説明

寄生容量が減らされた半導体デバイス

【課題】高速ショットキーデバイス及びpn接合デバイスにおける寄生容量を低減すると共にボンディング強度を改善する。
【解決手段】基板303と、基板303の上に配置される半導体デバイス300、302、及び半導体デバイス300、302との電気的接触を行うボンディング用パッド307を有し、ベンゾシクロブテンの層304が半導体デバイスの周辺に設けられ、ボンディング用パッド307がベンゾシクロブテンの層304の頂面に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリア及びpn接合を有する高速デバイスで、製造の歩留まり及び特性を改良しつつ寄生容量を減らす技術に関する。
【背景技術】
【0002】
RF及びマイクロ波周波数デバイスの多くの応用において、非常に弱い信号を変調し又は検知する性能のみに関する改良が行われている。マイクロ波及びRF周波数領域では、無線周波数通信及びレーダシステムのために非常に感度の良い受信装置の開発が必要とされる。パラメトリック相互作用のために特に使用される 接合ダイオードはバラクタダイオードである。多くの応用でバラクタ及びショットキー接合ダイオードはSi系デバイスとされるが、高周波用のバラクタ及び ショットキー接合ダイオードは通常GaAs系とされる。
【0003】
デバイスの周波数応答速度が増すにつれて、容量及びインダクタンスの寄生分がデバイスの設計に大部分にわたって最小とされなければならない。即ち、寄生容量及び寄生インダクタンスはデバイスの周波数応答に対して大きな悪影響を生じ得る。
【0004】
まず所定のデバイスの容量によれば、基本的に容量を生じ得る3つの点が存在する。第1に、それは半導体デバイスの個別層間の接合に係る接合容量である。所定のデバイスの接合容量を減らすために、通常その接合幅は可能な限り小さくされる。しかしながら、接合幅を減らす際に、接合容量が減らされることと結合抵抗が増すこととの間の調整がしばしば注意深く考慮されなければならない。次に、デバイスのパッケージに係る容量が考慮され、可能な限り減らされなければならない。最後に、本発明の関与する点であるが、デバイスの金属配線に設けられるボンディング用パッドの容量が、接合の構造に重なる位置で生じる。
【0005】
ボンディング用パッドの寄生容量は、他の容量の原因と同様に、ボンディング用パッドの面積に直接的に依存する。ボンディング用パッドの面積を減らすための可能な解決法の一つは、ボンディング用パッド自体の面積を減らすことであった。図1に示される如き通常のプロセス技術では、標準のバラクタは25μm程度の幅のボンディング用パッドの配線を有する。このことは、ボンディング用パッドに係る容量を減らす本来的な利点を有し、これによりバラクタの周波数応答を改善できる。パッケージのインダクタンスは、チューニング(又は調整)のためのバラクタのRF特性に対して重要な役割を担う。特に高周波で最大のQ値(クオリティ因子)を得るために、約76μmの厚さのボンディングリボンがボンディングワイヤの代わりに設けられる。25μm程度のメサ型GaAs接合部分に76μm程度のリボンをボンディングするのは困難な作業であり、製造の歩留まりは低いものとなってしまう。更に、製造されたデバイスの信頼性も落ちてしまう。即ち、ボンディング用パッドの面積が比較的小さいために、製造の歩留まりは通常非常に低くなってしまう。またそれによってボンディングの強度が弱くなりデバイスへの接続信頼性が落ちる。このように電気的接続の信頼性がないことはデバイスへの実際のボンディング接続当初から発生し得るし、また及びデバイスの信頼性検査の際に行われるボンディング部引っ張り試験の際の不良としても生じ得る。
【0006】
理論上は、25μmのボンディング用パッドに正確に位置合わせされる25μm程度のボンディングワイヤを使用することは、十分に信頼性が高くボンディング 部引っ張り試験に耐え得る強度を有する接続を提供する。しかしながら、実際にはそれは得られない。即ち、頻繁に位置合わせ不良が起こり、またボンディング 部引っ張り試験によってボンディングワイヤとボンディング用パッドとの接続に不良が生じる。更にボンディング用パッドへの電気的接続のためにボンディング用ワイヤを使用することは、デバイスのインダクタンスを増し、寄生インダクタンスを生ぜしめる。この寄生インダクタンスはそのデバイスの性能、例えばバラクタダイオードのチューニング性能を劣化させてしまう。ボンディングワイヤに係るインダクタンスを最小にしなければならない応用では、25μm程度のボンディング用ワイヤの代わりに76μm程度の幅を有する電気部品であるボンディングリボンが使用される。ボンディングリボンは同様に使用されるボンディングワイヤに比べて単位長さあたりのインダクタンスはより小さくなる。
【0007】
