説明

回転処理装置

【目的】 半導体ウェーハW等の下面周縁部のみを吸着しても撓みが発生し難い回転処理装置を提供する。
【構成】 吸引チャック5の上部形状は周縁部が内側部よりも高くなった皿状をなし、周縁部の上面には半導体ウェーハWの製品とならない外縁部分を吸着するための吸引溝9が形成されている。この吸引溝9上に半導体ウェーハWの下面周縁部の製品にならない部分が載置されるようにする。そして、吸引溝9を介して半導体ウェーハWの下面周縁部を吸引する。吸引溝9は平面視で円形状をなすように形成されているため、半導体ウェーハWの下面周縁部の全周が吸引され、撓みが発生し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基板や半導体ウェーハ等の板状被処理物に対し、現像液、洗浄液、SOG溶液、レジスト溶液等を塗布する回転処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハやガラス基板等の板状被処理物の表面に塗布液や現像液等の液体を供給する装置は、特許文献1に開示されるように、カップ内に配置した吸引チャック上に板状被処理物を載置し、次いで吸引チャックで板状被処理物を保持するとともに板状被処理物の中心部に塗布液や現像液等の液体を供給し、この後引き続いて吸引チャックを回転せしめることで板状被処理物も一体的に回転させ、この回転によって生じる遠心力にて供給した液体を板状被処理物の表面全体に均一に行き渡らすようにしている。
【0003】
上述した装置は製品となる板状被処理物の中央部の下面を吸引チャックで吸着するため、表裏両面に回路を形成した半導体ウェーハなどの吸着には使用することができない。
【0004】
板状被処理物の中央部を避けて吸着する先行技術として、特許文献2が挙げられる。この先行技術ではチャック上面の周縁部に等間隔で4個の真空吸着パッドを設け、板状被処理物の裏面周縁部を保持するようにしている。
【特許文献1】特開平7−284716号公報
【特許文献2】特開平6−244093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2にあっては基板の中央部を避けて吸着することができるが、真空吸着パッド間の距離が大きく、板状被処理物の寸法が大きく且つ薄い場合(ガラス基板やセラミック基板の場合には、厚さ0.7mm以下、大きさ150mm角以上、半導体ウェーハの場合には厚さ200μm以下、大きさ8インチ以上)には、前記真空吸着パッド間において板状被処理物が撓んでしまう。
【0006】
また、特許文献2にあっては板状被処理物の裏面外周部に廻り込んだ液を除去する手段が示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る回転処理装置は、カップ内に吸引チャックを配置し、この吸引チャックで板状被処理物を保持して回転せしめることで板状被処理物表面に供給した液体を板状被処理物の表面全体に行き渡らすようにした回転処理装置であって、前記吸引チャックは、平面視で板状被処理物と相似形で且つ板状被処理物よりも小寸法とされ、また周縁部が内側部よりも高くなった皿状をなし、前記周縁部の上面には板状被処理物の製品とならない外周部分を吸着するための吸引溝が形成された構成とした。
【0008】
また、前記吸引チャックには板状被処理物を吸着した状態で吸引チャック上面と板状被処理物下面との間に形成される空間と外部とを連通する呼吸穴を形成することが好ましい。呼吸穴を形成することで、板状被処理物が負圧によって内側(下方)に撓むことを防止できる。
【0009】
また、前記吸引チャックの外側には板状被処理物の裏面外周縁に洗浄液を噴出する洗浄ノズルが配置され、この洗浄ノズルの取り付け角は基端部よりも上端部が外側になり且つ板状被処理物の回転方向を基準にして洗浄ノズルの軸線と板状被処理物とが鋭角になるようにすることができる。このようにすることで、余分な塗布液の廻りこみ及び洗浄液がチャックに接触することを有効に阻止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、板状被処理物に殆んど撓みを生じさせることなく、しかも製品とならない板状被処理物の裏面外縁部のみを吸着保持できる。したがって、両面に回路を形成した板状被処理物の処理装置として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る回転処理装置の縦断面図、図2は吸引チャックと洗浄ノズルの関係を示す側面図、図3は吸引チャックの要部拡大図、図4は同回転処理装置の平面図、図5は吸引チャックの分解図である。
【0012】
回転処理装置はベースプレート1にカップ2を固定し、このカップ2には上部開口3及び下部開口4が形成され、上部開口3は板状被処理物である半導体ウェーハWの受渡し用として用いられ、下部開口4には吸引チャック5の軸6が挿通している。またカップ2内には半導体ウェーハWの外縁部から遠心力で飛散した塗布液をドレン穴7まで導くガイド8が設けられている。
【0013】
前記吸引チャック5の上部は、平面視で半導体ウェーハWと相似形で且つ板状被処理物よりも小寸法とされている。尚、半導体ウェーハWには位置決め用のオリエンテーションフラット部が設けられているが、この部分に関しては相似形の中に反映していない。
【0014】
また、吸引チャック5の上部形状は周縁部が内側部よりも高くなった皿状をなし、周縁部の上面には半導体ウェーハWの製品とならない外縁部分を吸着するための吸引溝9が形成されている。この吸引溝9は半導体ウェーハWの裏面で製品とならない外縁部分に対向する位置に設けられる。また、吸引溝9は水平方向の吸引穴10、前記軸6に形成した連通穴11、12を介して真空ポンプなどにつながっている。吸引溝9の幅は、0.5mm〜1.5mmであり、好ましくは0.5mm〜1.0mmである。吸着部9’の幅は 1.5mm〜5.0mmであり、好ましくは2.5mmである。上記範囲とすることにより吸着性が良好となる。
