説明

基板処理装置、及び成膜システム

【課題】1つの実施形態は、例えば、CVD装置による成膜処理に対する新規な前処理を行うことができる基板処理装置及び成膜システムを提供することを目的とする。
【解決手段】1つの実施形態によれば、CVD装置による成膜処理を行う基板の前処理を行なうための基板処理装置であって、前記基板を保持する基板ステージが配された基板処理室と、前記基板処理室内で前記基板ステージを介して前記基板を加熱する加熱部と、前記基板処理室内で、前記加熱部により加熱された前記基板の表面を酸化する酸化処理部と、前記基板処理室内で、前記酸化処理部により酸化された前記基板の表面に有機溶剤を塗布する塗布処理部とを備えたことを特徴とする基板処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置、及び成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の大容量化・コストダウンの要求に答えるため、素子の微細化が加速している。素子の微細化に伴い、半導体基板に溝又は穴(以下、溝等とする)を形成してCVD装置によりその溝等に絶縁物を埋め込んで形成すべきSTI型の素子分離部の幅も細くなってきている。また、素子の微細化に伴い、所定の膜に溝等を形成してCVD装置によりその溝等に絶縁物を埋め込んで形成すべき所定の構造の幅も細くなってきている。このように、絶縁物を埋め込むための溝等のアスペクト比が高くなると、CVD装置による溝等への絶縁物の埋め込み性が不十分になることが懸念される。CVD装置による絶縁物の溝等への埋め込み性が不十分になると、それにより製造される半導体装置の信頼性を低下させる可能性がある。CVD装置による絶縁物の溝等への埋め込み性を向上するための前処理を行う装置の開発が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−151510号公報
【特許文献2】特表2002−502108号公報
【特許文献3】特開2002−289680号公報
【特許文献4】特開2006−253621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの実施形態は、例えば、CVD装置による成膜処理に対する新規な前処理を行うことができる基板処理装置及び成膜システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態によれば、CVD装置による成膜処理を行う基板の前処理を行なうための基板処理装置であって、前記基板を保持する基板ステージが配された基板処理室と、前記基板処理室内で前記基板ステージを介して前記基板を加熱する加熱部と、前記基板処理室内で、前記加熱部により加熱された前記基板の表面を酸化する酸化処理部と、前記基板処理室内で、前記酸化処理部により酸化された前記基板の表面に有機溶剤を塗布する塗布処理部とを備えたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態にかかる成膜システムの構成を示す図。
【図2】第1の実施形態にかかる成膜システムの動作を示す図。
【図3】第1の実施形態にかかる成膜システムによる半導体装置の製造方法を示す図。
【図4】第1の実施形態の変形例にかかる成膜システムによる半導体装置の製造方法を示す図。
【図5】第1の実施形態の他の変形例にかかる成膜システムの構成を示す図。
【図6】第1の実施形態の他の変形例にかかる成膜システムの構成を示す図。
【図7】第2の実施形態にかかる成膜システムの構成を示す図。
【図8】第2の実施形態におけるスプレーノズルの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる成膜システムを詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態にかかる成膜システム300の構成について図1を用いて説明する。図1は、成膜システム300の構成を示す断面図である。
【0009】
成膜システム300は、基板処理装置100、ロードロック室LD1(図5参照)、及びCVD装置200を備える。
【0010】
基板処理装置100は、CVD装置200による成膜処理を行うべき基板Wの前処理を行うための装置である。すなわち、基板Wは、CVD装置200により絶縁物を埋め込むべき溝又は穴(以下、溝等とする)を表面に有している。基板処理装置100は、CVD装置200による絶縁物の溝等への埋め込み性を向上するための前処理を行う。
