説明

車両の走行安全装置

【課題】運転者が安全装置の作動に煩わしさを感じてしまうことを防止しつつ、適切なタイミングで安全装置を作動させる。
【解決手段】車両の走行安全装置10は、所定の接触判定条件に基づき自車両と物体との接触に係る判定を行なう接触判定部24と、接触判定部24の判定結果に応じて接触回避の支援動作を作動させる車両制御部25と、物体検知部21により検知された物体の形状に基づき、自車両の走行路に接続される接続路の状態を判定する接続路判定部22と、自車両の走行路と接続路との接続部付近の見通しの良否を判定する見通し判定部23とを備え、接触判定部24は、接続路の幅が所定閾値以下であって、かつ、接続路の手前位置に検知された路側物により接続部付近の見通しが悪いと判定された場合に、接触回避の支援動作が作動し易くなるようにして接触判定条件を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自車両から他車両までの距離が所定距離以下になった場合にブレーキを自動作動させる車両用追突防止装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えば優先道路に接続された路地を走行する車両に対して、優先道路と路地との交差点付近で警報を通知すると共に、優先道路を走行する車両に対して、路地を走行する車両の情報などを通知する交通管制システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−298022号公報
【特許文献2】特開平10−302200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る車両用追突防止装置によれば、単に、自車両から他車両までの距離に応じてブレーキの作動有無が判定されるだけであって、走行路の状態、例えば、走行路に接続される路地の有無などは考慮されていない。しかも、運転者による運転操作との干渉を抑制するために、運転者の運転操作による回避限界に至るまでは、自動的なブレーキの作動は抑制されている。このため、例えば見通しの悪い狭い路地から他車両が現れる場合などにおいては、運転者による他車両の認知および回避操作の実行が遅れてしまうと共に、自動的なブレーキの作動タイミングも遅れてしまう虞がある。このような問題に対して、単に、作動遅れが生じることを解消するために自動的なブレーキを作動し易くするだけでは、作動頻度が過剰に増大してしまい、運転者が煩わしさを感じてしまうという問題が生じる。
また、上記従来技術に係る交通管制システムによれば、各種の設備を設置するための費用が増大してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、運転者が安全装置の作動に煩わしさを感じてしまうことを防止しつつ、適切なタイミングで安全装置を作動させることが可能な車両の走行安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る車両の走行安全装置は、車両に搭載され、進行方向前方に存在する物体を検知する物体検知手段(例えば、実施の形態での物体検知部21)と、前記物体検知手段による前記物体の検知結果と所定の接触判定条件とに基づき、自車両と前記物体との接触に係る判定を行なう接触判定手段(例えば、実施の形態での接触判定部24)と、前記接触判定手段の判定結果に応じて車両の安全装置(例えば、実施の形態でのスロットルアクチュエータ14、ブレーキアクチュエータ15、ステアリングアクチュエータ16、報知装置17)を作動させる接触回避支援手段(例えば、実施の形態での車両制御部25)とを備える車両の走行安全装置であって、前記物体検知手段により検知された前記物体の形状に基づき、自車両の走行路に接続される接続路の状態を判定する接続路判定手段(例えば、実施の形態での接続路判定部22)と、自車両の前記走行路と前記接続路との接続部付近の見通しの良否を判定する見通し判定手段(例えば、実施の形態での見通し判定部23)とを備え、前記接触判定手段は、前記接続路判定手段により判定される前記接続路の幅が所定値(例えば、実施の形態での所定閾値)以下であって、かつ、前記接続路の手前位置に前記物体検知手段により検知された路側物により自車両の前記走行路と前記接続路との前記接続部付近の見通しが悪いと前記見通し判定手段により判定された場合に、前記安全装置が作動し易くなるようにして前記接触判定条件を変更する。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る車両の走行安全装置では、前記接続路判定手段は、自車両の前記走行路に平行な表面を有する第1の路側物(例えば、実施の形態での路側物β)と、該第1の路側物から所定値未満の所定距離をおいた位置で自車両の前記走行路に平行な平面と自車両の前記走行路に交差する平面とによる交差稜線部を有する第2の路側物(例えば、実施の形態での路側物α)とが前記物体検知手段により検知された場合に、自車両の前記走行路に接続される前記接続路の幅が前記所定値以下であると判定する。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係る車両の走行安全装置では、前記接触判定手段は、前記物体検知手段により、自車両の前記走行路に接続される前記接続路から自車両の前記走行路に移動する物体が検知された場合に、前記安全装置が作動し易くなるようにして前記接触判定条件を変更する。
