説明

半導体装置

【課題】ラッチアップ防止用のガードリングにシリサイドを形成しつつ、ESDサージによってそのガードリングが破壊されないようにする。
【解決手段】ラッチアップ防止用の第2ガードリング71の表面において、トランジスタ形成領域20と対向する側には幅W3だけシリサイドを形成しない構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置における静電気破壊防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置には、入力端子(または出力端子)を通して外部から入力される静電気(ESD;electrostatic discharge)サージによって破壊されないように、ESD保護回路が搭載される。このESD保護回路が搭載された半導体装置の一例を図1に示す。
【0003】
図1は、ESD保護回路が搭載された従来の半導体装置(入出力回路)の回路図である。図1に示す半導体装置は、ゲート制御信号を受けるCMOS出力回路600(出力トランジスタQ10,Q20、電流制限抵抗R1、インバータINV1)と、寄生バイポーラによるスナップバック動作を利用した保護トランジスタ(Q30,Q40,Q50)とを有する。
【0004】
この半導体装置において、入力端子INに負極のESDサージが印加されると、図中に矢印で示した経路CP1(電源端子VDD→トランジスタQ50→接地端子GND→トランジスタQ30→入力端子IN)を流れる電流によって、ESDサージが吸収されてCMOS出力回路600が保護される。保護トランジスタは、たとえばHBM(Human Body Model)によって規定されるサージ電圧(2kV等)に耐えられるように設計されている。
【0005】
ところで、一般に、図1に例示したような半導体装置では、CMOSの構造上、寄生サイリスタ(PNPN構造)が導通し、電源端子VDDと接地端子GND(またはVSSレベル)との間に過大電流が流れるラッチアップが生ずる可能性がある。このラッチアップが生ずると最悪の場合には素子を破壊することもある。したがって、従来、このラッチアップを生じさせない方策として、保護対象のトランジスタ領域の周囲にガードリングを設けることが知られている。
【0006】
ガードリングとして、保護対象のトランジスタ領域を取り囲む第1ガードリングと、この第1ガードリングを取り囲む外側の第2ガードリングとからなる二重ガードリングを設けるのが一般的である。第1ガードリングは電位固定層として機能し、保護対象のトランジスタと反対の導電型の不純物拡散層によって形成される。第2ガードリングはラッチアップ保護層として機能し、保護対象のトランジスタと同一の導電型の不純物拡散層によって形成される。ラッチアップ保護のためには、導電型の異なるトランジスタ(NMOSトランジスタ、PMOSトランジスタ)ごとに、それぞれ二重ガードリングを設ける。たとえば、図1に示した半導体装置では、NMOSトランジスタQ10,Q30に対して二重ガードリングを設け、PMOSトランジスタQ20,Q40に対して二重ガードリングを設ける。
【0007】
以下、ガードリングによってラッチアップ保護が行われる、従来の半導体装置の構造について図2および図3を参照して説明する。図2は、一例としてNMOSトランジスタに対して二重ガードリングを設けた半導体装置の平面図である。図3は、図2に示した半導体装置のX−X’による断面図である。
【0008】
図2において、保護対象のNMOSトランジスタは、ゲート領域30、ドレイン領域40、ソース領域50を含むトランジスタ形成領域20を有している。このトランジスタ形成領域20を、P型不純物拡散層からなる第1(内側)ガードリング610が取り囲み、その第1ガードリング610を、N型不純物拡散層からなる第2(外側)ガードリング710が取り囲んでいる。
【0009】
図3において、従来の半導体装置では、たとえばP型シリコンからなるP型基板900の表面に、選択的にSTI(Shallow Trench Isolation:浅溝埋込分離)領域810,820,830が形成され、これによりP型基板900の表面を複数の領域に分離している。STI領域820とSTI領域830の間にはNウェル700が形成されている。
【0010】
図3においてSTI領域810の右側には、ドレイン領域40となるN型の不純物拡散層40が形成されている。STI領域810とSTI領域820の間には、第1ガードリング610(P型の不純物拡散層)が形成されている。STI領域820とSTI領域830の間において、Nウェル領域700には第2ガードリング710(N型の不純物拡散層)が形成されている。
【0011】
近年、トランジスタのソースおよびドレインの不純物拡散層上にメタルシリサイド(シリコンと金属との化合物。以下、適宜シリサイドと略記する。)の層を形成したトランジスタ構造が急速に普及している。メタルシリサイドとしては、チタンシリサイド(TiSi)、コバルトシリサイド(CoSi)などが使用される。このメタルシリサイドは不純物拡散層に比べて10倍以上も低抵抗であるため、シリサイド層をソース領域およびドレイン領域に形成するとソースおよびドレインの寄生抵抗を低減でき、トランジスタの電流駆動能力を向上させることができる。
