説明

内燃機関の触媒昇温システム

【課題】 本発明は、内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させる内燃機関の触媒昇温システムにおいて、触媒を昇温させるときに、該触媒の温度をより精度良く目標温度に制御する。
【解決手段】 内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させるべくポスト燃料噴射を実行するときに、排気絞りが行われている場合は、排気絞りが行われていない場合に比べて、ポスト燃料噴射によって噴射する単位時間当たりの燃料噴射量を多くするものである(S104〜S106)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させる内燃機関の触媒昇温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させる内燃機関の触媒昇温システムとしては、内燃機関において主燃料噴射に加え副燃料噴射を実行することで触媒を昇温させるものがある。
【0003】
このような内燃機関の触媒昇温システムにおいては、酸化触媒を担持しているパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を酸化・除去するときに、酸化触媒およびパティキュレートフィルタを昇温させるべく、主燃料噴射より遅い時期であって、且つ、非着火の時期に副燃料噴射を実行する場合がある。また、このような副燃料噴射をアイドル運転状態のときに行う場合、排気通路に設けられた排気絞り弁によって排気流量を絞る技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−150415号公報
【特許文献2】特許第3536739号公報
【特許文献3】特開2000−179326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させる内燃機関の触媒昇温システムにおいては、触媒が活性状態にあるときに、燃焼サイクルにおける、主燃料噴射より遅い時期であって、且つ、非着火の時期に、気筒内で副燃料噴射を噴射する場合がある。以下、このような時期に行われる副燃料噴射をポスト燃料噴射と称する。
【0005】
ポスト燃料噴射によって噴射された燃料の少なくとも一部は、気筒内から未燃の状態で排出されるため、未燃燃料が触媒に供給されることになる。そして、該未燃燃料が触媒で酸化され、そのときに発生する酸化熱によって触媒が昇温する。このとき、ポスト燃料噴射による燃料噴射量を調整することによって触媒の温度を目標温度に制御する。
【0006】
また、触媒より下流側の排気通路に排気絞り弁が設けられている場合、触媒を昇温させるときに、排気絞り弁を閉弁方向に制御することで排気流量を絞る、所謂排気絞りを行う場合がある。
【0007】
排気絞り弁によって排気絞りが行われると、該排気絞り弁より上流側の排気通路内の圧力(以下、上流側排気通路内圧力と称する)が上昇するため内燃機関の機関負荷が高くなる。そのため、内燃機関から排出される排気、即ち、触媒を通る排気の温度が上昇することになる。その結果、触媒を昇温させることが出来る。
【0008】
しかしながら、排気絞り弁による排気絞りが行われている状態で、さらにポスト燃料噴射を実行する場合、上流側排気通路内圧力が上昇しているために、ポスト燃料噴射によって噴射された燃料が気筒内から未燃の状態で排出され難くなる。そのため、排気絞り弁による排気絞りが行われていない状態でポスト燃料噴射を実行する場合に比べて、触媒に供給される未燃燃料が少なくなる場合がある。その結果、触媒を目標温度にまで昇温させるために必要な量の未燃燃料が該触媒に供給されず、該触媒の温度が目標温度にまで上昇しない虞がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させる内燃機関の触媒昇温システムにおいて、触媒を昇温させるときに、該触媒の温度をより精度良く目標温度に制御することが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させるべくポスト燃料噴射を実行するときに、排気絞りが行われている場合は、排気絞りが行われていない場合に比べて、ポスト燃料噴射によって噴射する単位時間当たりの燃料噴射量(以下、単位ポスト燃料噴射量と称する)を多くするものである。
【0011】
より詳しくは、本発明に係る内燃機関の触媒昇温システムは、
