説明

LEDパッケージ用基板、LEDパッケージ、LEDパッケージ用基板の製造方法、および、LEDパッケージの製造方法

【課題】低コストで製造可能なLEDパッケージ用基板を提供する。
【解決手段】LEDパッケージを製造するために用いられるLEDパッケージ用基板であって、LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッドおよびLEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームと、トランスファ成形によりダイパッドとリードとの間の抜き孔に充填され、かつ、リードフレームの表面上の端部にダム部を成形する樹脂とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレームに樹脂を成形したLEDパッケージ用基板およびLEDパッケージ用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リードフレームに樹脂を成形したLEDパッケージ用基板を用いたLEDパッケージ成形において、レンズ樹脂をトランスファ成形することによりLEDパッケージ用のレンズ部を形成している。しかし、トランスファ成形によりレンズ部を形成すると、カルやランナなどの部分に成形される樹脂が無駄となり、LEDパッケージの製造コスト上昇の一因となっている。
【0003】
一方、特許文献1には、樹脂を圧縮成形することによりレンズ部を製造する方法が開示されている。トランスファ成形の代わりに圧縮成形で樹脂を成形することにより、製造コストを低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−125647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている圧縮成形方法では、加熱された下型に樹脂を供給している。このため、樹脂の粘度の制御が困難であり、ゲルタイム(液状樹脂の粘性が増してゲル化するまでの時間)の長い樹脂を使用する必要がある。このため、レンズ部として用いられる樹脂は、上記の条件を満たす限られた樹脂から選択せざるを得ず、製造コストを十分に低減させることができない。
【0006】
そこで本発明は、低コストで製造可能なLEDパッケージ用基板、LEDパッケージ、LEDパッケージ用基板の製造方法、および、LEDパッケージの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのLEDパッケージ用基板は、LEDパッケージを製造するために用いられるLEDパッケージ用基板であって、LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームと、トランスファ成形により前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填され、かつ、前記リードフレームの表面上の端部にダム部を成形する樹脂とを有する。
【0008】
本発明の他の側面としてのLEDパッケージは、LEDチップと、前記LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームと、トランスファ成形により前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填され、かつ、前記リードフレームの表面上の端部に環状のダム部を成形する樹脂と、前記LEDチップを封止したレンズ樹脂とを有する。
【0009】
本発明の他の側面としてのLEDパッケージ用基板の製造方法は、LEDパッケージを製造するために用いられるLEDパッケージ用基板の製造方法であって、LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えるようにリードフレームを加工するステップと、トランスファ成形により樹脂を前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填し、かつ、該樹脂を用いて前記リードフレームの表面上の端部にダム部を成形するステップとを有する。
【0010】
本発明の他の側面としてのLEDパッケージの製造方法は、LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えるようにリードフレームを加工するステップと、トランスファ成形により樹脂を前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填し、かつ、該樹脂を用いて前記リードフレームの表面上の端部にダム部を成形するステップと、前記LEDチップを実装するステップと、圧縮成形によりレンズ樹脂を前記ダム部の内部に供給して前記LEDチップを封止するステップとを有する。
【0011】
