説明

減速支援システム

【課題】車両の運転者に違和感を与えることを抑制しつつ、減速支援を行う。
【解決手段】減速支援システム(10)は、車両(1)に搭載され、車両が右折又は左折する際に、車両の運転者が、右折又は左折のためにハンドルの操舵を開始する位置である操舵開始位置を学習する学習システム(109)と、運転者の右左折意思を確認する意思確認手段(109)と、車両の現在位置と、学習された操舵開始位置との間の距離を算出可能な距離算出手段(109)と、意思確認手段によって運転者の右左折意思が確認され、且つ学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合、距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援を行う減速支援手段(109)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両の運転者の減速操作を支援する減速支援システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、例えば特許文献1には、車両を減速させるが停止させることなく交差点を通過したいという運転者の要求が存在すると判断された場合、エンジンブレーキで適度な減速度を作用させて、車両を交差点に進入させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−076764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の背景技術によれば、どのタイミングで車両に減速度を作用させるかは開示されていない。仮に、どの運転者に対しても一意のタイミングで車両に減速度を作用させてしまうと、運転者が違和感を覚える可能性があるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、運転者に違和感を与えることを抑制しつつ、減速支援を行うことができる減速支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の減速支援システムは、上記課題を解決するために、車両に搭載され、前記車両が右折又は左折する際に、前記車両の運転者が、右折又は左折のためにハンドルの操舵を開始する位置である操舵開始位置を学習する学習システムと、前記運転者の右左折意思を確認する意思確認手段と、前記車両の現在位置と、前記学習された操舵開始位置との間の距離を算出可能な距離算出手段と、前記意思確認手段によって前記運転者の右左折意思が確認され、且つ前記学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合、前記距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援を行う減速支援手段とを備える。
【0007】
本発明の減速支援システムによれば、当該減速支援システムは、例えば自動車等の車両に搭載されている。
【0008】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる学習システムは、車両が右折又は左折する際に、該車両の運転者が、右折又は左折のためにハンドルの操舵を開始する位置である操舵開始位置を学習する。ここで、「車両が右折又は左折する際」とは、車両が右折又は左折を開始した時点に限らず、車両が右折又は左折を開始した時点から時間的に多少遡った時点、又は車両が右折又は左折を開始した時点から微小時間経過した時点を意味してよい。
【0009】
尚、操舵開始位置は、例えばGPS(Global Positioning System)により示される位置情報、及びカーナビゲーション装置が備える地図情報等に基づいて、例えば対象交差点における一の停止線や交差点の中心等を基準とした相対位置として学習される。
【0010】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる意思確認手段は、運転者の右左折意思を確認する。具体的には、意思確認手段は、例えばウィンカースイッチの状態、カーナビゲーション装置上で設定されている走行経路情報等に基づいて、運転者の右左折意思を確認する。ここで、「右左折意思」とは、運転者が交差点を右折又は左折しようとする意思を意味する。
【0011】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる距離算出手段は、車両の現在位置と、学習された操舵開始位置との間の距離を算出可能である。
【0012】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる減速支援手段は、意思確認手段によって運転者の右左折意思が確認され、且つ学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合、距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援を行う。
