説明

センサ用構造体、容量式センサ、圧電式センサ、容量式アクチュエータ、及び、圧電式アクチュエータ

【課題】絶縁体層において基板の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に基板と電極層との間(絶縁体層)で発生する寄生容量を従来よりも低減できるセンサ用構造体、該センサ構造体を用いたセンサ及びアクチュエータを得る。
【解決手段】基板1は、ケイ素などの半導体からなるものであり、一方の面に形成された矩形状の凹部1aと、他方の面において、絶縁体層2における基板1の一方の面と同じ側の面と反対側の面が露出するように形成された開口部1bと、を有したものである。絶縁体層2は、二酸化ケイ素などの絶縁体からなる層であり、基板1の凹部1aの内部に形成されているものである。また、絶縁体層2の厚さは、2μmより大きい寸法を有したものである。このような構成のセンサ構造体は、センサ及びアクチュエータに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ用構造体、該センサ用構造体を用いた容量式センサ及び圧電式センサ、並びに、該容量式センサ及び該圧電式センサをそれぞれ用いた容量式アクチュエータ及び圧電式アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコンは半導体装置、とりわけ半導体集積回路の基幹材料として用いられており、その機械的特性および加工性の良さから半導体プロセス技術の発展とともに微小電気機械システムに応用されている。また、一般的に用いられるシリコンは不純物を含む導電性材料であるため、通常、微小電気機械システム用途では、シリコン層の表面に絶縁体層(パッシベーションレイヤー)を形成するとともに、絶縁体層上に電極層(電極)を形成することにより、シリコン層と電極層との間で電気的な隔離が図られている。
【0003】
導電体であるシリコンと電極層間の絶縁体層は、センサ機能に対して意図しない寄生容量(浮遊容量)として働き、センサの感度低下を引き起こす。この寄生容量は、電極面積に比例し、絶縁体層厚さに反比例するため、薄い絶縁体層では顕著となる。この絶縁体層の形成方法としては、微小電気機械システム用途では酸素雰囲気において950℃以上の温度で熱酸化する方法が一般的であり、成膜厚さは時間の自乗根に比例するため、厚い酸化膜を成膜するためには膨大な時間を要する。例えば、摂氏1000度の温度条件下におけるウエット酸化では、16時間程度の時間を要する。この他にも例えば、化学気相蒸着法(CVD)、又は、物理気相蒸着法(PVD)などの方法が用いられるが、成長膜厚の増加に伴い膜質が多孔質になるため、1μm 以下の膜厚で用いられることが多い。一方、絶縁体材料そのものを基板材料とすれば寄生容量は無くなるが、十分な設計自由度を有するほどの加工性の良い絶縁体材料は無いのが現状である。
【0004】
シリコン自体は導電体電極そのものとして用いられる場合もあるが、一般には、加工性の良さを活かして、可動部、プルーフマス、メンブレン、及び、カンチレバーなどの構造体として用いられる。厚さの異なる構造体を用いて半導体プロセスを実現する場合、構造体の厚さを規定するためにSOI(Silicon On Insulator)基板を用いるのが一般的であるが、SOI基板などの多層式基板は高価なものとなっている。
【0005】
また、近年のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野では、通常厚いもので2μmの絶縁体層が使用されている。より具体的には、上記MEMS技術を用いたセンサとして、低消費電力化に対応でき、且つ、出力特性の変動を抑えることを目的とした物理量センサが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−32389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の物理量センサでは、最も厚いもので2μmの厚さを有する酸化シリコン膜130が使用されている(明細書段落0020,0041参照)。更に、上記特許文献1の物理量センサでは、図9(A)に示すように、シリコン膜120、酸化シリコン膜130、及び、シリコン基板140を順に積層してなる高価なSOI基板110を用いて酸化シリコン膜130の厚さが規定されている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、絶縁体層において基板の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に基板と電極層との間(絶縁体層)で発生する寄生容量を従来よりも低減できるとともに、SOI基板などの高価な多層式基板を用いることなく絶縁体層の厚さを規定することのできるセンサ用構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明のセンサ用構造体は、一方の面に凹部が形成された基板と、前記凹部の内部に形成された絶縁体層と、を備え、前記絶縁体層の厚さは、2μmより大きいことを特徴とするものである。
【0010】
上記(1)の構成によれば、基板の凹部内に形成された絶縁体層の厚さを、2μmよりも大きくすることで、絶縁体層において基板の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に、基板と電極層との間(絶縁体層)で発生する寄生容量を従来よりも低減することができる。
【0011】
更に、上記(1)の構成によれば、基板の一方の面に形成された凹部の深さによって、絶縁体層の厚さを規定できるので、SOI基板などの高価な多層式基板を用いて絶縁体層の厚さを規定する場合よりもセンサ用構造体の製造コストを低減することができる。
【0012】
なお、本発明中の「絶縁体層の厚さ」は、2μmよりも大きい範囲であれば、センサ用構造体の用途に応じた寄生容量の許容量に基づいて適宜変更することができる。
【0013】
(2) 上記(1)のセンサ用構造体においては、前記絶縁体層の厚さは、5μm以上であることが好ましい。
【0014】
上記(2)の構成によれば、絶縁体層の厚さを5μm以上とすることで、絶縁体層において基板の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に基板と電極層との間(絶縁体層)で発生する寄生容量を実用上無視できる程度まで抑制することができる。
【0015】
(3) 上記(1)又は(2)のセンサ用構造体においては、前記基板の他方の面において、前記絶縁体層における前記基板の一方の面と同じ側の面と反対側の面が露出するように形成された開口部を有することが好ましい。
【0016】
