説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の上方の雰囲気が周囲に拡散することを防止できる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。基板の周囲の側方の雰囲気が基板の上方の空間に流入するのを防止できる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】基板処理装置は、ウエハWをほぼ水平に保持するスピンチャック1と、スピンチャック1に保持されたウエハWに処理液(たとえばSPM)を供給するための処理液ノズル2と、スピンチャック1を取り囲み、開口33が形成された筒状の処理カップ3と、スピンチャック1の上方に配置された雰囲気遮断機構4とを備えている。雰囲気遮断機構4の雰囲気遮断部材38からは、処理カップ3の上端18dに沿うように空気が筒状に吐出される。ウエハWにSPMが供給されるとき、開口33の上方の空間は、雰囲気遮断部材38から吐出された筒状のエアーカーテンによって取り囲まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理するための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハなどの基板の表面に薬液等の処理液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。この枚葉式の基板処理装置は、処理チャンバ内に、たとえば、基板をほぼ水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックによって回転される基板に処理液を供給するためのノズルと、基板から飛散する処理液を捕獲して回収/廃棄するための処理カップと、スピンチャックに保持されたウエハの表面(上面)に近接した位置に対向配置される円板状の遮断板とを備えている。
【0003】
処理カップは、たとえば、スピンチャックによる基板の回転軸線を中心軸線とする略円筒状をなしており、その上端には開口が設けられている。また、処理カップには、たとえば、当該処理カップ内の雰囲気を排気するための排気機構が接続されている。
スピンチャックによって基板を回転させつつ、ノズルから基板の表面に薬液を供給することにより、基板の表面に薬液による処理が施される。基板の表面に供給された薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の周縁から側方へ飛散する。そして、側方へ飛散した薬液は、処理カップに受け止められて捕獲され、廃棄等される。また、薬液による基板の処理によって発生した薬液のミスト等を含む雰囲気は、排気機構によって排気される。
【特許文献1】特開平9−97757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、処理カップ内を排気機構によって排気しても、処理カップの上端に開口が設けられているため、薬液のミスト等を含む雰囲気が当該開口を通じて処理カップ外に漏れ出すおそれがある。漏れ出した雰囲気はパーティクルとなって基板に付着して当該基板を汚染したり、処理チャンバの内壁を汚染したりする原因となるので、薬液のミスト等を含む雰囲気を確実に排気することが望ましい。
【0005】
また、薬液による処理後は、基板の表面に付着している薬液をリンス液で洗い流すリンス処理が行われた後、ウエハの表面に遮断板が近接し対向配置されて、その遮断板とウエハの表面との間に不活性ガスを充満させた状態で、スピンチャックと遮断板とが同方向に回転されることにより、ウエハに付着しているリンス液が振り切られるが、このスピンドライ時には、スピンチャックおよび遮断板が高速回転されるので、ウエハの周縁部と遮断板との間で気流が乱れ、この気流の乱れにより、ウエハと遮断板との間にその周囲の雰囲気が吸い込まれることがある。薬液のミストを含む雰囲気がウエハと遮断板との間に進入すると、薬液のミストがウエハの表面上で乾燥して結晶化するおそれがある。このような薬液のミストの結晶は、パーティクルとなって基板汚染の原因となる。
【0006】
そこで、この発明の目的は、基板の上方の雰囲気が周囲に拡散することを防止できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、基板の周囲の側方の雰囲気が基板の上方の空間に流入するのを防止できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持手段(1,202)と、前記基板保持手段の上方に配置され、前記基板保持手段に保持された基板の側方を取り囲む環状の領域に向けて気体を吐出する気体吐出手段(4,225)とを含む、基板処理装置(100,102,103,104,200)である。
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すものとする。
【0008】
この発明によれば、気体吐出手段から基板の側方を取り囲む環状の領域に向けて、気体が吐出される。これにより形成される気流は、基板の側方を包囲し、その基板の上方の空間を、気流の外側の空間から遮断する。その結果、基板の上方の雰囲気が周囲に拡散することを防止できる。また、気流の外側の空間の雰囲気が基板の上方の空間に流入することを防止できる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するための処理液供給手段(2,204,205)をさらに含むものである、請求項1記載の基板処理装置である。
この発明によれば、基板に処理液が供給される。これにより、基板に対して処理液を用いた処理を施すことができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記気体吐出手段に接続され、前記気体吐出手段に対して気体を供給する気体供給配管(50,228)をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置である。
この発明によれば、気体供給配管から気体吐出手段に供給された気体が、気体吐出手段から気体の側方の環状の領域に向けて吐出される。このため、基板の側方に比較的強い気流を形成することができる。これにより、気流の内側と外側とを、より確実に遮断することが可能である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記基板保持手段を取り囲み、上端(18b)に開口(33)が設けられた筒状のカップ(3)をさらに含み、前記気体吐出手段は、前記基板保持手段の上方に配置され、前記カップの開口端(18d)に沿うように当該カップの内部に向けて気体を筒状に吐出する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、基板保持手段を取り囲む筒状のカップの上端に開口が設けられており、雰囲気遮断手段から当該カップの内部に向けて、当該カップの開口端に沿うように気体が筒状に吐出される。これにより、筒状のガスカーテンが形成される。したがって、カップの内部の雰囲気がカップの開口を通じて当該開口の上方へ移動したとしても、雰囲気遮断手段から吐出された気体によって当該開口の上方の空間が取り囲まれているので、当該開口の上方に移動した雰囲気は当該気体の筒状の流れの外側に移動することはできない。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記気体吐出手段は、当該気体吐出手段から前記カップの開口端に向かって広がるように気体を斜めに吐出するものである、請求項4記載の基板処理装置である。
この発明によれば、雰囲気遮断手段を小型化することができる。すなわち、雰囲気遮断手段が、たとえば、カップの開口端付近に向けて気体を鉛直に吐出するものである場合、雰囲気遮断手段は、カップの開口とほぼ同じか、またはそれ以上の外径にされる必要がある。
【0013】
一方、雰囲気遮断手段がカップの開口端に向かって広がるように気体を斜めに吐出するものである場合、雰囲気遮断手段の外径は、前記開口の直径よりも小さくてもよい。したがって、雰囲気遮断手段を小型化することができる。
請求項6記載の発明は、前記気体吐出手段から吐出された気体を前記カップの開口端に向けて案内する案内部材(56,58)をさらに含む、請求項4または5記載の基板処理装置である。
【0014】
この発明によれば、案内部材によって、雰囲気遮断手段から吐出された気体がカップの開口端に向けて案内されるので、カップの開口の上方の空間が、雰囲気遮断手段から吐出された気体によって確実に取り囲まれる。したがって、カップの内部の雰囲気が前記処理雰囲気範囲内に確実に閉じ込められ、当該処理雰囲気範囲外に漏れ出すことが確実に抑制される。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記カップの内部の雰囲気を当該カップの下側から排気する排気手段(27)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、カップの内部の雰囲気を確実に排気することができる。すなわち、前述のように、カップの内部の雰囲気は前記処理雰囲気範囲内に閉じ込められるので、カップの内部の雰囲気を排気手段によって吸引することで、カップの内部の雰囲気を確実に排気することができる。
【0016】
また、雰囲気遮断手段はカップの内部に向けて下方に気体を吐出しており、これによって、カップの内部の雰囲気に下方への流れが生じているので、カップの下側から排気することでカップの内部の雰囲気が迅速かつ円滑に排気される。
請求項8記載の発明は、前記気体吐出手段が、前記開口よりも少し大きいサイズに形成されて、前記基板保持手段により保持された基板の表面に対して対向配置される基板対向面(38A,138A)を有している、請求項4〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0017】
この発明によれば、基板保持手段の上方に気体吐出手段が配置されているので、前記開口の上方に移動したカップの内部の雰囲気は、気体吐出手段によって、この気体吐出手段の上方の空間と遮断される。そして、気体吐出手段からカップの内部に向けて気体が吐出されると、カップの内部の雰囲気は、気体吐出手段と開口との間の空間およびカップの内部空間を含む所定の処理雰囲気範囲に閉じ込められ、当該処理雰囲気範囲外に拡散することが防止される。
【0018】
請求項9記載の発明は、前記気体吐出手段を回転させる回転手段(53)をさらに含む、請求項4〜8のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、回転手段によって気体吐出手段を回転させることで、気体吐出手段に付着している異物(たとえば、パーティクルや、処理液の液滴など)を回転による遠心力によって振り切って気体吐出手段から除去することができる。これにより、前記異物が基板に付着して当該基板が汚染されることを抑制または防止することができる。
【0019】