【0012】
かかるシリサイドは、半導体装置の製造工程において、ソースおよびドレインだけでなく、ガードリング上にも形成されることになる。たとえば、下記特許文献1は、ガードリングである不純物拡散層上の全域にシリサイド層が形成されたトランジスタ構造を開示している。このようにシリサイド層を形成することで、ガードリングに対してオーミックコンタクトが得られる。
【0013】
図3に示す半導体装置では、ドレイン領域であるN型不純物拡散層40の表面にシリサイド層42が形成され、第1ガードリング610の表面にシリサイド層620が形成され、第2ガードリング710の表面にシリサイド層720が形成されている。シリサイド領域42(ドレイン)は入力端子INに接続される。シリサイド領域620は接地端子GNDに接続される。シリサイド領域720は電源端子VDDに接続される。
【0014】
図3に示す半導体装置では、特許文献1に開示されているものと同様に、第2ガードリング710上の全領域にシリサイド層720が形成されている。
【0015】
図4は、従来の半導体装置のラッチアップ保護動作を説明するための図である。
【0016】
図4に示すように、保護対象のNMOSトランジスタのドレイン領域40、第1ガードリング610、第2ガードリング710は、それぞれエミッタ、ベース、コレクタとなるような寄生バイポーラトランジスタQ50を構成する。
【0017】
ラッチアップによって発生する、電源端子VDDおよび接地端子GNDを基準とした負極のトリガ電流は、電流経路CP2に示すベース電流、および、電流経路CP3に示すコレクタ電流として流れる。これにより、ラッチアップによるトリガ電流は、別のガードリングによって取り囲まれたPMOSトランジスタ領域(図示しない)に流れ込まないので、寄生サイリスタがオンすることがなくラッチアップから保護される。
【特許文献1】米国特許6,624,487号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、従来の半導体装置のように、保護対象のトランジスタを取り囲む第2(外側)ガードリングの表面の全域にシリサイド層を形成して、図1に示したトランジスタを製造すると、入力端子INに印加されるESDサージによって、第2ガードリング付近のPN接合が破壊される場合がある。
【0019】
たとえば入力端子INに印加される負極のESDサージは、図1に電流経路CP1を示したように、耐圧の高いトランジスタQ30,Q50を経由して電源端子VDDまで流れることが理想的であるが、第2ガードリング上の全領域にシリサイドが形成されると、サージ電流は図1に示した経路CP1を流れにくくなる。これは、特に図1に示したように本来意図したサージ電流の経路CP1の中に複数の保護トランジスタ(Q30,Q50)が設けられると、この経路CP1の抵抗値が高くなるため、電源端子VDDから、低抵抗のシリサイドを含む寄生バイポーラトランジスタQ50のコレクタに向けて、サージ電流が相対的に流れ込みやすくなるためである。すなわち、サージ電流は、電源端子VDDから、シリサイド層720→第2ガードリング710→P型基板900→N型不純物拡散領域40(ドレイン)による経路を流れることになる。これにより、寄生バイポーラトランジスタQ50において発熱量が大きいコレクタ側、すなわち、第2ガードリング710(N型)とP型基板900とで形成されるPN接合が破壊されるのである。
【0020】
図5は、第2ガードリングとP型基板900とで形成されるPN接合が破壊される状態を示す模式図であって、(a)は図2におけるY−Y’による断面、(b)は第2ガードリング710と入力端子IN間の電気的接続関係を示す。図5において、サージ電流により局所的に寄生バイポーラトランジスタQ50がオンすると、シリサイドが低抵抗であるがゆえに、電源端子VDDからのサージ電流が局所的に経路CP4によって流れ込む結果、局所的にサージ電流が集中しやすくなる。特に寄生バイポーラトランジスタQ50のコレクタ近辺に電流が集中してPN接合が破壊される。たとえば図4における第2ガードリング710とNウェル700との界面部、Nウェル700とP型基板900との界面部が破壊されることになる。
【0021】
したがって、本発明の目的は、ラッチアップ防止用のガードリングにシリサイドを形成しつつ、ESDサージによってそのガードリングが破壊されないようにした半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を克服するために、本発明に係る半導体装置は、トランジスタ形成領域と、第1ガードリングと、第2ガードリングと、シリサイド領域とを備える。
【0023】
