説明

半自律型無人車両の遠隔操縦システム

【課題】操縦者の意図した通りの高速走行を、安全に行うことができるようにする。
【解決手段】測距データに基づいて走行可能エリアを抽出するエリア抽出手段10aと、走行状態を取得する走行状態取得手段10bと、走行状態と走行可能エリアとに基づき、操縦限界を示す操縦限界情報を生成する操縦限界情報生成手段10cと、操縦限界情報を遠隔操縦装置に向けて送信する操縦限界情報送信手段10dと、操縦限界情報に基づき制限され、かつ、遠隔操縦装置から送出された操縦情報に従い、半自律型無人車両を走行させる自律走行手段10eとを半自律型無人車両に設けたこと、操縦限界情報を表示部に表示させる操縦限界情報表示手段と、操縦限界情報に基づき制限された操縦情報を生成する操縦情報生成手段と、電気通信回線を通じ、生成した操縦情報を半自律型無人車両に向けて送信する操縦情報送信手段とを遠隔操縦装置に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距データに基づく自律走行を行うとともに、遠隔操縦装置から送信された操縦情報による遠隔操縦を行う半自律型車両の遠隔操縦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半自律型無人車両の遠隔操縦システムとして、無人車両用走行制御装置とした名称において特許文献1に記載された構成のものがある。
特許文献1に記載された無人車両用走行制御装置は、外部の送信手段から無人車両へ送信される操舵信号等を受信する受信手段と、前記無人車両の車輪を操舵する操舵手段と、前記車輪に制動をかける制動手段と、前記無人車両の速度を検出する車速検出手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段が、前記無人車両の走行時に前記受信手段により前記操舵信号が受信された場合は前記車速検出手段により検出された前記無人車両の速度が予め設定された所定速度を超過しているか否かを判定する車速判定機能と,前記無人車両の速度が前記所定速度を超過している場合は前記制動手段を作動して前記無人車両の速度を前記所定速度まで低下させる速度制御機能と,前記無人車両の速度が前記所定速度まで低下した後に前記操舵手段を作動して操舵を開始させる操舵制御機能とを具備した構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07‐9969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、走行速度が速すぎるとステアリングの制限があることから、ステアリング指令があると、必要な速度まで無人車が自動的に減速する構成になっている。
この構成においては、操縦者が速度等の操縦に対して意図しない動作を無人車が自動的に作り出すことから、操縦者の意図した動作と異なる動きを発生させる蓋然性が高いという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、操縦者の意図した通りの高速走行を、安全に行うことができる半自律型無人車両の遠隔操縦システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、走行領域内の測距データを取得するための測距部、その走行領域の画像を撮像するための撮像部及び走行するための走行機構を有し、取得した測距データに基づく自律走行を行うとともに、遠隔操縦装置から送信された操縦情報により遠隔操縦可能な半自律型車両と、上記撮像部によって撮像した画像を表示する表示部、及びその表示部に表示された画像に基づいて半自律型無人車両を遠隔操縦するための操縦情報を送信する遠隔操縦装置とを、電気通信回線を通じて接続可能な半自律型無人車両の遠隔操縦システムであって、測距部により取得した測距データに基づいて、走行可能エリアを抽出するエリア抽出手段と、半自律型無人車両の走行状態を取得する走行状態取得手段と、取得した半自律型無人車両の上記走行状態と、抽出した走行可能エリアとに基づいて、走行のための操縦限界を示す操縦限界情報を生成する操縦限界情報生成手段と、電気通信回線を通じ、生成した操縦限界情報を遠隔操縦装置に向けて送信する操縦限界情報送信手段と、受信した操縦限界情報に基づき制限され、かつ、遠隔操縦装置から送出された操縦情報に従い、走行機構を介して半自律型無人車両を走行させる自律走行手段とを半自律型無人車両に設けたこと、生成した操縦限界情報を表示部に表示させる操縦限界情報表示手段と、操縦限界情報に基づき制限された操縦情報を生成する操縦情報生成手段と、電気通信回線を通じ、生成した操縦情報を半自律型無人車両に向けて送信する操縦情報送信手段とを遠隔操縦装置に設けたことを特徴としている。
