説明

内燃機関の制御装置

【課題】EGR装置の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化に応じて目標点火時期を適切な値に補正することにより、内燃機関のノッキングを未然に回避する。
【解決手段】EGR装置による還流が実施されているときのノック学習値と、還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときのノック学習値との差に基づいて、EGR装置による還流が実施されているときの目標点火時期を補正する内燃機関の制御装置において、EGR装置による還流が実施されているときの吸入空気量充填効率に対して還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときの吸入空気量充填効率の変動量が所定値以内に収まるようにスロットル開度を閉じ側に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気系から排気ガスの一部を吸気系に還流するEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を備える内燃機関において、EGR装置の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化に応じて目標点火時期を適切な値に補正する内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用内燃機関において、排気ガス中のNOxを低減するための装置として、排気系から排気ガスの一部を吸気系に還流することにより、シリンダ内における燃焼温度を下げて、NOxの生成量を減少させるEGR装置が知られている。ここで、EGR装置による還流が実施されるとシリンダ内における混合気の燃焼伝播は遅くなる傾向にあるため、EGR運転領域における目標点火時期はEGR非運転領域における目標点火時期に対して所定角量だけ進角側に設定することにより燃焼効率の良い点火を行うようにしている。
【0003】
しかし、EGR運転領域であるにも関わらずEGR装置の異常や経年変化により、排気ガスが吸気系に目標通りに還流されない場合には、予め設定される還流が実施されているときの目標点火時期で点火するとノッキングが発生したり、ノッキング発生領域より遅角側で点火することにより燃焼効率が悪くなってしまう。
【0004】
ところが、ノッキングの発生は吸気系に還流される排気ガスの還流量だけにより決定されるものではなく、その他の要因、例えば、燃料の性状、シリンダ内のデポジットの堆積量、シリンダ内の温度、等によっても引き起こされる。すなわち、燃料のオクタン価が低い場合、シリンダ内のデポジットの堆積量が多い場合、あるいは吸入空気温度や冷却水温度が高い場合にはノッキングが発生し易くなる。
【0005】
従って、EGR運転領域におけるノッキングの発生頻度や強さ(以下、ノック強度と称する。)のみでEGR装置の異常や経年変化により還流量が変化したことを判定しようとすると、EGR装置が正常であるにも関わらずその他の要因から誤判定される可能性がある。そこで従来、こうしたEGR装置の異常のみを判定したり、さらには、EGR装置の異常に応じた点火時期を設定する技術として、特開平6−200833号公報(特許文献1)、特開2010−53719号公報(特許文献2)に開示されている技術が知られている。
【0006】
前記特許文献1には、EGR装置の異常を内燃機関のその他の要因と混同することなく、正確に判定する技術が開示されている。具体的には、EGR運転領域とEGR非運転領域それぞれの運転状態でのノッキングの発生による点火時期の遅角量を比較することにより、EGR装置の異常を判定するようにしている。
【0007】
また、前記特許文献2には、EGR領域が広く設定してある内燃機関においてもEGR装置の異常のみを判定し、運転状態に応じた点火時期を設定する技術が開示されている。具体的には、排気ガスの還流を強制的に停止する期間を設け、同期間とEGR装置による還流が実施されているときとのノッキングの発生による点火時期の遅角量を比較することにより、EGR装置の異常に起因する点火時期の遅角量を定量している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−200833号公報
【特許文献2】特開2010−53719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
まず、説明の都合上、図13を参照しながらEGR装置による還流が実施されることによる運転状態、特に吸入空気量充填効率(以下、単に充填効率と称する。)への影響を説明する。図13は、EGR装置による還流が実施されるか否かにおける運転状態を示すパラメータのタイムチャートである。内燃機関の吸気通路に設けた電子制御式スロットルバルブのスロットル開度TVが一定である状態で、EGR装置のEGR開度EVを開いた状態から閉じた状態へ変化させると、排気ガスが還流されなくなる分のインマニ圧peが低下する。また、一般的にスロットル部の吸入空気の流速utを等エントロピ流れと仮定すると、流速utは次式で表されるため、インマニ圧peが低下するほど流速utが上昇し、スロットル部の通過流量、及びシリンダ内への吸入空気流量が多くなり充填効率が高くなる。
【0010】
【数1】

【0011】
ここで、aは音速、κは比熱比、pは大気圧を示す。つまり、スロットル開度TVを一定の値で固定した状態でEGR開度EVを変更すると、充填効率が変化してしまい、その充填効率により設定される基本点火時期、燃料噴射量、吸排気バルブタイミングといった図13に図示されないパラメータも変化してしまう。