トランジスタ形成領域は、第1導電型トランジスタが形成される。第1ガードリングは、第1幅をもって前記トランジスタ形成領域を取り囲む第2導電型の第1不純物拡散層であって、第1基準電位に接続される。第2ガードリングは、第2幅をもって前記第1ガードリングを取り囲む第1導電型の第2不純物拡散層である。シリサイド領域は、第1導電型トランジスタのドレイン領域と対向する側にはシリサイドが形成されないようにして前記第2ガードリングの表面に形成され、前記第1基準電位よりも高電位の第2基準電位に接続される。
【0024】
本発明に係る半導体装置では、第2ガードリング(第1導電型の第2不純物拡散層)をコレクタ、第1ガードリング(第2導電型の第1不純物拡散層)をベース、第1導電型トランジスタのドレインをエミッタとする寄生バイポーラトランジスタが形成される。シリサイド領域は、第2ガードリングの表面において、第1導電型トランジスタのドレイン領域と対向する側には低抵抗のシリサイドが形成されないようにして形成されているため、実質的にコレクタにおける寄生抵抗が高い。それゆえ、入力端子または出力端子を通して外部からESDサージが印加され、寄生バイポーラトランジスタがオンしたときに、そのコレクタにサージ電流が流れにくく、第2ガードリングにおける局所的なサージ電流の集中が回避される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の半導体装置によれば、第2ガードリングの表面にシリサイドを形成して良好なオーミックコンタクトを得ると同時に、その第2ガードリングのラッチアップ保護機能を損なうことなく、ESDサージが印加されたときに第2ガードリングが破壊されないようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<第1の実施形態>
以下、本発明の半導体装置の第1の実施形態について、図6〜9を参照して説明する。
【0027】
先ず、実施形態に係る半導体装置の好適な実装例について説明する。
【0028】
図6は、ESD保護回路が搭載された半導体装置10(入出力回路)の回路図である。図6に示す半導体装置10は、ゲート制御信号を受けるCMOS出力回路6(出力トランジスタQ1,Q2、電流制限抵抗R1、インバータINV1)と、寄生バイポーラによるスナップバック動作を利用した保護トランジスタ(Q3,Q4,Q5)とを有する。
【0029】
NMOSトランジスタQ5は、電源端子VDD(第2基準電位)と接地端子GND(第1基準電位)間に設けられる。NMOSトランジスタQ3は入力端子INと接地端子GND間に設けられ、PMOSトランジスタQ4は入力端子INと電源端子VDD間に設けられる。
【0030】
図6において模式的に示したように、NMOSトランジスタ(Q1,Q3)が形成される領域は、二重ガードリングGR7に取り囲まれ、PMOSトランジスタ(Q2,Q4)が形成される領域は、二重ガードリングGR8に取り囲まれる。
【0031】
二重ガードリングGR7,GR8において、第1ガードリングは電位固定層として機能し、保護対象のトランジスタと反対の導電型の不純物拡散層によって形成される。第2ガードリングはラッチアップ保護層として機能し、保護対象のトランジスタと同一の導電型の不純物拡散層によって形成される。ラッチアップ保護のためには、図6に示すように、導電型の異なるトランジスタ(NMOSトランジスタ、PMOSトランジスタ)ごとに、それぞれ二重ガードリングを設けることが必要である。
【0032】
この二重ガードリングの構造については後述する。
【0033】
この半導体装置10において、入力端子INに負極のESDサージが印加されると、図中に矢印で示した経路CP1(電源端子VDD→NMOSトランジスタQ5→接地端子GND→NMOSトランジスタQ3→入力端子IN)を流れる電流によって、ESDサージが吸収されてCMOS出力回路6が保護される。保護トランジスタは、たとえばHBM(Human Body Model)によって規定されるサージ電圧(2kV等)に耐えられるように設計されている。
【0034】
次に、半導体装置10において、NMOSトランジスタ(Q1,Q3)、および、そのNMOSトランジスタの二重ガードリングGR7の構造ついて、図7および図8を参照して説明する。なお、PMOSトランジスタ(Q2,Q4)、および、そのPMOSトランジスタを取り囲む二重ガードリングGR8の構造は、以下に説明するNMOSトランジスタの場合と比較して、導電型が反対になる点のみ異なる。
【0035】
図7は、第1の実施形態に係る半導体装置10の平面図である。図8は、図7に示した半導体装置10のA−A’による断面図である。
【0036】
図7において、NMOSトランジスタは、ゲート領域30、ドレイン領域40、ソース領域50を含むトランジスタ形成領域20を有している。図7に示すように、このトランジスタ形成領域20では、ドレイン領域40およびソース領域50が交互に且つ相互に離隔して形成されている。図7において、ドレイン領域40およびソース領域50の形状は矩形であり、その長手方向は相互に同一である。ドレイン領域40およびソース領域50との間の領域はチャネル領域(図示せず)となっており、チャネル領域の直上にゲート領域30が設けられている。そして、1つのドレイン領域40、これに接するチャネル領域、このチャネル領域に接するソース領域50により、NMOSトランジスタ構造が形成されている。ドレイン領域40およびソース領域50上には、それぞれ複数のコンタクトが配置されており、ドレイン領域40およびソース領域50を上層に設けられた金属配線に接続している。
