説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】コントロールゲートとフローティングゲートとの間の電極間絶縁膜に発生するリーク電流を低減させ、メモリセルの微細化に伴うリーク耐性の劣化を抑制する半導体不揮発性記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体基板1上に複数の不揮発性メモリセルを集積した不揮発性半導体記憶装置であって、メモリセルは、半導体基板1上に形成されたトンネル絶縁膜2aと、トンネル絶縁膜2a上に形成されたフローティングゲート電極3aと、フローティングゲート電極3aの上面に形成された第1の電極間絶縁膜4aと、フローティングゲート電極3aの側面及び第1の電極間絶縁膜4aを覆うように形成された第2の電極間絶縁膜5aと、電極間絶縁膜5a上に形成されたコントロール電極6aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体記憶装置に係わり、特にフローティングゲート電極とコントロールゲート電極を有するスタックゲート型の不揮発性メモリセルを有する半導体不揮発性記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性半導体記憶装置、例えばNAND型フラッシュメモリにおいては、記憶容量を大きくするためにメモリセルの微細化が進んでいる。メモリセルの微細化が進むに伴い、これまでの素子サイズでは問題とならなかった素子特性の劣化が顕著に現れ始め、その劣化がメモリセル及びフラッシュメモリにおいて大きな影響を及ぼしている。
【0003】
通常のスタックゲート型フラッシュメモリにおいては、コントロールゲート電極とフローティングゲート電極との間のゲート絶縁膜(電極間絶縁膜)は、フローティングゲート電極の側面及び上面に沿って形成される。また、フローティングゲート電極の加工プロセスにより、フローティングゲート電極の上端エッジ部は丸まり、上端の形状は中央付近の平坦部と両脇の曲面部で構成されることになる。
【0004】
このため、メモリセルの書き込み/消去動作時の高電圧印加時に、フローティングゲート電極の上端において、平坦部に比べ曲面部では電極間絶縁膜に加わる電界が局部的に高くなり、電極間絶縁膜に発生するリーク電流は増加することになる。リーク電流の増大は、メモリセルの書き込み/消去動作時の高電圧印加時に、フローティングゲート電極からコントロールゲート電極へ電荷が移動することを意味し、フラッシュメモリセルにおける電荷注入の特性を悪化させる。これを防ぐために電極間絶縁膜の膜厚を厚くすると、メモリセルにおけるコントロールゲート電極とフローティングゲート電極との容量カップリング比が悪化してしまう。フローティングゲート電極の上端部で、電極間絶縁膜にかかる電界が高くなることは、電極間絶縁膜の膜厚を制限し、メモリセルの性能低下を招く要因となる。
【0005】
また、メモリセルが微細化されることにより、フローティングゲート電極の上端の形状において曲面部が占める領域が増え、フローティングゲート電極の上端における電極間絶縁膜にかかる電界が益々高くなる。従って、電極間絶縁膜に発生するリーク電流は、メモリセルの微細化に伴って増加することになる。
【0006】
なお、電極間絶縁膜に発生するリーク電流を低減するために、ワード線方向のフローティングゲート電極の上端エッジ部において、電極間絶縁膜の膜厚を厚く形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、フローティングゲート電極の上端エッジ部を十分に丸め、且つ上端エッジ部のみで電極間絶縁膜を厚く形成する処理が必要となり、この形状を作るのが極めて難しく、製造プロセスの複雑化を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−300427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コントロールゲート電極とフローティングゲート電極との間の電極間絶縁膜に発生するリーク電流を低減させることができ、メモリセルの微細化に伴うリーク耐性の劣化を抑制することのできる不揮発性半導体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、半導体基板上に複数の不揮発性メモリセルを集積した不揮発性半導体記憶装置であって、前記メモリセルは、前記半導体基板上に形成されたトンネル絶縁膜と、前記トンネル絶縁膜上に形成されたフローティングゲート電極と、前記フローティングゲート電極の側面の一部及び上面を覆うように形成された電極間絶縁膜と、前記電極間絶縁膜上に形成されたコントロール電極とを具備してなり、前記電極間絶縁