説明

カラーディスプレイ用TFTパネルおよびその製造方法

【課題】低温プロセスにおいて重複走査領域が発生する場合であっても、デバイス特性にばらつきの少ないTFTパネルを提供すること。
【解決手段】薄膜トランジスタが列状に配列され、かつ互いに平行な複数の制御領域が連続して並んだ基板と、前記基板上に配置された平坦化膜とを有するTFTパネルであって、前記制御領域には、最大結晶粒径が大きい半導体層からなるチャネルを有する薄膜トランジスタXが列状に配列された制御領域Xと、最大結晶粒径が小さい半導体層からなるチャネルを有する薄膜トランジスタYが列状に配列された制御領域Yと、が含まれ、前記制御領域X同士の中心間距離は、前記制御領域の短軸の3n[nは1以上の整数]倍である、カラーディスプレイ用TFTパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラーディスプレイ用TFTパネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイなどは、各副画素を制御するための薄膜トランジスタ(TFT)が内蔵されたTFTパネルと、TFTパネル上に配置された画素とを有する。
【0003】
TFTパネルに内蔵されたTFTは、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極を接続するチャネルとを有する。チャネルの材料の例には、キャリア移動度が高い、多結晶シリコン(poly−Si)層が含まれる。
【0004】
多結晶シリコンからなるチャネルの形成方法として、低温プロセスが知られている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。低温プロセスとは、アモルファスシリコンが溶融し、再凝固する過程で微結晶化する性質を利用した方法である。より具体的には、低温プロセスは、通常、基板上にアモルファスシリコン層を形成するステップと、基板上に形成されたアモルファスシリコン層にレーザや熱プラズマジェットなどを照射するステップとを有する。レーザや熱プラズマジェットを照射されたアモルファスシリコン層は、瞬間的に溶融し、すぐに再凝固する。シリコンは再凝固する過程で、結晶化し、多結晶シリコンからなるチャネルが得られる。
【0005】
このような、低温プロセスでは、プロセス中の最高温度が600度以下と比較的低く、安価に多結晶シリコン層からなるチャネルを作製することができるというメリットを有する。
【0006】
図1Aは、特許文献1に開示された、熱プラズマジェットを用いた半導体層(アモルファスシリコン層)の微結晶化方法を説明するための模式図である。図1Aに示されるように、特許文献1に開示された方法では、熱プラズマノズル10から噴射した熱プラズマジェットを基板101に照射する。
【0007】
熱プラズマノズル10は、電極棒11と、電極筒12と、噴出口13とを有する。電極筒12内は、冷媒流路14が配置されている。このような構成を有する熱プラズマノズル10の電極棒11と、電極筒12との間に電圧を印加すると、両極間にアーク放電が発生する。アーク放電の発生中に、電極棒11と、電極筒12との間にアルゴンガス等の不活性ガスを流すことで、噴出口13から熱プラズマジェット15を噴出し、基板101上に形成された半導体層(アモルファスシリコン層)103aを照射する。これにより、非結晶の半導体層103aは微結晶化され、微結晶の半導体層103pが形成される。
【0008】
一方、熱プラズマジェットで照射できる領域には限界がある。したがって、特許文献1に開示された低温プロセスで、大型ディスプレイ用のTFTパネルを作製する場合は、図1Bに示されるように半導体層が形成された基板101を熱プラズマジェット15で複数回走査し、基板上の半導体層103を微結晶化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−53632号公報
【特許文献2】特開2009−75523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に開示されたように基板を複数回走査することで、半導体層を微結晶化する場合、非結晶の半導体層が残らないように、走査する領域を一部重複させる。このため、大型ディスプレイ用のTFTパネルを製造する場合、2回走査される領域(以下「重複走査領域」とも称する)が発生してしまう。
【0011】
重複走査領域の半導体層は、一度しか走査されない領域(以下「単走査領域」とも称する)の半導体層の結晶粒径は、半導体層の結晶粒径と異なり大きくばらつく。半導体層の結晶粒径は、半導体層からなるチャネルの閾値電圧や移動度に大きな影響を与える(図3参照)。
【0012】
このため、重複走査領域における半導体層からなるチャネルを有するTFTでは、閾値電圧や移動度などの特性がばらつく。このような、TFTの特性のばらつきはカラーディスプレイの輝度がばらつき(以下「輝度ムラ」とも称する)につながる。
【0013】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、低温プロセスにおいて重複走査領域が発生する場合であっても、TFTパネルのデバイス特性のばらつきによるディスプレイの輝度ムラを抑えること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1は以下に示すTFTパネルに関する。
[1]薄膜トランジスタが列状に配列され、かつ互いに平行な複数の制御領域が連続して並んだ基板と、前記基板上に配置された平坦化膜とを有するTFTパネルであって、前記制御領域には、最大結晶粒径が大きい半導体層からなるチャネルを有する薄膜トランジスタXが列状に配列された制御領域Xと、最大結晶粒径が小さい半導体層からなるチャネルを有する薄膜トランジスタYが列状に配列された制御領域Yと、が含まれ、前記制御領域X同士の中心間距離は、前記制御領域の短軸の3n[nは1以上の整数]倍である、カラーディスプレイ用TFTパネル。
[2]前記基板には、赤色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたR制御領域と、緑色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたG制御領域と、青色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたB制御領域とが交互に並べられ、全ての前記制御領域Xは、前記R制御領域、前記G制御領域または前記B制御領域である、[1]に記載のカラーディスプレイ用TFTパネル。
