説明

金属酸窒化物TFT用キャッピング層

キャッピング層は、汚染からアクティブチャネルを保護するために、薄膜トランジスタ(TFT)のアクティブチャネルの上に堆積してもよい。キャッピング層は、TFTの性能に影響するかもしれない。キャッピング層があまりに多量の水素、窒素、又は酸素を含んでいるならば、TFTの閾値電圧、サブスレショルドスロープ、及び移動度に否定的に影響を与えるかもしれない。窒素、酸素、及び水素含有ガスの流速の比率を制御することによって、TFTの性能が最適化されるかもしれない。更に、電力密度、キャッピング層堆積圧、及び温度も、TFT性能を最適化するために制御してもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、概して、薄膜トランジスタ(TFT)を製造する方法に関する。
【0002】
(関連技術の説明)
現在、TFTアレイへの関心は特に高く、なぜなら、これらの装置はコンピュータ及びテレビのフラットパネルにしばしば使用される種類のアクティブマトリックス液晶ディスプレイ(LCD)で使用できるからである。LCDには、バックライト照明用の発光ダイオード(LED)も含まれるかもしれない。更に、有機発光ダイオード(OLED)は、アクティブマトリックスディスプレイに使用されてきており、これらのOLEDは、ディスプレイの動作を記述するためにTFTが必要である。
【0003】
アモルファスシリコンで作られたTFTは、フラットパネルディスプレイ産業の主要なコンポーネントとなった。残念ながら、アモルファスシリコンには、低い移動度などの制約がある。OLEDに必要とされる移動度は、アモルファスシリコンで得られる移動度よりも少なくとも10倍高い。更に、OLEDディスプレイは電流駆動型デバイスであるので、Vthシフトに対してより敏感である。高電流又は高バイアス電圧下のいずれかにおけるアモルファスTFTのVthシフトは、取り組むべき課題である。他方、ポリシリコンは、アモルファスシリコンよりも高い移動度を有している。ポリシリコンは結晶であり、低い局所的不均一性をもたらす。ポリシリコン膜を作るために複雑なアニーリング処理を必要とするため、ポリシリコンを使用して大面積ディスプレイを作るのは、より困難であり、及び/又は、よりコストが掛かる。アモルファスシリコンの制約のため、OLEDの進歩は困難であった。
【0004】
近年、酸化亜鉛をアクティブチャネル層として使用する透明なTFTが作られた。酸化亜鉛は、ガラスやプラスチックなどの様々な基板上に比較的低い析出温度で結晶性材料として成長させることができる合成半導体である。ドーピングを通してアモルファス材料として酸化亜鉛ベースの半導体を作ることができる。従って、ドーピングされた酸化亜鉛は、不均一な粒子構造から生じるかもしれない不均一性の問題を回避するだろう。酸化亜鉛などのアモルファス半導体は、ボトムゲート型TFT構造を使用することで現在のディスプレイ製造プロセスにおいて、より容易に実行される。
【0005】
従って、高移動度をもつ透明なアクティブチャネルを有するTFTに対する技術の必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
キャッピング層は、汚染(コンタミネーション)からアクティブチャネルを保護するために、TFTのアクティブチャネルの上に堆積してもよい。キャッピング層は、TFTの性能に影響するかもしれない。キャッピング層があまりに多量の水素、窒素、又は酸素を含んでいるならば、TFTの閾値電圧、サブスレショルドスロープ、及び移動度に否定的に影響を与えるかもしれない。窒素、酸素、及び水素含有ガスの流速の比率を制御することによって、TFTの性能が最適化されるかもしれない。更に、電力密度、キャッピング層堆積圧、及び温度も、TFT性能を最適化するために制御してもよい。
【0007】
本発明の一実施形態では、薄膜トランジスタの製造方法を開示する。この方法は、基板、ゲート電極、及びゲート誘電体層を含む薄膜トランジスタスタックの上に半導体層を堆積するステップと、半導体層の上に導電層を堆積するステップと、導電層と半導体層をエッチングするステップと、露出した半導体層の上にキャッピング層を堆積するステップとを含む。半導体層は、窒素、酸素、及び、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、カドミウム、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含む。一実施形態では、半導体層は、酸素、及び、亜鉛、インジウム、ガリウム、カドミウム、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含む。エッチングは、TFTの動作領域及びソース及びドレイン電極を画定し、アクティブチャネルとして画定されるソース及びドレイン電極間の半導体層の一部を露出する。キャッピング層の堆積は、NOとSiHの比率を約20:1から約40:1の間で、NO及びSiHガスを処理チャンバに流すステップを含む。
