説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】設計工数および適合工数の増加を抑制しつつ、かつ、燃費の向上を図る。
【解決手段】ECUは、アクセル開度および車速を検出するステップ(S100)と、目標エンジン出力を決定するステップ(S102)と、車両の過渡状態を設定するステップ(S104)と、マップの選択処理を実行するステップ(S106)と、変速比を決定するステップ(S108)と、目標トルクを決定するステップ(S110)と、スロットル開度を決定するステップ(S112)と、燃料噴射時間を決定するステップ(S114)と、燃料噴射量を演算するステップ(S116)と、マップの補正処理を実行するステップ(S118)と、マップの更新処理を実行するステップ(S120)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の動力を連続的に変速して駆動輪に伝達する変速機が搭載された車両の制御に関し、特に、車両の過渡状態に対応した最適な燃料噴射制御を実施して燃費の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の動力を連続的に変速して駆動輪に伝達する変速機(たとえば、無段変速機)を搭載する車両が公知である。このような変速機が搭載される車両は、アクセル開度と車速とから内燃機関の目標出力を決定し、最適燃費線上で目標出力が発現するように内燃機関および変速機が制御される。
【0003】
たとえば、特開平11−198684号公報(特許文献1)は、車両および機関の実際の運転状態あるいは作動状態に即応して機関と自動変速機を統合的に制御し、常に燃費性能を最良にする車両用駆動力制御装置を開示する。この車両用駆動力制御装置は、少なくともアクセル開度、車速を含む車両の運転状態と、少なくとも機関暖機状態、機関回転数、機関負荷を含む内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、少なくとも検出されたアクセル開度および車速に基づき、車両が出力すべき目標駆動力を演算する目標駆動力演算手段と、検出された運転状態に基づいて内燃機関の作動状態を表す機関作動状態信号を出力する機関作動状態信号出力手段と、演算された目標駆動力と機関作動状態信号に基づき、設定された複数種の運転方式のうちのいずれかに切換える運転方式切換手段と、演算された目標駆動力に基づき、切換えられた運転方式に従って内燃機関の目標出力および自動変速機の制御値を演算する出力演算手段と、演算された目標出力に基づいて内燃機関の出力を制御するアクチュエータを制御するアクチュエータ制御手段と、演算された制御値に基づいて自動変速機の変速比を制御する変速制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0004】
この駆動力制御装置によると、機関の実際の運転状態あるいは作動状態に即応して機関と自動変速機とを統合的に制御し、より具体的には内燃機関の目標出力および自動変速機の制御値を求めることができ、よって、機関の運転方式にかかわらず、常に燃費性能を最良にすることができる。
【特許文献1】特開平11−198684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関の燃費特性は、内燃機関および変速機の冷間時あるいは車両の加速時等の過渡状態の態様に応じて異なる傾向を示す。そのため、内燃機関の燃費の向上を図るためには、過渡状態に対応した燃費特性を予め用意しておくことが必要となる。
【0006】
しかしながら、過渡状態に対応した複数の燃費特性を予め設定する場合には、設計工数や適合工数が増加するという問題がある。また、内燃機関の燃費特性は製造バラツキにより個体毎に異なる場合があるため、複数の燃費特性を用意したとしても燃費特性の精度を向上させることができないという問題がある。
【0007】
上述した公報においては、複数のマップを切換えているに過ぎず、過渡状態に対応した複数の燃費特性の設計工数および適合工数の増加の課題および内燃機関の個体差による燃費特性の精度の低下の課題について何ら考慮されていない。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、設計工数および適合工数の増加を抑制しつつ、かつ、燃費の向上を図る車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る車両の制御装置は、内燃機関と、内燃機関の動力を連続的に変速して駆動輪に伝達する変速機とが搭載された車両の制御装置である。内燃機関は、内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置を有する。この制御装置は、車両の駆動力の要求の程度を検出するための検出手段と、車両の過渡状態を検出するための状態検出手段と、内燃機関の燃費特性を記憶するための記憶手段と、記憶された燃費特性を暫定燃費特性として、検出された要求の程度および暫定燃費特性に基づいて内燃機関の動作点を決定するための手段と、決定された動作点に基づいて、検出された車両の過渡状態の態様に対応した燃料供給装置による燃料供給量を算出するための算出手段と、算出された燃料供給量に基づいて暫定燃費特性を補正するための補正手段と、補正された暫定燃費特性を検出された過渡状態の態様に対応した燃費特性として、記憶手段に記憶された燃費特性を更新するための更新手段とを含む。第14の発明に係る車両の制御方法は、第1の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0010】
第1の発明によると、算出された燃料供給量に基づいて暫定燃費特性を補正することにより、内燃機関の過渡状態に対応した燃費特性の精度を向上させることができる。内燃機関の過渡状態の態様に対応した燃費特性は、燃料供給量の算出に伴なって逐次補正されるため、精度が向上する。その結果、様々な車両の過渡状態に対応した複数の燃費特性を予め適合し記憶しておく必要がない。そのため、設計工数あるいは適合工数の増加を抑制することができる。また、内燃機関の製造バラツキを有する場合であっても、燃費特性の補正には製造バラツキに対応する補正が含まれるため、製造バラツキによる燃費特性の精度の低下を抑制することができる。さらに、補正により精度が向上した燃費特性を用いて内燃機関を制御するようにすると燃費の向上が図れる。したがって、設計工数および適合工数を抑制しつつ、かつ、燃費の向上を図る車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、動作点は、内燃機関の回転数とトルクとを動作条件として含む。燃費特性は、内燃機関の回転数とトルクとに対応する燃料消費量を示す。補正手段は、算出された燃料供給量と、算出された燃料供給量に対応する内燃機関の回転数およびトルクとに基づいて燃料消費量を補正する。第15の発明に係る車両の制御方法は、第2の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0012】
第2の発明によると、算出された燃料供給量と、算出された燃料供給量に対応する回転数とトルクとに基づいて燃料消費量を補正することにより、燃費特性の精度を向上させることができる。
【0013】
第3の発明に係る車両の制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、燃費特性は、内燃機関の回転数とトルクとにより内燃機関の燃料消費量が特定される、記憶手段に記憶されたマップである。補正手段は、算出された燃料供給量に対応する回転数とトルクとにより特定されるマップ上の位置を含む予め定められた領域内の燃料消費量を補正する。第16の発明に係る車両の制御方法は、第3の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0014】
第3の発明によると、算出された燃料供給量に対応する回転数とトルクとにより特定されるマップ上の位置を含む予め定められた領域内の燃料消費量を補正する。これにより、算出された燃料供給量に対応する回転数とトルクとにより特定されるマップ上の位置の燃料消費量のみを補正する場合と比較して、マップ上において燃料消費量が急激に変動する段差部分が生じることを抑制することができる。
【0015】
