説明

自動車用筒形防振装置

【課題】ばね特性の設計自由度が大きく確保されると共に、製造や自動車への装着作業が容易となる、新規な構造の自動車用筒形防振装置を提供する。
【解決手段】アウタ筒部材14のテーパ内周面34,36に本体ゴム弾性体16を加硫接着すると共に、本体ゴム弾性体16におけるテーパ内周面34,36からの突出高さを小さくした部分でばね調節用の対向凹所42a,42bを構成し、アウタ筒部材14の軸方向両側から一対のインナ分割体18,20をそれぞれ差し入れて相互に連結固定することでインナ軸部材12を構成すると共に、インナ分割体18,20のテーパ外周面24,30を本体ゴム弾性体16の内周面に当接して、インナ軸部材12とアウタ筒部材14を本体ゴム弾性体16を介して弾性連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナ軸部材とインナ軸部材の外周側に離隔配置されたアウタ筒部材が、軸方向両側から中央に向かって小径化する一対のテーパ筒状のゴム弾性体で弾性連結されてなる自動車用筒形防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系の部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の防振装置の一種として、例えば特許文献1(特開平07−158676号公報)に示されているような筒形防振装置が知られている。かかる筒形防振装置では、径方向で互いに離隔配置された内側金具と外筒金具が、それらの間に介装された筒形のゴム弾性体で相互に弾性的に連結されている。そして、筒形防振装置が自動車用サスペンションブッシュやサスペンションメンバマウント等の自動車用筒形防振装置に採用されて自動車に装着される際には、筒形防振装置の軸方向や軸直角方向が自動車に対して設定されて、目的とする車両前後方向や左右方向、上下方向等のばね特性が得られるようになっている。
【0003】
ところで、上述の自動車用筒形防振装置においては、軸方向および軸直角方向のばね特性が各別に要求される。そこで、特許文献2(特開平03−287405号公報)の図7に記載の如き筒形防振装置において、内側金具と外筒金具の間に配設されるゴム弾性体として軸方向両側部分から軸方向中央部分に向かってそれぞれ次第に小径化する一対のテーパ筒形ゴムを軸方向に組み付けた構造が提案されている。特に、このようなテーパ筒形ゴムを採用すると、テーパ面による内側金具と外筒金具のセンタリング作用が発揮される。これにより、例えば筒形防振装置をサスペンションメンバマウントに適用した場合に、フルブレーキング時や急加速時等における車両の挙動の安定性が問題となり易い状況において、テーパ面によるセンタリング作用に基づいて車両挙動の安定性の向上効果が期待できる。
【0004】
ところが、かかるテーパ筒形ゴムを備えた従来構造の筒形防振装置では、特に以下の二つの問題を内在していた。
【0005】
第一に、軸直角方向のばね特性の調節に際して、特許文献3(特開2004−239375号公報)に示されている如き軸方向に貫通したすぐりをテーパ筒形ゴムに形成することが難しい問題があった。蓋し、テーパ筒形ゴムが軸方向に分割構造とされていても、内側金具と外筒金具がテーパ形状とされているため、軸方向への型抜きが困難となるからである。
【0006】
また、第二の問題は、筒形防振装置の自動車への装着孔そのものにも軸方向両側開口部分から軸方向中央部分に向かって次第に小径化する両側テーパ形の特殊な形状が必要とされることにある。そのため、装着孔の形成自体が困難であることに加えて、筒形防振装置を内側金具や外筒金具、テーパ筒形ゴムをそれぞれ軸方向に分割してなる一対の分割体にて構成して、それら一対の分割体を装着孔の両側からそれぞれ差し入れると共に、インナロッドを両分割体に挿通して両分割体を相互に固定する必要があることから、筒形防振装置の自動車への装着作業が面倒となる問題があったのである。
【0007】
【特許文献1】特開平07−158676号公報
【特許文献2】特開平03−287405号公報
【特許文献3】特開2004−239375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、ばね特性の設計自由度が大きく確保されると共に、製造や自動車への装着作業が容易となる、新規な構造の自動車用筒形防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
すなわち、本発明の特徴とするところは、円筒内周面を有する装着孔に圧入固定される圧入外周面と軸方向両端開口部分から軸方向中央部分に向かってそれぞれ次第に小径化するテーパ内周面とを有するアウタ筒部材を備えており、アウタ筒部材の軸方向両側のテーパ内周面に対してそれぞれ本体ゴム弾性体が加硫接着されており、本体ゴム弾性体には、軸方向両側のテーパ内周面上で径方向に対向位置する部分においてテーパ内周面から径方向内方への突出高さがそれぞれ小さくされたばね調節用の対向凹所が形成されている一方、アウタ筒部材には、軸方向両側のテーパ内周面に対応したテーパ外周面を備えたインナ分割体が軸方向両側から挿し入れられて、それらのインナ分割体が相互に固定されることによってインナ軸部材が構成されるようになっており、インナ軸部材を構成する各インナ分割体のテーパ外周面がそれぞれ本体ゴム弾性体の内周面に当接せしめられることによってインナ軸部材がアウタ筒部材に対して本体ゴム弾性体を介して弾性連結されている自動車用筒形防振装置にある。
【0011】
このような本発明に従う構造とされた自動車用筒形防振装置においては、本体ゴム弾性体がアウタ筒部材の軸方向両側のテーパ内周面にそれぞれ加硫接着されており、各本体ゴム弾性体の内周面が各インナ分割体のテーパ外周面に当接されることによって、インナ軸部材とアウタ筒部材が、軸方向両側から中央に向かって小径化する一対のテーパ筒状の本体ゴム弾性体を介して弾性連結され得る。即ち、本体ゴム弾性体をインナ軸部材のテーパ外周面とアウタ筒部材のテーパ内周面の間で両面に固着するように加硫成形する必要がないことから、本体ゴム弾性体の型抜き構造が簡単とされ得て、一対のテーパ筒状の本体ゴム弾性体でインナ軸部材とアウタ筒部材が連結されてなる筒形防振装置の製造が容易になると共に、本体ゴム弾性体やインナ軸部材、アウタ筒部材の設計自由度が大きく確保される。
【0012】
特に、本体ゴム弾性体の内周面がインナ軸部材に加硫接着されていないことによる本体ゴム弾性体の内周面側の設計自由度の向上に基づいて、本構造では、本体ゴム弾性体におけるアウタ筒部材のテーパ内周面からの径方向突出高さが小さくされることによって、ばね調節用の対向凹所が形成されている。これにより、本体ゴム弾性体の径方向中間部分やアウタ筒部材に加硫接着される外周面に凹所を形成する場合に比して型抜き構造の簡単化が図られつつ、ばね特性のチューニング自由度が向上され得る。
【0013】