上記(3)の構成によれば、基板の他方の面に開口部を形成することにより、絶縁体層における基板の一方の面と同じ側の面と反対側の面を露出させることで、絶縁体層において基板の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に基板と電極層との間(絶縁体層)に寄生容量が発生しないスペースを形成することができる。これにより、基板と電極層との間(絶縁体層)に発生する寄生容量を部分的に排除することができる。
【0017】
(4) 本発明の容量式センサは、上記(1)〜(3)のいずれかのセンサ用構造体と、前記絶縁体層において前記基板の一方の面と同じ側の面に設けられた固定電極層と、前記固定電極層と対向する位置に前記固定電極層と所定間隔をおいて設けられ、外力に応じて移動可能に支持された可動電極層と、を備えることを特徴とするものである。なお、例えば、前記容量式センサに検知部を設け、加速度の検知対象となるプルーフマス部が移動した場合に、前記可動電極層と前記固定電極層との間に発生する静電容量の変化に基づいて、プルーフマス部に作用した加速度の大きさを検知するようにしてもよい。
【0018】
上記(4)の構成によれば、基板と固定電極層との間(絶縁体層)に発生する寄生容量を従来よりも低減できるので、固定電極層と可動電極層との間に発生する静電容量が寄生容量に分配されてしまうことによる容量式センサの感度への影響を従来よりも抑制することができる。これにより、容量式センサとしての検知精度を従来よりも向上させることができる。
【0019】
(5) 本発明の容量式アクチュエータは、上記(4)の容量式センサと、前記固定電極層と前記可動電極層との間に、前記可動電極層を移動させるための電圧を印加する電圧印加部と、を備えることを特徴とするものである。
【0020】
上記(5)の構成によれば、容量式アクチュエータの消費電力及び駆動電圧を増加させる要因となる基板と固定電極層との間(絶縁体層)に発生する寄生容量を従来よりも抑制できるので、容量式アクチュエータの消費電力及び駆動電圧を従来よりも低減させることができる。
【0021】
(6) 本発明の容量式センサは、上記(1)〜(3)のいずれかのセンサ用構造体と、内部に形成された凹状のキャビティを有する密閉用構造体と、固定電極層と、可動電極層と、を備えた容量式センサであって、前記密閉用構造体が、外部からの圧力に応じて移動可能な状態で、前記キャビティを覆う位置に設けられた膜状部材を備え、前記可動電極層が、前記膜状部材において前記キャビティが形成されている側の面と反対側の面に設けられ、前記固定電極層が、前記絶縁体層における前記基板の一方の面と同じ側の面において、前記可動電極層と対向する位置に前記可動電極層と所定間隔をおいて設けられ、前記センサ用構造体が、前記膜状部材に外部からの圧力を印加するために、外部と連通するように形成された通風孔を備えることを特徴とするものである。なお、例えば、前記容量式センサに検知部を設け、前記膜状部材に外部からの圧力が作用した場合に、前記可動電極層と前記固定電極層との間に発生する静電容量の変化に基づいて、前記膜状部材に加わった圧力値を検知するようにしてもよい。
【0022】
上記(6)の構成によれば、基板と固定電極層との間(絶縁体層)に発生する寄生容量を従来よりも低減できるので、固定電極層と可動電極層との間に発生する静電容量が寄生容量に分配されてしまうことによる容量式センサの感度への影響を従来よりも抑制することができる。これにより、容量式センサとしての検知精度を従来よりも向上させることができる。
【0023】
(7) 本発明の容量式アクチュエータは、上記(6)の容量式センサと、前記固定電極層と前記可動電極層との間に、前記膜状部材を移動させるための電圧を印加する電圧印加部と、を備えることを特徴とするものである。
【0024】
上記(7)の構成によれば、容量式アクチュエータの消費電力及び駆動電圧を増加させる要因となる基板と固定電極層との間(絶縁体層)に発生する寄生容量を従来よりも抑制できるので、容量式アクチュエータの消費電力及び駆動電圧を従来よりも低減させることができる。
【0025】
(8) 本発明の圧電式センサは、上記(1)〜(3)のいずれかのセンサ用構造体と、前記絶縁体層において前記基板の一方の面と同じ側の面に設けられた第1可動電極層と、前記第1可動電極層において前記絶縁体層が形成されている側の面と反対側の面に形成され、外力に応じて弾性変形するとともに電荷を発生させる圧電基板と、前記圧電基板において前記第1可動電極層が形成されている側の面と反対側の面に設けられた第2可動電極層と、を備えることを特徴とするものである。なお、例えば、前記圧電式センサに検知部を設け、加速度の検知対象となるプルーフマス部に外力が作用した場合に、前記第1及び第2可動電極層の間において前記圧電基板に発生する電荷の変化に基づいて、プルーフマス部に作用した加速度の大きさを検知するようにしてもよい。
【0026】
上記(8)の構成によれば、基板と第1可動電極層との間(絶縁体層)に発生する寄生容量を従来よりも低減できるので、第1可動電極層と第2可動電極層との間において圧電基板に発生する電荷に対して寄生容量が与える影響を従来よりも抑制することができる。従って、寄生容量が圧電式センサの感度に及ぼす影響を従来よりも抑制することができる。その結果、圧電式センサとしての検知精度を従来よりも向上させることができる。
【0027】
(9) 本発明の圧電式アクチュエータは、上記(8)の圧電式センサと、前記第1可動電極層と前記第2可動電極層との間に、前記圧電基板を弾性変形させるための電圧を印加する電圧印加部と、を備えることを特徴とするものである。
【0028】
上記(9)の構成によれば、圧電式アクチュエータの消費電力及び駆動電圧を増加させる要因となる基板と第1可動電極層との間(絶縁体層)に発生する寄生容量を従来よりも抑制できるので、圧電式アクチュエータの消費電力及び駆動電圧を従来よりも低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンサ構造体の概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のA−A線の矢視断面図である。
