説明

薄膜トランジスタ基板の製造方法

【課題】透明導電膜にピンホール等の欠陥が生じたとしても金属導電膜の腐食を抑制し、透明導電膜と金属導電膜との間の導通を確実にとることが可能な薄膜トランジスタ基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属導電膜としてのゲート端子121、ドレイン端子122上にOC−SiN膜109を形成し、ゲート端子121及びドレイン端子122が露出するようにコンタクトホールを形成し、コンタクトホールを介してゲート端子121及びドレイン端子122に接触するようにITO膜を成膜してパターニングし、ITO膜に対して酸化膜形成処理を行う。これにより、ITO膜にピンホール等の欠陥が発生していた場合には、欠陥を介してITO膜下のゲート端子121ドレイン端子122の一部が酸化されて酸化膜が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられる薄膜トランジスタ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の液晶表示装置は、画素基板と対向基板との間に液晶層が介在されて構成される。このうち、画素基板においては、金属導電膜からなるゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を有する薄膜トランジスタ(TFT)が形成される。このTFTのソース電極(或いはドレイン電極)は、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜からなる画素電極に接続されている。また、対向基板においては、ガラス等の透明基板上にITO等の透明導電膜からなる対向電極が形成されている。
【0003】
近年、画素基板の製造工程数の削減等を目的として、薄膜トランジスタが形成される画素基板(薄膜トランジスタ基板)の最上層に画素電極を形成する、所謂トップITO構造と呼ばれる薄膜トランジスタ基板についての提案が各種なされている(例えば特許文献1)。このようなトップITO構造において、多層に引き回された配線間の電気的接続を確保する場合、異なる層間を貫通するようにコンタクトホールを形成し、コンタクトホールを介して基板上の異なる層に引き回された配線間(例えば、ソース(ドレイン)電極−画素電極間)の導電接続を行うようにしている。また、このような構造では、画素電極等の透明導電膜が、その下層の金属導電膜(ソース(ドレイン)電極)を腐食等から保護する保護膜としても機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−157917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1等のような構造を有する薄膜トランジスタ基板において、金属導電膜の上層に形成されている透明導電膜にピンホール(細孔)等の欠陥が発生すると、例えば、透明導電膜のパターニングの際や製品出荷後の薄膜トランジスタ基板の使用中において、水分等の不純物が欠陥から金属導電膜の表面にまで浸入し、それに起因して金属導電膜が腐食される可能性があり得る。このような金属導電膜の腐食が発生すると、透明導電膜と金属導電膜との間で導通異常が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、透明導電膜にピンホール等の欠陥が生じたとしても金属導電膜の腐食を抑制し、透明導電膜と金属導電膜との間の導通を確実にとることが可能な薄膜トランジスタ基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された本発明の薄膜トランジスタ基板の製造方法は、金属からなる第1の導電膜上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜に、前記第1の導電膜が露出するようにコンタクトホールを形成する工程と、前記コンタクトホールを介して前記第1の導電膜に接触するように、前記金属とは異なる材料からなる第2の導電膜を前記第1の導電膜上及び前記絶縁膜上に成膜する工程と、前記金属が酸化する所定の処理を前記第2の導電膜に施す工程と、を有すること、を特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記所定の処理は、O水溶液を塗布する処理であること、を特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記所定の処理は、プラズマ処理であること、を特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記所定の処理を前記第2の導電膜に施す工程では、前記第1の導電膜のうち、前記第2の導電膜から露出した領域に酸化膜が形成されること、を特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記所定の処理を前記第2の導電膜に施す工程では、前記コンタクトホールの形成領域に対応する前記第2の導電膜に発生したピンホールから露出した前記第1の導電膜に酸化膜が形成されること、を特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記コンタクトホールを形成する工程に次いで、前記コンタクトホールを形成するために前記絶縁膜に行ったパターニングによって前記第1の導電膜に形成された変質層を除去する工程をさらに有すること、を特徴とするものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記変質層を除去する工程は、HNO、HCl、HOの混合溶液によって行われること、を特徴とするものