説明

光散乱計測ターゲット設計の最適化

計測ターゲット設計が、計測ターゲット設計情報、基板情報、プロセス情報および計測システム情報を含む入力を用いて最適化される。測定システムによる測定信号の獲得が、計測ターゲットの1または複数の光学的特徴を生成するために入力を用いてモデル化される。計測システムによりなされた計測ターゲットの測定の予測精度および正確さを決定するために計測アルゴリズムが特徴に適用される。計測ターゲット設計に関する情報の一部が修正され、また、信号のモデル化および計測アルゴリズムが、1または複数の測定の精度および正確さを最適化するために、繰り返される。計測ターゲット設計が、精度および正確さが最適化された後に表示または格納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には半導体の製造に関し、特に半導体基板の形状及び厚さの変化を測定する際における干渉分光法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の構成要素が徐々に小さいサイズ、現在ではほぼナノメートルのオーダーに縮小しているため、計測性能、生産性および装置相関性がかつてなく重要になってきている。先のまたは後の複数層に形成された特徴に関して1つの層に形成された特徴の配列を決定するため、1又は複数の層に計測ターゲットが形成されることが多い。計測ターゲットは、限界寸法(CD)走査型電子顕微鏡(SEM)または散乱計のような計測装置を用いる特徴相互間の特徴及び配列の大きさ、例えばオーバーレイの測定を容易にする。従来、計測ターゲットの最適化が試行錯誤により、および、それまでの経験に基づいた「経験則」により、実験的に行われてきた。現在では、計測技術者が、リソグラフィー設計ルール、プロセス制約および計測性能考察に準拠した計測構造を作る最大限の努力をするために既知の経験則に基づいて一般的ターゲット設計を修正すべく、GDS計測ターゲット・ライブラリを使って仕事をし、あるいはレイアウト技術者と協力している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、試行錯誤手法では、各試行は新しいレチクルと、ターゲットの性能をテストするための新しいレチクルを用いた一連の実験とを表わす。これは時間を浪費する手法であることが多い。それは、満足できる設計となるまでに2、3回のマスク設計の繰り返しとなることがある。結果として、設計ベースの試行錯誤は時間と費用とがかかるものとなりやすい。加えて、「経験則」は知的財産と考えられることが多く、このため、経験則それ自体の広範な普及は可能でない。さらに、従来の手法は、計測技術者を常に支援することができるとは限らない多数の異なる専門家からの技術情報を必要とする。さらに、このような手法は、リソグラフィー適合性、プロセス適合性または計測適合性の領域で準最適であるターゲット設計に終わる可能性がある。結果として、新しいターゲットの採用および/または準最適ターゲットの欠如がこの手法の結果となることが多い。
【0004】
本発明の実施形態はこの文脈中にあらわれる。
【0005】
本発明の他の目的及び利点は以下の詳細な説明の読み取りおよび添付図面の参照により明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】従来技術に従う、光散乱計測ターゲットの側面図である。
【図1B】図1Bの光散乱計測ターゲットの平面図である。
【図1C】残留トポグラフィを提示しない被覆層を有する光散乱計測ターゲットの側面図である。
【図1D】残留トポグラフィを提示する被覆層を有する光散乱計測ターゲットの側面図である。
【図1E】従来技術に従う、計測システムの概略図である。
【図2】本発明の実施形態に従う、計測ターゲットの最適化における情報流れを示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に従う、計測ターゲットを最適化するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明は、説明のための多くの特定の詳細情報を含むが、以下の詳細な説明に対する多くの変更及び修正が本発明の範囲内にあることはどの当業者にも明らかであろう。したがって、以下に記載された本発明の典型的な実施形態は、請求の範囲に記載された発明に対していかなる一般性の喪失なしに、また制限を課すことなしに説明される。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、1つのソフトウエア(あるいは2つまたは3つの相互作用ソフトウエア)が、標準形式で出力され得る計測ターゲット構造を最適化するために使用される。例として、また限定としてではなく、前記標準形式は、集積回路すなわちICのレイアウト作品のデータ交換のための業界標準であるデータベース・ファイル形式である、一般的に頭字語GDS IIと呼ばれる、GDS II流れ形式である。GDS IIは、平面幾何学形状、テキストラベル、および階層構造のレイアウトについての他の情報を表わす2値ファイル形式である。データは、レイアウトの共有、異なる装置間での前記作品の移動、またはフォトマスクの製造において使用される前記作品の全部又はその一部を再構成するために使用することができる。
