位置(即ち凹面鏡41の回転角度位置)を検出する回転角度センサ52が設けられている。回転角度センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸部42の回転角度位置を検出しうるものであれば公知の様々なセンサを使用できる。なお、本実施形態では、回転角度センサ52が「回動位置検出手段」の一例に相当し、少なくともレーザダイオード10にてパルスレーザ光L1が発生する毎に、凹面鏡41の回動位置を検出するように機能する。
【0034】
また、本実施形態に係るレーザレーダ装置1では、レーザダイオード10、フォトダイオード20、ミラー30、レンズ60、回動反射機構40、モータ50等がケース3の内部に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。このケース3は、主ケース部4と透過板5とを備えており、全体として箱状に構成されている。主ケース部4は、上壁部4a及び下壁部4bが上下に対向して配置され、周壁部4cが上方側の外周壁として構成されており、周壁部4cと下壁部4bの間が窓部4eとして導光可能に開放されている。窓部4eは、主ケース部4において光の出入りを可能とするように開放した部分であり、ケース3の下方側且つ凹面鏡41の周囲において周方向所定領域に亘って形成され、且つ上下方向所定領域を開放する構成で設けられている。そして、この開放形態の窓部4eを閉塞するように透明の樹脂板、ガラス板などからなる透過板5が配置されている。
【0035】
このように構成されるレーザレーダ装置1では、凹面鏡41の回転角度θ(所定の基準回転位置(例えば、ロータリエンコーダが原点を示す位置)からの回転角度)が定まれば装置からのレーザ光L1の投射方向が特定される。従って、レーザレーダ装置1が所望の傾斜状態(例えば、レーザ光L1の走査方向が常に鉛直方向と直交する方向となるような状態等)で設置されていれば、フォトダイオード20が検出物体からの反射光L2を受光したときの凹面鏡41の回転角度を回転角度センサ52によって検出することで、検出物体の方位を正確に検出できる。
【0036】
また、レーザダイオード10にてレーザ光L1(パルスレーザ光)が発生してからフォトダイオード20によって当該レーザ光L1に対応する反射光L2が検出されるまでの時間Tを検出すれば、この時間Tと光速とに基づいて、レーザ光L1の発生から反射光L2受光までの光経路の長さを算出することができ、レーザレーダ装置1の所定基準位置(例えば位置P1)から検出物体までの距離Lも正確に求めることができる。つまり、レーザレーダ装置1から検出物体までの距離及び方位をいずれも正確に検出することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、制御回路70が「時間計測手段」の一例に相当しており、レーザダイオード10にてパルスレーザ光L1が発生する毎に、当該レーザ光Lの発生から当該レーザ光の反射光L2がフォトダイオード20によって検出されるまでの時間を計測している。また、制御回路70は、「距離算出手段」の一例に相当し、時間計測手段によって計測された時間に基づいて、レーザ光Lの到達位置までの距離を算出するように機能する。更に、制御回路70は、「位置特定手段」の一例に相当し、距離算出手段によって算出された距離と、回動位置検出手段によって検出された凹面鏡41の回動位置とに基づいて検出物体の位置(具体的には、基準物体の方位と基準物体までの距離)を特定するように機能する。
【0038】
(検出用基準物体の構成)
次に、検出用基準物体について説明する。
図3は、第1実施形態のレーザ測定装置に用いる検出用基準物体を概略的に例示する斜視図である。図4は、その検出用基準物体の平面図であり、図5は、その検出用基準物体の側面図である。図6(A)は、検出用基準物体の高位置を走査した時の受光波形を例示するグラフであり、図6(B)は、検出用基準物体の低位置を走査した時の受光波形を例示するグラフである。 図7(A)は、水平方向に沿ってレーザ光が走査されるようにレーザレーダ装置が設置されているときの走査状態を説明する説明図であり、図7(B)は、レーザ光の走査方向が水平方向に対して傾くように設置されたときの走査状態を説明する説明図である。
【0039】
図3〜図5に示すように、検出用基準物体90は、円錐状に構成されており外周部90aが「特定反射光」を反射する反射部として構成されている。この検出用基準物体90は、レーザ光L1の照射対象部分となる外周部90aにおいて、細長の明色領域Pwと細長の暗色領域Pbとが周方向に交互に配された特定図形が付されている。各明色領域Pw及び各暗色領域Pbは、いずれも同形状となっており、いずれも下方側の幅が大きく上方側につれて次第に幅が小さくなる三角形状に構成されている。明色領域Pwは、例えば白色等の領域として構成され、暗色領域Pbは、例えば黒色等の領域として構成されており、暗色領域Pbの反射率よりも明色領域Pwの反射率の方が大きくなるように構成されている。
【0040】
また、検出用基準物体90は、外周部90a(反射部)おける高さ方向(頂点91から底面92に下ろした垂線と平行な方向:図5も参照)の各位置が、高さに応じた幅(高さ方向と直交する断面の直径D)で構成されている。具体的には、外周部90aの各高さの直径D、即ち各高さにおける高さ方向と直交する切断面の径は、高さが高くなるにつれて小さくなるように構成されている。
【0041】
このように構成される外周部90aは、レーザ光L1による走査を受けたときに特定反射光を反射する構成をなしている。具体的には、検出用基準物体90の外周部90a(反射部)における高さ方向の各位置が高さに応じた構造をなしているため、この外周部90aにレーザ光L1が入射したときには、当該レーザ光L1が入射する高さに応じた内容の特定反射光を発するようになっている。
【0042】
この検出用基準物体90は、例えばレーザ光L1の走査方向と検出用基準物体90の高さ方向とが交差する関係(具体的にはほぼ直交する関係)となるように配置されるものである。例えば、図1等のように水平方向に沿ってレーザ光L1が移動するように走査されることが想定されたレーザレーダ装置1によって検出する場合、レーザレーダ装置1からのレーザ光L1の走査経路上(即ち、凹面鏡41の回転に応じて横方向に移動するレーザ光L1の移動経路上)の所望の位置において、高さ方向が鉛直方向に近くなるように(例えば、底面92が水平面上に接するように)検出用基準物体90を立てて配置する。
【0043】
そして、このような配置でレーザレーダ装置1によって検出を行う場合、検出用基準物体90の外周部90aにレーザ光L1が照射されるときには、検出用基準物体90の高さ方向に対してほぼ直交する方向にレーザ光L1が横切るため、暗色領域Pbからの反射光と明色領域Pwからの反射光が交互に発生する。例えば、図4の例では、凹面鏡41から照射されるレーザ光L1をタイミング毎にレーザ光L11、L12、L13、L14、L15と示しており、検出用基準物体90に最初に到達したレーザ光L11は暗色領域Pbに入射するため、このレーザ光L11の受光タイミングでは暗色領域Pbからの反射光(相対的に光量が小さい反射光)がフォトダイオード20に受光されることとなる。その後、レーザ光L11の後に発生するレーザ光L12は、明色領域Pwに入射するため、このレーザ光L12の受光タイミングでは明色領域Pwからの反射光(相対的に光量が大きい反射光)がフォトダイオード20に受光されることとなる。更にその後、レーザ光L12の後に発生するレーザ光L13は暗色領域Pbに入射するため、このレーザ光L13の受光タイミングでは暗色領域Pbからの反射光(相対的に光量が小さい反射光)がフォトダイオード20に受光されることとなる。同様に、レーザ光L14のタイミングで、明色領域Pwからの反射光(相対的に光量が大きい反射光)が受光され、レーザ光L15のタイミングで、暗色領域Pbからの反射光(相対的に光量が小さい反射光)が受光され、レーザ光L16のタイミングで、明色領域Pwからの反射光(相対的に光量が大きい反射光)が受光される。このような特定反射光の発生により、図6のように、暗、明、暗、明、暗、明が交互に現れる受光波形が得られるようになっている。
【0044】
図6では、図3〜図5の検出用基準物体90をレーザ光L1の走査経路上に配置(より詳しくは、水平方向に沿って移動するレーザ光L1に対し、検出用基準物体90の高さ方向が鉛直方向となるように配置)して検出を行ったときの受光信号の出力(受光量)と、凹面鏡41の角度との関係を示している。この図6では、フォトダイオード20を所定感度に定めたときの例を示しており、凹面鏡41がある角度範囲(図4の符号L12のようにレーザ光L1が明色領域Pwに入射し得る角度範囲)となったときに、受光信号の出力が第1閾値V1以上となっている。また、符号L13のように、レーザ光L1が暗色領域Pbに入射し得る角度範囲となったときには、受光信号の出力が、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上となり、更にその後、凹面鏡41が変位して符号L14のようにレーザ光L1が明色領域Pwに入射し得る角度範囲となったときには、受光信号の出力が再び第1閾値V1以上となっている。このように、検出用基準物体90をレーザ光L1の走査経路上に配置してレーザレーダ装置1にて物体検出を行ったときに、フォトダイオード20において、第1閾値V1以上の出力(明色領域Pwからの反射光量に相当する出力)と、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の出力(暗色領域Pbからの反射光量に相当する出力)とが交互に繰り返されるようになっており、検出用基準物体90を用いる場合にはこのような交互の出力を発生させる反射光を「特定反射光」として扱う。
【0045】
なお、本実施形態では制御回路70が「特定反射光検出手段」の一例に相当し、回動反射機構40から照射されるレーザ光L1の走査エリア上に検出用基準物体90が配置されたときに、フォトダイオード20(光検出手段)によって検出される反射光L2の波形から特定反射光を検出するように機能しており、例えば、第1閾値V1以上の受光出力と第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の受光出力が所定角度範囲内で所定回数繰り返された場合に「特定反射光」の受光があったと判断している。
【0046】
(高さ計測)
次に、検出用基準物体90を用いた高さ計測について説明する。
レーザレーダ装置1では、図6のような特定反射光を検出した場合、この特定反射光が生じている角度幅θa(角度範囲)を検出する。本実施形態では、上記のように、第1閾値V1以上の出力(明色領域Pwからの反射光量に相当する出力)と、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の出力(暗色領域Pbからの反射光量に相当する出力)とが交互に繰り返された角度範囲において、第2閾値V2以上の角度幅を「特定反射光」が生じている角度幅(角度範囲)θaとしている。この角度幅θaは、検出用基準物体90の走査位置(レーザ光L1が照射される位置)において一端部(レーザ光L1の最初の入射位置)から他端部(レーザ光L1の最後の入射位置)に至るまでの凹面鏡41の角度を示すものである。例えば、図7(B)のようにレーザ光L1が検出用基準物体90の上方位置を横切る場合には、図6(A)のように、角度幅θaが相対的に小さくなり、逆に、図7(A)のようにレーザ光L1が検出用基準物体90の高さ方向中央位置を横切る場合には、図6(B)のように、角度幅θaは図6(A)の場合に比べて相対的に大きくなる。