本発明の他の側面としてのLEDパッケージの製造方法は、LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えるようにリードフレームを加工するステップと、トランスファ成形により樹脂を前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填し、かつ、該樹脂を用いて前記リードフレームの表面上の端部にダム部を成形するステップと、前記LEDチップを実装するステップと、トランスファ成形によりレンズ樹脂を前記ダム部の内部に供給して前記LEDチップを封止するステップとを有する。
【0012】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低コストで製造可能なLEDパッケージ用基板、LEDパッケージ、LEDパッケージ用基板の製造方法、および、LEDパッケージの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1におけるリードフレームの構成図であり、(a)平面図、(b)断面図である。
【図2】実施例1における一次成形に用いられる金型の概略断面図であり、(a)樹脂封止前、(b)樹脂封止後の状態である。
【図3】実施例1における一次成形後のLEDパッケージ用基板の構成図であり、(a)平面図、(b)断面図である。
【図4】実施例1におけるチップ実装後のLEDパッケージ用基板の断面図であり、(a)二次成形樹脂の供給前の状態、(b)二次成形樹脂の供給後の状態である。
【図5】実施例1における二次成形に用いられる金型の概略断面図であり、(a)樹脂封止前、(b)樹脂封止後の状態である。
【図6】実施例1における二次成形後のLEDパッケージ用基板の断面図である。
【図7】実施例2における一次成形後のLEDパッケージ用基板の構成図であり、(a)平面図、(b)断面図である。
【図8】実施例2におけるLEDパッケージ用基板の変形例であり、(a)リフレクタ用の樹脂が設けられていない場合の断面図、(b)裏面に突起部が設けられている場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0016】
まず、図1乃至図6を参照して、本発明の実施例1におけるLEDパッケージ用基板及びその製造方法について説明する。図1は、本実施例におけるリードフレームの構成図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)中のB−B面で切断した断面図である。本実施例のLEDパッケージ用基板は、最終製品であるLEDパッケージを製造するために用いられ、樹脂成形されたリードフレーム上に複数のLEDチップを実装して、または、実装可能に構成されている。
【0017】
リードフレーム10は、例えば、銅系フレーム材の表面に、ニッケル、パラジウム、銀、又は金などで構成されるメッキ層(例えばNi−Agメッキ)を形成して構成される。リードフレーム10の板厚は、例えば0.5mmであり、板厚0.2mmや0.3mm程度のリードフレームを用いてもよい。リードフレーム10の上には、後述のようにリフレクタ用の樹脂封止後に複数のLEDチップが実装され、レンズ用の樹脂封止後にリードフレーム10を切断するダイシング(個片化)工程を経ることにより、最終製品としての複数のLEDパッケージが完成する。
【0018】
リードフレーム10は、後述のLEDチップの第1の電極(アノード電極)に電気的接続されるように構成(加工)されたダイパッド12(ベース側リード)を備える。またリードフレーム10は、LEDチップの第1の電極とは異なる第2の電極(カソード電極)に電気的接続されるように構成(加工)されたリード13(端子側リード)を備える。LEDチップは、ダイパッド12の上に実装される。ダイパッド12及びリード13の周囲(ダイパッド12とリード13との間)には抜き孔16が設けられており、個片化後、ダイパッド12とリード13は互いに分離される。本実施例では、ダイパッド12及びリード13によりパッド部14が構成される。なお、本実施例はこれに限定されるものではなく、上述の構成とは逆に、LEDチップのカソード電極をダイパッド12に接続し、アノード電極をリード13に接続するように構成してもよい。また、ツェナーダイオードのような保護素子をこれらに並列的に接続してもよい。
【0019】
図1(a)に示されるように、本実施例のリードフレーム10は、複数のパッド部14(単位要素150)から構成されており、図1(a)に示されるリードフレーム10の範囲において、複数行及び複数列(縦5個及び横5個の合計25個)のLEDパッケージが製造される。
【0020】
次に、本実施例におけるリードフレーム10を一次成形樹脂で樹脂封止する際に用いられる金型について説明する。図2は、本実施例における一次成形に用いられる金型の概略断面図であり、金型でリードフレームをクランプした状態を示す。図2(a)は樹脂封止前の状態、図2(b)は樹脂封止後の状態をそれぞれ示す。なお本実施例では、図2中の一点鎖線160を挟んだ左側にも同様の構成が配置されることにより、一度の成形で2枚のリードフレーム10に対する樹脂封止が行われる。
【0021】