【図2】図1に示したセンサ構造体の各製造工程を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る容量式センサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のB−B線の矢視断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る容量式アクチュエータの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のC−C線の矢視断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る容量式センサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のD−D線の矢視断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る容量式アクチュエータの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のE−E線の矢視断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る圧電式センサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のF−F線の矢視断面図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係る圧電式アクチュエータの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のG−G線の矢視断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態の変形例に係る圧電式センサを示す概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のH−H線の矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下、図1及び図2を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るセンサ用構造体について説明する。なお、下記の「前」及び「後」なる各用語は、図1(a)に示すセンサ用構造体100の各位置を示している。
【0031】
図1(a),(b)に示すように、センサ用構造体100は、基板1と、絶縁体層2と、を備えているものである。
【0032】
基板1は、ケイ素などの半導体からなるものであり、一方の面に形成された矩形状の凹部1aと、他方の面において、絶縁体層2における基板1の一方の面と同じ側の面と反対側の面が露出するように形成された開口部1bと、を有したものである。
【0033】
絶縁体層2は、二酸化ケイ素などの絶縁体からなる層であり、図1(b)に示すように、基板1の凹部1aの内部に形成されているものである。また、図1(a)に示すように、絶縁体層2は、上記凹部1aと同じ矩形状に形成されているものである。更に、絶縁体層2の厚さは、2μmより大きい寸法を有したものである。ここで、絶縁体層2の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm〜20μm以上であることが更に好ましい。
【0034】
なお、本実施形態では、図1(a)に示すように、絶縁体層2の前側端部2aと後側端部2bは、それぞれ、基板1の前側端部1cと後側端部1dよりも内側に配置されているが、ここで、一変形例として、絶縁体層2の前側端部2aが基板1の前側端部1cまで延在していてもよく、同様に、絶縁体層2の後側端部2bが基板1の後側端部1dまで延在していてもよい。これにより、基板1の一方の面と同じ側の面において絶縁体層2が占める面積を増加させることができる。その結果、絶縁体層2において基板1の一方の面と同じ側の面に電極を配置する際の設計自由度を向上させることができる。
【0035】
次に、図2を参照しながら、センサ用構造体100の製造方法の一例について説明する。以下、センサ用構造体100の製造方法の一例について説明していく。
【0036】
まず、ケイ素からなる板状材料(例えば、シリコンウェハー)の一方の面を熱酸化し、基板1及び絶縁体層2の前駆体層3の一方の面に、二酸化ケイ素からなる絶縁体層4を形成する(図2(a)参照)。次に、絶縁体層4の一方の面にフォトレジスト5を塗布し、フォトレジスト5において凹部1a(図1(a)参照)に対応する部分(以下、特定部分という)にトレンチパターンを形成する。つまり、フォトレジスト5の特定部分に一定の幅のトレンチ部分5aを一定の間隔をおいて複数形成する(図2(b)参照)。
【0037】
続いて、各トレンチ部分5aを利用したエッチングによって、絶縁体層4の特定部分に、フォトレジスト5の上記トレンチパターンを転写する。これにより、絶縁体層4の特定部分に上記トレンチ部分5aと同様のトレンチ部分4aが複数形成される(図2(c)参照)。その後、各トレンチ部分4a,5aを利用したDeepRIE(Deep Reactive Ion Etching)によって、前駆体層3の特定部分にトレンチパターンを形成する。これにより、前駆体層3の特定部分に対して、シリコンとして残る凸部分3aと、シリコンが掘られるトレンチ部分3bとが予め定められた比率で左右方向に連続的に並んだ凹凸形状が形成される(図2(d)参照)。本実施形態では、熱酸化工程(図2(f)参照)が可能なように、凸部分3aの幅(=トレンチライン)と、トレンチ部分3bの幅(=スペース)との比は、1:1.1に予め設定されている。
【0038】
続いて、熱酸化工程(図2(f)参照)前の洗浄を行い、フォトレジスト5と絶縁体層4とを除去する(図2(e)参照)。この洗浄工程は、例えば、市販のレジスト剥離液又はピラニア液(硫酸:過酸化水素=3:1の混合液)を用いて行う。
【0039】
続いて、前駆体層3において凹凸形状が形成されている側の面に熱酸化処理を施す(図2(f)参照)。この熱酸化により、凸部分3aとして残されたシリコンの体積が膨張し、互いに隣接する凸部分3a同士が融着することによって、各トレンチ部分3bが二酸化ケイ素からなる絶縁体で埋められる。これにより、前駆体層3において凹凸形状が形成されている側の面に絶縁体層6が形成される(図2(g)参照)。ここで、この熱酸化工程は、各トレンチ部分3bに、シリコンが残ったり、空隙が生じたりすることを防止するために、凸部分3aとして残されたシリコンを完全に酸化させて、凸部分3a同士の融着が完了するまで行う必要がある。
【0040】
続いて、前駆体層3において絶縁体層6が形成されている側の面に研磨処理を施し、絶縁体層6の不要な部分を取り除くことで、絶縁体層2を形成する(図2(h)参照)。そして、前駆体層3において絶縁体層2が形成されている側の面と反対側の面にエッチングを行い、開口部1bを形成することにより基板1を形成し、センサ用構造体100を得る(図2(i)参照)。
【0041】
上記構成によれば、基板1の凹部1a内に形成された絶縁体層2の厚さを、2μmよりも大きくすることができるので、絶縁体層2において基板1の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に、基板1と電極層との間(絶縁体層2)で発生する寄生容量を従来よりも低減することができる。
【0042】
また、上記構成によれば、凹部1aの深さによって、絶縁体層2の厚さを規定できるので、SOI基板などの高価な多層式基板を用いて絶縁体層2の厚さを規定する場合よりもセンサ用構造体100の製造コストを低減することができる。