【0011】
基板処理装置100は、例えばCVD装置200に隣接して配されている。このとき、基板処理装置100の外壁101とCVD装置200の外壁201とが一体化されていても良い。また、基板処理装置100における基板処理室CH1の圧力制御部50(51、53、52)とCVD装置200における基板処理室CH4の圧力制御部(251、53、52)とが一部共通化されていても良い。図1では、排気管53及び圧力コントローラ52が基板処理装置100とCVD装置200との間で共通化された構成例が示されている。排気管53は、基板処理室CH1から延びた排気管51と基板処理室CH4から延びた排気管251とに接続されている。圧力コントローラ52は、基板処理室CH1の圧力と基板処理室CH4の圧力とを略同じ圧力に調整する。
【0012】
ロードロック室LD1(図5参照)は、例えば、基板処理装置100及びCVD装置200に隣接して配されている。ロードロック室LD1は、基板Wを大気開放せずに基板処理装置100からCVD装置200へ搬送することを媒介する。具体的には、ロードロック室LD1には、基板処理装置100による前処理を施された基板Wが基板処理装置100の基板処理室CH1から搬入される。その後、基板Wは、ロードロック室LD1からCVD装置200の基板処理室CH4へ搬出される。
【0013】
なお、基板処理装置100における基板処理室CH1の圧力制御部(51、53、52)とCVD装置200における基板処理室CH4の圧力制御部(251、53、52)とが共通化されておらず、基板処理室CH1の圧力と基板処理室CH4の圧力とが異なる圧力に調整される場合、ロードロック室LD1には、圧力制御部(図示せず)が設けられていることが好ましい。すなわち、この圧力制御部は、基板Wが搬入された後、ロードロック室LD1の圧力を基板処理室CH4の圧力に略等しくなるように調整する。これにより、ロードロック室LD1の圧力が基板処理室CH4の圧力に略等しくなった状態で、基板Wが基板処理室CH4へ搬出される。
【0014】
CVD装置200は、基板処理室CH4内で、基板処理装置100による前処理を施された基板Wに絶縁物の成膜処理を施す。所定の絶縁膜は、オゾンTEOS膜である。なお、CVD装置200は、APCVD(常圧CVD)法で成膜処理を行ってもよいし、SACVD(準常圧CVD)法で成膜処理を行ってもよいし、LPCVD(減圧CVD)法で成膜処理を行ってもよいし、加圧CVD法で成膜処理を行ってもよいし、プラズマCVD法で成膜処理を行ってもよい。CVD装置200がAPCVD法で成膜処理を行う場合、圧力コントローラ52は、基板処理室CH4の圧力をほぼ大気圧に調整する。CVD装置200がSACVD法で成膜処理を行う場合、圧力コントローラ52は、基板処理室CH4の圧力を、大気圧からわずかに減圧した圧力値に調整する。CVD装置200がLPCVD法で成膜処理を行う場合、圧力コントローラ52は、基板処理室CH4の圧力を、大気圧から減圧した圧力値に調整する。CVD装置200が加圧CVD法で成膜処理を行う場合、圧力コントローラ52は、基板処理室CH4の圧力を、大気圧から加圧した圧力値に調整する。CVD装置200がプラズマCVD法で成膜処理を行う場合、圧力コントローラ52は、基板処理室CH4の圧力を、プラズマが発生するのに適した圧力値に調整する。
【0015】
次に、基板処理装置100の詳細構成について図1を用いて説明する。
【0016】
基板処理装置100は、基板処理室CH1、加熱部10、酸化処理部20、塗布処理部30、ガス供給部40、及び圧力制御部50を備える。
【0017】
基板処理室CH1には、基板ステージSTが配されている。基板ステージSTは、基板Wを裏面側から覆うように保持している。基板ステージSTは、例えば、真空チャックを有しており、真空チャックを用いて基板Wを裏面側から真空吸着するように保持しても良い。あるいは、基板ステージSTは、例えば、静電チャックを有しており、静電チャックを用いて基板Wを裏面側から静電気的に吸着するように保持しても良い。
【0018】
加熱部10は、基板処理室CH1内で基板ステージSTを介して基板Wを加熱する。具体的には、加熱部10は、ヒータ11を有する。ヒータ11は、基板ステージSTを介して基板Wを加熱するように、基板ステージSTの内部に配されている。ヒータ11は、その抵抗により発熱する材料で形成されており、例えばニッケルクロム合金で形成されている。
【0019】
