説明

車両用エンジンの制御装置、制御法及びそのプログラム

【課題】より正確な転倒判断が可能なエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】 車両の傾斜を検出する車両傾斜角度検出手段(14)と、前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上となる第1の累積期間を検出する第1の傾斜累積期間検出手段(15)と、ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段(13)と、前記第1の傾斜累積検出手段の第1の傾斜累積期間出力と、前記ライダ操作検出手段の出力がライダの操作有り出力とにより車両の転倒と判断して、当該車両のエンジンを停止するエンジン停止手段(15)を備えるエンジン制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が所定角度以上に傾斜したことを検出してエンジンの制御を実行する車両用エンジンの制御装置、車両用エンジンの制御法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両が所定角度以上に傾斜した際に、車両の安全を確保する技術としては以下のものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
上記文献に記載のものは、緊急時に速やかに電気系統を遮断して自動二輪車の安全を確保するものとして「自動二輪車のライダ用シート上のライダの有無を検出する人員検出手段と、自動二輪車の転倒を検出する転倒検出手段とを備え、前記転倒検出手段が転倒を検出し、前記人員検出手段がライダ無しを検出すると、自動二輪車の給電ラインを遮断状態にする自動二輪車の安全装置」である。
【0003】
【特許文献1】特開昭64−28086号公報
【0004】
上記特許文献に記載の技術は、給電ラインを遮断する要件として、傾斜角センサの出力と、シートに装着されたライダ検出手段による出力をアンド条件としているため、不整地走行時など車両の揺れが大きい場合に傾斜角センサが転倒時でなくとも転倒と判断する誤動作が生じることがあると共に、自動二輪車にライダが乗車中における立ち乗り状態時にはライダ検出手段がライダ無しと判断して給電ラインを遮断する状況があり得た。
また、自動二輪車の転倒時においても、必ずしもライダが投げ出されるとは限らないので、自動二輪車の転倒時においても給電ラインの遮断が実行されないこともあり得た。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、不整地走行時など車両の揺れが大きい場合やライダの乗車状態に関わらず車両のエンジンを停止する車両用エンジン制御装置、制御方法及びエンジン制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のエンジン制御装置は、車両の傾斜を検出する車両傾斜角度検出手段と、前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上である累積期間を検出する第1の傾斜累積期間検出手段と、ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段と、前記第1の傾斜累積期間検出手段の出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止するエンジン停止手段を備えることを特徴とする(請求項1)
【0007】
また、本発明のエンジン制御装置は、車両の傾斜を検出する車両傾斜角度検出手段と、前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上である第1の累積期間を検出する第1の傾斜累積期間検出手段と、前記第1の累積期間よりも長く設定された第2の累積期間を検出する第2の傾斜累積期間検出手段と、ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段と、前記第1の傾斜累積期間検出手段の出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止する第1のエンジン停止手段と、前記第2の傾斜累積期間検出手段の出力により車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止する第2のエンジン停止手段とを備えることを特徴とする。(請求項2)
【0008】
また、前記第1及び第2の傾斜累積期間検出手段は、前記車両傾斜角度検出手段の検出角度が所定角度以上の際にカウントアップされ、所定角度以下の際にカウントダウンされるアップダウンカウンタであることを特徴とする。(請求項3)