【0037】
なお、図7に示すトランジスタ形成領域には、2つのNMOSトランジスタQ1,Q3のみのための領域ではなく、複数のNMOSトランジスタを保護するための一般的な構造として示してある。したがって、図6に示した特定の回路構成におけるNMOSトランジスタだけでなく、半導体装置において、ドレインが入力端子INに接続されたすべてのNMOSトランジスタをガードリング内に形成することは、当業者であれば容易に想到し得る。
【0038】
半導体装置10は、トランジスタ形成領域20を、高濃度のP型不純物拡散層からなる幅W1(第1幅)の第1ガードリング61が取り囲み、その第1ガードリング61を、高濃度のN型不純物拡散層からなる幅W2(第2幅)の第2ガードリング71が取り囲んでいる。図7の平面図には、第1ガードリング61の上部に形成されているシリサイド層62と、ガードリング71の一部と、ガードリング71の上部に形成されているシリサイド層72とが示されている。なお、幅W1および幅W2は、各ガードリングの周方向にそれぞれ一定の値でなくとも構わない。
【0039】
シリサイド層62およびシリサイド層72上には、それぞれ複数のコンタクトが配置されており、シリサイド層62およびシリサイド層72を上層に設けられた金属配線に接続している。
【0040】
図8は、図7に示した半導体装置10のA−A’による断面図を示す。
【0041】
図8において、P型シリコンからなるP型基板90の表面に、選択的にSTI(Shallow Trench Isolation:浅溝埋込分離)領域81〜83が形成され、これによりP型基板90の表面を複数の領域に分離している。STI領域82とSTI領域83の間にはNウェル70が形成されている。
【0042】
図8においてSTI領域81の右側には、ドレイン領域40となるN型不純物拡散層41が形成されている。STI領域81とSTI領域82の間には、第1ガードリング61(P型不純物拡散層)が形成されている。STI領域82とSTI領域83の間において、Nウェル領域70には第2ガードリング71(N型不純物拡散層)が形成されている。
【0043】
ドレイン領域であるN型不純物拡散層41の表面にはシリサイド層42が形成されている。第1ガードリング61の表面にはシリサイド層62が形成されている。第2ガードリング71の表面にシリサイド層72が形成されている。
【0044】
かかるシリサイド層の形成方法として、シリサイド層を自己整合的に形成する公知のサリサイド技術を利用することができる。
【0045】
たとえば、コバルトシリサイドを不純物拡散層上に形成するには、以下の形成工程によって行われる。先ず、不純物拡散層が形成されたシリコン基板表面にコバルト膜をスッパタリングによって成膜する。そして、たとえば450〜650℃の温度でRTA(急速熱アニーリング:Rapid Thermal Annealing )処理を行う。これにより、不純物拡散層の表面と、この表面と接触しているCo膜の部分とが反応してCoSi層が不純物拡散層上に形成される。
【0046】
本実施形態に係る半導体装置10では、後述するように、シリサイド層を不純物拡散層上の所望の位置に形成させるため、シリサイド膜を形成する前に、不純物拡散層を窒化膜(または酸化膜)でマスクした後に行う。
【0047】
シリサイド層42の表面にはコンタクト43が形成され、コンタクト43は金属配線44と接続されている。シリサイド層62の表面にはコンタクト63が形成され、コンタクト63は金属配線64と接続されている。シリサイド層72の表面にはコンタクト73が形成され、コンタクト73は金属配線74と接続されている。
【0048】
各金属配線(44,64,74)を介して、ドレインとなるN型不純物拡散層41は入力端子INに接続され、第1ガードリング61は接地端子GND(第1基準電位)に接続され、第2ガードリング71は電源端子VDD(第2基準電位)に接続される。
【0049】
本実施形態の半導体装置10においては、図7および図8に示すように、第2ガードリング71の表面上の全域にはシリサイドを形成せず、第2ガードリング71の表面においてトランジスタ形成領域20と対向する側(図8においてN型不純物拡散層41側)にはシリサイドを形成しない。理解の容易のため、第2ガードリング71とSTI領域82との接合界面BD(図8参照)を図7の平面図上に示したように、トランジスタ形成領域20と対向する側には、第2ガードリング71の周方向の全領域において幅W3(所定の第3幅)だけシリサイドを形成しない構造とした。
【0050】
次に、実施形態に係る半導体装置10の動作について説明する。
【0051】
