車両用ブレーキ装置
【課題】ブレーキブースタにおけるエネルギ損失を低減しつつ回生制動力を最大限活用して総合的に高いエネルギ効率を達成した車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブースタ部を有する液圧ブレーキ装置と回生ブレーキ装置とを備える車両用ブレーキ装置において、ブースタ部は出力部材とブースタ室と圧力源と弁機構97とを有して構成され、弁機構97は、駆動圧入力ポート971とブースタ室接続ポート972とが形成されているブースタシリンダ(内側ピストン部材965)と、ブレーキ操作部材に連動してブースタシリンダ965内を摺動するブースタピストン(入力部材94)とを有し、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量Lに達するまではブースタ部が作動せず、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量Lを超えるとブースタ部が作動するように構成され、所定操作量Lは、回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されている。
【解決手段】ブースタ部を有する液圧ブレーキ装置と回生ブレーキ装置とを備える車両用ブレーキ装置において、ブースタ部は出力部材とブースタ室と圧力源と弁機構97とを有して構成され、弁機構97は、駆動圧入力ポート971とブースタ室接続ポート972とが形成されているブースタシリンダ(内側ピストン部材965)と、ブレーキ操作部材に連動してブースタシリンダ965内を摺動するブースタピストン(入力部材94)とを有し、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量Lに達するまではブースタ部が作動せず、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量Lを超えるとブースタ部が作動するように構成され、所定操作量Lは、回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキブースタを備えた液圧ブレーキ装置による液圧制動力と回生ブレーキ装置による回生制動力とにより、要求される車両制動力を発生させる車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液圧ブレーキ装置による液圧制動力と回生ブレーキ装置による回生制動力とにより、要求される車両制動力を発生させる車両用ブレーキ装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された車両制動装置及び車両制動方法は、あるブレーキペダル入力値に対応する目標車両制動力を達成する際、目標車両制動力からブレーキペダル入力値に対応する液圧ブレーキ装置の最小制動力を差し引いた差分を割振制動力とし、この割振制動力から実際の回生制動力を差し引いた差分を液圧ブレーキ装置の配分制動力とし、最小制動力と配分制動力との和を目標液圧制動力として液圧ブレーキ装置の倍力比を制御するようになっている。
【0003】
一方、液圧ブレーキ装置のブレーキペダルとマスタピストンとの間にブレーキブースタを備えることが一般的になっている。ブレーキブースタはブレーキペダルに入力された踏力を助勢して効率的に液圧を発生させるものであり、油圧式および負圧式のブースタが知られている。油圧式ブレーキブースタは、例えば、電動ポンプによって加圧された作動油をブレーキペダルから給排操作してマスタピストンを移動させる構造を有している。負圧式ブレーキブースタは、例えば、エンジンの吸気マニホールドの負圧を倍力源とし、大気圧との圧力差を利用してマスタピストンを移動させる構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−63540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両用ブレーキ装置では、ブレーキペダルが弱く踏み込まれ、目標車両制動力が回生ブレーキ装置で発生し得る回生制動力の最大値よりも小さいときにも、液圧ブレーキ装置の液圧制動力が必ず働くようになっている。このため、液圧制動力の分だけ回生制動力が減少して回生効率が低下していた。
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、ブレーキブースタにおけるエネルギ損失を低減しつつ回生制動力を最大限活用して総合的に高いエネルギ効率を達成した車両用ブレーキ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1に係る車両用ブレーキ装置の発明は、マスタシリンダと、前記マスタシリンダ内を摺動するマスタピストンと、ブレーキ操作部材の操作力以上でかつ同操作力に応じた駆動力により前記マスタピストンを駆動するブースタ部とを有し、前記マスタシリンダと前記マスタピストンとにより区画され同マスタピストンの摺動に伴って収縮または膨張するマスタ液圧室に液圧を発生させ、当該マスタ液圧室の液圧に応じた液圧制動力を車両の車輪に発生させる液圧ブレーキ装置と、回生制動力を前記車両の車輪に発生させる回生ブレーキ装置と、を備え、前記液圧制動力と前記回生制動力とに基づく制動力を、前記車両の各車輪に付与する車両用ブレーキ装置において、前記ブースタ部は、前記マスタピストンを連動させる出力部材と、前記出力部材により区画されたブースタ室と、前記ブースタ室に供給されて前記出力部材を駆動する駆動圧を蓄える圧力源と、前記圧力源から前記ブースタ室に前記駆動圧を供給するための駆動圧供給経路を遮断または連通する弁機構と、を有して構成され、前記弁機構は、前記圧力源に接続される駆動圧入力ポートと、前記ブースタ室に接続されるブースタ室接続ポートとが形成されているブースタシリンダと、前記ブレーキ操作部材に連動して前記ブースタシリンダ内を摺動するブースタピストンと、を有し、前記ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの少なくともいずれか一方のポートが前記ブースタピストンにより閉鎖されて、前記駆動圧供給経路を遮断し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの両ポートが前記ブースタピストンにより開放されて、前記駆動圧供給経路を連通するように構成され、前記所定操作量は、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートは、前記ブースタピストンとの摺動方向に互いにずれて前記ブースタシリンダに形成されており、前記ブースタピストンは、前記ブースタシリンダとの摺動面に前記駆動圧供給経路を区画するピストン側凹部を有し、前記弁機構は、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートが前記ピストン側凹部に開口して、前記駆動圧供給経路を連通するように構成されている。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記弁機構は、前記駆動圧供給経路に加え、前記ブースタ室から大気圧リザーバに前記駆動圧を排出するための駆動圧排出経路を遮断または連通するものであり、前記ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、前記ブースタ室接続ポートが前記ブースタピストンにより開放されて前記駆動圧排出経路を連通し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えている場合に、前記駆動圧排出経路を遮断するように構成されている。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3において、前記ブースタ室接続ポートは、前記駆動圧入力ポートよりも前記ブースタピストンとの摺動方向後方にずれて形成され、前記ブースタシリンダは、前記ブースタピストンとの摺動面の前記駆動圧入力ポートと前記ブースタ室接続ポートとの間で当該両ポートから前記ブースタピストンの摺動方向に離間して形成され、前記駆動圧供給経路を区画する第1シリンダ側凹部と、前記ブースタ室接続ポートから当該摺動方向後方に離間して形成され、前記駆動圧排出経路を区画する第2シリンダ側凹部と、を有し、前記ブースタピストンは、第1小径部と、前記第1小径部から前記ブースタシリンダとの摺動方向後方に離間して形成された第2小径部と、を有し、前記第1シリンダ側凹部の前記ブースタピストンとの摺動方向の幅が、前記第1小径部と前記第2小径部との間の中間大径部の前記ブースタピストンとの摺動方向の幅よりも大きく設定され、前記弁機構は、前記ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、前記駆動液圧入力ポートが前記第1小径部よりも前記ブースタシリンダとの摺動方向前方の前方大径部により閉鎖されて、前記駆動圧供給経路が遮断されるとともに、前記ブースタ室接続ポートが前記第2小径部に開口し、前記第2シリンダ側凹部が前記第2小径部に対向して、前記駆動圧排出経路が連通され、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えている場合に、前記駆動圧入力ポートが前記第1小径部に開口し、前記第1シリンダ側凹部が前記中間大径部に対向し、前記ブースタ室接続ポートが前記第2小径部に開口して、前記第駆動圧供給経路が連通されるとともに、前記ブースタシリンダの前記ブースタ室接続ポートと前記第2シリンダ側凹部との間の部分が前記第2小径部よりも前記ブースタ室との摺動方向後方の後方大径部に対向して、前記駆動圧排出経路が遮断されるように構成されている。
【0011】
なお、摺動方向前方とはブレーキ操作部材の操作量の増大に応じてブースタピストンが移動する方向を意味し、摺動方向後方とはブレーキ操作部材の操作量の減少に応じてブースタピストンが移動する方向を意味する。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記駆動圧入力ポートの前記ブースタピストンによる閉鎖に伴って前記駆動圧供給経路を遮断し、前記駆動圧入力ポートの前記ブースタピストンによる開放に伴って前記駆動圧供給経路を連通するシーケンス弁を備えている。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記所定操作量は、当該所定操作量に対する制動力の要求値が、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値と等しくなるように設定されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、ブースタ部は、圧力源から駆動圧供給経路を介してブースタ室に供給された駆動圧によりマスタピストンを駆動するものであるところ、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、上記駆動圧供給経路が弁機構により遮断される。そのため、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、圧力源からブースタ室に駆動圧は供給されず、液圧ブレーキ装置による液圧制動力は発生しない。このように、圧力源からブースタ室への駆動圧の供給を、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまで制限することにより、ブースタ部における駆動圧の消費を抑制することができる。
【0015】
また、液圧ブレーキ装置による液圧制動力を、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまで発生させないようにしたため、この間、ブレーキ操作部材の操作量に対応する要求制動力を液圧制動力によらず、回生制動力に基づいて発生させることにより、回生効率を高めることができる。
【0016】
ところで、上記所定操作量は、回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されているものであるから、従来からブレーキ操作部材について設定されている不動作ストロークよりも大きな操作量であると言える。ここで、「不動作ストローク」とは、ブレーキ操作部材、例えばブレーキペダルが踏み込まれていない状態において圧力源からブースタ室に駆動圧が供給されてしまうことがないように設定されているシール寸法を意味する。
【0017】
請求項2に係る発明では、弁機構は、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの少なくともいずれか一方のポートがブースタピストンにより閉鎖されて、駆動圧供給経路が遮断され、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの両ポートがピストン側凹部に開口し、駆動圧供給経路が連通されるように構成されている。このように弁機構を構成することにより、ブースタ部を簡素化することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、弁機構は、ブースタ室から大気圧リザーバに駆動圧を排出するための駆動圧排出経路を遮断または連通するものとされ、ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、ブースタ室接続ポートがブースタピストンにより開放されて駆動圧排出経路を開放し、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量を超えている場合に、駆動圧排出経路を遮断するように構成されている。このように、駆動圧供給経路に加えて駆動圧排出経路を遮断または連通する弁機構を構成することにより、ブースタ部をより一層簡素化することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、ブースタ室接続ポートは駆動圧入力ポートよりも摺動方向後方にずれて形成され、ブースタシリンダは第1シリンダ側凹部と第2シリンダ側凹部とを有し、ブースタピストンは第1小径部と第2小径部とを有し、第1シリンダ側凹部の幅が第1小径部と前記第2小径部との間の中間大径部の幅よりも大きく設定され、ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合にブースタ部が作動せず、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量を超えている場合にブースタ部が作動するように構成されている。このように弁機構を具体的に構成することにより、ブースタ部をより一層簡素化することができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、駆動圧入力ポートのブースタピストンによる閉鎖に伴って駆動圧供給経路を遮断し、駆動圧入力ポートのブースタピストンによる開放に伴って駆動圧供給経路を連通するシーケンス弁を備えている。このようにシーケンス弁を備えて弁機構を構成することにより、ブースタ部を簡素化することができる。
【0021】
仮に、所定操作量に対応する要求制動力が回生ブレーキ装置による回生制動力よりも小さい場合、当該所定操作量よりも大きい操作量において、回生ブレーキ装置の回生制動力のみに基づいて要求制動力を発生させることが可能であるにも拘わらず、液圧ブレーキ装置による液圧制動力が発生してしまう。一方、所定操作量に対応する要求制動力が回生ブレーキ装置による回生制動力よりも大きい場合、当該所定操作量よりも小さい操作量において、回生ブレーキ装置の回生制動力のみに基づいて要求制動力を発生させることが不可能であるにも拘わらず、液圧ブレーキ装置による液圧制動力が発生しないという事態が考えられる。
【0022】
これに対し、請求項6に係る発明では、所定操作量を、当該所定操作量に対する要求制動力が、回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値と等しくなるように設定している。これにより、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまで、すなわちブレーキ操作部材の操作による要求制動力が回生制動力の最大値に達するまでは、当該要求制動力を回生制動力のみに基づいて発生させることが可能となる。また、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量を超えた後、すなわちブレーキ操作部材の操作による要求制動力が回生制動力の最大値を超えた後は、当該要求制動力を液圧制動力および回生制動力に基づいて発生させることが可能となる。このように、液圧ブレーキ装置と回生ブレーキ装置とを良好に協働させることにより、回生効率を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置を適用したハイブリッド車の構成を示す概要図である。
【図2】第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置が備える液圧ブレーキ装置の構成を示す概要図である。
【図3】油圧式ブレーキブースタおよびマスタシリンダの構造を説明する断面図である。
【図4】油圧式ブレーキブースタの弁機構を説明する拡大断面図であり、ブレーキペダルが踏み込み操作されていない中立位置が示されている。
【図5】油圧式ブレーキブースタの弁機構の加圧作動状態を示す断面図である。
【図6】油圧式ブレーキブースタの弁機構の減圧作動状態を示す断面図である。
【図7】第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置の作用を説明する作動特性図である。
【図8】第2の実施の形態における油圧式ブレーキブースタの弁機構を説明する部分断面図であり、ブレーキペダルが操作されていない中立位置が示されている。
