説明

内燃機関システム

【課題】本発明は、改質触媒の性能低下・劣化を検出することなく、改質触媒の寿命を延ばすことができるようにする。
【解決手段】本発明は、燃焼室11に連通する排気路13と吸気路12とに排気循環路30が連結された内燃機関10と、その排気循環路30を流通する排気ガス中に改質用燃料を噴射する改質用燃料噴射装置33と、その改質用燃料により水素含有ガスを生成する改質触媒を備えた改質器32とを有する内燃機関システムにおいて、改質触媒の所定の再生時期毎に、酸素含有ガスを排気循環路に流通させることによる改質触媒の再生を行う改質触媒再生手段C3を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に連通する排気路と吸気路とに連通した排気循環路に排気ガスの一部を還流させるとともに、その排気ガス中に送給された改質用燃料により水素含有ガスを生成する改質触媒を備えた改質器を有する内燃機関システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出された排気ガスの一部を吸気系統に還流混合させることにより、燃焼時の最高温度を下げ、その排気ガス中のNoxを低減する排気循環システムが知られている。
【0003】
上記排気循環システムを応用したものとして、還流させる排気ガスに燃料を供給し、排気ガスの熱を利用して、改質触媒上で改質反応(吸熱反応)を行い、水素と一酸化炭素を含むガスを吸気系に還流することにより、排気熱の回収、燃費向上を図った内燃機関のEGR(Exhaust Gas Recirculation)改質システムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、改質触媒の劣化を検出することにより、燃費悪化やトルク変動を防止する内燃機関のEGR改質システムも提案されている(例えば、特許文献2)。
改質反応としては、排気ガス中の水蒸気を利用した水蒸気改質反応及び二酸化炭素を利用したドライリフォーミングが想定されるが、いずれも炭素析出しやすい反応である。
【0005】
さらに、排気ガス中に燃料を供給することにより、改質反応を行うが、燃料の供給方法によっては、燃料が均一に排気ガス成分と混合せず、局所的にS/C、CO/C比が低い領域が生じる可能性があり、S/C、CO/Cが低い条件では、より炭素析出が生じやすい。
【0006】
炭素析出が生じると、改質触媒はやがて機能を果たさなくなり、所望の水素含有ガスを得ることができなくなる。炭素析出による改質触媒の性能低下は、酸素含有ガスによる酸化反応により燃焼除去することで回復する場合がある。ただし、炭素析出量に応じて燃焼温度が高くなるため、炭素析出量が多い場合には、急激な温度上昇を招く。急激な温度上昇は、触媒を熱劣化に導く可能性があるが、その主な熱劣化は触媒粒子のシンタリングであり、また、多くの熱劣化は再生が困難な永久劣化である。
【0007】
さらに、改質触媒の性能低下,劣化,異常については、例えば改質触媒温度、水素濃度、一酸化炭素濃度等様々な検出方法が提案がなされている一方、改質触媒上では、炭素析出が進行しながらも水素含有ガスが生成し続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61‐35375号公報
【特許文献2】特許第4013704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した各検出方法において、改質触媒の性能低下,劣化を検出した際には、かなりの量の炭素が析出している場合があるが、その場合、性能低下や劣化を検知したにも関わらず、再生の際に熱劣化を生じ、改質触媒の性能をより低下させる虞がある。
【0010】
そこで本発明は、改質触媒の性能低下・劣化を検出することなく、改質触媒の寿命を延ばすことができる内燃機関システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、燃焼室に連通する排気路と吸気路とに排気循環路が連結された内燃機関と、その排気循環路を流通する排気ガス中に改質用燃料を噴射する改質用燃料噴射装置と、その改質用燃料により水素含有ガスを生成する改質触媒を備えた改質器とを有する内燃機関システムにおいて、改質触媒の所定の再生時期毎に、酸素含有ガスを排気循環路に流通させることによる改質触媒の再生を行う改質触媒再生手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、改質触媒の性能低下・劣化を検出することなく、改質触媒の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る内燃機関システムの構成を示す説明図である。
【図2】同上の内燃機関システムの第1の例に係る動作を示すフローチャートである。
【図3】同上の内燃機関システムの第2の例に係る動作を示すフローチャートである。
【図4】同上の内燃機関システムの第3の例に係る動作を示すフローチャートである。
【図5】同上の内燃機関システムの第4の例に係る動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る内燃機関システムの構成を示すブロック図である。
