説明

光電変換装置及びそれを備えた表示パネル

【課題】誤動作のない光電変換装置を提供すること。
【解決手段】第1センサTFT100−1のスリット104より出射されたバックライト光は透明な対向基板22を透過して指で反射され、反射光として前記第1センサTFT100−1で光電変換されて、該第1センサTFT100−1は光電変換状態となるが、スリット104を持たない第2センサTFT100−2では、センサ間領域102から出射されたバックライト光の反射光しか光電変換されないので、該第2センサTFT100−2はほぼ非光電変換状態となる。輝度の高い外光が入射した時は、前記第1及び第2センサTFT100−1,100−2とも光電変換する。従って、前記第1センサTFT100−1のみ光電変換状態となった場合、指が存在すると判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置及びそれを備えた表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、光電変換部にアモルファスシリコン(以下、a−Siと略記する)を用いた薄膜トランジスタ型の光電変換素子(以下、TFT型光電変換素子と略記する)を複数隣接配置して構成した光電変換装置が知られている。
【0003】
図8は、このようなTFT型光電変換素子の光−電気特性の一例を示す図である(TFTサイズ(W/L)=180000/9[μm]、各端子電圧:Vs=0[V]、Vd=10[V]の条件で、照射光の照度をパラメータとしたときのIds[A]を測定したものである)。
【0004】
この図より、照度に応じてドレインソース間電流Idsが増大していることがわかる。特に、逆バイアス領域(Vgs<0)におけるIdsの増大が顕著であり、通常はこの領域の特性を用いて、照射光の照度をIdsの変化として検出する光電変換素子として用いられる。
【0005】
また、図9は、このようなTFT型光電変換素子10を用いた光電変換装置の構造の一例を示す図である。
【0006】
TFT型光電変換素子10は、透明のTFT基板12上に形成されたゲート電極14と、このゲート電極14の上に形成された透明の絶縁膜16と、この絶縁膜16上に前記ゲート電極14と対向させて形成されたa−Siからなる光電変換部18と、この光電変換部18の上に形成されたソース電極及びドレイン電極20とからなっている。そして、このようなTFT型光電変換素子10の上面を透明な絶縁膜16により覆い、図示しないシール部材やギャップ材により所定の距離を確保した上で、その上に透明な対向基板22を設けることで、光電変換装置を構成している。
【0007】
なお、前記所定の距離は、隣接配置されたTFT型光電変換素子10間の間隔と、光電変換装置を構成する他の各部材の屈折率等とに基づいて決まるものである。即ち、前記TFT基板12の裏面側に配したバックライト24から前記隣接のTFT型光電変換素子10間を通って前記対向基板22側に照射されたバックライト光26が前記対向基板22上に載置された対象物、例えば指28で反射されてなる反射光30を、a−Siからなる光電変換部18が正確に光電変換できるように、前記所定の距離が決められる。上記において、なお、この所定距離分の領域は、空間として空気が存在していても良いし、TFT型光電変換素子10を液晶(LCD)パネルに一体的に組み込み形成する場合には、液晶が満たされていても構わない。
【0008】
このような構成の光電変換装置では、指28(注:正確には指の指紋を形成する凹部であるが、図示は指紋の凹部を省略している)で反射したバックライト光26即ち反射光30を光電変換部18が光電変換することにより、指28の指紋の形状を認識するものである。
【特許文献1】特開平6−236980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記のような従来の光電変換装置では、外部からの入射光(主に日光)の輝度がバックライト光26の輝度を上回る場合、誤動作してしまうという問題があった。すなわち、対向基板22上に指28が載置されていない場合、外光がそのままTFT型光電変換素子10の光電変換部18に入射されるため、指が搭載された状態でバックライト光26が指で反射されてTFT型光電変換素子10の光電変換部18に入射された場合と何ら変わりがない。このため、反射光のような信号光と日光のような外光とを識別することができず、指等の対象物が載置されたことを認識して制御信号を発するタッチパネル等には適用することができないものであった。
【0010】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたもので、反射光のような信号光と日光のような外光とを識別できる光電変換装置及びそれを備えた表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1の発明は、光電変換装置において、
光電変換部を有する第1の光電変換素子が配置された第1の領域と光電変換部を有する第2の光電変換素子が配置された第2の領域を有する光電変換素子アレイと、
前記光電変換素子アレイの下側より前記光電変換素子アレイ側に向けて出射された光が、前記光電変換素子アレイの上方に配置された検出対象物により反射された反射光を前記光電変換素子アレイに入射させる光出射手段と、
前記第1の光電変換素子の光電変換部と前記光出射手段との間に、前記第1光電変換素子に包含されるかあるいは別部材として設けられた第1の遮光層と、
前記第2の光電変換素子の光電変換部と前記光出射手段との間に、前記第2光電変換素子に包含されるかあるいは別部材として設けられた第2の遮光層と、
を具備し、
前記光出射手段から前記光電変換素子アレイ側に向けて出射した光が、前記第1の領域を透過する光量は、前記第2の領域を透過する光量よりも多いことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光電変換装置において、
前記第1の光電変換素子および前記第2の光電変換素子は、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を有する薄膜トランジスタ型光電変換素子であり、前記第1の遮光層および前記第2の遮光層は、それぞれ、前記第1の光電変換素子および前記第2の光電変換素子のゲート電極であることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光電変換装置において、
前記第1の光電変換素子は複数個であり、前記第1の光電変換素子のゲート電極は、前記各第1の光電変換素子間で分離されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の光電変換装置において、
前記第1の領域に配置された前記各第1の光電変換素子のソース電極同士は相互に接続され、前記各第1の光電変換素子間にスリットを有し、前記各第1の光電変換素子のドレイン電極同士は相互に接続され、前記各第1の光電変換素子間にスリットを有することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の光電変換装置において、
前記第1の領域と前記第2の領域は同一の面積であり、前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子の数は、前記第2の領域に配置された前記第2の光電変換素子の数よりも多いことを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1に記載の光電変換装置において、