【図9】第1の実施の参考形態における負圧式ブレーキブースタを説明する断面図である。
【図10】負圧式ブレーキブースタの弁機構付近の部分断面図であり、ブレーキペダルが踏み込み操作されていない中立位置が示されている。
【図11】負圧式ブレーキブースタの加圧作動状態を説明する弁機構付近の部分断面図である。
【図12】第2の実施の参考形態における不動作ストロークおよび無効ストロークを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1)第1の実施の形態
以下、本発明に係る車両用ブレーキ装置の第1の実施の形態について、図1〜図7を参考にして説明する。図1は、本発明に係る第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置を適用したハイブリッド車の構成を示す概要図である。図示されるように、ハイブリッド車は、ハイブリッドシステムによって駆動輪、例えば左右前輪FR、FLを駆動させる車両である。ハイブリッドシステムは、エンジン11およびモータ12の2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンである。本形態の場合、エンジン11およびモータ12の双方で車輪を直接駆動するパラレルハイブリッドシステムを採用している。なお、これ以外にシリアルハイブリッドシステムがあり、モータによって車輪が駆動され、エンジンはモータへの電力供給源として作用する。
【0025】
エンジン11はエンジンECU(電子制御ユニット)18によって制御されている。エンジンECU18は、後述するハイブリッドECU(電子制御ユニット)19からのエンジン出力要求値にしたがって電子制御スロットルに開度指令を出力し、エンジン11の回転数を調整する。エンジン11の駆動力は、動力分割機構13および動力伝達機構14を介して駆動輪(本形態では左右前輪FR、FL)に伝達されるようになっている。動力分割機構13は、エンジン11の駆動力を車両駆動力と発電機駆動力に適切に分割する。モータ12の駆動力は、動力伝達機構14を介して駆動輪に伝達されるようになっている。動力伝達機構14は、走行条件に応じてエンジン11およびモータ12の駆動力を適切に統合して駆動輪に伝達する。動力伝達機構14は、エンジン11とモータ12の伝達される駆動力比を0:100〜100:0の間で調整する。さらに、この動力伝達機構14は変速機能を有している。
【0026】
モータ12は、エンジン11の出力を補助して駆動力を高めあるいは単独で全駆動力を担い、一方、車両の制動時には回生による発電を行う。発電機15は、エンジン11の出力により発電を行い、エンジン始動時のスタータの機能も有する。モータ12および発電機15はそれぞれインバータ16に接続されている。インバータ16は、直流電源としてのバッテリ17に接続されている。インバータ16は、モータ12および発電機15から入力された交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ17に供給したり、逆に、バッテリ17からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ12および発電機15へ出力したりする。
【0027】
本形態において、モータ12、インバータ16およびバッテリ17から回生ブレーキ装置Aが構成されている。回生ブレーキ装置Aは、ペダルストロークセンサ21aにより検出されたブレーキペダル21の操作位置に基づいた回生制動力を各車輪FR、FL、RR、RLの何れか、本形態では左右前輪FR、FLに発生させる。
【0028】
ハイブリッドECU19は、インバータ16と相互に通信可能に接続されている。ハイブリッドECU19は、図示しないアクセル開度センサからアクセル開度の情報を入手し、図示しないシフトポジションセンサから動力伝達機構14の変速シフトポジションの情報を入手する。ハイブリッドECU19は、これらの情報を基にして、エンジン11に必要とされるエンジン出力要求値、モータ12に必要とされるモータ出力要求値、および発電機15に必要とされる発電機入力要求値を導出する。そして、ハイブリッドECU19は、エンジン出力要求値をエンジンECU18に送信してエンジン11を制御し、また、モータ出力要求値および発電機入力要求値にしたがい、インバータ16を介してモータ12および発電機15を制御する。また、ハイブリッドECU19は、バッテリ17の充電状態、充電電流などを監視している。
【0029】
図2は、車両用ブレーキ装置が備える液圧ブレーキ装置Bの構成を示す概要図である。液圧ブレーキ装置Bは、作動液として作動油を使用しており、図示されるようにブレーキペダル21、油圧式ブレーキブースタ91(以降は油圧式ブースタと略記)、マスタシリンダ23、ブレーキアクチュエータ25、ホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4などで構成されている。液圧ブレーキ装置Bは、ブレーキペダル21の踏み込み操作による踏力を油圧式ブースタ91で助勢してマスタシリンダ23を作動させ、マスタシリンダ23で発生した基礎液圧を、ブレーキアクチュエータ25を介して各車輪FR、FL、RR、RLのホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4に付与するものである。これにより、各車輪FR、FL、RR、RLには、基礎液圧に対応した基礎液圧制動力が発生する。さらに、液圧ブレーキ装置Bは、ブレーキアクチュエータ25内にマスタシリンダ23から独立して作動するポンプ37、47を備え、液圧制御弁31、41の制御によって形成される制御液圧を基礎液圧に付加し、各車輪FR、FL、RR、RLの基礎液圧制動力に制御液圧制動力を付加する。
【0030】
ブレーキペダル21はブレーキ操作部材に相当し、踏み込んだときの操作量を検出するペダルストロークセンサ21aが設けられている。ペダルストロークセンサ21aは、ブレーキECU60に接続されており、検出信号を送信するようになっている。ブレーキペダル21は、オペレーティングロッド26を介して油圧式ブースタ91に接続されている。
【0031】
図3は、油圧式ブースタ91およびマスタシリンダ23の構造を説明する断面図である。図3および後続の図4〜図6において、図中左方がブレーキペダル21の操作量の増大に応じてブースタピストン(入力部材94)が移動する摺動方向前方であり、図中右方がブレーキペダル21の操作量の減少に応じてブースタピストン(入力部材94)が移動する摺動方向後方となっている。油圧式ブースタ91は、外周シリンダ92、圧力源93、入力部材94、プッシュロッド(出力部材)95、ピストン部材96、弁機構97、などにより構成されている。油圧式ブースタ91の外周シリンダ92は、マスタシリンダ23と共通化されている。外周シリンダ92には、半径方向に貫通する径方向油孔921と、径方向油孔921に連通して内周面を周回する周方向油溝922と、周方向油溝922に開口して軸線方向に延びる大径油通路923とが形成されている。
【0032】
圧力源93は、外周シリンダ92の外側に設けられており、外周シリンダ92の径方向油孔921に連通して蓄えた駆動圧を供給する。圧力源93は、作動油を蓄積して駆動圧を蓄えるアキュームレータ931と、マスタシリンダ23付属の大気圧リザーバ24から作動油をアキュームレータ931に圧送する電動ポンプ932とで構成されている。また、圧力源93には、アキュームレータ931の蓄積圧を検出する圧力センサ933、および蓄積圧が過昇したときに作動油を大気圧リザーバ24に戻すレリーフ弁934が設けられている。
【0033】
ピストン部材96は、外周シリンダ92の内側に配置されている。ピストン部材96は、同軸内外に配置された外側ピストン部材961および内側ピストン部材965と、内側ピストン部材965の外周側のブレーキペダル21に近い側に配置された入力側ピストン部材966とからなっている。外側ピストン部材961、内側ピストン部材965、および入力側ピストン部材966の三部材は、結合されて軸方向に一体的に移動可能となっている。外側ピストン部材961は、略筒状で内周面に段差部961aを有している。また、外側ピストン部材961には、外周面を周回する外周油溝962と、外周油溝962に連通して半径方向に貫通する径方向油孔963と、径方向油孔963に連通して内周面を周回する内周油溝964とが形成されている。外側ピストン部材961の外周には、外周油溝962に開口する小径油通路967が軸線方向中央部分まで環状に形成されている。小径油通路967は、外周シリンダ92の内周の大径油通路923とオーバラップして連通している。
【0034】
一方、内側ピストン部材965は、本発明のブースタシリンダに相当する略筒状の部材である。内側ピストン部材965には、半径方向に貫通する駆動圧入力ポート971が穿設されている。駆動圧入力ポート971は、外側ピストン部材961の内周油溝964、径方向油孔963、外周油溝962、小径油通路967と、外周シリンダ92の大径油通路923、周方向油溝922および径方向油孔921とを経由して圧力源93に連通している。
【0035】
また、外周シリンダ92と入力側ピストン部材966との間には、油密を確保する封止部924が形成されている。外周シリンダ92および封止部924と、外側ピストン部材961および入力側ピストン部材966とにより、環状で軸方向長が変化するブースタ室973が区画されている。内側ピストン部材965の駆動圧入力ポート971よりも摺動方向後方にずれて、内周側からブースタ室973に連通するようにブースタ室接続ポート972が半径方向に貫通して穿設されている。駆動圧入力ポート971とブースタ室接続ポート972との間には、後述するように駆動圧供給経路975aが形成されている。ブースタ室973に作動油が流入して駆動圧が供給されると、入力側ピストン部材966の外径D1と外周シリンダ92の内径D2との差分に起因する油圧により、ピストン部材96は摺動方向前方に移動する。
【0036】
プッシュロッド95は、ピストン部材96とマスタシリンダ23との間に配置されている。プッシュロッド95は、外側ピストン部材961の段差部961aに押動される基部材951および弾性体952を介して押動される。プッシュロッド95の摺動方向前方(図中左方)の先端はマスタシリンダ23の第1ピストン23b(マスタピストン)に当接し、これを押動するようになっている。プッシュロッド95およびピストン部材96は連動し、本発明の出力部材を構成している。
【0037】
入力部材94は、本発明のブースタピストンに相当する部材である。入力部材94は、ブースタシリンダに相当する内側ピストン部材965の内側に配置され、摺動方向前後に移動可能となっている。入力部材94とブレーキペダル21側のオペレーティングロッド26との間には、入力側ピストン部材966の内周面を摺動する作動部材99が介挿されている。また、入力部材94の摺動方向前方には反力部材945が配置されている。反力部材945は、基部材951の軸心に設けられている穴部内に摺動可能に嵌合され、弾性体952と所定間隔離れて対向している。作動部材99、入力部材94、および反力部材945は、ブレーキペダル21およびオペレーティングロッド26と軸方向に連動する。入力部材94の軸心には、大気圧リザーバ24に作動油を排出する排出路941が形成されている。入力部材94と内側ピストン部材965とを有して、弁機構97が構成される。
【0038】
図4は、油圧式ブースタ91の弁機構97を説明する拡大断面図であり、ブレーキペダル21が踏み込み操作されていない中立位置が示されている。図示されるように、内側ピストン部材965には、圧力源93に連通する駆動圧入力ポート971が形成されている。また、駆動圧入力ポートよりも摺動方向後方にずれた位置に、ブースタ室973に連通するブースタ室接続ポート972が形成されている。さらに、駆動圧入力ポート971とブースタ室接続ポートと972の間で両ポートから離間して第1シリンダ側凹部974aが形成され、ブースタ室接続ポート972の摺動方向後方に離間して第2シリンダ側凹部974bが形成されている。第1シリンダ側凹部974aはブースタ室973に駆動圧を供給する駆動圧供給経路975aを区画し、第2シリンダ側凹部974bはブースタ室973から駆動圧を排出する駆動圧排出経路975bを区画している。
【0039】
一方、入力部材94の外周面は凹凸加工されており、3箇所の大径部と2箇所の小径部が交互に形成されている。つまり、入力部材94の摺動方向前方から後方に向けて順番に、前方大径部976a、第1小径部976b、中間大径部976c、第2小径部976d、後方大径部976eが形成されている。第1小径部976bおよび第2小径部976dは、駆動圧供給経路975aを区画するピストン側凹部に相当する。また、図示されるように、内側ピストン部材965の第1シリンダ側凹部974aの摺動方向の幅W1は、入力部材94の中間大径部976cの摺動方向の幅W2よりも大きく設定されている。
【0040】
図4の中立位置で、駆動圧入力ポート971は前方大径部976aにより閉鎖され、駆動圧供給経路975aは遮断されている。また、ブースタ室接続ポート972が第2小径部976dに開口し、第2シリンダ側凹部974bが第2小径部976dに対向して、駆動圧排出経路975bが連通されている。
【0041】
入力部材94の第2小径部976dから後方大径部976eにかけて、内径が漸増して経路断面積が漸減する絞り部976fが刻設されている。一方、内側ピストン部材965の内周面でブースタ室接続ポート972と第2シリンダ側凹部974bとの間の部分に、段差部974cが形成されている。絞り部976fと段差部974cとは、摺動方向に相対変位して、駆動圧排出経路975bを遮断および連通するようになっている。図4の状態で、駆動圧排出経路975bは連通しており、ブースタ室973の駆動圧はブースタ室接続ポート972、駆動圧排出経路975b、および排出路941を経由して大気圧リザーバまで排出されている。
【0042】
内側ピストン部材965の駆動圧入力ポート971から入力部材94の前方大径部976aと第1小径部976bとの境界線までの摺動方向の寸法Lはシール寸法Lとなっており、シール性能上必要な不作動ストロークL1に無効ストロークL2を加算した所定操作量Lに相当して従来よりも大きくなっている。所定操作量Lは、ブレーキペダル21が所定操作量L操作されたとき、これに対応した要求制動力が回生ブレーキ装置Aで発生可能な最大回生制動力に等しくなるように設定されている。なお、これに限定されず、要求制動力が最大回生制動力に等しくなる以前の小さなストローク量を所定操作量Lとしてもよい。
【0043】
次に、油圧式ブースタ91の弁機構97の作動について、図5および図6を参考にして説明する。図5は油圧式ブースタ91の弁機構97の加圧作動状態を示す断面図であり、図6は、弁機構97の減圧作動状態を示す断面図である。図4に示された中立位置からブレーキペダル21が踏み込み操作されると、図5に矢印Mで示されるように入力部材94が摺動方向前方に作動し、内側ピストン部材965に対して相対変位する。ブレーキペダル21に作用する操作力が大きく操作量が所定操作量Lを超える場合、入力部材94も所定操作量Lを超えて相対変位する。このとき、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに開口し、第1シリンダ側凹部974aが中間大径部976cに対向し、ブースタ室接続ポート972が第2小径部976dに開口して、駆動圧供給経路975aが連通される。また、ブースタ室接続ポート972と第2シリンダ側凹部974bとの間の段差部974cが第2小径部976d後方の後方大径部976dに対向して、駆動圧排出経路975bが遮断される。これにより、作動油が圧力源93から駆動圧入力ポート971、駆動圧供給経路975a、ブースタ室接続ポート972を経由してブースタ室973に流入し、ブースタ室973内に駆動圧が供給される。
【0044】
上述の作動により、ピストン部材96に駆動圧が作用し、基部材951、弾性部材952を介した作用でプッシュロッド95が第1ピストン23bを押動する。弾性部材952は、プッシュロッド953と基部材951との間で圧縮され、穴部内で反力部材945を押圧することにより、入力部材94に反力が付与される。基部材951、弾性部材952および反力部材945によって反力機構が構成されている。
【0045】
また、図5の状態でブレーキペダル21に作用する操作力が減少した場合は、図6に示されるように、内側ピストン部材965に対して入力部材94が相対的に摺動方向後方に変位する。すると、駆動圧入力ポート971は前方大径部976aにより閉鎖されて、駆動圧供給経路975aが遮断される。また、ブースタ室接続ポート972が第2小径部976dに開口し、第2シリンダ側凹部974bが第2小径部976dに対向して、駆動圧排出経路975bが連通される。これにより、ブースタ室973の駆動圧はブースタ室接続ポート972、駆動圧排出経路975b、および排出路941を経由して大気圧リザーバ24へと排出され、ブースタ室973内の圧力が低下する。
【0046】
マスタシリンダ23は、図3に示されるようにタンデム式であり、有底筒状に形成されたハウジング23aと、ハウジング23a内を液密かつ摺動可能に並べて収納された第1および第2ピストン23b、23cとにより構成されている。第1ピストン23bと第2ピストン23cとの間に形成される第1液圧室23d内には、所定長さ以内で伸縮可能に連結された2部材間に予圧縮されて保持された第1スプリング23eが配設され、第2ピストン23cとハウジング23aの閉塞端との間に形成される第2液圧室23f内には、所定長さ以内で伸縮可能に連結された2部材間に予圧縮されて保持された第2スプリング23gが配設されている。これにより、第2ピストン23cは第2スプリング23gによって開口端側(第1ピストン23b側)に付勢され、第1ピストン23bは第1スプリング23eによって開口端側に付勢されている。第1ピストン23bの開口端側の一端は、プッシュロッド953の先端に押動されて連動するようになっている。