【0009】
前記計測ターゲット構造は、基板上へのデバイスの形成の間に1または複数の材料層上に形成される計測ターゲットのパターンを表わす。例として、また限定としてではなく、前記計測ターゲットは、例えばレチクルを用いるフォトリソグラフィにより、1または複数の層に形成される。代わりに、前記計測ターゲットは、マスクなしの技術、例えば電子ビームリソグラフィを用いて、1または複数の層に形成される。前記したプロセスのさらなる結果は、計測性能シミュレーションデータの代わりに最適化された計測レシピとなることである。また、光学的特徴上の計測信号の依存関係が提供される。これらの依存関係は、計測フリートマッチングを達成するための「ノブ」として使用される。
【0010】
特別な例として、光散乱オーバーレイのためのターゲットを最適化するケースが以下に記載されている。しかし、これは、計測ターゲットがどのように最適化されるかの例であることを意味するものではなく、また本発明の任意の実施形態についての限定として意図されるものではない。
【0011】
図1A及び図1Bは、微分光散乱オーバーレイのために使用される計測ターゲット1の一例を示す。一例として、また限定としてではなく、ターゲット1は、サンプル14上に形成されまたは重ねられた材料の1または複数の薄膜層12、13に形成された、間隔を置かれた複数のライン2、4を含む。前記ターゲットは、蒸着プロセスまたはエッチングプロセスのような薄膜デバイス製造プロセスの間にそれらの層に構造が形成されるように、異なる層に形成された複数のラインを含む。異なる層12、13に形成されたライン2,4は、横方向へ互いに他の一方に関して組み合わされかつ埋め合わされている。各セットのライン2、4は、多数の設計パラメータにより特徴付けられる。これらのパラメータは、例えば、セットのラインが形成された層と、セットの多数のラインと、ライン長さLと、ライン幅wと、ライン間隔sと、ピッチpと、オフセットxと、ライン厚さtとを含む。ライン2、4の2つのセット間のオーバーレイ誤差は、2つのセットのラインから散乱された光を分析することにより決定される。
【0012】
計測ターゲットは、複数のセル内に構成された図1Aおよび図1Bに示すタイプの2以上のセットのラインを含むことが多い。異なるセルは、異なる方向、例えば互いに直角な方向に走るラインを有する。
【0013】
一部の例では、計測ターゲット又はその一部が、1または複数のセットのラインを覆って形成された材料層を有する。このような材料層は残留トポロジーを提示し、あるいは提示しない。本明細書で用いられているように、残留トポロジーは、層の下に横たわる構造に起因する該構造を覆う層の内部の観察可能のトポロジーから決定されるパラメータに言及する。例として、図1Cは、材料層13が1セットのライン4を覆って形成されているターゲット1Cを示す。この層は後の層15で平坦化されかつ被覆されている。両層13、15の一方又は双方が不透明であると、下に横たわるライン4の構造を見ることはできない。図1Dにおいては、それに反して、ターゲット1Dの層13は平坦化されておらず、その結果として、層13、15はライン4に起因する残留トポロジーを示す。このような残留トポロジーは、両層13、15の一方又は双方が不透明であっても、観察することができる。ライン4の構造のパラメータ、例えばピッチ、高さ、間隔、幅、長さ、オフセット等は、前記残留トポロジーの観察から決定される。
【0014】
図1Aおよび図1Bに示すタイプのターゲットを用いた光散乱オーバーレイ計測に使用される装置10の一例が図1Eに示されている。この装置の全ての記述は、その全てにおいて参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第6,995,842号明細書に見ることができる。装置10は、薄膜層12および/または限界寸法のような構造の特徴のような、サンプル14の表面における特徴を評価するように設計されている。
【0015】
装置10は、プローブ・ビーム22の放射を発生させるための光源20を含む。1つの適当な光源は、安定した既知の及び比較的狭い帯域幅を有する直線偏光ビームを放射するソリッドステート半導体レーザである。プローブ・ビーム22は、50/50ビームスプリッタ24によりサンプル14に向けて方向を変えられる。プローブ・ビームは対物26によりサンプルの表面に焦点を合わされる。例として、また限定としてではなく、対物26は、高い開口数例えば約0.90NAを有する球状の顕微鏡対物である。高開口数は、サンプル表面に関して拡散の大きい入射角を生じさせるように機能する。スポットサイズは直径が約20ミクロン以下であり、好ましくは5ミクロン以下である。
【0016】
この図示の例では、ビームがレンズ26によって焦点を合わされるに先立ちサンプル表面に対して実質的に直角に向けられることに留意すべきである。この設定は、サンプル上のスポットサイズを最小化することに役立つ。参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第5,166,752号明細書に示されているように、ビームをサンプルに対して非直角の入射角で向けることは本発明の範囲内のことである。軸外しのビームの使用はサンプル上におけるスポットサイズを増大させるが、低開口数のレンズにより高入射角を生じさせることができる。