請求項10記載の発明は、前記基板保持手段により保持された基板の表面に対して対向配置される基板対向面(219)を有し、当該基板の表面と前記基板対向面との間の空間をその上方の空間から遮断するための遮断部材(218)をさらに備えている、請求項1〜3記載のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、遮断部材によって、基板の表面と基板対向面との間の空間が、遮断部材の上方の空間から遮断される。そして、気体吐出手段から気体が吐出されることにより形成される気流は、基板の側方を包囲し、基板の表面と基板対向面との間の空間を、気流の外側の空間から遮断する。その結果、基板の表面と基板対向面との間の空間の雰囲気が周囲に拡散することを防止できる。また、周囲の雰囲気が基板の表面と基板対向面との間の空間に流入することを防止できる。
【0020】
請求項11記載の発明は、前記気体吐出手段は、前記遮断部材と別体に形成されており、前記基板保持手段により保持された基板を回転させる基板回転手段(202)と、前記遮断部材を基板の回転軸線と共通の回転軸線(C)まわりに回転させる遮断部材回転手段(232)とをさらに含む、請求項10記載の基板処理装置である。
この発明によれば、気体吐出手段が遮断部材と別体に形成されてので、遮断部材を回転させる一方で、遮断部材を静止状態に保持しておくこともできる。このとき、遮断部材の回転状態/非回転状態のいずれであるかに関係なく、基板の側方に安定気流が形成される。そして、その安定急流によって、気流の内側と外側とがより確実に遮断される。
【0021】
請求項12記載の発明は、前記基板回転手段および前記遮断部材回転手段を制御して、前記基板保持手段により保持された基板および前記遮断部材をそれぞれ所定のスピンドライ回転速度で同方向に回転させるとともに、前記気体吐出手段を制御して、前記気体吐出手段から気体を吐出させるスピンドライ制御手段(248)をさらに含む、請求項11記載の基板処理装置である。
【0022】
この発明によれば、基板と遮断板とをスピンドライ回転速度で回転させることにより、遮断部材との間に安定気流を形成することができる一方で、周縁部では気流の乱れが生じるおそれがある。しかしながら、基板の側方に基板保持手段からの気流が形成されているために、遮断部材と基板との間にそれらの周囲の雰囲気が流入するのを防止することができる。
【0023】
また、基板が比較的高速のスピンドライ回転速度で回転されて、基板の周縁部と遮断部材との間で気流が乱れても、気体吐出手段からの処理液のミストなどを含まない気体が基板と遮断部材との間に吸い込まれるので、基板の表面が汚染されることがない。これにより、基板の表面が汚染されることなく、基板にスピンドライ処理を施すことができる。
請求項13記載の発明は、基板保持手段(1)によって保持された基板(W)に処理液を供給する処理液供給工程と、この処理液供給工程と並行して行われ、前記基板保持手段を取り囲み上端(18b)に開口(33)が設けられた筒状のカップ(3)に対して、前記基板保持手段の上方から前記カップの内部に向かって当該カップの開口端(18d)に沿うように気体を筒状に吐出することで、当該カップの内部の雰囲気が漏れ出すことを防止する雰囲気遮断工程とを含む、基板処理方法である。
【0024】
この発明によれば、請求項4の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項14記載の発明は、基板(W)を所定のスピンドライ速度で回転させる基板回転工程と、この基板回転工程と並行して、基板の表面上の空間をその周囲から遮断するための遮断部材(218)を、前記基板と共通の回転軸線(C)まわりに所定のスピンドライ速度で同方向に回転させる遮断部材回転工程と、前記遮断部材と別体に形成された気体吐出手段(225)から、基板の側方の環状の領域に向けて気体を吐出する気体吐出工程とを含む、基板処理方法である。
【0025】
この発明によれば、請求項12の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置100の概略構成を模式的に示す部分断面図である。この基板処理装置100は、たとえば、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)の表面から不要になったレジストを剥離するためのレジスト剥離処理に用いられる枚葉式の装置である。
【0027】
基板処理装置100は、ウエハWをほぼ水平に保持するとともに、その中心を通るほぼ鉛直な軸線(以下、「回転軸線C」という。)まわりにウエハWを回転させる基板保持手段としてのスピンチャック1と、スピンチャック1に保持されたウエハWに処理液を供給するための処理液ノズル2とを備えている。
スピンチャック1の周囲には、当該スピンチャック1を取り囲む有底筒状の処理カップ3が配置されており、スピンチャック1の上方には、雰囲気遮断手段としての雰囲気遮断機構4が配置されている。これらスピンチャック1、処理液ノズル2、処理カップ3および雰囲気遮断機構4等は、図示しない処理チャンバ内に収容されており、ウエハWを処理するための1つの処理ユニットを構成している。
【0028】
スピンチャック1は、筒状のカバー部材5によって包囲されたモータ6と、このモータ6の駆動力によって鉛直な軸線まわりに回転される円板状のスピンベース7と、このスピンベース7上に配置された複数個の挟持部材8とを備えている。カバー部材5は、水平に延びるベース9上にその下端が固定されており、その上端がスピンベース7の近傍にまで及んでいる。カバー部材5の上端部には、カバー部材5から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材10が取り付けられている。
【0029】
複数個の挟持部材8は、スピンベース7の上面周縁部においてウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔をあけて配置されている。複数個の挟持部材8は、互いに協働してウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持することができる。スピンチャック1は、複数個の挟持部材8によってウエハWを挟持した状態で回転軸線Cまわりに当該ウエハWを回転させることができる。
【0030】
なお、スピンチャック1としては、このような構成のものに限らず、たとえば、ウエハWの下面(裏面)を真空吸着することによりウエハWをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)であってもよい。
処理液ノズル2は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム11の先端に取り付けられている。処理液ノズル2には、SPM供給管12およびDIW供給管13が接続されている。SPM供給管12から処理液ノズル2には処理液の一例としてのレジスト剥離液(この実施形態ではSPM(硫酸過酸化水素水混合液))が供給されるようになっており、DIW供給管13から処理液ノズル2には処理液の一例としてのDIW(脱イオン化された水)が供給されるようになっている。処理液ノズル2には、SPMまたはDIWが選択的に供給されるようになっている。
【0031】
SPM供給管12の途中部には、処理液ノズル2へのSPMの供給および供給停止を切り換えるためのSPMバルブ14が介装されている。このSPMバルブ14が開閉されることにより、処理液ノズル2へのSPMの供給が制御される。また、DIW供給管13の途中部には、処理液ノズル2へのDIWの供給および供給停止を切り換えるためのDIWバルブ15が介装されている。このDIWバルブ15が開閉されることにより、処理液ノズル2へのDIWの供給が制御される。
【0032】
処理液ノズル2には、アーム11を介してノズル移動機構16が結合されている。このノズル移動機構16によって、スピンチャック1の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム11を水平揺動させることができる。これにより、処理液ノズル2を、スピンチャック1に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック1の上方から退避させたりすることができる。
【0033】
処理カップ3は、ウエハWに供給された処理液(この実施形態では、SPMおよびDIW)を捕獲するためのものであり、互いに独立して昇降可能な内構成部材17および外構成部材18を備えている。以下では、図1の一部を拡大した図2を参照して内構成部材17および外構成部材18について具体的に説明する。
内構成部材17は、回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。内構成部材17は、スピンチャック1の周囲を取り囲んでいる。内構成部材17には、たとえばボールねじ機構等を含む第1昇降駆動機構19が接続されており、この第1昇降駆動機構19によって内構成部材17が昇降される。
【0034】
内構成部材17は、平面視において円環状をなす底部20と、この底部20の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部21と、底部20の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部22と、内周縁と外周縁との間に対応する底部20の一部から上方に立ち上がる円筒状の案内部23とを一体的に備えている。
内壁部21は、内構成部材17が上方位置にある状態(図2において二点鎖線で示す状態)で、カバー部材5と鍔状部材10との間に隙間を保って、そのカバー部材5と鍔状部材10との間に収容される長さに形成されている。また、案内部23は、底部20から立ち上がる円筒状の本体部23aと、この本体部23aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(回転軸線Cに近づく方向)斜め上方に延びる筒状の上端部23bとを含む。
【0035】
内壁部21と案内部23との間は、ウエハWの処理に使用されたDIW(SPMを含むDIW)を集めて廃棄するための廃棄溝26とされている。
廃棄溝26には、この廃棄溝26に集められたDIWを排出するとともに、処理カップ3内を強制的に排気するための排気手段としての排気液機構27が接続されている。
排気液機構27には、図示しない負圧源から延びる配管28が接続されており、この負圧源が発生する負圧によって処理カップ3内の雰囲気が吸引され、処理カップ3内の排気が達成される。排気液機構27は、たとえば、処理カップ3内の雰囲気を常時排気するようになっている。
【0036】
廃棄溝26に集められたDIWは、処理カップ3内の雰囲気とともに、排気液機構27を介して排出される。雰囲気とともに排出される処理液は、配管28の途中部に介装された気液分離器(図示せず)によって雰囲気から分離され、たとえば、この基板処理装置100が設置される工場の廃棄ラインに廃棄される。
また、案内部23と外壁部22との間は、ウエハWの処理に使用されたSPMを集めて回収するための回収溝29とされている。回収溝29には、回収溝29に集められたSPMを図示しない回収タンクに回収するための回収機構30が接続されている。回収機構30には、回収タンクから延びる回収配管31が接続されている。回収溝29に集められるSPMは、回収機構30および回収配管31を介して回収タンクに回収される。
【0037】