【0047】
マスタシリンダ23のハウジング23aは、第1液圧室23dと大気圧リザーバ24とを連通するための第1ポート23hと、第2液圧室23fと大気圧リザーバ24とを連通するための第2ポート23iとを有している。さらに、ハウジング23aは、第1液圧室23dをブレーキアクチュエータ25の後輪系統を構成する油経路Lrに連通するための第3ポート23jと、第2液圧室23fをブレーキアクチュエータ25の前輪系統を構成する油経路Lfに連通するための第4ポート23kとを有している。
【0048】
次に、ブレーキアクチュエータ25について、図2を参考にして詳述する。ブレーキアクチュエータ25は、液圧制御弁31、41、ABS制御弁を構成する増圧制御弁32、33、42、43および減圧制御弁35、36、45、46、調圧リザーバ34、44、ポンプ37、47、モータMなどが一つのケースにパッケージされて構成されている。
【0049】
まず、ブレーキアクチュエータ25の前輪系統の構成について説明する。油経路Lfには、差圧制御弁で構成される液圧制御弁31が備えられている。液圧制御弁31は、ブレーキECU60からの制御により、連通状態および差圧状態に切り替わるものである。液圧制御弁31は通常連通状態とされており、差圧状態に切り替わることによりホイールシリンダWC1、WC2側の油経路Lf2をマスタシリンダ23側の油経路Lf1の基礎液圧よりも所定の差圧分高い圧力に保持することができる。この差圧が制御液圧であり、後述するポンプ37、47の吐出圧から得ることができる。
【0050】
油経路Lf2は2つに分岐しており、分岐した一方には、ABS制御の増圧モード時においてホイールシリンダWC1へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁32が備えられている。分岐した他方には、ABS制御の増圧モード時においてホイールシリンダWC2へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁33が備えられている。増圧制御弁32、33は、ブレーキECU60により連通状態および遮断状態を切り替え制御できる2位置弁として構成されている。そして、増圧制御弁32、33が連通状態に制御されているときには、マスタシリンダ23の基礎液圧または/およびポンプ37の駆動と液圧制御弁31の制御によって形成される制御液圧を各ホイールシリンダWC1、WC2に加えることができる。また、増圧制御弁32、33は減圧制御弁35、36およびポンプ37とともにABS制御を実行することができる。
【0051】
なお、ABS制御が実行されていないノーマルブレーキ状態では、増圧制御弁32、33は常時連通状態に制御されている。また、増圧制御弁32、33には、それぞれ安全弁32a、33aが並列に設けられており、ABS制御時においてブレーキペダル21を離したときに、ホイールシリンダWC1、WC2側からのブレーキ液を大気圧リザーバ24に戻すようになっている。
【0052】
また、増圧制御弁32、33と各ホイールシリンダWC1、WC2との間における油経路Lf2は、油経路Lf3を介して調圧リザーバ34に連通されている。油経路Lf3には、ブレーキECU60により連通状態および遮断状態を切り替え制御できる減圧制御弁35、36がそれぞれ配設されている。減圧制御弁35、36はノーマルブレーキ状態(ABS非作動時)では常時遮断状態とされている。また、減圧制御弁35、36は適宜連通状態とされ、油経路Lf3を経由して調圧リザーバ34へ作動油を逃がすことにより、ホイールシリンダWC1、WC2における液圧を制御し、車輪がロック傾向に至ることを防止するように構成されている。
【0053】
さらに、液圧制御弁31と増圧制御弁32、33との間における油経路Lf2と調圧リザーバ34とを結ぶ油経路Lf4には、ポンプ37が安全弁37aとともに配設されている。ポンプ37の吐出側に配設されているダンパ37bは、吐出された作動油の液圧の脈動を吸収する。ポンプ37の吸入側は、逆止弁37cおよび電磁開閉弁38を有する油経路Lf5を経由してマスタシリンダ23側の油経路Lf1に接続され、また、逆止弁37cおよび逆止弁37dを介して調圧リザーバ34に接続されている。ポンプ37は、ブレーキECU60からの指令でモータMの駆動電流が調整されることにより、吐出流量が調整される。
【0054】
ポンプ37は、ABS制御の減圧モード時に作動し、ホイールシリンダWC1、WC2内の作動油または調圧リザーバ34に貯められている作動油を吸い込み、連通状態の液圧制御弁31を介してマスタシリンダ23に戻す。また、ポンプ37は、ESC制御、トラクションコントロール、ブレーキアシストなどの車両の姿勢を安定に制御するための制御液圧を形成する際にも作動する。すなわち、ポンプ37は、差圧状態に切り替えられている液圧制御弁31に差圧を発生させるべく、マスタシリンダ23内の作動油を油経路Lf1、Lf5および開状態に切り替えられた電磁開閉弁38を経由して吸い込み、油経路Lf4、Lf2および連通状態の増圧制御弁32、33を介して各ホイールシリンダWC1、WC2に吐出して制御液圧を付与する。さらに、ポンプ37は、バッテリ17が満充電で十分な回生制動力が得られない場合などにも作動して差圧を発生させ、各ホイールシリンダWC1、WC2に制御液圧を付与する。
【0055】
また、油経路Lf1には、マスタシリンダ23で生成された基礎液圧を検出する圧力センサPが設けられており、この検出信号はブレーキECU60に送信されるようになっている。なお、圧力センサPは、後輪系統の油経路Lr1に設けるようにしてもよい。
【0056】
さらに、ブレーキアクチュエータ25の後輪系統も前述した前輪系統と同様な構成であり、後輪系統を構成する油経路Lrは、油経路Lfと同様に油経路Lr1〜Lr5から構成されている。弁類なども同様であり、油経路Lrに液圧制御弁41および調圧リザーバ44、油経路Lr2、Lr2に増圧制御弁42、43、油経路Lr3に減圧制御弁45、46、油経路Lr4にポンプ47、油経路Lr5に電磁開閉弁48がそれぞれ備えられている。
【0057】
これにより、マスタシリンダ23の基礎液圧およびポンプ37、47の駆動と液圧制御弁31、41の制御によって形成された制御液圧を各車輪FR、FL、RR、RLのホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4に付与できる。各ホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4は、液圧(基礎液圧、制御液圧)が供給されると、ブレーキ手段を作動させて各車輪FR、FL、RR、RLに液圧制動力(基礎液圧制動力、制御液圧制動力)を付与する。ブレーキ手段としては、ディスクブレーキ、ドラムブレーキ等があり、ブレーキパッド、ブレーキシュー等の摩擦部材が車輪に一体のディスクロータ、ブレーキドラム等の回転を規制するようになっている。
【0058】
次に、上述のように構成された第1の実施の形態における作用について、図7を参考にして説明する。図7は、第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置の作用を説明する作動特性図である。図中の横軸はブレーキペダル21の操作量、縦軸は制動力を示している。図中に破線で示される要求制動力FTは、ブレーキペダル21の操作位置により定まる制動力の要求値であり、予めブレーキECU60内にデータとして保持されている。図中の作動点Xiは、ブレーキペダル21が操作量Liだけ操作されたとき、要求制動力FTiが回生制動力FKiと液圧制動力FEiの和になっていることを示している。
【0059】
ブレーキペダル21が中立位置から踏み込み操作されると、ブレーキECU60は、ペダルストロークセンサ21aの検出信号から操作量を把握し、対応する要求制動力FTを求める。ブレーキペダル21が不動作ストロークL1までの範囲で操作されると、図示されるように要求制動力FTはゼロである。このとき、入力部材94も不動作ストロークL1までの範囲で変位するので、図4に示されたように内側ピストン部材965の駆動圧入力ポート971は前方大径部976aにより閉鎖され、駆動圧供給経路975aは遮断されたままとなる。したがって、ピストン部材96は変位せず、油圧式ブースタ91およびマスタシリンダ23は作動しない。
【0060】
ブレーキペダル21が不動作ストロークL1を超え無効ストロークL2の範囲で操作されると、要求制動力FTが発生する。このとき、入力部材94も無効ストロークL2の範囲でピストン部材96に対して相対変位するため、やはり、駆動圧入力ポート971は前方大径部976aにより閉鎖され、駆動圧供給経路975aは遮断されたままとなる。したがって、図中の作動点X1に例示されるように、要求制動力FT2に一致した回生制動力FK2を発生するように回生ブレーキ装置Aが制御される。
【0061】
ブレーキペダル21が不動作ストロークL1に無効ストロークL2を加算した所定操作量Lだけ操作されると、作動点X2に達して、要求制動力FTは最大回生制動力FKmaxに一致する。このとき、入力部材94もちょうど所定操作量Lだけ変位するため、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに臨む位置の直前まで達する。この時点でも、まだ油圧式ブースタ91およびマスタシリンダ23は作動しない。したがって、最大回生制動力FKmaxを発生するように回生ブレーキ装置Aが制御される。
【0062】
ブレーキペダル21が所定操作量Lを超えて操作されると、図中の作動点X3に例示されるように、要求制動力FT3は最大回生制動力FKmaxよりも大きくなる。このとき、入力部材94も所定操作量Lを超えて相対変位するため、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに開口し、駆動圧供給経路975aが連通されて、ブースタ室963に駆動圧が供給され、マスタシリンダ23が駆動される。これにより、液圧ブレーキ装置Bは、要求制動力FT3から最大回生制動力FKmaxを差し引いた液圧制動力FE3に対応する液圧を発生する。
【0063】
したがって、通常は、ブレーキペダル21が所定操作量Lまでの範囲で操作されている間は回生制動力FKのみが使用され、ブレーキペダル21が所定操作量Lを超えて操作されると最大回生制動力FKmaxと液圧制動力FEとが併用される。
【0064】
しかしながら、バッテリ17の満充電などの理由で、十分な回生制動力を得られない場合がある。このような場合には、ブレーキECU60は、モータ37、47を駆動して、制御液圧制動力FSを液圧制動力FEに付加する。例えば、図7の作動点X4に例示されるように、回生ブレーキ装置Aから最大回生制動力FKmaxよりも小さな回生制動力FK4しか得られない場合が生じ得る。このとき、液圧ブレーキ装置Bは、通常の液圧制動力FE4に制御液圧制動力FS4を付加する。なお、ブレーキアクチュエータ25内の圧力センサPで検出された基礎液圧が不足する場合にも、ブレーキECU60は、モータ37、47を駆動して制御液圧制動力FSを液圧制動力FEに付加する。
【0065】
本形態では、液圧ブレーキ装置Bに油圧式ブースタ91を備え、入力部材94とピストン部材96との間に所定操作量Lを超える相対変位が生じたときに作動するように構成している。さらに、不作動ストロークL1に無効ストロークL2を加算した所定操作量Lにおいて、要求制動力FTと最大回生制動力FKmaxとが等しくなるようにしている。これにより、ブレーキペダル21の操作量が所定操作量Lに達するまで、すなわちブレーキペダル21の操作による要求制動力FTが最大回生制動力FKmaxに達するまでは、当該要求制動力TTを回生制動力FKのみに基づいて発生させることが可能となる。また、ブレーキペダル21の操作量が所定操作量Lを超えた後、すなわちブレーキペダル21の操作による要求制動力FTが最大回生制動力FKmax超えた後は、当該要求制動力FTを液圧制動力FEおよび回生制動力FKに基づいて発生させることが可能となる。
【0066】
換言すると、所定操作量L以下で油圧式ブレーキブースタ91は作動せず、所定操作量Lを超えると作動油の駆動圧が圧力源93からブースタ室973に供給され、油圧式ブースタ91およびマスタシリンダ23が作動する。このため、最大回生制動力Fmaxで対応できる限界まで油圧式ブースタ91は作動せず、限界を超えると油圧式ブースタ91が作動して最大回生制動力FKmaxで不足する分を液圧制動力FE3で賄うことができる。したがって、油圧式ブースタ91におけるエネルギ損失を最小限に低減しつつ回生制動力FKを最大限活用でき、総合的に極めて高いエネルギ効率を達成できる。
【0067】
また、このように弁機構97を構成することにより、油圧式ブースタ91を簡素化することができる。
【0068】
2)第2の実施の形態
次に、油圧式ブレーキブースタ91の弁機構97Aの内部構成が異なる第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を主に説明する。第2の実施の形態におけるハイブリッド車の構成、および液圧ブレーキ装置Bの構成は、図1および図2を用いて説明した第1の実施の形態と同様である。図8は、第2の実施の形態における油圧式ブースタ91の弁機構97Aを説明する部分断面図であり、ブレーキペダル21が操作されていない中立位置が示されている。図示されるように、内側ピストン部材965Aと入力部材94Aの配置は、第1の実施の形態と同様である。また、内側ピストン部材965Aの第1シリンダ側凹部974a、第2シリンダ側凹部974b、および段差部974cと、入力部材94の前方大径部976a、第1小径部976b、中間大径部976c、第2小径部976d、後方大径部976e、および絞り部976fも、第1の実施の形態と概ね同様である。
【0069】
第2の実施の形態では、ブースタ室973に連通するブースタ室接続ポートとして、シーケンス弁98が設けられている。シーケンス弁98は、一方圧力弁981と一方弁982とが並列に配置されて構成されている。一方圧力弁981は、油路、弁球および付勢ばねで構成されている。一方圧力弁981は、駆動圧供給経路975a内の作動油の圧力が所定圧力値を超えると、作動油のブースタ室973への流入を許容し、逆方向の流出は許容しない。一方弁982は、油路および弁球で構成され、駆動圧供給経路975aからブースタ室973への流入を規制し逆方向の流出は規制しない。
【0070】
本形態において、内側ピストン部材965Aの駆動圧入力ポート971から入力部材94の前方大径部976aと第1小径部976bとの境界線までの摺動方向のシール寸法LAは、シール性能上必要な寸法すなわち不作動ストロークL1相当と小さくなっている。
【0071】
上述の弁機構97Aでは、中立位置からブレーキペダル21が踏み込み操作されると、入力部材94が摺動方向前方に相対変位する。すると、入力部材94がシール寸法LAだけ相対変位した時点で、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに臨む位置の直前まで達する。さらに、入力部材94がシール寸法LAを超えて相対変位すると、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに開口し、駆動圧供給経路975aが連通される。
ここで、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに開口した開口面積は可変絞り弁として作用する。したがって、駆動圧供給経路975a内の圧力は、相対変位量が増加して開口面積が増加するのに応じて上昇する。そして、入力部材94が第1の実施形態と同じ所定操作量Lだけ変位した時点で、駆動圧供給経路975a内の圧力が一方圧力弁981の所定圧力値まで上昇して、ブースタ室973への駆動圧の供給が始まる。
【0072】
上述のように、弁機構97Aにシーケンス弁98を設けるようにしても、無効ストロークL2を等価的に実現できる。マスタシリンダ23以降の作用および効果は、第1の実施の形態と同様であり、説明は省略する。
【0073】
3)第1の実施の参考形態
次に、油圧式ブレーキブースタ91に代えて負圧式ブレーキブースタ22を用いる第1の実施の参考形態について説明する。第1の実施の参考形態におけるハイブリッド車の構成、およびマスタシリンダ23Bおよびブレーキアクチュエータ25の構成は、図1および図2を用いて説明した第1の実施の形態と同様である。図9は、第1の実施の参考形態における負圧式ブレーキブースタ22(以降負圧式ブースタと略記)を説明する断面図である。
【0074】
図9において、負圧式ブースタ22は、前方シェル81aおよび後方シェル81bで構成されるブースタシェル81を備える。ブースタシェル81の内部には、ゴム製のダイヤフラム82aと金属製のプレート82bとから成り、前後方向に移動する区画部材82が設けられている。区画部材82により、ブースタシェル81の内部は、内容積が変化する図中左方の定圧室R1と図中右方のブースタ室R2とに分割されている。
【0075】
前方シェル81aに設けられた負圧取入れ口22aは、負圧源であるエンジン11の吸気マニホールドに連通されている。したがって、エンジン11作動中、定圧室R1は常に負圧に保たれる。一方、ブースタ室R2は、弁機構8を介して定圧室R1と連通、遮断されるとともに、弁機構8を介して大気とも連通、遮断される。負圧式ブースタ22は、定圧室R1の負圧に対して相対的に圧力の高い大気を圧力源としている。負圧式ブースタ22は、オペレーティングロッド26を介してブレーキペダル21に接続されている。また、負圧式ブースタ22は、プッシュロッド27を介してマスタシリンダ23Bに接続されている。
【0076】