【図7】同上の第二の実施形態に係る内燃機関システムの第1の例に係る動作を示すフローチャートである。
【図8】同上の第二の実施形態に係る内燃機関システムの第2の例に係る動作を示すフローチャートである。
【図9】同上の第二の実施形態に係る内燃機関システムの第3の例に係る動作を示すフローチャートである。
【図10】同上の第二の実施形態に係る内燃機関システムの第4の例に係る動作を示すフローチャートである。
【図11】同上の第二の実施形態に係る内燃機関システムの第5の例に係る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る内燃機関システムの構成を示す説明図である。
本発明の第一の実施形態に係る内燃機関システムA1は、内燃機関である4サイクルエンジン10と、この燃焼室11の吸気口11aに連結された吸気路(以下、「吸気パイプ」という。)12と、当該排気口11bに連結された排気路(以下、「排気パイプ」という。)13ととともに、それら吸気パイプ12と排気パイプ13の間に連結された排気循環路(以下、「EGR(Exhaust Gas Recirculation)パイプ」という。)30とともに、本システムの制御中枢となるコントローラCとを有して構成されている。
【0015】
吸気パイプ12には、これの吸気口11a近傍に主燃料供給装置20が配設されているとともに、その主燃料供給装置20の吸気方向上流側には、燃焼室11に向かう空気量を増減制御するための吸気制御バルブ18が配設されている。
【0016】
主燃料供給装置20は、燃焼室11内又は吸気パイプ12内に主燃料を噴射する機能を有するものであり、コントローラCの出力側に接続されて、適宜駆動されるようにしている。
排気パイプ13には、排気ガスの流量を増減するための排気制御バルブ19が配設されている。なお、16はピストン、17はスパークプラグである。
【0017】
EGRパイプ30は、上記排気パイプ13から排出された排気ガスの一部を吸気パイプ12に分流、換言すると還流循環させるためのものであり、そのEGRパイプ30には、排気ガスの流通方向α上流側から下流側に向けて、改質用燃料噴射装置33、改質器32、排気ガスを冷却するためのEGRクーラ31、排気ガスの流量を増減調整するためのEGRバルブ8、及びパイプ開閉バルブ7が順次配設されている。
なお、EGRバルブ8とパイプ開閉バルブ7は、コントローラCの出力側に接続されて、適宜駆動されるようになっている。
【0018】
改質用燃料噴射装置33は、改質器32に向けて流通する排気ガス中に改質用燃料を噴射する機能を有するものであり、コントローラCの出力側に接続されて適宜駆動されるようにしている。
【0019】
改質器32は、上記の改質用燃料により水素含有ガスを生成する改質触媒を内設したものであり、これには、改質器触媒温度センサS1が配設されている。
改質器触媒温度センサS1は、改質器32の改質触媒の温度を検出するためのものであり、コントローラCの入力側に接続されて、改質触媒の温度を測定できるようにしている。
【0020】
すなわち、内燃機関システムA1においては、燃焼室11内でストイキ(stoichiometric)燃焼させた排気ガスの一部を排気パイプ13からEGRパイプ30に分流させるとともに、これに改質用燃料を加えて改質器32内の改質触媒上で改質して水素含有ガスを得て、吸気パイプ12に還流している。
【0021】
コントローラCは、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路等からなるものであり、所要のプログラムの実行により、次の各機能を有する。
内燃機関システムA1は、所定の改質触媒の再生時期毎に、酸素含有ガスをEGRパイプ30に流通させることによる改質触媒の再生を行うものであるが、本実施形態においては、次のようにしている。
【0022】
(1)改質触媒の所定の再生時期になったか否かを判定する機能。この機能を「再生時期判定手段C1」という。
本実施形態においては、「所定の再生時期」が「排気ガスの改質を停止したとき」であり、排気ガスの改質を停止したか否かを判定している。
「排気ガスの改質を停止したとき」は、改質用燃料噴射装置33による改質用燃料の噴射を停止したときである。
【0023】
排気ガスの改質を停止したときには、直前まで改質を行っていたので、改質触媒温度が再生に適した温度である場合が多い。多くの場合、排気ガスの改質停止とともに酸素含有ガスを供給することができる。
ただし、改質触媒温度が650℃以上に達している場合には、酸素含有ガスを供給してはならない。改質触媒温度が高い状態で、酸素含有ガスを供給すると、析出した炭素を酸化除去する際、燃焼に伴う温度上昇により、改質触媒が熱劣化する可能性がある。
【0024】
なお、「所定の再生時期」としては、上記した「排気ガスの改質を停止したとき」に限るものではなく、「エンジン停止直前」としてもよい。
「エンジン停止直前」とは、スロットル(図示しない)が戻った状態をいい、通常は、惰性でピストンが数サイクル回転する。
スロットルが戻る前に、燃焼室11内ではリーン燃焼を行うことにより、スロットルが戻った後、数サイクル分のリーン燃焼排ガス又は空気を得る。この回転時に生じるリーン燃焼排ガスを利用し、改質触媒の再生を行う。
【0025】