[3]全ての前記制御領域Xは、前記G制御領域である、[2]に記載のカラーディスプレイ用TFTパネル。
[4]前記薄膜トランジスタXの半導体層の最大結晶粒径は、100nm以上であり、前記トランジスタYの半導体層の最大結晶粒径は、70〜80nmである、[1]〜[3]のいずれかに記載のカラーディスプレイ用TFTパネル。
【0015】
本発明の第2は以下に示す有機ELディスプレイに関する。
[5][2]または[3]に記載のTFTパネルを有し、前記TFTパネルの平坦化膜上には、2以上の赤色に発光する副画素が列状に配列された発色領域Rと、2以上の緑色に発光する副画素が列状に配列された発色領域Gと、2以上の青色に発光する副画素が列状に配列された発色領域Bと、が交互に配置された、有機ELディスプレイであって、前記R制御領域のそれぞれの薄膜トランジスタは、前記発色領域Rのそれぞれの副画素の画素電極に接続し、前記G制御領域のそれぞれの薄膜トランジスタは、前記発色領域Gのそれぞれの副画素の画素電極に接続し、前記B制御領域のそれぞれの薄膜トランジスタは、前記発色領域Bのそれぞれの副画素の画素電極に接続する、有機ELディスプレイ。
【0016】
本発明の第3は以下に示すTFTパネルの製造方法に関する。
[6]赤色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたR制御領域と、緑色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたG制御領域と、青色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたB制御領域とが交互に並んだ基板と;前記基板上に配置された平坦化膜と;を有するカラーディスプレイ用TFTパネルの製造方法であって、非結晶の半導体層が形成された基板を準備するステップと;前記非結晶の半導体層が形成された前記基板を、第1走査領域と第2走査領域とが走査方向に沿って一部重なり、かつ前記第2走査領域と第3走査領域とが走査方向に沿って一部重なるように、熱プラズマジェットで走査し、前記第1走査領域、前記第2走査領域および前記第3走査領域の半導体層を微結晶化するステップと;前記微結晶化された半導体層をパターニングし、前記R制御領域、G制御領域およびB制御領域の薄膜トランジスタのチャネルを形成するステップであって、前記R制御領域、G制御領域およびB制御領域の長軸は、前記走査方向と平行であり、前記R制御領域、G制御領域およびB制御領域の短軸は、前記第1走査領域と前記第2走査領域とが重なる重複走査領域Aおよび前記第2走査領域と前記第3走査領域とが重なる重複走査領域Bの短軸よりも大きく、前記重複走査領域Aと、前記重複走査領域Bとの中心間距離は、前記R制御領域の短軸、前記G制御領域の短軸および前記B制御領域の短軸の和のn[nは1以上の整数]倍であるステップと;を有するカラーディスプレイ用TFTパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば重複走査領域および制御領域の位置およびサイズを調節することで、重複走査領域における半導体層からなるチャネルを有するTFTを補正しやすくすることができる。このため、本発明によればTFTパネルのデバイス特性のばらつきによるディスプレイの輝度ムラを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】特許文献1に開示された従来の半導体層の微結晶化する方法を示す模式図
【図2】本発明で用いる熱プラズマノズルの断面図
【図3】TFTにおけるゲート電極に印加する電圧と、ソース・ドレイン間を流れる電流との関係を示すグラフ
【図4】本発明の実施の形態1の第2ステップを示す図
【図5】本発明の実施の形態1の第2ステップを示す図
【図6】本発明の実施の形態1の第2ステップを示す図
【図7】本発明の実施の形態1の第3ステップ後の基板の平面図
【図8】本発明の実施の形態2の第2ステップを示す図
【図9】本発明の実施の形態3の有機ELディスプレイを示す図
【図10】本発明の実施の形態3の有機ELディスプレイを示す図
【図11】本発明の実施の形態3の有機ELディスプレイに含まれるTFTパネルの平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.本発明のTFTパネルの製造方法
本発明は低温プロセスによるカラーディスプレイ用TFTパネルの製造方法に関する。本発明の製造方法によって製造されるTFTパネルは、基板と、薄膜トランジスタ(以下「TFT」とも称する)と、平坦化膜とを有する。
【0020】
基板の表面は、ライン状のR制御領域と、ライン状のG制御領域と、ライン状のB制御領域とが交互に並んでいる。R制御領域、G制御領域およびB制御領域のサイズは同一であることが好ましい。
【0021】
R制御領域には、赤色に発光する副画素を制御するためのTFTが列状に配列され;G制御領域には、緑色に発光する副画素を制御するためのTFTが列状に配列され;B制御領域には、青色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列される。したがって、本発明のTFTパネルから、TFTパネルの平坦化膜上に赤色の副画素が列状に配列された領域(発色領域R)と、緑色の副画素が列状に配列された領域(発色領域G)と、青色の副画素が列状に配列された領域(発色領域B)とが交互に並ぶカラーディスプレイパネルを得ることができる(図9参照)。
【0022】
R制御領域、G制御領域およびB制御領域のサイズは、発色領域R、発色領域Gおよび発色領域Bのサイズと同じである。
【0023】
「副画素を制御するTFT」には少なくとも駆動TFTが含まれる。また、「副画素を制御するTFT」はさらに、スイッチングTFTや他のTFTを含んでもよい。
【0024】
各TFTは、ソース電極およびドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極とを接続する半導体層からなるチャネルと、チャネルを制御するゲート電極と、ゲート電極をソース電極およびドレイン電極とから絶縁するゲート絶縁膜と、を有する。
【0025】
本発明のTFTパネルの製造方法は、
1)非結晶の半導体層が形成された基板を準備する第1ステップと
2)非結晶の半導体層が形成された基板を熱プラズマジェットまたはレーザで走査し、非結晶の半導体層を微結晶化する第2ステップと、
3)微結晶化された半導体層をパターニングし、R制御領域、G制御領域およびB制御領域の各TFTのチャネルを形成する第3ステップと、
4)基板上に平坦化膜を形成する第4ステップと、を有する。以下それぞれのステップについて詳細に説明する。