【0047】
そして、このように得られた角度幅θaと検出用基準物体90までの距離Lに基づいて、レーザ光L1の照射位置での検出用基準物体90の直径Dを算出する。例えば、レーザレーダ装置1から図5のような走査ラインF1で走査がなされ、上記のように角度幅θaが得られた場合、この走査ラインF1が通る一端部P11から他端部P12までの径(直径D)を以下の第1式で求めることができる。なお、この第1式は、図8のような考えで導き出されるものである。また、この第1式で用いられる距離Lは上述の検出物体までの距離計測方向によって算出することができ、具体的には、角度幅θaの中央の角度(又は中央の角度に最も近い角度)での検出物体までの距離を用いる。
D=2L・sin(θa/2)/(1−sin(θa/2))
【0048】
また、本実施形態では、例えば以下の第2式で高さを求めることができる。
H=Ha(1−D/Da)
なお、Haは、円錐状の検出用基準物体90の底面92から頂点91までの高さである。また、Daは、底面92(最下部)の直径である。
【0049】
なお、上記第1式及び第2式(具体的には、第1式及び第2式に基づいて高さHを算出するプログラム)は、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データに相当する。また、本実施形態では、制御回路70が「高さ計測手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって特定反射光が検出された場合に、上記対応データを参照して特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さを計測するように機能する。
【0050】
(傾き検出)
次に、上記のような高さ計測を、レーザレーダ装置1の傾きの検出に用いる場合について説明する。
レーザレーダ装置1での傾きの検出は、例えば初期設定等の所定モードのときに行われる。レーザレーダ装置1の傾き検出を行う場合、まず、検出用基準物体90を走査エリア内の規定の位置に配置し、その上で、レーザレーダ装置1を動作させ、検出用基準物体90におけるレーザ光L1の照射高さの計測を行う。照射高さの計測方法は上述した通りであり、これにより、上述の高さHが算出される。
【0051】
なお、レーザ光L1が水平走査されるとき(即ち、レーザレーダ装置1が傾斜していないとき)に規定位置の検出用基準物体90に照射される高さ(基準高さ)Hbは予め定めておくことができ、上記算出によって得られた高さHと基準高さHbの差が小さい場合(例えば図7(A)のような場合)には傾きが小さいことになり、高さHと基準高さHbの差が大きい場合(例えば図7(B)のような場合)には傾きが大きいことになる。
【0052】
また、このような高さ計測を行う場合、計測された高さが予め設定された範囲(基準範囲)を超えた場合に、ブザーやランプ或いは表示器などによってその旨を報知するようにしてもよい。例えば、高さHと基準高さHbの差が規定された閾値を超える場合に上記のように報知することでユーザはレーザレーダ装置1が傾いて設置されていることを容易に且つ迅速に把握することができる。
なお、この場合、制御回路70及び報知のための装置(ブザー、ランプ、表示器等)が「報知手段」の一例に相当し、高さ計測手段によって計測される照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行うように機能する。
【0053】
(監視エリアの設定)
次に、本実施形態に係るレーザ測定装置100で行われる監視エリアの設定処理について説明する。
図9は、レーザレーダ装置1で行われる設定処理の流れを例示するフローチャートである。なお、本実施形態では、図9の処理を行う制御回路70が「監視エリア設定手段」の一例に相当し、位置特定手段によって特定された検出用基準物体90の位置に基づいて監視エリアを設定するように機能する。
【0054】
図9の設定処理は、例えば図示しない操作部に対して所定操作がなされたときに制御回路70によって開始される処理である。なお、この操作部は、例えばケース3の外部においてキーやスイッチなどで構成されていてもよく、ケース3の内部に設けられていてもよい。或いは、レーザレーダ装置1とは別装置として設けられていてもよい。
【0055】
図9の設定処理が開始されると、まず検出用基準物体90を検出する検出処理が行われる(S1)。この基準物体の検出処理では、通常の物体検出処理と同様にレーザ光L1を空間に投射し、このレーザ光L1の走査経路上に存在する検出用基準物体90を検出している。具体的には、例えば、レーザ光L1の走査を所定回動範囲(例えば360°)に亘って行い、各パルスレーザ光の投射に応じて返される各反射光を受光すると共に、上述の「特定反射光」が受光されたか否かを確認する。
【0056】
検出用基準物体90として、例えば図3〜図5のような検出用基準物体90を用いる場合、第1閾値V1以上の出力と、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の出力とが交互に繰り返されるような一連の反射光が受光されたか否かを確認する。
【0057】
また、S1の検出処理では、凹面鏡41を所定の角度範囲(例えば360°)回動させて検出用基準物体90の検出を行っており、図10のように走査経路上に複数の検出用基準物体90が存在する場合には、これら複数の検出用基準物体90が検出されることとなる。
【0058】
図9に示すように、S1の検出処理の後には、S2の距離算出処理が行われる。この距離算出処理では、S1で検出された各検出用基準物体90についての、レーザレーダ装置1からの各距離X1〜X4が算出される(図10参照)。具体的には、S1で各検出用基準物体90を検出する際に、各検出用基準物体90に投射される各レーザ光L1の発生から、当該各レーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの各時間を検出しており、この検出された各時間と、既知の光速とに基づいてレーザレーダ装置1から各検出用基準物体90までの各距離X1〜X4を算出している。なお、各検出用基準物体90までの各距離X1〜X4は、例えば図8の距離L(角度幅θaの中間位置での距離)のように求めることができる。
【0059】
図9に示すように、S2の距離算出処理の後には、S3の位置特定処理が行われる。この処理は、S2で算出された各距離X1〜X4(図10)に基づいて、各検出用基準物体90の位置を特定する処理である。
【0060】
具体的には、S1で各検出用基準物体90を検出する際に、上記各検出時間(各検出用基準物体90に投射される各レーザ光L1の発生から、当該各レーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの各時間)と共に、各検出用基準物体90に入射する各レーザ光L1がレーザダイオード10から出射されるときの凹面鏡41の各回動位置を検出しており、S3では、これら各回動位置と、S2で算出された各距離X1〜X4とに基づいて、各検出用基準物体90の各位置を検出している。
【0061】
例えば、図10の位置A1にある検出用基準物体90(レーザレーダ装置1からX1離れた距離にある基準物体)からの特定反射光が検出されるときに、上記検出時間(A1にある検出用基準物体90に入射するあるパルスレーザ光L1の発生から、当該パルスレーザ光L1が受光されるまでの時間)と共に、当該検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1が出射されるときの凹面鏡41の「回動位置」をも検出しており、S3の処理では、この「回動位置」によって、位置A1にある検出用基準物体90の方向を特定している。そして、この特定される方向と、S2で求められた距離X1とによって、位置A1にある検出用基準物体90についての、レーザレーダ装置1を基準とする具体的座標を特定している。
【0062】
なお、図10では、一例として、所定の基準方向Fにレーザ光L1が投射されるときを凹面鏡41の基準回動位置(角度0°)とし、「特定反射光が検出されるときの凹面鏡41の回動位置」として、この基準回動位置からどの程度回転したかを示す回転角度θを求めている。従って、例えば、位置A1にある検出用基準物体90にレーザ光L1が投射されるときの回動位置は、基準回動位置から当該回動位置までの回転角度θ1によって表すことができ、位置A1の検出用基準物体90の座標は、このθ1と距離X1とによって特定できる。
【0063】
上記説明では、位置A1にある検出用基準物体90の具体的座標を特定する方法を説明したが、他の位置A2〜A4にある検出用基準物体90についても同様の方法で具体的座標を特定できる。
【0064】
図9に示すように、S3の処理の後には、各検出用基準物体90での照射高さが基準高さを満たしているか否かを判断する(S4)。具体的には、上述の高さ計測方法によって各検出用基準物体90での照射高さHを計測し、この照射高さHが予め定められた許容範囲に収まっているかを判断する。そして、収まっていない場合にはS4にてNoに進み、エラーの旨をブザー、ランプ、表示部などによって報知する(S7)。なお、このとき、照射高さHが許容範囲に収まっていない検出用基準物体90を特定する情報を表示するとなお良い。
【0065】
一方、いずれの検出用基準物体90の照射高さHも予め定められた許容範囲に収まっている場合には、S4にてYesに進み、S5の検出エリア設定処理を行う。この検出エリア設定処理は、S3の処理で特定された各検出用基準物体90の各位置Pa、Pb、Pc、Pd(図10)のいずれか又は全てを境界位置とするように検出エリアを設定する。例えば、S3の処理で特定された各検出用基準物体90の各位置Pa〜Pdを環状に結ぶことで、多角形状の検出エリアを設定することができる。
【0066】
次に、検出モードでの物体検出について説明する。
本実施形態では、操作部に対して所定操作がなされたときに、図9のような設定処理が開始され、設定モード(設定処理を行うモード)に移行するようになっている。一方、この設定処理が終わると、自動的に、或いは操作部に対する操作に応じて実際の検出処理を行い得るモード(検出モード)に移行するようになっている。
【0067】
検出モードでは、図1のように、レーザレーダ装置1を設定処理のときと同じ位置に配置し、その状態で、レーザダイオード10からパルスレーザ光L1を順次出射し、且つ凹面鏡41を順次回動してレーザ光L1の走査を行う。パルスレーザ光L1の出射タイミングや凹面鏡41の回動タイミングは様々に設定できるが、例えば、パルスレーザ光毎に凹面鏡41を少しずつ回動させることで、凹面鏡41からの各パルスレーザ光L1の投射方向を水平方向に順次変化させることができる。
【0068】