内燃機関の燃焼サイクルにおける、主燃料噴射より遅い時期であって、且つ、非着火の時期に、気筒内で副燃料噴射を実行するポスト燃料噴射手段を備え、
前記内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒が活性状態にあるときに、前記ポスト燃料噴射手段によって副燃料噴射を実行することで前記触媒に未燃燃料を供給し、それによって前記触媒を目標温度に昇温させる内燃機関の触媒昇温システムにおいて、
前記触媒よりも下流側の排気通路に設けられた排気絞り弁をさらに備え、
該排気絞り弁による排気絞りが行われている状態で前記ポスト燃料噴射手段によって副燃料噴射を実行するときは、前記排気絞り弁による排気絞りが行われていない状態で前記ポスト燃料噴射手段によって副燃料噴射を実行するときに比べて、前記ポスト燃料噴射手段によって噴射する単位時間当たりの副燃料噴射量を多くすることを特徴とする。
【0012】
ここで、目標温度は、触媒の種類や触媒を昇温させる目的等に応じて異なる値であって、実験等によって予め定められた値であっても良い。
【0013】
本発明では、触媒を目標温度に昇温させるときであって、該触媒が活性状態にあるときには、ポスト燃料噴射手段によってポスト燃料噴射が実行される。このポスト燃料噴射は、内燃機関の燃焼サイクルにおける、主燃料噴射より遅い時期であって、且つ、非着火の時期に行われる。ここで、非着火の時期とは、気筒内に燃料が噴射されたときに、噴射された燃料のほとんどが着火しない時期のことである。
【0014】
また、本発明では、触媒よりも下流側の排気通路に排気絞り弁が設けられている。上述したように、ポスト燃料噴射が実行されるときに、排気絞り弁によって排気絞りが行われている場合、排気絞り弁による排気絞りが行われていない場合に比べて、触媒に供給される未燃燃料が少なくなる場合がある。
【0015】
そこで、本発明では、ポスト燃料噴射を実行するときに排気絞り弁によって排気絞りが行われている場合は、排気絞り弁による排気絞りが行われていない場合に比べて、単位ポスト燃料噴射量を多くする。
【0016】
これによって、排気絞りが行われている状態でポスト燃料噴射を実行する場合であっても、触媒を目標温度にまで昇温させるために必要な量の未燃燃料を該触媒に供給することが可能となる。
【0017】
従って、本発明によれば、内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させるときに、該触媒の温度をより精度良く目標温度に制御することが出来る。
【0018】
本発明においては、上流側排気通路内圧力を検出する排気通路内圧力検出手段をさらに備えた場合、排気絞り弁による排気絞りが行われている状態でポスト燃料噴射を実行するときは、排気通路内圧力検出手段によって検出される上流側排気通路内圧力が高いほど単位ポスト燃料噴射量をより多くしても良い。
【0019】
ポスト燃料噴射を実行する場合、上流側排気通路内圧力が高いほど、ポスト燃料噴射によって噴射された燃料が気筒内から未燃の状態で排出され難くなる。そのため、触媒に供給される未燃燃料量がより少なくなる虞がある。
【0020】
そこで、上記のように、排気絞り弁による排気絞りが行われている状態でポスト燃料噴射を実行するときは、上流側排気通路内圧力が高いほど単位ポスト燃料噴射量をより多くする。これによって、触媒を目標温度にまで昇温させるために必要な量の未燃燃料を該触媒に供給することが可能となる。
【0021】
本発明においては、触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、上流側排気通路内圧力を検出する排気通路内圧力検出手段と、排気絞り弁より上流側の排気温度を検出する排気温度検出手段と、をさらに備えた場合、排気通路内圧力検出手段によって検出される上流側排気通路内圧力および排気温度検出手段によって検出される排気温度に基づいて、作動ガス量算出手段によって気筒内の作動ガス量を算出しても良い。そして、ポスト燃料噴射を実行するときは、触媒温度検出手段によって検出される触媒の温度と目標温度との差、および、作動ガス量算出手段によって算出される作動ガス量に基づいて、単位ポスト燃料噴射量を決定しても良い。
【0022】
排気絞りを行っていない場合は、気筒内の作動ガス量は吸入空気量とほぼ同量となる。そのため、触媒の温度を目標温度にまで上昇させるために必要な単位ポスト燃料噴射量を、ポスト燃料噴射を実行する時点での触媒の温度と目標温度との差、および、吸入空気量に基づいて算出することが出来る。
【0023】