【0007】
上記の構成においては、半自律型無人車両において、測距部により取得した測距データに基づいて走行可能エリアを抽出するとともに、半自律型無人車両の走行状態を取得し、取得した半自律型無人車両の上記走行状態と、抽出した走行可能エリアとに基づいて、走行のための操縦限界を示す操縦限界情報を生成する。
そして、電気通信回線を通じ、生成した操縦限界情報を遠隔操縦装置に向けて送信するとともに、遠隔操縦装置から送出された操縦情報に従い、走行機構を介して走行する。
【0008】
一方、遠隔操縦装置においては、生成した操縦限界情報を表示部に表示するとともに、操縦限界情報に基づき制限された操縦情報を生成し、電気通信回線を通じ、生成した操縦情報を半自律型無人車両に向けて送信している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操縦者の意図した通りの高速走行を、安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る半自律型無人車両の遠隔操縦システムの全体構成を示す説明図である。
【図2】同上の半自律型無人車両の遠隔操縦システムの一部をなす半自律型無人車両の構成を概略的に示す説明図である。
【図3】同上の半自律型無人車両に設けた制御回路のブロック図である。
【図4】半自律型無人車両に設けた車両制御用コンピュータが有する機能を示すブロック図である。
【図5】(A)は、アクセルのアクセルの操縦角度範囲、(B)は、ステアリングの操縦角度範囲を示す説明図である。
【図6】半自律型無人車両の制御フローチャートである。
【図7】(A)は、遠隔操縦装置の概略構成を示す説明図、(B)は、表示部に表示される操縦限界情報を示す説明図である。
【図8】遠隔操縦装置に設けた制御回路のブロック図である。
【図9】(A)は、ステアリング加重機構を説明するための説明図、(B)は、アクセル加重機構を説明するための説明図である。
【図10】遠隔操縦装置による遠隔操縦のメインルーチンのフローチャートである。
【図11】遠隔操縦装置による遠隔操縦のサブルーチンのフローチャートである。
【図12】アクセルとステアリングの操縦力の増減加重処理を示すフローチャートである。
【図13】ステアリング角度と指令角度との入出力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る半自律型無人車両の遠隔操縦システムの全体構成を示す説明図、図2は、その半自律型無人車両の遠隔操縦システムの一部をなす半自律型無人車両の構成を概略的に示す説明図である。また、図3は、その半自律型無人車両に設けた制御回路のブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る半自律型無人車両の遠隔操縦システムA1は、半自律型無人車両Bと、遠隔操縦装置Cとを電気通信回線を通じて接続可能に構成されている。
【0013】
半自律型無人車両Bは、一般の乗用車両のハンドル/アクセル/ブレーキを、下記の車両制御用,走行用コンピュータ10,30によって操縦できるように、各種のアクチュエータを付加した構成のものであり、その詳細は次のとおりである。
【0014】
すなわち、半自律型無人車両Bは、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなる車両制御用コンピュータ10と、同じく走行用コンピュータ30とによって制御されるようになっている(図2,3参照)。
【0015】
車両制御用コンピュータ10と、走行用コンピュータ30とは、イーサネット(登録商標)11を介して互いに接続されている。
接続方式には、イーサネット(登録商標)以外にもCAN(Controller Area Network)等の車内ネットワークを用いることができる。
【0016】
走行用コンピュータ30は、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなるものであり、これの入力ポートには、走行領域内の測距データを取得するための測距部33が接続されている。