【0008】
別の実施形態では、薄膜トランジスタの製造方法を開示する。この方法は、基板、ゲート電極、及びゲート誘電体層を含む薄膜トランジスタスタックの上に半導体層を堆積するステップと、半導体層の上にキャッピング層を堆積するステップと、キャッピング層をエッチングしTFTの動作領域を覆うキャッピング層を作るステップと、導電層を堆積するステップと、ソース及びドレイン電極及びアクティブチャネル領域を画定するステップとを含む。半導体層は、窒素、酸素、及び、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、カドミウム、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含む。一実施形態では、半導体層は、酸素、及び、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、カドミウム、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含む。キャッピング層は、エッチストップ層として言及されてもよい。キャッピング層のエッチングはTFTの動作領域を画定し、導電層のエッチングはソース及びドレイン電極を画定する。キャッピング層の堆積は、NO、SiH及びPHガスを処理チャンバに流すステップと、処理チャンバ内のガス分散シャワーヘッドへの電力密度を制御するステップとを含む。圧力は、約500mTorrと約2.5Torrの間であってもよい。電力密度は、約1.16×10−6W/cmと約4.63×10−3W/cmの間であってもよい。
【0009】
別の実施形態では、薄膜トランジスタは、ゲート電極と基板の上に配置された1以上のゲート誘電体層と、1以上のゲート誘電体層及びソース電極及びドレイン電極の上に配置された半導体層と、半導体層の上に配置され、アクティブチャネルを画定するパターンにエッチングされた第1キャッピング層と、第1キャッピング層及び他の領域の上に配置された第2キャッピング層とを含む。半導体層は、窒素、酸素、及び、亜鉛、インジウム、ガリウム、カドミウム、スズ、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含む。一実施形態では、半導体層は、酸素、及び、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、カドミウム、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含む。ソース及びドレイン電極は、第1距離を隔てて配置され、アクティブチャネルとして画定される半導体層の一部を露出する。
【0010】
キャッピング層は、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、炭化珪素、アモルファスカーボン、他の誘電性フィルム、又はそれらの組み合わせを有する単一層又は多重層であってもよい。キャッピング層又は層は、単一の処理チャンバ内で堆積してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上述した構成を詳細に理解することができるように、上記に簡単に要約した本発明のより具体的な説明を実施形態を参照して行う。実施形態のいくつかは添付図面に示されている。しかしながら、添付図面は本発明の典型的な実施形態を示しているに過ぎず、従ってこの範囲を制限されていると解釈されるべきではなく、本発明は他の等しく有効な実施形態を含み得ることに留意すべきである。
【0012】
【図1A】〜
【図1G】様々な製造段階における本発明の一実施形態に係るTFT100の概略断面図を示す。
【図2】本発明の別の実施形態に係るTFT200の概略断面図を示す。
【図3】本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧におけるNO及びSiHの効果を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧におけるシャワーヘッドに印加した電力及びNOのSiHに対する比率の効果を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧におけるPHの効果を示すグラフである。
