説明

気相成長装置

【課題】サセプタに複数枚の基板を設置して一度に複数枚の基板に薄膜を成長させる気相成長装置において、ゴミ等の介在やサセプタの設置不良を原因とする膜厚の不均一が生じない気相成長装置を得る。
【解決手段】本発明の気相成長装置1は、回転可能でかつ着脱可能なサセプタ5に複数の基板を載置して各基板に化合物半導体薄膜を成長させる気相成長装置1であって、
サセプタ5の載置状態を判定するサセプタ載置判定装置3を有し、サセプタ載置判定装置3は、回転するサセプタ5における少なくとも2カ所の高さ位置を計測する位置測定装置22と、位置測定装置22の計測値を入力してサセプタ5の高さ位置と傾斜が予め定めた許容値の範囲内かどうかを判定する判定手段47とを備えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サセプタに複数の基板を載置して気相原料を供給することで前記基板面に化合物半導体薄膜を成長させる気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サセプタに保持された基板を所定温度に加熱した状態で反応炉内に原料ガスを供給し、前記基板面に薄膜を堆積(成長)させる気相成長装置として、複数枚の基板に均一に薄膜を形成するため、サセプタを回転させるとともに、該サセプタの回転に伴って基板を載置する基板載置部材(基板トレイ)を回転させ、成膜中の基板を自公転させる機構を備えた気相成長装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
気相成長装置によりGaN系半導体薄膜等の化合物半導体薄膜を成長させると、反応炉内がパーティクル等の反応物で汚染される。そこで、特許文献1にも開示されているように、サセプタがパーティクル等で汚染されるのを防ぐ目的で、サセプタ上にカバーを設置することが行われる。汚染されたサセプタカバーのみを反応炉から取り出し新たなサセプタカバーを設置することで、サセプタのパーティクル等による汚染の防止、かつ安定した成膜が可能である。
カバーの取り出し方法としては、特許文献1に開示されたように、カバーのみを搬送する方法、サセプタごと取り出してカバーを交換する方法がある。
【0004】
また、気相成長装置における基板の設置及び取り出しには種々の方法があり、基板をピン設置等でサセプタにおける基板載置部に直接に搬入、搬出する方法や、基板をトレイに載せてトレイごと搬出入する方法、あるいは基板を載置する基板載置プレートをサセプタに設置して、サセプタごと搬出入する方法、またあるいはグローブボックス内でサセプタを別場所に搬出し、そこで基板の搬入を行い、再度サセプタを搬入する方法等である。
【0005】
上記の気相成長装置は、サセプタに複数枚の基板を設置して一度に複数枚の基板に薄膜を成長させるものであるが、サセプタに単一の基板を設置して該基板に薄膜を成長させる気相成長装置が特許文献2に開示されている。
特許文献2に開示された気相成長装置は、基板保持部材と流路構成部材底部の相対位置関係を精度よく合わせることで、被処理基板表面に均一性の膜を気相成長させる気相成長装置を提供することを目的としている。
そして、この目的を達成するために、特許文献2に開示された気相成長装置においては、被処理基板との距離を測定するレーザ変位計と、流路構成部材と基板保持部材との位置関係を調整する位置調整装置と、レーザ変位計により得られたデータに基づいて上記位置調整装置を制御する制御装置とを備え、レーザ変位計で被処理基板との距離を複数点計測して、この計測値にもとづいて位置調整装置で被処理基板の位置を所定の位置に修正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−255083号公報
【特許文献2】特許第3964355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に基板温度や原料ガスのガス流速に膜特性や膜分布が敏感に影響を受ける化合物半導体薄膜を成長する気相成長装置に関しては、特に多数枚の基板を同時に成長する場合、各基板に与える温度及びガス流速のばらつきを低減することが、均一な膜厚及び組成(発光ダイオード[LED]及びレーザーダイオード[LD]では波長に相当)を得るための必須条件となる。
【0008】
ガス流速は供給するガス量及び流路の断面積から決まることから、これらガス量や流路断面積を均一に保持することが要求される。
