半導体装置の製造方法並びに薄膜トランジスタ
【課題】本発明の目的は、半導体膜を大粒径の結晶化が可能な半導体装置の製造方法を提供することである。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を前記非単結晶半導体膜上に設けられた第1の光吸収層を介して照射して前記結晶化領域を結晶化するレーザ照射工程、即ち結晶化工程(A)と、少なくとも結晶化された前記結晶化領域の上に形成された第2の光吸収層にレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を第2の光吸収層を介して再加熱する再結晶化工程、即ち加熱工程(C)とを有する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を前記非単結晶半導体膜上に設けられた第1の光吸収層を介して照射して前記結晶化領域を結晶化するレーザ照射工程、即ち結晶化工程(A)と、少なくとも結晶化された前記結晶化領域の上に形成された第2の光吸収層にレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を第2の光吸収層を介して再加熱する再結晶化工程、即ち加熱工程(C)とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,レーザ光を非単結晶半導体膜に照射して、これの結晶化領域を結晶化する、半導体装置の製造方法並びにこの方法により形成された薄膜トランジスタに関する。
【0002】
一般的には単結晶でも原子列の乱れ(転位など)が存在しており、“単結晶”と“単結晶に近い結晶”とは、区別が困難なので、本明細書では、“単結晶に近い結晶”も、“単結晶”として説明されている。
【背景技術】
【0003】
絶縁材料基板,または絶縁膜上に単結晶シリコンを形成するSOI(Silicon On Insulator)技術は,ULSI(Ultra large-Scale Integrated circuit)の高集積化,低消費電力並びに/もしくは高速化を実現する技術として知られている。この技術のプロセスは,(1)単結晶半導体ウエハ、例えば、シリコンウエハの表面下部領域に絶縁膜を形成する方法と,(2)絶縁材料基板もしくは絶縁膜の上に形成した非晶質または多結晶半導体膜を、例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンの膜に結晶化または再結晶化する方法とに分類される。いずれの方法においても,シリコンの結晶性を高めることは極めて重要であり,トランジスタを形成する領域が単結晶であること,さらに,結晶面方位が揃っていて,特に表面が(001)面,電流の流れる方向の結晶方位が(100)面であることが望ましい。このため,単結晶シリコンウエハを用いるSIMOXや貼り合わせ基板のような(1)の方法が実用化されている。
【0004】
一方,(2)の方法は,今日のシリコンULSI技術では採用されていないが,基板上に非晶質または多結晶半導体膜を形成する技術は、高温を必要としないので、基板材料に制限がなく、このために、この方法でシリコン単結晶などの高品質の半導体膜を形成できれば,さまざまな電子素子や電子装置の応用が可能である。このために、この(2)の方法の改良が強く望まれている。
【0005】
1980年代に,面方位の揃った単結晶シリコン膜を形成することを目的とした多くの研究が行われた。その中で高周波誘導加熱を用いたゾーンメルティング法は、重要な技術であり,表面の結晶方位が(001)面を有する単結晶シリコン矩形領域を形成することができる技術として知られている。この技術の詳細は,非特許文献1に記載されているが、以下に簡単に説明する。
【0006】
まず、石英基板上に常圧化学気相成長法を用いて多結晶Si膜を堆積し,この膜を,直線状に並んだ多数の矩形領域と、これら矩形領域を互いに連結した細線(ネック部という。長さL、幅Wを有する)とを有するように、にパターニングする。次に、細長い高周波誘導加熱ヒータを石英基板の下側に位置させて、上記直線状に並んだ矩形領域を、順次、帯状に1412℃以上に加熱して、この加熱ヒータに対応した個所の多結晶シリコンを溶融させて、帯状のシリコン溶融領域を形成する。次に、この加熱ヒータを上記線状と同一方向に移動させることにより、単結晶シリコンを順次溶融させて矩形領域全体を溶融させて単結晶化させる。この結果、矩形領域のうち、加熱ヒータが通過した部分は、既に単結晶化され、通過していない部分は、結晶化されていない。ここで,ネック部の寸法(長さLと幅W)を変化させると,局部的に熱流が変化し,熱流に依存して結晶方位が変化する。このために、この技術では、長さLと幅Wとを最適化すると(001)面の方位を有する結晶化矩形領域を形成することができる。
【0007】
一般に,ガラスやプラスチックの基板上に結晶化シリコン膜を形成する技術は,液晶ディスプレイなどの駆動素子に用いられている膜トランジスタの高性能化技術に応用されている。例えば,膜トランジスタの半導体層を非晶質構造から多結晶構造に変化させると、トランジスタの電子もしくは正孔の移動度が100倍以上になる。
【0008】
但し,この技術での結晶化には基板における熱損傷に注意しなければならない(例えば、一般のガラス基板では600℃以下,プラスチックでは150℃以下にしなければならない)。上記高周波誘導加熱を用いたゾーンメルティング法は、基板を高温にしてしまうため、上記材料で基板が形成されている液晶ディスプレイの分野には適用できず、このため、基板は、熱に強い材料、例えば、石英で形成しなければならない。
【0009】
上記問題点を解決するために、基板に熱損傷を与えずに非晶質シリコン膜を結晶化する方法として,エキシマレーザ結晶化法が開発されている。この技術は,エキシマレーザ光をホモジナイズ光学系により光照射断面の強度を均一にし,細長い矩形の開口を有する金属マスクを通して矩形状に整形(例えば断面形状は,150mm×200μm)して出射させている。この出射されたレーザ光で、ガラス基板上に堆積した非晶質シリコン膜の表面を上記矩形上に整形されたレーザ光の矩形の長軸方向と直角方向に走査して、短軸方向に10μm間隔でレーザ照射している。このレーザ光を吸収したシリコン膜は溶融シリコンを経た後,多結晶シリコンに変換される。この技術では,一般のガラスやプラスチック基板を用いたとしても基板に熱損傷は生じない。なぜなら,エキシマレーザ光は20ns程度のパルスレーザであり,結晶化は50ないし100ns程度で完了するので、基板が高温に加熱されないからである。この技術で形成される結晶粒径は、レーザエネルギー密度に依存しており,粒径0.1ないし1μm程度の結晶粒からなる多結晶膜を形成することができる。面方位に関しては,1回のレーザ照射で形成された結晶粒は配向しないが,数百回程度の多数回繰り返しレーザ照射を行うことにより,表面方位が(001)面や(111)面に配向する報告がある。前者は、例えば,非特許文献2に記載され、また、後者は、非特許文献3に記載されている。
【0010】
また,上記エキシマレーザアニールを発展させた技術として,SLS方式(Sequential Lateral Solidification)と呼ばれている技術が知られている。このような技術は、例えば、特許文献1に開示されている。この技術では、ホモジナイズ光学系によって光強度が均一化されたエキシマレーザ光を2μm幅程度の金属細隙を設けたマスクを通すことにより断面を長方形状に整形している。この細隙を通ったレーザ光のフルエンス(エネルギー密度)は,非晶質シリコン膜が厚さ方向に全溶融した溶融シリコンになるように設定されている。この結果、細隙の外側の領域から内側に向かって横方向成長が起こり,結晶化シリコンが形成される。次に試料を2μmだけ左方向に移動させて、レーザ照射する。この結果、前記溶融シリコンは、前照射によって形成された結晶化シリコンの右端部を種結晶として横方向成長する。この技術では、このようなレーザ照射と試料移動のプロセスを繰り返すことによって大粒径の多結晶シリコン膜を形成することができる。この場合に、前記マスクの平面形状を市松状にして,繰り返しレーザ照射を行うと処理時間が向上し,また結晶化の重なり領域が良好になり,基板面で均一な横方向成長多結晶膜を形成できる。
【0011】
上記エキシマレーザ結晶化法をさらに発展させた方法として,位相変調エキシマレーザ結晶化法が知られている。この方法の特徴は,エキシマレーザ光を、位相シフタ(例えば,石英板に段差加工を行ったもの)と呼ばれる光学変調部品を通すことによって、レーザ光強度分布を、極小光強度部を有する光強度分布となるように光変調させている。このように変調されたレーザ光で,非晶質シリコン膜に一回の照射を行って、照射領域を結晶化している。
【0012】
この方法は、上記エキシマレーザ結晶化法やSLS方式とは異なり、均一光強度分布を使用せず、また多数回レーザ照射を行う必要もない。この方法では、光変調された光強度分布により、レーザ照射された膜内には傾斜した温度分布が生じ、エネルギーの小さい所に結晶核が形成されるために、結晶核の位置を正確に定めることができる。そして、この結晶核をもとにした横方向成長により大粒径の結晶粒を得ることができる。この方法により,大粒径の結晶粒が形成され、しかも結晶粒の位置を制御することができる。この技術の詳細は,非特許文献4に記載されている。
【特許文献1】特願平9−542270
【非特許文献1】電子通信学会論文誌1986/9vol.J69-C No.9 p.1089-1095.”電子通信学会論文誌1986/9vol.J69-C No.9 p.1089-1095
【非特許文献2】Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 42 (2003) p.L135-L.137
【非特許文献3】Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 30(1991) p.3700-3703
【非特許文献4】表面科学 Vol.21,No.5,pp.278-287,2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、基板材料に係らず絶縁層の上に面方位の揃った単結晶領域を形成する技術において,上記4種類の形式の従来技術には夫々以下に述べる課題がある。
【0014】
高周波誘導加熱を用いたゾーンメルティング法に関しては,基板を部分的にシリコンの融点(1410℃)以上に加熱するため,通常のガラスや合成樹脂などの低融点材料の基板を使用する用途には用いることができない。
【0015】
また、結晶化膜を(001)面方位に配向させるためには,島状シリコンの連結部(ネック部)の形状を最適化する必要があり,後に形成するトランジスタおよび回路のレイアウトに制限が生じる。
【0016】
エキシマレーザ結晶化法に関しては,結晶粒内部の結晶性は単結晶にすることができるが,多数のトランジスタを形成した場合、チャネル領域に粒界が存在するため移動度が低下し,トランジスタ間の性能(閾値電圧,サブシュレッド係数,移動度)のばらつきが生じる。また、結晶粒を大きくするためには,シリコン膜が全溶融になる臨界のレーザフルエンスに極限に近づける必要がある。しかしながら,レーザフルエンスが全溶融条件を超えるとシリコン膜は微結晶化するので、好ましくない。即ち,レーザフルエンスのばらつきに対する余裕度が狭い。そして、結晶粒サイズが最大で1から2μm程度であるため,ここに形成するトランジスのタサイズを小さくしなければならない制約が生ずる。このため、例えば,1 mx1 m程度のディスプレイ用大面積基板を用いた場合には極めて高度な微細加工技術が要求される。また、表面方位を(001)にするためには,レーザを200回以上((111)面にするためには10回程度)照射しなければならない。このため結晶化の処理時間が長くなる。また,結晶化膜の上面(一面)となる個々の結晶粒の表面の方位は(001)と一定にすることはできても、表面軸に対しては無秩序に回転した位置関係にあり,膜の断面の結晶方位は配向していない。即ち、結晶化膜の表面に直交する面を(001)方位とすることはできない。
【0017】
また、エキシマレーザ光の代わりにフラッシュランプ光のみを用いた結晶化法も試みられているが、上記エキシマレーザ結晶化法と同様に、結晶粒内部の結晶性は単結晶にすることができるが,多数のトランジスタを形成した場合、チャネル領域に粒界が存在するため移動度が低下し,トランジスタ間の性能(閾値電圧,サブシュレッド係数,移動度)のばらつきが生ずる。
【0018】
SLS方式に関しては,レーザ光の半分近くを金属マスクでシールドするため,レーザエネルギーを有効に利用することができない。このため結晶化の処理時間が長くなる。また、結晶粒の位置がばらついているため,上記エキシマレーザ結晶化と同様にトランジスタ間の性能のばらつきが生ずる。そして、結晶粒の面方位が一定でないため,トランジスタ間の性能のばらつきが生ずる。
【0019】
位相変調エキシマレーザ結晶化技術に関しては,大粒径の結晶粒が得られているが、さらに大粒径化して、一つの結晶粒に複数個のトランジスタを形成でき、回路レイアウトの制限が緩和されることが要求されている。
【0020】
本発明は上記の課題に基づいてなされたもので、その目的は、半導体膜を大粒径の結晶化が可能な半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
かくして、本発明の第1の態様に係わる半導体装置の製造方法は、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を前記非単結晶半導体膜上に設けられた第1の光吸収層を介して照射して前記結晶化領域を結晶化するレーザ照射工程と、
少なくとも結晶化された前記結晶化領域の上に形成された第2の前記光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を再加熱する加熱工程と、
を具備することを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の態様に係わる半導体膜の製造方法は、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を前記非単結晶半導体膜上に設けられた第1の光吸収層を介して照射して前記結晶化領域を結晶化するレーザ照射工程と、少なくとも結晶化された前記結晶化領域の上に形成された第2の前記光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を金属層を介して再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする。
【0023】
本発明の第3の態様に係わる半導体膜の製造方法は、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を照射してΔ形状の複数の主結晶粒と、これら主結晶粒の周りに複数の微小結晶粒とを形成するレーザ照射工程と、少なくとも前記結晶化領域の上に形成された金属層にレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより、前記Δ形状の主結晶粒が前記微小結晶粒を取り込んで前記結晶化領域の少なくとも一部を単結晶にする再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする。
【0024】
本発明の第4の態様に係わる半導体膜の結晶化方法は、試料の非単結晶半導体膜の結晶化領域に、この結晶化領域の少なくとも一部にエネルギー光のパルスレーザ光を照射して照射領域を溶融して結晶化するレーザ照射工程と、少なくとも前記パルスレーザ光に照射されて結晶化された領域の上に形成された金属層にレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより金属層を介して前記結晶化領域を再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記第1ないし第3の態様に係わる製造方法によれば、従来の欠点が改善され、結晶性の優れた半導体膜を有する半導体装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の半導体装置の製造方法の基本概念を、図1並びに2を参照して説明する。