図10は、負圧式ブースタ22の弁機構8付近の部分断面図であり、ブレーキペダル21が踏み込み操作されていない中立位置が示されている。負圧式ブースタ22において、ピストン部材83は、連通路832が形成されたバルブピストン831と、バルブピストン831にその内周側が固定されて連動する区画部材82とからなっている。また、プッシュロッド27は、バルブピストン831により、弾性体27aを介してマスタシリンダ23Bの方向に押動されるように配置されている。ピストン部材83およびプッシュロッド27は、出力部材を構成している。一方、入力部材84は、オペレーティングロッド26により、マスタシリンダ23Bに向けて押動されるように配置されている。入力部材84のマスタシリンダ23B側の前端に当接して反力部材845が配置されている。反力部材845は、弾性体27から反力を受けて入力部材84に付与するようになっている。
【0077】
弁機構8は、負圧弁座851と、大気弁座852と、負圧弁861および大気弁862が設けられた弁体86とを有している。負圧弁座851は、バルブピストン831の連通路832出口付近の端縁に形成されている。大気弁座852は、入力部材84の図中右側の外周端縁に形成されている。弁体86は、オペレーティングロッド26とバルブピストン831との間に配置された環状の部材であり、スプリング863によりマスタシリンダ23Bの方向に付勢されて軸方向に移動できるようになっている。図10の中立位置で、弁体86に設けられた負圧弁861は負圧弁座851から所定操作量LL開離しており、一方、弁体86に設けられた大気弁862は大気弁座852と当接している。所定操作量LLは、作動機構上で必要な不作動ストロークに、負圧式ブースタ22の作動を遅らせるために設けた無効ストロークを加算した量である。
【0078】
バルブピストン831に形成された連通路832内の空間Z1は、常に定圧室R1に連通している。バルブピストン831と入力部材84との間の空間Z2は、常にブースタ室R2に連通している。また、弁体86の内周側の空間Z3は、常に大気に連通している。図10の中立位置で、空間Z1と空間Z2とが連通し、空間Z2と空間Z3とは遮断されているため、ブースタ室R2は定圧室R1に連通して負圧に保たれている。空間Z2と空間Z3とを結ぶ経路が駆動圧供給経路に相当し、空間Z1と空間Z2とを結ぶ経路が駆動圧排出経路に相当する。
【0079】
上述のように構成された第1の実施の参考形態で、ブレーキペダル21がバルブピストン831に対して所定操作量LLを超えて踏み込み操作されると、図11に示される加圧作動状態になる。図11は、負圧式ブースタ22の加圧作動状態を説明する弁機構8付近の部分断面図である。ブレーキペダル21が所定操作量LLまでの範囲で操作されると、入力部材84および弁体86は連動し、大気弁862と大気弁座852との当接が維持される。ブレーキペダル21がちょうど所定操作量LLまで操作されると、入力部材84および弁体86はバルブピストン831に対して所定操作量LL相対変位する。このとき、負圧弁861が負圧弁座851に当接し、空間Z1と空間Z2との間すなわち定圧室R1とブースタ室R2とが遮断される。さらに、ブレーキペダル21が所定操作量LLを超えて操作されると、入力部材84は連動しバルブピストン831に対して相対変位する。このとき、負圧弁861はバルブピストン831の負圧弁座851に当接するため、弁体86はバルブピストン831に対して相対変位しなくなる。したがって、大気弁座852が大気弁862から開離して間隙Gが生じ、空間Z2と空間Z3との間が連通し、ブースタ室R2が大気に連通してブースタ室R2内の圧力が増大する。これにより、負圧式ブースタ22およびマスタシリンダ23Bが作動する。
【0080】
また、ブレーキペダル21に作用する操作力が減少した場合は、バルブピストン831がオペレーティングロッド26側(図中左方)に移動し、入力部材84および弁体86がバルブピストン831に対して図中右方に相対変位される。したがって、大気弁862と大気弁座852とが当接して間隔Gがなくなり、負圧弁861が負圧弁座851から開離する。これにより、空間Z1と空間Z2が連通して空間Z3とは遮断され、ブースタ室R2が定圧室R1に連通してブースタ室R2内の圧力が減少する。
【0081】
この後のマスタシリンダ23以降の作動は、第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。本形態においても、負圧式ブースタ22は所定操作量LLまで作動せずエネルギ損失を最小限に低減しつつ回生制動力を最大限活用でき、総合的に極めて高いエネルギ効率を達成できる。
【0082】
4)第2の実施の参考形態
図12は、第2の実施の参考形態における不動作ストロークL3および無効ストロークL4を付与する構成を説明する図である。図示されるように、第2の実施の参考形態では、弁機構97Bの構成自体は第1の実施形態と同様であり、弁機構97Bの駆動圧入力ポート971を閉鎖するシール寸法L3がシール性能上必要な寸法すなわち不作動ストロークL3とされている点が異なる。そして、ブレーキペダル側のオペレーティングロッド26Bと連動する作動部材99Bは、図示される中立位置において、無効ストロークL4だけ入力部材94Bと離間して対向している。この無効ストロークL4は、所定操作量に応じて設定されている。つまり、不作動ストロークL3と無効ストロークL4との和が所定操作量となり、対応する要求制動力が最大回生制動力に等しくなるように設定されている。また、作動部材99Bは、入力部材94Bとの間に設けられたスプリング991により摺動方向後方に付勢されて位置決めされている。
【0083】
本参考形態において、ブレーキペダル21が中立位置から無効ストロークL4までの範囲で踏み込み操作されると、作動部材99Bは連動するが、入力部材94Bは変位しない。また、無効ストロークL4と不動作ストロークL3とを加算した所定操作量の範囲では、入力部材94Bは変位するが、駆動圧入力ポート971は開放されない。ブレーキペダル21が所定操作量(=L3+L4)を超えて操作されると、駆動圧入力ポート971が開口し作動油の駆動圧がブースタ室に供給されて油圧式ブースタおよびマスタシリンダが作動する。つまり、第1の実施の形態と同様の作用が生じ、油圧式ブースタにおけるエネルギ損失を最小限に低減しつつ回生制動力を最大限活用でき、総合的に極めて高いエネルギ効率を達成できる。
【0084】
なお、上述の実施の形態および参考形態に限定されず、本発明は様々な変形、応用が可能である。例えば、図2に示されるようにブレーキ配管系は前後分割方式にて構成されているが、X配管方式にて構成されるようにしてもよい。また、ハイブリッド車でなく、駆動源としてモータのみを搭載した電気自動車にも適用可能である。
【0085】
上記実施形態から把握できる技術的思想を以下に述べる。まず、4つの実施形態を包含する技術的思想は、次のとおりとなる。
(1)マスタシリンダと、前記マスタシリンダ内を摺動するマスタピストンと、ブレーキ操作部材の操作力以上でかつ同操作力に応じた駆動力により前記マスタピストンを駆動するブースタ部とを有し、前記マスタシリンダと前記マスタピストンとにより区画され同マスタピストンの摺動に伴って収縮または膨張するマスタ液圧室に液圧を発生させ、当該マスタ液圧室の前記液圧に応じた液圧制動力を車両の車輪に発生させる液圧ブレーキ装置と、
回生制動力を前記車両の車輪に発生させる回生ブレーキ装置と、を備え、
前記液圧制動力と前記回生制動力とに基づく制動力を、前記車両の各車輪に付与する車両用ブレーキ装置において、
前記ブースタ部は、
前記マスタピストンを連動させる出力部材と、
前記出力部材により区画されたブースタ室と、
前記ブースタ室に供給されて前記出力部材を駆動する駆動圧を蓄える圧力源と、
前記ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、前記圧力源と前記ブースタ室との間の駆動圧供給経路を遮断する一方、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧供給経路を連通する弁機構と、を有して構成され、
前記所定操作量は、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【0086】
また、第1の実施の参考形態に相当する技術的思想は、次のとおりとなる。
(2)上記(1)の車両用ブレーキ装置において、
前記ブースタ部は、
エンジンからブースタシェルに導入される負圧に対して相対的に圧力の高い大気を前記圧力源とし、
前記ブレーキ操作部材に連動する入力部材と、
ブースタシェルをブースタ室と前記負圧が導入される定圧室とに区画する区画部材、および前記区画部材と連動するバルブピストンを含んで構成される出力部材と、
前記入力部材と前記バルブピストンとの相対変位により作動され前記ブースタ室に前記大気を供給するための駆動圧供給経路を遮断または連通する弁機構とを有して構成され、
前記弁機構は、前記バルブピストンに形成された負圧弁座と、前記入力部材に形成された大気弁座と、前記ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまで前記負圧弁座から開離して前記ブースタ室と前記定圧室とを連通する負圧弁および前記大気弁座に当接して前記駆動圧供給経路を遮断する大気弁が設けられた弁体とを有し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記負圧弁が前記負圧弁座に当接し、前記大気弁座が前記大気弁から開離して前記駆動圧供給経路を連通するように構成されている車両用ブレーキ装置。
【0087】
さらに、第2の実施の参考形態に相当する技術的思想は、次のとおりとなる。
(3)上記(1)の車両用ブレーキ装置において、
前記ブレーキ操作部材および前記弁機構のいずれか一方と連動し他方と所定ストロークだけ離間して対向する作動部材を有し、前記所定ストロークは前記所定操作量に応じて設定されている車両用ブレーキ装置。
【符号の説明】
【0088】
11…エンジン、12…モータ、13…動力分割機構、14…動力伝達機構、15…発電機、16…インバータ、17…バッテリ、18…エンジンECU、19…ハイブリッドECU、21…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、21a…ペダルストロークセンサ、22…負圧式ブレーキブースタ、23…マスタシリンダ、23a…ハウジング、23b、23c…第1および第2ピストン(マスタピストン)、23d…第1液圧室、23e…第1スプリング、23f…第2液圧室、23g…第2スプリング、23h…第1ポート、23i…第2ポート、23j…第3ポート、23k…第4ポート、24…大気圧リザーバ、25…ブレーキアクチュエータ、26、26B…オペレーティングロッド、27…プッシュロッド、31、41…液圧制御弁、32、33、42、43…増圧制御弁、35、36、45、46…減圧制御弁、34、44…調圧リザーバ、37、47…ポンプ、60…ブレーキECU、8…弁機構、81…ブースタシェル、82…区画部材、83…ピストン部材、831…バルブピストン、84…入力部材、851…負圧弁座、852…大気弁座、86…弁体、861…負圧弁、862…大気弁、91…油圧式ブレーキブースタ、92…外周シリンダ、924…封止部、93…圧力源、94、94A、94B…入力部材(ブースタピストン)、941…排出路、945…押動部材、95…プッシュロッド、96…ピストン部材、961…外側ピストン部材、965、965A…内側ピストン部材(ブースタシリンダ)、966…入力側ピストン部材、97、97A、97B…弁機構、971…駆動圧入力ポート、972…ブースタ室接続ポート、973…ブースタ室、974a…第1シリンダ側凹部、974b…第2シリンダ側凹部、974c…段差部、975a…駆動圧供給経路、975b…駆動圧排出経路、976a…前方大径部、976b…第1小径部、976c…中間大径部、976d…第2小径部、976e…後方大径部、976f…絞り部、98…シーケンス弁、981…一方圧力弁、982…一方弁、99、99B…作動部材、991…スプリング。
A…回生ブレーキ装置、B…液圧ブレーキ装置、FR、FL、RR、RL…車輪、Lf、Lr…油経路、M…モータ、P…圧力センサ、WC1、WC2、WC3、WC4…ホイールシリンダ、L1、L3…不作動ストローク、L2、L4…無効ストローク、L、LL…所定操作量、R1…定圧室、R2…ブースタ室。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキブースタを備えた液圧ブレーキ装置による液圧制動力と回生ブレーキ装置による回生制動力とにより、要求される車両制動力を発生させる車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液圧ブレーキ装置による液圧制動力と回生ブレーキ装置による回生制動力とにより、要求される車両制動力を発生させる車両用ブレーキ装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された車両制動装置及び車両制動方法は、あるブレーキペダル入力値に対応する目標車両制動力を達成する際、目標車両制動力からブレーキペダル入力値に対応する液圧ブレーキ装置の最小制動力を差し引いた差分を割振制動力とし、この割振制動力から実際の回生制動力を差し引いた差分を液圧ブレーキ装置の配分制動力とし、最小制動力と配分制動力との和を目標液圧制動力として液圧ブレーキ装置の倍力比を制御するようになっている。
【0003】
一方、液圧ブレーキ装置のブレーキペダルとマスタピストンとの間にブレーキブースタを備えることが一般的になっている。ブレーキブースタはブレーキペダルに入力された踏力を助勢して効率的に液圧を発生させるものであり、油圧式および負圧式のブースタが知られている。油圧式ブレーキブースタは、例えば、電動ポンプによって加圧された作動油をブレーキペダルから給排操作してマスタピストンを移動させる構造を有している。負圧式ブレーキブースタは、例えば、エンジンの吸気マニホールドの負圧を倍力源とし、大気圧との圧力差を利用してマスタピストンを移動させる構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−63540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両用ブレーキ装置では、ブレーキペダルが弱く踏み込まれ、目標車両制動力が回生ブレーキ装置で発生し得る回生制動力の最大値よりも小さいときにも、液圧ブレーキ装置の液圧制動力が必ず働くようになっている。このため、液圧制動力の分だけ回生制動力が減少して回生効率が低下していた。
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、ブレーキブースタにおけるエネルギ損失を低減しつつ回生制動力を最大限活用して総合的に高いエネルギ効率を達成した車両用ブレーキ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1に係る車両用ブレーキ装置の発明は、マスタシリンダと、前記マスタシリンダ内を摺動するマスタピストンと、ブレーキ操作部材の操作力以上でかつ同操作力に応じた駆動力により前記マスタピストンを駆動するブースタ部とを有し、前記マスタシリンダと前記マスタピストンとにより区画され同マスタピストンの摺動に伴って収縮または膨張するマスタ液圧室に液圧を発生させ、当該マスタ液圧室の液圧に応じた液圧制動力を車両の車輪に発生させる液圧ブレーキ装置と、回生制動力を前記車両の車輪に発生させる回生ブレーキ装置と、を備え、前記液圧制動力と前記回生制動力とに基づく制動力を、前記車両の各車輪に付与する車両用ブレーキ装置において、前記ブースタ部は、前記マスタピストンを連動させる出力部材と、前記出力部材により区画されたブースタ室と、前記ブースタ室に供給されて前記出力部材を駆動する駆動圧を蓄える圧力源と、前記圧力源から前記ブースタ室に前記駆動圧を供給するための駆動圧供給経路を遮断または連通する弁機構と、を有して構成され、前記弁機構は、前記圧力源に接続される駆動圧入力ポートと、前記ブースタ室に接続されるブースタ室接続ポートとが形成されているブースタシリンダと、前記ブレーキ操作部材に連動して前記ブースタシリンダ内を摺動するブースタピストンと、を有し、前記ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの少なくともいずれか一方のポートが前記ブースタピストンにより閉鎖されて、前記駆動圧供給経路を遮断し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの両ポートが前記ブースタピストンにより開放されて、前記駆動圧供給経路を連通するように構成され、前記所定操作量は、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートは、前記ブースタピストンとの摺動方向に互いにずれて前記ブースタシリンダに形成されており、前記ブースタピストンは、前記ブースタシリンダとの摺動面に前記駆動圧供給経路を区画するピストン側凹部を有し、前記弁機構は、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートが前記ピストン側凹部に開口して、前記駆動圧供給経路を連通するように構成されている。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記弁機構は、前記駆動圧供給経路に加え、前記ブースタ室から大気圧リザーバに前記駆動圧を排出するための駆動圧排出経路を遮断または連通するものであり、前記ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、前記ブースタ室接続ポートが前記ブースタピストンにより開放されて前記駆動圧排出経路を連通し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えている場合に、前記駆動圧排出経路を遮断するように構成されている。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3において、前記ブースタ室接続ポートは、前記駆動圧入力ポートよりも前記ブースタピストンとの摺動方向後方にずれて形成され、前記ブースタシリンダは、前記ブースタピストンとの摺動面の前記駆動圧入力ポートと前記ブースタ室接続ポートとの間で当該両ポートから前記ブースタピストンの摺動方向に離間して形成され、前記駆動圧供給経路を区画する第1シリンダ側凹部と、前記ブースタ室接続ポートから当該摺動方向後方に離間して形成され、前記駆動圧排出経路を区画する第2シリンダ側凹部と、を有し、前記ブースタピストンは、第1小径部と、前記第1小径部から前記ブースタシリンダとの摺動方向後方に離間して形成された第2小径部と、を有し、前記第1シリンダ側凹部の前記ブースタピストンとの摺動方向の幅が、前記第1小径部と前記第2小径部との間の中間大径部の前記ブースタピストンとの摺動方向の幅よりも大きく設定され、前記弁機構は、前記ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、前記駆動液圧入力ポートが前記第1小径部よりも前記ブースタシリンダとの摺動方向前方の前方大径部により閉鎖されて、前記駆動圧供給経路が遮断されるとともに、前記ブースタ室接続ポートが前記第2小径部に開口し、前記第2シリンダ側凹部が前記第2小径部に対向して、前記駆動圧排出経路が連通され、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えている場合に、前記駆動圧入力ポートが前記第1小径部に開口し、前記第1シリンダ側凹部が前記中間大径部に対向し、前記ブースタ室接続ポートが前記第2小径部に開口して、前記第駆動圧供給経路が連通されるとともに、前記ブースタシリンダの前記ブースタ室接続ポートと前記第2シリンダ側凹部との間の部分が前記第2小径部よりも前記ブースタ室との摺動方向後方の後方大径部に対向して、前記駆動圧排出経路が遮断されるように構成されている。