ところが、気相成長装置においては、特許文献1に記載されているように、気相成長処理後の汚れたカバーの交換、もしくは基板の取り出し及び設置等の目的で、サセプタを反応炉から取り外すことがある。そのため、サセプタを取り外して再び設置する間に例えば反応炉内に浮遊していたゴミ等がサセプタ設置箇所に落下して付着すると、このゴミ等が反応炉とサセプタの間に挟まってしまい、サセプタが傾いて設置されることになる。サセプタに複数の基板が載置されている場合、サセプタが傾いて設置されると各基板上における流路断面が微妙に変化し、各基板間でガス流速にばらつきが生じ、均一な膜厚及び組成を得ることができなくなる。
上記の問題は、サセプタカバーのみを取り外す場合にも、サセプタカバーとサセプタとの間にゴミ等が挟まることでも生ずる。
また、サセプタを再設置する際において、仮にゴミ等が挟まらなかったとしても、サセプタの反応炉への設置に問題があり、サセプタが微妙に傾いたような場合にも同様の問題が生ずる。
【0009】
また、基板温度に関しても、仮に基板を加熱するヒータがサセプタの下方に設置されている場合には、サセプタが傾斜して設置されるとサセプタの各部でヒータとの距離が変わるため、この距離の差に起因して各基板に温度差が生じてしまい、その結果、基板間において膜厚や組成のばらつきが生じてしまう。
【0010】
以上のように、サセプタ及び/又はサセプタカバーを反応炉から取り外して再設置する構造を有する気相成長装置においては、ゴミ等や設置不良に起因して均一な膜厚及び組成を得ることができない場合が生ずるという問題があった。
【0011】
この点、特許文献2に開示されたように、基板との距離をレーザ変位計で測定して該測定値に基づいて各基板の位置が同じになるように調整することも考えられるが、複数の基板を一つのサセプタに載置している場合には、非常に複雑な構造になり現実的には実現できないことになる。
【0012】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、サセプタに複数枚の基板を設置して一度に複数枚の基板に薄膜を成長させる気相成長装置において、ゴミ等の介在やサセプタの設置不良を原因とする膜厚の不均一が生じない気相成長装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る気相成長装置は、回転可能でかつ着脱可能なサセプタに複数の基板を載置して各基板に化合物半導体薄膜を成長させる気相成長装置であって、
前記サセプタの載置状態を判定するサセプタ載置判定装置を有し、該サセプタ載置判定装置は、回転する前記サセプタにおける少なくとも2カ所の高さ位置を計測する位置測定装置と、該位置測定装置の計測値を入力して前記サセプタの高さ位置と傾斜が予め定めた許容値の範囲内かどうかを判定する判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記位置測定装置は、前記サセプタの径方向に移動可能になっていることを特徴とするものである。
【0015】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記判定手段は、前記サセプタが1回転する際の高低差が許容値であるかどうかに基づいて前記サセプタの傾斜が許容値かどうかを判定し、前記サセプタの中央部の高さに基づいて前記サセプタの嵌合が適切か否かを判定することを特徴とするものである。
【0016】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記サセプタが載置されたことを検知するサセプタ載置センサを有し、前記判定手段は前記サセプタ載置センサによって前記サセプタが載置されたことが検知されたときに、前記サセプタの載置状態を判定することを特徴とするものである。
【0017】
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記サセプタを搬送する搬送ロボットと、前記サセプタの交換時に前記サセプタを一時的に載置する交換テーブルと、前記サセプタの交換を行う交換ボックスとを有し、