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、補正手段は、算出された燃料供給量と、マップ上における予め定められた領域外の燃料消費量とに基づいて予め定められた範囲内の燃料消費量を補正する。第17の発明に係る車両の制御方法は、第4の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0016】
第4の発明によると、算出された燃料供給量と、予め定められた領域外の燃料消費量とに基づいて予め定められた範囲内の燃料消費量を補正する。これにより、算出された燃料供給量に対応する回転数とトルクとにより特定されるマップ上の位置の燃料消費量のみを補正する場合と比較して、マップ上において燃料消費量が急激に変動する段差部分が生じることを抑制することができる。
【0017】
第5の発明に係る車両の制御装置は、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、記憶手段は、車両の過渡状態の複数の態様に対応した複数の燃費特性を記憶する。制御装置は、検出された過渡状態の態様に基づいて、複数の燃費特性のうちの検出された過渡状態の態様に対応した燃費特性を選択するための選択手段をさらに含む。補正手段は、算出された燃料供給量に基づいて選択された燃費特性を補正する。第18の発明に係る車両の制御方法は、第5の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0018】
第5の発明によると、算出された燃料供給量に基づいて選択された過渡状態の態様(たとえば、内燃機関または変速機の冷間時、回転数の変動時あるいは車両の加速時)に対応する燃費特性を補正することにより、過渡状態の態様に対応する複数の燃費特性の精度をそれぞれ向上させることができる。そのため、車両の様々な過渡状態に対応した燃費特性の精度を向上させることができる。したがって、補正された燃費特性を用いて内燃機関を制御することにより、内燃機関の燃費の向上が図れる。
【0019】
第6の発明に係る車両の制御装置においては、第5の発明の構成に加えて、状態検出手段は、内燃機関の冷却水温を検出する。選択手段は、検出された冷却水温が予め定められた温度以下であると内燃機関の冷間時に対応した燃費特性を選択する。第19の発明に係る車両の制御方法は、第6の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0020】
第6の発明によると、算出された燃料供給量に基づいて燃費特性を補正することにより、内燃機関の冷間時に対応した燃費特性の精度を向上させることができる。そのため、補正された燃費特性を用いて内燃機関を制御するようにすると内燃機関の燃費の向上が図れる。
【0021】
第7の発明に係る車両の制御装置においては、第5の発明の構成に加えて、状態検出手段は、内燃機関の回転数を検出する。選択手段は、検出された回転数の時間変化量が予め定められた値以上であると内燃機関の回転数の変動時に対応した燃費特性を選択する。第20の発明に係る車両の制御方法は、第7の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0022】
第7の発明によると、算出された燃料供給量に基づいて燃費特性を補正することにより、内燃機関の回転数の変動時に対応した燃費特性の精度を向上させることができる。そのため、補正された燃費特性を用いて内燃機関を制御するようにすると内燃機関の燃費の向上が図れる。
【0023】
第8の発明に係る車両の制御装置においては、第5の発明の構成に加えて、状態検出手段は、車両の速度を検出する。選択手段は、検出された速度の時間変化量が予め定められた値以上であると車両の加速時に対応した燃費特性を選択する。第21の発明に係る車両の制御方法は、第8の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0024】
第8の発明によると、算出された燃料供給量に基づいて燃費特性を補正することにより、車両の加速時に対応した燃費特性の精度を向上させることができる。そのため、補正された燃費特性を用いて内燃機関を制御するようにすると内燃機関の燃費の向上が図れる。
【0025】
第9の発明に係る車両の制御装置においては、第5の発明の構成に加えて、状態検出手段は、変速機内の作動油の温度を検出する。選択手段は、検出された温度が予め定められた温度以下であると変速機の冷間時に対応した燃費特性を選択する。第22の発明に係る車両の制御方法は、第9の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0026】
第9の発明によると、算出された燃料供給量に基づいて燃費特性を補正することにより、変速機の冷間時に対応した燃費特性の精度を向上させることができる。そのため、補正された燃費特性を用いて内燃機関を制御するようにすると内燃機関の燃費の向上が図れる。
【0027】
第10の発明に係る車両の制御装置は、第1〜9のいずれかの発明の構成に加えて、内燃機関の回転数を検出するための回転数検出手段と、車両の速度を検出するための速度検出手段と、検出された要求の程度と車両の速度とに基づいて内燃機関の目標出力を決定するための手段と、決定された目標出力に基づいて変速機における変速比を決定するための手段と、決定された変速比になるように変速機を制御するための手段とをさらに含む。第23の発明に係る車両の制御方法は、第10の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0028】
第10の発明によると、目標出力に基づいて決定された変速比になるように変速機を制御することにより、燃費の良い領域において内燃機関を作動させることができる。これにより、燃費の向上が図れる。
【0029】
第11の発明に係る車両の制御装置は、第10の発明の構成に加えて、検出された内燃機関の回転数と、決定された目標出力と、暫定燃費特性とに基づいて目標トルクを決定するための手段と、決定された目標トルクが発現するように内燃機関のスロットル開度と燃料供給装置による燃料供給時間とを決定するための手段と、決定されたスロットル開度と燃料供給時間とに基づいて内燃機関を制御するための手段とを含む。第24の発明に係る車両の制御方法は、第11の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0030】
第11の発明によると、目標トルクに基づいて決定されたスロットル開度と燃料供給時間とに基づいて内燃機関を制御することにより、燃費の良い領域において内燃機関を作動させることができる。これにより、燃費の向上が図れる。
【0031】
第12の発明に係る車両の制御装置においては、第1〜11の発明の構成に加えて、変速機は、無段変速機である。第25の発明に係る車両の制御方法は、第12の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0032】
第12の発明によると、無段変速機が搭載される車両に本発明を適用して、燃費特性の精度を向上させることにより、設計工数および適合工数の増加を抑制しつつ、燃費の向上が図れる。
【0033】
第13の発明に係る車両の制御装置においては、第1〜11の発明の構成に加えて、車両は、車両の駆動源となる第1の回転電機と、内燃機関の動力に基づいて発電する第2の回転電機とを含む。変速機は、内燃機関および第1の回転電機の少なくとも一方の動力を車両の車輪軸に伝達する動力分割機構である。動力分割機構は、入力された内燃機関の動力または第1の回転電機の動力を、車輪軸への駆動力または第2の回転電機への動力に分割して出力する。第26の発明に係る車両の制御方法は、第13の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0034】
第13の発明によると、内燃機関と回転電機とを駆動源とするハイブリッド車両に本発明を適用して、燃費特性の精度を向上させることにより、設計工数および適合工数の増加を抑制しつつ、燃費の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0036】
図1を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る車両の制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。無段変速機はベルト式無段変速機であるが、特にベルト式無段変速機に限定されるものではない。
