説明

排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化装置

【課題】ガソリンを含む燃料によるストイキ運転と、水素燃料によるリーンバーン運転とが行われるエンジン1において、水素を燃料としてリーンバーン運転されているときに、キャニスタ15から吸気系に蒸発燃料のパージが行われても、エミッションが悪化しないようにする。
【解決手段】ガソリンを含む燃料によるストイキ運転時には、排気ガス中のHC、CO及びNOxを三元触媒22によって浄化し、水素燃料によるリーンバーン運転時には、排気ガス中の蒸発燃料の吸気系へのパージに因る三元触媒22では浄化されないHCをHC吸着材に吸着させ、又は酸化触媒23によって酸化浄化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷の軽減、並びに自動車の燃費低減の観点から、ハイブリッド自動車や水素を燃料とする自動車が注目されている。
【0003】
乗用車に広く使われるガソリンエンジンは一般に軽負荷での効率が悪くなる。これに対して、ハイブリッド自動車の場合、低速域や軽負荷領域では、効率の低いエンジンではなく、電気モータで走行することができるため、燃費の改善が図れ、また、有害排出物も少ないため、環境負荷の軽減に有利になる。
【0004】
一方、水素のみを燃料とする自動車の場合、ガソリン、軽油、或いはアルコールのようなHC(炭化水素)成分を燃料とする自動車とは違って、HCが排気ガスとして排出されることを避けることができる。しかし、水素燃料の場合、ガソリンに比べて発熱量が少なく、出力面で不利であるとともに、水素を自動車に多量に搭載することが難しいため、走行距離の面で不利になる。
【0005】
そこで、燃料として水素とガソリンとを用いることが提案されている。例えば特許文献1〜3には、水素とガソリンとを切り換えてエンジン燃焼室に供給するシステムが開示されている。これら特許文献には、ガソリンを燃料とするときは、エンジンが通常はストイキ運転されるので、排気ガス中のHC、CO及びNOx(窒素酸化物)を浄化すべく、三元触媒を排気ガス通路に配置することが記載されている。また、水素を燃料とするときにはエンジンからNOxが排出されるが、特許文献3には、三元触媒とNOx吸蔵還元触媒やNOx選択還元触媒とを組み合わせて使用することが開示されている。
【特許文献1】特開2007−51583号公報
【特許文献2】特開2007−51596号公報
【特許文献3】特開2007−269227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、燃料として水素とガソリンとを用いる場合、三元触媒のみでは、或いは三元触媒とNOx吸蔵還元触媒やNOx選択還元触媒とを組み合わせた場合でも、HCが浄化されることなく排出されてしまうことがある。
【0007】
すなわち、ガソリンタンクには、該タンク内で発生する蒸発燃料の大気への放出を防ぐために、活性炭等の吸着剤を収容したキャニスタが接続されている。その吸着剤の吸着能力には限界があるため、吸着が飽和する前にキャニスタに大気を取り込んで吸着剤から燃料成分を放出させ、エンジンの吸気系に導入するパージ処理が必要となる。ところが、エンジンは水素を燃料とするときはリーンバーン運転され、燃焼室温度が低いため、吸気系にパージされた蒸発燃料は燃焼室で完全に燃焼せず、排気系に排出されるHC量が多くなる。そして、そのときは排気ガス温度が低いことから、三元触媒も温度が低く通常は不活性状態にあるため、排気ガス中の上記蒸発燃料に因るHCが酸化浄化されずに、大気中に排出されることになる。
【0008】
そこで、本発明は、エンジンが水素を燃料としてリーンバーン運転されているときに、蒸発燃料のパージが行われても、エミッションが悪化しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決するために、エンジンが水素を燃料としてリーンバーン運転されているときには、蒸発燃料のパージによって排気ガス中に含まれてくるHCをHC吸着材に吸着させる、又は酸化触媒によって酸化させるようにした。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、ガソリンを含む燃料によるストイキ運転と、水素燃料によるリーンバーン運転とが行われるエンジンの排気ガス浄化方法であって、