膜は、前記フローティングゲート電極の上面における膜厚が、前記フローティングゲート電極の側面における膜厚よりも厚いことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の一態様は、半導体基板上に複数の不揮発性メモリセルを集積した不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、前記半導体基板上にトンネル絶縁膜を介してフローティングゲート電極を形成する工程と、前記フローティングゲート電極上に第1の電極間絶縁膜を形成する工程と、前記第1の電極間絶縁膜及び前記フローティングゲート電極をゲートパターンに加工する工程と、前記フローティングゲート電極の側面の一部及び前記第1の電極間絶縁膜を覆うように第2の電極間絶縁膜を形成する工程と、前記第2の電極間絶縁膜上にコントロールゲート電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コントロールゲート電極とフローティングゲート電極との間の電極間絶縁膜に発生するリーク電流を低減させることができ、メモリセルの微細化に伴うリーク耐性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るフラッシュメモリセルアレイの概略構成を示す平面図。
【図2】図1の矢視A−A’方向断面図。
【図3】図1の矢視B−B’方向断面図。
【図4】比較例の場合の、フローティングゲート電極上端部と電極間絶縁膜との関係を示す断面図。
【図5】本実施形態の場合の、フローティングゲート電極上端部と電極間絶縁膜との関係を示す断面図。
【図6】本実施形態に係るフラッシュメモリの製造工程を示す断面図(1)。
【図7】本実施形態に係るフラッシュメモリの製造工程を示す断面図(2)。
【図8】本実施形態に係るフラッシュメモリの製造工程を示す断面図(3)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0014】
図1から図3を用いて、本発明の一実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構造について説明する。本実施形態においては、不揮発性半導体記憶装置として、NAND型フラッシュメモリを例に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るフラッシュメモリのメモリセルアレイの概略構成を示す平面図、図2は図1の矢視A−A’方向の断面図、図3は図1の矢視B−B’方向の断面図である。図2は、メモリセルMCのチャネル長方向(ゲート長方向)断面に対応し、図3はメモリセルMCのチャネル幅方向(ゲート幅方向)断面に対応している。
【0016】
図1に示すように、フラッシュメモリのメモリセルアレイにおいて、半導体基板1の表面領域は、素子分離領域STI(Shallow Trench Isolation)に挟まれた素子領域AA(アクティブ領域)から構成されている。素子領域AA上には、複数のメモリセルMC及び選択トランジスタSTD,STSが設けられている。
【0017】
複数のメモリセルMCは、素子領域AA上に配置され、メモリセルMCは複数個が直列接続されている。以下、直列接続された複数のメモリセルのことを、メモリセルストリングと呼ぶ。そして、このメモリセルストリングの両端には、選択トランジスタSTD,STSが配置されている。以下では、メモリセルストリングと選択トランジスタSTD,STSを含む構成のことを、NANDセルユニットと呼ぶ。
【0018】
NANDセルユニットはワード線方向に隣接して複数配置され、各々のNANDセルユニットの各メモリセルMCは、素子領域AAと直交するワード線WL(WL1〜WLn)にそれぞれ接続されている。ここで、同一ラインに位置するメモリセルMCは共通のワード線WLに接続されている。また、選択トランジスタSTD,STSは、選択ゲート線SGL1,SGL2にそれぞれ接続されている。
【0019】
1つのNANDセルユニットの一端は、ビット線コンタクトBCを経由して、素子領域AAと同じ方向に配置されるビット線(図示せず)に接続される。また、1つのNANDセルユニットの他端は、ソース線コンタクトSCを経由して、ワード線と同じ方向に配置されるソース線(図示せず)に接続される。
【0020】
図2及び図3に示すように、本実施形態で用いられるメモリセルMCは、フローティングゲート電極3a上にコントロールゲート電極6aが積層されたスタックゲート構造のMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)トランジスタである。
【0021】
