説明

TFTアレイパターン形成方法

【課題】段差部などに生じた印刷レジストパターンの欠落を防止し空隙を埋め、配線の断線やパターンの細りなどを抑制することにある。
【解決手段】基板上に配線や電極を形成したTFTアレイを形成するにあたり、その上から、印刷装置を使用して有機レジスト或いは金属粒子などを分散したレジストを印刷レジストパターン106として形成する。ついで、レジストパターン印刷後に、有機用溶剤雰囲気中に曝すか、或いは熱などの処理によってパターンを軟化させる。これにより、レジストパターン106が馴染み、レジストパターンと下地層間の空隙107やレジストパターンの段切れを修復することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置によるTFTアレイパターン形成方法に関し、特にカラー液晶表示装置などに用いられるカラー液晶パネルの薄膜トランジスタ(TFT)のアレイパターンを印刷装置により形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなカラー液晶表示装置などにおけるカラー液晶パネルは、高精細化することが重要な要素の一つとなっている。このパネルの高精細化に当たっては、通常カラーフィルタ及びTFTの画素間ピッチを狭くし、且つカラーフィルタのBM(ブラック・マトリックス)線幅やTFTのデータ線やゲート線の線幅を細くするという手法が採用されている。
【0003】
また、カラー液晶パネルの製造リードタイムの約6割から7割を占めるTFTアレイ基板の製造方法の見直しが、リードタイムの短縮およびその製造コストダウンの要請と相まって強く求められている。
【0004】
一般に、TFTアレイのパターンは、パターンに必要な膜種をガラス基板全面に形成した後、フォトリソグラフィーと呼ばれる手法を用いて必要な部分のみの膜パターンを残すということを繰り返し行いながら形成している。しかしながら、この手法では、パターンをエッチングするときに保護膜として用いるレジストの利用率は、塗布、現像という工程を経るため、きわめて少ない。実際に、パターンの形成に寄与するレジストの利用率は1%未満であり、残りの大部分を捨てている。この結果は、大幅な製造コストの増加を招いている。
【0005】
また、TFTアレイの製造においては、レジストの塗布、露光、現像と言う工程を繰り返し行う為、製造リードタイムを増加させている。これらを解決するために、必要な膜種をガラス基板全面に形成した後、直接必要なレジストパターンを印刷技術を用いて形成することにより、レジスト材料の使用量を極限まで減らして製造コストを下げると共に、露光、現像という各工程を排除することで製造リードタイムを大幅に短縮する技術が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
例えば、特許文献1に開示されている技術は、TFTのゲート電極を形成するのに、特許文献1の図3、段落0044に記載された電子写真装置を用いて、基板に金属粒子を含んだトナーを印刷するものである。
【0007】
また、特許文献2に開示されている技術は、基板上にパターンを形成するのに、特許文献2の図1、段落0019に記載された転写体を用い、別途設けた印刷版のレジストを写し取ることにより、基板上の被転写層(金属層)にその写し取ったレジストを転写するものである。
【0008】
しかしながら、これらの技術では、感光体ドラムあるいは転写体を用い、ゲート電極を印刷したり、レジストパターンを転写しているため、比較的パターンが大きなものにしか適用できない。例えば、市場から要求されているような高精細表示が可能なTFTアレイ基板の場合には、微細パターン、あるいは微小パターンを形成する時に、パターンの細りや消失などの解決されるべき課題が多い。そのために、特許文献1,特許文献2に記載された技術は、比較的精度を要しない限定されたパターン或いは用途に利用されるに留まっている。
【0009】
このような微細パターン、あるいは微小パターンを形成する時、特にTFTアレイパターンのような多層配線で形成される場合には、パターンの端部近傍に生ずる段差部において、段切れやパターンの消失といった問題がある。
【0010】