本出願人は、まず始めに本願の基本思想を理解するために、本出願人が実験並びに判断した経緯並びに結果を説明する。光学変調素子として、石英基板表面に直線の段差加工した位相シフタを用い,光源からのレーザ光を最小光強度と最大光強度間が三角形状に変化するレーザ光強度分布に変調して、試料の未結晶化膜(この場合には、非晶質シリコン膜である。最終的に結晶化を所望する領域を結晶化領域と記載している)を照射させて大粒径の結晶化(この場合には、多結晶シリコン)を行う結晶化技術の工業化技術を開発している。
【0027】
この結晶化された膜の結晶粒の表面形態と個々の結晶粒の結晶学的方位を走査電子顕微鏡(SEM)法と電子後方散乱(EBSP)法を用いて測定した。この結果,図1(a)に示すように、結晶粒の形態は、小粒径結晶粒55と,短冊形状結晶粒53と,Δ形状結晶粒(主結晶粒)54との3種に分類できることが判った。ここで、Δ形状とは、レーザ光照射の極小光強度線又は極小光強度点を起点として結晶成長が横方向に進行した、次工程で結晶種に成るべき結晶粒を意味し、必ずしも完全な三角形状に成長したもののみを意味するものではなく、例えば多角形形状、一部に円弧部分を含んでいる形状もある。ここでは三角形状に近似した形状を有する場合が多く、理解し易いようにΔ形状とする。また、小粒径結晶粒55と短冊形状結晶粒53とは、Δ形状結晶粒54に比較してかなり小さく、また、1つのΔ形状結晶粒54の周りに複数形成されるので、この明細書では主結晶粒の周りに形成された複数の微結晶と称している。ここで本発明者が着目した点は、Δ形状結晶粒54の成長距離は長く,結晶成長方向の面方位が(100)面であり,結晶成長方向に対しての2つの垂直方向のうち膜の面内の垂直方向は(010)面または(011)面であるということである。そこで、線状の領域がレーザ光強度の極小になるような第1の位相変調エキシマレーザ光の照射を行い(極小光強度線による照射),それによって形成されたΔ形状結晶粒の底辺領域52を種結晶(結晶核)にして,第2の位相変調エキシマレーザ光の照射を行えば,面方位が揃いしかも結晶粒の形態が図1(b)に符号54bで示すように、Δ形状の主結晶粒が微小結晶粒を取り込んで方形状の単結晶を結晶化領域の少なくとも一部に形成することができる。即ち,第2位相変調エキシマレーザ光の照射は,線状の底辺領域が極小強度となるようにすればよいことが判った(極小光強度線による照射)。第2位相変調エキシマレーザ照射により,上記底辺領域の左右の領域は全溶融になるため結晶成長は,底辺領域の左右の方向に生ずる。この結果,少なくとも結晶成長方向の面方位は(001)面を有し,かつ四角形状の結晶粒が形成される。尚、図1は、結晶化膜を上方から見た場合の図である。さらに、位相シフタを使用して、ピッチPが一定の極小光強度線、もしくは極小光強度点、例えば、10μmの複数の極小光強度点(逆ピーク点)42aを有する図2に示すレーザ光強度分布61の第1の位相変調エキシマレーザ光で、非単結晶半導体膜60を照射する。次に、位相シフタと非単結晶半導体膜60とを相対的に例えばほぼP/2(約5μm)だけずらして位相シフタを透過した第2の位相変調エキシマレーザ光により上記非単結晶半導体膜60の照射を行えば,2次元に位置制御された結晶粒を形成することができる。ここで、ピッチPとは、後で説明するように、入射レーザ光の位相を180°(π)ずらせるために表面に形成された細長い溝と表面との間の段差、即ち、位相シフト線間、の間隔をいう。
【0028】
上記実験並びに測定から以下の結論が,導かれた。
表面形態が四角形状の結晶粒が一次元的に位置制御されていて少なくとも成長方向の面方位は(100)となる結晶化膜を製造するには,好ましくは、後で説明するような一次元の位相シフタを用いて,一次元のレーザ光強度分布を形成し,非晶質シリコン膜表面にレーザ光を照射して,一方向に成長した結晶粒を形成すればよい。
【0029】
従って、本発明では、このようなレーザ光による結晶化を、レーザ照射工程として、使用し、更に後で説明するように、レーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射するアニールによる加熱工程を付加することを基本としている。
【0030】
以下に本発明の基本となる半導体装置の製造方法の概念を図3並びに図4を参照して説明する。ここで、図3は、半導体装置の製造方法のフローチャートを示す図であり、また、図4は、本発明製造方法を実施するための装置のレーザ光源から光路に従って試料までの光学系を示す図である。
【0031】
本発明の一実施の形態の方法によれば、半導体装置に使用する領域を結晶化するための基本技術は、図3(a)と図3(b)とに示す2つの方法がある。図3(a)に示す方法では、レーザ照射工程、即ち、結晶化工程(工程A)で、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、この領域の一面から光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を照射して前記結晶化領域を結晶化した後に、高融点金属膜形成工程(工程B)により上記領域の一面に第2の光吸収膜例えば金属膜もしくは金属窒化物、この例では、非単結晶半導体膜よりも高融点の金属膜もしくは金属窒化物を形成している。
【0032】
この高融点金属膜もしくは金属窒化物としては例えばチタン(Ti)、モリブデン(Mo)、モリブデンタングステン(MoW)、もしくはチタンナイトライド(TiN)が好適である。一方、図3(b)に示す方法では、高融点金属膜形成工程(工程B)により上記結晶化領域の一面に高融点金属膜を形成した後に、結晶化工程(工程A)で、この金属膜により覆われた結晶化領域を結晶化している。そして、この後に両方法とも、加熱工程、即ち、再結晶化工程(工程C)により、金属膜で覆われた前記結晶化された領域にレーザ光もしくはフラッシュランプ光を、連続的もしくはパルス状に照射してこの領域を再加熱することにより、さらなる結晶化を果たしている。
【0033】
再加熱温度は、照射領域の少なくとも一部の領域が溶融する温度である。フラッシュランプ光の照射時間は、例えば0.1〜10ms程度が最適である。
【0034】
上記第2の光吸収層は、上記レーザ光もしくはフラッシュランプ光の一部を吸収して蓄熱し、ゆっくりとした降温速度を生成している。このように再加熱工程は、第2の光吸収膜例えば金属層(高融点金属層)もしくは金属窒化物がレーザ光もしくはフラッシュランプ光の一部を吸収して温度上昇を生じ、その熱を非単結晶半導体膜に熱伝導させることで非単結晶半導体膜の再加熱を実現する。
【0035】
次に、図4を参照して上記方法のレーザ光による結晶化工程(工程A)を実施するための装置の一例を概略的に説明する。
【0036】
この結晶化装置4では、レーザ光源5からのレーザ光路にホモジナイザ6が設けられ、レーザ光源5から射出されたレーザ光の光強度が均一化される。この強度が均一化されたレーザ光は、光変調素子7に入射される。
【0037】
この光変調素子7は、図2で符号61で示されたような逆ピーク状の光強度分布を有するレーザ光に、光強度が均一化された入射レーザ光を変調する(尚、図2では、非結晶半導体膜60に入射する前からレーザ光は、逆ピーク状の光強度分布光を有するように示されているが、これに限らず非結晶半導体膜60の入射面(照射面)でこのような光強度分布光を有していれば良い)。そして、この光変調素子7により光変調されたレーザ光は、結像レンズ8に入射される。この結像レンズ8は、変調されたレーザ光を非単結晶半導体膜の照射面に結像させる。非晶質シリコン膜上には、レーザ光波長で光吸収性を有する第1の光吸収膜(光吸収性の絶縁膜)例えばSiOx膜、SiNx膜が形成される。この第1の光吸収膜は、パルス状結晶化用レーザ光が非晶質シリコン膜に入射し、当該照射領域を加熱し溶融するときの熱を蓄熱する。この第1の光吸収膜の蓄熱効果は、結晶化用レーザ光の入射が遮断されたとき降温過程において瞬時に降温するのを抑制する作用を有する。ゆっくり降温させることにより横方向の結晶化を促進させることができる。
【0038】
次に、レーザ光もしくはフラッシュランプ光のうちフラッシュランプ光による結晶化工程2(工程C)を説明する。本願発明者は、結晶化工程(工程A)で形成された単結晶を有する結晶化領域に対して均一な加熱を行うため、この結晶化領域の上面(照射面)に絶縁層を介して高融点の金属層もしくは金属窒化物からなる第2の光吸収層を形成し、この第2の光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射して結晶化領域をアニールすることにより、前記第2の光吸収層の下に位置する結晶化領域の再加熱を行った。この時、光反射の低減や蓄熱効果を高めるために金属層の上に絶縁層(例えば,SiO2,SiOx,SiON,SiN、SOGまたは、これらの積層構造膜)を形成しておいてレーザ光もしくはフラッシュランプ光による再結晶化工程(工程C)を行うようにしてもよい。
【0039】
再結晶化工程でのレーザ光によるアニールは、例えば、連続発振YAGレーザ光(第二高調波)を高速スキャンすることによって行うことが好ましいが、必ずしも、この方法に限定されることはない。この走査は、少なくとも一部に単結晶が形成された結晶化領域に対して、レーザ光を結晶化領域の面方向(X方向とY方向と)に二次元的に走査させるのが一般的である。この場合、エネルギー光として、連続発振レーザ光に限定されることはなく、パルスレーザ光を用いてもよい。
【0040】
この再結晶化工程(工程C)をフラッシュランプ光で行う場合には、例えば、図5に示すようなフラッシュランプ加熱装置110を用いて行う。この加熱装置110は、気密容器117内の下側に支持プレート116が設けられている。この支持プレート116に加熱手段を配置して予備加熱(例えば250〜550℃)を行うようにしてもよい。この支持プレート116の上には、試料(工程Aにより非結晶半導体膜の結晶化領域が結晶化され、結晶化領域が第2の光吸収層である金属層もしくは金属窒化物で覆われた基板)108が固定支持されている。そして、この試料108と対向するように、気密容器117内の上側には複数本の棒状のキセノンフラッシュランプ114とからなるフラッシュランプ光源が配設されている。
【0041】
キセノンフラッシュランプ114の上方には、上方に放射されたランプ光を試料108方向に反射させるために、リフレクタ115が配置されている。また、気密容器117の内側は、支持プレート116が設けられた下側室と、フラッシュランプ光源が設けられた上側室とに、紫外線から可視領域までの光に対する透過性を有する、例えば、石英で形成された透光板112により区分されている。
【0042】
キセノンフラッシュランプ114は、その内部にキセノンガスが封入されその両端にコンデンサーに接続された陽極及び陰極が配置されたガラス管であり、駆動電源回路のコンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に流れ、その時にジュール熱でキセノンガスが加熱されて光が放出される。このキセノンフラッシュランプにおいては、予め蓄えられた静電エネルギーが0.1ms乃至10msという短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。フラッシュランプのパルス幅としては、望ましく0.5〜2msのものを用いるとよい。
【0043】
前記キセノンフラッシュランプ114からのフラッシュランプ光は、透光板112を通過して試料108に照入射される。このフラッシュランプ光による照射は、フラッシュランプが制御性が良いので、通常1回で良い。即ち、同じ結晶化領域に複数回フラッシュランプ光を照射させる必要はない。このように1回の照射の方が、半導体膜の熱損傷を最低限にすることが出来、さらにスループットも向上した良好な結果を得ることができる。しかしこれに限られることはなく、結晶性を向上させるため同じ結晶化領域に複数回フラッシュランプ光を照射させてもよい。
【0044】
また、キセノンフラッシュランプの発光分光特性としては、電圧、電流密度、ガス圧、ランプ内径等を制御して金属膜の反射率が低下する紫外線から可視領域に強度の強いものを用いることが望ましい。具体的には本実験にて使用する際に紫外から可視光の領域に発光強度を得る条件範囲は電流密度3000A/cm2〜10000A/cm2であった。特に条件として電圧3.5kV、電流密度4200A/cm2、ガス圧力400torr(5.3x104Pa)のものを用いた。高電流密度にすることでプラズマ温度が上昇し短波長成分のエネルギー密度の比率が高くなるため望ましい。
【0045】
再加熱工程(工程C)のときの気密容器117内の雰囲気としては、真空中もしくは不活性ガスからなる雰囲気で行うことが望ましい。しかし、このような手法に本発明は限定されることはない。
【0046】
再加熱工程前(図1(a))と、再加熱工程後(図1(b))との結晶化膜表面は、前に図1を参照して説明した状態とほぼ同じであった。即ち、図1は、キセノンフラッシュランプ照射では,図1(a)に示すレーザ照射で形成された三角形状の結晶粒の底辺領域52が種結晶となり,同じくレーザ照射で形成された小粒径結晶粒55,短冊形状結晶粒53は再溶融し,種結晶からの結晶成長に取り込まれることを示している。
【0047】
従って,図1(b)に示すように、キセノンフラッシュランプ照射によって,表面形態が四角形状の結晶粒54bが形成されている。結晶化された結晶粒54bは比較的大きくて方形を示し、その結晶性は単結晶と変わらない良好な結晶性を有していた。図1(b)は四角形状内の結晶粒が融合した場合を示しているが、隣接する四角形状の結晶粒が融合することも生じることもあるが問題はない。このために、各結晶粒54b内に、必要に応じて複数の半導体素子、例えば、薄膜トランジスタを形成することができる。尚、結晶核(結晶種)を位置制御して形成するには位相変調したレーザ照射が必要であるが、結晶粒径の二次拡大には必ずしも空間的に変調されたレーザ光を用いる必要は無いため、レーザ光もしくはキセノンフラッシュランプ光による高融点金属層を介した一様な加熱方法の方が、均一性、制御性が高いという利点がある。レーザ光もしくはキセノンフラッシュランプ光の加熱時間は、短くて済むために、ガラス板等の下地基板への影響も考慮して半導体膜、例えば、シリコン膜の温度上昇を最適化しやすいという利点もある。
【0048】
以下に、上記基本概念に基づく技術思想と組み合わせて使用され得る種々の装置の形態を添付図面を参照して説明する。
【0049】
第1の実施の形態
図6(a)に示すようなオリエンテーションフラット71、ノッチ72、基板マーク73等の方位表示指標を有する半導体基板(例えばシリコンウエハ)(図7と同様に符号81で示されている)上に、面方位の揃った四角形状の結晶化領域アレイを有する半導体装置の製造方法に関する実施の形態を図6(a)並びに図7を主に参照して説明する。
【0050】
まず、試料108を用意する。試料108は、例えば図7(a)に示す構成である。即ち、半導体基板81を用意し、この半導体基板81の上に絶縁層82(例えば膜厚500nm)を形成する。この絶縁層82は、例えば、熱酸化または,CVD(例えば,プラズマ化学気相成長法や低圧化学気相成長法など)やスパッタ法を用いて成膜されたSiO2膜である。代わって、この絶縁層82は,例えば、SiN膜とSiO2膜との組合わせのような積層構造にしたものでもよい。またSOG(Spin On Glass)、もしくはSOGとSiN膜,SiO2膜との積層構造としても良い。この絶縁層82は基板からの汚染防止、拡散防止と共に、その断熱性による蓄熱効果にて、レーザもしくはフラッシュランプによる加熱工程後、半導体膜83の冷却がゆっくりなされるため、より大きな結晶成長を促進する働きも有している。絶縁層82は、半導体基板81上の全面に形成し、そのまま残しておいても,パターニングによって部分的に残しておいても良い。ここでは,半導体基板81の全面に設けられている場合について説明する。次に、前記絶縁層82の上に、即ち、半導体基板81の一面側に、非晶質または多結晶構造の半導体膜83(例えば,膜厚30ないし200nm程度のSi膜など)をCVD(例えば,プラズマ化学気相成長法や低圧化学気相成長法など)やスパッタ法を用いて、非単結晶半導体膜として成膜する。この半導体膜83は、絶縁層82の全面,または,パターニングによって絶縁層の部分領域に形成してもよい。ここでは,絶縁膜82の全面に形成されている。
【0051】
