説明

サイクロンリアクターおよび関連の方法

サイクロンリアクター(10)において、化合物を合成しかつ反応させる方法が、開示および記載される。触媒粒子、液体触媒、および/または液体反応物質を含有し得る液体キャリアが、提供され得る。この液体キャリアは、サイクロンリアクター(10)内で渦巻き層(38)に形成され得る。また、少なくとも1種の反応物質を含有する反応物質組成物が、渦巻き層(38)の少なくとも一部分を通して射出され得、これにより、反応物質の少なくとも一部は、反応生成物に変換される。このサイクロンリアクター(10)は、微妙な温度制御により、反応物質の触媒との接触を向上させ、それにより、反応の収率および選択性を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、化学的化合物を合成するためのデバイスおよび方法に関する。従って、本発明は、化学、リアクター設計、材料科学および物理学の分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
核エネルギーおよびほとんどの代替エネルギーの使用の、元々の社会的困難に起因して、エネルギー貯蔵および分配についての新規かつ適した形態の同定および開発に対し、大いなる需要が存在する。いずれ、水素および/または何らかの合成ガス生成物(例えば、メタノール、ジメチルエーテル、合成ディーゼル燃料など)が、現存するエネルギーキャリアのほとんどと置き換わる可能性が大いにある。これらの生成物および化学物質の生産の経済は、その合成のために使用されるリアクターの効率に大きく依存する。
【0003】
従って、種々の合成プロセスの選択性および/または収率を改善するデバイスおよび方法は、リアクター設計および化学合成の分野において飛躍的な進歩となり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明に従い、化合物を合成する方法は、渦巻き層中の液体キャリアを提供する工程を包含し得る。少なくとも1種の反応物質を含有する反応物質組成物は、渦巻き層の少なくとも一部分を通して射出されることにより、反応物質の少なくとも一部分は、合成化合物に変換され得る。一局面において、この渦巻き層は、リアクター内への液体キャリアの接線射出によって形成され得る。
【0005】
多くのリアクターが使用され得るが、現在好ましい構成は、気体または液体の噴霧サイクロンである。図1は、気体噴霧サイクロンリアクターを示し、これは以下でより詳細に説明される。気体噴霧サイクロンリアクターにおいて、気体組成物は、噴霧して気体組成物の表面積を増大させるために構成された多孔性物質を通るように強いられ得る。有利にも、液体キャリアの流速は、渦巻き層の所定の膜厚および反応物質の所定の保持時間を達成するために、容易に調節され得る。
【0006】
渦巻き層が垂直なリアクターを通して下へ移動するに従い、合成された化合物および/または反応生成物は、リアクターから除去され得る。代表的には、渦巻き層は、中央のガス状〜泡状の芯を取り巻く、環状または円筒形の膜の中で回転するが、そうである必要はない。従って、1つの局面において、泡状の芯および渦巻き層は、リアクターから別々に取り除かれ得、それにより、さらなる分離の工程の必要が減少する。泡状の芯は、リアクターの上部からまたは底部からのどちらからでも取り除き得る。各出口の流れにおける特定の成分に依存して、さらなる分離が、気体−液体分離機または液体−液体分離プロセスを包含し得る。
【0007】
本発明の一つのさらなる局面において、渦巻き層は、渦に誘導された圧力差を引き起こし、この圧力差は、気体反応物質の、渦巻き層を通った移動を増加するのに十分である。この渦巻き層は、リアクターの直径の約5%〜約20%、好ましくは約10%の厚みを有する。従って、処理量/反応容量は、接触の改善ならびに熱い同および物質移動の上昇に起因して、増大し得る。さらに、本発明のデバイスおよび方法は、副反応を抑制し得、そして選択性を上昇させ得る。最後に、この設計のさらなる利点は、多孔性表面における気体のクッションである。これは、触媒混合物との接触に起因する内部表面の腐食を低減させる。
【0008】
代表的には、合成反応は発熱反応であるので、いくつかの冷却エレメントを介して渦巻き層から熱を除去し得る。例えば、冷却コイルまたは他の冷却エレメントが、好ましくは流れの乱れは最低限で、渦巻き層内に設置され得る。必要に応じて、外部ジャケットまたは冷却管を、リアクター本体と熱的接触させて設置し得る。
【0009】
本発明のデバイスおよび方法は、種々の化学反応に利用し得る。例として、化学反応は、触媒反応であり得る。固体触媒物質は、それ自体として、液体キャリアの一部分として提供されて、固体−液体触媒スラリーを形成し得る。あるいは、触媒物質は、液体触媒として提供され得るか、または液体キャリアと混合される、キャリア中に可溶性の触媒であり得る。必要に応じて、または触媒混合物もしくはスラリーに加えて、触媒物質は、気体組成物が通らされる、多孔性の層の一部分であり得る。触媒物質は、多孔性の層に被膜され得るか、または2枚の多孔性の層の間に保護され得る。このような触媒反応は、固体または液体触媒、液体キャリア、気体反応物質、および必要に応じて、反応生成物を含む、多相の反応である。いくつかの実施形態において、触媒反応は、少なくとも三相を含む反応である。反応物質の物理的状態に依存して、液体キャリアおよび/または気体組成物は、少なくとも1種の反応物質を含み得る。
【0010】
本発明の別の代替の局面において、触媒混合物は、処理せずに直接、リアクターへ再利用される。しかし、特定の合成反応に依存して、何らかの分離および/または触媒処理が必要であり得る。
【0011】
任意の適切な液体が、液体キャリアとして使用され得る。この液体キャリアは、反応に関して不活性であるか、または反応物質であり得る。適切な液体キャリアのいくつかの非限定の例としては、鉱油(例えば、パラフィン油)、生成物の重質留分、水、液体反応物質、液体触媒、およびこれらの物質の混合物が挙げられる、当業者は、所望の化学反応、粘性、作動温度、反応物質または他の種と起こり得る反応、分離の容易さなどに基づき、適切な液体キャリアを選択し得る。従って、より重質の油が、一般に好ましいが、いくつかの場合には、低分子量の液体(例えば、炭素数が12未満の低級炭化水素)が好ましくあり得る。
