説明

車両の走行支援方法およびその装置

【課題】還元剤の補給が必要となった場合、車両の現在位置から近い所にある還元剤の補給場所に関する情報を得ることができない。
【解決手段】エンジン10に供給される燃料Fとは異なる還元剤Rにより再生処理が行われる触媒34を用いた排気浄化装置が組み込まれ、車両の現在位置をその周囲の地図情報と共にディスプレイ52に表示するナビゲーションシステム51が搭載された本発明による車両の走行支援装置は、還元剤タンク36中に貯溜された還元剤Rの残量を検知する還元剤残量センサ41と、この還元剤残量センサ41によって検出された還元剤Rの残量に基づいて車両の走行許容距離を算出する走行許容距離算出手段とを具え、ナビゲーションシステム51は、還元剤Rの補給所に関する地図情報の記憶部を有し、車両の現在位置から走行許容距離算出手段にて算出された車両の走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイ52に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に供給される燃料とは異なる還元剤により再生処理が行われる触媒を用いた排気浄化装置が組み込まれた車両の走行支援方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気に対する環境への影響をできるだけ少なくするため、排気中に含まれる有害成分を捕捉または吸着したり、あるいは無害化する触媒装置を内燃機関の排気通路中に組み込んだりした排気浄化装置が知られている。例えば、特許文献1には排気中の窒素酸化物を無害化するための選択還元触媒を用いた排気浄化装置が開示されている。
【0003】
このような選択還元触媒、すなわちSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒を用いる排気浄化装置においては、通過する窒素酸化物を還元処理してこれを無害化させる必要がある。そこで、特許文献1ではSCR触媒よりも上流側の排気通路内に尿素を含む還元剤を連続的に噴射し、窒素酸化物を無害な状態に分解して大気中に排出するようにしている。
【0004】
尿素を含む還元剤を用いて窒素酸化物の無害化を行う上述したような排気浄化装置においては、燃料タンクとは別に還元剤を貯溜する還元剤タンクを車両に搭載する必要があり、還元剤の消費に伴って定期的に還元剤を補給しなければならない。このため、特許文献1に開示された排気浄化装置においては、還元剤タンク内に貯溜された還元剤の残量を検知するセンサを組み込み、還元剤の残量が所定値以下になると、警告を発するようにしている。また、特許文献2には還元剤タンク内に貯溜された還元剤の残量と、この還元剤の残量に基づいて車両が走行し得る走行可能距離とを演算し、走行可能距離が所定距離以下になると警報機を作動させるようにした技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3733815号公報
【特許文献2】特開2006−226204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示された方法において、還元剤タンク内に残留する尿素で走行可能な距離が所定距離以下になったことを運転者に認識させることができたとしても、現在の車両の位置から還元剤を補給できる場所について、何らかの情報を運転者が得ることはできない。特に、特許文献1に開示された方法では、燃料タンク内に貯溜された燃料の残量の如何に拘らず、車両の走行中に突然警告が発せられてしまう場合があり、還元剤の補給を円滑に行うことができなくなる可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、還元剤タンクに貯溜された還元剤の残量が少なくなってその補給が必要となった場合、車両の現在位置に対して近い所にある還元剤の補給場所に関する情報を運転者が把握できるようにした走行支援方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態は、車両に搭載された内燃機関に供給される燃料とは異なる還元剤により再生処理が行われる触媒を用いた排気浄化方法であって、還元剤タンク内に貯溜された還元剤の残量に基づいて車両の走行許容距離を算出するステップと、車両の現在位置から車両の走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示するステップとを具えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第1の形態による車両の走行支援方法において、算出された車両の走行許容距離が所定距離以下か否かを判定するステップをさらに具え、車両の現在位置から走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示するステップは、車両の走行許容距離が所定距離以下であると判定した場合に実行されるものであってよい。