【0017】
図1Eに戻ると、プローブ・ビームの一部は、また、スプリッタ24を通過して入射力検出器30に当たる。当業者に良く知られているように、入射力検出器30は、前記プローブ・ビームの光源の出力の変動を観察するために設けられている。参照することにより本明細書に組み入れられた、米国特許第5,181,080号明細書において議論しているように、入射力検出器は、ビームの非対称に起因して生じる測定誤差を最小限にするように改良されている。
【0018】
サンプル14の1または複数の層上に形成されたターゲット1からの反射光は、光検出器40に向けてスプリッタ24を通過する。検出器40の出力は評価のためにプロセッサ50に供給される。検出器40に到達するに先立ち、ビーム22は、ビームの偏光状態の1つの位相を90度だけ遅らせるために、4分の1波長板42を通過する。システムが円偏光された光で動作するように、プローブ・ビームがサンプルを打つに先立ち、4分の1波長板42がビーム路内に選択的に配置されることに留意すべきである。後者のやり方は、レンズ26によって生じる収差を低減する利点があろう。加えて、90度の位相遅延は所望の信号を最大にするが、他の中間レベルの遅延が可能である。
【0019】
検出器40は、2対の互いに直角な軸に沿った領域から独立した信号を生成するように設定されている。例として、このゴールは、間隔を置かれた複数の受光素子であって該受光素子への放射線の入射に応答して明確な信号を発生させる間隔を置かれた複数の受光素子、例えば光ダイオード、フォトレジスタ、または光起電装置を有する光検出器を使用することにより達成される。例として、複数の受光素子は、多数(例えば8つ)の楔形のセグメントに分割された円の形態で構成される。この場合、プローブ・ビーム22は、各セグメントがプローブ・ビームの等分を妨害するように好ましくは検出器40の中心におかれる。また、プローブ・ビームが検出器40の下側を満たすことが望ましい。各セグメントは、該セグメントを打つプローブ・ビームの力の大きさに比例する出力信号を生成する。この信号は、サンプル表面に関して異なる入射角度を有する全ての光線の強度の統合を表わす。この統合アプローチは個々の光線の分析と比較してある情報内容を喪失する結果となる一方、複合的アプローチは、強化された信号対雑音性能を通して非常に大きい感度を提供することができる。
【0020】
セグメントの出力は評価のためにプロセッサ50に供給される。従来技術におけるように、全てのセグメントの出力は反射ビームの全出力の指標を与えるために合計することができる。米国特許第6,695,842号明細書において議論したように、この全出力の指標はサンプルの特徴を決定するための回帰分析に対する入力として用いられる。また、プロセッサ50は、追加の偏光解析情報が従来技術のアプローチと比較したときに得られるようにする指標を生成する。例として、プロセッサ50は、計測ターゲット1におけるライン2、4の2セット間のオーバーレイ誤差を決定するために検出器の出力を分析する。
【0021】
このコンセプトを多数の波長を測定することにまで拡張することを望む場合には、光源20は多色プローブ・ビームを発生する白色光源とされる。このような光源が使用されると、波長選択フィルタ60(図1Eに想像線で示されている)が光源20と検出器40との間の光路中のどこかの場所に配置される。例として、フィルタ60は、ビーム路内に選択的に移動する1または複数の単純な帯域通過(カラー)フィルタの形態をとる。代わりに、単色光分光器が狭い波長領域を連続的に選択するために使用される。もちろん、波長可変レーザまたは異なる波長を有する多数のレーザもまた使用可能である。
【0022】
本発明の複数の実施形態によれば、計測ターゲット1を特徴付ける設計パラメータは、ターゲットが製造される前に系統立った方法で最適化される。図2は、計測ターゲット設計を最適化するために装置100により用いられる情報の流れの一例を示す。この情報の流れは、例えば最適化プロセスを実行するようにプログラムを組まれた汎用コンピュータにより、実施される。代わりに、専用ハードウエアが最適化プロセスを実行するように設定されることがある。
【0023】
計測ターゲット設計は、ターゲット1が形成される前記層または層12、13に関する多数の入力を利用し、プロセスはこれらの層と計測ターゲットそれ自体とに構造を形成するために用いられる。これらの入力は、層12、13に関する積層および外形情報102と、ターゲット1に関するターゲット設計の自由度104と、構造およびターゲット1を形成するために用いられるプロセスに関する公称プロセス変化データ106とを含むが、しかしこれらに限定されない。
【0024】
例として、積層および外形情報102は、層12、13を構成する材料のタイプおよび/または光学的特徴と、これらの層のそれぞれ厚さとを含むが、これらに限定されない。このような積層および外形情報の例は、膜厚、波長依存の屈折率n(λ)と、誘電率k(λ)と、残留トポロジーとを含むが、これらに限定されない。