【0037】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、無段変速機10と、デファレンシャルギヤ800と、ECU1000とを含む。無段変速機10は、トルクコンバータ200と、前後進切換装置290と、ベルト式無段変速機構300と、油圧制御部1100とを含む。
【0038】
エンジン100は、出力軸であるクランクシャフト102と、エンジン回転数センサ430と、気筒104と、燃料供給装置106と、吸気管108と、吸気管108の途中に設けられる電子スロットル110と、電子スロットル110に設けられるスロットル開度センサ112と、吸気管108の途中であって電子スロットル110よりも上流吸入口側に設けられるエアフローメータ114と、排気管116と、水温センサ118とを含む。
【0039】
燃料供給装置106は、ECU1000からの制御信号に基づいてエンジン100に燃料を供給する。燃料供給装置106は、エンジン100の吸気ポート(図示せず)に燃料を噴射するポートインジェクタであってもよいし、エンジン100の気筒104内に直接燃料を噴射する筒内インジェクタであってもよく、特に限定されるものではない。
【0040】
エンジン回転数センサ430は、クランクシャフト102の回転数(すなわち、エンジン回転数NE)を検出する。エンジン回転数センサ430は、検出されたエンジン回転数NEを示す信号をECU1000に送信する。
【0041】
スロットル開度センサ112は、電子スロットル110のスロットル開度を検出する。スロットル開度センサ112は、検出されたスロットル開度を示す信号をECU1000に送信する。
【0042】
エアフローメータ114は、吸気管108における吸入空気量を検出する。エアフローメータ114は、検出された吸入空気量を示す信号をECU1000に送信する。
【0043】
水温センサ118は、エンジン100の内部に設けられる冷却水通路を流通する冷却水の温度を検出する。水温センサ118は、検出された冷却水温を示す信号をECU1000に送信する。
【0044】
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサ430により検出されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0045】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200とベルト式無段変速機構300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ400により検出される。
【0046】
トルクコンバータ200とベルト式無段変速機構300との間には、オイルポンプ260が設けられる。オイルポンプ260は、たとえば、ギヤポンプであって、入力軸側のポンプ羽根車220が回転するとともに作動する。オイルポンプ260は、油圧制御部1100の各種ソレノイドに油圧を供給する。
【0047】
ベルト式無段変速機構300は、前後進切換装置290を介在させてトルクコンバータ200に接続される。ベルト式無段変速機構300は、入力側のプライマリプーリ500と、出力側のセカンダリプーリ600と、プライマリプーリ500とセカンダリプーリ600とに巻き掛けられた金属製のベルト700とから構成される。プライマリプーリ500は、プライマリシャフトに固定された固定シーブおよびプライマリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。セカンダリプーリ600は、セカンダリシャフトに固定されている固定シーブおよびセカンダリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。
【0048】
プライマリプーリ500およびセカンダリプーリ600の油圧アクチュエータ(いずれも図示せず)には、それぞれ作動油が給排されている。変速は、各プーリ500,600の固定シーブと可動シーブとの間の溝幅を連続的に変化させることにより、ベルトの巻き掛け半径が大小に変化して行なわれる。
【0049】
油圧制御部1100は、プライマリプーリ500の回転数を目標回転数に一致させる変速比となるように、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する。さらに、油圧制御部1100は、セカンダリプーリ600の可動シーブを固定シーブ側に押圧してベルトを挟みつけてトルクを伝達するのに必要な張力が発現するようにセカンダリプーリ600の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する。
【0050】
ベルト式無段変速機構300のプライマリプーリ500の回転数NINは、プライマリプーリ回転数センサ410により検出され、セカンダリプーリ600の回転数NOUTは、セカンダリプーリ回転数センサ420により検出される。
【0051】
これら回転数センサは、プライマリプーリ500やセカンダリプーリ600の回転軸やこれに繋がるドライブシャフトに取付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、ベルト式無段変速機構300の、入力軸であるプライマリプーリ500や出力軸であるセカンダリプーリ600の僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0052】
前後進切換装置290は、ダブルピニオンプラネタリギヤ、リバース(後進用)ブレーキB1および入力クラッチC1を有している。プラネタリギヤは、そのサンギヤが入力軸に連結されており、第1および第2のピニオンP1,P2を支持するキャリヤCRがプライマリ側固定シーブに連結されており、そしてリングギヤRが後進用摩擦係合要素となるリバースブレーキB1に連結されており、またキャリヤCRとリングギヤRとの間に入力クラッチC1が介在している。この入力クラッチ310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、パーキング(P)ポジション、Rポジション、Nポジション以外の車両が前進するときに必ず係合状態で使用される。
【0053】
これらのパワートレーンを制御するECU1000および油圧制御部1100について説明する。ECU1000には、タービン回転数センサ400からタービン回転数NTを表わす信号が、プライマリプーリ回転数センサ410からプライマリプーリ回転数NINを表わす信号が、セカンダリプーリ回転数センサ420からセカンダリプーリ回転数NOUTを表わす信号が、それぞれ入力される。
【0054】
油圧制御部1100は、変速速度制御部1110と、ベルト挟圧力制御部1120と、ライン圧制御部1130と、ロックアップ係合圧制御部1132と、クラッチ圧制御部1140と、マニュアルバルブ1150とを含む。ECU1000は、油圧制御部1100の変速制御用デューティソレノイド(1)1200と、変速制御用デューティソレノイド(2)1210と、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220と、ライン圧制御用リニアソレノイド1230と、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240に対して制御信号を出力する。
【0055】
変速速度制御部1110は、車輪速に基づく車速やアクセル開度に応じて、変速制御用デューティソレノイド(1)1200により、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータへの作動油の流入量を制御することにより増速側の変速速度を制御する。さらに、変速速度制御部1110は、車輪速やアクセル開度に応じて、変速制御用デューティソレノイド(2)1210により、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータからの作動油の流出量を制御して減速側の変速速度を制御する。変速速度制御部1110によりプライマリプーリ500の油圧アクチュエータに対する作動油の流入量と流出量とを制御することにより変速制御が行なわれる。
【0056】