この場合、所定距離は、燃料タンク内に貯溜された燃料の残量に基づいて算出される車両の走行可能距離であってよい。また、この車両の走行可能距離は、燃料消費量と車両の走行距離との関係の平均値を算出するステップとを含むものであってよい。この場合、燃料消費量と車両の走行距離との関係の平均値を算出するステップが、車両の積算走行距離を検出するステップと、車両の積算燃料消費量を検出するステップとを含み、還元剤消費量と車両の走行距離との関係の平均値を算出するステップが、車両の積算走行距離を検出するステップと、車両の積算還元剤消費量を検出するステップとをさらに含むものであってよい。
【0010】
車両の走行許容距離を算出するステップは、還元剤の残量から算出される還元剤の消費量と、車両の走行距離との関係の平均値を算出するステップを含むものであってよい。
【0011】
本発明の第2の形態は、内燃機関に供給される燃料とは異なる還元剤により再生処理が行われる触媒を用いた排気浄化装置が組み込まれ、車両の現在位置をその周囲の地図情報と共にディスプレイに表示するナビゲーションシステムが搭載された車両の走行支援装置であって、還元剤タンク中に貯溜された還元剤の残量を検知する還元剤残量検出手段と、この還元剤残量検出手段によって検出された還元剤の残量に基づいて車両の走行許容距離を算出する走行許容距離算出手段とを具え、前記ナビゲーションシステムは、還元剤の補給所に関する地図情報の記憶部を有し、車両の現在位置から前記走行許容距離算出手段にて算出された車両の走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第2の形態による車両の走行支援装置において、走行許容距離設定手段にて推定された車両の走行許容距離が所定距離以下か否かを判定する判定手段をさらに具え、車両の走行許容距離が所定距離以下であると判定手段が判定した場合、ナビゲーションシステムは、車両の現在位置から走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示するものであってよい。この場合、燃料タンク内に貯溜されて内燃機関に供給される燃料の残量を検出する燃料残量検出手段と、この燃料残量検出手段によって検出された燃料の残量に基づいて車両の走行可能距離を算出する走行可能距離算出手段とをさらに具え、所定距離が走行可能距離設定手段にて算出される車両の走行可能距離であってよい。この場合、走行可能距離設定手段は、車両の積算走行距離と積算燃料消費量とから所定量の燃料による車両の走行可能距離を算出してこれを更新する平均走行可能距離算出手段を有するものであってよい。
【0013】
走行許容距離設定手段にて推定された車両の走行許容距離が所定距離以下か否かを判定する判定手段と、車両の走行許容距離が所定距離以下であると判定手段が判定した場合、警告を発する警告発生手段とをさらに具えることができる。この場合、警告発生手段が音声出力手段を有するものや、ディスプレイに表示される還元剤の補給所を点滅させる手段を含むものであってよい。
【0014】
走行許容距離設定手段は、車両の積算走行距離と積算還元剤消費量とから所定量の還元剤による車両の走行許容距離を算出してこれを更新する平均走行許容距離算出手段を有することができる。
【0015】
触媒が排気中の窒素酸化物を無害化するための尿素選択還元触媒であり、還元剤が尿素を含むものであってよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両の走行支援方法によると、還元剤タンク内に貯溜された還元剤の残量に基づいて車両の走行許容距離を算出し、車両の現在位置から車両の走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示するようにしたので、還元剤タンク内が空になる前に還元剤を確実に補給することができる。この結果、還元剤の不足により触媒の再生処理ができなくなるような不具合を未然に防止して排気の浄化を継続的に行うことが可能である。
【0017】
算出された車両の走行許容距離が所定距離以下であると判定した場合、車両の現在位置から走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示することにより、還元剤を適切なタイミングにて補給することができる。
【0018】
所定距離が燃料タンク内に貯溜された燃料の残量に基づいて算出される車両の走行可能距離の場合、燃料の補給に合わせて還元剤の補給を行うことができる。
【0019】