前記判定手段によって前記サセプタの高さ位置又は傾斜が予め定めた許容値を超えていると判定されたときに、前記搬送ロボットを駆動して前記サセプタを前記交換テーブル又は前記交換ボックスに搬送する搬送ロボット制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に気相成長装置においては、サセプタの載置状態を判定するサセプタ載置判定装置を有し、該サセプタ載置判定装置は、回転する前記サセプタにおける少なくとも2カ所の高さ位置を計測する位置測定装置と、該位置測定装置の計測値を入力して前記サセプタの高さ位置と傾斜が予め定めた許容値の範囲内かどうかを判定する判定手段とを備えたことにより、サセプタ交換時におけるゴミ等の介在やサセプタの設置不良を簡易に検出することができ、この設置不良に起因する膜厚の不均一を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明におけるサセプタ載置判定装置を備えた気相成長装置の構成を説明する図である。
【図2】サセプタの載置判定の様子を説明する斜視図である。
【図3】サセプタの載置判定の処理の流れ説明するフローチャート図である。
【図4】本発明の他の実施形態にかかる気相成長装置の構成を説明する図である。
【図5】他の実施形態におけるサセプタの載置判定の処理の流れ説明するフローチャート図である。
【図6】サセプタの載置判定を行った場合の実験結果を説明する図である。
【図7】サセプタの載置判定を行わなかった場合の実験結果を説明する図である。
【図8】サセプタの載置判定を行った場合の実験結果を説明する図である。
【図9】サセプタの載置判定を行わなかった場合の実験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る気相成長装置1は、回転可能でかつ着脱可能なサセプタ5に複数の基板を載置して各基板に化合物半導体薄膜を成長させる気相成長装置1であって、サセプタ5の載置状態を判定するサセプタ載置判定装置3を有している。
本発明の実施の形態の特徴はサセプタ載置判定装置3にあるが、サセプタ載置判定装置3の構成を詳細に説明する前に、気相成長装置1におけるサセプタ載置判定装置3以外の構成について説明する。
気相成長装置1は、図1に示すように、サセプタ5が着脱可能に設置されて気相成長を行う反応炉4と、サセプタ5を搬送する搬送ロボット7と、搬送ロボット7及び反応炉4が収容されるグローブボックス9と、グローブボックス9内に設置されてサセプタ5の交換時にサセプタ5を一時的に載置する交換テーブル11と、グローブボックス9の側壁に設けられてサセプタ5の交換を行う交換ボックス13とを備えている。
以下各構成を詳細に説明する。
【0021】
<サセプタ>
サセプタ5は、中央に開口部15を有する全体形状がドーナツ状の円盤によって構成されている。サセプタ5には、薄膜が形成される基板が載置される基板載置部17が複数設けられている。基板載置部17の数は特に限定されず、例えば図1においては11個のものが図示されている。
サセプタ5の中央の開口部15には嵌合部が設けられており、サセプタ5は開口部15に形成された嵌合部が反応炉4側の回転軸18に嵌合して回転する構造になっている。
【0022】
<反応炉>
反応炉4はサセプタ5が着脱可能に設置されて気相成長を行うものである。反応炉4の形態は特に限定されるものではない。
反応炉4の一形態を概説すると、全体形状が偏平円筒状をしており、下部側のチャンバー本体19と、チャンバー本体19を開閉するチャンバー蓋(図示なし)とを備えている。チャンバー本体19の外周縁部は本体部フランジとなっており、チャンバー蓋の蓋部フランジと当接して反応炉4を気密に閉止できるようになっている。チャンバー蓋は、昇降機構によってチャンバー本体19に対して昇降するようになっている。また、サセプタ5には、サセプタ5の上面を覆うサセプタカバーを取り付け可能となっている。なお、図1では、チャンバー蓋は上昇している状態を表しており、チャンバー本体19のみ図示されている。
チャンバー本体19の中心部には、原料ガス導入ノズル(図示なし)が設置され、サセプタ5に載置された基板に原料ガスを供給できるようになっている。
【0023】
<搬送ロボット>
搬送ロボット7は、グローブボックス9内に設置されて、サセプタ5を搬送する。搬送ロボット7は、図1に示すように、複数の腕23が関節で回動可能に連結され、先端の腕23にサセプタ5を保持する保持部25が設けられている。
搬送ロボット7は、各腕23を旋回させることで、サセプタ5を反応炉4、交換テーブル11、交換ボックス13のそれぞれに搬送することができる。