また、アウタ筒部材の外周面が、円筒内周面を有する装着孔に圧入固定される圧入外周面とされていることから、装着孔には筒形防振装置を装着するためにテーパ形状等の特別な形状を採用する必要がなくなって、装着孔の製造容易が図られ得る。
【0014】
さらに、一対のインナ分割体のテーパ外周面がそれぞれ本体ゴム弾性体の内周面に当接される際に、一対のインナ分割体の軸方向の組み付け力を利用して、インナ軸部材とアウタ筒部材の対向面間で本体ゴム弾性体に予圧縮を及ぼすことも可能である。これにより、製造工程の短縮化が図られつつ、本体ゴム弾性体の耐久性が向上され得る。
【0015】
それ故、本構造の自動車用筒形防振装置によれば、ばね特性の設計自由度が大きく確保されて、目的に応じて優れた防振性能や車両乗り心地、操縦安定性等が得られることに加え、一対のテーパ筒状の本体ゴム弾性体を備えた筒形防振装置の製造や自動車への装着作業が容易とされ得るのである。
【0016】
また、本発明に係る自動車用筒形防振装置では、一対のインナ分割体が相互に固定される固定手段が設けられている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、筒形防振装置が自動車に装着される前の単体状態で、一対のインナ分割体を一体的に組み付けてなるインナ軸部材が実現されることとなり、それによって、筒形防振装置の取り扱い性が向上されて、自動車への装着作業も一層容易となる。
【0017】
また、本発明に係る自動車用筒形防振装置では、アウタ筒部材の圧入外周面は、軸方向両端部分を周方向に延びる一対の環状圧入面と、周上の複数箇所において一対の環状圧入面の間に跨って軸方向に延びる直線状圧入面とを備えており、且つ、それら一対の環状圧入面および複数の直線状圧入面に囲まれた領域には、圧入外周面に開口する肉抜凹所が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、アウタ筒部材の圧入外周面と装着孔の円筒内周面との当接面積が小さくされることに基づき、アウタ筒部材の圧入に要する荷重が低減される結果、装着作業の更なる容易化が図られ得る。
【0018】
特に本構造では、圧入外周面の軸方向両端部分において周方向に延びる一対の環状圧入面が設けられていることにより、例えば、単に軸方向に延びる突起乃至は凹所を周方向に離隔して複数設けただけの外周面に比して、アウタ筒部材における装着孔からの抜け抗力が大きく確保され得る。また、アウタ筒部材が装着孔に対して環状圧入面から圧入されることから、環状圧入面に比して周方向寸法の小さな直線状圧入面の軸方向端部等で装着孔の端部や円筒内周面等を大きく損傷せしめるような不具合が解消され、アウタ筒部材や装着孔の耐久性確保が図られ得る。更に、アウタ筒部材の肉抜凹所と装着孔の円筒内周面の間に形成される隙間の軸方向端部を、例えば円筒内周面に重ね合わされた環状圧入面で閉塞せしめることも可能であり、それによって、かかる隙間への異物の侵入が抑えられる。それ故、本構造によれば、アウタ筒部材の装着孔への装着状態の安定化が図られつつ、装着作業が一層容易となる。
【0019】
なお、このような肉抜凹所や一対のテーパ内周面を備えたアウタ筒部材は、アルミニウム軽合金等を用いたダイカスト品にて形成されることが望ましく、それによって、寸法精度や強度、製造効率の向上が図られ得る。しかも、肉抜凹所が形成されたダイカスト品においては、ダイカスト品の厚さ寸法が小さくされることに基づき、軽量化や低コスト化が図られ得ることに加え、アウタ筒部材をダイカスト成形する際に、溶融材料の圧力不足等に起因してダイカスト品の内部に気泡が生じる、所謂、巣の発生が抑えられることにより、高い寸法精度が維持され得る。
【0020】
また、本発明に係る自動車用筒形防振装置では、アウタ筒部材には、軸方向中央部分において周方向に延びて、複数の直線状圧入面を相互に連結する中央環状圧入面が設けられている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、アウタ筒部材の各直線状圧入面の形成部分における過大な応力の発生が抑えられることによって、肉抜凹所を備えたアウタ筒部材の装着孔に対する装着安定性が向上され得る。
【0021】
また、本発明に係る自動車用筒形防振装置では、インナ分割体のテーパ外周面には、本体ゴム弾性体の当接領域の軸方向外側端部に位置して、傾斜角度が大きくされて周方向に延びる段差状の位置決め部が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、本体ゴム弾性体の内周面がインナ分割体のテーパ外周面に当接されると、本体ゴム弾性体の軸方向外側端部が位置決め部により支持される。それ故、本体ゴム弾性体の弾性変形に伴い、その軸方向外側端部が軸方向外方に過大に突出することが抑えられて、かかる突出に起因するばね特性の変化や耐久性低下等の不具合が解消され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の自動車用筒形防振装置に係る第一の実施形態としての自動車用サスペンションメンバマウント10が示されている。自動車用サスペンションメンバマウント10では、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14が、互いに径方向に所定距離を隔てて配設されて、それらの間に介装された本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
【0023】
このような自動車用サスペンションメンバマウント10は、例えば、特許文献2(特開平03−287405号公報)の図1にも示されているように、サスペンションアームやリンク等がサスペンションメンバ(サブフレーム)を介して車両ボデーに取り付けられる公知のサブフレーム方式のサスペンション装置に対して採用され得る。内筒金具12が車両ボデー側の取付部材に取り付けられると共に、外筒金具14がサスペンションメンバに取り付けられることにより、サスペンションメンバが自動車用サスペンションメンバマウント10を介して車両ボデーに防振支持されるようになっている(図9参照。)。
【0024】
なお、図1では、自動車用サスペンションメンバマウント10の自動車への非装着状態が示されているが、自動車への装着状態下においては、略マウント軸方向(図1中、上下)に車両ボデー等の分担支持荷重が及ぼされて本体ゴム弾性体16が弾性変形することに伴い、内筒金具12が外筒金具14に対してマウント軸方向で変位せしめられる。以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向は図1,9中の上下方向をいう。
【0025】