上記ガソリンを含む燃料を貯蔵する燃料タンク内に発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、このキャニスタに吸着された蒸発燃料をエンジンの吸気系にパージするパージ通路とを有し、
上記ガソリンを含む燃料によるストイキ運転時には、排気ガス中のHC及びCOを酸化浄化すると同時に該排気ガス中のNOxを還元浄化する同時浄化触媒によって、当該排気ガスの浄化を行ない、
上記水素燃料によるリーンバーン運転時には、上記吸気系にパージされた蒸発燃料に因る排気ガス中の上記同時浄化触媒では酸化浄化されないHCを、HC吸着材に吸着させる、及び/又は酸化触媒によって酸化浄化することを特徴とする。
【0011】
従って、リーンバーン運転時において、蒸発燃料の吸気系へのパージによってHCを含む排気ガスがエンジンから排出された場合、同時浄化触媒が活性温度に達していないときでも、その蒸発燃料に因る排気ガス中のHCは、HC吸着材に吸着され、及び/又は酸化触媒によって酸化浄化されるため、未浄化のまま大気中に排出されることが抑制される。
【0012】
なお、接続詞「及び/又は」は、接続された複数の要素の少なくとも一つが成り立つ意で使用している。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1において、
上記吸気系にパージされた蒸発燃料に因るHCを含む排気ガスを、HC吸着材と触媒金属Ptとを含有する酸化触媒に接触させることを特徴とする。
【0014】
従って、上記蒸発燃料に因る排気ガス中のHCは上記酸化触媒のHC吸着材に吸着され、そして、触媒金属Ptによって酸化浄化されることになる。また、触媒金属としてPtを採用したことにより、比較的低い温度でもリーン雰囲気において上記HCを効率良く浄化することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、ガソリンを含む燃料によるストイキ運転と、水素燃料によるリーンバーン運転とが行われるエンジンの排気ガス浄化装置であって、
上記ガソリンを含む燃料を貯蔵する燃料タンク内に発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
上記キャニスタに吸着された蒸発燃料をエンジンの吸気系にパージするパージ通路と、
上記エンジンの排気ガス通路に配置され、上記ガソリンを含む燃料によるストイキ運転時に、排気ガス中のHC及びCOを酸化浄化すると同時に該排気ガス中のNOxを還元浄化する同時浄化触媒と、
上記排気ガス通路に配置され、上記水素燃料によるリーンバーン運転時において、上記吸気系にパージされた蒸発燃料に因る排気ガス中の上記同時浄化触媒では酸化浄化されないHCを吸着するHC吸着材及び/又は該HCを酸化浄化するための酸化触媒とを備えていることを特徴とする。
【0016】
従って、ガソリンを含む燃料によるストイキ運転時には、排気ガス中のHC、CO及びNOxが同時浄化触媒によって浄化され、水素燃料によるリーンバーン運転時には、吸気系にパージされた蒸発燃料に因る排気ガス中の上記同時浄化触媒によって酸化浄化されないHCは、HC吸着材に吸着され、及び/又は酸化触媒によって酸化され、未浄化のまま大気中に排出されることが抑制される。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3において、
上記同時浄化触媒は三元触媒であり、
上記三元触媒よりも排気ガス流れの下流側の排気ガス通路に、上記HC吸着材と触媒金属Ptとを含有する酸化触媒が配置されていることを特徴とする。
【0018】
従って、上記蒸発燃料に因る排気ガス中のHCは、三元触媒で酸化浄化されることなくこれを通過しても、酸化触媒のHC吸着材に吸着され、そして、触媒金属Ptによって酸化浄化されることになる。また、三元触媒は酸化触媒よりも上流側にあって排気ガスの熱によって昇温し易いから、上記ストイキ運転時、特にエンジン冷間時の排気ガスの浄化に有利であり、一方、酸化触媒は三元触媒よりも下流側にあって排気ガスの熱影響が少なくなるから、熱劣化防止に、特にHC吸着材の熱劣化防止に有利になる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4において、
