説明

表示デバイスの製造方法

【課題】液晶表示デバイスの大型化にも対応すべく、Al合金膜と透明画素電極との間の接触抵抗を低減できるエッチング条件を特定し、応答速度の速い表示デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】基板上にAl合金膜を形成する工程と、Al合金膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程と、Al合金膜に接触するように透明導電膜を形成する工程とを含む表示デバイスの製造方法において、コンタクトホールを形成する工程は、少なくとも六フッ化硫黄ガス、酸素ガス、及び希ガスを含む雰囲気中で行われるドライエッチング工程を含むとともに、0.4≦(酸素ガスの流量)/[(六フッ化硫黄ガスの流量)+(酸素ガスの流量)]≦0.9の条件を満足させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイに使用される表示デバイスの製造方法に関し、特に、Al合金膜上に形成される層間絶縁膜の加工プロセスに関連するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の携帯電話から、100インチを超す大型のテレビに至るまで様々な分野に用いられる液晶表示デバイスは、画素の駆動方法によって、単純マトリクス型液晶表示デバイスとアクティブマトリクス型液晶表示デバイスとに分けられる。このうちスイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、「TFT」と呼ぶ。)を有するアクティブマトリクス型液晶表示デバイスは、高精度の画質を実現でき、高速の画像などにも対応できるため、液晶ディスプレイの主流となっている。
【0003】
図1は、アクティブマトリクス型液晶表示デバイスに適用される代表的な液晶ディスプレイの断面図である。以下、図1を参照しながら、この液晶ディスプレイの動作原理を説明する。なお、ここでは、活性半導体層として水素化アモルファスシリコンを用いたTFT基板(以下、アモルファスシリコンTFT基板と呼ぶ場合がある。)の例を代表的に説明する。
【0004】
図1に示すように、液晶ディスプレイ100は、TFT基板1と、TFT基板1に対向して配置された対向基板2と、TFT基板1と対向基板2との間に配置され、光変調層として機能する液晶層3とを備えている。TFT基板1は、絶縁性のガラス基板1a上に配置されたTFTモジュール4、透明画素電極5、走査線や信号線を含む配線部6を有している。透明画素電極5は、酸化インジウム(In)中に酸化錫(SnO)を10質量%程度含む酸化インジウム錫(ITO)膜などの導電性酸化膜から形成されている。TFT基板1は、TABテープ12を介して連結されたドライバ回路13及び制御回路14によって駆動される。
【0005】
対向基板2は、TFT基板1側に、絶縁性のガラス基板1bの全面に形成された共通電極7と、透明画素電極5に対向する位置に配置されたカラーフィルタ8と、TFT基板1上のTFTモジュール4に対向する位置に配置された遮光膜9とを有している。対向基板2は、液晶層3に含まれる液晶分子を所定の向きに配向させるための配向膜11を更に有している。
【0006】
TFT基板1および対向基板2の外側(液晶層3側とは反対側)には、それぞれ、偏光板10a,10bが配置されている。
【0007】
液晶ディスプレイ100は、対向電極2と透明画素電極5との間に形成される電界によって液晶層3における液晶分子の配向方向が制御され、液晶層3を通過する光が変調される。これにより、対向基板2を透過する光の透過量が制御されて画像が表示される。
【0008】
図2は、トップゲート型のTFTモジュール4の一部断面図である。ガラス基板1a上にポリシリコン(poly−Si)からなるチャンネル層、nポリシリコン(poly−Si)からなるソース層、ドレイン層が形成され、窒化Siで構成されるゲート絶縁膜27を介在してゲート電極26が形成されている。nポリシリコンで構成されるソース層及びドレイン層は、アルミニウム(Al)合金膜からなるソース電極28及びドレイン電極29にそれぞれ接続されている。なお、ゲート電極26及びソース電極28及びドレイン電極29は、各々、SiOx層及びSiNx層により電気的に絶縁されている。
【0009】
ドレイン電極29の端部は、層間絶縁膜35に設けられたコンタクトホール32を介して透明導電膜からなる透明画素電極5と電気的に接続されている。なお、TFTモジュール4の上部には、輝度向上のための反射電極(図示せず)が設置される場合があり、透明画素電極5は、反射電極に接続されている場合がある。
【0010】