より詳細には、内筒金具12は、一方のインナ分割体としての第一の内側筒金具18と他方のインナ分割体としての第二の内側筒金具20を含んで構成されている。第一の内側筒金具18は、図2,3にも示されているように、厚肉且つ小径の略円筒形状を有している。第一の内側筒金具18の上端部には、内壁部よりも径方向内方に突出する内フランジ状部22が一体形成されている。また、第一の内側筒金具18の軸方向上端部乃至は中間部分から下端縁部に至る外周面が、下方に向かって次第に小径化するテーパ外周面としての第一テーパ外周面24とされている。
【0026】
第二の内側筒金具20は、図4,5にも示されているように、軸方向に長手状に延びる厚肉且つ小径の略円筒状体であって、その軸方向上端部分から軸方向略中央部分にかけての部位が軸方向に略一定の円形断面で延びる圧入固定部26とされていると共に、その軸方向下端部分から軸方向略中央部分にかけての部位が次第に小径化せしめられるテーパ筒状部28とされている。即ち、第二の内側筒金具20において上方に向かって次第に小径化するテーパ外周面としての第二テーパ外周面30が、テーパ筒状部28の外周面によって構成されており、第二の内側筒金具20の下端に位置するテーパ筒状部28の大径側端縁部において第二の内側筒金具20が最大外径寸法を有している。圧入固定部26とテーパ筒状部28の軸方向寸法が略同じとされており、第二の内側筒金具20全体の軸方向寸法が第一の内側筒金具18の軸方向寸法に比して大きくされている。また、圧入固定部26の外径寸法が第一の内側筒金具18の内径寸法に比して僅かに小さくされていると共に、第二テーパ外周面30の大径側端縁部とされる第二の内側筒金具20の下端縁部の外径寸法が、第一テーパ外周面24の大径側端部を備えた第一の内側筒金具18の上端部の外径寸法と略同じとされている。また、圧入固定部26の内径寸法が、第一の内側筒金具18の内フランジ状部22の内径寸法と略同じかそれよりも小さくされている。更に、圧入固定部26とテーパ筒状部28の接続部分に位置する第二の内側筒金具20の軸方向略中央部分には、径方向内方に向かって内フランジ状に突出する段部32が一体形成されている。
【0027】
一方、外筒金具14は、図6〜8にも示されているように、大径の略円筒形状を有している。外筒金具14となるアウタ筒部材は、例えばプレス鋼板等を用いたプレス成形品の他、ポリフェニレンスルフィド(PPS)やポリアミド(PA)等を用いた硬質の樹脂成形品とされても良いが、特に本実施形態では、アルミ合金や亜鉛合金等を用いたダイカスト品からなる。
【0028】
外筒金具14の内周面は、テーパ内周面としての第一テーパ内周面34と第二テーパ内周面32を含んで構成されている。これら第一及び第二テーパ内周面34,36は、外筒金具14の軸方向両側端縁部から軸方向中央部分に向かってそれぞれ次第に小径化するテーパ形状を有しており、第一及び第二テーパ内周面34,36の小径側端部が外筒金具14の軸方向中間部分で軸方向に所定距離を隔てて位置せしめられている。これにより、外筒金具14の内周面において第一及び第二テーパ内周面34,36の小径側端部間が軸方向に延びる円筒状面とされており、この円筒状面を備えた外筒金具14の軸方向中間部分の内径寸法が、最も小さくされている。特に本実施形態では、外筒金具14の中心軸に対してテーパ面の母線が傾斜する角度で表されるテーパ角度に関して、第一テーパ内周面34と第二テーパ内周面36が互いに略同じとされている。また、第一テーパ内周面34と第二テーパ内周面36の軸方向寸法が互いに略同じとされている。これにより、第一テーパ内周面34と第二テーパ内周面36が軸方向で対称形状とされていると共に、外筒金具14において第一及び第二テーパ内周面34,36の軸方向間に位置せしめられる最小内径部が、外筒金具14の軸方向略中央部分に位置せしめられている。なお、要求されるばね特性や製作性等に応じて、第一及び第二テーパ内周面32,34の軸方向寸法やテーパ角度を互いに異ならせることも勿論可能であり、それによって、例えば、外筒金具14の最小内径部が軸方向一方の側に偏倚せしめられたり、第一テーパ内周面34と第二テーパ内周面36が軸方向で非対称形状とされても良い。
【0029】
これら第一テーパ内周面34と第二テーパ内周面36には、本体ゴム弾性体16を構成する第一の本体ゴム弾性体38と第二の本体ゴム弾性体40が設けられている。
【0030】
第一の本体ゴム弾性体38は、第一テーパ内周面34に沿って略一定の矩形断面で周方向に延びる筒状とされており、その内外周面における外筒金具14の中心軸に対する各傾斜角度が、第一テーパ内周面34のテーパ角度と略同じとされている。また、内筒金具12と外筒金具14が相互に弾性連結される前の外筒金具14の単体状態下、第一の本体ゴム弾性体38の軸方向断面が、外周面から内周面に向かって幅寸法が次第に小さくなる略台形状とされている。この第一の本体ゴム弾性体38の外周面が第一テーパ内周面34に加硫接着されている。
【0031】
さらに、第一の本体ゴム弾性体38における外筒金具14の中心軸を挟んだ径方向一方向(図6中、上下)で対向位置せしめられる部分には、対向凹所としての第一溝部42aがそれぞれ形成されている。第一溝部42aは、第一の本体ゴム弾性体38における第一テーパ内周面34から径方向内方に突出する高さを小さくすることによって、第一の本体ゴム弾性体38の径方向内方に開口し且つ第一の本体ゴム弾性体38の上下端面に開口する軸方向断面で、周方向に半周弱の長さで延びている。特に本実施形態では、第一溝部42aの構成に際して、第一テーパ内周面34に第一の本体ゴム弾性体38が設けられていない。即ち、筒状を有する第一の本体ゴム弾性体38にかくの如き一対の第一溝部42a,42aが周方向に離隔して形成されていることにより、第一の本体ゴム弾性体38が、実質的に周方向で分割された一対の略円弧形ブロック形状とされている。
【0032】
一方、第二の本体ゴム弾性体40は、外筒金具14の第一テーパ内周面34に加硫接着される第一の本体ゴム弾性体38を軸方向(図1,7中、上下)で反転させて第一の本体ゴム弾性体38と略対称的な筒状とされており、第二の本体ゴム弾性体40の内外周面における外筒金具14の中心軸に対する各傾斜角度が、外筒金具14の第二テーパ内周面36のテーパ角度と略同じとされている。従って、外筒金具14の単体状態下、第二の本体ゴム弾性体40の軸方向断面が外周面から内周面に向かって幅寸法が次第に小さくなる略台形状とされて、第二の本体ゴム弾性体40の外周面が第二テーパ内周面36に対して加硫接着されている。また、第二テーパ内周面36において第一の本体ゴム弾性体38の各第一溝部42aと軸方向で対向位置する部分には、第二の本体ゴム弾性体40が設けられていないことにより、第二の本体ゴム弾性体40における対向凹所としての第二溝部42bがそれぞれ設けられており、それによって、それら第二溝部42b、42bが外筒金具14の中心軸を挟んだ径方向一方向(図6中、上下)で対向位置せしめられて、第二の本体ゴム弾性体40が、実質的に周方向で分割形成された一対の略円弧形ブロック形状とされている。
【0033】
