説明

車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラム

【課題】制動制御の開始タイミングを早くすることによって障害物との接触の際の衝撃を小さくすることを可能とした車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】自車両と前方車両とが衝突する虞があると判定された状況下で衝突防止制御を行う際に、自車情報、前方車両情報及び周辺道路状況を考慮することにより、ステアリング操作によって前方車両との衝突が回避できるか否かを判定し(S21〜S25)、回避できると判定された場合にはAT5をシフトホールド制御するとともに、回避できないと判定された場合にはAT5をシフトダウン制御するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方に障害物を検出した際において適切な車両制御を行う車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ナビゲーション装置の地図データから得られる道路情報や、GPS等によって特定される現在位置等の車両の走行に係る各種情報を取得し、運転手に対する報知や、運転の補助、さらには運転への介入を行うことで車両事故を防止する車両制御装置について提案されている。このような車両制御装置は様々な条件及びタイミングで車両制御を行うが、特に車両走行中において前方に他車両等の障害物を検出した際には、障害物との接触を回避するため、或いは接触した際の被害を軽減する為に、ブレーキを作動させて車両の減速や回頭を行う。
【0003】
例えば、特開2007−145152号公報には、自車の車速と、自車の前方にある障害物の速度と、自車と障害物との位置関係とに基づいて、自車が操舵によって障害物との接触が回避できるか否かを判定し、操舵によって障害物との接触が回避できないと判定された場合に車両を減速させる為の制動制御を行う技術について記載されている。
【特許文献1】特開2007−145152号公報(第6頁〜第7頁、図4〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、自車の前方に障害物が接近している場合であって、その障害物との接触を回避する為には、以下の2通りの方法がある。
(1)現在の車両進行方向を維持した状態で自車の制動を行うことにより、障害物と接触することなく障害物までの距離を保つ方法。
(2)ステアリングを操作して自車の進行方向を変更し、障害物の右側又は左側へと車両を移動させる回避運動を行う方法。
そして、上記(1)と(2)の方法を比較すると、(1)の方法で障害物との接触を回避する為には、(2)の方法で障害物との接触を回避するよりも早いタイミングで衝突回避の為の運転者の車両操作を開始する必要がある。
【0005】
そして、前記した特許文献1に記載された車両制御装置では、(2)の方法でも障害物との接触が回避できないと判定した場合、即ち、どのような車両操作を行ったとしても障害物との接触が避けられない状況となった場合に、制動制御を開始する。更に、従来では上記したように自車と障害物との相対速度や位置関係、即ち、自車と障害物との相対的な関係のみに基づいて、(2)の方法で障害物との接触が回避できるか否かを判定している。
【0006】
しかしながら、回避運動を行うことが不可能な状況、例えば、車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンが無い場合や、車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンがあったとしても、その隣接レーンに他の障害物(例えば、走行車両)がある場合には、車両は左右の隣接レーンに移動することによって前方の障害物を回避することができない。そして、従来技術のように、自車と障害物との相対的な関係のみに基づいて判定を行う場合には、上記のような操舵によって障害物との接触が回避できない状況に車両があることを判定することができなかった。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、隣接レーンに関する情報を用いることによって、操舵によって障害物との接触が回避できない状況に車両があることを判定することができ、その結果、障害物との接触の際の衝撃を小さくすることを可能とした車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る車両制御装置(1)は、車両(2)の車速を取得する車速取得手段(23)と、前記車両の前方にある障害物までの距離を取得する障害物距離取得手段(23)と、前記車速と前記障害物までの距離に基づいて、前記障害物と前記車両とが衝突する虞があるか否かを判定する衝突判定手段(23)と、前記衝突判定手段によって前記障害物と前記車両とが衝突する虞があると判定された場合に、前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンの有無に基づいて、ステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突が回避できるか否か判定する回避判定手段(23)と、前記回避判定手段においてステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突を回避できないと判定された場合に前記車両を減速させる為の制動制御を行う制動制御手段(23)と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る車両制御装置は、請求項1に記載の車両制御装置(1)において、前記回避判定手段(23)は、前記車両(2)の走行するレーンに隣接する隣接レーンが無い場合に前記障害物と前記車両との衝突が回避できないと判定し、前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンがあって、且つその隣接レーンに他の障害物が有る場合に前記障害物と前記車両との衝突が回避できないと判定