酸化処理部20は、基板処理室CH1内で基板Wの表面を酸化する。具体的には、酸化処理部20は、ガス導入室CH2、拡散プレート21、拡散室CH3、及びシャワープレート22を有する。
【0020】
ガス導入室CH2は、外壁101の上部101aと拡散プレート21とにより囲まれて形成されている。ガス導入室CH2には、ガス供給部40を介して酸化性ガスが導入される。酸化性ガスは、例えば、酸素及びオゾンの少なくとも一方を含むガスである。
【0021】
拡散プレート21は、ガス導入室CH2と拡散室CH3とを仕切るとともに、ガス導入室CH2と基板処理室CH1とを隔てている。拡散プレート21は、拡散室CH3を介してガス導入室CH2と基板処理室CH1とを連通する複数の貫通孔21aを有している。
【0022】
拡散室CH3は、拡散プレート21とシャワープレート22とにより囲まれて形成されている。拡散室CH3は、拡散プレート21及びシャワープレート22を介してガス導入室CH2と基板処理室CH1との間に配されている。拡散室CH3には、図1に実線の矢印で示すように、拡散プレート21の複数の貫通孔21aを介して酸化性ガスがガス導入室CH2から供給される。
【0023】
シャワープレート22は、拡散室CH3と基板処理室CH1とを仕切るとともに、ガス導入室CH2と基板処理室CH1とを隔てている。シャワープレート22は、拡散室CH3を介してガス導入室CH2と基板処理室CH1とを連通する複数の貫通孔22aを有している。基板処理室CH1には、図1に実線の矢印で示すように、シャワープレート22の複数の貫通孔22aを介して酸化性ガスが拡散室CH3から供給される。
【0024】
すなわち、酸化処理部20は、複数の貫通孔21a、拡散室CH3、複数の貫通孔22aを介して酸化性ガスをガス導入室CH2から基板処理室CH1内の基板Wの表面に供給する。
【0025】
なお、酸化処理部20は、ガス導入室CH2及び拡散室CH3の少なくとも一方にプラズマを発生させてプラズマ酸化を行ってもよい。ガス導入室CH2にプラズマを発生させる場合、外壁101の上部101aが高周波電源(図示せず)に接続される。拡散室CH3にプラズマを発生させる場合、拡散プレート21が高周波電源(図示せず)に接続される。これにより、酸化性ガスのプラズマ中におけるラジカル、正イオン、又は負イオンの活性種を基板Wの表面に導くことができるので、基板Wの表面を高速に酸化することができる。
【0026】
塗布処理部30は、基板処理室CH1内で基板Wの表面に有機溶剤を塗布する。具体的には、塗布処理部30は、回転部32及びノズル31を有する。
【0027】
回転部32は、シャフト33を介して基板ステージSTに接続されている。これにより、回転部32は、シャフト33を介して基板ステージSTを回転する。
【0028】
ノズル31は、所定の配管及び所定の開閉弁を介して薬液タンク(図示せず)に接続されており、薬液タンクに貯蔵された有機溶剤が供給される。ノズル31は、基板ステージSTの上方に配されており、基板ステージSTの中央部に向いた吐出口31aを有する。これにより、ノズル31は、図1に破線の矢印で示すように、有機溶剤を、基板ステージSTにより保持された基板Wの表面に供給する。有機溶剤は、例えば、アルキル基(R)にヒドロキシ基(−OH)が結合した有機分子を含む。また、有機溶剤は複数の有機溶剤の混合溶剤でもよい。
【0029】
なお、塗布処理部30は、基板ステージSTの外周近傍の空間を下向きに排気するための排気機構34をさらに有していても良い。これにより、有機溶剤から蒸発した揮発成分を容易に排気でき、基板Wの表面に塗布された有機溶剤の乾燥及び定着を促進できる。
【0030】
また、薬液タンクとノズル31との間に所定の流量調整部を設けてもよい。この流量調整部は、回転部32による基板ステージSTの回転速度に応じて、基板Wの表面に供給する有機溶剤の量を調整してもよい。
【0031】
ガス供給部40は、ガス供給管41、42を有し、ガス供給管41、42、所定の配管及び所定の開閉弁を介してガス供給源(図示せず)に接続されており、ガス供給源からガス供給管41、42へ酸化性ガスが供給される。ガス供給管41、42は、ガス導入室CH2に連通されている。これにより、ガス供給部40は、図1に破線の矢印で示すように、ガス供給管41、42を介して酸化性ガスをガス導入室CH2へ供給する。
【0032】
なお、ガス供給部40が酸化性ガスとしてオゾン、又はオゾン/酸素の混合ガスを供給する場合、ガス供給管41、42とガス供給源との間にオゾン発生器を設けても良い。オゾン発生器は、ガス供給源から供給された例えば酸素ガスに対して紫外線を照射したり無声放電を行ったりして酸素ガスの少なくとも一部をオゾンに変えてガス供給管41、42へ供給する。