半導体基板1内には、ウェル領域(図示せず)が設けられ、NANDセルユニットはこのウェル領域上に形成される。即ち、基板1上に、ゲート絶縁膜2a、フローティングゲート電極3a、電極間絶縁膜4a,5a、コントロールゲート電極6aからなるメモリセルMCと、ゲート絶縁膜2b,下部電極3b,電極間絶縁膜4b,5b,上部電極6bからなる選択トランジスタSTD,STSが設けられている。
【0022】
ゲート絶縁膜2aは、半導体基板1の表面上に設けられる。メモリセルMCにおいて、このゲート絶縁膜2aはトンネル絶縁膜として機能する。以下、メモリセルMCのゲート絶縁膜2aのことをトンネル絶縁膜と呼ぶ。
【0023】
フローティングゲート電極3aは、半導体基板1の表面のトンネル絶縁膜2a上に設けられている。このフローティングゲート電極3aは、メモリセルMCに書き込まれたデータを保持するための電荷蓄積層として機能し、例えばポリシリコン膜から構成されている。
【0024】
チャネル幅方向に隣接する素子領域AA上に形成される複数のメモリセルMCにおいて、それらのフローティングゲート電極3aは、素子分離領域STIに形成される半導体基板1内に埋め込まれた素子分離絶縁膜7によって電気的に絶縁されている。ここで、素子分離絶縁膜7の上端は、フローティングゲート電極3aの上端よりも、半導体基板1側に後退している。即ち、素子分離絶縁膜7は、フローティングゲート電極3aの最下面よりも高く最上面よりも低い位置まで埋め込み形成されている。
【0025】
フローティングゲート電極3aの上面上には、第1の電極間絶縁膜4aが設けられている。また、第1の電極間絶縁膜4aとフローティングゲート電極3aを取り囲むように、更に素子分離絶縁膜7上には、第2の電極間絶縁膜5aが設けられている。これらの電極間絶縁膜4a,5aによってフローティングゲート電極3aとコントロールゲート電極6aは電気的に絶縁されている。
【0026】
電極間絶縁膜4aは、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、或いはアルミニウム酸化膜のいずれか1つが用いられる。なお、電極間絶縁膜4aに用いられる材料は、これらに限定されず、他の絶縁材料を用いてもよい。電極間絶縁膜4aの膜厚は、例えば6〜15nm程度である。
【0027】
また、電極間絶縁膜5aは、例えば複数の絶縁膜50,51,52を含む積層構造を有している。図2及び図3に示す例では、電極間絶縁膜5aの構造は、絶縁膜51が2つの絶縁膜50,52に挟み込まれた構造になっている。積層構造の電極間絶縁膜5aの膜厚T2は、例えば8nm〜20nm程度である。
【0028】
絶縁膜51には、例えば窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化ランタニウム(La23)、LaLiO3、酸化ジルコニア(ZrO2)、酸化イットリウム(Y23)などの高誘電体膜が用いられる。なお、上記の酸化膜からなる高誘電体膜内に、更に窒素やシリコンを含んでいても良い。
【0029】
絶縁膜50,52は、例えば絶縁膜51よりも誘電率が低い絶縁膜であって、主にシリコン酸化膜が用いられる。なお、絶縁膜51が高誘電体膜である場合には、シリコン窒化膜を用いてもよい。
【0030】
本実施形態において、電極間絶縁膜5aは3層構造を有しているが、これに限定されず、複数の絶縁膜が4層以上に積層された構造でもよいのは、勿論である。また、電極間絶縁膜5aは、高誘電体膜の単層膜でもよい。
【0031】
コントロールゲート電極6aは、電極間絶縁膜5a上に設けられている。即ち、電極間絶縁膜5aを覆うようにコントロール電極6aが設けられており、これによりコントロールゲート電極6aは、電極間絶縁膜4a,5aを介してフローティングゲート電極3aの側面を覆っている。
【0032】
このコントロールゲート電極6aには、電気抵抗を減らすため、例えばシリサイド膜が用いられている。但し、それに限定されるものではなく、コントロールゲート電極6aは、ポリシリコン膜の単層構造や、ポリシリコン膜とこのポリシリコン膜上にシリサイド膜とが積層された2層構造(ポリサイド構造)となってもよい。
【0033】
シリサイド膜としては、例えばタングステンシリサイド膜(WSi2)、モリブデンシリサイド膜(MoSi2)、コバルトシリサイド膜(CoSi2)、チタンシリサイド膜(TiSi2)及びニッケルシリサイド膜(NiSi2)などが用いられる。
【0034】
コントロールゲート電極6aはワード線WLとして機能し、隣接するメモリセル間で共有されている。そのため、コントロールゲート電極6aは、フローティングゲート電極3a上だけではなく素子分離絶縁膜7上にも設けられている。
【0035】