前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力を検出する検出手段を含む判別手段を更に具備することを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項6に記載の光電変換装置において、
前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子及び、前記第2の領域に配置された前記第2の光電変換素子をそれぞれ複数個備え、前記各検出手段は、複数個の前記第1の光電変換素子の出力または複数個の前記第2の光電変換素子の出力を入力する入力部を有することを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項6に記載の光電変換装置において、
前記判別手段は、前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力に基づいて前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項8に記載の光電変換装置において、
前記判別手段は、前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力が不一致である場合に、前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項8に記載の光電変換装置において、
外光の強度が弱く、前記第1の光電変換素子及び前記第2の光電変換素子が非光電変換の出力の場合は、前記判別手段は前記第1の光電変換素子の出力の変化に基づいて前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項8に記載の光電変換装置において、
外光の強度が強く、前記第1の光電変換素子及び前記第2の光電変換素子が光電変換の出力の場合は、前記第2の光電変換素子の出力の変化に基づいて前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項1に記載の光電変換装置において、
前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子は、市松状に配置された複数の薄膜トランジスタ型光電変換素子で形成され、それら薄膜トランジスタ型光電変換素子間より前記光出射手段からの光が出射され、
前記第2の領域に配置された前記光電変換素子アレイの前記第2の光電変換素子は、前記第1の光電変換素子の領域に対応する領域を持つ、一つの薄膜トランジスタ型光電変換素子で形成されることを特徴とする。
【0023】
請求項13の発明は、請求項12に記載の光電変換装置において、
前記薄膜トランジスタ型光電変換素子は、アモルファスシリコン薄膜トランジスタで形成されることを特徴とする。
【0024】
請求項14の発明は、請求項12又は13に記載の光電変換装置において、
前記薄膜トランジスタ型光電変換素子は、ダブルゲート型アモルファスシリコン薄膜トランジスタで形成されることを特徴とする。
【0025】
また、請求項15の発明は、表示パネルにおいて、
表示領域とタッチセンサ領域とを有し、
前記表示領域と前記タッチセンサ領域とは、共通のTFT基板及び共通の対向基板を有し、
前記表示領域には、前記TFT基板上に、画素電極と、該画素電極に接続されたスイッチング素子とが形成されると共に、前記TFT基板と前記対向基板との間には液晶が充填され、
前記タッチセンサ領域には、第1の光電変換素子が配置された第1の領域と第2の光電変換素子が配置された第2の領域を有する光電変換素子アレイが形成され、
前記タッチセンサ領域における前記TFT基板の下側には、前記光電変換素子アレイの下側より前記光電変換素子アレイ側に向けて出射された光が、検出対象物により反射された反射光を前記光電変換素子アレイに入射させる光出射手段が形成され、
前記光出射手段からの光は、前記光電変換素子アレイの前記複数の光電変換素子を透過して前記光電変換素子アレイの上方に出射され、
前記光出射手段から前記光電変換素子アレイ側に向けて出射された光が、前記第1の領域を透過する光量は、前記第2の領域を透過する光量よりも多いことを特徴とする表示パネル。
【0026】
請求項16の発明は、請求項15に記載の表示パネルにおいて、
前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子の光電変換部と前記光出射手段との間に、前記第1光電変換素子に包含されるかあるいは別部材として設けられた第1の遮光層と、前記第2の領域に配置された前記第2の光電変換素子の光電変換部と前記光出射手段との間に、前記第2光電変換素子に包含されるかあるいは別部材として設けられた第2の遮光層と、を具備し、前記光出射手段から前記光電変換素子アレイ側に向けて出射した光が、前記第1の領域を透過する光量は、前記第2の領域を透過する光量よりも多いことを特徴とする。
【0027】
請求項17の発明は、請求項15に記載の表示パネルにおいて、
前記光照射手段は、前記表示領域及び前記タッチセンサ領域における前記TFT基板の下側に配置されたバックライトを含むことを特徴とする。
【0028】
請求項18の発明は、請求項15に記載の表示パネルにおいて、
前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力を検出する検出手段を含む判別手段を更に具備することを特徴とする。
【0029】
請求項19の発明は、請求項18に記載の表示パネルにおいて、
前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子及び前記第2の領域に配置された前記第2の光電変換素子をそれぞれ複数個備え、前記各検出手段は、複数個の前記第1の光電変換素子の出力または複数個の前記第2の光電変換素子の出力を入力する入力部を有することを特徴とする。
【0030】
請求項20の発明は、請求項15に記載の表示パネルにおいて、
前記判別手段は、前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力に基づいて前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする。
【0031】
請求項21の発明は、請求項20に記載の表示パネルにおいて、
前記判別手段は、前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力が不一致である場合に、前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする。
【0032】
請求項22の発明は、請求項15に記載の表示パネルにおいて、
前記タッチセンサ領域には、第1の光電変換素子が配置された第1の領域と第2の光電変換素子が配置された第2の領域とがそれぞれ複数配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、検出対象物で反射された反射光のような外部から入射される信号光は第1の光電変換素子のみで光電変換され、日光のような外光は第1、第2の光電変換素子の両方で光電変換されることから、光電変換素子アレイからは、入射される光の種類に応じた出力が得られる。従って、反射光のような信号光と日光のような外光とを識別できる光電変換装置及びそれを備えた表示パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0035】