【0033】
圧力制御部50は、基板処理室CH1の圧力および処理ガスの排気量を制御する。具体的には、圧力制御部50は、排気管51、53、54、圧力センサ(図示せず)、圧力コントローラ52、及び真空ポンプ(図示せず)を有する。圧力センサは、基板処理室CH1内の圧力を検知し、その圧力の値の情報を圧力コントローラ52へ供給する。圧力コントローラ52は、排気管51、53を介して基板処理室CH1に接続されているとともに、排気管54を介して真空ポンプに接続されている。圧力コントローラ52は、開度を調整可能な調整弁を有し、圧力センサから供給された圧力の値に応じて、基板処理室CH1内の圧力が目標値になるように、調整弁の開度を制御する。これにより、基板処理室CH1の圧力および処理ガスの排気量が制御される。
【0034】
次に、成膜システム300の動作について図2及び図3を用いて説明する。図2は、成膜システム300の動作を示すフローチャートである。図3は、成膜システム300による半導体装置の製造方法を示す図である。
【0035】
ステップS10では、搬送機構CM(図5参照)が、基板Wを基板処理装置100へ搬入する。基板Wは、CVD装置200により絶縁物を埋め込むべき溝等(例えば、図3(a)に示す溝TR1〜TR4)を表面に有している。基板処理装置100は、CVD装置200による成膜処理を行うべき基板Wの前処理を行う。具体的には、基板処理装置100は、次のステップS11〜S13の処理を行う。
【0036】
ステップS11では、基板処理装置100の加熱部10が、基板処理室CH1内で基板ステージSTを介して基板Wを加熱する。すなわち、基板ステージSTの内部に配されたヒータ11は、基板ステージSTを介して基板Wを加熱する。これにより、加熱部10は、基板Wの表面における水分を除去する。
【0037】
ステップS12では、基板処理装置100の酸化処理部20が、基板処理室CH1内で基板Wの表面を酸化する。すなわち、酸化処理部20は、複数の貫通孔21a、拡散室CH3、複数の貫通孔22aを介して酸化性ガスをガス導入室CH2から基板処理室CH1内の基板Wの表面に供給する。これにより、基板Wの表面が酸化され、基板Wの表面に例えばSiOHが形成される。例えば、図3(b)に示すように、基板Wの表面W1と溝TR1〜TR4の側面及び底面(図3(a)参照)とを覆うように、例えばSiOHを主成分とする酸化膜OXF1が形成される。
【0038】
ステップS13では、基板処理装置100の塗布処理部30が、基板処理室CH1内で基板Wの表面に有機溶剤を回転塗布する。すなわち、回転部32が基板ステージSTを回転し、この状態で、ノズル31は、図1に破線の矢印で示すように、有機溶剤を、基板ステージSTにより保持された基板Wの表面に滴下する。滴下された有機溶剤は、回転に応じた遠心力により基板Wの周辺側へ広がっていき基板Wの表面に塗布される。有機溶剤は、例えば、アルキル基(R)にヒドロキシ基(−OH)が結合した有機分子(ROH)を複数含む。あるいは、有機溶剤は、例えば、フッ化アルキル基(R)にヒドロキシ基(−OH)が結合した有機分子(ROH)を複数含む。これにより、基板Wの表面において、
SiOH+ROH→SiOR+HO・・・(1)
の反応が行われる。すなわち、基板Wの表面の全面にSiORが形成される。例えば、図3(c)に示すように、酸化膜OXF1で覆われた基板Wの表面W1と溝TR1〜TR4の側面及び底面(図3(a)参照)とをさらに覆うように、例えばSiORを主成分とする有機膜ORFが形成される。
【0039】
ステップS20では、ロードロック室LD1(図5参照)に、基板処理装置100による前処理を施された基板Wが基板処理装置100の基板処理室CH1から搬入される。その後、基板Wは、ロードロック室LD1からCVD装置200の基板処理室CH4へ搬出される。
【0040】
CVD装置200は、基板処理室CH4内で、基板処理装置100による前処理を施された基板Wに絶縁物の成膜処理を施す。所定の絶縁膜は、オゾンTEOS膜である。このとき、基板Wの表面が改質されているので、絶縁物は基板Wの表面における溝等へ容易に埋め込むことができる。例えば、図3(d)に示すように、有機膜ORFで覆われた基板Wの溝TR1〜TR4(図3(a)参照)に埋め込まれるように、例えばTEOSを主成分とする酸化膜OXF2が容易に形成される。
【0041】