また、前記ライダ操作検出手段は、ライダの操作に応答する当該車両のスロットル開度、吸気管圧力、ブレーキ操作、若しくはブレーキ操作および変速操作の少なくとも1つを検出することを特徴とする。(請求項4)
また、前記エンジン停止手段は、エンジンの点火の停止、燃料噴射の停止、燃料ポンプの停止の少なくとも1つを実行することを特徴とする。(請求項5)
また、本発明の車両は、前記エンジン制御装置を搭載したことを特徴とする。特に不整地を走行する自動二輪車や小型車両へ搭載することは好適である。
【0009】
本発明のエンジン制御方法は、車両の傾斜を検出するステップと、傾斜角度が所定角度以上となる累積期間を検出するステップと、ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するステップと、前記累積期間の検出出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止するステップとを含むことを特徴とする。(請求項7)
【0010】
また、本発明のエンジン制御方法は、車両の傾斜を検出するステップと、傾斜角度が所定角度以上となる累積期間を検出するステップと、前記第1の累積期間よりも長く設定された傾斜角度が所定角度以上となる第2の累積期間を検出するステップと、ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段と、前記第1の累積期間の検出出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止するステップと、前記第2の傾斜累積期間の検出出力により車両の転倒と判断して、当該車両のエンジンを停止するステップとを含むことを特徴とする。(請求項8)
【0011】
また、前記第1及び第2の累積期間を検出するステップは、車両の傾斜角度が所定角度以上の際にアップダウンカウンタをカウントアップし、所定角度以下の際に前記アップダウンカウンタをカウントダウンさせることを特徴とする。(請求項9)
【0012】
本発明の車両のエンジン制御プログラムは、車両の傾斜を検出する車両傾斜角度検出手段と、前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上となる第1の累積期間を検出する第1の傾斜累積期間検出手段と、前記第1の累積期間よりも長く設定された前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上となる第2の累積期間を検出する第2の傾斜累積期間検出手段と、ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段と、前記第1の傾斜累積期間検出手段の出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止する第1のエンジン停止手段と、前記第2の傾斜累積期間検出手段の出力により車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止する第2のエンジン停止手段と、電子制御装置を備えた車両のエンジン制御プログラムであって、前記電子制御装置のコンピュータに、前記請求項7〜9のいずれか1項に記載の各ステップの処理を実行させることを特徴とする。(請求項10)
【発明の効果】
【0013】
本発明では、車両の傾斜角度が所定角度以上所定累積期間継続していることを検出する傾斜累積期間検出手段と、ライダが自分の意志で車両を操作していることを検出するライダ操作検出手段とによって、正確に車両の転倒を検出して車両のエンジンを停止するので、車両の傾斜と車両がライダの意志によって操作されているかとにより車両が転倒したのか否かの判断を行うので、より正確な転倒判断が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図1〜5を用いて、車両用エンジンの制御装置、制御法及びそのプログラムについて説明する。
図1は、本発明が適用される車両の1例である不整地走行車両(all-terrain-vehicle)の左側面図である。
車両1には、車両進行方向前方(同図においてFrの示す方向)に車幅方向左右にフロントサスペンション3がそれぞれ配置されており、その下端部には前車輪4が軸支されている。
前車輪4の上方にはフロントフェンダ11が左右にそれぞれ設けられている。フロントサスペンション3の上端部は、車体フレーム8によって支持されている。
車体フレーム8の車両進行方向前端はステアリングシャフト17を左右に回転可能に軸支している。ステアリングシャフト17の上端には左右に延設されるハンドル18が、その中央部で支持されている。ハンドル18の両端にはグリップ19が設けられている。その内の右側グリップの車幅方向内側には、車両の走行時に搭乗者が指で押圧することにより作動するスロットルレバーが取り付けられている。