測距部33は、走行用カメラ14,31と、レーザーセンサ(以下、「LRF」という。)32a,32bを有して構成されている(図3参照)。
【0017】
LRF32a,32bは、レーザ光の投光から受光までの時間を計測するタイムオブフライト方式による測距を行うものであり、本実施形態において示すものは、1つのレーザ光源を用い、光軸を光学的又は機械的に掃引することにより、物体の3次元的な形状を取得するスキャンタイプのものである。
本実施形態においては、一方のLRF32aが遠距離用のものであり、他方のLRF32bが近距離用のものであり、遠近を問わず走行領域をカバーできるようにしている。
【0018】
走行用カメラ14,31は、自律走行を行うときに必要な画像データを撮像するためのものであり、走行方向に向け、かつ、車幅方向において左右対称に配列されている。
【0019】
車両制御用コンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)、インターフェース回路及びメモリ(いずれも図示しない)等からなるものである。
この車両制御用コンピュータ10の入力ポートには、イーサネット(登録商標)12を介して無線LAN13と遠隔操縦用カメラ19が、また、GPS(Global Positioning System)15、バーチカルジャイロ16、車速パルス17及びオドメトリ18がそれぞれシリアル回線を介して接続されている。なお、符号20は、無線LAN13に接続されているアンテナを示している。
なお、無線LAN以外にも携帯電話、PHS、衛星回線等を用いることができることは勿論である。
【0020】
また、出力ポートには、モータドライバ21を介して、ステアリング用アクチュエータ22、ブレーキ/アクセル用アクチュエータ23がそれぞれ接続されている。
なお、図1に示す9…は走行輪であり、これらの走行輪9…とともに、モータドライバ21、ステアリング用アクチュエータ22、ブレーキ/アクセル用アクチュエータ23により走行機構Dを構成している。
【0021】
バーチカルジャイロ16は、半自律型無人車両Bの鉛直面内における傾斜姿勢、従ってまた、後述する走行用カメラ14,31、及びLRF32a,32bの光軸姿勢(向き)情報を取得するものである。
【0022】
オドメトリ18は、半自律型無人車両Bの走行輪9…の各回転量に基づいて、自己の位置情報を取得するためのセンサである。
GPS15は、半自律型無人車両Bの測位情報を取得するためのものである。
車速パルス17は、半自律型無人車両Bの走行速度を測定するためのものであり、その半自律型無人車両Bの走行速度をパルス情報として出力するものである。
【0023】
車両制御用コンピュータ10は、イーサネット(登録商標)11,無線LAN13及びアンテナ20を通じて、GPS15、バーチカルジャイロ16で取得した各種の情報を、後述する遠隔操縦装置Cに向けて送信する機能の他、その遠隔操縦装置Cから送信される操縦情報に基づき、ステアリング用アクチュエータ22、ブレーキ/アクセル用アクチュエータ23をモータドライバ21を介して駆動制御する機能を有している。
すなわち、遠隔操縦装置Cから送信される半自律型無人車両Bに対する操縦情報に基づいて、ステアリング用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23を駆動する機能を有している。
【0024】
車両制御用コンピュータ10は、図示しないメモリに記憶されている所要のプログラムの実行により、次の各機能を発揮する。図4は、半自律型無人車両に設けた車両制御用コンピュータが有する機能を示すブロック図である。
【0025】
(1)測距部により取得した測距データに基づいて、走行可能エリアを抽出する機能。これを「エリア抽出手段10a」という。
本実施形態においては、LRF32a,32bにより取得したレーザー光データと、走行用カメラ14,31により撮像した画像データの双方に基づき、走行領域内における走行可能エリアを抽出している。
なお、走行用カメラ14,31により撮像した画像データのみに基づき、また、LRF32により取得したレーザー光データのみに基づいて走行領域内における走行可能エリアを抽出するようにしてもよい。
【0026】
(2)半自律型無人車両Bの走行状態を取得する機能。これを「走行状態取得手段10b」という。
本実施形態において示す「走行状態」は、半自律型無人車両Bの走行速度、操舵角及び傾き(水平面に対する)である。