【0043】
更に、上記構成によれば、絶縁体層2の厚さを5μm以上とすることで、絶縁体層2において基板1の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に、基板1と電極層との間(絶縁体層2)で発生する寄生容量を実用上無視できる程度まで抑制することができる。
【0044】
加えて、上記構成によれば、基板1に開口部1bを形成することにより、絶縁体層2において基板1の一方の面と同じ側の面と反対側の面を露出させることで、絶縁体層2において基板1の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に、基板1と電極層との間(絶縁体層2)に寄生容量が発生しないスペースを形成することができる。これにより、基板1と電極層との間(絶縁体層2)に発生する寄生容量を部分的に排除することができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、図3を用いて、本発明の第2実施形態に係る容量式センサについて説明する。なお、第1実施形態の部位1,1a,1b,1c,1d,2,2a,2bと、本実施形態の部位201,201a,201b,201c,201d,202,202a,202bとは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。また、下記の「前」及び「後」なる各用語は、図3(a)に示す静電容量型加速度センサ(容量式センサ)1000の各位置を示している。
【0046】
図3(a),(b)に示すように、静電容量型加速度センサ1000は、センサ用構造体200と、該センサ用構造体200の設置用構造体210と、固定電極層220と、可動電極層230と、検知部240と、ショート評価部250と、を備えているものである。
【0047】
図3(b)に示すように、静電容量型加速度センサ1000は、開口部を有する枠体状に形成されたセンサ用構造体200及び設置用構造体210の各外周部の位置を相互に合わせるとともに接合することにより形成されているものである。
【0048】
図3(b)に示すように、基板201は、一方の面からセンサ用構造体200の積層方向に沿って設置用構造体210に向けて延びる角柱形状の2本の外枠部材201e,201fを有しているものである。
【0049】
図3(b)に示すように、絶縁体層202は、外枠部材201e,201fの間に配置されているものである。図3(a)に示すように、絶縁体層202の前側端部202a及び後側端部202bは、それぞれ、基板201の前側端部201c及び後側端部201dと同じ位置まで延在しているものである。
【0050】
図3(b)に示すように、設置用構造体210は、設置基礎部211とプルーフマス部212とを備えているものである。
【0051】
設置基礎部211は、ケイ素などの半導体からなるものであり、矩形フレーム形状としたベース架台211aと、該ベース架台211aの一方の面からセンサ用構造体200の積層方向に沿ってセンサ用構造体200に向けて延びる角柱形状の2本の外枠部材211b,211cと、を備えているものである。
【0052】
プルーフマス部212は、二酸化ケイ素などの絶縁体からなり、外枠部材211cの内壁面に埋め込まれた一端部から外枠部材211bに向けて細長い矩形枠状に延びるとともに、外力に応じてセンサ用構造体200の積層方向に沿って弾性変形可能な梁部材212aと、ケイ素などの半導体からなり、該梁部材212aを介して外枠部材211cに支持された角柱形状の錘部材212bと、を備えているものである。図3(b)に示すように、プルーフマス部212においては、錘部材212bが梁部材212aによって外枠部材211cに支持された所謂片持ち状に浮いた状態となっている。
【0053】
なお、図3(b)に示すように、ベース架台211aの一方の面と、錘部材212bにおいて梁部材212aが形成されている側の面と反対側の面との間に形成された空隙g1は、錘部材212bの可動領域となる空隙を示しているものである。
【0054】
固定電極層220は、Cu、Au、Al、Pt、Pd、Ag、ポリシリコン、その他導電性高分子(ポリアセンやポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)などの導電体材料からなるものであり、図3(b)に示すように、絶縁体層202において基板201の一方の面と同じ側の面に設けられているものである。
【0055】
可動電極層230は、Cu、Au、Al、Pt、Pd、Ag、ポリシリコン、その他導電性高分子(ポリアセンやポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)などの導電体材料からなるものである。可動電極層230は、図3(b)に示すように、梁部材212aにおける錘部材212bが形成されている側の面と反対側の面において、固定電極層220と対向する位置に設けられているものである。
【0056】
なお、図3(b)に示すように、固定電極層220において絶縁体層202が形成されている側の面と反対側の面と、可動電極層230において錘部材212bが形成されている側の面と反対側の面との間に形成された空隙g2は、可動電極層230の可動領域となる空隙を示しているものである。
【0057】
検知部240は、固定電極層220と可動電極層230とに配線接続されており、錘部材212bにセンサ用構造体200の積層方向に沿う方向の外力が作用した場合に、固定電極層220と可動電極層230との間に発生する静電容量の変化に基づいて、錘部材212bに作用した加速度の大きさを検知するものである。検知部240は、静電容量の変化を電圧変化に変換して所定の出力に増幅するための容量−電圧変換部、フィルタ、及び、信号増幅部等が接続された構造を有しており、静電容量の変化を加速度の大きさとして取得することができる。
【0058】
ショート評価部250は、固定電極層220と可動電極層230との間において検知部240と並列に接続されており、固定電極層220及び可動電極層230同士の固着(スティッキング)に起因したショートを防止するものである。
【0059】
次に、静電容量型加速度センサ1000の動作について説明する。静電容量型加速度センサ1000では、固定電極層220と可動電極層230との間にコンデンサが形成され、このコンデンサの静電容量が、錘部材212bにセンサ用構造体200の積層方向に沿う方向の外力が作用することによる可動電極層230の変位に応じて差動的に変化することになり、静電容量の変化を、錘部材212bに作用した加速度の大きさとして取得することができるものである。
【0060】