図8に示したように、ドレイン(N型不純物拡散層41)、第1ガードリング61(P型不純物拡散層)、第2ガードリング71(N型不純物拡散層)は、それぞれエミッタ、ベース、コレクタとなるような寄生NPNバイポーラトランジスタQ10を形成する。したがって、図6に例示した半導体装置において、入力端子INに負極のESDサージが印加されたときには、この寄生NPNバイポーラトランジスタQ10がオンすることになる。
【0052】
寄生NPNバイポーラトランジスタQ10がオンしたときには、過大なESDサージ電流がシリサイド層72→第2ガードリング71→Nウェル70→P型基板90→ドレイン(N型不純物拡散層41)の経路を流れる。一般には、発熱量が高いコレクタのPN接合がサージ電流によって最も破壊されやすい部位となる。
【0053】
シリサイドは、第2ガードリング71となるN型不純物拡散層よりも10倍以上低抵抗であるため、過大なESDサージ電流を生じさせやすいが、本実施形態の半導体装置10では、第2ガードリング71の表面においてトランジスタ形成領域20と対向する側には全域でシリサイドを形成しないようにしたので、寄生バイポーラトランジスタQ10のコレクタのPN接合にESDサージ電流が局所的に集中しにくい。
【0054】
すなわち、トランジスタ形成領域20と対向する側には全域で低抵抗のシリサイドを形成しないようにしたため、ESDサージ電流によって寄生バイポーラトランジスタQ10がオンしたときに、その寄生バイポーラトランジスタQ10のコレクタ抵抗が実質的に増加し、サージ電流が流れにくくなる。したがって、ESDサージ電流が局所的に集中しにくい。
【0055】
また、電源端子VDDからのサージ電流が寄生バイポーラトランジスタQ10のコレクタを流れにくくなることで、そのサージ電流が本来意図した電流経路CP1(図6参照)を流れやすくなる。
【0056】
以上説明したように、実施形態に係る半導体装置10は、ESDサージ電流を局所的に集中しないようにシリサイド層72を形成したので、ドレインが入力端子INに接続されたNMOSトランジスタ(図6ではNMOSトランジスタQ1,Q3)の第2ガードリングがESDサージから保護され、ラッチアップ保護という本来の機能が損なわれない。
【0057】
また、実施形態に係る半導体装置10では、図7に見られるように、第2ガードリング71の表面の一部にサリサイドを形成しないとしても、コンタクトを設けた位置にシリサイドが確保されているので、第2ガードリング71とコンタクト73間のオーミックコンタクトがとられている。一般に外側の第2ガードリングはラッチアップによるトリガ電流を効率良く吸収するために幅広にて形成する場合が多いため、コンタクトを設けた位置にシリサイドを確保したまま第2ガードリング上におけるシリサイド領域の幅を狭めることは、周囲のレイアウト設計に大きな影響を与えることなく行うことができる。
【0058】
実施形態に係る半導体装置10のシリサイド領域は、第2ガードリング上においてシリサイドを形成しない部位をマスクするのみで形成でき、製造工程における変更はない。
【0059】
なお、半導体装置10は、図7に示したように、トランジスタ形成領域20と対向する側には、第2ガードリング71の周方向の全領域において幅W3(所定の第3幅)だけシリサイドを形成しない構造としたが、この構造に限られない。すなわち、トランジスタ形成領域20と対向する側にシリサイドを形成しないようにすればよく、シリサイドを形成しない領域の幅は一定でなくとも構わない。たとえば、図9に例示するように、第2ガードリング71の表面において、トランジスタ形成領域20のドレイン領域に対向する部位とソース領域に対向する部位とで非シリサイド領域の幅を変えることもできる。かかる場合、図9に示すように、ドレイン領域に対向する部位における非シリサイド領域の幅を大きくとることが好ましい。
【0060】
また、ESDサージ電流(寄生バイポーラトランジスタのコレクタ電流)は、第2ガードリング71からドレイン領域40に流れるため、第2ガードリング71の周方向において、少なくともドレイン領域40に対向する範囲にのみシリサイドを形成しないようにすれば、ESDサージ電流が局所的に集中することを防止することができる。
【0061】
また、図10は、ラッチアップ保護対象のトランジスタのドレインが入力端子INに接続される入出力回路であるが、ラッチアップ保護対象のトランジスタのドレインが出力端子に接続される回路構成の入出力回路についても、本実施形態の構造を適用することができる。
<第2の実施形態>
以下、本発明の半導体装置の第2の実施形態について、図10〜12を参照して説明する。なお、第1の実施形態に係る半導体装置と同一の部位については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0062】
すでに説明したように、第1の実施形態に係る半導体装置10では、トランジスタ形成領域20と対向する側にはシリサイドを形成しないことで、従来技術と比較するとサージ電流の局所的に集中することが生じにくくなっているが、本実施形態に係る半導体装置11は、このサージ電流の局所的な集中をより確実に防止することを目的とした構造としている。