要するに、第一の本体ゴム弾性体38と第二の本体ゴム弾性体40からなる本体ゴム弾性体16が、外筒金具14と共に一体加硫成形されて、外筒金具14の第一及び第二テーパ内周面34,36に加硫接着されていることに基づき、外筒金具14を備えた一体加硫成形品として構成されている。
【0034】
特に本実施形態では、外筒金具14の外周面が、軸方向両端部分を周方向に延びる一対の環状圧入面44,44と、一対の環状圧入面44,44の間に跨って軸方向に延びる複数の直線状圧入面46とを備えた圧入外周面48とされている。この圧入外周面48は、例えば、外筒金具14をダイカスト成形する際に、第一テーパ内周面34や第二テーパ内周面36と径方向で対向位置せしめられた円筒状の外周面に複数の肉抜凹所50を形成することで、好適に実現され得る。
【0035】
すなわち、肉抜凹所50は、その軸方向両端縁部が外筒金具14の軸方向両端縁部よりもそれぞれ軸方向内方に位置せしめられて、周方向に略一定の軸方向寸法で延びており、円筒状の外周面に対して略矩形状に開口せしめられた形態を有している。かかる肉抜凹所50の複数が外筒金具14の周方向に等間隔に形成されている。
【0036】
これにより、外筒金具14の各軸方向端縁部と各肉抜凹所50の軸方向端縁部との間には、それぞれ略一定の軸方向寸法で周方向に連続して延びる環状圧入面44が形成されており、これら環状圧入面44,44が、圧入外周面48の軸方向両端部分を構成している。また、周方向でそれぞれ隣り合う各一対の肉抜凹所50,50の周方向端縁部の間には、略一定の周方向寸法で軸方向に連続して延びる直線状圧入面46が形成されており、各直線状圧入面46の軸方向端部が各環状圧入面44と略直交するように接していることによって、各直線状圧入面46が一対の環状圧入面44,44の間に跨って軸方向に延びている。本実施形態では、肉抜凹所50の複数が外筒金具14の周方向に等間隔に形成されていることに基づき、直線状圧入面46の複数も外筒金具14の周方向に等間隔に形成されている。
【0037】
換言すれば、外筒金具14の圧入外周面48において、一対の環状圧入面44,44と周方向でそれぞれ隣り合う各一対の直線状圧入面46,46とに囲まれた領域には、外周面に開口する肉抜凹所50が形成されており、これら一対の環状圧入面44,44や複数の直線状圧入面46、複数の肉抜凹所50の開口面を含んで、円筒状の外周面が構成されているのである。加えて、本実施形態の外筒金具14においては、内周面の全体が第一及び第二テーパ内周面34,36によって径方向内方に凸となる屈曲形状を有していると共に、特に、各肉抜凹所50の底面が外筒金具14の当該内周面に沿った屈曲形状を有していることによって、外筒金具14の径方向内側部分が、軸方向略中央部分が細く狭められた薄肉筒状の括れ筒状部52により構成されている。また、外筒金具14における括れ筒状部52の軸方向両端部間には、括れ筒状部52の外周面から径方向外方に立ち上がって直線状圧入面44を外周面とし且つ軸方向両端部が括れ筒状部52の軸方向両端部に連結されてなる薄板状の竪リブ状部54の複数により構成されている。即ち、本実施形態の外筒金具14は、周方向に等間隔に形成された複数の竪リブ状部54によって、括れ筒状部52の強度が補われた構造を呈している。なお、図1,7にも示されているように、括れ筒状部52の軸方向端部は外フランジ状のリブを備えた厚肉構造とされていることで補強されており、かかる軸方向端部における径方向外方への突出先端面によって環状圧入面44が構成されている。
【0038】
また、本実施形態では、外筒金具14の肉抜凹所50の中央底面、即ち括れ筒状部52の軸方向略中央部分の外周面から径方向外方に向かって横リブ状部56が突設されている。横リブ状部56は、外筒金具14のダイカスト成形によって括れ筒状部52や竪リブ状部54と共に一体形成されて、径方向外方に向かって周方向寸法が大きくなる略円弧板形状を有しており、その径方向内周縁部が括れ筒状部52と接していると共に、周方向両端縁部が各竪リブ状部54の軸方向略中央部分の周方向端部と接している。これにより、周方向でそれぞれ隣り合う各一対の竪リブ状部54,54が、横リブ状部56を介して相互に連結せしめられている。
【0039】
特に本実施形態では、横リブ状部56の径方向外周面が、外筒金具14の中心軸を中心とする円に沿って略円弧状に湾曲していると共に、外筒金具14の圧入外周面48を構成する環状圧入面44や直線状圧入面46よりも径方向内方に位置せしめられている。即ち、本実施形態の横リブ状部56は、括れ筒状部52の軸方向両端部や竪リブ状部54よりも径方向内方に控えるようにして外筒金具14に形成されている。また、括れ筒状部52や竪リブ状部54、横リブ状部56の各厚さ寸法が、略同じとされている。
【0040】
このような外筒金具14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20からなる内筒金具12を組み付けるに際しては、第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20が外筒金具14の軸方向両側から差し入れられて、それぞれ外筒金具14の軸方向中央に向かって変位せしめられる。そして、第一の本体ゴム弾性体38の内周面が第一の内側筒金具18の第一テーパ外周面24に重ね合わせられて、第一の内側筒金具18が外筒金具14の軸方向中央に向かって更に変位せしめられることにより、第一の本体ゴム弾性体38が、第一の内側筒金具18の第一テーパ外周面24と外筒金具14の第一テーパ内周面34の間で圧縮変形せしめられている。一方、第二の本体ゴム弾性体40の内周面が第二の内側筒金具20の第二テーパ外周面30に重ね合わせられて、第二の内側筒金具20が外筒金具14の軸方向中央に向かって更に変位せしめられることに基づき、第二の本体ゴム弾性体40が、第二の内側筒金具20の第二テーパ外周面30と外筒金具14の第二テーパ内周面36の間で圧縮変形せしめられている。
【0041】
また、第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20が外筒金具14の軸方向両側から差し入れられることで軸方向で相互に接近する方向に変位せしめられることに伴い、第二の内側筒金具20の差し入れ方向の先端に位置する圧入固定部26が第一の内側筒金具18に圧入固定されている。圧入固定部26の上端面が第一の内側筒金具18の内フランジ状部22の下端面に重ね合わされていることで、第二の内側筒金具20の第一の内側筒金具18への圧入端が規定されている。その結果、第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20が軸方向で相互に連結固定されて、一体的な内筒金具12が構成されている。
【0042】