【図6A】〜
【図6B】本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧におけるチャンバ圧力の効果を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧における電力及び圧力の両方の効果を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係るTFT内のキャッピング層をアニーリングする効果を示すグラフである。
【図9A】〜
【図9B】本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧における温度の効果を示すグラフである。
【図10A】〜
【図10B】本発明の一実施形態に係る第2キャッピング層として窒化珪素の効果を示すグラフである。
【0013】
理解を促進するために、図面に共通する同一の要素を示す際には可能な限り同一の参照番号を使用している。一実施形態に開示される要素を特定の引用なしに他の実施形態に有益に組み込んでもよいと理解される。
【詳細な説明】
【0014】
キャッピング層は、汚染からアクティブチャネルを保護するために、TFTのアクティブチャネルの上に堆積してもよい。キャッピング層は、TFTの性能に影響するかもしれない。キャッピング層があまりに多量の水素、窒素、又は酸素を含んでいるならば、TFTの閾値電圧、サブスレショルドスロープ、及び移動度に否定的に影響を与えるかもしれない。窒素、酸素、及び水素含有ガスの流速の比率を制御することによって、TFTの性能が最適化されるかもしれない。更に、電力密度、キャッピング層堆積圧、及び温度も、TFT性能を最適化するために制御してもよい。
【0015】
図1A〜1Gは、様々な製造段階における本発明の一実施形態に係るTFT100の概略断面図である。TFTは基板102を含んでもよい。一実施形態では、基板102はガラスを含んでもよい。別の実施形態では、基板102はポリマーを含んでもよい。別の実施形態では、基板102はプラスチックを含んでもよい。更に別の実施形態では、基板102は金属を含んでもよい。
【0016】
基板上に、ゲート電極104を形成してもよい。ゲート電極104は、TFT内で荷電粒子の動きを制御する導電層を含んでもよい。ゲート電極104は、アルミニウム、モリブデン、タングステン、クロム、タンタル、又はそれらの組み合わせなどの金属を含んでもよい。ゲート電極104は、スパッタリング、リソグラフィー、及びエッチングを含む従来の堆積技術を使用して形成してもよい。ゲート電極104は、基板102上に導電層を堆積させる被覆(ブランケット)によって形成してもよい。導電層はスパッタリングによって堆積してもよい。その後、フォトレジスト層は導電層の上に堆積してもよい。フォトレジスト層は、マスクを形成するためにパターニングしてもよい。ゲート電極104は、基板102の上にゲート電極104を残すために導電層のマスクされていない部分をエッチングで取り除くことによって形成してもよい。
【0017】
ゲート電極104の上に、ゲート誘電体層106を堆積してもよい。ゲート誘電体層106は、TFTのサブスレッショルドスイング又はスロープ及び閾値電圧に影響する。シリコンベースのTFT(即ち、アモルファスシリコンなどのシリコンベースの半導体層を有するTFT)において、VthがTFTの動作を悪化させるゲート電圧のゼロボルトからはるかに離れているので、ゲート誘電体層106は酸化珪素を含むことができない。しかしながら、金属酸化物TFTに対して、酸化珪素が有効なゲート誘電体層106として機能するかもしれないことが発見された。酸化珪素の中の酸素は、金属酸化物層を不利益に変化させる可能性は無いので、TFTが動作しない可能性は無い。一実施形態では、ゲート誘電体層106は窒化珪素を含んでもよい。別の実施形態では、ゲート誘電体層106は酸化珪素を含んでもよい。別の実施形態では、ゲート誘電体層106は酸窒化珪素を含んでもよい。別の実施形態では、ゲート誘電体層106はAlを含んでもよい。ゲート誘電体層106は、プラズマCVD(PECVD)を含むよく知られた堆積技術で堆積してもよい。一実施形態では、ゲート誘電体層106は物理気相成長法(PVD)によって堆積してもよい。
【0018】