【0063】
先ず、本実施形態に係る半導体装置11の構造について説明する。
【0064】
図10は、第2の実施形態に係る半導体装置11の平面図である。図11は、図10に示した半導体装置11のB−B’による断面図である。
【0065】
図10に示すように、本実施形態の半導体装置11において、第2ガードリング71の表面上の全域にはシリサイドを形成せず、第2ガードリング71の表面においてトランジスタ形成領域20と対向する側(図11においてN型不純物拡散層41側)には、幅W3(所定の第3幅)だけシリサイドを形成しない点は、第1の実施形態に係る半導体装置10と同様である。
【0066】
本実施形態に係る半導体装置11では、前述した半導体装置10の構造に加えて、第2ガードリング71の周方向においてドレイン領域40と近接した範囲71aに対して、第2ガードリング71の幅W2(第2幅)全体にわたってシリサイドを形成しないようにする。また、好ましくは、図11に示すように、さらに、第2ガードリング71の表面の範囲71aには上位にある金属配線74とのコンタクトを形成しないようにする。
【0067】
図11において、ドレイン(N型不純物拡散層41)、第1ガードリング61(P型不純物拡散層)、第2ガードリング71(N型不純物拡散層)は、それぞれエミッタ、ベース、コレクタとなるような寄生NPNバイポーラトランジスタを形成する点は、第1の実施形態に係る半導体装置10と同様である。
【0068】
すでに説明したように、第1の実施形態に係る半導体装置10では、寄生NPNバイポーラトランジスタがオンしたときに、過大なESDサージ電流がシリサイド層72→第2ガードリング71→Nウェル70→P型基板90→ドレイン(N型不純物拡散層41)の経路を流れる。このサージ電流は、図10の平面図上で見て、第2ガードリング71(N型不純物拡散層)の周方向と直交する方向に流れるが、その周方向の位置と関係なく均等に流れるわけではない。すなわち、平面図上で見て寄生バイポーラトランジスタのベース幅が狭くなる範囲、すなわち、ドレイン領域40と近接した範囲は、前述した第1の実施形態に係る半導体装置10において、寄生バイポーラトランジスタの電流増幅率が高くなって、サージ電流が局所的に集中しやすくなる部位となる。
【0069】
かかる観点に鑑み、第2の実施形態に係る半導体装置11では、図10に示すように、ドレイン領域40と近接した範囲71aに対し、第2ガードリング71の幅全体にわたってシリサイドを形成しないように構成したので、サージ電流が局所的に集中することを確実に防止することができる。そのシリサイドを形成しない領域にコンタクトを配置しないようにすれば、上記サージ電流経路が遮断され、好ましい。
【0070】
また、この半導体装置11の構造によって、電源端子VDDからのサージ電流が寄生バイポーラトランジスタQ10のコレクタを流れにくくなることで、そのサージ電流が本来意図した電流経路CP1(図6参照)を流れやすくなる。
【0071】
なお、図10に見られるように、シリサイドを形成しない範囲71aが第2ガードリング71の表面の全領域の中に占める割合は小さく、かつ、N型不純物拡散層は損なわれていないので、本構造によるラッチアップ保護機能への影響はほとんどない。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置では、第2ガードリング71(第2不純物拡散層)の周方向においてNMOSトランジスタ(第1導電型トランジスタ)のドレイン領域と近接した範囲には、シリサイドが第2ガードリング71の幅(第2幅)全体に形成されないようにしたため、NMOSトランジスタの第2ガードリング71がESDサージから保護され、このガードリングによるラッチアップ保護機能が確保される。
【0073】
なお、図10に示した半導体装置11の構造では、ゲート領域30におけるゲート電極と反対側の範囲71aにシリサイドを形成しないようにしてシリサイド層72を形成したが、この構造に限られない。図12に示すように、ゲート電極の向きに関係なく、シリサイドが形成されない範囲71aを設けることもできる。
<第3の実施形態>
以下、本発明の半導体装置の第3の実施形態について、図13〜16を参照して説明する。なお、第1の実施形態に係る半導体装置と同一の部位については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0074】
すでに説明したように、第1の実施形態に係る半導体装置10では、トランジスタ形成領域20と対向する側にはシリサイドを形成しないことで、従来技術と比較するとサージ電流の局所的に集中することが生じにくくなっているが、本実施形態に係る半導体装置12は、このサージ電流の局所的に集中することをより確実に防止することを目的とした構造となっている。
【0075】
先ず、本実施形態に係る半導体装置12の構造について説明する。
【0076】