ベルト挟圧力制御部1120は、プライマリプーリ500の入力軸トルクと変速比とに応じてベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220により、セカンダリプーリ600の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御して、ベルト挟圧力を制御する。入力軸トルクは、たとえば、エンジン100の回転数、吸入空気量等に基づくエンジン100の出力トルクとトルクコンバータ200におけるトルク比とから推定されてもよいし、直接的に検出されてもよい。
【0057】
ライン圧制御部1130は、ベルト挟圧力に対応するベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に対する指示値とプライマリプーリ500の油圧アクチュエータに供給される油圧の推定値とからライン圧制御用リニアソレノイド1230によりライン圧を制御する。プライマリプーリ500のアクチュエータの油圧は、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータへの作動油の流入量と流出量とに基づいて推定される。ここで、ライン圧とは、オイルポンプ260により供給された油圧がレギュレータバルブ(図示せず)により調圧された油圧である。
【0058】
ロックアップ係合圧制御部1132は、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240によりロックアップクラッチ210の係合と解放の切換え、および、ロックアップクラッチ210の係合圧の漸増および漸減を制御する。
【0059】
マニュアルバルブ1150は、運転者のシフトレバーの操作に連動して作動して、油路を切換える。クラッチ圧制御部1140は、入力クラッチC1またはリバースブレーキB1の係合時に、ライン圧制御用リニアソレノイド1230によりマニュアルバルブ1150を経由して供給される油圧を制御する。
【0060】
車速センサ440は、車輪(図示せず)の回転数を検出する。車速センサ440は、検出された車輪の回転数を示す車輪速信号をECU1000に送信する。なお、本実施の形態においては、車速が検出できれば、特に車輪の回転数を検出することに限定されるものではなく、たとえば、セカンダリプーリ回転数と無段変速機から駆動輪までの減速比とに基づいて車速を演算するようにしてもよい。
【0061】
また、車両には、さらに、油圧制御部1100内を流通する作動油の温度を検出する油温センサ450と、アクセルペダルの踏み込み量、すなわち、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ460と、車両の加速度を検出するGセンサ470とが設けられる。
【0062】
油温センサ450は、油温を示す信号をECU1000に送信する。アクセル開度センサ460は、アクセル開度を示す信号をECU1000に送信する。Gセンサ470は、車両の加速度を示す信号をECU1000に送信する。
【0063】
上述したような無段変速機10が搭載された車両において、運転者がアクセルペダルを踏み込むと、ECU1000は、車速とアクセル開度とに応じて目標エンジン出力を設定する。ECU1000は、設定された目標エンジン出力がエンジン100の最適燃費線上で実現できるように目標変速比(あるいは、目標プライマリ回転数)を設定する。
【0064】
ECU1000は、目標変速比を設定すると実変速比(すなわち、実プライマリプーリ回転数と実セカンダリプーリ回転数との比に基づく変速比)が目標変速比に近づくように、変速制御用デューティソレノイド(1)1200、変速制御用デューティソレノイド(2)1210、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220およびライン圧制御用リニアソレノイド1230に対して制御信号を出力することによりフィードバック制御する。
【0065】
ECU1000は、メモリ1002を有する。メモリ1002には、各種情報、ECU1000が実行するプログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じてデータが読み出されたり、格納されたりする。
【0066】
図2に本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU1000の機能ブロック図を示す。ECU1000は、統合制御部1300と、エンジン制御部1400と、CVT制御部1500とを含む。
【0067】
統合制御部1300は、車速センサ440からの車速を示す信号と、アクセル開度センサ460からのアクセル開度を示す信号と、Gセンサ470により検出される車両の加速度とを受信する。
【0068】
さらに、統合制御部1300は、スロットル開度センサ112からのスロットル開度を示す信号と、水温センサ118からの冷却水温を示す信号と、エンジン回転数センサ430からのエンジン回転数NEを示す信号と、エアフローメータ114からの吸入空気量を示す信号とを、エンジン制御部1400を経由して受信する。
【0069】
また、統合制御部1300は、エンジン制御部1400からの後述する燃料噴射制御部1404において演算された燃料噴射量を示す信号を受信する。
【0070】
さらに、統合制御部1300は、タービン回転数センサ400からのタービン回転数を示す信号と、プライマリプーリ回転数センサ410からのプライマリプーリ500の回転数NINを示す信号と、セカンダリプーリ回転数センサ420からのセカンダリプーリ600の回転数NOUTを示す信号とを、CVT制御部1500を経由して受信する。
【0071】
統合制御部1300は、目標エンジン出力決定部1302と、状態設定部1304と、トルク・変速比演算部1306とを含む。
【0072】
目標エンジン出力決定部1302は、車速とアクセル開度とに基づく運転者が車両に要求するエンジン出力の目標値(以下、目標エンジン出力と記載する)を決定する。
【0073】
具体的には、目標エンジン出力決定部1302は、アクセル開度と車速と予め定められたマップとを用いて目標エンジン出力を決定する。
【0074】
予め定められたマップは、アクセル開度と車速とに対応づけられたエンジン100の要求出力を示すマップである。実験等によりアクセル開度と車速とに対応づけられる要求出力が適合され、マップとして作成される。
【0075】
目標エンジン出力決定部1302は、メモリ1002からマップを読み出して、受信したアクセル開度と車速とに基づくマップ上の位置を特定し、特定された位置に対応する要求出力をマップから算出する。目標エンジン出力決定部1302は、算出された要求出力を目標エンジン出力として決定する。目標エンジン出力決定部1302は、決定された目標エンジン出力を状態設定部1304に送信する。
【0076】
なお、目標エンジン出力決定部1302は、マップに代えて数式あるいは表等を用いて目標エンジン出力を決定するようにしてもよい。
【0077】
状態設定部1304は、車両の状態に基づいて車両の過渡状態の態様を設定する。車両の過渡状態の態様とは、車両の走行時の過渡状態、エンジン100の作動時の過渡状態および無段変速機10の作動時の過渡状態である。状態設定部1304は、車両の状態に応じて、複数の過渡状態の態様のうちのいずれか一つの態様を択一的に設定するようにしてもよいし、車両の状態に応じて複数の過渡状態の態様を組合せて設定するようにしてもよい。
【0078】
車両の走行時の過渡状態とは、たとえば、車両の加速時である。また、エンジン100の作動時の過渡状態とは、たとえば、エンジン100の回転数の変動時あるいはエンジン100の冷間時である。さらに、無段変速機10の作動時の過渡状態とは、たとえば、無段変速機10の冷間時である。
【0079】
なお、車両の過渡状態の態様は、エンジン100に供給される燃料噴射量に変動を生じさせる車両の状態であれば、特に上述の過渡状態の態様に限定されるものではない。たとえば、車両の過渡状態の態様は、排気温度、空燃比あるいは路面の勾配等に基づく車両の走行時、エンジン100の作動時あるいは無段変速機10の過渡状態であってもよい。
【0080】
状態設定部1304は、たとえば、車速の時間変化量が予め定められた値以上であると車両が加速中であることを設定する。なお、状態設定部1304は、車両が加速時であることを設定すると加速フラグをオンするようにしてもよい。予め定められた値は、車両が加速時中であることを判定できる値であれば特に限定されるものではなく、実験等により適合されればよい。あるいは、たとえば、車両の加速度を複数の領域(たとえば、0.1G−0.2Gの加速度領域、0.2G−0.5Gの加速度領域等)に予め区分しておき、状態設定部1304は、検出された加速度が属する加速度領域に応じた車両の過渡状態の態様を設定するようにしてもよい。