そして、半導体膜83の表面全面に、第1の光吸収層84(例えば,SiO2,SiON,SiN、SOGまたは、これらの積層構造膜)を膜厚40〜500nm、例えば約260nmで成膜する。これは外部からの汚染防止、パーティクル汚染防止と共に、その断熱性による蓄熱効果にて、レーザまたはフラッシュランプによる加熱後、ゆっくりと冷却されるため、より大きな結晶成長を得ることができる。前記絶縁層82および半導体膜83がパターニングされた場合においては,基板全面に保護膜を形成してもよい。
【0052】
次に、図7(b)に示すように、位相変調エキシマレーザ結晶化法を用いて,保護膜84の表面の予め定められた位置に位置合わせして、図2に示すようなレーザ光強度分布61を有するエキシマパルスレーザ光85を照射する。ここでは,位相変調エキシマレーザ結晶化法は,後で説明するレーザ結晶化装置を用いている。このようなレーザ光の照射は、図6(a)に示すような予め半導体ウエハに設けられた合わせマークに従って照射位置が設定される。
【0053】
前記レーザ照射は,1回のパルスレーザ光の照射で複数の逆ピークを有する光強度分布を使用しているが、図では簡単のために、3つの逆ピークの場合を示す。この光強度分布には、各逆ピーク点(極小光強度点)を中心として1対の,主勾配方向(光強度が極小光強度点からほぼ線形に強くなる光強度の方向)86並びに/もしくは86aが存在する。1対の主勾配方向86と86aとは、紙面内で互いに180°回転の関係である。主勾配方向86または86aと半導体基板81の方位表示指標の方向とが所定関係を有するように、半導体基板81と、光変調素子、例えば位相シフタとが予め設定されている。ここでは,主勾配方向86とオリエンテーションフラット71(図6(a))とが平行となるように設定されている。
【0054】
このレーザ照射において、レーザ光のエネルギー密度は,光強度の極小値j1が横方向成長条件の臨界値を越えていて,光強度の極大値j2が半導体膜83の蒸発臨界値以下であることが望ましい。これら極小値並びに極大値であるj1並びにj2の値は,主に半導体膜83のレーザ光に対する吸収係数と膜厚によって決定される。
【0055】
上記レーザ光85によるレーザ照射によって,半導体膜83の照射領域は、レーザ光照射が遮断されたとき、溶融領域は降温する。この降温特性は、図2の光強度分布に応じて降温するが、第1の光吸収層84の蓄熱機能により、降温速度が大きく緩和され、極小値J1位置から極大値J2方向に横方向の結晶成長が行われる。この結果、図7(b)に示すように、半導体膜83の照射領域は結晶化され多結晶半導体膜87に変換される。この多結晶半導体膜87の表面形態は,主勾配方向86,86aに沿って横方向に結晶化されている。この段階で、第1の光吸収層84をエッチングにより除去して走査電子顕微鏡法と電子後方散乱法によって半導体膜83の表面を観察し、解析すると,個々の結晶粒は,レーザ光強度の低い位置(極小値J1)から結晶成長が始まり,主勾配方向86,86aに沿って結晶成長したことが判る。個々の結晶粒は一つの結晶核から成長していると推定され,小粒径結晶粒と,短冊形状結晶粒と,Δ形状結晶粒とが形成されている。この中で,最も横方向成長距離が長いものはΔ形状結晶粒である。電子線後方散乱法で個々の結晶粒の結晶方位を解析すると,Δ形状結晶粒の成長方向(即ち、主勾配方向86,86a)の面方位は(100)となっている。また、このΔ形状結晶粒の成長距離は,少なくとも2μm以上になっており,本実施の形態では,5μmである。一方,小粒径結晶粒,短冊形状結晶粒の主勾配方向の結晶面方位は,(111)または,(110)面になっている。
【0056】
次に、図7(c)に示すように,第1の光吸収層84をエッチングしない状態で、第2の光吸収層である高融点の金属層もしくは金属窒化物層80(例えば、Mo,Ti,TiN,MoW,W,Ta,TaN、Cu等)を第1の光吸収層84の上に全面に渡って形成する。次に、結晶化された領域を少なくとも一部含む半導体膜83に連続発振YAGレーザ光88をスキャン照射する。即ち、図7(d)に示すように,連続発振YAGレーザ光により第2の光吸収層である高融点金属層もしくは金属窒化物層の加熱を介して半導体膜83、より詳しくは多結晶半導体膜87を再加熱する。この再加熱温度は、照射領域の少なくとも一部が溶融する温度である。この結果、連続発振YAGレーザ光のスキャン後(レーザ光通過後)の降温過程で照射領域が結晶化される。例えば連続発振YAGレーザ光加熱前は図1(a)で示したように小粒径結晶粒55,短冊形状結晶粒53,Δ形状結晶粒54が形成され、上記連続発振YAGレーザ光による加熱照射により,半導体膜83の結晶化された領域87の照射された領域は,図1(b)と同様に、図7(e)に示すように、結晶粒54bの大きい半導体領域89に変換される。この時、第2の光吸収層である高融点の金属層もしくは金属窒化物層を介して加熱する方が直接半導体膜を加熱するよりも半導体膜全体を均一に加熱することが可能である。
【0057】
この結晶粒54bの表面形状(結晶化された半導体領域89を上方から見たときの形状、即ち、水平面内の形状)は、ほぼ四角形(矩形)であり,また、光強度分布の主勾配方向86,86aの結晶粒の面方位は、(100)である。なお,この半導体領域89の結晶化された領域の結晶性は、単結晶になっている。図1(b)では,前述したように、図1(a)で観察された小粒径結晶粒,短冊形状結晶粒,Δ形状結晶粒はほとんど存在しない。これは,レーザ照射で形成されたΔ形状結晶粒54は,連続発振YAGレーザ光照射では完全には溶融せず,表面のみが活性化及び一部溶融する一方、小粒径結晶粒55,短冊形状結晶粒53は,完全に再溶融するからである。これは、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの融点の違いが関与しているものと考えられる。このため,Δ形状結晶粒54を種結晶として、結晶方位(100)を維持しながら結晶化が更に進んだものと考えられる。主勾配方向に(111)面または(110)面を有していた小粒径結晶粒55と短冊形状結晶粒53は消滅して、(100)面に配向した結晶粒に変換されている。
【0058】
以上の説明で判るように,本実施の形態の方法で形成された半導体領域89の結晶粒の半導体基板81のオリフラに沿った方向の面方位は(100)面となっている。
【0059】
従って,本実施の形態の方法によって,半導体基板上に、断面の一方向に(100)面方位を有し、ほぼ四角形状の結晶粒により構成された単結晶化領域アレイを形成することができる。以上説明した方法では、図面上では、半導体膜83の一部を単結晶化しているように見えるが上記処理を繰り返すことにより、半導体膜83全体を単結晶化することもできる。
【0060】
第2の実施の形態
絶縁材料基板上に面方位の揃った四角形状の結晶化領域アレイを有する半導体装置の製造方法に関する実施の形態を図6(b)並びに図8を主に参照して説明する。
【0061】
まず、図6(b)に示すような辺74,ノッチ75,またはマーキング76(基板の表面でも裏面でもよい)を有する絶縁材料基板91(例えば,石英ガラス,ソーダガラス,ホウケイ酸ガラス,鉛ガラス,フッ化物ガラス,サファイア,プラスチック,ポリイミド,など)を用意する(図8(a))。この絶縁材料基板91の上に、絶縁層92(例えば、膜厚500nm)を形成する。この絶縁層92は、例えば、CVD(例えば,プラズマ化学気相成長法や低圧化学気相成長法など)やスパッタ法を用いて形成されたSiO2膜である。代わって、この絶縁層92は,例えばSiNやSiO2などの異種の材料により、積層構造にしたものでもよい。またSOG、もしくはSOGとSiO2膜、SiN膜との積層膜でもよい。絶縁層92これは基板からの汚染防止、拡散防止と共に、その断熱性による蓄熱効果にて、レーザまたはフラッシュランプによる加熱後、ゆっくりと冷却されるため、より大きな結晶成長を得ることができる。絶縁層92は、絶縁材料基板91の全面,または,パターニングによって絶縁材料基板表面の部分領域に形成してもよい。ここでは,絶縁材料基板91の全面に形成している。次に、絶縁層92の上に、非晶質または多結晶構造の半導体膜93(例えば,膜厚30ないし200nm程度のSi膜など)をCVD法(例えば,プラズマ化学気相成長法や低圧化学気相成長法など)やスパッタ法を用いて成膜する。この半導体膜93は絶縁層92の全面,または,パターニングによって絶縁層の部分領域に形成してもよい。ここでは,絶縁層92の全面に形成している。
【0062】
そして、図8(a)に示すように、半導体膜93の表面全面に第1の光吸収層94(例えば,SiO2,SiOx,SiON,SiN、SOGまたは、これらの積層構造膜)を約260nmの厚さに成膜する。第1の光吸収層94の効果としては、外部からの汚染防止、パーティクル汚染防止と共に、その断熱性による蓄熱効果にて、レーザまたはフラッシュランプによる加熱後、ゆっくりと冷却されるため、より大きな結晶成長を得ることができる。前記絶縁層92および半導体膜93がパターニングされた場合においては,基板全面に保護膜を形成してもよい。この後の工程は、前記第1の実施の形態と実質的に同じであり,簡単に記述する。
【0063】
次に、図8(b)に示すように、第1の光吸収層94の表面に、前述したような光強度分布を有するエキシマパルスレーザ光95で、レーザ照射を行う。このレーザ照射における光強度の主勾配方向96,96aは,絶縁材料基板91に示された方位表示指標(74,75もしくは76)を基準にして設定している。この実施の形態では、主勾配方向96,96aと,方位表示指標が示す方向とを一致させている。このレーザ照射によって、半導体膜93の照射領域は、結晶化半導体膜97に変換される。
【0064】
次に、図8(c)に示すように、保護膜94の表面に、第2の光吸収層として高融点の金属層90(例えば、Mo,Ti,TiN,MoW,W,Ta,TaN、Cu等)を保護膜84の上に全面に渡って形成する。次に、図8(d)に示すように、結晶化された領域を少なくとも一部含む半導体膜83の上層に形成された高融点の金属層にフラッシュランプ光98を照射することによりフラッシュランプによる加熱照射を行う。この結果、図8(d)に示すように、前記結晶化半導体膜97は、単結晶化半導体膜99となる。この結晶化半導体膜97の結晶粒の表面形態は、四角形状であり、また、絶縁材料基板91の基準に沿った方向の面方位は(100)面となっている。従って,本実施の形態の方法によれば,絶縁材料基板の断面の一方向に(100)面方位を有する四角形状の単結晶化領域アレイを形成できる。
【0065】
第3の実施の形態
半導体膜の結晶化方法を実施するための結晶化装置の一例を、図9(a)ないし図9(c)を参照して説明する。これら例では,光源としてエキシマレーザ101(例えば,XeCl,KrF,ArFなど)を用いているが、必ずしもこれらに限定されることはない。
【0066】
図9(a)に示すように、パルスレーザ光102aを出射するエキシマレーザ101の出射側には、レーザ光102aのエネルギー密度 (極小値J1、極大値J2)を制御するためのアッテネータ103と,レーザ光の強度を均一化するホモジナイズ光学系104とが順次配設されている。尚、符号100aで示す位置は,ホモジナイズ光学系104の結像面(焦点面)である。このホモジナイズ光学系104の出射側には、90度反射鏡を介して、ホモジナイズ光学系の焦点面100aを等倍もしくは縮小する投影レンズ(結像レンズ)105が配置されている。そして、この投影レンズ105の結像面100b(フォーカス位置)には第1の位相シフタ106aが、また,焦点位置からはずれた位置(デフォーカス位置)には第2の位相シフタ107aが、夫々配置されている。ここで,第2の位相シフタ107aは、複数枚の位相シフタ、例えば、位相シフト方向が互いに直交した2つの位相シフタで構成されてもよい。図2に示されているレーザ光強度分布61おいて、第1の位相シフタ106aは、急峻なボトムを形成するためのものであり、第2の位相シフタ107aは、横方向の結晶成長に必要な勾配を形成するためのものである。即ち、図に示されているレーザ光強度分布61において、極小光強度点42a部のレーザ光強度分布が急峻なボトムの形状は、第1の位相シフタ106aによって形成される。レーザ光強度分布61おいて、極小光強度点42a部から最大のレーザ光強度分布となる形状は、横方向の結晶成長に必要な勾配であって、第2の位相シフタ107aによって形成される。
【0067】
前記第1並びに第2の位相シフタ106a,107aは,光軸上に、図示しないホルダによって固定されている。このホルダは,光軸に沿った方向と、それに垂直な方向とに移動させる機構と,2軸の回転機構とを有するゴニオメータのような駆動機構DMに組み込まれている。
【0068】
このように2つの位相シフタ106a、107aを用いることにより、両軸方向に極小となる点である極小光強度点42aを作り出すことができるが、位相シフタを1枚のみ使用し直線上に極小部を持つ極小光強度線を用いても、その線上の照射部分が結晶粒の起点となり、同様なΔ形状結晶粒54を有する結晶粒の成長が可能であることが発明者らによって確認されており、必ずしも2枚の位相シフタは必要としない。
【0069】
前記第2の位相シフタ107aの出射側には、ステージ109の上に載置された試料108が位置されている。このステージ109は、X方向並びにY方向に移動可能であり、試料108を第2の位相シフタ107aに対して相対的に水平方向にシフトさせることができる。
【0070】
上記レーザ照射された試料108は、別装置であるレーザ加熱装置もしくは図5を参照して説明したフラッシュランプ加熱装置にて、再加熱工程を経て再単結晶化される。
【0071】
レーザ加熱装置もしくはフラッシュランプ加熱装置に結続された真空排気装置(図示せず)にて真空排気された後、もしくはAr、N2等の不活性ガスを導入した後にレーザ加熱装置もしくはフラッシュランプ処理工程を行う。レーザ加熱装置については、照射エネルギー密度、スキャン速度、フラッシュランプ加熱については、装置所望のフラッシュランプ点灯条件にすべく電圧、電流密度、ガス圧力等を最適に調整し、一回もしくは複数回のフラッシュの照射処理が試料108に対して行われる。
【0072】
上記記載の、レーザ加熱装置もしくはフラッシュランプ加熱装置は、レーザ照射装置とは別装置であるが、高融点金属もしくは金属窒化物の成膜装置も含めてレーザ照射装置と接続されたマルチチャンバーの一形態を有するクラスター化されたものであっても良い。その場合、大気からのコンタミネーションやパーティクルによる汚染を低減することができる。
【0073】
上記構成のレーザ照射装置における結晶化装置の作用を以下に説明する。
エキシマレーザ101から出射したパルスレーザ光102aは,アッテネータ103によりエネルギー密度が制御されて,ホモジナイズ光学系104に入り、ここで強度が均一化されたレーザ光102bとなって、反射鏡に入射される。ここで、レーザ光102bは、試料108方向へと90度偏向されて、投影レンズ105に入射される。この投影レンズ105は、入射レーザ光102bを第1並びに第2の位相シフタ106a,107aによって変調されたレーザ光102dとして試料表面に入射させる。尚、この試料108は、実際には、例えば、図7並びに図8に示す半導体膜83、93を有する積層膜基板で有り得る。
【0074】
前記第2の位相シフタ107aにより変調されて形成されたレーザ光強度分布(像)の特徴は,例えば,図2に示すレーザ光強度分布61のように,ミリメートルレベルの巨視的には均一強度であり,ミクロンレベルの微視的には強度変調されていることを特徴とする。このようなレーザ光強度分布61のレーザ光で,レーザ照射を行うと,結晶粒が位置制御された結晶化膜を形成することができる。
【0075】
尚、前記アッテネータ103によって,レーザ光のエネルギー密度を最適化してレーザ光102dを試料108の表面に照射すると、試料108の半導体膜はレーザ光102dを吸収することによって温度が上昇する。ここで,レーザ光102dの強度変調領域において,極小強度での半導体膜は,下地界面付近まで溶融状態になり,極大強度では,半導体膜が蒸発しない温度になっていることが望ましい。
【0076】
前記第1並びに第2の位相シフタ106a,107aは,透明な基板、例えば、合成石英板の一面に、互いに一定間隔を有する細長い矩形溝が形成されることによって段差を有する構造になっている。この段差の高さ(溝の深さ) Δtが出射レーザ光の位相差θに相当する。この位相差θは,θ=2πΔt(n-1)/λで与えられる。ここで,λは,レーザの波長,nは合成石英板の屈折率である。例えば,波長248nmのKrFエキシマレーザを用いた場合,屈折率は,1.508であり,段差Δtが244nmのとき位相差は180°となる。このような位相シフタは、溝が互いに直交するような配置関係で、図9(a)に示すように位置に設けられている。前記合成石英板の表面に段差を形成する方法として,例えば,反応性イオンエッチングを用いてエッチングする方法,集束イオンビーム法を用いて,直接加工する方法,合成石英基板の上に非晶質シリコン膜を成膜してパターニングしたものを熱酸化する方法がある。前記両位相シフタ106a,107aは、溝のデイメンシヨンも、ピッチP(位相シフト線間の間隔)も異なっていても、同じものでも良い。