(2)所定の再生時期になったと判定したときには、酸素含有ガスのEGRパイプ30への供給を開始する機能。この機能を「酸素含有ガス供給開始手段C2」という。
すなわち、排気制御弁19を閉じ、かつ、パイプ開閉バルブ7を開けることにより、酸素含有ガスの供給を開始する。
【0026】
(3)酸素含有ガスをEGRパイプ30に流通させることにより改質触媒の再生を行なう機能。この機能を「改質触媒再生手段C3」という。
「改質触媒の再生」は、酸素含有ガスによって改質触媒を酸化することであり、本実施形態においては、内燃機関10から排出されるリーン燃焼ガスを所要の温度でEGRパイプ30を流通させることにより行なっている。
酸素含有ガスとしては、炭素の燃焼除去に必要な酸素を含有していればよく、上記した燃焼筒11から排出されるリーン燃焼ガスの他、空気でもよい。
【0027】
(4)酸素含有ガスのEGRパイプ30への供給を停止する機能。この機能を「酸素含有ガス供給停止手段C4」という。
排気制御弁19を開けることにより、酸素含有ガスのEGRパイプ30への供給を停止している。
【0028】
次に、上記の構成からなる内燃機関システムA1の動作について、図2,3を参照して説明する。図2は、内燃機関システムA1の第一の例に係る動作を示すフローチャート、図3は、内燃機関システムA1の第1の例に係る動作を示すフローチャートである。
なお、図2においてはステップ1を「S1」、図3においてはステップ1を「Sa1」とそれぞれ略記し、以下の各ステップについても同様に表記する。
【0029】
まず、図2に示す第一の例に係る動作について説明する。なお、図2,3及び後述する図4においては、「酸素含有ガス」を「再生ガス」と表記している。
ステップ1(図2において「S1」と記す。以下、同様。):排気ガスの改質を停止したか否かを判定し、排気ガスの改質を停止したと判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
ステップ2:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ3:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ4:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への供給を停止する。
【0030】
次に、図3に示す第2の例に係る動作について説明する。
ステップ1(図3において「Sa1」と記す。以下、同様。):エンジン停止直前か否かを判定し、エンジン停止直前であると判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
【0031】
ステップ2:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ3:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ4:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への送給を停止する。
【0032】
すなわち、バッテリ(図示しない)を搭載したハイブリッドエンジンシステムにおいては、効率良く運転するため、エンジンが停止する機会が頻繁にあり、改質触媒の再生を適時に行なうことができる。
また、上記バッテリを搭載したハイブリッドエンジンシステムにおいては、エンジン停止時において、上記のようなピストンの動作を利用しなくても、モータでピストンを駆動させることにより、改質触媒に酸素含有ガスを供給することが可能となる。
【0033】
すなわち、モータによって内燃機関10を動作させることにより、酸素含有ガスをEGRパイプ30に流通させることによる改質触媒の再生を行う機能を有するものとしてもよい。
なお、図3に示すステップ(Sa1)1の判定処理を、図2に示すフローチャートに組み入れた動作を行なわせるようにしてもよい。
【0034】
図4は、内燃機関システムA1の第3の例に係る動作を示すフローチャートである。
本例においては、「改質触媒の所定の再生時期」が、アイドリングストップである。
「アイドリングストップ」は、内燃機関10が動作しているときに、車体(図示しない)が停止している状態をいい、この状態にあるか否かを再生時期判定手段C1が判定する。
【0035】
ステップ1:(図4において「Sb1」と記す。以下、同様。)アイドリングストップか否かを判定し、アイドリングストップであると判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
【0036】
ステップ2:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ3:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ4:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への送給を停止する。
【0037】
すなわち、アイドリングストップ時には、改質触媒温度が比較的低いことが予想され、高温時の熱劣化を心配することなく、再生を行うことができる。
なお、図2,3に示すフローチャートに、図4に示すフローチャートを組み合わせてもよい。すなわち、ステップS1,S1a,S1bの判定を順次行なうとともに、その判定毎に改質触媒の再生を行なうようにしてもよい。
