説明

PARP阻害剤

式(I)[式中、R2、R3、R4およびR5は独立して、H、C1-7アルコキシ、アミノ、ハロまたはヒドロキシからなる群より選択され;nは1または2であり;RN1およびRN2は独立してHおよびRから選択され、そこにおいて、Rは場合により置換されたC1-10アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールであり;またはRN1およびRN2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、場合により置換された5〜7員含窒素複素環を形成し;Hetは、(i) [式中、Y1およびY3は独立してCHおよびNから選択され、Y2はCXおよびNから選択され、XはH、ClまたはFである];および(ii) [式中、QはOまたはSである]から選択される]の化合物、ならびにその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形、およびプロドラッグを提供する。特に、本発明は、ポリ(ADP-リボース)シンターゼおよびポリADP-リボシルトランスフェラーゼとしても知られ、一般にPARPと呼ばれる酵素、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの活性を阻害するためにこれらの化合物を使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクシンイミド誘導体、およびそれらの医薬品としての使用に関する。特に、本発明は、ポリ(ADP-リボース)シンターゼおよびポリADP-リボシルトランスフェラーゼとしても知られ、一般的にPARPと呼ばれる酵素、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの活性を阻害するためにこれらの化合物を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類酵素PARP (113-kDaマルチドメインタンパク質)は、DNA一本鎖または二本鎖の切断を認識して迅速に結合するその能力により、DNA損傷のシグナル伝達に関与している(D’Amoursら、Biochem. J., 342, 249-268 (1999))。
【0003】
いくつかの観察により、PARPが、遺伝子増幅、細胞分裂、分化、アポトーシス、DNA塩基除去修復ならびにテロメアの長さおよび染色体の安定性に対する効果を含む種々のDNAに関連する機能に関与しているという結論に至った(d’Adda di Fagagnaら、Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。
【0004】
PARPがDNA修復および他のプロセスをモジュレートするメカニズムに関する研究により、細胞核内でのポリ(ADP-リボース)鎖の形成におけるその重要性が明らかになった(Althaus, F.R.およびRichter, C., 「タンパク質のADP-リボシル化:酵素学および生物学的意義」(ADP-Ribosylation of Proteins: Enzymology and Biological Significance)、Springer-Verlag, Berlin (1987))。DNAに結合した、活性化されたPARPは、トポイソメラーゼ、ヒストンおよびPARPそのものを含むさまざまな核標的タンパク質上にポリ(ADP-リボース)を合成するためにNADを利用する(Rhunら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 245, 1-10 (1998))。
【0005】
ポリ(ADP-リボシル)化は、悪性形質転換にも関与している。たとえば、PARP活性は、単離されたSV40-形質転換線維芽細胞の核においてより高い一方で、白血病細胞および結腸癌細胞の両方が、同等の正常な白血球細胞および結腸粘膜よりも高い酵素活性を示す (Miwaら、Arch. Biochem. Biophys., 181, 313-321 (1977); Burzioら、Proc. Soc. Exp. Bioi. Med., 149, 933-938 (1975);およびHiraiら、Cancer Res., 43, 3441-3446 (1983))。
【0006】
PARPの多くの低分子量阻害剤が、DNA修復におけるポリ(ADP-リボシル)化の機能的役割を解明するために使用された。アルキル化剤により処理された細胞において、PARPの阻害はDNA鎖の切断および細胞殺滅の著しい増加につながる(Durkaczら、Nature, 283, 593-596 (1980); Berger, N.A., Radiation Research, 101, 4-14 (1985))。
【0007】
それに続いて、前記阻害剤が、潜在的致死損傷修復を抑制することにより放射線反応の効果を増大することが示された(Ben-Hurら、British Journal of Cancer, 49 (Suppl. VI), 34-42 (1984); Schlickerら、Int. J. Radiat. Bioi., 75, 91-100 (1999))。PARP阻害剤は放射線増感低酸素腫瘍細胞において有効であることが報告されている(US 5,032,617; US 5,215,738およびUS 5,041,653)。
【0008】
さらに、PARPノックアウト(PARP -/-)動物は、アルキル化剤およびγ線照射に反応してゲノムの不安定性を示す(Wangら、Genes Dev., 9, 509-520 (1995); Menissier de Murciaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 7303-7307 (1997))。
【0009】
ある種の血管系の疾病、敗血症性ショック、虚血性障害および神経毒性においてもPARPの役割が証明されている(Cantoniら、Biochim. Biophys. Acta, 1014, 1-7 (1989); Szaboら、J. Clin. Invest., 100, 723-735 (1997))。酸素ラジカルによるDNA損傷はDNAにおける鎖の切断をもたらし、続いてPARPにより認識されるが、これはPARP阻害剤の研究により示されたように、前記の疾病状態の主要な寄与因子である(Cosiら、J. Neurosci. Res., 39, 38-46 (1994); Saidら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93, 4688-4692 (1996))。より最近では、PARPは出血性ショックの発症に役割を果たしていることが証明された(Liaudetら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97(3), 10203-10208 (2000))。
【0010】
哺乳類細胞の効率的なレトロウイルス感染がPARP活性の阻害により遮断されることも証明されている。このような組み替えレトロウイルスベクター感染の阻害はさまざまな細胞型において起こることが示された(Gakenら、J. Virology, 70(6), 3992-4000 (1996))。そこで、PARPの阻害剤は抗ウイルス治療および癌治療において使用できることが見出された(WO 91/18591)。
【0011】
さらに、PARP阻害はヒト線維芽細胞における老化特性の開始を遅らせると推測されている(RattanおよびClark, Biochem. Biophys. Res. Comm., 201(2), 665-672 (1994))。これは、PARPがテロメア機能の制御において果たす役割に関連していると思われる(d'Adda di Fagagnaら、Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。
【0012】
また、PARP阻害剤は炎症性腸疾患(Szabo C., 「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ活性化のショックおよび炎症の発症における役割、治療ターゲットとしてのPARP」(Role of Poly(ADP-Ribose) Polymerase Activation in the Pathogenesis of Shock and Inflammation, In PARP as a Therapeutic Target); J. Zhang編、2002, CRC Press; 169-204)、潰瘍性大腸炎(Zingarelli, Bら、Immunology, 113(4), 509-517 (2004))およびクローン病(Jijon, H.B.ら、Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 279, G641-G651 (2000))の治療に関与すると考えられている。
【0013】
発明者らの一部は、先にPARP阻害剤として作用するある種の1(2H)-フタラジノン化合物について報告した(WO 02/36576)。前記化合物は一般式:
【化1】

【0014】
[式中、AおよびBは一緒になって、場合により置換された縮合芳香環を表し、Rcは-L-RLにより表される]
を有する。多くの例は、式:
【化2】

【0015】
[式中、Rは1個以上の場合による置換基を表す]
の通りである。
【発明の開示】
【0016】
今回、発明者らは、PARPの活性を阻害する別のクラスの化合物を見出した。
【0017】
したがって、本発明の第1の態様は、式(I):
【化3】

【0018】
[式中、
R2、R3、R4およびR5は独立して、H、C1-7アルコキシ、アミノ、ハロまたはヒドロキシからなる群より選択され;
nは1または2であり;
RN1およびRN2は独立してHおよびRから選択され、そこにおいて、Rは場合により置換されたC1-10アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールであり;
またはRN1およびRN2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、場合により置換された5〜7員含窒素複素環を形成し;
Hetは、
(i)
【化4】

【0019】
[式中、Y1およびY3は独立してCHおよびNから選択され、Y2はCXおよびNから選択され、XはH、ClまたはFである]
および
(ii)
【化5】

【0020】
[式中、QはOまたはSである]
から選択される]
の化合物、ならびにその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形、およびプロドラッグを提供する。
【0021】
可能なHetは、下記の表に挙げる通りである。
【表1】