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記第1の導電膜は、薄膜トランジスタに信号を供給するためのゲート駆動部に設けられたゲート端子又はドレイン駆動部に設けられたドレイン端子を形成していること、を特徴とするものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1乃至7の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記第1の導電膜は、薄膜トランジスタのドレイン電極又はソース電極を形成していること、を特徴とするものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項8に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記所定の処理を施す工程に次いで、前記第2の導電膜をパターニングして端子保護膜を形成する工程をさらに有すること、を特徴とするものである。
【0017】
請求項11の発明は、請求項9に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記所定の処理を施す工程に次いで、前記第2の導電膜をパターニングして画素電極を形成する工程をさらに有すること、を特徴とするものである。
【0018】
請求項12の発明は、請求項1乃至11の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記金属とは、Al、Al合金、Mo、Mo合金、Cr又はCr合金の何れかであること、を特徴とするものである。
【0019】
請求項13の発明は、請求項1乃至12の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、前記第2の導電膜は、ITOからなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、透明導電膜にピンホール等の欠陥が生じたとしても金属導電膜の腐食を抑制し、透明導電膜と金属導電膜との間の導通を確実にとることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ基板を有してなる液晶表示パネルの概略構成を示す図である。
【図2】TFT部の製造工程を示した図1のII−II切断線からみた拡大断面図である。
【図3】端子部の製造工程を示した図1のIII−III切断線及びIII’−III’切断線からみた拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の効果について説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態における薄膜トランジスタ基板の製造方法の変形例を示す図である。
【図6】多数の金属導電膜が積層されている場合への本発明の一実施形態の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ基板を有してなる液晶表示パネルの概略構成を示す図である。
【0023】
図1に示す液晶表示パネルは、画素基板と対向基板との間に液晶が介在されて構成されている。
【0024】
薄膜トランジスタ基板の例としての画素基板には、複数のゲート電極線Gと複数のドレイン電極線Dとが交差するように延伸配設されている。そして、ゲート電極線Gとドレイン電極線Dとの各交点に対応した位置には画素電極Pixが配置されている。画素電極Pixは、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜で構成されており、図1の拡大図1で示すようにして、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)のソース電極Sに接続されている。
【0025】
ここで、本実施形態における画素基板はトップITO構造を有している。トップITO構造とは、多層基板の最上層に導電膜としてのITOを形成してなる構造である。このようなトップITO構造において、画素電極Pixとソース電極SとはコンタクトホールH1を介して導電接続される。
【0026】
また、対向基板は、画素基板と対向するように配置されている。この対向基板にはコモン電極COMが形成されている。画素基板と対向基板とは図示しないシール材によって接着され、またこのシール材によって画素基板と対向基板との間から液晶が漏れ出さないように封止されている。
このようにして画素電極Pixとコモン電極COMと画素電極Pix及びコモン電極の間に介在する液晶層とによって1つの表示画素PIXが構成されている。
【0027】
ドレイン電極線Dは、表示画素PIXが2次元配列されてなる液晶表示パネルの表示部から引き回され、図示しないドレインドライバ(ドレイン駆動部)に接続されている。ドレイン電極線Dとドレインドライバとを接続する端子部(ドレイン端子部)には、図1の拡大図2で示すようにしてドレイン電極線Dを露出させるための開口H2が形成されている。この開口H2を介して端子部にはドレイン電極線Dの表面を保護するための端子保護膜としてのITOが形成されている。
【0028】
ゲート電極線Gは、表示画素PIXが2次元配列されてなる液晶表示パネルの表示部から引き回され、図示しないゲートドライバ(ゲート駆動部)に接続されている。ゲート電極線Gとゲートドライバとを接続する端子部(ゲート端子部)には、図1の拡大図3で示すようにしてゲート電極線Gを露出させるための開口H3が形成されている。この開口H3を介して端子部にはゲート電極線Gの表面を保護するための端子保護膜としてのITOが形成されている。
【0029】