図7(a),(b)はそれぞれ従来の一例を説明するための液晶表示パネルにおけるTFTアレイパターンの工程順に示した断面図である。図7(a)に示すように、ゲート電極、半導体層、ドレイン電極等を積層パターンニング形成するTFTアレイ基板の製造にあたり、ガラス基板701上に第一の配線パターン702を形成する。ついで、第一の配線パターン702上に層間絶縁膜703などを介して第二の配線パターンとなる電極や半導体層などをスパッタリング法やCVD法などを用いて配線金属膜704を成膜する。ついで、印刷装置によって印刷レジストパターン705を所望の位置に印刷形成する。その後、基板を含む全体を焼成炉などで焼成し、溶媒をとばせることにより、印刷レジストパターン705を硬化させる。この印刷レジストパターン705を硬化させた後、焼成炉から取り出したTFT基板上の不要な下地の成膜領域を、ウエットエッチング処理或いはドライエッチング処理によって除去する。しかる後に、不要となった印刷レジストパターン705を剥離液などを用いて除去する。
【0011】
以下、順次このプロセスを繰り返してTFTアレイ基板を製造する。しかしながら、従来のかかる製造技術では、配線などが交差する部分のように、段差がある部分にパターンを印刷すると、段差部に空隙706が生じることがある。
【0012】
例えば、図7(b)に示すように、段差部に空隙706が生ずると、その段差によってレジストパターン705が切れてしまうパターンの欠損部707が発生する。その結果、その後のエッチング工程によって本来残さなければならない部分もエッチングされてしまい、断線或いは配線パターンなどの欠損が発生する。あるいは、印刷レジストパターン705が切れてしまうという致命的な状態にならなくとも、その空隙706の部分からエッチング液が印刷レジストパターン705の下に入り込んでしまい、配線などが交差する部分のように、段差がある部分に異常エッチングによるパターンの細りや断線或いはパターン欠損が発生してしまう。
【0013】
【特許文献1】特開2002−341376号公報(第5〜6頁、図3)
【特許文献2】特開2002−268585号公報(第5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
通常、印刷に用いられるレジストは、上述した特許文献2でも言及したように、印刷装置に取り付けられた印刷版を介し基板上に転写して形成されるため、印刷版上でそのパターンを精度良く保持しておく必要がある。すなわち、かかるレジストは、通常のフォトレジスト法の塗布工程などで使用されているスピンコータ用のレジストに比べて粘度を高くする必要があり、その結果凹凸や段差部分などに対するレジストの被覆性が著しく劣ることになる。したがって、上述した印刷に用いられるレジストの段切れという不具合は、凹凸や段差部分などの印刷レジストパターンがブリッヂ状に成り易い為に発生する。
【0015】
本発明の目的は、これらの課題を解決することにあり、印刷技術を用いて微細、微小パターンを含め多くのパターンを正常に形成することのできるTFTアレイパターン形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述した課題を解決するために、基板上に配線や電極を形成したTFTアレイパターンの形成方法において、前記配線や電極上に有機レジストを印刷装置により塗布するレジストパターンの印刷工程と、前記レジストパターンの印刷後に前記基板ごと有機用溶剤雰囲気中に曝し、前記有機レジストからなる前記レジストパターンを溶融し軟化させる工程とを含んで構成される。
【0017】
また、本発明は、基板上に配線や電極を形成したTFTアレイパターンの形成方法において、前記配線や電極上に金属粒子を分散させたレジストを印刷装置により塗布するレジストパターンの印刷工程と、前記レジストパターンの印刷後に大気中で前記レジストパターンを加熱し軟化させる加熱工程とを含んで構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のTFTアレイパターン形成方法は、レジストパターンを基板ごと所定の温度、蒸気圧に保持した有機溶剤雰囲気中に所望の時間曝すか、あるいは大気中で加熱処理することにより、印刷されたパターンを基板上で軟化(溶融)させ、基板上の段差部などに生じた印刷パターンの欠落を再度接合したり、或いは段差部などに生じた印刷パターンと下地成膜材料の空隙を埋めることができるので、その部分からのエッチング液等の浸入を防ぎ、結果として断線或いはパターンの欠損を防止すると共に、パターンの細りなどを抑制できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のTFTアレイパターン形成方法は、任意の基板上に配線や電極を形成したTFTアレイ基板を使用した液晶表示装置などのアレイパターン形成にあたり、TFTアレイ基板を形成する為に印刷装置を使用し、有機レジスト或いは金属粒子などを分散したレジストを印刷形成するものである。