しかしながら、排気絞りを行った場合、上流側排気通路内圧力が上昇するために、気筒内からガス(排気)が排出され難くなり、該気筒内に残留するガス(以下、単に残留ガスと称する)が増加し易くなる。そのため、排気絞りを行っているときの作動ガス量は、吸入空気量よりも残量ガス量分多くなる虞がある。
【0024】
従って、排気絞りが行われている状態でポスト燃料噴射を実行するときに、排気絞りが行われていない状態でポスト燃料噴射を実行するときと同様、ポスト燃料噴射を実行する時点での触媒の温度と目標温度との差、および、吸入空気量に基づいて単位ポスト燃料噴射量を決定した場合、作動ガス量に対してポスト燃料噴射によって噴射される燃料が不足する場合がある。
【0025】
そこで、排気絞りが行われている状態でポスト燃料噴射を実行するときは、排気通路内圧力検出手段によって検出される上流側排気通路内圧力および排気温度検出手段によって検出される排気温度に基づいて気筒内の作動ガス量を算出する。そして、触媒温度検出手段によって検出される触媒の温度(即ち、ポスト燃料噴射を実行する時点での触媒の温度)と目標温度との差、および、作動ガス量に基づいて単位ポスト燃料噴射量を決定する。
【0026】
これにより、ポスト燃料噴射を実行するときに排気絞り弁によって排気絞りが行われている場合は、排気絞り弁による排気絞りが行われていない場合に比べて、単位ポスト燃料噴射量を多くすることが出来る。その結果、ポスト燃料噴射を実行するときに排気絞りが行われている場合であっても、触媒を目標温度にまで昇温させるために必要な量の未燃燃料を該触媒に供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る内燃機関の触媒昇温システムによれば、内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒を昇温させるときに、該触媒の温度をより精度良く目標温度に制御することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムの実施の形態について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0029】
<内燃機関及びその吸排気系の概略構成>
図1は、本実施例に係る内燃機関及びその吸排気系の概略構成を示す図である。内燃機関1は4つの気筒2を有する車両駆動用のディーゼル機関である。内燃機関1の気筒2内にはピストン3が摺動自在に設けられている。気筒2内上部の燃焼室には、吸気ポート4と排気ポート5とが接続されている。吸気ポート4および排気ポート5の燃焼室への開口部は、それぞれ吸気弁6および排気弁7によって開閉される。吸気ポート4および排気ポート5は、それぞれ吸気通路8および排気通路9に接続されている。また、気筒2には、該気筒2内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁10が設けられている。
【0030】
吸気通路8には、吸入空気量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ16、および、吸入空気量を制御するスロットル弁17が設けられている。排気通路9には、排気中のPMを捕集するフィルタ11が設けられており、該フィルタ11より上流側には酸化触媒12が設けられている。
【0031】
また、酸化触媒12より上流側の排気通路9には、該排気通路9内の排気温度に対応した電気信号を出力する上流側排気温度センサ13および該排気通路9内の圧力に対応した電気信号を出力する排気圧センサ18が設けられている。また、酸化触媒12より下流側且つフィルタより上流側の排気通路9には、該排気通路9内の排気温度に対応した電気信号を出力する下流側排気温度センサ14がそれぞれ設けられている。また、フィルタ11より下流側の排気通路9には、排気流量を制御する排気絞り弁15が設けられている。尚、酸化触媒12は酸化機能を有していれば良く、例えば、吸蔵還元型NOx触媒等であっても良い。
【0032】
以上述べたように構成された内燃機関1には、この内燃機関1を制御するためのECU20が併設されている。ECU20には、エアフローメータ16や、上流側排気温度センサ13、下流側排気温度センサ14、排気圧センサ18、大気圧に対応した電気信号を出力する大気圧センサ19等の各種センサが電気的に接続されている。各種センサの出力信号がECU20に入力される。そして、ECU20は、上流側排気温度センサ13および/または下流側排気温度センサ14の出力値に基づいて酸化触媒12の温度を推定する。また、ECU20には、燃料噴射弁10や、スロットル弁17、排気絞り弁15が電気的に接続されている。ECU20によってこれらが制御される。