【0038】
図5は、内燃機関システムA1の第4の例に係る動作を示すフローチャートである。
本例においては、「所定の再生時期」が、再循環する排気ガスの改質触媒による改質を開始するときである。図5においては「EGR改質開始時」と表記している。
具体的には、改質用燃料の噴射前であって、排気ガスのみを流通させている状態をいい、この状態にあるか否かを再生時期判定手段C1が判定する。
【0039】
ステップ1:EGR改質開始時か否かを判定し、EGR改質開始時であると判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
ステップ2:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ3:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ4:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への送給を停止する。
【0040】
図6は、本発明の第二の実施形態に係る内燃機関システムA2の構成を示すブロック図である。なお、上述した実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
本発明の第二の実施形態に係る内燃機関システムA2は、上述した内燃機関システムA1の構成に加え、EGRパイプ30に酸素含有ガス供給装置40を設けた構成のものである。
酸素含有ガス供給装置40は、改質器32の排気ガスの流通方向α上流側に配置されているとともに、コントローラCの出力側に接続されて、適宜駆動されるようになっている。
【0042】
(1)改質触媒の所定の再生時期になったか否かを判定する機能。この機能を「再生時期判定手段C1」という。
本実施形態においては、「所定の再生時期」が「EGR改質を停止したとき」であり、具体的には、改質用燃料の噴射を停止したか否かを判定している。
【0043】
(2)改質器32に設けた改質触媒が所要の温度になったか否かを判定する機能。この機能を「改質器触媒温度判定手段C5」という。
改質触媒の温度は、上記した改質器触媒温度センサS1によって検出する。本実施形態においては、650℃以下になったか否かを判定している。
酸素含有ガスによる酸化反応は、発熱反応であるため、改質触媒上に多くの炭素が析出しており、一度に反応すると、高温になる恐れがある。高温になると、改質触媒が熱劣化を起こす可能性が高まるため、改質触媒温度が650℃以上の場合には、再生のための酸素含有ガスを供給してはならない。改質触媒温度が、所定の温度になった後に、酸素含有ガスを供給することが望ましい。
【0044】
(3)改質触媒が、所要の温度帯域に含まれるか否かを判定する機能。この機能を「改質触媒温度帯域判定手段C6」という。
「所要の温度帯域」は、本実施形態においては300〜600℃(300℃以上650℃以下)としている。
すなわち、析出した炭素を効率よく燃焼させるためには、改質触媒温度があまり低すぎると、酸化反応が進行しにくい。従って、300〜600℃で行うのが好ましい。より好ましくは、450〜600℃である。
【0045】
(4)酸素含有ガスのEGRパイプ30への供給を開始する機能。この機能を「酸素含有ガス供給開始手段C2」という。
すなわち、排気制御弁19を閉じ、かつ、パイプ開閉バルブ7を開けることにより、酸素含有ガスの供給を開始する。
【0046】
(5)酸素含有ガスをEGRパイプ30に流通させることにより改質触媒の再生を行なう機能。この機能を「改質触媒再生手段C3」という。
「改質触媒の再生」は、酸素含有ガスによって改質触媒を酸化することであり、本実施形態においては、酸素含有ガス供給装置40から酸素含有ガスを所要の温度でEGRパイプ30を流通させることにより行なっている。
【0047】
(6)酸素含有ガスのEGRパイプ30への供給を停止する機能。この機能を「酸素含有ガス供給停止手段C4」という。
排気制御弁19を開けることにより、酸素含有ガスのEGRパイプ30への供給を停止している。
【0048】
図7は、内燃機関システムA2の第1の例に係る動作を示すフローチャートである。
本例においては、「所定の再生時期」が、改質触媒の改質を停止したときである。図7においては「EGR改質停止」と表記している。
具体的には、改質用燃料の噴射を停止したときであり、改質用燃料の噴射を停止したか否かを再生時期判定手段C1が判定する。
【0049】
ステップ1(図7において「Sd1」と記す。以下、同様。):改質触媒の改質を停止したか否かを判定し、改質触媒の改質を停止したと判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
ステップ2:改質触媒の温度が650℃以下になったか否かを判定し、650℃以下になったと判定したときにはステップ3に進み、そうでなければステップ2を繰り返す。
【0050】
ステップ3:改質触媒の温度が300℃〜650℃(300℃以上650℃以下)の温度帯域にあるか否かを判定し、当該温度帯域にあると判定したときにはステップ4に進み、そうでなければステップ3を繰り返す。
【0051】