【0022】

【0023】
本発明の第2の態様は、第1の態様の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0024】
本発明の第3の態様は、ヒトまたは動物の体を治療する方法に使用するための第1の態様の化合物を提供する。
【0025】
本発明の第4の態様は、
(a) PARP (PARP-1および/またはPARP-2)の活性の阻害;
(b) 以下の治療:血管系の疾病;敗血症性ショック;脳および心血管の両方における虚血性障害;脳および心血管の両方における再灌流障害;発作およびパーキンソン病の急性期および慢性期治療を含む神経毒性;出血性ショック;関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性疾患;多発性硬化症;糖尿病の副次的作用;ならびに心血管系手術後の細胞毒性(cytoxicity)の急性期治療またはPARPの活性の阻害により改善される疾病;
(c) 癌治療の補助剤としての、または電離放射線または化学療法薬による治療の腫瘍細胞に対する効果を増強するための使用
のための医薬品の調製における本発明の第1の態様において定義した化合物の使用を提供する。
【0026】
特に、本発明の第1の態様において定義した化合物は、メチルメタンスルホネート(MMS)、テモゾロミド(temozolomide)およびダカルバジン(dacarbazine)(DTIC)などのアルキル化剤、ならびにトポテカン(Topotecan)、イリノテカン(Irinotecan)、ルビテカン(Rubitecan)、エキサテカン(Exatecan)、ルルトテカン(Lurtotecan)、ギメテカン(Gimetecan)、ジフロモテカン(Diflomotecan)(ホモカンプトテシン(homocamptothecins))のようなトポイソメラーゼ-1阻害剤;ならびに7-置換非シラテカン;7-シリルカンプトテシン、BNP 1350;およびインドロカルバゾールなどの非カンプトテシントポイソメラーゼ-1阻害剤およびベンゾフェナジン、XR 11576/MLN 576およびベンゾピリドインドールのような二重トポイソメラーゼ-IおよびII阻害剤と共に抗癌併用療法に(または補助剤として)使用することができる。このような組合せは、個々の薬物に対する好ましい投与方法に応じて、たとえば、静脈内用製剤として、または経口投与により与えられる。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、癌治療の補助剤として、または電離放射線または化学療法薬による治療の腫瘍細胞に対する効果を増強するために使用する医薬品の調製における本発明の第1の態様において定義した化合物の使用を提供する。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、治療を必要とする被験体に治療上有効な量の第1の態様において定義した化合物を、好ましくは医薬組成物の形で投与することを含む、PARPの阻害により改善される疾病の治療、および治療を必要とする被験体に治療上有効な量の第1の態様において定義した化合物を、好ましくは医薬組成物の形で、電離放射線または化学療法薬と組み合わせて、同時にまたは順次、投与することを含む癌の治療を提供する。
【0029】
本発明の別の態様において、化合物は、相同的組み替え(HR)依存DNA二本鎖切断(DSB)修復活性が欠損した癌の治療のための医薬品の調製に、または患者に治療上有効な量の前記化合物を投与することを含むHR依存DNA DSB修復活性が欠損した癌の患者の治療に使用することができる。
【0030】
HR依存DNA DSB修復経路は、相同メカニズムによりDNAにおける二本鎖切断(DSB)を修復して、連続的なDNAらせんを再形成する(K.K. KhannaおよびS.P. Jackson, Nat. Genet. 27(3): 247-254 (2001))。HR依存DNA DSB修復経路の構成要素には、ATM (NM_000051)、RAD51 (NM_002875)、RAD51L1 (NM_002877)、RAD51C (NM_002876)、RAD51L3 (NM_002878)、DMC1 (NM_007068)、XRCC2 (NM_005431)、XRCC3 (NM_005432)、RAD52 (NM_002879)、RAD54L (NM_003579)、RAD54B (NM_012415)、BRCA1 (NM_007295)、BRCA2 (NM_000059)、RAD50 (NM_005732)、MRE11A (NM_005590)およびNBS1 (NM_002485)が含まれるが、これらに限定されない。HR依存DNA DSB修復経路に関与する他のタンパク質には、EMSYなどの調節因子が含まれる(Hughes-Daviesら、Cell, 115, pp523-535)。HR構成要素は、Woodら、Science, 291, 1284-1289 (2001)にも記載されている。
【0031】
HR依存DNA DSB修復が欠損した癌は、正常な細胞と比較して、その経路によってDNA DSBを修復する能力が低下または廃絶した1個以上の癌細胞を含む、または前記癌細胞からなる。すなわち、1個以上の癌細胞においてHR依存DNA DSB修復経路の活性が低下または廃絶している。
【0032】
HR依存DNA DSB修復が欠損した癌を有する個体の1つ以上の癌細胞においては、HR依存DNA DSB修復経路の1つ以上の構成要素の活性が廃絶している可能性がある。HR依存DNA DSB修復経路の構成要素は当業界において十分に解析されており(たとえば、Woodら、Science, 291, 1284-1289 (2001)を参照されたい)、上に上げた構成要素を含む。
【0033】
ある好ましい実施形態において、癌細胞はBRCA1および/またはBRCA2欠損表現型を有する。すなわち、前記癌細胞において、BRCA1および/またはBRCA2活性が低下または廃絶している。この表現型を有する癌細胞は、BRCA1および/またはBRCA2が欠損しており、すなわち、前記癌細胞において、たとえばコードする核酸における突然変異または多形性により、または調節因子をコードする遺伝子、たとえばBRCA2調節因子をコードするEMSY遺伝子における増幅、突然変異または多形性により(Hughes-Daviesら、Cell, 115, 523-535)、または遺伝子プロモーターのメチル化などの後成的メカニズムにより、BRCA1および/またはBRCA2の発現および/または活性が低下または廃絶している。
【0034】
BRCA1およびBRCA2は、腫瘍サプレッサーとして知られており、その野生型対立遺伝子は異型接合保因者の腫瘍においてしばしば失われている(Jasin M., Oncogene, 21(58), 8981-93 (2002); Tuttら、Trends Mol Med., 8(12), 571-6, (2002))。BRCA1および/またはBRCA2突然変異と乳癌との関連は当業界においてよく解析されている(Radice, P.J., Exp Clin Cancer Res., 21(3 Suppl), 9-12 (2002))。BRCA2結合因子をコードするEMSY遺伝子の増幅が乳癌および卵巣癌に関連していることも知られている。
【0035】
また、BRCA1および/またはBRCA2における突然変異の保因者は、卵巣、前立腺および膵臓癌のリスクが高い。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、個体は、BRCA1および/またはBRCA2またはそれらの調節因子における、突然変異および多形性などの1種以上の変異に対して異型接合性である。BRCA1およびBRCA2における変異の検出は当業者に公知であり、たとえば、EP 699 754, EP 705 903, Neuhausen, S.L.およびOstrander, E.A., Genet. Test, 1, 75-83 (1992); Janatova M.ら、Neoplasma, 50(4), 246-50 (2003)に記載されている。BRCA2結合因子EMSYの増幅の測定は、Hughes-Daviesら、Cell, 115, 523-535)に記載されている。
【0037】
癌に関連する突然変異および多形性は、変異型核酸配列の存在を検出することにより核酸レベルで、または変異型(すなわち、突然変異または対立遺伝子多形)ポリペプチドの存在を検出することによりタンパク質レベルで検出することができる。
【0038】
上記は、どちらも2004年11月30日に出願され、「癌の治療のためのDNA損傷修復阻害剤」(DNA damage repair inhibitors for the treatment of cancer)という名称の同時係属出願PCT/GB2004/005025および米国特許出願に記載されており、前記特許出願を参照により本明細書に組み入れる。
【0039】
定義
5〜7員含窒素複素環:この環は少なくとも1個の窒素原子を必ず含有し、また、別のヘテロ原子、すなわちO、S、Nを含有してもよい。
【0040】
5〜7員含窒素複素環の例を下に記す。そこにおいて、Cnは環原子の数がnであることを示す。
【0041】
N1:ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(たとえば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソキサゾール(C5)、ジヒドロイソキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0042】
アルキル:本明細書において使用する、「アルキル」という用語は、脂肪族または脂環式であり、飽和または不飽和(たとえば、部分的不飽和、完全な不飽和)である、(他に特定しない限り)1〜20個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の基を指す。そこで、「アルキル」という用語には、下で論じるアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル等のサブクラスが含まれる。
【0043】
アルキル基の文脈の中で、接頭辞(たとえば、C1-4、C1-7、C1-20、C2-7、C3-7等)は、炭素原子の数、または炭素原子の数の範囲を意味する。たとえば、本明細書において使用する「C1-4アルキル」という用語は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。アルキル基の群の例には、C1-4アルキル(「低級アルキル」)、C1-7アルキル、C1-10アルキルおよびC1-20アルキルが含まれる。最初の接頭辞は他の限定により変化する可能性がある点に留意されたい。たとえば、不飽和アルキル基の場合は最初の接頭辞は少なくとも2でなければならず、環式アルキル基の場合は最初の接頭辞は少なくとも3でなければならない等である。
【0044】
(無置換)飽和アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)、オクチル(C8)、ノニル(C9)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ドデシル(C12)、トリデシル(C13)、テトラデシル(C14)、ペンタデシル(C15)、およびエイコデシル(C20)が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
(無置換)飽和直鎖アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)、およびn-ヘプチル(C7)が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
(無置換)飽和分枝鎖アルキル基の例には、イソプロピル(C3)、イソブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソペンチル(C5)、およびネオペンチル(C5)が含まれる。
【0047】
アルケニル:本明細書において使用する「アルケニル」という用語は、1個以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基を指す。アルケニル基の群の例には、C2-4アルケニル、C2-7アルケニル、C2-20アルケニルが含まれる。
【0048】
(無置換)不飽和アルケニル基の例には、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)、およびヘキセニル(C6)が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
アルキニル:本明細書において使用する「アルキニル」という用語は、1個以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基を指す。アルキニル基の群の例には、C2-4アルキニル、C2-7アルキニル、C2-20アルキニルが含まれる。
【0050】
(無置換)不飽和アルキニル基の例には、エチニル(-C≡CH)および2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
シクロアルキル:本明細書において使用する「シクロアルキル」という用語は、環基でもあるアルキル基を指す。すなわち、炭素環式化合物の炭素環の脂環式環原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の基であって、前記の炭素環は飽和または不飽和(たとえば、部分的不飽和、完全な不飽和)であり、前記の基は、3〜20個の環原子を含む3〜20個の炭素原子(他に特定されない限り)を有する。そこで、「シクロアルキル」という用語には、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルのサブクラスが含まれる。好ましくは、それぞれの環は3〜7個の環原子を有する。シクロアルキル基の群の例には、C3-20シクロアルキル、C3-15シクロアルキル、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルが含まれる。
【0052】
シクロアルキル基の例には下記の化合物から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されない。すなわち、
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)、メチルシクロヘキサン(C7)、ジメチルシクロヘキサン(C8)、メンタン(C10);
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)、メチルシクロヘキセン(C7)、ジメチルシクロヘキセン(C8);
飽和多環式炭化水素化合物:
ツジャン(C10)、カラン(C10)、ピナン(C10)、ボルナン(C10)、ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)、アダマンタン(C10)、デカリン(デカヒドロナフタレン)(C10);
不飽和多環式炭化水素化合物:
カンフェン(C10)、リモネン(C10)、ピネン(C10);
芳香環を有する多環式炭化水素化合物:
インデン(C9)、インダン(たとえば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、アセアントレン(C16)、コラントレン(C20)。
【0053】
ヘテロシクリル:本明細書において使用する「ヘテロシクリル」という用語は、(他に特定されない限り)3〜20個の環原子を有し、そのうち1〜10個が環ヘテロ原子である複素環化合物の環原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の基を指す。好ましくは、それぞれの環は3〜7個の環原子を有し、そのうちの1〜4個が環ヘテロ原子である。
【0054】
この文脈において、接頭辞(たとえば、C3-20、C3-7、C5-6等)は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかにかかわらず環原子の数、または環原子の数の範囲を表す。たとえば、本明細書において使用する「C5-6ヘテロシクリル」という用語は、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基を指す。
【0055】
ヘテロシクリル基の群の例には、C3-20ヘテロシクリル、C5-20ヘテロシクリル、C3-15ヘテロシクリル、C5-15ヘテロシクリル、C3-12ヘテロシクリル、C5-12ヘテロシクリル、C3-10ヘテロシクリル、C5-10ヘテロシクリル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリル、およびC5-6ヘテロシクリルが含まれる。
【0056】
単環式ヘテロシクリル基の例には、次の化合物から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されない。すなわち、
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(たとえば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソキサゾール(C5)、ジヒドロイソキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);および
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0057】
置換(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基の例には、環状のサッカリド、たとえば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、およびキシロフラノースなどのフラノース(C5)、およびアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、およびタロピラノースなどのピラノース(C6)から誘導されるものが含まれる。
【0058】
スピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル:本明細書において使用する「スピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル」という用語は、両方の環に共通する1個の原子によりもう1つの環と結合しているC3-7シクロアルキルまたはC3-7ヘテロシクリル環を指す。
【0059】
C5-20アリール:本明細書において使用する「C5-20アリール」という用語は、1個の環または2個以上の環(たとえば縮合環)を有し、5〜20個の環原子を有し、またそこにおいて前記の環の少なくとも1個が芳香環であるC5-20芳香族化合物の芳香環原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の基を指す。好ましくは、それぞれの環は5〜7個の環原子を有する。
【0060】
前記環原子は、「カルボアリール基」における場合のようにすべて炭素原子であってよく、その場合には、前記の基を「C5-20カルボアリール基」のように呼ぶ。
【0061】
環ヘテロ原子を含まないC5-20アリール基(すなわち、C5-20カルボアリール基)の例には、ベンゼン(すなわちフェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、およびピレン(C16)から誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
あるいは、環原子は、「ヘテロアリール基」における場合のように、酸素、窒素、および硫黄を含むがこれらに限定されない1個以上のヘテロ原子を含んでもよい。この場合、前記の基を「C5-20ヘテロアリール基」のように呼び、そこにおいて、「C5-20」は炭素原子であるかヘテロ原子であるかにかかわらず環原子を意味する。好ましくは、それぞれの環は5〜7個の環原子を含み、そのうち0〜4個が環ヘテロ原子である。
【0063】
C5-20ヘテロアリール基の例には、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、テトラゾールおよびオキサトリアゾールから誘導されるC5ヘテロアリール基;およびイソキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2-ジアジン)、ピリミジン(1,3-ジアジン;たとえば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)およびトリアジンから誘導されるC6ヘテロアリール基が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
ヘテロアリール基は炭素またはヘテロ環原子を介して結合することができる。
【0065】
縮合環を含むC5-20ヘテロアリール基の例には、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドールから誘導されるC9ヘテロアリール基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジンから誘導されるC10ヘテロアリール基;アクリジンおよびキサンテンから誘導されるC14ヘテロアリール基が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
上記のアルキル、ヘテロシクリル、およびアリール基は、単独で、または別の置換基の一部として、それら自体が、場合によりそれら自体および下に挙げる別の置換基から選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
【0067】
ハロ:-F、-Cl、-Br、および-I。
【0068】
ヒドロキシ:-OH。
【0069】
エーテル:-OR [Rはエーテル置換基、たとえば、C1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ぶ)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも呼ぶ)であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。
【0070】
ニトロ:-NO2
【0071】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0072】
アシル(ケト):-C(=O)R [Rはアシル置換基、たとえば、H、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも呼ぶ)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも呼ぶ)であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシル基の例には、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)、および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
カルボキシ(カルボン酸):-COOH。
【0074】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR [Rはエステル置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。エステル基の例には、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、および-C(=O)OPhが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキシアミド):-(=O)NR1R2 [R1およびR2は独立して、アミノ基について定義する通りのアミノ置換基である]。アミド基の例には、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、および-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびにR1およびR2がそれらが結合する窒素原子と一緒になって、複素環構造を形成するアミド基、たとえばピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジニルカルボニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
アミノ:-NR1R2 [R1およびR2は独立して、アミノ置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジ-C1-7アルキルアミノとも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはHまたはC1-7アルキル基であり、あるいは、「環式」アミノ基の場合には、R1およびR2はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8個の環原子を有する複素環を形成する]。アミノ基の例には、-NH2、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、および-NHPhが含まれるが、これらに限定されない。環式アミノ基の例には、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ペルヒドロジアゼピニル、モルホリノ、およびチオモルホリノが含まれるが、これらに限定されない。環式アミノ基は、本明細書に定義されるいずれかの置換基、たとえばカルボキシ、カルボキシレートおよびアミドによりその環において置換されていてもよい。
【0077】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2 [R1はアミド置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはHまたはC1-7アルキル基、最も好ましくはHであり、R2はアシル置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシルアミド基の例には、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、および-NHC(=O)Phが含まれるが、これらに限定されない。R1およびR2は一緒になって、たとえばスクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジル:
【化6】