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る車両制御方法は、車両(2)の車速を取得する車速取得ステップ(S11)と、前記車両の前方にある障害物までの距離を取得する障害物距離取得ステップ(S2)と、前記車速と前記障害物までの距離に基づいて、前記障害物と前記車両とが衝突する虞があるか否かを判定する衝突判定ステップ(S4)と、前記衝突判定ステップによって前記障害物と前記車両とが衝突する虞があると判定された場合に、前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンの有無に基づいて、ステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突が回避できるか否か判定する回避判定ステップ(S21〜S25)と、前記回避判定ステップにおいてステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突を回避できないと判定された場合に前記車両を減速させる為の制動制御を行う制動制御ステップ(S17)と、を有することを特徴とする。
【0011】
更に、請求項4に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、車両(2)の車速を取得する車速取得機能(S11)と、前記車両の前方にある障害物までの距離を取得する障害物距離取得機能(S2)と、前記車速と前記障害物までの距離に基づいて、前記障害物と前記車両とが衝突する虞があるか否かを判定する衝突判定機能(S4)と、前記衝突判定機能によって前記障害物と前記車両とが衝突する虞があると判定された場合に、前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンの有無に基づいて、ステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突が回避できるか否か判定する回避判定機能と(S21〜S25)、前記回避判定機能においてステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突を回避できないと判定された場合に前記車両を減速させる為の制動制御を行う制動制御機能(S17)と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する請求項1に記載の車両制御装置によれば、隣接レーンに関する情報を用いることによって、操舵によって障害物との接触が回避できない状況に車両があること、即ち、その後にどのような車両操作を行ったとしても障害物との接触が避けられない状況となったことを判定することができる。その結果、制動制御の開始タイミングを早くすることができ、障害物との接触の際の衝撃を小さくすることができる。
【0013】
また、請求項2に記載の車両制御装置によれば、隣接レーンの有無と、隣接レーンに位置する他の障害物の有無によって、操舵によって障害物との接触が回避できるか否かの判定について、従来より正確且つ迅速に行うことができる。
【0014】
また、請求項3に記載の車両制御方法によれば、隣接レーンに関する情報を用いることによって、操舵によって障害物との接触が回避できない状況に車両があること、即ち、その後にどのような車両操作を行ったとしても障害物との接触が避けられない状況となったことを判定することができる。その結果、制動制御の開始タイミングを早くすることができ、障害物との接触の際の衝撃を小さくすることができる。
【0015】
更に、請求項4に記載のコンピュータプログラムによれば、隣接レーンに関する情報を用いることによって、操舵によって障害物との接触が回避できない状況に車両があること、即ち、その後にどのような車両操作を行ったとしても障害物との接触が避けられない状況となったことをコンピュータに判定させることができる。その結果、制動制御の開始タイミングを早くすることができ、障害物との接触の際の衝撃を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両制御装置について具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る車両制御装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る車両制御装置1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両制御装置1は、車両2に対して設置されたナビゲーション装置3、エンジン4、AT(Automatic Transmission)5、ブレーキ6A〜6D、エンジンECU7、ATECU8、ブレーキECU9、カメラECU10、アクセルペダル11、ブレーキペダル12、前方カメラ13、後方カメラ14、ミリ波レーダ15、15等で構成されている。
【0017】
ここで、ナビゲーション装置3は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、地図や目的地までの探索経路を表示する液晶ディスプレイや経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ等を備えている。そして、GPS等によって車両2の現在位置を特定するととともに、目的地が設定された場合においては目的地までの経路の探索、並びに設定された経路に従った案内を液晶ディスプレイやスピーカを用いて行う。また、本実施形態に係るナビゲーション装置3は、後述の衝突防止制御を行う際に、最適な回避運動ができるように車両の制御(具体的には、ATのシフトダウン又はATのシフトホールド)を行う。また、衝突時の衝撃を小さくする為に車両の制動制御(具体的には、ATのシフトダウンやブレーキ6A〜6Dによるブレーキ圧の増加)についても行う。尚、ナビゲーション装置3の詳細については後述する。
【0018】
また、エンジン4はガソリン、軽油、エタノール等の燃料によって駆動される内燃機関等のエンジンであり、車両2の駆動源として用いられる。そして、エンジン4の駆動力であるエンジントルクはAT5やプロペラシャフトやドライブシャフトを介して車輪に伝達され、車両2が駆動される。