【0024】
<グローブボックス>
グローブボックス9は、搬送ロボット7及び反応炉4を収容する。グローブボックス9には、窒素ガスを供給して、ボックス内を窒素雰囲気に置換できるようになっている。
【0025】
<交換テーブル>
交換テーブル11は、グローブボックス9内に設置されてサセプタ5の交換時にサセプタ5を一時的に載置するものである。図1において交換テーブル11の中に一点鎖線で図示された図形は、交換テーブル11に載置された状態のサセプタ5を表している。
サセプタ5のチャンバー本体19への載置は、サセプタ5の中心開口部に設けられた嵌合部とチャンバー本体19の回転軸18に設けられた嵌合部を正確に位置合わせして行う必要がある。例えば交換ボックス13において正しい位置にサセプタ5を載置すれば、その状態で搬送ロボット7によってサセプタ5を保持してチャンバー本体19に搬送して載置すれば正確に設置できるようになっている。もっとも、交換ボックス13までサセプタ5を戻さなくても、交換テーブル11において、サセプタ5をチャンバー本体19に載置するための位置合わせ手段を設けるようにしてもよい。
【0026】
<交換ボックス>
交換ボックス13はサセプタ5の交換を行うためのもので、グローブボックス9の側面に設けられている。図1において交換ボックス13の中に一点鎖線で図示された図形は、交換ボックス13に載置された状態のサセプタ5を表している。
交換ボックス13において所定の位置にサセプタ5を載置し、その状態でサセプタ5を搬送ロボット7で保持してチャンバー本体19に載置すれば、サセプタ5が正しく載置できるようにするため、交換ボックス13には位置決め手段が設けられている。
交換ボックス13には、真空ポンプや窒素ガス供給管が接続され、交換ボックス13内の雰囲気を窒素雰囲気に置換できるようになっている。
【0027】
次に、サセプタ載置判定装置3について説明する。
サセプタ載置判定装置3は、サセプタ5が載置されたことを検知するサセプタ載置センサ21と、回転するサセプタ5における少なくとも2カ所の高さ位置を計測する位置測定装置22と、位置測定装置22の計測値を入力してサセプタ5の高さ位置と傾斜が予め定めた許容値の範囲内かどうかを判定する判定手段47とを備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0028】
<サセプタ載置センサ>
サセプタ載置センサ21は、チャンバー本体19の下面側に設置され、チャンバー本体19にサセプタ5が載置されたことを検知する。また、サセプタ載置センサ21は、後述する制御部42に電気的に接続されており、サセプタ5の載置が検知された場合、その旨を制御部42に通知する。
【0029】
<位置測定装置>
位置測定装置22は、グローブボックス9の基端側が壁面などに取り付けられ、先端が水平方向に回動可能なアーム27と、アーム27を回動させるアーム駆動手段(図示なし)と、アーム27に取り付けられて自己から自己の直下にある物までの距離を測長するレーザ測長器29と、制御部42側に設けられてアーム駆動手段の駆動等を行う位置測定装置制御手段45を有している。
位置測定装置22は、位置測定装置制御手段45によって制御され、アーム27の先端に取り付けられたレーザ測長器29を、アーム27の回動によってチャンバー本体19上方の任意の位置に移動させ、レーザ測長器29からレーザ測長器29の直下にあるものまでの距離を測長する。
例えばチャンバー本体19にサセプタ5が載置されている場合、アーム27を回動することによりレーザ測長器29をサセプタ5の径方向任意の位置に移動でき、当該位置からその真下のサセプタ5の上面までの距離が計測可能である。
図2は、位置測定装置を制御して、レーザ測長器29からサセプタ5の中心付近までの距離を測長している様子を表している。
【0030】
アーム27は、チャンバー本体19の上方に、一端がグローブボックス9の壁面などに取り付けられ、該一端を中心に、他端(先端)が水平方向に円弧を描くように回動するようになっている。アーム27を回動させることでサセプタ5の径方向任意の位置にレーザ測長器29を配置できる。
なお、アーム27は回動自在な構成としたが、伸長自在な構成や、あるいは回動可能でかつ伸長自在な構成としてもよい。
【0031】
アーム駆動手段は、アーム27を回動させるものであり、例えばモータ等で構成される。