[第1実施形態]
図1(A)及び(B)はそれぞれ本発明の第1実施形態としての光電変換装置の断面図及び示す平面図を示す。
【0036】
該光電変換装置は、第1の光電変換素子としての第1センサTFT100−1が配置された第1の領域A1と第2の光電変換素子としての第2センサTFT100−2が配置された第2の領域A2とを有する。図1においては、第1の領域A1と第2の領域A2とは各1個のみが図示されているが、第1の領域A1と第2の領域A2とは所定幅のセンサ間領域102を開けて縦横交互に配置され、光電変換素子アレイを構成している。なお、従来と同様のものについては、図9と同じ参照番号を付している。
【0037】
前記第1及び第2センサTFT100−1,100−2は、それぞれ、透明のTFT基板12上に形成されたゲート電極(遮光層)14と、このゲート電極14の上に形成された透明の絶縁膜16と、この絶縁膜16上に前記ゲート電極14と対向させて形成されたa−Siからなる光電変換部18と、この光電変換部18の上に形成されたソース電極及びドレイン電極20とからなる、3つTFT型光電変換素子10によって構成されている。そして、このようなセンサTFT100−1,100−2の上面を透明な絶縁膜16により覆い、図示しないシール部材やギャップ材により所定の距離を確保した上で、その上に透明な対向基板22を設けることで、光電変換装置を構成している。
【0038】
第1の領域A1に配置された前記第1センサTFT100−1においては、前記3つのTFT型光電変換素子10は、間隔を置いて隣接配置されている。即ち、前記第1センサTFT100−1の平面構造(レイアウト)にあっては、間隔を置いて3つのゲート電極14が配置され、各ゲート電極14上に光電変換部18が配置される。各ゲート電極14はクロム、モリブデン、アルミニウム、タンタル等の遮光性材料で形成され図示はしないが、相互にゲート配線で接続されている。そして、それら3つの光電変換部18上それぞれに、クロム、モリブデン、アルミニウム、タンタル等の遮光性材料により1層あるいは積層して形成されたソース電極及びドレイン電極20が配置される。ここで、これら3つのTFT型光電変換素子10で1つのセンサTFT100−1を形成するために、ソース電極同士が接続され、またドレイン電極同士も接続される。但し、中央のTFT型光電変換素子10及び一方の隣接TFT型光電変換素子10のソース電極を一体的な構成とするのではなく、それぞれにソース電極を設けて、それらTFT型光電変換素子10外の領域でそれらソース電極同士及び他方の隣接TFT型光電変換素子10のソース電極を接続する構造としている。同様に、ドレイン電極に関しても、前記中央のTFT型光電変換素子10及び前記他方の隣接TFT型光電変換素子10のそれを一体的な構成とするのではなく、それぞれにドレイン電極を設けて、それらTFT型光電変換素子10外の領域でそれらドレイン電極同士及び前記一方の隣接TFT型光電変換素子10のドレイン電極を接続する構造としている。このような配線構造とすることにより、すなわち、ゲート電極14が形成されていない領域、ソース電極及びドレイン電極20が形成されていない領域(スリット104形成領域を含む)が透光領域となり、前記TFT基板の下側に配置された光出射手段としてのバックライト24からのバックライト光26が透光領域を通して出射可能となっている。このバックライト24としては、白色、赤色または赤外線等を発するものが使用可能である。
【0039】
これに対して、第2の領域A2に配置された前記第2センサTFT100−2は、前記3つのTFT型光電変換素子10を、間隔を置かずに隣接配置している。即ち、前記第2センサTFT100−2の平面構造(レイアウト)にあっては、1つのゲート電極14が配置され、その1つのゲート電極14上に3つの光電変換部18が配置されている。そして、それら3つの光電変換部18上それぞれにソース電極及びドレイン電極20が配置される。ここで、これら3つのTFT型光電変換素子10で1つのセンサTFT100−2を形成するために、ソース電極同士が接続され、またドレイン電極同士も接続される。但し、この第2センサTFT100−2においては、中央のTFT型光電変換素子10及び一方の隣接TFT型光電変換素子10のソース電極を一体的な構成とし、該一体的なソース電極と他方の隣接TFT型光電変換素子10のソース電極をそれらTFT型光電変換素子10外の領域で接続する構造としている。同様に、ドレイン電極に関しても、前記中央のTFT型光電変換素子10及び前記他方の隣接TFT型光電変換素子10に関して一体的な構成とし、該一体的なドレイン電極と前記一方の隣接TFT型光電変換素子10のドレイン電極をそれらTFT型光電変換素子10外の領域で接続する構造としている。このように、前記第2センサTFT100−2は、前記第1センサTFT100−1のようなスリット104を有しておらず、遮光層であるゲート電極14に対応する全領域が非透光領域となり、前記TFT基板の下側に配置された前記バックライト24からのバックライト24光が透過されないようになっている。
【0040】
なお、前記対向基板22までの前記所定の距離は、前記第1センサTFT100−1における隣接配置されたTFT型光電変換素子10間の間隔と、該光電変換装置を構成する各部材の屈折率とに基づいて決まるものである。即ち、前記TFT基板12の裏面側に配したバックライト24から前記対向基板22側に照射されたバックライト光26が、第1センサTFT100−1が配置された第1の領域A1の透光領域を通って前記対向基板22上に載置された対象物、例えば指28で反射された反射光30を、TFT型光電変換素子10の光電変換部18が正しく光電変換できるように、前記所定の距離が決められる。本発明の薄膜トランジスタ型光電変換素子の場合、バックライト24から光電変換素子アレイ側に向けて出射した光が、第2センサTFT100−2が配置された第2の領域A2の透光領域を通過する光量は、第1センサTFT100−1の透光領域を透過する光量の10〜90%になるように設定することが望ましい。なお、この所定距離分の領域は、空間として空気が存在していても良いし、該光電変換装置を液晶表示パネルに一体的に組み込み形成する場合には、液晶が満たされていても構わない。
【0041】
次に、このような構成の光電変換装置の動作を、図2(A)乃至(C)を参照して説明する。なお、図2(A)は、対象物としての指28が対向基板22上に接触された際の光の経路を説明するための図であり、図2(B)は、強い外光106が入射したときの光の経路を説明するための図である。また、図2(C)は、本光電変換装置の動作を纏めた動作表を示す図である。
【0042】
即ち、本実施形態においては、図2(A)に示すように、バックライト24から発光されたバックライト光26は、隣接するセンサTFT100−1,100−2間のセンサ間領域102及び第1センサTFT100−1のスリット104の領域より、透明な前記TFT基板12及び絶縁膜16を透過して、透明な前記対向基板22方向へ照射される。そして、該対向基板22を透過して、当該光電変換装置の外部へ出射される。この外部へ出射されたバックライト光26は、前記対向基板22上部に接触している対象物である指28(実際は、指の指紋を形成する凹部であるが、この凹部は図示が省略されている)で反射されて、反射光30として、光電変換装置内へ戻され、対向基板22を透過して、各センサTFT100−1,100−2に照射される。
【0043】
