説明

車両

【課題】排気系から吸気系へ導入可能な排気ガスの量を増加させて内燃機関の燃費向上が可能な車両を提供するを提供する。
【解決手段】排気系から排気ガスの一部を吸気系へ導入するEGRシステムを備える内燃機関10と、モータ204及びジェネレータ202と、車両の周囲情報を取得する周囲情報取得手段としてのナビゲーションシステム400あるいはミリ波レーダー装置500とを有し、ECU100は、ナビゲーションシステム400から得られる情報に基いて、車両の減速が予想されるかを判断し、車両の減速が予想されると判断した場合には、排気ガス導入量を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に、内燃機関、モータ及び/又はジェネレータを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、EGRシステムは、エンジンから排出される排ガスの一部を排気パイプ側からEGRパイプを介して吸気パイプ側へ再循環させ、吸気マニホールドからエンジンの各気筒へ送り込むことにより、排ガスの大部分を構成する不活性ガスのもつ熱容量により燃焼温度を低下させ、排ガス中におけるNOxを低減するようにすると共に、排気ガス中に含まれる未燃燃料を燃焼させて燃費の向上を図るものである。なお、EGRシステムに関する技術とは、例えば、特許文献1,2等に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−194143号公報
【特許文献2】特開2004−100464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、EGRシステムを備えた内燃機関では、排気ガスを吸気系に導入させている時に、車両の減速が開始されると、吸気系に設けられたスロットルバルブが閉じられる。このため、スロットルバルブの下流の吸気系の圧力は減圧され、吸気系に還流される排気ガスの量が急激に増加するため、燃焼室内で失火を起こす可能性がある。
【0005】
このため、従来においては、吸気系に導入させる排気ガスの量を、常時、失火が発生しない程度の量に制限することで対応していた。
【0006】
したがって、吸気系に導入させる排気ガスの量が制限を受けることから、排気ガスの循環による燃費向上の効果が十分でないという問題が存在した。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、排気系から吸気系へ導入可能な排気ガスの量を増加させて内燃機関の燃費向上が可能な車両
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両は、排気系から排気ガスの一部を吸気系へ導入する排気ガス環流手段を備える内燃機関と、モータ及び/又はジェネレータと、車両の周囲情報を取得する周囲情報取得手段と、前記周囲情報取得手段から得られる情報に基いて、車両の減速が予想されるかを判断する減速予測手段と、前記減速予測手段が車両の減速が予想されると判断した場合には、前記排気ガス循環手段の排気ガス導入量を制限する導入量制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
上記構成において、前記導入量制御手段は、前記内燃機関において失火が発生しない程度に前記排気ガスの導入量を制限する、構成を採用できる。
【0010】
上記構成において、前記減速予測手段が減速開始が予想されないと判断した場合に、車両の減速が開始された場合には、前記吸気系に設けられたスロットルバルブを徐々に閉じるように制御するバルブ制御手段をさらに有する、構成を採用できる。
【0011】
上記構成において、前記スロットルバルブを徐々に閉じる際に、発生する余剰トルクを前記モータ及び/又はジェネレータに分配する動力分配手段をさらに有する、構成を採用できる。
【0012】
上記構成において、前記減速予測手段は、ナビゲーションシステム及びレーダーシステムの少なくとも一を含む、構成を採用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排気ガスの吸気系への導入量を最大限増加させることができて、燃費の向上が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る車両の構成図である。
【0016】
この車両は、内燃機関10、この内燃機関10の排気管20に設けられた排気ガス浄化のための三元触媒等からなる触媒30、動力伝達機構200から回転駆動力が伝達される駆動軸50、この駆動軸50から回転トルクが伝達される車輪60、車両を総合的に制御する電子制御ユニット(ECU)100、動力伝達機構200、ナビゲーションシステム400、及び、ミリ波レーダ装置500を備えている。
【0017】
動力伝達機構200は、動力分割機構201、ジェネレータ202、動力分割機構201から伝達される回転を減速して駆動軸50へ伝達する減速機203、電動モータ204、インバータ210及びバッテリ220を含む。
【0018】
動力伝達機構200は、ECU100により制御される。
ECU100は、プロセッサ、メモリ等のハードウエア及び所要のソフトウエアで構成され、車両を総合的に制御する。また、後述するように、ECU100は、周囲情報取得手段、減速予測手段、導入量制御手段、バルブ制御手段、及び、動力分配手段を構成する。