【0081】
さらに、状態設定部1304は、たとえば、エンジン回転数NEの時間変化量が予め定められた値以上に変化するとエンジン回転数NEに変動が生じていることを設定する。なお、状態設定部1304は、エンジン回転数NEに変動が生じていることを設定すると回転数変動フラグをオンするようにしてもよい。予め定められた値は、エンジン回転数NEが変動していることを判定できる値であれば特に限定されるものではなく、実験等により適合されればよい。
【0082】
状態設定部1304は、たとえば、エンジン100の冷却水温が予め定められた温度以下であるとエンジン100が冷間時であることを設定する。なお、状態設定部1304は、エンジン100が冷間時であることを設定するとエンジン冷間フラグをオンするようにしてもよい。予め定められた温度は、エンジン100が冷間時であることを判定できる温度(たとえば、噴射された燃料が霧化しにくくなる温度)であれば特に限定されるものではなく、実験等により適合されればよい。
【0083】
状態設定部1304は、たとえば、油圧制御部1100内を流通する作動油の温度が予め定められた温度以下であると無段変速機10が冷間時であることを設定する。なお、状態設定部1304は、無段変速機10が冷間時であることを設定するとCVT冷間フラグをオンするようにしてもよい。予め定められた温度は、無段変速機10が冷間時であることを判定できる温度(たとえば、作動油の流動性が低くなる温度)であれば特に限定されるものではなく、実験等により適合されればよい。
【0084】
状態設定部1304は、設定された過渡状態の態様(たとえば、加速フラグ、回転数変動フラグ、エンジン冷間フラグおよびCVT冷間フラグの状態)を示す信号をトルク・変速比演算部1306に送信する。なお、状態設定部1304は、車両の状態が過渡状態でないと車両の状態が定常状態であることを設定するようにしてもよい。
【0085】
トルク・変速比演算部1306は、状態設定部1304において設定された過渡状態の態様に基づいて複数のマップのうちのいずれか一つを選択する。
【0086】
マップは、エンジン回転数NEとエンジントルクとに対応する燃料消費量の変化を示す燃費特性である。図3に示すように、燃費特性を示すマップにおいて、縦軸がエンジン100のトルクを示し、横軸がエンジン100の回転数を示す。マップ上の略楕円形の実線は、等燃費線を示す。図3に示すマップは、楕円形の面積が小さくなる等燃費線ほど燃費は小さいことを示す。したがって、最も内側の楕円形の等燃費線で囲われる領域は最も燃費の低い低燃費領域となる。
【0087】
メモリ1002には、図3に示すようなマップが複数記憶される。複数のマップは、複数の過渡状態の態様の個々あるいは組合せに対応づけられた複数のマップ(1)〜マップ(X)としてメモリ1002に記憶される。予め複数のマップ(1)〜マップ(X)として記憶される燃費特性は、暫定的な燃費特性であればよく、たとえば、定常状態における燃費特性であってもよい。
【0088】
トルク・変速比演算部1306は、たとえば、エンジン100が冷間時であることが設定された場合には、マップ(1)〜マップ(X)のうちのエンジン100の冷間時に対応したいずれかのマップを選択する。
【0089】
さらに、トルク・変速比演算部1306は、たとえば、エンジン100が冷間時であって、車両が加速中である場合には、マップ(1)〜マップ(X)のうちのエンジン100が冷間時であって、かつ、車両が加速中である過渡状態に対応したいずれかのマップを選択する。
【0090】
なお、本実施の形態においては、トルク・変速比演算部1306は、状態設定部1304から受信する加速フラグ、回転変動フラグ、エンジン冷間フラグおよびCVT冷間フラグのそれぞれ、あるいは組合せに応じてマップ(1)〜マップ(X)のうちのいずれか一つのマップを選択する。
【0091】
トルク・変速比演算部1306は、メモリ1002から、設定された過渡状態の態様に対応したマップを暫定燃費特性として読み出す。トルク・変速比演算部1306は、決定された目標エンジン出力と読み出されたマップとに基づいてエンジン100の動作点を決定する。エンジン100の動作点は、エンジン100の回転数とトルクとを動作条件として含む。具体的には、トルク・変速比演算部1306は、決定された目標エンジン出力と検出されたエンジン回転数NEと読み出されたマップとに基づいて目標トルクを演算する。
【0092】
トルク・変速比演算部1306は、たとえば、目標エンジン出力が決定されると、図3の破線に示すように、決定された目標エンジン出力に対応するのマップ上の等出力線を特定する。トルク・変速比演算部1306は、特定された等出力線上の燃費の良い(燃費の低い)位置を特定する。
【0093】
トルク・変速比演算部1306は、たとえば、マップ上の等燃費線に応じて設定されるエンジン100の動作線と、等出力線との交点を特定するようにしてもよいし、等出力線と等燃費線との位置関係に基づく等出力線上の位置(たとえば、等出力線と、等出力線よりも低燃費領域側の等燃費線との距離が最短となる等出力線上の位置)を特定してもよい。
【0094】
トルク・変速比演算部1306は、特定された位置に対応するエンジントルクを目標トルクとして決定する。トルク・変速比演算部1306は、決定された目標トルクに基づいてスロットル開度の目標値を決定する。トルク・変速比演算部1306は、決定されたスロットル開度の目標値をエンジン制御部1400に送信する。
【0095】
さらに、トルク・変速比演算部1306は、決定された目標エンジン出力に基づいて目標変速比を演算する。トルク・変速比演算部1306は、演算された目標変速比をCVT制御部1500に送信する。
【0096】
さらに、トルク・変速比演算部1306は、後述する燃料噴射制御部1404において演算された燃料噴射量を受信する。なお、トルク・変速比演算部1306は、燃料噴射制御部1404から燃料噴射時間を受信して、燃料噴射量を演算するようにしてもよい。
【0097】
トルク・変速比演算部1306は、受信した燃料噴射量に基づいてマップ(1)〜マップ(X)のうちのいずれか対応するマップの燃費特性を更新する。
【0098】
具体的には、トルク・変速比演算部1306は、マップ(1)〜マップ(X)のうちの燃料噴射制御部1404において演算された燃料噴射量に対応するマップを特定する。たとえば、トルク・変速比演算部1306は、マップに基づいて決定された目標トルクに対応するスロットル開度の目標値がエンジン制御部1400に送信された後に、エンジン制御部1400から燃料噴射量を受信した場合に、目標トルクを決定したマップがエンジン制御部1400から受信した燃料噴射量に対応するマップであるとして特定するようにしてもよい。
【0099】
トルク・変速比演算部1306は、図4に示すように、受信した燃料噴射量に対応するトルクと回転数とに基づいてマップ上の位置Xを特定する。トルク・変速比演算部1306は、たとえば、決定した目標トルクと目標トルクに対応するエンジン100の回転数とに基づいて位置Xを特定するようにしてもよいし、あるいは、エンジン100の回転数の実測値と、エンジン100の回転数の実測値と吸入空気量の実測値とに基づくトルクの推定値とに基づいて位置Xを特定するようにしてもよい。トルク・変速比演算部1306は、位置Xを特定すると位置Xを含む予め定められた領域(図4の破線の領域)内の燃費特性を補正する。
【0100】
具体的には、トルク・変速比演算部1306は、位置Xを中心とする予め定められた領域内の燃料消費量を位置Xの燃料噴射量と、予め定められた領域外の燃料消費量とを用いて補間することにより、予め定められた領域内におけるトルクおよび回転数に対応する燃料消費量を補正する。
【0101】
予め定められた領域は、たとえば、位置Xに対応する回転数NE(0)よりも予め定められた値だけ低いエンジン回転数NE(1)から予め定められた値だけ高い回転数NE(2)までの領域(ただし、少なくともエンジン回転数NEは、ゼロあるいはアイドル回転数よりも大きい領域)であって、かつ、位置Xに対応するトルクTe(0)よりも予め定められた値だけ低いトルクTe(1)から予め定められた値だけ高いトルクTe(2)までの領域(ただし、少なくともエンジン100のトルクはゼロよりも大きい領域)である。なお、予め定められた領域は、位置Xを含む領域であればよい。
【0102】