【0011】
なお、摺動方向前方とはブレーキ操作部材の操作量の増大に応じてブースタピストンが移動する方向を意味し、摺動方向後方とはブレーキ操作部材の操作量の減少に応じてブースタピストンが移動する方向を意味する。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記駆動圧入力ポートの前記ブースタピストンによる閉鎖に伴って前記駆動圧供給経路を遮断し、前記駆動圧入力ポートの前記ブースタピストンによる開放に伴って前記駆動圧供給経路を連通するシーケンス弁を備えている。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記所定操作量は、当該所定操作量に対する制動力の要求値が、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値と等しくなるように設定されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、ブースタ部は、圧力源から駆動圧供給経路を介してブースタ室に供給された駆動圧によりマスタピストンを駆動するものであるところ、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、上記駆動圧供給経路が弁機構により遮断される。そのため、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、圧力源からブースタ室に駆動圧は供給されず、液圧ブレーキ装置による液圧制動力は発生しない。このように、圧力源からブースタ室への駆動圧の供給を、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまで制限することにより、ブースタ部における駆動圧の消費を抑制することができる。
【0015】
また、液圧ブレーキ装置による液圧制動力を、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまで発生させないようにしたため、この間、ブレーキ操作部材の操作量に対応する要求制動力を液圧制動力によらず、回生制動力に基づいて発生させることにより、回生効率を高めることができる。
【0016】
ところで、上記所定操作量は、回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されているものであるから、従来からブレーキ操作部材について設定されている不動作ストロークよりも大きな操作量であると言える。ここで、「不動作ストローク」とは、ブレーキ操作部材、例えばブレーキペダルが踏み込まれていない状態において圧力源からブースタ室に駆動圧が供給されてしまうことがないように設定されているシール寸法を意味する。
【0017】
請求項2に係る発明では、弁機構は、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの少なくともいずれか一方のポートがブースタピストンにより閉鎖されて、駆動圧供給経路が遮断され、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの両ポートがピストン側凹部に開口し、駆動圧供給経路が連通されるように構成されている。このように弁機構を構成することにより、ブースタ部を簡素化することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、弁機構は、ブースタ室から大気圧リザーバに駆動圧を排出するための駆動圧排出経路を遮断または連通するものとされ、ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、ブースタ室接続ポートがブースタピストンにより開放されて駆動圧排出経路を開放し、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量を超えている場合に、駆動圧排出経路を遮断するように構成されている。このように、駆動圧供給経路に加えて駆動圧排出経路を遮断または連通する弁機構を構成することにより、ブースタ部をより一層簡素化することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、ブースタ室接続ポートは駆動圧入力ポートよりも摺動方向後方にずれて形成され、ブースタシリンダは第1シリンダ側凹部と第2シリンダ側凹部とを有し、ブースタピストンは第1小径部と第2小径部とを有し、第1シリンダ側凹部の幅が第1小径部と前記第2小径部との間の中間大径部の幅よりも大きく設定され、ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合にブースタ部が作動せず、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量を超えている場合にブースタ部が作動するように構成されている。このように弁機構を具体的に構成することにより、ブースタ部をより一層簡素化することができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、駆動圧入力ポートのブースタピストンによる閉鎖に伴って駆動圧供給経路を遮断し、駆動圧入力ポートのブースタピストンによる開放に伴って駆動圧供給経路を連通するシーケンス弁を備えている。このようにシーケンス弁を備えて弁機構を構成することにより、ブースタ部を簡素化することができる。
【0021】
仮に、所定操作量に対応する要求制動力が回生ブレーキ装置による回生制動力よりも小さい場合、当該所定操作量よりも大きい操作量において、回生ブレーキ装置の回生制動力のみに基づいて要求制動力を発生させることが可能であるにも拘わらず、液圧ブレーキ装置による液圧制動力が発生してしまう。一方、所定操作量に対応する要求制動力が回生ブレーキ装置による回生制動力よりも大きい場合、当該所定操作量よりも小さい操作量において、回生ブレーキ装置の回生制動力のみに基づいて要求制動力を発生させることが不可能であるにも拘わらず、液圧ブレーキ装置による液圧制動力が発生しないという事態が考えられる。
【0022】
これに対し、請求項6に係る発明では、所定操作量を、当該所定操作量に対する要求制動力が、回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値と等しくなるように設定している。これにより、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまで、すなわちブレーキ操作部材の操作による要求制動力が回生制動力の最大値に達するまでは、当該要求制動力を回生制動力のみに基づいて発生させることが可能となる。また、ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量を超えた後、すなわちブレーキ操作部材の操作による要求制動力が回生制動力の最大値を超えた後は、当該要求制動力を液圧制動力および回生制動力に基づいて発生させることが可能となる。このように、液圧ブレーキ装置と回生ブレーキ装置とを良好に協働させることにより、回生効率を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置を適用したハイブリッド車の構成を示す概要図である。
【図2】第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置が備える液圧ブレーキ装置の構成を示す概要図である。
【図3】油圧式ブレーキブースタおよびマスタシリンダの構造を説明する断面図である。
【図4】油圧式ブレーキブースタの弁機構を説明する拡大断面図であり、ブレーキペダルが踏み込み操作されていない中立位置が示されている。
【図5】油圧式ブレーキブースタの弁機構の加圧作動状態を示す断面図である。
【図6】油圧式ブレーキブースタの弁機構の減圧作動状態を示す断面図である。
【図7】第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置の作用を説明する作動特性図である。
【図8】第2の実施の形態における油圧式ブレーキブースタの弁機構を説明する部分断面図であり、ブレーキペダルが操作されていない中立位置が示されている。
【図9】第1の実施の参考形態における負圧式ブレーキブースタを説明する断面図である。
【図10】負圧式ブレーキブースタの弁機構付近の部分断面図であり、ブレーキペダルが踏み込み操作されていない中立位置が示されている。
【図11】負圧式ブレーキブースタの加圧作動状態を説明する弁機構付近の部分断面図である。
【図12】第2の実施の参考形態における不動作ストロークおよび無効ストロークを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1)第1の実施の形態
以下、本発明に係る車両用ブレーキ装置の第1の実施の形態について、図1〜図7を参考にして説明する。図1は、本発明に係る第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置を適用したハイブリッド車の構成を示す概要図である。図示されるように、ハイブリッド車は、ハイブリッドシステムによって駆動輪、例えば左右前輪FR、FLを駆動させる車両である。ハイブリッドシステムは、エンジン11およびモータ12の2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンである。本形態の場合、エンジン11およびモータ12の双方で車輪を直接駆動するパラレルハイブリッドシステムを採用している。なお、これ以外にシリアルハイブリッドシステムがあり、モータによって車輪が駆動され、エンジンはモータへの電力供給源として作用する。
【0025】
エンジン11はエンジンECU(電子制御ユニット)18によって制御されている。エンジンECU18は、後述するハイブリッドECU(電子制御ユニット)19からのエンジン出力要求値にしたがって電子制御スロットルに開度指令を出力し、エンジン11の回転数を調整する。エンジン11の駆動力は、動力分割機構13および動力伝達機構14を介して駆動輪(本形態では左右前輪FR、FL)に伝達されるようになっている。動力分割機構13は、エンジン11の駆動力を車両駆動力と発電機駆動力に適切に分割する。モータ12の駆動力は、動力伝達機構14を介して駆動輪に伝達されるようになっている。動力伝達機構14は、走行条件に応じてエンジン11およびモータ12の駆動力を適切に統合して駆動輪に伝達する。動力伝達機構14は、エンジン11とモータ12の伝達される駆動力比を0:100〜100:0の間で調整する。さらに、この動力伝達機構14は変速機能を有している。
【0026】
モータ12は、エンジン11の出力を補助して駆動力を高めあるいは単独で全駆動力を担い、一方、車両の制動時には回生による発電を行う。発電機15は、エンジン11の出力により発電を行い、エンジン始動時のスタータの機能も有する。モータ12および発電機15はそれぞれインバータ16に接続されている。インバータ16は、直流電源としてのバッテリ17に接続されている。インバータ16は、モータ12および発電機15から入力された交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ17に供給したり、逆に、バッテリ17からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ12および発電機15へ出力したりする。
【0027】
本形態において、モータ12、インバータ16およびバッテリ17から回生ブレーキ装置Aが構成されている。回生ブレーキ装置Aは、ペダルストロークセンサ21aにより検出されたブレーキペダル21の操作位置に基づいた回生制動力を各車輪FR、FL、RR、RLの何れか、本形態では左右前輪FR、FLに発生させる。
【0028】
ハイブリッドECU19は、インバータ16と相互に通信可能に接続されている。ハイブリッドECU19は、図示しないアクセル開度センサからアクセル開度の情報を入手し、図示しないシフトポジションセンサから動力伝達機構14の変速シフトポジションの情報を入手する。ハイブリッドECU19は、これらの情報を基にして、エンジン11に必要とされるエンジン出力要求値、モータ12に必要とされるモータ出力要求値、および発電機15に必要とされる発電機入力要求値を導出する。そして、ハイブリッドECU19は、エンジン出力要求値をエンジンECU18に送信してエンジン11を制御し、また、モータ出力要求値および発電機入力要求値にしたがい、インバータ16を介してモータ12および発電機15を制御する。また、ハイブリッドECU19は、バッテリ17の充電状態、充電電流などを監視している。
【0029】
図2は、車両用ブレーキ装置が備える液圧ブレーキ装置Bの構成を示す概要図である。液圧ブレーキ装置Bは、作動液として作動油を使用しており、図示されるようにブレーキペダル21、油圧式ブレーキブースタ91(以降は油圧式ブースタと略記)、マスタシリンダ23、ブレーキアクチュエータ25、ホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4などで構成されている。液圧ブレーキ装置Bは、ブレーキペダル21の踏み込み操作による踏力を油圧式ブースタ91で助勢してマスタシリンダ23を作動させ、マスタシリンダ23で発生した基礎液圧を、ブレーキアクチュエータ25を介して各車輪FR、FL、RR、RLのホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4に付与するものである。これにより、各車輪FR、FL、RR、RLには、基礎液圧に対応した基礎液圧制動力が発生する。さらに、液圧ブレーキ装置Bは、ブレーキアクチュエータ25内にマスタシリンダ23から独立して作動するポンプ37、47を備え、液圧制御弁31、41の制御によって形成される制御液圧を基礎液圧に付加し、各車輪FR、FL、RR、RLの基礎液圧制動力に制御液圧制動力を付加する。
【0030】
ブレーキペダル21はブレーキ操作部材に相当し、踏み込んだときの操作量を検出するペダルストロークセンサ21aが設けられている。ペダルストロークセンサ21aは、ブレーキECU60に接続されており、検出信号を送信するようになっている。ブレーキペダル21は、オペレーティングロッド26を介して油圧式ブースタ91に接続されている。
【0031】
図3は、油圧式ブースタ91およびマスタシリンダ23の構造を説明する断面図である。図3および後続の図4〜図6において、図中左方がブレーキペダル21の操作量の増大に応じてブースタピストン(入力部材94)が移動する摺動方向前方であり、図中右方がブレーキペダル21の操作量の減少に応じてブースタピストン(入力部材94)が移動する摺動方向後方となっている。油圧式ブースタ91は、外周シリンダ92、圧力源93、入力部材94、プッシュロッド(出力部材)95、ピストン部材96、弁機構97、などにより構成されている。油圧式ブースタ91の外周シリンダ92は、マスタシリンダ23と共通化されている。外周シリンダ92には、半径方向に貫通する径方向油孔921と、径方向油孔921に連通して内周面を周回する周方向油溝922と、周方向油溝922に開口して軸線方向に延びる大径油通路923とが形成されている。
【0032】
圧力源93は、外周シリンダ92の外側に設けられており、外周シリンダ92の径方向油孔921に連通して蓄えた駆動圧を供給する。圧力源93は、作動油を蓄積して駆動圧を蓄えるアキュームレータ931と、マスタシリンダ23付属の大気圧リザーバ24から作動油をアキュームレータ931に圧送する電動ポンプ932とで構成されている。また、圧力源93には、アキュームレータ931の蓄積圧を検出する圧力センサ933、および蓄積圧が過昇したときに作動油を大気圧リザーバ24に戻すレリーフ弁934が設けられている。