【0026】
1)第1ステップでは非結晶(アモルファス)の半導体層が形成された基板を準備する。
【0027】
基板の材料の例には、シリコン・カーバイト(SiC)やアルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、ガラス、シリコン、ゲルマニウムウェーハーなどが含まれる。
【0028】
基板と半導体層との間には、酸化硅素膜(SiO:0<x≦2)や窒化硅素膜(Si0<x≦4)などが配置されていてもよい。基板の表面を酸化硅素膜や窒化硅素膜で覆うことで、半導体層に基板から不純物が混入することを防止することができる。
【0029】
酸化硅素膜や窒化硅素膜などは、基板を純水やアルコールなどで洗浄した後、常圧化学気相堆積法(APCVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)などのCVD法またはスパッタ法などの成膜方法で基板の表面に形成すればよい。
【0030】
半導体層は例えばシリコン層である。基板上に半導体層を形成する方法は特に限定されないが例えば、APCVD法やLPCVD法、PECVD法などのCVD法、またはスパッタ法や蒸着法などの物理気相堆積法(PVD法)である。
【0031】
2)第2ステップでは、非結晶の半導体層が形成された基板を熱プラズマジェットまたはレーザで走査し、非結晶の半導体層を微結晶化する。具体的には、第1走査領域を走査し、第1走査領域内の非結晶の半導体層を微結晶化し;第2走査領域を走査し、第2走査領域内の非結晶の半導体層を微結晶化し;第3走査領域を走査し、第3走査領域内の非結晶の半導体層を微結晶化する。
本発明では、基板は、第1走査領域と第2走査領域とが走査方向に沿って一部重なり;第2走査領域と第3走査領域とが走査方向に沿って一部重なるように、走査される(図4〜6参照)。
【0032】
ここで「基板を熱プラズマジェットまたはレーザで走査する」とは、基板を熱プラズマジェットまたはレーザで照射しながら、熱プラズマジェットまたはレーザを基板に対して相対的に移動させることを意味する。熱プラズマジェットまたはレーザを基板に対して相対的に移動させるには、熱プラズマジェット源またはレーザ源を移動させてもよいし、基板を移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。
【0033】
また、「走査領域」とは、一つの熱プラズマジェットまたはレーザによって走査されることによって、半導体層が微結晶化される領域を意味する。より具体的には「走査領域」
とは、熱プラズマジェットまたはレーザによって照射される領域のうち600〜1100℃まで加熱される領域を意味する。アモルファスシリコンなどからなる半導体層は、通常600〜1100℃で加熱されることで微結晶化されるからである。また「微結晶化する」とは半導体層の結晶粒径を10〜80nmにすることを意味する。
【0034】
1つヘッドから噴出される熱プラズマジェットによる走査で処理できる領域の幅は1〜100mmであり、1つヘッドから照射されるレーザによる走査で処理できる領域の幅は、1〜200mmである。第1走査領域と第2走査領域と第3走査領域のサイズは同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0035】
本発明では、第1走査領域、第2走査領域および第3走査領域を順に走査してもよいし(実施の形態1参照)、同時に走査してもよい(実施の形態2参照)。
【0036】
第1走査領域、第2走査領域および第3走査領域を順に走査する場合、第1走査領域を走査した後、レーザ光源または熱プラズマ源を、第2走査領域の走査方向端部に移動させ、第2走査領域を走査する。そして第2走査領域を走査した後、レーザ光源または熱プラズマ源を、第3走査領域の走査方向端部に移動させ、第3走査領域を走査する(図4〜6参照)。
【0037】
一方、第1走査領域、第2走査領域および第3走査領域を同時に走査する場合、少なくとも3つのレーザ光源または熱プラズマ源を用意し、それぞれ第1走査領域、第2走査領域および第3走査領域の走査方向端部に配置し、第1走査領域、第2走査領域および第3走査領域を同時に走査する(図8参照)。
【0038】
上述のように、基板は、第1走査領域と第2走査領域とが走査方向に沿って一部重なり;第2走査領域と第3走査領域とが走査方向に沿って一部重なるように、走査される。第1走査領域と第2走査領域とが重なる領域は、重複走査領域Aと称する。また、第2走査領域と第3走査領域とが重なる領域は、重複走査領域Bと称する。重複走査領域では、基板が熱プラズマジェットまたはレーザによって2回走査される。重複走査領域の短軸は通常、100μm以下であり、10〜100μmである。
【0039】
このように2回走査されることによって微結晶化された半導体層の結晶粒径は、一度の走査のみで微結晶化された半導体層の結晶粒径と異なり、大きくばらつく。具体的には、一度しか走査されない走査領域(重複走査領域以外の走査領域;以下「単走査領域」とも称する)における半導体層の結晶粒径は、10nm〜80nmの範囲内に収まるのに対し、重複走査領域における半導体層の結晶粒径は、10nm〜1000nm(1μm)と大きくばらつく。このように、重複走査領域では、半導体層の最大結晶粒径が大きくなる。また、重複走査領域における半導体層の平均結晶粒径は、単走査領域における半導体層の平均結晶粒径よりも、20nm以上大きくなる。
【0040】
基板は、レーザで走査してもよいし、熱プラズマジェットで走査してもよいが、熱プラズマジェットで走査することが好ましい。熱プラズマジェットで走査するほうが、大面積を高速に処理できるため、低コストで半導体層を結晶化することができる。さら、熱プラズマジェットで走査する場合、熱処理の時間がmsecオーダーと短いことから、SPC(Solid Phase Crystalization)による安定した微結晶を得ることができる。
【0041】
ここで「熱プラズマ」とは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度が10000K程度である超高温の熱源である。また「熱プラズマジェット」とは、高速の熱プラズマ流を意味する。このような熱プラズマジェットは図2に示されたような熱プラズマノズルから噴出される。
【0042】
図2に示されるように、熱プラズマノズル10は、電極棒11と、電極筒12と、噴出口13とを有する。電極筒12内は、冷媒流路14が配置されている。このような構成を有する熱プラズマノズル10の電極棒11と、電極筒12との間に電圧を印加すると、両極間にアーク放電が発生する。アーク放電の発生中に、電極棒11と、電極筒12との間にアルゴンガス等の不活性ガスを流すことで、噴出口13から熱プラズマジェット15を噴出させることができる。上述したように熱プラズマの温度は10000K程度であるが、噴出口13から噴出された熱プラズマジェットの温度は600〜1100℃程度であることが好ましい。