【0012】
これらの内燃機関の特性によると、例えばEGR装置の還流弁を開弁状態から閉弁状態に制御すると、充填効率が変化してしまい、それに応じて点火時期、燃料噴射量、吸排気バルブタイミングも変化する。そのため、開弁状態と閉弁状態でのノッキングの発生による点火時期の遅角量を比較して目標点火時期を設定するような場合、異なる運転状態での遅角量を比較してしまい、EGR以外の要因を含んで点火時期を設定してしまうという問題がある。その結果、EGR装置の異常や経年変化によるノッキングへの影響を正確に見極めることができず、誤った点火時期で点火することにより余計にノッキングが発生してしまったり、ノッキング発生領域より遅角側で点火することにより燃焼効率が悪くなるといった制御性能の悪化が懸念される。
【0013】
しかしながら、前記特許文献1あるいは前記特許文献2に開示されている技術は、このような問題点を積極的に解消するものとはなっていない。
【0014】
前記特許文献1に開示されている技術では、そもそもEGR運転領域とEGR非運転領域とで運転状態が全く異なるため、運転状態の違いによる点火時期の違いにより、EGR装置の異常を誤判定する可能性がある。
【0015】
また、前記特許文献2に開示されている技術では、還流を強制的に停止することにより運転状態が変化することについて対策されていないため、EGR装置の異常によるノッキングへの影響だけを抽出して点火時期を適切な値に設定することができない。
【0016】
この発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、EGR装置の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化に応じて目標点火時期を適切な値に補正することにより、内燃機関のノッキングを未然に回避することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関の吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度を制御することにより、前記吸気通路の開口面積を変化させて吸入空気流量の制御を行うスロットル開度制御手段と、前記内燃機関の排気系から排気ガスの一部を吸気系に還流するEGR装置の還流弁を強制的に開閉制御する強制開閉制御手段と、前記内燃機関の運転状態に基づいて算出される基本点火時期に対し、少なくとも機関温度による温度補正と前記EGR装置による還流が実施されているか否かによる還流有無補正を行った目標点火時期を算出する目標点火時期算出手段と、前記内燃機関のノッキングの発生を検出するノック検出手段によりノッキングが検出された場合は、前記内燃機関の点火時期を遅角側へ制御し、前記ノッキングが検出されない場合は、前記点火時期を進角側へ制御するノック制御手段と、前記ノック制御手段により制御された遅角量や進角量を学習するノック学習手段と、前記EGR装置による還流が実施されているときの前記ノック学習手段によるノック学習値と、前記強制開閉制御手段により前記還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときの前記ノック学習手段によるノック学習値の2つのノック学習値に基づいて前記EGR装置による還流が実施されているときの目標点火時期を補正する還流時目標点火時期算出手段と、前記強制開閉制御手段により前記還流弁を強制的に閉弁状態に制御している期間において、前記EGR装置による還流が実施されているときの内燃機関の充填効率に対して、前記強制開閉制御手段により前記還流弁が強制的に閉弁状態に制御されるときの充填効率が所定値以内の変動量に収まるように前記スロットルバルブの開度を調整する還流時スロットル開度制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る内燃機関の制御装置によれば、前記構成により、EGR装置の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化に応じて目標点火時期を適切に補正し、内燃機関のノッキングを未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置が適用される内燃機関の概略構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の基本的構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置で処理を行った場合のタイムチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の点火時期と出力トルクの相関図におけるMBTとBLDの関係図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置による制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置による制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置による制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置によるEGR開度と点火時期の関係を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置による運転状態と還流時補正後の目標点火時期との関係を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置によるEGR開度と点火時期の挙動を示すタイムチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置のEGR装置による還流が実施される運転領域を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置によるEGR開度とインマニ圧とトルクの挙動を示すタイムチャートである。