【0012】
本発明のなお別の局面において、反応物質組成物は、所望される特定の合成反応に依存し得る。特定の反応物質を含む気体組成物または液体組成物が、使用され得る。いくつかの特定の反応が、以下により詳細に記載される。しかし、いくつかの実施形態において、反応物質組成物としては、水素および一酸化炭素、酸素のみ、酸素および気体反応物質、水素のみ、または気体反応物質のみが挙げられ得る。
【0013】
本発明のデバイスおよび方法を用いて、広い範囲の化学合成プロセスが実施され得る。本発明における使用に適した反応の種類のいくつかの例としては、メタノール、ジメチルエーテル、フィッシャー−トロプシュ生成物、高級アルコール、酸化生成物、アルキル化生成物、オリゴマー化生成物、水素化生成物、および水素化処理炭化水素の合成が挙げられるが、これらに限定されない。これらの型の反応のいくつかは、以下により詳細に記載される。
【0014】
このように、本発明の種々の特徴が概説されることにより、以下の詳細な説明がよりよく理解され得、そして当該技術分野への本発明の貢献がよりよく理解され得る。本発明の他の特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明、添付の図面、および特許請求の範囲から明らかになるか、または、本発明の実施により確認され得る。
【0015】
図面は、例示目的のみで提供され、必ずしも一定の比率に拡大して描かれているわけではない。このように、本発明の範囲から逸脱せずに、大きさおよび比率についてのバリエーションが、存在し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
図面に図示された例示的実施形態の参照がなされ、そして同じものを説明するために、特定の言語が本明細書中で使用される。それにもかかわらず、これらによって、本発明の範囲の限定が意図されないことが理解される。本開示を所有する当業者が想到する、本明細書中で例示される本発明の特徴、処理工程および材料の変更および更なる改変、本明細書中で説明される本発明の原理のさらなる適用(、ならびに本開示の占有)は、本発明の範囲内と考えられる。本明細書中で使用される専門用語もまた、特定の実施形態を説明する目的のみのために使用されており、限定を意図しない。
【0017】
(A.定義)
本発明の明細書および特許請求の範囲において、以下の用語が使用される。
【0018】
単数形「a」、「an」および「the」は、そうでないことを明らかに指示しない限り、複数の言及を含む。したがって、「一つの(an)入口」は、1以上のこのような入口を含む。
【0019】
本明細書中で使用する場合、「渦巻き層」は、円形または渦巻き型の流れパターンを有する、大容量の液体キャリアをいう。いくつかの場合、渦巻き層は、液体キャリア中の任意の所定の粒子が、リアクターに沿って出口に向かう、ほぼ螺旋である経路を追うような、回転する液体の膜のように見られ得る。当業者は、流体の流れパターンは、乱流混合を含み得、有意に変化し得ることを理解する。さらに、流速における勾配は、放射状に、かつリアクターの長さに沿って、変わり得る。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「実質的に含まない」などは、組成物中の同定された元素または物質を含まないことをいう。特に、「実質的に含まない」ことが同定された元素は、組成物中に全く含まれていなくてもよく、または組成物において測定可能な効果を有さないほどわずかな量でのみ含まれてもよい。
【0021】
濃度、量、および他の数値データは、本明細書中で、範囲の書式で提示され得る。このような範囲の書式は、利便性および簡潔さのためのみに使用され、その範囲の制限として明示的に記載された数値のみだけでなく、全ての個々の数値または小範囲が明示的に記載されているかのように、各数値およびその範囲内に包含される小範囲が範囲内に含まれるよう、柔軟に解釈される。
【0022】
例えば、約1〜約4.5の数値の範囲は、明示的に記載された約1〜約4.5の制限のみでなく、個々の数値(例えば、2、3、4)および小範囲(例えば、1〜3、2〜4)などをも含むと解釈されるべきである。同じ原則が、1つの数値のみを記載する範囲に適用され、例えば、「4.5未満」は、全ての上記の値および範囲を含むと解釈されるべきである。さらに、このような解釈は、範囲の大きさまたは記載された特性にかかわらず、適用されるべきである。
【0023】
(B.本発明)
ここで参照した図面において、本発明の種々の要素が議論される。以下の説明は、本発明の原理の例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲を狭くするとみなされるべきではないことが、理解されるべきである。
【0024】
触媒的変換生成物の生産の経済性は、合成プロセスの間に使用されるリアクターの効率に大きく依存する。本発明の一つの実施形態において、多相(気体、液体および/または固体含有)触媒プロセスのためのスラリー気体噴霧サイクロンリアクター(SG−SCR)は、改善された選択性、改善された収率および高い信頼性を可能にする反応環境を提供し得る。あるいは、本発明は、液体噴霧サイクロンリアクターとして実施され得る。
【0025】
ここで図1を参照すると、サイクロンリアクター10は、渦巻き状の流れによって制御された高い力場を確立し、これにより、スラリー中に懸濁された細かい触媒粒子の慣性を増大させ、かつ高密度の非常に小さな気体反応物質の気泡を方向付けられた動きで発生させることによって、衝突効率を改善するために、使用され得る。サイクロンリアクターは、多数のセクションから構成され得るリアクター本体を含み得るが、単一のユニットが製造され得る。図1に示した実施形態において、ヘッダユニット12は、このヘッダに作動可能に連結した入口14を有し得る。このヘッダユニットおよび入口は、リアクター本体内の触媒混合物の渦の流れを生成するように構成され得る。一局面において、この渦の流れは、オフセット入口流れによって生成され得る。