【0078】
のような環状構造を形成してもよい。
【0079】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3 [R2およびR3は独立して、アミノ基について定義された通りのアミノ置換基であり、R1はウレイド置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である]。ウレイド基の例には、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、-NMeCONEt2および-NHC(=O)NHPhが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R [Rはアシルオキシ置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシルオキシ基の例には、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、-OC(=O)C6H4F、および-OC(=O)CH2Phが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
チオール:-SH。
【0082】
チオエーテル(スルフィド):-SR [Rはチオエーテル置換基、たとえば、 C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。C1-7アルキルチオ基の例には、-SCH3および-SCH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
スルホキシド(スルフィニル):-S(=O)R [Rはスルホキシド置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホキシド基の例には、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
スルホニル(スルホン):-S(=O)2R [Rはスルホン置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホン基の例には、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3、-S(=O)2CH2CH3、および4-メチルフェニルスルホニル(トシル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2 [R1およびR2は独立して、アミノ基について定義された通りのアミノ置換基である]。アミド基の例には、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、および-C(=S)NHCH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R [R1はアミノ基について定義された通りのアミノ置換基であり、Rはスルホンアミノ置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホンアミノ基の例には、-NHS(=O)2CH3、-NHS(=O)2Phおよび-N(CH3)S(=O)2C6H5が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
上記の通り、上に挙げた置換基を形成する基、たとえば、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールは、それら自体が置換されていてもよい。したがって、上記の定義は置換された置換基を含む。
【0088】
別の好適な態様
本発明の各態様において、適用できる場合には、下記のものが好適である。
【0089】
R2、R3、R4およびR5は、好ましくは、H、C1-7アルコキシ、ClおよびFからなる群より選択される。R2、R3、R4およびR5のうちの1つがC1-7アルコキシである場合、それは好ましくはOMeである。
【0090】
R2、R3、R4およびR5は、より好ましくはHおよびFからなる群より選択される。
【0091】
R2、R4およびR5は最も好ましくはHである。R3は最も好ましくはHおよびFから選択される。
【0092】
ある実施形態において、nは好ましくは1である。別の実施形態において、nは好ましくは2である。
【0093】
Hetは好ましくは
【化7】

【0094】
である。
【0095】
2個以下のY1、Y2およびY3がNであることが好ましく、1または0個のY1、Y2およびY3がNであることがより好ましい。Y1、Y2およびY3のうちの1つがNである場合、これはY1またはY2のいずれかであることが好ましい。
【0096】
Xは好ましくはHおよびFから選択され、nが1である場合にはFがより好ましく、nが2である場合にはHがより好ましい。
【0097】
Hetが
【化8】

【0098】
である場合、Qは好ましくはSである。これらの基の中で、
【化9】

【0099】
が好ましい。
【0100】
RN1およびRN2がHおよびRから選択される場合、好ましくはRN1はHであり、RN2はRである。Rは好ましくは場合により置換されたC1-7アルキルまたはC3-20ヘテロシクリルであり、より好ましくは場合により置換されたC1-7アルキルである。C1-7アルキル基は好ましくは無置換であるか、1個の置換基により置換されており、置換されている場合、前記置換基は好ましくはC5-20複素環基(たとえば、ピペリジル、N-メチルピロリル、テトラヒドロフラニル)、C5-20アリール基(たとえば、フラニル、フェニル、ピリジル)、アミノ(たとえば、ジメチルアミノ)、ハロ(たとえば、Cl, F)、ヒドロキシ、エーテル(たとえば、C1-7アルコキシ)、チオエーテル(たとえば、C1-7アルキルチオ)から選択される。より好ましくは、前記1個の置換基は、C5-20複素環基(たとえば、ピペリジル、N-メチルピロリル、テトラヒドロフラニル)、C5-20アリール基(たとえば、フラニル、フェニル、ピリジル)、アミノ(たとえば、ジメチルアミノ)、およびエーテル(たとえば、C1-7アルコキシ)から選択される。
【0101】
RN1およびRN2が、それらが結合する窒素原子と一緒になって5〜7員含窒素複素環を形成する場合、それらは好ましくは式II:
【化10】

【0102】
[式中、RNは、
(i) -RII;
(ii) -C(=O)NHRII;
(iii) -C(=S)NHRII;
(iv) -S(=O)2RII; および
(v) -C(=O)RII
から選択され、そこにおいて、RIIは先に定義された通り(すなわち、場合により置換されたC1-10アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリール)である]
の基を形成する。
【0103】
好ましくは、RNは、
(i) -C(=O)NHRII;
(ii) -S(=O)2RII; および
(iii) -C(=O)RII
から選択され、そこにおいて、RIIは先に定義された通り(すなわち、場合により置換されたC1-10アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリール)である。
【0104】
式IIの群において、RIIは好ましくは場合により置換されたC1-10アルキルおよびC5-20アリールから選択される。
【0105】
RIIがC1-10アルキルである場合、それは好ましくは、場合により置換されていてもよい、C1-7アルキル、たとえばメチル、エチル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチルおよびC3-6シクロアルキルから選択される。
【0106】
RIIがC1-10アルキル、特に直鎖または分枝鎖C1-7アルキルである場合、それは場合により、たとえば、C5-20アリール(たとえば、フェニル、メチルフェニル、ジメトキシフェニル)、C5-20アリールオキシ(たとえば、フェニルオキシ)、C3-20ヘテロシクリル(たとえば、ピペリジニル)、C1-7アルコキシ(たとえば、メトキシ、ベンジルオキシ)から選択される1個以上の、好ましくは1個の基により置換されていてもよい。
【0107】
RIIがC5-20アリールである場合、それは、場合により置換されたC5-6アリール(たとえば、フェニル、オキサゾール、イソキサゾール、ピラゾール)および場合により置換されたC8-10アリール(たとえば、ベンジルオキサジアゾール、チアノピラゾール)から選択され得る。
【0108】
RIIがC5-20アリール、特にC5-6アリールおよびC8-10アリールである場合、それは場合により、たとえば、ハロ(たとえば、F、Cl)、C1-7アルキル(たとえば、Me、CF3)、C5-20アリールオキシ(たとえば、フェニルオキシ)、C1-7アルコキシ(たとえば、メトキシ、ベンジルオキシ)、アシルアミド(たとえば、-NH-C(=O)-Me)から選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
【0109】
RN1およびRN2が、それらが結合する窒素原子と一緒になって5〜7員含窒素複素環を形成する場合、それらは式III:
【化11】