これらのデータは、上記した車速パルス17、オドメトリ18及びバーチカルジャイロ16によって取得している。
【0027】
走行速度の上限値は、次のようにして設定している。
安全距離:xs=xb+xdr+zc zc:追加距離(安全余裕)
安全距離は、半自律型無人車両Bから障害物までの距離のことである。
制動距離:xb=Br(v) 一般にxb∝v2
空走距離:xdr=vtd v:走行速度
空走時間:td=tds+tdc+tdt tds:センサ応答時間
tdc:コントローラ応答時間
tdt:通信遅延時間
安全性を重視した管理距離
v=vmax vmax:車両の最大速度
【0028】
(3)取得した半自律型無人車両Bの走行状態と、抽出した走行可能エリアとに基づいて、走行のための操縦限界を示す操縦限界情報を生成する機能。これを「操縦限界情報生成手段10c」という。
図5(A)は、操縦限界情報に含まれるアクセルの操縦角度範囲、(B)は、操縦限界情報に含まれるステアリングの操縦角度範囲を示す説明図である。
本実施形態においては、後述する遠隔操縦装置Cが有する遅延時間算出手段51aによって算出した遅延時間に応じた操縦限界情報α1,α2を生成している。
「操縦限界情報」は、後述するステアリングホイール56の操縦角度範囲と、アクセルペダル57の操縦角度範囲とを含んでいる。
なお、以下にはステアリングホイールを単にステアリング、また、アクセルペダルを単にアクセルという。
【0029】
「アクセルの操縦角度範囲」には、半自律型無人車両Bを安全な走行状態に保持できる操縦可能角度範囲40a、その走行状態が不安定になる操縦警戒角度範囲40bと、当該走行状態が危険になる操縦危険角度範囲40cとを含んでいる。
【0030】
「ステアリングの操縦角度範囲」には、半自律型無人車両Bを安全な走行状態に保持できる操縦可能角度範囲41a、その走行状態が不安定になる操縦警戒角度範囲41b,41bと、当該走行状態が危険になる操縦危険角度範囲41cとを含んでいる。
なお、40d,41dは、実際のアクセル,ステアリングの操縦角度に対応するインジケータである。
【0031】
(4)電気通信回線を通じ、生成した操縦限界情報を遠隔操縦装置Cに向けて送信する機能。この機能を「操縦限界情報送信手段10d」という。
【0032】
(5)遠隔操縦装置Cから送出された操縦情報に従い、走行機構Dを介して半自律型無人車両Bを走行させる機能。これを「自律走行手段10e」という。
「操縦情報」は、少なくとも走行方向、走行速度及び半自律型無人車両Bの加減速データを含むものである。
【0033】
次に、図6を参照して、半自律型無人車両の制御フローチャートについて説明する。図6は、半自律型無人車両の制御フローチャートである。
<半自律型無人車両側の制御フローチャート>
ステップ1(図中、「S1」と略記する。以下、同様。):各部の初期化処理を行ってステップ2に進む。
【0034】
ステップ2:遠隔操縦装置Cから送信された操縦者Qによる操縦情報及びコマンドを受信して、ステップ3に進む。
ステップ3:終了コマンドを受信したか否かを判定し、終了コマンドを受信すればステップ10に進んで、そうでなければステップ4に進む。
【0035】
ステップ4:カメラ14,31とLRF32a,32bによって走行領域を認識するとともに、走行可能エリアを抽出して、ステップ5に進む。
すなわち、測距部33により取得した測距データに基づいて、環境地図を作成する機能(この機能を「地図作成手段」という。)を有しており、LRF32a,32bにより取得したレーザー光データに基づいて環境地図を作成し、その環境地図に基づいて走行領域を認識するとともに、走行可能エリアを抽出している。
なお、作成した環境地図は、自律走行制御コンピュータ10内のメモリ(図示しない)に順次記憶されていくようになっている。
【0036】
ステップ5:ステアリング,アクセルの操縦情報を受信して、ステップ6に進む。
ステップ6:操縦情報に含まれる角度となるようにステアリング,アクセルをアクチュエータで駆動する。
ステップ7:半自律型無人車両Bの走行状態を取得して、ステップ8に進む。
ステップ8:走行のための操縦限界情報α1,α2を生成する。
ステップ9:操縦限界情報α1,α2及び認識結果を重畳した画像を、遠隔操縦装置Cに向けて送信する。
ステップ10:終了処理を行う。
【0037】