また、内筒金具12が構成されると共に、第一の本体ゴム弾性体38と第二の本体ゴム弾性体40が第一テーパ内外周面24,34と第二テーパ内外周面30,36の間にそれぞれ圧縮変形せしめられる状態が保持されている。即ち、第一及び第二の内側筒金具18,20を軸方向で相互に接近せしめる方向に圧縮変形せしめられた第一の本体ゴム弾性体38と第二の本体ゴム弾性体40の各弾性作用に起因して、第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20には、軸方向で相互に離隔変位せしめる方向に作用力が及ぼされることとなるが、第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20における軸方向の圧入固定力が当該作用力に比して充分に大きくされていることに基づき、第一及び第二の内側筒金具18,20が軸方向で相互に離隔変位せしめられることが回避される。
【0043】
それによって、内筒金具12と外筒金具14における第一テーパ内外周面24,34と第二テーパ内外周面30,36の各対向面間には、第一及び第二の内側筒金具18,20を軸方向で相互に接近せしめる方向に予圧縮が及ぼされた第一の本体ゴム弾性体38と第二の本体ゴム弾性体40が介装されており、これら第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40からなる本体ゴム弾性体16を介して、内筒金具12と外筒金具14が相互に弾性連結されているのである。特に、内筒金具12と外筒金具14には、第一及び第二テーパ内外周面24,30,34,36のテーパ作用に基づいて、両金具12,14が互いに略同心状に位置せしめられるセンタリング機能がはたらいている。
【0044】
また、内筒金具12の第一及び第二テーパ外周面24,30が第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40の内周面に当接されることによって、外筒金具14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品における第一及び第二溝部42a,42bの径方向内方への開口部が、内筒金具12の第一及び第二テーパ外周面24,30で覆蓋されている。本実施形態では、これら第一及び第二溝部42a,42bと、内筒金具12の第一及び第二テーパ外周面24,30において第一及び第二溝部42a,42bの径方向開口部を覆蓋せしめる部分と、内筒金具12と外筒金具14の軸方向略中央における径方向対向面間において第一の本体ゴム弾性体38の各第一溝部42aと第二の本体ゴム弾性体40の各第二溝部42bが軸方向で対向位置せしめられる部分とが協働して、マウント10の中心軸を挟んだ径方向一方向(図1中、紙面方向)において第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40からなる本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通して延びる一対のすぐり部が形成されている。その結果、一対のすぐり部が形成された径方向一方向のばね定数が、かかる径方向一方向に直交する方向(図1中、左右)のばね定数に比して十分に小さくされている。
【0045】
特に本実施形態では、自動車用サスペンションメンバマウント10の中心軸に対してテーパ面の母線が傾斜する角度で表されるテーパ角度に関して、第一テーパ外周面24のマウント10(第一の内側筒金具18)の中心軸に対するテーパ角度と第一テーパ内周面34のマウント10(外筒金具14)の中心軸に対するテーパ角度が略同じとされて、第一テーパ外周面24が第一テーパ内周面34に対応した形状とされていると共に、第二テーパ外周面30のマウント10(第二の内側筒金具20)の中心軸に対するテーパ角度と第二テーパ内周面36のマウント10(外筒金具14)の中心軸に対するテーパ角度が略同じとされて、第二テーパ外周面30が第二テーパ内周面36に対応した形状とされている。更に、これら第一テーパ内外周面24,34のテーパ角度と第二テーパ内外周面30,36のテーパ角度が略同じとされている。また、第一の本体ゴム弾性体38と第二の本体ゴム弾性体40におけるゴムボリュームが、略同じとされている。
【0046】
このような構造とされた自動車用サスペンションメンバマウント10においては、自動車への装着に際して、外筒金具14がブラケット金具58に固定される。ブラケット金具58は、図9にも示されているように、大径の円筒形状を有しており、内周面が軸方向に円筒状に延びる装着孔60とされている。即ち、本実施形態では、装着孔60の全体が円筒内周面とされている。また、ブラケット金具58の下端部には、内フランジ状部62が一体形成されている。かかるブラケット金具58の装着孔60に対して軸方向上方から外筒金具14の圧入外周面48が圧入されて、外筒金具14の下端部がブラケット金具58の内フランジ状部62付近に位置せしめられ乃至は内フランジ状部62に軸方向で重ね合わされることで、外筒金具14がブラケット金具58に固定されている。このブラケット金具58がサスペンションメンバに装着乃至は形成されていることによって、外筒金具14がサスペンションメンバに取り付けられている。
【0047】
特に、本実施形態における外筒金具14のブラケット金具58への圧入では、圧入外周面48の下端を構成する環状圧入面44から装着孔60に圧入されて、次いで圧入外周面48の周方向に等間隔に設けられた各直線状圧入面46も下方から上方に向かって装着孔60に圧入される。また、外筒金具14の下端部がブラケット金具58の所定の位置に位置せしめられて圧入端が規定された状態では、圧入外周面48の上端を構成する環状圧入面44が、装着孔60よりも上方に位置せしめられており、即ち装着孔60に対して圧入されない形態を有している。特に、かかる圧入固定に基づき、圧入外周面48の下端の環状圧入面44が全周に亘って装着孔60と密接されていることによって、外筒金具14の外周面に開口する各肉抜凹所50の下方開口部が、環状圧入面44と装着孔60の内周面で閉塞せしめられている。また、外筒金具14における各横リブ状部56の外周面が、圧入外周面48よりも何れも径方向内方に位置せしめられているため、装着孔60に圧入されておらず、装着孔60の内周面と径方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
【0048】