ゲート誘電体層106を堆積した後に、ゲート誘電体層106を処理してもよい。技術のうちの1つは、ゲート誘電体層106の表面をパッシベーションするために、ゲート誘電体層106をプラズマ108に曝露することを含む。一実施形態では、ゲート誘電体層106は、NO又はOなどの酸素含有ガスを含むプラズマに曝露してもよい。別の実施形態では、ゲート誘電体層106は酸素含有プラズマに曝露した後に、H、Ar、N、又はPHを含むプラズマに曝露してもよい。別の実施形態では、ゲート誘電体層106は、NO又はOなどのプラズマがない酸素含有ガスに曝露してもよい。別の実施形態では、ゲート誘電体層106は酸素含有ガスに曝露した後に、酸素含有プラズマに曝露してもよい。更に別の実施形態では、ゲート誘電体層106の処理に加えて又は代わりに、シリコン酸化層をゲート誘電体層106の上に堆積してもよい。
【0019】
ゲート誘電体層106を処理した後に、半導体層110をその上に堆積してもよい。半導体層110は、最終的なTFT構造にアクティブチャネルを含む材料となるだろう。半導体層110は、酸素、窒素、及び、亜鉛、ガリウム、カドミウム、インジウム、スズ及びそれらの組み合わせから成る群から選択される1以上の元素を含んでもよい。一実施形態では、半導体層110は、酸素、窒素、及び、満ちたs軌道及び満ちたd軌道を有する1以上の元素を含んでもよい。別の実施形態では、半導体層110は、酸素、窒素、及び満ちたf軌道を有する1以上の元素を含んでもよい。別の実施形態では、半導体層110は、酸素、窒素、及び1以上の2価の元素を含んでもよい。別の実施形態では、半導体層110は、酸素、窒素、及び1以上の3価の元素を含んでもよい。別の実施形態では、半導体層は、酸素、窒素、及び1以上の4価の元素を含んでもよい。
【0020】
また、半導体層110は、ドーパントを含んでもよい。使用可能な適当なドーパントは、Al、Sn、Ga、Ca、Si、Ti、Cu、Ge、In、Ni、Mn、Cr、V、Mg、Si、Al、SiCを含む。一実施形態では、ドーパントはアルミニウムを含む。別の実施形態では、ドーパントはスズを含む。
【0021】
半導体層110の例は以下を含む:ZnO、SnO、InO、CdO、GaO、ZnSnO、ZnInO、ZnCdO、ZnGaO、SnInO、SnCdO、SnGaO、InCdO、InGaO、CdGaO、ZnSnInO、ZnSnCdO、ZnSnGaO、ZnInCdO、ZnInGaO、ZnCdGaO、SnInCdO、SnInGaO、SnCdGaO、InCdGaO、ZnSnInCdO、ZnSnInGaO、ZnInCdGaO、及びSnInCdGaO。半導体層110の例は以下のドープされた材料を含む:ZnO:Al、ZnO:Sn、SnO:Al、InO:Al、InO:Sn、CdO:Al、CdO:Sn、GaO:Al、GaO:Sn、ZnSnO:Al、ZnInO:Al、ZnInO:Sn、ZnCdO:Al、ZnCdO:Sn、ZnGaO:Al、ZnGaO:Sn、SnInO:Al、SnCdO:Al、SnGaO:Al、InCdO:Al、InCdO:Sn、InGaO:Al、InGaO:Sn、CdGaO:Al、CdGaO:Sn、ZnSnInO:Al、ZnSnCdO:Al、ZnSnGaO:Al、ZnInCdO:Al、ZnInCdO:Sn、ZnInGaO:Al、ZnInGaO:Sn、ZnCdGaO:Al、ZnCdGaO:Sn、SnInCdO:Al、SnInGaO:Al、SnCdGaO:Al、InCdGaO:Al、InCdGaO:Sn、ZnSnInCdO:Al、ZnSnInGaO:Al、ZnInCdGaO:Al、ZnInCdGaO:Sn、及びSnInCdGaO:Al。
【0022】
半導体層110は、スパッタリングによって堆積してもよい。一実施形態では、スパッタリングターゲットは、亜鉛、ガリウム、スズ、カドミウム、インジウム、又はそれらの組み合わせなどの金属を含む。スパッタリングターゲットは、ドーパントを更に含んでもよい。反応性スパッタリングによって半導体層110を堆積するために、酸素含有ガス及び窒素含有ガスがチャンバ内に導入される。一実施形態では、窒素含有ガスは、Nを含む。別の実施形態では、窒素含有ガスは、NO、NH、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、酸素含有ガスは、Oを含む。別の実施形態では、酸素含有ガスは、NOを含む。窒素含有ガスの窒素と酸素含有ガスの酸素は、金属、酸素、窒素、及び任意にどーパントを基板上に含む半導体材料を形成するために、スパッタリングターゲットからの金属と反応する。一実施形態では、窒素含有ガスと酸素含有ガスは、別々のガスである。別の実施形態では、窒素含有ガスと酸素含有ガスは、同じガスを含む。また、スパッタリングの間、B、CO、CO、CH、及びそれらの組み合わせなどの追加添加物をチャンバに提供してもよい。
【0023】
半導体層110を堆積した後に、導電層112を堆積してもよい。一実施形態では、導電層112は、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、及びそれらの組み合わせなどの金属を含んでもよい。導電層112は、PVDを使用することによって堆積してもよい。