【0043】
熱プラズマジェットで基板を走査する場合、不活性ガスの流量を1.0〜6.0L/秒とし、熱プラズマノズルに供給する電力を約10kWとし、噴出口13と基板101とのギャップGを5〜200mmとし、走査速度を100〜2000mm/秒とすればよい。
【0044】
このように、第2ステップで半導体層を微結晶化することで、半導体層のキャリア移動度を向上させることができる。より具体的には、非結晶の半導体層のキャリア移動度は約0.5cm/Vs程度であるが、半導体層の結晶粒径を10〜80nmとすることで、キャリア移動度を1〜10cm/Vsまで上昇させることができる。
【0045】
3)第3ステップでは、微結晶化された半導体層をパターニングし、R制御領域、G制御領域およびB制御領域の各TFTのチャネルを形成する。半導体層をパターニングする手段は、特に限定されないが、ウェットエッチングやドライエッチングなどがあげられる。
【0046】
本発明では、R制御領域、G制御領域およびB制御領域の長軸は、走査方向と平行である。また、R制御領域、G制御領域およびB制御領域の短軸は、重複走査領域Aおよび重複走査領域Bの短軸よりも大きい。通常、制御領域の短軸は100μm以上である。
【0047】
また、重複走査領域Aと、重複走査領域Bとの中心間距離は、R制御領域の短軸、G制御領域の短軸およびB制御領域の短軸の和のn倍である。ここで「n」とは1以上の整数を意味する。
【0048】
上述したように、2度走査される重複走査領域では、半導体層の結晶粒径が大きくばらつき、不安定になる。チャネルである半導体層の結晶粒径は、TFTの閾値電圧および移動度に影響を及ぼす。具体的には、チャネルである半導体層の結晶粒径が大きいと、TFTの閾値電圧が低く、移動度が大きくなり、チャネルである半導体層の結晶粒径が小さいと、TFTの閾値電圧が高く、移動度が小さくなる。
【0049】
このため、重複走査領域の結晶粒径が不安定な半導体層からなるチャネルを有するTFT(以下「TFT−X」とも称する)では、閾値電圧が高くなったり、低くなったり、移動度が大きくなったり、小さくなったりし、TFTの特性が不安定になる(図3参照)。
【0050】
しかしながら本発明では、R制御領域、G制御領域およびB制御領域の短軸を、重複走査領域Aおよび重複走査領域Bの短軸以上とし、かつ重複走査領域Aと、重複走査領域Bとの中心間距離を、R制御領域、G制御領域およびB制御領域の短軸の長さの和のn倍とすることで、TFT−Xを補正することが容易になり、TFTパネルのデバイス特性のばらつきによるディスプレイの輝度ムラを抑制することが可能となる。
【0051】
このように制御領域と重複走査領域とのサイズおよび位置を制御することで、TFTパネルのデバイス特性のばらつきによるディスプレイの輝度ムラを抑えることができるメカニズムについては、後述する「2.本発明のTFTパネル」において詳細に説明する。
【0052】
本発明のTFTパネルの製造方法は、平坦化膜を形成する第4ステップの前に、さらに、ゲート電極を形成するステップと、ゲート絶縁膜を形成するステップと、ソース電極およびドレイン電極を形成するステップと、を有する。電極や、ゲート絶縁膜は例えばCVD法によって形成される。
【0053】
ゲート電極を形成するステップと、ゲート絶縁膜を形成するステップと、ソース電極およびドレイン電極を形成するステップとは、TFTパネルに含まれるTFTがトップゲートかボトムゲートかによって順序が異なる。
【0054】
TFTがトップゲートである場合、TFTは、半導体層をパターニングするステップ、ソース電極およびドレイン電極を形成するステップ、ゲート絶縁膜を形成するステップ、ゲート電極を形成するステップの順で製造される。
【0055】
一方、TFTがボトムゲートである場合、TFTは、ゲート電極を形成するステップ、ゲート絶縁膜を形成するステップ、半導体層をパターニングするステップ、ソース電極およびドレイン電極を形成するステップの順で製造される。
【0056】
4)第4ステップでは基板上に平坦化膜を形成する。平坦化膜は基板上に配置されたTFTを覆うように形成される。平坦化膜の材料は絶縁性であれば特に限定されないが、例えば、アクリルやポリイミドなどである。
【0057】
このように、本発明によれば、デバイス特性にばらつきがないTFTパネルを製造することができる。
【0058】
2.本発明のTFTパネル
次に上述した本発明の製造方法によって製造されたTFTパネルについて説明する。
【0059】
本発明のTFTパネルは、基板と、基板上に配置されたTFTと、TFTを覆うように基板上に配置された平坦化膜とを有する。
【0060】
基板上には、互いに平行な複数の制御領域が連続して並んでいる。制御領域は、赤色に発光する副画素を制御するためのTFTが列状に配列されたR制御領域と、緑色に発光する副画素を制御するためのTFTが列状に配列されたG制御領域と、青色に発光する副画素を制御するためのTFTが列状に配列されたB制御領域とに分類される。すなわち本発明のTFTパネルでは、R制御領域、G制御領域およびB制御領域が基板上に交互に並んでいる。
【0061】
基板の材料の例には、シリコン・カーバイト(SiC)やアルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、ガラス、シリコン、ゲルマニウムウェーハーなどが含まれる。
【0062】
基板の表面は、酸化硅素膜(SiO:0<x≦2)や窒化硅素膜(Si0<x≦4)などで覆われていてもよい。基板の表面を酸化硅素膜や窒化硅素膜で覆うことで、後述する半導体層に基板から不純物が混入することを防止することができる。
【0063】
各TFTは、ソース電極およびドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極とを接続する半導体層からなるチャネルと、チャネルを制御するゲート電極と、ゲート電極をソース電極およびドレイン電極とから絶縁するゲート絶縁膜と、を有する。
【0064】
半導体層の材料の例には、シリコンやゲルマニウムなどの四族元素単体、シリコン・ゲルマニウムやシリコン・カーバイドやゲルマニウム・カーバイドなどの四族元素複合体、ガリウム・ヒ素やインジウム・アンチモンなどの三族元素と五族元素との複合体化合物およびカドミウム・セレンの二族元素と六族元素との複合体化合物などが含まれる。上述のように本発明の半導体層は、熱プラズマジェットやレーザを走査することによって微結晶化されている。