【0025】
例として、しかしながら限定されないものとして、ターゲット設計の自由度104は、ライン2、4の数と、各ライン2、4の長さL、幅wおよび厚さtと、隣接するライン間の間隔sと、ラインを構成する材料の特性と、ライン2、4の2つのセット間のオフセットとを含む。ターゲット設計の自由度、これらのパラメータの公称値並びにこれらの値の任意の上限値および/または下限値、もし値がこれらの制限間で変化され得るならば。他の可能な自由度は、ターゲット内の複数のセルのサイズまたはターゲット内の複数のセルのレイアウトである。
【0026】
非限定的な例として、公称プロセス変化データ106は、ターゲット、例えばターゲット1のライン2、4、を構成する構造を形成するために用いられるプロセスから生じるターゲット設計パラメータにおける変化に関する情報を含む。このような情報は、ターゲットパラメータのための公称設計値、例えば長さ、高さ、間隔およびターゲットが特定のプロセスを用いて作られるときのそれらのパラメータの実際の値を比べる実験データから決定される。公称プロセス変化データの例は、材料のためのn(λ)およびk(λ)と、レジストまたはマスク材料の高さと、残留トポグラフィと、オーバーレイに対する信号非感受性とを含み、しかしこれらに限定されない。
【0027】
入力は、計測装置により計測信号の獲得モデルを作る光学シミュレータ108に与えられる。例として、光学シミュレータ108は、先に議論した入力に基づく、物理的原理、例えばマクスウエル方程式及び境界条件に基づいてモデルを使用する電磁放射とターゲット1及び計測装置10との間の相互作用をコンピュータでシミュレートする。光学シミュレーションは、入力としての1または複数の計測装置パラメータ109に関する情報を利用する。このようなパラメータの例は、光源20からのプローブ放射22をターゲット1につなげ、またターゲット1からの放射を検出器40につなぐ装置10の光学を特徴付けるパラメータを含む。このようなパラメータは、焦点距離、開口数、透過率、反射率および収差係数を含む。また、計測装置パラメータ109は、プローブ放射、例えば波長、偏光および強度、並びに、プローブ放射22がターゲット1を打つ入射角または入射角の範囲を特徴付ける。また、計測装置パラメータ109は、検出器40の受光素子の構造も考慮に入れる。加えて、光学シミュレーション108は、ターゲットを形成するプロセスにおける変化に起因してターゲット構造が変化するようにターゲット設計の光学的挙動の変化をシミュレートするために公称プロセス変化データ106を考慮に入れる。光学シミュレーション108は、出力として計測構造1の1または複数の計測特徴110を生成する。本明細書で使用しているように、計測特徴110の用語は、一般的に、計測ターゲット構造と計測装置との間の相互作用の結果として計測装置により検出される信号(例えば、光学信号)に関連する情報を言う。例として、また限定されないものとして、図1Aおよび図1Bに示すタイプの回折格子ターゲット1の場合、計測特徴110はスペクトル、例えば波長または角度反射のスペクトルを含む。加えて、光学シミュレータ108は計測特徴に対して計測信号感度を出力する。例として、また限定されないものとして、光散乱装置の場合、計測特徴は、散乱波長、方位角、仰角または回折次数を含む。
【0028】
ターゲット1の光学的特徴は、次に、ターゲット1を使用する計測装置(例えば、計測装置10)の操作をコンピュータでシミュレートする、計測シミュレータ112への入力として用いられる。例として、また限定としてではなく、計測シミュレータ112は、ターゲット1の光学的特徴110と、ターゲットを測定するために用いられる計測レシピとを含む入力仮定に基づいて検出器40により測定された推定信号をコンピュータで計算する。計測レシピは、光学的特徴110から装置10を用いてターゲット1でなされた計測の測定結果を抽出するために使用されたプロセスに関連するパラメータを含む。
【0029】
例として、また限定としてではなく、計測シミュレータ112は、光学シミュレータにより生成された角度または波長のスペクトルを分析し、また、スペクトルのオーバーレイに対する最大感度領域に対応する角度または波長と、これらのピークの相対強度とを決定する。次に、シミュレーションの結果が、信号がオーバーレイに対する強い感度を有する、計測特徴空間、例えば波長および角度(方位角および/または仰角)空間における領域を決定するために再検討される。次に、計測レシピがこれらの領域内の波長および/または角度に重み付けをするためにより大きく修正される。信号がオーバーレイに対して特に感度の高い波長および/または角度に対する前記計測レシピに重み付けをすることにより、レシピが高い精度および感度に最適化される。
【0030】