【0024】
ソース電極114、ドレイン電極116、及びアクティブチャネル118は、導電層112を堆積した後に、導電層112の一部をエッチングで除去することによって画定してもよい。半導体層110の一部もエッチングによって除去してもよい。図示されていないが、導電層を堆積する前に、キャッピング層(又はエッチストップ層)を半導体層110の上に堆積してもよい。エッチストップ層は、エッチングの間、過度のプラズマ曝露からアクティブチャネル118を保護するために機能する。
【0025】
半導体層110上及びアクティブチャネル118内に、第1キャッピング層120を堆積してもよい。一実施形態では、第1キャッピング層120は、酸化珪素を含んでもよい。別の実施形態では、第1キャッピング層120は、酸窒化珪素を含んでもよい。一実施形態では、第1キャッピング層は、PECVDによって堆積してもよい。別の実施形態では、第1キャッピング層は、CVDによって堆積してもよい。別の実施形態では、第1キャッピング層120は、炭化珪素を含んでもよい。別の実施形態では、第1キャッピング層120は、アモルファスカーボンを含んでもよい。
【0026】
第1キャッピング層120を堆積するために、シリコン含有ガスを処理チャンバに導入してもよい。一実施形態では、シリコン含有ガスは、SiHを含んでもよい。別の実施形態では、シリコン含有ガスは、テオス(TEOS)を含んでもよい。シリコン含有ガスに加えて、NO、NO、NO、O、CO、CO、NH、及びそれらの組み合わせを導入してもよい。NOのシリコン含有ガスに対する流量比を約20:1と約40:1の間で、NO及びシリコン含有ガスを導入してもよい。シリコンベースのTFT(即ち、シリコンを含む半導体層)で使用される伝統的な窒化珪素キャッピング層の水素及び窒素は、TFTに水素窒素効果のバランスをとるのに十分な酸素を有していなくてもよく、その結果、閾値電圧にネガティブシフトを引き起こすかもしれない。第1キャッピング層120の酸素含有量は、SiHのNOに対する比率を制御することによって調整してもよい。酸素含有量は高過ぎるべきではない。もしも酸素含有量が高過ぎるならば、オン電流(I0n)又は移動度がかなり減少するかもしれない。最上層において強い正電荷のソースドレインパターニングが電場の下で電子移動に影響し得る間、高い酸素含有量は損傷した半導体層の領域を拡大するかもしれない。また、シリコン含有ガス及びNOガスに加えて、窒素ガス(N)を導入してもよい。
【0027】
シリコン含有ガスとNOガスに加えて、PHガスを導入してもよい。水素はTFTの移動度を増加させる。従って、PHガスは、PHガス中に存在する水素のため、TFTの移動度を増加するかもしれない。しかしながら、水素は、TFTの閾値電圧をシフトさせ、より負電圧になることを引き起こし得る。従って、第1キャッピング層120の堆積の間にチャンバ内に存在している水素の量は、ユーザのニーズに合うようにバランスをとる必要がある。例えば、もしもユーザが閾値電圧を犠牲にしても構わないと思っているのならば、より高い移動度を達成することができる。一実施形態では、処理チャンバに導入されたガスの総水素含有量に対するPHガスの比率は、約1:190と約1:200の間であってもよい。炭素を含有する第1キャッピング層120を堆積するとき、導入可能なガスは、N、H、及びCなどの炭素含有ガスを含む。
【0028】
第1キャッピング層120を堆積した後に、第1キャッピング層120を処理してもよい。技術のうちの1つは、第1キャッピング層120の表面をパッシベーションさせるために第1キャッピング層120をプラズマに曝露することを含む。一実施形態では、第1キャッピング層120は、NO又はOなどの酸素含有ガスを含むプラズマに曝露してもよい。別の実施形態では、第1キャッピング層120は、酸素含有プラズマに曝露した後に、H、Ar、N、又はPHを含むプラズマに曝露してもよい。別の実施形態では、第1キャッピング層120は、NO、He、H、N、O、又はそれらの組み合わせなどのプラズマの無い酸素含有ガスに曝露してもよい。別の実施形態では、第1キャッピング層120は、酸素含有ガスにさらされた後に酸素含有プラズマに曝露してもよい。
【0029】