【図13】EGR装置により還流が実施されることによる運転状態への影響を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、この発明に係る内燃機関の制御装置について好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置が適用される内燃機関(以下、エンジンと称する。)の概略構成を示すブロック図である。
図1において、エンジン1の吸気通路の上流に吸入空気流量を調整するために電子的に制御される電子制御式スロットルバルブ2が設けられている。また、電子制御式スロットルバルブ2の開度(以下、スロットル開度と称する。)を測定するために、スロットル開度センサ3が設けられている。さらに、電子制御式スロットルバルブ2の上流には吸入空気流量を測定するエアフロセンサ4が設けられており、電子制御式スロットルバルブ2の下流のエンジン1側には、サージタンク5内の圧力を測定するインマニ圧センサ6が設けられている。なお、エアフロセンサ4とインマニ圧センサ6は、両方とも設けてもよいし、いずれか一方のみを設けることでもよい。
【0022】
さらに、サージタンク5には、排気系の排気ガスを吸気系へ還流して排気再循環を行うEGR装置7が設けられており、このEGR装置7の還流弁の開度(以下、EGR開度と称する。)に応じて排気ガスの還流量が調整される。このように排気ガスの一部を吸気系に還流することにより、エンジン1のシリンダ内における燃焼温度を下げて、NOxの生成量の低減が図られる。
【0023】
さらに、サージタンク5の下流の吸気通路には、燃料を噴射するインジェクタ8が設けられている。インジェクタ8は、エンジン1のシリンダに直接噴射できるように設けてもよい。サージタンク5の下流の吸気通路の端には吸気バルブ9が設けられており、この吸気バルブ9がシリンダ内に入る混合気を規制する。吸気バルブ9の上端は、エンジン1の駆動状態に応じて回転するカムシャフト10のカム面に当接している。このカムシャフト10の回転位置に応じて吸気バルブ9の軸方向位置を変化させて、シリンダの通路を開閉する可変吸気バルブタイミング機構11が備えられている。なお、可変吸気バルブタイミング機構11は、カムシャフト10の位置(角度)を検出する図示しないカム角センサと、吸気バルブ9の閉弁タイミングを電動もしくは油圧で調整する機能を備えている。さらに、エンジン1のシリンダ内の混合気に点火するための点火コイル12、及び点火プラグ13が設けられている。点火プラグ13は、その電極がエンジン1のシリンダ内に臨むようにして配置されており、要求電圧が印加されたときに火花を飛ばして混合気に点火する。
【0024】
また、エンジン1にはエンジン1のノッキングの発生を検出するノック検出手段としてノックセンサ14が設けられている。エンジン1にノッキングが発生するとシリンダ内では高周波の圧力振動が発生し、この圧力振動がシリンダブロックに伝わる。ノックセンサ14は、圧電素子によりシリンダブロックに伝わる振動を検出し、この振動を電気信号に変換する。なお、ノック強度は、振動の振幅や、特定周波数におけるピークホールド値、圧力振動を離散フーリエ変換することによって得られるスペクトル信号、等によって推定することができる。
【0025】
さらに、エンジン1の回転速度やクランク角度を検出するために、クランク軸に設けられたプレートのエッジを検出するクランク角センサ15がエンジン1に設けられている。また、エンジン1には図示しないバッテリを充電するオルタネータや車載エアコンが設けられている。
【0026】
エンジン1は、前記のように構成されており、エアフロセンサ4で測定された吸入空気流量S1と、インマニ圧センサ6で測定されたインマニ圧S2と、スロットル開度センサ3で測定された電子制御式スロットルバルブ2のスロットル開度S3と、クランク角センサ15より出力されるクランク軸に設けられたプレートのエッジに同期したパルスS4と、ノックセンサ14で測定されたシリンダブロックに伝わる振動S5は、電子制御ユニット(以下、ECUと称する。)16に入力される。なお、ECU16は、マイクロコンピュータを主体に構成されるユニットであり、前記各センサ及び検出装置の出力信号に加え、図示しないバッテリの出力電圧、スタータスイッチのオン・オフ信号、吸気温センサで測定された吸入空気温度(以下、吸気温と称する。)、水温センサで測定された冷却水温度(以下、水温と称する。)、大気圧センサで測定された大気圧力(以下、大気圧と称する。)、可変吸気バルブタイミング機構11で測定されたカムシャフト10の位置(角度)の信号が入力される。
【0027】
ECU16は、入力された各種信号より電子制御式スロットルバルブ2の目標スロットル開度を設定し、電子制御式スロットルバルブ2のスロットル開度が目標値となるようにフィードバック制御を行うための目標スロットル開度S6を電子制御式スロットルバルブ2へ出力する。また、ECU16は、入力された各種信号に応じて点火コイル12へ通電/遮断信号S7を出力することにより点火時期を制御する。さらに、入力された各種信号に応じてEGR装置7の還流弁の目標EGR開度を設定し、EGR開度が目標値となるように、フィードバック制御を行うための目標EGR開度S8をEGR装置7へ出力する。さらに、ECU16は前記以外の各種アクチュエータへの指示信号も出力する。
【0028】