非限定的な方法では、マルチセル微分光散乱オーバーレイは、微分信号が少数の係数を有する数式(例えば、サインおよびコサインの展開)により正確に作られる制約されたダイナミックレンジ内でのみ正確であることが既知であるということが知られている。係数の数は一般的に計測ターゲットにおけるセルの数に関連しており、セルの数は有限である。例として、また限定としてではなく、数式は、例えば1ないし6つの係数を有する。これらの係数は、高次の係数の大きさは無視してよいということを前提として、光散乱特徴(例えば、散乱角度または波長)の各値に対して独立してモデルが作られる。理論上、数式は、それ自体の係数をもった非常にたくさんの項を有する。計算を容易にするため、計測装置で用いられる計測レシピは、無視することができる係数、例えば以下のいくつかの閾値を有する項を無視する。そのため、計測シミュレータ112は、高次のパラメータは無視することができる特徴(例えば、波長および/または角度(方位角および/または仰角)の値を選択することにより、特定のターゲット設計のための光散乱オーバーレイ測定の精度を改善する。これは、高次の係数の大きさを無視することができる計測特徴の各値から計測制約に適用された重みを大きくし、および/または高次の係数の大きさを無視することができない計測特徴の各値から計測制約に適用された重みを小さくすることにより、達成することができる。
【0031】
シミュレートされた計測レシピの結果は、計測シミュレーションの結果がターゲットに関する入力想定と比較される最適化ループ114を駆動し、また入力ターゲット設計パラメータ104はターゲット設計を最適化するために変更される。例として、また限定としてではなく、計測シミュレータ112は、2セットのラインからシミュレートされた回折に基づいてターゲット1におけるライン2、4の2つのセット間の推定オフセットをコンピュータ計算する。推定オフセットは、測定精度を決定するためにオフセットのための入力値と比較される。精度が最適に満たない場合、最適化ループ114はターゲットのための入力設計を変更し、計測シミュレータ112にフィードバックされる、新しい光学的特徴110を生じさせるために光学シミュレーション108に変更された設計をフィードバックする。このプロセスは、ターゲット1の設計が最適化されるまで、反復的に繰り返される。
【0032】
ターゲット設計が最適化されると、最適化ループ114が多数の出力を生じさせる。これらは、前述した計測ターゲットパラメータの最適化された値を含む、最適化された計測ターゲット設計を含む。最適化されたターゲット設計116は、GDS II流れ形式のような適当な標準形式に従って記憶および/または表示のために形式が整えられる。また、最適化ループはプロセス変化空間にわたる精度および正確さの推定118を生じさせる。さらに、最適化ループ114(または計測シミュレータ112)は、前述したように、異なる計測特徴から計測寄与に適用される重みの最適化された値を含む、計測レシピ最適化データ120を生じさせる。
【0033】
本発明の一実施形態に従って計測ターゲット設計を実施するための1つの可能な方法200が図3にフローチャートとして示されている。この方法は、コンピュータソフトウエアにより実行される。方法200を実行するためのコンピュータ読み取り可能の命令は、コンピュータメモリのようなコンピュータ読み取り可能の媒体、例えばランダム・アクセス・メモリ(RAM)、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)またはリード・オンリ・メモリ(ROM)、あるいはデータ記憶媒体、例えばディスク、テープ、シーディーロム(CD−ROM)等にまとめられている。光学および計測シミュレーションのためのデータはユーザにより入力され、あるいは1または複数のデータ記憶装置からロードされる。このデータは、計測システム202の光学的特徴と、ターゲット設計の自由度2024と、積層および外形情報206と、複数の公称プロセス変化範囲208とを含む。この情報は、210に示すように、光学シミュレーションを実行するために用いられる。光学シミュレーションは、特別な計測装置により計測信号のモデルを獲得する。光学シミュレーション210は、212に示すように、計測構造の1または複数の光学的特徴を生じさせる。例えば、図1Aおよび図1Bに示すタイプの回折格子ターゲットの場合、光学的特徴は波長または角度反射スペクトルである。加えて、光学シミュレーション10は、214に示すように、光学的特徴に対して計測信号感度を出力する。
【0034】
光学的特徴および(選択的に)信号感度は、216に示すように、計測アルゴリズムに適用される。次に、計測アルゴリズムは、218に示すように、特別な計測ターゲット/装置/積層の組み合わせのための推定された精度および正確さの予測を出力する。例として、計測アルゴリズムは、波長または角度反射スペクトルから決定されるオフセットを予測する。オフセットの予測精度は、予測オフセットをターゲット設計情報における入力値と比較することにより決定される。この予測の正確さは、プロセス変化範囲にわたる予測オフセットにおける変化を決定することにより比較される。
【0035】
220において、ターゲット設計が最適化されているかどうかについて決定がなされる。計測ターゲット/装置/積層の組み合わせの精度および正確さは所望の精度および正確さと比較される。設計が最適化されていない場合、222に示すように、ターゲット設計パラメータが変更され、また光学シミュレーション210と計測ターゲットアルゴリズム216とが新しい精度および正確さを生じさせるための新しい設計パラメータを用いて繰り返される。このプロセスは、ターゲット設計が最適化されるまで、反復的に繰り返される。