【0026】
1以上の第二の入口16が、リアクター本体に作動可能に連結し得る。以下でより詳細に記載されるように、第二の入口は、固体、気体および/または液体のいずれかの反応物質のサイクロンリアクター10の内部チャンバ18への導入における使用のために、構成され得る。サイクロンリアクターからの気相および泡相を除去するために、代替の気体底流出口20が、リアクター本体の排出ユニット24部分に作動可能に連結され得る。さらに、サイクロンリアクターからの液相を除去するために、液体底流出口22が、排出ユニットに作動可能に連結され得る。したがって、サイクロンリアクターは、材料が、内部チャンバの一部から入り、そして内部チャンバの別の部分から出るような、通り抜け式リアクターであり得る。
【0027】
図1に示す実施形態において、液体底流出口22は、気体底流20の周りを同心円状に方向付けられる。しかし、このことは必須ではない。例えば、サイクロンリアクターの底流全体が、更なる反応および/または分離のために、別のユニットに向けられ得る。したがって、いくつかの実施形態において、セパレーター26が、排出ユニット24に作動可能に連結され得る。このようなセパレーターの非限定の例としては、気体−液体セパレーター、液体−液体セパレーターなどが挙げられる。このようなセパレーターは、当業者に周知であり、特定の反応生成物に基づいて選択され得る。
【0028】
一つの実施形態において、SG−SCRは、空気噴霧ハイドロサイクロン(本明細書中で全体が参考として援用される米国特許第4,279,743号に記載される)、および代表的なスラリーリアクターの両方の基本の特徴を、兼ね備え得る。別の局面において、本発明は、触媒多相リアクターとして使用され得る。さらに、図面は垂直なリアクターを図示するが、実際の方向付けは、ほぼいかなる位置にも変わり得る。代表的に、液体キャリア、渦巻き層および気体は、重力とほぼ無関係の方向を向くために十分に高い速度で移動する。したがって、いくつかの実施形態において、リアクターは、水平位置に方向づけられ得る。
【0029】
(SG/L−SCRの説明)
再び図1を参照すると、サイクロンリアクター10は、ここで、液体キャリアが、サイクロンヘッダ12を通って、接線に沿って(tangentially)内部チャンバ18内に供給され、放射方向に特定の厚みの渦巻き流れを発生させることが示される。液体キャリアは、液体触媒物質および/または固体触媒物質を含み得る。例えば、固体触媒粒子が、液体キャリア(例えば、油)中に、触媒スラリーの形態で懸濁され得る。あるいは、液体触媒が、液体キャリア中に混合されて、触媒混合物を形成し得る。さらなる任意の実施形態において、液体キャリアは、液体反応物質を含有し得るか、または本質的に液体反応物質からなり得る。
【0030】
別の任意の実施形態において、サイクロンリアクターは、液体キャリアの渦巻き流れを維持するために、別個の混合器を含み得る。好ましくは、液体キャリアの渦巻き流れは、液体キャリアの回転する層または膜を形成する。
【0031】
代表的に、気体噴霧デバイスは、サイクロンリアクター本体の気体入口16と内部チャンバ18との間に設置され得る。気体噴霧デバイスは、気体を液体と接触させるために気体の表面積を増大させ得る、任意のデバイスであり得る。適切な気体噴霧デバイスの特定の非限定の例としては、多孔性の管、メッシュ、すのこ(grating)、非対称スタティックミキサー(asymmetric static mixers)などが挙げられる。多孔性の管は、金属(例えば、ステンレス鋼)、INCONEL(Ni−Cr−Fe合金)、セラミックフリット(ceramic frit)およびプラスチックフリット(plastic frit)ならびにステンレス鋼メッシュまたは穿孔された(perforated)管から作製され得る。一つの実施形態において、気体噴霧デバイスは、気体組成物が多孔性触媒層を実質的に通ってリアクター本体内へ通過するように、気体入口に方向付けられた多孔性触媒層であり得る。さらなる実施形態において、リアクター本体は、サイクロン本体の少なくとも一部に隣接した、気体充満空間を含み得る。
【0032】
気体反応物質は、図1に示すジャケット付き(jacketed)多孔性管壁26のような気体噴霧デバイスを通って噴霧され得る。さらに、この多孔性管壁は、リアクター外殻28内に同心円状に設置されて、開放空間30がこれらの間に存在するようになり得る。気体が多孔性壁を通って流れるときに、気体は、液体キャリアの高速の渦巻き流れによって、無数の小さな泡へと剪断される。図2に示すように、泡32は、渦巻き層の内表面に向かって加速的に触媒粒子34と衝突し、そして液体の存在下で触媒反応を受ける。本明細書中に記載するように、圧力差は、泡を中心に引き込んで泡の芯36を形成させ、一方、触媒粒子は、渦巻き層38内に留まろうとする。
【0033】
再び図1を参照すると、液体キャリア、ならびに未反応の気体および低沸点成分を含有する気体/泡芯は、底流生成物として、排出ユニット24を通して排出され得る。リアクターからの排出速度を、液体キャリア排出弁および気体/泡排出弁により調節し得、所望のように圧力および保持時間を調節し得る。さらに、各入り口14および第二入口16での流入速度を調節して、出口速度および渦巻き特性を制御し、所望の保持時間を達成し得る。
【0034】
あるいは、サイクロンリアクターは、液体噴霧サイクロンリアクター(SL−SCR)として操作され得る。この場合、反応物質は、液体として提供され得、これは、次いで、同様の様式でサイクロンリアクター内に入るときに噴霧される。本明細書中の説明は、主に本発明の気体噴霧実施形態に焦点を当てるが、同様の原理および効果が、液体噴霧実施形態に適用可能である。無論、気体および/または泡芯の量は、どちらも減らされ得るかまたは非存在であり得るが、液体キャリアの渦巻き層は、維持され得る。例えば、いくつかの高温の適用(例えば、特定の酸化反応)において、気相は、渦巻き層の中心に向かって移動するように生成され得る。さらに、渦巻き流れの中心に存在するより低い圧力により、溶解していた気体が遊離し得る。したがって、本明細書中で記載され、そして/またはSG−SCRに適用された原理は、SL−SCRにもまた適用され得る。