ここで、仮に、基板処理装置100が、加熱部10を備えない場合について考える。この場合、基板処理装置100が基板Wの表面に水分が残存した状態で基板Wの表面に有機溶剤を滴下することになる。これにより、有機溶剤が疎水性を有する場合、基板Wの表面に残存した水分により有機溶剤が基板Wの表面に定着しにくく、有機溶剤を基板Wの表面に塗布することが困難になる。あるいは、有機溶剤がある程度の親水性を有していても水への溶解度が有限の場合(例えば、有機溶剤が炭素数4以上のアルコールである場合)、基板Wの表面に残存した水分により有機溶剤が基板Wの表面に定着しにくく、有機溶剤を基板Wの表面に塗布することが困難になる。あるいは、有機溶剤が親水性を有し水への溶解度がほぼ無限の場合(例えば、有機溶剤が低級アルコールである場合)であっても、水分とともに有機溶剤の定着を妨げる成分(例えば、セリンなどの疎アルコール性及び親水性を有する不純物)が基板Wの表面に残存していると、その成分により有機溶剤が基板Wの表面に定着しにくく、有機溶剤を基板Wの表面に塗布することが困難になる。
【0042】
また、仮に、基板処理装置100が、酸化処理部20を備えない場合について考える。この場合、基板Wの表面における水分(及び不純物)を除去でき、基板Wの表面を有機溶剤の定着しやすい状態にできたとしても、基板Wの表面に例えばSiOHが形成されないので、有機溶剤を基板Wの表面に滴下しても化学吸着(あるいは化学反応を介しての結合)ができず、基板Wの表面を改質できない傾向にある。
【0043】
それに対して、第1の実施形態では、加熱部10が、基板Wの表面における水分を除去するように、基板Wを加熱する。これにより、基板Wの表面を有機溶剤の定着しやすい状態にすることができる。そして、酸化処理部20は、加熱部10により水分の除去された基板Wの表面を酸化する。これにより、基板Wの表面に例えばSiOHが形成される。SiOH自体は、CVD装置200による絶縁物の溝等への埋め込み性を改善する物質ではないが、さらに、塗布処理部30は、酸化処理部20により酸化された基板Wの表面に有機溶剤を塗布する。これにより、CVD装置200による絶縁物の溝等への埋め込み性を改善することができる。すなわち、その後にCVD装置200による絶縁物の成膜処理が行われた際に、基板Wの表面が全面的に改質されているので、絶縁物を基板Wの表面における溝等へ容易に埋め込むことができる。
【0044】
したがって、形成すべきSTI型の素子分離部の幅が細くなったとしても、素子分離部に対応した溝等に絶縁物を容易に埋め込むことができる。また、形成すべき所定の構造の幅が細くなったとしても、所定の構造に対応した溝等に絶縁物を容易に埋め込むことができる。すなわち、絶縁物を埋め込むための溝等のアスペクト比が高くなったとしても、CVD装置による溝等への絶縁物の埋め込み性の低下を抑制でき、それにより製造される半導体装置の信頼性を向上できる。
【0045】
仮に、加熱部10、酸化処理部20、及び塗布処理部30が、互いに異なる装置の処理室内に設けられている場合について考える。この場合、加熱部10による加熱処理が完了した後に、加熱処理の施された基板Wが加熱部10用の装置から所定のロードロック室を介して酸化処理部20用の装置へ搬送されることになる。そして、酸化処理部20による酸化処理が完了した後に、酸化処理の施された基板Wが酸化処理部20用の装置から所定のロードロック室を介して塗布処理部30用の装置へ搬送されることになる。このように、1つの処理が終わるたびにロードロック室を介した搬送が必要になるので、前処理に要する処理時間が長くなり、前処理のスループットが低下する傾向にある。また、待機時間中や搬送経路において水分等の吸着が考えられ、基板表面の改質を妨げる虞がある。
【0046】
それに対して、第1の実施形態では、加熱部10、酸化処理部20、及び塗布処理部30が、同じ処理室である基板処理室CH1内で各処理を行う。これにより、前処理の途中における搬送が不要なので、前処理に要する処理時間を短縮でき、前処理のスループットを向上及び基板表面を効果的に改質することができる。
【0047】
また、第1の実施形態では、塗布処理部30が、基板ステージSTを回転する回転部32と、有機溶剤を基板Wの表面に供給するように基板ステージSTの上方に配されたノズル31とを有する。これにより、塗布処理部30を簡易な構成で実現できる。
【0048】