また、車両ボデー64の一部乃至は車両ボデー64に取り付けられる取付部材において内筒金具12の目的とする固定位置には、挿通孔66が貫設されており、この挿通孔66の周りに対して下方から内筒金具12における第一の内側筒金具18の上端部が重ね合わされている。また、下端面に開口する螺子穴68を備えた長軸状の固定ナット70が、車両ボデー64の上方から挿通孔66を通じて第一の内側筒金具18の内フランジ状部22の内孔および第二の内側筒金具20の圧入固定部26の内孔に挿通せしめられている。また、固定ナット70の軸方向中間部分には、軸直角方向外方に広がる鍔状部72が一体形成されて、該鍔状部72が車両ボデー64の上方から挿通孔66の周りに重ね合わされている。これにより、固定ナット70の自動車用サスペンションブッシュ10への挿入端が規定されて、固定ナット70の下端面が、内筒金具12における第二の内側筒金具20の段部32よりも上方に所定距離を隔てて位置せしめられている。また、長軸状の固定ボルト74が、内筒金具12の第二の内側筒金具20の下方から内挿されて、固定ボルト74の内挿方向の先端部分(上端部)の螺子部が、固定ナット70の内挿方向の先端面(下端面)に開口する螺子穴68にねじ込まれており、固定ボルト74の頭部が第二の内側筒金具20の段部32に重ね合わされていることによって、固定ボルト74の固定ナット70への軸方向のねじ込み端が規定されている。その結果、第一及び第二の内側筒金具18,20が、車両ボデー64を介した固定ナット70の鍔状部72と固定ボルト74の頭部の間で軸方向に挟み込まれるように固定されて、内筒金具12が車両ボデー64に固定されている。
【0049】
これにより、自動車用サスペンションメンバマウント10が車両ボデー64とサスペンションメンバの間に介装されて、自動車に装着されることとなり、サスペンションメンバが自動車用サスペンションメンバ10を介して車両ボデー64に対して防振支持せしめられている。このような自動車への装着状態下、マウント10の軸方向が車両上下方向(図9中、上下方向)とされ、また一対のすぐり部が対向位置せしめられた径方向一方向が車両前後方向(図9中、紙面方向)とされていると共に、該径方向一方向に直交する方向が車両左右方向(図9中、左右方向)とされている。
【0050】
なお、本実施形態の自動車用サスペンションメンバマウント10では、第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20を相互に固定する固定手段として、第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20の圧入固定部26による圧入固定構造が採用されており、特に、自動車用サスペンションメンバマウント10が自動車に装着される前の単体状態で、第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20が相互に接近変位せしめられて圧入固定されていることによって、かかる固定力を利用して第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40からなる本体ゴム弾性体16に目的とする予圧縮が及ぼされて、自動車用サスペンションメンバマウント10が構成されている。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものでなく、例えば、自動車用サスペンションメンバマウントの自動車への装着に際して、外筒金具が装着孔に圧入固定される工程と、第二の内側筒金具の圧入固定部が第一の内側筒金具に圧入固定される工程とを順不同に実施して、自動車用サスペンションメンバマウントが自動車への装着と同時に構成されるようにしても良い。また、第一の内側筒金具と第二の内側筒金具を圧入固定して所定の予圧縮力を本体ゴム弾性体に及ぼし、更に、自動車への装着に際して、内筒金具と外筒金具が相対的に変位せしめられることに伴い、本体ゴム弾性体に更に予圧縮を及ぼすことも可能である。即ち、後者の場合には、図1 に示される如き内筒金具と外筒金具が本体ゴム弾性体を介して弾性連結されたものが組付体となり、かかる組付体が自動車に装着されることによって、装着と同時に、本体ゴム弾性体に目的とする予圧縮力を及ぼした自動車用サスペンションメンバマウントが構成されることとなる。
【0051】
本実施形態の自動車用サスペンションメンバマウント10においては、内筒金具12と外筒金具14が軸方向両側から中央に向かって小径化する一対のテーパ筒形の本体ゴム弾性体38,40によって弾性連結されていることから、テーパ面による内筒金具12と外筒金具14のセンタリング作用が発揮される。これにより、フルブレーキング時や急加速時等において、テーパ面によるセンタリング作用に基づいて車両挙動を安定せしめる向上効果が図られ得る。
【0052】
そこにおいて、本実施形態では、内筒金具12と外筒金具14を相互に弾性連結する第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40が、外筒金具14の第一及び第二テーパ内周面34,36に加硫接着されている。また、内筒金具12が第一の内側筒金具18と第二の内側筒金具20を含んでなる分割構造とされて、第一及び第二の内側筒金具18,20が外筒金具14の軸方向両側から差し入れられて相互に連結固定されることに伴い、第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40の各内周面が第一及び第二テーパ外周面24,30に当接せしめられることで、内筒金具12と外筒金具14が第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40を介して相互に弾性連結されている。これにより、テーパ内周面とテーパ外周面を備えた一対の金具の対向面間に本体ゴム弾性体16を加硫成形する必要がなくなることから、本体ゴム弾性体16の型抜き構造が簡単とされると共に、本体ゴム弾性体16や内筒金具12、外筒金具14の設計自由度が大きく確保される。
【0053】
また、車両前後方向と左右方向のばね特性をチューニングする一対のすぐり部が、第一及び第二溝部42a,42bを含んで構成されている。ここで、第一及び第二溝部42a,42bは、外筒金具14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品において、本体ゴム弾性体16における外筒金具14のテーパ内周面34,36からの突出高さを抑えることで形成されるようになっていることから、前述の本体ゴム弾性体16の型抜き構造の簡単化と相俟って、第一及び第二溝部42a,42bの設計自由度が飛躍的に向上され得る。その結果、例示の如く、すぐり部が外筒金具14のテーパ内周面34,36と内筒金具12のテーパ外周面24,34の対向面間において第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40を固着及び当接しない部分を含んで構成される態様も採用され得、それによって、すぐり部を本体ゴム弾性体に直接に貫通形成する場合に比して、本体ゴム弾性体におけるすぐり部の形成部位の応力集中が低減されることに基づき、耐久性の向上が図られ得る。
【0054】
また、外筒金具14の外周面が外観円筒状の圧入外周面48とされていることによって、サスペンションメンバへの装着孔60に例示の如き円筒状が採用されて、装着孔60の軸方向一方の側からの圧入固定が実現され得るのであり、その結果、外筒金具14がテーパ内周面34,36を備えつつも、外筒金具14のサスペンションメンバへの取付け構造が簡単化され得る。
【0055】