このようなレーザ光走査において、走査エリア上に検出物体が存在するときには、凹面鏡41から投射されたパルスレーザ光L1が当該検出物体にて反射し、この反射光の一部が再び凹面鏡41に入射する。そして、凹面鏡41にて反射した後、集光レンズ62によって集光され、フォトダイオード20に入射することとなる。従って、検出モードでは、フォトダイオード20がこのような反射光を受光したか否か(より詳しくは、フォトダイオード20からの出力が閾値を超えたか否か)を、凹面鏡41の各回動位置毎に確認し、各回動位置に対応する方向に検出物体が存在するか否かを確認している。
【0069】
また、各回動位置において、物体からの反射光L2が受光された場合、この反射光L2の元となるパルスレーザ光L1が発生してから、当該パルスレーザ光L1の反射光L2がフォトダイオード20によって受光されるまでの時間Tを検出する。そして、既知の光速Cを考慮し、レーザダイオード10から当該物体までの光路及び当該物体からフォトダイオード20までの光路を加算した光路長L、或いは、当該物体までの距離X(例えば光路長Lの1/2)を求める。更に、そのときの凹面鏡41の回動位置(即ち、反射光L2の元となるパルスレーザ光L1が投射されるときの回動位置)と、当該物体までの上記距離Xとに基づいて、当該物体の座標を特定する。そして、この座標が上述の設定処理(図9)で設定された検出エリアの範囲内にあるか否かを判断し、検出エリア内にあれば、検出エリア内において物体検出がなされたものとして所定の出力処理を行う。なお、所定の出力処理としては、物体検出がなされた旨の報知や、検出された物体の位置データの出力などが挙げられる。一方、得られた座標が検出エリア外の座標であれば、当該物体については、検出されたものとして扱わずに無視する。
【0070】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態に係るレーザ測定装置100では、検出用基準物体90の外周部90a(反射部)において所定の高さ方向の各位置が高さに応じた構造をなし、且つレーザ光L1が入射したときに、当該レーザ光L1が入射する高さに応じた内容の特定反射光を発するように構成されている。従って、レーザ光L1の高さを検出すべき所望の位置に検出用基準物体90を配置すれば、その位置においてレーザ光L1の照射高さを適切に反映した内容の特定反射光を発生させることができる。
【0071】
一方、レーザレーダ装置1には、フォトダイオード20(光検出手段)によって検出される反射光の波形から特定反射光を検出する特定反射光検出手段が設けられている。また、レーザレーダ装置1は、反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを備えており、更に、特定反射光が検出された場合に、対応データを参照して特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで検出用基準物体90におけるレーザ光L1の照射高さを計測する高さ計測手段が設けられている。従って、レーザレーダ装置1では、所望の位置に配置された検出用基準物体90で発生した特定反射光をより確実に検出することができ、且つ、対応データ(反射光の状態と高さ情報とを対応付けたデータ)に基づいて特定反射光が検出用基準物体90のどの高さで生じたものであるかを正確に判断できる。
特に、検出エリア内の所望の位置のレーザ光照射高さを検出する上で、高価な外部装置(赤外線カメラ等)を用いる必要がなく、複雑な画像解析等も必要がないため、検出エリア内におけるレーザ光の実際の照射高さをより簡単に検出することができ、作業性の面で極めて有利となる。
【0072】
また、本実施形態のレーザ測定装置100では、高さ計測手段によって計測される照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行うことができる。従って、所望の位置に配置される検出用基準物体90に照射されるレーザ光が予め定められた基準範囲にあるか否かを作業者等が容易に且つ迅速に把握し易くなり、特定位置におけるレーザ光の照射高さに基づいて装置本体の初期設定やメンテナンス等を行う場合(例えば、特定位置におけるレーザ光の照射高さに基づいて装置本体に傾きが生じていないかを判断し調整する場合や、レーザ光が監視エリア内の特定位置において望ましい高さを通っているか否かを判断し調整する場合等)などにおいて極めて有利となる。
【0073】
また、一般的に通常監視エリアを設定しようとした場合、監視エリア(検出エリア)を設定するためのデータの準備や設定装置の準備、或いはデータ入力作業等、相当の労力を要することが懸念される。特に、検出エリアを複雑に設定する場合には、より細かな条件設定が必要となり、膨大なデータを用意しなければならないため、データの準備やデータ入力の負荷が極めて大きくなってしまう。また、入力すべきデータを算出するための演算処理や入力処理については、検出装置(レーザ測定装置)以外の情報処理装置(パーソナルコンピュータ等)が必要となり、設定環境が大掛かりなものとなってしまうという問題もある。
これに対し本実施形態のレーザ測定装置100によれば、位置特定手段によって特定された検出用基準物体90の位置に基づいて監視エリアを設定できるようになる。即ち、所望の位置に配置された検出用基準物体90に実際にレーザ光を照射し、その位置をレーザレーダ装置側で実際に把握しながら監視エリアを設定することができるため、実際の使用状態を考慮した適切なエリア設定を行いやすくなる。
【0074】
また、本実施形態のレーザ測定装置100では、検出用基準物体90の外周部90a(反射部)における高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されている。この構成によれば、検出用基準物体90の形状や表面状態を複雑化することなくレーザ光の照射高さに応じて状態が変化するように特定反射光を発生させることができる。
【0075】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態のレーザ測定装置200にて行われる設定処理について説明する。なお、第2実施形態のレーザ測定装置200でも、図9に示す流れで設定処理が行われ、まず、S1の基準物体検出処理が行われる。この基準物体検出処理の具体的内容は第1実施形態と若干異なっており、本実施形態のレーザ測定装置200では、ユーザが検出用基準物体90を、レーザ光L1の走査エリア上における複数位置に移動させることを前提とし、レーザレーダ装置1側では、ユーザによって検出用基準物体90が順次移動されたときに、それら各移動位置からの各特定反射光を受光している。
【0076】
この基準物体検出処理は、具体的には例えば図11のような流れで行われ、まず、基準物体の検出を実際に開始するか否かを判断する処理を行なう(S21)。この判断処理は、例えば、ユーザが操作部(図示略)に対して所定の開始指示(基準物体の検出に移行する旨の指示)をしたか否かを確認してもよく、或いは、所定時間が経過したか否か(例えば、図11の基準物体検出処理の開始から所定時間が経過したか否か、或いは前回の基準物体の検出から所定時間が経過したか否か)を確認してもよい。或いはS21の判断処理自体を省略してもよい。
【0077】
S21にてYesに進む場合には、凹面鏡41をある回動位置に定めた状態でパルスレーザ光L1を出射し(S22)、その回動位置において反射光の受光を確認する処理を行なう(S23)。そして、特定反射光が検出されたか否かを判断する処理を行う(S24)。S24での判断は、現在(S24の判断を行う時)の回動位置で確認される反射光のみに基づいて「特定反射光」が検出されたか否かを判断してもよく、現在の回動位置以前の複数の回動位置での各反射光に基づいて「特定反射光」が検出されたか否かを判断してもよい。
【0078】
例えば、図3〜図5の検出用基準物体90が用いられる場合には、現在の回動位置以前の複数の回動位置の反射光に基づいて、図6のような受光信号が得られたか否かを判断し、得られた場合にはS24にてYesに進む。また、特定反射光が検出されない場合には、S24にてNoに進み、凹面鏡41を1ステップ変化させて次の角度に設定し、S22以降の処理を繰り返す。
【0079】
S24にてYesに進む場合には、特定反射光が得られた角度幅θa(図6参照)の所定角度(例えば角度幅θaの中央角度)において検出用基準物体90に投射されるパルスレーザ光L1がレーザダイオード10にて発生してから、当該パルスレーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの時間Taを検出する(S26)。この時間Taの検出の方法は、第1実施形態の各検出用基準物体90での検出と同様である。
【0080】
また、S26では、上記時間Taの検出と共に、検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1がレーザダイオード10から出射されるときの凹面鏡41の回動位置(例えば特定反射光が得られる角度幅θaの中央角度)を検出する。例えば、図12の移動位置B1にある検出用基準物体90から特定反射光が検出されるときには、この特定反射光が得られる角度幅θaの中央角度において、上記時間Ta(B1にある検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1の発生から、当該パルスレーザ光L1が受光されるまでの時間)と共に、当該検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1が出射されるときの凹面鏡41の「回動位置」(基準回動位置からの回動角度θa’)を検出する。
【0081】
この場合、移動位置B1にある検出用基準物体90に向けて出射されるいずれかのパルスレーザ光L1について、当該パルスレーザ光L1の出射から、当該パルスレーザ光L1に応じた反射光の受光までの時間Taを検出する。そして、当該パルスレーザ光L1が出射されるときの凹面鏡41の回動位置(回動角度θa’)をも検出する。
【0082】
このように時間Taと回動位置(回動角度θa’)が検出された後には、これら値を、移動位置B1を特定する値としてメモリ(図示略)に記憶する(S27)。
【0083】
その後、基準物体の検出処理を終了するか否かを判断する(S28)。この判断は、例えば、ユーザが操作部に対して所定の終了操作を行ったか否かを判断したり、或いは、最後の基準物体の検出から一定時間経過したか否かを判断するといった方法が挙げられる。
【0084】
ユーザが所定の終了操作を行ったときに図11の基準物体検出処理を終了する構成とした場合、S28では、操作部に対して所定終了操作がなされたか否かを判断し、所定終了操作がなされていない場合にはS28にてNoに進み、次の移動位置について、S21以降の処理を繰り返す。一方、所定終了操作がなされた場合にはS28にてYesに進み、当該基準物体検出処理を終了する。
【0085】
上記基準物体検出処理では、ユーザが図13のように検出用基準物体90を移動したときには、各移動位置B1、B2、B3についてS22〜S27の処理が行われるため、各移動位置B1、B2、B3について上記時間Ta及び回動角度θa’が算出される。そして、各移動位置毎に時間Taと回動角度θa’とが対応付けられてメモリに記憶されることとなる。