還元剤の残量から算出される還元剤の消費量と、車両の走行距離との関係の平均値を車両の走行許容距離として算出した場合、信頼性の高い走行許容距離を算出することができる。
【0020】
本発明の車両の走行支援装置によると、還元剤タンク中に貯溜された還元剤の残量を検知する還元剤残量検出手段と、この還元剤残量検出手段によって検出された還元剤の残量に基づいて車両の走行許容距離を算出する走行許容距離算出手段とを具え、ナビゲーションシステムが還元剤の補給所に関する地図情報の記憶部を有し、車両の現在位置から走行許容距離算出手段にて算出された車両の走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示するようにしたので、運転者の目的地までの案内を利用しながら還元剤タンク内が空になる前に還元剤を確実に補給することができる。この結果、還元剤の不足により触媒の再生処理ができなくなるような不具合を未然に防止して排気の浄化を継続的に行うことが可能である。
【0021】
走行許容距離設定手段にて推定された車両の走行許容距離が所定距離以下か否かを判定する判定手段を具え、車両の走行許容距離が所定距離以下であると判定手段が判定した場合、ナビゲーションシステムが車両の現在位置から走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示することにより、還元剤をより適切なタイミングにて補給することができる。
【0022】
燃料タンク内に貯溜されて内燃機関に供給される燃料の残量を検出する燃料残量検出手段と、この燃料残量検出手段によって検出された燃料の残量に基づいて車両の走行可能距離を算出する走行可能距離算出手段とをさらに具え、所定距離が走行可能距離設定手段にて算出される車両の走行可能距離の場合、燃料の補給に合わせて還元剤の補給を行うことができる。
【0023】
走行許容距離設定手段にて推定された車両の走行許容距離が所定距離以下か否かを判定する判定手段と、車両の走行許容距離が所定距離以下であると判定手段が判定した場合、警告を発する警告発生手段とをさらに具えた場合、運転者に対して還元剤の補給時期を確実に知らせることができる。
【0024】
走行許容距離設定手段が車両の積算走行距離と積算還元剤消費量とから所定量の還元剤による車両の走行許容距離を算出してこれを更新する平均走行許容距離算出手段を有する場合、信頼性の高い走行許容距離を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明による車両の走行支援方法およびその装置を圧縮点火式内燃機関が搭載された車両に応用した実施形態について、図1〜図10を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明をこのような実施形態のみに限らず、その精神に帰属する他の任意の類似技術にも応用することができることは言うまでもない。例えば、ガソリンやアルコールまたはLPG(液化天然ガス)などを燃料として点火プラグを用いる火花点火式内燃機関に対しても有効であり、内燃機関の燃料と異なる還元剤にて再生処理が行われる触媒を組み込んだ排気浄化装置に対して応用可能である。
【0026】
本実施形態における制御システムを概略的に図1に示し、このエンジンシステムにおける制御ブロックを図2に示す。本実施形態におけるエンジン10は、軽油などの燃料Fを燃料噴射弁11から圧縮状態にある燃焼室12内に直接噴射することにより、自然着火させる圧縮点火型式のものであり、通常、図示しないターボ過給機やEGR装置なども組み込まれている。
【0027】
燃焼室12にそれぞれ臨む吸気ポート13および排気ポート14が形成されたシリンダヘッド15には、吸気ポート13を開閉する吸気弁16および排気ポート14を開閉する排気弁17を含む動弁機構18が組み込まれている。また、これら吸気弁16および排気弁17に挟まれるように燃焼室12の上端中央に臨む先の燃料噴射弁11も、このシリンダヘッド15に組み込まれている。燃料噴射弁11には、燃料タンク19内に貯溜された燃料Fが図示しない燃料供給管を介して供給され、その作動がECU(Electronic Control Unit)20により制御されるようになっている。
【0028】
車両の運転中に上述した燃料噴射弁11からの燃料Fの噴射量や噴射時期などを適切に制御するため、本実施形態では運転者によって操作されるアクセルペダル21の踏み込み量を検出してこれをECU20に出力するアクセル開度センサ22が設けられている。また、吸気管23の途中には、吸気通路24内を通過する吸気流量を検出してこれをECU20に出力するエアフローメータ25が取り付けられている。さらに、ピストン26が往復動するシリンダブロック27には、連接棒28を介してピストン26が連結されるクランク軸29の回転位置、つまりクランク角位相を検出してこれをECU20に出力するクランク角センサ30が取り付けられている。ECU20は、これらセンサ22,30およびエアフローメータ25などからの検出信号に基づき、燃料噴射量算出部31にて燃料噴射弁11からの燃料の噴射量および噴射時期を設定する。