【0033】
ピストン部材96は、外周シリンダ92の内側に配置されている。ピストン部材96は、同軸内外に配置された外側ピストン部材961および内側ピストン部材965と、内側ピストン部材965の外周側のブレーキペダル21に近い側に配置された入力側ピストン部材966とからなっている。外側ピストン部材961、内側ピストン部材965、および入力側ピストン部材966の三部材は、結合されて軸方向に一体的に移動可能となっている。外側ピストン部材961は、略筒状で内周面に段差部961aを有している。また、外側ピストン部材961には、外周面を周回する外周油溝962と、外周油溝962に連通して半径方向に貫通する径方向油孔963と、径方向油孔963に連通して内周面を周回する内周油溝964とが形成されている。外側ピストン部材961の外周には、外周油溝962に開口する小径油通路967が軸線方向中央部分まで環状に形成されている。小径油通路967は、外周シリンダ92の内周の大径油通路923とオーバラップして連通している。
【0034】
一方、内側ピストン部材965は、本発明のブースタシリンダに相当する略筒状の部材である。内側ピストン部材965には、半径方向に貫通する駆動圧入力ポート971が穿設されている。駆動圧入力ポート971は、外側ピストン部材961の内周油溝964、径方向油孔963、外周油溝962、小径油通路967と、外周シリンダ92の大径油通路923、周方向油溝922および径方向油孔921とを経由して圧力源93に連通している。
【0035】
また、外周シリンダ92と入力側ピストン部材966との間には、油密を確保する封止部924が形成されている。外周シリンダ92および封止部924と、外側ピストン部材961および入力側ピストン部材966とにより、環状で軸方向長が変化するブースタ室973が区画されている。内側ピストン部材965の駆動圧入力ポート971よりも摺動方向後方にずれて、内周側からブースタ室973に連通するようにブースタ室接続ポート972が半径方向に貫通して穿設されている。駆動圧入力ポート971とブースタ室接続ポート972との間には、後述するように駆動圧供給経路975aが形成されている。ブースタ室973に作動油が流入して駆動圧が供給されると、入力側ピストン部材966の外径D1と外周シリンダ92の内径D2との差分に起因する油圧により、ピストン部材96は摺動方向前方に移動する。
【0036】
プッシュロッド95は、ピストン部材96とマスタシリンダ23との間に配置されている。プッシュロッド95は、外側ピストン部材961の段差部961aに押動される基部材951および弾性体952を介して押動される。プッシュロッド95の摺動方向前方(図中左方)の先端はマスタシリンダ23の第1ピストン23b(マスタピストン)に当接し、これを押動するようになっている。プッシュロッド95およびピストン部材96は連動し、本発明の出力部材を構成している。
【0037】
入力部材94は、本発明のブースタピストンに相当する部材である。入力部材94は、ブースタシリンダに相当する内側ピストン部材965の内側に配置され、摺動方向前後に移動可能となっている。入力部材94とブレーキペダル21側のオペレーティングロッド26との間には、入力側ピストン部材966の内周面を摺動する作動部材99が介挿されている。また、入力部材94の摺動方向前方には反力部材945が配置されている。反力部材945は、基部材951の軸心に設けられている穴部内に摺動可能に嵌合され、弾性体952と所定間隔離れて対向している。作動部材99、入力部材94、および反力部材945は、ブレーキペダル21およびオペレーティングロッド26と軸方向に連動する。入力部材94の軸心には、大気圧リザーバ24に作動油を排出する排出路941が形成されている。入力部材94と内側ピストン部材965とを有して、弁機構97が構成される。
【0038】
図4は、油圧式ブースタ91の弁機構97を説明する拡大断面図であり、ブレーキペダル21が踏み込み操作されていない中立位置が示されている。図示されるように、内側ピストン部材965には、圧力源93に連通する駆動圧入力ポート971が形成されている。また、駆動圧入力ポートよりも摺動方向後方にずれた位置に、ブースタ室973に連通するブースタ室接続ポート972が形成されている。さらに、駆動圧入力ポート971とブースタ室接続ポートと972の間で両ポートから離間して第1シリンダ側凹部974aが形成され、ブースタ室接続ポート972の摺動方向後方に離間して第2シリンダ側凹部974bが形成されている。第1シリンダ側凹部974aはブースタ室973に駆動圧を供給する駆動圧供給経路975aを区画し、第2シリンダ側凹部974bはブースタ室973から駆動圧を排出する駆動圧排出経路975bを区画している。
【0039】
一方、入力部材94の外周面は凹凸加工されており、3箇所の大径部と2箇所の小径部が交互に形成されている。つまり、入力部材94の摺動方向前方から後方に向けて順番に、前方大径部976a、第1小径部976b、中間大径部976c、第2小径部976d、後方大径部976eが形成されている。第1小径部976bおよび第2小径部976dは、駆動圧供給経路975aを区画するピストン側凹部に相当する。また、図示されるように、内側ピストン部材965の第1シリンダ側凹部974aの摺動方向の幅W1は、入力部材94の中間大径部976cの摺動方向の幅W2よりも大きく設定されている。
【0040】
図4の中立位置で、駆動圧入力ポート971は前方大径部976aにより閉鎖され、駆動圧供給経路975aは遮断されている。また、ブースタ室接続ポート972が第2小径部976dに開口し、第2シリンダ側凹部974bが第2小径部976dに対向して、駆動圧排出経路975bが連通されている。
【0041】
入力部材94の第2小径部976dから後方大径部976eにかけて、内径が漸増して経路断面積が漸減する絞り部976fが刻設されている。一方、内側ピストン部材965の内周面でブースタ室接続ポート972と第2シリンダ側凹部974bとの間の部分に、段差部974cが形成されている。絞り部976fと段差部974cとは、摺動方向に相対変位して、駆動圧排出経路975bを遮断および連通するようになっている。図4の状態で、駆動圧排出経路975bは連通しており、ブースタ室973の駆動圧はブースタ室接続ポート972、駆動圧排出経路975b、および排出路941を経由して大気圧リザーバまで排出されている。
【0042】
内側ピストン部材965の駆動圧入力ポート971から入力部材94の前方大径部976aと第1小径部976bとの境界線までの摺動方向の寸法Lはシール寸法Lとなっており、シール性能上必要な不作動ストロークL1に無効ストロークL2を加算した所定操作量Lに相当して従来よりも大きくなっている。所定操作量Lは、ブレーキペダル21が所定操作量L操作されたとき、これに対応した要求制動力が回生ブレーキ装置Aで発生可能な最大回生制動力に等しくなるように設定されている。なお、これに限定されず、要求制動力が最大回生制動力に等しくなる以前の小さなストローク量を所定操作量Lとしてもよい。
【0043】
次に、油圧式ブースタ91の弁機構97の作動について、図5および図6を参考にして説明する。図5は油圧式ブースタ91の弁機構97の加圧作動状態を示す断面図であり、図6は、弁機構97の減圧作動状態を示す断面図である。図4に示された中立位置からブレーキペダル21が踏み込み操作されると、図5に矢印Mで示されるように入力部材94が摺動方向前方に作動し、内側ピストン部材965に対して相対変位する。ブレーキペダル21に作用する操作力が大きく操作量が所定操作量Lを超える場合、入力部材94も所定操作量Lを超えて相対変位する。このとき、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに開口し、第1シリンダ側凹部974aが中間大径部976cに対向し、ブースタ室接続ポート972が第2小径部976dに開口して、駆動圧供給経路975aが連通される。また、ブースタ室接続ポート972と第2シリンダ側凹部974bとの間の段差部974cが第2小径部976d後方の後方大径部976dに対向して、駆動圧排出経路975bが遮断される。これにより、作動油が圧力源93から駆動圧入力ポート971、駆動圧供給経路975a、ブースタ室接続ポート972を経由してブースタ室973に流入し、ブースタ室973内に駆動圧が供給される。
【0044】
上述の作動により、ピストン部材96に駆動圧が作用し、基部材951、弾性部材952を介した作用でプッシュロッド95が第1ピストン23bを押動する。弾性部材952は、プッシュロッド953と基部材951との間で圧縮され、穴部内で反力部材945を押圧することにより、入力部材94に反力が付与される。基部材951、弾性部材952および反力部材945によって反力機構が構成されている。
【0045】
また、図5の状態でブレーキペダル21に作用する操作力が減少した場合は、図6に示されるように、内側ピストン部材965に対して入力部材94が相対的に摺動方向後方に変位する。すると、駆動圧入力ポート971は前方大径部976aにより閉鎖されて、駆動圧供給経路975aが遮断される。また、ブースタ室接続ポート972が第2小径部976dに開口し、第2シリンダ側凹部974bが第2小径部976dに対向して、駆動圧排出経路975bが連通される。これにより、ブースタ室973の駆動圧はブースタ室接続ポート972、駆動圧排出経路975b、および排出路941を経由して大気圧リザーバ24へと排出され、ブースタ室973内の圧力が低下する。
【0046】
マスタシリンダ23は、図3に示されるようにタンデム式であり、有底筒状に形成されたハウジング23aと、ハウジング23a内を液密かつ摺動可能に並べて収納された第1および第2ピストン23b、23cとにより構成されている。第1ピストン23bと第2ピストン23cとの間に形成される第1液圧室23d内には、所定長さ以内で伸縮可能に連結された2部材間に予圧縮されて保持された第1スプリング23eが配設され、第2ピストン23cとハウジング23aの閉塞端との間に形成される第2液圧室23f内には、所定長さ以内で伸縮可能に連結された2部材間に予圧縮されて保持された第2スプリング23gが配設されている。これにより、第2ピストン23cは第2スプリング23gによって開口端側(第1ピストン23b側)に付勢され、第1ピストン23bは第1スプリング23eによって開口端側に付勢されている。第1ピストン23bの開口端側の一端は、プッシュロッド953の先端に押動されて連動するようになっている。
【0047】
マスタシリンダ23のハウジング23aは、第1液圧室23dと大気圧リザーバ24とを連通するための第1ポート23hと、第2液圧室23fと大気圧リザーバ24とを連通するための第2ポート23iとを有している。さらに、ハウジング23aは、第1液圧室23dをブレーキアクチュエータ25の後輪系統を構成する油経路Lrに連通するための第3ポート23jと、第2液圧室23fをブレーキアクチュエータ25の前輪系統を構成する油経路Lfに連通するための第4ポート23kとを有している。
【0048】
次に、ブレーキアクチュエータ25について、図2を参考にして詳述する。ブレーキアクチュエータ25は、液圧制御弁31、41、ABS制御弁を構成する増圧制御弁32、33、42、43および減圧制御弁35、36、45、46、調圧リザーバ34、44、ポンプ37、47、モータMなどが一つのケースにパッケージされて構成されている。
【0049】
まず、ブレーキアクチュエータ25の前輪系統の構成について説明する。油経路Lfには、差圧制御弁で構成される液圧制御弁31が備えられている。液圧制御弁31は、ブレーキECU60からの制御により、連通状態および差圧状態に切り替わるものである。液圧制御弁31は通常連通状態とされており、差圧状態に切り替わることによりホイールシリンダWC1、WC2側の油経路Lf2をマスタシリンダ23側の油経路Lf1の基礎液圧よりも所定の差圧分高い圧力に保持することができる。この差圧が制御液圧であり、後述するポンプ37、47の吐出圧から得ることができる。
【0050】
油経路Lf2は2つに分岐しており、分岐した一方には、ABS制御の増圧モード時においてホイールシリンダWC1へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁32が備えられている。分岐した他方には、ABS制御の増圧モード時においてホイールシリンダWC2へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁33が備えられている。増圧制御弁32、33は、ブレーキECU60により連通状態および遮断状態を切り替え制御できる2位置弁として構成されている。そして、増圧制御弁32、33が連通状態に制御されているときには、マスタシリンダ23の基礎液圧または/およびポンプ37の駆動と液圧制御弁31の制御によって形成される制御液圧を各ホイールシリンダWC1、WC2に加えることができる。また、増圧制御弁32、33は減圧制御弁35、36およびポンプ37とともにABS制御を実行することができる。
【0051】
なお、ABS制御が実行されていないノーマルブレーキ状態では、増圧制御弁32、33は常時連通状態に制御されている。また、増圧制御弁32、33には、それぞれ安全弁32a、33aが並列に設けられており、ABS制御時においてブレーキペダル21を離したときに、ホイールシリンダWC1、WC2側からのブレーキ液を大気圧リザーバ24に戻すようになっている。
【0052】
また、増圧制御弁32、33と各ホイールシリンダWC1、WC2との間における油経路Lf2は、油経路Lf3を介して調圧リザーバ34に連通されている。油経路Lf3には、ブレーキECU60により連通状態および遮断状態を切り替え制御できる減圧制御弁35、36がそれぞれ配設されている。減圧制御弁35、36はノーマルブレーキ状態(ABS非作動時)では常時遮断状態とされている。また、減圧制御弁35、36は適宜連通状態とされ、油経路Lf3を経由して調圧リザーバ34へ作動油を逃がすことにより、ホイールシリンダWC1、WC2における液圧を制御し、車輪がロック傾向に至ることを防止するように構成されている。
【0053】
さらに、液圧制御弁31と増圧制御弁32、33との間における油経路Lf2と調圧リザーバ34とを結ぶ油経路Lf4には、ポンプ37が安全弁37aとともに配設されている。ポンプ37の吐出側に配設されているダンパ37bは、吐出された作動油の液圧の脈動を吸収する。ポンプ37の吸入側は、逆止弁37cおよび電磁開閉弁38を有する油経路Lf5を経由してマスタシリンダ23側の油経路Lf1に接続され、また、逆止弁37cおよび逆止弁37dを介して調圧リザーバ34に接続されている。ポンプ37は、ブレーキECU60からの指令でモータMの駆動電流が調整されることにより、吐出流量が調整される。
【0054】
ポンプ37は、ABS制御の減圧モード時に作動し、ホイールシリンダWC1、WC2内の作動油または調圧リザーバ34に貯められている作動油を吸い込み、連通状態の液圧制御弁31を介してマスタシリンダ23に戻す。また、ポンプ37は、ESC制御、トラクションコントロール、ブレーキアシストなどの車両の姿勢を安定に制御するための制御液圧を形成する際にも作動する。すなわち、ポンプ37は、差圧状態に切り替えられている液圧制御弁31に差圧を発生させるべく、マスタシリンダ23内の作動油を油経路Lf1、Lf5および開状態に切り替えられた電磁開閉弁38を経由して吸い込み、油経路Lf4、Lf2および連通状態の増圧制御弁32、33を介して各ホイールシリンダWC1、WC2に吐出して制御液圧を付与する。さらに、ポンプ37は、バッテリ17が満充電で十分な回生制動力が得られない場合などにも作動して差圧を発生させ、各ホイールシリンダWC1、WC2に制御液圧を付与する。
【0055】
また、油経路Lf1には、マスタシリンダ23で生成された基礎液圧を検出する圧力センサPが設けられており、この検出信号はブレーキECU60に送信されるようになっている。なお、圧力センサPは、後輪系統の油経路Lr1に設けるようにしてもよい。
【0056】
さらに、ブレーキアクチュエータ25の後輪系統も前述した前輪系統と同様な構成であり、後輪系統を構成する油経路Lrは、油経路Lfと同様に油経路Lr1〜Lr5から構成されている。弁類なども同様であり、油経路Lrに液圧制御弁41および調圧リザーバ44、油経路Lr2、Lr2に増圧制御弁42、43、油経路Lr3に減圧制御弁45、46、油経路Lr4にポンプ47、油経路Lr5に電磁開閉弁48がそれぞれ備えられている。
【0057】
これにより、マスタシリンダ23の基礎液圧およびポンプ37、47の駆動と液圧制御弁31、41の制御によって形成された制御液圧を各車輪FR、FL、RR、RLのホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4に付与できる。各ホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4は、液圧(基礎液圧、制御液圧)が供給されると、ブレーキ手段を作動させて各車輪FR、FL、RR、RLに液圧制動力(基礎液圧制動力、制御液圧制動力)を付与する。ブレーキ手段としては、ディスクブレーキ、ドラムブレーキ等があり、ブレーキパッド、ブレーキシュー等の摩擦部材が車輪に一体のディスクロータ、ブレーキドラム等の回転を規制するようになっている。
【0058】
次に、上述のように構成された第1の実施の形態における作用について、図7を参考にして説明する。図7は、第1の実施の形態の車両用ブレーキ装置の作用を説明する作動特性図である。図中の横軸はブレーキペダル21の操作量、縦軸は制動力を示している。図中に破線で示される要求制動力FTは、ブレーキペダル21の操作位置により定まる制動力の要求値であり、予めブレーキECU60内にデータとして保持されている。図中の作動点Xiは、ブレーキペダル21が操作量Liだけ操作されたとき、要求制動力FTiが回生制動力FKiと液圧制動力FEiの和になっていることを示している。