図2は、実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の基本的構成を説明するブロック図である。図2に示すように、ECU16は、吸気通路に設けられたスロットル開度を制御して吸入空気流量の可変制御を行うスロットル開度制御手段M1と、EGR装置7の図示しない還流弁を強制的に開閉制御する強制開閉制御手段M2と、エンジン1の運転状態に基づいて算出される基本点火時期に対し、少なくとも機関温度による温度補正とEGR装置7による還流が実施されているか否かによる還流有無補正を行った目標点火時期を算出する目標点火時期算出手段M3と、ノックセンサ14によってノッキングが検出された場合にエンジン1の点火時期を遅角側へ制御し、ノッキングが検出されない場合に点火時期を進角側へ制御するノック制御手段M4と、ノック制御手段M4により制御された遅角量や進角量を学習するノック学習手段M5と、EGR装置7による還流が実施されているときのノック学習手段M5によるノック学習値と、強制開閉制御手段M2により還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときのノック学習値の2つのノック学習値に基づいてEGR装置7による還流が実施されているときの目標点火時期を補正する還流時目標点火時期算出手段M6と、強制開閉制御手段M2により還流弁を強制的に閉弁状態に制御している期間において、EGR装置7による還流が実施されているときのエンジン1の充填効率に対して、強制開閉制御手段M2により還流弁が強制的に閉弁状態に制御されるときの充填効率が所定値以内の変動量に収まるようにスロットル開度を調整する還流時スロットル開度制御手段M7と、を備えている。なお、前記スロットル開度制御手段M1、強制開閉制御手段M2、目標点火時期算出手段M3、ノック制御手段M4、ノック学習手段M5、還流時目標点火時期算出手段M6、還流時スロットル開度制御手段M7は、ソフトウェアにより構成されている。
【0029】
前記のように構成された実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の基本動作を説明すれば、次のとおりである。図3は、EGR装置7による還流が実施されるか否かにおける運転状態を示すパラメータのタイムチャートである。図3において、EGR開度EVを強制的に閉弁状態に制御している期間(図中A)の充填効率の変動量が、EGR開度EVが開弁状態にある期間(図中B)の充填効率に対して、所定値(図中C)以内に収まるようにスロットル開度TVを閉じ側に制御する。その結果、強制的に閉弁状態にする前後の期間において同一の負荷状態に制御することができ、EGR装置の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化に応じた点火時期の遅角量を速やかに且つ正確に検出し、運転状態に応じて目標点火時期を適切な値(例えば、図4に示す点火時期と出力トルクの関係図によると、出力トルクが最大となるMBT:Minimum spark advance for Best Torqueとノッキングを許容できる進角限界を表すBLD:Border line of Detonationとの遅角側である図中A点)に制御することができる。
【0030】
次に、上述した実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の詳細動作について、図5〜図7に示すフローチャートに基づいて説明する。図5は、還流時目標点火時期算出手段M6の動作を説明するフローチャートである。
図5において、還流時目標点火時期算出手段M6は、ステップ101において、クランク軸に設けられたプレートのエッジに同期したパルスS4の間隔から演算される回転速度と、吸入空気流量S1やインマニ圧S2から演算される実充填効率(以下、実Ecと称する。)をパラメータとして、EGR装置7による還流が実施されていないときの基本点火時期を設定する。ここで、この基本点火時期に対して、ノック制御実行条件が成立している場合にはノック学習値だけ遅角制御し、水温や吸気温による温度補正量だけ進角または遅角制御を実施する。ノック制御実行条件の具体例としては、水温が所定値以上、回転速度が所定値以上、充填効率が所定値以上、のうち少なくとも1つを満たすときにノック制御実行条件が成立していると判定するとよい。
【0031】
ステップ102では、EGR装置7による還流の実行条件が成立しているか否かを判定する。EGR装置7による還流の実行条件の具体例としては、回転速度が所定の範囲内、充填効率が所定の範囲内、吸気温が所定の範囲内、のうち少なくとも1つを満たすときに実行条件が成立していると判定するとよい。ステップ102で肯定判定されるとステップ103に進み、一方、否定判定されるとEGR運転領域ではないと判定し、本処理を終了する。
【0032】
ステップ103では、EGR装置7による還流が実施されるか否かによる還流有無補正を行うことで目標点火時期を算出する。ここで、還流が実施されているときの基本点火時期は、還流が実施されていないときの基本点火時期とは個別に設定する構成としてもよいし、還流が実施されていないときの基本点火時期に対して所定量だけ進角側に設定する構成としてもよい。ステップ103の処理後はステップ104に進み、後述する方法を用いて算出される還流時補正量に基づいて、ステップ103にて設定された還流有無補正後の目標点火時期に対して補正を行うことで還流時目標点火時期を算出する。この処理を実行することで、例えば燃料のオクタン価が低い場合、シリンダ内のデポジットの堆積量が多い場合、吸入空気温度や冷却水温度が高い場合、等によって生じるノック遅角量を予め遅角設定することができる。ステップ104を実行後は、本処理を終了する。