【0013】
尚、「減速制御」は、例えば、強制的なアクセル開度の変更、車両に制動力が生じるようなブレーキ装置の制御、エンジンブレーキが増加するような変速機における変速比の変更等の、公知の減速制御を意味する。
【0014】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、交差点を右折又は左折する際に、右折又は左折するために運転者がハンドルの操舵を開始する位置(又はタイミング)は、運転者毎に異なっている。他方で、交差点を右折又は左折する際に、どの運転者に対しても、一律のタイミングで減速支援を行うシステムが多い。このため、減速支援に起因して、運転者が違和感を覚えるおそれがある。
【0015】
しかるに本発明では、意思確認手段によって運転者の右左折意思が確認され、且つ学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合、減速支援手段により、距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援が行われる。このため、当該減速支援システムは、運転者がハンドルの操舵を開始する位置を基準とした減速支援を行うことができる。この結果、運転者に違和感を与えることを抑制しつつ、減速支援を行うことができる。
【0016】
本発明の減速支援システムの一態様では、前記減速支援手段は、前記意思確認手段によって前記運転者の右左折意思が確認され、且つ前記学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合であって、前記距離算出手段によって算出された距離が所定値以下である場合、前記減速支援を行わない。
【0017】
この態様によれば、例えば車両に比較的大きい減速度が生じることを回避することができる。この結果、運転者に違和感を与えることを抑制することができ、実用上非常に有利である。
【0018】
「所定値」は、減速支援を行うか否かを決定する値であり、予め固定値として、又は何らかの物理量若しくはパラメータに応じた可変値として設定される。このような、所定値は、実験的若しくは経験的に、又はシミュレーションによって、例えば、現在位置から目標位置までの距離と、車両に生じる減速度との関係を、減速すべき速度(即ち、現在の速度と目標速度との差分)毎に求め、該求められた関係に基づいて、運転者に違和感を与えないと予測される減速度となるような距離として設定すればよい。
【0019】
本発明の減速支援システムの他の態様では、前記学習システムは、更に、前記操舵開始位置における前記車両の速度である操舵開始速度を学習し、前記減速支援手段は、前記意思確認手段によって前記運転者の右左折意思が確認され、且つ前記学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合であって、前記車両の現在の速度が前記学習された操舵開始速度よりも大きい場合、前記距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援を行う。
【0020】
この態様によれば、車両の現在の速度が学習された操舵開始速度よりも小さい場合には、減速支援手段により減速支援が行われないので、運転者に減速支援に起因する違和感を与えることを抑制することができる。
【0021】
この態様では、前記学習システムは、更に、前記運転者が、右折又は左折のために前記車両に生じさせる減速度の最大値である最大減速度を学習し、前記減速支援手段は、前記意思確認手段によって前記運転者の右左折意思が確認され、且つ前記学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合であって、前記車両の現在の速度が前記学習された操舵開始速度よりも大きく、且つ前記現在の速度から前記学習された操舵開始速度まで減速する際に生じる減速度が、前記学習された最大減速度を超える場合、前記距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援を行ってもよい。
【0022】
このように構成すれば、運転者が通常行う運転操作に近い減速支援を行うことができ、実用上非常に有利である。
【0023】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る減速支援システムが搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るECUが実行する減速支援処理を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係るECUが実行する減速支援処理を示すフローチャートである。
【図4】第3実施形態に係るECUが実行する減速支援処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る車両の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
<第1実施形態>