以下、本実施形態における薄膜トランジスタ基板としての画素基板の製造方法について説明する。図2〜図5は、本実施形態に係る薄膜トランジスタ基板としての画素基板の製造方法について示した図である。なお、図2はTFT部の製造工程を示した図1のII−II切断線からみた拡大断面図である。図3は端子部の製造工程を示した図1のIII−III切断線及びIII’−III’切断線からみた拡大断面図である。本実施形態の製造方法において製造されるTFTは、逆スタガ構造(ゲート電極を下層側に、ドレイン電極及びソース電極を上層側に形成してなる構造)のTFTである。
【0030】
まず、第1工程として、透明基板(ガラス基板)100上にスパッタ法を用いて金属導電膜を成膜する。この金属導電膜としては、例えばCr(クロム)又はその合金、Mo(モリブデン)又はその合金、Al(アルミニウム)又はその合金の何れかが考えられる。その後、ガラス基板100上の金属導電膜にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィー法により各種電極パターンを形成する。例えばドライエッチングにより、フォトレジストが塗布されていない部分の金属薄膜が除去されて所定のパターンの電極が形成される。
【0031】
このような第1工程により、図2(a)、図3(a)に示すようにして、ゲート電極101、ゲート端子121がそれぞれ形成される。なお、図2(a)、図3(a)においては、ゲート電極101と、ゲート端子121とがそれぞれ分離されているかのように図示されているが、実際にはこれらは図1に示したように連続してパターン形成されるものである。また、図示は省略しているが、第1工程により、ゲート電極101とゲート端子121とを接続するゲート電極線Gも、ゲート電極101、ゲート端子121とともに一体的に形成される。
【0032】
次に、第2工程として、例えばプラズマCVD法により、例えばG−SiN膜(ゲート絶縁膜用窒化シリコン膜)と、i−Si膜(中性のアモルファスシリコン膜)と、BL−SiN膜(チャネル保護用窒化シリコン膜)とを連続成膜する。その後、BL−SiN膜上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィー法によりBL−SiN膜を所定のパターンに加工する。
【0033】
このような第2工程により、図2(b)、図3(b)に示すようにして、ゲート絶縁膜102、半導体膜103、BL層(チャネル保護層)104がそれぞれ形成される。半導体膜103がTFTのチャネルとして機能する。また、BL層104は、後述のオーミックコンタクト層105のエッチングの際に半導体膜103を保護するための保護層である。
【0034】
次に、第3工程として、NHF(フッ化アンモニウム溶液)によって、第2工程の結果、露出状態となっている半導体膜103上に形成される自然酸化膜を除去した後、例えばプラズマCVD法によりnSi膜(N型アモルファスシリコン膜)からなるオーミックコンタクト層を成膜する。なお、オーミックコンタクト層105は、半導体膜103とソース電極、ドレイン電極との間のオーミック接触を改善するために設けられる。オーミックコンタクト層105を形成した後、スパッタ法を用いてオーミックコンタクト層105上にCr又はその合金等の金属導電膜を成膜する。
【0035】
TFTのソース電極Sとドレイン電極D等を同時加工するために、金属導電膜にフォトレジストを塗布し、例えばドライエッチングにより、金属薄膜を所定の電極パターンに加工する。このような工程により、TFTのドレイン電極106及びソース電極107、ドレイン端子122がそれぞれ形成される。なお、第3工程により、ドレイン電極106とドレイン端子122とを接続するドレイン電極線Dも、ドレイン電極106、ドレイン端子122とともに一体的に形成される。
【0036】
TFTのドレイン電極106、ソース電極107及びドレイン端子122の形成後、これらの電極をマスクとしてオーミックコンタクト層105、半導体膜103のエッチングを行う。この際、TFT部については、図2(c)の参照符号108で示すように、オーミックコンタクト層105のみがエッチングされ、半導体膜103についてはBL層104の働きによってエッチングされずに保護される。TFT部以外については、図3(c)に示すように、各電極によってマスクされている部分以外の半導体膜103、オーミックコンタクト層105が除去される。
【0037】
次に、第4工程として、半導体膜103を含む画素基板の全体を保護するために、例えばプラズマCVD法によって第3工程において形成された各電極上とゲート絶縁膜102上にOC−SiN膜(オーバーコート用窒化シリコン膜)109を成膜する。その後、OC−SiN膜109上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィー法によりコンタクトホールを形成する。本実施形態においては、図2(d)、図3(d)に示すように、ソース電極107、ゲート端子121、ドレイン端子122がそれぞれ露出されるようにOC―SiN膜109からゲート絶縁膜102にかけて連続したコンタクトホールを形成する。
【0038】
ここで、コンタクトホールの形成のためのエッチングの際、コンタクトホールを介して露出されたソース電極107、ゲート端子121、ドレイン端子122といった金属導電膜の表面が、プラズマによるダメージを受けたり、エッチングガスにさらされたりして変質することがある。次に、このようにして金属導電膜の表面に形成された変質層を除去するための処理を行う。例えば、金属導電膜がCrの場合には、HNO(硝酸)、HCl(塩酸)、HO(水)の混合溶液を用いることによって変質層を除去することが可能である。このような変質層の除去を行うことにより、各金属導電膜の接触抵抗を下げ、後に成膜される透明導電膜と金属導電膜との導通を取りやすくすることが可能である。
【0039】