【0110】
[RCは、好ましくは、H;場合により置換されたC1-20アルキル、場合により置換されたC5-20アリール;場合により置換されたC3-20ヘテロシクリル;場合により置換されたアシルであって、アシル置換基が好ましくはC5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリル(たとえば、ピペラジニル)から選択されるもの;場合により置換されたアミドであって、アミノ基が好ましくはHおよびC1-20アルキルから選択されるか、または窒素原子と一緒になってC5-20複素環を形成するもの;および場合により置換されたエステル基であって、エステル置換基が好ましくはC1-20アルキル基から選択されるもの、からなる群より選択される]
の基を形成する。
【0111】
RCは、より好ましくは、場合により置換されたエステル基であって、エステル置換基が好ましくはC1-20アルキル基から選択されるものから選択される。
【0112】
特に好ましい化合物には、53、71、72、74、79、および155が含まれる。
【0113】
適切な場合には、上記の好適な態様は互いに組み合わせて採用される。
【0114】
含まれる他の形
上記には、これらの置換基の公知のイオン、塩、溶媒和物、および保護された形が含まれる。たとえば、カルボン酸(-COOH)という記載には、アニオン(カルボキシレート)型(-COO-)、その塩または溶媒和物、ならびに慣用の保護された形も含まれる。同様に、アミノ基という記載には、プロトン化した形(-N+HR1R2)、アミノ基の塩または溶媒和物、たとえば塩酸塩、ならびにアミノ基の慣用の保護された形が含まれる。同様に、ヒドロキシル基という記載にはアニオン型(-O-)、その塩または溶媒和物、ならびにヒドロキシル基の慣用の保護された形も含まれる。
【0115】
異性体、塩、溶媒和物、保護された形、およびプロドラッグ
ある化合物は、cisおよびtrans型;EおよびZ型;c、t、およびr型;endoおよびexo型;R、Sおよびmeso型;DおよびL型;dおよびl型;(+)および(-)型、ケト、エノール、およびエノレート型;synおよびanti型、synclinalおよびanticlinal型;αおよびβ型;axialおよびequatorial型、舟、椅子、ねじれ、封筒、および半椅子型、およびそれらの組合せを含むがそれらに限定されない、1種以上の特定の幾何異性体、光学異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、エピマー、立体異性体、互変異性体、配座異性体、またはアノマー型として存在する可能性がある。これらを以下に集合的に異性体(または「異性体型」)と呼ぶ。
【0116】
化合物が結晶形である場合、それは多くの異なる多形型として存在する可能性がある。
【0117】
下に互変異性体について論じる場合を除いて、構造異性体(すなわち、単に空間における原子の位置によるのではなく、原子間の接続が異なる異性体)が、本明細書において使用する「異性体」という用語から特に除外されることに留意されたい。たとえば、メトキシ基、-OCH3という記載は、その構造異性体であるヒドロキシメチル基-CH2OHを指すとは解釈されない。同様に、オルト-クロロフェニルという記載は、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルを指すとは解釈されない。しかしながら、あるクラスの構造について記載した場合には、そのクラスに含まれる構造異性体は含まれる(たとえば、C1-7アルキルはn-プロピルおよびイソプロピルを含み;ブチルはn-、イソ、sec-、およびtert-ブチルを含み、メトキシフェニルはオルト、メタ、パラ-メトキシフェニルを含む)。
【0118】
上記の除外は、互変異性体、たとえばケト、エノール、およびエノラート型には当てはまらない。たとえば、次の互変異性体の対:ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/アシニトロにおける場合である。
【0119】
1個以上の同位体置換を有する化合物が「異性体」という用語に特に含まれることに留意されたい。たとえば、Hは、1H、2H (D)、および3H (T)を含むいかなる同位体型であってもよく;Cは、12C、13C、および14Cを含むいかなる同位体型であってもよく;Oは、16Oおよび18Oを含むいかなる同位体型であってもよい等である。
【0120】
他に特定されない限り、特定の化合物について記載した場合には、(完全または部分的な)そのラセミ混合物および他の混合物を含むすべての前記の異性体型が含まれる。前記の異性体型の調製(たとえば、不斉合成)および分離(たとえば、分別結晶およびクロマトグラフィー法)の方法は当業者に公知であるか、本明細書に記載した方法または公知の方法を公知の方式で適用することにより容易に得ることができる。
【0121】
他に特定されない限り、特定の化合物について記載した場合には、そのイオン、塩、溶媒和物、および保護された形、たとえば下に論じるもの、ならびにその異なる多形型も含まれる。
【0122】
対応する活性化合物の塩、たとえば製薬上許容される塩を調製、精製、および/または処理することが便利な、または望ましい場合がある。製薬上許容される塩の例は、Bergeら、「製薬上許容される塩」(Pharmaceutically Acceptable Salts), J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に論じられている。
【0123】
たとえば、化合物がアニオン性である場合、またはアニオン性であり得る官能基(たとえば、-COOHは-COO-になり得る)を有する場合、塩は好適なカチオンと共に形成される。好適な無機カチオンの例には、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、およびAl3+などの他のカチオンが含まれるが、これらに限定されない。好適な有機カチオンの例には、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換アンモニウムイオン(たとえば、NH3R+, NH2R2+, NHR3+, NR4+)が含まれるが、これらに限定されない。好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸から誘導されるものである。広く使われる第4アンモニウムイオンの例はN(CH3)4+である。
【0124】
化合物がカチオン性である場合、またはカチオン性であり得る官能基(たとえば、-NH2は-NH3+になり得る)を有する場合、塩は好適なアニオンと共に形成される。好適な無機アニオンの例には、次の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸および亜リン酸から誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない。好適な有機アニオンの例には、次の有機酸:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、吉草酸、およびグルコン酸から誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない。好適な高分子アニオンの例には、次の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
対応する活性化合物の溶媒和物を調製、精製、および/または処理することが便利な、または望ましい場合がある。本明細書において、「溶媒和物」という用語は、溶質(たとえば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒の複合体を指す従来の意味で使用する。溶媒が水である場合には、溶媒和物は便利に水和物、たとえば、一水和物、二水和物、三水和物等と呼んでもよい。
【0126】
活性化合物を化学的に保護された形で調製、精製、および/または処理することが便利な、または望ましい場合がある。本明細書において使用する「化学的に保護された形」という用語は、1個以上の反応性の官能基が望まれない化学反応から保護されている、すなわち、保護された形または保護基(マスクされたまたはマスキング基、または遮蔽されたまたは遮蔽基としても知られている)である化合物を意味する。反応性の官能基を保護することにより、他の保護されていない反応性の官能基が関与する反応を、保護された基に影響を与えずにおこなうことができる。保護基は、通常、その後の段階で、分子の他の部分に実質的に影響を与えることなく除去できる。たとえば、「有機合成における保護基」(Protective Groups in Organic Synthesis) (T. GreenおよびP. Wuts; 第3版;John Wiley and Sons, 1999)を参照されたい。
【0127】
例として、ヒドロキシ基はエーテル(-OR)またはエステル(-OC(=O)R)として、たとえばt-ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、もしくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルもしくはt-ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)として保護することができる。
【0128】
例として、アルデヒドまたはケトン基は、カルボニル基(>C=O)をたとえば第一アルコールとの反応によりジエーテル(>C(OR)2)に変換して、それぞれアセタールまたはケタールとして保護することができる。アルデヒドまたはケトン基は、酸の存在下で大過剰の水を用いて加水分解することにより容易に再生成される。
【0129】
例として、アミン基は、たとえばアミドまたはウレタンとして、たとえばメチルアミド(-NHCO-CH3);ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz);t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc);2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)、2,2,2,-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)、2-(フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として;または好適な場合にはN-オキシド(>NO )として保護することができる。
【0130】
例として、カルボン酸はエステルとして、たとえばC1-7アルキルエステル(たとえば、メチルエステル;t-ブチルエステル);C1-7ハロアルキルエステル(たとえば、C1-7トリハロアルキルエステル);トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステル;またはC5-20アリール- C1-7アルキルエステル(たとえば、ベンジルエステル;ニトロベンジルエステル)として;またはアミドとして、たとえばメチルアミドとして保護することができる。
【0131】
例として、チオール基はチオエーテル(-SR)として、たとえばベンジルチオエーテル;アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として保護することができる。
【0132】
活性化合物をプロドラッグの形で調製、精製、および/または処理することが便利な、または望ましい場合がある。本明細書において使用する「プロドラッグ」という用語は、代謝された時に(たとえば、in vivoで)、所望の活性化合物を生成する化合物を意味する。典型的には、プロドラッグは不活性であるか、活性化合物よりも活性が低いが、有利な取り扱い、投与、または代謝特性を提供し得る。
【0133】
たとえば、いくつかのプロドラッグは活性化合物のエステル(たとえば生理的に許容される代謝的に不安定なエステル)である。代謝の間に、エステル基(-C(=O)OR)が開裂して活性な薬物を生成する。このようなエステルは、たとえば親化合物のいずれかのカルボン酸基(-C(=O)OH)を、適切な場合には親化合物中に存在する他の反応性の基を先に保護した後にエステル化して、その後、必要ならば脱保護することにより形成することができる。このような代謝に不安定なエステルの例には、Rが、C1-20アルキル(たとえば、-Me、-Et);C1-7アミノアルキル(たとえば、アミノエチル;2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル;2-(4-モルホリノ)エチル);およびアシルオキシ-C1-7アルキル(たとえば、アシルオキシメチル;アシルオキシエチル;たとえばピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル;1-アセトキシエチル;1-(1-メトキシ-1-メチル)エチル-カルボニルオキシエチル;1-(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシ-カルボニルオキシメチル;1-イソプロポキシ-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシル-カルボニルオキシメチル;1-シクロヘキシル-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシメチル;1-シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;1-(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;および1-(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)であるものが含まれる。
【0134】
別の好適なプロドラッグの形には、ホスホネートおよびグリコレート塩が含まれる。特に、ヒドロキシ基(-OH)は、亜リン酸クロロジベンジルとの反応の後に水素化してホスホネート基-O-P(=O)(OH)2を形成することにより、ホスホネートプロドラッグとすることができる。前記の基は代謝の間にホスホターゼ酵素により除去されて、ヒドロキシ基を有する活性な薬物を生成する。
【0135】
また、いくつかのプロドラッグは酵素的に活性化されて、活性化合物またはさらに化学反応を経て活性化合物を生成する化合物を生成する。たとえば、プロドラッグは糖誘導体または他のグリコシドコンジュゲートであってよく、またはアミノ酸エステル誘導体であってよい。
【0136】
頭文字語
便宜上、多くの化学基を公知の略語を用いて表す。前記の化学基には、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、tert-ブチル(tBu)、n-ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、およびアセチル(Ac)が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
便宜上、多くの化合物を公知の略語を用いて表す。前記の化合物には、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(i-PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルまたはジエチルエーテル(Et2O)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(塩化メチレン、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
合成
本発明の化合物は、式I:
【化12】

【0139】
の通りであり、式2:
【化13】

【0140】
の化合物から、式3:
【化14】

【0141】
のアミンまたはその前駆体もしくは保護された形(下記参照)とカップリングすることにより合成することができる。カップリングは、カップリング試薬系、たとえば、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、または(ジメチルアミノプロピル)エチルカルボジイミド塩酸塩/ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下、塩基、たとえば、ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ(Hunig)の塩基)の存在下、溶媒中、たとえばジメチルアセトアミドまたはジクロロメタン中で、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で、実施することができる。
【0142】
あるいは、本発明の化合物は、式2の化合物を公知の方法を用いて活性化された種、たとえば、酸塩化物、またはN-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの活性化されたエステルに変換し、活性化された種を式3の化合物と反応させることにより合成してもよい。
【0143】
式2の化合物は、式4:
【化15】

【0144】
[式中、REは場合により置換された、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルまたはC5-20アリール基である]
の化合物を脱保護することにより得ることができる。
【0145】
式4の化合物は、式5:
【化16】

【0146】
の化合物を、式6:
【化17】

【0147】
の化合物、または式7:
【化18】

【0148】
の化合物とカップリングすることにより合成することができる。
【0149】
式5および6の化合物のカップリングは、弱い塩基性条件下で、たとえばアセトン中の炭酸カリウムを用いて達成することができる(Williamson反応)。
【0150】
式5および7の化合物のカップリングは、光延反応を用いて(たとえば、アセトン中でアゾジカルボン酸ジイソプロピルおよびトリフェニルホスフィンを用いて)達成することができる。
【0151】
式5、6および7の化合物は、市販されているか、容易に合成可能である(実施例参照)。
【0152】
本発明の化合物において、RN1およびRN2およびそれらが結合する窒素原子が式II:
【化19】

【0153】
の基を形成する場合には、これらの化合物は式Ia:
【化20】

【0154】
により表すことができる。
【0155】
RIIがHである式Iaの化合物は、式7:
【化21】

【0156】
により表すことができ、式7の化合物の保護された形、たとえば、式8:
【化22】

【0157】
の化合物を公知の方法、たとえば、酸、たとえば、トリフルオロ酢酸または塩酸の存在下、溶媒、たとえば、ジクロロメタンまたはエタノールおよび/または水の存在下で、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で、酸触媒による開裂を用いて脱保護することにより合成することができる。
【0158】
式8の化合物は、前記の方法により式2の化合物から合成することができる。
【0159】
RIIがアシル基である式1aの化合物は、式9:
【化23】

【0160】
[式中、RC1は、場合により置換されたC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群より選択される]
により表すことができ、式7の化合物を式RC1COQ [式中、RC3は先に定義された通りであり、Qは好適な脱離基、たとえば、クロロなどのハロゲンである]の化合物と、場合により塩基、たとえば、ピリジン、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在下、場合により溶媒、たとえば、ジクロロメタンの存在下で、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成することができる。
【0161】
また、式9の化合物は、式7の化合物を式RC1CO2H [式中、RC1は先に定義された通りである]の化合物と、カップリング試薬系、たとえば、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、または(ジメチルアミノプロピル)エチルカルボジイミド塩酸塩/ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下、塩基、たとえば、ジイソプロピルエチルアミンの存在下、溶媒、たとえばジメチルアセトアミドまたはジクロロメタン中で、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成することもできる。
【0162】
RIIがアミドまたはチオアミド基である式1aの化合物は、式10:
【化24】

【0163】
[式中、YはOまたはSであり、RN3は、場合により置換されたC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群より選択される]
により表すことができ、式7の化合物を式RN3NC(=Y) [式中、RN1は先に定義された通りである]の化合物と、溶媒、たとえば、ジクロロメタンの存在下で、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成することができる。
【0164】
RIIがスルホニル基である式1の化合物は、式11:
【化25】

【0165】
[式中、RS1は、場合により置換されたC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群より選択される]
により表すことができ、式7の化合物を式RS1SO2Cl [式中、RS1は先に定義された通りである]の化合物と、場合により塩基、たとえば、ピリジン、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在下、溶媒、たとえば、ジクロロメタンの存在下で、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成することができる。
【0166】
式8:
【化26】