【0086】
図11の基準物体検出処理が終了した場合には、図9のS2以降の処理を行う。S2の処理は第1実施形態と同様であり、第1実施形態では、各基準物体についての各距離を算出していたが、本実施形態では、これと同じ方法で各移動位置についての各距離(各移動位置に配置される基準物体までの各距離)を算出する。即ち、各移動位置毎に検出された上記時間Taに基づいて、各移動位置までの各距離を算出する。例えば、図13のように各移動位置B1、B2、B3が検出されている場合には、メモリに記憶される各移動位置毎の時間Taを読み出し、これら時間Taに基づいてレーザレーダ装置1から各移動位置B1、B2、B3までの距離Xs、Xt、Xuを算出する。
【0087】
また、S3の位置特定処理(図9)も、第1実施形態と同様であり、第1実施形態では、各基準物体の各座標を検出していたが、本実施形態でも、これと同じ方法で、各移動位置の各座標を検出する。具体的には、各移動位置に入射する各レーザ光L1の出射時における凹面鏡41の各回動位置と、S2で算出された各距離とに基づいて、検出用基準物体90の各移動位置の座標を検出する。例えば、図13のように各移動位置B1、B2、B3が検出されている場合、移動位置B1については、移動位置B1のときの回動角度θa’(図13では、B1のときの回動角度をθa1と例示)と、当該移動位置B1までの距離Xsとに基づいて座標Psを算出する。移動位置B2も同様であり、移動位置B2のときの回動角度θa’(図13では、移動位置B2のときの回動角度をθa2と例示)と、当該移動位置B2までの距離Xtとに基づいて座標Ptを算出する。なお、移動位置B3についても同様の方法で、座標Puを算出する。
【0088】
その後、S4の検出エリア設定処理を行う。なお、S4の処理は第1実施形態と同様であり、S3で特定された複数の座標に基づいて、検出エリアを設定する。なお、図14は、図13のように基準物体が順次移動されたときの検出エリアの設定例を示している。図14では、一部の移動位置をPs、Pt、Pu、Pv、Pw、Px、Py、Pzで示しており、それ以外の移動位置については符号を省略している。
【0089】
S4で設定された検出エリアに関するデータは、第1実施形態と同様の方法でメモリ(図示略)に記憶される(S6)。なお、検出モードの際には、メモリに記憶されるデータが読み出され、第1実施形態と同様の方法で検出エリア内の物体検出が行われる。
【0090】
本実施形態のレーザ測定装置200によれば、ユーザが検出用基準物体90を所望の複数位置に順次移動させたときに、レーザレーダ装置1において各移動位置を容易に特定でき、ユーザが検出エリアとしてどのあたりを希望しているかをレーザレーダ装置1側で詳細に把握することができる。また、上記のように検出された各移動位置に基づいて検出エリアを設定しており、このようにすることで、ユーザが望んだ各移動位置(即ちユーザが実際に基準物体を移動させた各位置)を反映した検出エリアを容易に且つ正確に設定できるようになる。特に、いずれの移動位置もレーザレーダ装置1からの距離や方向を独立して設定できるため、図14のような複雑な検出エリアをより簡易に設定することができる。
【0091】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
第3実施形態に係るレーザ測定装置300は、機械的構造やハードウェア構成は第1形態と同様であり、設定処理や物体検出処理などが第1実施形態と異なっている。具体的には、本実施形態は、第1実施形態の特徴を全て含み、図1〜図8を参照して説明した第1実施形態と同様の構成を有しており、更に、新たな処理を追加した構成となっている。よって、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付すと共に詳細な説明は省略し、適宜図1〜図8を参照することとする。
【0092】
(監視エリアの設定)
以下、本実施形態に係るレーザ測定装置300で行われる監視エリアの設定処理について説明する。
図16は、第3実施形態に係るレーザ測定装置で行われる設定処理の流れを例示するフローチャートである。図17は、第3実施形態のレーザ測定装置で行われる監視エリアの設定方法について説明する説明図である。図18は、ある物体検出位置での照射高さを、既知の実測データに基づいて算出する方法の一例を説明する説明図である。図19は、図17の検出エリアについての三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図である。図20(A)は、図17とは異なる検出エリアが設定されるときの三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図であり、図20(B)は、図20(A)とは異なる三次元マップの生成例を概念的に説明する説明図である。図21(A)は、三次元マップのデータ構成例を概念的に説明する説明図であり、図21(B)は、図21(A)とは異なるデータ構成例を概念的に説明する説明図である。
【0093】
図16の設定処理は、例えば図示しない操作部に対して所定操作がなされたときに制御回路70によって開始される処理である。なお、この操作部は、例えばケース3の外部においてキーやスイッチなどで構成されていてもよく、ケース3の内部に設けられていてもよい。或いは、レーザ測定装置300とは別装置として設けられていてもよい。
【0094】
図16の設定処理では、まず検出用基準物体90を検出する検出処理を行う(S31)。このS31の処理は、図9のS1と同様であり、通常の物体検出処理と同様にレーザ光L1を空間に投射し、このレーザ光L1の走査経路上に存在する検出用基準物体90を検出する。具体的には、例えば、レーザ光L1の走査を所定回動範囲(例えば360°)に亘って行い、各パルスレーザ光の投射に応じて返される各反射光を受光すると共に、上述の「特定反射光」が受光されたか否かを確認する。
【0095】
「特定反射光」が受光されたか否かの確認は、第1実施形態と同様であり、例えば図3〜図5のような検出用基準物体90を用いる場合、第1閾値V1以上の出力と、第1閾値V1未満かつ第2閾値V2以上の出力とが交互に繰り返されるような一連の反射光が受光されたか否かを確認する。
【0096】
また、S31の検出処理では、凹面鏡41を所定の角度範囲(例えば360°)回動させて検出用基準物体90の検出を行っており、図17のように走査経路上に複数の検出用基準物体90が存在する場合には、これら複数の検出用基準物体90が検出されることとなる。
【0097】
図16に示すように、S31の検出処理の後には、距離算出処理を行う(S32)。S32の距離算出処理は、図9のS2の処理と同様であり、レーザレーダ装置1からS31で検出された各検出用基準物体90までの各距離(図17の例ではX1〜X4)を算出する。具体的には、S31で各検出用基準物体90を検出する際に、各検出用基準物体90に投射される各レーザ光L1の発生から、当該各レーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの各時間を検出しており、この検出された各時間と、既知の光速とに基づいてレーザレーダ装置1から各検出用基準物体90までの各距離X1〜X4を算出している。なお、各検出用基準物体90までの各距離X1〜X4は、例えば図8の距離L(角度幅θaの中間位置での距離)のように求めることができる。
【0098】
図16に示すように、S32の距離算出処理の後には、S33の位置特定処理を行う。この処理は、図9のS3と同様の処理であり、S32で算出された各距離X1〜X4(図17)に基づいて、各検出用基準物体90の位置(より詳しくは、各検出用基準物体90の中心軸42a(図1)と直交する水平方向(XY平面)における位置)を特定する。
【0099】
具体的には、S31で各検出用基準物体90を検出する際に、上記各検出時間(各検出用基準物体90に投射される各レーザ光L1の発生から、当該各レーザ光L1がフォトダイオード20によって検出されるまでの各時間)と共に、各検出用基準物体90に入射する各レーザ光L1がレーザダイオード10から出射されるときの凹面鏡41の各回動位置を検出しており、S33では、これら各回動位置と、S32で算出された各距離X1〜X4とに基づいて、各検出用基準物体90の各位置を検出している。
【0100】
例えば、図17の位置A1にある検出用基準物体90(レーザレーダ装置1からX1離れた距離にある基準物体)からの特定反射光が検出されるときに、上記検出時間(A1にある検出用基準物体90に入射するあるパルスレーザ光L1の発生から、当該パルスレーザ光L1が受光されるまでの時間)と共に、当該検出用基準物体90に入射するパルスレーザ光L1が出射されるときの凹面鏡41の「回動位置」をも検出しており、S33の処理では、この「回動位置」によって、位置A1にある検出用基準物体90の方向を特定している。そして、この特定される方向と、S32で求められた距離X1とによって、位置A1にある検出用基準物体90についての、レーザレーダ装置1を基準とする具体的座標(XY平面の座標)を特定している。
【0101】
図17では、一例として、所定の基準方向Fにレーザ光L1が投射されるときを凹面鏡41の基準回動位置(角度0°)とし、「特定反射光が検出されるときの凹面鏡41の回動位置」として、この基準回動位置からどの程度回転したかを示す回転角度θを求めている。従って、例えば、位置A1にある検出用基準物体90にレーザ光L1が投射されるときの回動位置は、基準回動位置から当該回動位置までの回転角度θ1によって表すことができ、位置A1の検出用基準物体90の座標は、このθ1と距離X1とによって特定できる。
【0102】
上記説明では、位置A1にある検出用基準物体90の具体的座標を特定する方法を説明したが、他の位置A2〜A4にある検出用基準物体90についても同様の方法で具体的座標を特定できる。なお、本実施形態では、レーザレーダ装置1の配置空間を、上記基準方向FをX軸方向とし、中心軸42a(図2)の方向をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向と直交する方向をZ軸方向とし、これらXYZ座標で位置を特定する三次元空間として示している。
【0103】
本実施形態でも、制御回路70が「特定反射光検出手段」の一例に相当し、回動反射機構40から照射されるレーザ光L1の走査エリア上に検出用基準物体90が配置されたときに、フォトダイオード20(光検出手段)によって検出される反射光L2の波形から特定反射光を検出するように機能しており、走査エリア内の複数の位置に検出用基準物体90が配置されたときには、各位置に配置された検出用基準物体からの特定反射光をそれぞれ検出するように機能している。
【0104】
また、制御回路70は「時間検出手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各位置の検出用基準物体90からの特定反射光が検出されたとき、各検出用基準物体90に入射するレーザ光L1がレーザダイオード10(レーザ光発生手段:図2)にて発生してから、当該レーザ光L1に応じた各検出用基準物体90からの特定反射光がフォトダイオード20(光検出手段:図2)によって検出されるまでの各時間をそれぞれ検出するように機能する。