図2(a)、(b)に示されるように、本実施例において、一次成形時に用いられる金型(トランスファ成形金型)は、上金型50(一方金型)と下金型60(他方金型)を備えて構成されている。上金型50には、パッド部14(図1(a)参照)と同じ間隔で設けられている複数の凸部51が設けられている。凸部51のそれぞれは、矩形状のキャビティ57(凹部)において行列状に配置して突出させることで、上金型50の下面(パーティング面)と同じ高さとなっている。また、周辺領域(端部)に配置されたキャビティ57の周囲には、それらのキャビティ57を取り囲むようにキャビティ57の高さ(深さ)よりも高い(深い)矩形環状のキャビティ58が設けられている。キャビティ57とキャビティ58との間には、ゲート側とエアベント側の2辺において、凸部51の正面位置にスルーゲート52(凹部)が形成されており、樹脂71がこれらの間を流れることができるように構成されている。このような構成により、上金型50は、リードフレーム10に充填する樹脂71(一次成形樹脂)の形状を決定する。
【0022】
上金型50のキャビティ57、58、抜き孔16、及び、スルーゲート52の内部には、トランスファ成形による樹脂封止が行われることにより、樹脂71(樹脂71a、71b、71c、71d)が充填される。キャビティ57の内部に充填された樹脂71aは、後述のLEDチップからの光を反射させるリフレクタとしての機能を有する。キャビティ58の内部に充填された樹脂71bは、後述のように、二次成形樹脂であるレンズ樹脂76(透光性を有するレンズ成形樹脂)を成形する際にせき止めるダム部としての機能を有する。抜き孔16に充填された樹脂71cは、ダイパッド12とリード13を確実に絶縁する機能を有する。複数の凸部51は、リードフレーム10のパッド部14をクランプするクランプ面(LEDチップ実装領域18)となる。
【0023】
上金型50には、カル55及びランナ54が形成されており、ランナ54は上金型50に形成されたゲート56に連通している。上金型50は、樹脂封止時において、パッド部14(ダイパッド12及びリード13)と凸部51とが重なるようにリードフレーム10を上面側(一方側)から押さえ付ける。一方、下金型60は、樹脂封止時において、リードフレーム10を下面側(他方側)から押さえ付ける。このように本実施例の金型は、上金型50と下金型60とを主体として構成されている。樹脂封止時(樹脂モールド時)には、上金型50と下金型60とでリードフレーム10をクランプし(挟み)、キャビティ57、58、及び、抜き孔16の内部に一次成形樹脂としての樹脂71(71a、71b、71c)を充填する。
【0024】
70は、熱硬化性樹脂等をタブレット(円柱)状に成形した樹脂タブレットである。樹脂封止時には、図2(a)に示されるように、下金型60のポット63を予熱し、その中に樹脂タブレット70を投入して溶融させる。そして、トランスファ機構(不図示)によってポット63に沿って上下に摺動可能に構成されたプランジャ64を上動させて溶融した樹脂71を圧送することにより、図2(b)に示されるように、上金型50と下金型60との空間が樹脂71で充填される。なお、樹脂タブレット70に代えて液状の熱硬化性樹脂をディスペンサ(不図示)で供給することもできる。また、粒状、顆粒状やゲル状の樹脂を用いることもできる。
【0025】
プランジャ64によって樹脂71が圧送されることにより、溶融した樹脂71は、カル55、ランナ54、及び、ゲート56を介して、抜き孔16、及び、キャビティ57、58へ供給される。すなわち樹脂71は、ゲート56に近い抜き孔16及びキャビティ57、58から、ゲート56から離れた(遠い)抜き孔16及びキャビティ57、58に向けて順次供給されていく。このようにして、樹脂タブレット70が溶融して樹脂71となり、上金型50と下金型60で形成された空間に注入される。この結果、図2(b)に示されるように、上金型50と下金型60の間の空間(具体的には、キャビティ57、58、抜き孔16、及び、スルーゲート52)は、樹脂71(樹脂71a、71b、71c、71d)により充填される。
【0026】
樹脂71の充填後、樹脂71を硬化させるために所定時間だけ待機し、上金型50及び下金型60の型閉状態を開放する。そして、樹脂モールドされたLEDパッケージ用基板が搬出された後に金型のパーティング面等をクリーニングし、1回の樹脂モールド工程が終了する。上記工程を経ると、図3に示されるように、本実施例のLEDパッケージ用基板が形成される。
【0027】
図3は、本実施例における一次成形後のLEDパッケージ用基板の構成図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)中のB−B面で切断した断面図である。
【0028】
一次成形樹脂としての樹脂71(白樹脂)は、例えば酸化チタンやアルミナ等の白色粉末及びシリカなどを含有したシリコーン樹脂やエポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂である。前述のように、樹脂71は、トランスファ成形により樹脂を流し込んで硬化させることにより、リードフレーム10上に一体的に上パッケージが形成される。このように、本実施例におけるLEDパッケージ用基板は、樹脂71で一括して成形されたマップタイプのLEDパッケージ用基板である。
【0029】