第2キャッピング層122は、第1キャッピング層120の上に堆積してもよい。一実施形態では、第2キャッピング層122は、第1キャッピング層120とは異なる組成を有している。別の実施形態では、第2キャッピング層122は、第1キャッピング層120と同じ組成を有している。第1キャッピング層及び第2キャッピング層122が同じ組成を有するとき、第1キャッピング層120及び第2キャッピング層122は、単一堆積ステップで堆積してもよい。一実施形態では、第1キャッピング層120及び第2キャッピング層122は、アクティブチャネル118内の半導体層110との界面における酸素含有量が、層の残り全体の酸素含有量よりも高くなるように、層中で変化する組成勾配をもつ単一処理ステップで堆積した単一層を含む。第1及び第2キャッピング層120、122の集合的な厚さの中で、第1キャッピング層は全体の厚さの約5パーセントから約20パーセントを含んでもよい。一実施形態では、第1キャッピング層120の厚さは、約75オングストロームと約125オングストロームの間であってもよい。
【0030】
第2キャッピング層122を堆積した後に、第2キャッピング層122を処理してもよい。技術のうちの1つは、第2キャッピング層122の表面をパッシベーションさせるために第2キャッピング層122をプラズマに曝露することを含む。一実施形態では、第2キャッピング層122は、NO又はOなどの酸素含有ガスを含むプラズマに曝露してもよい。別の実施形態では、第2キャッピング層122は、酸素含有プラズマに曝露した後で、H、Ar、N、又はPHを含むプラズマに曝露してもよい。別の実施形態では、第2キャッピング層122は、NO又はOなどのプラズマの無い酸素含有ガスに曝露してもよい。別の実施形態では、第2キャッピング層122は、酸素含有ガスに曝露した後で酸素含有プラズマに曝露してもよい。
【0031】
図2は本発明の別の実施形態に係るTFT200の概略断面図である。TFT200は、基板202の上に配置されたゲート電極204を含む。第1キャッピング層220、第2キャッピング層222、ソース電極214、ドレイン電極216、アクティブチャネル218、及び半導体層210も存在する。多層ゲート誘電体が存在する。ゲート誘電体は、第1ゲート誘電体層206及び第2ゲート誘電体層208を有してもよい。一実施形態では、第1ゲート誘電体層206は窒化珪素を含んでもよい。一実施形態では、第2ゲート誘電体層208は酸化珪素を含んでもよい。上述のように、酸化珪素はシリコンベースのTFTで使用可能ではないが、金属酸化物TFTでは有益かもしれない。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧におけるNO及びSiHの効果を示すグラフである。NO及びシランの流速は、sccmとして示される。シランの量が増すと、移動度が向上するようにサブスレショルドスロープも向上する。水素含有量が増加するので、移動度は向上する。シランの流れがNOの流れに対して増加することによって、Ioff電流も減少する。NOの流れの低下は、(1000sccmの流速の場合、)NOの流れの10パーセントの減少が、(シランの流速を50sccmと仮定すると)シランの流れに対するNOの流れの比率を約20:1から約19:1へ減少させるのに十分でないかもしれない。しかしながら、シランの流速の10パーセントの増加は、(シランの流速を50sccmと仮定すると)シランの流れに対するNOの流れの比率を約20:1から約18:1へ減少させるだろう。シランに対するNOの流れの比率が減少すると、サブスレショルドスロープ値は減少し、移動度は増加する。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧においてシャワーヘッドに印加した電力及びNOのSiHに対する比率の効果を示すグラフである。夫々の場合において、シランは50sccmの速度で流された。NOの流速は、sccmとして示される。シランの流れに対するNOの流れの比率の減少は移動度を増加させるが、それはIoff電流も増加させ、閾値電圧をより負へ移動させる。しかしながら、印加された電力の増加(つまり、電力密度)は、移動度を増加させ、サブスレショルドスロープを低下させるだろうが、閾値電圧はより負になるかもしれない。キャッピング層の堆積後に緩和させる(即ち、しばらくの間、堆積温度でアニーリングを行う)とき、閾値電圧はより正になり、サブスレショルドスロープ値を低下させるかもしれないが、移動度はわずかに減少する。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧におけるPHの効果を示すグラフである。NO及びPHの流速は、sccmとして示される。PHの総水素含有量に対する比率が小さいことによって、移動度は増加するかもしれない。しかしながら、もしもPHの総水素含有量に対する比率が高過ぎるならば、閾値電圧はIon又は移動度が変化しないことがほとんど無いPHが無い場合に起こるであろう値よりも負になるかもしれない。
【0035】