【0015】
エンジン2の前方には排気管15が接続されており、排気管はエンジンから前方に延設された後、U字状に曲がり、車両進行方向後方に向けて延設されている。排気管の後方の端部は消音器13と接続されている。エンジンから排出される排気ガスは、排気管内を流通して、該消音器13の後方から排出される。エンジンから出力された駆動力は、チェーン機構25を介して後輪5へ伝達されるようになっている。後輪5の上方には、リヤフェンダ12が左右にそれぞれ設けられている。エンジンはその上部において車体フレーム8に懸架されて、その下部において該車体フレーム8に支持されている。
シート10は車体フレームに支持されており、シート10前方には燃料タンク21が配置されており、燃料タンク21は車体フレーム8によって支持されている。
シート10の下方には、エンジンへ空気を供給する吸気系装置40が配置されている。
前記ハンドルの右側に設けられたスロットルレバーのライダによる操作に応答するスロットル開度センサ49、車両の傾斜角度を検出する傾斜角センサ9、及びエンジンの制御を実行するECU24が設けられている。
【0016】
図2は、本発明のエンジン制御装置の各要素とエンジンとの関係を示す図である。
図2において、エンジン2は、シリンダ20を有するエンジン本体14と、吸気管16と、排気管15とを備えている。本実施形態に係るエンジン2は、単気筒4サイクルエンジンである。ただし、エンジン2は多気筒の4サイクルエンジン等であってもよい。
図2に示すように、エンジン本体14のシリンダ20内には、ピストン31が収容されている。ピストン31にはコンロッド30の一端が連結され、コンロッド30の他端は、クランクケース28内のクランク27に連結されている。シリンダ20の上部には、吸気ポート22及び排気ポート23が形成され、吸気ポート22には吸気管16が接続され、排気ポート23には排気管15が接続されている。吸気ポート22には吸気バルブ6が設けられ、排気ポート23には排気バルブ7が設けられている。シリンダ20内におけるピストン31の上方には、燃焼室32が区画されている。燃焼室32には点火プラグ43が配置され、点火プラグ43は点火コイル47に接続されている。
吸気管16の内部には、アクセル開度に応じて開度が調整されるスロットルバルブ33が設けられている。吸気管16におけるスロットルバルブ33の上流側には、インジェクタ42が取り付けられている。インジェクタ42には燃料パイプ38が接続されており、燃料パイプ38は燃料タンク21に接続されている。燃料パイプ38には、燃料ポンプ41が設けられている。なお、図2では、燃料ポンプ41は燃料タンク21の外部に配置されているように図示されているが、燃料ポンプ41が燃料タンク21の内部に配置されていてもよいことは勿論である。
また、インジェクタ42はスロットルバルブ33の上流側に取り付けられているが、下流側に取り付けても良い。
【0017】
次に、各種のセンサ類について説明する。エンジン2には、クランク角度センサ51と、吸気管圧力センサ50と、スロットル開度センサ49とが設けられている。クランク角度センサ51は、クランクシャフト46の回転角度、つまりクランク位置(クランク位相)を検出するセンサである。吸気管圧力センサ50は、吸気管10の吸気管圧力を検出するセンサである。スロットル開度センサ49は、スロットルバルブ33の開度を検出するセンサである。
図2に示すように本発明のエンジン制御装置では、クランク角度センサ51、吸気管圧力センサ50、スロットル開度センサ49、傾斜角センサ9の出力は、ECU24に接続されている。ECU24は、クランク角度センサ51、吸気管圧力センサ50、スロットル開度センサ49、傾斜角センサ9から、それぞれクランク角度信号、吸気管圧力信号、スロットル開度出力信号、傾斜角出力信号を受けて、燃料ポンプ41、インジェクタ42、及び点火コイル47等に制御信号を出力する。
【0018】
図1及び2で示したエンジンの制御を実行するECU(電子制御装置)24の入出力の
内の本発明のエンジン制御装置に関する部分は図3の如くなる。
【0019】
次に本発明の車両の転倒検出時のエンジン制御装置の第1の実施の形態について図4(a)を用いて説明する。
・所定時間(例えば、10ms)毎に、車両に取付けられた傾斜角センサ14で検出された傾斜角度が 所定角度 ≧しきい値A(例えば、65度)か否かの判断をする。(ステップS11)
・ステップS11の判断が、Yの場合には、ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段であるスロットル開度センサの出力が、スロットル開度 ≦ しきい値S の判断をする。(ステップS12)
このステップS12でYの場合には、スロットルがほぼ閉になっていてライダの意志によりスロットルレバーが操作されていないという判断がなされる。