なお、例えばサセプタ5の交換時等、アーム27がチャンバー本体19の上方にあると邪魔となる場合には、他の部材と衝突しないような位置(例えば、図1中の2点鎖線で表すような位置。以下、「退避位置」という)にアーム27を回動させ退避させるようにする。
【0032】
制御部42はMPU等で構成される演算手段と、該演算手段で実行されるプログラムを記憶するためのROM等を有している。各手段(サセプタ設置確認手段43、位置測定装置制御手段45、判定手段47等)は、前記ROM等から所定のプログラムを読み出して前記演算手段を用いて演算を行うことによって実現される。以下に前記各手段について説明する。
【0033】
<サセプタ設置確認手段>
サセプタ設置確認手段43は、サセプタ載置センサ21の信号を入力して、サセプタ5がチャンバー本体19に載置されたかどうかを検知する。サセプタ設置確認手段43は、サセプタ5が載置されたことを検知すると、その旨を位置測定装置制御手段45に通知する。
【0034】
<位置測定装置制御手段>
位置測定装置制御手段45は、位置測定装置22を制御して、レーザ測長器29からレーザ測長器29の直下にあるサセプタ5上面のまでの距離(サセプタカバーを取り付けた場合はサセプタカバー上面までの距離。以下、同じ)を測長し、距離データとして取得する。この際、サセプタ5を回転させ、サセプタ5上面の複数箇所について連続して測長することもでき、このように複数箇所を連続して取得したデータ(以下、「連続測長データ」という)を得ることで、サセプタの傾斜状態を検知することができる。
【0035】
<判定手段>
判定手段47は、位置測定装置制御手段45で取得した距離データを基に、サセプタ5の載置状態を判定するものである。判定は、サセプタ5の上面の高低差(うねり)が許容できる値であるかどうかについての判定(以下、「判定1」という)と、チャンバー本体19とサセプタ5が正常に嵌合しているかどうかについての判定(以下、「判定2」という)を行う。
【0036】
判定1について以下に説明する。サセプタ5の上面の高低差は、サセプタ5の外周部において最も顕著に表れる。そのため、判定1は、レーザ測長器29をサセプタ5の外周部の上方に配置し、位置測定装置制御手段45で取得したサセプタ5の外周部における連続測長データに基づいて行うのが好ましい。
連続測長データにおいて最大値となった箇所は、サセプタ5の上面が最も低くなっている箇所であり、また最小値となった箇所は、サセプタ5の上面が最も高くなっている箇所である。これら最大値と最小値の差が、サセプタ5の上面の高低差となる。該サセプタ5の上面の高低差がある値より大きい場合は、チャンバー本体19とサセプタ5の間または、サセプタ5とサセプタカバーの間に、微細なゴミが挟まっている可能性がある。
【0037】
判定手段47には、予め、許容できる高低差を定めた閾値Tdが設定されている。判定手段47は、サセプタ5上面の高低差が閾値Tdを超えた場合、チャンバー本体19とサセプタ5の間または、サセプタ5とサセプタカバーの間に、微細なゴミが挟まっているとしてエラー判定する。この場合、判定手段47は、モニター等で構成される表示手段41にその旨を表示するよう通知する。この際、判定手段47はサセプタ5の回転を停止させ、アーム27を退避位置に戻す。
【0038】
次に、判定2について以下に説明する。
サセプタ5が正しく嵌合しているかどうかは、サセプタ5の中心付近の高さを調べれば判定可能である。そのため、判定2は、位置測定装置制御手段45でサセプタ5の中心付近について取得した距離データに基づいて行う。
判定手段47には、予め、基準値Sと閾値Tfが設定されている。ここで、基準値Sは、サセプタ5が正常に嵌合しているとした場合の、サセプタ5の中心付近における基準となる高さである。また、閾値Tfは、サセプタ5の嵌合のずれにおける許容できる値である。
判定手段47は、基準値Sと測長したレーザ測長器29からサセプタ5の所定の位置までの距離を比較して、これらの差が閾値Tfを超えた場合に、チャンバー本体19とサセプタ5が正常に嵌合していないとしエラー判定する。この場合、判定手段47は、表示手段41にその旨を表示するよう通知する。その後、判定手段47はサセプタ5の回転を停止させる。
【0039】
判定1および判定2においてエラーと判定しない場合は、表示手段41にサセプタ載置判定が正常に終了した旨の表示を行うように通知する。
【0040】