【0077】
また,位相シフタには,表面段差に加えて,光吸収によって光強度分布を形成する効果を付加してもよい。このためには、例えば、合成石英板の一面に光吸収膜(たとえば,SiN,SiON,Geなどの膜)を成膜してパターニングする。このような位相シフタを使用することにより、光吸収膜の吸収係数と膜厚によって光強度分布が変化する。この方法は,光強度振動を抑制したい位相シフタの領域に形成する場合によい。
【0078】
また,位相シフタの表面上にマイクロレンズを形成して,光強度分布を形成する効果を付加してもよい。
【0079】
前記第1の位相シフタ106aと第2の位相シフタ107aとは、隅部に設けられた4つのスペーサを挟んで取着することにより、一体的な構造としてもよい。また、位相シフタ間に塵埃等が入るのを防止することもできるように、4つのスペーサの代わりに、枠形のシールドスペーサを4辺間に設けても良い。代わって,第1の位相シフタと第2の位相シフタとは、1枚の合成石英基板(共通透明基板)に一体的に形成された位相シフタとしても良く、この場合には、一面に第1の位相シフタの溝、即ち、段差が形成され、他面に第2の位相シフタの溝、即ち、段差が形成されている。さらに、第1の位相シフタと第2の位相シフタは、光路における設置位置を入れ換えてもよい。
【0080】
上述したような第1並びに第2の位相シフタ106a,107aによって得られる光強度分布は,透明基板(合成石英基板)の表面段差の幾何学的構造と入射光の角度や光の空間的可干渉性によって決定される。要求する光強度によっては,第2の位相シフタ107aだけでよい場合もある。
【0081】
前記図9(a)に示す装置において,試料108表面の位置を,投影レンズ105の焦点面に配置し、例えば、ホモジナイズ光学系104の焦点面100aに位相シフタ106aを配置しても良い。この場合には,第3の実施の形態に比べて光強度分布設計の多様化に制限が生じるが,均一性が向上する効果がある。
【0082】
図9(b)に示す装置では,ホモジナイズ光学系104の焦点面100aに第1の位相シフタ106aが配置され,結像レンズ105の焦点位置に試料108の表面が位置されている。第2の位相シフタ107aは、結像レンズ105の焦点はずれの位置に配置されている。この場合,前記第4の実施の形態に比べ光強度分布設計の多様性が向上するが,第1の位相シフタ106aの強度変調は投影レンズの分解能の制限を受ける。
【0083】
図9(c)に示す装置では、ホモジナイズ光学系104の焦点面100aに第1の位相シフタ106aが配置され,また、ホモジナイズ光学系104の焦点はずれの位置に、第2の位相シフタ107aが配置されている。試料108の表面は,投影レンズ105の焦点面に配置されている。このような構成の装置では,試料表面付近に位相シフタが存在しないため,ステージ109周辺の自由度が増す。しかし,光強度分布は,投影レンズの分解能の制限を受ける欠点がある。
【0084】
上記実施形態では、レーザ光による結晶化工程で、光変調素子として位相シフタを使用して説明したが、入射レーザ光を極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光に光変調できる光変調素子であればどのようなものでも良い。
【0085】
また、上記実施形態では、レーザ光による結晶化工程の際に用いた保護層の上に高融点金属層を形成してフラッシュランプによる加熱を行ったが、結晶化された半導体膜領域上の保護層を除去した後に、半導体膜をパターニングしてその上にゲート絶縁膜及び高融点のゲート電極層を形成し、フラッシュランプによる加熱を行い結晶化された半導体膜領域の再加熱を行うようにしてもよい。
【0086】
以下、図10及び図11を参照して上記結晶化法により形成された結晶粒へのTFT200、走査配線、及び信号配線の形成方法について説明する。
【0087】
まず、被処理基板201を用意する。この実施形態では、被処理基板201として透明基体202上に下地絶縁層203が形成された基板を用いている。この被処理基板201(下地絶縁層203)上の略全面に層厚が30nm〜200nm例えば40nmとなるようにアモルファスシリコン層204と第1の光吸収層であるSiOx層204aを形成する。その後、温度550℃の雰囲気中でアニール処理を施し、このアモルファスシリコン層204中の水素を離脱させる(図10(A))。
【0088】
次に、例えばELA(Excimer Laser Anneal)法により、このアモルファスシリコン層204の照射領域を結晶化させて結晶化領域205例えばポリシリコン層とする。さらに、この上に第2の光吸収層例えばMo層を形成して、これをレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を再加熱する。次ぎに、第2の光吸収層及び第1の光吸収層を除去したの後に、PEP(Photo Engraving Process、いわゆるフォトリソグラフィー)によりポリシリコン層の予め定められたTFT形成領域の結晶化領域205上に所定の形状のレジストマスクを形成する。そして、ドライエッチング法により結晶化領域205をTFTの形成のための島形状に加工する。その後、PE−CVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を用いて、島形状に加工された結晶化領域205及び露出した下地絶縁層203を覆うようにゲート絶縁膜207を形成する(図10(B))。
【0089】
次に、ゲート絶縁膜207上に、ゲート電極層208及びこのゲート電極層208と一体に設けられる走査配線を形成する。ゲート電極層208は、島形状の結晶化領域205に図10(C)に示すように形成する。なお、図10及び図11では走査配線は示されていないが、走査配線はゲート電極層208の奥側から手前側(図10及び図11に紙面の手前側から奥側)に延びている。
【0090】
ゲート電極層208及び走査配線20は、例えば、モリブデンタングステン(MoW)により形成することができる。
【0091】
次に、ゲート電極層208をマスクとし、島形状の結晶化領域205の予め定められたソース領域211及びドレイン領域212となる領域に不純物イオン(リンもしくはボロン等)を注入する。結晶化領域205へのソース領域211及びドレイン領域212の形成は、結晶成長方向に沿ってTFTの正孔および電子が移動するように設けることが最大の移動度特性を得ることができる。これにより、島形状の結晶化領域205には、チャネル領域213を介在して、ソース領域211、及びドレイン領域212が離隔して形成される(図10(D))。
【0092】
次に、ゲート電極層208及びゲート絶縁膜207を覆うように層間絶縁層214を形成する。そして、ソース領域211の少なくとも一部を露出させるため、ゲート絶縁膜207に第1のコンタクトホール207aを形成するとともに、層間絶縁層214に第3のコンタクトホール215を形成する。ドレイン領域212の少なくとも一部を露出させるため、ゲート絶縁膜207に第2のコンタクトホール208bを形成するとともに、層間絶縁層214に第4のコンタクトホール216を形成する(図11(A))。
【0093】
次に、例えばコバルト(Co)からなる金属層217をソース領域211及びドレイン領域212と接触するように結晶化領域205上に設ける。この金属層217は、例えば、コンタクトホール207a,208b,215,216から露出する結晶化領域205の上面(ソース領域211の一部及びドレイン領域212の一部)と、コンタクトホール207a,208b,215,216(ゲート絶縁膜207及び層間絶縁層214の側壁)と、層間絶縁層214の上壁とを覆うように形成する。なお、この金属層217は、例えば、層厚が2nm〜10nm程度となるように形成するとよい。
【0094】
次に、この金属層217を、シラン系ガス(例えば、モノシラン(SiH4)ガスやジシラン(Si2H6)ガス等)又はシラン系ガスを含む混合ガスを用いてシリサイド化する。本実施形態では、例えば、モノシランガスの分圧が20Paとなるようにモノシランガスを水素ガスで希釈したガスを用い、200℃〜400℃程度の温度下で金属層217をシリサイド化している(図11(B))。
【0095】
前記温度範囲において、シラン系ガスは層間絶縁層214等とは殆ど反応しない
。これに対し、金属層217をなすコバルトやニッケルが触媒的な効果を奏することから、金属層217では選択的にシリサイド化が進行する。また、この時、シラン系ガスによって金属層217の表面に形成されている酸化層が還元されるため、金属層217のシリサイド化は表面から厚さ方向(内部方向)に進行する。したがって、金属層217は、低抵抗なCoSi2層(コバルトシリサイド層)となる。このようにして結晶化シリコン層205のシリサイド層を形成すると、結晶化シリコン層205の上に金属層を形成して加熱処理することによりシリサイド層を形成する方法と比べて、結晶化シリコン層205が薄くても形成が可能であり、結晶化シリコン層205のシリコンの消耗も少ない。
【0096】
なお、200℃程度でも金属層217のシリサイド化は進行するが、温度が高い
程反応が促進される(反応速度が速くなる)ため、300℃〜400℃程度とすると処理時間を短縮できる。また、CoSi2層の最表面には酸化シリコン層が形成され易い。このため、次工程に進む前の前処理として、前記酸化シリコン層を除去するのが望ましい。
【0097】
次に、前記ソース領域211及びドレイン領域212に注入された不純物の活性化アニールを行う。活性化アニールはイオン注入後に行ってもよいが、被処理基板
201上にアイランド(島)状に形成された結晶化領域205をフラッシュランプやレーザ光を用いた急速アニール法で熱処理する場合、光を吸収する結晶化領域205のパターンの粗密等により均一な熱処理が難しい。被処理基板201の全面(コンタクトホール207a,208b,215,216を構成するゲート絶縁膜207及び層間絶縁層214の側壁と、層間絶縁層214の上壁)を覆うようにシリサイド層(CoSi2層)が形成されている状態で活性化アニールすることは、均一な熱処理が達成できる点で望ましい。次に、ソース電極218及びドレイン電極219となる電極層形成し、ソース電極218及びドレイン電極219となるようにエッチング加工する。この際に、上記シリサイド層は同時にエッチングする。このようにして図11(c)に示すような薄膜トランジスタ(TFT)220を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明方法を説明するために結晶化された状態を示す図であり(a)は、位相変調エキシマレーザ光照射後の膜表面の走査電子顕微鏡写真を図式化して示す図、(b)は、フラッシュランプ光照射の結晶化膜表面の走査電子顕微鏡写真を図式化して示す図である。
【図2】本発明方法を説明するための結晶化装置の光源系を説明するためのもので、三角形状逆ピークパターンの光強度分布を有するレーザ照射を概略的に示す斜視図、
【図3】(a)並びに(b)は、夫々異なる本発明の基本となる半導体装置の製造方法のフローチャートを示す図である。
【図4】図3の工程AとBのレーザ光源から光路に従って試料までの光学系の実施例を説明するための図である。
【図5】図3の工程Cのフラッシュランプ加熱装置の一例を示す概略図である。
【図6】(a)は、方位表示指標が形成された円形の基板の3つの例を示す平面図であり、(b)は、方位表示指標が形成された矩形の基板の3つの例を示す平面図である。
【図7】本発明の結晶化方法の第1の実施の形態を工程順ごとに説明するための断面図である。
【図8】図7の他の実施の形態の方法を工程順ごとに説明するための断面図である。
【図9】(a)ないし(c)は、本発明の半導体装置の製造方法に使用され得る、夫々異なる位相変調エキシマレーザ結晶化装置の概略図である。
【図10】図7、8によって結晶化された領域にTFTを形成する工程を工程順に説明するための図でゲート電極形成工程までを説明するための断面図である。
【図11】図10のゲート電極形成工程後からソース・ドレイン電極形成工程までの工程を工程順に説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0099】
53…短冊形状結晶粒,54…Δ形状結晶粒、55…小粒径結晶粒、
61…レーザ光強度分布、80、90…第2の光吸収層、83、93…半導体膜、84、94…第1の光吸収層、85、95…エキシマパルスレーザ光、87…多結晶半導体膜、88…連続発振YAGレーザ光、98…フラッシュランプ光、106a、107a…位相シフタ、108…試料。
【技術分野】
【0001】
本発明は,レーザ光を非単結晶半導体膜に照射して、これの結晶化領域を結晶化する、半導体装置の製造方法並びにこの方法により形成された薄膜トランジスタに関する。
【0002】
一般的には単結晶でも原子列の乱れ(転位など)が存在しており、“単結晶”と“単結晶に近い結晶”とは、区別が困難なので、本明細書では、“単結晶に近い結晶”も、“単結晶”として説明されている。
【背景技術】
【0003】
絶縁材料基板,または絶縁膜上に単結晶シリコンを形成するSOI(Silicon On Insulator)技術は,ULSI(Ultra large-Scale Integrated circuit)の高集積化,低消費電力並びに/もしくは高速化を実現する技術として知られている。この技術のプロセスは,(1)単結晶半導体ウエハ、例えば、シリコンウエハの表面下部領域に絶縁膜を形成する方法と,(2)絶縁材料基板もしくは絶縁膜の上に形成した非晶質または多結晶半導体膜を、例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンの膜に結晶化または再結晶化する方法とに分類される。いずれの方法においても,シリコンの結晶性を高めることは極めて重要であり,トランジスタを形成する領域が単結晶であること,さらに,結晶面方位が揃っていて,特に表面が(001)面,電流の流れる方向の結晶方位が(100)面であることが望ましい。このため,単結晶シリコンウエハを用いるSIMOXや貼り合わせ基板のような(1)の方法が実用化されている。
【0004】
一方,(2)の方法は,今日のシリコンULSI技術では採用されていないが,基板上に非晶質または多結晶半導体膜を形成する技術は、高温を必要としないので、基板材料に制限がなく、このために、この方法でシリコン単結晶などの高品質の半導体膜を形成できれば,さまざまな電子素子や電子装置の応用が可能である。このために、この(2)の方法の改良が強く望まれている。
【0005】
1980年代に,面方位の揃った単結晶シリコン膜を形成することを目的とした多くの研究が行われた。その中で高周波誘導加熱を用いたゾーンメルティング法は、重要な技術であり,表面の結晶方位が(001)面を有する単結晶シリコン矩形領域を形成することができる技術として知られている。この技術の詳細は,非特許文献1に記載されているが、以下に簡単に説明する。
【0006】
まず、石英基板上に常圧化学気相成長法を用いて多結晶Si膜を堆積し,この膜を,直線状に並んだ多数の矩形領域と、これら矩形領域を互いに連結した細線(ネック部という。長さL、幅Wを有する)とを有するように、にパターニングする。次に、細長い高周波誘導加熱ヒータを石英基板の下側に位置させて、上記直線状に並んだ矩形領域を、順次、帯状に1412℃以上に加熱して、この加熱ヒータに対応した個所の多結晶シリコンを溶融させて、帯状のシリコン溶融領域を形成する。次に、この加熱ヒータを上記線状と同一方向に移動させることにより、単結晶シリコンを順次溶融させて矩形領域全体を溶融させて単結晶化させる。この結果、矩形領域のうち、加熱ヒータが通過した部分は、既に単結晶化され、通過していない部分は、結晶化されていない。ここで,ネック部の寸法(長さLと幅W)を変化させると,局部的に熱流が変化し,熱流に依存して結晶方位が変化する。このために、この技術では、長さLと幅Wとを最適化すると(001)面の方位を有する結晶化矩形領域を形成することができる。
【0007】