ステップ4:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ5:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ6:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への送給を停止する。
【0052】
図8は、内燃機関システムA2の第2の例に係る動作を示すフローチャートである。
ステップ1(図8において「Se1」と記す。以下、同様。):エンジン停止直前か否かを判定し、エンジン停止直前であると判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
ステップ2:排気ガスの改質を停止したか否かを判定し、排気ガスの改質を停止したと判定したときにはステップ3に進み、そうでなければステップ2を繰り返す。
【0053】
ステップ3:改質触媒の温度が650℃以下であるか否かを判定し、650℃以下であると判定したときにはステップ4に進み、そうでなければステップ3を繰り返す。
【0054】
ステップ4:改質触媒の温度が300℃〜650℃の温度帯域にあるか否かを判定し、当該温度帯域にあると判定したときにはステップ5に進み、そうでなければステップ4を繰り返す。
【0055】
ステップ5:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ6:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ7:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への送給を停止する。
【0056】
図9は、内燃機関システムA2の第3の例に係る動作を示すフローチャートである。
ステップ1:アイドリングストップか否かを判定し、アイドリングストップであると判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
【0057】
ステップ2:排気ガスの改質を停止したか否かを判定し、排気ガスの改質を停止したと判定したときにはステップ3に進み、そうでなければステップ2を繰り返す。
【0058】
ステップ3:改質触媒の温度が650℃以下であるか否かを判定し、650℃以下であると判定したときにはステップ4に進み、そうでなければステップ3を繰り返す。
【0059】
ステップ4:改質触媒の温度が300℃〜650℃(300℃以上650℃以下)の温度帯域にあるか否かを判定し、当該温度帯域にあると判定したときにはステップ5に進み、そうでなければステップ4を繰り返す。
【0060】
ステップ5:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ6:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ7:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への送給を停止する。
【0061】
図10は、内燃機関システムA2の第4の例に係る動作を示すフローチャートである。
ステップ1(図10において「Sg1」と記す。以下、同様。):排気ガスの改質を開始したか否かを判定し、排気ガスの改質を開始したと判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
【0062】
ステップ2:改質触媒の温度が650℃以下であるか否かを判定し、650℃以下であると判定したときにはステップ3に進み、そうでなければステップ2を繰り返す。
【0063】
ステップ3:改質触媒の温度が300℃〜650℃(300℃以上650℃以下)の温度帯域にあるか否かを判定し、当該温度帯域にあると判定したときにはステップ4に進み、そうでなければステップ3を繰り返す。
【0064】
ステップ4:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ5:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ6:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への送給を停止する。
【0065】
図11は、内燃機関システムA2の第5の例に係る動作を示すフローチャートである。
本例においては、コントローラCが次の機能を有している。
(7)改質触媒の再生前後の温度を算出する機能。この機能を「改質触媒温度算出手段C7」という。
本実施形態においては、改質器触媒温度センサS1により検出した検出値に基づき、改質触媒の再生前後の温度を算出している。
(8)再生前後の改質触媒温度の差が負になったか否かを判定する機能。この機能を「改質器触媒温度判定手段C8」という。
再生前後の改質触媒温度の差が負になったと判定したときには、改質触媒再生手段は、上記したEGR改質開始時に改質触媒の再生を行う。
【0066】
ステップ1(図11中、「Sh1」と記す。以下同様。):エンジンの停止直前か否かを判定し、エンジンの停止直前と判定したときにはステップ2に進み、そうでなければステップ1を繰り返す。
【0067】