【0105】
また、制御回路70は「距離算出手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出されたとき、時間検出手段によって検出される各時間に基づいて各検出用基準物体90までの各距離を算出するように機能する。また、制御回路70は、「回動位置検出手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出されるときの凹面鏡41(偏向部)の各回動位置を検出するように機能する。
【0106】
更に、制御回路70は、「位置特定手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出されるときの距離算出手段によって算出された各距離と、回動位置検出手段によって検出された凹面鏡41(偏向部)の各回動位置とに基づいて各検出用基準物体90の位置を特定するように機能する。
【0107】
図16に示すように、S33の処理の後には、各検出用基準物体90での照射高さが基準高さを満たしているか否かを判断する(S34)。この処理は、図9のS4と同様の処理であり、具体的には、第1実施形態で説明した上述の高さ計測方法によって各検出用基準物体90での照射高さHを計測し、この照射高さHが予め定められた許容範囲に収まっているかを判断する。そして、収まっていない場合にはS34にてNoに進み、エラーの旨をブザー、ランプ、表示部などによって報知する(S38)。なお、このとき、照射高さHが許容範囲に収まっていない検出用基準物体90を特定する情報を表示するとなお良い。また、本実施形態では、S34、S38の処理を省略することもできる。
【0108】
本実施形態では、制御回路70が「高さ計測手段」の一例に相当し、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出される場合、それら検出された特定反射光の状態に基づいて各検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さをそれぞれ計測するように機能する。
【0109】
一方、いずれの検出用基準物体90の照射高さHも予め定められた許容範囲に収まっている場合には、S34にてYesに進み、S35の検出エリア設定処理を行う。この検出エリア設定処理は、S33の処理で特定された各検出用基準物体90の各位置Pa、Pb、Pc、Pd(図17)のいずれか又は全てを境界位置とするように検出エリアを設定する。例えば、位置P1と、S3の処理で特定された各検出用基準物体90の各位置Pa〜Pdとを環状に結ぶことで、多角形状の検出エリアを設定することができる(図19参照)
【0110】
本実施形態では、制御回路70(図2)が「監視エリア設定手段」の一例に相当し、位置特定手段によって特定された検出用基準物体90の位置Pa、Pb、Pc、Pdを連結することによって境界線(位置Pa−Pb、Pb−Pc、Pc−Pdを結ぶ仮想線)を定め、この境界線の内部領域を監視エリアとして設定している。具体的には、位置特定手段によって特定された各検出用基準物体90のそれぞれの位置を、他の検出用基準物体90の位置とを結ぶような複数の連結線の組み合わせ(全検出位置において検出位置同士を結ぶ組み合わせとして考えられる全部の全組み合わせ)の内、それら連結線の配置領域の外周をなす最も外側の連結線を検出エリア(監視エリア)の境界としている。例えば、図19の例では、全連結線として、連結線Lab、Lbc、Lcd、Lac、Lbdが想定されるが、これら連結線Lab、Lbc、Lcd、Lac、Lbdの配置の外周をなす最も外側の連結線Lab、Lbc、Lcdが検出エリア(監視エリア)ARの境界となっている。
【0111】
図16に示すように、S35の検出エリア設定処理の後には、S36の三次元マップ生成処理を行う。このS36の処理では、S33で特定された各検出用基準物体の各位置(XY座標)、及びそれら各位置でのレーザ光の照射高さ(Z座標)に基づき、各検出用基準物体90におけるレーザ光照射位置の三次元座標をそれぞれ生成し、記録する。これにより、レーザレーダ装置1内の図示しないメモリ内には、図21(A)のように、S31で行われたレーザ走査のときの各検出用基準物体90でのレーザ光照射位置が三次元座標データとして記録されることになる。
【0112】
「三次元マップ」は、上記のように設定された検出エリア(監視エリア)内の各位置(任意の位置)におけるレーザ光の照射高さを特定し得る情報であればよく、例えば、上記のように生成・記録された三次元座標(各検出用基準物体90でのレーザ光照射位置(水平方向の位置及び高さ)の三次元座標)の集合そのものであってもよい。或いは、このような三次元座標の集合と、検出エリア(監視エリア)内の各位置の水平座標(XY座標)とに基づいて、各位置の照射高さ(Z座標)を算出するような演算式の情報であってもよい。
【0113】
例えば、上記三次元座標(各検出用基準物体90でのレーザ光照射位置(水平方向の位置及び高さ)の三次元座標)の集合を三次元マップとする場合、当該三次元座標の集合を図21(A)のようにレーザレーダ装置1内のメモリ(図示略)に記憶しておく。この場合、検出エリア(監視エリア)内の各位置におけるレーザ光の照射高さを特定するには、例えば、記録された複数の三次元座標の中から、水平座標系(XY座標)で対象位置(照射高さを求める対象位置)に最も近い位置となる三次元座標を抽出し、この抽出された三次元座標のZ座標をその対象位置の照射高さとするといった方法を用いることができる。この場合、例えば、図17、図18のように領域AR1で検出された物体位置Pnの照射高さを決定する場合には、XY座標系で位置Pnに最も近い位置となる位置PaのZ座標(Za)が位置PnのZ座標として推定されることになる。
【0114】
或いは、記録された複数の三次元座標の中から、水平座標系(XY座標)で対象位置(照射高さを求める対象位置)までの距離の短さが上位所定数(例えば上位2つ)に含まれる三次元座標を抽出し、この所定数の三次元座標におけるZ座標の平均値をその対象位置の照射高さとするといった方法などを用いてもよい。この場合、図17、図18のように領域AR1で検出された物体位置Pnの照射高さを決定する場合、例えば、XY座標系で位置Pnに近い上位2位置となる位置P1、PaのZ座標の平均値((Za+Z0)/2)を位置PnのZ座標〈推定値〉として用いることができる。
【0115】
なお、記録された複数の三次元座標に基づき、これら座標間にある対象位置(X,Y座標が判明している位置)のZ座標を求める方法は、公知の補間方法(一次補間、スプライン補間、その他の補間方法)であれば様々な方法を用いることができる。
【0116】
上記のように複数の三次元座標を記録して三次元マップとする場合、その記録座標数が多いほど、実測データの影響を高めることができ、任意の位置の照射高さを推定する上で、より精度を増すことができる。例えば、図17のように検出用基準物体90を4点で検出するよりも、図20(B)のように検出用基準物体90を12点で検出する方が、より精度が増すことになる。本実施形態では、検出用基準物体90の位置を変更したり、検出用基準物体90の数を追加することにより、記録座標数を容易に増やすことができる。
【0117】
また、上記のように得られた三次元座標の集合と、検出エリア(監視エリア)内の各位置の水平座標(XY座標)とに基づいて、各位置の照射高さを算出する演算式としては、例えば、図19のように検出エリア(監視エリア)AR内を複数の領域(例えば、位置(凹面鏡41におけるレーザ光の出射位置)P1又は各検出用基準物体90の位置Pa、Pb、Pcを頂点とする複数の三角形領域)に区切り、各領域の平面を特定するそれぞれの関数式を三次元マップデータとして記録しておいてもよい。
【0118】
図19の例では、三角形領域AR1の平面(位置P1、Pa、Pbを通る平面)をこれら位置P1、Pa、Pbの座標によって特定される関数式(X、Y、Zを変数とする関数式であり、図21(B)では関数式1として図示)で表すことができ、この領域AR1については当該関数式1を三次元マップの要素とすることができる。このような関数式1を三次元マップの要素とすれば、領域AR1内の任意の位置の照射高さを求める場合に、この位置のXY座標が判明すれば、得られたXY座標を、領域AR1についての前記関数式1に代入することで、当該任意の位置のZ座標を算出できることとなる。従って、レーザレーダ装置1によって検出された物体が領域AR1内に存在すると判断された場合には、その検出された物体位置(X、Y座標値)と上記関数式によって当該物体位置での照射高さ(Z座標)を求めることができる。
【0119】
検出エリアARの他の領域も同様であり、三角形領域AR2の平面(位置P1、Pb、Pcを通る平面)をこれら位置P1、Pb、Pcの座標によって特定される関数式(X、Y、Zを変数とする関数式であり、図21(B)では関数式2として図示)で表すことができ、この領域AR2については当該関数式2を三次元マップの要素とすることができる。このような関数式2を三次元マップの要素とすれば、領域AR2内の任意の位置の照射高さを求める場合、この任意の位置のXY座標が判明すれば、得られたXY座標を、領域AR2についての前記関数式2に代入することで、当該任意の位置のZ座標を算出できることとなる。また、三角形領域AR3の平面(位置P1、Pc、Pdを通る平面)をこれら位置P1、Pc、Pdの座標によって特定される関数式(X、Y、Zを変数とする関数式であり、図21(B)では関数式3として図示)で表すことができ、この領域AR3については当該関数式3を三次元マップの要素とすることができる。領域AR3内の任意の位置のZ座標(照射高さ)を関数式3に基づいて求める方法は、領域AR1、AR2の場合と同様である。
【0120】
このように、関数式を三次元マップの要素として記録する場合も、領域を細分化し、関数式の記録数を多くするほど、実測データの影響を高めることができ、任意の位置の照射高さを推定する上で、より精度を増すことができる。例えば、図17のように領域数を3とするよりも、図20(A)のように領域数を細分化し、関数式の数を多くした方がより精度が増すことになる。本実施形態では、検出用基準物体90の位置を変更したり、検出用基準物体90の数を追加することにより、領域数を容易に増やすことができる。
【0121】
本実施形態では、制御回路70(図2)が「三次元マップ生成手段」の一例に相当し、位置特定手段によって特定された各検出用基準物体90の各位置と、高さ計測手段によって計測された各検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さとに基づいて、レーザ光の走査エリア内の各位置でのレーザ光の照射高さを特定可能な三次元マップを生成するように機能する。
【0122】
(物体検出)
次に、検出モードでの物体検出について説明する。