【0033】
<触媒昇温制御>
次に、本実施例に係る、酸化触媒12を昇温させるときの触媒昇温制御について説明する。本実施例では、フィルタ11に堆積したPMを酸化・除去するときの触媒昇温制御を例に挙げて説明する。この場合、触媒昇温制御を実行することで酸化触媒12を昇温させ、それによって、フィルタ11に流入する排気を昇温させることでフィルタ11の温度をPMの酸化・除去が可能となる温度にまで上昇させる。
【0034】
尚、触媒昇温制御を実行するのは、フィルタ11に堆積したPMを酸化・除去するときに限るものではない。例えば、酸化触媒12またはフィルタ11を吸蔵還元型NOx触媒に置換えた場合、この吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵されたSOxを還元するときに、本実施例に係る触媒昇温制御を適用しても良い。
【0035】
本実施例に係る触媒昇温制御においては、酸化触媒12の温度が活性温度の下限値T1より低いときは、内燃機関1から排出される排気を昇温させる排気昇温制御を実行することで酸化触媒12の温度を上昇させる。
【0036】
排気昇温制御では、排気絞り弁15を閉弁方向に制御することで排気流量を制御する排気絞りを行っても良い。また、内燃機関1において、内燃機関1の燃焼サイクルにおける、主燃料噴射より遅い時期であって、且つ、着火時期に、燃料噴射弁10から副燃料噴射を実行するアフター燃料噴射を行っても良い。ここでの着火時期とは、燃料噴射弁10から燃料が噴射されたときに、噴射された燃料のほとんどが着火する時期のことである。排気昇温制御を実行するときの排気の昇温方法は、そのときの内燃機関1の運転状態等に応じて決定される。
【0037】
そして、酸化触媒12の温度が活性温度となり、該酸化触媒12が活性状態となると、内燃機関1の燃焼サイクルにおける、主燃料噴射より遅い時期であって、且つ、非着火時期に、燃料噴射弁10から副燃料噴射を実行することでポスト燃料噴射を行う。このポスト燃料噴射によって、酸化触媒12に未燃燃料を供給し、酸化触媒12の温度を目標温度Ttにまで上昇させる。
【0038】
本実施例において、この目標温度Ttは、酸化触媒12の温度が該目標温度Ttに達していれば、フィルタ11の温度が、PMの酸化・除去が可能であって且つフィルタ11の過昇温が抑制される温度となる温度である。目標温度Ttは、実験等によって予め定められている。
【0039】
<ポスト燃料噴射を実行したときの酸化触媒温度>
ここで、触媒昇温制御において、排気絞り弁15によって排気絞りを行っている状態でポスト燃料噴射を実行したときの酸化触媒12の温度について図2に基づいて説明する。図2は、単位ポスト燃料噴射量と酸化触媒12の温度との関係を示す図である。図2において、縦軸は酸化触媒12の温度と表しており、横軸は単位ポスト燃料噴射量を表している。また、実線aは、排気絞り弁15による排気絞りが行われている状態でポスト燃料噴射を実行した場合を示しており、破線bは、排気絞り弁15による排気絞りが行われていない状態でポスト燃料噴射を実行した場合を示している。
【0040】
排気絞り弁15によって排気絞りが行われると、該排気絞り弁15より上流側の排気通路9内の圧力が上昇するため、ポスト燃料噴射によって噴射された燃料が未燃の状態で気筒2から排出し難くなる。そして、ポスト燃料噴射によって噴射された燃料のうち気筒内2内に残留した燃料は、次の燃焼サイクル中に気筒2内で燃焼するため、酸化触媒12に供給される未燃燃料が、排気絞り弁15による排気絞りが行われていない場合に比べて少なくなる場合がある。
【0041】
このような場合、図2に示すように、単位ポスト燃料噴射量を同量としてポスト燃料噴射を実行すると、排気絞り弁15によって排気絞りが行われている場合の酸化触媒12の温度は、排気絞り弁15による排気絞りが行われていない場合に比べて低くなる。
【0042】
<単位ポスト燃料噴射量制御>
そこで、本実施例では、触媒昇温制御においてポスト燃料噴射を実行する場合、排気絞
り弁15によって排気絞りが行われているときは、排気絞り弁15による排気絞りが行われていないときに比べて、単位ポスト燃料噴射量を多くする。
【0043】
以下、本実施例に係る、触媒昇温制御においてポスト燃料噴射量を実行するときの単位ポスト燃料噴射量制御について図3に基づいて説明する。図3は、本実施例に係る単位ポスト燃料噴射量制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、ECU20に予め記憶されており、内燃機関1の運転中、クランクシャフトが規定クランク角回転する毎に実行される。