外構成部材18は、回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。外構成部材18は、内構成部材17の案内部23の外側においてスピンチャック1の周囲を取り囲んでいる。外構成部材18には、たとえばボールねじ機構等を含む第2昇降駆動機構34が接続されており、この第2昇降駆動機構34によって外構成部材18が昇降される。外構成部材18の上端部18bには、スピンチャック1によって保持されたウエハWよりも直径が大きい開口33が形成されており、外構成部材18の上端18dは、開口33を区画する開口端となっている。
【0038】
外構成部材18は、案内部23と同軸円筒状をなす下端部18aと、下端部18aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(回転軸線Cに近づく方向)斜め上方に延びる筒状の上端部18bと、上端部18bの先端部を下方に折り返して形成された折返し部18cとを有している。
下端部18aは、回収溝29上に位置し、内構成部材17と外構成部材18が最も近接した状態で、回収溝29に収容される長さに形成されている。また、上端部18bは、内構成部材17の案内部23の上端部23bと上下方向に重なるように設けられ、内構成部材17と外構成部材18とが最も近接した状態で、案内部23の上端部23bに対してごく微少な隙間を保って近接するように形成されている。折返し部18cは、内構成部材17と外構成部材18とが最も近接した状態で、案内部23の上端部23bと水平方向に重なるように形成されている。
【0039】
後述するように、ウエハWの周縁から飛散するSPMは、内構成部材17の案内部23の上端部23bと外構成部材18の上端部18bとの間に形成される開口に飛入し、外構成部材18の内側壁面によって受け止められた後、外構成部材18の内側壁面によって回収溝29へと案内される。また同じく後述するように、ウエハWの周縁から飛散するDIW(SPMを含むDIW)は、内構成部材17の案内部23の内側壁面によって受け止められ、内構成部材17の内側壁面によって廃棄溝26へと案内される。
【0040】
図3は、雰囲気遮断部材38の下面(基板対向面38A)の概略図である。以下では、図1および図3を参照して、雰囲気遮断機構4について説明する。
雰囲気遮断機構4は、気体によって雰囲気の流通を遮断することにより処理カップ3内の雰囲気が漏れ出すことを防止するためのものであり、スピンチャック1の上方に配置された雰囲気遮断部材38と、この雰囲気遮断部材38に一体回転可能に連結された筒状の回転軸39と、この回転軸39をその中心軸線まわりに回転可能に保持する保持アーム40とを含む。
【0041】
雰囲気遮断部材38は、たとえば、開口33よりも少し大きい直径を有する円板状にされており、その中心軸線がウエハWの回転軸線Cと共通の軸線に沿うようにスピンチャック1の上方でほぼ水平に配置されている。雰囲気遮断部材38の下面は、スピンチャック1に保持されたウエハWの上面に対向する基板対向面38Aとなっている。また、図3に示すように、雰囲気遮断部材38の下面(基板対向面38A)には、当該下面の中心部に配置された中心気体吐出口41と、当該下面の周縁部に沿って配置された複数の周縁気体吐出口42とが形成されている。
【0042】
複数の周縁気体吐出口42は、雰囲気遮断部材38の下面周縁部において、たとえば、スピンチャック1に保持されたウエハWの直径よりも大きく、かつ、開口33の直径よりも小さい所定の円の円周上で一定の間隔を隔てて配置されている。各周縁気体吐出口42
は、たとえば、円形であってもよいし、三角形等の多角形であってもよいし、前記所定の円に沿って延びるスリット形状であってもよい。
【0043】
中心気体吐出口41は、雰囲気遮断部材38の中心部をその厚み方向(上下方向)に貫通する中心貫通孔43に連通している。また、複数の周縁気体吐出口42は、それぞれ、雰囲気遮断部材38の内部に形成された複数の分岐気体流通路44の一端に連通している。各分岐気体流通路44の他端は、雰囲気遮断部材38の内部において中心貫通孔43を取り囲むように形成された環状の集合気体流通路45に連通している。中心貫通孔43および集合気体流通路45は、それぞれ雰囲気遮断部材38の上面において開口している。
【0044】
回転軸39は、ウエハWの回転軸線Cと共通の軸線に沿う中空軸であり、その下端が雰囲気遮断部材38の上面に固定されている。回転軸39の内部には、中心気体吐出口41に供給される窒素ガス(気体の一例)が流通する窒素ガス流通管46が挿通している。窒素ガス流通管46の内部空間は、窒素ガス流通路となっており、その一端は中心貫通孔43に連通している。
【0045】
窒素ガス流通管46には、窒素ガス供給管47が接続されており、この窒素ガス供給管47から窒素ガス流通管46を介して中心気体吐出口41に窒素ガスが供給される。窒素ガス供給管47の途中部には、中心気体吐出口41への窒素ガスの供給および供給停止を切り換えるための窒素ガスバルブ48が介装されている。この窒素ガスバルブ48が開閉されることにより、中心気体吐出口41への窒素ガスの供給が制御される。
【0046】
また、回転軸39の内部空間であり窒素ガス流通管46を取り囲む環状の空間は、各周縁気体吐出口42に供給される空気(気体の一例)が流通する空気流通路49となっている。空気流通路49の一端は、集合気体流通路45に連通している。
回転軸39には、空気供給管50が接続されており、この空気供給管50から空気流通路49を介して各周縁気体吐出口42に空気が供給される。具体的には、空気供給管50から空気流通路49に供給された空気が、集合気体流通路45を通って各分岐気体流通路44に供給され、各分岐気体流通路44から対応する周縁気体吐出口42に供給される。
【0047】
空気供給管50の途中部には、各周縁気体吐出口42への空気の供給および供給停止を切り換えるための空気バルブ51が介装されている。この空気バルブ51が開閉されることにより、各周縁気体吐出口42への空気の供給が制御される。
また、雰囲気遮断機構4には、雰囲気遮断機構4を昇降させるための第3昇降駆動機構52と、回転手段としての第1回転駆動機構53が接続されている。第3昇降駆動機構52によって雰囲気遮断機構4を昇降させることにより、スピンチャック1に保持されたウエハWの上面に雰囲気遮断部材38の下面を近接させたり、雰囲気遮断部材38をスピンチャック1の上方に大きく退避させたりすることができる。また、第1回転駆動機構53によって回転軸39を回転させることにより、スピンチャック1によるウエハWの回転にほぼ同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)雰囲気遮断部材38および回転軸39を回転させることができる。
【0048】
中心気体吐出口41からは、スピンチャック1に保持されたウエハWの回転中心付近に向けて窒素ガスがほぼ鉛直に吐出される。また、各周縁気体吐出口42からは、外構成部材18の上端18dのすぐ内側(回転軸線Cに近づく方向)に向けて空気がほぼ鉛直に吐出される。各周縁気体吐出口42から吐出された空気は、他の周縁気体吐出口42から吐出された空気と結合して筒状の流れを形成する。そして、筒状のエアーカーテンとなった状態で、外構成部材18の上端18dのすぐ内側に沿って開口33を通過し、処理カップ3の内部に入り込む。処理カップ3の内部に入り込んだ空気は、排気液機構27によって排気される。
【0049】
各周縁気体吐出口42から空気が吐出されると、雰囲気遮断部材38と開口33との間の柱状の空間S1は、筒状のエアーカーテンによって取り囲まれる。これにより、空間S1に存在する雰囲気、および、開口33を通じて空間S1に進入した処理カップ3内の雰囲気(以下「空間S1に存在する雰囲気等」という。)の外部への流出が阻止される。
すなわち、空間S1が筒状のエアーカーテンによって取り囲まれると、空間S1に存在する雰囲気等は、このエアーカーテンよりも外側(回転軸線Cから離れる方向)に移動することができなくなる。また、スピンチャック1の上方に雰囲気遮断部材38が配置されているので、空間S1に存在する雰囲気等は、雰囲気遮断部材38よりも上方に移動することもできない。したがって、各周縁気体吐出口42から開口33に向けて空気が吐出されると、空間S1に存在する雰囲気等の外部への流出が阻止される。
【0050】
図4は、第1実施形態に係る基板処理装置100の電気的構成を説明するためのブロック図である。
基板処理装置は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置54を備えている。この制御装置54には、モータ6、ノズル移動機構16、第1〜第3昇降駆動機構19,34,52、第1回転駆動機構53および各バルブ14,15,48,51が制御対象として接続されている。
【0051】
図5は、第1実施形態に係る基板処理装置100によるウエハWの処理の一例を説明するための図である。この第1実施形態に係る基板処理装置100により実施されるウエハWの処理の一例は、ウエハWの表面にSPMを供給するSPM供給工程(またはレジスト剥離工程)と、SPM供給工程が実施された後、ウエハWの表面にDIWを供給してウエハWの表面に付着しているSPMを洗い流すリンス工程と、リンス工程が実施された後、ウエハWを乾燥させる乾燥工程とを含む。すなわち、このウエハWの処理の一例では、SPM供給工程から乾燥工程までの一連の処理が同一の処理ユニット内において実施される。
【0052】
以下では、図1、図4および図5を参照しつつ、第1実施形態に係る基板処理装置100によるウエハWの処理の一例について説明する。
表面にレジストが存在する処理対象のウエハWは、図5(a)に示すように、搬送ロボット55によって搬送されてきて、その表面が上に向けられた状態で搬送ロボット55からスピンチャック1へと受け渡される。このとき、制御装置54は、第1昇降駆動機構19を制御して内構成部材17を図5(a)に示す下方位置に位置させており、第2昇降駆動機構34を制御して外構成部材18を図5(a)に示す下方位置に位置させている。また、制御装置54は、第3昇降駆動機構52を制御して雰囲気遮断部材38をスピンチャック1の上方に大きく退避させている。
【0053】
スピンチャック1にウエハWが受け渡されると、当該ウエハWは、スピンチャック1によって保持される。一方、制御装置54は、第2昇降駆動機構34を制御して外構成部材18を図5(b)に示す上方位置に移動させる。これにより、内構成部材17の案内部23の上端部23bと、外構成部材18の上端部18bとの間に、ウエハWの周端面に対向する開口が形成される。
【0054】
その後、モータ6が制御装置54によって駆動されて、スピンチャック1が所定の回転速度で回転される。また、制御装置54によってノズル移動機構16が駆動されて、処理液ノズル2がスピンチャック1の側方に設定された待機位置から、ウエハWの回転中心の上方に移動される。
処理液ノズル2がウエハWの回転中心の上方に配置されると、制御装置54は、空気バルブ51を開いて、各周縁気体吐出口42から開口33に向けて空気を吐出させる。これにより、雰囲気遮断部材38と開口33との間の柱状の空間S1が、各周縁気体吐出口42から吐出された空気により形成される筒状のエアーカーテンよって取り囲まれ、空間S1に存在する雰囲気等の外部への流出が阻止される(雰囲気遮断工程)。そして、制御装置54によってSPMバルブ14が開かれ、処理液ノズル2から回転中のウエハWに向けてSPMが吐出される。吐出されたSPMは、ウエハWの上面の回転中心付近に供給される(処理液供給工程)。