リードフレーム10に対してトランスファ成形された樹脂71(一次成形樹脂)のうち、上金型50のキャビティ57で形成された樹脂71a(LEDチップ実装領域18の周囲を取り囲むようにリードフレーム10の表面上に形成された樹脂71a)は、後述のLEDチップから発せられた光を上方に反射させるリフレクタとして機能を有する。また樹脂71aは、LEDパッケージの強度を向上させるという機能も有する。ただし樹脂71は、上金型50の凸部51によってクランプされることで複数の領域において後述のLEDチップが搭載されることになる、リードフレーム10上の所定の領域(LEDチップ実装領域18)には形成されない。LEDチップ実装領域18は、一次成形後において、リードフレーム10の表面が露出した領域である。また、樹脂71をトランスファ成形することにより、パッド部14を形成する抜き孔16が樹脂71cで一括封止される。
【0030】
また本実施例では、樹脂71をトランスファ成形することにより、リードフレーム10の表面上の端部に、リフレクタ(樹脂71a)及びLEDチップ実装領域18を取り囲むようにダム部(樹脂71b)が形成されている。ダム部は、後述のように、二次成形樹脂であるレンズ樹脂76を供給(成形)する際にせき止めるダム部としての機能を有する。後述のように、レンズ樹脂76は、ダム部の内側に液状樹脂を供給し、金型を用いて圧縮成形を行うことによりレンズ部76aを形成する。ダム部が設けられていることにより、液状樹脂をダム部の内側に止めることが可能である。このため、ダム部(樹脂71b)は、リフレクタ(樹脂71a)またはLEDチップ実装領域18を取り囲むように成形されていることが好ましい。更に好ましくは、ダム部(樹脂71b)は、リフレクタ(樹脂71a)よりも高く形成されている。
【0031】
本実施例において、ダム部(樹脂71b)には図3(a)に示されるように縮径部72が設けられている。図3(a)において、樹脂71の成形時には左側(ゲート側)から右側(エアベント側)に向けて樹脂71は流れる。このとき樹脂71は、リフレクタを成形するキャビティ57とダム部を成形するキャビティ58とに分かれる。この際、キャビティ58のほうが深く形成されているため樹脂71は流れやすく、金型のキャビティ58の内部を流れた樹脂71の一部が、金型のキャビティ57の内部に逆流すなわち右側(エアベント側)から左側(ランナ側)に流れる可能性がある。樹脂の逆流現象が生じると、樹脂71a(キャビティ57)の内部にエアが留まりボイドが発生しやすい。本実施例では、このような現象を防止するため、ダム部の所定領域において流動抵抗を大きくするために幅方向に細くなる縮径部72を形成することができる。なお本実施例では、ダム部を構成する四辺のうち、図3(a)中の上辺及び下辺の中央部に縮径部72が設けられているが、これに限定されるものではなく、他の領域に設けてもよい。
【0032】
図3(a)に示されるように、本実施例では、リードフレーム10における全てのLEDチップ実装領域18のリフレクタを一体的に樹脂71aで形成したマップタイプのLEDパッケージ用基板が製造される。ただし、本実施例はこれに限定されるものではなく、マトリックスタイプのLEDパッケージ用基板にも適用可能である。
【0033】
次に、一次成形後のLEDパッケージ用基板に半導体チップ(ICチップ)を実装する工程、及び、二次成形樹脂を供給する工程について説明する。図4は、一次成形後のLEDパッケージ用基板の断面図であり、図4(a)はチップ実装後のレンズ樹脂を供給する前の状態、図4(b)はレンズ樹脂を供給した後の状態をそれぞれ示している。
【0034】
図4(a)に示されるように、一次成形後のリードフレーム10の上には、LEDチップ実装領域18において、LEDチップ40(半導体チップ)が実装される。LEDチップ40は、LEDチップ実装領域18内のダイパッド12上に実装される。LEDチップ40は、アノード電極及びカソード電極 の一対の電極を備え、これらの電極の間に順バイアスの所定電圧を印加することにより光を放出する素子である。LEDチップ40は、ダイパッド12(第1の電極)上に搭載され、金ワイヤなどのボンディングワイヤ42を用いてリード13(第2の電極)に電気的に接続される。
【0035】
またLEDチップ40として、フリップチップタイプのチップを用いてもよい。この場合、LEDチップは、樹脂71cで充填された抜き孔16を跨ぐように配置され、LEDチップの下面に形成された2つの電極をダイパッド12及びリード13のそれぞれにボンディングして実装される。このため、ボンディングワイヤ42は不要となる。
【0036】
リードフレーム10上にLEDチップ40を実装した後、図4(b)に示されるように、後述する二次成形樹脂の成形用のモールド金型に搬入する前に、二次成形樹脂としてのレンズ樹脂76(液状樹脂)をLEDパッケージ用基板のダム部(樹脂71b)で囲まれる内部領域(ダム部の内側)に供給(ディスペンス)する。
【0037】