上記エンジンは、電気モータで駆動することができるハイブリッド車両に搭載され、上記電気モータのための発電機の駆動に用いられることを特徴とする。
【0020】
従って、当該ハイブリッド車両のエンジンを水素燃料によってリーンバーン運転しているときにおいて、蒸発燃料の吸気系へのパージによって排気ガス中に含まれる、同時浄化触媒によって酸化浄化されないHCは、HC吸着材に吸着され、及び/又は酸化触媒によって酸化され、未浄化のまま大気中に排出されることが抑制される。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、エンジンを水素燃料によってリーンバーン運転しているときにおいて、吸気系にパージされた蒸発燃料に因る排気ガス中のHCは、HC吸着材に吸着され、及び/又は酸化触媒によって酸化され、HC、CO及びNOxを同時に浄化する触媒が不活性であっても、未浄化のまま大気中に排出されることが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
<ハイブリッド車両の概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成図である。この車両は、エンジン1及びモータ2を動力源として備えているが、エンジン1は発電にのみ使用し、車両が動くための動力は全てモータ2に頼る所謂シリーズハイブリッド車両である。エンジン1は、ガソリンと水素とを切換えて、さらにはガソリンと水素とを混合して燃料として使用するように構成されているデュアルフューエルエンジンである。
【0024】
ハイブリッド車両は、エンジン1にガソリンを供給するガソリン燃料タンク3、エンジン1に水素を供給する水素燃料タンク4、エンジン1の出力軸5によって駆動されるジェネレータ(発電機)6、並びにモータ駆動用の電力を蓄えるバッテリ(高電圧バッテリ)7を備えている。
【0025】
バッテリ7は、モータ2及びジェネレータ6にそれぞれ、DC−ACコンバータ11及びAC−DCコンバータ12を介して接続されていて、ジェネレータ6からの発電電力及びモータ2からの回生電力が供給されることで充電される。また、バッテリ7は、電力をモータ2及びジェネレータ6に供給する。モータ2の出力軸は、駆動輪13にディファレンシャルギア14を介して連結されている。
【0026】
ジェネレータ6で発生する交流電力はAC−DCコンバータ12により直流電力に変換され、さらにDC−ACコンバータ11により交流電力に変換されてモータ2へと供給される。バッテリ7の直流電力はDC−ACコンバータ11により所定の周波数の交流電力に変換されてモータ2に供給される。ジェネレータ6で発生する交流電力はAC−DCコンバータ12により直流電力に変換されてバッテリ7に供給される。
【0027】
ガソリン燃料タンク3には、該タンク内で発生した蒸発燃料(ガソリン)を吸着するキャニスタ15が蒸発燃料通路16を介して接続されている。キャニスタ15は、その底部に大気取入口を有し、活性炭等を充填した通気性のある部材で構成される。キャニスタ15はパージ通路17を介してエンジン1のスロットル弁下流側の吸気通路に接続され、パージ通路17の途中にはパージ制御弁18が配設されている。パージ制御弁18はその開閉動作が電磁式に制御され、開弁により、キャニスタ15に吸着された蒸発燃料が空気と共に吸気通路に供給(パージ)される。
【0028】
この場合、ガソリン燃料タンク3の温度、パージを実行していない時間等に基いて、キャニスタ15の蒸発燃料吸着量を推定し、該推定量が所定値以上となったとき、パージ制御弁18を所定時間の開弁する。なお、蒸発燃料吸着量を推定せずに定期的にパージ制御弁18を所定時間開弁するようにしてもよい。
【0029】