【0044】
本ルーチンでは、ECU20は、先ずS101において、ポスト燃料噴射の実行条件が成立しているか否かを判別する。ここで、ポスト燃料噴射の実行条件とは、上述したように、触媒昇温制御が実行されており、且つ、酸化触媒12が活性状態となっている場合のことである。S101において、肯定判定された場合、ECU20はS102に進み、否定判定された場合、ECU20は本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0045】
S102おいて、ECU20は、目標温度Ttと現時点の酸化触媒12の温度Tcとの差、および、吸入空気量Gnに基づいて、基準となる単位ポスト燃料噴射量である基準単位ポスト燃料噴射量Qpsを算出する。ここでは、目標温度Ttと現時点の酸化触媒12の温度Tcとの差、および、吸入空気量Gnと、基準単位ポスト燃料噴射量Qpsとの関係を実験等によって予め定めてマップとして記憶しておき、該マップから基準単位ポスト燃料噴射量Qpsを算出しても良い。
【0046】
次に、ECU20は、S103に進み、排気絞り弁15によって排気絞りが行われているか否かを判別する。このS103において、肯定判定された場合、ECU20はS104に進み、否定判定された場合、ECU20はS107に進む。
【0047】
S107に進んだECU20は、単位ポスト燃料噴射量を基準単位ポスト燃料噴射量Qpsとしてポスト燃料噴射を実行し、本ルーチンの実行を終了する。
【0048】
一方、S104に進んだECU20は、上流側排気通路内圧力Peから、後述するS105において補正単位ポスト燃料噴射量Qpaを算出するための補正係数aを導出する。ここでは、図4に示すような、上流側排気通路内圧力Peと補正係数aとの関係を示すマップがECU20に予め記憶されており、該マップから補正係数aを導出する。該マップにおいて、補正係数aは正の値であって、上流側排気通路内圧力Peが高いほど大きい値となっている。
【0049】
次に、ECU20は、S105に進み、基準単位ポスト燃料噴射量Qpsと補正係数aとを乗算することで補正単位ポスト燃料噴射量Qpaを算出する。
【0050】
次に、ECU20は、S106に進み、単位ポスト燃料噴射量を補正単位ポスト燃料噴射量Qpaとしてポスト燃料噴射を実行し、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0051】
以上説明した制御ルーチンによれば、ポスト燃料噴射を実行するときに排気絞り弁15によって排気絞りが行われている場合は、排気絞り弁15による排気絞りが行われていない場合に比べて、単位ポスト燃料噴射量が多くなる。
【0052】
また、排気絞り弁15による排気絞りが行われている状態では、排気絞り弁15の開度や内燃機関1の運転状態等に応じて上流側排気通路内圧力Peは異なる値となるが、この状態でポスト燃料噴射を実行するときは、上流側排気通路内圧力Peが高いほど単位ポスト燃料噴射量が多くなる。
【0053】
従って、本実施例によれば、排気絞りが行われている状態でポスト燃料噴射を実行する場合であっても、酸化触媒12を目標温度Ttにまで昇温させるために必要な量の未燃燃料を該酸化触媒12に供給することが可能となる。そのため、触媒昇温制御において、酸化触媒12をより精度良く目標温度Ttに制御することが出来る。
【0054】
尚、本実施例において、排気圧センサ18が設けられておらず、スロットル弁17より下流側の吸気通路8に、該吸気通路8内の圧力に対応した電気信号を出力する吸気圧センサが設けられている場合、この吸気圧センサの出力値から上流側排気通路内圧力Peを推定し、その推定値に基づいて補正係数aを導出しても良い。
【実施例2】
【0055】
本実施例に係る内燃機関とその吸排気系の概略構成は、上述した実施例1と同様であるためその説明を省略する。また、本実施例においても、上述した実施例1と同様の触媒昇温制御が行われる。
【0056】
<単位ポスト燃料噴射量制御>
ここで、本実施例に係る、触媒昇温制御においてポスト燃料噴射量を実行するときの単位ポスト燃料噴射量制御について図5に基づいて説明する。図5は、本実施例に係る単位ポスト燃料噴射量制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。尚、本実施例においては、単位ポスト燃料噴射量を、1燃焼サイクル当たりのポスト燃料噴射量とする。本ルーチンは、ECU20に予め記憶されており、内燃機関1の運転中、クランクシャフトが規定クランク角回転する毎に実行される。