【0065】
本発明の制御領域には、最大結晶粒径が大きい半導体層からなるチャネルを有するTFT(TFT−X)が列状に配列された制御領域(以下「制御領域X」とも称する)と、最大結晶粒径が小さい半導体層からなるチャネルを有するTFT(TFT−Y)が列状に配列された制御領域(以下「制御領域Yとも称する」)と、が含まれることを特徴とする。上述のようにTFT−Xは「本発明のTFTパネルの製造方法」で述べた重複走査領域における半導体層からなるチャネルを有するTFTであり;TFT−Yは「本発明のTFTパネルの製造方法」で述べた単走査領域における半導体層からなるチャネルを有するTFTである。このため、TFTパネルにおける制御領域Xは、TFTパネルの製造過程における重複走査領域を含み、制御領域Yは、TFTパネルの製造過程における単走査領域を含む(図7参照)。
【0066】
上述のように、重複走査領域における半導体層の最大結晶粒径は、単走査領域における半導体層の最大結晶粒径よりも大きい。このため、TFT−Xの半導体層の最大結晶粒径は、通常TFT−Yの半導体層の最大結晶粒径よりも、大きくなる。より具体的には、TFT−Xの半導体層の最大結晶粒径は、100nm以上であり、TFT−Yの半導体層の最大結晶粒径は、70〜80nmとなる。また、TFT−Xの半導体層の平均結晶粒径は、TFT−Xの半導体層の平均結晶粒径よりも、20nm以上大きくなる。
【0067】
また、上述のように、重複走査領域における半導体層の結晶粒径(10nm〜1000nm)は、単走査領域における半導体層の結晶粒径(10nm〜80nm)と異なり、大きくばらつく。このため、TFT−Xの半導体層の結晶粒径も、10nm〜1000nmの範囲でばらつき、不安定となる。
【0068】
半導体層の結晶粒径は、半導体層のSEM写真から半導体層の結晶粒径を測定することで算出することができる。
【0069】
また、上述のように、重複走査領域間の中心間距離は、制御領域の短軸の3n倍(R制御領域、G制御領域およびB制御領域の短軸の長さの和のn倍)とされている。このため完成品のTFTパネルでも、制御領域X同士の中心間距離が制御領域の短軸の3n倍になる。
【0070】
上述のようにTFTパネルではR制御領域、G制御領域およびB制御領域が交互に並んでいる。このため、制御領域X同士の中心間距離が制御領域の短軸の3n倍であると、全ての制御領域Xは、R制御領域、G制御領域またはB制御領域となる。
【0071】
制御領域Xは、R制御領域、G制御領域またはB制御領域であってよいが、最も発光効率が高い副画素の制御領域であることが好ましい。
以下の表は有機ELディスプレイにおける副画素の発光効率(cd/A)を示した表である。
【表1】

【0072】
表1に示されるように、有機ELディスプレイでは緑色に発光する副画素の発光効率が最も高い。このため、TFTパネルが有機ELディスプレイに用いられる場合、全ての制御領域Xは、G制御領域であることが好ましい。
【0073】
上述のように、制御領域Xに含まれるTFT−Xの半導体層の結晶粒径は、大きくばらつき不安定になる。このため、制御領域XではTFT−Xの閾値電圧および移動度がばらつく。閾値電圧がばらつくと、同じゲート電圧を印加した場合であっても、ソース・ドレイン間に流れる電流がばらつく。また、移動度がばらつくと、チャネルの電流の流れ易さがばらつくため、同じゲート電圧を印加した場合でも、ソース・ドレイン間に流れる電流がばらつく。このようなTFTの特性(閾値電圧および移動度)のばらつきは、ディスプレイの画素間の輝度ムラにつながる。
【0074】
このような、TFTの特性(閾値電圧および移動度)のばらつきによるディスプレイの輝度ムラを抑えるためには、TFT−Xを補正する必要がある。
【0075】
ここで、「TFT−Xを補正する」とは、TFT−Xのゲート電極に印加する電圧を調整したり、TFT−Xのソース電極とドレイン電極との電位差を調節したりすることで、閾値電圧および移動度の差を相殺することを意味する。
【0076】
図3は、TFTのゲート電極に印加する電圧と、ソース電極およびドレイン電極間に流れる電流との関係を示したグラフである。縦軸はソース電極およびドレイン電極間に流れる電流を示し、横軸はゲート電極に印加する電圧を示す。曲線X(X−1、X−2)は、TFT−Xにおけるゲート電圧とソース・ドレイン間の電流との関係を示し;曲線YはTFT−Yにおけるゲート電圧とソース・ドレイン間の電流との関係を示す。
【0077】
上述のようにTFT−Yでは、チャネルとなる半導体層の結晶粒径のばらつきが少ない。このため、TFT−Yでは、では閾値電圧が安定する。したがって、図3に示されるように、TFT−Yでは、ゲート電圧が一定の場合、TFT−Yのソース・ドレイン間に流れる電流(Ia)も一定となる。
【0078】
一方、TFT−Xでは、チャネルとなる半導体層の結晶粒径のばらつきが大きい。このため、TFT−Xでは、では閾値電圧が不安定になり、ゲート電圧とソース・ドレイン間の電流との関係が、図3に示される曲線X−1から曲線X−2の範囲でばらつく。したがって、TFT−Xでは、ゲート電圧が一定であっても、TFT−Xのソース・ドレイン間に流れる電流がIb〜Icの範囲でばらつく。
【0079】
このような、ソース・ドレイン間の電流のばらつきは、ディスプレイの輝度ムラにつながる。このため、TFT−Xでは、補正によって、TFT−Xのソース・ドレイン間に流れる電流の量を一定にすることが求められる。
【0080】
具体的には、TFT−Xのゲート電圧を下げたり、ソース電極とドレイン電極との電位差を小さくしたりすることで、曲線X−1の特性を有するTFT−Xのソース・ドレイン間に流れる電流を、TFT−Yのソース・ドレイン間に流れる電流と同じにすることができる。
また、TFT−Xのゲート電圧を上げたり、ソース電極とドレイン電極との電位差を大きくしたりすることで、曲線X−2の特性を有するTFT−Xのソース・ドレイン間に流れる電流を、TFT−Yのソース・ドレイン間に流れる電流と同じにすることができる。
【0081】
このようにTFT−Xを補正することで、TFT−Xの特性のばらつきによる輝度ムラを抑えることができる。
【0082】
本発明では、制御領域Xを最も発光効率の高い副画素の制御領域(例えば表1に示した発光効率の副画素を有する有機ELディスプレイの場合はG制御領域)とすることで、TFT−Xの補正を容易にしている。
【0083】
発光効率の高い副画素は低い電流でも駆動することができるため、発光効率の高い副画素を制御するTFTのソース・ドレイン間に流れる電流量は比較的少なく設定されている。このため、補正によって、ソース・ドレイン間に流れる電流量をさらに上げることは、容易である。