ボンディング用パッドと外部回路との電気的接続を実現するために最も効果的な方法を検討する際に、更に2、3の考慮すべき内容がある。第1に、ボンディングリボンによれば、25μm程度の径を有する標準のボンディングワイヤを使用するワイヤボンディングに比較してその信頼性は比較的低く、よって歩留まりは低くなる。即ち、25μm程度の直径のボンディング用パッドに被着される約76μmのボンディングリボンは、ボンディング部引っ張り検査の際に高い割合で剥離を生じてしまう。これはボンディングリボンが大きく重なって位置することの直接の結果である。これは、頂側のボンディング用パッドに被着されるボンディングリボンを有する従来技術のバラクタとして、図1中により詳細に示される。ボンディングリボンとの良好な被着を適当に実現するために、ボンディング用パッドの径を大きくして、ボンディングリボンとボンディング用パッドとのボンディング強度を最適にする必要がある。更に、半導体ダイオードを量産し低価格で提供するために、自動ボンディング装置を使用することが必要とされる。しかしながら、これらのボンディング装置はパターン認識の原理に基づくものであり、よって効果的な動作のためには少なくとも100μm程度の大きさのボンディング面積を必要とする。従って、ボンディング用パッドの径は従来のものよりも更に大きくされなければならない。上述したように、このことはボンディングパッドに係る容量を増すことになり、それは高速デバイスには大きな欠点となってしまう。最後に、特定の応用では、ワイヤボンディングがボンディング用パッドと外部回路との電気的接続を実現するための好ましい手段とされ、従ってより大きな径のボンディング用パッドがより信頼性の高いワイヤボンディングによる被着を可能にし、よってボンディング接続の信頼性及び歩留まりを改善できる点に注目すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、必要とされるのは、高速デバイスとしてのデバイスレベルでの電気的接続を実現し、ボンディング用パッドに係る容量を減らすと共にボンディング強度を改善する技術である。製造されるデバイスは、製造の歩留まりが改善されると共に寄生容量及び寄生インダクタンスが減らされることによる改善された性能を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、リボン又はワイヤを半導体装置上のボンディング用パッドにボンディング接続する技術に関し、それは、比較的大きなボンディング用パッドによってボンディングリボンとボンディング用パッドとの間の強固なボンディング接続を実現可能とすると共に、ボンディング用パッドに係る容量を可能な限り大きな割合だけ減らす。
【0010】
本発明の半導体デバイスには約25μmの標準の幅を有するボンディング用パッドが形成される。比較的狭幅のボンディング用パッドを有するので、ボンディン グ用パッドによる真性の容量、即ち寄生容量は最小のレベルに維持される。その後一層の材料、好ましくはBCB(ベンゾシクロブテ ン:benzocycrobutene)の層がデバイスの対応するボンディング用パッドに成膜される。ベンゾシクロブテンの層内に標準の技術によってボンディング用パッドへのアクセスを可能にするためにバイアが形成される。その後、金属層がエッチングされたバイアの側壁及びベンゾシクロブテンの層の頂側に成膜される。好ましくは金属とされるこの導電性材料の層は、比較的大きな面積を有し、ボンディングリボンとボンディング用パッドとの強固なボンディング接続を可能にする。この金属層は、好ましくはボンディングリボンの径よりも大きな径を有し、よってボンディング用パッドの層にボンディングリボンを強固に被着させることを保証できる。しかしながら、ベンゾシクロブテンの層のために、ボンディング用パッドに係る寄生容量が大きく増えることはない。即ち、ベンゾシクロブテン材料はシリコン酸化物の如きこの応用に好適な他の材料に比べて小さな誘電率を有するものとして選択される。更に、ベンゾシクロブテンは比較的厚い層として成膜され得るので、それはボンディング用パッド構造に係る容量を更に減らす。本発明によるベンゾシクロブテ ンの形成工程はショットキーダイオード及びチューニング用バラクタとして示される。これらの2つのダイオードは例示のために示されるが、本発明を制限する ものではない。即ち本発明は、PINダイオード、トンネルダイオード、ガン素子及びインパット素子の如き高速デバイス、及びマイクロ波及びミリ波周波数で の応用に使用される他のデバイスのためのボンディング用パッドの容量を減らすためにベンゾシクロブテンの形成工程を行う。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明によるより大きなボンディング用パッドにおけるボンディング接続の強化によって、本発明の技術によって製造されるデバイスはボンディング部引っ張り試験及び他の信頼性試験に残るので、総じて歩留まりが向上する。