次に、遠隔操縦装置について、図7〜11を参照して説明する。図7(A)は、遠隔操縦装置の概略構成を示す説明図、(B)は、表示部に表示される操縦限界情報を示す説明図である。また、図8は、遠隔操縦装置に設けた制御回路のブロック図、図9(A)は、ステアリング加重機構を説明するための説明図、(B)は、アクセル加重機構を説明するための説明図である。
本実施形態において示す遠隔操縦装置Cは、装置本体50上にディスプレイ60を配設した外観構成になっている。
【0038】
装置本体50内には、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなる入出力ポートに、無線LAN52、回転角センサ53、ステアリング加重機構54、アクセル加重機構55、ディスプレイ60、ステアリング56、アクセル57を接続した制御装置51が配設されている。なお、符号58で示すものはアンテナである。
【0039】
装置本体50は、図7(A)に示すように、基台62の一端部に操作盤63が起立して配設されており、その操作盤63の上部にステアリング56が、また、その下部にアクセル57がそれぞれ配設されている。
操縦者Qは、基台62に配設された椅子64に腰掛けた状態で、ステアリング56とアクセル57の操縦を行えるようにしている。
【0040】
ステアリング56は、半自律型無人車両Bの走行方向を操縦するためのものであり、これには、図7(A),図9に示すステアリング加重機構54と回転角センサ53とが取り付けられている。
本実施形態において示すステアリング加重機構54は、ステアリング56の上記した操縦警戒角度範囲40b,41bにおいて、そのステアリング56の操縦力を増減加重するものであり、本実施形態においては、アクチュエータ54aを有する構成になっている。
【0041】
アクセル57は、半自律型無人車両Bの加減速を操縦するためのものであり、これには、上記したアクセル加重機構55が取り付けられている。
アクセル加重機構55は、アクセル57の操縦力を加重するものであり、図9に示す仮想バネの挙動を示すようにしている。
【0042】
ディスプレイ60には、上記したカメラ14,31によって撮像した走行領域の画像、走行可能エリア、上記した操縦限界情報α1,α2等が表示されるようになっている。
【0043】
制御装置51は、所要のプログラムの実行により次の各機能を発揮する。
(6)半自律型無人車両Bと遠隔操縦装置Cとの間における通信遅延時間を算出する機能。この機能を「遅延時間算出手段51a」という。
本実施形態においては、半自律型無人車両Bと遠隔操縦装置Cの間において、pingの要領でデータの往復時間を推定している。
また、半自律型無人車両Bと遠隔操縦装置C双方にGPSを搭載しておき、そのGPSを用いて双方のコンピュータによって精度の高い時刻同期を行い、受信したデータのタイムスタンプに基づいて遅延時間を推定するようにしてもよい。
【0044】
(7)ステアリング56の上記した操縦警戒角度41bに応じて、ステアリング加重機構54によってステアリング56の操縦力を増減加重する機能。この機能を「ステアリング増減加重手段51b」という。
具体的には、ステアリング56の操縦角度が大きくなるに従って大きな力が必要となるようにしている。
【0045】
(8)アクセル57の操縦警戒角度40bに応じて、アクセル加重機構55によってアクセル57の操縦力を増減加重する機能。この機能を「アクセル増減加重手段51c」という。
具体的には、アクセル57の踏込み角度が大きくなるに従って大きな力が必要となるようにしている。
【0046】
(9)生成した上記操縦限界情報をディスプレイ60に表示させる機能。この機能を「操縦限界情報表示手段51d」という。
本実施形態においては、図7(B)に示すように、上記の操縦限界情報を走行可能エリア(図示しない)等に透過重畳表示させているが、これに限るものではなく、走行可能エリア等の側方に表示させるようにしてもよい。
【0047】
(10)操縦限界情報に基づき制限された操縦情報を生成する機能。この機能を「操縦情報生成手段51e」という。
この機能については、以下の図11において詳細に説明する。
【0048】
(11)電気通信回線を通じ、生成した操縦情報を半自律型無人車両Bに向けて送信する機能。この機能を「操縦情報送信手段51f」という。
【0049】
次に、図10,11を参照して、遠隔操縦装置による遠隔操縦について説明する。図10は、遠隔操縦装置Cによる遠隔操縦のメインルーチンのフローチャート、図11は、サブルーチンのフローチャートである。