一般に,ガラスやプラスチックの基板上に結晶化シリコン膜を形成する技術は,液晶ディスプレイなどの駆動素子に用いられている膜トランジスタの高性能化技術に応用されている。例えば,膜トランジスタの半導体層を非晶質構造から多結晶構造に変化させると、トランジスタの電子もしくは正孔の移動度が100倍以上になる。
【0008】
但し,この技術での結晶化には基板における熱損傷に注意しなければならない(例えば、一般のガラス基板では600℃以下,プラスチックでは150℃以下にしなければならない)。上記高周波誘導加熱を用いたゾーンメルティング法は、基板を高温にしてしまうため、上記材料で基板が形成されている液晶ディスプレイの分野には適用できず、このため、基板は、熱に強い材料、例えば、石英で形成しなければならない。
【0009】
上記問題点を解決するために、基板に熱損傷を与えずに非晶質シリコン膜を結晶化する方法として,エキシマレーザ結晶化法が開発されている。この技術は,エキシマレーザ光をホモジナイズ光学系により光照射断面の強度を均一にし,細長い矩形の開口を有する金属マスクを通して矩形状に整形(例えば断面形状は,150mm×200μm)して出射させている。この出射されたレーザ光で、ガラス基板上に堆積した非晶質シリコン膜の表面を上記矩形上に整形されたレーザ光の矩形の長軸方向と直角方向に走査して、短軸方向に10μm間隔でレーザ照射している。このレーザ光を吸収したシリコン膜は溶融シリコンを経た後,多結晶シリコンに変換される。この技術では,一般のガラスやプラスチック基板を用いたとしても基板に熱損傷は生じない。なぜなら,エキシマレーザ光は20ns程度のパルスレーザであり,結晶化は50ないし100ns程度で完了するので、基板が高温に加熱されないからである。この技術で形成される結晶粒径は、レーザエネルギー密度に依存しており,粒径0.1ないし1μm程度の結晶粒からなる多結晶膜を形成することができる。面方位に関しては,1回のレーザ照射で形成された結晶粒は配向しないが,数百回程度の多数回繰り返しレーザ照射を行うことにより,表面方位が(001)面や(111)面に配向する報告がある。前者は、例えば,非特許文献2に記載され、また、後者は、非特許文献3に記載されている。
【0010】
また,上記エキシマレーザアニールを発展させた技術として,SLS方式(Sequential Lateral Solidification)と呼ばれている技術が知られている。このような技術は、例えば、特許文献1に開示されている。この技術では、ホモジナイズ光学系によって光強度が均一化されたエキシマレーザ光を2μm幅程度の金属細隙を設けたマスクを通すことにより断面を長方形状に整形している。この細隙を通ったレーザ光のフルエンス(エネルギー密度)は,非晶質シリコン膜が厚さ方向に全溶融した溶融シリコンになるように設定されている。この結果、細隙の外側の領域から内側に向かって横方向成長が起こり,結晶化シリコンが形成される。次に試料を2μmだけ左方向に移動させて、レーザ照射する。この結果、前記溶融シリコンは、前照射によって形成された結晶化シリコンの右端部を種結晶として横方向成長する。この技術では、このようなレーザ照射と試料移動のプロセスを繰り返すことによって大粒径の多結晶シリコン膜を形成することができる。この場合に、前記マスクの平面形状を市松状にして,繰り返しレーザ照射を行うと処理時間が向上し,また結晶化の重なり領域が良好になり,基板面で均一な横方向成長多結晶膜を形成できる。
【0011】
上記エキシマレーザ結晶化法をさらに発展させた方法として,位相変調エキシマレーザ結晶化法が知られている。この方法の特徴は,エキシマレーザ光を、位相シフタ(例えば,石英板に段差加工を行ったもの)と呼ばれる光学変調部品を通すことによって、レーザ光強度分布を、極小光強度部を有する光強度分布となるように光変調させている。このように変調されたレーザ光で,非晶質シリコン膜に一回の照射を行って、照射領域を結晶化している。
【0012】
この方法は、上記エキシマレーザ結晶化法やSLS方式とは異なり、均一光強度分布を使用せず、また多数回レーザ照射を行う必要もない。この方法では、光変調された光強度分布により、レーザ照射された膜内には傾斜した温度分布が生じ、エネルギーの小さい所に結晶核が形成されるために、結晶核の位置を正確に定めることができる。そして、この結晶核をもとにした横方向成長により大粒径の結晶粒を得ることができる。この方法により,大粒径の結晶粒が形成され、しかも結晶粒の位置を制御することができる。この技術の詳細は,非特許文献4に記載されている。
【特許文献1】特願平9−542270
【非特許文献1】電子通信学会論文誌1986/9vol.J69-C No.9 p.1089-1095.”電子通信学会論文誌1986/9vol.J69-C No.9 p.1089-1095
【非特許文献2】Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 42 (2003) p.L135-L.137
【非特許文献3】Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 30(1991) p.3700-3703
【非特許文献4】表面科学 Vol.21,No.5,pp.278-287,2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、基板材料に係らず絶縁層の上に面方位の揃った単結晶領域を形成する技術において,上記4種類の形式の従来技術には夫々以下に述べる課題がある。
【0014】
高周波誘導加熱を用いたゾーンメルティング法に関しては,基板を部分的にシリコンの融点(1410℃)以上に加熱するため,通常のガラスや合成樹脂などの低融点材料の基板を使用する用途には用いることができない。
【0015】
また、結晶化膜を(001)面方位に配向させるためには,島状シリコンの連結部(ネック部)の形状を最適化する必要があり,後に形成するトランジスタおよび回路のレイアウトに制限が生じる。
【0016】
エキシマレーザ結晶化法に関しては,結晶粒内部の結晶性は単結晶にすることができるが,多数のトランジスタを形成した場合、チャネル領域に粒界が存在するため移動度が低下し,トランジスタ間の性能(閾値電圧,サブシュレッド係数,移動度)のばらつきが生じる。また、結晶粒を大きくするためには,シリコン膜が全溶融になる臨界のレーザフルエンスに極限に近づける必要がある。しかしながら,レーザフルエンスが全溶融条件を超えるとシリコン膜は微結晶化するので、好ましくない。即ち,レーザフルエンスのばらつきに対する余裕度が狭い。そして、結晶粒サイズが最大で1から2μm程度であるため,ここに形成するトランジスのタサイズを小さくしなければならない制約が生ずる。このため、例えば,1 mx1 m程度のディスプレイ用大面積基板を用いた場合には極めて高度な微細加工技術が要求される。また、表面方位を(001)にするためには,レーザを200回以上((111)面にするためには10回程度)照射しなければならない。このため結晶化の処理時間が長くなる。また,結晶化膜の上面(一面)となる個々の結晶粒の表面の方位は(001)と一定にすることはできても、表面軸に対しては無秩序に回転した位置関係にあり,膜の断面の結晶方位は配向していない。即ち、結晶化膜の表面に直交する面を(001)方位とすることはできない。
【0017】
また、エキシマレーザ光の代わりにフラッシュランプ光のみを用いた結晶化法も試みられているが、上記エキシマレーザ結晶化法と同様に、結晶粒内部の結晶性は単結晶にすることができるが,多数のトランジスタを形成した場合、チャネル領域に粒界が存在するため移動度が低下し,トランジスタ間の性能(閾値電圧,サブシュレッド係数,移動度)のばらつきが生ずる。
【0018】
SLS方式に関しては,レーザ光の半分近くを金属マスクでシールドするため,レーザエネルギーを有効に利用することができない。このため結晶化の処理時間が長くなる。また、結晶粒の位置がばらついているため,上記エキシマレーザ結晶化と同様にトランジスタ間の性能のばらつきが生ずる。そして、結晶粒の面方位が一定でないため,トランジスタ間の性能のばらつきが生ずる。
【0019】
位相変調エキシマレーザ結晶化技術に関しては,大粒径の結晶粒が得られているが、さらに大粒径化して、一つの結晶粒に複数個のトランジスタを形成でき、回路レイアウトの制限が緩和されることが要求されている。
【0020】
本発明は上記の課題に基づいてなされたもので、その目的は、半導体膜を大粒径の結晶化が可能な半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
かくして、本発明の第1の態様に係わる半導体装置の製造方法は、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を前記非単結晶半導体膜上に設けられた第1の光吸収層を介して照射して前記結晶化領域を結晶化するレーザ照射工程と、
少なくとも結晶化された前記結晶化領域の上に形成された第2の前記光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を再加熱する加熱工程と、
を具備することを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の態様に係わる半導体膜の製造方法は、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を前記非単結晶半導体膜上に設けられた第1の光吸収層を介して照射して前記結晶化領域を結晶化するレーザ照射工程と、少なくとも結晶化された前記結晶化領域の上に形成された第2の前記光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を金属層を介して再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする。
【0023】
本発明の第3の態様に係わる半導体膜の製造方法は、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を照射してΔ形状の複数の主結晶粒と、これら主結晶粒の周りに複数の微小結晶粒とを形成するレーザ照射工程と、少なくとも前記結晶化領域の上に形成された金属層にレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより、前記Δ形状の主結晶粒が前記微小結晶粒を取り込んで前記結晶化領域の少なくとも一部を単結晶にする再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする。
【0024】
本発明の第4の態様に係わる半導体膜の結晶化方法は、試料の非単結晶半導体膜の結晶化領域に、この結晶化領域の少なくとも一部にエネルギー光のパルスレーザ光を照射して照射領域を溶融して結晶化するレーザ照射工程と、少なくとも前記パルスレーザ光に照射されて結晶化された領域の上に形成された金属層にレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより金属層を介して前記結晶化領域を再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記第1ないし第3の態様に係わる製造方法によれば、従来の欠点が改善され、結晶性の優れた半導体膜を有する半導体装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の半導体装置の製造方法の基本概念を、図1並びに2を参照して説明する。
本出願人は、まず始めに本願の基本思想を理解するために、本出願人が実験並びに判断した経緯並びに結果を説明する。光学変調素子として、石英基板表面に直線の段差加工した位相シフタを用い,光源からのレーザ光を最小光強度と最大光強度間が三角形状に変化するレーザ光強度分布に変調して、試料の未結晶化膜(この場合には、非晶質シリコン膜である。最終的に結晶化を所望する領域を結晶化領域と記載している)を照射させて大粒径の結晶化(この場合には、多結晶シリコン)を行う結晶化技術の工業化技術を開発している。
【0027】
この結晶化された膜の結晶粒の表面形態と個々の結晶粒の結晶学的方位を走査電子顕微鏡(SEM)法と電子後方散乱(EBSP)法を用いて測定した。この結果,図1(a)に示すように、結晶粒の形態は、小粒径結晶粒55と,短冊形状結晶粒53と,Δ形状結晶粒(主結晶粒)54との3種に分類できることが判った。ここで、Δ形状とは、レーザ光照射の極小光強度線又は極小光強度点を起点として結晶成長が横方向に進行した、次工程で結晶種に成るべき結晶粒を意味し、必ずしも完全な三角形状に成長したもののみを意味するものではなく、例えば多角形形状、一部に円弧部分を含んでいる形状もある。ここでは三角形状に近似した形状を有する場合が多く、理解し易いようにΔ形状とする。また、小粒径結晶粒55と短冊形状結晶粒53とは、Δ形状結晶粒54に比較してかなり小さく、また、1つのΔ形状結晶粒54の周りに複数形成されるので、この明細書では主結晶粒の周りに形成された複数の微結晶と称している。ここで本発明者が着目した点は、Δ形状結晶粒54の成長距離は長く,結晶成長方向の面方位が(100)面であり,結晶成長方向に対しての2つの垂直方向のうち膜の面内の垂直方向は(010)面または(011)面であるということである。そこで、線状の領域がレーザ光強度の極小になるような第1の位相変調エキシマレーザ光の照射を行い(極小光強度線による照射),それによって形成されたΔ形状結晶粒の底辺領域52を種結晶(結晶核)にして,第2の位相変調エキシマレーザ光の照射を行えば,面方位が揃いしかも結晶粒の形態が図1(b)に符号54bで示すように、Δ形状の主結晶粒が微小結晶粒を取り込んで方形状の単結晶を結晶化領域の少なくとも一部に形成することができる。即ち,第2位相変調エキシマレーザ光の照射は,線状の底辺領域が極小強度となるようにすればよいことが判った(極小光強度線による照射)。第2位相変調エキシマレーザ照射により,上記底辺領域の左右の領域は全溶融になるため結晶成長は,底辺領域の左右の方向に生ずる。この結果,少なくとも結晶成長方向の面方位は(001)面を有し,かつ四角形状の結晶粒が形成される。尚、図1は、結晶化膜を上方から見た場合の図である。さらに、位相シフタを使用して、ピッチPが一定の極小光強度線、もしくは極小光強度点、例えば、10μmの複数の極小光強度点(逆ピーク点)42aを有する図2に示すレーザ光強度分布61の第1の位相変調エキシマレーザ光で、非単結晶半導体膜60を照射する。次に、位相シフタと非単結晶半導体膜60とを相対的に例えばほぼP/2(約5μm)だけずらして位相シフタを透過した第2の位相変調エキシマレーザ光により上記非単結晶半導体膜60の照射を行えば,2次元に位置制御された結晶粒を形成することができる。ここで、ピッチPとは、後で説明するように、入射レーザ光の位相を180°(π)ずらせるために表面に形成された細長い溝と表面との間の段差、即ち、位相シフト線間、の間隔をいう。
【0028】
上記実験並びに測定から以下の結論が,導かれた。
表面形態が四角形状の結晶粒が一次元的に位置制御されていて少なくとも成長方向の面方位は(100)となる結晶化膜を製造するには,好ましくは、後で説明するような一次元の位相シフタを用いて,一次元のレーザ光強度分布を形成し,非晶質シリコン膜表面にレーザ光を照射して,一方向に成長した結晶粒を形成すればよい。
【0029】
従って、本発明では、このようなレーザ光による結晶化を、レーザ照射工程として、使用し、更に後で説明するように、レーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射するアニールによる加熱工程を付加することを基本としている。
【0030】
以下に本発明の基本となる半導体装置の製造方法の概念を図3並びに図4を参照して説明する。ここで、図3は、半導体装置の製造方法のフローチャートを示す図であり、また、図4は、本発明製造方法を実施するための装置のレーザ光源から光路に従って試料までの光学系を示す図である。
【0031】
本発明の一実施の形態の方法によれば、半導体装置に使用する領域を結晶化するための基本技術は、図3(a)と図3(b)とに示す2つの方法がある。図3(a)に示す方法では、レーザ照射工程、即ち、結晶化工程(工程A)で、非単結晶半導体膜の結晶化領域に、この領域の一面から光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を照射して前記結晶化領域を結晶化した後に、高融点金属膜形成工程(工程B)により上記領域の一面に第2の光吸収膜例えば金属膜もしくは金属窒化物、この例では、非単結晶半導体膜よりも高融点の金属膜もしくは金属窒化物を形成している。