エンジン1の排気ガス通路には、排気ガス中のHC及びCOを酸化によって浄化すると同時に該排気ガス中のNOxを還元によって浄化する同時浄化触媒としての三元触媒22が配置され、この三元触媒22よりも下流側には酸化触媒23が配置されている。三元触媒22にはその温度を検出する触媒温度センサ24が設けられ、さらに、排気ガス通路には、三元触媒22に流入する排気ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ25、並びに三元触媒22を通った排気ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ26が配置されている。三元触媒22及び酸化触媒23の具体的な構成については後述する。
【0030】
<エンジン及び制御系の構成>
本例のエンジン1は、図2に示すように、一対のロータハウジング31,32と、その内周面に沿い、出力軸(エキセントリックシャフト)5に支持されて回転する2つのロータ33,34とを備えた2ロータのロータリーピストンエンジンである。図2では一対のロータハウジング31,32を左右に展開して模式的に示している。
【0031】
エンジン1の吸気通路35には、その上流側の共通通路部位にアクチュエータ37で駆動されるスロットル弁36が設けられている。吸気通路35の下流側の分岐した2つの独立通路部位には、ポート噴射を行うガソリン用燃料噴射弁38,39が設けられ、また、ロータハウジング31,32に、燃焼室内に燃料を噴射する水素用燃料噴射弁40,41が設置されている。また、各ロータハウジング31,32にはそれぞれ2つずつ点火プラグ42〜45が設置されている。これらスロットル弁アクチュエータ37、燃料噴射弁38〜41及び点火プラグ42〜45、並びにDC−ACコンバータ11及びAC−DCコンバータ12は、コンピュータを用いた制御手段(PCM(パワートレインコントロールモジュール))46によって制御される。
【0032】
制御手段46には、上記制御のために、バッテリ電流・電圧センサ47、ガソリン燃料タンク3のガソリン残量を検出する燃料センサ48、水素燃料タンク4の水素残量を検出する圧力センサ49、車両のインストルメントパネルに設けられた使用燃料の切換えスイッチ50、車速センサ51、アクセル開度センサ52、触媒温度センサ24等の各検出信号が入力される。バッテリ電流・電圧センサ47は、バッテリ7に付設されたもので、バッテリ7に入ってくる電力、並びにバッテリ7から出て行く電力を、電流と電圧から求め、バッテリ7の蓄電量を検出するためのものである。なお、三元触媒22の温度はセンサ24によって直接検出するのでなく、排気温度やエンジン1の運転履歴から推定するようにしてもよい。
【0033】
以下、制御について具体的に説明する。エンジン1の運転に関しては、車速センサ51及びアクセル開度センサ52の検出信号に基いて、モータ2に要求される出力トルク(以下、「要求トルク」という。)が所定値以上であるときに、並びに、バッテリ電流・電圧センサ47の検出信号に基いて、バッテリ7の蓄電量が所定値以下であるときに、エンジン1の運転要と判定する。そして、モータ2の要求トルク及びバッテリ7の蓄電量に基いて、必要なエンジントルクが算出され、エンジン1が運転される。
【0034】
エンジン1に使用するガソリンと水素との間の燃料切換えは、触媒温度センサ24によって検出される三元触媒22の温度(触媒活性度)、燃料センサ48によってされるガソリン燃料タンク3のガソリン残量、圧力センサ49によって検出される水素燃料タンク4の水素残量、並びに使用燃料の切換えスイッチ50によって運転者が選択する燃料の種類に基いて実行される。すなわち、エンジン始動時、三元触媒22が活性化するまでは、排気エミッション性能を高めるため自動的に水素が使用される。三元触媒22の活性化後は、運転者がガソリンを選択しているときはガソリンが使用され、水素を選択しているときは水素が使用される。但し、水素の燃料切れを生じているときは、エンジン始動時を含めて、ガソリンが使用され、ガソリンの燃料切れを生じているときは、水素が使用される。
【0035】
エンジン1の目標空燃比(目標空気過剰率λ)は、ガソリン使用時と水素使用時とでは異なり、ガソリン使用時はλ=1に設定され(ストイキ運転)、水素使用時はNOx排出量が略零で最適な燃費率に最も近いλ=2.0近傍に設定される(リーンバーン運転)。水素使用時にエンジン1がリーンバーン運転されることによって、燃焼温度の上昇が抑えられ、NOxの排出が抑制される。但し、水素使用時でもエンジン1に対する要求トルクが大きいとき(バッテリ7の充電時や車両電気負荷が大きいとき)は目標空燃比のリーン度合いを適宜弱めてリーンバーン運転される。エンジン1の空燃比は、酸素センサ25の検出信号に基いてフィードバック制御される。