トルク・変速比演算部1306は、たとえば、位置Xに対応する、エンジン制御部1400から受信した燃料噴射量と、予め定められた領域の外側の位置Bに対応する燃料消費量とに基づいて予め定められた領域内の位置CおよびDに対応する燃料消費量を線形補間により演算するようにしてもよい。なお、位置Xに基づく予め定められた領域内の燃料消費量の補正は、上述の態様に特に限定されるものではない。
【0103】
たとえば、位置Xの燃料消費量の変動分を予め定められた領域内のエンジン100のトルクと回転数とに対応する燃料消費量の変動分として反映するようにしてもよい。このような補正を行うと予め定められた領域の外側の燃料消費量と補正された予め定められた領域内の燃料消費量との間で段差が発生する場合もあるため、たとえば、補正幅の上限値を設定しておくようにしてもよい。
【0104】
トルク・変速比演算部1306は、同様に予め定められた領域内の燃料噴射量の全てを位置Xに対応する燃料噴射量と予め定められた領域の外側の位置に対応する燃料消費量とにより補正して、補正された燃料消費量に基づいてマップを更新する。トルク・変速比演算部1306は、更新したマップをメモリ1002に記憶する。
【0105】
図2に戻って、エンジン制御部1400は、エンジン回転数センサ430からのエンジン回転数NEを示す信号と、スロットル開度センサ112からのスロットル開度を示す信号とを受信する。また、エンジン制御部1400は、統合制御部1300からスロットル開度の目標値を示す信号を受信する。
【0106】
エンジン制御部1400は、スロットル制御部1402と、燃料噴射制御部1404とを含む。
【0107】
スロットル制御部1402は、検出されたスロットル開度が、統合制御部1300から受信するスロットル開度の目標値になるように電子スロットル110を制御する。具体的には、スロットル制御部1402は、検出されたスロットル開度とスロットル開度の目標値との差に基づいて制御信号を生成して電子スロットル110に送信する。
【0108】
燃料噴射制御部1404は、吸入空気量およびエンジン回転数NEに基づいて基本噴射時間を決定する。燃料噴射制御部1404は、さらに、エンジン100に設けられたセンサの信号に基づいて補正噴射時間を決定する。燃料噴射制御部1404は、決定された基本噴射時間と補正噴射時間とに基づいて燃料噴射時間を決定する。
【0109】
燃料噴射制御部1404は、決定された燃料噴射時間に基づいて制御信号を生成して燃料供給装置106に対して送信する。
【0110】
また、燃料噴射制御部1404は、エンジン回転数NEおよび決定された燃料噴射時間に基づく燃料噴射量を演算して、演算結果(すなわち、燃料噴射量)をトルク・変速比演算部1306に送信する。
【0111】
CVT制御部1500は、トルク・変速比演算部1306から受信する目標変速比と、無段変速機10から受信する各種センサ信号とに基づいて、実変速比が目標変速比に近づくように無段変速機10に対して制御信号を送信してフィードバック制御を実行する。
【0112】
また、本実施の形態において、統合制御部1300、エンジン制御部1400およびCVT制御部1500は、いずれもCPU(Central Processing Unit)が記憶部(図示せず)に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとしてもよいし、ハードウェアにより実現されるようにしてもよく、特に限定されるものではない。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0113】
すなわち、本実施の形態においては、統合制御部1300、エンジン制御部1400およびCVT制御部1500は、一つの統合されたECUにより実現されるものとして説明したが、それぞれ独立したECUにより実現されてもよい。
【0114】
以下、図5を参照して、本実施の形態に係る自動変速機の制御装置であるECU1000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0115】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU1000は、アクセル開度および車速を検出する。S102にて、ECU1000は、検出されたアクセル開度および車速に基づいて目標エンジン出力を決定する。
【0116】
S104にて、ECU1000は、車両の過渡状態の態様を設定する。S106にて、ECU1000は、設定された車両の過渡状態の態様に基づいて複数のマップ(1)〜マップ(X)のうちの対応する燃費特性を示すマップを選択する。
【0117】
S108にて、ECU1000は、決定された目標エンジン出力に基づいて目標変速比を決定する。
【0118】
S110にて、ECU1000は、決定された目標エンジン出力の等出力線および等燃費線の位置関係に基づいて目標トルクを決定する。S112にて、ECU1000は、決定された目標トルクに基づいてスロットル開度を決定する。
【0119】
このとき、決定されたスロットル開度になるように電子スロットル110が制御される。S114にて、ECU1000は、検出された吸入空気量およびエンジン回転数NEに基づいて燃料噴射時間を決定する。
【0120】
S116にて、ECU1000は、決定された燃料噴射時間に基づいて燃料噴射量を算出する。S118にて、ECU1000は、決定された目標トルクとエンジン回転数NEとにより特定される位置Xを中心とする燃料噴射量と予め定められた領域の外側の燃料消費量とに基づいて予め定められた領域内の燃料消費量を補正する。S120にて、ECU1000は、補正されたマップを設定された車両の過渡状態に対応した燃費特性としてメモリ1002に記憶されたマップを更新する。
【0121】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU1000の動作について説明する。
【0122】
たとえば、エンジン100の冷却水温が予め定められた値以下である場合を想定する。車両の走行中においては運転者がアクセルペダルを操作量に応じて、アクセル開度と車速とが検出され(S100)、検出されたアクセル開度と車速とに基づいて目標エンジン出力が決定される(S102)。
【0123】
たとえば、エンジン100の冷却水温が予め定められた値以下である場合、エンジン100の冷間時であることが設定される(S104)。エンジン100の冷間時であることが設定されると、設定された過渡状態の態様に対応するマップが選択される(S106)。
【0124】
選択されたマップ上における等燃費線と決定された目標エンジン出力の等出力線とに基づいて等出力線上における燃費の良いトルクとエンジン回転数NEとが特定される。決定された目標エンジン出力に基づいて目標変速比が決定される(S108)。
【0125】
さらに、決定された目標エンジン出力の等出力線および等燃費線の位置関係に基づいてエンジン100の目標トルクが決定される(S110)。決定された目標トルクに基づいてスロットル開度が決定される(S112)。このとき、決定されたスロットル開度になるように、電子スロットル110が制御される。そして、燃料噴射時間が決定され(S114)、決定された燃料噴射時間に基づいて燃料供給装置106が制御される。
【0126】
そして、決定された燃料噴射時間に基づいて燃料噴射量が演算され、演算された燃料噴射量に基づいてマップが補正され(S118)、メモリ1002に記憶されたマップが更新される。
【0127】
エンジン100の過渡状態が冷間時である限り、燃料噴射量の算出にともなって逐次エンジン100の冷間時に対応するマップが補正される。なお、運転者がアクセルペダルの踏み込み量を増加するなどして車両が加速する場合には、燃料噴射量の算出にともなって逐次エンジン100が冷間時であって、かつ、車両が加速中であるという過渡状態に対応するマップが補正される。このように過渡状態の態様が変化する毎に対応するマップ逐次補正される。