上記構成によれば、基板201と固定電極層220との間(絶縁体層202)に発生する寄生容量を従来よりも低減できるので、固定電極層220と可動電極層230との間に発生する静電容量が寄生容量に分配されてしまうことによる静電容量型加速度センサ1000の感度への影響を従来よりも抑制することができる。これにより、静電容量型加速度センサ1000としての検知精度を従来よりも向上させることができる。
【0061】
また、上記構成によれば、基板201に開口部201bを形成することにより、絶縁体層202において基板201の一方の面と同じ側の面と反対側の面を露出させることで、絶縁体層202において基板201の一方の面と同じ側の面に固定電極層220を形成した際に、基板201と固定電極層220との間(絶縁体層202)に寄生容量が発生しないスペースを形成することができる。これにより、基板201と固定電極層220との間(絶縁体層202)に発生する寄生容量を部分的に排除することができる。
【0062】
更に、上記構成によれば、絶縁体層202の前側端部202a及び後側端部202bが、それぞれ、基板201の前側端部201c及び後側端部201dと同じ位置まで延在しているため、基板201の一方の面と同じ側の面において絶縁体層202が占める面積を増加させることができる。その結果、絶縁体層202において基板201の一方の面と同じ側の面に固定電極層220を配置する際の設計自由度を向上させることができる。
【0063】
<第3実施形態>
次に、図4を用いて、本発明の第3実施形態に係る容量式アクチュエータについて説明する。なお、第2実施形態の部位200,210,220,230,250と、本実施形態の部位300,310,320,330,350(図示していない部位がある)とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0064】
本実施形態に係る静電容量型アクチュエータ(容量式アクチュエータ)2000は、第2実施形態の静電容量型加速度センサ1000において加速度の大きさを検知するための検知部240に代えて、電圧を印加するための電圧印加部340を有しているものである。
【0065】
電圧印加部340は、固定電極層320と可動電極層330とに配線接続されており、固定電極層320と可動電極層330との間に、可動電極層330をセンサ用構造体300の積層方向に沿って移動させるための電圧を印加するものである。
【0066】
次に、静電容量型アクチュエータ2000の動作について説明する。電圧印加部340により、固定電極層320と可動電極層330との間に電圧が加えられた場合、静電力により、固定電極層320と可動電極330との電極間距離g2が狭まる結果、錘部材312bは、センサ用構造体300の積層方向に沿って固定電極層320に近づくように動作する。
【0067】
上記構成によれば、静電容量型アクチュエータ2000の消費電力及び駆動電圧を増加させる要因となる、基板301と固定電極層320との間(絶縁体層302)に発生する寄生容量を従来よりも抑制できるので、静電容量型アクチュエータ2000の消費電力及び駆動電圧を従来よりも低減させることができる。
【0068】
<第4実施形態>
次に、図5を用いて、本発明の第4実施形態に係る容量式センサについて説明する。なお、第1実施形態の部位1,1a,1c,1d,2と、本実施形態の部位401,401a,401c,401d,402とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0069】
図5(a),(b)に示すように、静電容量型圧力センサ3000は、センサ用構造体400と、密閉用構造体410と、一対の固定電極層420a,420bと、可動電極層430と、検知部440と、ショート評価部450と、を備えているものである。なお、図5(a)においては、説明の都合上、可動電極層430の外形を基板401の他方の面から見た仮想線(一点鎖線)及び実線によって表している。同様に、膜状部材411aの外形を基板401の他方の面から見た仮想線(二点鎖線)及び実線によって表している。
【0070】
図5(b)に示すように、静電容量型圧力センサ3000は、センサ用構造体400及び密閉用構造体410の各外周部の位置を相互に合わせるとともに接合することにより形成されているものである。
【0071】
図5(a),(b)に示すように、センサ用構造体400は、密閉用構造体410の後述する膜状部材411aに外部からの圧力を印加するために、センサ用構造体400の積層方向に沿って延びるとともに、外部と連通するように形成された矩形状の通風孔400aを備えているものである。
【0072】
図5(b)に示すように、密閉用構造体410は、開口部を有する枠状体411と箱状体412とを備えるものである。
【0073】
枠状体411は、二酸化ケイ素などの絶縁体からなる膜状部材411aと、ケイ素などの半導体からなり、該膜状部材411aの両端部からセンサ用構造体400の積層方向に沿ってセンサ用構造体400に向けて延びる角柱形状の2本の外枠部材411b,411cと、を備えているものである。これにより、膜状部材411aに通風孔400aを介して外部からの圧力が印加された場合、膜状部材411aはセンサ用構造体400の積層方向に沿って弾性変形可能となっているものである。
【0074】
箱状体412は、ケイ素などの半導体からなるものであり、その内部に凹状のキャビティ412aが形成されているものである。該キャビティ412aの開口端は、膜状部材411aによって覆われることにより、外部から封止されている。これにより、キャビティ412aの内部空間は、その内部圧力が真空圧または常圧で維持されることにより、膜状部材411aに印加された圧力の検知に適した雰囲気環境で維持されている。
【0075】
固定電極層420a,420bは、Cu、Au、Al、Pt、Pd、Ag、ポリシリコン、その他導電性高分子(ポリアセンやポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)などの導電体材料からなるものであり、図5(b)に示すように、通風孔400aを挟むようにして、絶縁体層402において基板401の一方の面と同じ側の面に形成されているものである。図5(b)に示すように、固定電極層420aと外枠部材411bとの間には、固定電極層420aと外枠部材411b同士の電気的結合を回避するための空隙が形成されているものである。同様に、固定電極層420bと外枠部材411cとの間には、固定電極層420bと外枠部材411c同士の電気的結合を回避するための空隙が形成されているものである。
【0076】