【0019】
インバータ210は、ECU100により制御され、直流/交流変換を行うと共に、バッテリ220、ジェネレータ202及びモータ204との間で電力の授受を行う。
【0020】
バッテリ220は、充電した直流電力をインバータ210へ供給し、また、インバータ210から供給される直流電力を充電する。
【0021】
ジェネレータ202は、動力分割機構201から回転トルクが供給されることにより発電する。また、インバータ210からジェネレータ202に交流電力が供給されるときには、モータとして機能し、動力分割機構201へ回転トルクを供給可能である。
【0022】
電動モータ204は、インバータ210から交流電力が供給されることにより回転トルクを発生し、この回転トルクが動力分割機構201を介して車輪60に供給される。また、動力分割機構201から電動モータ204へ回転トルクが供給されるときには、電動モータ204は交流電力を発電してインバータ210へ供給可能である。
【0023】
動力分割機構201は、上記したECU100により制御され、内燃機関10と、ジェネレータ202と、減速機203と、モータ204との間で動力(回転トルク)の授受を行う。
【0024】
例えば、内燃機関10の始動時には、動力分割機構201は、内燃機関10のクランキングのために、ジェネレータ202から供給される回転トルクを内燃機関10へ供給する。
【0025】
また、車両の停車中に、バッテリ220の充電状態が低下したような場合には、内燃機関10の動力をジェネレータ202へ供給して発電させる。
【0026】
さらに、車両の発進時、通常走行時等には、電動モータ204の回転トルクを減速機203へ伝達して駆動軸50を回転駆動させる。
【0027】
定常走行時などの内燃機関の効率のよい運転領域では、内燃機関10の動力を減速機203に伝達して駆動軸50を回転駆動させると共に、内燃機関10の動力の一部を、ジェネレータ202へ供給する。このとき、モータ204の回転トルクを減速機203に追加的に伝達することもできる。
【0028】
ナビゲーションシステム400は、主に、GPS(全地球測位システム)や車速パルス、ジャイロなどの自律航法装置を利用して、車両の運行時に運転者に対して、ディスプレイ画面上に現在位置や目的地への走行経路案内を行なう。また、ナビゲーションシステム400は、ECU100に対して現在の位置情報を出力する。
【0029】
ミリ波レーダ装置500は、主に、車両の衝突軽減を目的とするレーダであり、ミリ波を出射することで対象物から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などを基に、対象物の位置や自車両との相対速度を測定する。ミリ波は周波数が30〜300GHzの電波であり、車載ミリ波レーダとしては主に76〜77GHzが使用される。
【0030】
通常の走行時はミリ波レーダから得た情報を基にクルマの速度を調節し、先行車との車間距離を一定に保つといった動作をする。衝突しそうになった場合、その状態を事前に察知してブレーキやシートベルトなどの安全装備を早期に作動させる。
【0031】
また、ミリ波レーダ装置500は、先行車と自車両との距離等の情報をECU100へ出力する。
【0032】
図2は、内燃機関10に備わる排気ガス環流手段としてのEGRシステムの構成を示す図である。
【0033】
このEGRシステムは、内燃機関10の排気通路20の触媒30の下流と、内燃機関10の吸気通路18とを接続するEGRガス通路14を有する。
【0034】
EGRガス通路14は、スロットルバルブ26とその下流に設けられたサージタンク24との間の吸気通路18に接続されている。
【0035】
EGRガス通路14の途中には、内燃機関10の排気ガスの一部であるEGRガスを冷却するためのEGRクーラー16が設けられている。
【0036】
EGRガス通路14の吸気通路18側の出口には、吸気通路18へのEGRガスの環流量を調整するためのEGRバルブ22が設けられている。
【0037】
なお、EGRバルブ22及びスロットルバルブ26は、上記したECU100により制御される。
【0038】
次に、ECU100によるEGRガス環流量制御の一例について図3のフローチャートを参照して説明する。なお、図3に示す処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0039】
先ず、車両の運行中、許容できる最大量のEGRガスGが吸気通路18に導入されるように制御する(ステップS1)。
【0040】
次いで、ナビゲーションシステム400やミリ波レーダー装置500から、車両の周囲の情報を逐次取得する(ステップS2)。
【0041】
次いで、取得した車両の周囲情報から、車両がこれから減速を開始するかを予想する(ステップS3)。
【0042】
例えば、ナビゲーションシステム400から得られる車両の現在位置が、比較的長い下り坂が続く場所にさしかかったような場合には、これから減速が開始されると予想できる。また、ミリ波レーダー装置500の情報から、自車両の前方車両との間隔が所定間隔よりも狭まっているような場合には、これから減速が開始されると予想できる。
【0043】