図13は、第3の実施形態に係る半導体装置12の平面図である。図14は、図13に示した半導体装置12のC−C’による断面図である。
【0077】
図13に示すように、本実施形態の半導体装置11においては、第2ガードリング71の表面上に、各々が直上にコンタクトが設けられているサブ領域751(小さく分割されたシリサイド領域)を複数有するシリサイド領域75が形成される。複数のサブ領域751は、それぞれ互いに離間して形成されている。これにより、各サブ領域751は、電気的には、N型不純物拡散層を介して高抵抗で接続された状態となっている。
【0078】
なお、図14では、シリサイド領域75は、第2ガードリング71の表面において、STI領域82側とSTI領域83側との双方でシリサイドを形成しない構造となっているが、この構造に限られない。サージ電流によって破壊されやすい部位ではないSTI領域83側では、各サブ領域751が互いに離間して形成された状態を保ちながら、接合界面BD2が示す位置(第2ガードリング71とSTI領域83との接合界面)までシリサイドを形成するようにしてもよい。
【0079】
次に、本実施形態に係る半導体装置12の動作について、図15を参照して説明する。
【0080】
図15は、半導体装置12の動作を説明するための図であって、(a)は図13におけるD−D’による断面、(b)は第2ガードリング71と入力端子IN間の電気的接続関係を示す。(b)に示すトランジスタQ79は、ドレイン(N型不純物拡散層41)、第1ガードリング61(P型不純物拡散層)、第2ガードリング71(N型不純物拡散層)がそれぞれエミッタ、ベース、コレクタとなる寄生NPNバイポーラトランジスタである。
【0081】
ここで、半導体装置12の構造では、複数のサブ領域751がそれぞれ高抵抗で接続されているので、図15に示すように、寄生パイポーラトランジスタQ79は、複数のサブ領域751の各々にコレクタが接続された複数の寄生トランジスタからなるものとして捉えることができる。図15において、たとえば、サブ領域751aは寄生トランジスタQ79aのコレクタに接続され、サブ領域751bは寄生トランジスタQ79bのコレクタに接続され、サブ領域751cは寄生トランジスタQ79cのコレクタに接続されていると考えることができる。
【0082】
そして、入力端子INに対する負極のESDサージの印加に応じて、複数の寄生トランジスタ(Q79a,Q79b,Q79c,…)の中で動作閾値が低くバイポーラ動作に入りやすい寄生トランジスタとして、たとえば寄生トランジスタQ79bがオンすると、その寄生トランジスタQ79bのコレクタ電位がエミッタ電位に引き付けられて低電位となる、すなわち、サブ領域751bが低電位となる。そうすると、サブ領域751bの周辺から、低電位となったサブ領域751bに向けて、サージ電流が集中して流れ込む状況になる。
【0083】
本実施形態に係る半導体装置12では、隣接するサブ領域751が高抵抗で接続されているため、周辺からサブ領域751bに向けて流れ込むサージ電流の経路は、図15における電流経路CP6ではなく、電流経路CP5となる。すなわち、周辺からサブ領域751bに向けて流れ込むサージ電流は、コンタクト73、金属配線74を経由してサブ領域751bへ流れ込む。したがって、サブ領域751bの周辺のシリサイド領域(751a,751c)および対応するコンタクトがコレクタ抵抗として機能し、サブ領域751b近傍におけるPN接合に対するサージ電流の局所的な集中が抑制される。すなわち、サブ領域751bの周辺からのサージ電流は、上層の金属配線まで回り込むことになり、サブ領域751bにおいて電流集中が生じにくくなる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置では、シリサイド領域75は、互いに離間して形成された複数のサブ領域751を含み、各サブ領域751は金属配線74に接続されるため、サブ領域751間のサージ電流の平面的な電流経路が遮断される。これにより、局所的なサブ領域751にサージ電流が集中しにくくなるため、NMOSトランジスタの第2ガードリングがESDサージから保護され、このガードリングによるラッチアップ保護機能が確保される。
【0085】
また、この半導体装置12の構造によって、電源端子VDDからのサージ電流が寄生バイポーラトランジスタQ79のコレクタを流れにくくなることで、そのサージ電流が本来意図した電流経路CP1(図6参照)を流れやすくなる。
【0086】
なお、本実施形態に係る半導体装置は、図13に示したように、複数のサブ領域751の各々に単一のコンタクトが形成される構造としたが、この構造に限られない。たとえば図16に示すように、各サブ領域761には複数のコンタクト(図16に示す例では2つ)が形成されるようにしてもよい。
【0087】
また、前述したように、ドレイン領域40と近接した範囲(図10に示した範囲79a)は、寄生バイポーラトランジスタの電流増幅率が高くなって、サージ電流が局所的に集中しやすくなるため、この範囲にのみ上述した構造(互いに絶縁された複数のサブ領域によって形成する構造)をとるようにしてもよい。