【0055】
処理液ノズル2からウエハWにSPMが供給されているとき、処理液ノズル2は、ウエハWの回転中心の上方で固定されていてもよいし、制御装置54によるノズル移動機構16の制御によって、アーム11とともに所定の角度範囲内で揺動されてもよい。処理液ノズル2を前記所定の角度範囲内で揺動させることにより、処理液ノズル2からウエハWへのSPMの供給位置を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁に至る範囲内で、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動させることができる。
【0056】
ウエハWの上面にSPMが供給されると、供給されたSPMは、ウエハWの回転による遠心力によってウエハWの上面の全域に広がっていく。これにより、ウエハWの上面に対するSPMによる処理(レジスト剥離処理)が達成される。ウエハWに供給されたSPMは、ウエハWの回転による遠心力によって振り切られ、ウエハWの周縁から側方に向けて飛散する。ウエハWの周縁から飛散するSPMは、内構成部材17の案内部23の上端部23bと外構成部材18の上端部18bとの間に飛入して、外構成部材18の内側壁面によって受け止められて捕獲される。そして、捕獲されたSPMは、外構成部材18の内側壁面によって回収溝29へと案内される。
【0057】
回転中のウエハWの上面にSPMが供給されると、たとえば、SPM自身から大量の煙霧(fume)が生じるとともに、ウエハWの周縁から飛散したSPMが外構成部材18の内側壁面等に衝突することにより、処理カップ3の内部でSPMのミストが発生する。したがって、回転中のウエハWの上面にSPMが供給されると、処理カップ3の内部の雰囲気は、SPMの煙霧およびミストを含む雰囲気となり、この雰囲気は、開口33から上方へとあふれ出てくる。本実施形態では、雰囲気遮断部材38から開口33に向けて空気が吐出されており、処理カップ3の内部の雰囲気が排気手段としての排気液機構27によって排気されているので、SPMの煙霧およびミストを含む雰囲気が所定の処理雰囲気範囲から漏れ出すことを防止でき、この雰囲気を処理チャンバ内から確実に除去できるようになっている。
【0058】
すなわち、処理カップ3の内部の雰囲気(SPMの煙霧およびミストを含む雰囲気)は、開口33を通じて当該開口33の上方に移動できるものの、前述のように、空間S1が筒状のエアーカーテンによって取り囲まれているので、空間S1に進入した処理カップ3の内部の雰囲気は、このエアーカーテンよりも外側に移動することができない。また、スピンチャック1の上方に雰囲気遮断部材38が配置されているので、空間S1に進入した処理カップ3の内部の雰囲気は、雰囲気遮断部材38よりも上方に移動することもできない。したがって、雰囲気遮断部材38から開口33に向けて空気が吐出されている間、処理カップ3の内部の雰囲気は、空間S1および処理カップ3の内部空間を含む範囲(以下、この第1実施形態において「処理雰囲気範囲」という。)に閉じ込められ、当該処理雰囲気範囲から漏れ出すことが防止される。
【0059】
そして、処理カップ3の内部が排気液機構27によって排気されているので、SPMの煙霧およびミストを含む雰囲気は確実に処理チャンバ内から除去され、処理カップ3の周りの部材や、処理チャンバの内側壁面等に到達することが抑制される。また、雰囲気遮断部材38は開口33に向けて下方に気体を吐出しており、これによって、処理カップ3内の雰囲気に下方への流れが生じているので、処理カップ3の下側から排気することで処理カップ3の内部の雰囲気が迅速かつ円滑に排気される。
【0060】
ウエハWへのSPMの供給が所定時間にわたって行われると、制御装置54は、SPMバルブ14を閉じて処理液ノズル2からウエハWへのSPMの供給を停止させる。そして、制御装置54は、第1昇降駆動機構19を制御することにより内構成部材17を図5(c)に示す上方位置まで上昇させて、内構成部材17の案内部23の上端部23bを、スピンチャック1に保持されたウエハWよりも上方に位置させる。
【0061】
その後、制御装置54は、ウエハWの回転を継続させたまま、DIWバルブ15を開いて処理液ノズル2からDIWを吐出させる。吐出されたDIWは、ウエハWの上面の回転中心付近に供給される。供給されたSPMは、ウエハWの回転による遠心力によってウエハWの上面の全域に広がっていく。これにより、SPM供給工程後のウエハWの表面に付着しているSPMが、DIWによって洗い流される。そして、SPMを含むDIWは、ウエハWの回転による遠心力によって振り切られ、ウエハWの周縁から側方に向けて飛散する。
【0062】
ウエハWの周縁から飛散するDIW(SPMを含むDIW)は、内構成部材17の案内部23の内側壁面に捕獲される。そして、内構成部材17の案内部23の内側壁面を伝って流下し、廃棄溝26に集められ、排気液機構27によって排出される。このとき内構成部材17の案内部23の上端部23bおよび外構成部材18の上端部18bがごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、外構成部材18の折返し部18cが内構成部材17の案内部23の上端部23bと水平方向において重なっているので、案内部23と外構成部材18との間へのDIWの進入が防止されている。これにより、SPMとDIWとの混触が防止されている。
【0063】
ウエハWにDIWが供給されている間(リンス工程が実施されている間)、各周縁気体吐出口42からの空気の吐出は、SPM供給工程から引き続き継続されていてもよいし、停止されていてもよい。たとえば、SPM供給工程が終了してからリンス工程が所定時間行われるまで、各周縁気体吐出口42からの空気の吐出が継続されていてもよい。このようにすることで、SPM供給工程の終了間際において発生したSPMの煙霧およびミストを含む雰囲気を前記処理雰囲気範囲内から確実に除去することができる。これにより、DIWによりSPMが洗い流されているウエハWに雰囲気中のSPMが付着したり、SPMが洗い流された後のウエハWに雰囲気中のSPMが付着したりして、当該ウエハWが汚染されることを抑制または防止することができる。
【0064】
ウエハWへのDIWの供給が所定時間にわたって行われると、DIWバルブ15が閉じられて、処理液ノズル2からウエハWへのDIWの供給が停止される。そして、制御装置54は、ノズル移動機構16を制御して処理液ノズル2をウエハWの上方から退避させる。また、制御装置54は、第1昇降駆動機構19を制御して内構成部材17を図5(d)に示す下方位置に移動させるとともに、第2昇降駆動機構34を制御して外構成部材18を図5(d)に示す下方位置に移動させる。さらに、制御装置54は、第3昇降駆動機構52を制御して雰囲気遮断機構4を下降させることにより、雰囲気遮断部材38の下面をスピンチャック1に保持されたウエハWの上面に近接させる。
【0065】
雰囲気遮断部材38の下面がウエハWの上面に近接されると、制御装置54は、窒素ガスバルブ48を開いて中心気体吐出口41から窒素ガスを吐出させる。このとき、空気バルブ51は既に閉じられており、各周縁気体吐出口42からの空気の吐出は停止されている。吐出された窒素ガスは、ウエハWの上面の回転中心付近に供給され、外側に広がっていく。これにより、雰囲気遮断部材38の下面とウエハWの上面との間の狭空間が窒素ガスによって満たされ、当該狭空間の雰囲気が窒素ガス雰囲気となる。
【0066】
その後、ウエハWの回転速度が予め定める高回転速度(たとえば、2000〜2500rpm)に上げられて、リンス工程後のウエハWの表面に付着しているDIWをウエハWの回転による遠心力によって振り切ってウエハWを乾燥させる乾燥工程が所定時間に亘って行われる。乾燥工程が終了すると、スピンチャック1によるウエハWの回転が止められて、スピンチャック1から処理後のウエハWが搬出されていく。
【0067】
第1実施形態に係る基板処理装置100によるウエハWの処理の一例についての説明は以上であるが、この第1実施形態に係る基板処理装置100を用いて実施されるウエハWの処理は、これに限られない。たとえば、前述の説明では、処理液ノズル2からSPMが吐出される前に、各周縁気体吐出口42から空気が吐出される例について説明したが、各周縁気体吐出口42からの空気の吐出は、処理液ノズル2からSPMが吐出されるのとほぼ同時に開始されてもよい。
【0068】
また、この第1実施形態に係る基板処理装置100が複数の処理ユニットを有する場合、処理対象のウエハWが複数の処理ユニットに渡る、いわゆる渡り処理によって、前述のSPM供給工程から乾燥工程までの処理が実施されてもよい。
具体的には、たとえば、図1に示す処理ユニットによってSPM供給工程を実施し、図1の処理ユニット以外のリンス・乾燥処理ユニットによってリンス工程および乾燥工程を実施してもよい。この場合、処理ユニット間でのウエハWの移動は、通例、搬送ロボット55によって行われるが、SPMによる処理が行われたウエハWにはSPMが大量に付着しているので、その状態で当該ウエハWを搬送ロボット55によって搬送すると、搬送ロボット55にSPMが付着してしまう。したがって、SPM供給工程が実施された後、当該SPM供給工程を実施した処理ユニットによって、ウエハWに付着しているSPMを概ね洗い流す簡易リンス工程を実施し、この簡易リンス工程が実施された後、ウエハWに付着しているDIWを除去して当該ウエハWを概ね乾燥させる簡易乾燥工程を実施してもよい。具体的には、スピンチャック1によってウエハWを所定の回転速度(乾燥工程での回転速度よりも低速。たとえば1000rpm程度)で回転させることにより、ウエハWに付着しているDIWを回転による遠心力によって振り切って当該ウエハWを概ね乾燥させてもよい。
【0069】
以上のように、この第1実施形態に係る基板処理装置100では、雰囲気遮断部材38から開口33に向けて空気を吐出することにより、処理カップ3の内部の雰囲気を、前記処理雰囲気範囲に閉じ込めることができ、この雰囲気が当該処理雰囲気範囲外に漏れ出すことを抑制することができる。したがって、回転中のウエハWに対するSPMの供給によって処理カップ3の内部の雰囲気がSPMの煙霧およびミストを含む雰囲気となった場合であっても、このSPMの煙霧およびミストを含む雰囲気が前記処理雰囲気範囲外に漏れ出すことを抑制することができる。
【0070】
そして、排気液機構27によって処理カップ3の内部を排気することにより、SPMの煙霧およびミストを含む雰囲気を前記処理雰囲気範囲から確実に除去することができる。これにより、リンス工程や乾燥工程において雰囲気中のSPMがウエハWに付着して当該ウエハWが汚染されたり、処理チャンバの内壁等がSPMで汚染されたりすることを抑制または防止することができる。また、SPM供給工程において、各周縁気体吐出口42から下方に空気を吐出させることにより、処理カップ3内の雰囲気に下方への流れを生じさせることができるので、SPM供給工程において発生したSPMの煙霧およびミストが処理液ノズル2やアーム11等に付着することを抑制または防止することができる。これにより、処理液ノズル2やアーム11等に付着したSPMの煙霧およびミストがパーティクルとなって落下し、ウエハWに付着することを抑制または防止することができる。