【0036】
制御手段46は、DC−ACコンバータ11及びAC−DCコンバータ12を制御し、バッテリ7、ジェネレータ13,及びモータ17の相互間での電力の授受及び変換を制御する。この場合、モータ2は、車両の定速運転時等のように要求トルクが低い低トルク運転時や車両始動時にはバッテリ7から供給される電力により駆動され、中トルク運転時にはエンジン1により駆動されるジェネレータ6から供給される電力によって駆動され、急加速時等の要求トルクが高い高トルク運転時には該ジェネレータ6及びバッテリ7の双方から供給される電力により駆動される。バッテリ7の蓄電量が少ないときには、エンジン1によって、モータ2に必要な電力よりも大きな電力を該ジェネレータ6に発生させ、余分な電力がバッテリ7に供給されて充電が行われる。
【0037】
<三元触媒・酸化触媒の構成>
三元触媒22は、図3に示すように、触媒金属としてPd及びRhを用いて二層コート構造であり、その二層の触媒層61,62はハニカム担体のセル壁63に形成されている。セル壁側の下触媒層61は、各々Pdを担持した酸素吸蔵放出材粒子及びアルミナ粒子を含有し、上触媒層62は、各々Pdを担持した酸素吸蔵放出材粒子及びアルミナ粒子を含有する。以下、具体的に説明する。
【0038】
下触媒層61には、酸素吸蔵放出能を有するCeZrYLaAl複合酸化物粒子にPdが担持されたPd/CeZrYLaAl複合酸化物と、Laを含有する活性アルミナ粒子にPdが担持されたPd/La含有アルミナとが触媒成分として、ZrOバインダ(硝酸ジルコニル)と共に混在する。上触媒層62には、酸素吸蔵放出能を有するCeZrNd複合酸化物粒子にRhが担持されたRh/CeZrNd複合酸化物と、活性アルミナ粒子の表面にZrOが担持されてなるサポート材にRhが担持されたRh/ZrO担持アルミナとが触媒成分として、ZrOバインダと共に混在する。なお、下触媒層61にはRhは含まれておらず、また、上触媒層62にはPdが含まれていない。
【0039】
三元触媒22の各成分の組成、担持量(担体1L当たり担持量のこと。以下、同じ。)の一例を説明する。
【0040】
下触媒層61のPd/CeZrYLaAl複合酸化物に関しては、そのCeZrYLaAl複合酸化物粒子の組成はCeO:ZrO:La:Y:Al=11.7:7.7:1.0:0.4:79.2(質量%)とし、担持量は、Pd=2g/L、CeZrYLaAl複合酸化物粒子=30g/Lとすればよい。Pd/La含有アルミナに関しては、La含有アルミナ粒子はLaを4質量%含有するものであり、担持量は、Pd=5g/L、La含有アルミナ粒子=60g/Lとすればよい。下触媒層61のZrOバインダ担持量は10g/Lとすればよい。
【0041】
上触媒層62のRh/CeZrNd複合酸化物に関しては、CeZrNd複合酸化物粒子の組成はZrO:CeO:Nd=67:23:10(質量%)であり、担持量は、Rh=2g/L、CeZrNd複合酸化物粒子=70g/Lとすればよい。Rh/ZrO担持アルミナに関しては、担持量を、Rh=1g/L、ZrO=2.3g/L、アルミナ粒子=27g/Lとすればよい。上触媒層62のZrOバインダ担持量は15g/Lとすればよい。
【0042】
三元触媒22のハニカム担体は、例えば、セル壁厚4.5mil(114.3×10−3mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数400のコージェライト製とすればよく、その直径は105.7mm、長さは118mmとすればよい。
【0043】
酸化触媒23は、HC吸着材と触媒金属Ptとを含有するものであり、図3に示すように、ハニカム担体のセル壁64に触媒層65を形成してなる。すなわち、その触媒層65には、HC吸着材としてのゼオライト(本実施形態ではβゼオライトを採用している。)にPtが担持されたPt/ゼオライトと、アルミナ粒子にPtが担持されたPt/アルミナと、酸素吸蔵放出材としてのCeZr複合酸化物にPtが担持されたPt/CeZr複合酸化物とがアルミナバインダと共に混在する。
【0044】