本発明に係る運転支援システムの第1実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0027】
先ず、本実施形態に係る減速支援システムが搭載される車両の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る減速支援システムが搭載される車両の構成を示すブロック図である。尚、図1では、説明の便宜上、本実施形態に直接関係のある部材のみ図示しており、他の部材については図示を省略している。
【0028】
図1において、車両1は、GPS101、車載カメラ102、ミリ波レーダ103、インフラ通信装置104、車速センサ105、ディスプレイ106、ACC(Adaptive Cruise Control)スイッチ107、PCS(Pre−Crash Safety)スイッチ108、ECU(Electronic Control Unit)109、地図情報データベース(DB)110、カーナビゲーション111、ブレーキアクチュエータ112、アクセルアクチュエータ113、スピーカ114及びステアリングセンサ115を備えて構成されている。
【0029】
GPS101は、GPS衛星からの信号を受信して、車両1の現在位置を特定し、該特定された現在位置を示す信号をECU109に送信する。車載カメラ102は、主に車両1の前方の画像を撮像し、該撮像された画像を示す信号をECU109に送信する。ECU109は、受信した信号に対応する画像を表示するように、ディスプレイ106を制御する。
【0030】
ミリ波レーダ103は、ミリ波を出射すると共に、対象物(例えば、前方車両等)により反射された電波を受信し、伝播時間やドップラー効果に起因して生じる周波数等を基に、対象物の位置や車両1との相対速度を測定し、該測定された対象物の位置や相対速度を示す信号をECU109に送信する。
【0031】
インフラ通信装置104は、例えば光学式車両感知器(所謂、光ビーコン)等の路上に設置された交通インフラストラクチャを介して、例えば、見通しの悪い周辺の状況に係る情報、交通管制情報(例えば信号機や標識等に係る情報)、道路状況に係る情報(例えば交通事故や渋滞等に係る情報)を取得し、該取得された情報を示す信号をECU109に送信する。ECU109は、受信した信号に対応する情報を表示するように、ディスプレイ106を制御する。
【0032】
車速センサ105は、例えば車速に比例する出力軸(図示せず)の回転数を検出し、該検出された回転数を示す信号をECU109に送信する。
【0033】
ACCスイッチ107及びPCSスイッチ108は、運転モードを設定するためのスイッチである。ACCスイッチ107及びPCSスイッチ108は、車両1の運転者により夫々ON状態にされることによって、ACC機能及びPCS機能を有効にする。
【0034】
地図情報データベース110は、地図データファイル、交差点データファイル、道路データファイル等を備えて構成されている。該地図情報データベース110には、車両の走行に必要な情報(例えば地図、直線路、コーナ、登降坂路、高速道路等)が格納されている。
【0035】
カーナビゲーション111は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としている。該カーナビゲーション111は、GPS101、インフラ通信装置104、ディスプレイ106、ECU109、地図情報データベース110及びスピーカ114と協働することによって、運転者に、車両1の現在地周辺の地図情報、車両1の現在位置、目的位置、経路等の情報を提供する。
【0036】
ステアリングセンサ115は、例えば車両1のコンビネーションスイッチ部(図示せず)に設けられており、ハンドル(図示せず)の操舵量及び操舵方向を検出し、該検出された操舵量及び操舵方向を示す信号をECU109に送信する。
【0037】
減速支援システム10は、GPS101、車載カメラ102、ミリ波レーダ103、インフラ通信装置104、車速センサ105、ECU109、地図情報データベース110、カーナビゲーション111及びステアリングセンサ115を備えて構成されている。
【0038】
減速支援システム10におけるECU109は、例えばGPS101、ステアリングセンサ115等から出力された信号に基づいて、車両1が右折又は左折する際に、右折又は左折のために車両1の運転者がハンドル(図示せず)の操舵を開始する位置である操舵開始位置を学習する。
【0039】
ECU109は、例えばウィンカースイッチ(図示せず)の状態、カーナビゲーション111に設定されている走行経路等に基づいて、車両1の運転者の右左折意思を確認する。ECU109は、例えばGPS101から出力された信号、地図情報データベース110に格納されている情報等に基づいて、車両1の現在位置と、学習された操舵開始位置との間の距離を算出可能である。
【0040】
車両1の運転者の右左折意思が確認され、且つ該運転者の操舵開始位置が学習されている場合、ECU109は、車両1の現在位置と学習された操舵開始位置との間の距離に応じて減速支援を行う。尚、ECU109は、車両1の現在位置と学習された操舵開始位置との間の距離が所定値以下であることを条件に、減速支援を行わない。