【0071】
さらに、この第1実施形態に係る基板処理装置100では、各周縁気体吐出口42から吐出される気体として空気が採用されているので、たとえば窒素ガスがガスカーテン形成用の気体として採用される場合に比べて、ランニングコストが低減されている。また、雰囲気遮断部材38からは、外構成部材18の上端18dのすぐ内側に向けて空気が筒状に吐出されるので、たとえば、開口33の全範囲に向けて柱状に空気を吐出する場合に比べて、空気の消費量が遥かに少量でよい。これにより、基板処理装置100のランニングコストがさらに低減されている。
【0072】
さらにまた、空間S1を空気の流れによって取り囲むので、たとえば処理液ノズル2やアーム11等の他の部材との干渉を考慮する必要がない。すなわち、空間S1をたとえば筒状の部材により取り囲む場合、処理液ノズル2をスピンチャック1の上方に配置するときに、処理液ノズル2およびアーム11と前記筒状の部材との干渉を考慮しなければならない。しかし、空間S1を空気の流れによって取り囲む場合には、そのような考慮が必要とされない。
【0073】
図6は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置102の概略構成を模式的に示す部分断面図である。この図6において、前述の図1および図2等に示された各部と同等の構成部分については、図1および図2等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態に係る基板処理装置102と、第1実施形態に係る基板処理装置100との主要な相違点は、雰囲気遮断部材138から外構成部材18の上端18dに向かって広がるように鉛直方向に対して斜めに空気が吐出されるようになっていることにある。
【0074】
すなわち、この第2実施形態において、雰囲気遮断部材138は、その中心軸線がウエハWの回転軸線Cと共通の軸線に沿うようにほぼ水平に配置された、ウエハWよりも小さい直径を有する円板状にされている。雰囲気遮断部材138の下面は、スピンチャック1に保持されたウエハWの上面に対向する基板対向面138Aになっており、当該下面には、中心気体吐出口41と、複数の周縁気体吐出口42とが形成されている。
【0075】
各分岐気体流通路144は、雰囲気遮断部材138の内部において、その内部を流通する気体(この実施形態では空気)の流通方向が鉛直方向に対して斜めになるように形成されている。これにより、各周縁気体吐出口42から空気が鉛直方向に対して斜めに吐出されるようになっている。
各周縁気体吐出口42から吐出された空気は、他の周縁気体吐出口42から吐出された空気と結合して下方に向かって広がる筒状の流れを形成する。そして、下方に向かって広がる筒状のエアーカーテンとなった状態で、外構成部材18の上端18dのすぐ内側に沿って開口33を通過し、処理カップ3の内部に入り込む。処理カップ3の内部に入り込んだ空気は、排気液機構27によって排気される。
【0076】
各周縁気体吐出口42から空気が吐出されると、雰囲気遮断部材138と開口33との間の概ね円錐台状の空間S2は、下方に向かって広がる筒状のエアーカーテンによって取り囲まれる。これにより、空間S2に存在する雰囲気、および、開口33を通じて空間S2に進入した処理カップ3内の雰囲気(以下「空間S2に存在する雰囲気等」という。)の流通が阻害される。その結果、前述の第1実施形態に係る基板処理装置100と同様に、処理カップ3内の雰囲気がSPMの煙霧およびミストを大量に含む雰囲気となった場合であっても、この雰囲気が、空間S2および処理カップ3の内部空間を含む処理雰囲気範囲外に漏れ出すことを抑制することができる。
【0077】
以上のように、この第2実施形態に係る基板処理装置102では、処理カップ3の内部の雰囲気がSPMの煙霧およびミストを含む雰囲気となった場合であっても、この雰囲気が前記処理雰囲気範囲外に漏れ出すことを抑制することができ、さらに、処理カップ3の内部を排気液機構27によって排気することにより、SPMの煙霧およびミストを含む雰囲気を処理チャンバから確実に除去することができる。これにより、SPMの煙霧およびミストを含む雰囲気によってウエハWや処理チャンバ内が汚染されることを抑制または防止することができる。
【0078】
また、この第2実施形態に係る基板処理装置102では、雰囲気遮断部材138から開口33に向けて空気が斜めに吐出されるようになっているので、前述の第1実施形態に係る基板処理装置100のように、開口33に向けて空気がほぼ鉛直に吐出される構成に比べて、雰囲気遮断部材を小型化することができる。
図7は、この発明の第3実施形態に係る基板処理装置103の概略構成を模式的に示す部分断面図である。この図7において、前述の図1および図2等に示された各部と同等の構成部分については、図1および図2等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0079】
この第3実施形態に係る基板処理装置103は、前述の第1実施形態に係る基板処理装置100に対して案内部材としてのフード56が付加されたものである。
フード56は、たとえば、概ね筒状であってもよいし、複数の部材が環状に配置されたものであってもよい。図7においては、フード56が概ね筒状である場合を図示している。フード56の内径は、たとえば、スピンチャック1に保持されたウエハWの直径よりも大きく、かつ、開口33の直径よりも小さくされている。
【0080】
フード56の上端は、雰囲気遮断部材38に固定されており、複数の周縁気体吐出口42を取り囲んでいる。また、鉛直方向に関するフード56の長さは、外構成部材18が上方位置にある状態(図7において実線で示す状態)で、フード56の下端が外構成部材18の上端18dに近接する長さにされている。フード56の周方向に関する所定範囲には進入部57が設けられており、この進入部57を通じて処理液ノズル2がフード56の内側に進入できるようになっている。
【0081】
具体的には、フード56が概ね筒状である場合には、フード56の周方向に関する所定範囲に、処理液ノズル2およびアーム11が通過できる最小限の大きさの切欠き部が進入部57として形成されている。また、環状に配置された複数の部材によってフード56が構成されている場合には、周方向に隣接する部材の間に、処理液ノズル2およびアーム11が通過できる最小限の大きさの隙間が進入部57として設けられている。
【0082】
各周縁気体吐出口42から吐出された空気であって外側(回転軸線Cから離れる方向)に向かう空気は、フード56の内側壁面によって案内されて外構成部材18の上端18dのすぐ内側に導かれる。これにより、雰囲気遮断部材38と開口33との間の柱状の空間S1が筒状のエアーカーテンによって確実に取り囲まれる。したがって、処理カップ3の内部の雰囲気が漏れ出すことを確実に防止することができる。
【0083】
図8は、この発明の第4実施形態に係る基板処理装置104の概略構成を模式的に示す部分断面図である。この図8において、前述の図1および図6に示された各部と同等の構成部分については、図1および図6と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第4実施形態に係る基板処理装置104は、前述の第2実施形態に係る基板処理装置102に対して案内部材としてのフード58が付加されたものである。
【0084】
フード58は、たとえば、下方に向かって広がる概ね筒状であってもよいし、複数の部材が下方に向かって広がるように環状に配置されたものであってもよい。図8においては、フード58が下方に向かって広がる概ね筒状である場合を図示している。)
フード58の上端は、雰囲気遮断部材138に固定されており、複数の周縁気体吐出口42を取り囲んでいる。また、鉛直方向に関するフード58の長さは、外構成部材18が上方位置にある状態(図8において実線で示す状態)で、フード58の下端が外構成部材18の上端18dに近接する長さにされている。フード58の下端の内径は、外構成部材18が上方位置にある状態で、外構成部材18の上端18dにフード58の下端が沿うような大きさにされている。フード58の周方向に関する所定範囲には進入部59が設けられており、この進入部59を通じて処理液ノズル2がフード58の内側に進入できるようになっている。
【0085】
具体的には、フード58が下方に向かって広がる概ね筒状である場合には、フード58の周方向に関する所定範囲に、処理液ノズル2およびアーム11が通過できる最小限の大きさの切欠き部が進入部59として形成されている。また、環状に配置された複数の部材によってフード58が構成されている場合には、周方向に隣接する部材の間に、処理液ノズル2およびアーム11が通過できる最小限の大きさの隙間が進入部59として設けられている。
【0086】
各周縁気体吐出口42から吐出された空気であって外側(回転軸線Cから離れる方向)に向かう空気は、フード58の内側壁面によって案内されて外構成部材18の上端18dのすぐ内側に導かれる。これにより、雰囲気遮断部材138と開口33との間の概ね円錐台状の空間S2が、下方に向かって広がる筒状のエアーカーテンによって確実に取り囲まれる。これにより、処理カップ3の内部の雰囲気が漏れ出すことを確実に防止することができる。
【0087】
図9および図10は、本発明の第5実施形態に係る基板処理装置200の構成を図解的に示す断面図である。図9は、薬液処理時の基板処理装置200を示しており、図10は、スピンドライ時の基板処理装置200を示している。
基板処理装置200は、薬液およびDIWを用いて、ウエハWから汚染物質を除去するための洗浄処理を実行するための装置である。薬液としては、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM、フッ酸、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)、アンモニア水およびポリマー除去液などを用いることができる。この基板処理装置200は、図示しない処理チャンバ内に、ウエハWをほぼ水平に保持するとともに、その中心を通るほぼ鉛直な回転軸線C(図9参照)まわりにウエハWを回転させるスピンチャック202と、このスピンチャック202を収容する処理カップ203と、スピンチャック202に保持されたウエハWの表面(上面)に向けて、薬液を供給するための薬液ノズル204と、ウエハWの表面にDIWを供給するためのDIWノズル205とを備えている。
【0088】
スピンチャック202は、モータ206と、このモータ206の回転駆動力によって回転軸線Cまわりに回転される円盤状のスピンベース207と、スピンベース207の周縁部の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材208とを備えている。これにより、スピンチャック202は、複数個の挟持部材208によってウエハWを挟持した状態で、モータ206の回転駆動力によってスピンベース207を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース207とともに回転軸線Cまわりに回転させることができる。
【0089】