しかしながら、ベンゾシクロブテンの層のためにデバイスの全容量はこの比較的大きなボンディング用パッドによっても悪影響を受けない。即ち、ボンディング用パッドの層を標準の約25μmから本発明の如く約100μmへと大きくする際の増加した容量は、約16倍の真性の容量、即ち寄生容量を生じ得る。しかしながら、比較的厚い層に成膜されたベンゾシクロブテンの小さな誘電率のために、従来のボンディング用パッド及びボンディング技術に比較して、容量による大きな劣化を生じることはない。更に本発明のデバイスはボンディングリボン又はボンディングワイヤをボンディング用パッドに自動ボンディングすることを可能にする。
【0012】
本発明の一つの目的は、Si/GaAs、InP、SiGeデバイス(2端子又は3端子デバイス)のための歩留まりが改善された製造工程を提供し、一方でボンディング用パッドに係る寄生容量を減らすことにある。
【0013】
本発明の特徴によれば、半導体デバイス構造に重ねてベンゾシクロブテンによるポリマー層が設けられ、それはベンゾシクロブテン内のバイア及びベンゾシクロブテンの頂面の一部に金属配線して成る大面積のボンディング用パッドを有する。
【0014】
本発明の利点は、寄生容量による劣化を生じることなくボンディング用パッドとボンディングリボン又はボンディングワイヤとの被着強度が改善されるデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ボンディング用パッド及びそれに接続されるボンディング用を有するバラクタの従来技術を示す平面図及び側方から見た断面図である。
【図2】図2は、ボンディング用パッド及びそれに接続されるボンディング用を有するバラクタの従来技術を示す平面図及び側方から見た断面図である。
【図3】図3は、ボンディングワイヤが被着されたボンディング用パッドを有する本発明によるショットキーバリアダイオードを示す平面図及び断面図である。
【図4】図4は、ボンディングリボンが被着されるボンディング用パッドを示す本発明によるバラクタを示す平面図、及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3によれば、本発明のデバイスはデバイスの一例を示す図である。即ち、図3は参照番号301としてショットキーデバイスを示す。ショットキーデバイスは、n型にドープされたシリコン層300、及び標準のショットキーバリア層を形成すべくその上に成膜されたバリア形成金属層302を有する。
【0017】
ショットキーバリアダイオードの製造の際に、n-Si基板303は約2×1018atom/cm3よりも大きなドーパント濃度を有する層として形成される。n型エピタキシャル層300は好ましくは0.15乃至1.0μm程度の厚さを有する。ショットキーバリアを形成する半導体部分のためにこのn型エピタキシャル層に設定されるドーパント濃度は、好ましくは5×1016atom/cm3乃至1×1017atom/cm3とされ、基板とエピタキシャル層のドーパントは適当なドナードーパントとされる。好ましくは、SiO2又はSi3N4の 層は、エピタキシャル層300の上に標準のフォトリソグラフィによるエッチング技術のためのマスク、及びパッシベーション膜として成膜される。この層の幅 は約300乃至10000オングストロームとされ、その材料の比較的低い誘電率のために追加の寄生容量を追加することのないようにしてデバイスに悪影響がないようにする。エッチングされる際に、層308はバリア形成金属層302を露出させるが、それは小さなバリアを有するショットキーダイオードの場合にはTiが好ましく、中程度のバリアを有するショットキーダイオードが望まれる場合にはTiWとされ、高いバリアのショットキーダイオードのためにはPtとされる。このバリア形成材料は標準の成膜技術によって成膜される。ベンゾシクロブテン(BCB)層304はバイア305を有するようエッチングされ、参照番号306で示されるボンディング用パッド配線を具えるよう構成される。この金属配線は好ましくはPtAg/PtAuとされ、拡散防止層としても作用する被 着層となるTiPt層、バイアを埋めるよう配置される安価な導電性材料であるAg、及び信頼性の高いボンディング面を形成するAuを有する。
【0018】
バイアを形成するためにエッチングされるベンゾシクロブテンの成膜方法は公知である。図示されるようにバイアは傾斜側壁を有するが、それは近接露光によって形成され良好なステップカバレージを可能にする。ベンゾシクロブテンに対するボンディング用パッドの効果的な被着は、金属の蒸着に先立ってイオンビーム処理を施した連続の工程によって実現される。金属層306、307は、ベンゾシクロブテンの頂面及びバイア内面に成膜され、上述した特許出願に示されるような標準の蒸着法又は他の技術によって層302との接続が成される。その後、ボンディング用ワイヤは標準の技術によってボンディング用パッドに被着される。