さらに、本実施形態では、第一及び第二の内側筒金具18,20が外筒金具14の軸方向両側から差し入れられて軸方向で相互に固定されることで内筒金具12が構成されると共に、第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40の内周面が第一及び第二テーパ外周面24,30に当接せしめられる。その際に、これら第一及び第二の内側筒金具18,20の軸方向の組み付け力を利用して、第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40が第一及び第二テーパ外周面24,30に押し付けられることで、第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40に予圧縮力が及ぼされている。その結果、自動車用サスペンションメンバマウント10の自動車への装着作業と同時に、本体ゴム弾性体16に予圧縮力を過剰にかける必要もなくなり、装着作業が容易となる。
【0056】
それ故、本実施形態の自動車用サスペンションメンバマウント10によれば、ばね特性の設計自由度が大きく確保されて、優れた車両乗り心地や操縦安定性等が得られることに加え、テーパ筒状の第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40を備えたマウント10の製造や自動車への装着作業が容易とされ得るのである。
【0057】
特に本実施形態においては、外筒金具14の圧入外周面48に複数の肉抜凹所50が形成されて、圧入外周面48が複数の直線状圧入面46と環状圧入面44とにより構成されていることで、圧入外周面48の装着孔60に対する当接面積が小さくされることから、圧入に要する荷重が低減されて、外筒金具14の装着孔60への圧入作業が一層容易になる。
【0058】
また、直線状圧入面46を備えた竪リブ状部54の複数が、それらの周方向間に設けられた横リブ状部56で相互に連結された形態を有していることによって、肉抜凹所50を形成して外筒金具14の厚さ寸法が小さくされつつも、強度が好適に確保され得て、外筒金具14のサスペンションメンバへの取付け安定性が向上され得る。これにより、直線状圧入面46や環状圧入面44の幅寸法を一層小さく設計することも可能となり、圧入作業の更なる容易化が図られ得る。
【0059】
さらに、外筒金具14がダイカスト品にて形成されていることから、第一及び第二テーパ内周面34,36や環状圧入面44、直線状圧入面46等の複数面を備えた比較的に複雑な形状の外筒金具14を形成するに際しても、製造作業の容易に基づく大量生産が図られ得ることに加え、寸法精度や強度の向上が高いレベルで実現され得る。しかも、外筒金具14において、それら複数面を形成するために、それぞれ厚さ寸法の小さな括れ筒状部52や竪リブ状部54、横リブ状部56が構成されており、且つそれらの厚さ寸法が全体に亘って略同じとされていることから、ダイカスト品における巣の発生が好適に抑えられて、高い寸法精度が実現され得るのである。
【0060】
加えて、横リブ状部56の径方向外周面が、環状圧入面44や直線状圧入面46からなる圧入外周面48よりも径方向内方に位置せしめられていることにより、圧入外周面48の装着孔60に対する当接面積の増大が抑えられて、圧入作業の容易化が図られつつ、横リブ状部56による外筒金具14の強度向上が達成され得るのである。
【0061】
もっとも、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、本発明の第二の実施形態としての自動車用サスペンションメンバマウントに用いられる外筒金具14が図10にも示されているように、要求される外筒金具14の強度や製作性、装着孔60への圧入作業性等に応じて、横リブ状部56の径方向外周面が、環状圧入面44や直線状圧入面46と同じ径方向位置に位置せしめられて、横リブ状部56の周方向両側に位置する竪リブ状部54の直線状圧入面46を相互に連結する中央環状圧入面76とされて、外筒金具14の圧入外周面48の一部を構成するようにしても良い。また、中央環状圧入面76は、周方向に連続して延びていても良いし、或いは本実施形態の如く中央環状圧入面76の周上の適当な箇所(本実施形態では中央環状圧入面76の周方向略中央部分)に径方向外方に開口する切欠き状の凹所78が形成されることによって、圧入外周面48と装着孔60の当接面積の増大を抑えることも可能である。なお、かかる第二の実施形態や以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の構造とされた部材及び部位については、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0062】
また、例えば、本発明の第三の実施形態としての自動車用サスペンションメンバマウント80が図11にも示されているように、第一及び第二の内側筒金具18,20の第一及び第二テーパ外周面24,30において、第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40の内周面が当接される部分よりも軸方向外方に位置して、それぞれ位置決め突部82,84が形成されても良い。これら位置決め突部82,84は、第一及び第二テーパ外周面24,30から径方向外方に向かって軸方向寸法が小さくなる略三角状の軸方向断面で、周方向に所定の長さで延びており、第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40の軸方向外方に位置せしめられている。特に、位置決め突部82,84において第一及び第二テーパ外周面24,30の各軸方向内側に位置せしめられる基端部分から径方向外方の突出先端部分に至る外周面が、第一及び第二の内側筒金具18,20の各中心軸に対して傾斜せしめられていると共に、それら傾斜角度が、第一及び第二テーパ外周面24,30の各テーパ角度に比して大きくされている。本実施形態では、第一及び第二の本体ゴム弾性体38,40の軸方向外側端部が位置決め突部82,84に当接されることで、当該端部が軸方向外方に過大に突出することが抑えられることから、かかる突出に起因するばね特性の変化や耐久性低下等の不具合が好適に解消され得る。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0064】
例えば、前記実施形態では、第二の内側筒金具20の圧入固定部26が第一の内側筒金具18に圧入固定されることで第一及び第二の内側筒金具18,20が相互に固定される固定手段を備えていたが、ボルトや溶接、リベット等で固定手段を構成しても良い。
【0065】
また、例えば、第一の内側筒金具と第二の内側筒金具を圧入固定せずに、自動車への装着状態で、両金具を軸方向に重ね合わせると共に、両金具の内孔に挿通せしめられた固定ボルト等で相互に固定することも可能であり、前記実施形態の如く、自動車への装着前に第一及び第二の内側筒金具が相互に固定され得る固定手段は、必須の構成要件でない。