なお、スピンチャック202としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
薬液ノズル204(図10では図示を省略)は、たとえば連続流の状態で薬液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム210の先端に取り付けられている。このアーム210は、スピンチャック202の側方でほぼ鉛直に延びたアーム支持軸211に支持されている。アーム支持軸211には、ノズル駆動機構212が結合されており、このノズル駆動機構212の駆動力によって、アーム支持軸211を回動させて、薬液ノズル204を揺動させることができるようになっている。
【0090】
薬液ノズル204(図10では図示を省略)には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液供給管214が接続されている。薬液供給管214の途中部には、薬液ノズル204からの薬液の吐出/吐出停止を切り換えるための薬液バルブ215が介装されている。
DIWノズル205は、たとえば、連続流の状態でDIWを吐出するストレートノズルであり、スピンチャック202の上方で、その吐出口をウエハWの回転中心付近に向けて配置されている。このDIWノズル205には、DIW供給源からのDIWが供給されるDIW供給管216が接続されている。DIW供給管216の途中部には、DIWノズル205からのDIWの吐出/吐出停止を切り換えるためのDIWバルブ217が介装されている。
【0091】
スピンチャック202の上方には、ウエハWとほぼ同じ径を有する円板状の遮断板(遮断部材)218が設けられている。遮断板218の下面には、スピンチャック202に保持されたウエハWの表面と対向する基板対向面219が形成されている。遮断板218の上面には、スピンチャック202の回転軸線Cと共通の軸線に沿う回転軸220が固定されている。回転軸220は、ほぼ水平に延びて設けられたアーム230の先端付近から垂下した状態に取り付けられている。
【0092】
回転軸220は中空に形成されていて、その内部には、ウエハW表面の回転中心付近に向けて窒素ガスを供給するための第1窒素ガス供給路221が形成されている。第1窒素ガス供給路221は、基板対向面219に開口する窒素ガス吐出口222を有している。この第1窒素ガス供給路221には、第1窒素ガス供給管223が接続されており、窒素ガスが第1窒素ガス供給管223を通して供給されるようになっている。第1窒素ガス供給管223の途中部には、第1窒素ガス供給路221への窒素ガスの供給および供給停止を切り換えるための第1窒素ガスバルブ224が介装されている。
【0093】
また、遮断板218の上方には、スピンチャック202に保持されたウエハWの側方の環状の領域に向けて窒素ガスを供給するためのガス吐出部材(気体吐出手段)225が配置されている。ガス吐出部材225は、遮断板218よりもやや大径の略円板状に形成されており、ガス吐出部材225の中央には、回転軸220が挿通する挿通孔225Aが形成されている。ガス吐出部材225の下面の周縁部には、鉛直下方に向けて窒素ガスを吐出する環状の窒素ガス吐出口226が形成されており。この窒素ガス吐出口226から吐出される窒素ガスが、遮断板218の側方を通過して、スピンチャック202に保持されたウエハWの側方の領域(スピンベース207と第1傘状部材251の先端縁とで挟まれる狭空間)に導かれる。ガス吐出部材225の内部には、ウエハW表面の回転中心付近に向けて窒素ガスを供給するための第2窒素ガス供給路227が形成されている。この第2窒素ガス供給路227には、第2窒素ガス供給管228が接続されており、窒素ガスが第2窒素ガス供給管228を通して供給されるようになっている。第2窒素ガス供給管228の途中部には、第2窒素ガス供給路227への窒素ガスの供給および供給停止を切り換えるための第2窒素ガスバルブ229が介装されている。窒素ガス吐出口226から吐出された窒素ガスは、ウエハWの側方の環状の領域に向けて窒素ガスが供給される。これにより、ウエハWの側方に、上下方向に向かう環状の気流、すなわち円筒状の窒素ガスのカーテンが形成されるようになる。
【0094】
ガス吐出部材225は、アーム230に固定されており、このアーム230により保持されている。すなわち、アーム230に、遮断板218とガス吐出部材225とが保持されている。アーム230には、アーム230を昇降させるための昇降させるためのアーム昇降駆動機構231が結合されている。このアーム昇降駆動機構231により、遮断板218とガス吐出部材225とを、スピンチャック202に保持されたウエハWの表面に近接する近接位置(図10参照)と、スピンチャック202の上方に離間する離間位置(図9参照)との間で、一体的に昇降させることができるようになっている。また、アーム230には、遮断板218をスピンチャック202によるウエハWの回転にほぼ同期させて回転させるための遮断部材回転手段としての遮断板回転駆動機構232が結合されている。近接位置にある遮断板218は、ウエハWの表面上の空間をその周囲から遮断するようになる。このとき、基板対向面219とウエハWの上面との間の間隔はたとえば1.0mmである。
【0095】
処理カップ203は、ウエハWの処理に用いられた後の薬液およびDIWを処理するためのものであり、スピンチャック202を収容する有底円筒容器状の下カップ233と、この下カップ233の上方に設けられ、この下カップ233に対して昇降可能なスプラッシュガード234とを備えている。
下カップ233の底部には、窒素ガスを、薬液のミストごと排気(排気液)するための排気液溝238が、ウエハWの回転軸線Cを中心とする円環状に形成されている。また、下カップ233の底部には、排気液溝238を取り囲むように、ウエハWの処理のために用いられた後の薬液をそれぞれ回収するための円環状の第1回収溝236および第2回収溝237が2重に形成されている。排気液溝238の外側に第2回収溝237が形成され、第2回収溝237の外側に第1回収溝236が形成されている。第1回収溝236の外側に、DIWとウエハWの処理に用いられた後の薬液との混合液を廃液するための廃液溝235が形成されている。廃液溝235、第1回収溝236、第2回収溝237および排気液溝238には、それぞれ廃液ライン239、第1回収ライン240、第2回収ライン241および排気液ライン242が接続されている。排気液ライン242には、この排気液溝238に集められた窒素ガスを排出するとともに、排気液溝238内を強制的に排気するための図示しない排気液機構が接続されている。
【0096】
スプラッシュガード234は、薬液およびDIWがウエハWから外部に飛散することを防止するためのものであり、互いに大きさが異なる4つの傘状部材251,252,253,254を重ねて構成されている。スプラッシュガード234には、たとえばサーボモータなどを含むガード昇降駆動機構243が結合されており、このガード昇降駆動機構243が制御されることによって、スプラッシュガード234を下カップ233に対して昇降(上下動)させることができる。
【0097】
各傘状部材251〜254は、ウエハWの回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。
最上の第1傘状部材251は、ウエハWの回転軸線Cを中心軸線とする同軸円筒状の円筒部255と、円筒部255の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に延びる傾斜部257とを備えている。円筒部255の下端は、廃液溝235上に位置している。
【0098】
第2傘状部材252は、第1傘状部材251の円筒部255に取り囲まれるように設けられ、ウエハWの回転軸線Cを中心軸線とする同軸円筒状の円筒部258,259と、外側の円筒部258の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に延びる傾斜部260とを備えている。外側の円筒部258の下端は、廃液溝235上に位置し、内側(中心側)の円筒部259の下端は、第1回収溝236上に位置している。
【0099】
第3傘状部材253は、第2傘状部材252の内側の円筒部259に取り囲まれるように設けられ、ウエハWの回転軸線Cを中心軸線とする同軸円筒状の円筒部261,262と、外側の円筒部261の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に延びる傾斜部263とを備えている。外側の円筒部261の下端は、第1回収溝236上に位置し、内側(中心側)の円筒部262の下端は、第2回収溝237上に位置している。
【0100】
第4傘状部材254は、第3傘状部材253の内側の円筒部262に取り囲まれるように設けられ、ウエハWの回転軸線Cを中心軸線とする円筒状の円筒部264と、円筒部264の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に延びる傾斜部265と、円筒部264の途中部から中心側斜め下方に延びる排気案内部66とを備えている。円筒部264の下端は、第2回収溝237上に位置し、排気案内部66の下端は、排気液溝238上に位置している。
【0101】
傘状部材251〜254の上端縁は、ウエハWの回転軸線Cを中心軸線とする円筒面上において、そのウエハWの回転軸線Cに沿う方向(鉛直方向)に間隔を空けて位置している。
第1傘状部材251の上端縁と第2傘状部材252の上端縁との間には、ウエハWから飛散する薬液とDIWとの混合液を飛入させて、その混合液を廃液溝235に捕集するための円環状の第1開口部271が形成されている。
【0102】
また、第2傘状部材252の上端縁と第3傘状部材253の上端縁との間には、ウエハWから飛散する薬液を飛入させて、その薬液を第1回収溝236に捕集するための円環状の第2開口部272が形成されている。
さらに、第3傘状部材253の上端縁と第4傘状部材254の上端縁との間には、ウエハWから飛散する薬液を飛入させて、その薬液を第2回収溝237に捕集するための円環状の第3開口部273が形成されている。
【0103】
第4傘状部材254の傾斜部265の上端縁と排気案内部66の下端縁との間には、窒素ガスを、薬液のミストごと捕獲するための第4開口部274が形成されている。
図11は、ガス吐出部材225の底面図である。図12は、図11の切断面線A−Aから見た断面図である。
ガス吐出部材225は、それぞれほぼ板状に形成された第1部材244および第2部材245を上下方向に重ねて配置した構成である。第1部材244は、円板状のプレート部280と、このプレート部280の周縁から下方に垂れ下がった垂下部281とを備えている。第2部材245は、プレート部280の下方でプレート部280に対向する円板状のプレート部282と、このプレート部282の周縁から下方に垂れ下がった垂下部283とを備えている。プレート部280とプレート部282との間に複数(たとえば3つの)のスペーサ246を介して一体化されている。第1部材244と第2部材245との間の隙間が、窒素ガスが流通するする第2窒素ガス供給路227になっている。この第2窒素ガス供給路227は、その途中部で下方に向けて折れ曲がり、第2部材245の下面に開口した環状の窒素ガス吐出口226に連通している。
【0104】