半導体基板1内には拡散層8aが設けられ、拡散層8aはメモリセルMCのソース/ドレイン領域として機能する。以下では、この拡散層8aのことを、ソース/ドレイン拡散層と呼ぶ。ソース/ドレイン拡散層8aは、一つの素子領域AA上に複数形成されて隣接しているメモリセルMCで共有されている。これによって、複数のメモリセルMCが直列接続され、1つのメモリセルストリングが構成される。
【0036】
直列接続された複数のメモリセルMC(メモリセルストリング)の一端及び他端には、選択トランジスタSTD,STSがそれぞれ設けられている。
【0037】
選択トランジスタSTD,STSは、メモリセルMCと同時工程で形成される。そのため、選択トランジスタSTD,STSのゲート構造もメモリセルMCと同様に、上部ゲート電極6bが、電極間絶縁膜4b,5bを介して、下部ゲート電極3b上に積層された構造となっている。下部ゲート電極3bは、フローティングゲート電極3aと同じ構成を有し、上部ゲート電極6bは、コントロールゲート電極6bと同じ構成を有している。
【0038】
但し、選択トランジスタSTD,STSにおいて、電極間絶縁膜4b,5bは開口部Qを有し、この開口部Qを介して、上部ゲート電極6bとゲート絶縁膜2b上の下部ゲート電極3bが電気的に接続されている構造となっている。
【0039】
選択トランジスタSTDのセル側の側部には拡散層8aが形成され、反対側の側部には拡散層8dが形成されている。選択トランジスタSTSのセル側の側部には拡散層8aが形成され、反対側の側部には拡散層8sが形成されている。
【0040】
拡散層8a,8d,8sは、選択トランジスタSTD,STSのソース/ドレイン領域として機能する。選択トランジスタSTD,STSは、ソース/ドレイン拡散層8aを隣接するメモリセルMCと共有している。これによって、複数のメモリセルMCと選択トランジスタSTD,STSとが一つの素子領域AA上で直列接続され、1つのNANDセルユニットが構成される。
【0041】
NANDセルユニットのドレイン側に設けられた選択トランジスタSTDにおいて、その選択トランジスタSTDのドレイン拡散層8dは、層間絶縁層15内に埋め込まれたビット線コンタクト部BCに接続されている。そして、このビット線コンタクトBCは、層間絶縁層16内に設けられたメタル配線MO及びビアコンタクトVCを経由して、ビット線BLに接続される。
【0042】
また、NANDセルユニットのソース側に設けられた選択トランジスタSTSにおいて、その選択トランジスタのソース拡散層8sは、層間絶縁層15内に埋め込まれたソース線コンタクトSCを介して、ソース線SLに接続される。
【0043】
図3に示すように、本実施形態のフラッシュメモリは、フローティングゲート電極3aの側面には電極間絶縁膜5aが設けられ、上面には電極間絶縁膜4a,5aが設けられており、フローティングゲート電極3aの側面に形成される電極間絶縁膜5aよりも、フローティングゲート電極3aの上面に形成される電極間絶縁膜4a,5aの膜厚が厚いことを特徴とする。フローティングゲート電極3aの上面に形成される電極間絶縁膜4a,5aの膜厚が厚いことにより、電極間絶縁膜5aが、フローティングゲート電極3aの上面に直接接触するように形成された場合と比較して、フローティングゲート電極3aの上部とコントロールゲート電極6aとの間に印加される電界強度を緩和及び低減できる。
【0044】
本実施形態の構造によりフローティングゲート電極3aの上部とコントロールゲート電極6aとの間に印加される電界強度を緩和及び低減できる理由について、図4及び図5を参照して説明する。
【0045】
第1の電極間絶縁膜4aが無い比較例構造の場合、素子分離絶縁膜7をフローティングゲート電極3aの上端よりも、半導体基板1側に後退させる際のエッチングによってフローティングゲート電極3aの上端がエッチングの特性により若干量エッチングされることがある。これにより、図4(a)に示すように、フローティングゲート電極3aの上端は後退する上、上端部の左右両端においてはエッチング後の形状が丸まりを帯びることとなる。そして、電極間絶縁膜5aを形成すると、図4(b)に示すようになる。このため、データの書き込み/消去時の高電圧印加時に、フローティングゲート電極3aの上端において、平面部に比べて曲面部における電極間絶縁膜5aに高い電界が加わり、リーク電流を増大させることとなる。
【0046】
これに対し本実施形態では、図5(a)に示すように、フローティングゲート電極3aの上面に、第1の電極間絶縁膜4aを設けているので、素子分離絶縁膜7をフローティングゲート電極3aの上端よりも、半導体基板1側に後退させる際のエッチング工程において、フローティングゲート電極3aの上面がエッチング雰囲気に晒されることが無く、フローティングゲート電極3aの上端形状を保護することが可能となる。そして、第2の電極間絶縁膜5aを形成した場合、図5(b)に示すように、フローティングゲート電極3aの上面の電極間絶縁膜4a,5aの合計膜厚が、側面の電極間絶縁膜5aの膜厚よりも厚くなる。このため、フローティングゲート電極3aの上端の両脇において電極間絶縁膜5aに、フローティングゲート電極3aの側面にかかる電界に比べて高い電界がかかることを防ぐことができる。従って、コントロールゲート電極6aとフローティングゲート電極3aとの間の電極間絶縁膜5aに発生するリーク電流を低減させることができる。