【0050】
ステップ1(図中、「S1」と略記する。以下、同様。):各部の初期化処理を行ってステップ2に進む。
ステップ2:半自律型無人車両Bから送信された車両情報(速度等)、操縦限界情報α1,α2及びコマンドを受信して、ステップ3に進む。
ステップ3:通信遅延時間を算出して、ステップ4に進む。
【0051】
ステップ4:カメラ14,31で撮像した画像に、算出した通信遅延時間による半自律型無人車両Bの走行量を補正した上で、遠隔操縦用カメラ19で撮像した画像に操縦限界情報α1,α2、受信した走行可能エリアの認識結果、及び受信した車両情報を重畳表示してステップ5に進む。
【0052】
ステップ5:ディスプレイ60に表示されている、カメラ14,31で撮像した画像に操縦限界情報α1,α2、受信した走行可能エリアの認識結果、及び受信した車両情報を参照しながら、アクセル57、ステアリング56を操縦する。
【0053】
ステップ6:操縦力増減加重処理を行うとともに、操縦限界情報に基づき制限された操縦情報を生成する。具体的には、次のとおりである。
なお、以下にはステアリング56の操縦力を増減加重する場合について説明するが、アクセル57の操縦力についても、同様にして増減加重するようにしているので、本実施形態においては、アクセル57の操縦力の増減加重についての説明を省略する。
τ=0 θ<θ
τ=K(θ−θ) θ<θ<θ
τ=τmax θ<θ
k:回転バネ定数
θ:ステアリング角度
θ:警戒角度
(走行速度・外部環境から計算される、これ以上きる(加速する)と半自律型無人車両Bが不安定になるステアリング角度・加速度)
θ:危険角度
(走行速度・外部環境から計算される、これ以上きる(加速する)と半自律型無人車両Bが危険になるステアリング角度・加速度)
θ0:指令角度
【0054】
ステップ6a:ステアリング56の操縦入力角度θを入力して、ステップ6bに進む。
ステップ6b:操縦入力角度θと指令角度θ0とを比較して、θ<θの場合にはステップ6cに、θ<θ<θの場合にはステップ6dに、また、θ<θの場合にはステップ6eに進む。
【0055】
ステップ6c:ステアリング56の操縦力τを「0」にして、ステップ6fに進む。
【0056】
ステップ6d:ステアリング56の操縦力τをK(θ−θ)にして、ステップ6fに進む。
ステップ6e:ステアリング56の操縦力τをτmaxにして、ステップ6fに進む。なお、τmaxは予め設定した操縦力である。
【0057】
ステップ6f:ステアリング56の操縦力τが、上記ステップ6c,6d,6eで設定した値になるとなるように、ステアリング用アクチュエータ22のトルク制御を行う。
上記したステップ6b〜6fの制御は、遠隔操縦装置Cにおけるステアリング56の操縦力を制御する一連の処理である。
【0058】
ステップ6g:ステアリング角度θと危険角度θとを比較して、ステアリング角度θ>θであればステップ6iに進み、そうでなければステップ6hに進む。
ステップ6h:指令角度θ0をステアリング角度θとしてステップ6jに進む。
【0059】
ステップ6i:指令角度θ0を危険角度θとしてステップ6jに進む。
ステップ6j:半自律型無人車両B側のステアリング25の操縦情報(指令角度θ0)を出力して、ステップ6bに戻る。
【0060】
ステップ7:アクセル57と、ステアリング56の操縦力を増減加重する。その詳細を図11に示す。
【0061】
次に、上述したステップ6における操縦限界情報に基づき制限された操縦情報を生成する処理の他例について図12を、また、合わせてステアリングの操縦力の増減加重の例について図13をそれぞれ参照して説明する。図12は、操縦限界情報に基づき制限された操縦情報を生成する処理の他例を示すフローチャート、図13は、ステアリング角度と指令角度との入出力特性を示すグラフである。
【0062】
本例においては、警戒角度θ以上のステアリング56の操縦を禁止するステアリング操縦禁止手段51g(図8参照)を設けた構成のものである。
本実施形態においては、操作盤63に許否設定スイッチ65(図8参照)を配設するとともに、その許否設定スイッチ65のオン/オフを判定するスイッチ状態判定手段51fと、当該許否設定スイッチ65がオンであると判定したときには、ステアリング操縦禁止手段51gが、ステアリング56の危険角度範囲以上の操縦を禁止するようにしている。
具体的には、次のとおりである。
【0063】
ステップ6a′:ステアリング56のステアリング角度θを入力して、ステップ6b′に進む。