【0084】
一方、発光効率の低い副画素(例えば有機ELディスプレイの場合、青色に発色する副画素)は、一定の輝度を得るために多くの電流が要求される。このため、発光効率の低い副画素を制御するTFTのソース・ドレイン間に流れる電流量は既に高く設定されていることが多い。このため、補正によって、ソース・ドレイン間に流れる電流量をさらに上げようとして、不可能な場合がある。
【0085】
このように、本発明によれば、TFTパネルのデバイス特性にばらつきによる輝度ムラを抑えることが可能となる。
【0086】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0087】
[実施の形態1]
実施の形態1では、一つのプラズマ源を用いたTFTパネルの製造方法について説明する。
【0088】
本実施の形態のTFTパネルの製造方法は、1)非結晶の半導体層103aが形成された基板101を準備する第1ステップと、2)非結晶の半導体層103aが形成された基板101を熱プラズマジェット15で走査し、非結晶の半導体層103aを微結晶化する第2ステップと(図4〜図6)、3)微結晶化された半導体層103pをパターニングし、R制御領域220R、G制御領域220GおよびB制御領域220Bの各TFTのチャネルを形成する第3ステップと(図7)、4)基板101上に平坦化膜を形成する第4ステップとを有する。
【0089】
1)第1ステップでは、非結晶の半導体層103aが形成された基板101を準備する。基板101は、例えばガラス基板であり、半導体層103aは例えば、アモルファスシリコン層である。
【0090】
2)第2ステップでは、非結晶の半導体層103aが形成された基板101を熱プラズマジェット15で走査し、非結晶の半導体層103aを微結晶化する。本実施の形態では、1つのプラズマ源から噴出された熱プラズマジェットで、第1走査領域110、第2走査領域120および第3走査領域130を順に走査し、第1走査領域110内の非結晶の半導体層103aを微結晶化し;第2走査領域120内の非結晶の半導体層103aを微結晶化し;第3走査領域130内の非結晶の半導体層103aを微結晶化する。
【0091】
図4は、熱プラズマジェット15で第1走査領域110を走査する様子を示す。走査領域内の熱プラズマジェット15の温度は600〜1100℃とすればよい。このような熱プラズマジェット15で第1走査領域110を走査することで、第1走査領域110内の非結晶の半導体層103aが微結晶化され、微結晶の半導体層103pが形成される。
【0092】
図5は、熱プラズマジェット15で第2走査領域120を走査する様子を示す。図5に示されるように第1走査領域110と第2走査領域120とは、走査方向に沿って一部重なる。熱プラズマジェット15で第2走査領域120を走査することで、第2走査領域120内の非結晶の半導体層103aが微結晶化され、微結晶の半導体層103pが形成される。
【0093】
また、第1走査領域110と第2走査領域120とが重なる重複走査領域140Aでは、既に微結晶化された半導体層103pがさらに走査される。このように2度走査された領域における半導体層103pの結晶粒径のばらつきは、一度しか走査されない領域の半導体層103pの結晶粒径のばらつきよりも大きくなる。
【0094】
図6は、熱プラズマジェット15で第3走査領域120を走査する様子を示す。図6に示されるように第2走査領域120と第3走査領域130とは、走査方向に沿って一部重なる。熱プラズマジェット15で第3走査領域130を走査することで、第3走査領域130内の非結晶の半導体層103aが微結晶化され、微結晶の半導体層103pが形成される。
【0095】
また、第2走査領域120と第3走査領域130とが重なる重複走査領域140Bでは、既に微結晶化された半導体層103pがさらに走査される。このように2度走査された領域における半導体103pの結晶粒径のばらつきは、一度しか走査されない領域の半導体層103pの結晶粒径のばらつきよりも大きくなる。
【0096】
このように、基板101を繰り返し走査することで、基板101上の非結晶の半導体層103aを全て微結晶の半導体層103pに変化させる。また、図4〜6では基板の走査方向が1方向である例について説明したが、基板は図1Bに示されるように熱プラズマジェットを折り返しながら走査してもよい。
【0097】
3)第3ステップでは、微結晶化された半導体層103pをパターニングし、R制御領域220R、G制御領域220GおよびB制御領域220Bの各TFTのチャネルを形成する。半導体層をパターニングする手段は、例えばウェットエッチングやドライエッチングである。
【0098】
図7は、第3ステップで半導体層をパターニングし、各TFTのチャネルを形成した後の基板101の平面図である。領域210には、1つの副画素を制御するためのTFTのチャネル150が配置されている。各領域210には、駆動TFT用のチャネル150aおよびスイッチングTFT用のチャネル150bが配置される。このように図7では、1つの副画素を制御するTFTの数が駆動TFTとスイッチングTFTとの2つである例について説明したが、1つの副画素を制御するTFTの数は2以上であってもよい。また、基板101上には、R制御領域220R、G制御領域220G、B制御領域220Bが交互に並んでいる。
【0099】
本実施の形態では、R制御領域220R、G制御領域220GおよびB制御領域220Bの長軸は、走査方向と平行である。また、R制御領域220R、G制御領域220GおよびB制御領域220Bの長軸は、重複走査領域140Aおよび重複走査領域140Bの短軸よりも大きい。
【0100】
また、重複走査領域140Aと、重複走査領域140Bとの中心間距離dは、R制御領域220Rの短軸、G制御領域220Gの短軸およびB制御領域220Bの短軸の和のn倍である。ここで「n」とは1以上の整数を意味する。さらに、全ての重複走査領域(140A、140B)は、G制御領域220Gに重なる。
【0101】
このため、本実施の形態では、重複走査領域140における半導体層103pからなるチャネルを有するTFT(TFT−X)は、全てG制御領域220Gに配列される。
【0102】
4)第4ステップでは、基板101上に平坦化膜を例えば、スピンコート法やダイコート法などで形成する。
【0103】
このように、本実施の形態では、TFT−Xが配列される領域を最も発光効率の高い副画素の制御領域(例えば有機ELディスプレイの場合はG制御領域)とすることで、TFT−Xの補正が容易になる。このため、本実施の形態によればTFTパネルのデバイス特性のばらつきによる輝度ムラを抑えることができる。