【0029】
燃料タンク19には、ここに貯溜される燃料Fの残量を検出してその情報をECU20に出力する燃料残量センサ32が組み込まれている。なお、この燃料残量センサ32として、容器内に貯溜された液体の液面位置を測定することによって、その残量を算出するごく一般的なものを使用することができる。
【0030】
排気ポート14に連通するようにシリンダヘッド15に基端が連結された排気管33の途中には、燃焼室12内での混合気の燃焼により生成する窒素酸化物を無害化するためのSCR触媒(以下、単に触媒と記述する)34が組み込まれている。また、この触媒34よりも上流側の排気管33の途中には、触媒34中を通過する窒素酸化物を還元してこれを無害化するための尿素を含む還元剤Rを排気管33内に噴射する還元剤噴射弁35が設けられている。この還元剤噴射弁35には、還元剤タンク36内に貯溜された還元剤Rが図示しない還元剤供給管を介して供給され、その噴射量や噴射時期などがECU20の還元剤噴射量算出部37により制御されるようになっている。
【0031】
本実施形態における触媒34は、還元剤としての尿素をアンモニアに変成させ、このアンモニアと窒素酸化物とを反応させて無害な窒素ガスと水とに還元処理するものである。このような触媒34での反応を円滑に行わせるため、触媒34の温度を検出する触媒温度センサ38と、この触媒34よりも下流側の排気管33内を流れる排気中の窒素成分量を検出するためのNOXセンサ39とが設けられている。触媒温度センサ38による検出情報は、ECU20の還元剤噴射判定部40に出力される。還元剤噴射判定部40は、触媒34の温度Tnが予め設定された温度TR、例えば200℃以上であるか否かを判定し、これが200℃以上あると判断した場合、排気管33内への尿素の噴射を可能とする。尿素の噴射量は、NOXセンサ39からの出力情報と、還元剤噴射判定部40からの判定結果とを受けるECU20の還元剤噴射量算出部37にて設定される。還元剤噴射量算出部37は、排気中に含まれるNOXの量に応じた尿素の噴射量を設定する。
【0032】
なお、排気管33内への尿素の噴射量をより高精度に設定するため、触媒34よりも上流側の排気管33内を流れる排気中の窒素成分量を検出するための第2のNOXセンサを設けることも有効である。周知のように、このようなNOXセンサ39に代えてA/Fセンサを採用することも可能である。また、図1には1つの触媒34しか示していないけれども、他の有害成分を捕捉/吸着するPM/NSRタイプの触媒が排気管33に沿って直列に組み込まれたものも一般的であり、このようなものも本願発明に包含されることに注意されたい。
【0033】
還元剤タンク36には、ここに貯溜される還元剤Rの残量を検出してその情報をECU20に出力する還元剤残量センサ41が組み込まれている。この還元剤残量センサ41も先の燃料残量センサ32と同様、容器内に貯溜された液体の液面位置を測定することによって、その残量を算出する従来から周知のものを採用することができる。このように、本実施形態では車体に対して固定式の還元剤タンク36を採用しているが、交換式のカセットタンクを採用することも可能である。この場合、カセットタンクに組み込まれた還元剤残量センサと車体側との間で電気的コネクタを介して連結する必要がある。
【0034】
吸気管23から燃焼室12内に供給される吸気は、燃料噴射弁11から燃焼室12内に噴射される燃料Fと混合気を形成し、ピストン26の圧縮上死点近傍にて自然着火して燃焼する。この燃焼に伴って発生する窒素酸化物は、排気管33内に供給される尿素と共に触媒34を通過する間に還元され、清浄化された排気が大気中に排出されることとなる。
【0035】
本実施形態におけるECU20は、燃料Fの積算消費量を算出する積算燃料消費量算出部42と、還元剤Rの積算消費量を算出する積算還元剤消費量算出部43と、車両の積算走行距離を算出する積算走行距離算出部44とを具えている。このため、燃料噴射弁11におよび還元剤噴射弁35に関する駆動情報が積算燃料消費量算出部42および積算還元剤消費量算出部43にそれぞれ出力される。また、図示しない従動輪の回転数を検出する車輪回転数センサ45が設けられ、この車輪回転数センサ45からの情報が積算走行距離算出部44に出力される。
【0036】