【0009】
さらに、本発明の第4態様に係る車両の走行安全装置では、前記物体検知手段は、自車両の前記走行路に平行な表面を有する第1の路側物(例えば、実施の形態での路側物β)と、該第1の路側物から所定距離を置いた位置で自車両の前記走行路に略平行な平面と自車両の前記走行路に直交する平面とによる交差稜線部を有する第2の路側物(例えば、実施の形態での路側物α)とを検知し、前記第1の路側物の自車両側の端部と前記第2の路側物の前記交差稜線部とを結ぶ直線を跨ぐ移動軌跡を有する物体を検知した場合に、自車両の前記走行路に接続される前記接続路から自車両の前記走行路に移動する物体を検知したとする。
【0010】
さらに、本発明の第5態様に係る車両の走行安全装置では、前記物体検知手段は、自車両の前記走行路に平行な表面を有する第1の路側物(例えば、実施の形態での路側物β)と、該第1の路側物から所定距離を置いた位置で自車両の前記走行路に略平行な平面と自車両の前記走行路に直交する平面とによる交差稜線部を有する第2の路側物(例えば、実施の形態での路側物α)とを検知し、前記第1の路側物の自車両側の端部と前記第2の路側物の前記交差稜線部とを結ぶ直線付近に物体を検知し、該物体の移動方向が自車両の前記走行路に向う方向であることを検知した場合に、自車両の前記走行路に接続される前記接続路から自車両の前記走行路に移動する物体を検知したとする。
【0011】
さらに、本発明の第6態様に係る車両の走行安全装置では、前記見通し判定手段は、前記物体検知手段により、前記接続路の手前位置に自車両の前記走行路に平行な表面を有する第1の路側物が検知され、該第1の路側物の長さが所定長さ以上であることが検知された場合に、自車両の前記走行路と前記接続路との前記接続部付近の見通しが悪いと判定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様に係る車両の走行安全装置によれば、自車両の走行路に接続される接続路の幅が所定値以下であって、接続部付近の見通しが悪い場合に、安全装置が作動し易くなるように設定することにより、作動タイミングを早めることができ、運転者が安全装置の作動に煩わしさを感じてしまうことを防止しつつ、迅速かつ適切なタイミングで安全装置を作動させることができる。
【0013】
本発明の第2態様に係る車両の走行安全装置によれば、所定値以下の幅の接続路の有無を精度良く判定することができる。
【0014】
本発明の第3態様に係る車両の走行安全装置によれば、接続路から自車両の走行路に移動する物体を実際に検知した場合に安全装置が作動し易くなるように設定することにより、単に接続路が存在するだけで安全装置が作動し易くなってしまうことを防止することができる。
【0015】
本発明の第4態様に係る車両の走行安全装置によれば、接続路での物体の移動速度を検知する必要無しに、物体の移動軌跡を用いることで演算処理の負荷を低減することができる。
【0016】
本発明の第5態様に係る車両の走行安全装置によれば、物体を検知した位置と物体の移動方向(つまり、移動速度の方向)とを用いることにより、物体が接続路から現れた直後に迅速な対応を行なうことができる。
【0017】
本発明の第6態様に係る車両の走行安全装置によれば、接続部付近の見通しの良否を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の走行安全装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る自車両の走行路に接続された接続路(路地)の接続部付近の反射点の位置の例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る自車両の走行路に接続された接続路での他車両の位置の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る自車両の走行路に接続された接続路での他車両の位置の例を示す図である。
【図5】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両の走行安全装置10は、例えば図1に示すように、車両の走行安全装置10を制御するCPU(中央演算装置)を備えた処理ユニット11と、外界センサ12と、車両状態センサ13と、スロットルアクチュエータ14と、ブレーキアクチュエータ15と、ステアリングアクチュエータ16と、報知装置17とを備えて構成されている。
【0020】
外界センサ12は、例えばレーザ光やミリ波などの電磁波によるレーダ装置あるいは撮像装置を備えて構成されている。
例えばレーダ装置は、自車両の外界に設定された検出対象領域を複数の角度領域に分割し、各角度領域を走査するようにして、電磁波の発信信号を発信し、各発信信号が自車両の外部の物体(例えば、他車両や構造物など)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、レーダ装置から外部の物体までの距離に係る検知信号を生成し、処理ユニット11に出力する。