【0019】
また、AT5は、速度やエンジン回転数に応じ、変速比を自動的に切り替える機能を備えた変速機である。そして、AT5はエンジン4で生じたエンジントルクを変速するとともに、変速したトルクをプロペラシャフトへと伝達する。尚、本実施形態では後述の衝突防止制御において、変速比を大きくするダウンシフト制御又は変速比を固定するシフトホールド制御のいずれかが行われる。また、AT5としてはCVT(無段変速機)を用いても良い。
【0020】
また、ブレーキ6A〜6Dは車両2の前後左右に配置された車輪に対してそれぞれ設置され、車輪の回転速度を摩擦によって低下させる機構である。尚、ブレーキの種類としてはドラムブレーキやディスクブレーキがある。
【0021】
また、エンジンECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)7は図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、エンジン4の制御を行う電子制御ユニットである。また、エンジンECU7には、ナビゲーション装置3及びアクセルペダル11が接続される。そして、エンジンECU7はアクセルペダル11の操作に基づいて、エンジン4のスロットルバルブの開閉量等を制御する。
【0022】
また、ATECU8は図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、AT5の制御を行う電子制御ユニットである。また、ATECU8には、ナビゲーション装置3が接続される。そして、ATECU8はナビゲーション装置3からの指示信号に基づいて、ATの変速比等を制御する。
【0023】
また、ブレーキECU9は図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、ブレーキ6A〜6Dの制御を行う電子制御ユニットである。また、ブレーキECU9には、ナビゲーション装置3及びブレーキペダル12が接続される。そして、ブレーキECU9はナビゲーション装置3からの指示信号又はブレーキペダル12の操作に基づいて、ブレーキ6A〜6Dによるブレーキ量等を制御する。
【0024】
また、カメラECU10は図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、前方カメラ13及び後方カメラ14の制御を行う電子制御ユニットである。
【0025】
また、アクセルペダル11は車両2の室内の運転席に配置され、運転者によって操作される。そして、アクセルペダル11が運転者によって操作されると、アクセルペダル11の踏み量がエンジンECU7に送信され、スロットルバルブの開閉量が調整される。
【0026】
また、ブレーキペダル12は同じく車両2の室内の運転席に配置され、運転者によって操作される。そして、ブレーキペダル12が運転者によって操作されると、ブレーキペダル12の踏み量がブレーキECU9に送信され、ブレーキ量が調整される。
【0027】
前方カメラ13及び後方カメラ14は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、車両2の前方及び後方に装着されたナンバープレートの上中央付近に取り付けられ、視線方向を水平より所定角度下方に向けて設置される。そして、走行時に車両2の進行方向となる車両前方と逆方向となる車両後方をそれぞれ撮像する。また、車両制御装置1は後述のように前方カメラ13や後方カメラ14で撮像した撮像画像から、車両2の周囲道路状況や、車両2の周囲の路面上に形成されたレーンを区画するレーン区画線等の路面標示や中央分離帯を検出する。そして、検出されたレーン区画線や中央分離帯に基づいて、車両2が現在走行中のレーン(以下、走行レーンという)を特定する(例えば、最も左側のレーンを走行していることや右から2番目のレーンを走行していること等を特定する)。尚、レーン区画線としては、車道中央線、車線境界線、車道外側線、歩行者横断指導線等がある。
【0028】
また、ミリ波レーダ15は、車両2の前面及び後面に装着されたナンバープレートの上中央付近及び左右のドアミラー付近の計4箇所にそれぞれ取り付けられ、車両周囲の所定範囲内(例えば、車両2の前後100m範囲内)を認識範囲とする障害物検出センサである。ここで、ミリ波レーダ15は、電波送信部及び電波受信部とからなり、ミリ波を出射するとともに障害物から反射してきた電波を受信する。そして、車両制御装置1は、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などを基に、障害物の位置や自車との相対速度を測定する。尚、本実施形態に係る車両制御装置1は、ミリ波レーダ15を用いて車両の周囲を走る他車両(障害物)の位置と相対速度をそれぞれ検出する。
【0029】
また、本実施形態に係る車両制御装置1では、車両2の前方に他車両等の障害物を検出し、車両2がその障害物に衝突する虞のある状況において衝突防止制御を行う。
ここで、以下に衝突防止制御について簡単に説明する。衝突防止制御では、先ず車両の走行状態や周囲状況から車両2がステアリング操作によって障害物との衝突が回避できるか否かを判定する。その後、ステアリング操作によって障害物との衝突が回避できると判定した場合にはAT5をシフトホールドし、運転者に障害物を回避する為のステアリング操作を促す。一方、ステアリング操作によって障害物との衝突が回避できないと判定した場合にはAT5をシフトダウンするとともにブレーキ6A〜6Dを作動させて、車両2の制動制御を行う。
【0030】