【0035】
特定の操作条件は、所望する反応に依存して変化し得る。しかし、サイクロンリアクターは、代表的に、−20〜350℃の範囲の反応温度および1〜100atmの範囲の圧力で作動し得る。さらに、サイクロンリアクターは、広い範囲の温度および圧力にわたって作動し得る。リアクターの材料および厚みは、高い反応温度および高い反応圧力に耐えるために調節され得る。例えば、リアクター本体の厚みは、増減されて、リアクター条件を変化させ得る。リアクター本体は、液体組成物および気体組成物と非反応性であり、かつ温度、圧力、磨耗性などの操作条件に耐え得る、任意の材料で形成され得る。適切な材料の非限定の例としては、ステンレス鋼、INCONEL(Ni−Cr−Fe合金)、セラミック、プラスチックおよび複合材または合金が挙げられる。
【0036】
サイクロンリアクターの最も一般的な形態において、液体および任意の触媒を含有する液体キャリアが、提供され得る。一実施形態において、液体キャリアは、液体(例えば、油相)中に懸濁または溶解している均質な固体触媒粒子(例えば、1〜10μm)を含有し得る。触媒粒子は、種々の形態で提供され得る。これらの形態としては、例えば、粉末、微粒子、針状物(needle)、被膜された表面、被膜された粒子などであるが、これらに限定されない。別の実施形態において、液体キャリアは、液体触媒(例えば、特定の反応に依存して、HSOおよび/またはHF)を含有し得る。液体キャリアは、接線に沿って、サイクロンヘッダを通して多孔性の管内へ供給されて、放射方向の特定の厚みの渦巻き流れを発生させ得る。合成プロセスおよび反応速度論に依存して、複数の気体噴霧触媒サイクロンリアクターが、直列および/または並列で方向付けられて、所望の変換、収量、および/または反応の順序を達成し得る。
【0037】
発熱反応(合成ガスプロセス、アルキル化など)の場合、処理温度は、液体キャリアおよび反応基質の入口温度の制御、低沸点液体生成物の気相への気化、および/またはサイクロンリアクターの反応空間への冷却コイルの挿入の、いずれかによって決定され得る。一般に、冷却エレメントは、渦巻き流れおよび/またはリアクター本体において、液体キャリアと熱的接触するように設置され得る。例えば、冷却コイルは、渦巻き流れ内のリアクター本体の内側に設置され得る。好ましくは、冷却コイルは、流れの乱れを最小化するように(例えば、流れ方向と平行に)方向付けられ得る。あるいは、または内部冷却コイルに加えて、冷却ジャケットまたは冷却コイルが、リアクター本体の外側の周りに設置され得る。直列して作動するSG−SCRの配列において、冷却ユニットは、リアクターの間か、または各リアクターの供給ラインに沿って配置され得る。
【0038】
液相での反応物質組成物の桁外れの分散は、とりわけ、強い反応条件を増強し、触媒の消費を低下し、そしていくつかの場合、望まない副反応を抑制する。物質移動特性および熱移動特性の改善、ならびに単位リアクター容量当たりの高処理量に起因して、このリアクターの使用は、多管リアクターまたは気体噴霧リアクターのどちらかと比較して、合成ガスプロセスの資本コストおよび運転コストの大幅の削減を可能にすることが期待される。SG−SCRは、リアクターを(本質的には回転する膜を)通過する液体キャリアを提供する。従来のスラリーリアクターとはっきりと異なり、SG−SCRは、反応経路のあらゆるポイントで液体キャリアが新しい反応物質と接触することを可能にする。したがって、液体キャリアは、渦巻き流れの全体にわたって未反応の反応物質に主に接触し、反応生成物の触媒混合物への曝露を制限する。このことは、反応物質の所望の生成物への選択的な変換を支持し、そして接触時間の減少により望まない副反応を低減する。さらに、本発明のサイクロンリアクターは、反応物質と触媒物質との間の接触を改善させ、そして流れの容量を増大させることにより、リアクターの容量を減少させることを可能にする。
【0039】
このシステムの別の利点は、触媒スラリーを何かに対して使用し、触媒スラリーが高速で金属表面と接触する場合に、予測される腐食の本来的な縮小である。一つの実施形態において、液体キャリアは、反応物質気体のクッション上に乗って、リアクターを通ってサイクロン渦巻き流れの中で回転し、正常な操作においてリアクター本体の内部表面とほとんど接触しない。固体を含有する液体(例えば、石炭および頁岩の上質化におけるような)に関して突き当たるより困難な問題のひとつは、高速スラリー流れを受ける装置のこれらの部分の腐食である。
【0040】
特別な設計の考慮が、高い効率の反応のために必要な条件を確立するために、使用され得る。
【0041】
(作動の原理)
本発明において流体の流れ現象を記載するために使用され得るいくつかの因子は、渦巻き層の厚み、保持時間、渦巻き層の速度および気泡の大きさの分布である。実験結果は、渦巻き層の厚みが、流体の流量速度および円筒の長さと独立であり、そしてサイクロンリアクターの半径の約3%から約15%までの範囲(そしてしばしば約10%)であり得ることを示す。この条件を、実験からおよび/または理論から確立した。例えば、渦巻きノズルについてテイラーの無粘性理論を使用した渦巻き層の厚みの計算値は、51mm管について0.103Rまたは2.5mm、および102mm管について0.08Rまたは4.1mmである。
【0042】
サイクロンリアクターは、リアクターの基本的な機能に影響することなく、意図する適用に依存して、ほぼいかなる容積の大きさにもできる。しかし、ほとんどの場合、サイクロンリアクターは、約4cmから約1mまで、好ましくは約5cmから約0.5mまでの内径を有するリアクター本体を有し得る。本明細書中の議論は、円筒形リアクター本体に焦点を合わせているが、他の形態もまた、使用可能である。例えば、リアクター本体は、少なくとも内部表面において円錐形状を有し得る。この例において、円錐形状は、出口に向かって直径を狭める。このように、流速および局所的な圧力は、さらなるデバイスなしで、所定のレベルに制御されかつ維持され得る。
【0043】