【0047】
本実施形態では、フローティングゲート電極3aの上部とその上部と対向するコントロールゲート電極6aとの間に生じるカップリング容量が、フローティングゲート電極3a側部とその側部と対向するコントロールゲート電極6aとの間に生じるカップリング容量と比較して、非常に小さくなる。しかし、電荷蓄積層であるフローティングゲート電極3aに電荷を注入する又はフローティングゲート電極3aから電荷を放出するためのカップリング容量は、フローティングゲート電極3aの側部とその側部と対向するコントロールゲート電極6aとの間に発生する容量によって、十分に確保されている。
【0048】
なお、メモリセルのカップリング容量を確保するため、膜厚が厚いフローティングゲート電極3aを用いて、そのフローティングゲート電極3aの側面とコントロールゲート電極6aとの対向面積を大きくすることが好ましい。
【0049】
このように、本実施形態におけるフラッシュメモリのメモリセルMCは、フローティングゲート電極3aの側部のカップリング容量を主に利用して、データの書き込み/消去を実行する。このため、メモリセルの微細化によりフローティングゲート電極3aの上部の曲率半径が小さくなる場合においても、コントロールゲート電極6aとフローティングゲート電極3aの上部との間に電極間絶縁膜4aが形成されることによってフローティングゲート電極3aの上部に電界が集中するのを抑制できる。
【0050】
その結果として、フローティングゲート電極3aの上部とコントロールゲート電極6aとの間に印加される電界強度を低減できる。それ故、本実施形態においては、メモリセルのリーク耐性が、メモリセルの微細化に伴って劣化するのを防止できる。
【0051】
また、本実施形態のメモリセルは、フローティング電極3aの上部は、メモリセルのカップリング容量に大きく寄与しなくなる。このため、フローティングゲート電極3aの上部の形状ばらつきによって、メモリセルアレイ内に設けられる複数のメモリセルのカップリング容量がばらつくのを低減できる。それ故、本実施形態においては、メモリセルの書き込み電位や消去電位など、メモリセルの素子特性のばらつきを抑制することも可能となる。
【0052】
このように本実施形態によれば、微細化が進んだメモリセルにおいて、コントロールゲート電極5aとフローティングゲート電極3aと間の電極間絶縁膜の膜厚を、フローティングゲート電極3aの上端部分において他の領域よりも厚くしている。これにより、フローティングゲート電極3aの上端の形状に起因して電極間絶縁膜に高い電界が加わり、リーク電流の増大を招く現象を未然に防止することができる。このため、メモリセルの書き込み/消去動作時の高電圧印加時においても、フローティングゲート電極3aに電子を注入する特性を確保することが可能となる。
【0053】
次に、前記図1〜図3のNANDフラッシュメモリの製造方法の一例について、図6〜図8を参照して説明する。なお、図6及び図7は前記図3の断面に相当し、図8は前記図2の断面に相当している。
【0054】
まず、図6(a)に示すように、半導体基板1の表面に、メモリセルのトンネル絶縁膜となる絶縁膜2を、例えば熱酸化法を用いて形成する。この絶縁膜2は、選択トランジスタのゲート絶縁膜にもなる。続いて、絶縁膜2上に、メモリセルのフローティングゲート電極及び選択トランジスタの下部ゲート電極となる第1の導電層3を、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成する。その後、導電層3上に第1の電極間絶縁膜となる絶縁膜4を、例えばCVD法を用いて堆積する。
【0055】
ここで、導電層3は、例えばポリシリコン層である。絶縁膜4は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜及び酸化アルミニウム膜のうち何れか1つが用いられる。なお、絶縁膜4に用いられる材料は、これらに限定されず、他の絶縁材料を用いてもよい。
【0056】
次いで、図6(b)に示すように、フォトリソグラフィ技術とRIE(Reactive Ion Etching)法を用いて、絶縁膜4を選択エッチングすることにより、絶縁膜4をチャネル長方向(ゲート長方向)に沿ったストライプパターンに加工する。続いて、加工された絶縁膜4をマスクに用いて導電層3を、例えばRIE法により選択エッチングする。