【0104】
[実施の形態2]
実施の形態1では一つのプラズマ源からの熱プラズマジェットで基板を走査するTFTパネルの製造方法について説明した。実施の形態2では、2以上のプラズマ源を用いたTFTパネルの製造方法について説明する。
【0105】
本実施の形態のTFTパネルの製造方法は、1)非結晶の半導体層103aが形成された基板101を準備する第1ステップと、2)非結晶の半導体層103aが形成された基板101を熱プラズマジェット15で走査し、非結晶の半導体層103aを微結晶化する第2ステップと、3)微結晶化された半導体層103pをパターニングし、R制御領域220R、G制御領域220GおよびB制御領域220Bの各TFTのチャネルを形成する第3ステップと、4)基板101上に平坦化膜を形成する第4ステップと、を有する。
【0106】
本実施の形態の製造方法は、第2ステップ以外は、実施の形態1の製造方法と同じである。したがって、本実施の形態では、第2ステップ以外の説明は省略する。
【0107】
図8は、本実施の形態の第2ステップで走査される基板101の様子を示す。図8に示されるように、本実施の形態の第2ステップでは、3つの熱プラズマジェット15で、第1走査領域、第2走査領域および第3走査領域を同時に走査する。それぞれの熱プラズマジェット15は別々のプラズマ源(噴出口)から噴出される。
【0108】
図8に示されるように第1走査領域110、第2走査領域120および第3走査領域130を走査することで、第1走査領域110、第2走査領域120および第3走査領域130における半導体層103aが微結晶化され、微結晶の半導体層103pが形成される。
【0109】
また、本実施の形態でも、第1走査領域110と第2走査領域120とは走査方向に沿って一部重複し;第2走査領域120と第3走査領域130とは走査方向に沿って一部重複する。このため、第1走査領域110と第2走査領域120とが重なる重複走査領域140Aおよび第2走査領域120と第3走査領域130とが重なる重複走査領域140Bは、2度走査される。
【0110】
このように、本実施の形態によれば、複数の熱プラズマジェットで基板を走査するので、単位時間辺りに走査できる面積が大きい。このため、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加えて、TFTパネルをより短時間で製造することができる。
【0111】
[実施の形態3]
実施の形態3では、本発明の製造方法によって製造されたTFTパネルを有する有機ELディスプレイについて説明する。
【0112】
図9Aは、本実施の形態の有機ELディスプレイ300の平面図である。図9Aに示されるように、本実施の形態の有機ELディスプレイ300は、TFTパネル100と、TFTパネル100上にマトリクス状に配置された、複数の副画素310を有する。副画素310には、赤色に発光する副画素310R、緑色に発光する副画素310Gおよび青色に発光する副画素310Bが含まれる。副画素310R、副画素310Gおよび副画素310Bが一つの画素を構成する。
【0113】
図9Bは、図9Aに示された有機ELディスプレイ300に含まれる副画素310の断面図である。図9Bに示されるように、それぞれの副画素310は、少なくともTFTパネル100上に配置された画素電極311と、画素電極311上に配置された有機機能層313と、有機機能層313上に配置された対向電極(不図示)と、を有する。有機機能層313は、TFTパネル100上に配置されたバンク301によって区切られている。バンク301は、高さ約1μmのポリイミド樹脂などからなる有機層である。
【0114】
また、TFTパネルの平坦化膜上には、副画素310Rが列状に配列された発色領域320Rと、副画素310Gが列状に配列された発色領域320Gと、青色に発光する副画素310Bが列状に配列された発色領域320Bと、が交互に並んでいる。発色領域320の長軸は後述する制御領域220の長軸と平行である。
【0115】
図9では各副画素の有機機能層がTFTパネル100上に配置されたバンク301によって区切られている形態を示したが、有機機能層は、図10Aに示されるように、発色領域320ごとにバンク301によって区切られていてもよい。図10Aに示されたように、有機機能層が、発色領域320ごとにバンク301によって区切られていていると、発色領域320内の各副画素310の有機機能層がライン状に連結する。
【0116】
図10Bは、図10Aに示された有機ELディスプレイ300に含まれる副画素310の断面図である。図10Bに示されるように、有機機能層が発色領域320ごとにバンク301によって区切られる場合、バンク301は、画素電極311を囲む画素規制層302上に配置されることが好ましい。画素規制層302とは、スパッタ法などでTFTパネル100上に配置された、厚さ30〜300nmのSiNなどからなる無機絶縁層である。
【0117】
図11は、本実施の有機ELディスプレイから副画素を省略した有機ELディスプレイの平面図である。すなわち図11はTFTパネル100の平面図である。
【0118】
TFTパネル100は、基板101と、基板101上に配置されたTFT(駆動TFT160aおよびスイッチングTFT160b)と、基板上に配置された平坦化膜(不図示)とを有する。
【0119】
基板101上には、上述した副画素310Rを制御するためのTFT(駆動TFT160aおよびスイッチングTFT160b)が列状に配列されたR制御領域220Rと、副画素310Gを制御するためのTFTが列状に配列されたG制御領域220Gと、副画素310Bを制御するためのTFTが列状に配列されたB制御領域220Bとが、交互に並んでいる。R制御領域220R、G制御領域220GおよびB制御領域220Bのサイズは、発色領域320R、発色領域320Gおよび発色領域320Bのサイズと同じである。
【0120】
各TFT160は、ソース電極およびドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極とを接続する半導体層からなるチャネルと、チャネルを制御するゲート電極と、ゲート電極をソース電極およびドレイン電極とから絶縁するゲート絶縁膜と、を有する(不図示)。
【0121】
R制御領域220R内のTFTのソース電極またはドレイン電極は、副画素310Rの画素電極と接続し;G制御領域220G内のTFTのソース電極またはドレイン電極は、副画素310Gの画素電極と接続し;R制御領域220G内のTFTのソース電極またはドレイン電極は、副画素310Gの画素電極と接続する。
【0122】