実験結果は、渦巻き層の厚みは、51mmの半径の管について、1.9mmから3.1mmまで変わり得ることを示す。渦巻き層を形成する流体の保持時間は、実験データから計算されており、渦巻き層を形成する液相について、代表的に0.2〜0.3秒である。一般的に、気泡の保持時間tは、方程式1から計算され得る。
【0044】
【数1】

ここで、ηは液相の動粘性係数であり、Reは供給気泡のレイノルズ数であり、δは渦巻き層の厚みであり、αcenは遠心加速度であり、dは供給気泡の直径であり、ρは液相の密度であり、ρは気相供給の密度である。
【0045】
動く液体中に分散された気相の泡の大きさは、反応の速度および効率を制御する重要な因子である。これは、方程式2から見積もられ得る。
【0046】
【数2】

ここで、rはキャピラリーの半径であり、σは液体−気体界面張力であり、uは液相速度であり、fは摩擦係数であり、そしてξは、抵抗係数である。
【0047】
高流量のナフサ液相について、ナフサ液滴は、鎖を形成する傾向があり、方程式3を使用しなければならない。
【0048】
【数3】

ここで、Qは気相の流量である。
【0049】
リアクター本体の長さに沿って一様な断面を有するサイクロンリアクターについて、渦巻き層の角運動量の損失が起こり、そして液相の速度は、リアクターの長さによって変化する。この点に関して、液体速度は、リアクターの最上部で最高になり、そして底部ではかなり低くなる。速度の変化は、上記方程式に従い、気泡の大きさに影響する。リアクターの定点での液相の速度は、方程式4から見積もられ得る。
【0050】
【数4】

ここで、uinは液体の入口速度であり、Rはリアクターの半径であり、そしてxは、液体の入口からリアクターまでの距離である。
【0051】
(行い得る適用の例)
本発明のサイクロンリアクターは、広範な種々の化学合成プロセスに使用され得る。適切なプロセスとしては、合成ガスプロセス(例えば、メタノール合成、ジメチルエーテル合成、フィッシャー−トロプシュ合成、および高級アルコールの合成);有機化合物の部分酸化;炭化水素変換(例えば、重油、生物油(bio−oil)、タールサンド、石炭に由来する液体および頁岩油の水素処理(hydro process)、アルキル化、およびオレフィンのオリゴマー化);ならびに気体、液体、および/または固体のスラリーを用いる他の処理、あるいは気体および2液相の処理が挙げられるが、これらに限定されない。液体キャリアは、所望の渦巻き流れを確立し得るいかなる液体でもあり得、そしていくつかの場合には、これらの中に触媒粒子を懸濁し得る。
【0052】
(1.合成ガスプロセス)
これらのプロセスの例において、合成ガス(代表的に、HおよびCOの混合物であるが、他の気体が存在し得る)は、ジャケット付き多孔性管壁を通って噴霧され得、ここで、触媒スラリーの高速度渦巻き流れにより、多孔性管の内部表面において、多数の小さな泡に剪断され得る。これは、合成ガス供給の優れた分散、および油中に懸濁した触媒との良好な接触をもたらす。遠心力および浮力に起因して、気泡は渦巻き層の内部表面に向かって加速し、低密度気泡の高密度スラリーからの分離をもたらす。本発明の一実施形態において、固体触媒−油スラリーおよびスラリーの流れを含む生成物は、管壁とバルブとの間に作られた環開口部を通して排出され、この環開口部は、リアクターの底で円筒の軸上に配置される。別の実施形態において、液相触媒は、類似のプロセスで使用され得る。両実施形態において、気体のオーバーフローは、リアクターの上部または底部のどちらかから排出され得る。液体キャリア、触媒、反応生成物および/または未反応の気体もまた、リアクターの底で円筒の軸上に配置されるバルブを通って排出され得るが、他の排出構成もまた、使用され得る。
【0053】
例として、メタノールは、Cu/ZnO、Cu/ZnO/Al、Cu/ZnO/MnO、RANEY Cu−Al−Zn、RANEY Cu−Al、ThCu、およびZrCuのような触媒を用いて、合成ガスから生成され得る。メタノール合成についての代表的な反応条件は、約180℃から約250℃までの温度、および約40atmから約150atmまでの圧力である。適切な液体キャリアの非限定の例としては、完全に飽和したパラフィン油(例えば、C12〜C50)のような鉱油などが挙げられる。
【0054】
別の例において、ジメチルエーテルは、メタノール合成触媒(上記参照)および脱水触媒(例えば、HZSM−5、酸性アルミナ、SiO−Al)のような触媒から構成されるCo−触媒系を用いて、合成ガスから生成され得る。ジメチルエーテル合成についての代表的な反応条件は、約220℃から約340℃までの温度、および約40atmから約150atmまでの圧力である。適切な液体キャリアの非限定の例としては、完全に飽和したパラフィン油(例えば、C12〜C50)のような鉱油などが挙げられる。
【0055】
なお別のプロセスの例において、種々の炭化水素が、フィッシャー−トロプシュプロセスを介して生成され得る。低級アルカン(C〜C)を生成するために、Fe/K、Fe/Mn、Fe/Mn/Ce、Fe/K/S、Ru/TiO、Fe/C、Mo/Cなどのような触媒が使用され得る。ガソリンは、溶融Fe/K、溶融Co/ThO/Al/シリカライト、溶融Fe/K/ZSM−5、溶融Co−ZSM−5、溶融Ru−ZSM−5、溶融Ru/ZSM−5、溶融FeCu/K−ZSM−5などのような触媒を使用して生成され得る。ディーゼル燃料は、Fe/K、Ru/V/TiO、Co/Zr、Ti/Al、Cr/Al、Co/Zr/TiO、Co−Ru/Alなどのような触媒を使用して形成され得る。重質ワックス(heavier wax)は、Fe/Cu/K、Fe/R、Co/Zr、Ti/AlまたはCr/Alなどのような触媒を使用して形成され得る。フィッシャー−トロプシュ合成のための代表的な反応条件は、約180℃から約350℃までの温度、および約20atmから約50atmまでの圧力である。適切な液体キャリアの非限定の例としては、パラフィン油(例えば、C12〜C50)、重油、フィッシャー−トロプシュ生成物などが挙げられる。
【0056】