なお、上記では、判定1の後に判定2を行ったが、この順番は前後してもよい。この場合、判定2で嵌合が正常であったと判定したときに判定1を行う。
【0041】
以下、実施の形態1にかかるサセプタ載置判定装置3を用いたサセプタ載置判定方法の処理の流れを図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
チャンバー本体19にサセプタ5が載置されると、サセプタ設置確認手段43が位置測定装置制御手段45にその旨を通知する(S1)。次いで、位置測定装置制御手段45は位置測定装置を制御して、アーム27を制御して所定の位置に回動させる(S3)。その後、位置測定装置制御手段45はサセプタ5を回転させ(S5)、レーザ測長器29を用いて連続測長データを取得する(S7)。
【0043】
判定手段47は取得された連続測長データに基づいて判定1を行う(S9)。サセプタ5上面の高低差が閾値Tdを超える場合、判定手段47はエラーと判定し、表示手段41にその旨を表示させる(S11)。また、該表示と同時に、位置測定装置制御手段45は位置測定装置を制御して、アーム27を退避位置に移動させる(S13)とともにサセプタ5の回転を停止させる(S15)。
【0044】
オペレータは手動で搬送ロボット7を制御して、サセプタ5を一旦交換テーブル11もしくは交換ボックス13に戻す(S17)。オペレータはチャンバー本体19の上やサセプタ5の裏面等を確認し、微細なゴミを清掃等によって除去する(S19)。オペレータは再度、搬送ロボット7を制御してサセプタ5をチャンバー本体19に戻す。その後、再度、サセプタ載置判定装置3によるサセプタ載置確認(S1)以降の処理が自動的に行われる。
【0045】
判定1(S9)においてサセプタ5上面の高低差が正常と判定された場合、位置測定装置制御手段45は位置測定装置22を制御して、アーム27の先端を所定の位置に位置させる(S21)。その後、位置測定装置制御手段45は、レーザ測長器29を用いて、距離データの取得を行う(S23)。
【0046】
判定手段47は、位置測定装置制御手段45で取得された距離データに基づいて判定2を行う(S25)。基準値Sと距離データを比較して、これらの差が閾値Tfを超えた場合、判定手段47はエラーと判定し、表示手段41にその旨を表示させる(S27)。また、該表示と同時に、位置測定装置制御手段45は位置測定装置を制御して、アーム27を退避位置に移動させる(S29)とともにサセプタ5の回転を停止させる(S31)。
【0047】
オペレータは手動で搬送ロボット7を制御して、サセプタ5を一旦交換テーブル11もしくは交換ボックス13に戻す(S33)。この際、サセプタ5は位置合わせ手段で位置合わせされる。オペレータは再度、搬送ロボット7を制御してサセプタ5をチャンバー本体19に戻す。その後、再度、サセプタ載置判定装置3によるサセプタ載置確認(S1)以降の処理が自動的に行われる。
判定2(S25)において、嵌合が正常であると判定されると、気相成長が開始される(S35)。
【0048】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る気相成長装置51は、実施の形態1のサセプタ載置判定装置3の構成に加えて、図4に示すように、搬送ロボット7を制御してサセプタ5を移動させる搬送ロボット制御手段49を備えたものであり、その他の構成は、実施の形態1の気相成長装置と同様である。そのため、図4において、図1と同一部分について同一の番号を付して説明を省略する。以下、搬送ロボット制御手段49について説明する。
【0049】
<搬送ロボット制御手段>
搬送ロボット制御手段49は、判定手段47においてエラーと判定とした場合、搬送ロボット7を制御してサセプタ5を自動的に移動させるものである。移動の方法は判定内容によって異なる。
判定1において、エラーと判定した場合、搬送ロボット制御手段49は、搬送ロボット7を制御して、サセプタ5を交換テーブル11もしくは交換ボックス13に戻す。
判定2において、エラーと判定した場合、搬送ロボット制御手段49は、搬送ロボット7を制御して、サセプタ5を交換テーブル11もしくは交換ボックス13に戻す。その後、位置合わせ手段等によってサセプタ5の位置合わせが行われた後、再度、搬送ロボット7を駆動してサセプタ5をチャンバー本体19に載置しなおす。
【0050】