TFTモジュール4のソース電極28とドレイン電極間29の間には電圧が印加されており、ゲート電極26の電圧をON/OFF制御することにより、チャンネル層を経由してソース層からドレイン層へ流れる電流を制御する。これによって透明画素電極5に印加される電位が制御され、液晶層3に所定の電界がかかる。この結果、画素毎に光の透過量が制御され、画像を表示することができる。
【0011】
なお、従来は、コンタクトホール32において、ドレイン電極29と透明画素電極5との間には、バリアメタルと呼ばれるモリブデン(Mo)等の薄膜(図示せず)を介在させていた。その理由は、Al合金膜上に酸化物である酸化インジウム錫(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電膜を直接に成膜すると、Al合金膜表面が酸化され、しかもこの酸化を抑制することが困難であるために、Al合金膜で構成されるドレイン電極29と透明画素電極5との接触抵抗が高くなりすぎるという問題があったからである。そこで、ドレイン電極29の表面にMo等のバリアメタルを成膜し、しかる後に透明画素電極5を成膜すれば、Al合金膜表面の酸化が避けられ、接触抵抗(コンタクト抵抗)の増大が抑制されるばかりでなく、透明画素電極5の成膜後においても、ドレイン電極29と透明画素電極5の界面における、原子の相互拡散による界面の劣化、剥離、接触抵抗の増大が抑止できる。
【0012】
しかしながら、バリアメタルを形成するためには、バリアメタル層の成膜と微細加工が必要である。そのため、製造プロセス中に液晶ディスプレイが汚染され、或いは、成膜チャンバー内壁に付着したバリアメタル材が剥離し、その破片が液晶ディスプレイに付着するなどし、製造の歩留まりが低下し、ひいては製造コストが増大する原因にもなっていた。
【0013】
これらの問題を解決するため、特許文献1〜3には、特定の組成を有するAl合金膜を用いて図2に示すソース電極28、ドレイン電極29を形成し、Al合金表面を制御して酸化することにより、Al合金からなるソース電極28又はドレイン電極29に、透明導電膜からなる透明画素電極5を直接成膜しても、安定的に電気抵抗の小さい、ドレイン電極29−透明画素電極5間のコンタクトを形成できることが記載されている(ダイレクトコンタクト技術)。このダイレクトコンタクト技術を採用することにより、バリアメタル層の成膜と微細加工の工程が省略され、バリアメタル層を成膜するための装置が不要となり、製造の歩留まりが向上し、その結果、液晶ディスプレイの製造コストを低減することが可能となった。
【0014】
一方、特許文献4〜8には、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する方法について記載されている。
【0015】
特許文献4には、層間絶縁膜をSF系またはCHFx系のガスを用いてドライエッチングしてコンタクトホールを形成する技術について記載されている。
【0016】
特許文献5には、絶縁膜にコンタクトホールを形成するに際し、乾式法あるいは乾式法と湿式法との併用によりエッチングしてコンタクトホールを形成することについて記載されている。
【0017】
特許文献6にも、絶縁膜にコンタクトホールを形成するに際し、乾式法あるいは乾式法と湿式法との併用によりエッチングしてコンタクトホールを形成することについて記載されている。
【0018】
特許文献7には、半導体層と保護膜に対するエッチング選択比が優れた条件を形成するために、OまたはCFを多量含ませることが好ましく、ドライエッチングに用いる気体としてはSF+N,SF+O,CF+O,CF+CHF+Oなどを使用することが好ましいと記載されている。
【0019】
特許文献8には、絶縁膜にコンタクトホールを形成するに際し、ドライエッチングガスとしてCHF系ガスを用いることが記述されている。
【特許文献1】特開2004−214606号公報
【特許文献2】特開2006−23388号公報
【特許文献3】特開2005−040787号公報
【特許文献4】特開平11−64887号公報(段落0015)
【特許文献5】特開2000−77669号公報(段落0018)
【特許文献6】特開2001−337619号公報(段落0019)
【特許文献7】特開2001−66639号公報(段落0072)
【特許文献8】特開2005−258115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、液晶表示デバイスの大型化が進み、Al合金膜と透明画素電極との間の接触抵抗の更なる低減が求められる中で、コンタクトホール形成のためのエッチングガスとして、特許文献4〜8に記載されたガス種を単に取捨選択するだけでは、Al合金膜と透明画素電極との間の接触抵抗を十分に下げることはできない。