高級アルコールは、K−MoS、K−Co−MoS、Cs−MoS、K−Zn−Cr、K−Cu−Zn−Al、K−Cu−Co−Al、およびCs−Cu−ZnO−Crなどのような触媒を使用して合成され得る。高級アルコール合成のための代表的な反応条件は、約250℃から約425℃までの温度、および約20atmから約200atmまでの圧力である。適切な液体キャリアの非限定の例としては、完全飽和パラフィン油(例えば、C12〜C50)のような鉱油などが挙げられる。
【0057】
(2.有機化合物の部分酸化)
(または空気)と(必要に応じて)炭化水素反応物質との混合物が、本発明において、種々の有機化合物の酸化のために使用され得る。適切な液体キャリアの非限定の例としては、パラフィン油(例えば、C12〜C50)、水、液体反応物質などが挙げられる。液体キャリアとして水を使用する場合、代表的には、触媒物質の分解および/または不活性化を減少させるため、より低い温度が好ましい。以下の一覧は、いくつかの適切な酸化反応および関連する使用され得る触媒物質ならびに反応条件を示す。
【0058】
(a:メタノールからホルムアルデヒドへ)
触媒:
高純度銀粉末、Fe/Cr/MoO
反応条件:
温度:300〜700℃
圧力:周囲の気圧
(b:エチレンから酸化エチレンへ)
触媒:Ag/α−Al
反応条件:
温度:200〜250℃
圧力:10〜30atm
(c:プロピレンからアクロレイン/アクリル酸へ)
触媒:BiO/Mo
反応条件:
温度:320〜430℃
圧力:周囲の気圧
(d:プロピレンからアクリロニトリルへのアンモ酸化)
触媒:Bi−MoO/SiO
反応条件:
温度:450〜600℃
圧力:1〜3atm
(e:n−ブタンから無水マレイン酸へ)
触媒:バナジウム−リン含有(VPO)触媒、VPO/TiO
反応条件:
温度:360〜400℃
圧力:1〜3atm
(f:エチレンから酢酸ビニルへ)
触媒:Pd/SiO、PdCl/CuCl
反応条件:
温度:100〜200℃
圧力:1〜30atm
3.炭化水素変換
以下の炭化水素変換プロセスは、本発明における使用に適切な、広範な種々の行い得る合成反応を表す。
【0059】
(a:固体触媒を用いた脂肪族アルキル化)
この例において、固体酸触媒は、液体キャリア中に懸濁されて、リアクターの多孔性管内に供給され得る。適切な液体キャリアの非限定の例としては、完全飽和パラフィン油(例えば、C12〜C50)などが挙げられる。ガス状反応物質(例えば、オレフィンおよびイソブタン)は、ジャケット付き多孔性管壁を通って噴霧され、油−触媒スラリーの高速渦巻き流れによって、多孔性管の内部表面において多数の小さな泡に剪断される。触媒スラリー、反応生成物および未反応気体は、リアクターの底で円筒の軸上に配置されたバルブを通って排出される。
【0060】
触媒:このプロセスに使用され得る固体酸触媒は、交換化(exchanged)ゼオライト、イオン交換樹脂(例えば、AMBERLYSTおよびNAFION)、超酸固体(例えば、塩素化アルミナおよび硫酸ジルコニア)、固定化超酸(例えば、HF−SbF/Al、BF/ゼオライトもしくは酸化物または樹脂)、およびヘテロポリ酸ベースの触媒である。
【0061】
反応条件:
温度:約−20〜30℃
圧力:周囲の気圧
(b:オレフィンオリゴマー化)
この例において、固体触媒は、液体キャリア中に懸濁されて、リアクターの多孔性の管内に供給され得、そしてガス状のオレフィンは、気体噴霧デバイスを通って噴霧され、液体キャリアの高速渦巻き流れによって、多孔性管の内部表面において多数の小さな泡に剪断される。適切な液体キャリアの非限定の例としては、パラフィン油(例えば、C12〜C50)、液体反応物質などが挙げられる。
【0062】
触媒:固体担体(例えば、石英および珪藻土)上のリン酸、またはアモルファスシリカアルミナもしくは結晶化(ゼオライト)シリカアルミナ。
【0063】
反応条件:
温度:100〜200℃
圧力:5〜50atm
(c:水素化)
この例において、Hは、気体噴霧デバイスを通って噴霧され得、そして液体キャリアの高速渦巻き流れによって、多数の小さな泡に剪断される。適切な液体キャリアの非限定の例としては、パラフィン油(例えば、C12〜C50)、液体水素化生成物(例えば、再循環される生成物)などが挙げられる。
【0064】
触媒:非担持および担持されたのPd、Pt、RhおよびRuなどの貴金属(例えば、Pt/C、Pd/Al)、ならびにNi、Cu、CrおよびCoならびにこれらの酸化物(例えば、ラネーニッケル、Ni/Al、およびCuO−Cr)。
【0065】
反応条件:
温度:20〜350℃
圧力:1〜50atm
(d:水素化分解)
水素化分解の例において、液体キャリア(例えば、減圧蒸留物、脱アスファルト(deasphalted)残渣、軽油、灯油など)は、懸濁した微小破砕触媒粒子と共に、リアクターに供給され得る。水素は、反応物質気体として使用され得、多孔性層を通って噴霧される。触媒スラリー、反応生成物および未反応気体は、リアクターの底で円筒の軸上に配置されたバルブを通って排出される。
【0066】
触媒:CoMo/SiO−Al、NiW/SiO−Al、CoMo/Al(酸処理)、NiW/Al(酸処理)、Pt/ゼオライトおよびPd/ゼオライト。
【0067】
反応条件:
温度:290〜525℃
水素分圧:50〜200atm
(e.水素化処理)
石油精製産業において一般に水素化処理と呼ばれる任意かつ全ての反応は、本発明のサイクロンリアクターシステムにおいて達成され得る。例えば、性質向上を必要とする重油または任意の石油由来の油ならびにタールサンド、ビチューメン、頁岩油、石炭液化油または生物油(bio−oil)は、液体キャリアとして、懸濁した微小破砕触媒粒子と共にリアクターに供給され得る。水素は、反応物質気体として使用され得、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱酸素、水素化分解などの反応を達成するために、多孔性管を通って噴霧される。
【0068】
触媒:CoMo/Al、NiMo/Al、NiW/Al、およびCoMo/Al
軽油蒸留物についての反応条件:
温度:300〜400℃
水素分圧:15〜60atm
重油残留物、生物油(bio−oil)、タールサンド、石油由来の油ならびに頁岩油についての反応条件:
温度:300〜425℃
水素分圧:50〜150atm
(4.液体触媒相を含む反応)