図6A及び6Bは、本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧におけるチャンバ圧力の効果を示すグラフである。チャンバ圧力が低ければ低いほど、サブスレショルドスロープの値はより低くなるが、Ioffテールはより低い圧力でより高くなる。
【0036】
図7は、本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧における電力及び圧力の両方の効果を示すグラフである。NOのシランに対する比率は、図7に示されるデータにおいて一定である。電力密度は、Ioff電流、閾値電圧、及び移動度に影響する。図7に示されるように、1500Wのデータは最も悪いIoff電流を有している。電力を一定に維持すると、より低い圧力は、最も低いIoff電流及びより正の閾値電圧を提供する。
【0037】
図8は、本発明の一実施形態に係るTFTにおいてキャッピング層をアニーリングする効果を示すグラフである。NOのシランに対するより高い比率は、閾値電圧をより正方向へ移動させるかもしれない。NOのシランに対するより低い比率は、閾値電圧をより負へ移動させるかもしれない。アニーリングは、閾値電圧をより正値へシフトさせる。一実施形態では、アニーリングは摂氏約200度から摂氏約300度の間の温度で行ってもよい。
【0038】
図9A及び9Bは、本発明の一実施形態に係るTFTに対する閾値電圧における温度の効果を示すグラフである。キャッピング層の堆積温度が高ければ高いほど、Ioffはより低く、移動度はより高く、閾値電圧はより負値となる。更に、より高いキャッピング層の堆積温度では、Ioffテールはより低く移動する。また、キャッピング層がポスト処理されない場合は、閾値電圧の変化もより小さい。
【0039】
図10A及び10Bは、本発明の一実施形態に係る第2キャッピング層としての窒化珪素の効果を示すグラフである。窒化珪素は既に堆積している酸化珪素層の上に堆積される。図10A及び10Bに示される実施形態において、キャッピング膜は合計約120秒間堆積する。酸化珪素膜を30秒間堆積し、窒化珪素膜を90秒間堆積すると、移動度は増加するかもしれない。しかしながら、窒化珪素は、閾値電圧をより負値へシフトさせるかもしれない。
【0040】
キャッピング膜を堆積するとき、温度、圧力、及び電力密度のみならず酸素、水素、及び窒素含有量を制御することによって、移動度、閾値電圧、Ion電流、Ioff電流、及びサブスレショルドスロープを最適化してもよい。
【0041】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の他の及び更なる実施形態は本発明の基本的範囲を逸脱することなく創作することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲に基づいて定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタの製造方法であって、
基板と、ゲート電極と、ゲート誘電体層とを含む薄膜トランジスタスタックの上に半導体層を堆積するステップを含み、前記半導体層は、窒素、酸素、及び、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、カドミウム、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含み、
前記方法は、前記半導体層の上に導電層を堆積するステップと、
ソース及びドレイン電極を画定し、アクティブチャネルとして画定される前記ソース及びドレイン電極間において前記半導体層の一部を露出するために前記導電層をエッチングするステップと、
約20:1と約40:1の間におけるNO及びSiHガスの比率で処理チャンバ内にNO及びSiHガスを流すことによって前記露出した半導体層の上にキャッピング層を堆積するステップとを更に含む方法。
【請求項2】
O及びSiHガスと共にPHガスを流すステップを更に含み、前記処理チャンバ内へ流れる水素の総量に対するPHガスの比率は、約1:1000と約1:150の間である請求項1記載の方法。
【請求項3】
O及びSiHガスと共にNガスを流すステップを更に含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記キャッピング層は酸化珪素を含み、前記酸化珪素キャッピング層の上に堆積した窒化珪素層を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記キャッピング層は、前記半導体層に隣接して堆積した酸化珪素を有する複数の層を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