可動電極層430は、Cu、Au、Al、Pt、Pd、Ag、ポリシリコン、その他導電性高分子(ポリアセンやポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)などの導電体材料からなるものであり、図5(b)に示すように、膜状部材411aにおいてキャビティ412aが形成されている側の面と反対側の面に設けられ、固定電極層420a,420bと対向する位置に形成されているものである。また、図5(a)中の仮想線(一点鎖線)及び実線と、仮想線(二点鎖線)及び実線とに示すように、可動電極層430は、膜状部材411aの内側に配置されているものである。また、図5(b)に示すように、可動電極層430の両端部と外枠部材411b,411cとの間には、可動電極層430と外枠部材411b,411c同士の電気的結合を回避するための空隙が形成されているものである。
【0077】
検知部440は、固定電極層420a,420bと可動電極層430とに配線接続されており、膜状部材411aに対してセンサ用構造体400の積層方向に沿う方向の圧力が加えられた場合に、固定電極層420a,420bと可動電極層430との間に発生する静電容量の変化に基づいて、膜状部材411aに加わった圧力値を検知するものである。
【0078】
ショート評価部450は、固定電極層420a,420bと可動電極層430との間において検知部440と並列に接続されており、固定電極層420a,420b及び可動電極層430同士の固着(スティッキング)に起因したショートを防止するものである。
【0079】
次に、静電容量型圧力センサ3000の動作について説明する。膜状部材411aに対してセンサ用構造体400の積層方向に沿う方向の圧力が加えられた場合、膜状部材411aは、該圧力に応じて弾性変形する。検知部440は、該変形によって生じた、固定電極層420a,420bと可動電極層430との間に発生する静電容量変化を検知する。そして、検知部440は、該変化に基づいて、膜状部材411aに加わった圧力値を検知する。
【0080】
上記構成によれば、基板401と固定電極層420a,420bとの間(絶縁体層402)に発生する寄生容量を従来よりも低減できるので、固定電極層420a,420bと可動電極層430との間に発生する静電容量が寄生容量に分配されてしまうことによる静電容量型圧力センサ3000のセンサ感度への影響を従来よりも抑制することができる。これにより、静電容量型圧力センサ3000としての検知精度を従来よりも向上させることができる。
【0081】
<第5実施形態>
次に、図6を用いて、本発明の第5実施形態に係る容量式アクチュエータについて説明する。なお、第4実施形態の部位400,410,420a,420b,430,450と、本実施形態の部位500,510,520a,520b,530,550(図示していない部位がある)とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0082】
本実施形態に係る静電容量型アクチュエータ(容量式アクチュエータ)4000は、第4実施形態の静電容量型圧力センサ3000において圧力値を検知するための検知部440に代えて、電圧を印加するための電圧印加部540を有しているものである。
【0083】
電圧印加部540は、固定電極層520a,520bと可動電極層530とに配線接続されており、固定電極層520a,520bと可動電極層530との間に、可動電極層530をセンサ用構造体500の積層方向に沿って移動させるための電圧を印加するものである。
【0084】
次に、静電容量型アクチュエータ4000の動作について説明する。電圧印加部540により、固定電極層520a,520bと可動電極層530との間に電圧が加えられた場合、静電力により、固定電極層520a,520bと可動電極層530との電極間距離が狭まる結果、膜状部材511aは、センサ用構造体500の積層方向に沿って固定電極層520a,520bに近づくように動作する。
【0085】
上記構成によれば、静電容量型アクチュエータ4000の消費電力及び駆動電圧を増加させる要因となる、基板501と固定電極層520a,520bとの間(絶縁体層502)に発生する寄生容量を従来よりも抑制できるので、静電容量型アクチュエータ4000の消費電力及び駆動電圧を従来よりも低減させることができる。
【0086】
<第6実施形態>
次に、図7を用いて、本発明の第6実施形態に係る圧電式センサについて説明する。なお、第1実施形態の部位1,1a,1b,1c,1d,2,2a,2bと、本実施形態の部位601,601a,601b,601c,601d,602,602a,602bとは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。また、下記の「前」及び「後」なる各用語は、図7(a)に示す圧電型加速度センサ(圧電式センサ)5000の各位置を示している。
【0087】
図7(a),(b)に示すように、圧電型加速度センサ5000は、センサ用構造体600と、第1可動電極層610と、圧電基板620と、第2可動電極層630と、検知部640と、を備えているものである。
【0088】
図7(b)に示すように、センサ用構造体600において、基板601は、開口部601bを介して対向する固定端部601e及びプルーフマス部601fを有しているものである。該プルーフマス部601fは、外力に応じてセンサ用構造体600の積層方向に沿って弾性変形可能な梁状の絶縁体層602を介して固定端部601eに支持されているものである。つまり、プルーフマス部601fは、絶縁体層602によって固定端部601eに支持された所謂片持ち状に浮いた状態となっている。これにより、プルーフマス部601fは、センサ用構造体600の積層方向に沿う方向に外力が加わる錘部として機能し、絶縁体層602が固定端部601eを支点として弾性変形することに伴い、第1可動電極層610と圧電基板620と第2可動電極層630とからなる積層体が一体的に弾性変形可能となっている。
【0089】
図7(a)に示すように、絶縁体層602の前側端部602a及び後側端部602bは、それぞれ、基板601の前側端部601c及び後側端部601dと同じ位置まで延在しているものである。
【0090】
第1可動電極層610は、Cu、Au、Al、Pt、Pd、Ag、ポリシリコン、その他導電性高分子(ポリアセンやポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)などの導電体材料からなるものであり、図7(a),(b)に示すように、絶縁体層602において基板601の一方の面と同じ側の面に設けられているものである。
【0091】
圧電基板620は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材料からなるものであり、図7(b)に示すように、第1可動電極層610において絶縁体層602が形成されている側の面と反対側の面に形成され、外部からの応力に応じて弾性変形するとともに電荷を発生させるものである。
【0092】
第2可動電極層630は、Cu、Au、Al、Pt、Pd、Ag、ポリシリコン、その他導電性高分子(ポリアセンやポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)などの導電体材料からなるものであり、図7(a),(b)に示すように、圧電基板620において第1可動電極層610が形成されている側の面と反対側の面に設けられているものである。