図11に示されるように、制御領域には、最大結晶粒径が大きい半導体層らなるチャネルを有するTFT(TFT−X)が列状に配列された制御領域Xが含まれる。上述のようにTFT−Xは「本発明のTFTパネルの製造方法」で述べた重複走査領域における半導体層からなるチャネルを有するTFTである。
【0123】
制御領域220X同士の中心間距離dは、制御領域220の短軸の3n倍である。このため、全ての制御領域220Xは、R制御領域220R、G制御領域220GまたはB制御領域220Bとなる。より具体的には、全ての制御領域220Xは、G制御領域220Gである。
【0124】
このように、本実施の形態の有機ELディスプレイパネルでは、制御領域220Xを最も発光効率の高い副画素310GのG制御領域220Gとすることで、TFT−Xの補正を容易にしている。
【0125】
また、本実施の形態では、発光効率が最も高い副画素が副画素Gである例について説明したが、副画素の発光効率は、材料によって変化する。このため材料によっては、副画素Gでなく副画素Rまたは副画素Bの発光効率が最も高い場合もある。この場合、全ての制御領域220Xを、発光効率が最も高い副画素RのR制御領域または副画素BのB制御領域とすべきである。
【0126】
このように、本実施の形態によれば輝度ムラのない有機ELディスプレイが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によれば重複走査領域の位置を調節することで、重複走査領域における半導体層からなるチャネルを有するTFTの特性を補正しやすくすることができる。このため、本発明によれば輝度ムラのないカラーディスプレイを提供することができる。
【符号の説明】
【0128】
10 熱プラズマノズル
11 電極棒
12 電極筒
13 噴出口
14 冷媒流路
15 熱プラズマジェット
100 TFTパネル
101 基板
103 半導体層
110 第1走査領域
120 第2走査領域
130 第3走査領域
140 重複走査領域
150 チャネル
160 TFT
220 制御領域
300 有機ELディスプレイ
301 バンク
302 画素規制層
310 副画素
311 画素電極
313 有機機能層
320 発色領域



【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタが列状に配列され、かつ互いに平行な複数の制御領域が連続して並んだ基板と、前記基板上に配置された平坦化膜とを有するTFTパネルであって、
前記制御領域には、最大結晶粒径が大きい半導体層からなるチャネルを有する薄膜トランジスタXが列状に配列された制御領域Xと、最大結晶粒径が小さい半導体層からなるチャネルを有する薄膜トランジスタYが列状に配列された制御領域Yと、が含まれ、
前記制御領域X同士の中心間距離は、前記制御領域の短軸の3n[nは1以上の整数]倍である、カラーディスプレイ用TFTパネル。
【請求項2】
前記基板には、赤色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたR制御領域と、緑色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたG制御領域と、青色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたB制御領域とが交互に並べられ、
全ての前記制御領域Xは、前記R制御領域、前記G制御領域または前記B制御領域である、請求項1に記載のカラーディスプレイ用TFTパネル。
【請求項3】
全ての前記制御領域Xは、前記G制御領域である、請求項2に記載のカラーディスプレイ用TFTパネル。
【請求項4】
前記薄膜トランジスタXの半導体層の最大結晶粒径は、100nm以上であり、前記トランジスタYの半導体層の最大結晶粒径は、70〜80nmである、請求項1に記載のカラーディスプレイ用TFTパネル。
【請求項5】
請求項2に記載のTFTパネルを有し、
前記TFTパネルの平坦化膜上には、2以上の赤色に発光する副画素が列状に配列された発色領域Rと、2以上の緑色に発光する副画素が列状に配列された発色領域Gと、2以上の青色に発光する副画素が列状に配列された発色領域Bとが交互に配置された、有機ELディスプレイであって、
前記R制御領域のそれぞれの薄膜トランジスタは、前記発色領域Rのそれぞれの副画素の画素電極に接続し、
前記G制御領域のそれぞれの薄膜トランジスタは、前記発色領域Gのそれぞれの副画素の画素電極に接続し、
前記B制御領域のそれぞれの薄膜トランジスタは、前記発色領域Bのそれぞれの副画素の画素電極に接続する、有機ELディスプレイ。
【請求項6】
赤色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたR制御領域と、緑色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたG制御領域と、青色に発光する副画素を制御するための薄膜トランジスタが列状に配列されたB制御領域とが交互に並んだ基板と;前記基板上に配置された平坦化膜と;を有するカラーディスプレイ用TFTパネルの製造方法であって、
非結晶の半導体層が形成された基板を準備するステップと;
前記非結晶の半導体層が形成された前記基板を、第1走査領域と第2走査領域とが走査方向に沿って一部重なり、かつ前記第2走査領域と第3走査領域とが走査方向に沿って一部重なるように、熱プラズマジェットで走査し、前記第1走査領域、前記第2走査領域および前記第3走査領域の半導体層を微結晶化するステップと;
前記微結晶化された半導体層をパターニングし、前記R制御領域、G制御領域およびB制御領域の薄膜トランジスタのチャネルを形成するステップであって、
前記R制御領域、G制御領域およびB制御領域の長軸は、前記走査方向と平行であり、前記R制御領域、G制御領域およびB制御領域の短軸は、前記第1走査領域と前記第2走査領域とが重なる重複走査領域Aおよび前記第2走査領域と前記第3走査領域とが重なる重複走査領域Bの短軸よりも大きく、前記重複走査領域Aと、前記重複走査領域Bとの中心間距離は、前記R制御領域の短軸、前記G制御領域の短軸および前記B制御領域の短軸の和のn[nは1以上の整数]倍であるステップと;
を有するカラーディスプレイ用TFTパネルの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−124288(P2011−124288A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278804(P2009−278804)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】