図22は、第3実施形態のレーザ測定装置で行われる物体検出処理の流れを例示するフローチャートである。図23は、照射高さと監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報を概念的に説明する説明図である。図24(A)は、人が検出エリア内に入ったときの高さ毎の検出結果を概念的に説明する説明図であり、図24(B)は、小動物(猫等)が検出エリア内に入ったときの高さ毎の検出結果を概念的に説明する説明図である。図25は、人と小動物を区別する方法を説明する説明図である。
【0123】
本実施形態では、操作部に対して所定操作がなされたときに、図16のような設定処理が開始され、設定モード(設定処理を行うモード)に移行するようになっている。一方、この設定処理が終わると、自動的に、或いは操作部に対する操作に応じて実際の検出処理を行い得るモード(検出モード)に移行するようになっている。なお、検出モードへの移行方法はこれに限られるものではなく、例えば、電源投入や所定の操作をトリガとして検出モードに移行するようにしてもよい。
【0124】
検出モードは、図1、図17のように、レーザレーダ装置1を設定処理のときと同じ位置に配置した状態で行われ、レーザレーダ装置1は、この状態でレーザダイオード10からパルスレーザ光L1を順次出射し、且つ凹面鏡41を順次回動してレーザ光L1の走査を行う。パルスレーザ光L1の出射タイミングや凹面鏡41の回動タイミングは様々に設定できるが、例えば、パルスレーザ光毎に凹面鏡41を少しずつ回動させることで、凹面鏡41からの各パルスレーザ光L1の投射方向を水平方向に順次変化させることができる。
【0125】
図22に示すように、検出処理が始まると、パルスレーザ光の照射に応じた受光信号を確認する(S101)。このS101の処理では、例えばパルスレーザ光の照射時に一定の閾値を超える受光信号が得られたか否かを確認している。
【0126】
例えば、レーザレーダ装置1の走査エリア上に検出物体が存在するときには、凹面鏡41から投射されたパルスレーザ光L1が当該検出物体にて反射し、この反射光の一部が再び凹面鏡41に入射する。そして、凹面鏡41にて反射した後、集光レンズ62によって集光され、フォトダイオード20に入射することとなる。この構成では、検出エリア内の物体からの反射光をフォトダイオード20が受光する場合には一定の閾値を超える受光信号が発生するようになっており、検出モードでは、フォトダイオード20がこのような反射光を受光したか否か(より詳しくは、フォトダイオード20からの出力が閾値を超えたか否か)を、凹面鏡41の各回動位置毎に確認し、各回動位置に対応する方向に検出物体が存在するか否かを確認している。
【0127】
物体からの反射光L2が受光され、S101の処理で閾値を超える受光信号が確認された場合、その物体の位置を検出する。具体的には、まず、この反射光L2の元となるパルスレーザ光L1が発生してから、当該パルスレーザ光L1の反射光L2がフォトダイオード20によって受光されるまでの時間Tを検出する。そして、既知の光速Cを考慮し、レーザダイオード10から当該物体までの光路及び当該物体からフォトダイオード20までの光路を加算した光路長L、或いは、当該物体までの距離X(例えば光路長Lの1/2)を求める。更に、そのときの凹面鏡41の回動位置(即ち、反射光L2の元となるパルスレーザ光L1が投射されるときの回動位置)と、当該物体までの上記距離Xとに基づいて、当該物体の座標(X、Y座標)を特定する。そして、この座標が上述の設定処理(図16)で設定された検出エリア(監視エリア)ARの範囲内にあるか否かを判断し(S103)、検出エリア内にあれば、S103においてYesに進む。一方、得られた座標が検出エリア外の座標であれば、S103にてNoに進み、当該物体については検出されたものとして扱わずに無視する。
【0128】
S103にてYesに進む場合、図16の設定処理で生成された三次元マップを確認し、S102で検出された物体の検出位置(X座標及びY座標)と三次元マップとに基づいてその検出位置での照射高さ(Z座標)を算出する。なお、三次元マップに基づいて検出エリア内の任意の位置の照射高さ(Z座標)を算出する方法は上述の通りである。
【0129】
S104の処理により検出位置のZ座標(照射高さ)を取得した後には、そのZ座標(照射高さ)に対応する検出条件を読み出す(S105)。本実施形態では、制御回路70(図2)によってアクセス可能なメモリ(図示略)に、対応情報が記憶されており、S105では、この対応情報を参照し、S104で得られたZ座標(照射高さ)に対応する検出条件を読み出す。なお、本実施形態では、上記メモリが「対応情報記憶手段」の一例に相当する。
【0130】
メモリに記憶される対応情報では、レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと監視物体の検出条件とが対応付けて定められている。この対応情報は、例えば図23のように、高さの条件として予め複数段階の高さ範囲に分けられており、各段階に対応する物体判定基準(監視物体の検出条件)が定められている。そして、S105では、S103で検出と判断された物体位置での照射高さ(S104で検出された高さ(Z座標))がどの段階に属するかを判別し、その属する段階に対応する物体判定基準を読み出している。例えば、物体検出位置での照射高さ(Z座標)がH1以上且つH2未満の範囲である場合には、これに対応する検出条件(基準2)を適用し、この基準2に基づいて当該物体が監視物体であるか否かを判別することになる。
【0131】
対応情報における高さ範囲別の各基準は様々な考え方で設定することができる。
例えば、図24(A)のように、人を監視対象とする場合、足の位置に相当する高さでは、2つの領域が検出される可能性が高く、手と胴体の位置に相当する高さでは、3つの領域が検出される可能性が高く、頭の位置に相当する高さでは1つの領域が検出される可能性が高い。従って、これらの検出特性を利用して検出条件を定めてもよい。
【0132】
例えば、高さH1未満のときの検出条件(基準1)として、「幅が所定範囲内の2つの領域が検出されるスキャンが発生した場合に監視物体(人)と判断する」という基準を用いることができる。例えば、H1として、成人一般の平均的な足の長さよりも低い値とし、上記所定範囲として、成人一般の平均的な足の幅を含むある程度の範囲(例えば、10cm〜50cm等)を設定しておけば、図24(B)のような猫等の小動物が入り込んだとしても、当該猫のスキャンでは、高さ方向のどの位置でも、上記範囲の領域が2つ同時に検出されることが無いため、猫等の誤検出を防ぐことができ、人(特に成人)については確実に検出することができる。なお、猫が検出エリア内に存在する場合、猫の足付近の高さを走査する場合には細い(小さい)4つの領域が検出されることになり、猫の胴体付近の高さを走査する場合には、ある程度大きい1つの領域が検出されることになり、猫の頭付近の高さを走査する場合には、ある程度の大きさの1つの領域が検出されることになる。
【0133】
また、高さH1以上且つH2未満のときの検出条件(基準2)として、「幅が第1所定範囲内の1つの領域」「幅が第2所定範囲内の1つの領域」「幅が第2所定範囲内の1つの領域と第3所定範囲内の1つの領域」「幅が第2所定範囲内の1つの領域と第3所定範囲内の2つの領域」「幅が第4所定範囲内の2つの領域」のいずれかが検出された場合に監視物体(人)と判断するという基準を用いることができる。H2は成人一般の平均身長程度の高さ(150cm〜180cm程度)、若しくはこれよりやや低い高さとすればよく、第1所定範囲は、成人一般の平均的な頭の幅を含むある程度の範囲(例えば、15cm〜30cm程度)、第2所定範囲は、成人一般の平均的な胴体の幅を含むある程度の範囲(例えば、20cm〜80cm程度)、第3所定範囲は、成人一般の平均的な腕の幅を含むある程度の範囲(例えば、20cm〜80cm程度)、第4所定範囲は、成人一般の平均的な足の幅を含むある程度の範囲(例えば、10cm〜50cm等)とすればよい。このように設定すると、上記高さ範囲(高さH1以上且つH2未満)でいずれかの領域が検出された場合に人である可能性が高く、このような領域ではない場合には、人以外(植物等)である可能性が高いため、上記基準2により人とそれ以外の物体を正確に判別できるようになる。
【0134】
また、高さH2以上且つH3未満のときの検出条件(基準3)として、「幅が第1所定範囲内の1つの領域」が検出された場合に監視物体(人)と判断する」という基準を用いることができる。H3は、成人一般の平均身長程度の高さ(150cm〜180cm程度)よりも相当高く設定すればよく、第1所定範囲は、上述のように、成人一般の平均的な頭の幅を含むある程度の範囲(例えば、15cm〜30cm程度)とすればよい。このように設定すると、上記高さ範囲(高さH2以上且つH3未満)で上記領域が検出された場合に人である可能性が高く、このような領域ではない場合には、人以外(植物等)である可能性が高いため、上記基準3により人とそれ以外の物体を正確に判別できるようになる。
【0135】
また、「高さH3以上」の高さ範囲に対応する検出条件(基準4)として、例えば、「物体を検出しても監視物体と判断しない」という基準を用いることができる。H3として、人間の身長よりも相当高い高さを設定すれば、人が存在し得ない位置で物体検出があってもノイズと判断することができる。
【0136】
なお、高さ範囲を予め複数段階に分け、各段階に対応する物体判定基準を定める方法は、上記のような方法に限られない。例えば、上述した場合と同様にH1、H3を設定した場合において、領域を、H1未満の場合と、H1〜H3の場合と、H3以上の場合とに分け、例えば、H1未満のときには、2つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合に人と判断するといった基準を用いることができる。同様に、H1以上H3未満のときには、3つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合、又は1つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合に人と判断すると言った基準を用いることができる。H3以上の場合は、上述した場合と同様に、例えば、「物体を検出しても監視物体と判断しない」という基準を用いることができる。このような方法であっても、人とそれ以外の物体とをより正確に判別できるようになる。
【0137】
また、上記の例では、監視物体を人としたが、ノイズ対象として猫等の小動物を監視物体とし、このような小動物を判別するために、高さ範囲毎に基準を設定してもよい。例えば、小動物の足程度の高さHaを目安として、高さ範囲が、Ha(例えば、15cm)未満のときの検出条件(物体判断基準)として、4つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合に小動物と判断するといった基準を用いることができる。この場合、物体検出位置での高さ(Z座標)がHa未満であり、当該位置付近で4つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周繰り返された場合に、小動物と判別することになる。また、小動物の胴体及び顔の高さ程度の高さHbを目安として、Ha(例えば、15cm)以上且つHb(例えば、40cm)未満のときの検出条件(物体判断基準)として、1つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周(例えば3周)連続する場合に小動物と判断するといった基準を用いることができる。この場合、物体検出位置での高さ(Z座標)がHa以上Hb未満であり、当該位置付近で1つの領域が検出されるスキャンが所定の複数周繰り返された場合に、小動物と判別することになる。