【0041】
本実施形態に係る「ECU109」は、本発明に係る「学習システム」、「意思確認手段」、「距離算出手段」及び「減速支援手段」の一例である。本実施形態では、各種電子制御用のECU109の一部を、減速支援システム10の一部として用いている。
【0042】
次に、以上のように構成された減速支援システム10を搭載する車両1の走行中に、ECU109により実行される減速支援処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。この減速支援処理は、主に車両1の走行中に、一定周期若しくは不定周期で、又は連続して実行される。
【0043】
図2において、車両1が、減速支援システム10が対象とする交差点に向かって進行している場合、ECU109は、車両1の運転者が交差点を右折又は左折する意思があるか否かを判定する(ステップS101)。
【0044】
車両1の運転者が交差点を右折又は左折する意思があるか否かは、例えば次のようにして判定すればよい。即ち、(i)カーナビゲーション111に設定されている走行経路が右折又は左折であるか否かを判定する。(ii)運転者がウィンカースイッチを操作してウィンカーを点灯したか否かを判定する。(iii)学習されている普段の走行経路が右折又は左折であるか否かを判定する。(iv)車載カメラ102、インフラ通信装置104を介して得られるインフラストラクチャ情報、カーナビゲーション111に用いられている地図情報、ミリ波レーダ103、車車間通信等に基づいて減速が不要と判定された場合に、運転者が減速を開始したか否かを判定する。(v)学習されている普段の右折又は左折の行動モデルと比較して、類似した走行挙動であるか(例えば、普段の右折又は左折時と同様のタイミングでブレーキペダルが踏下されたか)否かを判定する。
【0045】
交差点を右折又は左折する意思はないと判定された場合(ステップS101:No)、ECU109は、処理を終了する。他方、交差点を右折又は左折する意思があると判定された場合(ステップS101:Yes)、ECU109は、運転者が右折又は左折のためにハンドルの操舵を開始する位置である操舵開始位置が既に学習されているか否かを判定する(ステップS102)。
【0046】
操舵開始位置が既に学習されていると判定された場合(ステップS102:Yes)、ECU109は、例えばGPS101から出力された信号、地図情報データベース110に格納されている情報等に基づいて、学習された操舵開始位置と車両1の現在位置との間の距離を算出して、該算出された距離を、距離Lに設定する(ステップS103)。他方、操舵開始位置が学習されていないと判定された場合(ステップS102:No)、ECU109は、例えばGPS101から出力された信号、地図情報データベース110に格納されている情報等に基づいて、対象交差点の停止線と車両1の現在位置との間の距離を算出し、該算出された距離を、距離Lに設定する(ステップS104)。
【0047】
次に、ECU109は、例えば車速センサ105から出力された信号に基づいて、距離Lを車両1の現在の速度で割った到達予想時間を算出し、該算出された到達予想時間が所定時間(ここでは、T秒)以下であるか否かを判定する(ステップS105)。尚、本実施形態に係る「所定時間と車両1の現在の速度との積」は、本発明に係る「所定値」の一例である。
【0048】
到達予想時間が所定時間より大きいと判定された場合(ステップS105:No)、ECU109は、サービス可能であるか否かを判定する(ステップS110)。尚、サービス可能であるか否かは、例えば車両1が対象交差点を通過していないか否か、等を判定することによって、判定すればよい。
【0049】
サービス可能であると判定された場合(ステップS110:Yes)、ECU109は、ステップS105の処理を実行する。他方、サービス不可能であると判定された場合(ステップS110:No)、ECU109は、後述するステップS109の処理を実行する。
【0050】
ステップS105の処理において、到達予想時間が所定時間以下であると判定された場合(ステップS105:Yes)、ECU109は、右左折減速支援開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS106)。ここで、右左折減速支援開始条件は、例えば、車両1の速度が一定値以下、アクセルオフ、操舵開始位置又は停止線までの距離が一定値以下、等である。
【0051】
右左折減速支援開始条件が成立していないと判定された場合(ステップS106:No)、ECU109は、ステップS110の処理を実行する。他方、右左折減速支援開始条件が成立したと判定された場合(ステップS106:Yes)、ECU109は、操舵開始位置又は停止線位置と、車両1の現在位置との間の距離に応じて減速支援を実行する(ステップS107)。
【0052】