この場合、前記第1センサTFT100−1に関しては、バックライト光26は、前記センサ間領域102に加えて前記スリット104の領域からも照射されるので、反射光30は該スリット104の領域から照射されたバックライト光26によっても得られる。そのため、該第1センサTFT100−1を構成する3つのTFT型光電変換素子10の各光電変換部18に反射光30が入射されることになる。従って、該第1センサTFT100−1は、光電変換状態となる。
【0044】
これに対して、前記第2センサTFT100−2に関しては、前記第1センサTFT100−1のようなスリット104が形成されていないため、該第2センサTFT100−2に照射される反射光30は、前記センサ間領域102から照射されたバックライト光26が指28で反射された反射光30のみとなる。よって、該第2センサTFT100−2には、両端のTFT型光電変換素子10の各光電変換部18にのみ、しかも僅かな反射光30しか入射されないことになる。従って、該第2センサTFT100−2は、ほぼ非光電変換状態となる。
【0045】
従って、該光電変換装置に指28が接触していると、図2(C)の左側に示すように、第1センサTFT100−1は光電変換し、第2センサTFT100−2は光電変換しない状態が発生することになる。本実施形態では、この状態を該光電変換装置のON状態(対象物有りの状態)とする。
【0046】
これに対して、図2(B)に示すように、前記透明な対向基板22に指28が接触しておらず、日光のようなバックライト光26よりも輝度の高い外光106が該光電変換装置に照射された状態においては、その外光106は、前記対向基板22を透過して、前記センサTFT100−1,100−2に照射される。よって、このような場合には、前記第1センサTFT100−1を構成する3つのTFT型光電変換素子10の各光電変換部18、及び、前記第2センサTFT100−2を構成する3つのTFT型光電変換素子10の各光電変換部18の全てに外光106が入射されることになる。従って、図2(C)の右側に示すように、第1及び第2センサTFT100−1,100−2が2つとも光電変換している状態が発生することになる。本実施形態では、この状態を該光電変換装置のOFF状態(対象物無しの状態)とする。
【0047】
また、外光106の輝度が低く、図2(C)の中央に示すように、前記第1及び第2センサTFT100−1,100−2が2つとも光電変換しない状態も、本実施形態では、該光電変換装置のOFF状態(対象物無しの状態)とする。
【0048】
図3は、前記センサTFT100−1,100−2の光電変換/非光電変換の判定を行う検出回路の回路図である。また、図4は、光電変換装置を構成するセンサTFT100−1,100−2の電気的な接続構成を示す図である。
【0049】
前記第1及び第2センサTFT100−1,100−2の光電変換/非光電変換の判定は、例えば、図3に示すような検出回路108を含む判別手段により行うことができる。
【0050】
即ち、該検出回路108は、電流−電圧変換回路110とコンパレータ112とから構成されている。ここで、電流−電圧変換回路110は、その非反転入力端子に所定の電圧Vfが印加された反転増幅器114と、該反転増幅器114の出力端子と反転入力端子との間に接続された帰還抵抗Rfと、から構成され、前記第1センサTFT100−1又は第2センサTFT100−2(図3ではセンサTFT100として示す)からの配線が前記反転増幅器114の反転入力端子に接続されるよう形成されている。コンパレータ112は、この電流−電圧変換回路110で変換された電圧値を所定の閾値電圧値Vtと比較することで、当該センサTFT100が光電変換状態にあるか、非光電変換状態にあるかを示す出力信号Voutを出力する。なお、前記所定の閾値電圧値Vtは、図2(A)に示したような、センサ間領域102からのバックライト光26による前記第2センサTFT100−2におけるごく僅かの反射光30の入射によるほぼ非光電変換を、確実に非光電変換と判別する値となっている。
【0051】
そして、特に図示はしてないが、判別手段は、このような検出回路108を第1センサTFT100−1用と第2センサTFT100−2用とで2つ設け、更に、それぞれの出力信号Voutの論理演算を行う論理回路を有する判別回路を設けることで、図2(C)を参照して説明したように、第1センサTFT100−1側の出力信号Voutが「1」、第2センサTFT100−2側の出力信号Voutが「0」という状態が検出されたとき、上記判別回路により光電変換装置のON状態と識別する。
【0052】
即ち、第1センサTFT100−1が接続された検出回路及び第2センサTFT100−2が接続された検出回路を、不一致回路を含む判別回路に接続すれば、不一致信号が検出されたとき、指が載置されていることを判別することができる。
【0053】
この場合、判別回路は必ずしも不一致回路を含む必要は無く、例えば、一致回路により判別するようにしても良い。外光が弱い場合には、第1センサTFT100−1及び第2センサTFT100−2に接続された検出回路108のいずれも出力信号Voutが「0」であり、この状態を一致回路により検出することができる。そして、光電変換装置に指28が載置されると第1センサTFT100−1側の出力信号Voutが「1」となるので、第1センサTFT100−1側の出力信号Voutが変化した状態を、指28が載置された瞬間として検出することができる。また、外光が強い場合には、第1センサTFT100−1及び第2センサTFT100−2に接続された検出回路108のいずれも出力信号Voutが「1」であり、この状態を一致回路により検出することができる。そして、光電変換装置に指28が載置されると第2センサTFT100−2側の出力信号Voutが「0」となるので、第2センサTFT100−1側の出力信号Voutが変化した状態を、指28が載置された瞬間として検出することができる。
【0054】
以上の原理により、光電変換装置に指28が接触した状態のみをON(対象物有りの状態)と識別し、それ以外の状態をOFF(対象物無しの状態)と認識する機構が実現できる。
【0055】
なお、実際には、光電変換装置は、縦横2次元に複数のセンサTFTを隣接配置したものであり、前述した第1のセンサTFT100−1と第2のセンサTFT100−2とが縦横交互に並ぶように形成する。そして、第1のセンサTFT100−1同士を並列接続し、また、第2のセンサTFT100−2同士を並列接続するように、ゲート電極14、ソース電極及びドレイン電極20、並びに配線を形成することで、第1及び第2センサTFT100−1,100−2のロケーションによる光電変換条件差を無くすことができる。
【0056】
即ち、図4に示すように、第1センサTFT100−1のゲート電極14は一つの配線Vgに接続され、ドレイン電極は一つの配線Vdに接続され、ソース電極は一つの配線Vs1に接続されるよう形成される。同様に、第2センサTFT100−2のゲート電極14は一つの配線Vgに(前記第1センサTFT100−1のゲート電極14と共通に)接続され、ドレイン電極は一つの配線Vdに(前記第1センサTFT100−1のドレイン電極と共通に)接続され、ソース電極は一つの配線Vs2に接続されるよう形成される。
【0057】