【0033】
次に、EGR装置7による還流が実施されているときの還流時補正量を算出するために、ECU16にて実行される動作について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
図6において、ステップ201では、ノック制御手段M4によりノック制御の実行条件が成立しているか否かを判定する。ステップ201で肯定判定されるとステップ202に進み、一方、否定判定されるとノック制御運転領域ではないと判定し、本処理を終了する。
【0034】
ステップ202では、ノッキングが発生したか否かを判定する。ステップ202で肯定判定されるとステップ203へ進み、点火時期を遅角側へ制御し、その遅角量をノック学習値KCSLとしてノック学習手段M5で学習する。ここで、点火時期の遅角量はノック強度や運転状態に応じて設定されることにより、ノッキングの発生頻度やノック強度を低減することができる。一方、ステップ202で否定判定されるとステップ204へ進み、点火時期を進角側へ制御し、その進角量をノック学習値KCSLとして学習する。ここで、点火時期の制御可能範囲のうち、進角側に制限値を設定しておくことで、過進角による出力トルクの低下を防止することができる。ステップ203、及びステップ204の処理後はステップ205に進む。ステップ205ではノック学習値KCSLが安定しているか否かを判定する。所定の期間におけるノック学習値KCSLの変動量が所定値以内の場合に肯定判定してステップ206に進み、一方、否定判定されるとステップ201に戻り、点火時期がノッキングの発生する限界の点火時期に設定されてノック学習値KCSLが安定するまで繰返し行われる。
【0035】
次に、ステップ206ではノック学習値KCSLを、還流が実施されているときのノック学習値KCSL1としてノック学習手段M5に記憶し、ステップ207に進む。ステップ207では強制開閉制御手段M2により、EGR装置7の還流弁を強制的に開閉制御するための実行条件が成立しているか否かを判定する。この強制開閉制御の実行条件については詳細を後述する。ステップ207で肯定判定されるとステップ208に進み、一方、否定判定されるとステップ209に進んで還流弁を運転状態に応じた目標通りのEGR開度に制御して、本処理を終了する。ステップ208では、還流弁を強制的に閉弁制御することにより還流を実施しない。ここで、強制開閉制御により閉弁状態に制御する際は、目標EGR開度をテーリング変化または段階的なステップ変化により徐徐に変化させることで、ノック強度の強いノッキングが頻繁に発生することを抑制することができる。この強制開閉制御手段M2での強制開閉制御が実施されているときの電子制御式スロットルバルブ2の目標スロットル開度については詳細を後述する。ステップ208の処理後はステップ210に進む。
【0036】
ステップ210では、ノック制御手段M4によりノッキングが発生したか否かを判定する。ステップ210で肯定判定されるとステップ211へ進み、点火時期を遅角側へ制御し、その遅角量をノック学習値KCSLとしてノック学習手段M5で学習する。一方、ステップ210で否定判定されるとステップ212へ進み、点火時期を進角側へ制御し、その進角量をノック学習値KCSLとしてノック学習手段M5で学習する。ステップ211及びステップ212の処理後はステップ213に進む。ステップ213ではステップ205と同様にノック学習値KCSLが安定しているか否かを判定する。ステップ213で肯定判定されるとステップ214に進み、一方否定判定されるとステップ207に戻り、還流弁が強制的に閉弁制御されている状態での点火時期がノッキングの発生する限界の点火時期に設定されてノック学習値KCSLが安定するまで繰返し行われる。
【0037】
次に、ステップ214ではノック学習値KCSLを、還流が実施されていないときのノック学習値KCSL2としてノック学習手段M5に記憶し、ステップ208で実施した強制開閉制御手段M2での強制開閉制御による閉弁状態を解除してから本処理を終了する。ここで、強制開閉制御M2での閉弁状態を解除する際は、目標EGR開度をテーリング変化または段階的なステップ変化により徐徐に変化させることで、急激に還流量が増加して運転状態が変化することによる出力トルクの急激な変化を抑制することができる。ステップ206で記憶されるノック学習値KCSL1と、ステップ214で記憶されるノック学習値KCSL2に基づいて、還流時目標点火時期算出手段M6により還流時の目標点火時期の補正量を算出する。この還流時目標点火時期補正量については詳細を後述する。
【0038】
次に、強制開閉制御手段M2で強制開閉制御が実施されているときの電子制御式スロットルバルブ2の目標スロットル開度の演算について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
図7において、還流時スロットル開度制御手段M7は、ステップ301で、強制開閉制御手段M2の強制開閉制御による閉弁制御が実施される前の実EcをEc1として記憶し、ステップ302に進む。ステップ302では強制開閉制御手段M2での強制開閉制御の実行条件が成立しているか否かを判定する。ステップ302で肯定判定されるとステップ303に進み、一方、否定判定されるとステップ304に進んで還流弁を運転状態に応じた目標通りのEGR開度及びスロットル開度に制御して、本処理を終了する。ステップ303では、還流弁を強制的に閉弁制御することにより還流を実施しない。ステップ303の処理後はステップ305に進む。
【0039】