・ステップS12の判断がYの場合は、第1の傾斜累積期間検出手段であるアップダウンカウンタをカウントアップする。(ステップS13)
・ステップS12の判断がNの場合は、第1の傾斜累積期間検出手段であるアップダウンカウンタをカウントダウンする。(ステップS14)
・第1の累積期間 、つまり、アップダウンカウンタのカウント値が、アップダウンカウンタのカウント値 ≧しきい値aであるか否かの判断をする。(ステップS15)
・ステップS15の判断がYの場合には、点火停止、燃料噴射停止、燃料ポンプ停止の内の少なくとも1つを実行してエンジンを停止する。(ステップS16)
・ステップS15の判断がNの場合には、ステップS11にもどって上記の手順を繰り返す。
【0020】
次に本発明の車両の転倒検出時のエンジン制御装置の第2の実施の形態について図4(b)を用いて説明する。
・所定時間(例えば、10ms)毎に、車両に取付けられた傾斜角センサ14で検出された傾斜角度が 所定角度 ≧ しきい値B(例えば、65度)か否かの判断をする。(ステップS21)
・ステップS21の判断がYの場合は、第2の傾斜累積期間検出手段であるアップダウンカウンタをカウントアップする。(ステップS22)
・ステップS21の判断がNの場合は、第2の傾斜累積期間検出手段であるアップダウンカウンタをカウントダウンする。(ステップS23)
上記第2の傾斜累積期間検出手段は前記第1の傾斜累積期間検出手段とは別の構成であって、且つ、累積期間のしきい値bはしきい値aよりも長く設定されている。
・第2の累積期間 、つまり、アップダウンカウンタのカウント値が、アップダウンカウンタのカウント値 ≧しきい値bであるか否かの判断をする。(ステップS24)
・ステップS24の判断がYの場合には、点火、燃料噴射、燃料ポンプ停止の内の少なくとも1つを実行してエンジンを停止する。(ステップS25)
・ステップS25の判断がNの場合には、ステップS21にもどって上記の手順を繰り返す。
【0021】
本発明のエンジン制御装置では、図4(b)の第2の実施の形態は、図4(a)の第1の実施の形態と図4(b)の実施の形態とが併用して適用される。
ただし、図4(a)の第1の実施の形態は単独で適用しても良い。
また、傾斜角度のしきい値Aとしきい値Bは、同じ値でも良いし、異なる値でも良い。
【0022】
上記本発明の車両の転倒検出時のエンジン制御装置の第1の実施の形態における動作を図5(a)のタイムチャートを用いて説明する。
図5(a)では、横軸の時間の経過に伴ったスロットル開度、車両の傾斜角度、累積期間のアップダウンカウンタのカウント値、点火・燃料噴射・噴射ポンプの状態、及びエンジンの状態を示している。
【0023】
・時刻t10からt11までの期間は、スロットル開度はしきい値S以上、すなわち、ライダが車両を正常に操作していると判断されるので、車両の傾斜角度がしきい値A以上の状態になっても、アップダウンカウンタのカウントアップは行われない。
・時刻t11でライダが車両から投げ出される等の事情で、スロットルレバーを離したことによって、スロットル開度が判定しきい値S以下となって、その状態が継続する。
・スロットル開度がしきい値S以下となった、以後の時刻t12で車両の傾斜角度がしきい値Aを超えると、アップダウンカウンタのカウントアップが開始される。
・その後、時刻t13で車両の傾斜角度がしきい値A以下の状態になると、アップダウンカウンタのカウントダウンが開始される。そして、図5(a)のようにカウント値がゼロにまでなってその状態で維持されている。
・時刻t14で再度車両の傾斜角度がしきい値Aを超えると、アップダウンカウンタのカウントアップが再開される。
・その後、時刻t15で車両の傾斜角度がしきい値A以下の状態になると、アップダウンカウンタのカウントダウンが開始されるが、時刻t16で車両の傾斜角度がしきい値Aを超えると、アップダウンカウンタのカウントアップが再開される。図5(a)のようにカウント値がゼロにまではならず、カウントアップが継続して時刻t17で累積期間がしきい値aを超えると、点火・燃料噴射・噴射ポンプの少なくとも1つの停止が行われエンジンが停止する。
【0024】
次に、上記本発明の車両の転倒検出時のエンジン制御装置の第2の実施の形態における動作を図5(b)のタイムチャートを用いて説明する。
図5(b)では、横軸の時間の経過に伴った車両の傾斜角度、累積期間のアップダウンカウンタのカウント値、点火・燃料噴射・噴射ポンプの状態、及びエンジンの状態を示している。
【0025】
・時刻t21で車両の傾斜角度がしきい値Bを超えると、アップダウンカウンタのカウントアップが開始される。
・その後、時刻t22で車両の傾斜角度がしきい値B以下の状態になると、アップダウンカウンタのカウントダウンが開始される。そして、図5(b)のようにカウント値が時刻t23でゼロにまでなってその状態で維持されている。