このような構成とすることにより、多数の第1センサTFT100−1は全体で一つの第1センサTFT100−1として機能し、多数の第2センサTFT100−2は全体で一つの第2センサTFT100−2として機能する。従って、一つに纏められた配線Vs1,Vs2をそれぞれを検出回路108に接続すれば、2つの同一構成の検出回路108によって、それぞれのセンサTFT100−1,100−2の光電変換/非光電変換状態を判別できる。このように、1つの光電変換装置は、複数個のセンサTFT100を隣接配置し、第1センサTFT100−1同士、第2センサTFT100−2同士はそれぞれ並列接続して合成出力をもってON/OFF判定を行うことで、検出回路が少なくても正確にON/OFF判定を行うことができる。
【0058】
以上のように、本実施形態では、前記第1センサTFT100−1は前記バックライト24から出射されたバックライト光26をある程度透過させ、前記第2センサTFT100−2は前記バックライト光26を透過させないように構成しているので、反射光30が第1センサTFT100−1に多く入射し、第2センサTFT100−2には殆ど入射しないようにすることができる。従って、反射光30が存在する場合は、第1及び第2センサTFT100−1,100−2に出力差が現れ、反射光30が無いときには、両者に出力差が現れないようにすることができる。
【0059】
そして、そのような第1センサTFT100−1と第2センサTFT100−2とを隣接して配置して光電変換素子アレイを構成し、この光電変換素子アレイからの出力により、判別手段としての検出回路108及び判別回路とにより前記のように検出対象物の有無を判別するような光電変換装置を実現している。
【0060】
このように、本実施形態によれば、外乱光がない場合と同様に、外乱光が強い場合も、光電変換装置に指28が接触した状態のみをON(対象物有りの状態)と識別し、誤認識しないようにすることができるという効果がある。
【0061】
なお、前記第1センサTFT100−1は前記バックライト24から出射されたバックライト光26をある程度透過させ(例えば透光率において5〜95%)、前記第2センサTFT100−2は前記バックライト光26を透過させない(例えば透光率において0%)ように構成しているが、前記第1センサTFT100−1と同様にスリット104を持ち、バックライト光26を透過させるものであってもかまない。但しその場合、前記第1センサTFT100−1の透光率と前記第2センサTFT100−2の透光率とに差を持たせ、光電変換部18に入射する反射光30の光量が、検出回路108の性能やバラツキを考慮しても十分区別がつく出力がその反射光30によって得られるようになっていることが必要である。
【0062】
図5は、上述の光電変換装置が一体化された液晶表示パネルの平面図を示す。
【0063】
表示パネル116は、平面的に重ならない位置に、表示領域118と複数のタッチセンサ120で構成されるタッチパネル領域122を有する。表示領域118には、薄膜トランジスタで回路構成された表示用液晶ドライバ124が接続されている。タッチパネル領域122の各タッチセンサ120には、薄膜トランジスタで回路構成されたセンサドライバ126が接続されている。表示領域118には、表示画素用TFT(スイッチング素子)と該表示画素用TFTに接続された画素電極がマトリクス状に配列されている。表示画素用TFTの構造は、上述したセンサTFT100−1及びセンサTFT100−2と同じである。但し、表示画素用TFTの上部は、遮光膜で覆われている。各タッチセンサ120は、上述したセンサTFT100−1が配置された第1の領域A1及びセンサTFT100−2が配置された第2の領域A2を少なくとも一対含んでおり、図1に図示された構造を有する。センサドライバ126は、前記検出回路108を含む判別手段としての機能とを有している。表示画素用TFT、表示用液晶ドライバ124、センサTFT100−1,100−2、及びセンサドライバ126は、ガラス若しくはプラスチックからなるTFT基板128上に同一のプロセスで形成することができる。この場合、前記光電変換装置のTFT基板12はタッチパネル領域122のTFT基板128に相当する。対向基板22及びバックライト24は、表示領域118及びタッチパネル領域122に共通である。
【0064】
上記実施形態において、表示用液晶ドライバ124及びセンサドライバ126は、LSIチップで構成しても良い。
【0065】
以上のように、本発明の第1実施形態の光電変換装置及び該光電変換装置を備えた表示パネルによれば、隣接して配置した第1の光電変換素子としての第1センサTFT100−1が配置された第1の領域A1と第2の光電変換素子としての第2センサTFT100−2が配置された第2の領域A2を有する複数の光電変換素子アレイにおいて、第1センサTFT100−1が配置された第1の領域A1の透光領域からバックライト光26が透過する光量は、第2センサTFT100−2が配置された第2の領域A2の透光領域からバックライト光26が透過する光量よりも多くなるように構成しているので、検出対象物としての指28で反射された反射光30は第1センサTFT100−1で光電変換され、日光のような外光は第1、第2センサTFT100−1,100−2の両方で光電変換されることから、入射される光の種類に応じた出力が得られ、従って、反射光のような信号光と日光のような外光とを識別できるようになる。
【0066】
そして、その出力を検出回路108を含む判別手段に供給することで、その出力に基づいて検出対象物の有無を判別することができる。
【0067】
例えば、第1センサTFT100−1のみが検知できたときという限定された状態でのみ前記対象物が存在すると判別するので、誤動作を防止できる。また、第1及び第2センサTFT100−1,100−2の両方が検知したときは前記対象物が存在しないと判別するので、外光によって誤動作することがない。更に、第1及び第2センサTFT100−1,100−2の何れも検知しないときには前記検出対象物が存在しないと判別するので、反射光も外光もないときに対象物が存在すると判別することはなく、誤動作を防止できる。従って、外光106(主に日光)による誤動作を防止できるという利点がある。
【0068】
また、本発明の光電変換装置においては、表示領域118を構成する液晶表示パネルと共通の構造を有するので、共通のTFT基板を用いて表示パネルと一体形成できる(殆ど工程を増やすことなく、タッチセンサ120付き表示パネル116を製造できる)という利点がある。
【0069】
この場合、バックライト24をも表示領域118のものと共通にできるという利点もある。
【0070】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態としての光電変換装置の断面図を示す。なお、本実施形態における光電変換装置において、前記第1実施形態における光電変換装置と同様の部分については、同じ参照番号を付すことで、その説明は省略する。また、図の簡略化のため、一対の光電変換素子のみを図示する。
【0071】
本第2実施形態における光電変換装置は、前記第1実施形態における第1及び第2センサTFT100−1,100−2に代えて、ダブルゲート型のアモルファスシリコンTFTをTFT型光電変換素子10として用いた第1及び第2のDG型TFTセンサ130−1,130−2を、第1及び第2光電変換素子として備えるものである。
【0072】
即ち、第1の領域A1に配置された第1のDG型TFTセンサ130−1及び第2の領域A2に配置された第2のDG型TFT130−2は、それぞれ、透明のTFT基板12上に形成されたゲート電極14と、このゲート電極14の上に形成された透明の絶縁膜16と、この絶縁膜16上に前記ゲート電極14と対向させて形成された光電変換部18と、この光電変換部18の上に形成されたソース電極及びドレイン電極20と、これら光電変換部18、ソース電極及びドレイン電極20の上面を覆う絶縁膜16上の、前記光電変換部18、ソース電極及びドレイン電極20に対応する位置に設けられた透明の上部ゲート電極132と、から構成されるものである。