また、例えば撮像装置は、カメラの撮像により得られた画像に対して画像処理をおこなって画像データを生成し、処理ユニット11に出力する。
【0021】
車両状態センサ13は、例えば、自車両の速度(車速)を検出する車速センサと、車体に作用する加速度を検知する加速度センサと、車体の姿勢や進行方向を検知するジャイロセンサと、ヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検知するヨーレートセンサと、例えば人工衛星を利用して自車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信する測位信号受信機と、運転者による運転操作(例えば、アクセルペダルの踏み込み操作量、ブレーキペダルの踏み込み操作量、ステアリングホイールの舵角、シフトポジションなど)を検出する各センサとなどを備えて構成され、自車両の各種の車両情報の検知結果の信号を出力する。
【0022】
この車両の走行安全装置10の処理ユニット11は、例えば、物体検知部21と、接続路判定部22と、見通し判定部23と、接触判定部24と、車両制御部25とを備えて構成されている。
【0023】
物体検知部21は、外界センサ12のレーダ装置から出力される検知信号または撮像装置から出力される画像データに基づき、自車両の進行方向前方に設定された各検知対象領域内に存在する物体の形状および物体までの距離などを検知し、検知結果の信号を出力する。
接続路判定部22は、物体検知部21から出力される物体の検知結果の信号に基づき、自車両の走行路に接続された接続路が存在するか否か、および、接続路が狭いか否かを判定し、判定結果の信号を出力する。
例えば図2に示すように、接続路判定部22は、外界センサ12のレーダ装置により検知された電磁波の反射点rの位置から、自車両の走行路Lに平行な平面Wa1と自車両の走行路に交差する平面Wa2とによる交差稜線部Raを有する路側物αと、この路側物αから所定値未満の所定距離をおいた位置で自車両の走行路に平行な平面Wbを有する路側物βとの存在を検知した場合に、自車両の走行路に接続された接続路が存在すると判定する。
さらに、接続路判定部22は、接続路が存在すると判定した場合には、この接続路が狭い接続路であるか否かを判定する。
例えば、接続路判定部22は、接続路を構成する2つの路側物α,βの対向する端点(A点およびB点)間の距離を算出し、この距離(つまり、接続路の幅)が所定閾値以下である場合に、接続路が狭い接続路であると判定する。
【0024】
見通し判定部23は、接続路判定部22から出力される判定結果の信号に基づき、自車両の走行路に接続された接続路の接続部付近の見通しの良否を判定する。
例えば、見通し判定部23は、接続路判定部22により検知された接続路を構成する一方の路側物βの長さ、つまり自車両の走行路が伸びる方向での路側物βの長さが所定長さ以上である場合に、この路側物βにより構成される接続路の接続部付近の見通しが悪いと判定する。
【0025】
接触判定部24は、物体検知部21から出力される物体の検知結果の信号と、車両状態センサ13から出力される検知結果の信号と、所定の接触判定条件とに基づき、自車両と物体とが接触する可能性があるか否か、さらに、接触の可能性がある場合には接触の危険度を判定する。
例えば、接触判定部24は、自車両の走行軌跡と物体の移動軌跡とが交差する領域を接触予測領域として、自車両が接触予測領域に到達するのに要する時間(接触時間)を推定する。そして、自車両が現在の走行状態(例えば、現在の車速、ヨーレートなど)を維持した状態で接触時間に亘って走行した際の物体の移動軌跡と自車両との重なり量を算出する。そして、例えば、この重なり量が零よりも大きい場合には、自車両と物体とが接触する可能性があると判定する。
さらに、接触判定部24は、自車両と物体とが接触する可能性がある場合に、接触の危険度が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。例えば、接触判定部24は、自車両と物体との距離が所定のブレーキ回避限界距離または所定の操舵回避限界距離よりも長い場合、あるいは、接触時間が所定の限界時間よりも短い場合などに、接触の危険度が所定の閾値よりも大きいと判定する。
【0026】
さらに、接触判定部24は、接続路判定部22により判定される接続路の幅が所定閾値以下であって、かつ、接続路の手前位置に物体検知部21により検知された路側物(例えば、接続路を構成する一方の路側物β)により接続路の接続部付近の見通しが悪いと見通し判定部23により判定された場合に、物体検知部21により検知された所定の物体に対して、スロットルアクチュエータ14とブレーキアクチュエータ15とステアリングアクチュエータ16と報知装置17とによる接触回避のための支援動作が作動し易くなるようにして接触判定条件を変更する。
例えば、接触判定部24は、所定のブレーキ回避限界距離または所定の操舵回避限界距離あるいは所定の限界時間を通常の値(通常閾値)から、より長い値(狭い路地用閾値)に変更することによって、接触回避のための支援動作が作動し易くなるように設定する。