次に、上記車両制御装置1を構成するナビゲーション装置3について図2を用いてより詳細に説明する。図2は本実施形態に係るナビゲーション装置3の制御系を模式的に示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置3は、自車の現在位置を検出する現在位置検出部21と、各種のデータが記録されたデータ記録部22と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(車速取得手段、障害物距離取得手段、衝突判定手段、回避判定手段、制動制御手段)23と、ユーザからの操作を受け付ける操作部24と、ユーザに対して自車周辺の地図を表示する液晶ディスプレイ25と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ26と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ27と、交通情報センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール28と、から構成されている。また、ナビゲーションECU23には、自車の走行速度を検出する車速センサ29や前記したミリ波レーダ15等が接続される。
【0032】
以下に、ナビゲーション装置3を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部21は、GPS31、地磁気センサ32、距離センサ33、ステアリングセンサ34、方位検出部としてのジャイロセンサ35、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位等を検出することが可能となっている。
【0033】
また、データ記録部22は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB36、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0034】
ここで、地図情報DB36は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、道路の属性に関する道路属性データ、レストランや駐車場等の施設に関する施設データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ25に描画するための画像描画データ等から構成されている。尚、道路属性データとしては、例えば、一方通行の有無、道路のレーン数、車線幅、歩道幅、中央分離帯の有無等に関する情報がある。
【0035】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)23は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの誘導経路を設定する誘導経路設定処理、衝突防止制御等のナビゲーション装置3の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、車両制御処理プログラム(図3〜図6参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記録するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0036】
操作部24は、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU23は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ25の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0037】
また、液晶ディスプレイ25には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。特に、本実施形態に係るナビゲーション装置3では、衝突防止制御を行う際に、回避操作を促す警告や制動制御を実施する旨の警告等を液晶ディスプレイ25に表示する。
【0038】
また、スピーカ26は、ナビゲーションECU23からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。特に、本実施形態に係るナビゲーション装置3では、衝突防止制御を行う際に、回避操作を促す音声案内や制動制御を実施する旨の音声案内等をスピーカ26にから出力する。
【0039】
また、DVDドライブ27は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB36の更新等が行われる。
【0040】
また、通信モジュール28は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0041】
また、車速センサ29は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の車輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU23に出力する。そして、ナビゲーションECU23は発生するパルスを計数することにより移動距離を算出する。
【0042】
続いて、前記構成を有する車両制御装置1においてナビゲーションECU23が実行する車両制御処理プログラムについて図3〜図6に基づき説明する。図3は本実施形態に係る車両制御処理プログラムのフローチャートである。ここで、車両制御処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms)で繰り返し実行され、車両の進行方向前方に障害物(例えば他車両)を検出した際に障害物に対する回避の可否に基づいたAT制御を行うプログラムである。尚、以下の図3〜図6にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置3が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。また、以下の実施例では、障害物として特に車両の進行方向前方を走行する前方車両を検出した場合を例に挙げて説明することとする。
【0043】
先ず、車両制御処理プログラムでは、ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU41は、自車の進行方向前方に位置する前方車両(障害物)の検出を行う。尚、前方車両の検出はミリ波レーダ15を用いて行う。ここで、ミリ波レーダ15は図7に示すように車両2の前面、後面及び左右側面に計4箇所設置されており、自車両2の周囲の認識範囲51内にある対象物の位置並びに相対速度を検出可能である。そして、例えば図7に示すようにミリ波レーダ15の認識範囲51内であって、且つ自車両2と同一レーンを走行する他車両52が存在する場合には、S1で他車両52が前方車両として検出される。