【0073】
このようなDG型TFTセンサ130−1,130−2を用いた光電変換装置によれば、前記第1実施形態と同様の効果が得られると共に、2つのゲートの制御タイミングをずらすことにより感度特性の制御が可能である、明暗の出力比が大きくとれるというメリットがある。
【0074】
[第3実施形態]
図7(A)は本発明の第3実施形態の光電変換装置の構成を示す平面図である。これは、第1センサTFT100−1が配置された第1の領域A1を5領域、第2センサTFT100−2が配置された第2の領域A2を4領域持つ光電変換装置として構成した場合であり、図の簡略化のために、ゲート電極14の配置のみを示している。また、図7(B)はその回路構成を示す図であり、図7(C)は等価回路を示している。
【0075】
本実施形態においては、図7(A)に示すように、第1の領域A1に配置された第1センサTFT100−1は、市松状に配置された13個のTFT型光電変換素子10から構成され、第2の領域A2に配置された第2センサTFT100−2は、1個のTFT型光電変換素子10によって構成されている。ここで、前記第1センサTFT100−1を構成するTFT型光電変換素子10と前記第2センサTFT100−2を構成するTFT型光電変換素子10は、前述した第1実施形態ではその構造が異なっていたが、本実施形態ではサイズが異なるだけで同一の構造を有している。即ち、何れのTFT型光電変換素子10も、透明のTFT基板12上に形成されたゲート電極14と、このゲート電極14の上に形成された透明の絶縁膜16と、この絶縁膜16上に前記ゲート電極14と対向させて形成されたa−Siからなる光電変換部18と、この光電変換部18の上に形成されたソース電極及びドレイン電極20とからなっている。
【0076】
そして、前記第1センサTFT100−1のTFT型光電変換素子10は、縦横に素子間領域134が形成されるように市松状に配置され、前記第2センサTFT100−2のTFT型光電変換素子10は、前記第1センサTFT100−1の全TFT型光電変換素子10及び全素子間領域134を合わせた領域に対応する平面サイズの領域を占める大きさに形成される。例えば、前記第1センサTFT100−1のTFT型光電変換素子10のゲート電極14は0.5mm×0.5mm、前記第2センサTFT100−2のTFT型光電変換素子10は2mm×2mmのサイズを持つ。
【0077】
図7(B)に示すように、前記5つの第1センサTFT100−1の全TFT型光電変換素子10のドレイン電極はVd端子136−1に共通接続され、ソース電極はVs1端子138に共通接続され、ゲート電極はVg端子140に共通接続される。同様に、前記4つの第2センサTFT100−2の全TFT型光電変換素子10のドレイン電極はVd端子136−2に共通接続され、ソース電極はVs2端子142に共通接続され、ゲート電極は前記Vg端子140に共通接続される。従って、この光電変換装置の回路構成は、図7(C)に示すように、1つの第1センサTFT100−1と1つの第2センサTFT100−2とからなるものと見なすことができる。
【0078】
このような構成の光電変換装置では、バックライト24から発光されたバックライト光26は、ゲート電極14が形成されていない隣接するセンサTFT100−1,100−2間のセンサ間領域102と、第1センサTFT100−1の各TFT型光電変換素子10の間の素子間領域134とより、透明な前記TFT基板12及び絶縁膜16を透過して、透明な前記対向基板22方向へ照射される。そして、該対向基板22を透過して、当該光電変換装置の外部へ出射される。この外部へ出射されたバックライト光26は、前記対向基板22上部に接触している対象物である指28で反射されて、反射光30として、該光電変換装置内へ戻される。この反射光30は、前記対向基板22を透過して、各センサTFT100−1,100−2に照射される。
【0079】
この場合、前記第1センサTFT100−1に関しては、バックライト光26は、前記センサ間領域102に加えて前記素子間領域134からも照射されるので、反射光30は該素子間領域134から照射されたバックライト光26によっても得られる。そのため、前記第1センサTFT100−1を構成する合計65個のTFT型光電変換素子10の各光電変換部18に反射光30が入射されることになる。従って、該第1センサTFT100−1は、光電変換状態となる。
【0080】
これに対して、前記第2センサTFT100−2に関しては、前記第1センサTFT100−1のような素子間領域134が形成されていないため、該第2センサTFT100−2に照射される反射光30は、前記センサ間領域102から照射されたバックライト光26が指28で反射された反射光30のみとなる。よって、前記第2センサTFT100−2を構成する合計4個のTFT型光電変換素子10の各光電変換部18には、僅かな反射光30しか入射されないことになり、該第2センサTFT100−2は、ほぼ非光電変換状態となる。
【0081】
従って、該光電変換装置に指28が接触していると、第1センサTFT100−1は光電変換し、第2センサTFT100−2は光電変換しない状態が発生することになる。
【0082】
また、前記透明な対向基板22に指28が接触しておらず、日光のようなバックライト光26よりも輝度の高い外光106が該光電変換装置に照射された状態においては、その外光106は、前記対向基板22を透過して、前記センサTFT100−1,100−2に照射される。よって、このような場合には、前記第1センサTFT100−1を構成する合計65個のTFT型光電変換素子10の各光電変換部18、及び、前記第2センサTFT100−2を構成する合計4個のTFT型光電変換素子10の各光電変換部18の全てに外光106が入射されることになる。従って、第1及び第2センサTFT100−1,100−2が2つとも光電変換している状態が発生することになる。
【0083】
また、前記透明な対向基板22に指28が接触しておらず、外光106の輝度が低い場合には、前記第1及び第2センサTFT100−1,100−2が2つとも光電変換しない状態となる。
【0084】
そこで、前述した第1実施形態で説明したような2つの検出回路108と、それら検出回路108の出力信号Voutの論理演算を行う論理回路を有する判別回路と、で構成された判別手段によって、前記第1及び第2センサTFT100−1,100−2の出力状態から、前記透明な対向基板22に指28が接触しているか否かを判別できる。即ち、前記Vs1端子136を一方の検出回路108の反転増幅器114の反転入力端子に接続し、前記Vs2端子138を他方の検出回路108の反転増幅器114の反転入力端子に接続すれば良い。
【0085】
このように、本発明の第3実施形態の光電変換装置によれば、隣接して配置した第1の光電変換素子としての第1センサTFT100−1と第2の光電変換素子としての第2センサTFT100−2とからなる複数の光電変換素子において、第1センサTFT100−1がバックライト光26を透過させる光量は、第2センサTFT100−2がバックライト光26を透過させる光量よりも多くなるように構成しているので、検出対象物としての指28で反射された反射光30は第1センサTFT100−1で光電変換され、日光のような外光は第1、第2センサTFT100−1,100−2の両方で光電変換されることから、入射される光の種類に応じた出力が得られ、従って、反射光のような信号光と日光のような外光とを識別できるようになる。