【0093】
検知部640は、第1可動電極層610と第2可動電極層630とに配線接続されており、プルーフマス部601fに外力が加えられた場合に、第1可動電極層610及び第2可動電極層630の間において圧電基板620に発生する電荷の変化に基づいて、プルーフマス部601fに作用した加速度の大きさを検知するものである。
【0094】
次に、圧電型加速度センサ5000の動作について説明する。プルーフマス部601fにセンサ用構造体600の積層方向に沿う方向の外力が加えられると、固定端部601eを支点、プルーフマス部601fを力点として、絶縁体層602が弾性変形することに伴い、第1可動電極層610と圧電基板620と第2可動電極層630とからなる積層体が一体的に弾性変形する。そして、該変形に伴い、第1可動電極層610及び第2可動電極層630の間において圧電基板620に発生する電荷の変化に基づいて、プルーフマス部601fに作用した加速度の大きさが検知される。
【0095】
上記構成によれば、基板601と第1可動電極層610との間(絶縁体層602)に発生する寄生容量を従来よりも低減できるので、第1可動電極層610と第2可動電極層630との間において圧電基板620に発生する電荷に対して寄生容量が与える影響を従来よりも抑制することができる。従って、寄生容量が圧電型加速度センサ5000のセンサ感度に及ぼす影響を従来よりも抑制することができる。その結果、圧電型加速度センサ5000としての検知精度を従来よりも向上させることができる。
【0096】
また、上記構成によれば、基板601に開口部601bを形成することにより、絶縁体層602において基板601の一方の面と同じ側の面と反対側の面を露出させることで、絶縁体層602において基板601の一方の面と同じ側の面に第1可動電極層610を形成した際に、基板601と第1可動電極層610との間(絶縁体層602)に寄生容量が発生しないスペースを形成することができる。これにより、基板601と第1可動電極層610との間(絶縁体層602)に発生する寄生容量を部分的に排除することができる。
【0097】
更に、上記構成によれば、絶縁体層602の前側端部602a及び後側端部602bは、それぞれ、基板601の前側端部601c及び後側端部601dと同じ位置まで延在しているため、基板601の一方の面と同じ側の面において絶縁体層602が占める面積を増加させることができる。その結果、絶縁体層602において基板601の一方の面と同じ側の面に第1可動電極層610を配置する際の設計自由度を向上させることができる。
【0098】
<第7実施形態>
次に、図8を用いて、本発明の第7実施形態に係る圧電式アクチュエータについて説明する。なお、第6実施形態の部位600,610,620,630と、本実施形態の部位700,710,720,730(図示していない部位がある)とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0099】
本実施形態に係る圧電型アクチュエータ(圧電式アクチュエータ)6000は、第6実施形態の圧電型加速度センサ5000において加速度の大きさを検知するための検知部640に代えて、電圧を印加するための電圧印加部740を有しているものである。
【0100】
電圧印加部740は、第1可動電極層710と第2可動電極層730とに配線接続されており、第1可動電極層710と第2可動電極層730との間において、圧電基板720に歪みを生じさせて弾性変形させるための電圧を印加するものである。
【0101】
次に、圧電型アクチュエータ6000の動作について説明する。電圧印加部740により、第1可動電極層710と第2可動電極層730との間に電圧が加えられた場合、第1可動電極層710と圧電基板720と第2可動電極層730とからなる積層体が一体的に弾性変形することに伴い、絶縁体層702が固定端部701eを支点として弾性変形し、プルーフマス部701fがセンサ用構造体700の積層方向に沿う方向に移動する。
【0102】
上記構成によれば、圧電型アクチュエータ6000の消費電力及び駆動電圧を増加させる要因となる、基板701と第1可動電極層710との間(絶縁体層702)に発生する寄生容量を従来よりも抑制できるので、圧電型アクチュエータ6000の消費電力及び駆動電圧を従来よりも低減させることができる。
【0103】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。上記第6実施形態では、第1可動電極層610、圧電基板620、及び、第2可動電極層630の3つ部位からなる構造体を用いて、プルーフマス部601fに作用した加速度の大きさを検知する例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。例えば、4つ以上の部位からなる構造体を用いて上記加速度の大きさを検知してもよい。より具体的には、図9に示すように、基板801及び絶縁体層802を有するセンサ用構造体800を適用した圧電型加速度センサ7000において、交互に配置された、可動電極層810a〜810e、及び、圧電基板820a〜820dからなる9つの部位からなる構造体を用いて、プルーフマス部801fに作用した加速度の大きさを検知してもよい。なお、この検知は、固定端部801eに最も近い位置にある可動電極層810aと、プルーフマス部801fに最も近い位置にある可動電極層810eとに配線接続された検知部840が、可動電極層810a,810eの各出力を検知することによって行われる。
【0104】
また、上記第2実施形態の静電容量型加速度センサ1000、又は、上記第4実施形態の静電容量型圧力センサ3000は、可動電極層に電磁石を設けるとともに、この電磁石と対向する位置にコイルを配置するなどによって電流発生可能な発電機構に適用することができる。同様に、上記第6実施形態の圧電型加速度センサ5000は、例えば、第1可動電極層610と第2可動電極層630との間に電流を流すことで、第1可動電極層610と圧電基板620と第2可動電極層630とからなる積層体が一体的に弾性変形することに伴い、絶縁体層602が固定端部601eを支点として弾性変形する特性を利用して、絶縁体層602の弾性変形に応じて移動するプルーフマス部601fに電磁石を設けるとともに、この電磁石と対向する位置にコイルを配置するなどによって電流発生可能な発電機構に適用することができる。
【0105】
また、上記第6実施形態では、本発明のセンサ用構造体を圧電型加速度センサに適用する例について述べたが、加速度センサでなくとも、プルーフマス部が外部から印加される物理量により動作する場合には、その物理量を検出するセンサ全般(例えば、力センサ等)にも本発明のセンサ用構造体を適用することができる。