・時刻t24で再度車両の傾斜角度がしきい値Bを超えると、アップダウンカウンタのカウントアップが再開される。
・その後、時刻t25で車両の傾斜角度がしきい値B以下の状態になると、アップダウンカウンタのカウントダウンが開始されるが、時刻t26で車両の傾斜角度がしきい値Bを超えると、アップダウンカウンタのカウントアップが再開される。図5(b)のようにカウント値がゼロにまではならず、カウントアップが継続して時刻t27で累積期間がしきい値bを超えると、点火・燃料噴射・噴射ポンプの少なくとも1つの停止が行われエンジンが停止する。
【0026】
上述の如く、本発明のエンジン制御装置では、第1の実施の形態は、第2の実施の形態と併用して適用されるので、車両が第2の傾斜累積期間を超えると、ライダの操作の有無に関係無くエンジンを停止することになる。
【0027】
本発明の実施の形態では、第1及び第2の累積期間の検出にアップダウンカウンタを使用して、車両の傾斜角度がしきい値を下回った際に、カウントダウンをさせて、再度車両の傾斜角度が判定しきい値を超えた際に、カウントダウンさせたカウント値から再度カウントアップをさせる構成となっている。
【0028】
なお、車両の傾斜角度がしきい値を下回った際に、カウントダウンをさせて、再度車両の傾斜角度がしきい値を超えた際に、カウントダウンさせたカウント値からカウントアップさせる構成に変えて、車両の傾斜角度がしきい値を下回った際に、カウンタをリセットさせて、初期値からカウントアップさせる構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明では、車両の傾斜角度が所定角度以上で所定継続していることを検出する車両傾斜検出手段と、ライダが自分の意志で車両を操作していることを検出するライダ操作検出手段とによって、正確に車両の転倒を検出してエンジンの点火、燃料噴射、燃料ポンプのの少なくとも1つの停止を実行して車両のエンジンを停止するので、車両が転倒したのか否かの判断をライダの意志によって操作される当該車両のスロットル開度センサ、吸気管圧力、ブレーキ操作、若しくはブレーキ操作および変速操作の少なくとも1つで検出するので、より正確な転倒判断が可能になるので、産業の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明が適用される車両の1例である不整地走行車両の右側面図である。
【図2】本発明のエンジン制御装置の各要素とエンジンとの関係を示す図である。
【図3】図1の車両に搭載されるECUに接続される入出力の関係を示す図である。
【図4】本発明の車両の転倒検出時のエンジン制御装置(方法)の第1及び第2の実施の形態の動作説明するフローチャートである。
【図5】本発明の車両の転倒検出時のエンジン制御装置(方法)の第1及び第2の実施の形態の動作説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 車両
2 エンジン
3 フロントサスペンション
4 前輪
5 後輪
6 吸気バルブ
7 排気バルブ
8 車体フレーム
9 傾斜角センサ
10 シート
11 フロントフェンダ
12 リヤフェンダ
13 消音器
14 エンジン本体
15 排気管
16 吸気管
17 ステアリングシャフト
18 ハンドル
19 グリップ
20 シリンダ
21 燃料タンク
22 吸気ポート
23 排気ポート
24 ECU
25 チェーン機構
27 クランク
28 クランクケース
30 コンロッド
31 ピストン
32 燃焼室
33 スロットルバルブ
38 燃料パイプ
40 吸気系装置
42 インジェクタ
43 点火プラグ
46 クランクシャフト
47 点火コイル
49 スロットル開度センサ
50 吸気管圧力センサ
51 クランク角度センサ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の傾斜を検出する車両傾斜角度検出手段と、
前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上である累積期間を検出する第1の傾斜累積期間検出手段と、
ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段と、
前記第1の傾斜累積期間検出手段の出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止するエンジン停止手段を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
車両の傾斜を検出する車両傾斜角度検出手段と、
前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上である第1の累積期間を検出する第1の傾斜累積期間検出手段と、