本実施の形態の気相成長装置の動作について搬送ロボット制御手段49に着目して図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0051】
搬送ロボット制御手段49はエラー判定がなされた場合にのみ動作するものであるので、まず、チャンバー本体19とサセプタ5の間に微細なゴミが挟まっている場合について説明する。
チャンバー本体19にサセプタ5が載置されて(S1)からサセプタ5の回転を停止させる(S15)までは実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
サセプタ5の回転の停止(S15)後、搬送ロボット制御手段49は、搬送ロボット7を制御して、サセプタ5を交換テーブル11もしくは交換ボックス13に戻す(S37)。S19以降の処理は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0052】
次に、チャンバー本体19とサセプタ5が正常に嵌合していない場合について説明する。
チャンバー本体19にサセプタ5が載置されて(S1)からサセプタ5の回転を停止させる(S31)までは実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
サセプタ5の回転の停止(S31)後、搬送ロボット制御手段49は、搬送ロボット7を制御して、サセプタ5を交換テーブル11もしくは交換ボックス13に戻す(S39)。その後、位置合わせ手段によってサセプタ5の位置合わせが行われた後、再度、サセプタ5をチャンバー本体19に載置しなおす(S41)。S3以降の処理は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施の形態に係るサセプタ載置判定装置3を搭載した気相成長装置の効果確認実験を行ったので以下これについて説明する。
効果確認実験は、基板載置部17が6個あるサセプタを用いて6インチ基板上にGaN薄膜の6枚同時成長を行う場合について行った。本発明例では、サセプタ載置判定装置3を用いて、サセプタの載置判定の途中で、判定1においてエラーと判定されたので、オペレータがチャンバー本体19の上やサセプタの裏面の清掃を行うようにした。なお、判定1の閾値Tdを0.4mmとした。
また、比較例として、サセプタ載置判定を行わず、従来通りの気相成長を行った。
【0054】
サセプタ載置判定装置3による判定を行った結果を図6に、比較例の結果を図7にそれぞれ示す。
図6および図7において、横軸は基板No.を示している。
また、図中の曲線は、基準点に対するサセプタの相対的な高さを示しており、右の縦軸にその目盛を付してある。各基板間において、基準点に対するサセプタの相対的な高さの差が大きいほど、サセプタの高低差が大きいことを意味している。
また、図中に黒丸で示したプロットは基板表面に生成されたGaN薄膜の厚さを測定した結果を示しており、左の縦軸にその目盛を付してある。各プロット間のバラツキが小さいほど、各数基板においてGaN薄膜の厚さを均一にできている(面間分布がよい)ことを意味している。
【0055】
図6と図7とを比較すると、サセプタ載置判定装置3による判定を行って気相成長を行った方が、サセプタの高低差を小さく抑えることができている。また、サセプタ載置判定装置3による判定を行って気相成長を行った方が、各数基板において面間分布がよいことが分かる。
【0056】
また、同様の本発明例と比較例について気相成長を5回ずつ実施した場合についての比較を行った。
本発明例の場合には、判定1においてエラーと判定されたため、その際、オペレータはチャンバー本体19の上やサセプタの裏面の清掃を行った。
【0057】
図8に本発明例の実験5回分の結果を示した。図8は縦軸がGaN薄膜の厚さ、横軸が実験の実施回数を示している。また、各棒グラフは、基板表面に生成されたGaN薄膜の厚さを測定した結果を基板載置部17毎に示している。
また、図9に比較例における実験5回分の結果を示した。図9の縦軸等は図8と同様である。
【0058】
図8を見ると、いずれの実験回の実験結果においても、GaN薄膜の厚さは概ね2.9±1μmの範囲に収まっている。このことは、実験回数をかさねても、同程度のGaN薄膜の厚さを期待でき、高い再現性が得られていることを意味する。
一方、図9を見ると、図8と比較して、各実験回の実験結果においても面間分布が不良である。また、各実験回の実験結果間において、これらの面間分布の不良度合いもばらついており、再現性が低い。