広範な種々の反応が、液体触媒相を含み得る。代表的に、液体触媒相は、液相触媒または液体キャリア中に溶解された均質な触媒として提供され得る。液相触媒としては、硫酸、フッ化水素酸などが挙げられ得るが、これらに限定されない。液相触媒の使用の恩恵を受け得る反応の非限定の例には、脂肪族アルキル化(上述の通り)、ナフテン系灯油の合成、および他の公知の反応が含まれ得る。
【0069】
しばしば、均質な触媒が、液体キャリア中に溶解され得、そして/または金属錯体を形成して、液体キャリア中に分散され得る。例えば、AlClベースの均質な触媒は、多くの合成反応(例えば、アルキル化反応が挙げられるが、これに限定されない)において有用であり得る。一般に、遷移金属錯体を含む均一系触媒は、種々の反応において有用であり得る。この反応は、例えば、炭素−水素結合形成(例えば、水素化および関連のプロセス)、炭素−炭素結合形成(例えば、オリゴマー化および重合)、一酸化炭素との反応、酸素移動反応、キラル触媒作用などであるが、これらに限定されない。
【0070】
当業者は、上記のプロセスは、単に指針に過ぎず、条件および材料は、列挙した条件および材料から変り得ることを理解する。以下の文献が、特定の合成プロセスの設計の背景、および本発明の実施におけるさらなる考慮すべき事項として使用され得る。これらのそれぞれは、本明細書中で参考として援用される:Olah,G.A.,「The Methanol Economy」,Chemical & Engineering News,81(38),2003年;Miller J.D.,「Air−sparged Hydrocyclone and Methods」,米国特許第4,279,743号(1981年);Miller J.D.,およびKinneberg D.J.,「Fast Flotation with an Air−sparged Hydrocyclone」,Proc.of MINTEK 50,Int.Confer.on Recent Advances in Mineral Science and Technology,Johannesburg,South Africa,1984年3月,373−383;Mills,G.A.,「Status and Future Opportunities for Conversion of Synthesis Gas to Liquid Fuels」,Fuel,1994年,73(8),1243−1279;ならびにGrishamら,「Method and Apparatus for Optimizing and Controlling Gas−Liquid Phase Chemical Reactions」,米国特許第5,730,875号(1998年)。
【0071】
したがって、化学化合物を調製するための、改善されたリアクターおよび方法が、開示される。上の説明および例は、なし得る本発明の特定の実施形態を説明することのみを意図する。本発明は、広範な有用性および適用を許容するが、当業者によって容易に理解される。本明細書中に記載されたほかに、本発明の多くの実施形態および適用、ならびに多くの変更、改変、および等価な配置が、本発明の実体または範囲から逸脱することなく、本発明およびその上の記載によって明らかであるか、または合理的に示唆される。したがって、本発明は、その好ましい実施形態に関連して本明細書中に詳細に記載されているが、この開示は本発明の例示および例でしかなく、完全かつ実施可能な本発明の開示を提供する目的でのみ行われていることが理解される。上の開示は、本発明を限定することも、もしくは他のいかなる実施形態、適用、変更、改変および等価な配置を排除することも意図せず、そのように解釈されるべきではない。本発明は、本明細書に添付される特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従う、触媒的な気体噴霧サイクロンリアクターの斜視図の切り取り図である。
【図2】図2は、図1のサイクロンリアクターの断面の斜視図の切り取り図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を反応させる方法であって、該方法は、以下:
a)液体キャリアを、リアクターの通り抜け式内部チャンバに通す工程;
b)該液体キャリアの渦巻き層を形成する工程;および
c)反応物質を含有する反応物質組成物を、該反応物質の少なくとも一部分が反応生成物に変換されるように、該渦巻き層の少なくとも一部分を通して射出する工程、
を、包含する、方法。
【請求項2】
渦巻き層を形成する前記工程が、前記液体キャリアの、前記内部チャンバへの接線射出によって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応物質組成物が、少なくとも1種のガス状反応物質を含有する気体組成物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リアクターが、円筒形ガス噴霧サイクロンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記気体組成物を射出する前記工程が、該気体組成物を噴霧し、該気体組成物の表面積を増大させるような構成である多孔性の層を横切らせるように押す工程を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体キャリアが、規定の膜厚および規定の保持時間を達成するように調整される流量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リアクターから、液相および気相を別々に除去する工程をさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記渦巻き層を形成する前記工程が、渦に誘導された圧力差を引き起こし、該圧力差は、該渦巻き層を横切る反応物質の移動を増大させるために十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記渦巻き層が、前記内部チャンバの直径の約5%〜約20%の厚みを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