ECU20はまた、燃料タンク19内に貯溜された燃料Fの残量QFに基づき、走行可能な車両の走行可能距離DFQを推定する走行可能距離設定部46と、還元剤タンク36内に貯溜された還元剤Rの残量QRに基づき、車両の走行許容距離DRQを推定する走行許容距離設定部47とを具えている。上述した走行可能距離設定部46は、車両の積算走行距離CDと積算燃料消費量CFとから所定量の燃料による車両の平均走行可能距離DFUを算出してこれを更新する平均走行可能距離算出部48を有する。つまり、走行可能距離設定部46にて設定される走行可能距離DFQは、平均走行可能距離算出部48にて算出される平均走行可能距離DFUに燃料Fの残量QFを乗算した値となる。また、走行許容距離設定部47は、車両の積算走行距離CDと積算還元剤消費量CRとから所定量の還元剤による車両の走行許容距離DRUを算出してこれを更新する平均走行許容距離算出部49を有する。つまり、走行許容距離設定部47にて設定される走行許容距離DRQは、平均走行許容距離算出部49にて算出される平均走行許容距離DRUに還元剤Rの残量QRを乗算した値となる。
【0037】
このECU20は、走行可能距離設定部46によって推定される走行可能距離DFQと、走行許容距離設定部47によって推定される走行許容距離DRQとを比較する比較判定部50もさらに具えている。この比較判定結果50は、走行可能距離設定部46によって推定される走行可能距離DFQおよび走行許容距離設定部47によって推定される走行許容距離DRQと共に、以下に説明するナビゲーションシステム51に出力される。
【0038】
ナビゲーションシステム51は、車両の現在位置を確認したり、車両を目的地まで誘導したりするためのものであり、そのためのディスプレイ52や図示しない音声出力装置および運転者によって操作される図示しない入力端末などを含む。
【0039】
このナビゲーションシステム51は、現在位置情報取得部53と、各種地図情報や、燃料ならびに還元剤の補給所などを記憶したデータ記憶部54と、還元剤補給可能箇所検索部55とを具えている。現在位置情報取得部53は、GPS(Global Positioning System)などを利用して車両の現在位置を取得するものであり、VICS(Vehicle Information and Communication System)などから道路交通情報も取得することもできる。データ記憶部54は、燃料ならびに還元剤の補給所などを含む各種地図情報を記憶しており、必要に応じてデータの更新も可能となっている。還元剤補給可能箇所検索部55は、ECU20からの情報に基づき、車両の現在位置から走行許容距離DRQ内にある還元剤の補給箇所を検索する。
【0040】
ディスプレイ52は、車両の現在位置や燃料ならびに還元剤の補給所などを地図上に表示する以外に、上述したECU20の走行可能距離設定部46によって設定された走行可能距離DFQや、走行許容距離設定部47によって設定された走行許容距離DRQなどを表示することも可能である。このディスプレイ52は、車両の運転席から視認できる位置、例えば図示しないインストルメントパネルなどに配される。
【0041】
本実施形態におけるECU20は、このナビゲーションシステム51を利用し、ECU20の比較判定部50が走行許容距離DRQよりも走行可能距離DFQの方が長いと判定した場合、還元剤タンク36内への還元剤Rの補給を促す警告を発することができるようになっている。この警告は、現在位置情報取得部53からの車両の現在位置情報と、走行許容距離設定部47にて設定された走行許容距離DRQとに基づき、還元剤補給可能箇所検索部55にて検索された還元剤の補給所をディスプレイ52上に車両の現在位置と共に地図情報に重ねて点滅表示させたり(図5参照)、音声によって車両の運転者に対する注意を喚起させたりし得るものであればよい。通常の走行状態では、図3に示すようにディスプレイ52には車両の現在位置Pと、その周囲の道路状況と、例えば燃料の補給所(サービスステーション)Sとを表示することができる。また、運転者の操作によって、図4中の平行斜線に示すように還元剤の補給も可能な燃料の補給所SRも重ねて表示させることができる。上述した警告が発せられた場合、現在の車両の現在位置Pから到達可能な還元剤の補給所SRが点滅表示されるが、この警告方法は本実施形態に限定されるわけではないことに注意されたい。
【0042】
ECU20は、ナビゲーションシステム51と共働し、上述したセンサ22,30,32,38,39,41,45およびエアフローメータ25などからの検出信号に基づき、予め設定されたプログラムに従って円滑なエンジン10の運転がなされるように、燃料噴射弁11や還元剤噴射弁35などの作動を制御するようになっている。このうち、本実施形態における排気浄化装置の制御は、図6に示すフローチャートに従って行われる。
【0043】