呼吸穴10の数は3〜6個が好ましく、4〜5個が最も好ましい。上記範囲とすることにより、空間S内が極端な負圧にならず、撓みが発生し難い。
【0015】
この実施例では、図3に示すように、吸引チャック5の上部を上半体5aを下半体5bに嵌め込むことで形成している。上半体5aの外縁部には前記吸引溝9が形成され、上半体5aの下面には吸引穴10が形成されている。
【0016】
更に、前記吸引チャック5の上部には半導体ウェーハWを吸着した状態で吸引チャック5上面と半導体ウェーハW下面との間に形成される空間Sと外部とを連通する呼吸穴13が形成されている。
一方、カップ2の内周部分には保持ブロック14が設けられ、この保持ブロック14に洗浄ノズル15がその噴出口が前記吸引チャック5の一段高くなった周縁部の外側に位置するように取り付けられている。また保持ブロック14と前記吸引チャックの下半体5b下面との間にはラビリンスパッキン部16を形成している。半導体ウェーハWと洗浄ノズル15との距離は、0.5mm〜1.5mm離すことが好ましく、最も好ましくは1mmである。この範囲とすることにより、半導体ウェーハW表面への回り込みを防止することが可能となる。
【0017】
前記洗浄ノズル15の取り付け角は、基端部よりも上端部が外側になり且つ半導体ウェーハWの回転方向を基準にして洗浄ノズル15の軸線と半導体ウェーハWとのなす角θが鋭角になるようにされている。θは40°〜80°であり、好ましくは60°である。上記範囲とすることにより、洗浄液が半導体ウェーハW表面に回りこむことを防止することができ、かつチャックが洗浄液に接触することを防止することが可能となる。
また、洗浄ノズル15は半導体ウェーハWの中心線に対しθは35°〜50°であり、好ましくは45°が望ましい。
【0018】
以上において、半導体ウェーハWの表面に塗布処理を行うには、吸引チャック5をカップ2の上部開口3よりも高い位置まで上昇させ、搬送手段によって搬送されてきた半導体ウェーハWを吸引チャック5に受け渡す。この場合、吸引チャック5の吸引溝9上に半導体ウェーハWの下面周縁部の製品にならない部分が載置されるようにする。
【0019】
そして、吸引溝9を介して半導体ウェーハWの下面周縁部を吸引する。このとき吸引溝9は平面視で円形状をなすように形成されているため、半導体ウェーハWの下面周縁部の全周が吸引され、撓みが発生し難い。
【0020】
吸引溝9で半導体ウェーハWの下面周縁部を吸着固定した後、半導体ウェーハW表面の中心部に塗布液を滴下し(例えば、800〜1200cpの塗布液、好ましくは1000cp)、吸引チャック5を回転させ(回転数は、1500〜2500rpmであり、好ましくは2000rpmで、回転時間は25〜50秒であり、好ましくは30秒である。)、遠心力で塗布液を半導体ウェーハW表面に拡散せしめる。このとき半導体ウェーハW下面と吸引チャック5上面との間の空間Sは呼吸穴13を介して外部と連通しているため、空間S内が極端な負圧にならず、撓みが発生し難い。
本発明の回転処理装置は、厚膜を形成する際の厚膜用コーターとして好ましく用いることができる。厚膜を形成する際に用いる塗布液の粘性は高いため、回転塗布時に基板の端部の塗布液が綿状に糸を引く現象が発生する。その際に、上記洗浄ノズル15から洗浄液を供給しながら回転させることにより、塗膜形成後の基板端部に綿状のものを効果的に除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る回転処理装置の縦断面図
【図2】吸引チャックと洗浄ノズルの関係を示す側面図
【図3】吸引チャックの要部拡大図
【図4】同回転処理装置の平面図
【図5】吸引チャックの分解図
【符号の説明】
【0022】
1…ベースプレート、2…カップ、3…カップの上部開口、4…カップの下部開口、5…吸引チャック、5a…吸引チャックの上部半体、5b…吸引チャックの下部半体、6…吸引チャックの軸、7…ドレン穴、8…ガイド、9…吸引溝、10…吸引穴、11、12…連通穴、13…呼吸穴、14…保持ブロック、15…洗浄ノズル、16…ラビリンスパッキン部、W…半導体ウェーハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ内に吸引チャックを配置し、この吸引チャックで板状被処理物を保持して回転せしめることで板状被処理物表面に供給した液体を板状被処理物の表面全体に行き渡らすようにした回転処理装置において、前記吸引チャックは、平面視で板状被処理物と相似形で且つ板状被処理物よりも小寸法とされ、また周縁部が内側部よりも高くなった皿状をなし、前記周縁部の上面には板状被処理物の製品とならない外周部分を吸着するための吸引溝が形成されていることを特徴とする回転処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転処理装置において、前記吸引チャックには板状被処理物を吸着した状態で吸引チャック上面と板状被処理物下面との間に形成される空間と外部とを連通する呼吸穴が形成されていることを特徴とする回転処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の回転処理装置において、前記吸引チャックの外側には板状被処理物の裏面外周縁に洗浄液を噴出する洗浄ノズルが配置され、この洗浄ノズルの取り付け角は基端部よりも上端部が外側になり且つ板状被処理物の回転方向を基準にして洗浄ノズルの軸線と板状被処理物とが鋭角になるようにされていることを特徴とする回転処理装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−109249(P2010−109249A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281401(P2008−281401)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】