【0066】
また、前記実施形態では、外筒金具14の環状圧入面44や直線状圧入面46が、略同じ幅寸法で周方向や軸方向に延びていたが、これら環状圧入面や直線状圧入面の幅寸法が変化せしめられたり、環状圧入面や直線状圧入面が周方向や軸方向に対して傾斜して延びていても良い。更に、前記実施形態では、一対の環状圧入面44,44や複数の直線状圧入面46が、それぞれ同じ形状や大きさとされていたが、それぞれ異ならせることも可能である。更にまた、外筒金具14の周方向に等間隔に形成されていた直線状圧入面46を不等間隔にしたり、外筒金具14の軸方向略中央部分に形成されていた横リブ状部56を軸方向一方の側に偏倚した位置に設けたり、複数の横リブ状部56を軸方向で異なる位置に設けることも可能である。
【0067】
また、前記実施形態では、第一の本体ゴム弾性体38のゴムボリュームと第二の本体ゴム弾性体40のゴムボリュームが互いに略同じとされていたが、例えば、一方のゴムボリュームを他方のゴムボリュームに比して大きくして、この大きくされた側の本体ゴム弾性体が初期荷重の圧縮作用側となるように、自動車に装着されることによって、初期荷重と振動荷重によって比較的に大きな荷重を受け易い側の本体ゴム弾性体の耐久性が向上されるようにしても良い。
【0068】
また、例えば、第一及び第二の本体ゴム弾性体における内筒金具の第一及び第二テーパ外周面への当接面積を有効に確保するために、周方向に所定幅で広がる平坦面を軸方向全長に亘って内筒金具の第一及び第二テーパ外周面に形成し、この平坦面に第一及び第二本体ゴム弾性体の内周面の一部を当接させるようにしても良い。
【0069】
また、特許文献3(特開2004−239375号公報)にも示されているように、車両ボデーとブラケット金具の軸方向の対向面間に緩衝ゴムを設けたり、ブラケット金具から下方に突出する内筒金具の先端部分に軸直角方向に鍔状部を設けると共に、鍔状部とブラケット金具の軸方向対向面間に緩衝ゴムを設けたりして、軸方向に振動が入力されて、内筒金具と外筒金具が相対的に変位する際に、車両ボデーとブラケット金具が緩衝ゴムを介して打ち当たらせたり、または鍔状部とブラケット金具が緩衝ゴムを介して打ち当たらせたりすることによって、内筒金具と外筒金具の相対的な変位が、緩衝的に制限されるようにしても良い。
【0070】
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用サスペンションメンバマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用エンジンマウントやボデーマウント、デフマウント、サスペンションブッシュ、その他の自動車に装着される各種の筒形防振装置に対して適用可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第一の実施形態としての自動車用サスペンションメンバマウントの縦断面図。
【図2】同自動車用サスペンションメンバマウントの一部を構成する第一の内側筒金具の縦断面図。
【図3】同第一の内側筒金具の底面図。
【図4】同自動車用サスペンションメンバマウントの一部を構成する第二の内側筒金具の縦断面図。
【図5】同第二の内側筒金具の底面図。
【図6】図自動車用サスペンションメンバマウントの一部を構成する外筒金具の平面図。
【図7】図6のVII−VII断面図。
【図8】同外筒金具の斜視図。
【図9】同自動車用サスペンションメンバマウントを自動車に組み付けた状態を示す縦断面図。
【図10】本発明の第二の実施形態としての自動車用サスペンションメンバマウントの一部を構成する外筒金具の斜視図。
【図11】本発明の第三の実施形態としての自動車用サスペンションメンバマウントの縦断面図。
【符号の説明】
【0072】
10:自動車用サスペンションメンバマウント、12:内筒金具、14:外筒金具、16:本体ゴム弾性体、18:第一の内側筒金具、20:第二の内側筒金具、24:第一テーパ外周面、30:第二テーパ外周面、34:第一テーパ内周面、36:第二テーパ内周面、38:第一の本体ゴム弾性体、40:第二の本体ゴム弾性体、42a:第一溝部、42b:第二溝部、48:圧入外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒内周面を有する装着孔に圧入固定される圧入外周面と軸方向両端開口部分から軸方向中央部分に向かってそれぞれ次第に小径化するテーパ内周面とを有するアウタ筒部材を備えており、該アウタ筒部材の軸方向両側の該テーパ内周面に対してそれぞれ本体ゴム弾性体が加硫接着されており、該本体ゴム弾性体には、軸方向両側の該テーパ内周面上で径方向に対向位置する部分において該テーパ内周面から径方向内方への突出高さがそれぞれ小さくされたばね調節用の対向凹所が形成されている一方、該アウタ筒部材には、軸方向両側の該テーパ内周面に対応したテーパ外周面を備えたインナ分割体が軸方向両側から挿し入れられて、それらのインナ分割体が相互に固定されることによってインナ軸部材が構成されるようになっており、該インナ軸部材を構成する各該インナ分割体の該テーパ外周面がそれぞれ該本体ゴム弾性体の内周面に当接せしめられることによって該インナ軸部材が該アウタ筒部材に対して該本体ゴム弾性体を介して弾性連結されていることを特徴とする自動車用筒形防振装置。
【請求項2】
前記一対のインナ分割体が相互に固定される固定手段が設けられている請求項1に記載の自動車用筒形防振装置。
【請求項3】
前記アウタ筒部材の前記圧入外周面は、軸方向両端部分を周方向に延びる一対の環状圧入面と、周上の複数箇所において該一対の環状圧入面の間に跨って軸方向に延びる直線状圧入面とを備えており、且つ、それら一対の環状圧入面および複数の直線状圧入面に囲まれた領域には、該圧入外周面に開口する肉抜凹所が形成されている請求項1又は2に記載の自動車用筒形防振装置。
【請求項4】
前記アウタ筒部材には、軸方向中央部分において周方向に延びて、前記複数の直線状圧入面を相互に連結する中央環状圧入面が設けられている請求項3に記載の自動車用筒形防振装置。
【請求項5】
前記インナ分割体の前記テーパ外周面には、前記本体ゴム弾性体の当接領域の軸方向外側端部に位置して、傾斜角度が大きくされて周方向に延びる段差状の位置決め部が形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の自動車用筒形防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−216135(P2009−216135A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58292(P2008−58292)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】