特に、パターン印刷後に有機用溶剤雰囲気中に曝すか、或いは熱などの処理によってパターンを軟化させることを特徴としている。以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の概略を説明するための液晶表示パネルにおけるTFT基板の状態遷移平面図である。図1に示すように、本実施例における液晶表示パネルのTFT基板は、まずガラス基板101上の全面に第一の配線金属膜102を被着する。ついで、この状態から所定の配線パターン103を作成するために、レジストをマスクとして不要部分の配線金属膜102をエッチングにより除去する。かかる状態では、ガラス基板101上に必要とする配線パターン103のみが残される。これによって、第一層の配線パターンが形成されたことになる。
【0021】
ついで、第二層の配線パターンが引き続いて形成される。すなわち、配線パターン103が形成されたガラス基板101の全面に層間絶縁膜104を成膜し、その上から全面に第二の配線金属膜105を被着する。さらに、ここでは、前述した配線パターン103に直交する印刷レジストパターン106を印刷装置(図示省略)により塗布する。しかる後、印刷レジストパターン106をマスクとして用いることにより、第二層の配線パターンが同様にエッチングにより形成される。
【0022】
図2(a),(b)はそれぞれ本発明の一実施例を説明するための図1におけるTFT基板の工程順に示したA−A´線断面図である。まず、図2(a)に示すように、液晶表示パネルにおいて、ゲート電極、半導体層、ドレイン電極等を積層パターンニング形成するTFTアレイ基板の製造にあたり、ガラス基板101の主面に形成した第一の配線パターン103上に層間絶縁膜104などを介して第二のパターンとなる電極や半導体層などの配線金属膜105をスパッタリング法やCVD法などを用いて成膜する。その後、印刷装置によって印刷レジストパターン106を所望の位置に1〜2μm程度の厚さで印刷形成する。このとき、段差部おいては、空隙107がそのままの状態で残っている。
【0023】
ついで、図2(b)に示すように、印刷レジストパターン106が形成された基板101を0.01%〜10%程度の有機溶剤雰囲気中に10秒〜120秒程度曝すか、或いは50℃〜150℃程度の高温中に10秒〜120秒程度保持する処理を施す。例えば、基板101をある固定された温度状態に保つことが出来るホットプレートや恒温層などの装置で保持し、印刷レジストパターン106を軟化(溶融)させ、下地の成膜材料と馴染ませる。このレジストパターン106の軟化によって、空隙107は解消する。ついで、焼成炉などで印刷レジストパターン106を硬化させた後、不要な下地の成膜領域をウエットエッチング処理、或いはドライエッチング処理によって除去する。しかる後、不要となった印刷レジストパターン106を剥離液などを用いて除去する。以下、順次このプロセスを繰り返してTFTアレイ基板を製造する。
【0024】
図3は本発明の一実施例をより具体的に説明するための印刷パターン形成時の前半の状態遷移断面図である。図3に示すように、ガラス基板301上には、ゲート配線膜302がスパッタ法などの蒸着方法で成膜され、その上に印刷装置によってレジストとしてのゲート配線印刷パターン303を印刷形成する。その後、この基板301を所定の温度、蒸気圧に保持した有機溶剤雰囲気中に所望の時間だけ曝し、取り出す。ついで、この基板301を所定の温度に保持したホットプレート等で硬化させ、エッチング処理によってレジスト(パターン303)に覆われた以外のゲート配線膜302の部分を取り除く。その後、剥離処理によってレジストパターンを除去し、ゲート配線のパターンを得る。
【0025】
次に、ゲート配線膜302だけが残されたガラス基板301上に絶縁膜304と半導体層305を順次スパッタ法やCVD法などの方法で成膜形成し、その上に印刷装置によって半導体層印刷パターン306を印刷形成する。その後、このTFT基板(ガラス基板301を含んだ全体)を所定の温度、蒸気圧に保持した有機溶剤雰囲気中に所望の時間だけ曝し取り出す。ついで、この基板を所定の温度に保持したホットプレート等で硬化させ、エッチング処理によってレジスト(印刷パターン306)に覆われた以外の半導体層305の部分だけを取り除く。その後、剥離処理によってレジストパターンを除去し、トランジスタの半導体層のパターンを得る。次に、この上にドレイン配線膜307を順次スパッタ法やCVD法などで成膜形成し、その上に印刷装置によってドレイン配線印刷パターン308を印刷形成する。ドレイン配線印刷パターン308が形成されると、基板を所定の温度、蒸気圧に保持した有機溶剤雰囲気中に所望の時間曝したのち、取り出す。その後、この基板を所定の温度に保持したホットプレート等で硬化し、エッチング処理によってレジストに覆われた以外のドレイン配線膜307の部分だけを取り除く。この工程までは、前半の工程であり、以下図4に示す後半の工程に続く。