【0128】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、算出された燃料噴射量に基づいて燃費特性を補正することにより、エンジンの過渡状態に対応した燃費特性の精度を向上させることができる。エンジンの過渡状態の態様に対応した燃費特性は、燃料噴射量の算出に伴なって逐次補正されるため、精度が向上する。その結果、様々な車両の過渡状態に対応した複数の燃費特性を予め適合し記憶しておく必要がない。そのため、設計工数あるいは適合工数の増加を抑制することができる。また、エンジンの製造バラツキを有する場合であっても、燃費特性の補正には製造バラツキに対応する補正が含まれるため、製造バラツキによる燃費特性の精度の低下を抑制することができる。さらに、補正により精度が向上した燃費特性を用いてエンジンを制御するようにすると燃費の向上が図れる。したがって、設計工数および適合工数を抑制しつつ、かつ、燃費の向上を図る車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
【0129】
特に、車両違いによると特性差や計時劣化による特性の変化に対しても補正により燃費の低下を抑制することができる。なお、車両違いによる特性差とは、たとえば、エンジンの冷却水温あるいは変速機の油温の上昇の態様の差、ギヤ比・タイヤ半径違いによる動力性能の差、車両の個体差による性能差等である。
【0130】
また、算出された燃料噴射量に対応する回転数とトルクとにより特定されるマップ上の位置を中心とした予め定められた領域内の燃料消費量を補正することにより、算出された燃料噴射量に対応する回転数とトルクとにより特定されるマップ上の位置の燃料消費量のみを補正する場合と比較して、マップ上において燃料消費量が急激に変動する段差部分が生じることを抑制することができる。
【0131】
さらに、算出された燃料噴射量と、マップにおける予め定められた領域外の燃料消費量とに基づいて予め定められた範囲内の燃料消費量を補正することにより、算出された燃料噴射量に対応する回転数とトルクとにより特定されるマップ上の位置の燃料消費量のみを補正する場合と比較して、マップ上において燃料消費量が急激に変動する段差部分が生じることを抑制することができる。
【0132】
そして、算出された燃料噴射量に基づいて設定された過渡状態の態様(たとえば、エンジンまたは無段変速機の冷間時、回転数の変動時あるいは車両の加速時)に対応する燃費特性を補正することにより、様々な過渡状態の態様に対応する燃費特性の精度をそれぞれ向上させることができる。
【0133】
本実施の形態においては、車両に搭載される変速機としては、無段変速機を一例として説明したが、変速比が連続して変更できる変速機であれば特に限定されるものではない。たとえば、エンジンに加えて、車両の駆動源となる回転電機(モータ)と、エンジンの動力に基づいて発電する回転電機(ジェネレータ)とが搭載され、エンジンおよびモータの少なくとも一方の動力を車両の車輪軸に伝達する動力分割機構を変速機とするハイブリッド車両であってもよい。動力分割機構は、入力されたエンジンの動力またはモータの動力を、車輪軸への駆動力またはジェネレータへの動力に分割して出力するものである。
【0134】
エンジンとモータとを駆動源とするハイブリッド車両に本発明を適用することにより、燃費特性を補正して精度を向上させることができるため、設計工数および適合工数の増加を抑制しつつ、燃費の向上が図れる。
【0135】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本実施の形態における無段変速機の制御ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る車両の制御装置であるECUの機能ブロック図である。
【図3】エンジン回転数NEとトルクと等燃費線との関係を示す図である。
【図4】マップの補正の態様を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る車両の制御装置であるECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0137】
10 無段変速機、100 エンジン、102 クランクシャフト、104 気筒、106 燃料供給装置、108 吸気管、110 電子スロットル、112 スロットル開度センサ、114 エアフローメータ、116 排気管、118 水温センサ、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、260 オイルポンプ、290 前後切換装置、300 ベルト式無段変速機構、310 入力クラッチ、400 タービン回転数センサ、410 プライマリプーリ回転数センサ、420 セカンダリプーリ回転数センサ、430 エンジン回転数センサ、440 車速センサ、450 油温センサ、460 アクセル開度センサ、470 Gセンサ、500 プライマリプーリ、600 セカンダリプーリ、700 ベルト、800 デファレンシャルギヤ、1100 油圧制御部、1110 変速速度制御部、1120 ベルト挟圧力制御部、1130 ライン圧制御部、1132 ロックアップ係合圧制御部、1140 クラッチ圧制御部、1150 マニュアルバルブ、1220 ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド、1230 ライン圧制御用リニアソレノイド、1240 ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド、1300 統合制御部、1302 目標エンジン出力決定部、1304 状態設定部、1306 トルク・変速比演算部、1400 エンジン制御部、1402 スロットル制御部、1404 燃料噴射制御部、1500 CVT制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関の動力を連続的に変速して駆動輪に伝達する変速機とが搭載された車両の制御装置であって、前記内燃機関は、前記内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置を有し、
前記車両の駆動力の要求の程度を検出するための検出手段と、
前記車両の過渡状態を検出するための状態検出手段と、
前記内燃機関の燃費特性を記憶するための記憶手段と、
前記記憶された燃費特性を暫定燃費特性として、前記検出された要求の程度および前記暫定燃費特性に基づいて前記内燃機関の動作点を決定するための手段と、
前記決定された動作点に基づいて、前記検出された車両の過渡状態の態様に対応した前記燃料供給装置による燃料供給量を算出するための算出手段と、
前記算出された燃料供給量に基づいて前記暫定燃費特性を補正するための補正手段と、
前記補正された暫定燃費特性を前記検出された過渡状態の態様に対応した燃費特性として、前記記憶手段に記憶された燃費特性を更新するための更新手段とを含む、車両の制御装置。
【請求項2】
前記動作点は、前記内燃機関の回転数とトルクとを動作条件として含み、
前記燃費特性は、前記内燃機関の回転数とトルクとに対応する燃料消費量を示し、
前記補正手段は、前記算出された燃料供給量と、前記算出された燃料供給量に対応する前記内燃機関の回転数およびトルクとに基づいて前記燃料消費量を補正する、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記燃費特性は、前記内燃機関の回転数とトルクとにより前記内燃機関の燃料消費量が特定される、前記記憶手段に記憶されたマップであって、
前記補正手段は、前記算出された燃料供給量に対応する回転数とトルクとにより特定される前記マップ上の位置を含む予め定められた領域内の燃料消費量を補正する、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記算出された燃料供給量と、前記マップ上における前記予め定められた領域外の燃料消費量とに基づいて前記予め定められた範囲内の燃料消費量を補正する、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記車両の過渡状態の複数の態様に対応した複数の燃費特性を記憶し、
前記制御装置は、前記検出された過渡状態の態様に基づいて、前記複数の燃費特性のうちの前記検出された過渡状態の態様に対応した燃費特性を選択するための選択手段をさらに含み、
前記補正手段は、前記算出された燃料供給量に基づいて前記選択された燃費特性を補正する、請求項1〜4のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記状態検出手段は、前記内燃機関の冷却水温を検出し、
前記選択手段は、前記検出された冷却水温が予め定められた温度以下であると前記内燃機関の冷間時に対応した燃費特性を選択する、請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記状態検出手段は、前記内燃機関の回転数を検出し、