プレート部280には、第2窒素ガス供給路227に窒素ガスを導入するための複数(たとえば3つの)導入口247が等角度間隔に形成されている。この導入口247に、第2窒素ガス供給管228の一端が接続されている。導入口247から導入された窒素ガスは、第2窒素ガス供給路227内をガス吐出部材225の周縁部に向けて移動し、環状の窒素ガス吐出口226から鉛直下方に向けて吐出される。
【0105】
図13は、基板処理装置200の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置200は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置248を備えている。この制御装置248には、制御対象として、モータ206、ノズル駆動機構212、ガード昇降駆動機構243、遮断板回転駆動機構232、アーム昇降駆動機構231、薬液バルブ215、DIWバルブ217、第1窒素ガスバルブ224および第2窒素ガスバルブ229などが接続されている。
【0106】
図14は、基板処理装置200で行われる処理例を説明するためのフローチャートである。
以下の処理例では、ウエハWに1種類の薬液を用いた処理を施す場合を例にとり、薬液を第1回収溝236で回収するものとして説明する。しかしながら、薬液を第2回収溝237で回収する構成としてもよい。また、ウエハWに2種類の薬液(たとえば第1薬液および第2薬液)を用いた処理を施す場合には、たとえば、第1薬液を第1回収溝236から回収し、第2薬液を第2回収溝237から回収する構成を採用することができる。
【0107】
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって基板処理装置200内に搬入されて、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック202に保持される(ステップS11)。なお、このウエハWの搬入時においては、その搬入の妨げにならないように、スプラッシュガード234の最下方の退避位置(図10参照)に下げられている。この退避位置にあるスプラッシュガード234は、第1傘状部材251の上端がウエハW保持位置の下方に位置している。また、遮断板218およびガス吐出部材225は、スピンチャック202のスピンベース207から上方に離間した離間位置(図9参照)に配置されている。
【0108】
ウエハWがスピンチャック202に保持されると、モータ206が制御されて、スピンチャック202によるウエハWの回転(スピンベース207の回転)が開始され、ウエハWの回転速度がたとえば1500rpmまで上げられる。また、ガード昇降駆動機構243が制御されて、スプラッシュガード234が、第2開口部272がウエハWの端面に対向する第2開口部対向位置(図9に実線で図示)まで上昇される。さらに、ノズル駆動機構212が制御されてアーム210が回動し、薬液ノズル204は、スピンチャック202の側方の退避位置からウエハWの上方位置へと移動される。さらにまた、第2窒素ガスバルブ229が開かれて、窒素ガス吐出口226からウエハWの側方に向けて窒素ガスが吐出される(ステップS12)。これにより、ウエハWの側方に、上下方向に向かう環状の気流、すなわち円筒状の窒素ガスのカーテンが形成されるようになる。
【0109】
ウエハWの回転速度が1500rpmに達すると、薬液バルブ215が開かれて、薬液ノズル204からウエハWの表面の回転中心付近に向けて薬液が供給される。ウエハWの表面に供給された薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に薬液を用いた薬液処理が施される(ステップS13)。ウエハWの周縁に向かって流れる薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散し、ウエハWの端面に対向している第2開口部272に飛入する。そして、第2傘状部材252の外側壁面または第3傘状部材253の内側壁面を伝って第1回収溝236に集められ、第1回収ライン240へと送られ、図外の薬液回収設備へ導かれる。
【0110】
薬液処理は所定の薬液処理時間続行される。その間、薬液ノズル204からウエハWに対して薬液が供給され続けている。したがって、遮断板218とウエハWの表面との間の空間S3には、薬液のミストを含む雰囲気が充満している。一方、薬液処理を通じて、空間S3を包囲するように窒素ガスのカーテンが形成されている。このため、空間S3内の薬液のミストを含む雰囲気と、窒素ガスのカーテンの外方の雰囲気とが遮断されつつ、ウエハWに薬液処理が施される。
【0111】
また、薬液処理を通じて、遮断板218およびガス吐出部材225が、離間位置(図10参照)に配置されたままである。そのため、遮断板218およびガス吐出部材225が、ウエハWに対する薬液処理を妨げることがない。
ウエハWへの薬液の供給開始から所定の薬液処理時間が経過すると、窒素ガス吐出口226からの窒素ガスの吐出が続行されたまま、薬液バルブ215が閉じられて、薬液ノズル204からの薬液の供給が停止される。また、ノズル駆動機構212が制御されてアーム210が回動し、薬液ノズル204は、ウエハWの上方位置からスピンチャック202の側方の退避位置に退避される。さらに、ガード昇降駆動機構243が駆動されて、ウエハWの端面に第1開口部271が対向する第1開口部対向位置(図9に一点鎖線で図示)までスプラッシュガード234が下げられる(ステップS14)。
【0112】
スプラッシュガード234が第1開口部対向位置まで下降されると、DIWバルブ217が開かれて、DIWノズル205から回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けてDIWが吐出される。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着している薬液がDIWによって洗い流される(ステップS14)。ウエハWの周縁に向けて流れるDIWは、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。ウエハWの周縁から飛散するDIW(ウエハWから洗い流された薬液を含む)は、ウエハWの端面に対向している第1開口部271に捕獲され、第1傘状部材251の内側壁面および第2傘状部材252の外側壁面を伝って廃液溝235に集められ、その廃液溝235から廃液ライン239を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0113】
このリンス処理を通じて、空間S3を包囲するように窒素ガスのカーテンが形成されている。このため、空間S3内の雰囲気と、ウエハWの周辺の雰囲気とが遮断されつつ、ウエハWにリンス処理が施される。このリンス処理時には、ウエハWの周囲に薬液のミストを含む雰囲気が残存しているおそれがある。
また、このリンス処理を通じて、遮断板218およびガス吐出部材225は、離間位置(図9参照)に配置されたままである。そのため、遮断板218およびガス吐出部材225が、ウエハWに対するリンス処理を妨げることがない。
【0114】
DIWの供給開始から所定のリンス時間が経過すると、DIWバルブ217が閉じられて、ウエハWへのDIWの供給が停止される。その後、ガード昇降駆動機構243が駆動されて、スプラッシュガード234が第1開口部対向位置から最下方の退避位置(図10参照)に下げられる。また、アーム昇降駆動機構231が制御されて、遮断板218およびガス吐出部材225が近接位置まで下降される(ステップS15)。
【0115】
さらに、第1窒素ガスバルブ224が開かれて、第1窒素ガス供給路221から、ウエハWの表面と遮断板218の基板対向面219との間に窒素ガスが供給される。これにより、図10に示すように、ウエハWの表面と基板対向面219との間の狭空間に、ウエハWの回転中心付近からウエハWの周縁部に向かう窒素ガスの気流が形成され、ウエハWの表面と基板対向面219との間が窒素ガスで充満される。
【0116】
また、ウエハWの回転速度がスピンドライ回転速度(たとえば3000rpm)に上げられる。これにより、リンス処理後のウエハWの表面に付着しているDIWを遠心力で振り切って乾燥させるスピンドライが実施される(ステップS16)。このスピンドライ時には、ウエハWの周縁から飛散するDIWは、第4傘状部材254の外側壁面に付着する。
【0117】
さらにまた、遮断板218がウエハWの回転に同期して、ウエハWの回転方向と同方向に回転される。このため、高速回転中のウエハWの中央部上と遮断板218との間に安定気流を形成することができる。
スピンドライ処理を通じて、ウエハWの側方を包囲するように窒素ガスのカーテンが形成されている。このため、空間S3内の雰囲気と、ウエハWの周辺の雰囲気とが遮断されつつ、ウエハWにスピンドライ処理が施される。このスピンドライ処理時には、ウエハWの周囲に薬液のミストを含む雰囲気が残存しているおそれがある。
【0118】
スピンドライ処理が所定のスピンドライ時間にわたって行われると、スピンチャック202および遮断板218の回転が停止され、第1窒素ガスバルブ224が閉じられる。また、アーム昇降駆動機構231が制御されて、遮断板218およびガス吐出部材225が離間位置まで上昇される(ステップS17)。そして、第2窒素ガスバルブ229が開かれて、窒素ガス吐出口226からの窒素ガスの吐出が停止された後(ステップS18)、図示しない搬送ロボットによってウエハWが搬出される(ステップS19)。
【0119】
以上のように、この実施形態によれば、遮断板218によって、ウエハWの表面と基板対向面219との間の空間が、遮断板218の上方の空間から遮断される。そして、ガス吐出部材225から窒素ガスが吐出されることにより形成される気流は、ウエハWの側方を包囲し、ウエハWの表面と基板対向面219との間の空間を、気流の外側の空間から遮断する。その結果、薬液処理中に、ウエハWの表面と基板対向面219との間の空間の薬液のミストを含む雰囲気が周囲に拡散することを防止できる。また、リンス処理中やスピンドライ処理中に、周囲の雰囲気がウエハWの表面と基板対向面219との間の空間に流入することを防止できる。
【0120】
さらに、ウエハWが高速のスピンドライ回転速度で回転されるスピンドライ時に、ウエハWの周縁部と遮断板22との間で気流が乱れても、ガス吐出部材225からの清浄な窒素ガスがウエハWと遮断板22との間に吸い込まれるので、ウエハWの表面が汚染されることがない。これにより、ウエハWの表面が汚染されることなく、ウエハWにスピンドライ処理を施すことができる。
【0121】
以上により、ウエハWへの薬液処理の開始から乾燥終了後までの期間を通じてウエハWの清浄状態を保つことができる。
以上、この発明の5つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することも可能である。
たとえば、第1および第2実施形態に係る基板処理装置において、雰囲気遮断部材38,138の下面に付着している異物(たとえば、パーティクルや、SPMの液滴など)を雰囲気遮断部材38,138の回転による遠心力によって振り切って除去する回転異物除去工程を実施してもよい。
【0122】