【0167】
の化合物は、式12:
【化27】

【0168】
の化合物から、式13:
【化28】

【0169】
の化合物との光延カップリングにより合成することもできる。
【0170】
式12の化合物は、式14:
【化29】

【0171】
の化合物から、式2の化合物から式8の化合物を合成するのと同様の方法により誘導することができる。
【0172】
使用
本発明は活性化合物、特にPARPの活性を阻害する活性を有する化合物を提供する。
【0173】
本明細書において使用する「活性」という用語は、PARPの活性を阻害する能力を有する化合物を意味し、具体的には固有の活性を有する化合物(薬物)ならびに前記化合物のプロドラッグで、プロドラッグそれ自体は固有の活性をほとんどまたは全く有しないものの両方を含む。
【0174】
特定の化合物により提供されるPARP阻害を評価するために便利に使用される一つのアッセイを下に例として記載する。
【0175】
本発明はさらに、有効量の活性化合物を好ましくは製薬上許容される組成物の形で細胞に接触させることを含む、細胞におけるPARPの活性を阻害する方法を提供する。前記の方法はin vitroまたはin vivoで実施することができる。
【0176】
たとえば、細胞のサンプルをin vitroで増殖し、前記細胞に活性化合物を接触させ、それらの細胞に対する化合物の効果を観察する。「効果」の例として、ある時間内におこなわれたDNA修復の量を測定する。活性化合物が細胞に影響を与えることが見出される場合には、これを、同じ細胞型の細胞を有する患者を治療する方法における化合物の有効性の予後または診断マーカーとして使用することができる。
【0177】
本明細書において状態を治療するという文脈中で使用する「治療」という用語は、一般的に、ヒトまたは動物(たとえば、獣医学的適用において)の、ある所望の治療効果、たとえば、状態の進行の阻害を達成するような治療または療法を意味し、進行速度の減少、進行速度の停止、状態の改善、および状態の治癒を含む。予防的手段としての治療(すなわち予防)も含まれる。
【0178】
本明細書において使用する「補助剤」という用語は、公知の治療手段と共に活性化合物を使用することに関する。前記の手段には、異なる癌のタイプの治療に使用される薬物の細胞毒性療法および/または電離放射線が含まれる。特に、活性化合物は、癌の治療に使用される、トポイソメラーゼクラスの毒物(たとえば、トポテカン(topotecan)、イリノテカン(irinotecan)、ルビテカン(rubitecan))、ほとんどの公知のアルキル化剤(たとえば、DTIC、テモゾラミド(temozolamide))、およびプラチナを含む薬物(たとえば、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin))を含む多くの癌化学療法治療の作用を増強することが知られている。
【0179】
また、活性化合物は、たとえば、in vitroで公知の化学療法薬または電離放射線治療に対して細胞を反応性にするために、PARPを阻害する細胞培養添加剤として使用することもできる。
【0180】
また、活性化合物は、たとえば、候補の宿主に問題の化合物による治療が有益であるかどうかを決定するために、in vitroアッセイの一部として使用することができる。
【0181】
投与
活性化合物、または活性化合物を含む医薬組成物は、経口(たとえば摂取により);局所(たとえば、経皮、鼻内、眼内、口腔、および舌下を含む);肺(たとえば口または鼻を通したたとえばエアロゾルを用いたたとえば吸入または吹送療法により);直腸;腟内;非経口、たとえば皮下、皮内、筋内、静脈内、動脈内、心臓内、鞘内、髄腔内、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、および胸骨内を含む注射によるもの;たとえば皮下または筋内の埋め込みまたはデポによるものを含むがこれらに限定されない、全身/末梢または活性を必要とする部位のいずれかの、いかなる便利な投与経路により被験体に投与してもよい。
【0182】
被験体は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳類、齧歯類(たとえば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ(たとえば、マウス)、イヌ科(たとえば、イヌ)、ネコ科(たとえば、ネコ)、ウマ科(たとえば、ウマ)、霊長類、サル(たとえば、サルまたは類人猿)、サル(たとえば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(たとえば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトであってよい。
【0183】
製剤
活性化合物を単独で投与することも可能であるが、それを、少なくとも1種の上で定義した通りの活性化合物、および1種以上の製薬上許容される担体、助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に公知の他の物質、および場合により他の治療または予防薬を含む医薬組成物(たとえば製剤)として提供することが好ましい。
【0184】
そこで、本発明はさらに、上で定義された通りの医薬組成物、ならびに少なくとも1種の上で定義されたとおりの活性化合物、および1種以上の製薬上許容される担体、賦形剤、緩衝剤、助剤、安定剤、または他の物質を、本明細書に記載される通りに混合することを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0185】
本明細書において使用する「製薬上許容される」という用語は、適切な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスクの比の釣り合いのとれた、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わない、被験体(たとえば、ヒト)の組織と接触させて使用するのに適した化合物、物質、組成物、および/または剤形を意味する。それぞれの担体、賦形剤等もまた、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容可能」でなければならない。
【0186】
好適な担体、希釈剤、賦形剤等は標準的な薬学の教科書に記載されている。たとえば、「医薬品添加物ハンドブック」(Handbook of Pharmaceutical Additives)、第2版(M. AshおよびI. Ash編), 2001 (Synapse Information Resources, Inc., Endicott, New York, USA)、「Remingtonの薬学」(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第20版、Lippincott, Williams & Wilkins, 2000;および「医薬賦形剤ハンドブック」(Handbook of Pharmaceutical Excipients)、第2版、1994を参照されたい。
【0187】
製剤は単位剤形として便利に提供され、製薬業界において公知の方法により調製することができる。前記の方法には、活性化合物を1種以上の補助的成分を構成する担体と混合する過程が含まれる。一般的に、製剤は、活性化合物を液体の担体または微細に粉砕した固体の担体またはその両方と均一および緊密に混合した後、必要に応じて製品に成形することにより調製される。
【0188】
製剤は、液体、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル、シロップ、錠剤、トローチ、顆粒、粉末、カプセル、カシェー、丸剤、アンプル、坐剤、ペッサリー、軟膏、ゲル、ペースト、クリーム、スプレー、ミスト、泡、ローション、油、ボーラス、舐剤、またはエアロゾルの形であってよい。
【0189】
経口投与(たとえば、摂取による)に好適な製剤は、それぞれがあらかじめ決められた量の活性化合物を含有するカプセル、カシェーまたは錠剤などの分離した単位として;粉末または顆粒として;水性または非水性の液体中の溶液または懸濁液として;水中油型液体エマルションまたは油中水型液体エマルションとして;ボーラスとして;舐剤として;またはペーストとして提供することができる。
【0190】
錠剤は、慣用の手段により、たとえば、場合により1種以上の補助的成分を加えて圧縮または成形により製造することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの流動性の形の活性化合物を、場合により1種以上の結合剤(たとえば、ポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤または希釈剤(たとえば、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);表面活性剤または分散剤または湿潤剤(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム);および保存剤(たとえば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)と混合して、好適な機械を用いて圧縮することにより調製することができる。成形錠剤は、不活性な液体の希釈剤により湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械を用いて成形することにより製造することができる。錠剤は場合によりコーティングまたは刻み目を施してもよく、また、含まれる活性化合物の遅延もしくは制御放出を提供するように製剤してもよい。たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをさまざまな比率で用いて所望の放出プロファイルを提供することができる。錠剤は場合により、胃ではなく腸の部分で放出されるように腸溶コーティングを施してもよい。
【0191】
局所投与(たとえば、経皮、鼻内、眼内、口腔、および舌下)に適した製剤は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、または油として製剤することができる。あるいは、製剤は、活性化合物および場合により1種以上の賦形剤または希釈剤を含浸させた包帯または絆創膏などのパッチまたは包帯を含む。
【0192】
口への局所投与に適した製剤には、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントである風味を付けた基剤中に活性化合物を含むトローチ;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基剤中に活性化合物を含むパステル剤;および好適な液体担体中に活性化合物を含むマウスウォッシュが含まれる。
【0193】
目への局所投与に適した製剤には、活性化合物が好適な担体、特に活性化合物に好適な水性溶媒中に溶解または懸濁している点眼薬が含まれる。
【0194】
鼻内投与に適した、担体が固体である製剤には、たとえば約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗末が含まれ、これは嗅ぎタバコを服用する方法で、すなわち鼻の近くに持ち上げた粗末の容器から鼻腔を通して素早く吸入することにより投与される。担体が液体である、たとえば鼻内スプレー、点鼻薬としての投与、またはネブライザーによるエアロゾル投与に適した製剤には、活性化合物の水または油溶液が含まれる。
【0195】
吸入による投与に適した製剤には、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適な気体などの好適な推進剤を使用した加圧容器からのエアロゾルスプレーとして提供されるものが含まれる。
【0196】
皮膚を通した局所投与に適した製剤には、軟膏、クリーム、およびエマルションが含まれる。軟膏として製剤する場合には、活性化合物を場合によりパラフィン性または水混和性軟膏基剤のいずれかと共に使用する。あるいは、活性化合物を水中油型クリーム基剤を用いてクリームに製剤してもよい。所望により、クリーム基剤の水層は、たとえば、少なくとも約30% w/wの多価アルコール、すなわち、ポリエチレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グルセロールおよびポリエチレングリコールならびにそれらの混合物などの2個以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含んでもよい。局所用製剤は、望ましくは、皮膚または他の患部を通しての活性化合物の吸収または浸透を促進する化合物を含む。前記の皮膚浸透促進剤の例には、ジメチルスルホキシドおよび関連する類似物が含まれる。
【0197】
局所用エマルションとして製剤する場合、油相は場合により乳化剤(別名、エマルジェント(emulgent)として知られる)のみを含んでもよく、または、少なくとも1種の乳化剤と脂肪または油との、あるいは脂肪および油の両方との混合物を含んでもよい。好ましくは、親水性乳化剤、および安定剤として作用する親油性乳化剤が含まれる。また、油および脂肪の両方を含むことも好ましい。一緒になって、乳化剤は安定剤と共に、または安定剤なしで、いわゆる乳化ワックスを作り、前記ワックスは油および/または脂肪と共にいわゆる乳化軟膏基剤を作り、これがクリーム製剤の油性分散相を形成する。
【0198】
好適なエマルジェントおよびエマルション安定剤には、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレートおよびラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。医薬エマルション製剤に使用されることが多いほとんどの油に対する活性化合物の溶解度は非常に低いので、製剤に適した油または脂肪の選択は、望まれる化粧品の特性を達成することを基本とする。そこで、クリームは、好ましくは、チューブまたは他の容器から漏れることを防ぐために好適な稠度を有する、油っぽくない、汚れにくい、および洗浄可能な製品でなければならない。ジイソアジペート、イソセチルステアレート、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2-エチルヘキシルパルミテートまたはCrodamol CAPとして知られる分枝鎖エステルの混合物などの直鎖または分枝鎖、一または二塩基アルキルエステルを使用することができ、最後の3個が好ましいエステルである。これらは要求される特性に応じて単独でまたは組合せて使用する。あるいは、白色軟パラフィンおよび/または液体パラフィン、または他の鉱油などの融点の高い脂質を使用することができる。
【0199】
直腸投与に適した製剤は、たとえばココアバターまたはサリチル酸塩を含む好適な基剤を用いた坐剤として提供される。
【0200】
腟内投与に適した製剤は、活性化合物に加えて当業者に公知の適切な担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレー製剤として提供される。
【0201】
非経口投与(たとえば、皮膚、皮下、筋内、静脈内および皮内を含む注射による)に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、静菌剤、および製剤を想定される受容体の血液と等張にするための溶質を含んでもよい水性および非水性、等張、発熱物質を含まない、無菌の注射溶液;および懸濁剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁液、および血液成分または1つ以上の器官を標的として化合物を送達するように設計されたリポソームまたは他の微粒子系が含まれる。前記の製剤に使用するのに適した等張の媒体の例には、塩化ナトリウム注射液、リンゲル溶液、または乳酸リンゲル注射液が含まれる。典型的には、溶液中の活性化合物の濃度は約1 ng/ml〜約10μg/ml、たとえば、約10 ng/ml〜約1μg/mlである。製剤はユニットドーズまたはマルチドーズ密閉容器、たとえば、アンプルおよびバイアル瓶に入れて提供してもよく、また、使用の直前に無菌液体担体、たとえば注射用水を加えるだけでよい凍結乾燥された状態で保存してもよい。その場で調製する注射溶液および懸濁液は無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。製剤は、血液成分または1つ以上の器官を標的として化合物を送達するように設計されたリポソームまたは他の微粒子系の形であってもよい。
【0202】
用量
活性化合物の適切な投与量、および活性化合物を含む組成物は患者により異なり得ることが理解されるであろう。最適な投与量の決定には、一般に、治療効果のレベルと本発明の治療のリスクまたは有害な副作用とのバランスが関与する。選択される投与量は、特定の化合物の活性、投与経路、投与の時間、化合物の排出速度、治療期間、併用する他の薬物、化合物、および/または物質、ならびに患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態、および以前の病歴を含むがこれらに限定されない種々の因子に依存する。化合物の量および投与経路は究極的には医師の裁量によるが、一般的に、投与量は、実質的に危険なまたは有害な副作用を起こさずに所望の効果を達成するような作用部位における局所濃度を達成するものである。
【0203】
in vivoにおける投与は、治療の過程を通して、1回の投与で、連続的に、または断続的に(たとえば、適切な間隔で用量を分割して)おこなうことができる。最も有効な手段および投与量を決定する方法は当業者に公知であり、治療に使用する製剤、治療の目的、治療される標的細胞、および治療される被験体により変化する。治療する医師により選択された用量レベルおよびパターンに従って1回または多数回の投与を実施することができる。
【0204】
一般的に、活性化合物の好適な用量は、1日あたり約100μg〜約250 mg/被験体の体重kgの範囲である。活性化合物が塩、エステル、プロドラッグ等である場合には、投与量は親化合物に基づいて計算するので、使用する実際の重量は比例して増加する。
【実施例】
【0205】
一般的実験法
分取HPLC
サンプルは、Waters 600 LC ポンプ、Waters Xterra C18カラム(5μm、19 mm×50 mm)およびMicromass ZQ質量分析計を使用したWaters質量分析精製システムにより、正イオンエレクトロスプレーイオン化法により動作させて精製した。移動相A (0.1% ギ酸水溶液)およびB (0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)を勾配(7分間で5% B〜100%、3分間保持、流速20 ml/分)で使用した。
【0206】
分析用HPLC
分析用HPLCは、Spectra System P4000ポンプおよびJones Genesis C18カラム(4μm、50 mm×4.6 mm)を用いて実施した。移動相A (0.1%ギ酸水溶液)およびB (アセトニトリル)を勾配(1分間5% B、5分後に98% Bまで上げ、3分間保持、流速2 ml/分)で使用した。検出は、TSP UV 6000LP検出器により254 nmのUVおよび範囲210〜600 nmのPDAでおこなった。質量分析器はFinnigan LCQで、正イオンエレクトロスプレー法 により動作させた。
【0207】
NMR
1H NMRおよび13C NMRは、Bruker DPX 300分光器を用いてそれぞれ300 MHzおよび75 MHzで記録した。化学シフトは、テトラメチルシラン内部標準に対する相対的なδスケールを百万分の一(ppm)で報告した。他に記載しない限り、すべてのサンプルをDMSO-d6に溶解した。
【0208】
実施例1
【化30】