また、第1の実施形態では、酸化処理部20が、酸化性ガスが導入されるガス導入室CH2と、ガス導入室CH2と基板処理室CH1とを隔てるとともにガス導入室CH2と基板処理室CH1とを連通する複数の貫通孔22aを有するシャワープレート22とを有する。これにより、酸化処理部20を簡易な構成で実現できる。
【0049】
また、第1の実施形態では、加熱部10は、基板ステージSTを介して基板Wを加熱するように基板ステージSTの内部に配されたヒータ11を有する。これにより、加熱部10を簡易な構成で実現できる。
【0050】
なお、基板処理装置100の塗布処理部30は、有機溶剤として、自己組織化単分子膜(SAM:Self−Assembled Monolayer)を形成するような成分を含む有機溶剤を基板Wの表面に供給してもよい。この場合、例えば、図3(c)に示す工程で、有機溶剤中の成分における有機分子同士が自発的に配向しながら単分子層を形成していく。より具体的には、各有機分子は、酸化膜OXF1に対して化学的親和性の高い官能基(吸着基)と酸化膜OXF1に対して化学的親和性の低い官能基(配向基)とを有し、吸着基が酸化膜OXF1と結合するとともに配向基が酸化膜OXF1と反対側を向くように配向する。これにより、酸化膜OXF1を覆う有機膜ORFは、例えば、各分子が略一様に配向するとともに、1分子層の略一様な膜厚(例えば、約1〜2nm)を有することになる。
【0051】
例えば、自己組織化単分子膜を形成するような成分として、超撥水性(例えば、水との接触角が150°以上となる性質)を基板Wの表面に付与するような成分、例えば、アルキルシランやフルオロアルキルシランを用いることができる。そのような成分は、フッ化アルキル基(R)及びヒドロキシ基(−OH)を含むフルオロアルキルシランを用いることができ、例えば、ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロテトラヒドロオクチルトリクロロシランなどを用いることができる。この場合、図3(c)に示す工程では、例えば、図4に示すように、有機溶剤の成分におけるヒドロキシ基(−OH)が吸着基として酸化膜OXF1におけるヒドロキシ基(−OH)との間で脱水縮合反応を起こし、酸化膜OXF1の表面を覆う自己組織化単分子膜として有機膜ORFが形成される。このとき、アルキル基又はフッ化アルキル基(R)が酸化膜OXF1と反対側に露出されており、有機膜ORFの表面がアルキル基又はフッ化アルキル基(R)により例えば超撥水性を有する表面エネルギーの低い状態になる。すなわち、基板Wの表面が改質された状態になる。
【0052】
あるいは、基板処理装置100の酸化処理部20は、拡散プレート21及び拡散室CH3が省略された構成であってもよい。
【0053】
あるいは、成膜システム300iは、図5に示すように、複数のCVD装置200i1、200i2を備えても良い。この場合、ロードロック室LD1は、複数のCVD装置200i1、200i2及び基板処理装置100に隣接して配されている。図5に示す装置AP1は、成膜システム300iによる処理の前の工程処理を行う装置である。成膜システム300iには、搬送機構CMにより、ロードロック室LD2を介して、装置AP1による工程処理が施された基板が順次に搬送されてくる。
【0054】
例えば、基板W1、W2、W3が成膜システム300iに順次に搬送されてくる場合について考える。この場合、基板W1は、ロードロック室LD1を介して基板処理装置100へ搬入され、基板処理装置100による前処理が施された後、ロードロック室LD1を介してCVD装置200i1へ搬入される。そして、基板W2は、CVD装置200i1による成膜処理が基板W1に施されている期間に、ロードロック室LD1を介して基板処理装置100へ搬入され、基板処理装置100による前処理が施された後、ロードロック室LD1を介してCVD装置200i2へ搬入される。一方、基板W1は、CVD装置200i2による成膜処理が基板W2に施されている期間において、CVD装置200i1による成膜処理が完了した後に、ロードロック室LD1を介して搬送機構CMにより搬出される。また、基板W3は、CVD装置200i2による成膜処理が基板W2に施されている期間において、基板W1が搬出される前又は後に、ロードロック室LD1を介して基板処理装置100へ搬入される。
【0055】
このように、成膜システム300iでは、複数の基板W1〜W3に対して、基板処理装置100による前処理とCVD装置200i1、200i2による成膜処理とをそれぞれ並行して行うことができる。これにより、複数の基板W1〜W3に対して、成膜システム300iによる処理のスループットを全体として向上できる。