【0059】
また、サセプタの載置判定を行って気相成長を行った場合の実験と、従来通りの方法で気相成長を行った場合の実験とで得られたそれぞれのGaN薄膜を基にLEDを製造し、それぞれのLEDを発光させ、その光の波長の分布再現性を調べた。その結果、後者のGaN薄膜を基に作成したLEDの場合の波長の分布再現性はΔ15nmであったが、前者のGaN薄膜を基に作成したLEDの場合の波長の分布再現性はΔ5nmであり、サセプタの載置判定を行うことで波長の分布再現性を抑えることができた。
【0060】
以上のように、複数の基板に半導体薄膜を同時に成長させる気相成長装置1において、本発明に係るサセプタ載置判定装置3を用いれば、サセプタ上面の高低差がある場合これを検知することができ、清掃等で適切に対処できる。その結果として、GaN薄膜の面間分布および再現性が良好となり、各基板に与える温度及びガス流速のばらつきを低減し、均一な気相成長を行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
1 気相成長装置
3 サセプタ載置判定装置
4 反応炉
5 サセプタ
7 搬送ロボット
9 グローブボックス
11 交換テーブル
13 交換ボックス
15 開口部
17 基板載置部
18 回転軸
19 チャンバー本体
21 サセプタ載置センサ
22 位置測定装置
23 腕
25 保持部
27 アーム
29 レーザ測長器
41 表示手段
42 制御部
43 サセプタ設置確認手段
45 位置測定装置制御手段
47 判定手段
49 搬送ロボット制御手段
51 気相成長装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能でかつ着脱可能なサセプタに複数の基板を載置して各基板に化合物半導体薄膜を成長させる気相成長装置であって、
前記サセプタの載置状態を判定するサセプタ載置判定装置を有し、該サセプタ載置判定装置は、回転する前記サセプタにおける少なくとも2カ所の高さ位置を計測する位置測定装置と、該位置測定装置の計測値を入力して前記サセプタの高さ位置と傾斜が予め定めた許容値の範囲内かどうかを判定する判定手段とを備えたことを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記位置測定装置は、前記サセプタの径方向に移動可能になっていることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記サセプタが1回転する際の高低差が許容値であるかどうかに基づいて前記サセプタの傾斜が許容値かどうかを判定し、前記サセプタの中央部の高さに基づいて前記サセプタの嵌合が適切か否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記サセプタが載置されたことを検知するサセプタ載置センサを有し、前記判定手段は前記サセプタ載置センサによって前記サセプタが載置されたことが検知されたときに、前記サセプタの載置状態を判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記サセプタを搬送する搬送ロボットと、前記サセプタの交換時に前記サセプタを一時的に載置する交換テーブルと、前記サセプタの交換を行う交換ボックスとを有し、
前記判定手段によって前記サセプタの高さ位置又は傾斜が予め定めた許容値を超えていると判定されたときに、前記搬送ロボットを駆動して前記サセプタを前記交換テーブル又は前記交換ボックスに搬送する搬送ロボット制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気相成長装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−115215(P2013−115215A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259488(P2011−259488)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(509054005)大陽日酸イー・エム・シー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】