【0209】
(a) メチル3-(ブロモメチル)ベンゾエート(2)(1.0 g、7.2 mmol)および炭酸カリウム(2.0 g、14.5 mmol)のアセトン(10ml)中の懸濁液にサリチルアミド(1)(1.0 g、7.2 mmol)を加えて、反応液を25℃で14時間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、得られた残渣を水(50 ml)により処理して、ジクロロメタン(2×50 ml)により抽出した。有機層を合わせてMgSO4により乾燥し、濾過および減圧濃縮して白色の固体を得た。これをカラムクロマトグラフィー(50 gシリカ、ヘキサン:酢酸エチル)により精製して、3-(2-カルバモイルフェノキシメチル)-安息香酸メチルエステル(3)を白色の固体(2.0 g、97.60%)として得た。m/z [M+1]+ 285
(b) 3-(2-カルバモイルフェノキシメチル)-安息香酸メチルエステル(3)(2.0 g)および2 M NaOH (4 ml)のメタノール(8 ml)中の混合物を25℃で14時間攪拌した。溶液を減圧濃縮した。反応残渣を水(20 ml)により処理し、ジクロロメタン(2×20 ml)により洗浄した。水層を2M HClにより酸性化し、濾過し、水およびヘキサンにより洗浄し、乾燥して、3-(2-カルバモイルフェノキシメチル)-安息香酸(4)を白色の固体(1.87g、97%)として得た。m/z [M+1]+ 271、純度95%。
【0210】
(c) 適切なアミン(0.23 mmol)を3-(2-カルバモイルフェノキシメチル)-安息香酸(4) (0.20 mmol)のジメチルアセトアミド(1 ml)溶液に加えた。次にヒューニッヒ塩基(0.31 mmol)および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.25 mmol)を加えて、反応液を室温で16時間攪拌した。次に反応混合物を分取HPLCにより精製して、下記の化合物を得た。
【化31】

【表2】

【0211】

【化32】

【表3】

【化33】

【0212】
(d) 3-(2-カルバモイルフェノキシメチル)-安息香酸(4)(0.50 g、1.8 mmol)、ヒューニッヒ塩基(0.48 ml、2.7 mmol)、tert-ブチル-1-ピペラジンカルボキシレート(0.30 g、2.0 mmol)および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.83 g、2.2 mmol)のジメチルホルムアミド(5 ml)中の混合物を25℃で14時間攪拌した。反応混合物を水(20 ml)により処理し、ジクロロメタン(2×50 ml)中に抽出した。有機層を合わせて食塩水(50 ml)により洗浄し、MgSO4により乾燥し、濾過および減圧濃縮して(24)を黄色のオイル(1.6 g)として得た。これをさらに精製することなく次の段階に使用した。
【0213】
(e) 12 M HCl:エタノール(2:1)の溶液を4-[3-(2-カルバモイルフェノキシメチル)-ベンゾイル]-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(24)に加えて、反応液を25℃で14時間攪拌した。反応液を一部減圧濃縮し、混合物を水(50 ml)により希釈し、アンモニアにより塩基性にした。反応混合物をジクロロメタン(2×50 ml)中に抽出した。有機層を合わせて食塩水(50 ml)により洗浄し、MgSO4により乾燥し、濾過および減圧濃縮して25を白色の固体(0.6 g)として得た。m/z [M+1]+ 339、純度95%。
【0214】
(f)
(i) 適切なイソシアネート(0.16 mmol)を25 (0.15 mmol)のジクロロメタン(1 ml)溶液に加えた。塩化スルホニルの反応には、ヒューニッヒ塩基(39μl、0.22 mmol)をも反応混合物に加えた。反応液を室温で16時間攪拌した。次に反応混合物を分取HPLCにより精製して、下記の化合物を得た。
【化34】

【表4】

【0215】
(ii) 適切な塩化スルホニル(0.16 mmol)を25 (0.15 mmol)のジクロロメタン(1 ml)溶液に加えた。塩化スルホニルの反応には、ヒューニッヒ塩基(39μl、0.22 mmol)をも反応混合物に加えた。反応液を室温で16時間攪拌した。次に反応混合物を分取HPLCにより精製して、下記の化合物を得た。
【化35】

【表5】

【0216】

【0217】
(iii) 適切な酸塩化物または酸(0.16 mmol)を25 (0.15 mmol)のジクロロメタン(1 ml)溶液に加えた後、ヒューニッヒ塩基(39μl、0.22 mmol)を加えた。次に2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(66.8 mg、0.18 mmol)をすべての酸反応に加えて、反応液を室温で16時間攪拌した。次に反応混合物を分取HPLCにより精製して、下記の化合物を得た。
【化36】

【表6】

【0218】

【0219】

【0220】
実施例2
【化37】

【0221】
(a) 2-フルオロ-5-ホルミルベンゾニトリル(63)(10 g、67.056 mmol)を40 mlのメタノール中に懸濁して、完全に溶解した。NaBH4 (2.89g、73.76 mmol)を3時間半かけて少しずつ加えた。反応液を室温で76時間攪拌した。メタノールを減圧除去して、残渣をDCM (20 ml)に溶解し、そこに水(20 ml)を加えた。水層をDCMにより再度抽出した。有機層を合わせて水により洗浄した後、MgSO4により乾燥した。DCMを減圧除去して、化合物64を白色の固体(9.174 g、収率95%)、[M+H]+: 152(弱いイオン化))として得た。
【0222】
(b) 化合物64 (7g、47 mmol)をメタノールに溶解し、5M水酸化ナトリウム(20 ml)を加えて、これを60℃で9時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を水に取り、6M HClによりpH 3に酸性化すると、白色の固体が生成した。固体を濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた固体にトルエンを加えて粉砕した後、減圧濃縮して残った水を共沸し、次いでオーブン中で乾燥した。得られた固体、化合物65 (10.77g、[M-H]-: 169)は塩化ナトリウムを含有していたが、そのまま次の段階に使用した。
【0223】
(c) 化合物65 (19g、113 mmol)をメタノールに溶解した後、濃H2SO4 (12 ml)をゆっくりと加え、次いで18時間還流した。 反応混合物を蒸発させ、炭酸水素ナトリウム(250 ml)をゆっくりと加えて、EtOAc (3×150 ml)により抽出し、MgSO4により乾燥し、減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル9/1)により精製して、純粋な化合物66 (9.325 g、[M+H]+: 185(弱いイオン化))を得た。
【0224】
(d) 化合物66 (3g、16.2 mmol)を25 mlのアセトンに溶解した後、サリチルアミド(2.4g、17.9 mmol)およびトリフェニルホスフィン(5.1g、19.5 mmol)を加えた。懸濁液を室温ですべての反応物が溶解するまで撹拌した後、DIAD (3.8g、19.5 mmol)を20分間かけて滴下し、溶液を室温で18時間撹拌した。白色の沈殿を濾過し、熱酢酸エチルから再結晶して化合物67 (2.77g、[M+H]+: 304)を白色の固体として得た。
【0225】
(e) 化合物67 (2.7g、9 mmol)を2M NaOH (10 ml)および30 mlのメタノール中に懸濁した。溶液を室温で2時間攪拌した。メタノールを蒸発させ、1N HClを白色の固体が生成するまで加えた。固体を濾過し、水により洗浄した後、乾燥して、純粋な化合物68 (2.5g、[M+H]+: 290)を得た。
【0226】
(f) 化合物69を、実施例1(d)の方法により化合物68から合成した(収率72%、[M+H]+: 458)。
【0227】
(g) 化合物70を、実施例1(e)の方法により化合物69から合成した([M+H]+: 358)。
【0228】
(i) それぞれ実施例1(f)(i)、(ii)および(iii)の方法を用いて、次の化合物を70から調製した。
【化38】

【表7】

【化39】

【表8】

【化40】

【表9】

【0229】

【0230】
実施例3
【化41】

【0231】
(a) メチル-3-メトキシサリチレート(87)(1.4g、7.6 mmol)を15 mlのメタノール中の7Nアンモニア溶液に懸濁し、密閉した管の中で60℃で24時間攪拌した。溶液を減圧濃縮して化合物88を褐色の固体(1.4g、収率93%、[M+H]+: 168)として得た。
【0232】
(b) 化合物89を、実施例2(d)の方法により化合物88から合成した(収率54%、[M+H]+: 334)。
【0233】
(c) 化合物90を、実施例2(e)の方法により化合物89から合成した(収率93%、[M+H]+: 320)。
【0234】
(d) 化合物91を、実施例1(d)の方法により化合物90から合成した([M+H]+: 488)。
【0235】
(e) 化合物92を、実施例1(e)の方法により化合物91から合成した([M+H]+: 388)。
【0236】
(f) それぞれ実施例1(f)(i)、(ii)および(iii)の方法を用いて、次の化合物を92から調製した。
【化42】

【表10】

【化43】

【表11】

【化44】

【表12】

【0237】

【0238】
実施例4
【化45】

【0239】
(a) 濃硫酸(6 ml)をメタノール(20 ml)中の3-フルオロ-2-ヒドロキシ安息香酸(103)(5 g、32 mmol)に加えた。これを18時間攪拌還流した。反応混合物を減圧濃縮した後、飽和炭酸水素ナトリウム(500 ml)を加えて、生成物をEtOAc (3×150 ml)により抽出した。有機抽出物を集めてMgSO4により乾燥し、溶媒を蒸発させて化合物104(3.9 g、収率72%、[M-H]-: 169)を液体として得た。これは固化して淡黄色の結晶になった。
【0240】
(b) 化合物105を、実施例3(a)の方法により化合物104から合成した(収率97%、[M+H]+: 156)。
【0241】
(c) 化合物106を、実施例2(d)の方法により化合物105から合成した(収率80%, [M+H]+: 304)。
【0242】
(d) 化合物107を、実施例2(e)の方法により化合物106から合成した([M+H]+: 290)。
【0243】
(e) 化合物108を、実施例1(d)の方法により化合物107から合成した([M+H]+: 458)。
【0244】
(f) 化合物109を、実施例1(e)の方法により化合物108から合成した([M+H]+: 358)。
【0245】
(g) それぞれ実施例1(f)(i)、(ii)および(iii)の方法を用いて、次の化合物を109から調製した。
【化46】

【表13】

【0246】

【化47】

【表14】

【化48】

【表15】

【0247】

【0248】
実施例5
【化49】

【0249】
(a) 化合物121を、実施例3(a)の方法により化合物120から合成した(収率93%、[M+H]+: 156)。
【0250】
(b) 化合物122を、実施例2(d)の方法により化合物121から合成した([M+H]+: 304)。
【0251】
(c) 化合物123を、実施例2(e)の方法により化合物122から合成した([M-H]-: 288)。
【0252】
(d) 化合物124を、実施例1(d)の方法により化合物123から合成した([M+H]+: 458)。
【0253】
(e) 化合物125を、実施例1(e)の方法により化合物124から合成した([M+H]+: 358)。
【0254】
(f) それぞれ実施例1(f)(i)、(ii)および(iii)の方法を用いて、次の化合物を125から調製した。
【化50】