【0056】
あるいは、成膜システム300jは、図6に示すように、ロードロック室LD1が省略された構成であってもよい。この場合、基板処理装置100jは、複数のCVD装置200i1、200i2に隣接して配されており、基板を大気開放せずに複数のCVD装置200i1、200i2へ順次に搬送するためのロードロック室として機能する。
【0057】
例えば、上記と同様に、基板W1、W2、W3が成膜システム300jに順次に搬送されてくる場合について考える。この場合、基板W1は、ロードロック室LD1を介さずに直接基板処理装置100jへ搬入され、基板処理装置100jによる前処理が施された後も、ロードロック室LD1を介さずにCVD装置200i1へ搬入される。基板W2、W3についても同様である。
【0058】
このように、成膜システム300jでは、複数の基板W1〜W3に対して、基板処理装置100jによる前処理とCVD装置200i1、200i2による成膜処理とをそれぞれ並行して行うことができることに加えて、ロードロック室LD1を介さずに基板処理装置100j及びCVD装置200i1、200i2に対する搬入・搬出を行うことができる。これにより、複数の基板W1〜W3に対して、成膜システム300jによる処理のスループットを全体としてさらに向上できる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる成膜システム300kについて図7及び図8を用いて説明する。図7は、第2の実施形態にかかる成膜システム300kの構成を示す図である。図8は、第2の実施形態におけるスプレーノズルの構成を示す図である。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0060】
成膜システム300kは、塗布処理部30kを備える。塗布処理部30kは、基板ステージSTを回転せずに有機溶剤を基板Wの表面に塗布する。具体的には、塗布処理部30kは、回転部32(図1参照)を有さず、スプレーノズル31kを有する。スプレーノズル31kは、基板ステージSTの上方に配されており、基板ステージSTの中央部に向いた吐出口31k1に加えて基板ステージSTの周辺部に向いた吐出口31k2〜31k9(図8(a)、(b)参照)を有する。これにより、スプレーノズル31kは、図1に破線の矢印で示すように、有機溶剤を、基板ステージSTにより保持された基板Wの表面に噴霧する。
【0061】
具体的には、図8(a)、(b)に示すように、スプレーノズル31kにおける各吐出口31k1〜31k9は、内側の開口幅に比べて外側の開口幅が大きくなっている。これにより、図8(a)、(b)に破線の矢印で示すように、有機溶剤を基板Wの表面の全体に噴霧することができる。すなわち、吐出口31k1から噴霧された有機溶剤が基板Wの表面における中央部に向かうとともに、吐出口31k2〜31k9から噴霧された有機溶剤が基板Wの表面における周辺部へ向かう。
【0062】
このように、第2の実施形態では、スプレーノズル31kが、有機溶剤を基板Wの表面の全体に噴霧するので、基板ステージSTを回転せずに有機溶剤を基板Wの表面に塗布することができる。
【0063】
なお、スプレーノズル31kに代えて、図8(c)に示すスプレーノズル31nが用いられても良い。スプレーノズル31nでは、基板ステージSTの周辺部に向いた吐出口31n2、31n3の中心軸がスプレーノズル31nの壁面の法線に対して上側に傾斜している。これにより、吐出口31n2、31n3から噴霧された有機溶剤がより効率的に基板Wの表面における周辺部へ向かうようにすることができる。
【0064】
あるいは、スプレーノズル31kに代えて、図8(d)に示すスプレーノズル31pが用いられても良い。スプレーノズル31pでは、基板ステージSTの周辺部に向いた吐出口31p2〜31p10の中心軸がスプレーノズル31pの円形断面における径方向に対して円形断面内で(例えば一様な傾斜角度で)傾斜している。