【0059】
ブレーキペダル21が中立位置から踏み込み操作されると、ブレーキECU60は、ペダルストロークセンサ21aの検出信号から操作量を把握し、対応する要求制動力FTを求める。ブレーキペダル21が不動作ストロークL1までの範囲で操作されると、図示されるように要求制動力FTはゼロである。このとき、入力部材94も不動作ストロークL1までの範囲で変位するので、図4に示されたように内側ピストン部材965の駆動圧入力ポート971は前方大径部976aにより閉鎖され、駆動圧供給経路975aは遮断されたままとなる。したがって、ピストン部材96は変位せず、油圧式ブースタ91およびマスタシリンダ23は作動しない。
【0060】
ブレーキペダル21が不動作ストロークL1を超え無効ストロークL2の範囲で操作されると、要求制動力FTが発生する。このとき、入力部材94も無効ストロークL2の範囲でピストン部材96に対して相対変位するため、やはり、駆動圧入力ポート971は前方大径部976aにより閉鎖され、駆動圧供給経路975aは遮断されたままとなる。したがって、図中の作動点X1に例示されるように、要求制動力FT2に一致した回生制動力FK2を発生するように回生ブレーキ装置Aが制御される。
【0061】
ブレーキペダル21が不動作ストロークL1に無効ストロークL2を加算した所定操作量Lだけ操作されると、作動点X2に達して、要求制動力FTは最大回生制動力FKmaxに一致する。このとき、入力部材94もちょうど所定操作量Lだけ変位するため、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに臨む位置の直前まで達する。この時点でも、まだ油圧式ブースタ91およびマスタシリンダ23は作動しない。したがって、最大回生制動力FKmaxを発生するように回生ブレーキ装置Aが制御される。
【0062】
ブレーキペダル21が所定操作量Lを超えて操作されると、図中の作動点X3に例示されるように、要求制動力FT3は最大回生制動力FKmaxよりも大きくなる。このとき、入力部材94も所定操作量Lを超えて相対変位するため、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに開口し、駆動圧供給経路975aが連通されて、ブースタ室963に駆動圧が供給され、マスタシリンダ23が駆動される。これにより、液圧ブレーキ装置Bは、要求制動力FT3から最大回生制動力FKmaxを差し引いた液圧制動力FE3に対応する液圧を発生する。
【0063】
したがって、通常は、ブレーキペダル21が所定操作量Lまでの範囲で操作されている間は回生制動力FKのみが使用され、ブレーキペダル21が所定操作量Lを超えて操作されると最大回生制動力FKmaxと液圧制動力FEとが併用される。
【0064】
しかしながら、バッテリ17の満充電などの理由で、十分な回生制動力を得られない場合がある。このような場合には、ブレーキECU60は、モータ37、47を駆動して、制御液圧制動力FSを液圧制動力FEに付加する。例えば、図7の作動点X4に例示されるように、回生ブレーキ装置Aから最大回生制動力FKmaxよりも小さな回生制動力FK4しか得られない場合が生じ得る。このとき、液圧ブレーキ装置Bは、通常の液圧制動力FE4に制御液圧制動力FS4を付加する。なお、ブレーキアクチュエータ25内の圧力センサPで検出された基礎液圧が不足する場合にも、ブレーキECU60は、モータ37、47を駆動して制御液圧制動力FSを液圧制動力FEに付加する。
【0065】
本形態では、液圧ブレーキ装置Bに油圧式ブースタ91を備え、入力部材94とピストン部材96との間に所定操作量Lを超える相対変位が生じたときに作動するように構成している。さらに、不作動ストロークL1に無効ストロークL2を加算した所定操作量Lにおいて、要求制動力FTと最大回生制動力FKmaxとが等しくなるようにしている。これにより、ブレーキペダル21の操作量が所定操作量Lに達するまで、すなわちブレーキペダル21の操作による要求制動力FTが最大回生制動力FKmaxに達するまでは、当該要求制動力TTを回生制動力FKのみに基づいて発生させることが可能となる。また、ブレーキペダル21の操作量が所定操作量Lを超えた後、すなわちブレーキペダル21の操作による要求制動力FTが最大回生制動力FKmax超えた後は、当該要求制動力FTを液圧制動力FEおよび回生制動力FKに基づいて発生させることが可能となる。
【0066】
換言すると、所定操作量L以下で油圧式ブレーキブースタ91は作動せず、所定操作量Lを超えると作動油の駆動圧が圧力源93からブースタ室973に供給され、油圧式ブースタ91およびマスタシリンダ23が作動する。このため、最大回生制動力Fmaxで対応できる限界まで油圧式ブースタ91は作動せず、限界を超えると油圧式ブースタ91が作動して最大回生制動力FKmaxで不足する分を液圧制動力FE3で賄うことができる。したがって、油圧式ブースタ91におけるエネルギ損失を最小限に低減しつつ回生制動力FKを最大限活用でき、総合的に極めて高いエネルギ効率を達成できる。
【0067】
また、このように弁機構97を構成することにより、油圧式ブースタ91を簡素化することができる。
【0068】
2)第2の実施の形態
次に、油圧式ブレーキブースタ91の弁機構97Aの内部構成が異なる第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を主に説明する。第2の実施の形態におけるハイブリッド車の構成、および液圧ブレーキ装置Bの構成は、図1および図2を用いて説明した第1の実施の形態と同様である。図8は、第2の実施の形態における油圧式ブースタ91の弁機構97Aを説明する部分断面図であり、ブレーキペダル21が操作されていない中立位置が示されている。図示されるように、内側ピストン部材965Aと入力部材94Aの配置は、第1の実施の形態と同様である。また、内側ピストン部材965Aの第1シリンダ側凹部974a、第2シリンダ側凹部974b、および段差部974cと、入力部材94の前方大径部976a、第1小径部976b、中間大径部976c、第2小径部976d、後方大径部976e、および絞り部976fも、第1の実施の形態と概ね同様である。
【0069】
第2の実施の形態では、ブースタ室973に連通するブースタ室接続ポートとして、シーケンス弁98が設けられている。シーケンス弁98は、一方圧力弁981と一方弁982とが並列に配置されて構成されている。一方圧力弁981は、油路、弁球および付勢ばねで構成されている。一方圧力弁981は、駆動圧供給経路975a内の作動油の圧力が所定圧力値を超えると、作動油のブースタ室973への流入を許容し、逆方向の流出は許容しない。一方弁982は、油路および弁球で構成され、駆動圧供給経路975aからブースタ室973への流入を規制し逆方向の流出は規制しない。
【0070】
本形態において、内側ピストン部材965Aの駆動圧入力ポート971から入力部材94の前方大径部976aと第1小径部976bとの境界線までの摺動方向のシール寸法LAは、シール性能上必要な寸法すなわち不作動ストロークL1相当と小さくなっている。
【0071】
上述の弁機構97Aでは、中立位置からブレーキペダル21が踏み込み操作されると、入力部材94が摺動方向前方に相対変位する。すると、入力部材94がシール寸法LAだけ相対変位した時点で、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに臨む位置の直前まで達する。さらに、入力部材94がシール寸法LAを超えて相対変位すると、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに開口し、駆動圧供給経路975aが連通される。
ここで、駆動圧入力ポート971が第1小径部976bに開口した開口面積は可変絞り弁として作用する。したがって、駆動圧供給経路975a内の圧力は、相対変位量が増加して開口面積が増加するのに応じて上昇する。そして、入力部材94が第1の実施形態と同じ所定操作量Lだけ変位した時点で、駆動圧供給経路975a内の圧力が一方圧力弁981の所定圧力値まで上昇して、ブースタ室973への駆動圧の供給が始まる。
【0072】
上述のように、弁機構97Aにシーケンス弁98を設けるようにしても、無効ストロークL2を等価的に実現できる。マスタシリンダ23以降の作用および効果は、第1の実施の形態と同様であり、説明は省略する。
【0073】
3)第1の実施の参考形態
次に、油圧式ブレーキブースタ91に代えて負圧式ブレーキブースタ22を用いる第1の実施の参考形態について説明する。第1の実施の参考形態におけるハイブリッド車の構成、およびマスタシリンダ23Bおよびブレーキアクチュエータ25の構成は、図1および図2を用いて説明した第1の実施の形態と同様である。図9は、第1の実施の参考形態における負圧式ブレーキブースタ22(以降負圧式ブースタと略記)を説明する断面図である。
【0074】
図9において、負圧式ブースタ22は、前方シェル81aおよび後方シェル81bで構成されるブースタシェル81を備える。ブースタシェル81の内部には、ゴム製のダイヤフラム82aと金属製のプレート82bとから成り、前後方向に移動する区画部材82が設けられている。区画部材82により、ブースタシェル81の内部は、内容積が変化する図中左方の定圧室R1と図中右方のブースタ室R2とに分割されている。
【0075】
前方シェル81aに設けられた負圧取入れ口22aは、負圧源であるエンジン11の吸気マニホールドに連通されている。したがって、エンジン11作動中、定圧室R1は常に負圧に保たれる。一方、ブースタ室R2は、弁機構8を介して定圧室R1と連通、遮断されるとともに、弁機構8を介して大気とも連通、遮断される。負圧式ブースタ22は、定圧室R1の負圧に対して相対的に圧力の高い大気を圧力源としている。負圧式ブースタ22は、オペレーティングロッド26を介してブレーキペダル21に接続されている。また、負圧式ブースタ22は、プッシュロッド27を介してマスタシリンダ23Bに接続されている。
【0076】
図10は、負圧式ブースタ22の弁機構8付近の部分断面図であり、ブレーキペダル21が踏み込み操作されていない中立位置が示されている。負圧式ブースタ22において、ピストン部材83は、連通路832が形成されたバルブピストン831と、バルブピストン831にその内周側が固定されて連動する区画部材82とからなっている。また、プッシュロッド27は、バルブピストン831により、弾性体27aを介してマスタシリンダ23Bの方向に押動されるように配置されている。ピストン部材83およびプッシュロッド27は、出力部材を構成している。一方、入力部材84は、オペレーティングロッド26により、マスタシリンダ23Bに向けて押動されるように配置されている。入力部材84のマスタシリンダ23B側の前端に当接して反力部材845が配置されている。反力部材845は、弾性体27から反力を受けて入力部材84に付与するようになっている。
【0077】
弁機構8は、負圧弁座851と、大気弁座852と、負圧弁861および大気弁862が設けられた弁体86とを有している。負圧弁座851は、バルブピストン831の連通路832出口付近の端縁に形成されている。大気弁座852は、入力部材84の図中右側の外周端縁に形成されている。弁体86は、オペレーティングロッド26とバルブピストン831との間に配置された環状の部材であり、スプリング863によりマスタシリンダ23Bの方向に付勢されて軸方向に移動できるようになっている。図10の中立位置で、弁体86に設けられた負圧弁861は負圧弁座851から所定操作量LL開離しており、一方、弁体86に設けられた大気弁862は大気弁座852と当接している。所定操作量LLは、作動機構上で必要な不作動ストロークに、負圧式ブースタ22の作動を遅らせるために設けた無効ストロークを加算した量である。
【0078】
バルブピストン831に形成された連通路832内の空間Z1は、常に定圧室R1に連通している。バルブピストン831と入力部材84との間の空間Z2は、常にブースタ室R2に連通している。また、弁体86の内周側の空間Z3は、常に大気に連通している。図10の中立位置で、空間Z1と空間Z2とが連通し、空間Z2と空間Z3とは遮断されているため、ブースタ室R2は定圧室R1に連通して負圧に保たれている。空間Z2と空間Z3とを結ぶ経路が駆動圧供給経路に相当し、空間Z1と空間Z2とを結ぶ経路が駆動圧排出経路に相当する。
【0079】
上述のように構成された第1の実施の参考形態で、ブレーキペダル21がバルブピストン831に対して所定操作量LLを超えて踏み込み操作されると、図11に示される加圧作動状態になる。図11は、負圧式ブースタ22の加圧作動状態を説明する弁機構8付近の部分断面図である。ブレーキペダル21が所定操作量LLまでの範囲で操作されると、入力部材84および弁体86は連動し、大気弁862と大気弁座852との当接が維持される。ブレーキペダル21がちょうど所定操作量LLまで操作されると、入力部材84および弁体86はバルブピストン831に対して所定操作量LL相対変位する。このとき、負圧弁861が負圧弁座851に当接し、空間Z1と空間Z2との間すなわち定圧室R1とブースタ室R2とが遮断される。さらに、ブレーキペダル21が所定操作量LLを超えて操作されると、入力部材84は連動しバルブピストン831に対して相対変位する。このとき、負圧弁861はバルブピストン831の負圧弁座851に当接するため、弁体86はバルブピストン831に対して相対変位しなくなる。したがって、大気弁座852が大気弁862から開離して間隙Gが生じ、空間Z2と空間Z3との間が連通し、ブースタ室R2が大気に連通してブースタ室R2内の圧力が増大する。これにより、負圧式ブースタ22およびマスタシリンダ23Bが作動する。
【0080】
また、ブレーキペダル21に作用する操作力が減少した場合は、バルブピストン831がオペレーティングロッド26側(図中左方)に移動し、入力部材84および弁体86がバルブピストン831に対して図中右方に相対変位される。したがって、大気弁862と大気弁座852とが当接して間隔Gがなくなり、負圧弁861が負圧弁座851から開離する。これにより、空間Z1と空間Z2が連通して空間Z3とは遮断され、ブースタ室R2が定圧室R1に連通してブースタ室R2内の圧力が減少する。
【0081】
この後のマスタシリンダ23以降の作動は、第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。本形態においても、負圧式ブースタ22は所定操作量LLまで作動せずエネルギ損失を最小限に低減しつつ回生制動力を最大限活用でき、総合的に極めて高いエネルギ効率を達成できる。
【0082】
4)第2の実施の参考形態
図12は、第2の実施の参考形態における不動作ストロークL3および無効ストロークL4を付与する構成を説明する図である。図示されるように、第2の実施の参考形態では、弁機構97Bの構成自体は第1の実施形態と同様であり、弁機構97Bの駆動圧入力ポート971を閉鎖するシール寸法L3がシール性能上必要な寸法すなわち不作動ストロークL3とされている点が異なる。そして、ブレーキペダル側のオペレーティングロッド26Bと連動する作動部材99Bは、図示される中立位置において、無効ストロークL4だけ入力部材94Bと離間して対向している。この無効ストロークL4は、所定操作量に応じて設定されている。つまり、不作動ストロークL3と無効ストロークL4との和が所定操作量となり、対応する要求制動力が最大回生制動力に等しくなるように設定されている。また、作動部材99Bは、入力部材94Bとの間に設けられたスプリング991により摺動方向後方に付勢されて位置決めされている。
【0083】
本参考形態において、ブレーキペダル21が中立位置から無効ストロークL4までの範囲で踏み込み操作されると、作動部材99Bは連動するが、入力部材94Bは変位しない。また、無効ストロークL4と不動作ストロークL3とを加算した所定操作量の範囲では、入力部材94Bは変位するが、駆動圧入力ポート971は開放されない。ブレーキペダル21が所定操作量(=L3+L4)を超えて操作されると、駆動圧入力ポート971が開口し作動油の駆動圧がブースタ室に供給されて油圧式ブースタおよびマスタシリンダが作動する。つまり、第1の実施の形態と同様の作用が生じ、油圧式ブースタにおけるエネルギ損失を最小限に低減しつつ回生制動力を最大限活用でき、総合的に極めて高いエネルギ効率を達成できる。
【0084】
なお、上述の実施の形態および参考形態に限定されず、本発明は様々な変形、応用が可能である。例えば、図2に示されるようにブレーキ配管系は前後分割方式にて構成されているが、X配管方式にて構成されるようにしてもよい。また、ハイブリッド車でなく、駆動源としてモータのみを搭載した電気自動車にも適用可能である。
【0085】
上記実施形態から把握できる技術的思想を以下に述べる。まず、4つの実施形態を包含する技術的思想は、次のとおりとなる。
(1)マスタシリンダと、前記マスタシリンダ内を摺動するマスタピストンと、ブレーキ操作部材の操作力以上でかつ同操作力に応じた駆動力により前記マスタピストンを駆動するブースタ部とを有し、前記マスタシリンダと前記マスタピストンとにより区画され同マスタピストンの摺動に伴って収縮または膨張するマスタ液圧室に液圧を発生させ、当該マスタ液圧室の前記液圧に応じた液圧制動力を車両の車輪に発生させる液圧ブレーキ装置と、
回生制動力を前記車両の車輪に発生させる回生ブレーキ装置と、を備え、
前記液圧制動力と前記回生制動力とに基づく制動力を、前記車両の各車輪に付与する車両用ブレーキ装置において、
前記ブースタ部は、
前記マスタピストンを連動させる出力部材と、
前記出力部材により区画されたブースタ室と、
前記ブースタ室に供給されて前記出力部材を駆動する駆動圧を蓄える圧力源と、