【表16】

【化51】

【表17】

【化52】

【表18】

【0255】

【0256】
実施例6
【化53】

【0257】
(a) 2-(3-ブロモフェニル)-エタノール(136)(15.0 g、74.6 mmol)の無水ジエチルエーテル(200 ml)溶液を冷却して(-78℃)、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA) (22.2 ml、149.2 mmol)を加えた。-78℃で5分間撹拌した後、n-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M、59.7 ml、149.2 mmol)を10分間かけて滴下した(添加のほぼ半ばで白色の沈殿が生成した)。1時間かけて温度を-20℃まで上げた後、再び-78℃にした。次に、反応混合物中に乾燥した二酸化炭素ガスを発熱が止むまで10分間通した後、1時間かけて室温に温めた。エーテルを水(115 ml)により抽出した。次に水層をHCl (6N)によりpH 0.5に酸性化した。次に得られた白色の沈殿を酢酸エチル(2×170 ml)により抽出した。有機相を合わせて硫酸マグネシウムにより乾燥し、濾過および減圧濃縮して137を淡黄色がかった白色の粉末として得た。LC-MS分析により1本のピークが得られ(11.40 g, 92%)、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS, ESN)、RT=3.21分、(M-H)=165.0.
1H NMR (300 MHz, D6-DMSO): 12.88(1H, -COOH), 7.86 (1H, S) 7.83 (1H, dt J 2.1Hz, J 7.5Hz), 7.53 (1H, d, J 2.1Hz), 7.46 (1H, t, J 7.5Hz), 4.68(1H, -OH), 3.68 (2H, t, J 6.7Hz), 2.84 (2H, t, J 6.7 Hz)。
【0258】
(b) 3-(2-ヒドロキシエチル)-安息香酸(137)(12.0 g、72 mmol)のDCM (150 mL)溶液に、tert-ブチル1-ピペラジンカルボキシレート(14.9 g、80.0 mmol)およびO-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(30.2g、80.0mmol)を加えた。混合物を5分間撹拌した後、トリエチルアミン(20.6 ml、150.0 mmol)を加えた。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を濾過し、減圧濃縮した。得られたオイルをクロマトグラフィーにより、酢酸エチル:ヘキサン1:1(rf 0.13)を用いて精製し、白色の固体138を単離した。LC-MS分析により1本のピークが得られ(18.0 g, 75%)、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.79分、(M+H) 334。
【0259】
(c)
(i) 4-[3-(2-ヒドロキシエチル)-ベンゾイル]-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(138)(10.0 g、29.9 mmol)のDCM (100 ml)溶液を-5℃に冷却して、トリエチルアミン(5 mL、35.9 mmol)、次いで塩化メタンスルホニル(2.8 mL、35.8 mmol)を滴下し、反応液を30分間かけて室温に温めた。次に、混合物を水(2×25 ml)により洗浄した。有機層を洗浄し、MgSO4により乾燥し、濾過および濃縮してオイルを得た。LC-MS分析(9.75 g、収率79%)によれば、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=4.11分、(M+H)=413。
【0260】
(ii) (i)で単離した粗オイル(5.8g、22.5mmol)をジメチルホルムアミド(50mL)に溶解した後、炭酸セシウム(7.3 g、22.4 mmol)およびサリチルアミド(1)(3.08 g、22.4mmol)を加えた。反応液を一晩冷蔵庫で冷却し、水(2×50 mL)、次いでヘキサン(2×50 mL)、最後にTBME(2×50 mL)により洗浄した。得られた白色の固体139を室温で減圧下一晩乾燥した。LC-MS分析により1本のピークが得られ(6.3g、純度95%)、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=4.13分、(M+H) 413。
【0261】
(d) 4-{3-[2-(2-カルバモイルフェノキシ)-エチル]-ベンゾイル}-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(139)(4.2 g、9.2 mmol)にジオキサン中の4M塩酸溶液(14.4 mL、57.0 mmol)を加えた。15分後に溶媒を減圧除去して、メタノール中の7Mアンモニア溶液(15 mL, 75 mmol)を加えた。得られたクリーム状の沈殿を濾過し、濾液を減圧濃縮して粘着性のガム140(2.9 g、収率90%)を得た。LC-MS分析の結果(純度>95%)、それ以上の精製をおこなわなかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.10分、(M+H)=354。
【0262】
(e) それぞれ実施例1(f)(i)、(ii)および(iii)の方法を用いて、次の化合物を140から調製した。
【化54】

【表19】

【化55】

【表20】

【0263】

【化56】

【表21】

【0264】

【0265】
実施例7
【化57】

【0266】
(a) 2,2-テトラメチルピペリジン(179)(10.7 mL、64.0 mmol)の無水テトラヒドロフラン(50 mL)溶液に、-75℃で、冷却したヘキサン/THF中の2.5M n-ブチルリチウム液(26.5 mL、64.0 mmol)を加えた。次に、温度を-75℃に維持しながら2-(4-フルオロフェニル)-エタノール(4.5 g、32 mmol)を反応混合物に滴下した。6時間窒素雰囲気下で攪拌した後、橙色がかった赤色の溶液が得られた。反応混合物に二酸化炭素ガスを15分間通した。次に反応液を室温に温め、有機相を減圧濃縮した。残渣を水(40ml)中に取り、DCM (25ml×2)により洗浄した。次に希塩酸(100ml, 1N)を用いて水層のpHをpH 1に調節した。次に溶液を酢酸エチル(3×50mL)により抽出した。有機相を合わせて硫酸マグネシウムにより乾燥し、濃縮してろう状の粗固体を得た。固体を酢酸エチルから再結晶して、180を白色の結晶性の固体として得た。LC-MS分析によれば(2.4g、純度95%)、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS, ESN)、RT= 2.66分、(M-H)=183. 1H NMR (300 MHz, D6-DMSO): 14.30 (1H, -COOH), 7.70 (1H, dd, J 2.1, 7.2 Hz), 7.47 (1H, ddd J 2.1, 6.0, 8.4Hz), 7.20 (1H, dd, J 8.5, 11.1Hz), 4.59 (1H, -OH), 3.60 (2H t, J 6.9Hz), 2.74 (2H, t, J 6.9 Hz)。
【0267】
(b) 2-フルオロ-5-(2-ヒドロキシエチル)-安息香酸(180)(2.5 g、15 mmol)のDCM (50mL)溶液に、tert-ブチル1-ピペラジンカルボキシレート(3.09 g、16.6 mmol)およびO-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(6.27 g、16.6 mmol)を加えた。混合物を5分間撹拌した後、トリエチルアミン(5.8 mL、33.1 mmol)を加えた。さらに30分間室温で撹拌した後、反応混合物を濾過し、減圧濃縮した。得られたオイルをクロマトグラフィーにより、酢酸エチル:ヘキサン9:1(rf 0.25)を用いて精製した。白色の固体181が単離された。LC-MS分析により1本のピークが得られ(3.97 g、75%)、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.28分、(M+H)=353。
【0268】
(c)(i) (181)(2.5g、13.6 mmol)のDCM (30ml)溶液を-5℃に冷却して、トリエチルアミン(2.1mL、14mmol)、次いで塩化メタンスルホニル(1.61g、14mmol)を滴下し、45分間かけて反応液を室温に温めた。次に混合物を水(2×15ml)により洗浄した。有機層を洗浄し、MgSO4により乾燥し、濾過および濃縮してオイル(2.6g、収率82%)を得た。それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=4.46分、(M+H)=431。
【0269】
(ii) (i)において単離された粗オイル(2.5g、5.8mmol)をジメチルホルムアミド(15mL)に溶解した後、炭酸セシウム(7.3g、5.9mmol)およびサリチルアミド(802mg、5.9mmol)を加えた。反応液を冷蔵庫で一晩冷却し、水(2×10 mL)、次いでヘキサン(2×10 mL)、最後にTBME (10ml)により洗浄した。得られた白色の固体(182)を減圧下室温で一晩乾燥した。LC-MS分析により1本のピークが得られ(1.9g、純度65%)、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.56分、(M+H) 472. 1H NMR (300 MHz, D6-DMSO) 7.78 (1H, dd J= 1.8, 7.8Hz), 7.49- 7.42 (2H, m), 7.37 (1H, dd, J= 2.1, 6.6 Hz), 7.2 (2H, m), 7.01 (1H, m), 4.37 (2H,m), 3.59-3.62 (2H,m), 3.39-3.40 (2H, m), 3.24-3.27 (2H,m), 3.12-2.19 (4H,m), 2.40 (9H,s)。
【0270】
(d) 4-{5-[2-(2-カルバモイルフェノキシ)-エチル]-2-フルオロベンゾイル}-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(182)(0.472 g、1.0 mmol)にジオキサン中の4M塩酸溶液(3.0 mL、10.0 mmol)を加えた。15分後に溶媒を減圧除去し、メタノール中の7Mアンモニア溶液(2 mL、13 mmol)を加えた。得られたクリーム状の沈殿を濾過し、濾液を減圧濃縮して白色の泡183 (0.31g、収率84%)を得た。LC-MS分析の結果(純度>90%)、それ以上の精製をおこなわなかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=2.52分、(M+H)=372。
【0271】
(e) それぞれ実施例1(f)(i)および(iii)の方法を用いて、183から次の化合物を調製した。
【化58】

【表22】

【化59】

【表23】

【0272】
実施例8
【化60】

【0273】
(a) 5-フルオロ-2-ヒドロキシベンズアミド(193)
ねじ蓋式密閉性の50mL圧力容器にメチル5-フルオロ-2-ヒドロキシベンゾエート(1.0g, 5.88mmol)およびメタノール中の7Nアンモニア溶液(15ml)を加えた。圧力容器を密閉し、内容物を60℃で一晩撹拌した。反応液を室温に冷却し、溶液を蒸発乾固させて白色の結晶性の固体を得た。LC-MSにより1本のピークが得られた(0.91g、純度100%)。m/z (LC-MS, ESP)、RT=2.94分、(M+H) 156。
【0274】
(b) 4-(2-フルオロ-5-ヒドロキシメチルベンゾイル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(194)
DMF (90mL)中の2-フルオロ-5-ヒドロキシメチル安息香酸(65)(8.50g、50.0mmol)に、20℃でトリエチルアミン(13.8mL、100mmol)、次いでピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(11.16g, 60.0mmol)を加えた後、HBTU (24.6g, 65.0mmol)を15分間かけて少しずつ加えると、わずかな発熱が観察されたが、反応液を30分間撹拌した。次に、反応混合物を15℃に冷却して水(100mL)を滴下すると、粘り気のある黄色の懸濁液が生成した。水性の液体をDCM (3×80mL)により抽出し、抽出物を希炭酸ナトリウム溶液(100mL)、水(100mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、薄いシリカパッドを通した。濾液を減圧濃縮して無色のオイルを得た。LC-MSにより1本のピークが得られ(15.4g、収率91%)、精製の必要なく次の段階に使用した。m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.84分、(M+H) 339。
【0275】
(c) 4-(2-フルオロ-5-メタンスルホニルオキシメチルベンゾイル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(195)
4-(2-フルオロ-5-ヒドロキシメチルベンゾイル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(194)(6.8g、20.12mmol)の無水DCM (60mL)溶液にトリエチルアミン(2.7mL、20.12mmol)を加えた。得られた溶液を5℃に冷却し、塩化メタンスルホニル(1.55mL, 20.12mmol)を5分間かけて滴下した。30分後に反応液を水(2×50mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥して、粘着性のガラス状物質を得た。LC-MSにより1本のピークが得られ(6.37g、収率76%)、精製の必要なく次の段階に使用した。m/z (LC-MS, ESP)、RT=4.20分、(M+H) 417。
【0276】
(d) 4-[5-(2-カルバモイル-4-フルオロフェノキシメチル)-2-フルオロベンゾイル]-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(196)
4-(2-フルオロ-5-メタンスルホニルオキシメチルベンゾイル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(195)(0.832g、2.0mmol)のDMF (3mL)溶液に、窒素雰囲気下で5-フルオロ-2-ヒドロキシベンズアミド(193)(0.31g、2.0mmol)、次いで炭酸カリウム(0.552g、4.0mmol)を加えた。次に、混合物を90℃に加熱した。1時間加熱した後、反応液を45℃に冷却し、水(4mL)を加えた。次に、反応液を撹拌しながら0℃に冷却した。微細な白色の懸濁液が得られた。固体を濾過し、冷水(2×10mL)、ヘキサン(2×10mL)およびTBME(2×10mL)により洗浄した。乾燥した固体はLC-MSにより1本のピークを与え(0.548g、収率57%)、精製の必要なく次の段階に使用した。m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.18分、(M+H) 476。
【0277】
(e) 5-フルオロ-2-[4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-カルボニル)-ベンジルオキシ]-ベンズアミド(197)
濃HCl (15mL)のエタノール(7mL)溶液に、4-[5-(2-カルバモイル-4-フルオロフェノキシメチル)-2-フルオロベンゾイル]-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(196) (3.49g、7.35mmol)を少しずつ加えた。1時間後、反応混合物を減圧濃縮し、水性の残渣を水(50mL)により希釈し、エーテル(2×30mL)により洗浄した後、アンモニア水溶液(5mL)により塩基性にして、次いで酢酸エチル(3×50mL)により抽出した。抽出物を合わせて硫酸ナトリウムにより乾燥し、減圧濃縮して結晶性の固体を得た。LC-MSにより1本のピークが得られ(2.73g、収率98%)、精製の必要なく次の段階に使用した。m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.05分、(M+H) 376。
【0278】
(f) ライブラリーの化合物
(i) 適切なイソシアネート(0.15 mmol)を適切な5-フルオロ-2-[4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-カルボニル)-ベンジルオキシ]-ベンズアミド(197)(0.20 mmol)のジクロロメタン(2 mL)溶液に加えた。反応液を室温で16時間攪拌した。次に反応混合物を分取HPLCにより精製して下記の化合物を得た。
【化61】