なお、物体検知部21により検知された所定の物体とは、例えば図3に示すように接続路を構成する2つの路側物α,βの対向する端点(A点およびB点)付近に存在して接続路から自車両の走行路に進入する方向に移動している物体P1、あるいは、例えば図4に示すように接続路を構成する2つの路側物α,βの対向する端点(A点およびB点)間を結ぶ直線を跨ぐ移動軌跡を有する物体P2などである。
【0027】
車両制御部25は、接触判定部24による判定結果に応じて、自車両の走行状態を制御する制御信号を出力する。この制御信号は、例えば、トランスミッション(T/M)の変速動作を制御する制御信号およびスロットルアクチュエータ14により内燃機関(E)の駆動力を制御する制御信号およびブレーキアクチュエータ15により減速を制御する制御信号およびステアリングアクチュエータ16により転舵を制御する制御信号などである。
また、車両制御部25は、自車両の乗員に各種の情報を報知する場合に、報知装置17を制御する制御信号を出力する。
【0028】
本実施の形態による車両の走行安全装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行安全装置10の動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0029】
まず、例えば図3に示すステップS01においては、物体検知部21により検出された物体のうち、自車両との接触の可能性がある障害物を検知する。
次に、ステップS02においては、障害物と自車両の接触の危険度を判定するためのパラメータ、例えば自車両と障害物との間の距離あるいは自車両が接触予測領域に到達するのに要する接触時間などを算出する。
次に、ステップS03においては、自車両の走行路に接続された狭い路地の有無を検知する。
【0030】
次に、ステップS04においては、障害物が見通しの悪い狭い路地から出現するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進み、このステップS05においては、危険度を判定するためのパラメータに対する閾値として通常閾値を設定し、ステップS07に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進み、このステップS06においては、危険度を判定するためのパラメータに対する閾値として狭い路地用閾値を設定し、ステップS07に進む。
【0031】
次に、ステップS07においては、危険度を判定するためのパラメータが閾値を超えているか否か、つまり自車両と物体との距離が所定のブレーキ回避限界距離または所定の操舵回避限界距離よりも長いか否か、あるいは、接触時間が所定の限界時間よりも短いか否かなどを判定することにより、危険度が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進み、このステップS08においては、スロットルアクチュエータ14とブレーキアクチュエータ15とステアリングアクチュエータ16と報知装置17とによる接触回避のための支援動作を作動させ、エンドに進む。
【0032】
上述したように、本実施の形態による車両の走行安全装置10によれば、自車両の走行路に接続される接続路の幅が所定閾値以下であって、接続部付近の見通しが悪い場合に、接触回避のための支援動作が作動し易くなるように設定することにより、作動タイミングを早めることができ、運転者が接触回避のための支援動作の作動に煩わしさを感じてしまうことを防止しつつ、迅速かつ適切なタイミングで接触回避のための支援動作を作動させることができる。
【0033】
さらに、自車両の走行路Lに平行な平面Wa1と自車両の走行路に交差する平面Wa2とによる交差稜線部Raを有する路側物αと、この路側物αから所定値未満の所定距離をおいた位置で自車両の走行路に平行な平面Wbを有する路側物βとにより、自車両に接続された狭い路地の有無を、容易かつ的確に検知することができる。
【0034】
さらに、自車両の走行路に接続された狭い路地から自車両の走行路に移動する物体を実際に検知した場合に、接触回避のための支援動作を作動し易くなるように設定することにより、単に接続路が存在するだけで接触回避のための支援動作が作動し易くなってしまうことを防止することができる。
【0035】
さらに、自車両の走行路に接続された狭い路地を構成する2つの路側物α,βの対向する端点(A点およびB点)間を結ぶ直線を跨ぐ移動軌跡を有する物体を検知した場合に、接触回避のための支援動作を作動し易くなるように設定することにより、接続路での物体の移動速度を検知する必要無しに、物体の移動軌跡を用いることで演算処理の負荷を低減することができる。
【0036】
また、接続路を構成する2つの路側物α,βの対向する端点(A点およびB点)付近に存在して接続路から自車両の走行路に進入する方向に移動している物体を検知した場合に、接触回避のための支援動作を作動し易くなるように設定することにより、物体の位置と物体の移動方向(つまり、移動速度の方向)とを用いて、物体が接続路から現れた直後に迅速な接触回避を行なうことができる。
【0037】