【0057】
本ルーチンでは、ECU20は、先ずS201において、ポスト燃料噴射の実行条件が成立しているか否かを判別する。ここでのポスト燃料噴射の実行条件は、上述した実施例1におけるポスト燃料噴射の実行条件と同様である。S201において、肯定判定された場合、ECU20はS202に進み、否定判定された場合、ECU20は本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0058】
S202おいて、ECU20は、排気絞り弁15によって排気絞りが行われているか否かを判別する。このS202において、肯定判定された場合、ECU20はS203に進み、否定判定された場合、ECU20はS206に進む。
【0059】
S206に進んだECU20は、下記式(1)によって単位ポスト燃料噴射量Qpを算出する。
Qp=Gn×ΔT×C・・・(1)
【0060】
式(1)において、Gnは吸入空気量を表し、ΔTは、目標温度Ttと現時点の酸化触媒12の温度Tcとの差(以下、単に、触媒温度差と称する)を表している。また、Cは、吸入空気量Gnと触媒温度差ΔTとの積を単位ポスト燃料噴射量Qpに変換する換算係数である。この換算係数Cは実験等に基づいて予め定められた値である。ECU20は、S206において単位ポスト燃料噴射量Qpを算出した後、S207に進む。
【0061】
S207において、ECU20は、単位ポスト燃料噴射量を単位ポスト燃料噴射量Qpとしてポスト燃料噴射を実行し、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0062】
一方、S203に進んだECU20は、下記式(2)によって、気筒2内の作動ガス量Qwを算出する。
Qw=(Pe/Pa)×(273/(273+Te))×ηv×(Vh/2)×γ・・
・(2)
【0063】
式(2)において、Peは、上述した実施例1と同様、上流側排気通路内圧力を表しており、Paは、大気圧センサ19によって検出される大気圧を表している。また、Teは、上流側排気温度センサ13によって検出される、酸化触媒12より上流側の排気通路9内の排気温度を表しているおり、ηvは、体積効率を表している。また、Vhは、行程容積を表し、γは、空気密度を表している。
【0064】
次に、ECU20は、S204に進み、下記式(3)によって単位ポスト燃料噴射量Qp´を算出する。
Qp´=Qw×ΔT×C・・・(3)
【0065】
式(3)において、ΔTおよびCは、式(1)と同様、触媒温度差ΔTおよび換算係数Cをそれぞれ表している。ECU20は、S204において単位ポスト燃料噴射量Qp´を算出した後、S205に進む。
【0066】
S205において、ECU20は、単位ポスト燃料噴射量を単位ポスト燃料噴射量Qp´としてポスト燃料噴射を実行し、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0067】
上記説明した制御ルーチンによれば、排気絞り弁15による排気絞りが行なわれていない状態でポスト燃料噴射を実行するときは、吸入空気量Gnおよび触媒温度差ΔTに基づいて単位ポスト燃料噴射量Qpが決定される。これは、排気絞り弁15による排気絞りが行なわれていないときは、気筒2内の作動ガス量Qwは吸入空気量Gnとほぼ同量となるためである。
【0068】
一方、排気絞り弁15によって排気絞りが行なわれているときは、残留ガスが増加し易くなるため、気筒2内の作動ガス量Qwが吸入空気量Gnよりも残量ガス量分多くなる虞がある。そのため、上記説明した制御ルーチンによれば、排気絞り弁15によって排気絞りが行なわれている状態でポスト燃料噴射を実行するときは、上流側排気通路内圧力Peおよび上流側排気温度Teに基づいて気筒2内の作動ガス量Qwが算出される。そして、この作動ガス量Qwおよび触媒温度差ΔTに基づいて単位ポスト燃料噴射量Qp´が決定される。
【0069】
従って、本実施例によれば、ポスト燃料噴射を実行するときに排気絞り弁15によって排気絞りが行われている場合は、排気絞り弁15による排気絞りが行われていない場合に比べて、単位ポスト燃料噴射量を多くすることが出来る。その結果、ポスト燃料噴射を実行するときに排気絞りが行われている場合であっても、酸化触媒12を目標温度Ttにまで昇温させるために必要な量の未燃燃料を該酸化触媒12に供給することが可能となる。そのため、触媒昇温制御において、酸化触媒12をより精度良く目標温度Ttに制御することが出来る。