Oガス又はNOガスから形成されるプラズマのうちの1以上に前記ゲート誘電体層を曝露するステップを更に含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記半導体層はスパッタリングによって堆積され、前記半導体層はドーパントを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
薄膜トランジスタの製造方法であって、
基板と、ゲート電極と、ゲート誘電体層とを含む薄膜トランジスタスタックの上に半導体層を堆積するステップを含み、前記半導体層は、窒素、酸素、及び、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、カドミウム、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含み、
前記方法は、前記半導体層の上に導電層を堆積するステップと、
ソース及びドレイン電極を画定し、アクティブチャネルとして画定される前記ソース及びドレイン電極間において前記半導体層の一部を露出するために前記導電層をエッチングするステップと、
前記アクティブチャネルを部分的に埋めるために前記アクティブチャネル内の露出した半導体層の上に酸化珪素層を堆積させるステップとを更に含み、前記堆積は、約500mTorrから約2.5Torrのチャンバ圧を得るために処理チャンバ内にNO、SiH、及びPHガスを流すステップと、約1.16×10−6W/cmと約4.63×10−3W/cmの間のRFバイアスを前記処理チャンバ内のガス分散シャワーヘッドに印加するステップとを含む方法。
【請求項9】
OとSiHの流量比は、約20:1と約40:1の間である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記処理チャンバ内へ流れる水素の総量に対するPHガスの比率は、約1:1000と約1:150の間である請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記NO及びSiHガスと共にNガスを流すステップを更に含む請求項8記載の方法。
【請求項12】
Oガス又はNOガスから形成されたプラズマのうちの1以上に前記ゲート誘電体層を曝露するステップを更に含む請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記半導体層はスパッタリングによって堆積され、前記酸化珪素層は摂氏約200度と摂氏約350度の間の温度で堆積される請求項8記載の方法。
【請求項14】
薄膜トランジスタであって、
ゲート電極及び基板の上に配置された1以上のゲート誘電体層と、
前記1以上のゲート誘電体層の上に配置された半導体層とを含み、前記半導体層は、窒素、酸素、及び、亜鉛、インジウム、ガリウム、カドミウム、スズ、及びそれらの組み合わせから選択される1以上の元素を含み、
前記トランジスタは、前記半導体層の一部の上に配置されたソース及びドレイン電極を更に含み、前記ソース及びドレイン電極は、第1距離を隔てて配置され、アクティブチャネルとして画定される前記半導体層の一部を露出し、
前記トランジスタは、前記アクティブチャネル内の前記半導体層の上に配置され、前記アクティブチャネルを部分的に埋める第1キャッピング層を更に含み、前記第1キャッピング層は酸化珪素を含むトランジスタ。
【請求項15】
前記第1キャッピング層の上に配置され、前記第1キャッピング層の組成と異なる組成を有する第2キャッピング層を更に含み、前記第2キャッピング層は窒化珪素を含み、前記ゲート誘電体層は酸化珪素を含み、前記半導体層は、アルミニウム、スズ、ガリウム、カルシウム、シリコン、チタニウム、銅、ゲルマニウム、インジウム、ニッケル、マンガン、クロム、バナジウム、マグネシウム、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるドーパントを含む請求項14記載のトランジスタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2011−527121(P2011−527121A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516778(P2011−516778)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/049092
【国際公開番号】WO2010/002807
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】