【0106】
また、上記第2実施形態では、本発明のセンサ用構造体を静電容量型加速度センサに適用する例について述べたが、櫛歯電極を用いる加速度センサに本発明のセンサ用構造体を適用した場合には、櫛歯形のガラス構造体を作製し、電極金属を成膜することで高感度な加速度センサを実現することができる。
【0107】
また、上記第2、3、6、7実施形態では、基板の他方の面において開口部が形成されたセンサ用構造体(図2(i)参照)を、静電容量型加速度センサ、静電容量型アクチュエータ、圧電型加速度センサ及び圧電型アクチュエータに適用する例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。基板の他方の面において開口部が形成されていないセンサ用構造体((図2(h)参照))を、これらのセンサ及びアクチュエータに適用してもよい。ただし、この場合において、センサ用構造体の絶縁体層の厚さは、従来のMEMS分野における絶縁層の厚さ(2μm) よりも大きい値に決定されることが好ましい。これにより、絶縁体層において基板の一方の面と同じ側の面に電極層を形成した際に、基板と電極層との間(絶縁体層)で発生する寄生容量を従来よりも低減することができる。
【符号の説明】
【0108】
1、201、301、401、501、601、701、801 基板
1a、201a、401a、601a 凹部
1b、201b、601b 開口部
1c、2a、201c、202a、601c、602a 前側端部
1d、2b、201d、202b、601d、602b 後側端部
2、4、6、202、302、402、502、602、702、802 絶縁体層
3 前駆体層
3a 凸部分
3b、4a、5a トレンチ部分
5 フォトレジスト
100、200、300、400、500、600、700、800 センサ用構造体
201e、201f、211b、211c、411b、411c 外枠部材
210 設置用構造体
211 設置基礎部
211a ベース架台
212、601f、701f、801f プルーフマス部
212a 梁部材
212b、312b 錘部材
220、320、420a、420b、520a、520b 固定電極層
230、330、430、530、810a〜810e 可動電極層
240、440、640、840 検知部
250、450 ショート評価部
340、540、740 電圧印加部
400a 通風孔
410 密閉用構造体
411 枠状体
411a、511a 膜状部材
412 箱状体
412a キャビティ
601e、701e、801e 固定端部
610、710 第1可動電極層
620、720、820a〜820d 圧電基板
630、730 第2可動電極層
1000 静電容量型加速度センサ(容量式センサ)
2000、4000 静電容量型アクチュエータ(容量式アクチュエータ)
3000 静電容量型圧力センサ(容量式センサ)
5000、7000 圧電型加速度センサ(圧電式センサ)
6000 圧電型アクチュエータ(圧電式アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に凹部が形成された基板と、
前記凹部の内部に形成された絶縁体層と、を備え、
前記絶縁体層の厚さは、2μmより大きいことを特徴とするセンサ用構造体。
【請求項2】
前記絶縁体層の厚さは、5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ用構造体。
【請求項3】
前記基板の他方の面において、前記絶縁体層における前記基板の一方の面と同じ側の面と反対側の面が露出するように形成された開口部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ用構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ用構造体と、
前記絶縁体層において前記基板の一方の面と同じ側の面に設けられた固定電極層と、
前記固定電極層と対向する位置に前記固定電極層と所定間隔をおいて設けられ、外力に応じて移動可能に支持された可動電極層と、を備えることを特徴とする容量式センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の容量式センサと、
前記固定電極層と前記可動電極層との間に、前記可動電極層を移動させるための電圧を印加する電圧印加部と、を備えることを特徴とする容量式アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ用構造体と、内部に形成された凹状のキャビティを有する密閉用構造体と、固定電極層と、可動電極層と、を備えた容量式センサであって、
前記密閉用構造体が、
外部からの圧力に応じて移動可能な状態で、前記キャビティを覆う位置に設けられた膜状部材を備え、
前記可動電極層が、
前記膜状部材において前記キャビティが形成されている側の面と反対側の面に設けられ、
前記固定電極層が、
前記絶縁体層における前記基板の一方の面と同じ側の面において、前記可動電極層と対向する位置に前記可動電極層と所定間隔をおいて設けられ、
前記センサ用構造体が、
前記膜状部材に外部からの圧力を印加するために、外部と連通するように形成された通風孔を備えることを特徴とする容量式センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の容量式センサと、
前記固定電極層と前記可動電極層との間に、前記膜状部材を移動させるための電圧を印加する電圧印加部と、を備えることを特徴とする容量式アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ用構造体と、
前記絶縁体層において前記基板の一方の面と同じ側の面に設けられた第1可動電極層と、
前記第1可動電極層において前記絶縁体層が形成されている側の面と反対側の面に形成され、外力に応じて弾性変形するとともに電荷を発生させる圧電基板と、
前記圧電基板において前記第1可動電極層が形成されている側の面と反対側の面に設けられた第2可動電極層と、を備えることを特徴とする圧電式センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電式センサと、
前記第1可動電極層と前記第2可動電極層との間に、前記圧電基板を弾性変形させるための電圧を印加する電圧印加部と、を備えることを特徴とする圧電式アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−181050(P2012−181050A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42937(P2011−42937)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】