そこで、本発明は、液晶表示デバイスの大型化にも対応すべく、Al合金膜と透明画素電極との間の接触抵抗を低減できるエッチング条件を特定し、応答速度の速い表示デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決することのできた本発明の表示デバイスの製造方法は、
基板上にAl合金膜を形成する工程と、前記Al合金膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程と、前記Al合金膜に接触するように透明導電膜を形成する工程とを含む表示デバイスの製造方法であって、
前記コンタクトホールを形成する工程は、六フッ化硫黄ガス、酸素ガス、及び希ガスを含有する雰囲気中で行われるドライエッチング工程を含むとともに、該ドライエッチングは0.4≦(酸素ガスの流量)/[(六フッ化硫黄ガスの流量)+(酸素ガスの流量)]≦0.9を満足するものである。
【0022】
上記表示デバイスの製造方法において、Al合金膜が、NiおよびLaを含有することが推奨される。
【0023】
上記表示デバイスの製造方法において、透明導電膜が酸化インジウム錫(ITO)膜、若しくは酸化インジウム亜鉛(IZO)膜であることが推奨される。
【0024】
上記表示デバイスの製造方法において、ドライエッチングに用いる雰囲気が、さらに臭化水素および/または四フッ化炭素を含むことが推奨される。
【0025】
上記表示デバイスの製造方法において、コンタクトホールを形成する工程は、ウェットエッチングを行なう工程と、その後に行われるドライエッチング工程を含む態様とすることも可能である。
【0026】
本明細書における「ドライエッチング」の意味は、後でも例を挙げて述べるが、エッチング対象物(層間絶縁膜)を除去することの他、コンタクトホールがAl合金膜に達した後でも、Al合金膜の表面を清浄化する目的で、Al合金膜の表面をエッチングガスに曝すことも含む意味とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、Al合金膜上に形成された層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する際に、ドライエッチングに用いる六フッ化硫黄ガスの流量と酸素ガスの流量が適切に調整されていることによって、Al合金膜の表面状態が改善されると考えられ、その後にAl合金膜上に形成される透明画素電極との間の接触抵抗を低減し、応答速度の速い表示デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明者らは、Al合金膜と透明画素電極との間の接触抵抗を低減するため、エッチングガスの種類と、適切な流量比率について鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定のエッチングガスを、特定の流量比率にて使用することにより、Al合金膜と透明画素電極との間の接触抵抗を著しく低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
[表示デバイスの製造方法]
以下、本発明に係る表示デバイスの製造方法の好ましい実施形態を説明する。なお、ここでは、アモルファスシリコンTFT基板またはポリシリコンTFT基板を備えた液晶表示デバイスを代表的に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0030】
(TFT基板の形成工程)
まず、ガラス基板1a上に、例えばプラズマCVD法により、基板温度300℃程度で、厚さ50nm程度の窒化シリコン(SiNx)膜、厚さ100nm程度の酸化シリコン(SiOx)膜、および厚さ50nm程度の水素化アモルファスシリコン(a−Si−H)膜を成膜する。次に、水素化アモルファスシリコン(a−Si−H)膜をポリシリコン化するため、熱処理(約470℃で1時間程度)およびレーザーアニールを行う。脱水素処理を行った後、例えばエキシマレーザアニール装置を用いて、エネルギー230mJ/cm2程度のレーザーを水素化アモルファスシリコン(a−Si−H)膜に照射することにより、厚さが0.3μm程度のポリシリコン(poly−Si)膜を得る(図3)。
【0031】
次いで、図4に示すように、プラズマエッチング等によってポリシリコン(poly−Si)膜をパターニングする。
【0032】