【0138】
なお、本実施形態では、S105の処理を実行する制御回路70が「検出条件設定手段」の一例に相当し、三次元マップ生成手段によって生成された三次元マップと、対応情報記憶手段に記憶される対応情報と、を参照すると共に、三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、対応情報により各照射高さと対応付けられている監視物体の検出条件を導くことにより、レーザ光の走査エリア内における各位置での監視物体の検出条件を設定するように機能する。
【0139】
また、本実施形態では、S106の処理を実行する制御回路70が「監視物体判定手段」の一例に相当し、レーザ光の走査エリア内において位置特定手段によって検出物体の位置が特定されたときに、その特定された物体位置と、検出条件設定手段によって設定される当該物体位置での検出条件とに基づいて、その検出物体が監視物体であるか否かを判定するように機能する。
【0140】
(第3実施形態の主な効果)
本実施形態のレーザ測定装置300によれば、所望の位置に配置された検出用基準物体90に実際にレーザ光を照射し、その位置をレーザレーダ装置側で実際に把握しながら監視エリアARを設定することができるため、実際のレーザ走査状態を考慮した適切な監視エリア設定を行いやすくなる。特に、監視エリア設定手段は、位置特定手段によって特定された検出用基準物体90の位置を連結することによって境界線を形成し監視エリアに設定しているため、ユーザは、このように境界線が形成されることを予め想定した上で、実環境において境界としたい複数位置に検出用基準物体90を配置すればよく、これにより、実環境におけるユーザの希望境界位置と、レーザレーダ装置内で設定される境界線とのずれをより小さくすることができる。
【0141】
また、レーザ測定装置300では、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出されるときの距離算出手段によって算出された各距離と、回動位置検出手段によって検出された凹面鏡41(偏向部)の各回動位置とに基づき、位置特定手段が各検出用基準物体90の位置を特定している。そして、高さ計測手段は、特定反射光検出手段によって各検出用基準物体90からの各特定反射光が検出される場合、それら検出された特定反射光の状態に基づいて各検出用基準物体90におけるレーザ光の照射高さをそれぞれ計測している。
この構成では、実環境における所望の複数位置に検出用基準物体90を配置するといった簡易な作業によって、それら検出用基準物体90の位置、即ち実環境におけるユーザの任意の指定位置をレーザレーダ装置1に確実に認識させることができ、且つ、レーザレーダ装置1側では、それら各指定位置において設置面からどの程度の高さでレーザ光が照射されているかを実データに基づいて正確に把握できるようになる。
そして、このように実環境で指定された指定位置と当該指定位置におけるレーザ光の照射高さとをレーザレーダ装置1側で正確且つ容易に把握することができるため、ユーザの希望位置の三次元マップを作業性良く且つ実データを反映して精度高く生成することができる。特に、三次元マップに組み込むべき位置の指定を、検出用基準物体90を配置するといった簡単な作業で行うことができるため、三次元マップに新たな位置のデータを追加しやすく、より多くの位置の高さデータを含めるように充実した三次元マップを生成し易くなる。
【0142】
また、本実施形態のレーザ測定装置300では、レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報が記憶されている。そして、走査エリア内における各位置でどのような検出条件とするかは、三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、各照射高さと対応付けられている検出条件を対応情報によって導くことにより決定されるようになっている。
そして、実際の検出時(監視時)には、レーザ光の走査エリア内において検出物体の位置が特定されたときに、三次元マップによりその特定された物体位置での照射高さを特定することができ、その特定された照射高さと対応付けられた検出条件を上記対応情報に基づいて導いて判定に適用することができる。この構成では、異なる複数の判定基準をレーザ光の照射高さに応じて使い分けることができ、高さ毎に望ましい基準を用いやすくなる。
【0143】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0144】
上記実施形態では、外表面を反射部とし、この反射部における高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成された検出用基準物体の例として円錐状に構成された検出用基準物体90を例示したが、このような形状に限られない。例えば、三角錐や四角錐などの他の錐体であってもよい。また、錐体の形状は直錐体でも斜錐体でもよい。
【0145】
上記実施形態では、明色領域Pwと暗色領域Pbが形成された検出用基準物体90が例示されたがこのようなパターンが検出されていなくてもよい。例えば、図15(A)のように、単純な円錐形態の検出用基準物体290を用い、第1実施形態と同様に、この検出用基準物体290からの反射光によって得られた受光範囲(角度幅)に基づいて高さを算出してもよい。この場合、検出用基準物体の外周面をミラー等の反射率の大きい部材で構成すれば、当該検出用基準物体からの反射光のレベルが他の物体からの反射光に比べて格段に大きくなるため、受光波形の中から検出用基準物体290からの反射光によって得られた受光範囲を特定しやすくなる。なお、このように外周面をミラーなどによって構成した場合、フォトダイオード20での受光量が所定閾値を超える光を「特定反射光」として扱うことができる。
【0146】
上記実施形態では円錐状の検出用基準物体を例示したが、反射部(レーザ光を反射する部分、即ちレーザレーダ装置1側に面する部分)における高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されていればよい。例えば、上方となるにつれて幅の狭くなる三角形状の板を検出用基準物体として用いてもよく、上方となるにつれて幅の狭くなる三角錐形状の検出用基準物体を用いてもよい。また、上記実施形態では、上方となるにつれて連続的に幅が狭くなる構成を例示したが、上方となるにつれて段階的に幅が狭くなる構成であってもよい。
【0147】
また、図15(B)のように、表面の構成が高さに応じて段階的に変化するような構成であってもよい。図15(B)の例では、円錐形状の部材において上下方向に並んだ複数の領域を設け、各領域の反射率が高さに応じた反射率となるように構成している。この場合、レーザ光が入射する位置の反射率に応じた強さの反射光が生じるため、反射光の受光レベルを把握することで、レーザ光の入射位置を特定できるようになる。
【符号の説明】
【0148】
1…レーザレーダ装置
10…レーザダイオード(レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(光検出手段)
30…ミラー(誘導手段)
40…回動反射機構(回動偏向手段、誘導手段)
41…凹面鏡(偏向部)
42a…中心軸
50…モータ(駆動手段)
70…制御回路(回動位置検出手段、時間計測手段、距離算出手段、位置特定手段、特定反射光検出手段、高さ計測手段、監視エリア設定手段、三次元マップ生成手段、検出条件設定手段、監視物体判定手段)
90…検出用基準物体
90a…外周部(反射部)
100,200,300…レーザ測定装置
L1…レーザ光
L2…検出物体からの反射光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生したときに、当該レーザ光が検出物体にて反射して生じる反射光を検出する光検出手段と、
回動可能な偏向部を備え、回動する前記偏向部により前記レーザ光発生手段で発生した前記レーザ光を空間に向けて偏向させつつ走査する回動偏向手段と、
前記空間側から戻る前記反射光を前記光検出手段に誘導する誘導手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生する毎に、前記偏向部の回動位置を検出する回動位置検出手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生する毎に、当該レーザ光の発生から当該レーザ光の前記反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの時間を計測する時間計測手段と、
前記時間計測手段によって計測された時間に基づいて、前記レーザ光の到達位置までの距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段によって算出された距離と、前記回動位置検出手段によって検出された前記偏向部の回動位置とに基づいて検出物体の位置を特定する位置特定手段と、
を備えたレーザレーザ装置と、
前記レーザ光による走査を受けたときに特定反射光を反射する反射部を備えた検出用基準物体と、を有し、
前記検出用基準物体の前記反射部は、所定の高さ方向における各位置が高さに応じた構造をなし、且つ前記レーザ光が入射したときに、当該レーザ光が入射する高さに応じた内容の前記特定反射光を発するように構成されており、
前記レーザレーダ装置は、
前記回動偏向手段から照射される前記レーザ光の走査エリア上に前記検出用基準物体が配置されたときに、前記光検出手段によって検出される前記反射光の波形から前記特定反射光を検出する特定反射光検出手段と、
反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを備え、前記特定反射光検出手段によって前記特定反射光が検出された場合に、前記対応データを参照して前記特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで前記検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さを計測する高さ計測手段と、
を備えたことを特徴とするレーザ測定装置。
【請求項2】
前記高さ計測手段によって計測される前記照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行う報知手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ測定装置。
【請求項3】
前記検出用基準物体は、前記反射部における前記高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ測定装置。
【請求項4】