前記選択手段は、前記検出された回転数の時間変化量が予め定められた値以上であると前記内燃機関の回転数の変動時に対応した燃費特性を選択する、請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記状態検出手段は、前記車両の加速度を検出し、
前記選択手段は、前記検出された加速度が予め定められた値以上であると前記車両の加速時に対応した燃費特性を選択する、請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記状態検出手段は、前記変速機内の作動油の温度を検出し、
前記選択手段は、前記検出された温度が予め定められた温度以下であると前記変速機の冷間時に対応した燃費特性を選択する、請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記内燃機関の回転数を検出するための回転数検出手段と、
前記車両の速度を検出するための速度検出手段と、
前記検出された要求の程度と前記車両の速度とに基づいて前記内燃機関の目標出力を決定するための手段と、
前記決定された目標出力に基づいて前記変速機における変速比を決定するための手段と、
前記決定された変速比になるように前記変速機を制御するための手段とをさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記検出された内燃機関の回転数と、前記決定された目標出力と、前記暫定燃費特性とに基づいて目標トルクを決定するための手段と、
前記決定された目標トルクが発現するように前記内燃機関のスロットル開度と前記燃料供給装置による燃料供給時間とを決定するための手段と、
前記決定されたスロットル開度と燃料供給時間とに基づいて前記内燃機関を制御するための手段とを含む、請求項10に記載の車両の制御装置。
【請求項12】
前記変速機は、無段変速機である、請求項1〜11のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項13】
前記車両は、
車両の駆動源となる第1の回転電機と、
前記内燃機関の動力に基づいて発電する第2の回転電機とを含み、
前記変速機は、前記内燃機関および前記第1の回転電機の少なくとも一方の動力を前記車両の車輪軸に伝達する動力分割機構であって、
前記動力分割機構は、入力された前記内燃機関の動力または前記第1の回転電機の動力を、前記車輪軸への駆動力または前記第2の回転電機への動力に分割して出力する、請求項1〜11に記載の車両の制御装置。
【請求項14】
内燃機関と、前記内燃機関の動力を連続的に変速して駆動輪に伝達する変速機とが搭載された車両の制御方法であって、前記内燃機関は、前記内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置を有し、
前記車両の駆動力の要求の程度を検出する検出ステップと、
前記車両の過渡状態を検出する状態検出ステップと、
前記内燃機関の燃費特性を記憶する記憶ステップと、
前記記憶された燃費特性を暫定燃費特性として、前記検出された要求の程度および前記暫定燃費特性に基づいて前記内燃機関の動作点を決定するステップと、
前記決定された動作点に基づいて、前記検出された車両の過渡状態の態様に対応した前記燃料供給装置による燃料供給量を算出する算出ステップと、
前記算出された燃料供給量に基づいて前記暫定燃費特性を補正する補正ステップと、
前記補正された暫定燃費特性を前記検出された過渡状態の態様に対応した燃費特性として、前記記憶ステップにて記憶された燃費特性を更新する更新ステップとを含む、車両の制御方法。
【請求項15】
前記動作点は、前記内燃機関の回転数とトルクとを動作条件として含み、
前記燃費特性は、前記内燃機関の回転数とトルクとに対応する燃料消費量を示し、
前記補正ステップは、前記算出された燃料供給量と、前記算出された燃料供給量に対応する前記内燃機関の回転数およびトルクとに基づいて前記燃料消費量を補正する、請求項14に記載の車両の制御方法。
【請求項16】
前記燃費特性は、前記内燃機関の回転数とトルクとにより前記内燃機関の燃料消費量が特定される、前記記憶手段に記憶されたマップであって、
前記補正ステップは、前記算出された燃料供給量に対応する回転数とトルクとにより特定される前記マップ上の位置を含む予め定められた領域内の燃料消費量を補正する、請求項15に記載の車両の制御方法。
【請求項17】
前記補正ステップは、前記算出された燃料供給量と、前記マップ上における前記予め定められた領域外の燃料消費量とに基づいて前記予め定められた範囲内の燃料消費量を補正する、請求項16に記載の車両の制御方法。
【請求項18】
前記記憶ステップは、前記車両の過渡状態の複数の態様に対応した複数の燃費特性を記憶し、
前記制御方法は、前記検出された過渡状態の態様に基づいて、前記複数の燃費特性のうちの前記検出された過渡状態の態様に対応した燃費特性を選択する選択ステップをさらに含み、
前記補正ステップは、前記算出された燃料供給量に基づいて前記選択された燃費特性を補正する、請求項14〜17のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項19】
前記状態検出ステップは、前記内燃機関の冷却水温を検出し、
前記選択ステップは、前記検出された冷却水温が予め定められた温度以下であると前記内燃機関の冷間時に対応した燃費特性を選択する、請求項18に記載の車両の制御方法。
【請求項20】
前記状態検出ステップは、前記内燃機関の回転数を検出し、
前記選択ステップは、前記検出された回転数の時間変化量が予め定められた値以上であると前記内燃機関の回転数の変動時に対応した燃費特性を選択する、請求項18に記載の車両の制御方法。
【請求項21】
前記状態検出ステップは、前記車両の加速度を検出し、
前記選択ステップは、前記検出された加速度が予め定められた値以上であると前記車両の加速時に対応した燃費特性を選択する、請求項18に記載の車両の制御方法。
【請求項22】
前記状態検出ステップは、前記変速機内の作動油の温度を検出し、
前記選択ステップは、前記検出された温度が予め定められた温度以下であると前記変速機の冷間時に対応した燃費特性を選択する、請求項18に記載の車両の制御方法。
【請求項23】
前記制御方法は、
前記内燃機関の回転数を検出するステップと、
前記車両の速度を検出するステップと、
前記検出された要求の程度と前記車両の速度とに基づいて前記内燃機関の目標出力を決定するステップと、
前記決定された目標出力に基づいて前記変速機における変速比を決定するステップと、
前記決定された変速比になるように前記変速機を制御するステップとをさらに含む、請求項14〜22のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項24】
前記制御方法は、
前記検出された内燃機関の回転数と、前記決定された目標出力と、前記暫定燃費特性とに基づいて目標トルクを決定するステップと、
前記決定された目標トルクが発現するように前記内燃機関のスロットル開度と前記燃料供給装置による燃料供給時間とを決定するステップと、
前記決定されたスロットル開度と燃料供給時間とに基づいて前記内燃機関を制御するステップとを含む、請求項23に記載の車両の制御方法。
【請求項25】
前記変速機は、無段変速機である、請求項14〜24のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項26】
前記車両は、
車両の駆動源となる第1の回転電機と、
前記内燃機関の動力に基づいて発電する第2の回転電機とを含み、
前記変速機は、前記内燃機関および前記第1の回転電機の少なくとも一方の動力を前記車両の車輪軸に伝達する動力分割機構であって、
前記動力分割機構は、入力された前記内燃機関の動力または前記第1の回転電機の動力を、前記車輪軸への駆動力または前記第2の回転電機への動力に分割して出力する、請求項14〜24に記載の車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−250083(P2009−250083A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97103(P2008−97103)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】