ステップS3において、自車両がこれから減速を開始すると予想される場合には、図4に示すように、EGRバルブ22を制御して吸気通路18へ導入されるEGRガスGの導入量を内燃機関10において失火が生じない程度に制限する。これにより、自車両が減速を開始する際に、スロットルバルブ26が急に閉じられる前に、吸気通路18へ導入されるEGRガスGの導入量が制限されているので、内燃機関10の燃焼室に大量のEGRガスGが導入されることがなく、失火が生じるのを確実に防ぐことができる。
【0044】
次いで、減速が終了したかを判断し(ステップS8)、減速が終了した場合には処理を終了し、減速が終了していないと判断した場合には、ステップS3に戻って同様の処理を実行する。
【0045】
一方、ステップS3において、減速が開始されると予測されない場合に、車両の運転者から減速要求があったか、すなわち、運転者によるアクセル開度の状態から減速されるかを判断する(ステップS5)。
【0046】
ステップS5において、減速要求がない場合には処理を終了し、減速要求がある場合には、内燃機関10において失火が生じないようにスロットルバルブ26を徐々に閉じていく(ステップS6)。すなわち、例えば図5に示すように、スロットルバルブ26をアクセル開度に合わせて閉じるのではなく、アクセル開度とは独立に徐々に閉じていく。これにより、スロットルバルブ26の下流の吸気通路18が急に減圧されないので、内燃機関10の燃焼室に大量のEGRガスGが導入されることがなく、失火が生じるのを確実に防ぐことができる。
【0047】
スロットルバルブ26を徐々に閉じると、車両に作用する内燃機関10による制動力が小さくなるので、余剰のトルクが発生する。このため、上記した動力分割機構201を制御して、余剰のトルクを電気モータ204あるいはジェネレータ202へ吸収させる(ステップS7)。そして、減速が終了したかを判断し(ステップS8)、減速が終了した場合には処理を終了し、減速が終了していないと判断した場合には、ステップS3に戻って同様の処理を実行する。
【0048】
なお、上記実施形態では、ミリ波レーダー装置500を用いる場合について説明したが、ミリ波以外のレーダー装置を使用することも可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、ECU100により、本発明の各手段を構成した場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、各手段を異なるプロセッサ等で分散して構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明が適用される車両の要部構成の一例を示す図である。
【図2】図1の車両に適用されるEGRシステムの一例を示す図である。
【図3】ECUにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】EGRシステムの排気ガス環流量を制限した状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるアクセル開度とスロットバルブ開度との関係を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10…内燃機関
18…吸気通路
20…排気通路
22…EGRバルブ
24…サージタンク
26…スロットルバルブ
30…触媒
100…ECU
200…動力伝達機構
201…動力分割機構
202…ジェネレータ
203…減速機
204…電動モータ
210…インバータ
220…バッテリ
400…ナビゲーションシステム
500…ミリ波レーダー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系から排気ガスの一部を吸気系へ導入する排気ガス環流手段を備える内燃機関と、
モータ及び/又はジェネレータと、
車両の周囲情報を取得する周囲情報取得手段と、
前記周囲情報取得手段から得られる情報に基いて、車両の減速が予想されるかを判断する減速予測手段と、
前記減速予測手段が車両の減速が予想されると判断した場合には、前記排気ガス環流手段の排気ガス導入量を制限する導入量制御手段と
を有することを特徴とする車両。
【請求項2】
前記導入量制御手段は、前記内燃機関において失火が発生しない程度に前記排気ガスの導入量を制限することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記減速予測手段が減速が予想されないと判断した場合に、車両の減速が開始された際には、前記吸気系に設けられたスロットルバルブを徐々に閉じるように制御するバルブ制御手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記スロットルバルブを徐々に閉じる際に、発生する余剰トルクを前記モータ及び/又はジェネレータに分配する動力分配手段をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記減速予測手段は、ナビゲーションシステム及びレーダーシステムの少なくとも一を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−77879(P2010−77879A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246413(P2008−246413)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】