次に、図5に示すように、厚さが100nm程度の酸化シリコン(SiOx)膜を成膜し、これをゲート絶縁膜27とする。更にゲート絶縁膜27の上に、スパッタリング等によって、厚さ200nm程度のAl−2原子%Ni−0.35原子%La合金薄膜(ゲート電極26となる)および厚さ50nm程度のMo薄膜(バリアメタル層52となる)を積層した後、プラズマエッチング等の方法でパターニングする。これにより、走査線と一体のゲート電極26が形成される。
【0033】
続いて、図6に示すように、フォトレジスト31でマスクを形成し、例えばイオン注入装置などにより、例えばリンを50keV程度で1×1015個/cm2程度ドーピングし、ポリシリコン(poly−Si)膜の一部にn型ポリシリコン(npoly−Si)膜を形成する。次に、フォトレジスト31を剥離し、例えば500℃程度で熱処理することによってリンを拡散させる。
【0034】
(Al合金膜の形成工程)
次いで、図7に示すように、例えばプラズマCVD装置などを用いて、厚さ500nm程度の酸化シリコン(SiOx)膜を基板温度250℃程度で成膜した後、フォトレジストによってパターニングしたマスクを用いて酸化シリコン(SiOx)膜とゲート絶縁膜27をドライエッチングし、n型ポリシリコン膜に到達する開口部を形成する。スパッタリングにより、厚さ50nm程度のMo膜で形成されたバリアメタル層53と厚さ450nm程度のAl合金膜(ここでは、Al−2原子%Ni−0.35原子%La合金膜)を成膜した後、Al合金膜をパターニングすることによって、信号線に一体のソース電極28及びドレイン電極29を形成する。その結果、ソース電極28とドレイン電極29は、各々コンタクトホールを介してn型ポリシリコン膜(npoly−Si)にコンタクトされる。
【0035】
ソース電極28及びドレイン電極29を構成するAl合金は、ソース電極28及びドレイン電極29と透明導電膜との接触抵抗を低減させるため、0.1原子%以上のNiを含むことが好ましい。Ni含有量の上限値は、Al合金の電気抵抗率を低減させるため、6原子%とすることが好ましい。
【0036】
また、ソース電極28及びドレイン電極29の耐熱性を向上させるため、0.1原子%以上のLaを含むことが好ましい。La含有量の上限値は、Al合金の電気抵抗率を低減させるため、6原子%とすることが好ましい。
【0037】
(層間絶縁膜の形成工程)
次いで、図8に示すように、プラズマCVD装置などにより、厚さ500nm程度の窒化シリコン(SiNx)膜からなる層間絶縁膜35を基板温度220℃程度で成膜し、更にその上にフォトレジスト層31を形成する。
【0038】
(コンタクトホールの形成工程)
続いて、フォトレジスト層31に対し、一定のパターンを有する光を照射し、フォトレジスト層31を現像処理することにより、図9に示すようにフォトレジスト層31に開口部を設ける。この開口部をマスクとしたドライエッチングにより、層間絶縁膜35にコンタクトホール32を形成する(図10〜図12)。
【0039】
ドライエッチング工程の雰囲気として用いるエッチングガスは、六フッ化硫黄、酸素、及び希ガスである。六フッ化硫黄ガスの流量、酸素ガスの流量が満たすべき関係は、(酸素ガスの流量)/[(六フッ化硫黄ガスの流量)+(酸素ガスの流量)]の値を「R」と表記すると、0.4≦R≦0.9である(Rの表記は、以下同じとする)。
【0040】
一般には、エッチングガスに高濃度の酸素が含まれると、Al合金膜の表面が強く酸化されて、電気的絶縁性の高い酸化Al層が形成され、ITOとの接触抵抗が増大すると考えられる。しかしながら、0.4≦R≦0.9の領域では、常識的な傾向とは正反対に、Al合金膜と透明導電膜との接触抵抗は、低く抑えられることが分かった。
【0041】
Rを0.4以上としたのは、透明画素電極5とAl合金膜との間の接触抵抗の低減効果を有効に発揮させるためであり、好ましくは0.45以上、更に好ましくは、0.5以上にする。一方、Rの値が高くなると、すなわち、過度に高濃度の酸素を含むと、エッチング速度や形状への影響が大きくなってしまうため、Rの上限値は、0.9、好ましくは0.8、より好ましくは、0.75にする。
【0042】
ドライエッチングに用いる希ガスの種類には特に制限はないが、例えばArを用いればよい。希ガスの流量についても特に制限はないが、(希ガスの流量)/[(六フッ化硫黄ガスの流量)+(酸素ガスの流量)]の値をRrと表記すると、0.1≦Rr≦0.9とすることが好ましい。Rrの下限値を0.1とするのは、(ア)六フッ化硫黄ガスと酸素ガスによる強いエッチング能力を適切に抑制乃至は制御し、(イ)コンタクトホールのアスペクト比(深さ/開口面積)を高め、(ウ)コンタクトホール側面を平坦にエッチングし、(エ)エッチングで発生したアウトガスを効率よく排気するためである。Rrのより好ましい下限値は0.2であり、更に好ましい下限値は、0.3である。一方、希ガスの流量比率を増やしすぎても、エッチング速度が低下するため、Rrの上限値は0.9とすることが好ましく、より好ましくは0.8、更に好ましくは、0.7である。