次に、第5工程として、第4工程において形成したコンタクトホール中にスパッタ法でITO膜(第2の導電膜)を成膜する。そして、成膜したITO膜上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィー法により、所定のパターンにITO膜を加工する。
【0040】
このような第5工程により、図2(e)、図3(e)に示すようにして、画素電極110、ゲート端子121を保護する透明端子保護ITO膜(端子保護膜)123、ドレイン端子122を保護する透明端子保護ITO膜(端子保護膜)124が形成される。
【0041】
次に、第6工程として、酸化膜形成処理を行う。この酸化膜形成処理について説明する。酸化膜形成処理とは、ITO膜下に形成されている金属導電膜(第1の導電膜)に酸化膜を形成するための所定の処理である。なお、ここでは、酸化膜形成処理の例として、酸化剤としてのO水溶液(オゾン水)を画素基板上に塗布するオゾン水処理を挙げる。オゾン水処理として、例えば、第5工程まで実施済みの画素基板の全体を揺動させつつ、図2(f)、図3(f)に示すようにして、画素基板の上から、シャワーやスプレー等を用いてオゾン水を塗布する。この他、オゾン水で満たした容器中に画素基板を浸し、その後に、この容器から画素基板を引き上げることによってオゾン水を塗布するディップ法等の各種の手法を用いてオゾン水を塗布するようにしても良い。
【0042】
ここで、例えば、ゲート端子部を例に挙げて説明するが、図4(a)に示すように、透明端子保護ITO膜123には、ピンホール(細孔)等の欠陥123aが発生する可能性がある。このような欠陥123aが発生すると、水分等の不純物が欠陥123aから金属導電膜としてのゲート端子121に浸入し、その結果、ゲート端子121が腐食されてしまう可能性がある。透明端子保護ITO膜123に対してゲート端子121が酸化するオゾン水処理を行うことにより、仮に透明端子保護ITO膜123に欠陥123aが発生していた場合には、この欠陥123aからオゾン水がゲート端子121に浸入してゲート端子121の一部が酸化される。この結果、図4(b)に示すように、欠陥123aの部分に金属酸化膜121aが形成される。この金属酸化膜121aがバリアとなり、水分等の不純物のゲート端子121への浸入が防止される。図4(b)では、ゲート端子121上において欠陥123a内に充填されるように金属酸化膜121aを表したが、金属酸化膜121aは、欠陥123a内において少なくともゲート端子121の表面全体を覆うように形成されていれば良い。
【0043】
なお、図4は、ゲート端子121とゲート端子121に形成される透明端子保護ITO膜123とに対する酸化膜形成処理の効果を示しているが、ソース電極107と画素電極110とに対する酸化膜形成処理の効果、ドレイン端子122とドレイン端子122に形成される透明端子保護ITO膜124とに対する酸化膜形成処理の効果も同様である。
【0044】
上述した第1工程から第6工程までの6工程により、本実施形態の画素基板が製造される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、金属導電膜上に透明導電膜が形成される構造を有する薄膜トランジスタ基板の製造方法において、金属導電膜上に透明導電膜をパターニングした後、酸化膜形成処理を行うようにしている。酸化膜形成処理により、仮に透明導電膜にピンホール(細孔)等の欠陥が発生していても、この欠陥を介して透明導電膜下の金属導電膜の一部が酸化されて酸化膜が形成される。このような酸化膜を形成するようにすることで、金属導電膜への水等の不純物の浸入を防止して、透明導電膜下の金属導電膜の腐食を防止することが可能である。これにより、透明導電膜と金属導電膜との導通を確実にとることが可能である。
【0046】
ここで、上述した例においては、酸化膜形成処理として酸化剤(オゾン水)を塗布する例を示している。この他、酸化膜形成処理として、酸素ガスを注入しつつ、真空プラズマ処理を行って酸化膜を形成する真空プラズマ処理(O2プラズマ処理)や、常圧下でプラズマ処理を行って酸化膜を形成する常圧プラズマ処理を用いるようにしても良い。
【0047】
また、上述した例においては、透明導電膜を成膜してパターニングを行ってから、酸化膜形成処理を行うようにしている。これに対し、透明導電膜のパターニングを、酸化膜形成処理の後に行うようにしても良い。この場合の製造工程を図5に示す。なお、図5は、ゲート端子121、ドレイン端子122の製造工程のみ示しているが、TFT部の製造工程も図5で示す工程に準じて行われる。
【0048】
第1工程〜第4工程までは、上述した図2、図3と同様に行われる。第4工程までを経てソース電極107、ゲート端子121、ドレイン端子122がそれぞれ露出されるようにOC―SiN膜109からゲート絶縁膜102にかけて連続したコンタクトホールが形成される。第4工程に次いで、第5工程として、図5(a)に示すように、第4工程において形成したコンタクトホール中にスパッタ法でITO膜125を成膜する。ITO膜125の成膜後、図5(b)に示すようにして、成膜したITO膜125にフォトレジストを塗布することなく酸化膜形成処理(例えばオゾン水処理)を行う。この酸化膜形成処理により、仮にITO膜125にピンホール(細孔)等の欠陥が発生していた場合には、この欠陥を介してITO膜125下の金属導電膜の一部が酸化されて酸化膜が形成される。
【0049】
酸化膜形成処理の後、ITO膜上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィー法により、所定のパターンにITO膜を加工する。このような第6工程により、図5(c)に示すようにして、ゲート端子121を保護する透明端子保護ITO膜(端子保護膜)123、ドレイン端子122を保護する透明端子保護ITO膜(端子保護膜)124が形成される。このような6工程により、本実施形態の画素基板が製造される。