【0088】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成及びシステムは本実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更や、他のシステムへの適応なども含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】ESD保護回路が搭載された従来の半導体装置の一例を示す図である。
【図2】NMOSトランジスタに対して二重のガードリングを設けた従来の半導体装置の平面図である。
【図3】図2に示した従来の半導体装置のX−X’による断面図である。
【図4】従来の半導体装置の動作を説明するための図である。
【図5】第2ガードリングとP型基板とで形成されるPN接合が破壊される状態を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態に係る半導体装置が組み込まれた、ESD保護回路付の半導体装置の回路図である。
【図7】第1の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図8】図7に示した半導体装置のA−A’による断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る半導体装置の変形例の平面図である。
【図10】第2の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図11】図10に示した半導体装置のB−B’による断面図である。
【図12】第2の実施形態に係る半導体装置の変形例の平面図である。
【図13】第3の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図14】図13に示した半導体装置のC−C’による断面図である。
【図15】第3の実施形態に係る半導体装置の動作を説明するための図である。
【図16】第3の実施形態に係る半導体装置の変形例の平面図である。
【符号の説明】
【0090】
10,11,12…半導体装置
Q1〜Q5…トランジスタ
20…トランジスタ形成領域
30…ゲート領域
40…ドレイン領域
50…ソース領域
61…第1ガードリング
71…第2ガードリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型トランジスタが形成されたトランジスタ形成領域と、
第1幅をもって前記トランジスタ形成領域を取り囲む第2導電型の第1不純物拡散層であって、第1基準電位線に接続された第1ガードリングと、
第2幅をもって前記第1ガードリングを取り囲む第1導電型の第2不純物拡散層である第2ガードリングと、
前記第1導電型トランジスタのドレイン領域と対向する側にはシリサイドが形成されないようにして前記第2ガードリングの表面に形成されたシリサイド領域であって、前記第1基準電位よりも高電位の第2基準電位線に接続されたシリサイド領域と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第2ガードリングにおいて前記第1導電型トランジスタのドレイン領域と対向する端を基準として、前記第2ガードリングの表面にシリサイドが形成されない領域が所定の第3幅となることを特徴とする
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2ガードリングにおいて前記第1導電型トランジスタのドレイン領域と近接した範囲には、シリサイドが前記第2幅全体に形成されないことを特徴とする
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2ガードリングにおいて前記第1導電型トランジスタのドレイン領域と近接した範囲には、金属配線とのコンタクトが形成されないことを特徴とする
請求項1または3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記シリサイド領域は、互いに離間して形成された複数のサブ領域を含み、各サブ領域は金属配線に接続されることを特徴とする
請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記シリサイド領域は、前記第2ガードリングの周方向において前記第1導電型トランジスタのドレイン領域と最も近接した範囲に、前記複数のサブ領域を有することを特徴とする
請求項5記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−220831(P2007−220831A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38580(P2006−38580)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】