Pt/ゼオライトの担持量に関しては、βゼオライト=30g/L以上150g/L以下(例えば、60g/L)、Pt=0.5g/L以上20g/L以下(例えば、1g/L)、Pt/アルミナの担持量に関しては、アルミナ粒子=30g/L以上150g/L以下(例えば、60g/L)、Pt=0.5g/L以上20g/L以下(例えば、2g/L)、Pt/CeZr複合酸化物の担持量に関しては、CeZr複合酸化物粒子=30g/L以上150g/L以下(例えば、60g/L)、Pt=0.5g/L以上20g/L以下(例えば、2g/L)、アルミナバインダ=10g/L以上40g/L以下(例えば、25g/L)とすればよい。CeZr複合酸化物粒子の組成は例えばCeO:ZrO=70:30(質量%)とすればよい。βゼオライトはNOxを分解する触媒としても働くが、このβゼオライトにPtを担持させてNOxの分解をさらに促進することもできる。
【0045】
触媒層65には、その他にPdを20g/L以下、Rhを20g/L以下含ませるようにしてもよい。バインダとしては、ZrOバインダやCeOバインダを単独で、或いはアルミナバインダと混合して用いることができる。
【0046】
酸化触媒23のハニカム担体は、例えば、セル壁厚6.5mil(165.1×10−3mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数400のコージェライト製とすればよく、その直径は105.7mm、長さは118mmとすればよい。
【0047】
従って、エンジン1は、ガソリンを燃料とするときはストイキ運転され、そのときの排気ガス中のHC、CO及びNOxは三元触媒22によって浄化される。この場合、三元触媒22は酸化触媒23よりも上流側にあって排気ガスの熱によって昇温し易いから、ストイキ運転時、特にエンジン冷間時の排気ガスの浄化に有利である。一方、酸化触媒23は三元触媒22よりも下流側にあって排気ガスの熱影響が少なくなるから、熱劣化の防止(特にβゼオライトの熱劣化防止)に有利になる。さらに、PdとRhとを別の触媒層に配置したから、この両触媒金属が合金化することが防止され、触媒の劣化防止に有利になる。
【0048】
次にエンジン1は、水素を燃料とするときはリーンバーン運転され、燃焼室温度が低い。このため、キャニスタ15から吸気通路35に蒸発燃料がパージされたとき、その蒸発燃料は燃焼室で完全に燃焼せず、排気ガス通路に排出されるHC量が多くなる。そのときは排気ガス温度が低いことから、三元触媒22も温度が低く通常は不活性状態にあるため、上記蒸発燃料に因る排気ガス中のHCは三元触媒22では酸化浄化されない。
【0049】
しかし、本発明の場合、三元触媒22よりも下流側に酸化触媒23が配置され、該酸化触媒23にHC吸着材としてのβゼオライトが含まれているから、三元触媒22で酸化浄化されない上記蒸発燃料に因るHCはβゼオライトに吸着され、大気中に排出されることが避けられる。そして、βゼオライトに吸着されたHCは酸化触媒23の温度上昇に伴って該βゼオライトから脱離するが、その脱離HCはPt/アルミナによって酸化浄化されることになる。特に触媒金属としてPtを採用したことにより、比較的低い温度でもリーン雰囲気において上記HCを効率良く浄化することができる。
【0050】
また、そのとき、CeZr複合酸化物粒子は、酸素過剰雰囲気においても、Ceイオンの価数変化により、排気ガス中の酸素を取り込んで当該複合酸化物粒子内の酸素と交換する酸素交換反応を生じ、それによって放出される活性酸素が上記脱離HCのPt/アルミナによる酸化浄化に有効に働く。このため、上記蒸発燃料に因るHCが未浄化のまま大気中に排出される量が少なくなる。
【0051】
また、上記HC吸着材として働くβゼオライトは、排気ガス中のNOxの浄化にも働くことから、水素燃料によるリーンバーン運転において、例えばエンジン出力を高めるように空燃比制御されて燃焼室温度が高くなり、NOx発生量が多少増えた場合でも、エミッションの悪化が避けられる。
【0052】
なお、上記実施形態では、エンジン1はガソリンと水素とを切り換えて使用するが、本発明はこれに限定するものではなく、ガソリンと水素とを混合して使用する運転モードを採用することもできる。
【0053】