次に、ECU109は、右左折減速支援終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS108)。ここで、右左折減速支援終了条件は、例えば、車両1が対象交差点を通過、アクセルオン、車両1の速度が一定値以上、等である。
【0053】
右左折減速支援終了条件が成立していないと判定された場合(ステップS108:No)、ECU109は、ステップS107の処理を実行する。他方、右左折減速支援終了条件が成立したと判定された場合(ステップS108:Yes)、ECU109は、今回、運転者により、右折又は左折のためにハンドルの操舵が開始された位置を学習する(ステップS109)。
【0054】
尚、ステップS107において、例えば、対象交差点における停止線位置と操舵開始位置との間の距離を算出し、該算出された距離を車両1の現在の速度で割った値だけ、制御タイミングを変更してもよい。
【0055】
尚、(i)車両1が対象交差点に到着する際の信号機の灯色が赤又は黄と予測される場合、(ii)対象交差点が一時停止が必要な交差点(即ち、一時停止の標識のある交差点)である場合、(iii)車両1と該車両1の前方を走行している車両との間の距離が短くなった場合、(iv)車両1が右折する際に対向車両の交通量が比較的多い場合、等には、上述した減速支援処理は実行されなくてもよい。
【0056】
<第2実施形態>
本発明の減速支援システムに係る第2実施形態を、図3のフローチャートを参照して説明する。第2実施形態では、ECUが実行する減速支援処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図3を参照して説明する。
【0057】
本実施形態に係る減速支援システムにおけるECU109は、操舵開始位置に加えて、該操舵開始位置における車両1の速度である操舵開始速度、及び運転者が右折又は左折をするために車両1に生じさせる減速度の最大値である最大減速度を学習する。
【0058】
車両1の運転者の右左折意思が確認され、且つ操舵開始位置及び操舵開始速度が学習されている場合、ECU109は、車両1の現在の速度が学習された操舵開始速度よりも大きく、且つ車両1の現在の速度から学習された操舵開始速度まで減速する際に生じる減速度が学習された最大減速度を超えることを条件に、車両1の現在位置と学習された操舵開始位置との間の距離に応じて減速支援を行う。
【0059】
次に、以上のように構成された減速支援システム10を搭載する車両1の走行中に、ECU109により実行される減速支援処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
図3において、車両1が、減速支援システム10が対象とする交差点に向かって進行している場合、ECU109は、車両1の運転者が交差点を右折又は左折する意思があるか否かを判定する(ステップS201)。
【0061】
交差点を右折又は左折する意思はないと判定された場合(ステップS201:No)、ECU109は、処理を終了する。他方、交差点を右折又は左折する意思があると判定された場合(ステップS201:Yes)、ECU109は、運転者が右折又は左折のためにハンドルの操舵を開始する位置である操舵開始位置、該操舵開始位置における車両1の速度である操舵開始速度、及び運転者が右折又は左折をするために車両1に生じさせる減速度の最大値である最大減速度が既に学習されているか否かを判定する(ステップS202)。
【0062】
操舵開始位置、操舵開始速度及び最大減速度が既に学習されていると判定された場合(ステップS202:Yes)、ECU109は、学習されている操舵開始速度を、操舵開始速度Vhとして設定する(ステップS203)。該ステップS203の処理を相前後して、ECU109は、例えばGPS101から出力された信号、地図情報データベース110に格納されている情報等に基づいて、学習された操舵開始位置と車両1の現在位置との間の距離を算出して、該算出された距離を、距離Sに設定する(ステップS204)。
【0063】
ステップS202の処理において、操舵開始位置、操舵開始速度及び最大減速度が学習されていないと判定された場合(ステップS202:No)、ECU109は、車両1が右折又は左折する際に、車両1に生じる減速度の最大値Gmaxを一定値に設定する(ステップS205)。
【0064】
続いて、ECU109は、例えば交差点の大きさ(例えば、車線数等)、見通し、流出角等に応じて決定される交差点形状に基づいて、右折又は左折する際の車両1の速度を算出(又は推測)し、該算出された速度を、操舵開始速度Vhとして設定する(ステップS206)。該ステップS206の処理を相前後して、ECU109は、例えばGPS101から出力された信号、地図情報データベース110に格納されている情報等に基づいて、対象交差点における停止線位置と車両1の現在位置との間の距離を算出して、該算出された距離を、距離Sに設定する(ステップS207)。
【0065】
次に、ECU109は、車両1の現在の速度の2乗(V)から操舵開始速度の2乗(Vh)を引いた値を、距離Sの2倍で割った値(即ち、(V−Vh)/2S)が、最大減速度Gmaxより大きいか否かを判定する(ステップS208)。尚、最大減速度が既に学習されている場合、最大減速度Gmaxは、学習された最大減速度である。