次に、ステップ305では実Ecの変動量が所定値以上か否かを判定する。具体的には、ステップ301において記憶されたEc1と実Ecとの差δ(=実Ec−Ec1)を求め、その差δが所定値K1以上であるか否かを判定する。差δが所定値K1未満である場合はステップ302に戻り、電子制御式スロットルバルブ2の目標スロットル開度に対して、還流時スロットル開度制御手段M7での還流時スロットル開度制御を実施しない。また、ステップ305において差δが所定値K1以上である場合には、ステップ306に進み、電子スロットルバルブ2の目標スロットル開度を所定量K2だけ閉じ側に制御して、ステップ302に戻る。このステップ306の処理を実行することで、強制的に閉弁状態にする前後が同等の負荷状態となり、基本点火時期、燃料噴射量、吸排気バルブタイミングも変化することなく、開弁状態と閉弁状態でのノッキングによる点火時期の遅角量を比較して点火時期を設定する際に、異なる運転状態での遅角量を比較してしまうことを防止できる。
【0040】
なお、所定値K1や所定量K2は、負荷とスロットル開度に関する予備テスト(実際のエンジンを用いた試験により予め特性データを採取すること)により設定された値である。例えば、所定値K1には、スロットル開度を一定の値に保持したときの、吸気脈動によって生じる実Ecの最大振幅値を設定すればよい。また、所定量K2には、所定値K1に相当する充填効率または出力トルクの偏差に相当する分を補えるだけのスロットル開度の偏差を設定すればよい。
【0041】
次に、図5のステップ104で算出される還流時補正量について、図8及び図9を参照しながら説明する。
図8はEGR開度と点火時期の関係を示す図である。θ1、θ2はそれぞれ閉弁状態、開弁状態での還流有無補正後の基本点火時期である。ここで、閉弁状態と開弁状態とでは、還流弁の開度以外の回転速度や充填効率といった運転状態は同等とする。つまり開弁状態は強制開閉制御手段M2での閉弁制御が実施される前の状態であり、一方、閉弁状態は強制開閉制御手段M2での閉弁制御が実施されている最中の状態である。このθ1、θ2に対して、ノック制御により遅角側に学習された点火時期を、それぞれθ1L、θ2Lとする。θ1とθ1Lの差△1は、燃料の性状、シリンダ内のデポジットの堆積量、シリンダ内の温度、等によって発生するノッキングを学習したものであり、還流を実行することによる学習値分は含まれていない。この△1は、図6のステップ214にて記憶されたノック学習値KCSL2に相当する。一方、開弁状態でのθ2とθ2Lの差△2には、△1の学習値分を考慮した点火時期θ2L’に対して還流を実行することによる学習値分△Xを考慮した値となる。この△2は、図6のステップ206にて記憶されたノック学習値KCSL1に相当する。上述の通り、ノック学習値としては、閉弁状態、開弁状態によらず△1を設定し、還流を実行しているときだけ、ノック学習値偏差に相当する△Xを還流時補正量を考慮することにより、EGR装置の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化による点火時期の遅角量を速やかに且つ正確に検出し、運転状態に応じて目標点火時期を適切な値(例えば、MBTとBLDとの遅角側)に制御することができる。
【0042】
次に、図9に示す運転状態と還流補正後の目標点火時期との関係によると、強制開閉制御手段M2での強制開閉制御を実行した運転状態Aにおいて、閉弁状態、開弁状態での還流有無補正後の点火時期をそれぞれθ1、θ2とし、ノック学習値△1とノック学習値偏差△Xを考慮したθ2Lを還流時目標点火時期とする。これに対し、回転速度や実Ecが変化して運転状態Bとなったときの還流時目標点火時期θ4Lは次式で表される。
【0043】
【数2】

【0044】
ここで、運転状態Bでの閉弁状態、開弁状態での還流有無補正後の基本点火時期をそれぞれθ3、θ4とし、ノック学習値△1とノック学習値偏差△Xは、強制開閉制御を実行した運転状態Aでの値である。ただし、ノック学習値△1は強制開閉制御を実行した後、更に更新されていてもよい。また、上式において△X’が還流時補正量を表す。
【0045】
ここまでの実施の形態1に係る内燃機関の制御装置による効果を、図10のEGR開度と点火時期の挙動を示すタイムチャートを参照しながら説明する。
図10において、運転状態Aから運転状態Bへと変化してEGR開度EVが開き側へ制御されたとき、還流有無補正後の基本点火時期に対してノック学習値△1を考慮し、更に還流時補正量△X’を考慮したものが、最終的な還流時目標点火時期となる。上述の構成にすることにより、EGR運転領域全域において、その運転状態に応じた目標点火時期を適切に補正することができる。
【0046】
次に、強制開閉制御手段M2における強制開閉制御の実行条件について、図11のEGR装置7による還流が実施される運転領域を示す図を参照しながら説明する。
図11において、EGR運転領域とEGR非運転領域は、回転速度と充填効率をパラメータとして領域分けされる。ここでEGR運転領域内において、目標値通りにEGR開度を開弁制御したときの還流量が所定値K3以上となる運転領域を強制開閉制御の実行可能領域とする。つまり、強制開閉制御の実行可能領域を、回転速度と充填効率により予め設定しておく。前記実行可能領域でのみ強制開閉制御を実施することにより、還流制御中の排気還流量が少ない運転領域で還流時の実際の還流量が低下していたときの目標点火時期の補正量に比べて、還流時の実際の還流量が低下していたときの目標点火時期の補正量が大きく算出でき、もともと微量の排ガスしか還流されない運転状態において強制開閉制御を実行することによるEGR装置7の異常や経年変化に関する判断不良を回避することができる。また、強制開閉制御手段M2において、強制開閉制御を実施している最中に、アクセル開度の変化量が所定値K4以上になったときには強制開閉制御を解除して、運転状態に応じた目標EGR開度に制御することにより、アクセル開度が変化して運転状態が変化することによる還流時補正量△X’の誤差を除くことができる。