前記第1の累積期間よりも長く設定された第2の累積期間を検出する第2の傾斜累積期間検出手段と、
ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段と、
前記第1の傾斜累積期間検出手段の出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止する第1のエンジン停止手段と、
前記第2の傾斜累積期間検出手段の出力により車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止する第2のエンジン停止手段と、
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の傾斜累積期間検出手段は、前記車両傾斜角度検出手段の検出角度が所定角度以上の際にカウントアップされ、所定角度以下の際にカウントダウンされるアップダウンカウンタであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記ライダ操作検出手段は、ライダの操作に応答する当該車両のスロットル開度、吸気管圧力、ブレーキ操作、若しくはブレーキ操作および変速操作の少なくとも1つを検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記エンジン停止手段は、エンジンの点火の停止、燃料噴射の停止、燃料ポンプの停止の少なくとも1つを実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジン制御装置を搭載した車両。
【請求項7】
車両の傾斜を検出するステップと、
傾斜角度が所定角度以上となる累積期間を検出するステップと、
ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するステップと、
前記累積期間の検出出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止するステップと、
を含むことを特徴とするエンジン制御方法。
【請求項8】
車両の傾斜を検出するステップと、
傾斜角度が所定角度以上となる累積期間を検出するステップと、
前記第1の累積期間よりも長く設定された傾斜角度が所定角度以上となる第2の累積期間を検出するステップと、
ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段と、
前記第1の累積期間の検出出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止するステップと、
前記第2の傾斜累積期間の検出出力により車両の転倒と判断して、当該車両のエンジンを停止するステップと、
を含むことを特徴とするエンジン制御方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の累積期間を検出するステップは、車両の傾斜角度が所定角度以上の際にアップダウンカウンタをカウントアップし、所定角度以下の際に前記アップダウンカウンタをカウントダウンさせることを特徴とする請求項7又は8に記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
車両の傾斜を検出する車両傾斜角度検出手段と、前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上となる第1の累積期間を検出する第1の傾斜累積期間検出手段と、
前記第1の累積期間よりも長く設定された前記車両傾斜角度検出手段の検出傾斜角度が所定角度以上となる第2の累積期間を検出する第2の傾斜累積期間検出手段と、
ライダが前記車両を操作しているか否かを検出するライダ操作検出手段と、
前記第1の傾斜累積期間検出手段の出力と、前記ライダ操作検出手段の出力とにより車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止する第1のエンジン停止手段と、
前記第2の傾斜累積期間検出手段の出力により車両の転倒を判断して、当該車両のエンジンを停止する第2のエンジン停止手段と、電子制御装置を備えた車両のエンジン制御プログラムであって、
前記電子制御装置のコンピュータに、
前記請求項7〜9のいずれか1項に記載の各ステップの処理を実行させることを特徴とする車両のエンジン制御プログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−307782(P2006−307782A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133267(P2005−133267)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】