【0070】
尚、本実施例において、排気圧センサ18および上流側排気温度センサ13が設けられておらず、スロットル弁17より下流側の吸気通路8に、該吸気通路8内の圧力に対応した電気信号を出力する吸気圧センサ、および、該吸気通路8内の吸気温度に対応した電気信号を出力する吸気温度センサが設けられている場合、吸気圧センサの出力値から上流側排気通路内圧力Peを推定し、また、吸気温度センサの出力値から上流側排気温度Teを推定し、それらの推定値に基づいて作動ガス量Qwを算出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成図。
【図2】単位ポスト燃料噴射量と酸化触媒の温度との関係を示す図。
【図3】本発明の実施例1に係る単位ポスト燃料噴射量制御の制御ルーチンを示すフローチャート。
【図4】本発明の実施例1に係る、上流側排気通路内圧力と補正係数との関係を示すマップ。
【図5】本発明の実施例2に係る単位ポスト燃料噴射量制御の制御ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0072】
1・・・内燃機関
2・・・気筒
9・・・排気通路
10・・燃料噴射弁
11・・パティキュレートフィルタ
12・・酸化触媒
13・・上流側排気温度センサ
14・・下流側排気温度センサ
15・・排気絞り弁
16・・エアフローメータ
17・・スロットル弁
18・・排気温センサ
19・・大気圧センサ
20・・ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼サイクルにおける、主燃料噴射より遅い時期であって、且つ、非着火の時期に、気筒内で副燃料噴射を実行するポスト燃料噴射手段を備え、
前記内燃機関の排気通路に設けられた酸化機能を有する触媒が活性状態にあるときに、前記ポスト燃料噴射手段によって副燃料噴射を実行することで前記触媒に未燃燃料を供給し、それによって前記触媒を目標温度に昇温させる内燃機関の触媒昇温システムにおいて、
前記触媒よりも下流側の排気通路に設けられた排気絞り弁をさらに備え、
該排気絞り弁による排気絞りが行われている状態で前記ポスト燃料噴射手段によって副燃料噴射を実行するときは、前記排気絞り弁による排気絞りが行われていない状態で前記ポスト燃料噴射手段によって副燃料噴射を実行するときに比べて、前記ポスト燃料噴射手段によって噴射する単位時間当たりの副燃料噴射量を多くすることを特徴とする内燃機関の触媒昇温システム。
【請求項2】
前記排気絞り弁より上流側の前記排気通路内の圧力を検出する排気通路内圧力検出手段をさらに備え、
前記排気絞り弁による排気絞りが行われている状態で前記ポスト燃料噴射手段によって副燃料噴射を実行するときは、前記排気通路内圧力検出手段によって検出される前記排気通路内の圧力が高いほど前記ポスト燃料噴射手段によって噴射する単位時間当たりの副燃料噴射量をより多くすることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒昇温システム。
【請求項3】
前記触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
前記排気絞り弁より上流側の前記排気通路内の圧力を検出する排気通路内圧力検出手段と、
前記排気絞り弁より上流側の排気温度を検出する排気温度検出手段と、
前記排気通路内圧力検出手段によって検出される前記排気通路内の圧力および前記排気温度検出手段によって検出される排気温度に基づいて前記気筒内の作動ガス量を算出する作動ガス量算出手段と、をさらに備え、
前記排気絞り弁による排気絞りが行われている状態で前記ポスト燃料噴射手段によって副燃料噴射を実行するときは、前記触媒温度検出手段によって検出される前記触媒の温度と前記目標温度との差、および、前記作動ガス量算出手段によって算出される作動ガス量に基づいて、前記ポスト燃料噴射手段によって噴射する単位時間当たりの副燃料噴射量を決定することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒昇温システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−152871(P2006−152871A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342391(P2004−342391)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】