【0086】
また、このような本発明の第3実施形態の光電変換装置をタッチセンサ120として使用して液晶表示パネルに組み込むことで、前述の第1実施形態で説明したような表示パネル116を形成することができる。
【0087】
なお、前述した第1センサTFT100−1を構成するTFT型光電変換素子10のサイズ及び第2センサTFT100−2を構成するTFT型光電変換素子10のサイズは、一例であり、第1センサTFT100−1が検出する前記素子間領域134からのバックライト光26による反射光30が、対向基板22を経由して、隣接する第2のセンサTFT100−2に漏れることがないような大きさであれば良い。即ち、実際の光電変換装置では、センサTFT100−1,100−2と対向基板22の間の前記所定の距離は数μm程度であるのに比べて、対向基板22の厚さ(〜1mm程度)は非常に大きく、故にこの対向基板22が光漏れの主要経路となる。第1センサTFT100−1を構成するTFT型光電変換素子10のサイズが前記所定の距離に対して十分な大きさであれば、この光漏れによる第2センサTFT100−2への反射光の入射を防止できる。
【0088】
また、本第3実施形態においても、ダブルゲート型のアモルファスシリコンTFTをTFT型光電変換素子10として用いた第1及び第2のDG型TFTセンサ130−1,130−2を採用できることは言うまでもない。
【0089】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0090】
例えば、第1センサTFT100−1および第2センサTFT100−2のゲート電極14をバックライト光26を遮断する遮光層に兼用したが、ゲート電極14を透明な材料で形成し、ゲート電極14とバックライト24との間に、遮光性材料からなる遮光層をゲート電極14とは別部材で形成するようにしてもよい。
【0091】
また、第1センサTFT100−1および第2センサTFT100−2は、ゲート電極14が光電変換部18の下方に配置され、ソース電極およびドレイン電極20が光電変換部18の上方に配置された逆スタガ型としたものであったが、ゲート電極14をソース電極およびドレイン電極20と同様に光電変換部18の上方に配置したコプラナ型としたり、あるいは正スタガ型または逆コプラナ型とすることも可能である。
【0092】
また、前記第2実施形態では、ダブルゲート型の場合を説明したが、より多くのゲート電極を持つマルチゲート型アモルファスシリコンTFTを採用することも可能である。
【0093】
更には、前記第1乃至第3実施形態では、光電変換素子をアモルファスシリコンTFTとしたが、アモルファスシリコンTFTだけでなく、ポリシリコンTFT等の他のTFTを光電変換素子として用いても良い。また、TFT等のトランジスタに限らず、フォトダイオード等の他の光電変換素子であっても良い。
【0094】
また、前記第1乃至第3実施形態では、光電変換素子を、第1センサTFT100−1又は第1DG型TFTセンサ130−1と第2センサTFT100−2又は第2DG型TFTセンサ130−2との2種類としたが、3種類以上であっても構わない。
【0095】
更に、検出回路108は、図3に示した構成に限定されるものでないことは勿論である。例えば、前記検出回路108の発振を防止する目的で、反転増幅器114の出力とコンパレータ112の入力との間に緩衝増幅器(ヴォルテージフォロワ)を挿入しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(A)及び(B)はそれぞれ本発明の光電変換装置の第1実施形態の構成例を示す断面図及び平面図である。
【図2】(A)は指が対向基板上に接触された際の光の経路を説明するための図であり、(B)は強い外光が入射したときの光の経路を説明するための図であり、(C)は第1実施形態の光電変換装置の動作を纏めた動作表を示す図である。
【図3】センサTFTの光電変換/非光電変換の判定を行う検出回路の回路図である。
【図4】光電変換装置を構成するセンサTFTの電気的な接続構成を示す図である。
【図5】第1実施形態における光電変換装置を複数個、一体的に組み込み形成したTFT−LCDパネルを示す図である。
【図6】本発明の光電変換装置の第2実施形態の構成例を示す図である。
【図7】(A)は本発明の第3実施形態の光電変換装置の構成を説明するための5個の第1センサTFTと4個の第2センサTFTを持つタッチセンサとして構成した場合のゲート電極の配置例を示す図であり、(B)はその回路構成を示す図であり、(C)は等価回路を示す図である。
【図8】従来のTFT型光電変換装置の光−電気特性を示す図である。
【図9】従来のTFT型光電変換装置の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
10…TFT型光電変換素子、 12,128…TFT基板、 14…ゲート電極、 16…絶縁膜、 18…光電変換部、 20…ソース電極及びドレイン電極、 22…対向基板、 24…バックライト、 26…バックライト光、 28…指、 30…反射光、 100,100−1,100−2…センサTFT、 102…センサ間領域、 104…スリット、 106…外光、 108…検出回路、 110…電流−電圧変換回路、 112…コンパレータ、 114…反転増幅器、 116…表示パネル、 118…表示領域、 120…タッチセンサ、 122…タッチパネル領域、 124…表示用液晶ドライバ、 126…センサドライバ、 130−1,130−2…DG型TFTセンサ、 132…上部ゲート電極、 134…素子間領域、 136−1,136−2…Vd端子、 138…Vs1端子、 140…Vg端子、 142…Vs2端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部を有する第1の光電変換素子が配置された第1の領域と光電変換部を有する第2の光電変換素子が配置された第2の領域を有する光電変換素子アレイと、
前記光電変換素子アレイの下側より前記光電変換素子アレイ側に向けて出射された光が、前記光電変換素子アレイの上方に配置された検出対象物により反射された反射光を前記光電変換素子アレイに入射させる光出射手段と、
前記第1の光電変換素子の光電変換部と前記光出射手段との間に、前記第1光電変換素子に包含されるかあるいは別部材として設けられた第1の遮光層と、
前記第2の光電変換素子の光電変換部と前記光出射手段との間に、前記第2光電変換素子に包含されるかあるいは別部材として設けられた第2の遮光層と、
を具備し、