【0043】
チャンバー内の雰囲気を構成するエッチングガスは、六フッ化硫黄、酸素、及び希ガスからなる混合ガスに限定されるわけではなく、この混合ガスに更に臭化水素および/または四フッ化炭素を添加することにより、コンタクトホール32のエッチング速度が増大する。臭化水素、四フッ化炭素は、合計で1〜10%程度添加されることが望ましい。
【0044】
ドライエッチングは、コンタクトホール32を形成する全工程で用いられる必要はない。例えば、コンタクトホール32の底部がAl合金膜に到達する直前までは、ウェットエッチングを行ない、コンタクトホール形成工程の最終段階でドライエッチングに切り替えてもよい。コンタクトホール形成工程の殆どをウェットエッチングにより行なうことにより、複数のTFT基板を一括処理することができる。
【0045】
このように、途中から本発明で規定するドライエッチングを用いる場合、ドライエッチングに切り替えるタイミングは、コンタクトホール32の底部がAl合金膜に到達していないとき(図10)、コンタクトホール32の底部がAl合金膜に到達したとき(図11)、或いは、層間絶縁膜の除去が終了したとき(図12)でもよい。本実施の形態で用いる六フッ化硫黄、酸素、及び希ガスは、層間絶縁膜をエッチングする作用の他、これらのガスにAl合金膜を曝すことにより、メカニズムの詳細は不明ではあるがAl合金膜の表面が清浄化されるものと考えられる。これにより、後にAl合金膜上に形成される透明画素電極と、このAl合金膜との接触抵抗が低く抑えられる。
【0046】
また、ウェットエッチングに代えて他の公知のエッチング方法を用いることもできる。例えば、層間絶縁膜35が、窒化シリコン層上に樹脂層(図示せず)を積層することにより構成される場合などには、公知のエッチングガス(例えばCF+O+Ar、CHF+O+Ar、CF+O、CHF+Oなど)で、まず樹脂層に開口部を形成した後、本発明で規定する六フッ化硫黄、酸素(但し、0.4≦R≦0.9)、及び希ガスで窒化シリコン層をエッチングして、コンタクトホール32を形成することも可能である。
【0047】
(透明導電膜の製造工程)
次に、例えば酸素プラズマによるアッシング工程を経た後、例えばアミン系等の剥離液を用いてフォトレジスト層31を剥離する。更に、例えば保管時間(8時間程度)の範囲内で、図13に示すように、例えば厚さ40nm程度のITO膜(酸化インジウム(In)中に酸化錫(SnO)を10質量%程度含む酸化インジウム錫の膜)を成膜し、ウェットエッチングによるパターニングを行うことによって透明画素電極5を形成する。同時に、パネル端部のゲート電極26におけるTABとの接続部分に、TABとのボンディングのためITO膜をパターニングすると、TFTアレイ基板1が完成する。
【0048】
このようにして作製されたTFT基板は、ドレイン電極29と透明画素電極5とが直接コンタクトされている。また、ゲート電極26にAl合金を単層で用いバリアメタル層52を省略した場合にはゲート電極26とTAB接続用のITO膜も直接コンタクトされており、上記したコンタクトホールの形成方法を用いてゲート電極26とITO膜との接触抵抗を低減することができる。
【0049】
上記では、透明画素電極5として、ITO膜を用いたが、IZO膜(InOx−ZnOx系導電性酸化膜)を用いてもよい。また、活性半導体層として、アモルファスシリコンの代わりにポリシリコンを用いてもよい。
【0050】
(表示デバイスの仕上げ工程)
以上のようにして得られるTFT基板1を使用し、例えば、以下に記載の方法によって、前述した図1に示す液晶表示デバイスを完成させる。
【0051】
まず、上記のようにして作製したTFT基板1の表面に、例えばポリイミドを塗布し、乾燥してからラビング処理を行って配向膜を形成する。
【0052】
一方、対向基板2は、ガラス基板上に、例えばクロム(Cr)をマトリックス状にパターニングすることによって遮光膜9を形成する。次に、遮光膜9の間隙に、樹脂製の赤、緑、青のカラーフィルタ8を形成する。遮光膜9とカラーフィルタ8上に、ITO膜のような透明導電性膜を共通電極7として配置することによって対向電極を形成する。そして、対向電極の最上層に例えばポリイミドを塗布し、乾燥した後、ラビング処理を行って配向膜11を形成する。
【0053】
次いで、TFT基板1と対向基板2の配向膜11が形成されている面とを夫々対向するように配置し、樹脂製などのシール材16により、液晶の封入口を除いてTFT基板1と対向基板2とを貼り合わせる。このとき、TFT基板1と対向基板2との間には、スペーサー15を介在させるなどして2枚の基板間のギャップを略一定に保つ。