【0050】
図5で示した順序に従って画素基板を製造することにより、パターニングの際のエッチングにおいてエッチングガス等がITO膜に発生した欠陥を介して金属導電膜に侵入することも防止できる。このため、透明導電膜と金属導電膜との導通をより確実にとることが可能である。
【0051】
また、上述の例では、液晶表示装置の画素基板の製造方法に対しての本実施形態の適用例を説明している。実際には、本実施形態の技術は、薄膜トランジスタが実装される各種の基板の製造方法に対して適用可能である。なお、この場合には、複数の金属導電膜上に透明導電膜が積層されるような構造を有する薄膜トランジスタ基板に対して本実施形態の技術を適用することも考えられる。このような構造を有する場合の酸化膜形成処理は、最上層に形成されている透明導電膜に対してのみ行えば良い。例えば、図6は、4層の金属導電膜131〜134に透明導電膜135が積層されるような薄膜トランジスタ基板に、酸化膜形成処理を行う場合の例を示している。このような場合であっても、酸化膜形成処理は、図6に示すように、透明導電膜135の上から行うようにすれば良い。
【0052】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0053】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0054】
100…透明基板(ガラス基板)、101…ゲート電極、102…ゲート絶縁膜、103…半導体膜、104…BL層、105…オーミックコンタクト層、106…ドレイン電極、107…ソース電極(第1の導電膜)、109…OC−SiN膜、110…画素電極、121…ゲート端子(第1の導電膜)、122…ドレイン端子(第1の導電膜)、123,124…透明端子保護ITO膜(第2の導電膜、端子保護膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる第1の導電膜上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に、前記第1の導電膜が露出するようにコンタクトホールを形成する工程と、
前記コンタクトホールを介して前記第1の導電膜に接触するように、前記金属とは異なる材料からなる第2の導電膜を前記第1の導電膜上及び前記絶縁膜上に成膜する工程と、
前記金属が酸化する所定の処理を前記第2の導電膜に施す工程と、を有することを特徴とする薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項2】
前記所定の処理は、O水溶液を塗布する処理であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項3】
前記所定の処理は、プラズマ処理であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項4】
前記所定の処理を前記第2の導電膜に施す工程では、前記第1の導電膜のうち、前記第2の導電膜から露出した領域に酸化膜が形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項5】
前記所定の処理を前記第2の導電膜に施す工程では、前記コンタクトホールの形成領域に対応する前記第2の導電膜に発生したピンホールから露出した前記第1の導電膜に酸化膜が形成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項6】
前記コンタクトホールを形成する工程に次いで、前記コンタクトホールを形成するために前記絶縁膜に行ったパターニングによって前記第1の導電膜に形成された変質層を除去する工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項7】
前記変質層を除去する工程は、HNO、HCl、HOの混合溶液によって行われることを特徴とする請求項6に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1の導電膜は、薄膜トランジスタに信号を供給するためのゲート駆動部に設けられたゲート端子又はドレイン駆動部に設けられたドレイン端子を形成していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1の導電膜は、薄膜トランジスタのドレイン電極又はソース電極を形成していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項10】
前記所定の処理を施す工程に次いで、前記第2の導電膜をパターニングして端子保護膜を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項11】
前記所定の処理を施す工程に次いで、前記第2の導電膜をパターニングして画素電極を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項12】
前記金属とは、Al、Al合金、Mo、Mo合金、Cr又はCr合金の何れかであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項13】
前記第2の導電膜は、ITOからなることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−69808(P2012−69808A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214345(P2010−214345)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】