【0047】
前記を設定しない場合、EGR装置7の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化に応じた目標点火時期を適切に補正することができず、内燃機関のノッキングを未然に回避することができなくなる。なお、所定値K3、K4は判断不良を想定した予備テストにより設定された値である。例えば、所定値K3には、EGR装置7が故障していない状態での定常運転状態において、還流量毎に強制開閉制御を実行することにより、EGR装置7が故障しているとの判断不良が発生しない最低限度の還流量を設定すればよい。また、所定値K4には、強制開閉制御の最中にアクセル開度を変化させることによる還流時補正量△X’のばらつきが、許容範囲内に収まるように、アクセル開度の変化量の上限値を設定すればよい。
【0048】
次に、この実施の形態における目標スロットル開度S6、通電/遮断信号S7、目標EGR開度S8以外のECU16からの指示信号に関して、図12のEGR装置7とインマニ圧とトルクの挙動を示すタイムチャートを参照しながら説明する。
図12において、開弁状態から閉弁状態へと変化してEGR開度EVが閉じ側へ制御されたとき、還流量の低下によりサージタンク5の負圧が上がることによりインマニ圧peが低下する。インマニ圧peが低下すると吸気損失によるロストルクが大きくなるため、その吸気損失に相当するトルク△Plossを吸気損失トルク補正手段により補正する。
【0049】
吸気損失トルク補正手段の具体例としては、オルタネータの発電電流量と車載エアコンの冷媒圧のうち少なくとも1つに上限の制限値を新たに設け、オルタ負荷トルクとエアコン負荷トルクの和がトルク△Ploss相当だけ低減する方向に制御するものを用いる。つまり、吸気損失によるロストルクが大きくなる分、オルタネータや車載エアコンの負荷トルクを低減させることにより、エンジン1に付加されるロストルクの合計が変化しないように制御することができるため、ロストルクが大きくなることによるエンジン1の回転速度の低下を抑制でき、その結果として、回転速度を一定に維持することが可能となり、強制開閉制御を実施する前後の期間で同一の運転状態となって、EGR装置7の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化による点火時期の遅角量を速やかに、且つ正確に検出し、運転状態に応じて目標点火時期を適切な値に補正することができる。
【0050】
以上詳述したように、実施の形態1に係る内燃機関の制御装置によれば、EGR装置7の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化に応じて目標点火時期を適切に補正し、エンジン1のノッキングを未然に回避することができる。
【0051】
また、還流時目標点火時期算出手段M6は、少なくともEGR装置7による還流が実施されているときのノック学習手段M5によるノック学習値と、強制開閉制御手段M2により還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときのノック学習値との差であるノック学習値偏差、及びEGR装置7による還流が実施されているか否かの還流有無補正による補正量に基づいて、EGR装置7による還流が実施されているときの目標点火時期を補正することにより、EGR運転領域全域において、その運転状態に応じた目標点火時期を適切に補正することができる。
【0052】
また、強制開閉制御手段M2は、還流弁をテーリング変化または段階的なステップ変化により徐徐に変化させる構成にすることにより、急激に還流量が低下して強いノッキングが頻繁に発生することを抑制したり、急激に還流量が増加して運転状態が変化することによる出力トルクの急激な変化を抑制することができる。
【0053】
また、強制開閉制御手段M2は、排気還流の流量が所定値以上となる運転領域をエンジン1の運転状態を示す回転速度、充填効率、機関温度のうち少なくとも1つの情報により予め記憶しておき、前記運転領域でのみ実施するようにしているので、還流制御中の排気還流量が少ない運転領域で還流時の実際の還流量が低下していたときの目標点火時期の補正量に比べて、還流時の実際の還流量が低下していたときの目標点火時期の補正量が大きく算出でき、もともと微量の排気ガスしか還流されない運転状態において強制開閉制御手段M2で強制開閉制御を実施することによるEGR装置7の異常や経年変化に関する判断不良を回避することができる。
【0054】
また、強制開閉制御手段M2は、アクセル開度の変化量が所定値以上のときに強制的な開閉制御を解除する構成にすることにより、アクセル開度が変化して運転状態が変化することによる還流時補正量の誤差を除くことができる。前記を設定しない場合、EGR装置7の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化に応じた目標点火時期を適切に補正することができず、エンジン1のノッキングを未然に回避することができなくなる。
【0055】
また、EGR装置7による還流が実施されているときのインマニ圧と、強制開閉制御手段M2により還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときのインマニ圧との差に相当する吸気損失分のトルクを、吸気損失分のトルクを補正することにより、吸気損失が増大することによるエンジン1の回転速度の低下を抑制できる。その結果、回転速度を一定に維持することが可能となり、強制開閉制御を実施する前後の期間で同一の運転状態となり、EGR装置7の異常や経年変化に伴う排気ガスの還流量の変化による点火時期の遅角量を速やかに且つ正確に検出し、運転状態に応じて目標点火時期を適切な値に補正することができる。