【0054】
このようにして得られる空セルを真空中に置き、封入口を液晶に浸した状態で徐々に大気圧に戻していくことにより、空セルに液晶分子を含む液晶材料を注入して液晶層3を形成し、封入口を封止する。そして、空セルの外側の両面に偏光板10を貼り付けることにより表示デバイスを完成させる。
【0055】
(液晶ディスプレイ)
例えば、図1に示したように、表示デバイスにドライバ回路13等を接続し、液晶ディスプレイの側部あるいは裏面部に配置する。そして、液晶ディスプレイの表示面となる開口を含む保持フレーム23と、面光源をなすバックライト22と導光板20と保持フレーム23によって表示デバイスを保持し、液晶ディスプレイを完成させる。
【0056】
[実験例]
以下、実験例を挙げて本発明の作用効果を具体的に説明するが、本発明はもとより、下記実験例によって制限を受けるものではない。本発明の趣旨に適合する範囲で下記実験例に適当に変更を加えて実施することも可能であり、これらは全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
(実験用デバイスの作製)
図14、図15は、実験用に作製したデバイス構造の概略断面図である。実験用のデバイス構造は、少なくとも図8〜図13に示したドレイン電極29として用いられるAl合金膜、層間絶縁膜35、コンタクトホール32、透明画素電極5を構成する透明導電膜の部分を再現したものであり、TFT等は作製していない。このような実験用のデバイスを作製するために、まず、ガラス基板上1a上にドレイン電極29を想定したAl合金膜をスパッタ法により厚さ300nm成膜し、更に、Al合金膜上にプラズマ気相蒸着法(CVD法)により厚さ300nmの窒化シリコンを成膜し、これを層間絶縁膜35とした。層間絶縁膜35の表面にエッチング用マスクとして、厚膜のフォトレジスト31をコーティングし、通常のフォトリソグラフィープロセスを用いて、規則的に配置された10μm角の領域についてのみエッチング用マスクを除去した(図14)。
【0058】
次いで、高周波プラズマ装置により、種々のエッチングガス、エッチング液を用いて層間絶縁膜35をエッチングしてコンタクトホール32を形成し、露出したAl合金膜上に、DCマグネトロン・スパッタ法により膜厚200nmの透明導電膜を成膜した(図15)。
【0059】
(実験例1)
ガラス基板上1a上に、2.0原子%のニッケル(Ni)、0.35原子%のランタン(La)を含むAl合金ターゲットを用いて、スパッタ法によりAl合金膜を成膜した。以下、この合金組成を「Al−2.0Ni−0.35La」と表わす。
エッチングガスの組成は、Arガス流量を42sccm(毎分のガスの流量をcmで表わした単位)に固定し、六フッ化硫黄ガスと酸素ガスの合計流量を63sccmに固定し、酸素と六フッ化硫黄の流量を変えた。高周波出力は50W、ガス圧は20Paとした。
Al合金膜上に成膜する透明導電膜には、ITO膜を用いた。
【0060】
次に、図16に示すようなケルビンパターン(コンタクトホールサイズ:10μm角)を用い、ITO膜とAl合金膜との間の接触抵抗の測定を行なった。この測定では、ITO膜−Al合金膜間に電流を流し、別の端子でITO−Al合金間の電圧降下を測定する方法(4端子測定)を用いた。具体的には、図16のI−I間に電流Iを流し、V−V間の電圧Vをモニターすることにより、接続部Cの接触抵抗Rを[R=(V−V)/I]として求めた。
【0061】
図17は、実験例1で測定したITO膜−Al合金間の接触抵抗を示すものであり、縦軸を接触抵抗、横軸を(酸素ガスの流量)/[(六フッ化硫黄ガスの流量)+(酸素ガスの流量)]=Rの値とした。
【0062】
図17から分かるように、酸素ガス流量が増えるにつれて、すなわち、Rの値が増えるにつれて、接触抵抗は緩やかに減少し、Rの値が0.4以上になると急激に低下した。なお、図17の接触抵抗は、対数目盛で表示されているので、実数上の低減効果は非常に大きい。接触抵抗の測定はR=0.9まで行なったが、R=0.9付近では、接触抵抗の分散が大きかったため、図17にはプロットしなかったが、少なくともR=0.55の場合よりも更に接触抵抗は低かった。
【0063】
(実験例2)
Al合金膜を構成する材料としてAl−0.3Ni−0.35La合金を用いたこと以外は、実験例1と同じ条件で実験用のデバイス構造を作製し、ITO膜−Al合金膜間の接触抵抗値を測定した。この結果を図18に示す。酸素流量の増加により、一旦は接触抵抗が低下するが、その後あまり変わらず、実施例1と同じくR=0.4付近で急激に低下した。
【0064】
(実験例3)