【0036】
前記ターゲット設計が最適化されると、多数の出力が生成される。それは、最適化された計測ターゲット設計224と、最適化された計測レシピ226、例えば波長または角度のための重み関数と、重み関数228上の計測信号の依存関係とを含む。
【0037】
図4は、本発明の一実施例に従う、計測設計最適化装置440を示す。装置440は、中央処理装置(CPU)441と、メモリ442(例えば、RAM、DRAM、ROM等)とを含む。CPU441は、一部がメモリ442に格納されているプログラム443を実行する。メモリ442は、プログラム443により使用されまたはプログラム443により生成されるデータ444を含み得る。例として、プログラム443は方法100を実行するように設定される。特に、プログラム443は、実行されるとき、前述したタイプの方法を実施する命令を含む。特に、命令は、実行される際、処理装置441がa)計測ターゲット設計に関する情報と、ターゲットが形成される基板と、計測ターゲットを測定するために使用される計測システムとを含む入力を受け取るようにさせ、b)計測ターゲットの1または複数の特徴を生成するために計測ターゲット情報を用いる計測システムで計測信号のモデルを獲得するようにさせ、c)基板上の計測ターゲットを用いる計測システムで作られた予想精度および正確さを決定するために計測ターゲットの特徴に計測アルゴリズムを適用するようにさせ、d)計測ターゲット設計に関する情報の少なくとも一部を修正するようにさせ、またターゲットを最適化するためにb)およびc)を繰り返すようにさせ、e)最適化された計測ターゲット設計を表わす情報を表示または記憶するようにさせる。
【0038】
例として、データ444は、計測ターゲット設計データ、計測システムの光学的特徴に関するデータ、プロセスの積層および外形情報、並びに公称プロセス変化範囲のようなプログラム443のための入力を含む。また、データ444は、最適化された計測ターゲット設計、最適化された計測ターゲットレシピ(例えば、波長または角度のための重み関数)および重み関数上の計測信号の依存関係のような、プログラム443からの出力を含む。コントローラ440は、ディスク・ドライブ、CD−ROMドライブ、テープドライブ、または、プログラムおよび/またはデータを格納するための同様なもののような大容量記憶装置446を選択的に含む。例として、大容量記憶装置は、プログラム443により生成された最適化計測ターゲット設計447を格納するために使用される。最適化ターゲット設計447は、GDS IIのような、格納および/またはディスプレイに適する形式に従って形式化される。また、コントローラ440は、複数の入出力(I/O)回路451、複数の電源(P/S)、クロック(CLK)453およびキャッシュメモリ454のような良く知られたサポート回路450を含む。また、コントローラ440は、選択的に、コントローラ440とユーザとの間の相互作用を容易にするためのユーザインターフェース装置448とディスプレイ装置449とを含む。ディスプレイ装置449は、文字列、数字またはグラフィカル・シンボルを表わす陰極線管(CRT)または平面ディスプレイの形態をとる。ユーザインターフェース448は、キーボード、マウス、ジョイスティック、ライトペンまたは他の装置を含む。前述の構成要素は内部バス460を介して信号を互いに変換する。コントローラ440は、本明細書に記載されているように、本発明の実施形態を実施するコードを実行するときに専用コンピュータとなる汎用コンピュータである。
【0039】
本発明の実施形態は、最適計測ターゲット設計に到達するサイクル時間を低減することができ、さらに、精度および正確さに関してピークターゲット性能を改善することができる。
【0040】
前記したところは本発明の好ましい実施形態の詳細な説明であるが、さまざまな変更、修正および等価なものを用いることができる。したがって、本発明の範囲は前述の説明に準拠することなしに決定されるべきであり、そうではなく、これに代えて、添付の特許請求の範囲とともにこれと等価の全ての範囲に準拠して決定されるべきである。いずれの特徴も、好ましいものであるか否かを問わず、任意の他の特徴と組み合わされる。特許請求の範囲において、不定冠詞「A」または「An」は、明確に反対のことを述べる場合を除いて、以下の品目の1または複数の項目の量に言及する。特許請求の範囲において以下のとおりである。用語「or」は「論理和」を含むものとして解釈される。例えばAまたはBは、AかそれともBがそれぞれ存在する場合は満たされ、あるいは、AおよびBの双方が存在する場合に満たされる。添付の特許請求の範囲は、ミーンズ・プラス・ファンクション限定が任意の請求項に語句「ための手段」を用いて明確に列挙されていない限り、このような限定を含むものとして解釈されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測ターゲット設計を最適化するための方法であって、
a)前記計測ターゲット設計に関する情報、前記ターゲットが形成される基板に関する情報、前記計測ターゲットを形成するために用いられるプロセスに関する情報、または前記計測ターゲットを測定するために用いられる計測システムに関する情報を含む入力を受け取ること、