【0057】
次いで、図6(c)に示すように、絶縁膜2及び半導体基板1を、例えばRIE法を用いて順次エッチングし、半導体基板1内にSTI部の溝を形成する。そして、この溝に素子分離絶縁膜となる絶縁膜7を埋め込み形成する。この絶縁膜7は、膜を形成後にCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて絶縁膜4の上面と一致するように平坦化することにより形成される。
【0058】
次いで、図7(d)に示すように、例えばRIE法を用いたエッチバックによって、素子分離絶縁膜7の上面をエッチングする。これによって、素子分離絶縁膜7の上面は、フローティングゲート電極となる第1の導電層3の上面よりも、半導体基板1側に後退され、導電層3の側面は露出する。これによって、素子分離領域STIとその領域STIによって区画された素子領域AAが形成される。
【0059】
次いで、図7(e)に示すように、電極間絶縁膜となる絶縁膜5を、絶縁膜4上及び素子分離絶縁膜7上に形成する。この絶縁膜5は、導電層3の側面上も覆っている。絶縁膜5は、例えば積層構造を有し、以下では、メモリセルの電極間絶縁膜となる積層構造の絶縁膜5のことを、積層絶縁膜5と呼ぶ。
【0060】
積層絶縁膜5は、図7(e)に示す例においては3層構造を有している。積層絶縁膜5は、高誘電率絶縁51を2つの絶縁膜50,52に挟まれた構造となっている。絶縁膜51には、誘電率が絶縁膜50,52よりも高い材料が用いられる。
【0061】
積層絶縁膜5の最下層の絶縁膜50は、例えばCVD法を用いて、素子分離絶縁膜7上、絶縁膜4上及び導電層3の側面上に形成される。この絶縁膜50には、例えばシリコン酸化膜が用いられる。
【0062】
絶縁膜51は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法やCVD法を用いて、絶縁膜50上に形成される。絶縁膜(High−k膜)51には、例えば窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化ランタニウム(La23)、LaLiO3、酸化ジルコニア(ZrO2)、酸化イットリウム(Y23)などが用いられる。なお、絶縁膜51を構成する酸化膜内に、窒素やシリコンを含んでいても良い。
【0063】
積層絶縁膜5の最上層の絶縁膜52は、例えばCVD法を用いて、高誘電率絶縁膜51上に形成する。この絶縁膜52には、例えばシリコン酸化膜が用いられる。
【0064】
次いで、図8に示すように、例えばRIE法によって、選択トランジスタ形成領域において、開口部Qを形成し、導電層3上面が露出させる。この図8は前記図2と同じ方向の断面を示している。開口部Qを形成した後、コントロールゲート電極となる第2の導電層6を、例えばCVD法を用いて形成する。第2の導電層6には、例えばポリシリコンが用いられる。この工程により、選択トランジスタ形成領域内において、導電層6は、開口部Qを経由して導電層3に接触する。
【0065】
図7(f)は図7(e)で示す断面において、第2の導電層6が形成された後の構造を示している。
【0066】
この後、前記図2及び図3に示すように、メモリセルMC及び選択トランジスタSTD,STSが、それぞれ所定のゲートサイズ(ゲート長)となるように、フォトリソグラフィ技術によって、チャネル幅方向(ゲート幅方向)に沿ったストライプパターンに加工される。そのパターンに基づいて、導電層6,絶縁膜5,絶縁膜4,導電層3,絶縁膜2が、例えばRIE法により順次エッチングされる。
【0067】
これによって、メモリセルMCのフローティングゲート電極3a及びコントロールゲート電極6aが、半導体基板1の表面のトンネル絶縁膜2a上に形成される。同様に、選択トランジスタSTD,STSの下部ゲート電極3b及び上部電極6bが、半導体基板1の表面のゲート絶縁膜2b上に形成される。
【0068】
本実施形態においては、フローティングゲート電極3a上に電極間絶縁膜4aが形成され、絶縁膜4aがフローティングゲート電極3aとコントロールゲート電極5aとの間に介在している。また、積層構造の電極間絶縁膜5aは、フローティングゲート電極3aの上面だけではなく側面にも形成される。この電極間絶縁膜5aを介して、コントロールゲート電極5aがフローティングゲート電極3aの側面を覆っている。
【0069】
メモリセルMCのゲート電極3a,6aと同時に、選択トランジスタSTD,STSのゲート電極3b,6bも、半導体基板1の表面のゲート絶縁膜2b上に形成される。選択トランジスタSTD,STSにおいては、上部ゲート電極6bが、開口部Qを経由して、ゲート絶縁膜2b上の下部ゲート電極3Bに接触している。
【0070】