Al合金膜を構成する材料としてAl−2.0Ni−0.35La合金を用いたこと、及び、コンタクトホール32を形成するためのエッチングガスとして、臭化水素と四フッ化炭素を合計で0%(添加せず)、5%、10%となるように添加したこと以外は、実験例1と同じ条件で実験用のデバイス構造を作製し、ITO膜−Al合金膜間の接触抵抗を測定した。
【0065】
この実験例3でも、接触抵抗の値は図17と同様の振る舞いを示したが、臭化水素と四フッ化炭素の添加量の増加に伴い、層間絶縁膜35のエッチング速度が増大した。
【0066】
(実験例4)
実験例4では、(ア)Al合金膜を構成する材料としてAl−2.0Ni−0.35La合金を用いたこと、及び、(イ)本発明で規定するドライエッチング(0.4≦R≦0.9)を行なう前に、まず六フッ化硫黄ガスとArガスを使用してドライエッチングし、下地のAl合金膜が露出した後、本発明で規定するドライエッチング(0.4≦R≦0.9)を開始したこと以外は、実験例1と同じ条件で実験用のデバイス構造を作製した。
【0067】
この実験例におけるITO膜−Al合金間の接触抵抗も、図17の場合(実験例1)と同様に、酸素ガス流量が増えるにつれて接触抵抗は緩やかに低減し、Rの値が0.4以上になると急激に低下した。
【0068】
以上の結果から、本発明で規定するドライエッチング(0.4≦R≦0.9)は、Al合金膜が露出した後から適用されても、ITO膜−Al合金間の接触抵抗は低減されることが分かる。
【0069】
(実験例5)
層間絶縁膜35としてスパッタ成膜した酸化シリコンを用いたこと、及び、コンタクトホール32を形成するためのエッチング方法として、弗酸と硝酸の混合液を純水で希釈した溶液に浸すウェットエッチングを用いたこと以外は、実験例4と同じ条件で実験用のデバイス構造を作製した。この実験例におけるITO膜−Al合金間の接触抵抗も、図17の場合(実験例1)と同様に、酸素ガス流量が増えるにつれて接触抵抗は緩やかに減少し、Rの値が0.4以上になると急激に低下した。
【0070】
以上の実験結果より、(ア)コンタクトホール32を形成し始める段階、すなわち、層間絶縁膜の除去を開始する段階から、本発明で規定するドライエッチング(0.4≦R≦0.9)によりコンタクトホール32を形成しても、(イ)エッチングの最終段階のみ、例えば、Al合金膜が露出した後で本発明で規定するドライエッチング(0.4≦R≦0.9)を行っても、若しくは、(ウ)コンタクトホールの完成後、0.4≦R≦0.9を満たすエッチングガスによりAl合金膜の表面処理を施しても、ほぼ同様の接触抵抗の低減効果が見られることが分かる。
【0071】
ITO膜−Al合金間の接触抵抗が低減する原因を探るために、実験例1の方法で作製した試料について、ITO膜とAl合金膜との界面付近をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察し(図19)、界面付近の原子組成を測定した。図19の矢印で示した位置がITO膜とAl合金膜との界面である。界面で酸素(O)原子とアルミニウム(Al)原子の組成比を測定し、O/Alの組成比(横軸)に対して接触抵抗(縦軸)をプロットしたものを図20に示す。図20から、本発明におけるエッチングガスには酸素ガスが含まれ、さらにAl合金膜上には、酸化物であるITO膜を積層したにもかかわらず、界面におけるO/Alの組成比は1.0未満であることが分かる(図20左下の2点)。これはエッチングガスに六フッ化硫黄を用い、かつ、六フッ化硫黄ガスの流量、酸素ガスの流量を所定の範囲に調整したことによると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、アモルファスシリコンTFT基板が適用される代表的な液晶ディスプレイの構成を示す概略断面図である。
【図2】図2は、アモルファスシリコンTFT基板の構成を示す概略断面説明図である。
【図3】図3は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図4】図4は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図5】図5は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図6】図6は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図7】図7は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図8】図8は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図