【0066】
(V−Vh)/2Sが最大減速度Gmax以下であると判定された場合(ステップS208:No)、ECU109は、サービス可能であるか否かを判定する(ステップS213)。
【0067】
サービス可能であると判定された場合(ステップS213:Yes)、ECU109は、ステップS208の処理を実行する。他方、サービス不可能であると判定された場合(ステップS213:No)、ECU109は、後述するステップS212の処理を実行する。
【0068】
ステップS208の処理において、(V−Vh)/2Sが最大減速度Gmaxより大きいと判定された場合(ステップS208:Yes)、ECU109は、右左折減速支援開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS209)。
【0069】
右左折減速支援開始条件が成立していないと判定された場合(ステップS209:No)、ECU109は、ステップS213の処理を実行する。他方、右左折減速支援開始条件が成立したと判定された場合(ステップS209:Yes)、ECU109は、操舵開始位置又は停止線位置と、車両1の現在位置との間の距離に応じて減速支援を実行する(ステップS210)。尚、減速支援は、例えば、車両1の運転者に対する警告や、車両1の速度が操舵開始速度Vhになるような制御、等である。
【0070】
次に、ECU109は、右左折減速支援終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS211)。右左折減速支援終了条件が成立していないと判定された場合(ステップS211:No)、ECU109は、ステップS210の処理を実行する。他方、右左折減速支援終了条件が成立したと判定された場合(ステップS211:Yes)、ECU109は、今回、運転者により、右折又は左折のためにハンドルの操舵が開始された位置、及び該位置における車両1の速度等を学習する(ステップS212)。
【0071】
<第3実施形態>
本発明の減速支援システムに係る第3実施形態を、図4のフローチャートを参照して説明する。第3実施形態では、ECUが実行する減速支援処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第3実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図4を参照して説明する。
【0072】
本実施形態に係る減速支援システムにおけるECU109は、操舵開始位置に加えて、該操舵開始位置における車両1の速度である操舵開始速度を学習する。車両1の運転者の右左折意思が確認され、且つ操舵開始位置及び操舵開始速度が学習されている場合、ECU109は、車両1の現在の速度が学習された操舵開始速度よりも大きいことを条件に、車両1の現在位置と学習された操舵開始位置との間の距離に応じて減速支援を行う。
【0073】
次に、以上のように構成された減速支援システム10を搭載する車両1の走行中に、ECU109により実行される減速支援処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
図4において、車両1が、減速支援システム10が対象とする交差点に向かって進行している場合、ECU109は、車両1の運転者が交差点を右折又は左折する意思があるか否かを判定する(ステップS301)。
【0075】
交差点を右折又は左折する意思はないと判定された場合(ステップS301:No)、ECU109は、処理を終了する。他方、交差点を右折又は左折する意思があると判定された場合(ステップS301:Yes)、ECU109は、運転者が右折又は左折のためにハンドルの操舵を開始する位置である操舵開始位置、及び該操舵開始位置における車両1の速度である操舵開始速度が既に学習されているか否かを判定する(ステップS302)。
【0076】
操舵開始位置及び操舵開始速度が既に学習されていると判定された場合(ステップS302:Yes)、ECU109は、学習されている操舵開始速度を、目標進入速度として設定する(ステップS303)。他方、操舵開始位置及び操舵開始速度が学習されていないと判定された場合(ステップS302:No)、ECU109は、交差点形状に基づいて、右折又は左折する際の車両1の速度を算出(又は推測)し、該算出された速度を、目標進入速度として設定する(ステップS304)。
【0077】
次に、ECU109は、車両1の現在の速度が目標進入速度より大きいか否かを判定する(ステップS305)。車両1の現在の速度が目標進入速度より小さいと判定された場合(ステップS305:No)、ECU109は、サービス可能であるか否かを判定する(ステップS310)。
【0078】
サービス可能であると判定された場合(ステップS310:Yes)、ECU109は、ステップS305の処理を実行する。他方、サービス不可能であると判定された場合(ステップS310:No)、ECU109は、後述するステップS309の処理を実行する。