前記位置特定手段は、前記特定反射光検出手段によって前記特定反射光が検出されたと
きにその特定反射光の反射元となる前記検出用基準物体の位置を特定するように構成されており、
更に、前記位置特定手段によって特定された前記検出用基準物体の位置を連結することによって境界線を形成し監視エリアに設定する監視エリア設定手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ測定装置。
【請求項5】
前記レーザレーダ装置による前記レーザ光の走査エリア内の複数の位置に前記検出用基準物体が配置されたときに、前記特定反射光検出手段は、各位置に配置された前記検出用基準物体からの前記特定反射光をそれぞれ検出し、
前記時間検出手段は、前記特定反射光検出手段によって各位置の前記検出用基準物体からの前記特定反射光が検出されたとき、各検出用基準物体に入射する前記レーザ光が前記レーザ光発生手段にて発生してから、当該レーザ光に応じた前記各検出用基準物体からの前記特定反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの各時間をそれぞれ検出し、
前記距離算出手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されたとき、前記時間検出手段によって検出される前記各時間に基づいて前記各検出用基準物体までの各距離を算出し、
前記回動位置検出手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されるときの前記偏向部の各回動位置を検出し、
前記位置特定手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されるときの前記距離算出手段によって算出された前記各距離と、前記回動位置検出手段によって検出された前記偏向部の前記各回動位置とに基づいて前記各検出用基準物体の位置を特定し、
前記高さ計測手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出される場合、それら検出された前記特定反射光の状態に基づいて前記各検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さをそれぞれ計測し、
更に、前記位置特定手段によって特定された前記各検出用基準物体の各位置と、前記高さ計測手段によって計測された前記各検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さとに基づいて、前記レーザ光の走査エリア内の各位置での前記レーザ光の照射高さを特定する三次元マップを生成する三次元マップ生成手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ測定装置。
【請求項6】
レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと前記監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報を記憶する対応情報記憶手段と、
前記三次元マップ生成手段によって生成された前記三次元マップと、前記対応情報記憶手段に記憶される前記対応情報と、を参照すると共に、前記三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、前記対応情報により各照射高さと対応付けられている前記監視物体の検出条件を導くことにより、前記レーザ光の走査エリア内における各位置での前記監視物体の検出条件を設定する検出条件設定手段と、
前記レーザ光の走査エリア内において前記位置特定手段によって前記検出物体の位置が特定されたときに、その特定された物体位置と、前記検出条件設定手段によって設定される当該物体位置での前記検出条件とに基づいて、その検出物体が前記監視物体であるか否かを判定する監視物体判定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載のレーザ測定装置。
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生したときに、当該レーザ光が検出物体にて反射して生じる反射光を検出する光検出手段と、
回動可能な偏向部を備え、回動する前記偏向部により前記レーザ光発生手段で発生した前記レーザ光を空間に向けて偏向させつつ走査する回動偏向手段と、
前記空間側から戻る前記反射光を前記光検出手段に誘導する誘導手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生する毎に、前記偏向部の回動位置を検出する回動位置検出手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生する毎に、当該レーザ光の発生から当該レーザ光の前記反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの時間を計測する時間計測手段と、
前記時間計測手段によって計測された時間に基づいて、前記レーザ光の到達位置までの距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段によって算出された距離と、前記回動位置検出手段によって検出された前記偏向部の回動位置とに基づいて検出物体の位置を特定する位置特定手段と、
を備えたレーザレーザ装置と、
前記レーザ光による走査を受けたときに特定反射光を反射する反射部を備えた検出用基準物体と、を有し、
前記検出用基準物体の前記反射部は、所定の高さ方向における各位置が高さに応じた構造をなし、且つ前記レーザ光が入射したときに、当該レーザ光が入射する高さに応じた内容の前記特定反射光を発するように構成されており、
前記レーザレーダ装置は、
前記回動偏向手段から照射される前記レーザ光の走査エリア上に前記検出用基準物体が配置されたときに、前記光検出手段によって検出される前記反射光の波形から前記特定反射光を検出する特定反射光検出手段と、
反射光の状態と高さ情報とを対応付ける対応データを備え、前記特定反射光検出手段によって前記特定反射光が検出された場合に、前記対応データを参照して前記特定反射光の状態に対応する高さ情報を求めることで前記検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さを計測する高さ計測手段と、
を備えたことを特徴とするレーザ測定装置。
【請求項2】
前記高さ計測手段によって計測される前記照射高さが予め設定された基準範囲を外れる場合に報知を行う報知手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ測定装置。
【請求項3】
前記検出用基準物体は、前記反射部における前記高さ方向の各位置が、高さに応じた幅で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ測定装置。
【請求項4】
前記位置特定手段は、前記特定反射光検出手段によって前記特定反射光が検出されたと
きにその特定反射光の反射元となる前記検出用基準物体の位置を特定するように構成されており、
更に、前記位置特定手段によって特定された前記検出用基準物体の位置を連結することによって境界線を形成し監視エリアに設定する監視エリア設定手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ測定装置。
【請求項5】
前記レーザレーダ装置による前記レーザ光の走査エリア内の複数の位置に前記検出用基準物体が配置されたときに、前記特定反射光検出手段は、各位置に配置された前記検出用基準物体からの前記特定反射光をそれぞれ検出し、
前記時間検出手段は、前記特定反射光検出手段によって各位置の前記検出用基準物体からの前記特定反射光が検出されたとき、各検出用基準物体に入射する前記レーザ光が前記レーザ光発生手段にて発生してから、当該レーザ光に応じた前記各検出用基準物体からの前記特定反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの各時間をそれぞれ検出し、
前記距離算出手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されたとき、前記時間検出手段によって検出される前記各時間に基づいて前記各検出用基準物体までの各距離を算出し、
前記回動位置検出手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されるときの前記偏向部の各回動位置を検出し、
前記位置特定手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出されるときの前記距離算出手段によって算出された前記各距離と、前記回動位置検出手段によって検出された前記偏向部の前記各回動位置とに基づいて前記各検出用基準物体の位置を特定し、
前記高さ計測手段は、前記特定反射光検出手段によって前記各検出用基準物体からの前記各特定反射光が検出される場合、それら検出された前記特定反射光の状態に基づいて前記各検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さをそれぞれ計測し、
更に、前記位置特定手段によって特定された前記各検出用基準物体の各位置と、前記高さ計測手段によって計測された前記各検出用基準物体における前記レーザ光の照射高さとに基づいて、前記レーザ光の走査エリア内の各位置での前記レーザ光の照射高さを特定する三次元マップを生成する三次元マップ生成手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ測定装置。
【請求項6】
レーザ光の照射高さに応じて監視物体の検出条件が変化するようにレーザ光の照射高さと前記監視物体の検出条件とを対応付けて定めた対応情報を記憶する対応情報記憶手段と、
前記三次元マップ生成手段によって生成された前記三次元マップと、前記対応情報記憶手段に記憶される前記対応情報と、を参照すると共に、前記三次元マップによって特定される各位置での各照射高さに基づき、前記対応情報により各照射高さと対応付けられている前記監視物体の検出条件を導くことにより、前記レーザ光の走査エリア内における各位置での前記監視物体の検出条件を設定する検出条件設定手段と、
前記レーザ光の走査エリア内において前記位置特定手段によって前記検出物体の位置が特定されたときに、その特定された物体位置と、前記検出条件設定手段によって設定される当該物体位置での前記検出条件とに基づいて、その検出物体が前記監視物体であるか否かを判定する監視物体判定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載のレーザ測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−88296(P2012−88296A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70518(P2011−70518)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]