さらに、接続路判定部22により検知された接続路を構成する一方の路側物βの長さが所定長さ以上である場合に、この路側物βにより構成される接続路の接続部付近の見通しが悪いと判定することにより、判定処理の負荷が増大することを抑制しつつ、容易かつ的確に見通しの良否を精度良く判定することができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態において、接続路判定部22は、外界センサ12のレーダ装置により検知された電磁波の反射点rの位置に基づき、自車両の走行路に接続された接続路が存在するか否かを判定するとしたが、これに限定されず、外界センサ12の撮像装置から出力される画像データに基づき、自車両の走行路に接続された接続路が存在するか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 車両の走行安全装置
14 スロットルアクチュエータ(安全装置)
15 ブレーキアクチュエータ(安全装置)
16 ステアリングアクチュエータ(安全装置)
17 報知装置(安全装置)
21 物体検知部(物体検知手段)
24 接触判定部(接触判定段)
25 車両制御部(接触回避支援手段)
23 見通し判定部(見通し判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、進行方向前方に存在する物体を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段による前記物体の検知結果と所定の接触判定条件とに基づき、自車両と前記物体との接触に係る判定を行なう接触判定手段と、
前記接触判定手段の判定結果に応じて車両の安全装置を作動させる接触回避支援手段とを備える車両の走行安全装置であって、
前記物体検知手段により検知された前記物体の形状に基づき、自車両の走行路に接続される接続路の状態を判定する接続路判定手段と、
自車両の前記走行路と前記接続路との接続部付近の見通しの良否を判定する見通し判定手段とを備え、
前記接触判定手段は、前記接続路判定手段により判定される前記接続路の幅が所定値以下であって、かつ、前記接続路の手前位置に前記物体検知手段により検知された路側物により自車両の前記走行路と前記接続路との前記接続部付近の見通しが悪いと前記見通し判定手段により判定された場合に、前記安全装置が作動し易くなるようにして前記接触判定条件を変更することを特徴とする車両の走行安全装置。
【請求項2】
前記接続路判定手段は、自車両の前記走行路に平行な表面を有する第1の路側物と、該第1の路側物から所定値未満の所定距離をおいた位置で自車両の前記走行路に平行な平面と自車両の前記走行路に交差する平面とによる交差稜線部を有する第2の路側物とが前記物体検知手段により検知された場合に、自車両の前記走行路に接続される前記接続路の幅が前記所定値以下であると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項3】
前記接触判定手段は、前記物体検知手段により、自車両の前記走行路に接続される前記接続路から自車両の前記走行路に移動する物体が検知された場合に、前記安全装置が作動し易くなるようにして前記接触判定条件を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項4】
前記物体検知手段は、自車両の前記走行路に平行な表面を有する第1の路側物と、該第1の路側物から所定距離を置いた位置で自車両の前記走行路に略平行な平面と自車両の前記走行路に直交する平面とによる交差稜線部を有する第2の路側物とを検知し、前記第1の路側物の自車両側の端部と前記第2の路側物の前記交差稜線部とを結ぶ直線を跨ぐ移動軌跡を有する物体を検知した場合に、自車両の前記走行路に接続される前記接続路から自車両の前記走行路に移動する物体を検知したとすることを特徴とする請求項3に記載の車両の走行安全装置。
【請求項5】
前記物体検知手段は、自車両の前記走行路に平行な表面を有する第1の路側物と、該第1の路側物から所定距離を置いた位置で自車両の前記走行路に略平行な平面と自車両の前記走行路に直交する平面とによる交差稜線部を有する第2の路側物とを検知し、前記第1の路側物の自車両側の端部と前記第2の路側物の前記交差稜線部とを結ぶ直線付近に物体を検知し、該物体の移動方向が自車両の前記走行路に向う方向であることを検知した場合に、自車両の前記走行路に接続される前記接続路から自車両の前記走行路に移動する物体を検知したとすることを特徴とする請求項3に記載の車両の走行安全装置。
【請求項6】
前記見通し判定手段は、前記物体検知手段により、前記接続路の手前位置に自車両の前記走行路に平行な表面を有する第1の路側物が検知され、該第1の路側物の長さが所定長さ以上であることが検知された場合に、自車両の前記走行路と前記接続路との前記接続部付近の見通しが悪いと判定することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−260504(P2010−260504A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114589(P2009−114589)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】