前記光出射手段から前記光電変換素子アレイ側に向けて出射した光が、前記第1の領域を透過する光量は、前記第2の領域を透過する光量よりも多いことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1の光電変換素子および前記第2の光電変換素子は、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を有する薄膜トランジスタ型光電変換素子であり、前記第1の遮光層および前記第2の遮光層は、それぞれ、前記第1の光電変換素子および前記第2の光電変換素子のゲート電極であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第1の光電変換素子は複数個であり、前記第1の光電変換素子のゲート電極は、前記各第1の光電変換素子間で分離されていることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第1の領域に配置された前記各第1の光電変換素子のソース電極同士は相互に接続され、前記各第1の光電変換素子間にスリットを有し、前記各第1の光電変換素子のドレイン電極同士は相互に接続され、前記各第1の光電変換素子間にスリットを有することを特徴とする請求項2または3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第1の領域と前記第2の領域は同一の面積であり、前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子の数は、前記第2の領域に配置された前記第2の光電変換素子の数よりも多いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力を検出する検出手段を含む判別手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子及び、前記第2の領域に配置された前記第2の光電変換素子をそれぞれ複数個備え、前記各検出手段は、複数個の前記第1の光電変換素子の出力または複数個の前記第2の光電変換素子の出力を入力する入力部を有することを特徴とする請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記判別手段は、前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力に基づいて前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記判別手段は、前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力が不一致である場合に、前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする請求項8に記載の光電変換装置。
【請求項10】
外光の強度が弱く、前記第1の光電変換素子及び前記第2の光電変換素子が非光電変換の出力の場合は、前記判別手段は前記第1の光電変換素子の出力の変化に基づいて前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする請求項8に記載の光電変換装置。
【請求項11】
外光の強度が強く、前記第1の光電変換素子及び前記第2の光電変換素子が光電変換の出力の場合は、前記第2の光電変換素子の出力の変化に基づいて前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする請求項8に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子は、市松状に配置された複数の薄膜トランジスタ型光電変換素子で形成され、それら薄膜トランジスタ型光電変換素子間より前記光出射手段からの光が出射され、
前記第2の領域に配置された前記光電変換素子アレイの前記第2の光電変換素子は、前記第1の光電変換素子の領域に対応する領域を持つ、一つの薄膜トランジスタ型光電変換素子で形成されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記薄膜トランジスタ型光電変換素子は、アモルファスシリコン薄膜トランジスタで形成されることを特徴とする請求項12に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記薄膜トランジスタ型光電変換素子は、ダブルゲート型アモルファスシリコン薄膜トランジスタで形成されることを特徴とする請求項12又は13に記載の光電変換装置。
【請求項15】
表示領域とタッチセンサ領域とを有し、
前記表示領域と前記タッチセンサ領域とは、共通のTFT基板及び共通の対向基板を有し、
前記表示領域には、前記TFT基板上に、画素電極と、該画素電極に接続されたスイッチング素子とが形成されると共に、前記TFT基板と前記対向基板との間には液晶が充填され、
前記タッチセンサ領域には、第1の光電変換素子が配置された第1の領域と第2の光電変換素子が配置された第2の領域を有する光電変換素子アレイが形成され、
前記タッチセンサ領域における前記TFT基板の下側には、前記光電変換素子アレイの下側より前記光電変換素子アレイ側に向けて出射された光が、検出対象物により反射された反射光を前記光電変換素子アレイに入射させる光出射手段が形成され、
前記光出射手段からの光は、前記光電変換素子アレイの前記複数の光電変換素子を透過して前記光電変換素子アレイの上方に出射され、
前記光出射手段から前記光電変換素子アレイ側に向けて出射された光が、前記第1の領域を透過する光量は、前記第2の領域を透過する光量よりも多いことを特徴とする表示パネル。
【請求項16】
前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子の光電変換部と前記光出射手段との間に、前記第1光電変換素子に包含されるかあるいは別部材として設けられた第1の遮光層と、前記第2の領域に配置された前記第2の光電変換素子の光電変換部と前記光出射手段との間に、前記第2光電変換素子に包含されるかあるいは別部材として設けられた第2の遮光層と、を具備し、前記光出射手段から前記光電変換素子アレイ側に向けて出射した光が、前記第1の領域を透過する光量は、前記第2の領域を透過する光量よりも多いことを特徴とする請求項15に記載の表示パネル。
【請求項17】
前記光照射手段は、前記表示領域及び前記タッチセンサ領域における前記TFT基板の下側に配置されたバックライトを含むことを特徴とする請求項15に記載の表示パネル。
【請求項18】
前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力を検出する検出手段を含む判別手段を更に具備することを特徴とする請求項15に記載の表示パネル。
【請求項19】
前記第1の領域に配置された前記第1の光電変換素子及び前記第2の領域に配置された前記第2の光電変換素子をそれぞれ複数個備え、前記各検出手段は、複数個の前記第1の光電変換素子の出力または複数個の前記第2の光電変換素子の出力を入力する入力部を有することを特徴とする請求項18に記載の表示パネル。
【請求項20】
前記判別手段は、前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力に基づいて前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする請求項18に記載の表示パネル。
【請求項21】
前記判別手段は、前記第1の光電変換素子の出力及び第2の光電変換素子の出力が不一致である場合に、前記検出対象物が存在すると判別することを特徴とする請求項20に記載の表示パネル。
【請求項22】
前記タッチセンサ領域には、第1の光電変換素子が配置された第1の領域と第2の光電変換素子が配置された第2の領域とがそれぞれ複数配置されていることを特徴とする請求項15に記載の表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−198646(P2008−198646A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29310(P2007−29310)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】