【0026】
図4は本発明の一実施例をより具体的に説明するための印刷パターン形成時の後半の状態遷移断面図である。図4に示すように、前述した図3でドレイン配線印刷パターン308が形成され、レジストに覆われた以外のドレイン配線膜307の部分だけを取り除かれると、剥離処理によってレジストパターン308を除去し、トランジスタのドレイン配線のパターン307を得る。次に、この上に絶縁膜309をスパッタ法やCVD法などで成膜形成し、その上に印刷装置によってコンタクトホール印刷パターン310を印刷形成する。その後、この基板を所定の温度、蒸気圧に保持した有機溶剤雰囲気中に所望の時間曝し、取り出す。ついで、この基板を所定の温度に保持したホットプレート等で硬化させ、エッチング処理によってレジストに覆われた以外の絶縁膜309の部分だけを取り除く。その後、剥離処理によってレジストパターンを除去し、トランジスタのコンタクトホールのパターンを得る。
【0027】
次に、この上に画素電極膜311をスパッタ法やCVD法などで成膜形成し、その上に印刷装置により画素電極印刷パターン312を印刷形成する。その後、この基板を所定の温度、蒸気圧に保持した有機溶剤雰囲気中に所望の時間曝してから取り出す。その後、この基板を所定の温度に保持したホットプレート等で硬化させ、エッチング処理によってレジストに覆われた以外の画素電極膜311の部分だけを取り除く。しかる後、剥離処理によってレジストパターンを除去すると、トランジスタの画素電極のパターンを得ることができる。
【0028】
なお、ここに示したTFTアレイ基板の工程フローは、或る一例を示したに過ぎず、これ以外のTFTアレイ構造にも同様の方法で適用することができる。
【0029】
図5(a)〜(c)はそれぞれ本発明の一実施例における空隙個所修復時のTFT基板の工程順に示した断面図である。図5(a)に示すように、かかるTFT基板は、上述したように、ガラス基板401上に1層目の配線パターン402,層間絶縁膜403,2層目の配線金属膜404が順次形成され、その上にレジストによる印刷レジストパターン405が形成される。その際、段差部においては、空隙406が存在している。
【0030】
また、図5(b)に示すように、印刷レジストパターン405が印刷された後、下地の膜に凹凸部分がある場所(段差部)では空隙406が変形し、印刷レジストパターンの欠損407が発生しやすい。
【0031】
このような状態で、空隙406や欠損407を修復するためには、図5(c)に示すように、所定の温度、蒸気圧に保持した有機溶剤雰囲気室408に入れ、有機溶剤雰囲気中に所望の時間曝す。これにより、印刷レジストパターン405は軟化し、その結果流動性が高まるので、空隙406や印刷レジストパターンの欠損407を自己修復する。
【0032】
上述したように、本実施例によれば、所定の温度、蒸気圧に保持された有機溶剤雰囲気中に所望の時間曝すことにより、印刷されたパターンを基板上で軟化(溶融)させ、段差部などに生じた印刷パターンの欠落を再度接合したり、或いは段差部などに生じた印刷パターンと下地成膜材料の空隙を埋めることができるので、その部分からのエッチング液等の浸入を防ぎ、結果として断線或いはパターンの欠損を防止すると共に、パターンの細りなどを抑制できる。
【0033】
また、本実施例では、最終的に形成されるパターンを配線パターンを例に取り上げて説明したが、電極パターンであっても同様である。
【0034】
上述した本実施例は、TFTアレイ基板を使用した表示装置などに利用することができる。例えば、ガラス等の基板上に、半導体層を含む各種の配線あるいは電極パターンを絶縁膜を介して積層形成するTFTやその他のスイッチング素子などのデバイスを利用する液晶表示装置などに適用することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の他の実施例について、前述した図3,図4および図6を用いて説明する。
【0036】