これにより、吐出口31n2、31n3から噴霧された有機溶剤が旋回流を形成しながらより均等に基板Wの表面における周辺部へ向かうようにすることができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、第1の実施形態でスプレーノズルを採用しても構わない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10 加熱部、11 ヒータ、20 酸化処理部、21 拡散プレート、22 シャワープレート、30 塗布処理部、31 ノズル、31k、31n、31p スプレーノズル、32 回転部、33 シャフト、40 ガス供給部、41、42 ガス供給管、50 圧力制御部、51、53、54 排気管、52 圧力コントローラ、100、100j、100k 基板処理装置、101 外壁、200、200i1、200i2 CVD装置、201 外壁、251 排気管、300、300i、300j、300k 成膜システム、AP1 装置、CH1、CH4 基板処理室、CH2 ガス導入室、CH3 拡散室、LD1、LD2 ロードロック室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CVD装置による成膜処理を行う基板の前処理を行なうための基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板ステージが配された基板処理室と、
前記基板処理室内で前記基板ステージを介して前記基板を加熱する加熱部と、
前記基板処理室内で、前記加熱部により加熱された前記基板の表面を酸化する酸化処理部と、
前記基板処理室内で、前記酸化処理部により酸化された前記基板の表面に有機溶剤を塗布する塗布処理部と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板は、前記CVD装置により絶縁物を埋め込むべき溝又は穴を表面に有し、
前記加熱部は、前記基板の表面における水分を除去するように、前記基板を加熱し、
前記酸化処理部は、前記加熱部により水分の除去された前記基板の表面を酸化し、
前記塗布処理部は、前記酸化処理部により酸化された前記基板の表面に有機溶剤を塗布する
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記塗布処理部は、
前記基板ステージを回転する回転部と、
前記有機溶剤を前記基板の表面に供給するように、前記基板ステージの上方に配されたノズルと、
を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記塗布処理部は、
前記有機溶剤を前記基板の表面に噴霧するように、前記基板ステージの上方に配されたスプレーノズルを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記酸化処理部は、
酸化性ガスが導入されるガス導入室と、
前記ガス導入室と前記基板処理室とを隔てるとともに、前記ガス導入室と前記基板処理室とを連通する複数の貫通孔を有するシャワープレートと、
を有し、
前記酸化処理部は、前記複数の貫通孔を介して前記酸化性ガスを前記ガス導入室から前記基板処理室内の前記基板の表面に供給する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記加熱部は、前記基板ステージを介して前記基板を加熱するように前記基板ステージの内部に配されたヒータを有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記塗布処理部は、前記基板の表面に自己組織化単分子膜が形成されるように、前記基板の表面に前記有機溶剤を塗布する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の基板処理装置と、
前記基板処理装置により前処理が施された前記基板が大気開放されずに搬送される処理室を有し、前記処理室内で前記基板に成膜処理を行うCVD装置と、
を備えたことを特徴とする成膜システム。
【請求項9】
前記成膜システムは、複数の前記CVD装置を備え、
前記基板処理装置における前記基板処理室は、前記基板を大気開放せずに複数の前記CVD装置へ順次に搬送するためのロードロック室として機能する
ことを特徴とする請求項8に記載の成膜システム。
【請求項10】
前記成膜システムは、
複数の前記CVD装置を備えるとともに、
前記基板を大気開放せずに複数の前記CVD装置へ順次に搬送するためのロードロック室をさらに備える
ことを特徴とする請求項8に記載の成膜システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−138562(P2012−138562A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191498(P2011−191498)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】