9】図9は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図10】図10は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図11】図11は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図12】図12は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図13】図13は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図14】図14は、実験用デバイスの概略断面図である。
【図15】図15は、実験用デバイスの概略断面図である。
【図16】図16は、Al合金膜と透明導電膜との間の接触抵抗(コンタクト抵抗)の測定に用いたケルビンパターン(TEGパターン)を示す図である。
【図17】図17は、本実施の形態にかかる実験装置における接触抵抗を示す図である。
【図18】図18は、本実施の形態にかかる実験装置における接触抵抗を示す図である。
【図19】図19は、ITO膜とAl合金膜との界面付近のTEM(透過型電子顕微鏡)画像である。
【図20】図20は、実験用デバイスにおけるO/Alの組成比と接触抵抗との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 TFT基板
1a、1b ガラス基板
2 対向電極
3 液晶層
4 TFTモジュール
5 透明画素電極
6 配線部
7 共通電極
8 カラーフィルタ
9 遮光膜
10a、10b 偏光板
11 配向膜
12 TABテープ
13 ドライバ回路
14 制御回路
15 スペーサー
16 シール材
17 保護膜
18 拡散板
19 プリズムシート
20 導光板
21 反射板
22 バックライト
23 保持フレーム
24 プリント基板
25 走査線
26 ゲート電極
27 ゲート絶縁膜
28 ソース電極
29 ドレイン電極
30 保護膜(シリコン窒化膜)
31 フォトレジスト
32 コンタクトホール32
33 アモルファスシリコンチャネル膜(活性半導体膜)
34 信号線(ソース−ドレイン配線)
35 層間絶縁膜
51、52、53、54 バリアメタル層
55 ノンドーピング水素化アモルファスシリコン(a−Si−H)膜
56 n型水素化アモルファスシリコン(na−Si−H)膜
100 液晶ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にAl合金膜を形成する工程と、前記Al合金膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程と、前記Al合金膜に接触するように透明導電膜を形成する工程とを含む表示デバイスの製造方法であって、
前記コンタクトホールを形成する工程は、六フッ化硫黄ガス、酸素ガス、及び希ガスを含有する雰囲気中で行われるドライエッチング工程を含むとともに、該ドライエッチングは0.4≦(酸素ガスの流量)/[(六フッ化硫黄ガスの流量)+(酸素ガスの流量)]≦0.9を満足することを特徴とする表示デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記Al合金膜が、NiおよびLaを含有する請求項1記載の表示デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記透明導電膜が酸化インジウム錫(ITO)膜である請求項1または請求項2記載の表示デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記雰囲気が、さらに臭化水素および/または四フッ化炭素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の表示デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記コンタクトホールを形成する工程は、ウェットエッチングを行なう工程と、その後前記ドライエッチングを行なう工程とを含む請求項1〜4のいずれかに記載の表示デバイスの製造方法。


【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−304830(P2008−304830A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153877(P2007−153877)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】