そして、ゲート電極3a,3b,6a,6bをマスクとして、ソース/ドレイン拡散層8a,8d,8sが、自己整合的に半導体基板1内に形成される。これによって、メモリセルMC及び選択トランジスタSTD,STSが、メモリセルアレイ内にそれぞれ形成される。
【0071】
ソース/ドレイン拡散層8a,8d,8sが形成された後、半導体基板1上に、ゲート電極3a,3b,6a,6bを覆う絶縁膜が形成される。この絶縁膜は、コントロールゲート電極6a及び上部ゲート電極6bの上面が露出するように、エッチングされる。そして、例えば金属層(ニッケル(Ni)膜)が、露出したコントロールゲート電極6a及び上部ゲート電極6b上に堆積され、コントロールゲート電極6a及び上部ゲート電極6bに対して、シリサイド処理が施される。このシリサイド処理によって、金属原子(例えばNi原子)が、コントロールゲート電極6a及び上部ゲート電極6b内に熱拡散され、コントロールゲート電極6a及び上部ゲート電極6bは、ポリシリコン層からシリサイド層になる。なお、このシリサイド処理は、導電層が1つのシリサイド層となるように、導電層6の全体をシリサイド化しても良いし、或いはポリサイド構造となるように、導電層6の上部のみをシリサイド化してもよい。
【0072】
シリサイド処理の後、露出したコントロールゲート電極6a及び上部ゲート電極6bの上面を覆うように、CVD法を用いて絶縁膜が再度堆積され、第1の層間絶縁層15が形成される。
【0073】
そして、層間絶縁層15に対して平坦化処理が実行された後、コンタクト形成領域内において、ソース線/ビット線コンタクトSC,BCが、拡散層8d,8sに直接接触するように絶縁層15内に埋め込まれる。その後、ソース線SL及びメタル配線M0が、ソース線/ビット線コンタクトSC,BCにそれぞれ電気的に接続するように、層間絶縁層15上に形成される。
【0074】
そして、第2の層間絶縁層12が、ソース線SL及びメタル配線M0を覆うように、例えばCVD法を用いて、層間絶縁層11上に形成される。その後、層間絶縁層12内に、メタル配線M0に接続されるビアコンタクトVCが埋め込まれた後、ビット線BLが、ビアコンタクトVCに接続されるように、層間絶縁層12上に形成される。
【0075】
以上の製造工程によって、本発明の実施形態に係るフラッシュメモリが完成する。
【0076】
本実施形態においては、フローティングゲート電極3aの上部に第1の電極間絶縁膜4aが形成され、フローティングゲート電極3aの上部及び側部に第1及び第2の電極間絶縁膜4a,5aが形成される。従って、メモリセルMCは、フローティングゲート電極3aとコントロールゲート電極6aとの間に、フローティングゲート電極3aの上部では絶縁膜4aが介在し、上部及び側部では絶縁膜4a,5aが介在した構造になる。このため、フローティングゲート電極3aの上部とそれに対向するコントロールゲート電極6aとの間に発生するカップリング容量が小さいメモリセルが作製される。
【0077】
このように、本実施形態の製造方法によれば、フローティングゲート電極3aの上部において、フローティングゲート電極3aとコントロールゲート電極6aとの間の電極間絶縁膜5aに対する電界集中を回避することが可能となる。従って、メモリセルの微細化を行っても、リーク耐性が劣化しないメモリセルを作製することができる。
【0078】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。実施形態では、NAND型フラッシュメモリについて説明したが、本発明はOR型やNOR型のフラッシュメモリに適用することも可能である。さらに、電極間絶縁膜の膜厚や材料等の条件は、仕様に応じて適宜変更可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0079】
(付記)
また、本発明は、後述する請求項に記載のもの以外にも、次のような構成に特徴を有している。
【0080】
(1) 電極間絶縁膜は、フローティングゲート電極のチャネル長方向側の側面の一部及び上面を覆うように形成されている。
【0081】
(2) 隣接するゲート部間で基板に溝が形成され、且つ該溝内及び隣接するゲート部間に、フローティングゲート電極の最下面よりも高く最上面よりも低い位置まで、素子分離絶縁膜が埋め込み形成されている。
【0082】
また、NAND型フラッシュメモリの製造方法としては、次のような構成に特徴を有している。
【0083】
(3) 半導体基板上に複数の不揮発性メモリセルを集積した不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、
前記基板上にトンネル絶縁膜を形成する工程と、
前記トンネル絶縁膜上にフローティングゲート電極を形成する工程と、