【0019】
図4によれば、類似のデバイスがバラクタとして示され、それはn+型GaAs基板400、及び好ましくはGaAsとされるn型ドープ材料から成る第1層401を有する。その後、p型ドープされた材料402の層が標準の技術によって反応室内でエピタキシャル成長されて形成される。
【0020】
半導体材料の層402はその上に標準の成膜及び焼成技術によって形成されるPt/TiPtの金属配線を有する。メサ構造がウエット式化学エッチング処理によってGaAsに形成される。Si3N4層403は標準の技術によってメサ構造のためのパッシベーション膜として形成される。参照番号404として示される窓がSi3N4層 のパッシベーション層を貫通するようエッチングして形成され、ベンゾシクロブテンの層406は上述したように好ましくは4μmの厚さに成膜されるが、厚さ としては3μm乃至10μmとされ得る。バイア407は標準の方法によってエッチングされて、TiPt/Ag/PtAuによるボンディング用パッドのための金属配線408が成膜される。ウエハはその後上下反転して置かれAuGeNi/Auの層409が3乃至4μmの厚さにして成膜され、n+オーミック接触を構成する。その後、ウエハ内のチップをカットして個々のデバイスを形成する。図3に 示される平面図によれば、本発明のボンディング用パッドは、ボンディングリボンの寸法に合わせて約100μmの径を有するよう構成される。上述したように、ボンディングリボンの幅よりも大きなボンディング用パッド305の径を有することで、ボンディング用パッドとボンディングリボンとの良好な被着が保証される。従って、ボンディング部引っ張り試験等の信頼性試験が行われるとき、ボンディング用パッドとボンディングリボンとの間の被着強度は図1及び図2に示される従来の構成よりも歩留まりにして約80乃至90%向上するのに十分であることが確認できる。
【0021】
上述したように本発明によって導かれる利点は、マイクロ波及びRF周波数での様々な応用に使用されるショットキーダイオード及びバラクタを含むショット キーデバイスにおける、従来技術によるような寄生容量による悪影響がない高周波での性能にある。更に本発明は、製造の歩留まりを維持できる従来の設計に不利な効果を生じることなくボンディング用パッドに係る寄生容量を減らすことを可能にする。即ち、ボンディング用パッドに対するボンディングリボン又はボンディングワイヤの被着強度はボンディング部引っ張り強度に耐え得る程度に十分強くされ、これによりボンディングの信頼性が保証される。ベンゾシクロブテン 材料は、低い誘電率を有し、比較的大きなボンディング用パッドをその上に形成できるようにして比較的厚く成膜可能であり、ボンディング用パッドに係る寄生 容量を大きく増大させることはない材料である。
【0022】
本発明の詳細が示されたが、全ての構造、材料、及び製造工程に変更を加えることが当業者によって明らかであることは明白である。本発明の開示に関するそのような変形、変更は、より低い容量を有する高周波半導体デバイスでありそれがデバイス周辺に誘電材料を使用してより大きなボンディング用パッド面によって 製造の歩留まりを向上させるものである限りにおいて、本発明の範囲に含まれると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、該基板上に配置される半導体デバイス、該デバイスに電気的に接触するボンディング用パッドを有する半導体デバイスの構造において、
ベンゾシクロブテンの層が前記デバイスの周囲に置かれ、
前記ボンディング用パッドが前記ベンゾシクロブテンの層の頂面に配置されるよう構成され、
前記ベンゾシクロブテンの層は、エッチングされて成ると共に上方へ進むほど外方へ広がる傾斜側面を有するバイアを有し、
前記バイアは側面に導電層を有し、前記ボンディング用パッドと前記デバイスとの間の電気的接触を提供することを特徴とする構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−152617(P2009−152617A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6412(P2009−6412)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【分割の表示】特願平10−504273の分割
【原出願日】平成9年6月25日(1997.6.25)
【出願人】(392030737)ザ ウィタカー コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】