【0044】
次に、S2においてCPU41は、自車から前記S1で検出した前方車両までの距離(即ち、車間距離L1)を、ミリ波レーダ15を用いて検出する。例えば、図7に示す例では、自車両2から前方車両52までの距離が車間距離L1として検出される。尚、上記S2が障害物距離取得手段の処理に相当する。
【0045】
続いて、S3でCPU41は、車速センサ29により自車の車速を検出し、検出した車速に基づいて自車の制動距離L2を算出する。ここで、制動距離とは、運転者がブレーキペダル12をふみ、制動が始まってから車両が完全に停止するまでに車両が走行する距離である。尚、制動距離L2の算出方法については既に公知であるので説明は省略する。また、制動距離L2は、その日の天気、タイヤの磨耗状態、路面の傾斜等によっても変化するので、それらの情報を予めナビゲーション装置3が取得するように構成することが望ましい。尚、上記S3が車速取得手段の処理に相当する。
【0046】
その後、S4でCPU41は、前記S2で検出した前方車両までの車間距離L1と、前記S3で算出した自車の制動距離L2とを比較し、制動距離L2より車間距離L1の方が短いか否か判定する。
【0047】
その結果、図7に示すように自車の制動距離L2より車間距離L1の方が短いと判定された場合(S4:YES)には、自車が前方車両と衝突する虞があると判定し、S5へと移行する。そして、S5ではCPU41は衝突防止制御を起動する。尚、衝突防止制御とは、走行中の車両における障害物との衝突を事前に判断し、安全装備を作動させることで被害を軽減する制御であり、本実施形態では特に障害物との衝突の可否を考慮したAT5の制御を行う。
【0048】
一方、図8に自車の制動距離L2より車間距離L1の方が長いと判定された場合(S4:NO)には、自車が前方車両と衝突する虞はないと判定し、衝突防止制御は起動せずに当該車両制御処理を終了する。尚、上記S4が衝突判定手段の処理に相当する。
【0049】
次に、S6でCPU41は、後述の衝突防止制御処理(図4)を実行する。尚、衝突防止制御処理は、ステアリングの操作によって自車と前方車両との衝突が回避できるか否かを判定し、その判定結果に基づいたAT5の制御を行う処理である。
【0050】
続いて、S7でCPU41は、後述の終了判定処理(図6)を実行する。尚、終了判定処理は、衝突防止制御を行った結果、自車と前方車両との衝突の虞が解消されたか否かを判定する処理である。
【0051】
更に、S8では前記S7の終了判定処理の結果に基づいて、衝突防止制御を終了するか否か判定する。具体的には、前記S7において自車と前方車両との衝突の虞が解消されたと判定された場合には衝突防止制御を終了し、自車と前方車両との衝突の虞が解消されていないと判定された場合には、衝突防止制御を継続すると判定する。
【0052】
そして、前記S8の判定の結果、衝突防止制御を継続すると判定された場合(S8:NO)にはS6へと戻り、継続して衝突防止制御を行う。それに対して、衝突防止制御を終了すると判定された場合(S8:YES)には、当該車両制御処理を終了する。
【0053】
次に、上記S6の衝突防止制御処理のサブ処理について図4に基づき説明する。図4は衝突防止制御処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0054】
先ず、S11においてCPU41は、自車に関する自車情報を取得する。ここで、前記S11で取得される自車情報としては、自車の現在位置、進行方向、車速、レーン位置等がある。尚、自車の現在位置に関しては、GPS31の検出結果とともに地図情報DB36に記憶された地図データを用いてマップマッチング処理を行うことにより、地図上での自車両の現在位置を特定する。また、自車の進行方向及び車速に関しては、ジャイロセンサ35や車速センサ29を用いて検出する。更に、自車の走行するレーン位置については後方カメラ14で撮像した画像に基づいて特定する。
【0055】
以下に、自車の走行するレーン位置の特定処理について、その内容を簡単に説明する。先ず、CPU41は後方カメラ14で撮像した画像からレーン区画線や中央分離帯の画像認識処理を行う。そして、画像認識処理の結果に基づいてレーン区画線や中央分離帯の有無及びレーン区画線の種別を検出する。その後、検出されたレーン区画線や中央分離帯と地図情報DB36から取得した自車の現在走行する道路の道路形状に基づいて自車の走行する走行レーンを特定する。尚、自車の走行する道路のレーン数が単数である場合には、レーン位置の特定に関する処理を行う必要は無い。
【0056】
次に、S12においてCPU41は、前方車両に関する前方車両情報を取得する。ここで、前記S12で取得される前方車両情報としては、前記S2で検出した自車から前方車両までの車間距離L1と自車に対する前方車両の相対速度等がある。尚、前方車両の相対速度についてはミリ波レーダ15を用いて検出する。
【0057】
続いて、S13においてCPU41は、自車の周辺道路状況を取得する。ここで、前記S13で取得される周辺道路状況としては、自車が現在走行するレーンに隣接する隣接レーンの状況がある。具体的には、隣接レーンを走行する他車両や隣接レーン内に配置された看板等の障害物に関する情報(位置や相対速度)を取得する。尚、周辺道路状況については、前方カメラ13や後方カメラ14やミリ波レーダ15を用いて検出する。
【0058】
その後、S14においてCPU41は、後述の制御種類判定処理(図5)を行う。尚、制御種類判定処理は、衝突防止制御で行う制御の種類を、(a)障害物との衝突を防止する為に運転者に回避運動を促す回避制御と(b)障害物との衝突の際の衝撃を軽減する為に減速する制動制御のいずれが適当であるかを判定する処理である。
【0059】
次に、S15でCPU41は、前記S14の制御種類判定処理の結果、(a)回避制御と(b)制動制御のいずれが選択されたかを判定する。