【0056】
なお、前記実施の形態はこの発明を実施するための例にすぎず、この発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されたこの発明の要旨の範囲内において、すべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 エンジン(内燃機関) 2 電子制御式スロットルバルブ
3 スロットル開度センサ 4 エアフロセンサ
5 サージタンク 6 インマニ圧センサ
7 EGR装置 8 インジェクタ
9 吸気バルブ 10 カムシャフト
11 可変バルブタイミング機構 12 点火コイル
13 点火プラグ 14 ノックセンサ
15 クランク角センサ 16 電子制御ユニット(ECU)
S1 吸入空気流量 S2 インマニ圧
S3 電子制御式スロットルバルブの開度 S4 クランク軸のプレートのエッジに同期したパルス
S5 シリンダブロックに伝わる振動 S6 目標スロットル開度
S7 通電/遮断信号 S8 目標EGR開度
M1 ルロットル開閉制御手段 M2 強制開閉制御手段
M3 目標点火時期算出手段 M4 ノック制御手段
M5 ノック学習手段 M6 環流時目標点火時期算出手段
M7 環流時スロットル開度制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度を制御することにより、前記吸気通路の開口面積を変化させて吸入空気流量の制御を行うスロットル開度制御手段と、
前記内燃機関の排気系から排気ガスの一部を吸気系に還流するEGR装置の還流弁を強制的に開閉制御する強制開閉制御手段と、
前記内燃機関の運転状態に基づいて算出される基本点火時期に対し、少なくとも機関温度による温度補正と前記EGR装置による還流が実施されているか否かによる還流有無補正を行った目標点火時期を算出する目標点火時期算出手段と、
前記内燃機関のノッキングの発生を検出するノック検出手段によりノッキングが検出された場合は、前記内燃機関の点火時期を遅角側へ制御し、前記ノッキングが検出されない場合は、前記点火時期を進角側へ制御するノック制御手段と、
前記ノック制御手段により制御された遅角量や進角量を学習するノック学習手段と、
前記EGR装置による還流が実施されているときの前記ノック学習手段によるノック学習値と、前記強制開閉制御手段により前記還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときの前記ノック学習手段によるノック学習値の2つのノック学習値に基づいて前記EGR装置による還流が実施されているときの目標点火時期を補正する還流時目標点火時期算出手段と、
前記強制開閉制御手段により前記還流弁を強制的に閉弁状態に制御している期間において、前記EGR装置による還流が実施されているときの内燃機関の充填効率に対して、前記強制開閉制御手段により前記還流弁が強制的に閉弁状態に制御されるときの充填効率が所定値以内の変動量に収まるように前記スロットルバルブの開度を調整する還流時スロットル開度制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記還流時目標点火時期算出手段は、少なくとも前記EGR装置による還流が実施されているときの前記ノック学習手段によるノック学習値と、前記強制開閉制御手段により前記還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときのノック学習値との差であるノック学習値偏差、及び前記還流有無補正による補正量に基づいて、前記EGR装置による還流が実施されているときの目標点火時期を補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記強制開閉制御手段は、前記還流弁をテーリング変化または段階的なステップ変化により徐徐に変化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記強制開閉制御手段は、排気還流の流量が所定値以上となる運転領域を前記内燃機関の運転状態を示す回転速度、吸入空気量充填効率、機関温度のうち少なくとも1つの情報により予め記憶し、前記運転領域でのみ実施することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記強制開閉制御手段は、アクセル開度の変化量が所定値以上のときに強制的な開閉制御を解除することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記EGR装置による還流が実施されているときのインマニ圧と、前記強制開閉手段により前記還流弁を強制的に閉弁状態に制御しているときのインマニ圧の差に相当する吸気損失分のトルクを補正することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−241577(P2012−241577A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111227(P2011−111227)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【特許番号】特許第5033254号(P5033254)
【特許公報発行日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】