記渦巻き層から熱を除去する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記液体キャリアが、触媒物質をさらに含有し、触媒混合物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒物質が固体であり、従って、前記触媒混合物が触媒スラリーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒物質が、液体触媒である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔性の層が、2枚の多孔性層の間に触媒物質または触媒床を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記液体キャリアが、液体反応物質をさらに含有する、請求項1または請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記反応物質組成物が、複数種の気体反応物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒スラリーを再循環する工程をさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記反応生成物を回収する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記液体キャリアが、鉱油、パラフィン油、前記反応生成物の重質留分、水、液体反応物質およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反応物質組成物が、水素および一酸化炭素、酸素、酸素および気体反応物質、水素、ならびに気体反応物質からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記反応生成物が、メタノール、ジメチルエーテル、フィッシャー−トロプシュ生成物類、高級アルコール類、酸化生成物類、オリゴマー化生成物類、水素添加生成物類、水素化処理炭化水素類からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
噴霧サイクロンリアクターであって、以下:
a)リアクター本体;
b)該リアクター本体と作動可能に連結し、渦の流れを生成するように構成された入口;
c)該リアクター本体と作動可能に連結し、噴霧デバイスを備える、第二入口;
d)該リアクター本体と作動可能に連結する第一底流出口;および
e)該リアクター本体と作動可能に連結する第二底流出口
を、備える噴霧サイクロンリアクター。
【請求項23】
前記リアクター本体が、約4cm〜約1mの内径を有する円筒形の本体である、請求項22に記載のサイクロンリアクター。
【請求項24】
前記入口が、前記リアクター本体の上部部分で作動可能に連結し、そして液体混合物を接線流れで該リアクター内に放出するために方向付けられる、請求項22に記載のサイクロンリアクター。
【請求項25】
前記第二底流出口が、前記第一底流出口の周りに同心円状に方向付けられる、請求項22に記載のサイクロンリアクター。
【請求項26】
前記渦巻き層内に位置する冷却エレメントをさらに備える、請求項22に記載のサイクロンリアクター。
【請求項27】
前記噴霧デバイスが、前記第二入口に向けられた多孔性の触媒層であって、気体または液体が、前記リアクター本体内へ、2つの多孔性管の間に位置する触媒層または触媒床を実質的に通過する、請求項22に記載のサイクロンリアクター。
【請求項28】
前記リアクター本体が、サイクロン体の少なくとも一部に隣接する気体充満空間をさらに備え、該気体充満空間は、前記第二入口および前記噴霧デバイスと作動可能に連結されている、請求項22または請求項27に記載のサイクロンリアクター。
【請求項29】
前記リアクター本体が、円錐形内部表面を有し、該円錐形内部表面は、前記入口から前記液体底流出口まで直径が縮小する、請求項22に記載のサイクロンリアクター。
【請求項30】
化合物を触媒的に反応させるシステムであって、該システムは、以下:
a)リアクター本体を供えた噴霧触媒的サイクロンリアクター;該リアクター本体に作動可能に連結する入口;該リアクター本体に作動可能に連結し、噴霧デバイスを備えた第二入口;該リアクター本体に作動可能に連結する第一底流出口;および該リアクター本体に作動可能に連結する第二底流出口;
b)該リアクター内の渦巻き層中を流れる触媒混合物;ならびに
c)少なくとも1種の反応物質を含有する反応物質組成物であって、膜を通過して流れることにより化学反応を起こし、触媒的に合成される化合物を生成する、反応物質組成物
を、備えるシステム。
【請求項31】
直列および/または並列に方向付けられた、複数の噴霧触媒的サイクロンリアクターをさらに備える、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記入口が、渦の流れを作り出すような構成である、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記触媒混合物の前記渦巻き層を形成するように構成される混合デバイスをさらに備える、請求項30に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−529425(P2007−529425A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503084(P2007−503084)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008316
【国際公開番号】WO2005/090272
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(501171593)ユニバーシティ オブ ユタ (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF UTAH
【Fターム(参考)】