b)前記計測ターゲットの1または複数の光学的特徴を生成するために前記入力を用いて前記計測システムにより計測信号のモデルを獲得すること、
c)前記基板上の前記計測ターゲットを用いて前記計測システムによりなされる1または複数の測定の予測される精度および正確さを決定するために前記1または複数の光学的特徴に計測アルゴリズムを適用すること、
d)前記計測ターゲット設計に関する前記情報の少なくとも一部を修正すること、および、
e)前記精度および正確さが最適化された後に前記計測ターゲット設計を表わす情報を表示または格納することを備える、方法。
【請求項2】
前記計測ターゲットはオーバーレイターゲットである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計測ターゲットは微分光散乱オーバーレイターゲットである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記計測ターゲットはマルチセル微分光散乱オーバーレイターゲットである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
b)は、前記計測信号がオーバーレイに対して強い感度を有する計測特徴空間内に1または複数の領域を決定すること、および、これらの領域内の特徴により大きく重み付けをするために計測レシピを修正することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
b)は、有限数の係数を有する数式により前記計測信号のモデルを獲得すること、および、高次の係数の大きさを無視することができる計測特徴の1または複数の値から計測寄与に適用される重みを増大させること、および/または、高次の係数の大きさを無視することができない計測特徴の1または複数の値から計測寄与の重みを低減させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
c)は、前記計測ターゲットの特徴から計測信号感度を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記1または複数の測定の精度および正確さを最適化するために、d)およびe)の間にb)、c)およびd)を繰り返すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
b)、c)およびd)を繰り返すことは、前記計測ターゲットを表わす前記情報を集積回路設計のための標準形式に格納することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記計測ターゲット設計に関する前記情報は、前記ターゲット設計の1または複数の設計パラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記計測ターゲット設計に関する前記情報は、1または複数のターゲット設計自由度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ターゲットが形成される基板に関する前記情報は、前記基板上の1または複数の材料層に関する積層および形状の情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記計測ターゲットを形成するために用いられるプロセスに関する前記情報は、前記ターゲットを形成するために用いられる前記プロセスに関するプロセス変化データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記計測ターゲットを測定するために用いられる計測システムに関する前記情報は、前記計測装置により用いられる光学、前記計測装置により用いられるプローブ放射、または前記光学装置により用いられる検出器を特徴付ける1または複数のパラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記光学的特徴は、前記計測ターゲットにより散乱された放射のシミュレートされたスペクトルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
c)は、前記シミュレートされたスペクトルの1または複数の特徴を、所定の計測測定値に関連する1または複数のスペクトルと比較することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
計測ターゲット設計を最適化するための装置であって、
a)前記計測ターゲット設計に関する情報、前記ターゲットが形成される基板に関する情報、前記計測ターゲットを形成するために用いられるプロセスに関する情報、または前記計測ターゲットを測定するために用いられる計測システムに関する情報を含む入力を受け取るように設定された光学シミュレータであって、前記計測ターゲットの1または複数の光学的特徴を生成するために前記入力を用いて前記計測システムにより計測信号のモデルを獲得するように設定されている、光学シミュレータと、