【0032】
この高融点金属膜もしくは金属窒化物としては例えばチタン(Ti)、モリブデン(Mo)、モリブデンタングステン(MoW)、もしくはチタンナイトライド(TiN)が好適である。一方、図3(b)に示す方法では、高融点金属膜形成工程(工程B)により上記結晶化領域の一面に高融点金属膜を形成した後に、結晶化工程(工程A)で、この金属膜により覆われた結晶化領域を結晶化している。そして、この後に両方法とも、加熱工程、即ち、再結晶化工程(工程C)により、金属膜で覆われた前記結晶化された領域にレーザ光もしくはフラッシュランプ光を、連続的もしくはパルス状に照射してこの領域を再加熱することにより、さらなる結晶化を果たしている。
【0033】
再加熱温度は、照射領域の少なくとも一部の領域が溶融する温度である。フラッシュランプ光の照射時間は、例えば0.1〜10ms程度が最適である。
【0034】
上記第2の光吸収層は、上記レーザ光もしくはフラッシュランプ光の一部を吸収して蓄熱し、ゆっくりとした降温速度を生成している。このように再加熱工程は、第2の光吸収膜例えば金属層(高融点金属層)もしくは金属窒化物がレーザ光もしくはフラッシュランプ光の一部を吸収して温度上昇を生じ、その熱を非単結晶半導体膜に熱伝導させることで非単結晶半導体膜の再加熱を実現する。
【0035】
次に、図4を参照して上記方法のレーザ光による結晶化工程(工程A)を実施するための装置の一例を概略的に説明する。
【0036】
この結晶化装置4では、レーザ光源5からのレーザ光路にホモジナイザ6が設けられ、レーザ光源5から射出されたレーザ光の光強度が均一化される。この強度が均一化されたレーザ光は、光変調素子7に入射される。
【0037】
この光変調素子7は、図2で符号61で示されたような逆ピーク状の光強度分布を有するレーザ光に、光強度が均一化された入射レーザ光を変調する(尚、図2では、非結晶半導体膜60に入射する前からレーザ光は、逆ピーク状の光強度分布光を有するように示されているが、これに限らず非結晶半導体膜60の入射面(照射面)でこのような光強度分布光を有していれば良い)。そして、この光変調素子7により光変調されたレーザ光は、結像レンズ8に入射される。この結像レンズ8は、変調されたレーザ光を非単結晶半導体膜の照射面に結像させる。非晶質シリコン膜上には、レーザ光波長で光吸収性を有する第1の光吸収膜(光吸収性の絶縁膜)例えばSiOx膜、SiNx膜が形成される。この第1の光吸収膜は、パルス状結晶化用レーザ光が非晶質シリコン膜に入射し、当該照射領域を加熱し溶融するときの熱を蓄熱する。この第1の光吸収膜の蓄熱効果は、結晶化用レーザ光の入射が遮断されたとき降温過程において瞬時に降温するのを抑制する作用を有する。ゆっくり降温させることにより横方向の結晶化を促進させることができる。
【0038】
次に、レーザ光もしくはフラッシュランプ光のうちフラッシュランプ光による結晶化工程2(工程C)を説明する。本願発明者は、結晶化工程(工程A)で形成された単結晶を有する結晶化領域に対して均一な加熱を行うため、この結晶化領域の上面(照射面)に絶縁層を介して高融点の金属層もしくは金属窒化物からなる第2の光吸収層を形成し、この第2の光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射して結晶化領域をアニールすることにより、前記第2の光吸収層の下に位置する結晶化領域の再加熱を行った。この時、光反射の低減や蓄熱効果を高めるために金属層の上に絶縁層(例えば,SiO2,SiOx,SiON,SiN、SOGまたは、これらの積層構造膜)を形成しておいてレーザ光もしくはフラッシュランプ光による再結晶化工程(工程C)を行うようにしてもよい。
【0039】
再結晶化工程でのレーザ光によるアニールは、例えば、連続発振YAGレーザ光(第二高調波)を高速スキャンすることによって行うことが好ましいが、必ずしも、この方法に限定されることはない。この走査は、少なくとも一部に単結晶が形成された結晶化領域に対して、レーザ光を結晶化領域の面方向(X方向とY方向と)に二次元的に走査させるのが一般的である。この場合、エネルギー光として、連続発振レーザ光に限定されることはなく、パルスレーザ光を用いてもよい。
【0040】
この再結晶化工程(工程C)をフラッシュランプ光で行う場合には、例えば、図5に示すようなフラッシュランプ加熱装置110を用いて行う。この加熱装置110は、気密容器117内の下側に支持プレート116が設けられている。この支持プレート116に加熱手段を配置して予備加熱(例えば250〜550℃)を行うようにしてもよい。この支持プレート116の上には、試料(工程Aにより非結晶半導体膜の結晶化領域が結晶化され、結晶化領域が第2の光吸収層である金属層もしくは金属窒化物で覆われた基板)108が固定支持されている。そして、この試料108と対向するように、気密容器117内の上側には複数本の棒状のキセノンフラッシュランプ114とからなるフラッシュランプ光源が配設されている。
【0041】
キセノンフラッシュランプ114の上方には、上方に放射されたランプ光を試料108方向に反射させるために、リフレクタ115が配置されている。また、気密容器117の内側は、支持プレート116が設けられた下側室と、フラッシュランプ光源が設けられた上側室とに、紫外線から可視領域までの光に対する透過性を有する、例えば、石英で形成された透光板112により区分されている。
【0042】
キセノンフラッシュランプ114は、その内部にキセノンガスが封入されその両端にコンデンサーに接続された陽極及び陰極が配置されたガラス管であり、駆動電源回路のコンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に流れ、その時にジュール熱でキセノンガスが加熱されて光が放出される。このキセノンフラッシュランプにおいては、予め蓄えられた静電エネルギーが0.1ms乃至10msという短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。フラッシュランプのパルス幅としては、望ましく0.5〜2msのものを用いるとよい。
【0043】
前記キセノンフラッシュランプ114からのフラッシュランプ光は、透光板112を通過して試料108に照入射される。このフラッシュランプ光による照射は、フラッシュランプが制御性が良いので、通常1回で良い。即ち、同じ結晶化領域に複数回フラッシュランプ光を照射させる必要はない。このように1回の照射の方が、半導体膜の熱損傷を最低限にすることが出来、さらにスループットも向上した良好な結果を得ることができる。しかしこれに限られることはなく、結晶性を向上させるため同じ結晶化領域に複数回フラッシュランプ光を照射させてもよい。
【0044】
また、キセノンフラッシュランプの発光分光特性としては、電圧、電流密度、ガス圧、ランプ内径等を制御して金属膜の反射率が低下する紫外線から可視領域に強度の強いものを用いることが望ましい。具体的には本実験にて使用する際に紫外から可視光の領域に発光強度を得る条件範囲は電流密度3000A/cm2〜10000A/cm2であった。特に条件として電圧3.5kV、電流密度4200A/cm2、ガス圧力400torr(5.3x104Pa)のものを用いた。高電流密度にすることでプラズマ温度が上昇し短波長成分のエネルギー密度の比率が高くなるため望ましい。
【0045】
再加熱工程(工程C)のときの気密容器117内の雰囲気としては、真空中もしくは不活性ガスからなる雰囲気で行うことが望ましい。しかし、このような手法に本発明は限定されることはない。
【0046】
再加熱工程前(図1(a))と、再加熱工程後(図1(b))との結晶化膜表面は、前に図1を参照して説明した状態とほぼ同じであった。即ち、図1は、キセノンフラッシュランプ照射では,図1(a)に示すレーザ照射で形成された三角形状の結晶粒の底辺領域52が種結晶となり,同じくレーザ照射で形成された小粒径結晶粒55,短冊形状結晶粒53は再溶融し,種結晶からの結晶成長に取り込まれることを示している。
【0047】
従って,図1(b)に示すように、キセノンフラッシュランプ照射によって,表面形態が四角形状の結晶粒54bが形成されている。結晶化された結晶粒54bは比較的大きくて方形を示し、その結晶性は単結晶と変わらない良好な結晶性を有していた。図1(b)は四角形状内の結晶粒が融合した場合を示しているが、隣接する四角形状の結晶粒が融合することも生じることもあるが問題はない。このために、各結晶粒54b内に、必要に応じて複数の半導体素子、例えば、薄膜トランジスタを形成することができる。尚、結晶核(結晶種)を位置制御して形成するには位相変調したレーザ照射が必要であるが、結晶粒径の二次拡大には必ずしも空間的に変調されたレーザ光を用いる必要は無いため、レーザ光もしくはキセノンフラッシュランプ光による高融点金属層を介した一様な加熱方法の方が、均一性、制御性が高いという利点がある。レーザ光もしくはキセノンフラッシュランプ光の加熱時間は、短くて済むために、ガラス板等の下地基板への影響も考慮して半導体膜、例えば、シリコン膜の温度上昇を最適化しやすいという利点もある。
【0048】
以下に、上記基本概念に基づく技術思想と組み合わせて使用され得る種々の装置の形態を添付図面を参照して説明する。
【0049】
第1の実施の形態
図6(a)に示すようなオリエンテーションフラット71、ノッチ72、基板マーク73等の方位表示指標を有する半導体基板(例えばシリコンウエハ)(図7と同様に符号81で示されている)上に、面方位の揃った四角形状の結晶化領域アレイを有する半導体装置の製造方法に関する実施の形態を図6(a)並びに図7を主に参照して説明する。
【0050】
まず、試料108を用意する。試料108は、例えば図7(a)に示す構成である。即ち、半導体基板81を用意し、この半導体基板81の上に絶縁層82(例えば膜厚500nm)を形成する。この絶縁層82は、例えば、熱酸化または,CVD(例えば,プラズマ化学気相成長法や低圧化学気相成長法など)やスパッタ法を用いて成膜されたSiO2膜である。代わって、この絶縁層82は,例えば、SiN膜とSiO2膜との組合わせのような積層構造にしたものでもよい。またSOG(Spin On Glass)、もしくはSOGとSiN膜,SiO2膜との積層構造としても良い。この絶縁層82は基板からの汚染防止、拡散防止と共に、その断熱性による蓄熱効果にて、レーザもしくはフラッシュランプによる加熱工程後、半導体膜83の冷却がゆっくりなされるため、より大きな結晶成長を促進する働きも有している。絶縁層82は、半導体基板81上の全面に形成し、そのまま残しておいても,パターニングによって部分的に残しておいても良い。ここでは,半導体基板81の全面に設けられている場合について説明する。次に、前記絶縁層82の上に、即ち、半導体基板81の一面側に、非晶質または多結晶構造の半導体膜83(例えば,膜厚30ないし200nm程度のSi膜など)をCVD(例えば,プラズマ化学気相成長法や低圧化学気相成長法など)やスパッタ法を用いて、非単結晶半導体膜として成膜する。この半導体膜83は、絶縁層82の全面,または,パターニングによって絶縁層の部分領域に形成してもよい。ここでは,絶縁膜82の全面に形成されている。
【0051】
そして、半導体膜83の表面全面に、第1の光吸収層84(例えば,SiO2,SiON,SiN、SOGまたは、これらの積層構造膜)を膜厚40〜500nm、例えば約260nmで成膜する。これは外部からの汚染防止、パーティクル汚染防止と共に、その断熱性による蓄熱効果にて、レーザまたはフラッシュランプによる加熱後、ゆっくりと冷却されるため、より大きな結晶成長を得ることができる。前記絶縁層82および半導体膜83がパターニングされた場合においては,基板全面に保護膜を形成してもよい。
【0052】
次に、図7(b)に示すように、位相変調エキシマレーザ結晶化法を用いて,保護膜84の表面の予め定められた位置に位置合わせして、図2に示すようなレーザ光強度分布61を有するエキシマパルスレーザ光85を照射する。ここでは,位相変調エキシマレーザ結晶化法は,後で説明するレーザ結晶化装置を用いている。このようなレーザ光の照射は、図6(a)に示すような予め半導体ウエハに設けられた合わせマークに従って照射位置が設定される。
【0053】
前記レーザ照射は,1回のパルスレーザ光の照射で複数の逆ピークを有する光強度分布を使用しているが、図では簡単のために、3つの逆ピークの場合を示す。この光強度分布には、各逆ピーク点(極小光強度点)を中心として1対の,主勾配方向(光強度が極小光強度点からほぼ線形に強くなる光強度の方向)86並びに/もしくは86aが存在する。1対の主勾配方向86と86aとは、紙面内で互いに180°回転の関係である。主勾配方向86または86aと半導体基板81の方位表示指標の方向とが所定関係を有するように、半導体基板81と、光変調素子、例えば位相シフタとが予め設定されている。ここでは,主勾配方向86とオリエンテーションフラット71(図6(a))とが平行となるように設定されている。
【0054】
このレーザ照射において、レーザ光のエネルギー密度は,光強度の極小値j1が横方向成長条件の臨界値を越えていて,光強度の極大値j2が半導体膜83の蒸発臨界値以下であることが望ましい。これら極小値並びに極大値であるj1並びにj2の値は,主に半導体膜83のレーザ光に対する吸収係数と膜厚によって決定される。
【0055】
上記レーザ光85によるレーザ照射によって,半導体膜83の照射領域は、レーザ光照射が遮断されたとき、溶融領域は降温する。この降温特性は、図2の光強度分布に応じて降温するが、第1の光吸収層84の蓄熱機能により、降温速度が大きく緩和され、極小値J1位置から極大値J2方向に横方向の結晶成長が行われる。この結果、図7(b)に示すように、半導体膜83の照射領域は結晶化され多結晶半導体膜87に変換される。この多結晶半導体膜87の表面形態は,主勾配方向86,86aに沿って横方向に結晶化されている。この段階で、第1の光吸収層84をエッチングにより除去して走査電子顕微鏡法と電子後方散乱法によって半導体膜83の表面を観察し、解析すると,個々の結晶粒は,レーザ光強度の低い位置(極小値J1)から結晶成長が始まり,主勾配方向86,86aに沿って結晶成長したことが判る。個々の結晶粒は一つの結晶核から成長していると推定され,小粒径結晶粒と,短冊形状結晶粒と,Δ形状結晶粒とが形成されている。この中で,最も横方向成長距離が長いものはΔ形状結晶粒である。電子線後方散乱法で個々の結晶粒の結晶方位を解析すると,Δ形状結晶粒の成長方向(即ち、主勾配方向86,86a)の面方位は(100)となっている。また、このΔ形状結晶粒の成長距離は,少なくとも2μm以上になっており,本実施の形態では,5μmである。一方,小粒径結晶粒,短冊形状結晶粒の主勾配方向の結晶面方位は,(111)または,(110)面になっている。
【0056】
次に、図7(c)に示すように,第1の光吸収層84をエッチングしない状態で、第2の光吸収層である高融点の金属層もしくは金属窒化物層80(例えば、Mo,Ti,TiN,MoW,W,Ta,TaN、Cu等)を第1の光吸収層84の上に全面に渡って形成する。次に、結晶化された領域を少なくとも一部含む半導体膜83に連続発振YAGレーザ光88をスキャン照射する。即ち、図7(d)に示すように,連続発振YAGレーザ光により第2の光吸収層である高融点金属層もしくは金属窒化物層の加熱を介して半導体膜83、より詳しくは多結晶半導体膜87を再加熱する。この再加熱温度は、照射領域の少なくとも一部が溶融する温度である。この結果、連続発振YAGレーザ光のスキャン後(レーザ光通過後)の降温過程で照射領域が結晶化される。例えば連続発振YAGレーザ光加熱前は図1(a)で示したように小粒径結晶粒55,短冊形状結晶粒53,Δ形状結晶粒54が形成され、上記連続発振YAGレーザ光による加熱照射により,半導体膜83の結晶化された領域87の照射された領域は,図1(b)と同様に、図7(e)に示すように、結晶粒54bの大きい半導体領域89に変換される。この時、第2の光吸収層である高融点の金属層もしくは金属窒化物層を介して加熱する方が直接半導体膜を加熱するよりも半導体膜全体を均一に加熱することが可能である。
【0057】