レンズ樹脂76としては、透光性を有するシリコーン樹脂が用いられる。シリコーン樹脂は、LEDチップ40の発光波長が青色光等の短波長である場合や、LEDチップが高輝度LEDであり多量の熱を発生する場合に、その光や熱による変色や劣化に対する耐久性に優れている。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の透光性を有する熱硬化性樹脂を用いてもよい。これらの樹脂に、フィラー、蛍光材、内部離型剤などの各種添加物を添加して用いることができる。
【0038】
レンズ樹脂76は、LEDチップ40を覆い、かつ、後述の圧縮成形によりLEDパッケージのレンズ部を構成する。本実施例のLEDパッケージ用基板にはダム部が設けられているため、粘度が低い樹脂でも必要十分な量を供給することができる。
【0039】
次に、図5を参照して、本実施例におけるLEDパッケージ用基板を二次成形樹脂(レンズ樹脂76)で樹脂封止する際に用いられる金型について説明する。図5は、本実施例における二次成形(圧縮成形)に用いられる金型の概略断面図であり、金型でLEDパッケージ用基板をクランプした状態を示す。図5(a)は、圧縮成形前の状態であり、図5(b)は、圧縮成形後の状態である。
【0040】
図5(a)、(b)に示されるように、本実施例において、二次成形時(圧縮成形時)に用いられる金型は、上金型80(一方金型)と下金型90(他方金型)を備えて構成されている。上金型80は、キャビティ駒81を備えている。キャビティ駒81には、LEDパッケージのレンズ部を成形するための半球状の凹部82がパッド部14と同じ間隔で設けられている。このような構成により、上金型80は、二次成形樹脂としてのレンズ樹脂76の形状を決定する。
【0041】
上金型80と下金型90は、Oリング93を介して接触することで、この内部空間の減圧が可能である。上金型80は、LEDパッケージ用基板を上面側(一方面側)から押さえ付ける。また下金型90は、LEDパッケージ用基板を下面側(他方面側)から押さえ付ける。二次成形時(圧縮成形時)においては、上金型80はリリースフィルム95を介してLEDパッケージ用基板をクランプする。また下金型90には真空経路96が設けられている。クランプ時には上金型80の凹部82にてボイドが発生しやすい。そこで本実施例の金型は、このようなボイドの発生を防止するため、真空経路96を介して真空引きを行うことができるように構成されている。
【0042】
また本実施例において、リリースフィルム95とダム部(樹脂71b)の側面とで構成される領域98が形成される。圧縮成形時において、レンズ樹脂76はダム部の存在によりダム部の外側に漏れる(オーバーフローする)ことが防止される。ただし、樹脂製のダム部をクランプすることになるため、破損の防止のため必ずしも領域98への漏れを防止する必要はない。この領域98の外側において、リードフレーム10は上金型80と下金型90とでクランプされている。これにより、このようなオーバーフローが生じた場合でも、漏れ出したレンズ樹脂76は領域98の内部に溜まることにより、漏れ出した樹脂の影響を防止することができる。
【0043】
このように本実施例の二次成形樹脂の成形用の金型は、上金型80と下金型90とを主体として構成されている。樹脂封止時(圧縮成形時)には、上金型80と下金型90とでLEDパッケージ用基板をクランプし(挟み)、二次成形樹脂としてのレンズ樹脂76を圧縮成形により形成する。
【0044】
図6は、本実施例における二次成形後(レンズ樹脂76の圧縮成形後)のLEDパッケージ用基板の断面図である。図5に示される金型を用いてレンズ樹脂76を圧縮成形することにより、LEDチップ40はレンズ樹脂76で封止され、LEDパッケージのレンズ部76aが形成される。
【0045】
本実施例によれば、圧縮成形により低コストでレンズ部を成形可能なLEDパッケージ用基板及びその製造方法を提供することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、図7を参照して、本発明の実施例2におけるLEDパッケージ用基板について説明する。図7は、本実施例における一次成形後のLEDパッケージ用基板の構成図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)中のB−B面で切断した断面図をそれぞれ示している。
【0047】
本実施例のLEDパッケージ用基板は、リフレクタ用の樹脂を取り囲むダム部がリフレクタ用の樹脂と分離せずに一体化している点で、実施例1のLEDパッケージ用基板と異なる。本実施例の構成でも、リフレクタ用の樹脂を成形する際にダム部を成形することができる。また、金型を用いずにレンズ樹脂(液状樹脂)をLEDパッケージ用基板に供給することができるため、圧縮成形により低コストでレンズ部を成形可能なLEDパッケージ用基板およびその製造方法を提供することが可能である。
【0048】
また本実施例は図7に示される構成に限定されるものではなく、例えば図8(a)、(b)に示されるように構成することもできる。図8は、本実施例におけるLEDパッケージ用基板の変形例であり、図8(a)はリフレクタ用の樹脂が設けられていない場合の断面図、図8(b)はLEDパッケージ用基板の裏面に突起部が設けられている場合の断面図をそれぞれ示す。