前記ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、前記圧力源と前記ブースタ室との間の駆動圧供給経路を遮断する一方、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧供給経路を連通する弁機構と、を有して構成され、
前記所定操作量は、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【0086】
また、第1の実施の参考形態に相当する技術的思想は、次のとおりとなる。
(2)上記(1)の車両用ブレーキ装置において、
前記ブースタ部は、
エンジンからブースタシェルに導入される負圧に対して相対的に圧力の高い大気を前記圧力源とし、
前記ブレーキ操作部材に連動する入力部材と、
ブースタシェルをブースタ室と前記負圧が導入される定圧室とに区画する区画部材、および前記区画部材と連動するバルブピストンを含んで構成される出力部材と、
前記入力部材と前記バルブピストンとの相対変位により作動され前記ブースタ室に前記大気を供給するための駆動圧供給経路を遮断または連通する弁機構とを有して構成され、
前記弁機構は、前記バルブピストンに形成された負圧弁座と、前記入力部材に形成された大気弁座と、前記ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまで前記負圧弁座から開離して前記ブースタ室と前記定圧室とを連通する負圧弁および前記大気弁座に当接して前記駆動圧供給経路を遮断する大気弁が設けられた弁体とを有し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記負圧弁が前記負圧弁座に当接し、前記大気弁座が前記大気弁から開離して前記駆動圧供給経路を連通するように構成されている車両用ブレーキ装置。
【0087】
さらに、第2の実施の参考形態に相当する技術的思想は、次のとおりとなる。
(3)上記(1)の車両用ブレーキ装置において、
前記ブレーキ操作部材および前記弁機構のいずれか一方と連動し他方と所定ストロークだけ離間して対向する作動部材を有し、前記所定ストロークは前記所定操作量に応じて設定されている車両用ブレーキ装置。
【符号の説明】
【0088】
11…エンジン、12…モータ、13…動力分割機構、14…動力伝達機構、15…発電機、16…インバータ、17…バッテリ、18…エンジンECU、19…ハイブリッドECU、21…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、21a…ペダルストロークセンサ、22…負圧式ブレーキブースタ、23…マスタシリンダ、23a…ハウジング、23b、23c…第1および第2ピストン(マスタピストン)、23d…第1液圧室、23e…第1スプリング、23f…第2液圧室、23g…第2スプリング、23h…第1ポート、23i…第2ポート、23j…第3ポート、23k…第4ポート、24…大気圧リザーバ、25…ブレーキアクチュエータ、26、26B…オペレーティングロッド、27…プッシュロッド、31、41…液圧制御弁、32、33、42、43…増圧制御弁、35、36、45、46…減圧制御弁、34、44…調圧リザーバ、37、47…ポンプ、60…ブレーキECU、8…弁機構、81…ブースタシェル、82…区画部材、83…ピストン部材、831…バルブピストン、84…入力部材、851…負圧弁座、852…大気弁座、86…弁体、861…負圧弁、862…大気弁、91…油圧式ブレーキブースタ、92…外周シリンダ、924…封止部、93…圧力源、94、94A、94B…入力部材(ブースタピストン)、941…排出路、945…押動部材、95…プッシュロッド、96…ピストン部材、961…外側ピストン部材、965、965A…内側ピストン部材(ブースタシリンダ)、966…入力側ピストン部材、97、97A、97B…弁機構、971…駆動圧入力ポート、972…ブースタ室接続ポート、973…ブースタ室、974a…第1シリンダ側凹部、974b…第2シリンダ側凹部、974c…段差部、975a…駆動圧供給経路、975b…駆動圧排出経路、976a…前方大径部、976b…第1小径部、976c…中間大径部、976d…第2小径部、976e…後方大径部、976f…絞り部、98…シーケンス弁、981…一方圧力弁、982…一方弁、99、99B…作動部材、991…スプリング。
A…回生ブレーキ装置、B…液圧ブレーキ装置、FR、FL、RR、RL…車輪、Lf、Lr…油経路、M…モータ、P…圧力センサ、WC1、WC2、WC3、WC4…ホイールシリンダ、L1、L3…不作動ストローク、L2、L4…無効ストローク、L、LL…所定操作量、R1…定圧室、R2…ブースタ室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタシリンダ(23)と、前記マスタシリンダ内を摺動するマスタピストン(23b、23c)と、ブレーキ操作部材(21)の操作力以上でかつ同操作力に応じた駆動力により前記マスタピストンを駆動するブースタ部(91)とを有し、前記マスタシリンダと前記マスタピストンとにより区画され同マスタピストンの摺動に伴って収縮または膨張するマスタ液圧室(23d、23f)に液圧を発生させ、当該マスタ液圧室の液圧に応じた液圧制動力を車両の車輪(FR、FL、RR、RL)に発生させる液圧ブレーキ装置(B)と、
回生制動力を前記車両の車輪に発生させる回生ブレーキ装置(A)と、を備え、
前記液圧制動力と前記回生制動力とに基づく制動力を、前記車両の各車輪に付与する車両用ブレーキ装置において、
前記ブースタ部は、
前記マスタピストンを連動させる出力部材(95、96)と、
前記出力部材により区画されたブースタ室(973)と、
前記ブースタ室に供給されて前記出力部材を駆動する駆動圧を蓄える圧力源(93)と、
前記圧力源から前記ブースタ室に前記駆動圧を供給するための駆動圧供給経路(975a)を遮断または連通する弁機構(97)と、を有して構成され、
前記弁機構は、
前記圧力源に接続される駆動圧入力ポート(971)と、前記ブースタ室に接続されるブースタ室接続ポート(972)とが形成されているブースタシリンダ(965)と、
前記ブレーキ操作部材に連動して前記ブースタシリンダ内を摺動するブースタピストン(94)と、を有し、
前記ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの少なくともいずれか一方のポートが前記ブースタピストンにより閉鎖されて、前記駆動圧供給経路を遮断し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの両ポートが前記ブースタピストンにより開放されて、前記駆動圧供給経路を連通するように構成され、
前記所定操作量は、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートは、前記ブースタピストンとの摺動方向に互いにずれて前記ブースタシリンダに形成されており、
前記ブースタピストンは、前記ブースタシリンダとの摺動面に前記駆動圧供給経路を区画するピストン側凹部(976b、976d)を有し、
前記弁機構は、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートが前記ピストン側凹部に開口して、前記駆動圧供給経路を連通するように構成されている請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記弁機構は、
前記駆動圧供給経路に加え、前記ブースタ室から大気圧リザーバ(24)に前記駆動圧を排出するための駆動圧排出経路(975b)を遮断または連通するものであり、
前記ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、前記ブースタ室接続ポートが前記ブースタピストンにより開放されて前記駆動圧排出経路を連通し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えている場合に、前記駆動圧排出経路を遮断するように構成されている請求項1または2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ブースタ室接続ポートは、
前記駆動圧入力ポートよりも前記ブースタピストンとの摺動方向後方にずれて形成され、
前記ブースタシリンダは、
前記ブースタピストンとの摺動面の前記駆動圧入力ポートと前記ブースタ室接続ポートとの間で当該両ポートから前記ブースタピストンの摺動方向に離間して形成され、前記駆動圧供給経路を区画する第1シリンダ側凹部(974a)と、
前記ブースタ室接続ポートから当該摺動方向後方に離間して形成され、前記駆動圧排出経路を区画する第2シリンダ側凹部(974b)と、を有し、
前記ブースタピストンは、
第1小径部(976b)と、
前記第1小径部から前記ブースタシリンダとの摺動方向後方に離間して形成された第2小径部(976d)と、を有し、
前記第1シリンダ側凹部の前記ブースタピストンとの摺動方向の幅が、前記第1小径部と前記第2小径部との間の中間大径部(976c)の前記ブースタピストンとの摺動方向の幅よりも大きく設定され、
前記弁機構は、
前記ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、前記駆動液圧入力ポートが前記第1小径部よりも前記ブースタシリンダとの摺動方向前方の前方大径部(976a)により閉鎖されて、前記駆動圧供給経路が遮断されるとともに、前記ブースタ室接続ポートが前記第2小径部に開口し、前記第2シリンダ側凹部が前記第2小径部に対向して、前記駆動圧排出経路が連通され、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えている場合に、前記駆動圧入力ポートが前記第1小径部に開口し、前記第1シリンダ側凹部が前記中間大径部に対向し、前記ブースタ室接続ポートが前記第2小径部に開口して、前記第駆動圧供給経路が連通されるとともに、前記ブースタシリンダの前記ブースタ室接続ポートと前記第2シリンダ側凹部との間の部分(974c)が前記第2小径部よりも前記ブースタ室との摺動方向後方の後方大径部(976e)に対向して、前記駆動圧排出経路が遮断されるように構成されている請求項3に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記駆動圧入力ポートの前記ブースタピストンによる閉鎖に伴って前記駆動圧供給経路を遮断し、前記駆動圧入力ポートの前記ブースタピストンによる開放に伴って前記駆動圧供給経路を連通するシーケンス弁(98)を備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項6】
前記所定操作量は、当該所定操作量に対する制動力の要求値が、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値と等しくなるように設定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項1】
マスタシリンダ(23)と、前記マスタシリンダ内を摺動するマスタピストン(23b、23c)と、ブレーキ操作部材(21)の操作力以上でかつ同操作力に応じた駆動力により前記マスタピストンを駆動するブースタ部(91)とを有し、前記マスタシリンダと前記マスタピストンとにより区画され同マスタピストンの摺動に伴って収縮または膨張するマスタ液圧室(23d、23f)に液圧を発生させ、当該マスタ液圧室の液圧に応じた液圧制動力を車両の車輪(FR、FL、RR、RL)に発生させる液圧ブレーキ装置(B)と、
回生制動力を前記車両の車輪に発生させる回生ブレーキ装置(A)と、を備え、
前記液圧制動力と前記回生制動力とに基づく制動力を、前記車両の各車輪に付与する車両用ブレーキ装置において、
前記ブースタ部は、
前記マスタピストンを連動させる出力部材(95、96)と、
前記出力部材により区画されたブースタ室(973)と、
前記ブースタ室に供給されて前記出力部材を駆動する駆動圧を蓄える圧力源(93)と、
前記圧力源から前記ブースタ室に前記駆動圧を供給するための駆動圧供給経路(975a)を遮断または連通する弁機構(97)と、を有して構成され、
前記弁機構は、
前記圧力源に接続される駆動圧入力ポート(971)と、前記ブースタ室に接続されるブースタ室接続ポート(972)とが形成されているブースタシリンダ(965)と、
前記ブレーキ操作部材に連動して前記ブースタシリンダ内を摺動するブースタピストン(94)と、を有し、
前記ブレーキ操作部材の操作量が所定操作量に達するまでは、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの少なくともいずれか一方のポートが前記ブースタピストンにより閉鎖されて、前記駆動圧供給経路を遮断し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートの両ポートが前記ブースタピストンにより開放されて、前記駆動圧供給経路を連通するように構成され、
前記所定操作量は、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値に基づいて設定されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートは、前記ブースタピストンとの摺動方向に互いにずれて前記ブースタシリンダに形成されており、
前記ブースタピストンは、前記ブースタシリンダとの摺動面に前記駆動圧供給経路を区画するピストン側凹部(976b、976d)を有し、
前記弁機構は、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えると、前記駆動圧入力ポートおよび前記ブースタ室接続ポートが前記ピストン側凹部に開口して、前記駆動圧供給経路を連通するように構成されている請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記弁機構は、
前記駆動圧供給経路に加え、前記ブースタ室から大気圧リザーバ(24)に前記駆動圧を排出するための駆動圧排出経路(975b)を遮断または連通するものであり、
前記ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、前記ブースタ室接続ポートが前記ブースタピストンにより開放されて前記駆動圧排出経路を連通し、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えている場合に、前記駆動圧排出経路を遮断するように構成されている請求項1または2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ブースタ室接続ポートは、
前記駆動圧入力ポートよりも前記ブースタピストンとの摺動方向後方にずれて形成され、
前記ブースタシリンダは、
前記ブースタピストンとの摺動面の前記駆動圧入力ポートと前記ブースタ室接続ポートとの間で当該両ポートから前記ブースタピストンの摺動方向に離間して形成され、前記駆動圧供給経路を区画する第1シリンダ側凹部(974a)と、
前記ブースタ室接続ポートから当該摺動方向後方に離間して形成され、前記駆動圧排出経路を区画する第2シリンダ側凹部(974b)と、を有し、
前記ブースタピストンは、
第1小径部(976b)と、
前記第1小径部から前記ブースタシリンダとの摺動方向後方に離間して形成された第2小径部(976d)と、を有し、
前記第1シリンダ側凹部の前記ブースタピストンとの摺動方向の幅が、前記第1小径部と前記第2小径部との間の中間大径部(976c)の前記ブースタピストンとの摺動方向の幅よりも大きく設定され、
前記弁機構は、
前記ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合に、前記駆動液圧入力ポートが前記第1小径部よりも前記ブースタシリンダとの摺動方向前方の前方大径部(976a)により閉鎖されて、前記駆動圧供給経路が遮断されるとともに、前記ブースタ室接続ポートが前記第2小径部に開口し、前記第2シリンダ側凹部が前記第2小径部に対向して、前記駆動圧排出経路が連通され、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記所定操作量を超えている場合に、前記駆動圧入力ポートが前記第1小径部に開口し、前記第1シリンダ側凹部が前記中間大径部に対向し、前記ブースタ室接続ポートが前記第2小径部に開口して、前記第駆動圧供給経路が連通されるとともに、前記ブースタシリンダの前記ブースタ室接続ポートと前記第2シリンダ側凹部との間の部分(974c)が前記第2小径部よりも前記ブースタ室との摺動方向後方の後方大径部(976e)に対向して、前記駆動圧排出経路が遮断されるように構成されている請求項3に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記駆動圧入力ポートの前記ブースタピストンによる閉鎖に伴って前記駆動圧供給経路を遮断し、前記駆動圧入力ポートの前記ブースタピストンによる開放に伴って前記駆動圧供給経路を連通するシーケンス弁(98)を備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項6】
前記所定操作量は、当該所定操作量に対する制動力の要求値が、前記回生ブレーキ装置による回生制動力の最大値と等しくなるように設定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−1195(P2012−1195A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141109(P2010−141109)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
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