まず、図3に示す液晶表示パネルのTFTアレイ基板の工程フローにおいて、ガラス基板301上にゲート配線膜302を形成しないで直接印刷装置によりレジストに金属粒子を含んだゲート配線印刷パターン303を印刷形成する。その後、このゲート配線印刷パターン303を印刷形成したガラス基板301を大気中で金属粒子を含んだレジストが硬化する温度よりも低い、所定の温度に保持したホットプレートを用いるか、或いは焼成炉に所望の時間保持して加熱する。ここで、レジストに金属粒子を含んだレジストを用いるのは、スパッタやCVD等の成膜工程とレジストパターンを形成した後に行なうエッチング工程と剥離工程も削除できるからである。ついで、この基板301を取り出し、所定の温度に保持したホットプレート等で硬化させゲート配線のパターンを得る。ついで、このゲート配線のパターン303上に、絶縁膜304と半導体層305を順次スパッタ法やCVD法などで成膜形成する。
【0037】
次に、半導体層305上に、印刷装置によりレジストとしての半導体層印刷パターン306を印刷形成する。その後、この基板301は、レジストが硬化する温度よりも低い、所定の温度に保持されたホットプレートで加熱するか、或いは焼成炉に所望の時間保持する。ついで、この基板を所定の温度に保持したホットプレート等で硬化させた後、エッチング処理によってレジストに覆われた以外の半導体層305の不要部分だけを取り除く。さらに、剥離処理によってレジストパターンを除去し、トランジスタの半導体層のパターン305を得る。ついで、この半導体層のパターン305上にドレイン配線膜307を形成しないで直接印刷装置によってレジストに金属粒子を含んだドレイン配線印刷パターン308を印刷形成する。
【0038】
次に、図4に示す液晶表示パネルのTFTアレイ基板の工程フローにおいて、前述の図3で説明したドレイン配線印刷パターン308を印刷形成した基板301を、レジストが硬化する温度よりも低い、所定の温度に大気中で保持したホットプレートで加熱するか、或いは大気中の焼成炉に所望の時間保持し取り出す。その後、この基板を所定の温度に保持したホットプレート等で硬化させ、トランジスタのドレイン配線のパターン307を得る。ついで、このドレイン配線のパターン307上に絶縁膜309をスパッタ法やCVD法などで成膜形成し、その上に印刷装置によってコンタクトホール印刷パターン310を印刷形成する。その後、このコンタクトホール印刷パターン310を印刷形成した基板301は、大気中において、レジストが硬化する温度よりも低い、所定の温度に保持したホットプレートで加熱するか、或いは大気中における焼成炉に所望の時間保持し取り出す。ついで、この基板を所定の温度に保持したホットプレート等で硬化させ、エッチング処理によってレジストに覆われた以外の絶縁膜309の不要部分だけを取り除く。
【0039】
次に、剥離処理によってレジストパターンとしてのコンタクトホール印刷パターン310を除去し、トランジスタのコンタクトホールのパターンを得る。ついで、絶縁膜309の上に画素電極膜311を印刷装置によってレジストにITO等の透明金属粒子を含んだ画素電極印刷パターン312を印刷形成する。ついで、この画素電極印刷パターン312を形成した基板301を、レジストが硬化する温度よりも低い、所定の温度に保持したホットプレートで加熱するか、或いは焼成炉に所望の時間保持して取り出しトランジスタの画素電極のパターンを得る。
【0040】
なお、ここに示したTFTアレイ基板の工程フローは、或る一例を示したに過ぎず、これ以外のTFTアレイ構造にも同様の方法で適用することができる。
【0041】
図6(a)〜(c)はそれぞれ本発明の他の実施例における空隙個所修復時のTFT基板の工程順に示した断面図である。図6(a),(b)に示すように、本実施例におけるTFT基板の構造は、上述した一実施例における図5(a),(b)と同様であるので、その説明は省略する。異なる点は空隙406や欠損部407の修復方法にある。
【0042】
すなわち、図6(c)に示すように、印刷レジストパターン405が印刷された後、下地の膜に凹凸部分がある場所に空隙406や印刷レジストパターンの欠損407が発生しやすいが、大気中で、レジストが硬化する温度よりも低い、所定の温度に保持されたホットプレート或いは焼成炉に所望の時間保持することにより、印刷レジストパターン405を軟化させる。この結果、印刷レジストパターン405が溶融し、流動性が高まるので、空隙406や印刷レジストパターンの欠損407を自己修復することができる。
【0043】
本実施例によれば、レジストが硬化する温度よりも低い、所定の温度に保持されたホットプレート或いは焼成炉に所望の時間保持することにより、印刷されたパターンを基板上で軟化させ、段差部などに生じた印刷パターンの欠落を再度接合したり、或いは段差部などに生じた印刷パターンと下地成膜材料の空隙を埋めることができる。したがって、その部分からのエッチング液等の浸入を防ぎ、結果として断線或いはパターンの欠損の発生を防止したり、パターンの細りなどを抑制することができる。