まず、S11のステップにて触媒34の温度Tnが所定温度TR以上であるか否かを還元剤噴射判定部40にて判定する。このS11のステップにて触媒34の温度Tnが所定温度TR以上である、つまり触媒34がその機能を充分に発揮させることができると還元剤噴射判定部40が判定した場合、S12のステップに移行して還元剤添加処理、つまり還元剤噴射弁35を作動させ、NOXセンサ39からの検出信号に基づいて還元剤噴射量算出部37にて設定された所定量の還元剤Rを触媒34に供給し、触媒34を通過する排気中の窒素酸化物の無害化を行う。この還元剤Rの供給情報は、積算還元剤消費量算出部43にも出力される。
【0044】
次に、S13のステップに移行して各種センサ22,30,32,38,39,41,45およびエアフローメータ25からの検出情報を読み取る。そして、S14のステップにて積算燃料消費量算出部42,積算還元剤消費量算出部43,積算走行距離算出部44にてそれぞれ算出された積算燃料消費量CF,積算還元剤消費量CR,積算走行距離CDとから走行可能距離設定部46および走行許容距離設定部47が車両の走行可能距離DFQおよび走行許容距離DRQをそれぞれ算出し、これを比較判定部50に出力する。この時、走行許容距離DRQをディスプレイ52に表示することも可能である。この場合、運転者は、ディスプレイ52に表示された走行許容距離DRQを見て還元剤タンク36への還元剤Rの補給時期をある程度予測することもできる。
【0045】
しかる後、S15のステップに移行して走行可能距離DFQが走行許容距離DRQと同じか、あるいは走行許容距離DRQよりも長いか否かを比較判定部50にて判定する。ここで、走行可能距離DFQが走行許容距離DRQと同じか、あるいは走行許容距離DRQよりも長いと判断した場合、S16のステップに移行し、車両の現在位置Pから車両の走行許容距離DRQ内にある還元剤の補給所SRをディスプレイ52に表示し(図5参照)、還元剤タンク36内への還元剤Rの補給を促す警告を発する。そして、運転者の操作に基づき、S17のステップにて還元剤補給のためのナビゲーションが行われる。
【0046】
一方、S11のステップにて触媒34の温度Tnが所定温度TR未満、つまり触媒34が不活性な状態にあると還元剤噴射判定部40が判定した場合、上述したS13のステップに移行する。また、S15のステップにて走行可能距離DFQよりも走行許容距離DRQの方が長いと比較判定部50が判定した場合、特に問題がないので何もせずに終了する。
【0047】
このように、還元剤タンク36内に貯溜された還元剤Rの残量に基づいて設定される走行許容距離DRQが、燃料タンク19内に貯溜された燃料Fの残量に基づいて設定される走行可能距離DFQ以下の場合、車両の現在位置Pから車両の走行許容距離DRQ内にある還元剤の補給所SRをディスプレイ52に表示する(図5参照)ようにしたので、還元剤タンク36内に還元剤Rがなくなる前に確実に還元剤Rを補給することができ、燃料Fの補給などに併せてこれを行うことも可能となる。
【0048】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による排気浄化装置を圧縮点火式内燃機関が搭載された車両に組み込んだ一実施形態の概念図である。
【図2】図1に示した実施形態の制御ブロック図である。
【図3】ナビゲーションシステムによりディスプレイに表示される情報の一例を模式的に示す概念図である。
【図4】ナビゲーションシステムによりディスプレイに表示される情報の別な例を模式的に示す概念図である。
【図5】還元剤の補給が必要になった場合にディスプレイに表示される情報の一例を模式的に示す概念図である。
【図6】図2に示した制御ブロックに基づく作動手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 エンジン
11 燃料噴射弁
12 燃焼室
13 吸気ポート
14 排気ポート
15 シリンダヘッド
16 吸気弁
17 排気弁
18 動弁機構
19 燃料タンク
20 ECU
21 アクセルペダル
22 アクセル開度センサ
23 吸気管
24 吸気通路
25 エアフローメータ
26 ピストン
27 シリンダブロック
28 連接棒
29 クランク軸
30 クランク角センサ
31 燃料噴射量算出部
32 燃料残量センサ
33 排気管
34 (SCR)触媒
35 還元剤噴射弁
36 還元剤タンク
37 還元剤噴射量算出部
38 触媒温度センサ
39 NOXセンサ
40 還元剤噴射判定部
41 還元剤残量センサ
42 積算燃料消費量算出部
43 積算還元剤消費量算出部
44 積算走行距離算出部
45 車輪回転数センサ
46 走行可能距離設定部
47 走行許容距離設定部
48 平均走行可能距離算出部
49 平均走行許容距離算出部
50 比較判定部
51 ナビゲーションシステム
52 ディスプレイ
53 現在位置情報取得部
54 データ記憶部
55 還元剤補給可能箇所検索部