【0049】
図8(a)に示されるように、LEDパッケージ用基板にリフレクタ用の樹脂が成形されない場合でも、リードフレーム10の端部(周辺部)にダム部(樹脂71f)を成形することができる。この場合、ダム部(樹脂71f)は、図示しないスルーゲートを介してリードフレーム10の抜き孔16に充填される樹脂71bとともに成形される。この場合、同図に破線で示されるようなレンズ部をリードフレーム10上に直接成形することにより、薄型のLEDパッケージを成形することができる。
【0050】
また図8(b)に示されるように、LEDパッケージ用基板の裏面(LEDチップ実装領域18とは反対側の面)に突起部(樹脂71g)を成形することができる。このような突起部(樹脂71g)をLEDパッケージ用基板の裏面(例えば、ダム部を形成する樹脂71bと対向する位置)に成形することで、LEDパッケージ用基板の反りを防止し、また、複数のLEDパッケージ用基板を重ね合わせ(スタック)を容易にすることが可能となる。突起部(樹脂71g)は、樹脂71a、71b、71cとともに成形される。なお、突起部は、円環状に限定されるものではなく、点状(ドット状)や矩形環状でもよい。
【0051】
上記各実施例によれば、低コストで製造可能なLEDパッケージ用基板およびLEDパッケージ用基板の製造方法を提供することができる。
【0052】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【0053】
例えば、一次成形樹脂の金型において各キャビティを形成した下型を用いてリードフレーム10の下面にリフレクタとダム部を成形することもできる。
【0054】
本実施例は圧縮成形を用いて二次成形を行う構成例について説明したが、これに限定されるものではない。樹脂71で成形された部位を包含可能な形状(例えば図5(b)に示されるような凹部形状)のキャビティが形成されたトランスファ成形金型を用いて、トランスファ成形により二次成形を行ってもよい。このとき、レンズ樹脂の一部をダム部の内部に予め供給し、ポットにレンズ樹脂の他の一部を供給してトランスファ成形を行うことが好ましい。この方法によれば、ダム部の内部にレンズ樹脂76を予め供給することができるため、ポットにはキャビティ内への加圧のための少量の樹脂を供給するだけでよい。このため、ポット数やポットの大きさなどを削減することができ、カルやランナ等における廃棄する樹脂の量を削減することができる。また、レンズの成形に要するレンズ樹脂の大半(例えば9割)をダム部の内部に予め供給して金型に搬入し、残り(この場合1割)を加圧用としてポットに供給しトランスファ成形することもできる。これによりポットへの供給量を減らすことで一括成形するサイズの大型化も容易となる。なお、この際にはキャビティ駒81のような可動部を無くしリリースフィルムを不要とすることもでき、金型構造を簡素化してランニングコストを削減することもできる。
【0055】
また、図3(a)、(b)において破線で示されるように、ダム部の上面にダム部に囲まれた領域の内外を連通する凹部99を成形するようにしてもよい。この場合、凹部99の下面は供給したレンズ樹脂76の液面よりも高くなるように形成する。これによれば、圧縮成形金型によって二次成形樹脂を成形するときには、凹部99を介してレンズ樹脂76及びエアをダム部の外に排出するスルーゲートとして機能させることができる。この場合、樹脂量を調整しエアを排出することができる。また、トランスファ成形金型によって二次成形樹脂を成形するときには、ゲート側では凹部99を介してレンズ樹脂76をダム部の内部に注入するゲート(スルーゲート)として機能する。これにより、例えば図3(a)に示されるようにスルーゲート52と同じ配置となるような間隔(凸部51と同じ間隔)で配置することで、ダム部内での樹脂流れを均一にすることができ、エアトラップなどを防止して高品質な成形が可能となる。また、エアベント側では凹部99を介してエアとレンズ樹脂76をダム部の外に排出するスルーゲートとして機能する。
【0056】
また、レンズ樹脂76としては、液状樹脂のほかにもパウダー状等の顆粒樹脂を用いることができる。例えば、顆粒樹脂では静止状態では安息角によって決定される形状に積み上げて基板上に供給することもできるが、搬送時の振動や衝撃などにより形状が崩れて金型クランプ面へ飛び出してしまうことが考えられる。これに対して、顆粒樹脂であってもダム部により外部への飛び出しをせき止めることができるため、成形装置内の汚染を防止し安定して成形することができ、搬送の速度を上げて生産性を向上することもできる。
【0057】
なお、上述の方法と同様の方法により、LEDパッケージ以外のパッケージ用基板を、リードフレームを用いて成形することもできる。この場合、例えば一次成形樹脂により図8(a)に示されるようにリードフレームの隙間を埋めることで絶縁すると共に強度を向上させることができる。次いで、LED以外のチップ(例えば受光素子などの光学系のチップ等)を実装した後に二次成形樹脂をダム部内に供給し圧縮成形またはトランスファ成形によりチップを封止することができる。これにより、LEDパッケージ以外のパッケージであっても上述した実施例と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 リードフレーム