ステップ6b′:ステアリング角度θと警戒角度θとを比較して、θ>θの場合にはステップ6d′に進み、θ<θの場合にはステップ6c′に進む。
【0064】
ステップ6c′:指令角度θ0をステアリング角度θにして、ステップ6h′に進む。
ステップ6d′:許否設定スイッチ65のオン/オフを判定し、その許否設定スイッチ65がオンであると判定されればステップ6f′に進み、そうでなければステップ6e′に進む。
【0065】
ステップ6e′:ステアリング56のステアリング角度θを警戒角度θにして、ステップ6h′に進む。
すなわち、図13に示すように、許否設定スイッチ65がオフのときには、(ア)で示すように警戒角度θに出力が制限されるのである。
【0066】
ステップ6f′:ステアリング56のステアリング角度θが危険角度θ以上であるか否かを判定し、そのステアリング角度θが危険角度θ以上であると判定したときにはステップ6g′に進み、そうでなければステップ6h′に進む。
ステアリング角度θが危険角度θに達しないときには、ステアリング56に作用する加重が増加しながらも操縦可能になっている。換言すると、ステアリング56の操縦角度が大きくなるに従って大きな力が必要となるようにしている。
【0067】
ステップ6g′:ステアリング56のステアリング角度θを危険角度θにしてステップ6h′に進む。
すなわち、図13に示すように、許否設定スイッチ65がオンのときには、(イ)で示すように危険角度θに出力が制限されるのである。
ステップ6h′:ステアリング56のステアリング角度θ0を半自律型無人車両Bに向けて出力する。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・上述した実施形態においては、ステアリング角度θを、θ<θ、θ<θ<θ、及びθ<θ等に区分して、それぞれ対応する加重を加える例についてしたが、これに限るものではなく、例えば一定の角度毎に、これ対応する加重を加えるようにしてもよい。
【0069】
・精度を補完する機能を付加する場合、次のようにすることができる。
車速パルスの補完として、車両の速度(積分して)/車両の傾き(重力を検出して)を測定するための加速度センサ、車両の速度を算出するためのタコメータを設けた構成にしてもよい。
・バーチカルジャイロの補完として、車両の傾き(水平面に対する)を検出するための傾斜角センサを配設してもよい。
【0070】
・上述した実施形態においては、車両制御用コンピュータと、走行用コンピュータの2つのコンピュータにより、半自律型無人車両全体を制御するものを例として説明したが、それら2つのコンピュータに分担させることなく、単一のコンピュータで制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10a エリア抽出手段
10b 走行状態取得手段
33 測距部
40c,41c 操縦危険角度範囲
51a 遅延時間算出手段
51b ステアリング増減加重手段
51c アクセル増減加重手段
51d 操縦限界情報表示手段
51e 操縦情報生成手段
51f 操縦情報送信手段
51g ステアリング操縦禁止手段
54 ステアリング加重機構
55 アクセル加重機構
56 ステアリングホイール
57 アクセルペダル
60 表示部(ディスプレイ)
B 半自律型無人車両
C 遠隔操縦装置
D 走行機構
α1,α2 操縦限界情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行領域内の測距データを取得するための測距部、その走行領域の画像を撮像するための撮像部及び走行するための走行機構を有し、取得した測距データに基づく自律走行を行うとともに、遠隔操縦装置から送信された操縦情報による遠隔操縦を行う半自律型車両と、上記撮像部によって撮像した画像を表示する表示部、及びその表示部に表示された画像に基づいて半自律型無人車両を遠隔操縦するための操縦情報を送信する遠隔操縦装置とを、電気通信回線を通じて接続可能な半自律型無人車両の遠隔操縦システムであって、
測距部により取得した測距データに基づいて、走行可能エリアを抽出するエリア抽出手段と、
半自律型無人車両の走行状態を取得する走行状態取得手段と、
取得した半自律型無人車両の上記走行状態と、抽出した走行可能エリアとに基づいて、走行のための操縦限界を示す操縦限界情報を生成する操縦限界情報生成手段と、