【表24】

【0279】

【0280】
(ii) 適切な塩化スルホニル(0.1 mmol)およびトリエチルアミン(0.2 mmol)を5-フルオロ-2-[4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-カルボニル)-ベンジルオキシ]-ベンズアミド(197)(0.1 mmol)のジクロロメタン(1.5 mL)溶液に加えた。反応液を一晩攪拌した後、分取HPLCにより精製して下記の化合物を得た。
【化62】

【表25】

【0281】
(iii) 適切な酸塩化物(0.1 mmol)およびトリエチルアミン(0.2 mmol)を5-フルオロ-2-[4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-カルボニル)-ベンジルオキシ]-ベンズアミド(197)(0.1 mmol)のジクロロメタン(1.5 mL)溶液に加えた。反応液を一晩攪拌した後、分取HPLCにより精製して下記の化合物を得た。
【化63】

【表26】

【0282】
実施例9
化合物の阻害効果を評価するために、次のアッセイを使用してIC50値または与えられた濃度における阻害のパーセンテージを測定した。
【0283】
Hera細胞核抽出物から単離された哺乳類PARPを、96ウェルフラッシュプレート(FlashPlates)(商標)(NEN, UK)中で、Z-緩衝液(25mM Hepes (Sigma); 12.5 mM MgCl2 (Sigma); 50mM KCl (Sigma); 1 mM DTT (Sigma); 10%グリセロール(Sigma) 0.001% NP-40 (Sigma); pH 7.4)とともにインキュベートし、さまざまな濃度の前記の阻害剤を加えた。すべての化合物をDMSOにより希釈して、10〜0.01μMの間の最終アッセイ濃度とした。DMSOはウェルあたり1%の最終濃度となるようにした。ウェルあたりの総アッセイ体積は40μlであった。
【0284】
30℃で10分間インキュベートした後、NAD (5μM)、3H-NADおよび30マー二本鎖DNAオリゴを含有する10μlの反応混合物を加えることにより反応を開始した。酵素活性%を計算するために、化合物のウェル(未知)と一緒に、指定された陽性および陰性の反応のウェルも反応させた。次に、プレートを2分間振盪し、30℃で45分間インキュベートした。
【0285】
インキュベーションの後、50μlの30%酢酸をそれぞれのウェルに加えることにより反応を止めた。次にプレートを室温で1時間振盪した。
【0286】
プレートをTopCount NXT(商標)(Packard, UK)に移してシンチレーション計数をおこなった。記録された値はそれぞれのウェルの30秒の計数の後の分あたりの計数(cpm)である。
【0287】
次にそれぞれの化合物の酵素活性%を次の等式:
【数1】

【0288】
を用いて計算した。
【0289】
IC50値(酵素活性が50%阻害される濃度)を計算した。これは、異なる濃度の範囲、通常10μMから0.001μMまでの範囲に渡って測定される。前記のIC50値を増大した化合物の効力を確認するための比較値として用いる。
【0290】
次の化合物は0.1μM未満のIC50を有する:29、35、37、43、53、71、72、73、74、75、77、78、79、80、86、141、164、174、185、187、188、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217。
【0291】
上記の化合物に加えて、次の化合物は0.5μM未満のIC50を有する:28、30、31、32、33、34、39、41、42、44、45、46、48、50、51、52、54、55、56、57、58、59、61、62、76、81、82、83、84、85、128、129、135、143、144、145、147、148、152、158、159、160、161、166、167、184、186、189、191。
【0292】
上記の化合物に加えて、次の化合物は1μM未満のIC50を有する:15、26、27、36、38、40、47、49、60、116、190。
【0293】
上記の化合物に加えて、次の化合物は10μM未満のIC50を有する:5、6、8、9、10、12、13、14、17、18。
【0294】
次の化合物に対してIC50値は決定されなかったが、それらは1.5μMにおいて25%以上の阻害を示す:97、99、110、111、112、113、126、127、130、131、132、133、134。
【0295】
化合物に対する増強因子(PF50)を、対照細胞の増殖のIC50をPARP阻害剤を加えた細胞増殖のIC50により割った比として計算する。対照および化合物により処理された細胞の増殖阻害曲線はどちらもアルキル化剤メチルメタンスルホネート(MMS)の存在下のものである。試験化合物は、0.2μMの固定した濃度で使用した。MMSの濃度は0〜10μg/mlの範囲であった。
【0296】
細胞増殖は、スルホローダミンB (SRB)アッセイ(Skehan, P.ら、(1990)「抗癌薬スクリーニングのための新規の比色細胞毒性アッセイ」(New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer-drug screening.) J. Natl. Cancer Inst. 82, 1107-1112.)を用いて評価した。平底96ウェルマイクロタイタープレートのそれぞれのウェルに2,000個のHeLa細胞を100μlの体積で播種し、37℃で6時間インキュベートした。細胞を培地のみまたはPARP阻害剤を0.5、1または5μMの最終濃度で含有する培地のいずれかに置き換えた。細胞をさらに1時間増殖させた後、MMSを種々の濃度(典型的には0、1、2、3、5、7および10μg/ml)で、未処理の細胞またはPARP阻害剤により処理された細胞に加えた。PARP阻 害剤により処理された細胞のみをPARP阻害剤による増殖阻害の評価に使用した。
【0297】
細胞をさらに16時間置いた後、培地を置き換え、細胞をさらに72時間37℃で増殖させた。次に、培地を除去し、細胞を100μlの氷冷10% (w/v)トリクロロ酢酸により固定した。プレートを4℃で20分間インキュベートした後、水により4回洗浄した。次にそれぞれの細胞のウェルを100μlの0.4% (w/v) SRBの1%酢酸中の溶液により20分間染色した後1%酢酸により4回洗浄した。次にプレートを室温で2時間乾燥した。それぞれのウェルに100μlの10 mM トリス塩基を加えることにより染色された細胞から染料を可溶化した。プレートを静かに振盪し、室温に30分間置いた後、Microquantマイクロタイタープレートリーダーにより564 nMの光学濃度を測定した。
【0298】
次の化合物は、500nMにおいて1.5以上のPF50を有していた:53、71、72、73、74、79、216。化合物188は200nMにおいて1.5以上のPF50を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
R2、R3、R4およびR5は独立して、H、C1-7アルコキシ、アミノ、ハロまたはヒドロキシからなる群より選択され;
nは1または2であり;
RN1およびRN2は独立してHおよびRから選択され、そこにおいて、Rは場合により置換されたC1-10アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールであり;
またはRN1およびRN2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、場合により置換された5〜7員含窒素複素環を形成し;
Hetは、
(i)
【化2】

[式中、Y1およびY3は独立してCHおよびNから選択され、Y2はCXおよびNから選択され、XはH、ClまたはFである]
および
(ii)
【化3】

[式中、QはOまたはSである]
から選択される]
の化合物、ならびにその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形、およびプロドラッグ。
【請求項2】
R2、R3、R4およびR5が、H、メトキシ、ClおよびFからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2、R4およびR5がHであり、R3が大部分HおよびFから選択される、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
Hetが、
【化4】

である、前記の請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Y1、Y2およびY3のうち1個がNである、またはそれらはいずれもNでない、前記の請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
XがHおよびFから選択される、前記の請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
RN1がHであり、RN2がRである、前記の請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Rが、場合により置換されたC1-7アルキルまたはC3-20ヘテロシクリルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
RN1およびRN2が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式II:
【化5】

[式中、RNは、
(i) -RII;
(ii) -C(=O)NHRII;
(iii) -C(=S)NHRII;
(iv) -S(=O)2RII; および
(v) -C(=O)RII
から選択され、そこにおいて、RIIは、場合により置換されたC1-10アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールから選択される]
の基を形成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
RNが、
(i) -C(=O)NHRII;
(ii) -S(=O)2RII; および
(iii) -C(=O)RII
から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
RN1およびRN2が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式III:
【化6】

[式中、RCは、H;場合により置換されたC1-20アルキル;場合により置換されたC5-20アリール;場合により置換されたC3-20ヘテロシクリル;場合により置換されたアシル;場合により置換されたアミド;および場合により置換されたエステル基からなる群より選択される]
の基を形成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
RCが、場合により置換されたエステル基から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
ヒトまたは動物の体を治療する方法に使用するための請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
PARPの活性を阻害するための医薬品の調製における請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項16】
血管系の疾病;敗血症性ショック;虚血性障害;再灌流障害;神経毒性;出血性ショック;炎症性疾患;ウイルス感染;またはPARPの活性の阻害により改善される疾病の治療のための医薬品の調製における請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
癌治療の補助剤として使用するための、または電離放射線もしくは化学療法剤による治療の腫瘍細胞に対する効果を増強するための医薬品の調製における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項18】
HR依存DNA DSB修復経路が欠損した個体における癌の治療に使用するための医薬品の製造における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項19】
前記の癌が、正常な細胞と比較して、HRによるDNA DSBを修復する能力が低下または廃絶している1個以上の癌細胞を含む、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記の癌細胞がBRCA1またはBRCA2欠損表現型を有する、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記の癌細胞がBRCA1またはBRCA2が欠損している、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記の個体がHR依存DNA DSB修復経路の構成要素をコードする遺伝子における突然変異に対して異型接合である、請求項18〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記の個体がBRCA1および/またはBRCA2における突然変異に対して異型接合である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記の癌が、乳、卵巣、膵臓または前立腺癌である、請求項18〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記の治療がさらに電離放射線または化学療法剤の適用を含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
治療を必要とする被験体に治療上有効な量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、PARPの阻害により改善する疾病を治療する方法。
【請求項27】
治療を必要とする被験体に、治療上有効な量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を、電離放射線または化学療法剤と組み合わせて、同時にまたは順次投与することを含む、癌を治療する方法。

【公表番号】特表2008−525411(P2008−525411A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547653(P2007−547653)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/005017
【国際公開番号】WO2006/067472
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(507205830)クドス ファーマシューティカルズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】