前記フローティングゲート電極上に第1の電極間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の電極間絶縁膜及びフローティングゲート電極をゲート長方向に沿ったストライプパターンに加工する工程と、
前記ストライプパターンに加工された前記フローティングゲートの側面の一部及び前記第1の電極間絶縁膜を覆うように第2の電極間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の電極間絶縁膜上にコントロールゲート電極を形成する工程と、
前記コントロールゲート電極、第2の電極間絶縁膜、第1の電極間絶縁膜,及びフローティングゲート電極を、ゲート幅方向に沿ったストライプパターンに加工する工程と、
を含むことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【0084】
(4) 前記第1の電極間絶縁膜,フローティングゲート電極,及びトンネル絶縁膜をゲート長方向に沿ったストライプパターンに加工し、且つ露出した前記基板の表面部をエッチングして溝部をした後、前記溝部内及び隣接するゲート部間に、前記フローティングゲート電極の最下面よりも高く最上面よりも低い位置まで、素子分離絶縁膜を埋め込み形成する。
【符号の説明】
【0085】
1…半導体基板
2,4,5…絶縁膜
2a…トンネル絶縁膜
2b…ゲート絶縁膜
3,6…導電層
3a…フローティングゲート電極
3b…下部電極
4a…第1の電極間絶縁膜
5a…第2の電極間絶縁膜
6a…コントロール電極
6b…上部電極
7…素子分離絶縁膜
8a…拡散層
11,12…層間絶縁膜
MC…メモリセル
STD,STS…選択トランジスタ
BL…ビット線
WL…ワード線
MO…メタル配線
SL…ソース線
VC…コンタクトビア
SC…ソース線コンタクト
BC…ビット線コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に複数の不揮発性メモリセルを集積した不揮発性半導体記憶装置であって、前記メモリセルは、
前記半導体基板上に形成されたトンネル絶縁膜と、前記トンネル絶縁膜上に形成されたフローティングゲート電極と、前記フローティングゲート電極の側面の一部及び上面を覆うように形成された電極間絶縁膜と、前記電極間絶縁膜上に形成されたコントロール電極とを具備してなり、
前記電極間絶縁膜は、前記フローティングゲート電極の上面における膜厚が、前記フローティングゲート電極の側面における膜厚よりも厚いことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記電極間絶縁膜は、前記フローティングゲート電極の上面に形成された第1の電極間絶縁膜と、前記フローティングゲート電極の側面及び前記第1の電極間絶縁膜を覆うように形成された第2の電極間絶縁膜と、を有することを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1の電極間絶縁膜はシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜であり、前記第2の電極間絶縁膜は高誘電率絶縁膜をそれよりも誘電率の低い絶縁膜で挟んだ3層構造であることを特徴とする請求項2記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記メモリセルの複数個を直列接続してNANDメモリセルユニットが構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
半導体基板上に複数の不揮発性メモリセルを集積した不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、
前記半導体基板上にトンネル絶縁膜を介してフローティングゲート電極を形成する工程と、
前記フローティングゲート電極上に第1の電極間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の電極間絶縁膜及び前記フローティングゲート電極をゲートパターンに加工する工程と、
前記フローティングゲート電極の側面の一部及び前記第1の電極間絶縁膜を覆うように第2の電極間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の電極間絶縁膜上にコントロールゲート電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−14838(P2011−14838A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159975(P2009−159975)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】