ステップ2:排気ガスの改質を停止したか否かを判定し、排気ガスの改質を停止したと判定したときにはステップ3に進み、そうでなければステップ2を繰り返す。
ステップ3:改質触媒の温度が650℃以下であるか否かを判定し、650℃以下であると判定したときにはステップ4に進み、そうでなければステップ3を繰り返す。
【0068】
ステップ4:改質触媒の温度が300℃〜650℃の温度帯域にあるか否かを判定し、当該温度帯域にあると判定したときにはステップ5に進み、そうでなければステップ4を繰り返す。
【0069】
ステップ5:排気制御バルブ19を閉じて、排気ガスをEGRパイプ30に流通させ始める。
ステップ6:所要の温度において排気ガスをEGRパイプ30に流通させることにより、改質触媒の再生処理を行なう。
ステップ7:排気制御バルブ19を開いて、排気ガスのEGRパイプ30への送給を停止する。
【0070】
ステップ8:処理前後の改質触媒温度差ΔTが「負」になったか否かを判定し、処理前後の改質触媒温度差ΔTが「負」になったと判定したときにはステップ9に進み、そうでなければステップ9に進む。
ステップ9:EGR改質開始時に追加の再生処理を行なう。
【0071】
上述した内燃機関システムA2によれば、次の効果を得ることができる。
・酸素含有ガス供給装置と40を設けることにより、燃焼室11内の燃焼状態に左右されることなく再生処理を行うことができる。すなわち、本構成とすることで、EGR改質停止時及びEGR改質開始時に再生を行う場合に有効である。
【0072】
・また、酸素含有ガス供給装置40を設けることにより、再生処理時間を任意に制御することが可能となる。EGR改質停止時に再生を行い、再生前後での改質触媒温度差ΔTが負にならない場合(つまり、燃焼中であり再生が不十分な場合)には、改質触媒温度差ΔTが負になるまで、再生を継続することも可能である。
【0073】
上述した各実施形態に係る内燃機関システムによれば、次の効果を得ることができる。
・改質触媒の性能低下・劣化を検出することなく、改質触媒の寿命を延ばすことができる。
【0074】
・適時に改質触媒を再生できるので、その改質触媒の寿命を桁違いに高めることができる。
・改質触媒の性能低下・劣化を検知する手段を設けることなく再生が可能であるので、車載システムを簡素化できる。
・改質触媒温度が高い場合には、改質触媒の再生を行わないことにより、熱劣化による改質触媒の永久劣化を防ぐことができる。
【0075】
・改質触媒の再生をアイドリングストップ時に行うことにより、改質触媒の温度があまり高くない条件でも再生を行うことができる。
・改質触媒の再生をEGR改質開始時に行うことにより、比較的低温から時間を掛けて行うことができる。
【0076】
・改質触媒の再生を酸素含有ガスによる酸化反応により行うことにより、性能低下原因の一つである、析出炭素を酸化除去することができる。
・改質触媒の再生に使用する酸素含有ガスとして、内燃機関のリーン燃焼ガスを用いることにより、特別な酸素含有ガス供給手段を設けることなく、改質触媒の再生を行うことができる。
【0077】
・改質触媒の再生に使用する酸素含有ガスを、酸素含有ガス供給装置10より供給することにより、内燃機関10の運転状態に依存することなく行なうことができる。
・改質触媒の再生を、改質触媒温度が300℃以上600℃以下で行うことにより、析出した炭素を酸化除去するとともに、熱劣化による触媒の永久劣化を防止することができる。
・改質触媒の再生において、改質触媒温度が650℃以上の場合には、酸素含有ガスを供給しないことにより、改質触媒再生時の熱劣化による触媒の永久劣化を防止することができる。
【0078】
・改質触媒を再生する際、当該再生前後の改質触媒温度の温度差ΔTが負になった場合、当初の再生処理に加え、EGR改質開始時にも再生を行うことにより、当初の再生が十分でない場合にも、改質触媒の性能を維持することができる。
・従来のように、改質触媒の性能低下や劣化を検知する装置類を設けることなく、改質触媒の再生を行なえるので、車載用システムを簡素化できる。
・改質触媒温度が高い場合に再生処理を行わないことにより、熱劣化による改質触媒の永久劣化を防ぐことができる。
【実施例】
【0079】
以下、より具体的な実施例について説明する。
改質触媒としてロジウム系触媒を担持し、図1に示す内燃機関システムA1において、図8のフローチャートに示す手順により、エンジン停止直前に再生処理を実施した。エンジン停止直前に再生処理を行う場合には、合わせてEGR改質を停止、つまり改質触媒に燃料が供給されていないことを確認し、再生処理を行った。再生処理を行わない場合と比較して、改質触媒の寿命が1桁以上向上した。
【0080】
また、図6に示す内燃機関システムA2において、酸素含有ガス供給装置10より空気を供給し、図7のフローチャートに示す手順により、EGR改質停止時に再生処理を実施した。再生処理を実施しない場合と比較して、改質触媒の寿命が1桁以上向上した。
【0081】
さらに、同上の内燃機関システムA2において、図7〜11に示す再生方法を組み合わせ、再生処理を実施した。その結果、再生処理を実施しない場合と比較して、改質触媒の寿命が2桁以上向上した。
以上のように、本発明に係る内燃機関システムA1,A2によれば、改質触媒を適時に再生することができるので、改質触媒の寿命を桁違いに向上させることができるとともに、燃費向上を図ることができる。