【0044】
また、本実施例では、最終的に形成されるパターンを配線パターンを例に取り上げて説明したが、電極パターンであっても同様である。
【0045】
上述した本実施例は、TFTアレイ基板を使用した表示装置などに利用することができる。例えば、ガラス等の基板上に、半導体層を含む各種の配線あるいは電極パターンを絶縁膜を介して積層形成するTFTやその他のスイッチング素子などのデバイスを利用する液晶表示装置などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の概略を説明するための液晶表示パネルにおけるTFT基板の状態遷移平面図である。
【図2】本発明の一実施例を説明するための図1に示すTFT基板の工程順に示したA−A´線断面図である。
【図3】本発明の一実施例をより具体的に説明するための印刷パターン形成時の前半の状態遷移断面図である。
【図4】本発明の一実施例をより具体的に説明するための印刷パターン形成時の後半の状態遷移断面図である。
【図5】本発明の一実施例における空隙個所修復時のTFT基板の工程順に示した断面図である。
【図6】本発明の他の実施例における空隙個所修復時のTFT基板の工程順に示した断面図である。
【図7】従来の一例を説明するための液晶表示パネルにおけるTFTアレイパターンの工程順に示した断面図である。
【符号の説明】
【0047】
101,301,401 ガラス基板
102,105,404 配線金属膜
103,402 配線パターン
104,403 層間絶縁膜
106,405 印刷レジストパターン
107,406 空隙
302 ゲート配線膜
303 ゲート配線印刷パターン
304,309 絶縁膜
305 半導体層
306 半導体層印刷パターン
307 ドレイン配線膜
308 ドレイン配線印刷パターン
310 コンタクトホール印刷パターン
311 画素電極膜
312 画素電極印刷パターン
407 印刷レジストパターンの欠損部
408 有機溶剤雰囲気室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配線や電極を形成したTFTアレイパターンの形成方法において、前記配線や電極上に有機レジストを印刷装置により塗布するレジストパターンの印刷工程と、前記レジストパターンの印刷後に前記基板ごと有機用溶剤雰囲気中に曝し、前記有機レジストからなる前記レジストパターンを溶融し軟化させる工程とを含むことを特徴とするTFTアレイパターン形成方法。
【請求項2】
前記レジストパターンを溶融し軟化させる工程は、前記基板ごと有機用溶剤雰囲気室において実施し、前記基板上の段差部近傍に形成されるレジストの空隙を埋めると共に、段切れ状態を修復することを特徴とする請求項1記載のTFTアレイパターン形成方法。
【請求項3】
前記配線や電極は、絶縁膜を介して多層に形成する際、前記印刷装置により複数回のレジストパターン形成を繰り返し行うことを特徴とする請求項1記載のTFTアレイパターン形成方法。
【請求項4】
基板上に配線や電極を形成したTFTアレイパターンの形成方法において、前記配線や電極上に金属粒子を分散させたレジストを印刷装置により塗布するレジストパターンの印刷工程と、前記レジストパターンの印刷後に大気中で前記レジストパターンを加熱し軟化させる加熱工程とを含むことを特徴とするTFTアレイパターン形成方法。
【請求項5】
前記レジストパターンを加熱し軟化させる加熱工程は、大気中でホットプレートにより加熱するか、もしくは大気中で焼成炉により加熱する処理により、前記レジストパターンを軟化させることを特徴とする請求項4記載のTFTアレイパターン形成方法。
【請求項6】
前記配線や電極は、絶縁膜を介して多層に形成する際、前記印刷装置により複数回のレジストパターン形成を繰り返し行うことを特徴とする請求項4記載のTFTアレイパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−47476(P2006−47476A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225553(P2004−225553)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000181284)鹿児島日本電気株式会社 (17)
【Fターム(参考)】