具体的には、たとえば、図15に示すように、回転手段としての第1回転駆動機構53によって回転軸39および雰囲気遮断部材38を回転させ、この回転による遠心力によって雰囲気遮断部材38の下面に付着している異物(図15では、SPMの液滴)を振り切って除去してもよい。
また、第1〜第4実施形態に係る基板処理装置において、雰囲気遮断部材38,138の下面に付着している前記異物を気体によって除去する気体吐出異物除去工程を実施してもよい。具体的には、たとえば、雰囲気遮断部材38,138の下面において、周縁気体吐出口42に取り囲まれた範囲に複数の気体吐出口を設け、この複数の気体吐出口から小流量で空気(気体の一例)を吐出させることにより、雰囲気遮断部材38,138の下面に付着している前記異物を気体によって除去してもよい。雰囲気遮断部材38,138の下面に付着している前記異物を当該下面から除去することで、この異物がウエハWに付着して当該ウエハWが汚染されることを抑制または防止することができる。
【0123】
回転異物除去工程および気体吐出異物除去工程は、それぞれ、ウエハWの処理が行われている間に実施されてもよいし、処理チャンバ内にウエハWが存在しない間に実施されてもよい。ウエハWの処理が行われている間に回転異物除去工程または気体吐出異物除去工程が実施される具体例としては、たとえば、図5等を参照して説明した前述のウエハWの処理の一例において、SPM供給工程とリンス工程との間に回転異物除去工程または気体吐出異物除去工程が実施されてもよい。
【0124】
また、第1〜第4実施形態では、薬液としてSPMを例示したが、これに限らず、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水のうちの少なくとも1つを含む液を用いることができる。
さらに、第1〜第4実施形態では、各周縁気体吐出口42から吐出される気体として空気を例示したが、空気に限らず、窒素ガスやその他の不活性ガスが各周縁気体吐出口42から吐出されてもよい。また、中心気体吐出口41から吐出される気体は、窒素ガスに限らずその他の不活性ガスであってもよい。
【0125】
また、第1〜第4実施形態では、ウエハWに対してレジスト剥離処理を行う装置を例にとったが、この発明は、レジスト剥離処理に限らず、たとえば、ウエハWの表面を洗浄する洗浄処理装置、ウエハWの表面から不要な薄膜をエッチング液を用いて除去するエッチング処理装置、ウエハWの表面から不要なポリマー残渣をポリマー除去液を用いて除去するポリマー除去装置、あるいは、ウエハWの表面に現像液を供給してレジストを現像する現像装置などに適用することもできる。
【0126】
さらにまた、第1〜第4実施形態では、処理カップ3として、複数の構成部材(内構成部材17および外構成部材18)が互いに独立して昇降する構成を例にとって説明したが、第5実施形態に示す処理カップ203のように、静止状態に保持された下カップに対してスプラッシュガードが昇降する構成を採用することもできる。
また、第5実施形態では、遮断板218とガス吐出部材225とが共通のアーム230に保持されている構成を例にとって説明したが、ガス吐出部材225が遮断板218を保持するアーム230とは異なる保持部材(アーム)に保持された構成することもできる。かかる場合、この保持部材に、ガス吐出部材225を昇降させるための昇降駆動機構が結合されて、ガス吐出部材225が遮断板218と独立して昇降するものであってもよい。
【0127】
さらに、第5実施形態では、スピンドライ中にウエハWの表面と遮断板218との間に窒素ガスを吐出する構成を例示したが、窒素ガスに限られず、空気その他の不活性ガスであってもよい。
また、第5実施形態では、処理カップ203として、静止状態に保持された下カップ233に対してスプラッシュガード234が昇降する構成を例にとって説明したが、第1〜第4実施形態に示す処理カップ3のように、複数の構成部材が互いに独立して昇降する構成を採用することもできる。
【0128】
さらに、前述の各実施形態では、リンス液としてDIWを用いる場合を例にとって説明したが、これに代えて、純水、炭酸水、電解イオン水、水素水、磁気水や、希釈濃度(たとえば、1ppm程度)のアンモニア水などを用いることができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【図2】図1の一部を拡大した図である
【図3】雰囲気遮断部材の下面の概略図である。
【図4】第1実施形態に係る基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図5】第1実施形態に係る基板処理装置によるウエハの処理の一例を説明するための図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【図7】この発明の第3実施形態に係る基板処理装置の概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【図8】この発明の第4実施形態に係る基板処理装置の概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【図9】この発明の第5実施形態に係る基板処理装置の構成を図解的に示す断面図である。
【図10】図9に示す基板処理装置のスピンドライ処理時の構成を図解的に示す断面図である。
【図11】図9に示す基板処理装置のガス吐出部材の底面図である。
【図12】図11の切断面線A−Aから見た断面図である。
【図13】図9に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】図9に示す基板処理装置で行われる処理例を説明するためのフローチャートである。
【図15】第1実施形態に係る基板処理装置において異物除去工程が実施されている状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0130】
100,102,103,104,200 基板処理装置
1 スピンチャック(基板保持手段)
2 処理液ノズル(処理液供給手段)
3 処理カップ(カップ)
4 雰囲気遮断機構(気体吐出手段)
27 排気液機構(排気手段)
18b 上端部(上端)
18d 上端(開口端)
33 開口
38A,138A 基板対向面
50 空気供給管(気体供給配管)
53 第1回転駆動機構(回転手段)
56 フード(案内部材)
58 フード(案内部材)
202 スピンチャック(基板保持手段,基板回転手段)
204 薬液ノズル(処理液供給手段)
205 DIWノズル(処理液供給手段)
218 遮断板(遮断部材)
219 基板対向面
225 ガス吐出部材(気体吐出手段)
228 第2窒素ガス供給管
232 遮断板回転駆動機構(遮断部材回転手段)
248 制御装置(スピンドライ制御手段)
C 回転軸線
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段の上方に配置され、前記基板保持手段に保持された基板の側方を取り囲む環状の領域に向けて気体を吐出する気体吐出手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するための処理液供給手段をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記気体吐出手段に接続され、前記気体吐出手段に対して気体を供給する気体供給配管をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板保持手段を取り囲み、上端に開口が設けられた筒状のカップをさらに含み、
前記気体吐出手段は、前記カップの開口端に沿うように当該カップの内部に向けて気体を筒状に吐出する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記気体吐出手段は、当該気体吐出手段から前記カップの開口端に向かって広がるように気体を斜めに吐出するものである、請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記気体吐出手段から吐出された気体を前記カップの開口端に向けて案内する案内部材をさらに含む、請求項4または5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記カップの内部の雰囲気を当該カップの下側から排気する排気手段をさらに含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記気体吐出手段が、前記開口よりも少し大きいサイズに形成されて、前記基板保持手段により保持された基板の表面に対して対向配置される基板対向面を有している、請求項4〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記気体吐出手段を回転させる回転手段をさらに含む、請求項4〜8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持手段により保持された基板の表面に対して対向配置される基板対向面を有し、当該基板の表面と前記基板対向面との間の空間を、その上方の空間から遮断するための遮断部材をさらに備えている、請求項1〜3記載のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記気体吐出手段は、前記遮断部材と別体に形成されており、
前記基板保持手段により保持された基板を回転させる基板回転手段と、
前記遮断部材を基板の回転軸線と共通の回転軸線まわりに回転させる遮断部材回転手段とをさらに含む、請求項10記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記基板回転手段および前記遮断部材回転手段を制御して、前記基板保持手段により保持された基板および前記遮断部材をそれぞれ所定のスピンドライ回転速度で同方向に回転させるとともに、前記気体吐出手段を制御して、前記気体吐出手段から気体を吐出させるスピンドライ制御手段をさらに含む、請求項11記載の基板処理装置。
【請求項13】
基板保持手段によって保持された基板に処理液を供給する処理液供給工程と、
この処理液供給工程と並行して行われ、前記基板保持手段を取り囲み上端に開口が設けられた筒状のカップに対して、前記基板保持手段の上方から前記カップの内部に向かって当該カップの開口端に沿うように気体を筒状に吐出することで、当該カップの内部の雰囲気が漏れ出すことを防止する雰囲気遮断工程とを含む、基板処理方法。
【請求項14】
基板を所定のスピンドライ速度で回転させる基板回転工程と、
この基板回転工程と並行して、基板の表面上の空間をその周囲から遮断するための遮断部材を、前記基板と共通の回転軸線まわりに所定のスピンドライ速度で同方向に回転させる遮断部材回転工程と、
前記遮断部材と別体に形成された気体吐出手段から、基板の側方の環状の領域に向けて気体を吐出する気体吐出工程とを含む、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−135396(P2009−135396A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80469(P2008−80469)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】