【0082】
以上詳細に説明したが、いずれにしても、上記各実施形態において説明した各構成は、それら各実施形態にのみ適用することに限らず、一の実施形態において説明した構成を、他の実施形態に準用若しくは適用し、さらには、それを任意に組み合わせることができるものである。
【符号の説明】
【0083】
10 内燃機関
11 燃焼室
12 吸気路
13 排気路
30 排気循環路
32 改質器
33 改質用燃料噴射装置
40 酸素含有ガス供給装置
A1,A2 内燃機関システム
C1 再生時期判定手段(改質停止判定手段)
C2 酸素含有ガス供給開始手段
C3 改質触媒再生手段
C4 酸素含有ガス供給停止手段
C5 改質器触媒温度判定手段
C6 改質触媒温度帯域判定手段
S1 改質器触媒温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に連通する排気路と吸気路とに排気循環路が連結された内燃機関と、その排気循環路を流通する排気ガス中に改質用燃料を噴射する改質用燃料噴射装置と、その改質用燃料により水素含有ガスを生成する改質触媒を設けた改質器とを有する内燃機関システムにおいて、
改質触媒の所定の再生時期毎に、酸素含有ガスを排気循環路に流通させることによる改質触媒の再生を行う改質触媒再生手段を設けたことを特徴とする内燃機関システム。
【請求項2】
改質触媒の所定の再生時期になったか否かを判定する再生時期判定手段を設けていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関システム。
【請求項3】
当該所定の再生時期が排気ガスの改質を停止するときであり、
再生時期判定手段は、排気ガスの改質を停止したか否かを判定し、排気ガスの改質を停止すると判定したときに、改質触媒再生手段は、当該改質触媒の再生を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関システム。
【請求項4】
当該所定の再生時期が内燃機関の停止直前であり、
再生時期判定手段は、内燃機関が停止直前か否かを判定し、内燃機関が停止直前であると判定したときに、改質触媒再生手段は、当該改質触媒の再生を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項5】
当該所定の再生時期がアイドリングストップであり、
再生時期判定手段は、アイドリングストップであるか否かを判定し、アイドリングストップであると判定したときに、改質触媒再生手段は、当該改質触媒の再生を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項6】
当該所定の再生時期が排気循環路を流通する排気ガスの改質を開始するときであり、
再生時期判定手段は、排気循環路を流通する排気ガスの改質を開始するか否かを判定し、排気ガスの改質を開始すると判定したときに、改質触媒再生手段は、当該改質触媒の再生を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項7】
改質触媒再生手段は、酸素含有ガスによる酸化反応によって上記改質触媒の再生を行なうことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項8】
酸素含有ガスとして、内燃機関のリーン燃焼ガスを用いることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関システム。
【請求項9】
排気循環路に酸素含有ガス供給装置が配設されており、
その酸素含有ガス供給装置により酸素含有ガスを供給することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項10】
300℃以上600℃以下の改質触媒の温度において改質触媒の再生を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項11】
改質器に設けた改質触媒の温度が650℃以上になったか否かを判定する触媒温度判定手段と、
当該温度が650℃以上になったと判定したときには、酸素含有ガスの供給を停止する酸素含有ガス供給停止手段とを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項12】
改質触媒の再生前後の温度を算出する改質触媒温度算出手段と、
再生前後の改質触媒温度の差が負になったか否かを判定する改質触媒温度判定手段と、
再生前後の改質触媒温度の温度差が負になったと判定したときには、再循環する排気ガスの改質触媒による改質を開始するときに、改質触媒の再生を行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の内燃機関システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−188963(P2012−188963A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51826(P2011−51826)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】