12 ダイパッド
13 リード
14 パッド部
16 抜き孔
18 LEDチップ実装領域
40 LEDチップ
50、80 上金型
60、90 下金型
71 樹脂
76 レンズ樹脂
93 Oリング
95 リリースフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDパッケージを製造するために用いられるLEDパッケージ用基板であって、
LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームと、
トランスファ成形により前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填され、かつ、前記リードフレームの表面上の端部に環状のダム部を成形する樹脂と、を有することを特徴とするLEDパッケージ用基板。
【請求項2】
前記樹脂は、前記LEDチップを取り囲むように前記リードフレームの表面上にリフレクタを成形し、
前記ダム部は、前記リフレクタを取り囲むように該リフレクタよりも高く成形されていることを特徴とする請求項1に記載のLEDパッケージ用基板。
【請求項3】
前記ダム部は、該ダム部の内外を連通する凹部を有することを特徴とする請求項1に記載のLEDパッケージ用基板。
【請求項4】
LEDチップと、
前記LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームと、
トランスファ成形により前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填され、かつ、前記リードフレームの表面上の端部に環状のダム部を成形する樹脂と、
前記LEDチップを封止したレンズ樹脂と、を有することを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項5】
前記レンズ樹脂は、前記ダム部の内側に液状樹脂を供給し、金型を用いて圧縮成形を行うことによりレンズ部を形成することを特徴とする請求項4に記載のLEDパッケージ。
【請求項6】
LEDパッケージを製造するために用いられるLEDパッケージ用基板の製造方法であって、
LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えるようにリードフレームを加工するステップと、
トランスファ成形により樹脂を前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填し、かつ、該樹脂を用いて前記リードフレームの表面上の端部にダム部を成形するステップと、を有することを特徴とするLEDパッケージ用基板の製造方法。
【請求項7】
LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えるようにリードフレームを加工するステップと、
トランスファ成形により樹脂を前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填し、かつ、該樹脂を用いて前記リードフレームの表面上の端部にダム部を成形するステップと、
前記LEDチップを実装するステップと、
圧縮成形によりレンズ樹脂を前記ダム部の内部に供給して前記LEDチップを封止するステップと、を有することを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項8】
LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、および、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えるようにリードフレームを加工するステップと、
トランスファ成形により樹脂を前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填し、かつ、該樹脂を用いて前記リードフレームの表面上の端部にダム部を成形するステップと、
前記LEDチップを実装するステップと、
トランスファ成形によりレンズ樹脂を前記ダム部の内部に供給して前記LEDチップを封止するステップと、を有することを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項9】
前記レンズ樹脂の一部を前記ダム部の内部に予め供給し、ポットに該レンズ樹脂の他の一部を供給して前記トランスファ成形を行うことにより、前記LEDチップを封止することを特徴とする請求項8に記載のLEDパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84863(P2013−84863A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225354(P2011−225354)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】