【0079】
ステップS305の処理において、車両1の現在の速度が目標進入速度より大きいと判定された場合(ステップS305:Yes)、ECU109は、右左折減速支援開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS306)。
【0080】
右左折減速支援開始条件が成立していないと判定された場合(ステップS306:No)、ECU109は、ステップS310の処理を実行する。他方、右左折減速支援開始条件が成立したと判定された場合(ステップS306:Yes)、ECU109は、操舵開始位置、又は対象交差点における停止線位置と、車両1の現在位置との間の距離に応じて減速支援を実行する(ステップS307)。
【0081】
次に、ECU109は、右左折減速支援終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS308)。右左折減速支援終了条件が成立していないと判定された場合(ステップS308:No)、ECU109は、ステップS307の処理を実行する。他方、右左折減速支援終了条件が成立したと判定された場合(ステップS308:Yes)、ECU109は、今回、運転者により、右折又は左折のためにハンドルの操舵が開始された位置、及び該位置における車両1の速度を学習する(ステップS309)。
【0082】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う減速支援システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1…車両、10…減速支援システム、101…GPS、102…車載カメラ、103…ミリ波レーダ、104…インフラ通信装置、105…車速センサ、106…ディスプレイ、107…ACCスイッチ、108…PCSスイッチ、109…ECU、110…地図情報データベース、111…カーナビゲーション、112…ブレーキアクチュエータ、113…アクセルアクチュエータ、114…スピーカ、115…ステアリングセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、
前記車両が右折又は左折する際に、前記車両の運転者が、右折又は左折のためにハンドルの操舵を開始する位置である操舵開始位置を学習する学習システムと、
前記運転者の右左折意思を確認する意思確認手段と、
前記車両の現在位置と、前記学習された操舵開始位置との間の距離を算出可能な距離算出手段と、
前記意思確認手段によって前記運転者の右左折意思が確認され、且つ前記学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合、前記距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援を行う減速支援手段と
を備えることを特徴とする減速支援システム。
【請求項2】
前記減速支援手段は、前記意思確認手段によって前記運転者の右左折意思が確認され、且つ前記学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合であって、前記距離算出手段によって算出された距離が所定値以下である場合、前記減速支援を行わないことを特徴とする請求項1に記載の減速支援システム。
【請求項3】
前記学習システムは、更に、前記操舵開始位置における前記車両の速度である操舵開始速度を学習し、
前記減速支援手段は、前記意思確認手段によって前記運転者の右左折意思が確認され、且つ前記学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合であって、前記車両の現在の速度が前記学習された操舵開始速度よりも大きい場合、前記距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の減速支援システム。
【請求項4】
前記学習システムは、更に、前記運転者が、右折又は左折のために前記車両に生じさせる減速度の最大値である最大減速度を学習し、
前記減速支援手段は、前記意思確認手段によって前記運転者の右左折意思が確認され、且つ前記学習システムによって操舵開始位置が学習されている場合であって、前記車両の現在の速度が前記学習された操舵開始速度よりも大きく、且つ前記現在の速度から前記学習された操舵開始速度まで減速する際に生じる減速度が、前記学習された最大減速度を超える場合、前記距離算出手段によって算出された距離に応じて減速支援を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の減速支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−143745(P2011−143745A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4011(P2010−4011)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】