b)前記基板上の前記計測ターゲットを用いて前記計測システムによりなされる測定の予測される精度および正確さを決定するために前記光学的特徴に計測アルゴリズムを適用するように設定された計測シミュレータと、
c)最適化された計測ターゲット設計を形成するために前記設計を最適化すべく前記計測ターゲット設計に関する前記情報の少なくとも一部を修正するように設定された最適化ループと、を備える、装置。
【請求項18】
さらに、前記最適化された計測ターゲット設計を表わすための前記情報を表示するように設定されたディスプレイを備える、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
さらに、前記最適化された計測ターゲット設計を表わす情報を記憶するように設定されたデータ記憶装置を備える、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記最適化ループは、計測レシピ最適化データを生じさせるように設定されている、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記計測レシピ最適化データは、1または複数の対応する計測特徴から計測寄与に適用される重みの1または複数の値を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記最適化ループは、計測レシピ最適化データを生じさせるように設定されている、請求項17に記載の装置。
【請求項23】
前記計測レシピ最適化データは、1または複数の重み関数上に前記計測信号の1または複数の依存関係を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記最適化ループは、プロセス変化の空間にわたって前記計測システムによりなされた測定の正確性の精度の推定を生じさせるように設定されている、請求項17に記載の装置。
【請求項25】
計測ターゲットデザインを最適化するための装置であって、
プロセッサと、
メモリと、を備え、
前記プロセッサにより実行されるために前記メモリ内に格納されている命令であって、当該命令は、前記プロセッサにより実行されることにより計測ターゲットを最適化するための方法を実施するように構成されており、前記方法は
a)前記計測ターゲット設計に関する情報、前記ターゲットが形成される基板に関する情報、前記計測ターゲットを形成するために用いられるプロセスに関する情報、および前記計測ターゲットを測定するために用いられる計測システムに関する情報を含む入力を受け取ること、
b)前記計測ターゲットの1または複数の光学的特徴を生成するために前記入力を用いる前記計測システムにより計測信号のモデルを獲得すること、
c)前記基板上の前記計測ターゲットを用いて前記計測システムによりなされる1または複数の測定の予測される精度および正確さを決定するために前記1または複数の光学的特徴に計測アルゴリズムを適用すること、
d)前記計測ターゲット設計に関する前記情報の少なくとも一部を修正すること、前記1または複数の測定の精度および正確さを最適化するためにb)、c)およびd)を繰り返すこと、および
e)前記精度および正確さが最適化された後に前記計測ターゲット設計を表わす情報を表示または格納することを備える、装置。
【請求項26】
コンピュータ読み取り可能媒体であって、その内部にコンピュータ読み取り可能の命令が格納されており、前記命令は、プロセッサにより実行されることにより計測ターゲットを最適化するための方法を実施するように構成されており、前記方法は
a)前記計測ターゲット設計に関する情報、前記ターゲットが形成される基板に関する情報、前記計測ターゲットを形成するために用いられるプロセスに関する情報、および前記計測ターゲットを測定するために用いられる計測システムに関する情報を含む入力を受け取ること、
b)前記計測ターゲットの1または複数の光学的特徴を生成するために前記入力を用いる前記計測システムにより計測信号のモデルを獲得すること、
c)前記基板上の前記計測ターゲットを用いて前記計測システムによりなされる1または複数の測定の予測される精度および正確さを決定するために前記1または複数の光学的特徴に計測アルゴリズムを適用すること、
d)前記計測ターゲット設計に関する前記情報の少なくとも一部を修正すること、および
e)前記精度および正確さが最適化された後に前記計測ターゲット設計を表わす情報を表示または格納することを備える、媒体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−514871(P2012−514871A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545386(P2011−545386)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/020046
【国際公開番号】WO2010/080732
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502442049)ケーエルエー−テンカー・コーポレーション (77)
【氏名又は名称原語表記】KLA−TENCOR CORPORATION
【Fターム(参考)】