【0060】
その結果、(a)回避制御が選択された場合には、CPU41はATECU8を介してAT5の変速比を固定するシフトホールド制御を行う(S16)。その結果、運転者がステアリングを操作することにより車両が回避運動を行う場合であっても、回避運動中にダウンシフトを行わないので、車両の横滑り等の発生が防止できる。また、前記S16では同時に液晶ディスプレイ25やスピーカ26を用いて回避運動を行う旨の警告をすることが望ましい。尚、回避運動を行う旨の警告以外にも、操舵方向の案内をしても良い。また、操作支援の為の自動制御を行うようにしても良い。
【0061】
一方、(b)制動制御が選択された場合には、CPU41はATECU8を介してAT5の変速比を大きくするダウンシフト制御を行う(S17)。その結果、障害物との衝突が避けられない場合であっても、エンジンブレーキにより車両に制動を生じさせるので、衝突の際の衝撃を軽減することができる。また、前記S17では同時にブレーキ6A〜6Dによる制動制御を行うことが望ましい。更に、液晶ディスプレイ25やスピーカ26を用いて制動制御を行う旨の警告をすることも望ましい。尚、上記S17が制動御手段の処理に相当する。
【0062】
次に、上記S14の制御種類判定処理のサブ処理について図5に基づき説明する。図5は制御種類判定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0063】
先ず、S21においてCPU41は、前記S11で取得した自車の車速が旋回可能速度未満であるか否か判定する。尚、旋回可能速度とは車両が安全に旋回できる速度であり、車両毎にパラメータとして設定されている。
【0064】
そして、自車の車速が旋回可能速度未満であると判定された場合(S21:YES)には、S22へと移行する。一方、自車の車速が旋回可能速度以上であると判定された場合(S21:NO)には、車両に回避運動をさせることが危険であるので、衝突防止制御で行う制御の種類を、障害物との衝突の際の衝撃を軽減する為に減速する制動制御が適当であると判定する(S27)。
【0065】
S22でCPU41は、前記S11で取得した自車情報と前記S12で取得した前方車両情報とに基づいて、前方車両の回避に必要な距離(以下、回避必要距離L3という)を算出する。
【0066】
次に、S23でCPU41は、前記S22で算出した回避必要距離L3と前方車両までの車間距離L1とを比較し、車間距離L1より回避必要距離L3の方が短いか否か判定する。
【0067】
その結果、車間距離L1より回避必要距離L3の方が短いと判定された場合(S23:YES)には、S25へと移行する。一方、図9に示すように車間距離L1より回避必要距離L3の方が長いと判定された場合(S23:NO)には、前方車両との接触が避けられないので、衝突防止制御で行う制御の種類を、障害物との衝突の際の衝撃を軽減する為に減速する制動制御が適当であると判定する(S27)。
【0068】
S23でCPU41は、自車の現在走行する道路の道路情報に基づいて、自車が現在走行するレーンに隣接するレーンがあるか否か判定する。そして、隣接するレーンがあると判定された場合(S24:YES)には、S25へと移行する。一方、隣接するレーンがないと判定された場合(S24:NO)には、前方車両を回避できないので、衝突防止制御で行う制御の種類を、障害物との衝突の際の衝撃を軽減する為に減速する制動制御が適当であると判定する(S27)。
【0069】
S25でCPU41は、前記S13で取得した周辺道路状況に基づいて、自車が現在走行するレーンに隣接する隣接レーンであって、前方車両より近い距離に障害物(例えば、他車両や看板等)が存在するか否か判定する。
【0070】
その結果、全ての隣接レーンにおいて、前方車両より近い距離に障害物が存在すると判定された場合(S25:NO)には、障害物によって前方車両を回避する為の経路が遮られ、前方車両との接触が避けられない。従って、衝突防止制御で行う制御の種類を、障害物との衝突の際の衝撃を軽減する為に減速する制動制御が適当であると判定する(S27)。例えば、図10に示す例では、左隣接レーンの自車両2と前方車両52との間に他車両53が存在し、右隣接レーンの自車両2と前方車両52との間に他車両54が存在する。従って、前方車両52を回避する為に左側へ移動する経路は他車両53によって遮られ、前方車両52を回避する為に右側へ移動する経路は他車両54によって遮られる。このような場合には、衝突防止制御で行う制御の種類として制動制御が選択される。
【0071】
一方、少なくとも一の隣接レーンにおいて、前方車両より近い距離に障害物が存在しないと判定された場合(S25:YES)には、障害物の存在しない隣接レーンにおいては、障害物によって前方車両を回避する為の経路が遮られることなく、ステアリング操作によって前方車両との接触が回避できる。従って、衝突防止制御で行う制御の種類を、運転者に回避運動を促す回避制御が適当であると判定する(S26)。例えば、図11では左右隣接レーンの自車両2と前方車両52との間に障害物が存在せず、且つ車間距離L1より回避必要距離L3の方が短いので、ステアリング操作によって前方車両52を回避することが可能である。尚、上記S21〜S25が回避判定手段の処理に相当する。
【0072】
ここで、自車の前方に障害物が接近している場合であって、その障害物との接触を回避する為には、以下の2通りの方法がある。
(1)現在の車両進行方向を維持した状態で自車の制動を行うことにより、障害物と接触することなく障害物までの距離を保つ方法。
(2)ステアリングを操作して自車の進行方向を変更し、障害物の右側又は左側へと車両を移動させる回避運動を行う方法。
そして、上記(1)と(2)の方法を比較すると、(1)の方法で障害物との接触を回避する為には、(2)の方法で障害物との接触を回避するよりも早いタイミングで衝突回避の為の運転者の車両操作を開始する必要がある。
【0073】