また、上記実施形態のエンジンはロータリーピストンエンジンであるが、本発明はこれに限定するものではなく、レシプロエンジンであってもよい。
【0054】
また、上記実施形態はシリーズハイブリッド車両に係るものであるが、パラレルハイブリッド車両やシリーズパラレルハイブリッド車両、さらには、モータによらず、エンジンのみで駆動される車両にも本発明は適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るバイブリッド車両の構成図である。
【図2】同車両のエンジン及び制御系の構成図である。
【図3】本発明に係る三元触媒及び酸化触媒の構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン
2 モータ
3 ガソリン燃料タンク
4 水素燃料タンク
6 ジェネレータ(発電機)
15 キャニスタ
16 蒸発燃料通路
17 パージ通路
18 パージ制御弁
22 三元触媒
23 酸化触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンを含む燃料によるストイキ運転と、水素燃料によるリーンバーン運転とが行われるエンジンの排気ガス浄化方法であって、
上記ガソリンを含む燃料を貯蔵する燃料タンク内に発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、このキャニスタに吸着された蒸発燃料をエンジンの吸気系にパージするパージ通路とを有し、
上記ガソリンを含む燃料によるストイキ運転時には、排気ガス中のHC及びCOを酸化浄化すると同時に該排気ガス中のNOxを還元浄化する同時浄化触媒によって、当該排気ガスの浄化を行ない、
上記水素燃料によるリーンバーン運転時には、上記吸気系にパージされた蒸発燃料に因る排気ガス中の上記同時浄化触媒では酸化浄化されないHCを、HC吸着材に吸着させる、及び/又は酸化触媒によって酸化浄化することを特徴とするエンジンの排気ガス浄化方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記吸気系にパージされた蒸発燃料に因るHCを含む排気ガスを、HC吸着材と触媒金属Ptとを含有する酸化触媒に接触させることを特徴とするエンジンの排気ガス浄化方法。
【請求項3】
ガソリンを含む燃料によるストイキ運転と、水素燃料によるリーンバーン運転とが行われるエンジンの排気ガス浄化装置であって、
上記ガソリンを含む燃料を貯蔵する燃料タンク内に発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
上記キャニスタに吸着された蒸発燃料をエンジンの吸気系にパージするパージ通路と、
上記エンジンの排気ガス通路に配置され、上記ガソリンを含む燃料によるストイキ運転時に、排気ガス中のHC及びCOを酸化浄化すると同時に該排気ガス中のNOxを還元浄化する同時浄化触媒と、
上記排気ガス通路に配置され、上記水素燃料によるリーンバーン運転時において、上記吸気系にパージされた蒸発燃料に因る排気ガス中の上記同時浄化触媒では酸化浄化されないHCを吸着するHC吸着材及び/又は該HCを酸化浄化するための酸化触媒とを備えていることを特徴とするエンジンの排気ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記同時浄化触媒は三元触媒であり、
上記三元触媒よりも排気ガス流れの下流側の排気ガス通路に、上記HC吸着材と触媒金属Ptとを含有する酸化触媒が配置されていることを特徴とするエンジンの排気ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4において、
上記エンジンは、電気モータで駆動することができるハイブリッド車両に搭載され、上記電気モータのための発電機の駆動に用いられることを特徴とするエンジンの排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−293445(P2009−293445A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146155(P2008−146155)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】