電気通信回線を通じ、生成した操縦限界情報を遠隔操縦装置に向けて送信する操縦限界情報送信手段と、
遠隔操縦装置から送出された操縦情報に従い、走行機構を介して半自律型無人車両を走行させる自律走行手段とを半自律型無人車両に設けたこと、
生成した操縦限界情報を表示部に表示させる操縦限界情報表示手段と、
操縦限界情報に基づき制限された操縦情報を生成する操縦情報生成手段と、
電気通信回線を通じ、生成した操縦情報を半自律型無人車両に向けて送信する操縦情報送信手段とを遠隔操縦装置に設けたことを特徴とする半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項2】
遠隔操縦装置には、半自律型無人車両を操縦するためのステアリングが配設されており、
操縦限界情報は、ステアリングの操縦角度範囲を含むことを特徴とする請求項1に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項3】
ステアリングの操縦角度範囲は、半自律型無人車両の走行状態が不安定になるステアリングの操縦警戒角度範囲を含むことを特徴とする請求項2に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項4】
ステアリングの操縦角度範囲は、半自律型無人車両の走行状態が危険になるステアリングの操縦危険角度範囲を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項5】
ステアリングの操縦警戒角度範囲において、ステアリングの操縦力を加重するステアリング加重機構を設けていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項6】
ステアリングの操縦警戒角度に応じ、ステアリング加重機構によってステアリングの操縦力を増減加重するステアリング増減加重手段を設けていることを特徴とする請求項5に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項7】
遠隔操縦装置には、半自律型無人車両を操縦するためのアクセルが配設されており、
操縦限界情報は、アクセルの操縦角度範囲を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項8】
操縦限界情報は、半自律型無人車両の走行状態が不安定になるアクセルの操縦警戒角度範囲を含むことを特徴とする請求項7に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項9】
操縦限界情報は、半自律型無人車両の走行状態が危険になるアクセルの操縦危険角度範囲を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項10】
アクセルの操縦警戒角度範囲において、アクセルの操縦力を加重するアクセル加重機構を設けていることを特徴とする請求項8又は9に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項11】
アクセルの操縦警戒角度に応じて、アクセル加重機構によってアクセルの操縦力を増減加重するアクセル増減加重手段を設けていることを特徴とする請求項10に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項12】
許否設定スイッチと、
許否設定スイッチのオン/オフを判定するスイッチ状態判定手段と、
その許否設定スイッチがオンであると判定したときには、ステアリングの危険角度範囲以上の操縦を禁止するステアリング操縦禁止手段とを遠隔操縦装置に設けたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項13】
電気通信回線を通じた半自律型無人車両と遠隔操縦装置との通信遅延時間を算出する遅延時間算出手段が設けられており、
操縦限界情報生成手段は、算出した遅延時間に応じた操縦限界情報を生成することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−43884(P2011−43884A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189980(P2009−189980)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】