そして、従来の技術(例えば、特開2007−145152号公報参照)では、(2)の方法でも障害物との接触が回避できないと判定した場合、即ち、どのような車両操作を行ったとしても障害物との接触が避けられない状況となった場合に、制動制御を開始する。更に、従来では上記したように自車と障害物との相対速度や位置関係、即ち、自車と障害物との相対的な関係のみに基づいて、(2)の方法で障害物との接触が回避できるか否かを判定している。
【0074】
しかしながら、回避運動を行うことが不可能な状況、例えば、車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンが無い場合や、車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンがあったとしても、その隣接レーンに他の障害物(例えば、走行車両)がある場合には、車両は左右の隣接レーンに移動することによって前方の障害物を回避することができない。そして、従来技術のように、自車と障害物との相対的な関係のみに基づいて判定を行う場合には、上記のような操舵によって障害物との接触が回避できない状況に車両があることを判定することができなかった。
【0075】
そこで本実施形態では、車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンの有無や隣接レーン上にある障害物の有無に関する情報を用いることによって、上記S24、S25の判定処理を追加し、操舵によって障害物との接触が回避できない状況に車両があることを判定することができる。その結果、制動制御(S17)の開始タイミングを早くすることができ、障害物との接触の際の衝撃を小さくすることが可能となる。
【0076】
次に、上記S7の終了判定処理のサブ処理について図6に基づき説明する。図6は終了判定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0077】
先ず、S31においてCPU41は、車速センサ29を用いて自車が停止したか否かを判定する。そして、自車が停止したと判定された場合(S31:YES)には、その後に自車が障害物と接触する虞が無いので、衝突防止制御を終了すると判定する(S32)。
【0078】
一方、自車が走行中であると判定された場合(S31:NO)には、更に、S33においてミリ波レーダ15の認識範囲51内に前方車両が存在するか否か判定する。その結果、ミリ波レーダ15の認識範囲51内に前方車両が存在しないと判定された場合(S33:YES)には、衝突防止制御を行った結果、自車と前方車両との衝突の虞が解消されたとみなし、衝突防止制御を終了すると判定する(S32)。その後、S8へと移行する。
【0079】
一方、ミリ波レーダ15の認識範囲51内に前方車両が存在すると判定された場合(S33:NO)には、自車と前方車両との衝突の虞は解消されておらず、衝突防止制御を継続して行うと判定し、S8へと移行する。
【0080】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る車両制御装置1、車両制御装置1による車両制御方法、及び車両制御装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、車両の進行方向前方を走行する前方車両を検出した(S1)場合に、前方車両までの車間距離を検出する(S2)とともに、自車両の制動距離を算出し(S3)、自車両と前方車両とが衝突する虞があると判定された場合に、衝突防止制御を行う(S6)。そして、衝突防止制御では、自車情報、前方車両情報及び周辺道路状況を考慮することにより、ステアリング操作によって前方車両との衝突が回避できるか否かを判定し(S21〜S27)、回避できると判定された場合にはAT5をシフトホールド制御する(S16)とともに、回避できないと判定された場合にはAT5をシフトダウン制御する(S17)ので、車両2の回避運動中に横滑り等が発生することを防止することができる。従って、車両2の挙動を安定させた状態で前方車両を確実に回避し、安全に走行させることが可能となる。
また、車両2の車速に基づいて算出された制動距離と前方車両までの距離とを比較する(S4)ことにより、車両と障害物との衝突の虞があるか否かを正確に判定することが可能となる。
また、隣接レーンを走行する他車両について考慮することにより、車両2が障害物を回避する際の隣接レーンへの回避経路が確保できるか否かを把握できる(S25)。そして、回避経路の確保の把握結果を用いることにより、ステアリングの操作によって車両2と前方車両との衝突が回避できるか否かをより正確に判定することが可能となる。
また、隣接レーンに関する情報を用いることによって、操舵によって障害物との接触が回避できない状況、即ち、その後にどのような車両操作を行ったとしても障害物との接触が避けられない状況に車両があることを判定する(S24、S25)ことができる。その結果、制動制御(S17)の開始タイミングを早くすることができ、障害物との接触の際の衝撃を小さくすることが可能となる。
また、車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンが無い場合に障害物と車両との衝突が回避できないと判定し、車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンがあって、且つその隣接レーンに他の障害物が有る場合に障害物と車両との衝突が回避できないと判定するので、操舵によって障害物との接触が回避できるか否かの判定について、従来より正確且つ迅速に行うことができる。
【0081】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では、障害物として特に車両の進行方向前方を走行する前方車両を検出した場合を例に挙げて説明しているが、障害物は前方車両以外のものを対象としても良い。例えば、人、自転車、ガードレール等が該当する。
【0082】