この結晶粒54bの表面形状(結晶化された半導体領域89を上方から見たときの形状、即ち、水平面内の形状)は、ほぼ四角形(矩形)であり,また、光強度分布の主勾配方向86,86aの結晶粒の面方位は、(100)である。なお,この半導体領域89の結晶化された領域の結晶性は、単結晶になっている。図1(b)では,前述したように、図1(a)で観察された小粒径結晶粒,短冊形状結晶粒,Δ形状結晶粒はほとんど存在しない。これは,レーザ照射で形成されたΔ形状結晶粒54は,連続発振YAGレーザ光照射では完全には溶融せず,表面のみが活性化及び一部溶融する一方、小粒径結晶粒55,短冊形状結晶粒53は,完全に再溶融するからである。これは、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの融点の違いが関与しているものと考えられる。このため,Δ形状結晶粒54を種結晶として、結晶方位(100)を維持しながら結晶化が更に進んだものと考えられる。主勾配方向に(111)面または(110)面を有していた小粒径結晶粒55と短冊形状結晶粒53は消滅して、(100)面に配向した結晶粒に変換されている。
【0058】
以上の説明で判るように,本実施の形態の方法で形成された半導体領域89の結晶粒の半導体基板81のオリフラに沿った方向の面方位は(100)面となっている。
【0059】
従って,本実施の形態の方法によって,半導体基板上に、断面の一方向に(100)面方位を有し、ほぼ四角形状の結晶粒により構成された単結晶化領域アレイを形成することができる。以上説明した方法では、図面上では、半導体膜83の一部を単結晶化しているように見えるが上記処理を繰り返すことにより、半導体膜83全体を単結晶化することもできる。
【0060】
第2の実施の形態
絶縁材料基板上に面方位の揃った四角形状の結晶化領域アレイを有する半導体装置の製造方法に関する実施の形態を図6(b)並びに図8を主に参照して説明する。
【0061】
まず、図6(b)に示すような辺74,ノッチ75,またはマーキング76(基板の表面でも裏面でもよい)を有する絶縁材料基板91(例えば,石英ガラス,ソーダガラス,ホウケイ酸ガラス,鉛ガラス,フッ化物ガラス,サファイア,プラスチック,ポリイミド,など)を用意する(図8(a))。この絶縁材料基板91の上に、絶縁層92(例えば、膜厚500nm)を形成する。この絶縁層92は、例えば、CVD(例えば,プラズマ化学気相成長法や低圧化学気相成長法など)やスパッタ法を用いて形成されたSiO2膜である。代わって、この絶縁層92は,例えばSiNやSiO2などの異種の材料により、積層構造にしたものでもよい。またSOG、もしくはSOGとSiO2膜、SiN膜との積層膜でもよい。絶縁層92これは基板からの汚染防止、拡散防止と共に、その断熱性による蓄熱効果にて、レーザまたはフラッシュランプによる加熱後、ゆっくりと冷却されるため、より大きな結晶成長を得ることができる。絶縁層92は、絶縁材料基板91の全面,または,パターニングによって絶縁材料基板表面の部分領域に形成してもよい。ここでは,絶縁材料基板91の全面に形成している。次に、絶縁層92の上に、非晶質または多結晶構造の半導体膜93(例えば,膜厚30ないし200nm程度のSi膜など)をCVD法(例えば,プラズマ化学気相成長法や低圧化学気相成長法など)やスパッタ法を用いて成膜する。この半導体膜93は絶縁層92の全面,または,パターニングによって絶縁層の部分領域に形成してもよい。ここでは,絶縁層92の全面に形成している。
【0062】
そして、図8(a)に示すように、半導体膜93の表面全面に第1の光吸収層94(例えば,SiO2,SiOx,SiON,SiN、SOGまたは、これらの積層構造膜)を約260nmの厚さに成膜する。第1の光吸収層94の効果としては、外部からの汚染防止、パーティクル汚染防止と共に、その断熱性による蓄熱効果にて、レーザまたはフラッシュランプによる加熱後、ゆっくりと冷却されるため、より大きな結晶成長を得ることができる。前記絶縁層92および半導体膜93がパターニングされた場合においては,基板全面に保護膜を形成してもよい。この後の工程は、前記第1の実施の形態と実質的に同じであり,簡単に記述する。
【0063】
次に、図8(b)に示すように、第1の光吸収層94の表面に、前述したような光強度分布を有するエキシマパルスレーザ光95で、レーザ照射を行う。このレーザ照射における光強度の主勾配方向96,96aは,絶縁材料基板91に示された方位表示指標(74,75もしくは76)を基準にして設定している。この実施の形態では、主勾配方向96,96aと,方位表示指標が示す方向とを一致させている。このレーザ照射によって、半導体膜93の照射領域は、結晶化半導体膜97に変換される。
【0064】
次に、図8(c)に示すように、保護膜94の表面に、第2の光吸収層として高融点の金属層90(例えば、Mo,Ti,TiN,MoW,W,Ta,TaN、Cu等)を保護膜84の上に全面に渡って形成する。次に、図8(d)に示すように、結晶化された領域を少なくとも一部含む半導体膜83の上層に形成された高融点の金属層にフラッシュランプ光98を照射することによりフラッシュランプによる加熱照射を行う。この結果、図8(d)に示すように、前記結晶化半導体膜97は、単結晶化半導体膜99となる。この結晶化半導体膜97の結晶粒の表面形態は、四角形状であり、また、絶縁材料基板91の基準に沿った方向の面方位は(100)面となっている。従って,本実施の形態の方法によれば,絶縁材料基板の断面の一方向に(100)面方位を有する四角形状の単結晶化領域アレイを形成できる。
【0065】
第3の実施の形態
半導体膜の結晶化方法を実施するための結晶化装置の一例を、図9(a)ないし図9(c)を参照して説明する。これら例では,光源としてエキシマレーザ101(例えば,XeCl,KrF,ArFなど)を用いているが、必ずしもこれらに限定されることはない。
【0066】
図9(a)に示すように、パルスレーザ光102aを出射するエキシマレーザ101の出射側には、レーザ光102aのエネルギー密度 (極小値J1、極大値J2)を制御するためのアッテネータ103と,レーザ光の強度を均一化するホモジナイズ光学系104とが順次配設されている。尚、符号100aで示す位置は,ホモジナイズ光学系104の結像面(焦点面)である。このホモジナイズ光学系104の出射側には、90度反射鏡を介して、ホモジナイズ光学系の焦点面100aを等倍もしくは縮小する投影レンズ(結像レンズ)105が配置されている。そして、この投影レンズ105の結像面100b(フォーカス位置)には第1の位相シフタ106aが、また,焦点位置からはずれた位置(デフォーカス位置)には第2の位相シフタ107aが、夫々配置されている。ここで,第2の位相シフタ107aは、複数枚の位相シフタ、例えば、位相シフト方向が互いに直交した2つの位相シフタで構成されてもよい。図2に示されているレーザ光強度分布61おいて、第1の位相シフタ106aは、急峻なボトムを形成するためのものであり、第2の位相シフタ107aは、横方向の結晶成長に必要な勾配を形成するためのものである。即ち、図に示されているレーザ光強度分布61において、極小光強度点42a部のレーザ光強度分布が急峻なボトムの形状は、第1の位相シフタ106aによって形成される。レーザ光強度分布61おいて、極小光強度点42a部から最大のレーザ光強度分布となる形状は、横方向の結晶成長に必要な勾配であって、第2の位相シフタ107aによって形成される。
【0067】
前記第1並びに第2の位相シフタ106a,107aは,光軸上に、図示しないホルダによって固定されている。このホルダは,光軸に沿った方向と、それに垂直な方向とに移動させる機構と,2軸の回転機構とを有するゴニオメータのような駆動機構DMに組み込まれている。
【0068】
このように2つの位相シフタ106a、107aを用いることにより、両軸方向に極小となる点である極小光強度点42aを作り出すことができるが、位相シフタを1枚のみ使用し直線上に極小部を持つ極小光強度線を用いても、その線上の照射部分が結晶粒の起点となり、同様なΔ形状結晶粒54を有する結晶粒の成長が可能であることが発明者らによって確認されており、必ずしも2枚の位相シフタは必要としない。
【0069】
前記第2の位相シフタ107aの出射側には、ステージ109の上に載置された試料108が位置されている。このステージ109は、X方向並びにY方向に移動可能であり、試料108を第2の位相シフタ107aに対して相対的に水平方向にシフトさせることができる。
【0070】
上記レーザ照射された試料108は、別装置であるレーザ加熱装置もしくは図5を参照して説明したフラッシュランプ加熱装置にて、再加熱工程を経て再単結晶化される。
【0071】
レーザ加熱装置もしくはフラッシュランプ加熱装置に結続された真空排気装置(図示せず)にて真空排気された後、もしくはAr、N2等の不活性ガスを導入した後にレーザ加熱装置もしくはフラッシュランプ処理工程を行う。レーザ加熱装置については、照射エネルギー密度、スキャン速度、フラッシュランプ加熱については、装置所望のフラッシュランプ点灯条件にすべく電圧、電流密度、ガス圧力等を最適に調整し、一回もしくは複数回のフラッシュの照射処理が試料108に対して行われる。
【0072】
上記記載の、レーザ加熱装置もしくはフラッシュランプ加熱装置は、レーザ照射装置とは別装置であるが、高融点金属もしくは金属窒化物の成膜装置も含めてレーザ照射装置と接続されたマルチチャンバーの一形態を有するクラスター化されたものであっても良い。その場合、大気からのコンタミネーションやパーティクルによる汚染を低減することができる。
【0073】
上記構成のレーザ照射装置における結晶化装置の作用を以下に説明する。
エキシマレーザ101から出射したパルスレーザ光102aは,アッテネータ103によりエネルギー密度が制御されて,ホモジナイズ光学系104に入り、ここで強度が均一化されたレーザ光102bとなって、反射鏡に入射される。ここで、レーザ光102bは、試料108方向へと90度偏向されて、投影レンズ105に入射される。この投影レンズ105は、入射レーザ光102bを第1並びに第2の位相シフタ106a,107aによって変調されたレーザ光102dとして試料表面に入射させる。尚、この試料108は、実際には、例えば、図7並びに図8に示す半導体膜83、93を有する積層膜基板で有り得る。
【0074】
前記第2の位相シフタ107aにより変調されて形成されたレーザ光強度分布(像)の特徴は,例えば,図2に示すレーザ光強度分布61のように,ミリメートルレベルの巨視的には均一強度であり,ミクロンレベルの微視的には強度変調されていることを特徴とする。このようなレーザ光強度分布61のレーザ光で,レーザ照射を行うと,結晶粒が位置制御された結晶化膜を形成することができる。
【0075】
尚、前記アッテネータ103によって,レーザ光のエネルギー密度を最適化してレーザ光102dを試料108の表面に照射すると、試料108の半導体膜はレーザ光102dを吸収することによって温度が上昇する。ここで,レーザ光102dの強度変調領域において,極小強度での半導体膜は,下地界面付近まで溶融状態になり,極大強度では,半導体膜が蒸発しない温度になっていることが望ましい。
【0076】
前記第1並びに第2の位相シフタ106a,107aは,透明な基板、例えば、合成石英板の一面に、互いに一定間隔を有する細長い矩形溝が形成されることによって段差を有する構造になっている。この段差の高さ(溝の深さ) Δtが出射レーザ光の位相差θに相当する。この位相差θは,θ=2πΔt(n-1)/λで与えられる。ここで,λは,レーザの波長,nは合成石英板の屈折率である。例えば,波長248nmのKrFエキシマレーザを用いた場合,屈折率は,1.508であり,段差Δtが244nmのとき位相差は180°となる。このような位相シフタは、溝が互いに直交するような配置関係で、図9(a)に示すように位置に設けられている。前記合成石英板の表面に段差を形成する方法として,例えば,反応性イオンエッチングを用いてエッチングする方法,集束イオンビーム法を用いて,直接加工する方法,合成石英基板の上に非晶質シリコン膜を成膜してパターニングしたものを熱酸化する方法がある。前記両位相シフタ106a,107aは、溝のデイメンシヨンも、ピッチP(位相シフト線間の間隔)も異なっていても、同じものでも良い。
【0077】
また,位相シフタには,表面段差に加えて,光吸収によって光強度分布を形成する効果を付加してもよい。このためには、例えば、合成石英板の一面に光吸収膜(たとえば,SiN,SiON,Geなどの膜)を成膜してパターニングする。このような位相シフタを使用することにより、光吸収膜の吸収係数と膜厚によって光強度分布が変化する。この方法は,光強度振動を抑制したい位相シフタの領域に形成する場合によい。
【0078】
また,位相シフタの表面上にマイクロレンズを形成して,光強度分布を形成する効果を付加してもよい。
【0079】
前記第1の位相シフタ106aと第2の位相シフタ107aとは、隅部に設けられた4つのスペーサを挟んで取着することにより、一体的な構造としてもよい。また、位相シフタ間に塵埃等が入るのを防止することもできるように、4つのスペーサの代わりに、枠形のシールドスペーサを4辺間に設けても良い。代わって,第1の位相シフタと第2の位相シフタとは、1枚の合成石英基板(共通透明基板)に一体的に形成された位相シフタとしても良く、この場合には、一面に第1の位相シフタの溝、即ち、段差が形成され、他面に第2の位相シフタの溝、即ち、段差が形成されている。さらに、第1の位相シフタと第2の位相シフタは、光路における設置位置を入れ換えてもよい。
【0080】
上述したような第1並びに第2の位相シフタ106a,107aによって得られる光強度分布は,透明基板(合成石英基板)の表面段差の幾何学的構造と入射光の角度や光の空間的可干渉性によって決定される。要求する光強度によっては,第2の位相シフタ107aだけでよい場合もある。
【0081】
前記図9(a)に示す装置において,試料108表面の位置を,投影レンズ105の焦点面に配置し、例えば、ホモジナイズ光学系104の焦点面100aに位相シフタ106aを配置しても良い。この場合には,第3の実施の形態に比べて光強度分布設計の多様化に制限が生じるが,均一性が向上する効果がある。
【0082】
図9(b)に示す装置では,ホモジナイズ光学系104の焦点面100aに第1の位相シフタ106aが配置され,結像レンズ105の焦点位置に試料108の表面が位置されている。第2の位相シフタ107aは、結像レンズ105の焦点はずれの位置に配置されている。この場合,前記第4の実施の形態に比べ光強度分布設計の多様性が向上するが,第1の位相シフタ106aの強度変調は投影レンズの分解能の制限を受ける。
【0083】
図9(c)に示す装置では、ホモジナイズ光学系104の焦点面100aに第1の位相シフタ106aが配置され,また、ホモジナイズ光学系104の焦点はずれの位置に、第2の位相シフタ107aが配置されている。試料108の表面は,投影レンズ105の焦点面に配置されている。このような構成の装置では,試料表面付近に位相シフタが存在しないため,ステージ109周辺の自由度が増す。しかし,光強度分布は,投影レンズの分解能の制限を受ける欠点がある。
【0084】
上記実施形態では、レーザ光による結晶化工程で、光変調素子として位相シフタを使用して説明したが、入射レーザ光を極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光に光変調できる光変調素子であればどのようなものでも良い。
【0085】
また、上記実施形態では、レーザ光による結晶化工程の際に用いた保護層の上に高融点金属層を形成してフラッシュランプによる加熱を行ったが、結晶化された半導体膜領域上の保護層を除去した後に、半導体膜をパターニングしてその上にゲート絶縁膜及び高融点のゲート電極層を形成し、フラッシュランプによる加熱を行い結晶化された半導体膜領域の再加熱を行うようにしてもよい。
【0086】
以下、図10及び図11を参照して上記結晶化法により形成された結晶粒へのTFT200、走査配線、及び信号配線の形成方法について説明する。
【0087】
まず、被処理基板201を用意する。この実施形態では、被処理基板201として透明基体202上に下地絶縁層203が形成された基板を用いている。この被処理基板201(下地絶縁層203)上の略全面に層厚が30nm〜200nm例えば40nmとなるようにアモルファスシリコン層204と第1の光吸収層であるSiOx層204aを形成する。その後、温度550℃の雰囲気中でアニール処理を施し、このアモルファスシリコン層204中の水素を離脱させる(図10(A))。
【0088】