D 車両の積算走行距離
F 積算燃料消費量
R 積算還元剤消費量
FQ 車両の走行可能距離
RQ 車両の走行許容距離
FU 車両の平均走行可能距離
RU 車両の走行許容距離
F 燃料
P 車両の現在位置
F 燃料の残量
R 還元剤の残量
R 還元剤
S 燃料補給所(サービスステーション)
R 還元剤も補給可能な燃料補給所
n 触媒の温度
R 設定温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関に供給される燃料とは異なる還元剤により再生処理が行われる触媒を用いた排気浄化方法であって、
還元剤タンク内に貯溜された還元剤の残量に基づいて車両の走行許容距離を算出するステップと、
車両の現在位置から車両の走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示するステップと
を具えたことを特徴とする車両の走行支援方法。
【請求項2】
算出された車両の走行許容距離が所定距離以下か否かを判定するステップをさらに具え、車両の現在位置から走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示するステップは、車両の走行許容距離が所定距離以下であると判定した場合に実行されることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行支援方法。
【請求項3】
所定距離は、燃料タンク内に貯溜された燃料の残量に基づいて算出される車両の走行可能距離であることを特徴とする請求項2に記載の車両の走行支援方法。
【請求項4】
車両の走行許容距離を算出するステップは、還元剤の残量から算出される還元剤の消費量と、車両の走行距離との関係の平均値を算出するステップを含むことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の車両の走行支援方法。
【請求項5】
内燃機関に供給される燃料とは異なる還元剤により再生処理が行われる触媒を用いた排気浄化装置が組み込まれ、車両の現在位置をその周囲の地図情報と共にディスプレイに表示するナビゲーションシステムが搭載された車両の走行支援装置であって、
還元剤タンク中に貯溜された還元剤の残量を検知する還元剤残量検出手段と、
この還元剤残量検出手段によって検出された還元剤の残量に基づいて車両の走行許容距離を算出する走行許容距離算出手段と
を具え、前記ナビゲーションシステムは、還元剤の補給所に関する地図情報の記憶部を有し、車両の現在位置から前記走行許容距離算出手段にて算出された車両の走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示することを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項6】
前記走行許容距離設定手段にて推定された車両の走行許容距離が所定距離以下か否かを判定する判定手段をさらに具え、車両の走行許容距離が所定距離以下であると前記判定手段が判定した場合、前記ナビゲーションシステムは、車両の現在位置から走行許容距離内にある還元剤の補給所の場所をディスプレイに表示することを特徴とする請求項5に記載の車両の走行支援装置。
【請求項7】
燃料タンク内に貯溜されて内燃機関に供給される燃料の残量を検出する燃料残量検出手段と、
この燃料残量検出手段によって検出された燃料の残量に基づいて車両の走行可能距離を算出する走行可能距離算出手段と
をさらに具え、前記所定距離は、前記走行可能距離設定手段にて算出される車両の走行可能距離であることを特徴とする請求項6に記載の車両の走行支援装置。
【請求項8】
前記走行許容距離設定手段にて推定された車両の走行許容距離が所定距離以下か否かを判定する判定手段と、
車両の走行許容距離が所定距離以下であると前記判定手段が判定した場合、警告を発する警告発生手段と
をさらに具えたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の車両の走行支援装置。
【請求項9】
前記走行許容距離設定手段は、車両の積算走行距離と積算還元剤消費量とから所定量の還元剤による車両の走行許容距離を算出してこれを更新する平均走行許容距離算出手段を有することを特徴とする請求項5から請求項8の何れかに記載の車両の走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−2859(P2009−2859A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165402(P2007−165402)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】