また、本実施形態では、図3〜図6に示す車両制御処理プログラムはナビゲーション装置3の備えるナビゲーションECU23が実行することとしているが、エンジンECU7、ATECU8、ブレーキECU9等が実行するようにしても良い。また、複数のECUによって処理を分担して行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施形態に係る車両制御装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るナビゲーション装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る車両制御装置が実行する車両制御処理プログラムのフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る車両制御装置が実行する衝突防止制御処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る車両制御装置が実行する制御種類判定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る車両制御装置が実行する終了判定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図7】自車両と前方車両との衝突の虞があると判定される場合の一例を示した図である。
【図8】自車両と前方車両との衝突の虞がないと判定される場合の一例を示した図である。
【図9】ステアリング操作により前方車両との衝突が回避できないと判定される場合の一例を示した図である。
【図10】ステアリング操作により前方車両との衝突が回避できないと判定される場合の一例を示した図である。
【図11】ステアリング操作により前方車両との衝突が回避できると判定される場合の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0084】
1 車両制御装置
2 車両
3 ナビゲーション装置
4 エンジン
5 AT
7 エンジンECU
8 ATECU
9 ブレーキECU
23 ナビゲーションECU
41 CPU
42 RAM
43 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速を取得する車速取得手段と、
前記車両の前方にある障害物までの距離を取得する障害物距離取得手段と、
前記車速と前記障害物までの距離に基づいて、前記障害物と前記車両とが衝突する虞があるか否かを判定する衝突判定手段と、
前記衝突判定手段によって前記障害物と前記車両とが衝突する虞があると判定された場合に、前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンの有無に基づいて、ステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突が回避できるか否か判定する回避判定手段と、
前記回避判定手段においてステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突を回避できないと判定された場合に前記車両を減速させる為の制動制御を行う制動制御手段と、を有することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記回避判定手段は、
前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンが無い場合に前記障害物と前記車両との衝突が回避できないと判定し、
前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンがあって、且つその隣接レーンに他の障害物が有る場合に前記障害物と前記車両との衝突が回避できないと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
車両の車速を取得する車速取得ステップと、
前記車両の前方にある障害物までの距離を取得する障害物距離取得ステップと、
前記車速と前記障害物までの距離に基づいて、前記障害物と前記車両とが衝突する虞があるか否かを判定する衝突判定ステップと、
前記衝突判定ステップによって前記障害物と前記車両とが衝突する虞があると判定された場合に、前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンの有無に基づいて、ステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突が回避できるか否か判定する回避判定ステップと、
前記回避判定ステップにおいてステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突を回避できないと判定された場合に前記車両を減速させる為の制動制御を行う制動制御ステップと、を有することを特徴とする車両制御方法。
【請求項4】
コンピュータに搭載され、
車両の車速を取得する車速取得機能と、
前記車両の前方にある障害物までの距離を取得する障害物距離取得機能と、
前記車速と前記障害物までの距離に基づいて、前記障害物と前記車両とが衝突する虞があるか否かを判定する衝突判定機能と、
前記衝突判定機能によって前記障害物と前記車両とが衝突する虞があると判定された場合に、前記車両の走行するレーンに隣接する隣接レーンの有無に基づいて、ステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突が回避できるか否か判定する回避判定機能と、
前記回避判定機能においてステアリングの操作によって前記障害物と前記車両との衝突を回避できないと判定された場合に前記車両を減速させる為の制動制御を行う制動制御機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−137562(P2009−137562A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86132(P2008−86132)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【分割の表示】特願2008−68946(P2008−68946)の分割
【原出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】