次に、例えばELA(Excimer Laser Anneal)法により、このアモルファスシリコン層204の照射領域を結晶化させて結晶化領域205例えばポリシリコン層とする。さらに、この上に第2の光吸収層例えばMo層を形成して、これをレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を再加熱する。次ぎに、第2の光吸収層及び第1の光吸収層を除去したの後に、PEP(Photo Engraving Process、いわゆるフォトリソグラフィー)によりポリシリコン層の予め定められたTFT形成領域の結晶化領域205上に所定の形状のレジストマスクを形成する。そして、ドライエッチング法により結晶化領域205をTFTの形成のための島形状に加工する。その後、PE−CVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を用いて、島形状に加工された結晶化領域205及び露出した下地絶縁層203を覆うようにゲート絶縁膜207を形成する(図10(B))。
【0089】
次に、ゲート絶縁膜207上に、ゲート電極層208及びこのゲート電極層208と一体に設けられる走査配線を形成する。ゲート電極層208は、島形状の結晶化領域205に図10(C)に示すように形成する。なお、図10及び図11では走査配線は示されていないが、走査配線はゲート電極層208の奥側から手前側(図10及び図11に紙面の手前側から奥側)に延びている。
【0090】
ゲート電極層208及び走査配線20は、例えば、モリブデンタングステン(MoW)により形成することができる。
【0091】
次に、ゲート電極層208をマスクとし、島形状の結晶化領域205の予め定められたソース領域211及びドレイン領域212となる領域に不純物イオン(リンもしくはボロン等)を注入する。結晶化領域205へのソース領域211及びドレイン領域212の形成は、結晶成長方向に沿ってTFTの正孔および電子が移動するように設けることが最大の移動度特性を得ることができる。これにより、島形状の結晶化領域205には、チャネル領域213を介在して、ソース領域211、及びドレイン領域212が離隔して形成される(図10(D))。
【0092】
次に、ゲート電極層208及びゲート絶縁膜207を覆うように層間絶縁層214を形成する。そして、ソース領域211の少なくとも一部を露出させるため、ゲート絶縁膜207に第1のコンタクトホール207aを形成するとともに、層間絶縁層214に第3のコンタクトホール215を形成する。ドレイン領域212の少なくとも一部を露出させるため、ゲート絶縁膜207に第2のコンタクトホール208bを形成するとともに、層間絶縁層214に第4のコンタクトホール216を形成する(図11(A))。
【0093】
次に、例えばコバルト(Co)からなる金属層217をソース領域211及びドレイン領域212と接触するように結晶化領域205上に設ける。この金属層217は、例えば、コンタクトホール207a,208b,215,216から露出する結晶化領域205の上面(ソース領域211の一部及びドレイン領域212の一部)と、コンタクトホール207a,208b,215,216(ゲート絶縁膜207及び層間絶縁層214の側壁)と、層間絶縁層214の上壁とを覆うように形成する。なお、この金属層217は、例えば、層厚が2nm〜10nm程度となるように形成するとよい。
【0094】
次に、この金属層217を、シラン系ガス(例えば、モノシラン(SiH4)ガスやジシラン(Si2H6)ガス等)又はシラン系ガスを含む混合ガスを用いてシリサイド化する。本実施形態では、例えば、モノシランガスの分圧が20Paとなるようにモノシランガスを水素ガスで希釈したガスを用い、200℃〜400℃程度の温度下で金属層217をシリサイド化している(図11(B))。
【0095】
前記温度範囲において、シラン系ガスは層間絶縁層214等とは殆ど反応しない
。これに対し、金属層217をなすコバルトやニッケルが触媒的な効果を奏することから、金属層217では選択的にシリサイド化が進行する。また、この時、シラン系ガスによって金属層217の表面に形成されている酸化層が還元されるため、金属層217のシリサイド化は表面から厚さ方向(内部方向)に進行する。したがって、金属層217は、低抵抗なCoSi2層(コバルトシリサイド層)となる。このようにして結晶化シリコン層205のシリサイド層を形成すると、結晶化シリコン層205の上に金属層を形成して加熱処理することによりシリサイド層を形成する方法と比べて、結晶化シリコン層205が薄くても形成が可能であり、結晶化シリコン層205のシリコンの消耗も少ない。
【0096】
なお、200℃程度でも金属層217のシリサイド化は進行するが、温度が高い
程反応が促進される(反応速度が速くなる)ため、300℃〜400℃程度とすると処理時間を短縮できる。また、CoSi2層の最表面には酸化シリコン層が形成され易い。このため、次工程に進む前の前処理として、前記酸化シリコン層を除去するのが望ましい。
【0097】
次に、前記ソース領域211及びドレイン領域212に注入された不純物の活性化アニールを行う。活性化アニールはイオン注入後に行ってもよいが、被処理基板
201上にアイランド(島)状に形成された結晶化領域205をフラッシュランプやレーザ光を用いた急速アニール法で熱処理する場合、光を吸収する結晶化領域205のパターンの粗密等により均一な熱処理が難しい。被処理基板201の全面(コンタクトホール207a,208b,215,216を構成するゲート絶縁膜207及び層間絶縁層214の側壁と、層間絶縁層214の上壁)を覆うようにシリサイド層(CoSi2層)が形成されている状態で活性化アニールすることは、均一な熱処理が達成できる点で望ましい。次に、ソース電極218及びドレイン電極219となる電極層形成し、ソース電極218及びドレイン電極219となるようにエッチング加工する。この際に、上記シリサイド層は同時にエッチングする。このようにして図11(c)に示すような薄膜トランジスタ(TFT)220を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明方法を説明するために結晶化された状態を示す図であり(a)は、位相変調エキシマレーザ光照射後の膜表面の走査電子顕微鏡写真を図式化して示す図、(b)は、フラッシュランプ光照射の結晶化膜表面の走査電子顕微鏡写真を図式化して示す図である。
【図2】本発明方法を説明するための結晶化装置の光源系を説明するためのもので、三角形状逆ピークパターンの光強度分布を有するレーザ照射を概略的に示す斜視図、
【図3】(a)並びに(b)は、夫々異なる本発明の基本となる半導体装置の製造方法のフローチャートを示す図である。
【図4】図3の工程AとBのレーザ光源から光路に従って試料までの光学系の実施例を説明するための図である。
【図5】図3の工程Cのフラッシュランプ加熱装置の一例を示す概略図である。
【図6】(a)は、方位表示指標が形成された円形の基板の3つの例を示す平面図であり、(b)は、方位表示指標が形成された矩形の基板の3つの例を示す平面図である。
【図7】本発明の結晶化方法の第1の実施の形態を工程順ごとに説明するための断面図である。
【図8】図7の他の実施の形態の方法を工程順ごとに説明するための断面図である。
【図9】(a)ないし(c)は、本発明の半導体装置の製造方法に使用され得る、夫々異なる位相変調エキシマレーザ結晶化装置の概略図である。
【図10】図7、8によって結晶化された領域にTFTを形成する工程を工程順に説明するための図でゲート電極形成工程までを説明するための断面図である。
【図11】図10のゲート電極形成工程後からソース・ドレイン電極形成工程までの工程を工程順に説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0099】
53…短冊形状結晶粒,54…Δ形状結晶粒、55…小粒径結晶粒、
61…レーザ光強度分布、80、90…第2の光吸収層、83、93…半導体膜、84、94…第1の光吸収層、85、95…エキシマパルスレーザ光、87…多結晶半導体膜、88…連続発振YAGレーザ光、98…フラッシュランプ光、106a、107a…位相シフタ、108…試料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を前記非単結晶半導体膜上に設けられた第1の光吸収層を介して照射して前記結晶化領域を結晶化するレーザ照射工程と、
少なくとも結晶化された前記結晶化領域の上に形成された第2の光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の光吸収層は、金属層であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を照射してΔ形状の複数の主結晶粒と、これら主結晶粒の周りに複数の微小結晶粒とを形成するレーザ照射工程と、少なくとも前記結晶化領域の上に形成された第1の光吸収層及び第2の光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより、前記Δ形状の主結晶粒が前記微小結晶粒を取り込んで前記結晶化領域の少なくとも一部を単結晶にする再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
試料の非単結晶半導体膜の結晶化領域に、この結晶化領域の少なくとも一部にエネルギー光のパルスレーザ光を照射して照射領域を溶融して結晶化するレーザ照射工程と、少なくとも前記パルスレーザ光に照射されて結晶化された領域の上に形成された第1の光吸収層及び第2の光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより金属層を介して前記結晶化領域を再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ照射工程は、結晶粒の成長方向の面方位が所定の面で、他の結晶粒よりも成長の速い少なくとも1つの結晶粒を形成する工程を有し、前記加熱工程は、前記結晶粒を結晶核にして前記半導体膜に結晶成長方向の面方位が前記所定の面である結晶粒を成長させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記レーザ照射工程は、前記結晶粒の成長方向の面方位が(100)面で、一面側から見てΔ形状の結晶粒を形成する工程を有し、前記加熱工程は、前記Δ形状の結晶粒を結晶核にして前記半導体膜に結晶成長方向の面方位が(100)面で、一面側から見て表面形状がほぼ矩形を有している結晶粒を成長させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記レーザ照射工程は、光学変調素子により、入射レーザ光が光変調されたレーザ光を形成し、このレーザ光を照射していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記光学変調素子は、入射レーザ光の位相を光変調する位相シフタを有することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記結晶化領域の上に形成された第1の光吸収層は、光吸収性絶縁層であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記結晶化領域の上に形成された第2の光吸収層は、非単結晶半導体膜よりも高融点の金属層もしくは金属窒化物であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1の方法により結晶化された結晶化領域に離隔して設けられたソース領域およびドレイン領域と、
このソース領域およびドレイン領域間の結晶化領域上に設けられたゲート絶縁膜と、
このゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極とを具備してなることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項1】
非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を前記非単結晶半導体膜上に設けられた第1の光吸収層を介して照射して前記結晶化領域を結晶化するレーザ照射工程と、
少なくとも結晶化された前記結晶化領域の上に形成された第2の光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより前記結晶化された領域を再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の光吸収層は、金属層であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
非単結晶半導体膜の結晶化領域に、光変調されて極小光強度線もしくは極小光強度点を有する光強度分布のレーザ光を照射してΔ形状の複数の主結晶粒と、これら主結晶粒の周りに複数の微小結晶粒とを形成するレーザ照射工程と、少なくとも前記結晶化領域の上に形成された第1の光吸収層及び第2の光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより、前記Δ形状の主結晶粒が前記微小結晶粒を取り込んで前記結晶化領域の少なくとも一部を単結晶にする再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
試料の非単結晶半導体膜の結晶化領域に、この結晶化領域の少なくとも一部にエネルギー光のパルスレーザ光を照射して照射領域を溶融して結晶化するレーザ照射工程と、少なくとも前記パルスレーザ光に照射されて結晶化された領域の上に形成された第1の光吸収層及び第2の光吸収層を介してレーザ光もしくはフラッシュランプ光を照射することにより金属層を介して前記結晶化領域を再加熱する加熱工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ照射工程は、結晶粒の成長方向の面方位が所定の面で、他の結晶粒よりも成長の速い少なくとも1つの結晶粒を形成する工程を有し、前記加熱工程は、前記結晶粒を結晶核にして前記半導体膜に結晶成長方向の面方位が前記所定の面である結晶粒を成長させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記レーザ照射工程は、前記結晶粒の成長方向の面方位が(100)面で、一面側から見てΔ形状の結晶粒を形成する工程を有し、前記加熱工程は、前記Δ形状の結晶粒を結晶核にして前記半導体膜に結晶成長方向の面方位が(100)面で、一面側から見て表面形状がほぼ矩形を有している結晶粒を成長させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記レーザ照射工程は、光学変調素子により、入射レーザ光が光変調されたレーザ光を形成し、このレーザ光を照射していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記光学変調素子は、入射レーザ光の位相を光変調する位相シフタを有することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記結晶化領域の上に形成された第1の光吸収層は、光吸収性絶縁層であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記結晶化領域の上に形成された第2の光吸収層は、非単結晶半導体膜よりも高融点の金属層もしくは金属窒化物であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1の方法により結晶化された結晶化領域に離隔して設けられたソース領域およびドレイン領域と、
このソース領域およびドレイン領域間の結晶化領域上に設けられたゲート絶縁膜と、
このゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極とを具備してなることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−317991(P2007−317991A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148045(P2006−148045)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】
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